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【資料編】ギャラリートーク内容(PDF

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【資料編】ギャラリートーク内容(PDF
【ワークショップⅢ】対話を基本とした鑑賞にチャレンジ 記録
資料編
受講者を二つのグループに分け、それぞれでギャラリートークの題材作品とナビゲーターを決定。
グループの事前協議で出てきそうな意見を出し合い、ナビゲーターの問いかけなどについて話し合う。
その後、ナビゲーターがもう一つのグループの受講者を生徒役にしてギャラリートークを開始。
ギャラリートークⅠ
『母子像』小磯良平 事前練習(Part1)
ナビゲーター
・一人一人のギャラリートークでは、答え(正解)はないということを伝える。
・相談タイムを設ける。
・つぶやきをキャッチする。
・ 感 じ 方 、 考 え 方 、 意 見 が 違 う 。 出 て き た 意 見 を 受 け と め 、「 こ ん な 意 見 も
あるんだ」ということを実感しよう。
ナビゲーター
「気付いたこと、これなんやろ?(疑問に思ったこと)を何でもいいから発表して
ください。」
生徒
生徒
生徒
女の人が、今あんまり見ない布をかぶっている。後ろで留めている。帽子じゃない。
おばあちゃんがしているのを見たことがある。
キリスト教の絵でこんなんあった。
ナビゲーター
これっ覚えてる?(キャプションを指して)
キャプションの説明・・・・・絵の名札みたいなやつ
ここの「キャンバス」って何?
木の枠に麻の布を貼って描くの。
先生!後ろに描いてるの何かわからん。
分かる人!(問いかけ)
・つくえ ・しかけ ・中に何か入っている? ・ポン菓子の機械
前にあるおもちゃみたいなん、なんやろ?
・コースロープみたい ・コースロープって何? ・海(プール)に浮いているや
つ ・白いそろばんみたい ・ぐるっと周りを囲んでる
どこの国の人やろ?
・日本ではない ・日本ちゃうん ・着ている服が日本じゃない ・下町のおばち
ゃんが着てたで
・ゴザに座っている ・トタンの上にいる
子ども裸やから、暑いんとちゃう
戦前の日本かな?
・戦前やったら着物着てるはず
後ろの網みたいなんは魚取る仕掛け?
・お母さんは海女さんなのかな?
砂漠みたいに見えてきた
いつの時代?
・2007年夏にこんな人いる?
・キャプションに昭和28年って書いてるで
そうやなぁ。よく気付いてくれました。
戦争が終わって8年。ということは戦後の母子像?
イエス=キリストをイメージしてる
当時の日本は、ボロボロの服を着ていたかも知れんけど、マリア様をイメージして
こんな絵にしたのかも知れませんね。
何でこの人は、途中で描くのやめてんやろ?手とか足とか周りとか同じ色やのに線
引いただけで終わってる
題名が「母子像」やのに前のうきとかまで描く必要あったんやろか?
手で隠してみたらどう見えるやろう?(実際手で隠してみる)
ナビゲーター
ナビゲーター
生徒
ナビゲーター
生徒
生徒
生徒
生徒
生徒
生徒
生徒
生徒
生徒
生徒
ナビゲーター
生徒
ナビゲーター
生徒
ナビゲーター
生徒
生徒
ナビゲーター
生徒
ナビゲーター
生徒
生徒
生徒
ナビゲーター
・あった方がいい ・赤がないとさびしい ・二人が中心っていうのが強調される。
・室内にいたらインパクトがないから ・太陽の光
他に気付いた点は?
赤ちゃんがすごく大きい
お母さんが口を鳴らしていて赤ちゃんをあやしているように見える
赤ちゃんをはっきり描いてないのは、動いているからかも知れない
一枚の絵でいろいろ分かったし、いろいろな人たちの考えや気持ちが分かったと思
います。こういう鑑賞の仕方もあるのだということを覚えておいてください。
「『母子像』小磯良平 練習(Part1)」の終了後の意見会では、
・ナビゲーターの問いかけが聞き取りやすい。
・しゃべりたくなる雰囲気をつくっている。
・ナビゲーターが、生徒から意見を引き出すような問いかけをしている。
・美術館での注意から入ったのがよかった。
・一つの発言やことばに対し、どんどん切り返していくところがよかった。
・学校の行事や生活体験などと結び付けて、分かりやすい助言を与えていた。
ギャラリートークⅠ
『母子像』小磯良平 本番(Part2)
ナビゲーター
さて、この絵が描かれた時間は、何時ぐらいでしょう?
生徒
11時くらいかなあ?影が伸びているから・・午後だと日差しがきついから裸は無理
ナビゲーター
光のことが出たけど何で光が当たっていると分かったの?
生徒
太股に光が当たっていて、横に影があるから
ナビゲーター
太股の服のところは、固い?柔らかい?
生徒
服の布は、綿か麻 家庭科で先生が、夏の服は綿か麻って言ってた
生徒
麻にしては柔らかい
生徒
麻は固いイメージだから肌にこんなにぴったりとしていないと思う
生徒
小学校の修学旅行で伊勢に行ったとき、海女さんがそんな服着てた
ナビゲーター
海女さんってどんな仕事をする人?
生徒
水中めがねを付けて海に潜って貝を捕る仕事
海なんかないやん
生徒
うしろに魚捕る道具とかブイとか置いてあるやん
生徒
もし、海やったとしてこの母子と海との距離は?
ナビゲーター
海描いてへんからだいぶ遠い
生徒
この風景からどんなにおいがする?
ナビゲーター
潮のにおい
生徒
音は?
ナビゲーター
波の音
生徒
その他にどんなものが描かれてる?ヒントとなるものを探してみて
ナビゲーター
トタンの切れ端に座ってる
生徒
トタンに座ったら暑いやん
生徒
その上にゴザ敷いてあんねん
生徒
うき(ブイ)も描いてある プールのコースロープ
生徒
それじゃこの真ん中に描かれている人は、Aさんが言った海女さんだと思う?
ナビゲーター
家がない人
生徒
手が大きいから働いてる人
生徒
戦争で家がなくなって必死で働いてる人
生徒
戦争っていつの?
ナビゲーター
生徒
ナビゲーター
生徒
ナビゲーター
昭和28年!そこに書いてある
ほんまや これなんて言うの?
・知りません ・題名札 ・キャプション
そうやね キャプション! 作者名も書いてあるね
「『母子像』小磯良平 本番(Part2)」の終了後の意見会では、
・ナビゲーターの誘導が、みんなの意見を引き出しやすくしていた。
・ナビゲーターが、質問しなくても生徒がお互いに教え合い、意見の交流をし合える場を提供する
ことや雰囲気をつくることができていれば、問いかけなくてもどんどん意見が出てくる。
・引率教員がナビゲーターになることで、生徒のことを日ごろからよく観察し、身近な話と結び付
けて説明できる。
ギャラリートークⅡ
『二人の少女』小磯良平 本番(Part3)
ナビゲーター
何が描かれているか、気付いたことを挙げてみて
生徒
親が描いて子どもにあげたもの
生徒
同じ服を着ている
ナビゲーター
じゃあ、この子たちは兄弟?
生徒
・姉妹 ・妹が太っている
ナビゲーター
どっちが妹?どうして?
生徒
スカートが短いから赤い方が妹
生徒
お姉ちゃんは「こっち見て」って言われてちゃんと見ている
妹は「こっち向いて」と言われても「いややし」って無視してる
生徒
妹の方が背が低い
生徒
顔も似てる 眉毛の形が似てる
生徒
年子みたい お姉ちゃんの服が大きくなって少し窮屈になったみたい
ナビゲーター
この子たちは今どこに居るんだろう?
生徒
・豪華そうな壁?森の中? 傘が置いてある
生徒
影がはっきりしているので壁でいいのでは
生徒
お姉ちゃんが触っているのは何だろう
生徒
椅子のようなものの前のところに葉っぱがかぶっている
ナビゲーター
いろいろな意見が出たけど、ここはどこなんでしょう?
生徒
豪華な壁と傘から、レストランの壁 「こっち向いて、ハイポーズ」
生徒
姉の右手のところにあるのはキャンバスに見えるのでアトリエ?
生徒
〈突然表情の話に〉お姉ちゃんが今にもしゃべり出しそう「あんたは本読んでてい
いけど、私は退屈やわぁ」
生徒
姉は、ふくれている
生徒
妹は、口とんがらしてる
生徒
レストランで待たされてるシーンかなぁ
生徒
キャプションに昭和21年って書いてあるからこんな時代にファミレスないなぁ
生徒
戦争終わってすぐなのに、贅沢してるし、お嬢様や!
生徒
海外旅行の最中ちゃう?
生徒
戦争終わってすぐに行かれへんやん!
生徒
でもヨーロッパに見えるもん
ナビゲーター
なんで?
生徒
壁紙がヨーロッパみたい ほっぺ赤いし、目が青いかも
ナビゲーター
日本人じゃーないかも知れないね
生徒
だれが描いたんですかぁ?
ナビゲーター
だれでしょう?
生徒
(キャプションに書いてあるのをみて)小磯良平って人
ナビゲーター
子どもたちは何て言っているのかなぁ
生徒
・おなかすいた ・お父さんに頼まれてモデルしてるけど疲れた
ナビゲーター
生徒
生徒
生徒
ナビゲーター
今、お父さんって言ったけど、そしたら娘さんたちを描いたのかなぁ
そう言えば、眉毛の当たり小磯さんにも似てる
お姉ちゃんがお父さんに気を遣ってモデルをしっかり勤めてるけど、妹はなかなか
こっちを向かない様子
二人は窮屈そう すき間に入っているみたい
《最後に作品の解説》
「『二人の少女』小磯良平 本番(Part3)」の終了後の意見会では、
・見れば見るほど不思議な絵で、発見がたくさんある。また、二人の関係や作者の関係などイメー
ジをふくらませ想像しながら、意見や感想などどんどん発言された。
「対話を基本とした鑑賞」のまとめ
今回の模擬ギャラリートークは、受講者が二つのグループに分かれて行った。それぞれのグループ
が教材としてふさわしい作品(生徒にじっくり見せ、見つけて感じて考えられる作品)を選定し、想
定される質問や感想を吟味した上で、ナビゲーターの進行のもと、もう一方のグループに生徒役を演
じてもらい、進められた。
これまでの鑑賞が作品を通り過ぎながら全体的な作品の特徴を鑑賞する形態であったのに対し、今
回の方法は、一点をじっくり鑑賞する形態であった。この方法は、これまでの見方では発見できなか
った作品の特徴(描かれているものや場所、時代、その日の天気、においなど)を見つけ、考え、そ
して想像しながら鑑賞し、お互いに発見したものや感じたことを発表し共有し合える。生徒役の受講
者も、役を忘れ、自ら作品鑑賞の面白さにはまって行った様子であった。受講者も、この初めての鑑
賞方法に驚きと関心をもち、積極的に授業での活用を考えたようである。
2日目のワークショップでは、四つのグループに分かれ、自校でも活用できるような授業案を検討
した。発表後、神戸市の実践も紹介され、より自信を深めたようであった。
この2日間の研修を通して、鑑賞学習の方法もさらにグレードアップされるものと思われる。
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