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労務単価、材料単価、市場単価等の経年変化の調査とその要因の分析 1

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労務単価、材料単価、市場単価等の経年変化の調査とその要因の分析 1
労務単価、材料単価、市場単価等の経年変化の調査とその要因の分析
調整役
山田 隆清
主席研究員
町屋 久夫
主席研究員
武藤 昇一
主席研究員
岩松
準
1. 調査概要
1.1 調査研究の目的と経緯
コスト研では1996年(平成8年)より、「建築コストの変動が把握可能なコスト項目について、その
価格の経年変化を長期的に調査してその実態を図表に整理して公表することや、その変動要因
の分析やコスト変動のシミュレーションを行うこと」を目的とした自主研究に取り組んでいる。具体的
な研究対象は建築の単価情報である。
建築工事の積算に利用される単価には、一般に材料単価、労務単価および材工共の複合単
価があるが、それらの水準や推移を体系的かつ長期的に整理した資料は、それまで世の中には殆
どなかった。価格(単価)は様々なメッセージをわれわれに与える。建築コストを扱うコスト研としても
基礎的な研究に取り組む必要があった。しかし、残念ながらコスト研は独自の価格調査機能を持
たないため、(一財)経済調査会及び(一財)建設物価調査会(以下、両調査会という)が発行する
定期刊行物4誌(図1.1)からの主要9都市の価格情報をインプットすることにしてスタートした。
研究による成果は、当初は機関誌(建築コスト研究)記事や学術論文として発表された。その後、
2007年(平成19年)2月にコスト研のホームページで、73アイテム(表1.1は今回の更新後のリスト)に
ついての単価の推移がわかる図表ならびに関係論文を公表した。そして、その後も毎年データを
追加・更新している。現在公表中の経年変化グラフは、原則として1970年(昭和45年)から2012年
(平成24年)までの期間をカバーしている。
図1.1 引用した出版物
-1-
表1.1 「建築コストの経年変化」(コスト研 HP) 掲載アイテムのリスト(全73)
1. 市場単価および施工単価(44)
1-1.市場単価(建築工事) 1-2. 市 場 単 価 ( 電 気 設 備 工 事 )
(18)
(11)
1)根切り
2)鉄筋 加工 組立(施工 費の
み)
3)鉄 筋 ガス圧 接 (施 工 費 の
み)
4)コンクリート工 事 (施 工 費 の
み)
5)普通合板型枠
6)屋根アスファルト防水
7)シーリング
8)屋内軽量鉄骨天井下地
9)床コンクリート面直均し仕上
げ
10)複層塗材E
11)フロート板ガラス
12)EP塗り
13)ビニル床タイル張り
14)ビニル床シート張り
15)タイルカーペット張り
16)壁せっこうボード張り
17 ) 天 井 ロ ッ ク ウ ー ル 吸 音 板
張り(フラットタイプ)
18 ) 天 井 ロ ッ ク ウ ー ル 吸 音 板
張り(凹凸タイプ)
1)600V ビニル絶縁電線
2)600V ビニル絶 縁 ビニルシースケーブ
ル
3)合成樹脂製可とう電線管
4)2種金属線ぴ
5)ケーブルラック
6)鋼板製プルボックス 1
7)鋼板製プルボックス 2
8)位置ボックス
9)防火区画貫通処理
10)接地極
11)電動機その他接続材
1-3.市場単価(機械設備工事)(9)
1)コーナーボルト工法ダクト
2)スパイラルダクト
3)チャンバー
4)アネモ型吹出口(取付費のみ)
5)風量調整ダンパー(取付費のみ)
6)衛生器具取付費(取付費のみ)
7)保温工事(長方形ダクト)
8)保温工事(スパイラルダクト)
9)保温工事(給水配管)
1-4.施工単価(建築・電気設備・機 械
設備)(6)
1)鉄骨工場加工組立
2)床用磁器質タイル
3)外壁小口タイル
4)アルミ製建具
5)埋込型蛍光灯
6)配 管 工 事 (水 道 用 硬 質 塩 化 ビニルライニ
ング鋼管、手間のみ)
2.
材料単価(18)
1)異形棒鋼 SD295A D10(車上渡し)
2)異 形 棒 鋼 SD345 ベースサイズ D19(車
上渡し)
3 ) 生 コ ン ク リ ー ト : 強 度 21(N/ ㎜ 2 ) ス ラ ン
プ:18cm 骨材最大寸法 25(20)㎜以下
4 ) H 形 鋼 ( SS400 ) ( H-200 × 100 × 5.5 ×
8(㎜) 車上渡し)
5 ) コ ン ク リ ー ト 用 型 枠 用 合 板 ( 12 × 900 ×
1800(㎜) JAS 品 輸入品)
6)床タイルⅠ類(磁器質 相当、無 釉)吸 水率
3.0%以下 100(㎜)角 平
7) 外 装 タ イル Ⅰ 類 ( 磁 器 質 相 当 、 無 釉 ) 吸
水率 3.0%以下 小口平 100×60(㎜)
8) 天 井 鋼 製 下 地 材 ( シン グル 野 縁 CS-19
25×19×0.5(㎜) 5(m)
9)天井ロックウール化粧吸音板 12×300×
600(㎜) 内 部 用 凹 凸 タイプ 不 燃 、捨
張工法用
10)フロート板 ガラス FL-5(㎜) 2.18(㎡)以
下(特寸)
11)ビル用アルミサッシ 引き違い窓 W1500
×H1800×枠見込み 70(㎜)
12)木材(JAS 用材)正角材 米つが 400×
10.5×10.5(㎝) 1等
13)埋込型蛍光灯 FRS15-322 PH Hf 下面
開放
14)露出型蛍光灯 FSS9-322 PH Hf カバー
なし
15)600V ビニル絶縁電線 38(㎜ 2 )
16)600V ビニル絶縁電線 1.6(㎜)
17)衛生器 具 洋 風便 器(C910R、フラッシュ
弁)
18)水 道 用 硬 質 塩 化 ビニルライニング鋼 管
(給水管 50A)
3.
労務単価
(11)
1)特殊作業員
2)普通作業員
3)とび工
4)鉄筋工
5)塗装工
6)運転手(特殊)
7)型枠工
8)大工
9)内装工
10)電工
11)配管工
(注)本論文の 2.において分析対象としたアイテムを太文字で表示した。
1.2 ホームページ・リニューアルの主な内容
2012年12月に、公表内容をより分かりやすく、しかも正確なものにすることを意図し、以下の点
について見直し、ホームページをリニューアルした。
・単価の整理(出現順、名称、表記の統一)
・グラフの修正(両調査会の線色分け、仕様明記、都市グループの再編、変動時のコメント)
・英文名称の整理1
1
各単価の英文名称の詳細はホームページを参照。なお、掲載単価の種類呼称を下記で統一し、グラフ中には
英文字略称を用いてその違いを説明している。
市場単価(MUP):Market Unit Price
施工単価(CPUP):Construction Process Unit Price
材料単価(MUP):Material Unit Price
労務単価(LUP):Labor Unit Price (なお、英米語では慣用的にLabour (Labor) Rates を使っている)
公共工事設計労務単価(ULCPWE):Unit Labor Costs of Public Works Estimate
両調査会公表の労務単価(LRS):Labor Rates Surveyed
-2-
2. 「建築コストの経年変化」(機械設備工事)の動向について
コスト研のホームページに掲載している「建築コストの経年変化」は、市場単価38品目(アイテム)、
施工単価6品目(調査会独自の調査条件による工事単価)、材料単価18品目及び労務単価11品
目(公共工事設計労務単価)について1970年から2012年までの経年変化をグラフにまとめたもの
であるが、2012年度(平成24年度)からは内容についての検討を加えることとした。本報告は、建築
コストの経年変化のうち機械設備工事に関する現状把握及び今後の課題についてまとめたもので
ある。今後建築工事、電気設備工事についても検討し全体としてのまとめを行う予定である。
「建築コストの経年変化」に掲載されている品目の明細は表1.1の通りであり、今回対象とした機
械設備工事の品目数は、太文字で示した市場単価9品目、施工単価1品目、材料単価2品目、労
務単価1品目の合計13品目である。なお、ホームページに掲載した市場単価は代表的な品目だけ
掲載しているので、公表されている市場単価の品目数とは一致しない。
なお、以下の文章中の都市名の記載のない単価は東京単価を、調査機関の名称の記載のな
い単価は両調査会の平均値を採用している。
2.1 市場単価
(1)留意事項(市場単価・施工単価・材料単価・労務単価共通)
1)「市場単価」と「施工単価」(調査会独自の調査条件による工事単価)とは、仕様や単価構
成条件に違いがあるため単純に比較はできないが、経年変化を見るために便宜的に同じ
グラフにプロットしているので注意が必要である。そのため、市場単価に移行した年に縦罫
線を追加して違いを明確にしているが、市場単価移行時に大きな価格変動が見られる場
合は、この違いが変動の要因とも考えられる。
2)機械設備工事では1987年(昭和62年)以前の施工単価は、仕様や単価構成条件が市場
単価とは大きな相違があり比較できないものが多いので、誤解を招かないよう掲載を取りや
めた。(例えば材工単価と労務費のみの単価が混在しているなどの理由による。)
(2)検討内容(市場単価・施工単価・材料単価・労務単価共通)
今回は以下の共通検討事項についての報告であるが、主に経年変化についてまとめたもので、
両調査会間の格差や地域間格差については、顕著な品目の一部について若干その現象につい
て述べているが、詳細な検討は次回以降の報告で行うものとする。
1)価格の推移(バブル高騰期前、バブル高騰期、現在の価格の傾向など)
2)特異な価格変動、両調査会の相違(価格の乖離およびバブル高騰期間の相違など)
3)その他
(3)バブル期について
「内閣府による景気基準日付」によると、第 11 循環期は 1986 年 11 月を谷として、1991 年 2 月
を山としているため、1986 年 12 月から 1991 年 2 月までの 51 ヶ月間(4 年 3 ヶ月)をバブル期とし
グラフ上に示した。また、実際の単価(価格)のバブル期間は、この定義よりも数年遅れて始まるた
め、本文中では「バブル高騰期前」、「バブル高騰期」、「バブル高騰期後」として使い分けている。
-3-
(4)市場単価の検討細目
以下に市場単価の経年変化のグラフ及びその傾向を示す。
1)コーナーボルト工法ダクト
図2.1.1 コーナーボルト工法ダクト
①価格の推移(A パターン)
★パターンについては 9 頁の表 2.5.1 各単価の変動パターン」による。
89 年
93 年
12 年
4,880 円
7,145 円
5,005 円
100%
146%
103%
・機械設備では、バブル高騰期前の単価は 89 年 4 月、バブル高騰期の単価は 1993 年
4 月の品目が最多であったため、この年を基準として比較している。直近は 2012 年 4
月単価とした。
・市場単価への移行直前にバブルがはじけて大きく下落し、市場単価移行後は穏やか
に価格が下落し、現在はバブル高騰期前の価格と同水準になっている。
・「A パターン」は、バブル高騰期の価格がバブル高騰期前に比べて 1.5 倍程度になり、
現在はバブル高騰期前と同程度の価格となっているパターン。材工共の単価のため、
当然のことながら材料費と労務費の両方の影響を受けるものと考えられる。(具体的な
影響については今後分析する予定)
②特異な価格変動
・両調査会の価格差は殆ど無いが、2008 年から 2009 年にかけて経調だけに一時的な
価格上昇の傾向が見られる。経調へのヒアリングによれば北京オリンピックや世界的な
原材料価格の急騰による影響と思われるとの説明だが、なぜ物調 には影響がないの
かは不明である。
-4-
・価格上昇の時期がバブル経済の実際の時期より 3 年前後遅れて始まっている。
全体的に、建築では 2~3 年、電気・機械では 3~4 年程度の遅れがあるが、景気の動
向が建築業界へ反映されるまでに 2 年前後、電気・機械へ反映されるまでに更に 1~
2 年掛かるのではないかと思われる。
また、労務費の高騰は実体経済のバブル期が終了した年からスタートしており、市場
単価へ移行するまでは一本調子で上昇を続けていることも原因と考えられる。(以下
同様)
・市場単価移行後の東京単価は、大阪・名古屋よりやや高めで推移している。(以下同
様)
・バブル期間は実体経済では約 4 年(1986 年 11 月~1991 年 2 月の 51 ヶ月)であるが、
物調は約 5 年、経調は約 6~7 年とその期間が長く、調査会間でも期間が相違してい
る。(以下同様)
③その他
・市場単価移行前の施工単価は年 2 回、市場単価は年 4 回のため、横軸が市場単価へ
移行する前後で間隔が違うので、移行後の動向が穏やかに見える。(以下同様)
以下についても同様の分析を行った。その経年変化を図2.1.2~図2.1.9に示す。
2)スパイラルダクト
3)チャンバー
4)アネモ型吹出口(取付費のみ)
5)風量調整ダンパー(取付費のみ)
6)衛生器具取付費(取付費のみ)
7)保温工事(長方形ダクト)
8)保温工事(スパイラルダクト)
9)保温工事(給水配管)
-5-
2.2 施工単価
1)配管工事(水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管、手間のみ)
単価構成内容は、労務費+運搬費+専門工事業者諸経費(総合設備工事業者の諸経費は
含まない)で構成され、材料費(主材料・補助材料とも)は含まない。配管工事の請負形態として
は、「材工共」、「主材料支給」、「手間のみ」の3パターンがあり、ここでは「手間のみ」を対象とし
ている。今後、公共工事設計労務単価との関連を検討する必要がある。
①価格の推移(A パターン)
89 年
93 年
12 年
3,566 円
5,319 円
3,430 円
100%
149%
96%
・バブル高騰期の 1993 年をピークに 2004 年まで 11 年間下落が続いたが、2005 年に約
15%下落して以降の 8 年間は殆ど価格の変動が見られない。
②特異な価格変動
・経調は 2002 年~2003 年に一時的に約 20%高騰したが、すぐに元に戻っている。
③その他
なし
図2.2.1 配管工事(水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管、手間のみ)
(給水管50A、屋内一般、ねじ接合)
-6-
2.3 材料単価
1)衛生器具 洋風便器(C910R、フラッシュ弁)
①価格の推移(パターンなし)
89 年
93 年
12 年
48,255 円
52,850 円
39,000 円
100%
110%
81%
・バブル高騰期の 1993 年をピークに 2004 年まで 11 年間下落が続いたが、2004 年~
2005 年には底を打ち、以後は上昇に転じている。直近の 3 年間は殆ど価格の変動が
見られない。
②特異な価格変動
・物調は地域間格差が殆ど無いので全国同一の価格でも良いかも知れない。
・経調の札幌・仙台・新潟グループは例外的に価格差がある。
③その他
なし
図 2.3.1 衛生器具 洋風便器(C910R、フラッシュ弁)
(東京・大阪・名古屋)
2)水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管についても同様の分析を行った。
-7-
2.4 労務単価(公共工事設計労務単価)
1)配管工
①価格の推移(B パターン)
89 年
94 年
93 年
12 年
13,800 円
21,235 円
18,600 円
17,300 円
100%
154%
135%
125%
100%
93%
・2012 年の配管工の設計労務単価は、1994 年のバブル高騰期最高単価より 18.5%下
落し、設計労務単価の公表開始時の 1999 年 4 月より、7%下落している。
②特異な価格変動
・これまで労務単価は上昇する一方で下落することはないと言われていたが、両調査会
独自公表単価から、公共工事設計労務単価へ移行した後は、上下を繰り返しながら
1999 年から 2012 年の 13 年間で 7%の微減となっている。
③その他
図2.4.1 配管工の労務単価(公共工事設計労務単価)
2)ダクト工
市場単価に移行した機械設備の品目にはダクト工事関連が多いが、コスト研のホームページ
には「ダクト工」の公共工事設計労務単価が公表されていないので、市場単価との比較検討が
可能となるよう「ダクト工」を追加する必要がある。(保温工も同様)
-8-
2.5 まとめ
(1)単価の変動パターン
これまで市場単価、施工単価、材料単価及び労務単価の経年変化を比較検討してきたが、表
2.5.1に示すような変動の傾向があることが分かった。(次頁以降の各パターン別グラフを参照)
A パ タ ー ン :材工単価である市場単価と施工単価の品目は同じパターンに分類できる。
(黄色)
(バブル高騰期に 1.5 倍程度に上昇し、現在はバブル高騰期前の水準に戻
っている)
B パ タ ー ン :取付費のみの品目は、労務単価と同じパターンに分類できる
(水色)
(バブル高騰期に 1.5 倍~2 倍に上昇し、現在はバブル高騰期前の 1.3 倍~
1.5 倍)
パターン無 し:保温工事は明確なパターンが把握できなかったが、材料費(保温材)と労務
費(保温工)の変動を確認できれば、A と同一のパターンとなることが考えられ
る。また、材料費については他の単価とは別の要因によって価格が決まって
いるようなので、今後はそれらの要因との関係も検討することとしたい。
表2.5.1 各単価の変動パターン
単価種類 番号
バブル前
バブル期
1989年4月
1993年4月
現在
移行時
2012年4月
パターン 移行時期
1-①
コーナーボルト工法ダクト(材工)
4,880
100%
7,145
146%
5,515
113%
5,005
103%
A
99年移行
1-②
スパイラルダクト(材工)
4,170
100%
5,880
141%
4,855
116%
4,405
106%
A
99年移行
1-③
チャンバー(材工)
8,950
100% 13,300
149%
9,105
102%
8,880
99%
A
01年移行
1-④
アネモ形吹出口(取付費のみ)
4,220
100%
7,725
183%
5,850
139%
5,725
136%
B
02年移行
風量調整ダンパー(取付費のみ)
4,230
100%
8,220
194%
6,470
153%
6,165
146%
B
02年移行
市場単価 1-⑤
1-⑥
衛生器具取付費(取付費のみ)
1-⑦
保温工事(長方形ダクト、材工)
1-⑧
1-⑨
施工単価 2-①
材料単価
品目名称
100% 20,900
174% 17,800
148% 15,750
131%
B
00年移行
4,770
100%
8,415
176%
5,565
117%
5,775
121%
無し
03年移行
保温工事(スパイラルダクト、材工)
5,250
100%
8,840
168%
4,365
83%
3,070
58%
無し
03年移行
保温工事(給水配管、材工)
1,235
100%
1,495
121%
1,455
118%
1,450
117%
無し
09年移行
配管工事(塩ビライニング鋼管、手間のみ)
3,566
100%
5,319
149%
0%
3,430
96%
A
-
100% 52,850
110%
0% 39,000
81%
無し
-
100%
1,069
107%
0%
1,315
132%
無し
-
100% 21,235
154%
0% 17,300
125%
B
-
3-①
衛生器具(洋風大便器)
3-②
水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管
労務単価 4-①
配管工
12,040
48,255
999
13,800
(2)材料費の変動要因について
過去にコスト研の機関誌「建築コスト研究」に連載された「資材価格はどう決まってきたのか?」
によれば、材料価格の変動は以下のような要因が挙げられている。(経済調査会)
①水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管
・原管価格(ガス管価格の動向)
・需給バランス
・競合管種の動向(ステンレス管・ポリエチレン管・ポリライニング鋼管等と競合)
ガス管の価格は市況が値上げの局面ではメーカーの意向が、値下げの局面ではユーザ
ーの意向が強く働いている。(不況の時には価格競争のために値下げの局面となる)
(調査会コメント)
②衛生器具
・需給バランス
・原材料価格(焼成炉の主燃料である重油価格)
-9-
A パターン
図2.1.1コーナーボルト工法ダクト
図2.1.2スパイラルダクト
横 軸 目 盛 が違 う
ので単純に比較
ができない
図2.1.3チャンバー
図2.2.1配管工事
(水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管・手間のみ)
B パターン
図2.1.4アネモ形吹出口
図2.1.6衛生器具取付費
図2.1.5風量調整ダンパー
図2.4.1配管工(公共工事設計労務単価)
- 10 -
パターン無し
図2.1.7保温工事(長方形ダクト)
図2.1.8保温工事(スパイラルダクト)
図2.1.9保温工事(給水配管)
・上記 3 品目はさらに材工別に分析すれば、A パターンに分類できるかも知れない。
図2.3.1衛生器具(洋風便器)
図2.3.2水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管
・上記 2 品目は似たような傾向があるのでさらに分析すれば、別のパターンに分類できるかも
知れない。
- 11 -
(3)機械設備工事の各種単価の特徴
1)材工単価は、バブル高騰期前の価格水準に近い価格まで下落している。(A パターン)
コーナーボルト工法ダクト
スパイラルダクト
チャンバー
2)取付費のみの単価は、公共工事設計労務費と同じ動向で、バブル高騰期前とバブル高騰
期最高単価との中間の価格になっている。(B パターン)
アネモ型吹出口取付費
風量調整ダンパー取付費
衛生器具取付費
3)保温工事(長方形ダクト)、保温工事(スパイラルダクト)、保温工事(給水配管)は、材工単
価であるため A パターンに該当すると思われるが、途中で仕様変更や施工単位の変更など
があり現時点では「パターン無し」に分類した。(保温工事の材料費と労務費の調査が必要
である)
4)施工単価と公共工事設計労務単価との関係(図2.2.1と図2.4.1との比較)
・施工単価(配管工事、手間のみ)は、1993年をピークに2004年まで穏やかに下落したが、
2005年に16%急落して横ばいのまま現在に至っている。
・公共工事設計労務単価(配管工)は、1993年~1996年をピークに下落しているが、1999
年~2012年にかけては比較的上下しながら、この間で7%下落しているが、2005年以降の
施工単価(配管工事、手間のみ)と似た傾向となっている。(1997年・1998年はデータが公
表されていない)
・この2つのグラフは横軸目盛が異なるためバブル高騰期の動向が違って見えるが、実際
はそれほどの差異はない。(他のグラフも横軸目盛の相違に注意する)
5)資材単価の変動要因は、A パターン、B パターンに当てはまらない衛生器具(洋風便器)と
水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管の価格の傾向は直近の4~5年以外は、類似してい
る部分がある。
6)両調査会の価格傾向は以下の通り
・バブル高騰期前は経調が高く、その後は大差ない品目
コーナーボルト工法ダクト
スパイラルダクト
チャンバー
保温工事(長方形ダクト)
保温工事(スパイラルダクト)
・両調査会の差が殆ど無い品目
アネモ型吹出口取付費
風量調整ダンパー取付費
衛生器具取付費
保温工事(給水配管)
- 12 -
・現時点で大きい差異が認められるもの
水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管(経調が 20%高い)
7)バブル高騰期間の動向
・材工単価の品目(A パターン)は、物調のバブル高騰期間に比べて経調のバブル高騰期
間は、約2倍程度と長期にわたっている。
・労務費のみの品目(B パターン)は、両調査会ともバブル高騰期間・単価が、ほぼ同一で
ある。
8)市場単価へ移行前後の傾向
・仕様変更による価格の変化を除けば、全体的に穏やかに下落、または殆ど変化無しの傾
向であった。
・市場単価への移行時の変動要因については工学院大学の遠藤和義教授が「建築コスト
研究」46号2004年 SUMMER「設備工事の市場単価導入前後の推移」で設備工事の特徴
について以下のように述べている。(コーナーボルト工法ダクト、スパイラルダクト、衛生器
具取付費を対象としている)
a)従来の施工単価も含めた過去のピークと現在の水準を比較した場合、建築工事の躯
体関係のアイテム(型枠、鉄筋、コンクリート)に比べて下落の幅は小さい。
b)市場単価導入後の下落の程度も建築工事に比較して穏やかであり、特に最近数年、
機械設備工事のアイテムは価格の動きが少ない。
この a)、b)については、需給関係だけでなく、建築と設備、さらにアイテム間で単価の
硬直性に差異があることが考えられる。
c)市場単価導入直後の従前の施工単価とのギャップが目立つ。今回は上昇したアイテ
ムの方が多いが、同一アイテムでも地域によってダウンしている場合もある。
市場単価導入直後にアップしたアイテム・地域も総じて比較的短い期間で下落し、他と
の差は縮小している。
・(前出の遠藤論文によると)実態調査→結果公表→予定価格への反映→実態調査→結
果公表→予定価格への反映→・・・というサイクルにおいて、地域での公共工事のシェア
が高く、受注側の競争関係が強ければ、予定価格の上限拘束性によって自ずと市場単
価は下がるという指摘がある。
フォローアップすべき市場単価の課題として、
a)各アイテムの特性の把握とその調査方法等への反映
b)市場単価決定に関わる情報のサイクルの詳細な分析
c)地域における官民の市場規模のバランスの影響
などがある。
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3. 全体の問題点と対策
今後更に建築工事、電気設備工事の検討を行い、共通の課題について対策を提案したいと考
えている。以下は現時点での問題点及び考えられる対策である。
1)変動幅が大きい品目が見受けられるので、両調査会を通じてその原因を調査することとした
いが、過去の原因調査は困難な場合が多いので、今後の価格変動時にはタイムリーに原因
調査を実施する。
2)両調査会の価格に乖離が見られるものがあるが、市場単価については建築工事市場単価方
式調査研究会等の組織を通じて乖離の原因等を調査し、必要に応じて両調査会に改善の
検討を要請する。また、コスト研独自の調査を実施する等の措置をとる。(民間出向者の出身
団体へのヒアリングによる現場の取引情報の入手等)
3)調査価格はバブル経済の時期より数年遅れて反映され、バブルが終わってから価格高騰が
始まるケース(電気設備、機械設備)も見受けられる。また、価格高騰期間、高騰幅、時期等
について建築・電気・機械の傾向を把握して、今後バブル期と同様の変動期に備える。
4)市場単価の動向把握に必要な材料単価、設計労務単価が調査対象となっていないものがあ
るので、順次調査対象として追加する。少なくとも市場単価全品目、両調査会の価格の乖離
が大きい品目、価格の変動が大きい品目などは継続的な調査品目に追加する。
5)コスト研のホームページに掲載している内容は、データ提供だけで内容についての解説がな
いので、変動があった時にはコメントが必要と思われる。そのためには、四半期ごとに価格をグ
ラフに反映させて公表し、高騰や暴落があった時にはその要因を調査して公表するなどのア
クションを起こす必要がある。
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