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自治体CIOを考える

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自治体CIOを考える
自治体チャンネル+
平成
14
年
18
【基調報告】
実践的自治体CIO考
石川 雄章 氏
(国土交通省 東京国道事務所 所長〈前・高
知県CIO〉
)
【先進的取り組み事例 1 】
民間出身CIO補佐が見た自治体における情
報システムのガバナンス
松下 邦彦 氏
(新潟県 総務管理部 情報企画監)
【先進的取り組み事例 2 】
豊中市におけるCIO
松岡 勝義 氏
(豊中市 政策推進部 情報政策担当理事)
【パネルディスカッション】
自治体CIOを考える ―自治体におけるCIOの理想と実践―
パネリスト:石川 雄章 氏、松下 邦彦 氏、
松岡 勝義 氏
コーディネーター:磯部 悦男
(三菱総合研究所 公共ソリューション事業本部 本部長)
月号
7
基 調 報 告
準をつくる。
実践的自治体CIO考
・事業:計画を執行する。
石川 雄章氏
・渉外:部門内、庁内外の協力組織、知事への
国土交通省 東京国道事務所 所長(前・高知県CIO)
説明、議会との意識のすり合わせ、住
民への広報を行う。
■自治体CIOとは
これらの業務を主導するのが、自治体CIOで
自治体の情報化に関しては、行政事務の高度
ある。したがって、自治体CIOは、行政におけ
化と住民サービスの拡大にとどまらず、産業振
る経営判断能力とITの能力を高いレベルでバ
興や雇用拡大に結びつく環境整備も期待される。
ランスよく併せ持つことが望まれる。しかし、
その中で情報部門に求められる業務としては、
実際には庁内外の協力を得て、能力を補完して
主に以下の 5 つがあげられる。
進めていく。
・戦略:中長期的なビジョンや目標を掲げ、予
そこで、これまでの経験をもとに自治体CIO
算面も考慮した計画及び重点を置くべ
を 4 つの類型にまとめてみる。第 1 型は、判断
きプロジェクトを選択する。
レベルが三役並みにあり、IT分野でも最終責
・組織:施策に関連する庁内外の組織との役割
分担を明確にする。
・制度:適切な調達を行えるようなマニュアル
や、システム開発を行う上での技術基
任者としての役割を果たすCITO型。第 2 型は、
判断レベルが三役並みにあり、主に行政判断で
主導権を取り、IT分野にも携わるというCIO型。
第 3 型は、年齢が若く経験が浅いため、三役並
石川 雄章氏
(国土交通省 東京国道事務所 所長)
松下 邦彦氏
(新潟県 総務管理部 情報企画監)
松岡 勝義氏
(豊中市 政策推進部 情報政策担当理事)
みの判断レベルにはないが、IT能力が高く、
めるなどして実現可能な状態にする必要がある。
予算や制度面での調整ができるCIO代行型。第
CIOが特に留意すべき点は、プロジェクトの大
4 型は、任期付等で外部から来た方で、行政判
きさや性質を考慮しながら、全体の流れをイ
断面での主導権はないが、ITの専門性が高く、
メージして組み立てることである。
準備段階は実施することを決め、役割分担を
行い、プロジェクトを進めるためのルールを決
■重要施策の選択が鍵
める。CIOは、実施体制だけでなく、制度の検討
自治体チャンネル+
経験や知識を活かすCIO補佐型である。
も行わなければならない。例えば、協議会等で
計画するには、重点を置くべき箇所を選ぶ必要
作成した成果物の帰属や著作権等、関係者間の
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がある。高知県では、以下の 4 点を重視した。
契約事項として取り決めなければならないこと
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1)本質的な課題に対応
もある。また、民間企業等からの出資があれば、
2)タイムリーな取り組み
社会の変化や事業展開を考慮し、今、行う必
要がある事業なのかを見極める。
3)全国モデルとしての評価
して何ができるのかを明確にする必要がある。
実行段階では、ルールに沿って、関係組織の
担当者が企画を実現する。CIOは、進捗管理等
の全体的なマネジメントに留意する。
事業の結果だけでなく、作業段階ごとに状況
国や他の自治体、民間企業等の協力、支援を
を把握し、全体の調整を行う。最終的には現場
得る、より多くの人のためになる事業とする。
で実際に利活用できる仕組みをつくり、定着さ
4)多様なプロの参加
せることを目指す。
民間企業等に参加してもらい、一流の目から
見た提案や第三者的なアドバイスを得る。
先 進 的 取 り 組 み 事 例 1
■企画、準備、実行、それぞれの段階でポイントを
民間出身CIO補佐が見た自治体に
おける情報システムのガバナンス
プロジェクトには、
大きく分けて「企画」
「準
、
備」、「実行」の 3 つの段階がある。
松下 邦彦氏
新潟県 総務管理部 情報企画監
企画段階では、これまでの体験や事業評価の
結果等をまとめ、現在の問題とその解決のため
私は、2005年10月に新潟県の情報企画監に就
には何が必要かを踏まえて企画化する。その際、
任するまで、総合電機メーカーの情報構築部門
庁内外の関係者の協力を得て、人員や予算を集
で官公庁及び自治体の情報システムの構築、企
7
月号
他分野への展開が可能な事業とする。
行政の予算と合わせて、配分のルールや対価と
年
本質的な問題に対応し、継続的な価値を生み、
平成
人員も予算も限られた中で、効果的な施策を
画を約20年担当してきた。
今は、県の行政情報化及び地域情報化に関す
CIOの役割は、全庁の情報システムすべてを
る企画立案とその推進という役割を担い、IT
所掌し、行政の情報化の推進に関するすべてに
戦略全般及び個別案件についての専門的助言を
目を配ることにある。しかし、時にはCIOの所
任務としている。
掌ではないような事柄にも口を出す必要が生じ
就任後まず、庁内情報システムの現状を調査
るので、庁内でのステークホルダーとの関係も
した。この結果にもとづいて汎用機の縮小を中
重要と考えている。議会、市長、あらゆるステー
心とするシステム再編計画を作成するほか、情
クホルダーに気を遣わなければならない。特に、
報システム調達ガイドラインを作成してシステ
広報を通しての市民の皆様への活動を、一番大
ム調達プロセスを刷新し、情報システムのコス
事と考えている。
ト削減を図っていく。
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年
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月号
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庁各課へ設置した。
市長をはじめとする経営層とうまくコミット
私は10月に就任したが、この時期には年度内
して、全庁的な事業を進めるコツは、情報の責
で実施することはすでに決まっており、また半
任者としての信頼を得ること。約束は必ずやり
年で異動もあるので、効率的に業務を進めにく
遂げ、それを繰り返すことで信頼は得られる。
い。外部人員をCIO等に採用する場合は、時期
また、庁内における相手との関係は対等だが、
についても考慮が必要と思う。
時には手柄を譲ることも必要かもしれない。
また、個室を与えられているが、実際に業務
CIOが実践すべきことは市長を理解し、いい
を遂行する現場がある大部屋に配置した方が、
さじ加減のアドバイスをすることだ。そして改
一体となって進められると思う。
革・人事・戦略・事業・制度・渉外のスキルを
CIO、CIO補佐の役割は、県や自治体が経営
戦略を実現するために、情報システム全体とし
磨き、強いリーダーシップを身に付けることだ
と思う。
ての投資対効果を最大化することである。その
中での私の役割は、ITの専門家としてノウハ
パ ネ ル デ ィ ス カ ッ シ ョ ン
ウを提供することであり、ベンダー出身という
特性を活かして、売り手にとって嫌な買い手に
自治体CIOを考える
―自治体におけるCIOの理想と実践―
なろうと考えている。
○パネリスト:石川氏、松下氏、松岡氏
○コーディネーター:磯部 悦男
先 進 的 取 り 組 み 事 例 2
(三菱総合研究所 公共ソリューション事業本部 本部長)
豊中市におけるCIO
松岡 勝義氏
豊中市 政策推進部 情報政策担当理事
ご講演いただいたCIO、CIO補佐の皆さんに
より、熱い議論が展開された。以下、その中か
ら抜粋して、紹介する。
私は、次長兼情報政策課長であった時、仕事
磯部 悦男(以下、磯部)
:本日のパネルディス
のやりにくさを感じていた。そこで市長と助役
カッションでは、CIOとは何か、自分達の自治
にもっと縦横無尽に動けるような、専任的なポ
体で実践する際にはどうすればいいかという点
ストを設置すべきであると進言したところ、
について、ぜひ具体的な回答をお持ち帰りいた
CIOという新たな専任職を設置することとなり、
だきたいと思っています。
自分が就任することとなった。CIOは市長・助
まず、CIOになって変わったことはありまし
役の直轄である。民間からも部下として 3 人来
たか?
てもらい、PCアシスタントという職員を、全
石川 雄章(以下、石川)
:議会の対応が変わっ
たと感じています。各部局や民間企業との調整
をするという点ではそれほど変わらないが、議
会に出席して答弁をするなど、最終的な判断・
責任の担い方が違ってくると思います。
松岡 勝義(以下、松岡)
:CIOになると後ろに
市長・助役がいるため、相手に対する印象が変
わってくるということもあり、統一的なガバナ
ンスが可能になると考えています。
ことで、次長・課長ではそこまで言うことがで
ら7 ヶ月半経ちましたが、その間に新潟県庁に
きないのではないかと思います。
どんな影響がありましたか?
磯部:ところで、最近は、随意契約や低価格入
松下 邦彦(以下、松下)
:新潟県の泉田知事は、
札がよく問題になります。参加されている皆さ
ITの分野に造詣が深く、CIOを補佐する人を民
んにとっても関心の高い問題だと思いますので、
間から採用したいという意向を以前から持って
対応策についてお聞かせください。
いました。というのも、以前は、担当課と知事
石川:以前に、随意契約を見直して、価格が下
とのコミュニケーションができていないと感じ
がったということもあります。その際には、当
ていらしたからです。
就任後、
コミュニケーショ
然、技術等を評価することが必要だと思います。
ンも図られ、案件が進みやすくなったと、私自
松岡:「安かろう悪かろう」というのはよくあ
身も感じています。
ることですね。民間の評価軸をミックスしてや
17
磯部:情報を担当するセクションと経営者との
ることも大事だと思います。また、外部の専門
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間で、会話が成立しないのは民間でもよくある
家を審査員に入れることも必要かと思います。
ことであり、重要なポイントだと思います。石
磯部:最後に、CIOに必要なことはどんなこと
川さんは、高知県でたくさんのことを実行して
でしょうか?
成果をあげられましたが、CIOだからこそ実現
松岡:現場のことも知る必要があるし、学習力、
できたことはありますか?
先見性、人的ネットワークも求められます。た
石川:自分が最終責任者で意思決定ができるこ
だ、最後には責任を取るということが、一番大
とが大きいと思います。最終的には、議会にも
事なことだと思います。
説明して了解を得る必要があるのですが、自分
松下:民間から登用された私のようなCIO補佐
の口で説明ができるということは非常に大きな
の場合は、役所がどんな仕事をしているか、役
ことだと感じています。中でも、全庁に関わる
所というのは物事をどう進めるか、を理解する
ようなルールづくりなどは、CIOだからこそ実
必要があると感じています。
現できたことだと思います。
石川:意志の強さが必要だと思います。リーダー
松岡:最終決定者になれるという、今の話は同
シップは、その前提として必要です。結局、一
感ですね。人は肩書きを見ますので、ベンダー
人では絶対にできないので、私も、課長さんや
は、CIOが話したことを重要だと感じるようで
係長さんや担当の方や外部の人に助けられて、
す。また、以前、システムをリプレースしよう
目標に向かってきました。みんなが知恵を出し
としたら、予算取りの時に当初は反対されまし
合いたい、という組織が目標を達成できるのだ
たが、最終的には希望した予算が全部通り、結
と思います。
果的に2,500万円の予算削減を実行することが
磯部:本日はどうもありがとうございました。
できました。これは、CIOの立場だからできた
本日のお話が、皆様の参考になれば幸いです。
自治体チャンネル+
磯部:松下さんは、情報企画監に就任されてか
平成
年
月号
7
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