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アジア・マンスリー / 2016年 6月号

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アジア・マンスリー / 2016年 6月号
審査番号: 160608-A1
アイザワ証券 投資リサーチセンター
Asia Monthly
アジア・マンスリー / 2016年6月号 (2016年6月13日発行)
(今月号は 6 月 3 日時点の情報を基に作成しています。)
フィリピ ン で新 大 統 領 が 誕 生 ―
CONTENTS
● 中国
2~5
中国経済・政策動向
明松 真 一 郎
5月9日に、フィリピンで大統領選挙が実施され、当初の予想をくつがえ
し、ロドリゴ・ドゥテルテ氏が新大統領に選ばれた。新大統領について海外
中国株の業種別動向
からの評価は様々だが、フィリピンの選挙制度は直接選挙で国民が直接投
中国の鉄道関連投資は加速へ
票する仕組みであるため、今回の選挙結果は素直に民意を反映した結果
● コラム
5
新たな発展段階を迎え、中国の
と言えるだろう。なお、ドゥテルテ氏と対抗していた候補はロハス氏とポー氏
だが、この2名の対立候補の掲げた政策路線にあまり違いが見られなかっ
たため、反ドゥテルテ票がこの対立2候補に分かれたともみられている。
ロボット産業
ドゥテルテ氏は、ダバオ市長としての功績を評価されてきた人物だ。同氏
● グローバル
6~7
台湾の行方
が市長に就任する以前のダバオ市は、汚職、犯罪が蔓延しており治安の
悪さが際立っていたが、同氏は半ば強権的ともいえる政策運営で、ダバオ
市の治安を劇的に改善させた。このたびの選挙結果は、汚職、犯罪、貧困
● 銘柄研究
8~10
格差、インフラの遅れなど、国内に改善点が多い中、決断力や実行力のあ
中国移動
る強い指導者を求める国民の声が強かったことが選挙結果に表れたと推
バンコク・エアウェイズ
測されている。少しタイプは異なるものの、インドのモディ首相、インドネシ
アヤラ
アのジョコ大統領が誕生した時の国民の歓迎ぶりと共通している部分があ
るといえる。なお、5月20日には台湾で蔡英文氏が第14代総統に就任し
● 経済統計&ランキング
11
た。フィリピン、台湾ともに、現時点では実力は未知数だが、国内、国外か
らは期待と不安が高まっている。今後の日程では、7月25日にドゥテルテ氏
が大統領として初めて行なう施政方針演説が注目を集めそうだ。
主要株価指数
NYダウ工業株30種
日経平均225
上海総合指数
香港ハンセン指数
香港H株指数
韓国総合株価指数
台湾加権指数
シンガポールST指数
FTSEブルサマレーシア KLCI指数
タイSET指数
ジャカルタ総合指数
フィリピン総合指数
ベトナムVN指数
イスラエルテルアビブ25種指数
2015年12月末 2016年5月末
17,425.03
19,033.71
3,539.18
21,914.40
9,661.03
1,961.31
8,338.06
2,882.73
1,692.51
1,288.02
4,593.01
6,952.08
579.03
1,528.74
*時価総額は各国・各地域の市場全体の時価総額を記載
17,787.20
17,234.98
2,916.62
20,815.09
8,704.90
1,983.40
8,535.59
2,791.06
1,626.00
1,424.28
4,796.87
7,401.60
618.44
1,444.34
年初来
時価総額
為替レート(5月31日)
実績PER
騰落率
(百万米ドル)
1ドル= 110.730 円
2.08%
16.88
23,608,638
―
-9.45%
20.55
4,911,396
1元=
-17.59% 16.07
5,838,703
16.850 円
-5.02%
10.41
3,790,666 1香港ドル= 14.248 円
-9.90%
6.81
1.13%
16.76
1,202,711 100ウォン=
9.301 円
2.37%
15.13
885,280 1台湾ドル=
3.395 円
-3.18%
11.73
473,104 1シンガポールドル= 80.360 円
-3.93%
17.91
376,006 1リンギット= 26.870 円
10.58%
19.49
370,009 1バーツ=
3.097 円
4.44%
23.94
369,907 100ルピア=
0.811 円
1ペソ=
6.47%
21.81
261,226
2.372 円
100ドン=
6.81%
13.61
66,371
0.495 円
-5.52%
15.77
152,980 1シェケル= 28.744 円
[出所:ブルームバーグ、アイザワ証券作成]
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
2
中国
経済
中 国 経 済 ・政 策 動 向
― 柳 林
季節要因や鉄鋼など素材市況の下落によって、4
月の中国経済は製造業を中心に成長が鈍化している。
15
ただ、1~4月の年初来累計ベースでは、輸出金額と
(%)
10
不動産投資金額は底打ちの様相を呈しており、生産
者物価指数と工業部門の企業利益も上向き始めるな
5
ど、中国経済の回復基調は変わっていないと思われ
0
中国の各種経済指標の前年同期比伸び率
生産者物価指数(単月ベース)
工業部門の企業利益(年初来累計)
輸出金額(人民元建て、年初来累計)
不動産投資金額(年初来累計)
る(右図参照)。また、中国政府は今後3年間で合計
-5
303のインフラ・プロジェクトに4.7兆元の資金を投じる
と表明したほか、外需や不動産市況も今後回復に向 -10
かう公算が大きいことから、中国経済は足元低調なが
ら徐々に底打ちの兆しが出て来ると予想される。
-15
[ 出所:WIND、アイザワ証券作成]
一方、為替を見ると、米国の追加利上げ観測が急速に高まったことを受けて、人民元の対米ドルレートは今
年1月の安値(1米ドル=6.6元)に迫る動きを見せている。ただ、今回の元安局面は、中国の景気悪化や商品
市況の下落、新興国の景気不安などが重なった今年1月のパニック的な状況とは異なり、世界的な金融不安を
招く可能性は小さいと考える。その理由として、①中国経済は総じて安定していること、②商品市況と新興国景
気が持ち直していること、③中国の新しい為替形成メカニズムに対する市場の認識が広まったこと、④中国から
の外貨流出が一巡したこと、⑤通貨切下げ競争を回避する国際協調が成されていることなどが挙げられる。ま
た、人民元の対米ドルレートは既に米国の追加利上げの可能性をある程度織り込んでいるほか、人民元レート
の弾力性も増している。人民元の対米ドルレートはドル指数(実効レート)と連動性を保ちながら緩やかな人民元
安に向かうだろう。人民元安は流動性の面で中国の本土株式市場に悪影響を与えると予想されるものの、6月
に本土A株のMSCI指数組み入れと香港・深セン相互取引が実現するとの観測も出ているため、これらの株価材
料による相場全体の下支え効果に期待したい。
中 国 株 の業 種 別 動 向
― 王 曦
/ 5 月の香港市場は下落、景気減速懸念で売り圧力強く
5月の香港市場は、中国の景気減速リスクの高まりを背景に主要株価指数が下落した。香港ハンセン指数と
香港H株指数の月間騰落率はそれぞれ前月比-1.2%と-2.6%となっており、5月中旬に国務院副総理の張高
麗氏が「今後大規模な景気刺激はしない」と発言したことや、4月の中国の主要経済指標が市場予想を下回っ
たことが相場全体の押し下げ要因となった。香港市場では中国経済に対する弱気な見方が蔓延し、日々の売
買代金全体に占める空売りの比率は一時18%(5月13日)と1998年以来の高水準を記録した。
アイザワ中国株業種別指数(ACSI)(注)の業種別月間騰落率(次頁下図参照)を見ると、5月は幅広い業種が
下落している中で、「IT」と「娯楽・カジノ」の株価が堅調に推移した。このうち「IT」は、業種の代表銘柄であるテ
ンセント(香港:700)の1~3月期決算が好調だったほか、日本のガンホー・オンライン・エンターテイメント(東証:
3765)と中国でモバイルゲーム(パズル&ドラゴンズ)のサービス開始に向けて動き出したとのニュースが好感さ
れた。また、「娯楽・カジノ」はマカオのカジノ業収入の底打ち観測が高まったため、サンズ・チャイナ(香港 :
1928)などのカジノ関連銘柄が買われた。一方、全業種の中で最も株価が大きく下落した「鉄鋼」は、鋼材先物
への投機熱が冷めたことで景況改善期待が後退し、「鉄鋼」のほかにも「非鉄金属」や「インフラ建設」、「一般素
材」、「機械」、「石炭」など工業・建設関連の業種が売られた。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
中国
3
経済
/ 6 月の香港市場は上値の重い展開が続く見通し、「IT」や「通信」などの業種に注目
6月の香港市場は、中国の景気減速と米国の利上げ観測、英国のEU離脱国民投票などへの懸念から、上
値の重い展開が続くと予想される。現在、香港H株指数の2015年実績PERと実績PBRはそれぞれ6.6倍と0.8倍
と歴史的な低水準にあるものの、指数構成ウェートの大部分を占める銀行の業績見通しは依然として不透明で、
香港市場では不良債権などの金融リスクに対する警戒感が根強く残っている。また、4月の経済指標が再び減
速に転じたこともあり、中国経済の回復期待が徐々に弱まっているように思われる。その中で、6月は景気減速
や金融リスクの影響を受けにくい「IT」や「通信」など業種に注目したい。
(億人)
Wechatの月間アクティブ・ユーザー数の推移
9.0
※月間アクティブ・ユーザー数は1ヵ月間に最低1回アプリを利用するユーザーの数。
8.0
(億回線)
中国の4G回線契約数の推移
6
チャイナ・ユニコム(香港:762) + チャイナ・テレコム(香港:728)
7.0
5
6.0
4
チャイナ・モバイル(香港:941)
5.0
3
4.0
3.0
2
2.0
1
1.0
0.0
0
[出所:会社発表資料、アイザワ証券作成]
[出所:CEIC、アイザワ証券作成]
「IT」と「通信」の代表銘柄として、それぞれテンセント(香港:700)とチャイナ・モバイル(香港:941)が挙げられる。
このうちテンセントについては、同社のモバイルSNSアプリである「Wechat」のユーザー数が増加しているのに伴
って、モバイルゲームやオンライン広告の売上高が急速に成長している。また、チャイナ・モバイルについては、
第4世代移動通信システム(4G)向けの設備投資が利益の圧迫要因になっているものの、4Gの回線契約数は
既に3.8億件に達しており、データ通信の収益基盤は着実に拡大している。これらの銘柄は、今後持続的な業
績成長が見込まれるため、不安定な相場環境の中でも堅調な株価パフォーマンスが期待できよう。
(注):アイザワ中国株業種別指数(ACSI)の構成については11ページをご覧下さい。
(%)
アイザワ中国株業種別指数の月間騰落率 (2016年5月)
10
8.6
5
2.9
1.7
0
-5
-10
鉄 非 イ 小 一 機 石 空 家 海 石 電 不 産 ホ 新 食 陸 保 証 香 電 通 輸 香 日 銀 自 上 公 医 娯 I
鋼 鉄 ン 売 般 械 炭 運 電 運 油 力 動 業 テ エ 品 運 険 券 港 子 信 出 港 用 行 動 海 益 薬 楽 T
H 機
素
金 フ
化
関 ハ 品
車 総 事 品 ・
産 用 ル ネ
カ
株 器
合 業
材
属 ラ
学
連 ン
設 ・
そ ル
ジ
セ
建
ギ
指
指
備 の ー
ノ
ン
設
数
数
他
指
サ
数
-7.0
-2.6
ー
-0.7
-8.0
ビ
-1.2
ス
-15
-14.7
-20
[出所:ブルームバーグ、アイザワ証券作成]
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
4
中国
トピックス
中 国 の鉄 道 関 連 投 資 は加 速 へ
― 柳 林
/ 今後 3 年間で鉄道関連投資は加速する見通し
(億元)
今年5月、中国発展改革委員会と政府交通輸送部は共同で
16000
「交通インフラ重要プロジェクトの建設に関する3年行動計画」を発
14000
表した。今回の計画によると、中国政府は2016~2018年の3年間
12000
中国の鉄道・地下鉄建設投資額
地下鉄
鉄道
※2016年以降は中信証券の予想値
10000
で303件の交通インフラ重要プロジェクトに総額4.7兆元を投じる見
8000
通しだ。この4.7兆元のうち、鉄道整備に2兆元、地下鉄・都市鉄道
6000
整備に1.6兆元、高速道路整備に0.6兆元、空港整備に0.5兆元が
2000
4000
それぞれ割り当てられる予定で、鉄道と地下鉄・都市鉄道の整備
0
(合計3.6兆元)が投資総額の約4分の3強を占めている。足元、国
内外の需要が低迷している中、中国政府は鉄道と地下鉄・都市
[出所:WIND、アイザワ証券作成]
鉄道の整備を通じて内需を喚起し、経済成長の維持につなげる
狙いがあると思われる。
/ 高速鉄道と地下鉄の成長余地は大きい
中国の高速鉄道網整備は2008年から本格的に始まり、2011年
の鉄道衝突脱線事故によって鉄道関連投資が一時的に停滞する
(億人)
2.5
鉄道全体の利用者数(左軸、延べ人数)
うちの高速鉄道の利用者数(左軸、延べ人数)
高速鉄道の総延長距離(右軸)
30
25
2.0
1.5
※2016年以降は中信証券の予想値
20
15
時期があったものの、その後は以前の高い伸び率を取り戻してい
10
る。2015年末の時点で、中国の高速鉄道(新幹線)の総延長距離
5
は1.9万kmに達したほか、在来線の高速化も進んでいることから、
中国の鉄道利用者数と高速鉄道の総延長距離 (万km)
35
1.0
0.5
0
0.0
中国の鉄道総延長距離である12万kmのうちの約6割は時速200km
以上で走行している。新幹線の整備と在来線の高速化に伴って、
[出所:WINDと中国鉄道部、アイザワ証券作成]
高速鉄道の利用者数も過去8年間でほぼゼロから年間10億人に
膨らみ、鉄道全体の利用者数の中で約3割を占めるようになった。
(km)
高速鉄道の代表的な路線である「北京・上海間高速鉄道」(2011
10000
年開業)の運営状況を見ると、2015年の利用者数は1.2億人と3年
8000
前の約2倍に達していて、当初の計画より2年前倒しで黒字化を実
6000
現している。また、2本目の「北京・上海間高速鉄道」は来年から着
4000
工が始まる見通しだ。さらに、2020年までに中国の高速鉄道網は
内陸部を中心に更に1万キロ拡張される予定で、路線整備が進め
中国の鉄道と地下鉄の総延長距離
(万km)
12000
地下鉄・都市鉄道の総延長距離(左軸)
全国の鉄道総延長距離(右軸)
※2016年以降は中信証券の予想値
2000
0
16.0
15.0
14.0
13.0
12.0
11.0
10.0
9.0
8.0
7.0
6.0
ば高速鉄道の利用者は今後ますます増加しそうだ。
現在、中国の高速鉄道網の主要路線は既に完成しているため、
[出所:WIND、アイザワ証券作成]
高速鉄道向けの投資は2020年にかけて徐々にピークアウトする可能性も考えられよう。しかし、地下鉄・都市鉄
道は中国全体で見ればまだまだ整備の余地が大きいため、高速鉄道と地下鉄・都市鉄道を合わせた鉄道関連
投資は今後も高水準で推移すると予想される。中国現地金融機関の予想によると、今後5年間で地下鉄・都市
鉄道の総延長距離は2015年の約3倍に相当する1万kmに、総投資額は3兆元にそれぞれ達する見通しで、地
下鉄・都市鉄道は高速鉄道と並んでインフラ投資の新たな主役として浮上している。
/ 鉄道・地下鉄向けの投資拡大で鉄道関連銘柄に恩恵
中国政府にとって、高速鉄道や地下鉄・都市鉄道の整備は、①景気の下支え、②過剰生産能力の解消、
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
中国
5
トピックス
③経済の効率化、といった複数のメリットがある。中国の政府債務の対GDP比は約40%と、まだ財源余力は大
きく、鉄道関連事業の大部分は利用者の増加に伴って持続的なキャッシュフローが見込める。また、金融緩和
と地方政府の債務整理などによって、政府が発行する鉄道債の利回りは大きく低下しており、中国鉄道総公司
(元政府鉄道部)の金利負担など資金繰りも大きく改善している。さらに、官民連携(PPP)や業務の多角化、運
賃値上げなどの取り組みも今後中国鉄道総公司の経営状況の好転につながる可能性がある。これらの点から、
中国の鉄道関連投資は比較的見通しが良好で、株式市場でも重要な投資テーマとして注目されている。
香港市場の主な鉄道関連銘柄としては、鉄道ゼネコンの中国中鉄(香港:390)と中国鉄建(香港:1186)、鉄
道車両・部品メーカーの中国中車(香港:1766)と中車時代電気(香港:3898)などが挙げられる。このうち鉄道
ゼネコンの2社は足元の業績と受注が堅調に推移しており、2016年の予想PERも8倍前後と割安な水準にある。
また、鉄道投資総額の約15~20%は鉄道車両の購入などに充てられる予定で、今後5年で高速鉄道車両2000
列、地下鉄車両5000列の新規需要が生まれるため、鉄道車両・部品メーカーへの恩恵も見込まれよう。今後、
鉄道関連投資の加速に伴って、香港市場では上記の鉄道関連銘柄を見直す動きが期待できそうだ。
コラム:
新たな発展段階を迎え、中国のロボット産業
― 姚 莉
中国の大手家電メーカー美的集団(ミデア・グループ)が5月18日に、産業用ロボット・ファクトリーオ
ートメーション(FA)世界大手ドイツのクーカ社(KUKA)に対する株式の公開買付け(TOB)を実施す
ると発表した。出資金額は最大40億ユーロを予定しており、実現すれば、中国企業によるドイツ企業
への出資額として過去最大規模になる。美的集団は白物家電市場で世界シェア2位を誇る家電メー
カーで、今年の3月に東芝の白物家電事業の買収合意で一夜にして有名になったばかりだ。一方、
クーカは産業用ロボットや工業生産の自動化システムを専門とし、特に産業用ロボット分野では日本
のファナックや安川電機、スイスのABBに並ぶ産業用ロボット4強の一角として知られている企業だ。
なぜ中国の民営企業が異業種分野への本格参入に踏み切ったのかと疑問視する声もあるが、背景
には、中国政府によるロボット産業の育成にかけた強い執念があったからだ。
かつて「世界の工場」と呼ばれた中国は、近年、人件費の高騰や労働力不足などを背景に、これ
までの廉価な労働力に依存する労働集約型製造モデルからの脱却を図り、生産や技術の高度化・
自動化へと進めようとしている。国際ロボット連盟(IFR)の統計によると、2015年の世界産業用ロボッ
トの販売台数は24万台で、そのうち中国での販売台数は6.6万台に達した。中国は世界最大の産業
用ロボット市場の地位を確立したが、国産ロボットのシェアはまだ2割以下で低い。データによると、
中国の産業用ロボットユーザーの大半は自動車産業やエレクトロニクス産業で、主に外資系企業と
の合併企業を中心に導入が進んでいる。溶接や塗装、組立などの精密作業ができるハイエンド分
野は海外メーカーが独占している。一方、運搬や原材料注入など単純作業を行うローエンドロボット
のほとんどが国産。この状況を受け、中国政府は今年の4月に新たなロボット産業の発展に関する5
ヵ年計画を公表し、国産技術の開発を推進する政策を打ち出した。2020年までに国産ロボットを10
万台に拡大することや性能や品質の面で国際水準に並ぶことなどの目標を設定した。しかし、高い
専門技術を持つ人材や製品開発能力、精度高くロボットを制御する技術、アフターサービスなど海
外メーカーが長年に渡って蓄積したノウハウを中国の技術力だけでは短期間で獲得できないため、
中国企業による海外ロボットメーカーの買収が今後も増えると予想される。
今後、中国のロボット産業は新たな発展段階を迎え、これからの経済成長の原動力として重要な
役割を果たす可能性が高く、注目しておきたい。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
6
グローバル
トピックス
台 湾 の行 方
― 明松 真一郎
5月20日に、台湾民進党の蔡英文主席が第14代中華民国総統に就任した。就任演説では、国内の経済改
革問題、両岸関係、対外戦略など多くの課題に取り組んでいく姿勢を明確にした。同氏の台湾総統就任を受け
て今後の台にどのような変化が出てくるか、個別企業の取り組みも含めて考えてみたいと思う。
/ 5 月 20 日に実施された総統就任演説でのメッセージは?
蔡氏の総統就任以降、最も注目を集めているのが台中関係だが、選挙活動をしていた時期の反中の姿勢か
らはややトーンダウン気味となっていた。実際総選挙後の同氏の発言では、蔡氏は「馬英九政権からの流れを
おおむね変更しない」としていたが、現時点ではまだどのような政策方針になるかは未知数だ。そんななか、5
月20日に新総統の就任演説が行われた。今回の演説は、中国からの圧力が警戒されるなかでの開催となった
が、演説のなかでは、「我々は民主自由の生活方式を死守していくという断固とした信念を持っている」と強調し
た。演説全体のなかで「民主」という言葉を20回以上繰り返していることからみても、明らかに中国の存在を意識
していることがわかる。演説の最後には、「2300万人の台湾人民の皆さん、我々は民主主義を守り、自由を守り、
この国を守る台湾人になりましょう」とのフレーズで締めくくった。台湾の自由民主主義に基づいた社会構造やラ
イフスタイルを維持できないのではないか、と不安を感じ始めている国民に対して、強いメッセージを示す内容
であったといえよう。
/ 経済面での台中関係
なお、中国と台湾は以前香港にて1992年
に会談を行なった際、「中国大陸と台湾は共
(%)
台湾の四半期実質GDP成長率(前年同期比)
15
に中国に属し、台湾は中国の一部である」と
する92コンセンサスが得られた、というのが中
10
国側の主張で、この度の蔡氏の総統就任演
説においては、この92コンセンサスについて
5
どのように言及するか、注目されていた。結
局、演説の中で蔡氏は92コンセンサスという
0
表現では触れず、「両岸(中国と台湾)間の
対話と意思疎通に関しては、我々は既存のメ
-5
カニズムを維持することに努めるつもりだ。
不満を表しているが、台湾側としては、中国
2016年1Q
2015年1Q
2014年1Q
2013年1Q
2012年1Q
2011年1Q
2010年1Q
2009年1Q
2008年1Q
2007年1Q
2006年1Q
2005年1Q
2004年1Q
2003年1Q
2002年1Q
2001年1Q
2000年1Q
いう言葉が盛り込まれていないことに対して
1999年1Q
べるにとどめた。中国側は、92コンセンサスと
-10
1998年1Q
至ったことを歴史的事実として尊重する」と述
1997年1Q
1992年に中台双方がいくつかの点で合意に
[出所:ブルームバーグ、アイザワ証券作成]
共産党の主張などに配慮して精一杯の歩み寄りを表した内容であったといえよう。
右上のGDP成長率の四半期の推移が示しているとおり、現状の台湾経済は、世界的景気鈍化のなかで明ら
かに減速期気味になっている。直近のGDP成長率は、小幅ながら3四半期連続での前年割れとなっている。3
四半期以上続けて前年割れとなったのは、近年ではITバブル崩壊直後のハイテク不況やリーマンショック直後
の世界的金融危機以来だ。この状況を考えれば、政治や行政などの面では中国とはある程度距離は置くもの
の、経済の面では当面これまでの台中関係を維持することになると予想される。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
グローバル
7
トピックス
/ コンピューテックス タイペイ 2016 の開催
今年も、5月31日~6月4日の日程で「COMPUTEX TAIPEI 2016」
(以下 見本市)が開催された。これは、毎年開催されている世界最大
級のハイテク見本市で、今年で36回目の開催となった。主催は、台北市
コンピュータ協会と台湾対外貿易発展協会で、今年の出展社数は1602
社、ブースの数は5009であった。2015年の1702社、5072ブースよりは少
ないものの、5日間の会期中に世界177ヵ国・地域から40969人が来場し
ており、バイヤーの来場人数は前回比で4.7%増となったことからみても、
ほぼ昨年並みであったといえよう。
なお、国・地域別でのバイヤーの人数では、中国が最多で、次いで、
日本、米国、香港、韓国の順であった。また、今回初出展であった企業
は全体の23%を占めており、世界的には景気減速感気味とはいえ、最
新のIT機器、トレンドに対する注目度は変わっていないといってよいだ
ろう。
5月31日に、スイスに拠点を置くビジネススクールである国際経営開
発研究所(IMD)が定期的に発表している2016年の世界の国・地域別国
際競争力ランキングが発表された。台湾は前年から3ランクダウンし、14
位となっている。いくつかの評価項目のうち、経済状況の評価低下が特
に顕著で、台湾の国家発展委員会は、「政府として今後新興市場の開
拓を奨励し、輸出促進を図っていく」とコメントした。世界的にAI、VR、
IoTなどハイテク関連の新技術への注目度が高まっているなかで、今回
の台湾でのハイテク見本市は、台湾が世界的に存在感を高めていくた
めのひとつのきっかけとなりそうだ。
国際競争力ランキング
順位
1位
2位
3位
4位
5位
6位
7位
8位
9位
10位
11位
12位
13位
14位
15位
16位
17位
18位
19位
20位
国
香港
スイス
米国
シンガポール
スウェーデン
デンマーク
アイルランド
オランダ
ノルウェー
カナダ
ルクセンブルク
ドイツ
カタール
台湾
UAE
ニュージーランド
オーストラリア
英国
マレーシア
フィンランド
25位
26位
29位
中国
日本
韓国
[出所;IMD、アイザワ証券作成]
/ 新分野に対する各社の取り組み
今回の見本市のなかで注目を集めたのが、ASUSコンピューター(台湾:2357)が試験生産の開始を発表した
家庭用ロボットの「Zenbo」だ。同じ家庭用ロボットで、鴻海精密工業とソフトバンクが共同開発した「Pepper」の19
万8000円に比べて安い価格設定の599米ドル(約65000円)で販売される予定だ。なお。この「Zenbo」の組み立
ては、ペガトロン(台湾:4938)が担うこととなった。なお、市場調査会社の予測によると、家庭用サービスロボット
の市場規模は、2014年以降2020年までの年平均で伸び率は28%と、産業用ロボット市場の12%を大きく上回
るという見通しを示している。そのため、「Zenbo」や「Pepper」だけでなく、エイサー(台湾:2353)が「Jibo」を発表。
コンパル・エレクトロニクス(台湾:2324)もロボットを作っていることを発表した。世界的にパソコン市場が伸び悩
みを見せているなかで、パソコン以外の分野に突破口を見出そうとしている各社の思惑がうかがえる。
そのほかにも、新分野への取り組みを発表したのが、宏達国際電子(通称HTC)(台湾:2498)だ。同社はもと
もと携帯電話、スマートフォンの組み立て、加工、販売をメインに行なってきた企業だが、スマートフォンの低迷
などによって、直近まで4四半期連続の赤字を記録していた。今回の見本市では、初めて既存の展示空間とは
別途に、VR(バーチャルリアリティ)専門のブースを設け、報道関係者やバイヤーの注目を集めた。対戦型ゲー
ムや飛行体験ができるという内容で、同社の陳広報主任は、「2026年には、VRをスマートフォンと並ぶ2大事業
にまで育て上げたい」と話している。世界的に新技術への注目度が高まっているなかで、今後、低迷気味だっ
た台湾企業が再度存在感を高めることができるか、今後の台湾企業の取り組みを注目していきたい。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
8
銘柄研究
香港:941/Z2839
中 国 移 動 [ チャ イ ナ・ モ ハ ゙ イ ル ]―
王 曦
業種: 通信
/ 中国最大の移動通信キャリア
中国移動[チャイナ・モバイル](以下同社)は、中国最大の移動
通信キャリア。同社は主に携帯電話向けの移動通信サービス
を手掛けており、携帯電話の回線契約数は8.3億件と業界全
体の約70%を占めている。2014年から第4世代移動通信シス
テム(以下4G)のサービスを中国で開始し、その普及に注力。
2015年11月、親会社である中国移動通信集団から中国鉄通
集団公司を買収したことによって、固定の電話とインターネット
業務にも参入。2015年の売上構成は、データ通信が45.4%、
音声通信が39.2%、端末販売が12.6%、その他が2.8%。
/ 足元の決算は前年比ほぼ横ばいだが、収益基盤は拡大
2015年本決算は、売上高が前年比2.6%増の6683億元、純
株式データ
2016/6/3 現在
株価
売買単位
時価総額
実績 PER
PBR
52 週高値
52 週安値
業績推移
【連結】
決算期
‘14/12
‘15/12
音声通信が同16.5%減の2619億元、端末販売が同40.6%増
の842.5億元、その他が同4.6%減の187.7億元と、データ通信
売上高 前年比 純利益 前年比 1株利益 1株配当
651,509
3.4% 109,218 -10.3%
5.38
2.92
668,335
2.6% 108,539 -0.6%
5.30
2.72
単位:百万元、ただし 1 株利益は元、1 株配当は香港ドル
※1 株配当は株式分割・併合等調整済み
株価チャート(週足2015年6月19日~2016年6月3日)
利益が同0.6%減の1085億元と前年からほぼ横ばい。セグメン
ト別の売上高は、データ通信が前年比17.4%増の3034.3億元、
88.10香港ドル
500株
1兆8039億香港ドル
16.62倍
1.67倍
104.90香港ドル
79.00香港ドル
1,000
株価
(香港 ドル)
出来高
(百万株)
110.00
900
105.00
800
100.00
700
600
95.00
が初めて音声通信を上回った。また、2016年1~3月決算は、
500
90.00
400
売上高が前年同期比8.7%増の1775億元、純利益が同0.4%
85.00
300
増の239億元と、端末販売とデータ通信収入の増加が売上高
の伸びに寄与した。2016年3月末時点で、同社の携帯電話の
80.00
200
100
75.00
0
70.00
回線契約数は8.3億件、うち4Gの回線契約数は3.8億件、ユー
ザーあたりの月額平均利用金額(以下ARPU)は57.6元となっ
ており、データ通信の収益基盤が着実に拡大している中で
ARPUも上昇し始めている。
[出所:株式データ、業績推移、株価チャートともに
ブルームバーグなど、アイザワ証券作成]
その他
/ 4Gの普及に伴うデータ通信の成長に期待
現在、同社はデータ通信を主体とする収益構造への移行を
進めている段階で、音声通信収入の減少や設備投資に伴う減
(元)
中国移動のARPUと回線契約数の推移
(億件)
80.0
12
携帯電話の回線契約数(右軸)
75.0
うち4Gの回線契約数(右軸)
10
ARPU(左軸)
価償却費の増加によってARPUと純利益が伸び悩んでいる。
70.0
8
その一方で、4Gの普及を追い風に1~3月のデータ通信量は
65.0
6
前年同期比148%増と大きく伸びており、今年データ通信収入
60.0
4
の成長は更に加速する見通し。また、設備投資については足
55.0
2
元高水準で推移しているものの、今後ピークアウトすれば減価
50.0
償却費の増加による純利益の押し下げ圧力も徐々に弱まり、
緩やかな利益成長が期待できよう。このほか、同社の配当性向
0
2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
1~3月
[出所:会社発表資料、アイザワ証券作成]
は42.5%と比較的高く、かつ業績も安定していることから、安定
配当の銘柄として魅力がある点にも注目したい。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
銘柄研究
9
タイ:BA/BAn/Z3203
バンコク・エアウェ イズ
― 北 野 ちぐさ
業種: 空運
/ タイの大手航空会社
スワンナプーム空港(バンコク)、サムイ空港、チェンマイ空
港の3空港を拠点に、国内線と飛行距離5時間圏内の近距離
国際線を運航するフルサービスキャリア。2015年末時点で、国
内15路線を運航し主要なリゾート地をカバーするほか、国際線
16路線を運航する。さらに日本航空など20社と共同運航も行う。
主力の航空事業に加えて、サムイ空港、スコータイ空港、トラー
ト空港の運営なども行い、他社との差別化を図る。また、地域
航空会社としてブランド力が高く、英エアライン格付会社スカイ
トラックス社によるワールド・エアライン・アワード2015のリージョ
ナル・エアライン部門で世界2位にランクインした。
/ 足元、インバウンドと燃料費の低下で大幅増益を記録
株式データ
2016/6/3 現在
株価
売買単位
時価総額
実績 PER
PBR
52 週高値
52 週安値
24.40バーツ
100株
512億4000万バーツ
28.37倍
1.66倍
27.50バーツ
19.30バーツ
業績推移
【連結】
決算期
‘14/12
‘15/12
売上高 前年比 純利益 前年比 1株利益 1株配当
22,124
6.8%
351 -62.3%
0.21
―
24,903 12.6%
1,797 411.8%
0.86
0.70
単位:百万バーツ、ただし 1 株利益、1 株配当はバーツ
※1 株配当は株式分割・併合等調整済み
株価チャート(週足2015年6月19日~2016年6月3日)
2016年1~3月期決算は、売上高が前年同期比15.5%増の
株価
(バーツ)
出来高
(百万株)
77億7570万バーツ、純利益が同45.1%増の15億5288万バー
500
450
27.00
ツとなった。観光のベストシーズンと重なったこともあり、通期純
400
26.00
350
25.00
300
24.00
ムバーグコンセンサス)。根強いインバウンド需要に加えて、座
250
23.00
200
22.00
席キロ(※)の増加を背景に、旅客数は前年同期比10.5%増、
150
21.00
100
20.00
50
19.00
0
18.00
利益予想に対する1~3月期の進捗率は55%に達した(ブルー
旅客収入は同12.1%増、座席利用率は前年同期の71.9%か
ら74.4%へと上昇し増収に寄与した。一方、コスト面では原油
28.00
価格の下落を背景に燃料費が前年同期比37.6%減となり、1
座席を1キロ運ぶことで得られる利益(ユニットプロフィット)は前
年同期の0.79バーツから1.13バーツへと大幅に上昇した。
[出所:株式データ、業績推移、株価チャートともに
ブルームバーグなど、アイザワ証券作成]
その他
/ キャパシティ拡大でインバウンドの取り込みを図る
(万人)
昨年タイを訪れた中国人旅行者数は、前年比71.1%増と驚
120
異的な伸びを記録した。タイは外交面での政治色が薄く、東ア
100
ジア諸国への旅行に比べて安価なことから魅力的な観光地と
80
なっている。さらに中東や欧州で頻発するテロは、一方でタイ
の安全なイメージを強め、他地域の観光需要を取り込むきっか
となっている。会社側は高成長を続けるインバウンド需要を、増
タイにおける月間中国人旅行者数
60
40
便や路線拡張などにより取り込んでいく構えだ。具体的な目標
20
として2016年通年の座席キロを前年比10~11%増としている。
0
そのほか、インバウンドにおけるリピーター客の増加は、バンコ
クやプーケットのような有名観光地からサムイなど第2、第3の観
光地へと旅行需要を拡げている。今後、同地で手掛ける空港
運営事業の収益拡大も期待できそうだ。
[出所:タイ国観光・スポーツ省、アイザワ証券作成]
※座席キロとは、航空会社の旅客輸送能力を示す指標
で、総座席数に輸送距離を乗じて算出する。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
10
銘柄研究
アヤラ
フィリピン:AC/Z0882
― 姚 莉
業種: コングロマリット
/ フィリピンを代表するコングロマリット
フィリピン最大の財閥グループとして知られている同社は、
不動産開発を中心に、金融、通信、電子部品、水道、自動車
販売など多角的に事業を展開している。主力の不動産事業で
は、国内最大手不動産デベロッパーの「アヤラ・ランド(フィリピ
ン:ALI)」を傘下に置き、住宅・オフィス開発や都市開発、ホテ
ル事業、ショッピングモール事業などを手掛けている。そのほ
か、銀行事業では「フィリピン・アイランド銀行(BPI)」、通信事
業では「グローブ・テレコム(GLO)」、水道事業では「マニラ・ウ
株式データ
2016/6/3 現在
株価
売買単位
時価総額
実績 PER
PBR
52 週高値
52 週安値
845.00ペソ
10株
5240億2530万ペソ
24.93倍
2.53倍
858.00ペソ
600.00ペソ
業績推移
上高構成は、不動産が57.6%、電子部品が21.2%、自動車販
【連結】
決算期
‘14/12
‘15/12
売が10.8%、水道事業が9.1%など。
単位:百万ペソ、ただし 1 株利益、1 株配当はペソ
※1 株配当は株式分割・併合等調整済み
ォーター(MWC)」など多数の上場企業を擁する。2015年の売
/ 2016 年 1~3 月期決算は 2 桁増益
株価チャート(週足2015年6月19日~2016年6月3日)
2016年1~3月期決算は、売上高が前年同期比10.3%増の
20
452.8億ペソ、純利益が同14.6%増の57.8億ペソと増収増益に
16
なった。住宅販売の好調に加え、ショッピングモールなど商業
売上高 前年比 純利益 前年比 1株利益 1株配当
156,416 14.2% 18,609 45.6%
29.83
4.80
174,035 11.3% 22,279 19.7%
33.89
5.76
出来高
(百万株)
株価
(ペソ)
18
900.00
850.00
800.00
14
12
750.00
施設やオフィスの賃料収入が前年同期を大きく上回り、全体を
10
700.00
8
牽引した。また、ホンダやいすゞ自動車、ドイツのフォルクスワ
650.00
6
ーゲンの代理販売を展開している同社の自動車部門は、1~3
月期の新車販売が3社とも好調だったため、純利益が同4.5倍
600.00
4
2
550.00
0
500.00
の1.1億ペソに急増し、好業績に寄与した。
/ 発電やインフラ開発など新規事業に注力、収益拡大へ
同社は既存事業の不動産開発や銀行、通信など安定成長
分野との相乗効果を図るため、近年、インフラ開発や発電、ヘ
ルスケアなど新規事業の開拓を強化している。なかでも有力分
野と位置づけるのがインフラ開発と発電事業だ。同社がインフ
ラ事業を本格化したのは2011年で、アキノ政権が目玉政策の
一つとしてインフラ整備の推進策を打ち出されたのがきっかけ
だった。これまで軽量高架鉄道(LRT)1号線やモンテンルパ・
カビテ高速道路の開発・運営などのプロジェクトを落札。発電
事業では総設備容量650メガワットの発電所6ヵ所を運転してい
る。2016年1~3月期の決算では、2部門ともに黒字を計上し、
好業績に貢献した。7月に就任するロドリゴ・ドゥテルテ新大統
領は現政権のインフラ政策を継承し、GDPの5%をインフラ支
出に充てると表明しており、同社のインフラ事業にとって業績
拡大の追い風となりそう。また、鉄道沿線で住宅や商業施設を
[出所:株式データ、業績推移、株価チャートともに
ブルームバーグなど、アイザワ証券作成]
その他
(億ペソ)
250
アヤラ純利益の推移
(2011~2015年)
223
+25%
200
150
100
186
128
92
105
50
0
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
[出所:アヤラIR資料、アイザワ証券作成]
開発するなど主力の不動産開発との相乗効果も期待できそうだ。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
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Asia Monthly
DATA
11
経済統計&ランキング
/ アジア各国の経済統計 (2016年6月3日現在)
日本
2013
中国
2014
2015
2013
2014
台湾
2015
2013
2014
韓国
2015
2013
2014
シンガポール
2013
2015(予)
2014
2015(予)
実質GDP成長率(%)
1.4
0.0
0.5
7.7
7.3
6.9
2.2
3.9
0.7
2.9
3.3
2.6
4.7
3.3
2.2
1人当りGDP(米ドル) 38,552 36,156 32,486 6,995 7,626 7,990 21,888 22,288 21,607 25,998 27,970 27,195 55,980 56,287 53,224
外貨準備高(億米ドル) 12,024 11,997 11,790 38,213 38,430 33,300 4,168 4,190 4,260 3,465 3,636 3,680 2,731 2,569 2,477
経常収支(億米ドル)
407
244 1,375 1,482 2,197 2,932 553
654
462
811
844 1,059 541
532
576
鉱工業生産(%)
消費者物価指数(%)
政策金利(%)
2016年
3月
2016年
4月
2016年
5月
2016年
3月
0.20
-0.10
―
-3.50
-0.30
―
タイ
―
―
―
―
2.30
4.35
2013
2014
2015(予)
2013
2016年
4月
2016年
5月
6.00
―
2.30
―
4.35
4.35
マレーシア
2014
2015(予)
実質GDP成長率(%)
2.7
0.9
2.5
4.7
6.0
5.0
1人当りGDP(米ドル) 6,148 5,889 5,742 10,809 11,050 9,557
外貨準備高(億米ドル) 1,673 1,571 1,565 1,305 1,118 914
経常収支(億米ドル)
-52
154
348
113
145
87
鉱工業生産(%)
消費者物価指数(%)
政策金利(%)
2016年
3月
2016年
4月
2016年
5月
-3.57 -4.06
―
2.00 1.88
―
1.5
1.50
1.50
インドネシア
2013
2014
2016年
3月
-1.50
1.00
1.50
2016年
4月
-2.80
―
1.00
0.80
1.50
1.50
フィリピン
2013
2015(予)
2016年
5月
2014
2015
2016年
3月
2016年
4月
2016年
5月
-0.50
-1.00
―
2.90
-0.50
―
ベトナム
―
―
―
2013
2014
2015(予)
5.6
5.0
4.8
7.1
6.1
5.8
5.4
6.0
6.5
3,676 3,532 3,362 2,770 2,844 2,858 1,902 2,051 2,088
994 1,119 1,059
832
795
807
259
342
―
-291 -275
-178
114
108
84
78
93
28
2016年
3月
2016年
4月
2016年
5月
2016年
3月
2016年
4月
2016年
5月
2016年
3月
2016年
4月
2016年
5月
2016年
3月
2016年
4月
2016年
5月
2016年
3月
2016年
4月
2016年
5月
1.80
-0.46
1.50
1.50
-0.07
1.50
―
0.46
1.50
2.80
2.60
3.25
―
2.10
3.25
―
―
3.25
―
4.45
6.75
―
3.60
6.75
―
3.33
6.75
―
1.10
4.00
―
1.10
4.00
―
―
4.00
6.20
1.69
6.50
7.90
1.89
6.50
7.80
2.28
6.50
[出所:各種データ、アイザワ証券作成]
/ アイザワ証券 アジア株売買代金上位ランキング (2016年5月2日~5月31日統計)
アジア株式(買い手口)
順位 ティッカー
銘柄名
アジア株式(売り手口)
終値
市場
1
INDY
インディカ・エナジー
2
MIKA
ミトラ・クルアガ・カヤセハット
2350 インドネシア
3
TLKM テレコムニカシ・インドネシア
3700 インドネシア
4
5
CTRP シプトラ・プロパティ
700
騰訊 [テンセント・ホールディングス]
6
GGRM グダン・ガラム
7
WIKA ウィジャヤ・カリヤ
8
GAS
9
LPKR リッポー・カラワチ
10
KAEF キミア・ファルマ
ペトロベトナムガス
11
902
華能国際電力 [フアネン・パワー]
12
JFC
ジョリビー・フード
13 035420 Naver[ネイバー]
騰落率
順位 ティッカー
銘柄名
終値
市場
騰落率
1
WIKA ウィジャヤ・カリヤ
-2.1%
2
INDY
19.7%
3
LPKR リッポー・カラワチ
21.0%
4
バンコク・ドゥシット・
BDMS
メディカル・サービス
13.6%
5
69200 インドネシア
25.8%
6
TLKM テレコムニカシ・インドネシア
3700 インドネシア 19.7%
2400 インドネシア
-9.1%
7
PGAS ペルサハーン・ガス・ネガラ
2480 インドネシア
65.7%
8
955 インドネシア
-7.7%
9
1190 インドネシア
36.8%
10
-20.6%
11
KAEF キミア・ファルマ
1190 インドネシア 36.8%
7.5%
12
SMGR セメン・インドネシア
9000 インドネシア -21.1%
610 インドネシア 454.5%
496 インドネシア
173.30
60000
5.31
香港
ベトナム
香港
235.40 フィリピン
X
700
インディカ・エナジー
720000
韓国
9.4%
13
1211
比亜迪 [BYD]
14
991
大唐国際発電 [ダータン・パワー]
2.08
香港
-11.9%
14
698
15
698
通達集団[トンダー・グループ]
1.65
香港
20.4%
15
KLBF
955 インドネシア
24.10
タイ
17.90 フィリピン
騰訊 [テンセント・ホールディングス]
四環医薬 [スーファンファーマ]
-9.1%
610 インドネシア 454.5%
サーパス
GGRM グダン・ガラム
460
2400 インドネシア
173.30
香港
-7.7%
8.1%
17.7%
-9.7%
13.6%
69200 インドネシア 25.8%
1.67
香港
-61.8%
44.95
香港
5.4%
通達集団[トンダー・グループ]
1.65
香港
20.4%
カルベ・ファルマ
1430 インドネシア
☆終値は現地通貨 ☆騰落率は年初来
8.3%
(2016 年 5 月 31 日現在のデータ)
☆アジア株売買代金上位ランキングは当社取扱いのアジア株式市場(香港、中国 B 株、上海 A 株を含む)すべてを対象としています。
(注)アイザワ中国株業種別指数(ACSI)は、アイザワ証券が独自に作成した大分類 8 区分 30
の業種別指数です。当指数は、香港市場と中国本土の上海 B 株および深セン B 株市場から中国
関連銘柄を選定し、構成銘柄の浮動株時価総額の加重平均で算出しています。2016 年 5 月 1 日
時点で選定した 306 銘柄の浮動株時価総額は約 6.6 兆香港ドルに上っており、海外から直接投
資できる主な中国株をカバーしています。当指数は不定期に構成銘柄の調整を行うことがあり
ますのでご留意ください。
本資料のご利用にあたり、お客様にご確認いただきたい事項を、本資料の最終ページに記載させていただきました。ご確認の程、宜し
くお願いいたします。
Asia Monthly
12
各市場の取引時間(日本時間)
日本(東証)
中国
香港
9:00~11:30
10:30~12:30
10:30~13:00
12:30~15:00
14:00~16:00
14:00~17:00
マレーシア
タイ
インドネシア
台湾
韓国
10:00~14:30
9:00~15:00
フィリピン
シンガポール
10:00~18:00
ベトナム
10:00~13:30
12:00~14:30
月~木
金
10:30~13:00
11:00~13:30
15:30~18:00
16:30~18:30
11:00~14:00
15:30~18:00
11:00~13:30
16:00~18:00
14:30~16:30
15:00~17:00
イスラエル
16:45~24:15
(現地サマータイム時)
15:45~23:15
外国株投資の主なリスクと留意点
株価・為替の変動リスク:
株式は株価の変動等により、損失が生じるおそれがあります。外国株式は、為替の変動等により、損失が生じ
るおそれがあります。
時価総額リスク:
時価総額による企業の社会的信用度、規模の把握をお勧めします。小型株は、流動性の低さ/企業の情報開示
/コーポレートガバナンス等に問題がある場合があります。また、客観的投資情報が不足しているため、投資
対象として安全なのは、情報量が豊富で、時価総額の大きな代表企業と思われます。
政策リスク:
突発的な政情変化や政策変更など、また、各国の慣習や文化などの違いにご注意ください。
会計基準変更リスク:
国や企業により会計基準が違いますので、ご注意ください。
投資家の皆様へ
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インターネット口座 「ブルートレード」: インターネット発注 2,160 円/コールセンター発注 4,320 円(上海 A 株・米国株・欧州株・イスラエル株はコ
ールセンター発注のみ)
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る現地諸費用の額は、その時々の市場状況、現地情勢等に応じて決定されますので、本書面上その金額を予め記載することができません。
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