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Excel を使った相関係数の計算・回帰分析

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Excel を使った相関係数の計算・回帰分析
2016.12.02
都市・港湾経済学
Excel を使った相関係数の計算・回帰分析
準備
データは授業のホームページ上に Excel ブックの状態(ファイル名 pop_traffic.xlsx)で
用意してあるので,これをダウンロードして保存しておく。
ダウンロードされたファイルを開いたら,DATA シート中の空欄(POP,TK の列)をそ
れぞれの合計値(POP の場合は,POP1~POP3)で埋めるように,SUM 関数あるいは和
の式を使って処理しておく。
散布図による確認
総人口と輸送トンキロ数との関係を散布図で示してみよう。グラフを作成するには,シ
ート中の連続するデータをあらかじめドラッグしておくのが原則であるが,総人口(E 列)
と輸送トンキロ数(J 列)のように不連続な範囲を指定したい時には,Ctrl キーを使った
ドラッグが有効である。図 1 のように,まず,どちらかの連続範囲を通常の(セル範囲を
指定する)ドラッグ操作で指示しておき,離れた場所にある範囲を指示する際にキーボー
ドの Ctrl キーを押しながらドラッグ操作を行う。
①通常のドラッグ操作で指定
②キーボードの Ctrl キーを押しながら 2
つめの範囲をドラッグ操作で指定
図 1 Ctrl キーを使った不連続な範囲のドラッグ指定の手順
その後のグラフの作成手順の詳細は省略するが,図 2 を参考に仕上げてみよう。
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タイトルを修正
軸ラベルを挿入
グラフツール→デザイン→グラフ要素を
追加→軸ラベル→第1横(縦)軸
凡例は削除
横軸は,軸の目盛範囲の最小値・最
大値を手動で設定して調整
図 2 散布図の仕上げ見本
相関係数の計算
散布図を見ると,因果関係はともかく,人口と輸送量の間には相関関係があるように思
われる。
相関の強さを数値的に示すには,相関係数1を用いることが多い。相関係数はデータ数や
数値の大きさによらず,-1 から+1 の値を示すので,
異なるデータ群の比較にも利用できる。
Excel では,SUM 関数などと同様にワークシート中で利用できる組込み関数として
CORREL 関数が用意されており,これを使用することで,容易に相関係数を求めることが
できる。
特に断らない場合は,Pearson(人名)の積率相関係数を指す。他に Spearman の順位相
関係数と呼ばれるものもある。積率相関係数は,n 個のデータの組,(x1,y1),(x2,y2),…(xn,yn)
1
が与えられた時に,rxy 
1 n
 ( xk  x)( y k  y)
n k 1
1 n
1 n
2
(
x

x
)

 k
 ( y k  y) 2
n k 1
n k 1
で計算される( x や y はそれぞ
れ x やyの算術平均)
。分子は x と y の共分散,分母は x の分散と y の分散の幾何平均の形
になっている。
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ワークシート中の適当なセルで,
=CORREL(E2:E14,J2:J14)
と入力すると,
(E2~E14 の範囲の)総人口と(J2~J14 の範囲の)輸送トンキロ数との相
関係数が求められる。
POP と TK の相関係数
0.9711
散布図への近似曲線の追加による回帰分析
次に,人口と輸送量との関係を,数式モデルとして与えることを考える。散布図で見る
と,人口の増加に伴って輸送量がいわば「直線的に」伸びていることが予見されるが,こ
れを,
輸送量(輸送トンキロ) 傾き 人口 切片
のように,人口によって輸送量が決まるといった現象を(二次元グラフ上の直線という)
数式で示してみることで,人口の推計値によって輸送量も推計できる,という予測のツー
ルとして利用が可能になる。上式で,切片や傾きは決める必要があるが,それには今知ら
れている輸送量と人口のデータからなるべく乖離しないように,合理的に決める必要があ
る。その決定方法には,いくつかの種類があるが,最も単純なものは最小自乗法と呼ばれ,
Excel にもその数値解を求める機能が備わっている。一般に既知のデータから数値モデルの
パラメータ(上の場合は切片や傾き)を決める手法を回帰分析2と呼んでいる。
後述の「分析ツール」を使う手段もあるが,二次元の場合3には,散布図のオプション(近
似曲線の追加)によって,直線式や多項式の当てはめ(つまり回帰分析)の結果をグラフ
上に重ね書きすることができる。
図 3 のように,散布図を描いた後で, グラフツール→デザイン→グラフ要素を追加→
近似曲線からその他の近似曲線オプションを選択する。
2
直線に当てはめる場合は,式の形が一般に線形結合と呼ばれることから,線形回帰分析と
限定して呼ぶこともある。ちなみに式が線形でない場合は,非線形回帰分析と呼ぶ。
3 説明される変数
(被説明変数あるいは従属変数,この場合は輸送量)に対して説明変数(あ
るいは独立変数)が1つの場合を特に単回帰分析と呼ぶ(複数の場合は重回帰分析と呼ぶ)
。
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あらかじめグラフをクリッ
クして選択しておく
グラフ上に数式と R2(決定
係数)を示す
図 3 「近似曲線の追加」を用いた散布図上での簡便な(単)回帰分析の手順
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結果の例を図 4 に示す。オプションによって指示した回帰分析の結果がグラフ上に示さ
れることが分かる。この場合は,先に想定した式に当てはめると,
輸送量(輸送トンキロ) 11.88  人口 9614543
と求められたことを示している4。ただし,この結果が統計学的にどの程度の信頼性を持っ
ているかは示されないので,より精緻な検証を行うには,Excel の「分析ツール」や SPSS
などの統計処理ソフトを用いる必要がある(近似曲線で示す手順はあくまで簡便法という
こと)
。
図 4 散布図上に近似曲線(回帰分析による直線)を追加した例
(輸送トンキロ=11.88×人口-961543 で,決定係数(説明力)は 94.31%)
分析ツールによる回帰分析
前述のように,統計的な信頼性を示す必要がある場合や,説明変数が複数のモデル(重
回帰分析)を扱う場合には,統計処理用のソフトを使う必要がある。Excel でも限定的な機
能ながら,回帰分析を行うソフト5が組み込まれているので,これを使った分析手順を紹介
しておく。
分析ツールは,データリボンから呼び出す。データリボンに見えていない場合には,図 5
4
決定係数は,この式によって,全体のバラツキをどの程度説明できることになるかという
目安を示す割合と考えればよい。
5 アドイン(メインのソフト(この場合は Excel)と連動する,追加的なソフトのこと。ア
ドオン,プラグインも同様)として提供されている「分析ツール」。この機能の一部として
「回帰分析」が使用できる。
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の手順で分析ツールを使用できるように設定し直し,あらためてデータリボンに切り替え
る。分析ツールが使用可能になったら,回帰分析用の設定パネルを呼び出し,図 6 に示す
手順で,必要なデータ範囲をドラッグ操作で示せばよい。
ファイルを選択
アドインを選択
管理:Excel アドインを選択し
て「設定」をクリック
オプションを選択
図 5 「分析ツール」アドインの設定
(データリボンに分析ツールが表示されていない場合の設定手順)
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①の範囲をドラッグで指示
この場所をクリックしてから②の範
囲をドラッグで指示
①②の先頭行が名前である場合にチ
ェック
必要に応じて適宜チェック(今回は
「残差グラフの作成」のみ選択)
②
①
図 6 「回帰分析」の進め方
OK をクリックして処理を進めると,図7のような結果が新しいワークシート上に示され
る。見るべきポイントは 4 点ほどある。
1.補正 R2
データ数や説明変数の数によって補正された決定係数。1を 100%とする割合として
読み替えればよい。図 7 の例では,「説明力は,80.82%」と読むことになる。一般
的には 90%以上となるのが望ましいが,社会科学で扱うような事象では 60%程度で
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も良好とする場合が多い。低すぎる場合は説明変数の増減を検討する必要がある。
なお,グラフの近似曲線で示される決定係数は,補正前の「重決定 R2」に相当して
おり,この値はデータ数を考慮していない(一般にデータ数が少ないと説明力は見
かけ上高くなる)ので,この値については参考程度に扱うべきである。
2.有意 F
この値は確率として読み,想定した数式モデル(直線式)の変数に関わる係数(傾
き)が「すべて 0 である」確率6として示される。図7の例では,3.41687E-087なの
で,
「すべて 0 である」確率はほぼ 0 であるから,「少なくとも1つは 0 ではない」
=「数式は意味を持っている」ことを示している。このように,この値は小さいほ
どよく,一般に 0.05(5%)未満であれば(95%以上の確率で意味がある8ということ
なので)良好とされる。
3.係数
この値が,想定した数式に対応する値(切片や傾き)となる。
4.P-値
この値は確率として読み,想定した数式モデル(直線式)の変数に関わる係数ごと
に,
「その係数が 0 である」確率として示される。有意 F の読み方と同様に,この値
は小さいほどよく,一般に 0.05(5%)未満であれば(95%以上の確率で意味がある
ということなので)良好とされる。5%より大きな値を示すものがあれば,その変数
は数式には無関係ということなので,数式モデルの再考を検討する。
6
7
統計学では,仮説検定と呼ばれる手法の結果を示している。
文字 E を含む数値の形式を指数形式と呼び,この例では 3.41687E-08→3.41687×10-8 →
0.0000000341687 と読みかえる。
8
このことを「
(統計的に)有意」と表現する。
ゆ うい
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説明力
モデル全体の信頼性
係数の信頼性
モデル式の係数
図 7 分析例とその読み方(注目点)
(実際の結果を,読みやすくなるように列幅を調整してある)
演習
余力のある人は,説明変数を年代別の人口(POP1~POP3)に変更して(図 6 における
入力 X 範囲を B2~B14 に変えて)
,重回帰分析を行ってみなさい。決定係数の違いや係数
の信頼性を検討した上で,係数の大きさによって何が表されているか,吟味してみなさい。
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