...

腎不全で減量を要する薬物と副作用

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Transcript

腎不全で減量を要する薬物と副作用
腎不全で要注意の薬物とその尿中排泄率、副作⽤
腎不全患者では患者の腎機能と薬物の尿中排泄率を用いて投与設計(減量)します。すなわちGiusti-Hayton法によってまず投与補正係数を算出します。
投与補正係数=1−尿中排泄率×(1−腎不全患者のGFR/100)
このようにして得られた投与補正係数を利用すると、腎障害者への投与量は投与量=常用量×投与補正係数によって1回投与量を減量します。あるいは
投与量を変えずに投与間隔を変更する際には投与間隔=正常腎機能者の投与間隔/投与補正係数で算出します。通常は後者のように1回投与量を変えず、投与間隔を延長する
方法がよく用いられます。ただし薬物の特性を考慮して1回量を減量する場合もあります。
薬効
片頭痛治療薬
帯状疱疹後神経痛治療薬
抗リウマチ薬
抗精神病薬
非定型抗精神病薬
抗てんかん薬
抗うつ剤(SNRI)
抗うつ剤(NaSSA)
双極性障害治療薬
ミオクローヌス治療薬
徘徊・せん妄改善薬
アルツハイマー病治療薬
経口脊髄小脳変性症治療薬
抗痙縮薬
パーキンソン病治療薬
自律神経
痛風治療薬
薬物名 (商品名)
尿中排泄率(%)
リザトリプタン【禁忌】 (マクサルト)
プレガバリン (リリカ)
アクタリット (オークル、モーバー)
オーラノフィン【禁忌】 (リドーラ)
ブシラミン【禁忌】 (リマチル)
メトトレキサート【禁忌】 (リウマトレックス)
スルピリド (ドグマチール)
パリペリドン【禁忌】 (インヴェガ、ゼプリオン水懸筋注シリン
ジ)
リスペリドン (リスパダール)
ガバペンチン (ガバペン)
不明*
90
100
60
活性代謝物が蓄積
90
93%以上
レベチラセタム (イーケプラ)
ミルナシプラン (トレドミン)
デュロキセチン【禁忌】 (サインバルタカプセル)
ミルタザピン(レメロン/リフレックス)
炭酸リチウム【禁忌】 (リーマス)
ピラセタム【禁忌】 (ミオカーム内服液)
チアプリド (グラマリール)
メマンチン (メマリー)
タルチレリン水和物 (セレジスト)
バクロフェン (ギャバロン、リオレサール)
プラミペキソール (ビ・シフロール/ミラペックス)
ネオスチグミンメチル硫酸塩 (ワゴスチグミン)
アロプリノール (ザイロリック)
急性心不全治療薬
コルヒチン (コルヒチン)
ミルリノン (ミルリーラ)
オルプリノン (コアテック)
ジゴキシン (ジゴシン)
強心配糖体
メチルジゴキシン (ラニラピッド)
デスラノシド (ジギラノゲンC)
ジソピラミド (リスモダン)
プロカインアミド (アミサリン)
抗不整脈薬
シベンゾリン【禁忌】 (シベノール)
60
活性代謝物32
100
経口投与後60%
60
5%以下*
95
93~96%以上
72%以上
59
不明*
69
87.6
75
未変化体10%
活性代謝物70%
20
93〜98
70~80
75
未変化体47%
ジゴキシン35%
60
50
未変化体55%
活性代謝物81%
60
副作用
虚血性心疾患、胸痛、胸圧迫感、熱感、のどの締め付け感
傾眠、意識消失、心不全
腎障害(ネフローゼ)、汎血球減少、消化器症状
葉酸欠乏、腎障害、骨髄障害
錐体外路症状、アカシジア、嚥下障害
錐体外路障害、遅発性ジスキネジア
ジスキネジア、麻酔性イレウス、パーキンソン症候群
傾眠、倦怠感、幻暈、浮腫
皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、血液障害、 肝不全
頭痛、排尿障害、錯乱、振戦
セロトニン症候群、不安、焦燥、興奮・混乱・もうろう状態
傾眠、鎮静、口渇、倦怠感、便秘
嘔吐、運動失調、錯乱、振戦
消化器症状、眠気、白血球減少、白内障
食欲不振、傾眠、嚥下障害
湿疹、意識消失、精神神経症状
痙攣、悪性症候群、嘔吐、よだれ
傾眠、意識障害、呼吸抑制
特発性睡眠、傾眠
血圧降下、頻脈、気管支痙攣、下痢、めまい
剥奪性皮膚炎、汎血球減少、肝障害
下痢、汎血球減少症、脱毛
心室頻拍、心室細動、血圧低下
心室細動、心室頻拍)、血圧低下、腎障害
食欲不振、視覚障害、不整脈
視覚障害、低血糖
心室頻拍、心室細動、血圧低下
低血糖、意識障害
薬効
脂質異常症治療薬
眼圧降下薬
β 遮断薬
肺高血圧症治療薬
ビグアナイド系血糖降下薬
血糖降下薬
α-グリコシダーゼ阻害薬
DPP-4阻害薬
GLP-Iアナログ
H2拮抗薬
コリンエステラーゼ阻害薬
活性型ビタミンD
ビスホスホネート製剤
ヘパリン製剤と抗ヘパリン製剤
抗トロンビン薬
Ⅹa阻害薬
DIC治療薬
禁煙補助薬
免疫抑制薬
アミノグリコシド系
カルバペネム系
グリコペプチド系
抗結核薬
薬物名 (商品名)
尿中排泄率(%)
ソタロール【禁忌】 (ソタコール)
ピルシカイニド (サンリズム)
ベザフィブラート【禁忌】などフィブラート系(クリノフィブラートは除
く) (ベザトールSRなど)
アセタゾラミド (ダイアモックス)
アテノロール/カルテオロール/ナドロール (テノーミン/ミケ
ラン/ナディック)
タダラフィル【禁忌】 (アドシルカ)
メトホルミン【禁忌】 (グリコラン)
インスリン (ペンフィルなど)
ミグリトール (セイブル)
シタグリプチンリン酸塩水和物【禁忌】 (ジャヌビア/グラク
ティブ)
アログリプチン (ネシーナ)
トレラグリプチンコハク酸塩【禁忌】(ザファテック錠)
エキセナチド【禁忌】 (バイエッタ皮下注、ビデュリオン皮下
注)
ファモチジン、ラニチジンなど (ガスター、ザンタックなど)
ジスチグミン (ウブレチド)
マキサカルシトール (オキサロール軟膏/ローション)
ゾレドロン酸水和物 (ゾメタ)
リセドロン酸ナトリウム水和物【禁忌】 (アクトネル/ベネット)
エノキサパリンナトリウム (クレキサン)
フォンダパリヌクスナトリウム (アリクストラ)
ダビガトラン【禁忌】 (プラザキサカプセル)
88
80
※70
90
※90/65/90
副作用
徐脈、QT延長、心室性不整脈
刺激伝導障害、心室細動
横紋筋融解症
精神錯乱
徐脈、心不全、浮腫、房室ブロック、喘息発作
不明*
85
腎で代謝される
30(Fは不明)
乳酸アシドーシス
低血糖の遷延
低血糖、イレウス、胃腸障害、肝障害
79~88%以上
低血糖、便秘
72.8%以上
76
腎で代謝される
※80、70
85
0
16~33
87
不明*
80
82.5
アピキサバン (エリキュース錠)
27
エドキサバン【禁忌】 (リクシアナ)
35
36
不明*
73.6
92
81.1
80
低血糖、腹部膨満、鼓腸、そう痒等
低血糖、鼻咽頭炎、リパーゼ上昇等
低血糖症、悪心、食欲減退、便秘
精神錯乱、汎血球減少
コリン作動性クリーゼ
高Ca血症、急性腎不全
急性腎不全、うっ血性心不全、肝障害、血清電解質異常
食道潰瘍、消化器症状、過敏症、肝障害、血球減少
血腫・出血、血小板減少、頭痛、めまい
出血、発疹、貧血、凝固障害、血小板数増加
皮下出血、血尿、消化不良、上腹部痛、腹痛、悪心
血尿、皮下出血、創傷出血などの出血、γ-GTP上、ALT上昇
尿中血陽性、皮下出血、創傷出血などの出血、γ-GTP上
昇、ALT上昇
鼻出血、皮下出血、歯肉出血、肝機能障害
出血、肝機能障害
出血、肝機能障害、消化器障害、皮膚障害
嘔気、頭痛、食欲不振、便秘、抑欝
骨髄機能抑制、感染症、間質性肺炎、腎障害、肝障害
リバーロキサバン【禁忌】 (イグザレルト)
ダナパロイドナトリウム【禁忌】 (オルガラン)
ヒトトロンボモジュリン (リコモジュリン)
バレニクリン (チャンピックス)
ミゾリビン (ブレディニン)
アルベカシン (ハベカシン)
アミカシン、トブラマイシン、ゲンタマイシンなど (アミカシ
ン、トブラシン、ゲンタシンなど)
イミペネムなど (チエナム)
バンコマイシン (バンコマイシン)
テイコプラニン (タゴシッド)
エタンブトール (エサンブトール)
70
90
55%以上
85
ストレプトマイシン(アミノグリコシド系) (ストレプトマイシン)
80
聴覚障害、腎障害
カナマイシン(アミノグリコシド系) (カナマイシン)
サイクロセリン (サイクロセリン)
80
65
精神錯乱
80
聴覚障害、腎障害
痙攣、意識障害
聴覚障害、腎障害
視覚障害、肝障害
薬効
ニューキノロン
抗真菌薬
ヘルペスウイルス感染症治療薬
薬物名 (商品名)
レボフロキサシンなど(腎排泄型でないものもある) (クラ
ビットなど)
フルシトシン (アンコチル)
フルコナゾール、ホスフルコナゾール (ジフルカン、プロジ
フ)
アシクロビル、バラシクロビル (ゾビラックス、バルトレックス)
ファムシクロビル (ファムビル)
サイトメガロウイルス感染症治療 ガンシクロビル、バルガンシクロビル (デノシン、バリキサ)
薬
ホスカルネットナトリウム水和物 (ホスカビル)
アデホビル (ヘプセラ)
B型肝炎治療薬
エンテカビル (バラクルード)
ラミブジン (ゼフィックス)
ソホスブビル【禁忌】 (ソバルディ)
C型肝炎治療薬
リバビリン【禁忌】 (レベトール)
テラプレビル【禁忌】 (テラビック)
アマンタジン【禁忌】 (シンメトレル)
インフルエンザ治療薬
オセルタミビル (タミフル)
副作用
尿中排泄率(%)
※87
意識障害、痙攣
90
骨髄抑制、肝障害
70
痙攣、意識障害、幻覚、肝障害
80
呂律困難、痙攣、精神神経症状
85.6
幻覚、錯乱、見当識障害
95
骨髄抑制、精神神経症状
79~92
腎障害、ショック、心不全、血清電解質異常、悪心、頭痛
60
肝炎の重症化、腎機能障害、乳酸アシドーシス
80
代謝性アシドーシス、頭痛
85
過量投与による中毒症状は不明
代謝物GS-331007:約80% 貧血またはヘモグロビン減少、頭痛、倦怠感・悪心・そう痒症
50
骨髄抑制、意識障害
0.11*
重篤な皮膚障害、腎障害、骨髄抑制、食欲不振
90
幻覚、不隠、せん妄、幻視
70(活性代謝物99%という
悪心、嘔吐、幻暈
説もあり)
77~95
下痢,好中球減少,嘔吐
90
葉酸欠乏、腎障害、骨髄障害
82以上
骨髄抑制、便秘・倦怠感
52.8
骨髄抑制、下痢、口内炎
29-64
骨髄抑制、感染症、発熱
76
骨髄抑制、感染症、全身性炎症反応症候群、肝不全
70
血小板減少
50
腎障害、嘔吐、聴覚障害、胃腸障害
40-70
骨髄抑制(特に血小板減少)、腎障害、悪心
50
骨髄抑制、肝障害、皮膚障害、間質性肺炎
66%以上
間質性肺炎、骨髄抑制、発疹
65
肺線維症、胃腸障害、皮膚肥厚
ペラミビル水和物 (ラピアクタ)
メトトレキサ−ト【禁忌】 (メトトレキセート)
レナリドミド水和物 (レブラミド)
ギメラシル【禁忌】 (ティーエスワン)
フルダラビン【禁忌】 (フルダラ)
クロファラビン (エボルトラ点滴静注)
抗がん薬
カルボプラチン (パラプラチン)
シスプラチン【禁忌】 (ランダ)
ネダプラチン【禁忌】 (アクプラ)
ヒドロキシカルバミド (ハイドレアカプセル)
ペプロマイシン【禁忌】 (ぺブレオ注)
ブレオマイシン【禁忌】 (ブレオ)
インターフェロンα-2bなど (イントロンA、ペグイントロンな
不明(腎で代謝)
インフルエンザ様症状(発熱等)、抑うつ
インターフェロン製剤
ど)
セルモロイキン、テセロイキン (アエロイク注、イムネース
インターロイキン製剤
不明(腎で代謝)
体液貯留、抑うつ、自殺企画、感染症増悪
注)
96~100
アルコール依存症 断酒補助薬 アカンプロサートカルシウム (レグテクト錠)
下痢、傾眠、腹部膨満、嘔吐、血管浮腫
ヨード造影剤
※90
イオパミドールなど (イオパミロンなど)
腎障害
MRI用造影剤
91~99
ガドペンテト酸メグルミンなど【禁忌】 (マグネビストなど)
腎性全身性線維症、急性腎不全
尿中排泄率が報告によって異なる場合にはその平均値を採用した。尿中排泄率は個人差があることに留意されたい。
※同一薬効でも薬物によって尿中排泄率が異なるもの
*尿中排泄率が不明、または低いものの、腎不全で血中濃度が上昇するもの
【禁忌】は重篤な腎障害、透析患者など腎機能低下患者に対して禁忌になっているもの
この表には厳密な投与設計を必要とする腎排泄性薬物の主なものをあげたが、腎排泄性薬物は全薬物中のの1〜2割を占めるに過ぎない。しかもその中の多くが
比較的安全域の広い薬物、セフェム系・ペニシリン系抗生物質やACE阻害薬などであり、カルバゾクロムなども腎排泄型であるが安全性は高い。
無断転載を禁じます(熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター・平田純生 2015年7月作成)
全
Fly UP