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放射性同位元素に係る核セキュリティの検討について

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放射性同位元素に係る核セキュリティの検討について
資料3
放射性同位元素に係る核セキュリティの検討について(案)
平成25年7月8日
1.これまでの放射性同位元素に係る核セキュリティ
○
1990年代前半までは、核セキュリティは核爆発装置への転用により、
多大な被害をもたらしうる核物質に対する防護措置がその中心であった。核
物質については、我が国では、原子力発電所や核燃料施設などにおける核物
質防護や保障措置などの取り組みをとおして、核爆発装置で使用されること
を防いでいる。一方、医療施設や工業施設などで治療や計測用などに使われ
ている放射性同位元素については、核物質に比べると犯罪に使用された場合
の影響の大きさが大幅に小さいため、防護に関する検討は行われていなかっ
た。
○
しかしながら、2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、核物質を
用いた核爆発装置だけでなく、放射性同位元素の発散装置(いわゆるダーテ
ィボム等)の脅威が懸念されるようになった。放射性同位元素の発散装置は
犯罪に使用された場合の影響の大きさが核爆発装置に比して大幅に小さい
ものの、テロ等が多様化する中で、テロリスト又は犯罪者グループが悪意を
持って放射性同位元素を使用する懸念が生じた。これに伴い、核物質ばかり
でなく放射性同位元素の防護を含めた核セキュリティの確保に対する国際
的な関心が高まり、その重要性が増した。
○
こうした情勢を踏まえ、IAEAにおいては、放射性物質及び関連施設に
ついても核セキュリティ文書の整備が進められてきている。その中では、放
射性同位元素については、核爆発装置に使用される核物質とは区分した形で
取りまとめられている。
1
2.国内法令への取入れ状況
○
我が国では、国内関係法令に基づき、放射性同位元素に係る核セキュリテ
ィ(以下、「RIセキュリティ」という。)について、以下の制度を導入し
ている。
(1)輸出確認証の交付制度の整備(平成17年12月)
IAEAの「放射線源の安全とセキュリティに関する行動規範」(以下、
「行動規範」という。)及び「輸出入ガイダンス」への対応のため、放射
性同位元素の輸出の際に輸出確認証を交付する制度を整備。
(2)放射線源登録制度の整備(平成23年1月)
行動規範への対応のため、人体への放射線影響を及ぼすおそれが高い放
射線源について、特定放射性同位元素※に係る登録制度を整備。
※特定放射性同位元素:密封された放射性同位元素であって人の健康に重大な影響を及ぼす
おそれがあるものとして原子力規制委員会が定めるもの(放射性同位元素等による放射線
障害の防止に関する法律施行規則第39条第4項で規定)
3.RIセキュリティ制度に関する調査・検討
○
文部科学省においては、我が国の現状を把握するため、アンケート調査、
訪問調査、文献調査等により、国内外のRIセキュリティに関する情報を収
集。
(1)特定放射性同位元素所持事業所に対するアンケート及び現地調査(平成
22年12月)
○ 特定放射性同位元素所持事業所を対象に、各事業所で自主的に取り組ま
れているセキュリティの確保、安全確保のための取り組みについて調査
(アンケート調査:約550事業所、現地調査:平成24年度 5事業所)
を行い、これらの取り組みがIAEAの求めるセキュリティの確保に資す
るかを確認した。
(主な調査項目)
・不法侵入を阻止するための物理的な対策
2
・不法侵入を阻止するための運用面での対策
・不法侵入を検知するための物理的な対策
・不法侵入を検知するための運用面での対策
・情報の保護に関する事項
○
各事業所におけるセキュリティ対策については、事業所が自主的に整
備しており、生体認証錠、監視カメラ、人感センサー検知器、境界フェ
ンスの設置、見学者の取り扱い等、事業所ごとに様々であった。
○
今後のRIセキュリティの検討においては、このような状況も踏まえ、
現行の設備を活用しつつ、必要なセキュリティを確保する方策の検討を
行うことが重要であることを確認した。
(2)特定放射性同位元素所持事業所における線源移動に関する現地調査(平
成24年度)
○
放射線源の移動(搬出入)中における盗取の可能性を確認するため、
比較的大きな線源を所持する事業所(2事業所)における実際の放射線源
の輸送に立ち会い、放射線を防護しつつ、施設から放射線源を盗取の困
難さを確認した。
○
調査の結果、放射線の遮蔽が盗取の障壁となるケースがあること、輸
送容器は非常に重く、取扱にはクレーン等の設備が必要であること等か
ら、現時点においても、特定放射性同位元素所持事業所からの放射線源
の盗取においては、何らかの障壁があることを確認した。
(3)海外における放射線源セキュリティ確保制度の状況調査(平成24年度)
○
我が国におけるRIセキュリティの今後の検討に資するため、主要国
(カナダ、韓国、フランス、ドイツ、イギリス、アメリカ)における規制
当局を対象に、メールによる質問により、放射性物質のセキュリティの動
向を調査した。
3
○
主な調査結果は表1及び表2のとおりであり、RIセキュリティの実施
にあたり、概ね、各国において、脅威評価、等級別手法は採り入れられて
いることを確認した。また、個人の信頼性確認については、米国、カナダ
において実施することを確認した。
4
表1
米国、カナダのRIセキュリティ対策比較表
比較事項
米国
カナダ
①脅威評価について
行わない
行う
②等級別手法について
適用する
適用する
③深層防護について
取り入れる
取り入れる
④セキュリティ文化の適用の 訓練
訓練
ための方法
⑤セキュリティ対策について
対策を要求する
対策を要求する
⑥可搬型又は携帯型の放射性 特別の要求あり
特別の要求あり
線源のセキュリティについて
⑦セキュリティ管理について
・出入管理
実施する
実施する
・個人の信頼性確認
実施する
実施する
・情報の防護
実施する
実施する
⑧事業者によるセキュリティ 作成を要求
リスクの大きい線源に対し
計画
て、作成を要求
表2
韓国、フランス、ドイツ、イギリスのRIセキュリティ対策比較表
比較事項
韓国
①脅威評価に 検討中
フランス
行う
ドイツ
行った
ついて
イギリス
行う(ただし、設計基
礎脅威の手段をとら
ず、規範的なタイプの
アプローチを取る)
②等級別手法 検討中
適用する
適用する
適用する
について
③線源の区分 検討中
IAEA の区分を ドイツのアプロ 独自の区分と IAEA の区
分けについて
使用する
ー チ は 、 IAEA 分を併用する。
の区分を考慮し
ない。
④規制の手法 検討中
規範的手法
について
5
複合的手法
規範的手法
4.今後のRIセキュリティに関する検討の方向性
○
検討中の韓国も含め、主要国ではRIセキュリティについて何らかの取り
組みをスタートしており、日本も取り組みを開始すべき時期にある。
○
IAEAの核セキュリティ文書では、RIについても防護の措置が必要で
あるとされている。日本においては、RIに係る防護の措置については、事
業所の自主的な取り組みで実施されている状況であり、国として方向性を示
すことが必要である。
○
第1回核セキュリティに関する検討会においては、RIセキュリティが当
面優先する検討課題の1つとされ、原子力規制庁においては、RIセキュリ
ティに係る措置の現状を把握し、課題の整理を行い、我が国で整備すべきR
Iセキュリティに係る措置について、具体的な検討を行う。
○
検討に当たっては、
・IAEAにおける核セキュリティ文書の発行状況
・文部科学省における国内外の調査
・原子力委員会の決定
を十分考慮する。
(RIセキュリティの検討において考慮すべき事項)
原子力委員会の報告書における放射性物質(核物質を除く)に対する指摘
○
「核セキュリティの確保に対する基本的考え方」(平成23年9月原子力委員会決定)
①
放射性物質は核物質に比べ犯罪行為等の結果生じる被害の大きさが大幅に低く、医
療用照射線源等の大線源又は大量の線源の場合を除き防護対象としての重要度はか
なり低いこと
②
阻止すべき犯罪行為等は盗取及び盗取後の発散が中心となること
を踏まえて、等級別取組の考え方に基づいて放射線利用活動(医療分野、工業分野、教
育分野等)に与える影響が必要最小限となるよう配慮すべき
○ 「我が国の核セキュリティ対策の強化について」
(平成24年3月原子力委員会決定)、
①
放射性物質利用による便益と核セキュリティに係るリスクを勘案すること
6
②
現行の安全規制による措置がセキュリティ確保に資していることを考慮すること
③
防護対象とする放射性物質を現行の放射線源登録制度の対象とすること。
等が留意事項である
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