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立体空間刺激音提示装置・無指向性 32 面体(サッカーボール型

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立体空間刺激音提示装置・無指向性 32 面体(サッカーボール型
立体空間刺激音提示装置・無指向性 32 面体(サッカーボール型)スピーカの
製作
○
菅原宗朋、末永保、庄子康一、米澤隆二、渡邉博志
東北大学電気通信研究所
1
技術部
立体空間刺激音提示装置の製作
3 次元音場を再生するための音源装置である立体空間刺激音提示装置を、4π空間での音像定位実験や頭部
伝達関数の測定、3 次元音場の再生を目的に製作した。直径 3.4 メートルの水平の円弧(緯度 0°)、子午線
(経度 0°)にスピーカを 72 個取り付け、その中心に頭が固定できるように被験者が座り、球形の枠だけが
水平円弧方向に正逆回転可能なことなどが仕様である。
材料の選択・設計の検討、スピーカの取り付け方法の工夫、総重量が約 500kg もある装置の台座への固定
方法の工夫、また回転方法をコンピューター制御にするなどの工夫を行うことにより、所定の仕様を満足す
る装置の製作に成功した。
1.1
背景
立体音場システムに代表される音場定位の制御において、頭部伝達関数の模擬は重要な技術である。頭部
伝達関数には方向依存性と個人性があるので、そのようなシステムでは、聴取者ごとに全方向の頭部伝達関
数を取得するのが理想的である。そこで、このような頭部伝達関数の測定や、4π空間での音像定位実験、さ
らには 3 次元音場の再生を目的として、立体空間刺激音提示装置の製作に取り組んだ。開発は本研究所の鈴
木研究室(先端音情報システム研究分野)と共同でおこなった。
1.2
製作装置の特徴
3 次元音場を再生するための音源装置である立体空間刺激音提示装置を、4π空間での音像定位実験や頭部
伝達関数の測定、3 次元音場の再生を目的に製作した。直径 3.4 メートルの水平円弧(緯度 0°)、子午線(経
度 0°)にスピーカを 72 個取り付け、その中心に頭が固定できる
ように被験者が座り、球形の枠だけが水平円弧方向に正逆回転可
能なことが仕様であった。
直径 3.4 メートル円形枠は水平の円弧(緯度 0°)
、子午線(経
度 0°)、補強用(子午線から 90°,180°)の 3 個からできている。
先ず製作にあたり、材料の選択・設計検討の結果、アルミチャン
ネル(t5×100×500×4m)を使用することにした。アルミチャン
ネル、巾 100mm の面が内側になるよう R1.7 メートルになるよう
曲げ加工し、ゲージに合わせて一致した部分を除いて切り落とし
た。また、円周は 4 等分からなり 4 本(1本=2.47m)を組み合わ
せてひとつの輪になるようにした。スピーカボックスはアルミパ
イプ(φ130×t5×200)製で、先端にスピーカ(フォステックス社
製 FE83)を組み込み、底板にはボルトを固定し水平の円弧(緯度
図1
立体空間刺激音提示装置
0°)
、子午線(経度 0°)上に 10 度間隔にスピーカを取り付けた。また、スピーカの取り付け方法としては、
底板との間に振動を防ぐための防振ゴム(φ130×t3)を入れ立体空間の芯に向かうようにした。
総重量が約 500kg もあるために、台座には改良したサーキュラテーブル、回転用シャフトにベアリングを
組み込んだ。また、自重による歪、回転時の芯ぶれ・ねじれ等を防ぐためにスラストベアリングを組み込ん
だ回転装置を北極軸に取り付け、建物天井から吊り下げた状態にしてサーキュラテーブル(南極軸)に全重
量がかかるのを防いだ。回転方法としては、サーキュラテーブル部にステッピングモーター、角度計測のた
めのエンコーダーを取り付け、始動・停止・正逆回転・任意角度等はコンピューター制御とした。
1.3
成果
3 次元音場を再生するための音源装置である立体空間刺激音提示装置を用いることにより、頭部伝達関数
の測定や、4π空間での音像定位実験、さらには 3 次元音場の再生実験等が行われ、数々の成果をあげること
ができた。
2
無指向性 32 面体(サッカーボール型)スピーカの製作
市販の直径がφ10 とφ14 の小型スピーカを C60 フラーレン形 32 面体(サッカーボール)の各面に取り付け
る必要があったが、スピーカ取り付け穴を利用する冶具を考案し、精度良く 32 面体の各面に小型スピーカを
取り付けることに成功した。各面の接着方法にも工夫を凝らした。正五角形と正六角形を精密に 32 面体にし
なければならないので、二分割方法を考案した。先ず、内面に接する 16 面体冶具を精密に製作した。この冶
具の製作には、硬い材料で加工しやすいアルミニウム A5052 のφ80 の丸棒(長さ 100mm)を使用し、サーキ
ュラテーブル 3 つ爪チャックにセットし、汎用フライス盤を用いた。各面の接着方法にも工夫を凝らして、
16 面体スピーカを 2 個張り合わせることによって正確な無指向性 32 面体スピーカを製作することに成功し
た。
2.1
背景
本研究所の鈴木研究室(先端音情報システム研究分野)では、室内の音場測定に、一辺 15cm の 5 角形状
の 12 面体スピーカを用いてきたが、これは広い空間の測定に、適しているものの、モデル実験や頭部伝達関
数の測定には大きすぎるという欠点があった。一方、最近はスピーカ製作技術の進歩により 10mm のものも
手にいれることができるようになってきている。そこで、より小さい無指向性音源として、より球に近い多
面体である C60 フラーレン形 32 面体(切隅二十面体)の音源の開発を行った。
2.2
製作装置の特徴と工作
市販のスピーカの直径はφ10 とφ14 であり、これを C60 フラーレン形 32 面体(サッカーボール)の各面に
取り付ける必要があった。取付け面は、正 5 角形 14 枚、正 6 角形 20 枚で、一辺の長さが 14mm である。計
算によって、汎用旋盤にて正五角形は 2mm 厚の板をφ20 に正六角形はφ28 に仕上げた。このとき一枚ずつ仕
上げたのでは時間がかかるため、スピーカ取付け穴を利用する冶具を考案し、汎用フライス盤を用いてサー
キュラテーブル三つ爪チャックにセットし顕微鏡で見ながら、72 度×5 回転で 14mm に短時間で加工するこ
とに成功した。
次に各面の接着方法であるが、正五角形と正六角形を精密に 32 面体にしなければならないので、二分割方
法を考えた。内面に接する 16 面体冶具を精密に製作する事である。方法としては硬い材料で加工しやすいア
ルミニウム A5052 のφ80 の丸棒 100mm を使用、サーキュラテーブル三つ爪チャックにセットし汎用フライス
盤の主軸に対して加工物 37.4 度にセットし、72 度×5 回転の加工で、正五角形を製作、次に加工物を 90 度
にして一辺が 14mm になるように顕微鏡を見ながら切削、この加工状態で正五角形と正六角形の面と二辺の
長さができた。次に正六角形の残りの辺は加工物を 64.4 度に傾け、72 度×5 回転の加工を施した。これも顕
微鏡を見ながら切削した。次も 72.9 度に傾け、72 度×5 回転、前回と同じく加工し、その結果、内面 16 面
体が完成した。
接着方法は、スピーカ取付け穴を利用することを考え、正五角形と正六角形の中心に 5mm のタップを切り、
ビスで正確に固定、接着する方法をとり、冶具とスピーカ取付け板との間にラップフィルムを挟んで、冶具
に接着剤が付くのを防いだ。接着強度も必要であるため、3 種類ほどの接着類を実験した、その結果、エポ
シキ系のセメダインハイクックが最適であった。これを用いると、5 分∼7 分で接着でき、はみ出た部分の接
着剤もナイフによって簡単に削ることができた。外した後の 16 面体二分割にはより強度を保つために内面の
接する辺に 0.2mm 厚のガラスクロスを張り、16 面体スピーカを 2 個張り合わせることによって正確に製作す
ることに成功した。
冶具の製作によって、精度良く、かつ当初予想に比べ 3 割近く早く製作することができた。
2.3
成果
インピーダンス特性と音圧レベル出力特性は所定の性能であることが確認でき、今後、モデル実験や頭部
伝達関数の測定精度が格段に向上すると期待される。
図 2 組立て冶具
図4
無指向性 32 面体
図3
二分割
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