...

化学・物質工学実験 2

by user

on
Category: Documents
23

views

Report

Comments

Transcript

化学・物質工学実験 2
化学・物質工学実験 2
1、次世代太陽電池を作ってみよう (青田教授)
我々の生活に欠かせない電気は現在おもに火力、水力、原子力発電所で生産されています。
しかしながら、それぞれの発電方法には大きな問題点があることを皆さんもご存知のことと
思います。そこで今、環境にやさしい発電方法として太陽光や風力といった自然エネルギー
の利用が注目されています。特に太陽光発電は各家庭の屋根の上で発電できることから、そ
の利用が急速に進んでいます。しかしながら、現在使われている太陽電池は非常に純度の高
いシリコンを使ったものであり、製造コストと手間がかかります。ですから、我々が自分た
ちの手でシリコン型太陽電池を簡単に作れるというものではありません。これに対し、19
91年にスイスのグレッツェル博士らが世界最高峰の科学雑誌である Nature に発表した色素
増感太陽電池は、その作成方法が非常に簡単であるため、次世代太陽電池として現在注目を
浴びています。この色素増感太陽電池を自分たちの手で作ってみましょう。
2、賢いゲルを作ってみよう
(宮田教授・河村助教)
高分子ゲルは高分子の鎖と水などの溶媒とから成っており、固体と液体の中間の性質を示
す寒天状の物質である。特に、水を含むゲルは高吸水性材料として紙おむつなどに幅広く利
用されている。また、一部のゲルは温度や pH 等の外界の変化を感知して大きさを変化させて
いることから、インテリジェントゲル(賢いゲル)として薬物放出用材料や人工筋肉として精
力的に研究されている。ここでは、温度によって体積を著しく変化させるゲルを合成し、そ
の温度応答性を観察してもらう。さらに、その体積変化がなぜ生じるのかを考え、高分子鎖
と水との関係について学んでもらう。
3、ナイロンをつくってみよう (大矢教授・葛谷准教授) 本年は都合により実施しません
合成高分子化合物はプラスチックや繊維など身近なところで活躍しています。この実験で
は、代表的な合成繊維の材料であり、パンティーストッキングなどの素材として有名なナイ
ロンの合成を界面重縮合という方法で実際に行ってもらいます。低分子から高分子を作るた
めには、低分子どうしの反応とは違って、同じ反応が延びつつある高分子の末端で何度も繰
り返し起こらなければいけません。この実験で行う界面縮重合ではその問題を水と油の界面
をうまく利用することによって解決しています。
4、スライム電池をつくろう! (石川教授、山縣准教授)
携帯電話やノート型パソコンのほか、掃除機、デジタルカメラ、音楽プレーヤーなど持ち
運びができる電化製品があふれています。皆さんも日々お世話になっていることでしょう。
これらの製品には電池はぜったい欠かせません!!基本的に電池は異なる二つの電極と電解
液から構成されていますが、実際には複雑な構造になっており、さまざまなシーンで安全に
使えるように多くの工夫がされています。今日はその一つ、スライム電池を紹介しましょう。
これは電解液をスライム化して、電解液の液漏れを防ぐための工夫です。また、携帯電話や
パソコンに使われているリチウムイオン二次電池では、発火防止の効果もあります。将来的
には電気自動車や家庭用電源、太陽光発電や風力発電で得たエネルギーを貯めるための設備
などに使われます。安心して使える電池を広めたいですね。
5、カガミをつくってみよう (坂口教授)本年は都合により実施しません
化学の授業で、「イオン化傾向」というのを習いましたか? また、「酸化・還元」というの
も習うと思います。銀イオンは、
「イオン化傾向」が小さいので、容易に還元されて銀を析出
します。この実験では、銀イオンにグルコース(ブドウ糖)を作用(反応)させて、ガラス
表面に銀鏡をつくります。 この場合、銀イオンが「還元される」もので、グルコースが「酸
化される」ものになります。先ずは鏡を作ってみて、「酸化・還元」についてゆっくり学びま
しょう。
6、海草成分から糸や人工イクラを作ってみよう(田村教授・古池准教授)
昆布などの海藻類には、アルギン酸と呼ばれる酸性多糖が含まれています。このアルギン
酸は、マンヌロン酸とグルロン酸というカルボン酸を持つ単糖からできていて、特にグルロ
ン酸が連続している部分では、カルボン酸基とカルシウムイオンがイオン結合して"エッグボ
ックス"といわれる"卵ケース(グルロン酸部分)に卵(カルシウムイオン)が入っている"よう
な構造になって不溶性になると言われています。つまり、アルギン酸ナトリウム水溶液を、
塩化カルシウム水溶液へ押し出す時に、ちょっと工夫することで、トコロテンのような糸状
や、イクラのような球状の物質を作ることができます。この操作を実際にやって、いろんな
形と色のアルギン酸ゲルを作ってみましょう。
7、化学発光~化学の力を使って光を生み出す~ (西山教授、梅田准教授)本年は都合によ
り実施しません
わたしたちの日常生活の中で、光を利用した便利なモノがたくさんあることに気づいていま
すか?その多くは化学物質のもつ特殊な性質が利用されています。その中でも発光という現
象は特によく用いられている化学的性質のひとつです。たとえば、蛍光ペンや、横断歩道の
信号、携帯電話のディスプレイなんかも、この発光を発生させる化学物質を巧みに利用して
います。もちろん、自然の中で発光を観察することはできます。夏になると蛍が明るい光を
だして飛び回る姿を見たことがある人もいると思います。このきれいな蛍の光は、ある化学
物質が化学反応をおこして光を作っているんです。今日は、蛍の光と同じ現象を利用した化
学発光を試験管の中でみなさんに再現してもらい、そのメカニズムを学ぶとともに、色々な
光る物質を光らせて見ましょう。また、身近にあるものなかに蛍光の光をだすものを探して、
紫外線ランプを使って光らせてみましょう。
8、金を使ったナノテクノロジー ステンドグラスの赤色に使われている金の小さな粒をつ
くってみよう(川崎教授)
金の小さな粒子(金コロイド)が分散した溶液は、
「こがねいろ」ではなく、鮮やかな赤紫
色をしています。金コロイドは、昔からステンドグラスや陶磁器の着色に用いられてきまし
た。最近、金コロイドの合成法が進展して新しい性質が発見されたことにより、医療、電子
機器、触媒など最先端のナノテクノロジー材料として注目されています。金コロイドの粒子
の大きさは非常に小さく、数ナノメートルから数十ナノメートルくらいです(1ミリの
1/1,000,000 メートルの長さを1ナノメートルと呼びます)。地球の直径を1メートルとする
と、1円玉の大きさが1ナノメートルになります。ここでは、金コロイドを作って、金の粒
子が成長していくに従って色が変化する様子(黄色→青色→紫色→赤色)を観察してみまし
ょう。小さなナノの世界で起こる金コロイドの不思議な現象を楽しみましょう。
9、香料を作ってみよう (大洞教授)
私たちは多くの香りに囲まれて生活をしています。安心感、安定感、心地よさを感じる香
りもあれば、家庭用ガスにつけられているような「嫌な」においもあります。これら香りの
元のほとんどは有機合成によって人工的に合成されているのです。その中でも酸とアルコー
ルとの脱水反応で得られるエステルは、一般に快い香りを有する化合物として知られていま
す。ここでは、簡単な有機合成の実験を通じて、化学物質が持つ香りを体験し、僅かな化学
構造の違いで香りが大きく異なることに注目してみよう。
10、生分解性の糸をつくる(平野教授)
近年、環境に優しい高分子材料が大変注目されています。
「環境に優しい」とは自然環境内
および生体内で加水分解され自然に返すことができることを指し、この機能を持つ高分子を
「生分解性高分子」と呼びます。この材料は、最終的には二酸化炭素と水になるため、自然
環境あるいは生体に対する負荷が小さいのが特徴です。
ポリ乳酸のモノマーである乳酸は、二酸化炭素と水から光合成によって作り出されるトウ
モロコシ(デンプン)を原料としています。ポリ乳酸の分解生成物である乳酸も、環境内で
の分解により二酸化炭素と水になります。これもまた炭素サイクルを乱さない材料です。さ
らに、熱分解や加水分解を行うことにより、容易にモノマーであるラクチド(乳酸の2量体)
または乳酸まで戻すことが可能であるため、リサイクル可能な高分子材料としても注目され
ています。
ポリ乳酸の塊を温めることによって簡単に糸を引くことができます。現在、医学の現場で
はこれを生体材料に応用しています。今回はこの「糸引き」を皆さんに体験してもらいます。
普通のプラスチックとの違いも感じ取って下さい。
11、歯医者さんはどんな材料を使っている? (岩﨑教授)
みなさんがあまり好きでない歯医者さん。虫歯になった時にどんな材料を使って治療して
いるか知っていますか?ここにも高分子(ポリマー)が活躍しています。実際に歯医者さん
が使っている材料に触れて高分子化学の基礎を理解してみましょう。実験では2種類の高分
子材料を使います。はじめは、虫歯を削った箇所につめるコンポジットレジン。これにはメ
チルメタクリレート(モノマー)と無機フィラーが含まれています。光をあてることにより
モノマーが重合し、硬化します。自分の歯と同じような人工の歯を作って下さい。
もうひとつは歯型をとる印象材です。2種類のシリコーンを混ぜることにより、自然と硬
化します。硬くなる理由は高分子鎖の橋掛けです。2種類のポリマーを混合してから硬くな
るまでに数分かかりますので、柔らかいうちに好きなかたちに成形して、徐々に硬くなる様
子を観察して下さい。
次世代太陽電池を作ってみよう
この世の中の全てのものは、およそ 100 種類存在する元素の組み合わせでできており、その組み合わせ
方を変えれば新しい機能をもった化合物ができるわけです。言いかえるとその組み合わせ方が無限にある
ことから、化学には無限の夢と可能性があることになります。
今回はこの無限に広がる可能性の一例として、次世代太陽電池として注目されている色素増感太陽電池
について少し実験してみましょう。
色素増感太陽電池
我々の生活に欠かせない電気は現在おもに火力、水力、原子力発電所で生産されています。しかしなが
ら、それぞれの発電方法には大きな問題点があることを皆さんもご存知のことと思います。そこで今、環
境にやさしい発電方法として太陽光や風力などの自然エネルギーの利用が注目されています。特に太陽光
発電は各家庭の屋根の上で発電できることから、その利用が急速に進んでいます。しかしながら、現在使
われている太陽電池は非常に純度の高いシリコンを使ったものであり、製造コストと手間がかかります。
ですから、我々が自分たちの手でシリコン型太陽電池を簡単に作れるというものではありません。
これに対し、1991年にスイスのグレッツェル博士らが世界最高峰の科学雑誌である Nature に発表
した色素増感太陽電池は、次世代太陽電池として学術的な面のみならず、その作成方法が身の回りにある
ものを利用して比較的簡単に作成できるため、教育用にも利用されています。
では、この色素増感太陽電池を自分たちの手で作ってみましょう。
理論
太陽
1
導電性物質がついている
ガラス
3
二酸化
チタン
2
ヨウ素溶液
-
表面に炭
素を塗っ
ておく
I
I-
I
6
-2e
色素
-
I3
-
+2e -
電子の
流れ
4 電圧計
電流計
-
5
1 太陽の光を色素が吸収。全てはこれから始まります。
2 光のエネルギーを吸収した色素が二酸化チタンへ電子を
渡します。そのため色素は一次的に電子を失った状態
になりますが6の過程でヨウ素から電子を受け取っても
とに戻ります。
3 電子を受け取った二酸化チタンから電極に電子が移動し
ます。
4 電圧計・電流計で発生した電気を知ることができます。
5 対極からヨウ素に電子が渡されます。
6 ヨウ素から2の過程で電子を失った色素に電子が送られ
ます。
この過程が繰りかえし起こります。
ただし、ヨウ素はたくさんあるので、実際には2が起こった
後、5が起こる前に6は起こっています。
作成方法
1)導電性ガラス(ガラスの片面 2)電気を通す面の両端 3mm のと 3)二酸化チタンを分散させた液
に電気を通す物質を薄くコーティ
ングしたもの)は片面だけが電気 ころにメンディングテープをは をガラス面に 1・2 滴たらす。
を通すので、これをテスターでさ る。
がします。
4)ガラス棒で薄くのばす。
5) テープをはがし、約 400℃で 6)この間に次の準備としてもう 1
枚のガラスの電気を通す面に鉛筆
30 分間加熱する。
を一面にこすりつける。
7)ガラスを少し冷やしてから、 8)取り出して水洗いして、ティ 9)ブルーベリージュースの染み
ブルーベリージュースの中に 10 ッシュペーパーを軽く当てて水分 込んだ二酸化チタンの上に電解質
分間浸す。
をとる。このときこすってはだめ。 溶液(ヨウ素・ヨウ化リチウムの
せっかくの二酸化チタンがとれる エチレングリコール溶液)を 1・2
ので。
滴たらす。
10)もう 1 枚の鉛筆をこすりつけ 11)黒いクリップでとめ、ワニ口ク 12) 光を当てて電圧が発生する
たガラスでサンドイッチします。 リップをつけてテスターで電圧を ことを確認してください。
このときガラスの端(透明な部分) 測定します。
を少しずらします。
賢いゲルを作ってみよう
1
はじめに
イオン性基を持った高分子電解質あるいは水と非常に親和性のある高分子をわずかに橋架
けした樹脂は,自重の数百倍もの水を吸収して膨潤したヒドロゲルとなる(図 1)。一般に,
水と馴染みやすい高分子の鎖は水に溶解しようとするが,ヒドロゲルの場合には橋架け構造
を形成しているために溶解することはできない。このため,ヒドロゲルは多くの水分子を保
持した状態で安定化し,液体と固体の中間の性質を持った柔らかい材料(ソフトマテリアル)
となる。
図1
高分子電解質と高分子ゲルの模式図
例えば,カルボキシル基を有するアクリル酸とジビニル化合物であるメチレンビスアクリル
アミド(架橋剤)とを共重合することによって,多数のカルボキシル基を持った高分子のネ
ットワーク(ポリアクリル酸ゲル)が形成され,その内部に多量の水を保持できるようにな
る。現在,このような高吸水性樹脂は,紙おむつなどの衛生品として広く普及している。ま
た,水で膨潤したヒドロゲルは,そのソフトマテリアルとしての性質を利用して医療分野か
ら食品加工に至るまで幅広い応用が期待されている(図 2)。
図2
ヒドロゲルの機能
2
古くて新しい材料―ゲル―
ゲル(gel)は,ゼリー状のものとして古くからこんにゃくやゼラチンなどの食品として多く
見られた。さらに,最近では,紙おむつなどの衛生用品や保冷剤,化粧品として利用される
だけでなく,コンタクトレンズを始めとして医療用材料としても利用され始めている。この
ようにゲルは非常に古くから存在するが,その興味ある機能や性能のために最近新たに注目
されるようになり,古くて新しい材料といえる。
ゲルとは,あらゆる溶媒に不溶である網目構造をもつ高分子およびそれが溶媒によって膨
潤したものと定義される。その網目構造を形成している高分子の種類によって様々な性質を
示し,いくつかのゲルでは本実験のように外部溶液の温度などを自ら感知してその大きさを
変化させることから,“賢い材料”(インテリジェントマテリアル)として様々な応用が期待
されている。他にも pH や電場などの変化によって応答するゲルが知られており,薬剤放出
用材料や人工筋肉などの次世代材料として医療・医薬・食品・土木・バイオテクノロジー分
野などで精力的に研究開発が進められている(図 3)。
図3
賢いゲルの応用例
3 賢いゲルの作り方
ここでは,実際に温度変化を自ら感知して大きさを変化させる賢いゲルを作ってみる。以
下に記した手順に従って,温度に応答する賢いゲルを合成し,その温度変化に伴う体積変化
の挙動について観察してみる。
① 1mol/l N-イソプロピルアクリルアミド(NIPAAm)水溶液をマイクロピペットで 3 ml とり
(目盛り 1000×3 回),サンプル管に入れる。
② 架橋剤である 0.1 mol/l メチレンビスアクリルアミド(MBAAm)水溶液をマイクロピペッ
トで 0.3 ml とり(目盛り 0300),①のサンプル管に加える。
③ 反応促進剤の 0.8 mol/l N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)水溶液をマイク
ロピペットで 1 ml とり(目盛り 1000),②のサンプル管に加え,軽く振る。
④ 反応開始剤の 0.1 mol/l 過硫酸アンモニウム(APS)水溶液をマイクロピペットで 1 ml とり
(目盛り 1000),③のサンプル管に加え,サンプル管をよく振る。
⑤ 液中に揺らぎ(モヤモヤ)が出てきたら,サンプル管を静置する。→ゲル化
⑥ 十分にゲル化させた後,サンプル管に水を入れ,ゲルを取り出す。
⑦ ゲルを水で洗う。
⑧ お湯と水の中に交互にゲルを入れ,その変化を観察する。
ナイロンをつくってみよう
高分子とは?
各元素には他の元素と結合できる手のようなものがあります。例えば,その手の数は水素 1,酸素 2,
窒素 3,炭素 4 です。そのため炭素 1 つに水素 4 つが結びつくと,ちょうど全ての手が結びついたことに
なります。これを化学記号で CH4 と書きます。C は炭素を H は水素を表します。この CH4 はメタンとよ
ばれるガスで,皆さんが家で使っている都市ガスの主成分です。酸素(O)ひとつと水素 2 つが結びつくと
H2O すなわち水ができるわけです。
さて,ここで炭素 1 つに水素 2 つついた CH2 を考えてください。これはまだ,炭素に 2 本の手が残っ
ています。この残った手を両側に広げそれぞれの手で,隣の CH2 と手をつなぐと連続的に手をつなぐこと
ができるのです。実際,永遠とまではいきませんがかなりたくさんの手をつないで巨大な分子ができあが
ります。これが高分子の代表格ポリエチレン(ポリ袋の原料,図 1)です。
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
C
C
C
C
C
C
C
C
C
C
C
C
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
図1
ポリエチレンの構造
分子の連なりを作る
さて,化学合成で小さな分子が連ねて高分子を作るときの連なり方には大きく分けて2つあります。一
つは同じ者同士が手をつなぐ方法でポリエチレンのように,
・・・-X-X-X-X-X-X-X-X-X-X-X-・・・
という形になります。もう一つは必ず男子と女子が手をつなぐような形で,
・・・-Y-Z-Y-Z-Y-Z-Y-Z-Y-Z-Y-Z-・・・
という形になります。
今回は高分子合成の中でも簡単にできる界面重縮合によるナイロンの合成を行います。
皆さんもご存知のように水と油は混じりません。水の上に油をそっと注ぐと,上下の2層に分かれます
(油の比重が水より軽い場合,油が上)。この2つの層の間には境界=界面ができます。ここでは,先の
図で Y に相当するもの(ヘキサメチレンジアミン)を水に溶かし,Z に相当するもの(アジピン酸ジクロリ
ド)を油(ヘキサンという液体を使います)に溶かしておくと,界面でそれらが出会って反応(手をつな
ぐ)します。界面に出来たナイロンの膜を引き上げてやると,界面で次々とヘキサメチレンジアミンとア
ジポイル酸クロライドとが次々と出合って,巨大な分子(ナイロンの糸)になるというわけです。
では,Y と Z が手をつなぐ前の「手」はどうなっているのでしょう?実は,Y (ヘキサメチレンジアミン)
の両端の手には水素 H が,Z(アジピン酸ジクロリド)の両端の手には塩素 Cl がついていますが,それ
らが出会うと,Y は水素 H を放し,Z は塩素 Cl を放し,それらから塩酸(HCl)ができるのです。出来た塩
酸は,Y と一緒に加えておいた炭酸ナトリウム(アルカリ)によって中和され,食塩(NaCl)と水と二酸化
炭素になります。(図2)
O
H
N
H
CH2
CH2
CH2
H
CH2
CH2
C
NH
CH2
Cl
H
H
6
CH 2
Cl
ヘキサメチレンジアミン
CH2
CH2
CH 2
Cl
C
O
Cl
6
アジピン酸ジクロリド
6,6ナイロン
6
N
H
6
H Cl
O
H
N
O
6
H Cl
O
H
N
N
H
O
2HCl + Na 2CO 3
図2
H Cl
N
H
6
O
H
N
O
2NaCl + H2O + CO 2
ナイロンの合成
ナイロンは,糸にした時の強度が高いので,化学繊維の1つとしてよく用いられており,パンティスト
ッキングなどが代表的です。余談ですが,よく「ナイロン袋」という表現に出会いますが,これはほとん
どの場合間違いで,ポリ袋が正しく,その主成分は,ナイロンではなく先のポリエチレンです(これから
は間違わないようにね)。
実験:やってみよう
1) 実験の前に,安全メガネをかけ,手袋をしましょう。
2) こちらの指示した量のヘキサメチレンジアミンと炭酸ナトリウムを天秤で測り取り,水に溶かします。
同様にアジピン酸ジクロリドをヘキサンに溶かします。
3) 乾燥したビーカーにヘキサメチレンジアミンの水溶液をゆっくりいれます。この上にゆっくりとアジ
ピン酸クロライドのヘキサン溶液を注ぎます。
4) 界面に薄い膜ができているのがわかるはずです。これをピンセットでつまんで,ガラス棒か割りばし
に巻きつけていってください。糸のように出来上がるのがナイロンで,引き上げると次々とナイロン
が出来ていく様子を観察することが出来ます。
5) できたナイロンをアルコールで洗った後,さらに水で洗います。
6) 実験で出た廃液は環境汚染の原因になりますので,廃液貯めにいれましょう。
割り箸
ナイロンの糸
アジポイルクロリド
のヘキサン溶液
界面に出来た膜を
つまんで引き上げる
ヘキサメチレンジアミンの水溶液
スライム電池をつくろう!
はじめに
げんざい
しゃかい
でんち
もち
かんでんち
けいたい で ん し き
き
もち
現在の社会において、
“電池”はテレビのリモコンなどに用いられる乾電池から、携帯電子機器に用い
だいしょうさまざま
たい
げん
しよう
でんち
れきし
られるバッテリーまで、大 小 様々なものに対するエネルギー源として使用されています。その電池の歴史
ひ か く て き あたら
せ い き こうはん
はじ
い
げんだい
い
た
でんち
かいはつ
きゅうそく
すすみ
は比較的 新 しく、18世紀後半が始まりと言われていますが、現代に至るまで電池の開発は急 速 に進み 、
げんざい
いちじ でんち
に
じ でんち
ねんりょう で ん ち
たいよう で ん ち
じつ
たしゅ たよう
でんち
かい はつ
現在では一次電池、二次電池、燃 料 電池、そして太陽電池など、実に多種多様な電池が開発されることと
なりました。
げんざい じ つ よ う か
かんでんち
あんぜんせい
かんてん
じょう
でんかい えき
もち
また現在実用化されている乾電池では、安全性などの観点からゼリー 状 の電解液が用いられているも
えきたい
じょう
りてん
も
のもあります。液体ではなくゼリー 状 、すなわちゲルにする利点として、こぼれたり漏れたりしにくく、
じ たい
でんきょく
ささ
さまざま
えきたい
それ自体で電 極 を支えることができるなど様々なアドバンテージがあります。しかしながら、液体をゲル
じょう
でんき
と
り
だ
す
こんなん
なに
くふう
ほどこす
ひつよう
こんかい
状 にすることで電気を取り出すのが困難となるため、何かしらの工夫を施すことが必要となります。今回
でんち
なか
たんじゅん
でんち
いちじ でんち
でんかい えき
もち
さくせい
は電池の中でも単 純 なボルタ電池モデルの一次電池の電解液に“ゲル”であるスライムを用いて作製し、
くふう
ひつよう
かんが
どのような工夫が必要になるのか 考 えてみましょう。
でんち
つ く ろ う
スライム電池を作ろう
り
か
じっけん
つく
じつ
でんち
いちぶ
しよう
ぞんじ
よく理科の実験などで作られるスライム。実は、これが電池の一部として使用できることはご存知で
いっぱんてき
じっけんしつ
つく
さ
しょうか?一般的に実験室などで作られるスライムはホウ砂(Na2B4O7)と PVA(ポリビニルアルコール)に
い
か
ず
なが
たんそ さ
き
けつごう
よってできています。ポリビニルアルコールは以下の図1 のような長い炭素鎖にヒドロキシ基が結合した
こうぞう
ほ
う
さ
ず
こうぞう
構造に、ホウ砂は図2 のような構造となっています。
こうぞう
図 1 PVA(ポリビニルアルコール)の構造
図2
さ
ぶぶん
ホウ砂(Na2B4O7)の構造
き
けつごう
い
か
このホウ砂の B-OH の部分が PVA の-OH基とエステル結合することによって、以下のような B-O-R
む
き さん
けいせい
無機酸エステル(図 3)を形成します。
図 3 スライムとなる無機酸エステル
ぶんし
うえず
あみじょう
かきょう
ひじょう
じょうぶ
ぶんし
かずおお
そん ざい
この分子は上図のように網 状 に架橋するために、非常に丈夫な分子となります。さらに数多く存在してい
き
ぶんし ないぶ
おお
みず
と
こ
じゅうなんせい
ゆう
る-OH基のために分子内部に多くの水を取り込むことができるため、柔 軟 性 を有することもできます。こ
れがいわゆる“スライム”となります。
でんかい えき
もち
でんち
きのう
じっさい
はたして、このスライムを電解液に用いたものは電池として機能することができるでしょうか?実際
さくせい
ため
に作製して試してみましょう。
じゅんび
1. 準備
さ すいようえき
ていど と
せんたく
さん すいようえき
さん すいようえき
わ
ホウ砂水溶液(100ml に 5g程度溶かしたもの)、洗濯のり(PVA)、プラスチックコップ、割りばし、
すいようせい
え
ぐ
どうばん
あえんばん
ぶん て い ど はい
せんたく
くち
水溶性の絵の具、アスコルビン酸水溶液 or クエン酸水溶液、銅板、亜鉛板、わに口クリップ、オルゴー
ル
じっけんてじゅん
2. 実験手順
さくせい
① スライム作製
(i)
じゅんすい
ようき
どうりょうくわ
プラスチックコップに純 水 を容器の 2cm分程度入れ、洗濯のりを同 量 加える。よくかき
ま
あと
ちゃくしょく
すいようせい
え
ぐ
くわ
ま
混ぜた後、 着 色 させるために水溶性の絵の具を加え、またよくかき混ぜる。
(ii)
ようい
さ すいようえき
さん
さん
さくせい
あらかじめ用意したホウ砂水溶液とアスコルビン酸もしくはクエン酸 を(i)で作成したプ
しょうりょう
くわ
ま
ねんど
あ
ま
ラスチックコップに 少 量 ずつ加え、よくかき混ぜる。粘度が上がるまで混ぜる。
つか
でんち
さくせい
② スライムを使って電池の作製
(i)
さくせい
どうばん
あえんばん
さ
こ
とき
せっしょく
作製したスライムに銅板と亜鉛板を差し込む。この時、どちらも接 触 していないことを
かくにん
よく確認する。
(ii)
どうばん
たんし
あえんばん
たんし
銅板とオルゴールのプラス(+)の端子、亜鉛板とオルゴールのマイナス(-)の端子 をわに
口クリップでそれぞれつなぐ。
e -( 電子 )
♪ ♪ ♪~
♪ ♪ ♪~
e -( 電子 )
オルゴール
亜鉛
銅
Zn
Cu
スライム
3. 考察
でん ち
ぶ
じ
ばあい
い
か
でんりゅう
とお
せいこう
でんりゅう
なが
どうでしたか?スライム電池は無事に電 流 を通すことに成功したでしょうか?もし電 流 が流れない、
おんがく
なが
ため
オルゴールの音楽が流れない場合は以下のことを試してみましょう。
さん
・
くわ
りょう
ふ
アスコルビン酸を加える 量 を増やしてみる。
くわ
え
ぐ
りょう
いろ
か
・ 加える絵の具の 量 や、色を変えてみる。
でんち
ちょくれつ
・ 電池を直 列 につないでみる。
かいせつ
4. 解説
な
でんりゅう
なが
こんかい
オルゴールがなりましたね。オルゴールが鳴っているのは電 流 が流れているからです。ここで、今回
さくせい
でんち
でんき
なが
し
く
せつめい
でんきょく
しよう
あえんばん
ふきょく
作成したスライム電池の電気が流れる仕組みを説明します。まず、電 極 として使用した亜鉛板は負極とし
どうばん
せいきょく
はたら
さくせい
とお
みち
でんかい しつ
はたら
て、銅板は正 極 として 働 きます。そして、作製したスライムはイオンの通り道となる電解質として 働 き
はんのう
くわ
かいせつ
ふきょく
あえんばん
ほうでん じ
あえん
ようかい
ます。反応を詳しく解説すると負極 としての亜鉛板(Zn)は放電 時に亜鉛 イオン(Zn2+)として溶解し、また
せいきょく
どうばんじょう
ない
そんざい
すいそ
でんし
う
と
すいそ
はっせい
正 極 においては、銅 板 上 でスライム内に存在 する水素イオン(H+)が電子を受け取り、水素(H2)が発生 し
ます。
くわ
さん
ふ
おと
おお
さん
おお
加えるアスコルビン酸を増やすとオルゴールの音が大きくなりましたね。これはアスコルビン酸に多
すいそ
そんざい
ない
すいそ
せいきょく
どうばん
はんのう
えんかつ
くの水素イオンが存在しているため、スライム内の水素イオンと正 極 である銅板との反応がより円滑にな
るためです。
e-(電 子 )
♪ ♪ ♪~
♪ ♪ ♪~
e-(電子 )
オルゴール
e- ee
e- e
e-
Zn2+
Zn2+
亜鉛
Zn
亜鉛がスライム内
に溶ける
H2 (水素)が
発生する
H+
H+
H+
e-
ee-
e-
銅
Cu
スライム
正極: 2H++2e-→H2
負極: Zn→Zn2++2e-
カガミをつくってみよう
使う薬品は
硝酸銀
10%アンモニア水
グルコース
精製水
操作
1.
A液
B液
C液
AgNO3: 0.68 g
精製水: 20 mL
10%アンモニア水: 2.5 mL
精製水: 12 mL
グルコース: 1.0 g
精製水: 20 mL
右のようにA~C液を用意します。
操作
2.
A液にB液を約 2 mL ずつ 4~5 回(計 9 mL)、ガラス棒でよくかき混ぜながら加えます。さらに、B液
をピペットで 2~3 滴ずつ、溶液が透明になるまで加え続けます。(B液を入れすぎないように)
最初、無色透明
濃い褐色に
だんだん透明に
<なんでこうなるの?>
2 AgNO3 + 2 NH3 + H2O
Ag2O + 4 NH3 + H2O
操作
3.
上で得られた溶液をシャーレ(Φ90 mm)に移します。
Ag2O + 2 NH4NO3
2 [Ag(NH3)2 ] + 2 OH
そして、無色透明
操作
4.
C液をシャーレにピペットで 2 mL ずつ円を描くようにすばやく加えます。
(i) 円を描くように
(ii) にごってきます
(iii) 15分から30分間静置します
出来上がり!!
2 [Ag(NH3)2] +
還元されるもの
RCHO + 3 OH
2 Ag + RCOOH + 4 NH3 + 2 H2O
酸化されるもの
注)手袋をして、必ず大人と一緒に行ってください。
実験後は、溶液を素早く処理する必要があります。詳しくは先生に聞いてください。
(参考図書)日本化学会近畿支部編 「もっと化学と楽しくする 5 分間」(化学同人)
海草成分から糸や人工イクラを作ってみよう
アルギン酸ナトリウムは昆布などの海藻類に多く含まれる天然酸性多糖繊維質で、健康食品をは
じめとする様々な分野で広く利用されています。このアルギン酸の分子構造は、D-マンヌロン酸と Lグルロン酸という酸性の単糖がランダムに結合しています。一般に、アルギン酸のナトリウム塩は水
に溶けますが、これがカルシウム塩になると水に不溶となり、液体表面にゲル状の膜を形成すること
が知られています。
これは、アルギン酸分子中の、特に L-グルロン酸部
O- Na+
O
OH
分が連続して結合している箇所に、カルシウムイオン
O
O
がイオン結合することにより、“エッグボックス”といわ
O
HO
OH
Na+ -O
れる「卵ケースに卵(カルシウムイオン)が入っている」
O
O
OH D-マンヌロン酸(M)
構造をとることにより起こります。
O
この現象を利用して、スポイトやシリンジなどを使っ
L-グルロン酸(G)
て、アルギン酸ナトリウム水溶液をカルシウムイオン中
図 1.アルギン酸ナトリウムの構成単位
に押し出してみると、様々な形状のままで不溶化して
O
HO
-
O
O-
-
HO
HO
O
O
O
O
O
OH
O
O
O
O
O
OH
O-
HO
O
O
HO
HO
-
Ca2+
OH
O
O
OO
O
O
Ca2+
OH
OH
OH
O
O
O
O
O
O
OH
O-
拡大図
図 2.エッグボックス構造
固体となります。また、β‐カロチン、市販のインクなどをアルギン酸ナトリウム水溶液に混ぜておくと、
色とりどりの固体を作ることができます。
[用意するもの]
2%アルギン酸ナトリウム水溶液、2%塩化カルシウム水溶液、β‐カロチン、インク(青・赤・黄)、サ
ラダオイル
保護メガネ、ゴム手袋(M・L)、ビーカー(100mL)、バケツ、シリンジ(10mL)、注射器、注射針、ロー
ト、スタンド、リング
[注意事項] 1.実験の際は、保護メガネとゴム手袋の着用をお願いします。
2.実験後、および試薬がついた時は、水道水でよく手を洗ってください。
実験1.人工イクラを作ってみよう!
① あらかじめ準備された、色素の入った2%アルギン酸ナトリウム水溶液
を、ロートの中に注ぎ込みます。
② ロートの先についているピンチコックをゆっくり開きます。すると、アルギ
ン酸ナトリウム水溶液の液滴が、下のバケツに入っている2%塩化カルシ
ウム水溶液中へ落下し、球状のビーズができます。この時、きれいな球状
にするため、ゆっくり落ちるようにピンチコックを調節しましょう。
③ 出来あがったビーズをすくい取り、水道水でよく洗浄してください。
④ ②の操作のときに、注射器でβ-カロチンをいっしょに滴下すると、まる
でイクラのようなビーズを作ることができます。
(注)まるでイクラのような形状にはなりますが、健康を害するかもしれませ
んので、決して食べないでください。
実験2.いろんな形を作ってみよう!
① あらかじめ準備された、2%アルギン酸ナトリ
ウム水溶液をビーカーにとり、色とりどりのインクを適
量混ぜ合わせてください。
② 着色したアルギン酸ナトリウム水溶液を、シ
リンジの中に入れ、2%塩化カルシウム水溶液の
バケツの中へ、押し出してみてください。
③ 色とりどりの細長いトコロテン状の形で固
まります。
④ 出来あがったビーズをすくい取り、水道水でよく
洗浄してください。
⑤ 自分のアイデアで、いろんな形の固体を作っ
てみましょう。
化学発光~化学の力を使って光を生み出す~
1. はじめに
わたしたちの日常生活の中で、光を利用した便利なモノがたくさんあることに気づいていますか?その多くは化
学物質のもつ特殊な性質が利用されています。その中でも蛍光という現象は特によく用いられている化学的性質
のひとつです。蛍光とは、化学物質にエネルギー、たとえば、紫外線、熱、電気などを与えると、もらったエネルギ
ーを光として放出する現象です。蛍光ペンや、横断歩道の信号、携帯電話のディスプレイなんかも、この蛍光を発
生させる化学物質を巧みに利用しています。また、1961 年に下村脩博士がオワンクラゲからGFP(Green
Fluorescent Protein)といわれるタンパク質を取り出して、これに紫外光を当てるとその光を吸収して緑色の蛍光を
出すこと発見しました。現在では、この蛍光を発するGFPは、病気の原因を調べたり、薬がどうやって働くかを調
べる道具として使われています。この業績をたたえて、下村博士が 2008 年度のノーベル化学賞を受賞しました。
そのほかにも、自然の中で蛍光を観察することはできます。夏になると蛍が明るい光をだして飛び回る姿を見たこ
とがある人もいると思います。このきれいな蛍の光は、ある化学物質が化学反応をおこして光を作っているんです
よ。
今日は、蛍の光と同じ現象を利用した化学発光を試験管の中でみなさんに再現してもらい、そのメカニズムを
学ぶとともに、色々な光る物質を光らせて見ましょう。また、身近にあるものなかに蛍光の光をだすものを探して、
紫外線ランプを使って光らせてみましょう。
O
CH3
CH3
N
NH
N
O
N
O
OH
OH
HO
OH
NH
NH
NH2 O
HO
N
N
S
S
ホタルルシフェリン
ルミノール
ビタミンB2
O
クマリン
O
アントラセン
ペリレン
COOH
2. 化学発光とは
化学発光とは、ある化学反応によって過剰なエネルギーをもつ分子(励起分子とよびます)が生成して、その分
子が安定な状態(基底状態とよびます)に戻るときに、その過剰のエネルギーを光として放出する現象です。
今回用いる化学反応は、蛍の光と同じ反応である酸化反応です。この反応を利用して、光を発生させます。す
こし難しいかもしれませんが、下の図を用いて、今回使用する化学物質であるルシゲニンの酸化反応の過程と光
が生成するメカニズムについて説明します。
図.ルシゲニンの酸化反応の過程と光が生成するメカニズム
1) ルシゲニン(A2 と表記しています)が過酸化水素(H2O2)と反応して、酸化されてジオキセタン誘導体(A2O2 と
表記しています)となります。
2) ジオキセタン誘導体 A2O2 は高いエネルギーを持っていて、非常に不安定であるので、分解し安定な 2 分子の
アクリドン誘導体(AO と表記しています)となりますが、この際、一方のアクリドン誘導体 AO は、高エネルギー状
態である励起分子 AO*にまずなります(*のマークは過剰なエネルギーをもっていることをあらわしています)。
3) 励起している AO*は、安定な状態である基底状態 AO になるのですが、この際に過剰のエネルギーを光(h)
として放出します。
3. 実験 (蛍の光を試験管の中で作ってみよう)
①. 試薬を使って溶液 1、溶液 2 を準備します。(今回はすでに準備しています)
溶液 1 (水 65 mL, NaOH 0.8 g, エタノール 30 mL, 30%H2O2 水溶液 5 mL)
溶液 2 (水 70 mL, エタノール 30 mL, ルシゲニン 20 mg)
②. ピペットを使って、溶液 2 を試験管 A, B, C にそれぞれ約1センチずつで入れる。
③. ミクロスパーティル(小さなスプーン)を使って、試験管 B にフルオレセンナトリウムをほんのひとかけら入れ
る。
④. ミクロスパーティル(小さなスプーン)を使って、試験管 C にローダミン B をほんのひとかけら入れる。
⑤. 暗箱に試験管 A を入れて、ピペットを使って溶液 1 を数滴加え、発光を観察する。
⑥. 暗箱に試験管 B を入れて、ピペットを使って溶液 1 を数滴加え、発光を観察する。
⑦. 暗箱に試験管 C を入れて、ピペットを使って溶液 1 を数滴加え、発光を観察する。
⑧. 発光が観察されなくなったら、暗箱の中で試験管 A, B, C に紫外線ランプの光を当ててそれぞれの発光を観
察する。
Na
O
O
O
COO Na
フルオレセインナトリウム
実験の注意点
実験をする際は必ず保護めがねをかけましょう
薬品が手や皮膚に付いたらすぐに水でよく洗いましょう。
紫外線ランプを長時間みるのはやめましょう。
N
O
N
COO
ローダミン B
金を使ったナノテクノロジー
ステンドグラスの赤色に使われている金の小さな粒をつくっ
てみよう
金は何色をしているか皆さん知っていますか?そんなの
金色に決まっていると答えるかもしれませんが、必ずしも
そうではありません。ふつうの金はいわゆる「こがねいろ」
をしていますが(右図)、金の小さな粒(金ナノ粒子)が分
散した溶液は、赤や赤紫の非常にきれいな色をしています。
金の小さな粒子の大きさは数ナノメートルから数十ナノメ
ートルくらいです(1 ナノメートルは、百万分の1ミリです)。
地球と1円玉の大きさの違いは,1メートルと1ナノメー
トルに対応しています。ナノメートルの大きさをもつ金の
小さな粒がいかに小さいかが分かるでしょう。
金の小さな粒は、ステンドグラスや陶磁器の着色に用いられてきており、現在では、病気
の診断薬、食品、化粧品、など生活の中で身近に使用されています。金は、100年以上に
わたって常になんらかの形で研究され続けてきた材料ですが、最近では、金を小さくした粒
が触媒作用で有害物質を無害にする、発光を示すなど新しい性質が発見され、ナノテクノロ
ジーにおける最先端材料としても注目されています。
ここでは、金の小さな粒(金ナノ粒子)を、化学反応をつかって合成します。金の小さな
粒が生成していくに従って色が変化する様子を観察してみましょう。小さな世界で起こる金
の不思議な現象を楽しみましょう。
図1 ローマ帝国の時代から
ステンドグラス
(赤色:金ナノ粒子の色)
図 2 薩摩切子(金赤ガラス)
(赤色:金ナノ粒子の色)
図3
発光する金ナノ粒子
[試薬&器具]塩化金酸水溶液(120mM)(金のイオンがとけた水溶液)、テトラデシルトリメチ
ルアンモニウムブロマイド(2g/10mL)(界面活性剤,金の小さな粒の生成を助ける)、ヒドラジン
(20μL)(金のイオンから金の小さな粒をつくる試薬,還元剤),食塩水(10wt%)、純水、
栓付きプラスチック容器(50ml)、撹拌装置、撹拌子、スポイト、ガラス棒、ロウト、ろ紙、アクリル
板、乳棒、ビニール手袋、保護メガネ
(注)化学実験中は、安全のため必ず保護メガネとビニール手袋をつけて行ってください。
還元剤
Au 3+
金のイオンが溶けた
界面活性剤水溶液
1.
食塩水
Au
金の小さな粒(金ナノ
粒子)が分散した
界面活性剤水溶液
金の小さな粒が
集まって,沈殿物
を生成
プラスチック容器に 10mL の界面活性剤水溶液をいれます。
2.(1)で調製した界面活性剤水溶液に塩化金酸水溶液を20μL 加えます。
*撹拌装置を用いて水溶液を激しく撹拌すると,水溶液の色が無色から黄色になります。金をと
かした水溶液の色です。
3.(2)で調製した金をとかした水溶液に、ヒドラジンを20μL 加えます。
容器内の色に注意して、色を観察して下さい。 この実験
では、小さな金の粒が成長していくに従って色が変化
する様子(黄色→無色→紫色→赤色)が観察できます。
写真
写真
図4:小さな金の粒(金ナノ粒子)が分散して
いる水溶液
図5:小さな金の粒(金ナノ粒子)の電子顕微
鏡写真(サイズ:約20nm,約 50000 の
1ミリ程))
図4金ナノ粒子の
分散液
図5金ナノ粒子の
電子顕微鏡写真
4.(3)で調製した小さな金の粒を含む赤色溶液に食塩水を滴下して行くと、溶液の色は赤色から黒色
へと変化します。これは、添加した塩の効果で金の小さな粒の間の反発力が小さくなり、金の粒子
が集まって(凝集)、だんだん大きくなるためです。
5.“食塩水の添加によって金の小さな粒が凝集した水溶液”を、ろ紙を使って溶液から分離します。
凝集して大きくなった金の粒の凝集体は、ろ紙上に残るのが観察されます。
6.実験5で、ろ別した金の粒子の沈澱物をアクリル板に上に載せてガラス棒で押しつぶすと、金の小
さな粒が集まって、金色の光沢を示す金箔が得られます。
香料を作ってみよう
はじめに
私たちは多くの香りに囲まれて生活をしています。身近なものをあげるだけでも、香水、
シャンプー、入浴剤、化粧品、コロン、アイスクリーム、ガム、インク・・・等、日常生活
において欠かすことができないものばかりです。
「香り」の果たす大きな役割として、精神的な安心感、安定感を与える効果があります。
たとえば、ハーブの香りはリラックス効果がありますし、ハッカの香りは気分を爽快にして
くれます。また、食品につけられている香りも重要で、人は食べ物の香りを楽しみ、そして
おいしいと感じるわけです。
香料の歴史は古く、紀元前までさかのぼるともいわれています。そのころの香料は、花
などに含まれるごく僅かな量の香りの成分を抽出した、いわゆる天然香料が使われていまし
た。従って、昔から香料は大変貴重なものであったわけです。しかし、このような香料が現
在、私たちの身の回りに溢れています。なぜでしょうか?
それは、近年の化学の進歩により、香りの正体、すなわち化学構造を明らかにすることが
できたからであります。これらの「香りのもと」の化合物の大部分が炭素、水素、酸素原子
で構成される有機化合物であり、現在では多くの香り成分の構造か明らかになっています。
その結果、我々は、化学合成によって人工的にほしい香料を大量合成することができるよう
になったわけです。また、有機合成手法の発達は、これまで天然には存在していない良質の
香り成分を手に入れることもできるようになりました。
以下に、代表的な香料の構造を示してみました。これらの化合物が持っている特徴的な構造
がさまざまな香りを生み出しているわけです。
シトラール(レモン)
バニリン(バニラ)
メントール(ハッカ)
酢酸ベンジル(ジャスミン)
酢酸リナロール(ラベンダー)
今回は、これら、香り成分のある有機化合物のうち、エステルと呼ばれる化合物を合成
してみます。エステルは一般的に良い香りを持つものが多い有機化合物です。 同じエステ
ルでも分子構造の違いによってその香りは異なります。そこで、構造の異なるいろいろなエ
ステルを合成してその香りを比べて見ましょう。
エステルとは
エステルとはカルボン酸とアルコールの脱水反応によって得られる化合物です。
たとえば、酢酸エチルのできる反応を化学式で書くと以下のようになります。
O
+
OH
OH
酸
O
硫酸
アルコール
O
+ H2O
エステル
この反応では、硫酸は触媒として働き、反応を早く進める効果があります。
【実験】
1.オイルバスを70℃に暖めておく。
2.試験管にアルコールを5mL、カルボン酸 1mL を加える。
3.濃硫酸(0.5 mL)を“ゆっくりと”加え、数分から10分程度、かき混ぜながら加熱する。
4.試験管を冷却後、水を 5mL加えてからエーテルを 1mL 加える。
5.試験管の溶液が2層に分離するので、上部のエーテル層をバイアル瓶に移す。
6.ピペットを使ってバイアル瓶の溶液を一滴、ろ紙に垂らす。
7.ろ紙を乾燥させた後、ろ紙を鼻に近づけてにおいを嗅いでみる。
いろいろなエステルの香りを楽しんでみよう。僅かな化学構造の違いで香りが異なることに
注目してみよう。
エステルの名称
化学式
どんな香り?
酢酸メチル
酢酸エチル
酢酸 n-アミル
(酢酸ペンチル)
酢酸ベンジル
酪酸メチル
酪酸イソアミル
(ブタン酸イソペンンチル)
ヘプタン酸エチル
吉草酸アミル
(ペンタン酸ペンチル)
桂皮酸メチル
CH3COOCH3
CH3COOC2H5
CH3COOC5H11
パイナップル
柑橘類
バナナ
CH3COOCH2C6H6
C3H7COOCH3
C3H7COOC2H4(CH3)3
ジャスミン
パイナップル
ナシ
C6H13COOC2H5
C4H9COOC5H11
もも、イチゴ
リンゴ
C6H5CH=CHCOOCH3
松茸
'.%
\hLQRE:Ý 6"
"'ęúŀĆ:Ý ÊñĎ:±0"%$5
,!iI>Ej: €É/‚"ī6&!iI>Ej'Ö³"´²
!7
%ÿ
Ž>m[h߆/$7($5,;Ðí&\hLQR
EĹ£&˜à'èŎ!ŒĒrĮ$ęú‚
Ĩ7(ň$
Âí%'$$
5,ęú'{Ŕ%" ´$ŀĆ!ěęú&…‘:zœ ë
í&·¹%}‡:Ú96Ľ%'
,;
rĺ%$5Hc" Ý 47\hLQREÑĒĎ$#%35Žļ7
yŊ”ĉģ"ø%$7(#!2Ŝ đ°%À6Ŀij'" /Ä$ ă-,
¼'!%
õĮ:ÛŗŽ·Ōĕ7 57:ĒŽļÔŗŽ·
"¢;!
,&ĒŽļÔŗŽ·'Ðí&ùēÔŗŽ·Ř\hLQREř%}
96ìà" êÏ7 ,
aiwŊ%}Ķ76ĒŽļÔįĭâai@LSj'u%Tm\m$#ŒĒĮŀ
Ć:˜à" žØ7,òĎĔí&ôį4$6Y>AbLģì&]oL!
6aiwŊ'öÈ´ŋ%šĜ76"/8:˜à" ĹŅ7 ,,
5˜à'öÈ´¬4šĜ7„ħ7Ĩ 6"
,
ĒŽļÔŗŽ·$4Hcğ%Ý 6!iI>Ej»x$$4
ĒŽļÔŗ
Ž·'çĦĖ%'yŊ”ĉģ"ø%Žļ7"/8$#&òĎ% š7
*)ĒŽļÔŗŽ·%$64!
Đ«!'þéŕ¥BR\“ĸ[=jd”ġ`UjS=oYRF\hmO
oHcķ$!/ČąýŠ0Ő·kmK!&’Č%/Ĭ6ĕü¾¥nŕ£¾¥
'aiwŊĔí&Ĺ£ÞÆŐľ&Ğ%/‚ē76$#
ĒŽļÔŗŽ·'ãÇĒ
Ā%晵. ,
,pIJĖ$ĒŽļÔŗŽ·'ċ—&ŏ&čċČÃċ—Ĉ%ÕÎŒ:s
,;ċ—76"÷Ô&ŗ
P>ADJm&ĕĒ˜§"$6¯ģ/Ÿ,7 ,
;
đ°¤œ´EloM<R\7 6|åő
ĒŽļÔŗŽ·%
ı¡
:Û O
O
*
*
OH
OH
O
OH
¨ 1 wŊ"aiwŊ&óŅÌ
n
îNlðÌ~Ě_od^oK35(http://www.tohcello.co.jp/)
gWQBðÌ~Ě_od^oK35(http://www.unitika.co.jp/)
¨ 2. ĒŽļÔŗŽ·(aiwŊ)&ēу
ŗŽ·Ĵ
XMj
¨ 3 ĤĢ(Ģ:Ņ6)&áû
ś5
Ģ&5á
1. ½Ą!©&ŗŽ·:Ă%6’ČćĴ
6
ĴĂ%6ć¶%ć
2. Ă&ŗŽ·:Ã$ĝ&XMj4
3. ĝ4ŗŽ·Ă:ÍË(ĥ
©”6
ćĂ%
¼ Ŗáû
0#%ýÖ
1. ChLĹýÁ¥%Š
¼Ŗ:
q
6\hLQRE&®(ôį):Vh>fo!’Č6
2. ï4$4ZmNRU!ćʼnŽ:;!15"ÍË(
3. ’ČĨ
4. ª&t%Š7
6Ŏ5Īĩ76"$&)6
(Śņō+#!ā $$6(ݺ!Ļ¿
q
)
Ĕê32,)Dê™ďJ3ĕ<#4ê™ďJ5÷õ230ķË
#*/ĹI!?F|6½22/!BìÜ!ļĻ;D
GF5@t±2ê,.'ê™ďJ6=2J5‡ÃI¹F)?30.
@°2~{I!.<#
/6ê™ďJ@,0ġģ3Î"DGFC2ºľIľ!.@D
<#wħ3@Ĕê32,.!<ê™ďJ5xě32,)015C
2ïüĕ2HGF/!BňĔê32,.!<,)ĪŽEı)0
ê™ďJ6@05ê0 "Æ3|¾5áÙ/ŒÄ!<#5áÙ36˜¸5Ăĉ/«HG)aNbN
ðG.<#ê5ŒÄ36sđÿ3TqhW]^oWqŁoWqł0£7GFáلHG<#
TqhW]^oWq06ĿŽ¶0òéfLlrŁQlX5C2@5łñ
EŸ,)@5IÓ!<#
ĿŽ¶6‰5ĜÝ3@FC3F€Ž¶Ĭ5˜¸ėĊŁkairłČEĤ!ċŸ!./)¿°
Ž¶/#
ĿŽ¶6€Ž¶3í;Ž¶5ħ–Ì6ē!€v!<#G6d^3….@ "0/#80
E/6ĐûШ3–¥G<#Ņńń|ÑI-2022ËĥE3–0/<%J
áÙIåÐ#FŽ¶5–€v#F0GáÙ5ă3œÇG<##2H+¯5˜Ÿô
6ĿŽ¶˜ŁīŸł#F03C,.ă2E<#TqhW]^oWq/65øĞIuÑ3ú!.
kairI¡>ãDöÏ/Āÿ5Æ3ÐÆ!)5+īŸ!.ê0 "C2ă3!<#
Ńºij3ºľIĕ2,.=<!B
»¤DoWqIĩĬ0F
Ó/-<J/ăIĄ?F
²2ÆI-F
4.
Šó¼¤3Z]^
ŇńĆįŠIó¼#F
7.
Æ0ăIĄ?F
UqgnIE#
<§<E<!)ňŠI.F‘6oWq6ãD,)0Ë<#G36kairhm
irfLlrīŸĮ´’ñ
,.<#kairž­’ŁĢ˜’ł5ȔIâ)#)?Đû3
ÆI®F0/<#G3ŠI.F0īŸĮ´’ŽĘ!lWPnŁĵ¶łIýù!<#
GkairIÖÕ!hmirÆÐG<#5éåIlWPnīŸ0£9ĿŽ¶I-Fß
@sđÿ2œÊ580-/#¦ʼnI›Ď3!.v
CH3
H2C
C
C
O
OCH3
MMA
¦ A. MMA 5åĦ0ŠīŸ5çŦ
<)5kair36j\nj[Smor^
0£7GF˜Ÿô„HG.<#ĿŽ¶32
F0ĸ3hmhmj\nj[Smor^
02E<#hmNo[qAhmO\oq21
hm6#;.ĿŽ¶/F0IÍ¢!<#
6ê5Ě?ô3*„HG.F5/62b
r_Tq[S^oqYîÛĽ5îæŠfKMcr21ą)+5ġ5¥E/Á„HG.FĿŽ¶
áÙ/#ƒĝ/#ê™ďJ5÷õ5365 5—/#
@80-5ºľ6êªI0FáÙ/#G3@ĿŽ¶áلHG.<#<$6ºľI!.
=<!B
1.
ŀĒ:)5»¤Ķ:)5»¤D'G(G ĬUqgnI0F
2.
Ē©s32F</Cñ&F
3.
²2)+3ÐÆ!.×č#F
+D@§<E<!)ň5áÙ6êªI0FÞ3„HGF5/šĞá0£7G.<#'G(G5
»¤5y36½!åĦ5ĨVmTrqŁhmWj\nVpRUqł‹,.<#+D36kai
r6‹,.<%JMMA 6 PMMA 32F0ă2F53VmTrq6ĿŽ¶/@ăE<%J
#2H+ĿŽ¶6'5åĦ3C,.Ē2ÌğI@+<#'G/615C3!.§<,)5/!
B¦ B I›Ď3!.v+B,0AA!ě!32E<#ņĈĺ5VmTrq5+ŅĈ
ĺ6d_pVmn¬ŁSi-HłIÒ-@5@sÚ36e`n¬ŁSi-CH=CH2 łĩÂ3¡<G.<
#GDIþĭęµ·¨v/ñ&F03CE•œÊĠE-Si-CH2-CH2-Si-5ċŸŽ¶į/ĖØ
CH3
Si
O
m
CH3
CH3
Si
Si
CH3
H
CH3
HC
Si
CH3
O
x
Si
H
O
n
CH3
O
m
Si
O
CH3
CH2
CH2
CH3
CH2
O
Si
Pt
y
CH3
O
x
Si
O
n
Pt
y
H
¦ B. VmTrq5ă˜éå
ÆÐGVmTrq5Ž¶èÔG)öÏ32E<#ħ–Ì5ĿVmTrqŽ¶@èÔĠ
F03CEŽ¶Đû3–22Eċâă2E<#VmTrq6èÔÉ@FćÂ5ãĢ
ÌI†+“ĴÌ3@ˆG.F0DšĞá0!.àú2H/#
}¥5ºľIĥ".ê™ďJ3ĕ5½!ä!=32G7À/#Ĕê32,.Dê™ďJ
3ĥ5/62zİ5ëIJDāĝ3ĕ,.=.6³‚/!Bň
Fly UP