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東日本大震災とメディア報道 - 文学部准教授 山田 健太

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東日本大震災とメディア報道 - 文学部准教授 山田 健太
受け手市民の〝成長〟に応えよ
進む伝統媒体と新媒体の連携
後にも政府高官等がより 事態を経験して、より
〈賢
被害を過大視したとされ い市民〉に成長してきて
る「エリートパニック」 いると思う。たとえばそ
という検証がなされてい れは、ネットユーザーが
う
の
るが、視聴者は本当にテ 確認のために紙媒体を買
レビの情報を鵜呑みにし ったり、オールドメディ
おご
て パ ニ ッ ク を 起 こ す の ア派がネット情報をチェ
初期段階における伝統メ の強まり、などの項目が て、④メディアの役割分 ないか、改めて考え直し それぞれの媒体の特性を
さらにはこれらを通じ か。そこには局の驕りは ックしたりすることで、
ディアの「瞬発力」の発 挙げられよう。
ーナリズムの問題は、① ・安全報道に対する批判
にも大きな課題を与えた。メディアを取り巻く
東日本大震災は、ジャーナリズムのありよう
法制度や倫理を専門とする山田健太准教授に寄
揮、②その後の伝統メデ
一方で新興メディアが 化、⑤受け手に生まれた 食品や空気中の放射能汚 がら、情報の選別と確認
ィアの検証力・批判力の 果 た し た 役 割 に つ い て クロスメディア接触の実 染 を 「 安 全 」「 た だ ち に 作業を自らの責任で行お
(やまだ・けんた)
今回の震災に関して
は、いち早く日本記者
クラブで各紙面の検証
結果を発表するほか
(模様は日本記者クラ
ブHP4月 日会見分
で配信中)
、
琉球新報や
毎日新聞の連載コラム
で各メディアの報道や
政府対応を分析、『エデ
ィターシップ』(日本編
集者学会紀要)
で
「震災
とメディア」として論
稿をまとめている。ま
た、情報通信学会など
でのシンポや講演に加
え、9月に韓国で開催
された国際学会でも日
本側代表として報告し
た。専門は言論法、ジ
ャーナリズム論。日本
ペンクラブ理事・言論
表現委員長、BPO放
送人権委員会委員、日
本出版学会理事・国際
交流委員長、自由人権
協会理事・前事務局長
ほか。
近著に
『法とジャ
ー ナ リ ズ ム 』( 学 陽 書
房)
、
『ジャーナリズム
の行方』
(三省堂)
、『放
送 法 を 読 み と く 』( 商
事法務、
共編)
、『よくわ
か る メ デ ィ ア 法 』( ミ
ネ ル ヴ ァ 書 房 、共 編 )、
『新版マス・コミュニ
ケ ー シ ョ ン 概 論 』( 学
陽書房、共著)など。
が、それを受け売りする わかる。新聞の時代は終 ないということも認識す ある。放射線量を基準に っても取材したいという
ここでは、そのうちの ことなく、読者・視聴者 わったとか、ネットはデ る必要がある。しかもあ した取材規制ルールはJ 本人の意思があるなら、
い。
ことが報道機関の役割で のメディア状況をうまく してどう残し伝えていく な状況は考えていなかっ にまでリスクを負わせる
いを峻別し検証し伝える せっかく多様化したいま えていく。それを記録と 故を想定しており継続的 しかし一方で望まない人
しゅんべつ
ること、安心と安全の違 アへの接触の偏りでは、 当時の取材体験などは消 われるが、当時は単発事 拒むのは問題だと思う。
おける取材・報道空白、 連携、を挙げることがで ん と 一 緒 に 考 え て み た マの数値をきちんと報ず め付けによる特定メディ での犠牲者の状況やその できたものが大半だと思 方から組織としてそれを
⑤とりわけテレビの安心 きるだろう。
メディア特性が現れた報道
もう一つ、報道機関へ ま適用するのは無理があ て、現状では志願制にせ
生かしているとはいえな かを考える必要がある。 た。今回、それをそのま の も 問 題 だ 。 し た が っ
の 厳 し い 批 判 が 「 逃 げ ったが、ほかに基準がな ざるを得ないと思うが、
た」というものだ。大手 いなかで当初の判断基準 志願者が少ないという現
もちろん、そうした状 伝え続けていくか、取材 要はないと思う。遺体映 メディアが原発事故後に としては止むを得なかっ 実 も あ る 。そ れ を ど う す
被災者に寄り添う報道の意味
むしろ受け手は、この いわけである。
伝統的なメディアは発 ディアは、自らの取材で しなかったといわれてい はないか。
徴は大きく、テレビやラ た役割、そうした中で起 生当初、行政を遥かに上 得た確実な情報のみを流 る。アメリカの9・ の
ジオ、新聞等の伝統メデ きた情報コントロールの 回る量と質の速報で被害 すことを旨としてきた。
同時に一定の安心感の醸 が高いということから政
ィアを中心とするジャー 問題、に分けて考えるこ 実態の共有化に貢献し、 その関係で情報の信憑性
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ィア、とりわけ新聞やテ だろう。それでも報道し ただし報道機関は、被災 を流すことなく、住民が というより一時しのぎに レベルで体制を整えてい
しての社会的責務でもあ
もちろん、リスクを負 れは、オールメディアと
もちろん、原発事故に レビは「被災者に寄り添 切るという「覚悟」を持 地以外の一般市民に凄惨 住んでいる中で自らは一 過ぎないのではないか。 く必要があると思う。そ
ルな記者が精度の 規制や専門知識の欠如、 番組・紙面作りを行って 被災者に寄り添う報道は
いっぱいで検証に割く時 ガンにしてはいないだろ や放送局でこそ発揮して
日本のジャーナリズム
援に活躍したが、伝統メ る。
ディアは圧倒的な速報
性、
情報の豊富さ、
信頼性 の特徴として、速報主義
で、本来の力が社会に再 や客観報道原則がある。
寄稿の山田健太准教授 「活字の衰退」などでマ 認識された。その力が著 しかし単に早ければよい
『ジャーナリズムの行方』
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山田准教授
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出 版
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その関係で難しい問題
を受けることにな える限界と構造的問題が て い く か が 問 わ れ て い いくものと考える。
った。そこに従来 見え隠れしているともい る。
いま陸前高田市に行く が遺体写真・映像を典型
が れき
あ る い は テ レ ビ の 場 と 瓦 礫 の 山 は 片 付 け ら 例とした、凄惨な情報の
型の取材報道体制 えるのである。
への懐疑や批判が
含まれていること 合、刺激的な情報や凄惨 れ、一見すると綺麗な草 報道自粛である。最初の
リズムの行方』だ。
こういったメディアの は、現実から逃げずに現
現状を見つめ、業界が抱 場で起きている事実を直
3・ 東日本大震 える問題、これからのジ 視し伝えることであり、
している。
展望が開けることを示唆
発表 という批判 子には伝統メディアが抱 を、具体的にどう発信し 頼関係の中で醸成されて を 出 版 し た 。『 ジ ャ ー ナ ム性を自覚することで、 分析する。
!
が重要だ。すなわ な画像を流すと社会の混 原風景だ。その中でどう 3カ月から半年という範
災地情報の発信や救 2200円+税)
われている。
の新興メディアが被 る。(三省堂・本体価格 れがいまのメディアに問
動画投稿サイトなど 方向を考え、提言してい や番組を作ることだ。そ
災では、
ツイッター、 ャーナリズムの行くべき 想像力を働かせて誌紙面
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"
ちこれまで伝統メ 乱を引き起こすので放送 息切れせず、忘却せずに 囲では遺体映像を出す必
もある。ジャーナリズム
を 得 ず 、 大 本 営 しかしながら、その根っ き る 地 元 の 見 方 や 意 見 る、地元住民との間の信 ィアの存在意義を問う本 使命であるジャーナリズ な役割を果たしていると 観的な報道が必要な場合
の情報に頼らざる 幅させたわけではある。 は東京発の情報に対抗で 々 の 活 動 の 中 で 生 ま れ ・新聞・出版など伝統メデ われる中、本書は本来の を作り、市民社会に多大 正をあえて踏み越えて主
「言論公共空間」 わけではないし、中立公
放送
(テレビ・ラジオ) スメディア終えん論が言 者の言う
政府等の公的機関 どが、その欠陥をより増 人、最も弱い人、あるい 置した東北臨時支局の日 が、
ただしその後は 間も能力も不足した点な う か 。 最 も 困 っ て い る ほしいし、在京各社が設
いる。
とに裏打ちされて て、事実のフォローが精 したり、抽象的なスロー 多いであろう地元の新聞
で発信し続けたこ 絶 え 間 な い 進 行 に よ っ かしその言葉に自己満足 い気持ちは、しがらみが
高い情報を現地発 事態の広がりの大きさや いるといえるだろう。し できないと思う。その強
福島市内・東電記者会見の様子
=5月3日、山田准教授撮影
▲
伝統メディアへ提言
プロフェッショナ おける現場へのアクセス う報道」をコンセプトに たなければ本当の意味で さが十分には伝わってい 時退避したという事実が
しかも鍛えられた
な取材網を有し、 になったわけである。
は、継続的安定的 報隠し」とみられること だ。そのなかで伝統メデ 都合な情報も入ってくる はできたと思うからだ。 の報道機関が、危険情報 てよいというのでは基準 各社で協力するなど全国
を発揮した。それ 傾向にあった。これが
「情 いのはメディア側も同じ 災者にとって不愉快で不 共有や共感できる絵作り は、水素爆発直後に一部 の、中高年記者なら行っ な取材報道のためには、
いう点で大きな力 比較してより上位に置く 応をとらなくてはいけな ている。その中には、被 な状態についての情報の た こ と を さ す 。 あ る い 用の工夫は見られるもの なればなるほど、継続的
このうち、第1のジャ 成、広く支援力の形成と 府発の情報を民間情報に 況をきちんと理解し、対 ・報道の継続力が問われ 像がなくても今回は悲惨 周辺地域の取材を自制し た面が強い。その後、運 る か 。時 間 の 経 過 が 長 く
ナリズムのありようの問 とができよう。
題と、インターネット等
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界、④放射能汚染地域に な伝統・新興メディアの いくつかについて、皆さ が判断するのに十分なナ マばっかり、といった決 と2~3年経てば海岸線 OCの東海村事故の際に 報道の公益性という考え
学におけるメディアの限 況、②消息情報に代表的
てきた「原子力ムラ」力 し た 新 興 メ デ ィ ア の 状 考える。
不足、③その過程で見え は、①社会的存在感を示 態、が明らかになったと 危険はない」とPRする うとしていることからも
文学部
人文・ジャーナリズム学科
准教授
今回の
「災害報道」
の特 の新興メディアが果たし
担の明確化と特性の顕在 てもよいと思う。政府は 意識的・無意識に考えな
稿していただいた。
健太
山田
第494号
(昭和44年10月14日第3種郵便物認可)
修
専
ス
ー
ュ
ニ
2011年(平成23年)11月15日
(3)
東日本大震災とメディア報道
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