...

Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅

by user

on
Category: Documents
4

views

Report

Comments

Transcript

Page 1 京都大学 京都大学学術情報リポジトリ 紅
Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
日本の製造業における企業間分業関係に関する研究―日
本の大手テレビメーカーとそのサプライヤーを事例とし
て―
,丹
経済論叢別冊 調査と研究 (1991), 1: 62-80
1991-10
https://doi.org/10.14989/44353
Right
Type
Textversion
Departmental Bulletin Paper
publisher
Kyoto University
経済論叢別冊
調 査 と研 究 (
京都大学) 第 1号 ,1
991
年1
0月
日本 の 製 造 業 に お け る
企業 間分業関係 に関す る研究米
日本 の大 手 テ レビメー カー とそ の サ プ ライヤ ー を事 例 と して
丹
目 次
は じめ に
第 1章
M 社 の テ レビ事業 とその部 品購 買体制
第 1節 M 社 の組 織構 造 とテ レビ事 業 の位
第 2節
年 しだいに 日本の生産 システムの中の企業間関
置
テ レビ生 産 シス テ ム と部 品 生 産 の
位置
な製品のメーカー と,それ らの メーカーに部品
テ レビ事 業 にお け る購 買 の組織 と
活動
M社 の テ レビ事 業 に見 る企 業 間分業 の
構造
第 1節
第 2節
を世界的な規模で呼び起 こしている。 特 に,近
係-
第 3節
第 2章
事実は, 日本の企業 に対す る非常 に大 きな関心
部 品 サ プライヤーの分類方法
テ レビ事 業部 のサ プ ラ イヤー の分
類
第 3節
テ レビ事 業部 に よるサ プ ラ イヤー
-の評価
第 3章 新 製品開発 とサ プライヤーの参画
第 1節 テ レビのモデ ル
第 2節 新製 品の開発過程 とその時 間構造
第 3節 サ プ ライヤーによる開発 - の奉画
むすび
つ ま り, 日本の自動車や電気機械 のよう
を提供す る諸企業 との間の関係-
に対す る関
心が高 まっている
。
この関心の高 ま りの中で, 日本の生産 システ
ムは欧米 に比べて,下記の特徴があるとい う認
識が普及 しつつある。(
1
)
部品な どの外製率が高
い こと,(
2
)
メーカー とサ プライヤー との関係 は
3)
サ プライヤーは
継続的なケースが多い こと,(
部品品質,納期,原価低減 などの面 におけるパ
4)
開発段階の早期か
フォーマ ンスが よい こと,(
ら,サ プライヤーが参画す ること。
このような諸点を掘 り下げ,実証 に もとづい
て 日本の製造業の企業間関係 を深部か ら理解す
参 考文 献
ることは,世界各国か らの 日本 に対す る理解 を
深めるための重要 なカギであ り, また,その企
は じめ に
1 問題意識
1
970年代の後半以来, 日本の 自動車,電気機
業間関係の中の良い ものを海外で実現 してい き,
日本の企業の海外生産の効率化 と他国の企業の
生産の効率化 を もた らすためにも,重要 な課題
となっている。
梶,工作機械 な どの産業が国際競争力を強め,
近年,そ うした角度か ら, 日本の製造業の企
それ らの産業の中の多 くの製品の分野で, 日本
業間分業関係 に関す る研究が行 なわれ始めてい
と欧米 との間の競争力の逆転が起 こった。 この
る
*) この論文は筆者が浅沼寓里教授の指導の下 に作成 し,
1
990年 1月に京都大学大学院経済学研究科 に提 出 した修
士論文に もとづ くものであ る。聞 き取 り調査 に しんぼ う
事例研究の結果 を公表す る
強 く協力 して下 さったM社 (
さいの通例 に したがい,匿名に した)の方 々に深 く感謝
する
。
。
中で も,最 近 の新 しい研 究 と して, Asa-
numa (
1
9
89) と浅沼 (
1
9
89a,b) が あ る。 こ
れ らの研究では,部品およびそれ を提供す るサ
プライヤーの諸類型,ならびに中核企業である
メーカー とサプライヤーの間の関係の諸類型に
ついて,新 しい分類 スペ ク トルが提 出され,そ
6
3
日本の製造業 における企業間分業関係 に関す る研究
の上で, 中核企業 とサ プ ライヤーの相互作用 の
の分業関係 の研 究 を進めるに当た って,サ プラ
中でサ プライヤーに対 して要求 され る能力 にお
イヤーが どの よ うに製品の開発 に参画 してい る
い て, 「関 係 に特 有 の 技 能 (
r
e
l
a
t
i
ons
pe
c
i
f
i
c
か を解 明す ることが もっとも重要 な課題 と して
s
ki
l
l
)
」とい う理 論概 念 が導 入 され た。 また,
設 定 され るべ きで あ る1
)
。 しか し, この課題 に
日本の海外進 出企業 と現 地企業 との企業 間分業
関す る研究 は,少 な くとも電機産業 につ いてほ
関 係 に つ い て, 八 幡 ・水 野 両 氏 の 実 証 研 究
とん ど見 当 らない。そ こで本研究 は, これ を も
(
1
9
88) があ る。
う一つ の主題 とす る
。
従来の こうした研 究 は主 として 自動車産業 を
対象 として行 なわれ てい るが, 日本 の製造業 に
2 研 究方法
お ける中核企業 とサ プラ イヤーの間の分業関係
9
89年 5月か ら同年 1
0月 まで の
この論文 は,1
に関す る研 究 を探化 させ るため には, さ らに主
間 に、 日本の代表 的な大手 テ レビメー カーで あ
要製品別 に具体 的 な事実 認識 を進 め,諸産業 あ
るM社 のテ レビ事業部,本社部 門,部 品サ プラ
るいは諸主要製品の間の共通点 と相違点 をつか
イヤーな どを十数 回訪問 して実施 した聞 き取 り
む必要があ る。 そ こで, この研 究 は, 日本 のあ
調査 を基礎 に置いて書かれてい る。1
0月 に聞 き
る大手電機 メー カーのテ レビ事業 を研 究対象 と
取 り調査 を一応終 えてか らも,執筆 の過程でそ
して,実態調査 を行 い,今後進 め られ るべ き産
れ まで の調査が不十分であ る と判 明 した点 につ
業 間 と主要製 品間の比較研 究 の基礎 を築 くこと
いては,脱稿す るまでの間に繰 り返 し補充調査
を 目的 とす る。
を行 な った。
電機 産業 における企業 間の分業構造 について,
この聞 き取 り調査 は,主 に三つ の部分か らな
従来 の研究や公 的 な統計 資料で は, 中核企業 に
る。 第一 の部分で は,本社 の資材部 を訪れ て,
部 品を提供す るサ プライヤーの類型 区分 には,
M社 の全体像 お よびテ レビ生産 の位置 をつかみ,
「
一般購入先」 と 「
外注 先」 とい う 「
二分法」
また,全社 の購買体制 について調査 した。 この
anuma (
1
9
89) と浅 沼
が用 い られ て きた。 As
結果 は本論文の第 1章 にま とめ られてい る。 第
(
1
9
89a
) は, この 「二分法」 が 中核企 業 とサ
二 の部分 はテ レビ事業部の購 買部 を中心 的 な訪
プライヤーの分業 関係 を分析す るには,不十分
問先 とし, テ レビ事業部 に対 して部 品 また は資
な もので あ る ことを指摘 して, 「
貸与 図部 品」
材 を供給す るサ プライヤーの全体 と しての構成
と 「
承認 図部 品」 の概念 を導入 し, さ らにその
を調べ,次 に同事業部 とサ プ ライヤー との関係
両方 をい っそ う詳細 に分類 して新 しい分類方式
を調べた。 これ によって, テ レビ生産 にお ける
を提示 した。 しか し, この方式 は,主 と して 自
中核企業の部品のサ プライヤーの類型 区分 に も,
動車産業 を基礎 に置 いて見 出された ものであ る。
As
anuma (
1
989) の分 類 方 式 が 適 用 で き る こ
浅沼 は, この方式が電機 産業 に も適用で きるこ
とが確認で き, また,M社 のテ レビ製造 の場合
とをい くつか の企業 と製 品の例 に もとづ いて示
におけるサ プライヤーの各類型 の構成比率 が明
唆 してい るが,電機産業 に関す る主要製品 ご と
らか にな った。 この第二部分 の結果 は第 2章 に
に系統 的な研 究 を行 ない, この点 をい っそ うに
ま とめ られてい る。 第三の部分で は, テ レビの
確か め,掘 り下 げてい くのは, まだ残 されてい
重要 な部 品の一つであ るキ ャビネ ッ トの生産 に
る課題であ る。 この課題 を追求す ることが,本
関連す るサ プライヤー-
研 究 の一つの主題 であ る。
ライヤー とキ ャビネ ッ ト用金型 の メー カー-
キ ャビネ ッ トのサ プ
また, 日本 の製造業 につ いて観察 された外製
1) た とえば, キ ム ・藤 本 (
1
987) 「自動 車 の製 品 開発 に
率が高い とい う一つ の特徴 と新製 品開発 の リー
お け る オー バー ・ラ ップ型 の 問題 解 決」 『ビ ジ ネ ス レ
ドタイムが欧米 よ り顕著 に短 い とい う特徴 とを
結 びつ けて考 える と, 中核 企業 とサ プライヤー
,
.34N0.4 に よ る と, ア メ リ カの 自動 車
ビュー』 Vol
メー カーの開発 リー ドタイムは, 日本 のそれ の約 1.
5倍
である。
6
4
調査 と研究
第 1号
(
1
9
91
.1
0)
に対 して調査 を行 い,新 製 品の開発段 階 におい
てい る。M社 の規模 は,連結 決算 (
M社 本社 と
て, それ らのサ プ ライヤーが どの よ うな タイ ミ
連結子会社 5
5
社 とを合 わせ て見 た もの) で見 る
ングで どの よ うに参画す るか, またそれ に よ っ
9
87年度 の売上高 は五 兆 円近 く,従 業員数
と,1
て テ レビの メー カー とキ ャビネ ッ トのサ プ ライ
は十数万 人 とな る2)。
ヤー とは, それぞ れ どの よ うに益 す るか を調 べ
プの全体像 を観 察す る際 に, もう一つ付 け加 え
M社 が 中心 とな る グルー
た。 この第三部分 の結 果 をま とめた ものが この
な けれ ばな らないの は, 同社 の事 業 の国際 的 な
論文 の第 3章 で あ る。
展 開 とい うことで あ る。M社 は世界 の電機 業界
I M社 の テ レビ事業 と
その部 品購 買体 制
この章 の 目的 は,本研 究 の主題 に取 り組 む準
備 と して,調査対 象で あ るM社 の テ レビ生 産体
のなかで も,売上高が トップ クラスにあ る世界
的企業で あ る。 また,製 品構 成か ら見 る と, M
社 を中心 とす る同 グルー プの事 業 は映像機 器,
音響機器,家庭 電化機器 ,住 宅設備機 器 ,情報
機器 ,半導体 な ど多 くの分野 に及 んで い る。
制 と, テ レビ部 品 を購 入す る組織 及 びその活動
さて, M 社 の内部組 織 に戻 ろ う。 図 1-1に
を明 らか にす る こ とで あ る。 第 1節 で は, M 社
示す よ うにM社 の内部組織 は大別す る と,本社
の全体像 とテ レビ生産 の同社 の事業 にお け る位
部 門,製造部 門,海外事業部 門,お よび営業部
置 を説 明す る。 つ いで,第 2節 は, M社 テ レビ
門の四つ の部分 に分かれ る。
を例 と して, テ レビ生 産 システ ム とそ の中で の
図 1-1の製造 部 門の部 分 は, 四つ の事 業 本
部 品生 産 の位 置 を述べ る。 第 3節 で は, M社 テ
部 と二十二 の直轄事 業部 (
本社社 長直轄)か ら
レビ事業部 の部 品 の購 買部 の組織 と活動 , お よ
な って い る こ とを示 して い る
。
テ レ ビ, オー
びそれ と本社 の購 買部 門 との関係 につ いて述べ
デ ィオ ・ビデ オ機器,家庭電化機 器,情 報機器
る
の四つ の事 業分野 は,特 に売 上 げが大 きいため,
。
事業本部 を設 け,事業本部 が 関連 の事 業部 を統
1 M社 の組 織構 造 とテ レビ事 業 の位 置
∋経営 ボー ド
轄 してい る。 各本部 はそれ ぞれ,(
本研 究で選 ばれ た調査対 象 の テ レビメー カー
の設置,② 手形 の発行 ,③社 内納税,④ 傘下事
は, 日本 のあ る大 手電機 メー カー (
以下で はM
業 部 の設 置, 関係 会 社 に対 す る指 導 監 督 を行
社 と呼ぶ こ とにす る) の組織 内の一つ の事業部
分
な って お り, M社 の 内部 にあ る とはい え, 「
門で あ る。 そ こで ,最初 に, M 社 の組織 が全体
社 」に近 い性格 を与 え られ てい る。M社 が事業
として どの よ うな構 造 を持 ち, また テ レビ事業
本部 を設立す る ことの意義 は,次 の六点 にあ る
が 同社 の 中で どの よ うな位 置 を占めてい るか を
とされ てい る。 す なわ ち,① 意思 決定 の迅速化 ,
把握 して お く必要 が あ る。
② 新規事業 の育成 ,③ 海外事 業 の推進 ,④ 人材
M社 は, 日本 の電機 メー カーの中で も最大級
の企業 で あ り, そ の資 本金 は約 一千 五百億 円,
従業員 数 は約 四万 人 ,1
9
87年度 の売上高 は三兆
の有効活用 と育成 ,⑤ 管理 間接 業務 の効率化 ,
⑥ 組織風土 の活性化で あ る3)。
図 1-1の製造 部 門 の始 め に挙 が って い るテ
余 円 にのぼ る。 しか し, 同社 の規模 を概 観 しよ
レビ本部 は, テ レビ事業部 お よび映像機器事業
うとす る とき,次 の事 実 に も留 意 してお く必要
部 を中心 とす る製造本部 で あ り, その規模 は,
があ る。 それ は, 同社 が数多 くの関係 会社 を持
従 業 員 が約 五 千 人, 売 上 高 が 約 三 千 二 百 億 円
ち, それ らと ともに全体 と して一つ の グルー プ
(
8
8年度) とな る。 同本部 は映像 商 品 の開発力
を形成 し,そ の グルー プの中心 的企業 と して存
2) M 社の昭和63年度の 「
有価証券報告書総覧」 を参照。
9
88年 に子 会社
在 してい る こ とで あ る。 同社 は 1
3) 下谷政弘 「
事業部制 と分社制」 『
現代 日本 の企業 グ
5
0
0
社 (うち連結子 会社 5
5
社 ,非連結 子会社 394
社) を持 ち, また この他 に関連 会社 6
5
社 を持 っ
,
ルー プ-
「親 ・子 関係 型 」結合の分析』坂 本和 一 ・下
谷政弘 (
編),東洋経済新報社 ,1
9
87年 ,7
7-1
1
1ペ ー ジ
を参照。
日本 の製造業 にお ける企業 間分業 関係 に関す る研 究
図 ト 1 M社の組織構造図
図 トき作成
2
(
症 )社 内 資料 に基づ
(
注 〕社 内資料 お よ
テ レビ本部 の組織構造略図
6
6
第 1号
調査 と研究
(
1
991.1
0)
と販売力の強化 を狙 い として設立 された もので
て,それ らの部 品を提供す るサ プライヤー と最
あ る。 図 1-2は テ レビ本部 の組織 略図 を示す
終の組立 を行 な うテ レビメー カー との間の分業
ものであ る。 この組織 の中で本研究 に直接 関係
構造 を解明す ることであ る。 そ こで, この主題
す るのは, テ レビ事業部で あ る4)。 テ レビ事業
を追求す るためには, まず テ レビの生産 システ
部 は,その下 に二つのテ レビ工場 を持 ち,M社
ムの概要 を知 り,その システムの中で,種 々の
のテ レビ生産の中心 となってい る。 また,図 1
部品の生産が どのよ うな位置 を占めるか を知 っ
-2に示 され てい る関係 会社 は, M社 か らの委
てお くことが必要であ る。
託 を受 けて,一部 の機種 についてテ レビの開発
図 1-3は, テ レビ事業部 のテ レビの製造工
と生産 を行 ってい る。 但 し,その販売 はテ レビ
程 を,大 まか な概念図 として示 した ものである。
事業部 を通 して行 われ, テ レビ事業部 の売上 の
この図の中心部 に描かれ てい る組立作業 は,同
中に含 まれ る。M社 は社 内の工場で生産 され る
事業部 によって行 なわれ る。 この組み立て作業
もの と関係会社で生産 され るもの とを合わせ る
に対 して,部品は四つの流れ に沿 って入 って く
5
0万台 の テ レビを製造 し,販売 し
と,年 間約 3
る。 一つ 目は, プ リン ト基板であ る。 二つ 目は,
てい る5)。その うち, 7割が輸 出 され,三割が
抵抗, スイ ッチな どの機構部品の流れであ る。
国内で販売 され る
。
ちなみ に,同社 のテ レビの
0%余 りを占めてい る。
販売 は国内 シェアの2
三つ 目はブラウ ン管,半導体 な どの電子部品の
流れであ る。 そ して,四つ 目は, キ ャビネ ット
な どの構造部 品の流れであ る。
2 テ レビ生産 システム と部 品生産の位置
上述 の部品の四つ の流れの うち, プ リン ト基
テ レビは,多 数 の部 品 を組 み立 て る こ とに
板 と抵抗, スイ ッチな どの機構部品はグループ
よって作 り上 げ られ る最終生産物 の一つであ る。
外 の独立 の電気部品 メー カーおよびグループ内
本研究の主題 は, M社 のテ レビ事業 を事例 とし
の電気部品 メー カーの両方か ら購 入され, ブラ
図1
-3
テレビの生産工程
E
J
ロ
ロ
(
港)『
中小企業 白書』昭和 5
9
年版 3
9
5
貫の図を参考 に した上で,
ヒア リングに基づ き作成 した
ウン管,半導体 な どの電子部品は主 にグループ
4) 映像機器事業部 は, ア ンテナ,電子基盤,液晶デ ィス
HF衛 星放 送受信 システ
プ レイ,液 晶 カ ラー テ レビ,S
ム,文字多重放送受 信 システムな どを生産 してい る。
5
) M社 のテ レビ生産 の関係会社 は,九州M社 とMK社 と
2社 あ る。九 州M社 は, 11イ ンチ以下の小型 カラーテ レ
4インチの カ
ビの生産 ・開発 を,MK社 は,国内向 きの1
ラーテ レビの生産 ・開発 を委託 されてい る。
内の他企業 によって供給 され, キ ャビネ ッ トな
どの構造部品はグルー プ外 の,いわゆ る 「
下請
け企業」か ら供給 されてい る。図の真 申に書か
れている自動挿 入, キ ャビネ ッ ト組付 と検査が
M社 のテ レビ事業部 に属す る工場 の内部で行わ
67
日本の製造業 における企業間分業関係 に関す る研究
れ る工程であ る。 その下方 に示 されてい る手挿
ことであ る。 現在設定 されているその基本的な
入は, これ もグルー プ外 の,いわゆ る 「
下請 け
購買方針 は,①仕入れ先 との共存共栄,② 品質
企業」か ら供給 され る加工 サー ビスであ る。 厳
の確保,③仕入れ先価格の引 き下げ,④納期確
密 に言 えば, テ レビの部 品はモデルによって,
保 と在庫圧縮であ る。
調達先が変わ ることがあ る。 た とえば,大画面
しか し,資材部 は,各事業部の購買部の よ う
テ レビの場合, ブ ラウン管が グループ外 にあ る
に,部品の購 買 ・調達 などの活動 を行 うわ けで
M社 とは別の大手電機 メーカーか ら調達 され る。
はない。その役割 は,戟略方針の設定,情報 の
ここで は単 に本論 に入 るための準備 として,
収集 と伝達,外注企業の管理や原価低減 につい
常識的な部品の分類方法 とサ プライヤーの分類
ての事業部-の助言 と購買を担当す る人材 の育
方法 をそのまま使 って,部 品 とその調達源 を概
成 な どであ る。 具体的に,次 のような ことが挙
観 した。後の章で は,部 品およびその調達源の
げ られ る。 ①原材料部会,人材育成部会,部品
構成比率,及 び部 品のサ プライヤー とテ レビ事
部会 な どいろいろな部会を開 き,定期 的に本社
業部の間の分業関係 を, これ とは別の分類方式
で各事業部か ら購買関係の人を集めて きて,購
で詳 しく分析す る。
買活動 の報告,情報交換等 を行 う。 ② 本社資材
部 の原価助成 グループか ら各事業部 に検査員 を
3 テ レビ事業 におけ る購 買の組織 と活動
派遣 し,部 品の購入価格 について助言 し, また
すでに述べた よ うにM社 は商品別の事業部制
は事業部か ら情報 を収集す る。 ③数 カ月 に一回,
組織 をとってい る。 各事業部長 はそれぞれの事
各事業部 にア ンケー トを行 って回答 を集め,坐
業部の研究開発,生産 と経営管理 な どすべてに
産 の金額, コス トダウン等 の項 目について検査
責任 を持つ。各事業部 には購買部が置かれてお
し,必要 な とき,助言あるいは指導 を行 な う。
り,その事業部 の部 品のサ プライヤーを対象 と
M社 の慣行で は,本社 の資材部の購買方針が事
す る購買活動 を担 当 してい る。
テ レビ事業部 の場合,購 買部 は,開発段 階か
業部 とくい違 った場合 には,事実上,事業部 の
方針の方が優先 され ることになる。 た とえば,
ら量産段階まで,部 品のサ プライヤーの調査,
テ レ ビ事 業 部 の 場 合, ブ ラ ウ ン管, フ ラ イ
生産用の資材 の開発 と選定 , コス トの合理化,
バー ・トランスのよ うな部品は同事業部 しか使
部品の価格 の折衝 と決定,部 品の調達 な ど,チ
わ ないので, これについて,た とえ本社か ら情
レビ生産に関す るあ らゆ る購買活動 を担 当 して
報や ア ドバ イスが提供 されて も受 け入れ に くい
い る。さらに この購買部 の組織 は,五つ のセ ク
のであ る。
シ ョンに分 け られてい る。 第-のセ クシ ョンは,
開発段階におけるコス トの合理化,材料 の選定,
購買の比較研究 を,第二のセ クシ ョンは,テ レ
Ⅱ M社のテ レビ事業 に見 る
企業間分業の構造
ビ生産のために必要 な部 品の注文,契約 と調達
この章 の主題 は,M社 テ レビ事業を事例 とし
業務 を,第三 のセ クシ ョンは,購買部の社員 の
て, テ レビ生産 における企業間分業の構造 を明
管理 を,第四のセ クシ ョンは,海外のテ レビ事
か にす ることであ る。 このため, まず第 1節で
業の購買のサポー トを,第五 のセ クシ ョンは,
製造業 における企業間の分業関係-
つ ま り,
開発 ・技術部 門で の試作部 品の購買を,それぞ
中核企業 とサ プライヤーとの間の関係-
れ担 当 してい る。
a
n
u
ma (
1
9
8
9
) と浅 沼
析 す る た め に, As
を分
M社の本社 に も,資材部 が置かれてい る。 こ
(
1
9
8
9a
,b)が導入 した部品 とサ プライヤーの
こで,本社の資材部 と事業 部の購買部 の関係 を
類型区分の方法 を述べてお く。 第 2節で は, こ
見ておかなければな らない。本社 の資材部 の役
の分類方法 を援用 しなが ら,M社 テ レビ事業部
割 は,M社全体 の基本的な購買方針 を設定す る
と取引関係 を持つサ プライヤーを分類 し,各類
6
8
調査 と研究
第 1号
(
1991.1
0)
型の占め る比率 を明 らか にす る。 最後 に第 3節
せ,部 品お よびサ プ ライヤー につ いて, よ り解
で は, テ レビ事業 部がサ プライヤーに対 して行
像 力 の大 きい分類 スキー ムを導 き出 した。表 2
な ってい る評価 について述べ る。
-1は, この分類 スキー ムを示す もので あ る。
この分類方式 の基本的 な基準 はサ プライヤー
1 部 品サ プライヤーの分類方法
と中核企業 との間の技術 的分担 関係-
中核企業 の部 品 のサ プライヤーの類型 区分 に
ち,買い手企業であ る中核企業が部 品の生産工
つ い て は,最 近 に い た るまで伝 統 的 な 「
二分
程 につ いて どれだ けの指示 を与 え るか,あ るい
法」が広 く取 られ て きた。それ は, 中核企業 の
は どれだ けの知識 を持つか-
「
購 入品」 とも呼 ば
仕入れ る部品 を 「市販 品」(
イヤー側か らみれば, これ は中核企業 に どの よ
一
れ る) と 「
外 注品 」とに,サ プライヤーを 「
うな機 能 を提供 す るか とい うことにな る。 表 2
般仕入れ先 」 (
「
購 入先」 とも呼ばれ る) と 「
外
-1の分 類 ス キー ムには, 「
貸 与 図 の部 品」 と
市
注先」 とに分 類す る方法で あ る。 ここで ,「
「
承 認 図 の部 品」 の概 念 が 導 入 され て い る。
販品」 とは,買い手で あ る特定 の中核企業が示
す なわ
で あ る。サ プ ラ
「
貸与 図の部 品」 とは, 中核企業が作成 し,サ
す特定 のニー ズに もとづ くことな く,仕様 ・規
プ ラ イヤー に貸 与 す る図 面-
格が定 ま り,一般 に市販 されてい る品物 を指す。
図」 と呼 ばれ る-
これ が 「
貸与
に基づいて製作 され る部 品
す なわ ち,買 い手 側 の企業が,売 り手 の用意 し
で あ り, 「
承 認 図 の部 品」 とは, 中核 企 業 が提
てい るカ タログの 中か ら選ぶ ことによって,購
示 した仕様 に応 じてサ プライヤーが作成 し中核
入対 象 を指 定 で き る種 類 の 品物 で あ り, この
企業 の承認 を受 けた図面-
「
市販 品」 の調達 源 は 「
一般仕入れ先」であ る。
と呼 ばれ る-
これ は 「
承認 図」
によって製作 され る部 品で あ る。
それ に対 して, 「
外 注 品」 とは, 中核 企業 が指
したが って, 「
貸与 図の部 品」 の場 合 には, そ
定す る特別 の仕様 に もとづ いて製作 され,納入
のサ プライヤーの提供す る機能 は製造 サー ビス
され る品物, あ るい は実行 され る加工サ ー ビス
で あ るの に対 して, 「
承 認 図の部 品」 の場 合 に
を指 し, この製作 あ るいは加工 サー ビスを行 な
は,サ プライヤーの提供す る機 能 は製造 サ ー ビ
外 注先 」 あ るい は 「
下請 け企業」
う企業 は,「
スだ けで はな く,その部 品 自体 の開発 の もっと
と呼ばれ る。
も中心 的 な部分 も含 まれ る。 これ は, 「
貸与 図
しか し,浅沼 は, 自動車産業 の実証 的研究 を
の部 品」 と 「
承認 図の部 品」 の基本的 な区別で
基礎 として, この 「
二分法」 を批判 的に発展 さ
あ る。 さ らに この分類 の延長線 の上で ,「
貸与
表 2-1
部品およびサプライヤーの分類
貸与図の部品
日
「'
∃吉
ー】
∃
Ⅰ
承言
忍図
品
】
Ⅱ した仕様に応
Ⅲ じ作 られる部品
Ⅰ
Ⅴ
の部品
買手の提示
(カスタム部品)
市販部
与図を基礎 概略図面を 工
とⅥとの 買手企業は 買手企業は
に工程を決
程につい 中間領域
工程につい 売手の提供
I:
l分
r
肌類ー 指示する
工程につい
買手企業が
ても詳細に i
】供給側が貸
買手企業は
渡
て相 当な知 Ⅳ
める
完成を供給
側に委託す
る し,その 買手企業は
】
書例
警
自
(
注
i
写す三セン P
I D
プレス 口
内装
ス
⊂コ
口チック部
用プラ 座席
識を持つ
Ⅴ
Ⅶ
lて限Ⅴ
Ⅰ
ら
れた するカタロ
プレ
知識
たない
しか持 選んで購入
する
グの中か ら
ベアリング,
タイヤ
-キ, バ
射
子
ラ式
制
ジオ
ッテリー
燃
御 装置
料噴
,電 ,
69
日本の製造業 における企業 間分業関係 に関す る研究
図の部品」と 「
承認図の部品」 を細分す ること
企業」 あ るいは 「中核企業」 に相当す る-
によって,それぞれの内部 にい くつかのサ ブカ
取引関係 を持つサ プライヤーの分類 を行 な うこ
テ ゴ リーが設 け られ る。 表 2-1の一つ の特徴
とにす る。
は,サ プライヤー と中核 企業 との間の技術的分
と
それ に先立 ち,注意 しておかなければな らな
担 関係か ら見れば,右側 にあ るカテゴリーほ ど,
い ことは, 中核企業 に村す るサ プライヤーが,
サ プライヤーが,部 品の 開発 について も,その
最終生産物 (
この論文の文脈では, テ レビであ
製造工程 について も, よ り積極的な役割 を果 た
る) の部品のサ プライヤーに限 られ ない ことで
す ことであ る。
あ る。 そ こで,テ レビの部品のサ プライヤーが
,「中核企業が
表 2-1の浅沼 の分類方式では
提示す る仕様 に応 じてサ プライヤーが製造 して
占め る位置 を確かめるために,大 まか な品 目別
にM社 テ レビ事業部 と取引関係 を持つ企業 の社
供給す る部品」が 「カス タム部品」 と呼ばれて
数 と,その品 目が 占める金額ベースで の比率 を
外注品」 の定義 も,形式的 には,
い る。 従来の 「
見 てお こう。 それ は表 2-2に示 され てい る。
ここでの 「カス タム部品」 の定義 と変わ らない
同表の品 目欄 を見 ると分か るように,同事業部
が, これ まで 「
外注品」 とい う言葉が実際 に使
の取引 の品 目には,部品,加工サー ビス,金型
われ る ときには, もっぱ ら表 2-1のサ ブカテ
お よび原材料,以上四種類がある。 ここで,那
ゴ リーの Ⅰと[だ けを指 す傾 向があ った。そ こ
品 とい うのは,最終生産物であるテ レビのあ ら
で, Ⅲ∼Ⅵに入 るよ うな部品が見落 とされ るこ
ゆ る部品の ことであ り,加工 サー ビスは,主 に
とを避 けるため
一部 の プ リン ト基板への部品の手挿入であ る。
,「外注 品」 とい う言葉 を使 わ
ず, よ り広 い意味 の 「カス タム部品」 とい う言
葉が使われてい るのであ る。
金 型 は, それ 自体 はテ レビの部 品で はな く,
キ ャビネ ッ トとバ ックカバーなどの部 品の生産
。「原材料 」 とこ
に必要 とな る固定資 産であ る
2 テ レビ事業部 のサ プライヤーの分類
こで書かれてい るものは部品を生産す るための
この節で は,M社 テ レビ事業部 に対 して供給
材料で はな く,ハ ンダと溶剤 な どわずか な もの
を行 なってい るサ プライヤーには, どの ような
であ る。 これ らの品 目の取引先 は,社 内他事業
企業がそれぞれ何社 あ り,それ らは どの よ うな
那, グループ内他企業, グループ外 の企業 に分
品 目の部品を供給 してい るか を調べ,その上で,
かれ る。 表 2-2に示すよ うに同事 業部 と取 引
第 1節で述べた浅沼 の分類図式 を援用 しなが ら,
関係 のあ る会社 は340もあ るが,全部 と同時 に
それ にM社 テ レビ事業部 の事例 に現われて くる
取引 を行 な っているわけではな く,毎月継続的
特性 を加味 して,同事業部-
な取引関係があ るのは,ほぼ 150社であ る。
表2
12
これが 「
買い手
品目別のサプライヤー種類別購入比率(
%)
およびサプライヤーの社数
長
ug
1
入
れ他
事
業
ト
ー
尭i
i部
部
品
加工サービス
型
金
原
材
計
料
1
グル-プ内 グループ外
6
4
-
社数
5
6
5
90
6
4
-
321
5
-
1
計
2
3
4
6
35
1
1
00
1
8
7
0
調査 と研究
第 1号
(
1
991.1
0)
表 2-2につい て,注意すべ きことは, 同事
つあ る。 第一 は,テ レビ部品の場合, 自動車部
業部 の購入品 目の中に占め る 「
原材料」の比率
品 と異 な り,市販品がか な りの比率で使われて
がわずか 1%にす ぎず, しか もそれは上 に述べ
1
989b) による と, 自
い るこ とであ る。浅沼 (
たよ うに,ハ ンダと溶剤 な どに限 られてい るこ
動車 メーカーにおいて,市販 品の購入 の例 を見
とであ る。 これは,第 1に,事業部の内部で,
つ けることは非常 に難 しい。つ ま り,ほ とん ど
プ ラスチ ックや金属 な ど本来 の意 味で の材料
全 ての部品が何 らかの意味で買い手 の提示す る
一
仕様 に応 じて作 られ てい る。 表 2-1に関 して
部品の材料-
の加工,処理やそれ を使 っ
た部品の製造が行 われていない ことを意味す る。
言 うと, 自動車 の完成車 メー カーで は,一番右
また,第 2に,材料 を事業部が購入 した上で,
側 の欄 (
市販部品,Ⅶ) に入 る部 品は, ほ とん
加工サー ビスや部 品のサ プライヤーに有償 ない
ど存在 しない。 しか し,図 2-1で見 られ るよ
し無償で支給 して,加工処理や部品の製造 を行
うに,M社 のテ レビ生産 において,市販 品の ウ
なわせ ることもしていない ことを意味す る。 こ
エ イ トは部品全体の約 20%を占めてい る。 第二
れの理 由は,部品生産 におけるスケールメ リッ
に,一層重要 な意味 を持つ結果 は, テ レビ生産
トを生 かす ため, 事業部 は部 品 の生 産 を専 門
において も, 自動車の場合 と同 じよ うに, カス
メー カーにゆだね,テ レビセ ッ トの開発 と組立
タム部品のほ うが市販部品よ りもはるか に大 き
に専念す るとい う方針 を取 ってい るところにあ
な比重 を占めてお り, しか も,その中で も承認
る (
よ り詳細 に言 えば,開発 について も主力 は
図の部 品の方が貸与図の部品 よ りも大 きな比重
回路設計 に集 中させ る方針が とられてい る)。
を占めてい ることである。 これは,テ レビ生産
この意味で, 同事 業部 の部 品内製率 は零であ る。
の場合 に も, 自動車 の場合 と同様,最終生産物
ちなみ に,同事業部で生産す るテ レビの国内モ
の新 しいモデルの開発 の過程か ら多 くのサ プラ
デルにおいて,部 品購入の コス トは,テ レビの
イヤーが開発 に参画す ること,そ こで発揮 され
製造原価 の50%近 くを占めてい る。
るサ プライヤーの力量が生産 システム全体 のパ
表 2-2を見 る と,サ プ ライヤーの数 の上で
ち,購 入金額 に占める比率 の上で も,すべての
フ ォーマ ンスに とって, きわめて重要 な意義 を
持つ ことを意味す る。
購入品 目の中で テ レビの部 品 と加工サー ビスを
合わせた ものが圧倒 的な比重 を占めてい ること
がわか る。 以 下で は, この二つ の 品 目に的 を
図2
-1
絞 って, テ レビ事業部 とサ プライヤー との関係
を分析す る。
テ レビ事業部で用い られてい る部品の数 はテ
レビ一台当た り1500点 に及ぶ。 この章の第 1節
,
で述べた 「
市販部 品」 「
貸与図の部品」,「
承認
図の部品」 とい うカテゴ リーを使 うと, これ ら
の部品は どの ように分解 され るだろ うか。金額
ベースで見た各 カテゴ リーの比率 と,各 カテゴ
リーに該当す る部 品の主要 な例 とを調べた結果
を図 2-1に示す。
図 2-1が示す よ うに, テ レビの部 品 を上 の
三つの カテゴ リー に分類す ることは,完全 に可
能であ る。
この分解 の結果 について注 目すべ きことが二
(
'
注 ) ヒア リングに農 づ
テレビ部品の構成
日本の製造業における企業間分業関係に関する研究
3 テ レビ事業部 による
サ プライヤーへの評価
前節では, テ レビ事業部のサ プライヤーの様
相 と諸類型 を明 らか に した。つ ぎに,部品を提
71
明 らか に 「関係 に特有の技 能」 の Ⅹ 3に対 して
行 なわれ る評価 にはかな らない。以下で は,図
2-1に示 してい る 「カス タム部 品」 に絞 って
論議 を展開 して行 くことにす る。
供す るサ プライヤーに対 して, テ レビ事業部が
カス タム部品のサ プライヤーに対 して, テ レ
行 な う評価,格づ げ,お よび選別 について考 え
ビ事業部 は上記 の三つのパ フ ォーマ ンス項 目を
る。 これは,中核企業で あ るテ レビ事業部 とサ
基準 として, ランキ ングを行 な ってい る。 各項
プライヤー との間の取引 関係 の継続性 と極 めて
目ともに,契約 した内容 について95%以上 の達
重要 な関係 を持 ってい る。
成度 を成 し遂げたサ プライヤーが 「
優秀」 とい
As
a
numa (
1
9
89) と浅 沼 (
1
9
89a,b) は,
優秀」 ランク
うランクに格付 けられる。 その 「
サ プライヤーに対 して中核企業が行 な う評価が,
に入 ったサ プライヤーには,年 に一度 の表彰 を
何 らかの能力 に対す る評価であ ることを見出 し,
行 な う。 この ランクづ けの意義 はサ プライヤー
その能力 を一つ の理論 的 な概念 と して, 「関係
の企業力 を評価す ることであ り,サ プライヤー
Re
l
a
t
i
ons
pe
c
i
f
i
cs
ki
l
l
)」と定
に特 有 の技 能 (
と同事業部 との継続性 に も関係があ る。
義 した。 さらに,浅沼 は 「関係 に特有の技能 」
ところで, テ レビ事業部 によって評価 され る
を下記 四つ の次元 で定 式化 した。 それ は, (
1)
サ プライヤーのパ フ ォーマ ンス と 「関係 に特有
「あるモデル製品の設計 開発段 階において,棉
の技能」 との間にどうい う関係があるだろ うか。
」,
手 の中核企業のニーズに応 え うる能力 :Xl
これ を見 るため に,事業部が どうい うふ うにサ
(
2)「
試作 モデルの改善 と量産準備 の段階 におい
プライヤーのパ フォーマ ンスを良 くしてい るか
て,相手の中核企業のニ ーズに応 え うる能力 :
を調べて見 よう。
x2」,(3)「そのモデルの製品の量産段 階 におい
まず,部品の品質であるが,テ レビ事業部 は
て,品質 ・納期 に関 して相手 の中核企業 のニー
物作 りにおいて,品質第一主義 に徹す る方針 を
」,(
4)「
そのモデルの製
ズに答 え うる能力 :Ⅹ3
取 ってい る。 よい品質を維持す るため,部 品を
品の量産段 階において,部品の設計面での改善
生産す るとき厳 しい品質管理が要求 され る。 事
や工程の改善 に基づ く原価引 き下げを通 じて,
業部 は,同社 の品質管理基準 に基づ き,品質管
」
相手の中核企業のニーズに応 え うる能力 :X。
理力の優れてい ると評価 されたサ プライヤーに
であ る。
無検査認定制度」 を設 ける こ とに してい
は,「
本節では,浅沼 によ って導入 された 「関係 に
無検査認定制度」 とは,それ を取得 した
る。「
特有の技能」 の概念 を参照 しなが ら, テ レビ事
サ プライヤーが作 った部品は受入検査 を免除さ
業部が行 な うサ プライヤーの評価,格付 け, お
れ ることであ る。 これは品質管理 の優れたサ プ
よび選別 を分析す る。
ライヤーを顕彰す る方法であ り,サ プライヤー
サ プライヤーに対す る評価,格付 けおよび選
は同事業部 と継続性 を持つために, この 「
無検
別 は,中核企業がそのサ プライヤーか ら求め よ
査認定制度」 を取得す る必要があ るとされてい
うとす る部品か ら離れて は論 じられ ない。 テ レ
る。 つ ま り, この制度を取得 したサ プライヤー
ビ事業部 は,サ プライヤーに対 して,主 に部 品
は,新 しい部品を発注す るとき優先 に考慮 され
を提供す るときの三つの方面のパ フ ォーマ ンス
る。 しか し,サ プライヤーか ら提供 して きた部
か ら評価 を行 う。 これ らのパ フ ォーマ ンスは,
品に,一旦品質問題が起 こる と,事業部 はその
品質,納期 とコス トで あ る。前節 の図 2-1に
サ プ ライヤーに対 して,「
無検査 認定制度」 を
示 してい る 「
市販部 品」 なら,サ プライヤーが
取 り消 し,品質管理の指導 を厳 しく行 な う。 こ
提供 したカタログか ら選ぶ ことによって購入 さ
こで述べた品質管理力は部品の納期 を守 る能力
れ るので,そのサ プライヤーに対す る評価 は,
にあた
を合わせて,「関係 に特有の技能」 の X3
7
2
調査 と研究
第 1号
(
1
991.1
0)
か れ, サ プ ラ イヤー に よ る VA 提 案 が 発 表 さ
る。
コス トダウ ンは, テ レビ事業部 で不 断 に取 り
れ る。VA 活動 を奨励 す るため に, 仝M グルー
上 げ られ る課 題 で あ る。 同事 業 部 は, 同 じ性
プの管理 の下で,発 明者 の名前 で特 許 を申請す
能 ・品質 の テ レビを よ り安 く作 るため に, 自社
る ことな どが施 され てい る。 サ プ ライヤーか ら
内部で合理化-
行 なわ れ た VA 提 案 に よ る成 果 の利 益 は, 基
つ ま り,工程 の改 善 に よる組
み立 てな どの工数 の低 減-
を行 な うほか, ち
本 的 に半分 は提案 を行 な った努力 の報酬 と して,
う一つ重要 な手段 と して,サ プ ライヤーか らで
サ プ ライヤー に還元 され る。 しか し,必ず しも
きるだ け コス トの低 い部 品 を入れ よ うとす る。
いつ も半 々ずつ とい うルー ルを取 る こ とに限 ら
前 の節で述べ てい た よ うに, 同事 業部 で は部 品
00%を テ
ない。場 合 に よ って は, そ の利益 の 1
の内製率 が ほぼ零 で あ る。 そのため,サ プ ライ
レビ事業部が収 め, その代 わ りに, VA 提 案 を
ヤーの作 る部 品の コス トダウ ンに よる部 品 の仕
行 な った サ プ ラ イヤー に発 注 を増 や す こ とを
入れ価格 の低 下 は, と くに重要 だ と考 え られ る。
もって報酬 とす るこ とが あ る。 た とえば, あ る
コス トダウ ンには,工 程 の改 善 に よる もののほ
部 品 を Aサ プライヤーに発注 し,最初 の部 品の
か,部 品設計 の改 善 を通 じて行 なわれ る ものが
単 価 は1
00円,発 注 量 は一 万 個 と しよ う。 さ ら
あ り, これ には, 部 品 の量産が 開始 され た後で
に, Aサ プ ラ イヤーが VA 提 案 を行 な う こ と
行 なわれ る もの とそれ以前 に行 なわれ る ものが
によ って,部 品一つ 当 り20円 の コス トを下 げ る
あ る。 前 者 は Va
l
ueAna
l
ys
i
s(
略称 して VA)
こ とがで きた と しよ う。 あ る場 合 には, テ レビ
と, 後 者 は Va
l
ueEngi
ne
er
i
ng (
略 称 して
0円 の単 価 で 部 品 を買 い取 る こ とに
事 業 部 は9
VE) と呼 ば れ て い る。 こ こで, VE提 案 な ら
0円,全部 で 1
0万 円の利
よ って,部 品一つ 当 り1
び に量 産 前 の工 程 改 善 に よ る コス トダ ウ ンは
益 を VA 提 案 の報 酬 と して, A サ プ ラ イヤー
「関係 に特 有 の技 能」 の Ⅹ1と x
にあ た り,
に与 え る。 しか し,場合 によ って は, テ レビ事
VA 提 案 な らび に量 産 開始後 の工 程改善 に よる
業部 は,VA 提案 を行 なわ なか った Bサ プ ライ
コス トダウ ンは 「関係 に特 有 の技 能」 の ‡4
に
ヤーへ発注 しよ うとす る部 品 を Aサ プ ライヤー
あた る こ とが 明か で あ る。
に回 し, この発注増加 を報酬 とす る こ とに よ っ
2
新 しい製 品 を開発 す る とき, あ る部 品 の仕様
と目標 原価 が決 ま った段 階か ら, テ レビ事業部
0円の単価 で部 品 を納 入 させ る こ ともあ る。
て ,8
以上 の考察で は, テ レビ事業部 が部 品の製造
は,複 数 の部 品 メー カー に厳 しい 目標 原価 の条
の過程で行 な うカス タム部 品 のサ プ ライヤー
一に
件 を含 む テーマを渡 し,時 間 を置 いて提 案 を待
対 す る評価 , お よびその評価 と 「関係 に特 有 の
つ 。 これ は;いわ ゆ る VE提 案 で あ る。 この
技 能」 の相 互 関係 を明 らか に した。 サ プ ラ イ
VE提案 に よ って部 品材料 と工 程工 数が合理化
ヤーが, テ レビ事業部 との取 引 関係 を継続 的 な
され,部 品の原価 も引 き下 げ られ る。 そ して,
もの と して確 保 しよ う と思 えば, 「関係 に特 有
目標 原価 に一番近 い提 案 を出す部 品 メー カーが
の技 能」 を四つ の次元 の どれ において も高 め な
その部 品 のサ プラ イヤーに選 ばれ る。 それ に至
ければ な らない。他方,事 業部側 は, よ り品質
るまで, テ レビ事 業部 は これ らのサ プ ライヤー
の よ く, コス トの安 い部 品 を提 供 して もら うた
を集 めて共 同 に検討 させ る こ と もあ る し,個 別
め に, い ろい ろな奨励 の手段 で, サ プ ライヤー
に検討 させ る こと もあ る。
が それ らの能力 を向上 し続 け るよ うに促 してい
部 品の量産 に入 ってか ら も, サ プ ライヤー は
る。 テ レビ事業部 の考 え方で は,部 品 の品質 と
コス トダ ウ ンのた め の VA 提 案 に お け る努 力
納期 を守 る こ とは,当然守 られ るべ き前提 にす
を求 め られ続 ける。 事業部 は,年 に二 回定期 的
ぎず, もっ とも重要 な 目標 とされ るの は,部 品
にサ プ ライヤー と,部 品の コス ト再交渉 を行 な
の コス トダウ ンで あ る。
う。 また, 同事業部 で は,年 に一 回講 習会が 開
73
日本の製造業における企業間分業関係に関する研究
Ⅲ
表3
-1
新製 品 開発 と
サ プラ イヤ ーの参画
種
この章 の主題 は, M社 の テ レビ事 業 を事例 と
して, テ レビ生産 にお け る新 しい製 品の開発 プ
ロセス とサ プ ライヤーに よる開発 へ の参 画 の様
相 を具体 的 に明 らか にす る こ とで あ る。 このた
類
トヨタクラウンの仕様数
1
9
66
年 4月
ボデータイプ
エ ン ン
、
ヽ
/
ヽ
2
4
ン
キャブレター
2
4
月
2
料
燃
め, まず第 1節で現代 産 業 の製 品 の多様化 に触
グ レ ー 式
ド
2
4
3
れ, 自動車産業 と比較 して, テ レビのモ デルに
シ ー ド形 状
オ プ シ ョン
2
1
塗設定種類数
色
3
1
2
4
2
つ いて述べ る。 第 2節 で は,新 しい製 品の開発
1
988年 4
変 速 方
3
7
8
2
5
0
の過程 と時 間構造 を分析 す る。最後 ,第 3節 で
テ レビの部 品 の一つで あ るキ ャビネ ッ トの生産
に焦点 を しぼ り, サ プ ラ イヤーが どの よ うに新
しい製品の開発 に参画す るか を調 べ る。
1
01
3
1
,
088
(
注)設定種類数は
単純かけ算 と,設定のない項 目があり,各項目の
はならない。
(出所 ) 白動車工学全
書編集委員会編 『自動
通 システ ム (自動 車工学 全
1 テ レビのモ デル
部仕 様」 の レベ ルで 見
現代 の産業 の中で,近 年 しだ い に鮮 明 にな っ
車の販売 流
書2
0
)
』1
9
8
0
年
る と,表
てい るよ うに クラウ ンとい
うただ3-1で示 され
て きた発 展 の方 向 は, 消 費 者 の晴 好 あ るい は
つ き, 1978年 に10万 もの
ニーズに, きめ細 か く対 応 す るため に行 なわれ
そ して,車種 ご とに 4 バ リエ ー シ ョンが あ る。
一つ の車種 に
る最終生 産物 のモ デルの 多様化 で あ る。 日本 の
ル ・チ ェ ンジ」 が行 なわれ,
年 間 に一度 「フル ・モデ
自動車産業 の場合 につ い て は, これ まで の研 究
ナー ・モデ ル ・チ ェ ンジ」 も この 中間 に 「マ イ
-
1984a
,1986) や 門 田
た と え ば, 浅 沼 (
(
1983) -
に よ って も, モ デ ル の バ リエー
。 機 メー カーが行 う
る電
行 なわれ るので あ
シ ョンの数 え方が扱 われ てお り, したが って,
動車 の場 合 とは趣 きを モデ ル ・チ ェ ンジは, 自
モ デル ・チ ェ ンジまた は新 しい モデ ルの開発 が
車か らの類推 によ って異 に してい るため, 自動
どの よ うな こ とを意 味す るかが比較 的 に よ く知
な違 い と して,電機 メ は扱 えない。 まず,大 き
られてい る。 た とえば, トヨタは乗用車 だ けに
銘柄 が一つ しか ない。 ー カーの製 品で は,通常
限 って も, クラウ ン, コ ロナ, カロー ラ等 々の
ば, テ レビにおいて
よ うな何種類 に もわ た る銘柄 の車 を製造 ・販売
三 菱 電 機 な ど, そ れ, 目立 ,東 芝 ,松 下電器 ,
車
して い る。 同社 で は, こ の 銘 柄 の こ とを 「
ニ ック,三菱電機 といぞれ 日立 , 東 芝, パ ナ ソ
種」 と呼 んで い る。 この車種 の レベ ルで い うと,
で テ レビを製造 ・販売 うよ うな一つ の銘柄 だ け
0か
トヨタが製造 ・販売 して い る乗用車 には,2
ら30と言 った程度 のバ リエー シ ョンが あ る。 さ
らに,各車種 につ き,表
3-1に示 され る よ う
具体 的 に言 うと, た とえ
の も とに多 くの モ デ ルの
してい る。 その同 じ銘柄
2は, M社 の テ レビ事
テ レビが あ る。 表 3-
の仕様 分類 を示 す もの 業部で の テ レビのモデル
な項 目の選 び方 によ り, さまざ まな仕様 の違 い
よ うに, テ レビのモ デであ る。 同表 よ り分か る
が で きる。 これ に は, 「ボ デ ィー ・タ イ プ」,
放 送 内容,商品 タイプ ルの仕様 は,放送方式 ,
,
豪華 さの
「エ ンジ ン ・タイプ」,「変速方式」 「
ン管 の偏 向角度 お よび, イ ンチサ イズ, ブ ラウ
程 度」 な どの組 合 せ に よ って 決 ま る 「
基 本仕
上六つ の項 目に よって決
キま
ャビネ
ッ トの種類
,以
の項
る。 この六つ
様」 とい うレベ ル と,色 お よび オプシ ョン部 品
のそれ ぞれ の種類 の組合せ に よ って,数多 く 目
の選択肢 を加 味 した場 合 に定 ま る 「
細部仕様」
。
とい うレベ ル とが あ る (
大野耐 - , 1978) 「
細
7
4
調査 と研究
表3
-2
第 1号
(
1
9
9
1
.1
0
)
テレビモデルの分類方式
分 類 方 式
分
類
国 の 放 送 方 式 】① PAL ② PAL/SECAM ③NT
;放
送
内
SC (
容 ①一般放送 (
診文字多重放送 ③音声多重放送
参
丑VRタイプ ②AVタイプ (普及 .高級) ③モ 衛星放送
桓 二品 タ イ プ (
ニタ ④VPS
tイ ン チ サ イ ズ
∼
1
5'',
2
1
",2
6 27 2
9, "
14 " ,
19 " ,
" ,
" ,
"
3 3
ブラウン管の偏向角度
,
4
0
".
4
3
"
(
99
②1
1
00
iキ ャ ビネ ッ トの種類 ①木製
②成形
00
(
うモデ ルを区別す
注) ヒア リングに基づ き作成
るには, 「品番」 とい う概 念
デルを部分 的 に デル ・チ ェ ンジ」 は,既存 のモ
は一般 にイ ンチ る ことが分か る。 この 「品番」
事業部 のテ レ 変 えて製造す ることであ る。 同
わす英文字か らサ イズを表わす数字 と機能 を表
モデルの ライフ
ビ ・チ ェ ンジの イ ンターバ ル-
を用い られてい
ベルでみ る と, な ってい る。 この 「品番」 の レ
国内向 きの一般 ・サ イクル とも呼 ばれ る-
してい るテ レビ実 際 にM社事業部が製造 ・販売
であ るが,一年 型 のテ レビの場合 は,通常半年
は,
外輸 出を含 めて の モデルの数 は,国内向 きと海
的 に言 って,新 間 と長 くなる もの むあ る。 一般
平
月 間で見 る と8
0
か均
ら的 に, あ る月 を とって 1カ
半年後 に 「マ イナ
しいモデルが発売 されてか ら,
2
0
0と設定 され
-年後 に 「フル
9
0,年 間で見 る と1
5
0か ら
・モデル ・チ ェ ンジ」 を行 い,
セ グメ ン トの ニる。 これ は,市場 の さまざ まな
と見 て よいで あ ・モデル ・チ ェ ンジ」 を行 な う
ぐらいの数 のモデ
ー ズに大体応 えるために,それ
るモデルのテ レろ う。 市場 においてみれば,あ
テ レビのモデ
ルが必要だ とい う意味で あ る。
得 る期 間は半年 ビは, リー ダー ・モデル とな り
ある適 当 なイ ンル につ いて も自動車 と同様 に,
6るが,実際その商品が生産
販売 され る期 間は
であ
が行 なわ れ て ターバ ルで, モデル ・チ ェ ンジ
長い場合 は,一年 間 カ月か ら1
0カ月 まで くらい,
い る 。 テ レビにお け るモ デ ル ・
チ ェンジ と言 う
画台数 を越 えて の は, 当初企画 したテ レビが企
を失 って きた と,生 産販売 され,市場で競争力
2 新
とな るとい うことであ る。
M
それで 製
は,
品の開発過程
とその時 間構造
新たなニーズに き,新 しい イメー ジで, さ らに
発 とその プロセ社 テ レビ事業 の新 しい製品の開
商品化す るこ と応 えて,新 しい局面 を開拓 し,
品」 とい うのは スを考察 しよ う。 ここで 「
新製
ジ は, 「フ ル
ンジ」 によって ,前節 の 「フル ・モデル ・チ ェ
で あ る。 さ らにモデル ・チ ェ ン
ナー ・モデル ・モ
・ デ ル ・チ ェ ン ジ」 と 「マ イ
同事業部で は, 出て
この くるモデルの ことであ る。
,「新製品計画」
ビ生産 にお けるチ ェ ンジ」 に分 け られ る。 テ レ
(
あ るい は 「
言 うのは, シ ャー「フル ・モデル ・チ ェ ンジ」 と
「
量産立 ち上が
構 想」 と呼 ぶ) の ス ター トか ら
キ ャビネ ッ ト,
,
シー,電気 回路, チ ューナー,
時間がかか る。 り」 の終了 まで,約-年余 りの
,「企 画段
新 製品の開発
階」
の ステ ップは,大
,「
設 計段 階」,
「
試作段
「 品の イメー ジな どを全 て変 え
ることで あ り 商
別す る と
とい うのは, シ マ イナー ・モデル ・チ ェ ンジ」
階」 「
量産段 階
要 な部 品 を変 え ャー シー, キ ャビネ ッ トな ど主
プロセスは
,
企画段 階で は」 との四つ の段 階 に分かれ る。
変更 を行 な うこず,色調
と
な どの よ うな部分的 な
し,開発 の 日程 ,新 しい製品の基本構想 を提 出
で あ る。 言 い換 えれ ば, 「フ
数 な どを検討 し と製品の 目標原価 , 目標生産台
デ ルの テ レ ビ を開発
ェ ンジ」
は,す
まる
った
く新 あ
しいモ
, 製造
こ とで
り,
「
企画書」
「
マ イナーを作
・モた うえ, これ らの内容 を含 めた
ル ・モデル ・チ
7
5
日本の製造業における企業間分業関係に関する研究
計 を行 な う。 この段 階の業務 は単独 にテ レビ事
1の上半分 の部分 は, ヒア リング調査 に もとづ
業部 によって行 なわれ る 。
いて,新製 品の開発期間 にお ける各段 階 と主 な
設計段 階 は,基本設計 に基づ く製 品の具体設
ポ イ ン トを時 間軸 に沿 って, プロ ッ トした もの
計か ら始 ま り,設計試作 品の完成 を もって終わ
であ る。 この図の下半分 の部分 につ いては,吹
る段 階であ る。 この段 階 で は, モデル ・チ ェ ン
の第三節で説 明す る。
ジによって変更 され,あ るいは新 しい開発が必
要 となる部 品が確 認 され る。 表 3-3は, テ レ
3 サ プライヤーによる開発 へ の参画
ビのモデルが変わ る とき部品が どれ ぐらい変わ
前 の節 で述 べ た よ うに, テ レ ビの モ デ ル ・
るか を示 してい る。 この表での○印 は各列 の最
チ ェ ンジを行 な う際 に,そのモデル ・チ ェ ンジ
上部 に示 されてい る項 目に対応 して テ レビモデ
に応 じて,部 品の変化 も必ず伴 う。 変化が生 じ
ルが変わ る とき,各行 の左端 に示 されてい る部
る部 品が,抵抗 , コ ンデ ンサ ーな どの よ うな市
品種類 の中の どれが変更 され る ことにな るか を
販部 品な らば,その市販部品 を作 ってい るメー
表わす。た とえば, イ ンチサ イズが変わ ること
カーが提供す るカタログを調 べ,その中か ら新
によって, キ ャビネ ッ ト,バ ックカバー, プ レ
しい部 品 を選 んで購 入す れ ば よい が, キ ャビ
ス部品,電気部品のすべ てが変わ らなければな
ネ ッ ト, ブラウ ン管 な どの よ うな カス タム部 品
らない。 また,放 送 内容 か ら見 れ ば,表 3-2
な らば,その部 品を新たに開発す る必要が あ る。
に示 してい るよ うに,現 在で は一般放送 のほか,
さ らに,第 3章で述べたよ うに,外注 品は 「
貸
音声多重放送,文字多重 放送 お よび衛星放送が
与 図の部品」 と 「
承認図の部 品」 と分類 され る。
あ り, これ らの放送形態 を一部 あ るいは全部新
貸与 図の部 品であれば, 中核企業で あ るテ レビ
た に導 入 す る と き, ど う して もシ ャー シー,
事業部 は,その部 品の設計,製図 を行 ない,製
キ ャビネ ッ ト,バ ックカバー, プ レス部 品,電
造だ けをサ プライヤーに委託 し,承認 図の部 品
気部品な ど,全 ての部 品 に変更が もた らされ る
であれば,部 品の設計 と製造 をすべ てサ プ ライ
ことになる。 新 しい部 品 の開発,設計が必要 と
ヤーに委託す る。 しか し,同事業部 は,貸与 図
なるに応 じて,部 品のサ プライヤーが, 開発 に
の部 品 についてさえ も,必ず しも部 品 の製造工
参画す る。 これ につ いて,次 の節で は, キ ャビ
程 に関す る知識 を十分 に持つ と限 らない し,承
ネ ッ トメー カーを例 として,詳 しく分析 す る。
認 図の部 品につ いては,その知識が さ らに乏 し
試作段 階 に入 る と,必 要 な設備 な どを手配 し
くなる。 このため,新 しいモデルを開発 ・設計
て,工技試作 を行 な う。 量産段 階で は,本格 的
す る とき,その開発 ・設計 をスムー ズに進 め る
な量産図面が完成 し,工 場での量産試作 を確 認
ため,新 しい部 品 について, どうして もサ プラ
した上で,量 産が開始 され る。 この段 階 に入 る
イヤーに仕様 , 目標原価,仮 図面 な どを検討 し
と,新製 品 の開発 に終止 符が打 たれ る。 図 3-
て もらう必要があ る。 これが,サ プ ライヤーの
表3
-3
区
分
部
分
\
i
シ
ャ
シ
ー
キ
ャ
I ビ
ネット
I
Lと クカバプ レス 部 品
モデル変更と部品変化との対応関係
方 式
(
仕向地)
○
○
インチ
サ
イズ
○
○
○
lデザイン
商 品
放送 内容
タイプ
○
○
○
○
○
i
○
○
○
7
6
第 1号
調査 と研究
(
1991.1
0)
図 3-1 新製品開発段階のプロセスとキャビネットメーカーの参画
新製品開発段階のプロセス
企画段階
試作段 階
設計段 階
量産 段 階
量
産
工技 試 作
プ リプ ロ
材料手配
作
試
ト
キ ャビ ネ ット 量 産
金 型設計
製
型
金
作
設計試作
異体 設計
基 本 設計
開 発企画
定
選
サ
プ
ヤ
イ
ラ
ー型
設
金
計
画
参
始キャビネット
開
検
型
金
討
メーカーの
参画
(注) ヒア リングおよび社内資料に基づ き
開発段 階の参画 と呼 ばれ る ものであ る。 そ
画の過程で,サ プ ライヤーの提案 によって の参
レビの設計 その ものが変わ ることもあ りう, チ
作成
0%を占め
品原価 の全体 の中で約 1
テ レビの部
る。ッ トを
キ ャビネ ッ トの金型 は, キ ャビネ
また,サ プライヤ ーの開発への参画 を通 じる。
スチ ック射 出成形 によって製造す るさい に プラ
テ レビ事業部 は, サ プ ライヤーの技術 能力 て,
機 に装着 され,製品の一つ一つ に正 しい形 成形
勤条件,受注能力 と部 品の製造工程 な どに,稼
与 える もととな る もので,一種 の固定資産 状 を
る情報 をよ り多 くキ ャ ッチ し, それ に も 関す
る。 キ ャビネ ッ トの設計 は,実際問題 としであ
て,部品の発注先 と発注量 との調整が
金型 の設計 ・製造 と切 り離す ことがで きな て,
とづ い
的 に行 え る こ とに もな る。 本節 で は,
よ り合理
キ ャビネ
ネ ッ トの製造 に関 連 す るサ プ ラ イヤーで
キ ャビ
新 しい金 ッ トが変わ る と,それ に対応 して必ず
キ ャビネ ッ トメー カー と金型 メ
か らであ 型
る を設計 ・製造す ることが必要 とな る
ある
とって,サ プライヤーの新製品 ー カーの事例 を
様相 を具体 的 に調べ ることにす 開発 への参画 の
は じめに, キ ャビネ ッ トを事例
る。に とる理
説明 してお こ う。 キ ャビネ ッ トはテ レビの 由を
い。
M社 のテ。レビ事業部で は, キ ャビネ ッ トを
造す るサ プライヤーには, M社 と継続 的な
製
を持つ ものが三社,間欠的 な関係 を もつ も関係
二社 あ る 通常 , 同事業部 の テ レビ生産の のが
。
その ものを構成 し, テ レビの設計意 匠 を直 外形
の需要 は,継続 関係 にあ る三社 の生産能力 ため
わす重要 な部 品で あ る。 前節 の表 3-3 接 表
で カバーで き,事業部 の発注 もこの三社 にだ け
す ように, キ ャビネ ッ トはテ レビの イ ンに も示
れ る。 需要が三社 の生産能力 を オーバー し限 ら
ズ, デ ザ イ ン, 商 品 タイ プ, 放 送 方 式 な
チサ イ
合 だ け, ほかの二社 に対 す る発
よって違 い, テ レビのモデル ・チ ェ ンジを どに
その
うとき, もっ ともよ く変わ る部 品であ る。 行
な
うえ, キ ャビネ ッ トの購 入価格 は,
た場
日本の製造業 における企業間分業関係 に関す る研究
7
7
以下で は,継 続 関係 のあ る三社 のサ プ ライ
キ ャビネ ッ トの製造においては,図面 はテ レ
ヤーに限 って考察 を進め る。 これ らのサ プライ
ビ事業部 によって作成され るので, [の 1の表
A)
キ ャビネ ッ トの図面 を事業部か ら
ヤーには,(
2-1に照 ら してみ る と, キ ャビネ ッ トを製造
提供 して もらい,金型 を 自製 して,キ ャビネ ッ
す るサ プライヤーは貸与図部品のメー カーの カ
B)
キャ
トを製造す るキ ャビネ ッ トメー カー と,(
テゴ リーに属す る。 よ り詳 しく言 うと, テ レビ
ビネ ッ トの図面 と金型 を事業部か ら提供 して も
事業部 は, キ ャビネ ットの概要図面 を作成 して,
らい,キ ャビネ ッ トだ けを製造す るキ ャビネ ッ
サ プライヤーに渡すが,その製造工程 について
しか し,(
A)
のキ ャ
の指示 をほ とん ど与 えず, また, キ ャビネ ッ ト
トメーカー と,二種類 あ る
。
ビネ ットメー カーで も, テ レビモデルによって
の細部 について も, キャビネ ットメー カーに任
は,金型 を事業部か ら提 供 して もらうことがあ
せ るので, キ ャビネ ットメーカーは承認図の部
る。 一般 のサ イズのキ ャビネ ッ トな らば金型 を
品に近い貸与図の部品のメーカーであ り,表 2
自製す るが,大型画面 の モデルな どの場合,そ
-1のⅢの カテゴリーにあたる。
の金型の製造能力が ない ので,事業部か ら提供
さて, テ レビ事業部があ る新 しいモデルのテ
して もらい, キ ャビネ ッ トだけを製造す るので
レビを開発す るとき,キ ャビネ ッ トメー カーは
あ る。
どの時期 に, どのよ うに新製品の開発 に参画す
M社 の テ レビ事 業部 が 金型 をキ ャ ビネ ッ ト
るだろ うか。 これを新 しいモデルのテ レビの開
メーカーに提供す る場合 ,その金型 はテ レビ事
発 の プロセスに対照 して示 したのは前節 の図 3
業部の内部で造 られ るわ けで はな く,M社 の中
-1の下半分 の部分である。 この図 に示 してい
の他の部 門 (
生産技術本部) にある型工場 に提
るように, キ ャビネ ットメーカーによる開発へ
M社で は各事
の参画が始め られ るのは,新 しいモデルの開発
業部が独立採算制 を とってい るため,型 は社内
段階の 「
具体設計」 の時点である。 この とき,
供 して もらってい るので あ る7)。
取引の形で テ レビ事業部 に提供 され る。 テ レビ
テ レビ事業部 は, ビジネス ・チ ャンス公平配分
事業部 は金型 の値段 を下 げるため,社外 のサ プ
の原則 に基づいて,受注能力のあるキ ャビネ ッ
ライヤーに対す るの と同 じよ うに,型工場 と交
トメー カー と型工場 に,キ ャビネ ッ トと金型 の
渉す る。M社 が内部 に型 工場 を持つ理由は,第
設計 について検討 を要請す る。 ここでの検討 の
一 に,社 内の生産力 に課 せ られ る高品質,低原
重要 なポイ ン トは, きび しい 目標原価である。
価,高速度 とい う要請 を支え られ る型技術 を保
(
テ レビ事業部 は,新 しい製品の開発 の 「
企画
持す る必要があること, 第二 に,個 々の新 しい
段 階」で,新 しいモデルのテ レビの原価 を下げ
製品の開発 にさい して, 迅速 な提供で社 内の需
るため,主要部品について,原価 の検討 ・計算
要 に答え うるような型 の供給源 を保持す る必要
を行い, テ レビの 目標原価 に合 うように,主要
があることである。 た とえば,競争相手 の電機
部 品 の 目標 原価 を厳 し く設 定 す る)。 キ ャ ビ
会社が新 しいモデルを出 し,それに対応 して新
ネ ッ トメー カー と型工場は,新 しいモデルの設
しいモデルのテ レビを開発す る課題が生 じた と
計 と原価 の要求 に応 じて,実際の製造者の立場
き,で きるだ け短期 間の うちに品質のよい金型
か ら型 とキ ャビネ ッ トの製造 の難易 さ とコス ト
を開発 ・製造す ることが要求 され るので,内部
な どの細かい部分 について, キ ャビネ ットの設
に型工場 を持つ ことが競 争上必須の条件 となる
計 に対 して提案 を行 な う。 た とえば,事業部が
のである。
最初 に設計 したキ ャビネ ッ トは,技術 的に製造
しに くい点があ る。 それによって,金型の製造
\6
) M社 と間欠 的 な 関係 を もつ 二 社 の キ ャ ビネ ッ トメー
カーは, はか の メ イ ン取 引 先が あ る。
7) 生産技 術 本部 は, 図 1-1の 「
技 術 部 門」 に含 まれ て
いる
。
コス トが高 くな り, またはキ ャビネ ッ トの製造
時間が長 くな り,結局キ ャビネ ッ トの コス トが
高 くな って しま う。 このようなことが金型 メ-
7
8
調査 と研究
第 1号
カー とキ ャビネ ッ トメーカーによって指摘 され
(
1
9
91
.1
0
)
ま り,部 品のサ プライヤーは,事業部 の新 しい
れば,事業部 は最初 の設計 の再検討 を行 な う。
製品の開発期 間の中のいずれかの段 階で,その
再検討 の結果 によ って,最初 の設計 を変 えるこ
部 品の開発 に応 じて,開発 に参画す る。 サ プラ
とがあ る。
イヤーは,開発 に参画す る過程の中で,製造者
新 しいモデルの キ ャビネ ッ トのサ プライヤー
としての立場か ら,部品の設計 に対 して,製造
試作 段 階」の
の決 定 は, ほぼ 図 3-1で の 「
の難易, コス トな どの面 について, ア ドバ イス
「
金型設計」 の時点で行 なわれ る。 テ レビ事業
を与 える。 サ プライヤーによる開発への参画 は
部 は,一つのモデ ルにおいて,一社 のみ に発注
次 の よ うな意味があ ると考 え られ る。 ① サ プラ
す ることに してい る。 その一社 のサ プライヤー
イヤーの ア ドバ イスあるいは提案 によって,最
を選ぶ基準 は基本 的 に 目標原価 に一番近い提案
初 の設計が改善 され ることがある。 それ によっ
である。 しか し, それ と同時 に, キ ャビネ ッ ト
て,新製品の開発が スムーズに進行で きる。 ②
メーカーの稼動条件 と受注能力 な ども考慮す る。
サ プライヤーの参画 によって,中核企業 はサ プ
必要があれば,現行 モデルの部品生産 を調整す
ライヤーの稼動条件,技術能力,および受注能
ることもあ る。 選 ばれたサ プライヤーは, この
力 を一層 に了解す ることがで きる。 その上,発
ときか ら金型 の詳細設計,製図を始 め, テ レビ
注先 と発注量 の調整が よ り合理的 に決め られ る
事業部が新製品の工技試作 を行 う前 の時点で,
サ プライヤーの開発 の参画は,その部品が早期
。
承認 図
つ ま り,「
試作 のための金型 を組み立 て,試作用のキ ャビ
の参画 を必要 とす る もの-
ネ ッ トを作 りあげ る。 これ を 「試作納入」 と言
の部品」か 「
承認図に近い貸与 図の部品」-
う。 そ して, テ レ ビの量 産段 階 にはい る と,
であ るとき,一般 の貸与図の部品 と比べ て格段
キ ャビネ ッ トのサ プライヤーが テ レビ事業部 に
に早 くか ら行われ,そ こか ら期待 され る効果 も
量産製品を提供す る。
格段 に大 きい。
キ ャ ビネ ッ トメー カーは, 「
貸与 図の部 品」
日本の製造業で は,中核企業 とサ プライヤー
のサ プ ライヤーで あ りなが ら,新 しい製 品 の
と,一つ の生産 システムを構成 してい るとよ く
「
具体設計」とい う早い時点か ら開発 に参画す
言われてい るが,サ プライヤーによる新 しい開
る。 これの理 由 と しては,① キ ャビネ ッ トはテ
発段 階の参画 は, このシステムが効率的 に機能
レビの意 匠を表わす重要 な部品であ り,通常告
す るために欠 けてはな らない重要 な役割 を果た
いモデル と比べて変 わ るところが多い,② キ ャ
してい る といえよう
ビネ ッ トを造 るための金型 は設計 ・製造 の時間
が長 く, コス トが高 い,③ テ レビ事業部が,金
。
む す び
型 とキ ャビネ ッ トの製造の詳細 を知 らない, な
この研究 は, 日本のあ る大手 テ レビメー カー
どがあ る。 これ に対 して,放熱板, シャー シー
であ るM社 のテ レビ事業部 とそのサ プライヤー
金具 な どのプ レス部 品は,同様 に貸与図の部 品
を事例 として, テ レビ製造 における企業間分業
であ るが,① 比較的 にサ イズが小 さ く,②単価
関係 を分析 して きた。
も安 い し,必要 な金 型の設計 ・製造時間が短 く,
従来,電機産業の企業間分業関係 を見 る とき,
金型の コス トも低い,③ さ らに, テ レビ事業部
部 品 のサ プ ライヤーの類 型 を区分 す るため,
か ら見てそれほ ど知 りに くい専 門技術がか らん
」と
「一般購 入先」 と 「
下請 け企業 (
外注先)
で もいない。 このた め, プ レス部品のサ プライ
いう 「
二分法」が とらえられていた。 しか し,
ヤーが,新 しい製品の開発 に参画す るに して も,
この 「
二分法」 は,サ プライヤー と中核企業が
試作 段 階」 の後半 とい うず っ と
その時期 は,「
部品の開発か ら製造 までの過程 に発生す る関係
あ との時点 に来 るのであ る
を分析す るには,網 の 目が租す ぎて,不向 きで
。
以上の観察結果か ら,次 の ことが分か る。 つ
あ る。 本研究 は,浅沼が導入 した分類方式 をテ
79
日本 の製造業 における企業 間分業 関係 に関す る研究
レビ製造業 に応用 し,テ レビ部品の中で,各類
Rel
at
i
ons
hi
psi
nJ
apana
ndt
heConc
e
ptof
型の占める比率 を明 らか に した上, テ レビ事業
,Jour
nalo
ft
heJa
paRe
i
at
i
onSpe
c
i
丘cSki
l
l
"
部 とサプライヤーの間で行われ る相互作用 を追
ne
S
eandI
ni
e
r
nat
1
0nalEc
o
nomz
r
c
s
,Vol
.3,No
l
.
求 した。
特 に,サプライヤーの新 しい製品の開発-の
参画 を見 るため,本研究 はキ ャビネ ッ トを選 ん
で,具体的な分析 を行 った。 これによって,つ
ぎの ことが明 らか に なった。 キ ャ ビネ ッ トは
「
貸与図の部品」 の一種であ り,従来の分析で
はキ ャビネ ッ トメーカーは 「
下請 け企業」 とし
て扱 われてい るが, キ ャ ビネ ッ トのサ プ ライ
1
9
8
4a) 「日本 にお け る部 品取 引 の構
浅沼 寓里 (
造-
,
」 『
経 済論叢 』
自動車産 業 の事例-
第1
33巻第 3号。
浅沼寓里 (
1
98
4b) 「自動 車 産業 にお け る部 品取
,
季刊現代経 済』 夏季号 。
引の構造」 『
1
9
86) 「情 報 ネ ッ トワー ク と企業 間関
浅沼寓里 (
,
経済論叢』 第1
37巻 第 1号。
係」 『
浅沼 寓里 (
1
9
89a) 「日本 にお け る メー カー とサ
ヤーは新 しい製品の具体設計の段階か ら開発 に
プ ライヤー との 関係-
参画 してい る。 複 数 のサ プライヤーの参 画 に
プ ライヤーの発展 を促 す メ カニ ズ ム-
よって,新製品の開発,設計が スムーズに進 め
られ るだけではな く,中核 企業がサ プライヤー
の選定をよ り合理的に決め られ るようになる。
これ に対 して従来 の分析 で キ ャ ビネ ッ トメー
カー と一括 して 「
下請 け企業」 と扱われていた
プレス部品のサ プライヤーの場合 には,開発へ
の参画が行われ るに して も,その時点がはるか
にあ とであ り,その意義 も限 られた ものである。
この研究は,時間の問題 もあ って,多 くの課
題が残 されている。 た とえば,①本論文では,
貸与 図の部 品で あ るキ ャビネ ッ トのサ プ ライ
ヤーの開発の参画が明 らか にされたが,承認図
の部品, とりわけブラウン管や半導体 な どの主
要部品について も明か に して,貸与図の部品 と
関係 の諸 類 型 とサ
」,
『日本 の 中小 企 業』 東 京 大 学 出版 会 ,61-
7
8ペー ジ。
1
9
89b) 「日本型 『
産業 組 織 』 が世 界
浅沼 寓里 (
の生 産 シス テ ム をつ く りか え る 日」, 『
Ec
o-
nomi
e
sToday』
。
W・ア ナ ッシュ ・植 田 浩 史 ・L
L
l本
「日本 産業 の階層構造-
潔 (
1
986)
事 例 調 査 中 間報
,
告(
1ト- 」 『
社会科学研 究』 第3
8巻 第 1号。
今井 賢一 ・伊丹敬之 ・小池和 男 (
1
9
82) 『
内部組
織 の経 済学』東洋経済新報社 。
大野 耐- (
1
97
8) 『トヨタ生 産方式経営 をめ ざ して-
脱規模 の
』 ダイヤモ ン ド社。
岡本博 公 (
1
9
85) 「
現 代 の生 産 ・販売統 合 システ
ム」,坂 本和一 (
編) 『
技 術 革新 と企 業構 造』
ミネル ヴ ァ書房, 1
1
4-11
8ペ ー ジ。
)
∋中核企業 とサ プライ
比較す る必要が あ る。 (
キ ム. B. ク ラー ク ・藤本隆 宏 (
1
987 「自動車
ヤーの企業間分業関係 において, テ レビとほか
の製 品 開発 にお け る オー バー ・ラ ップ型 の
の電機製品の比較,電機産業 とほかの製造産業
との比較,さらに,他 国の製造業 との比較 を行
う必要がある。 ③現代 のテ レビの生産では,製
品の多様化の傾 向 に したが って,図 2-1に示
す各類型の部品の占める比率 は, どうい う方向
にどれ くらいの速 さで変化 してい くか,それ に
よって,サプライヤー と中核企業の分業関係 は
,
l
.3
4,
問題 解 決」 『ビジ ネス レ ビュー』Vo
No.4.
下谷政弘 (
1
9
85) 「
硯 代 企業 グルー プの構 造 と機
能-
日本 電気 の ケース」,坂 本和 一 (
編)
『
技 術 革 新 と企 業 構 造』 ミネ ル ヴ ァ書 房,
206-2
08ペー ジ。
下 谷政 弘 (
1
9
87) 「
事 業 部 制 と分 社 制」,坂 本 和
一 ・下谷 政弘 (
編) 『
現代 日本 の企業 グルー
どう変わ るかを解明す ること も有益 な課題であ
プ-
ろ う。
7-111ペー ジ。
経済新報社 ,7
「親 ・子 関係 型」結 合 の分析』,東 洋
中小企 業庁 (
編) 『
中小 企業 自書一
参 考 文 献
Banr
iAs
a
numa (
1
98
9),"
Manuf
ac
t
ur
e
r
Suppl
i
e
r
新 しい流 れ
を拓 く中小 企業 の活 力』 大蔵 省 印刷 局, 昭
9年版O
和5
8
0
調査 と研究
第 1号
野本満雄 (
1
9
8
4) 『
購 買担 当者 の実務』 日本資材
管理協会。
藤本隆宏 (
1
988) 「自動車 の製品開発組織 と設計
,
組織科学』 第22巻第 1号。
品質」 『
増 山淳 (
1
983) 「ジャス トイ ン タ イ ム生 産 と
FMS」,大 野耐 一 ・門 田安弘 (
編) 『トヨタ
生 産方式 の新展 開』 日本能率協 会, 1
4-1
6
ベ ー ン
港
○
徹雄 (
1
9
8
4) 「
両大戟 間における 日本型下請
(
1
991
.1
0)
,
国際政経論集』
生産 システ ムの編成過程」 『
第 2号。
八幡成美 ・水野順子 (
1
9
88) 『日系進 出企業 と現
地企業 との企 業 間分業構 造 と技術 移転タイの 自動車産業 を事例 として』, アジア経
済研究所 。
「
和 田一夫 (
1
98
4) 『
準垂 直統 合型組織』 の形成
-
トヨタの事例-
営学編』 第83号。
,
」 『アカデ ミ経 済経
Fly UP