...

多次元 AR モデノレによるシステム解析 - 日本オペレーションズ・リサーチ

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

多次元 AR モデノレによるシステム解析 - 日本オペレーションズ・リサーチ
多次元 AR モデノレによるシステム解析
石黒
真木夫
'
'
'
'
"
"
"
"
"
"
"
"
1
1
1
"
"
"
"
'
'
'
"
"
1
1
1
"
1
1
1
"
"
"
1
1
1
"
"
"
1
1
1
'
1
1
1
"
"
"
"
1
1
1
"
'
"
"
"
1
1
1
"
"
"
'
'
'
"
"
"
"
1
1
1
"
1
1
1
"
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
x (i)= 主 A(m)x (i -m)+õ (i)
はじめに
システム解析家の道具箱に入れておいてもらいたい方
法を提案しようと思う.多次元 AR モテ'ルを「分析する」
ための道具である.
身もふたもない言い方をすれば,
r 赤池と中 111 (
19
7
2
)
によって提案された“時系列の解析と制御のためのプロ
グラムパッケージ TIMSAC" に含まれる MULNOS
の機能を拡張して応用の範囲を広げるとともに,対話型
にして使いがってを良くしたフ。ログラム J の提案という
ことになる.将来の参照の際の便利のためにこれを AR.
DOCK と名つe けておく.
(
1
)
η1. =1
rAR モデルドック j のつもり
である.意味は「人間ドック」から類推されたい.
で表わされる.ここで , {x(i)} は h 次元ベクトルの系列,
{A(m)} は h 次元係数行列である.時系列 j{x(i)} の振舞
いは,次数 M ,
係数行列 {A(m) :i=I , 2 , … , M} および
ノイズ系列 {õ(i)} の分散共分散行列 Z などのパラメータ
によって決定される.
与えられたデータ {x (i) :i=I , 2 , … , N} が (1)式の機構
で生成されると想定すると,最尤法でパラメータを推定
することができる.データが十分に長い場合,
i=I , 2 , … , M} の推定値が満たすべき最尤方程式は近似
的に
N
M
i=1
.
¥
:
=
1
との影響をモデル上で調べることができる.結果を見な
がら対話的に切断,接続を試みることができる.
N
L
:x(i)xT(i-m)=L
:A(k)L
:x(
i-k)xT(i-m
i=1
ω)
m=I , 2,"', M
ARDOCK の特徴は,以下のとおりである.
-システムのコンポーネント聞の信号経路を切断するこ
{A(m):
となる.ここで (T) は転置の意味である.
Z に関してなにも制約を置かない場合には,
{A(m)}
の推定値が定まったという条件のもとで
(
i
)=x(i) ーさ
・ノイズ源相互が完全には相互に無相関でない場合にも
N
拙 =1
A(m)x(i-m)(i=1 , 2, … , N) ,
B =L
: (i)T(i)
対処できる.
2 番目の主張は, MULNOS を使ったことのない読者
には良くわからないかもしれないが, MULNOS を利用
するに当つての 1 つの障害がある程度回避できるという
として,
L:=長 B
(
3
)
が最尤法による Z の推定値になる.
ことである.
2
. 多次元 AR 毛デルとノイズ寄与率
時系列モデルの使われる分野は非常に広く,工学的な
データや,自然科学の分野のデータはもちろんのこと,
いわゆる文科系のデータ解析においても効果をあげてい
る.その中でとりわけ愛用されているのが AR モデルで
ある.
Z としてブロック対角型の構造,たとえば
L
:
=
(
L
:pp ...,
¥
L
:qq/
を仮定すると,
B ー (l!.pp
-¥Bqp
l
!
?
Bqq)
q
と B を分割して得られる {Bp q} を使って
L: pp =占Bpp ,
2
.
1 モデルのあてはめ
(
4
)
L: qq =会Bqq
と推定されることになる.対角プロックが一般に L 個の
多次元 AR モデルは
場合にも同様である.
いしぐろ
まきお文部省統計数理研究所
干 106 港区南麻布 4-6-7
1989 年 10 月号
Z としてプロック対角裂の構造を仮定するモデルの A
1C' 主,
プロックの個数を L として
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
(
3
5
)5
4
7
よって AR モデル (1)のパラメータの推定値が得られる.
AIC= 去 Nkt log27r+ NlogdetL
:!!+Nkt
MULNOS は,
(
5
)
+(k t 十 l)kt
で与えられる.
FPEC の結果にもとづいてノイズ寄与率
(9)を推定するプログラムである.ただし, MULNOS は
L: (4)が完全に対角型であること,つまり各雑音源が互い
2
.
2 パワースペクトルとノイズ寄与率
に独立であることを前提としている.
多次元 AR モデルのパラメータが推定できると,周波
数応答関数
DECONV は,雑音源から各測定値へのインパルス応
答を推定するプログラムであるが,本稿ではこれ以上触
A(f)=[I-EA(m)rwm]→ (O~f云 0.5)
(
6
)
間 =1
れる余裕がない.
2
.
4 ARDOCK
と,クロスパワースベクトル,
P(f)=A(f)L
:A*(f) (O~f云 0.5)η
がただちに計算できる.ここで I は単位行列.
(*)は共
ARDOCKは. MULNOS に手を加えて,一般の対角
型の分散共分散行列 L: (4) に対するノイズ寄与率(9)が推定
できるように改良したプログラムである.
役転置の意味である.
Z が(4)式のようなプロック構造をもっていると. (竹式
ARDOCK の機能を以下のように整理することができ
る.
から
(Pvv(
f
) Ppq(
f
)¥
(App(f)A阿(f)\
q
P(f)=
(
:PP
D
P
q
;
J
.
.
:
)
. A(f)=
(
-;PP ,'-:,:
;
J
.
.
:)
¥Aqp(
f
) Aqq(f)J
¥Pqp(f) Pqq(f)J
7
,':.:
として,
Ppp(f)=App(
f
)L
:ppApp*(f)+Apq(f)L
:qqApq*(f)
:ppAqp*(f)+Aqq(f)L: qqAqq本 (f)
Pqq(f)=Aqp(f)L
ノイズの分散共分散行現u: のプロヴク対角化:r;の構
造を変えたときの A 1C(5) の値が計算される .L: の構造
が変わることによってパワースベクトルの推定値,ノイ
ズ寄与率が変わる.
(
8
)
が得られる.
ベクトル x (i) の第 j 成分のパワ}スベクトルは行列
P(f) の(j .j) 成分として推定されるが. (8)式の意味する
ところは . Pjj が
[ARDOCK の繊能1
j の値によって
A 1C の値が小さい場合のものが最
も信頼できるはずだが,問題意識のあり方によっては,
AIC 最小のモデルを使えない場合もある.使用者の判
断で処理しなければならない.
マスキング操作:
1
. 周波数応答関数を計算する (6)式における AR モデ
Pj
j
(
f
)=[App(
f
)L: ppApp本 (f)Jjj
ルの係数行列 {A(m)} の任意の成分を強制的に 0 に置く
+[Apq(f)L
:qqApq*(f)Jjj
ことが可能.たとえば,マスク
あるいは
Pj
j
(
f
)=[Aqp(f)L
:ppAqp*(f)Jjj
1110000
1110000
1110000
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
:qqAqq*(f)Jjj
+ [Aqq(f)L
の形に書けるということである.いずれにせよ
パワースベクトル =L: pp に由来する部分
+L: qq に由来する部分
の形になる.右辺の 2 つの項は L 、ずれも周波数 f の関数
を (7x 7)係数行列 {A(m)} にかけることによって,
Ajk(m)=O(j =1.2 , 3 , k=I.2 , 3
.4, m=I , 2.
で常に正の値を取る.
Z pp に由来する部分
(
9
)
パワースベクトル
で定義される量をスベクトルに対する pp ブロックから
のノイズ寄与率と名づける .L: の対角プロックの数が一
….M)
とした場合を調べることができる.このような机上実験
によって,ある信号経路を切り離した時のシステムの挙
動の変化を容易に確認することができる.
2
. L: の任意の対角プロックを強制的に O にできる.
般の L 個であっても各ブロックからの寄与率を同じよう
これによって,あるノイズ源、が除去された時の効果を確
に定義することができる.
認できることになる.
2
.
3 TIMSAC
パワースペクトル表示:
TIMSAC パッケージに含まれている AR モデルにも
とづく多次元時系列解析用のプログラムとして.
MULNOS.DECONV 等がある.
5
4
8 (36)
FPEC.
FPEC を使うことに
各変数のパワースペクトルのグラフを見ることができ
る.細か L 、ことだが,対数スベクトルではなく,
r 生の」
パワースベクトルである.ノイズ寄与はパワースベクト
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
オベレーションズ・リサ}チ
ji;川川山
i
j::山川山門
l
iJN川い4"VI
出 jj山川附酬川川
3::仙川凡川川作オ
0
:
:
4
1V • ¥
J
¥
f
t ^^"'I"<品J
rl
I
¥,.rv "J "
υi
v
¥.
r
J
'
Iv
可If
.V I.f\,.../
\.r ・"",-..
V
;::ド刊「γ
f二
Time
図 1
ロータリーキルンの運転記録
ルカ丸、くつかのCiE) 項の和であると L 、う見方に立つも
変数までが被制御変数,つまり被制御システムであるセ
のだから,これとを並べるパワースベクトルは「生 J の
メントのロータリーキルンの状態を表わす変数,残りの
ものであるべきなのである.グラフ表示に当っては,ス
4 変数が制御入力である.図中 Wattage などと記され
ケーリングを固定して,モデル操作にともなうスベグト
ている略称の意味に関しては表 1 にまとめておいた.な
ルの形の変化だけでなく,高さの変化がすぐわかるよう
お,
になっている.
めに源データを 100 で割ってある.
3.
[MODEL1
]
数値例
7 チャンネルである.第 1 変数から第 3
1989 年 10 月号
AR モデルを当てはめたところ,次数
4 の AR モデルが AIC の意味で最良のモデルとして選
図 1 はセメントのロータリーキルンの運転記録であ
る.長さ 511 ,
グラフに入れる目盛りの数値の桁数を小さくするた
ばれた.ノイズ源の分散共分散行列を正規化した相関行
列は表 2 のようなものであった.非対角項が比較的小さ
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
(
3
7
)5
4
9
表 1
変数番号
数
変
表 2
内
略称
'ι
内49Jd
Wattage
Pressure
Temperature
R
Fuel
せ
ZJZO
CR
ヲg
Damper
容
キルン駆動所要動力
クーラ下室圧力
窯尻ガス温度
キルン回転速度
燃料供給率
クーラグレート速度
1
.00
-0.15
-0.1
5
1
.00
ー O.
1
6
ー 0.01
O
.10
0.15 -0.03
ー 0.06
0.08
0
.
0
1
0.04
0.09
0.03 -0.09
0.02 -0.03
O
.1
0 0.08 0.04 1
.00 ー 0.11
0.09 -0.01
1 1
.00 ー 0.05 -0.06
-0.06 0
.
0
1 0.09 ー O. 1
1
.
0
0 0.04
0.15 0.03 0.02 0.09 ー 0.05
.00
-0.03 -0.09 -0.03 -0.01 -0.06 0.04 1
-0.16
1
.00
相関行列
ー 0.01
窯尻ダンパ開度
雑音によっている.低周波領域における第 1 変数と第 3
くノイズ源の問に顕著な相関は見られない.このモデル
を MODEL 1 と名づけよう.
MODEL 1
の AIC の値
は表 3 の第 1 行自に示されている 25765.92 であった.こ
れより次数の高いモデルも,低いモデルも AIC の値は
これより大きくなる.このモデルから推定される各変数
のパワ}スベクトルのグラフを図 2 の 1 段目に示す.
パワースベクトルを見ると,第 1 変数から,第 3 変数
までの被制御変数,および制御変数である第 4 から第 7
変数までのいずれをとっても,
ほとんど周波数 0.1 以下
の低周波部分にパワーが集中していることがわかる.ス
第 3 変数のスペクトルの構造も第 1 変数のものと似て
いる.パワーの大きな部分が被制御変数の発生する雑音
に由来するものである.直流成分における第 6 変数から
の寄与が顕著である.
制御変数のパワースペクトルに関しては,第 6 変数と
第 7 変数が比較的被制御変数の雑音に応答している以
外,ほとんど自分自身で閉鎖的な挙動を示しているのが
印象的である.
[MODEL3J
このスベクトルの構成を調べるために,
MODELl の分散共分散行列にマスク
イズ寄与率を推定することができる.制御変数のノイズ
と,被制御変数のノイズのあいだには相関がないが,被
制御変数のノイズ相互の間に,あるいは制御変数のノイ
1
0
0
0
0
0
0
0100000
0010000
0001000
0000100
0000010
0
0
0
0
0
0
1
ズ相互の聞には相関があると想定するモデルを作ってみ
よう. MODELl の分散共分散行列にマスク
1
1
1
0
0
0
0
1
1
1
0
0
0
0
1
1
1
0
0
0
0
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
をかけて MODEL 2 を構成して調べてみる.このモデ
ルから推定される各変数のパワースベクトルは図 2 の 2
段目に示されている.
ノイズ寄与率の定義を拡張してあるの
で,必ずしも 7 変数全部が互いに独立でない場合にもノ
ペグトルの構造は単純である.
[MODEL2
J
変数からの寄与が大きいのが目だつ.
1 段目の結果とほとんど変わらな
x3
をかければよい.相関行列が 3
影響によるものである. MODEL2 の AIC の値は,表
対角型になる.これを MODEL3 と名づける.このモデ
3 の 2 行自の 25799. 14で,情報量規準の立場からは,全
と 4
x4
いなかで,第 2 変数のスベクトルの形の変化がマスクの
のプロッグ
ルの AIC の値は表 3 の 3 行目に示す25776.73 となる.
変数が互いに無相関と見ることに無理があることを示し
まだ,全変数の聞に相関有りとする最初のモデルより値
ているが,ここではあえてこのモデルにもとづくノイズ
が大きく,不満は残るが,全変数が完全に独立であると
寄与率を図 2 の 3 段目に示す.
する 2 番目のモデルに比べるとだいぶ低くなる.図 3 の
第 1 変数のスペクトルの構造を見ると,直流成分のほ
1 段目にこのモデルから推定される最初の 3 変数のパワ
ぼ50%が制御変数の揺らぎに起因するものの,パワーの
表 3
対角ブロック型モデルの AIC
大部分が自分自身の発生する雑音によっていることがわ
かる.制御変数の中では,第 5 変数と第 7 変数からの寄
与が大きい.第 4 変数と第 6 変数からの寄与は小さい.
第 2 変数のスベクトルの構造は第 1 変数のものと似て
いる.やはりパワーの大きな部分が自分自身の発生する
5
5
0(38)
モデル
MODEL1
MODEL2
MODEL3
分散共分散行列のプロック構造
AIC
(1
7
)
(
1
)
(
2
)
(
3
)
(
4
)
(
5
)
(
6
)
(
7
)
25765.92
(1
3)
(
4
-7
)
2
5
7
7
6
.7
3
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
2
5
7
9
9
.1
4
オペレーションズ・リサーチ
P
r
c
s
s
u
r
c
Wattagc
凸円
凸同J
4
品2
)
m自司
2
P>
q'
UH
=注ι。ぃ4
>
。
=
d
=
Q 2
4
)
世てωロCコ〉
tLF。h
o
'
4
同
0
Q
2
~
52
R
-;::;•
0
2
F4
3
C
J
k
E
l 6
~
Tcmpcratul
'C
4
2
5
D 1
仏。E
ι-Ze
E
E
C
h
C
L
E
J
。
0
.
1
0 0
.
2
0
0
.
0 0
.
1
0 0
.
2
0
Freq
Freq
Wattage
P
r
e
s
s
u
r
e
Temperature
(
小3
。:;:
口
日凸C
2
3
0
.
0 0
.
1
0 0
.
2
0
Freq
R
N
(
小1
2同口。:雪
J
K
J 6
4
)
2
0
首Q
2
判q3~4自盲
1
2
4
ぺemzq〉コd-、
“〉ぴ【ー?、
でqコ
0
.
1
0 0
.
2
0
Freq
J
2
E三
J
t
L
c
v
b
」o,4
p
j 2 ¥
t
C
h
H
E
C
E
B
。
0
.
1
0 0
.
2
0
0
.
1
0 0
.
2
0
Freq
Freq
nF
臼
[
ハU
八υ
F
リ目
。
図 2
l
Freq
3
l1
0
.
1
0 0
.
2
0
。
0
.
0 0
.
1
0 0
.
2
0
0
.
0 0
.
1
0 0
.
2
0
Freq
Freq
。 10
0
.
1
0 0
.
2
0
Freq
各変数のパワースベクトルとノイズ寄与率
ースペクトルのグラフを示す.この場合,パワースベク
1
1
1
0
0
0
0
1
1
1
0
0
0
0
1
1
1
0
0
0
0
0000000
0000000
0000000
0000000
トルに対する各変数のノイズからの寄与を分離して推定
することはできないが,
0
.
2
0
1プ】 C 'l
r被制御変数群 J からの寄与と
「制御入力群」からの寄与は分離できる.図 3 の 2 段目
にこの場合のノイズ寄与率のグラフを示す.図 2 とは,
各ノイズ源からの寄与が細かく分離されていないだけで
をかけて得られるモデルを MODEL 4 とする.このモ
なく,
デルから推定されるパワースベクトルを図 3 の上から 3
r 被制御変数群 j と「制御変数群 J へのパワーの
振り分けに関しても多少違っているはずだが,被制御変
段目に示す.
数と制御変数の聞の絡み具合いを見るにはこれで十分で
ことがわかる.特に直流成分に近い低周波成分における
あろう.
[MODEL4]
1 段目のスベクトルに比べて背が低くなる
パワーの低下が L 、ちじるしい.突は,この結果はわかっ
今度はこのモデルをいじってみること
ていた.図 3 を見ると各パワースベクトルにおける制御
にしよう.まず,制御変数のノイズを 0 にしてみる.分
プロックからの影響の割合がわかるから,この分がなく
散共分散行列にマスク
なった時のパワースベクトルの姿は,予想できるのであ
1989 年 10 月号
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
(
3
9
)5
5
1
CR
F
u
e
l
1
0
0
1
0
)
J
=
。KQJ
d凸
E
C 1
0
5
会 5
¥
L
。ω-
v
p
4
0
.
1
0 0
.
2
0
且hG。
F
>J
4
。
0
.
0 0
.
1
0 0
.
2
0
Freq
Freq
CR
F
u
e
!
。冨t
;
l10
円.叫gq〉コ司切、 一
忍bω 5
0
J
u
k
¥
E
S
B
E
O
4
0
.
1
0 0
.
2
0
ECE。同HZ
J
。 l
、』
0
.
0 0
.
1
0 0
.
2
0
.
1
0 0
.
2
0
0
.
0 0
Frcq
Freq
CR
Damper
Freq
Fue
1
Dampef
。ュ
ω」
¥
1
0
0
(
k
J
Q
20
l
c
:
;
)
Q
3
E
C
E
h
Z
4
O
J
0
.
0 0
.
1
0 0
.
2
0
Freq
1
0
4
Z
0
5
C
0
P5
0
S5
&
向~
Damper
同
円
1
.0
"
'
1
.0
L
in
eS
a
m
p
!
e
(
小3
J
。
。=
J
'=
"口
Q
K2
J
J
i
o
s
三・制。内同ロ 0.5
同ロ 0.5
.D
{
¥
。。
0
.
0 0
.
1
0 0
.
2
0
0
.
0 0
.
1
0 0
.
2
0
0
.
0 0
.
1
0 0
.
2
0
.
1
0 0
.
2
0
0
.
0 0
Freq
Freq
Freq
Freq
図 2
(つつ.き)
る.これは,制御系が出しているノイズを抑えることが
をかければよい.このモデルを MODEL5 と名づける.
できれば,システム全体の揺らぎを小さくできるであろ
このモデルにもとづくパワースベクトルの推定値を図 3
の 4 段目に示す.
うということを示唆している.
[MODEL5
]
では,関 1 の運転記録での制御は,有
害無益と考えるべきなのだろうか?
この点をチェック
するには,制御入力から被制御システムへの信号の経路
こんどは,分散共分散行列と AR 係数行列に,それぞ
1
1
10000 1110000
1110000 1110000
1110000 1110000
0001111 1
1
1
1
1
1
1
0001111 1
1
1
1
1
1
1
00011111111111
0001111 1
1
1
1
1
1
1
5
5
2 (40)
段目のスベクトルより債が大きくなっている.
これらの結果から,制御が確かに有効に働いては L 、る
が,その代償として非常に低い周波数領域における揺ら
を切断してみれば良い.
れ,マスタ
3 段目に比べてスベクトルの背が高く
なった.直流成分のごく近傍以外の周波数領域では
ぎを持ち込んでいるらしいということがわかる.
まさ
に,赤池らが図 1 のデータから読み取ったことである.
これにつづく赤池らによるセメントのロータリーキルン
の計算機制御の詳細に関しては参考文献を参照されたい
[MODEL8
J
最後に,被制御システムから制御入力
への信号経路を切った場合のパワースペクトルとノイズ
寄与率のグラフを図 3 の 5 段目と 6 段目に示しておく.
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
オベレーションズ・リサーチ
P
r
e
s
s
l
l
rC'
M
w
g4
旨 3
6
0
2
.2
。,“
3
1
3
Freq
仏
Freq
f1:│;
Wa抗age
守
P
r
e
s
s
u
r
e
叶唱
同
日
T
e
m
p
e
r
a
t
u
r
e
Pressure
J
Foa
3
4
.2
:
:
;
:
:
z
;
>
者 2
'u
'
u
;
5
S
nJ
、ー'=
ヨ
:
O0
.0
'50
.
1
00
:
1
50
.
2
0~
F四屯
-ー一一一一-=l
!
l 0
0
.
0 0.050.100.150.20 b 0
.
00
.
0
50
.
1
0
0
.
1
50
.
2
0
O~
巳4
Freq
J
'
"3
T
e
m
p
e
r
a
t
u
r
e
告の
2 2
国
凶
4
8
2
。
。
3
2
FU
z
;
>
2
、』←
4
5
。仏
0
0
.
00
.
0
50
.
1
00
.
1
50
.
2
0i
!
Freq
Freq
J
l
"
P
r
e
s
s
u
r
e
noa
的J凶口。EE28EE
Wa抗age
1
'
e
m
p
e
r
a
t
u
r
e
建計
J
。
告の
診百 5 司旬。=。内山
(凶52)
唱、同
Wattage
O~
0
.
0 0.050.100
.
1
5
0
.
2
0
o
:
c
.
.
図 3
Freq
仏
Freq
シミュレーション
分散共分散行列と AR 係数行列に,それぞれ,マスク
1
1
1
0
0
0
0
1
1
1
0
0
0
0
1
1
1
0
0
0
0
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
主 2
一一一}包 0
O~
,....::::
I
~ も
.
00
.
0
50
.
1
00
.
1
5
0
.
2
0
0
.
00
.
0
50
.
1
00
.
1
5
0
.
2
0}
i .oom0.100J150.205 0
Freq
;
;
:
;
T
e
m
p
e
r
a
t
u
r
e
c。
J
J
aaτ
凶凸()冨E
)8主 包〉宣伝
同J
Wattage
このプログラムを使用することによって,ノイズ寄与率
および,各コンポーネントの聞の接続を切った場合のス
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
0
0
0
1
1
1
1
ペクトルの変化を見ることができる.
ある信号経路を切ったときの効果が小さければ,そこ
は本来切れていることが予想される.これを確認するこ
とは制約された AR モデルのあてはめを行なって,その
をかけた場合で‘ある.オベレーターがシステムの状態を
モデルの AIC と無制約 AR モデルの AIC を比較する
見ないで制御入力を操作したとすればこうなるであろう
ことによって可能であろう. ftIJ 御系を別のものに切りか
と L 、う非現実的な例である.
えたときの効果を見るようにすることも容易だが,ここ
4
.
最
ではこの点には深入りしないこととする.
後
このように,モデルのパラメータを変えてみた場合の
線形ジステムにおけるコンポーネント聞の関連を調べ
ることを目的とするプログラム ARDOCK を紹介した.
1989 年 10 月号
結果をただちに信用するのは危険であるが,さらに深く
追求して L 、く場合の手がかりになり停ることは確かであ
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
(
41
)5
5
3
<0
S
3
642
P
r
e
s
s
u
r
e
~
0
2
3
5
者 2
ワb
ハリ
AU
n
u
図 3
っ
lPHυ
yiJ
Pressure
1
0-F
公
oTq
iu
Wa枕 age
-
公
•
、u
F
E
nリ
-一一一一-a
)
(
2
"J
I
0
.
00
.
0
50
.
1
0
0
.
1
50
.
2
05
1 も 00.050100.150.205
F
r
e
q
.
F
r
e
q
p
.
.
ハU
,..-:::::"
4
き 2
2
O~
T
e
m
p
e
r
a
t
u
r
e
<0
J
UAU
ハ
)
苫hdE
与む出。仏
3 凶凸()
W
a
t
t
a
g
e
T
c
m
p
e
r
a
t
u
r
e
(つつ'き)
[2J 八木原彬股( 1976) ,セメントプロセスの制御,数
る.
Cプログラムの公開について 1
汎用性のあるプログラ
理科学,
ムで使い道もあると思われるので,なるべく早い機会に
No.153, p
p
.
5
3
5
9
.
[3J Otomo , T. , Nakagawa , T. and Akaike , H.
何らかの形で公開することにした L 、が,時聞がとれるか
(1972) , S
t
a
t
i
s
t
i
c
a
lapproacht
ocomputercon
どうかが問題である.
t
r
o
lo
f cement rotary kilns , AutomaticaJ
.
[謝
IFAC , 8 , p
p
.
3
5
4
8
.
辞]
[4J Hagimura , S. , Saitoh , T. and Yagihara , Y.
1986年度の統計数理
(1988) , Application o
f time s
e
r
i
e
sa
n
a
l
y
s
i
s
研究所共同利用研究集会 (61 ・共会・ 18) で,ある程度
and modern c
o
n
t
r
o
l theory t
o the cement
発表済みである.その後の明治大学の大矢多喜夫教授と
plant. , AISM , Vol
.40 , No.3 , pp.419-438.
の「雑談」の中で刺激されて,プログラム化した部分も
[5J Nakamura , H. and Toyota , Y. (1988) , Staュ
ここで紹介した方法については,
多い.記して感謝の意を表したい.
参
ラ老
文
t
i
s
t
i
c
a
li
d
e
n
t
i
f
i
c
a
t
i
o
nandoptimalc
o
n
t
r
o
lo
f
.40 , No.1 ,
thermal power plants , AISM , Vol
献
p
p
.
I
2
8
.
[1] 赤池弘次,中川東一郎:ダイナミツクシステムの
[6J 尾崎統編( 1988) ,時系列論,放送大学教育振興
統計的解析と制御,サイエンス社 (1972).
ラ
5
5
4 (42)
ラ
会.
ラ
ラ
ラ
© 日本オペレーションズ・リサーチ学会. 無断複写・複製・転載を禁ず.
オベレーションズ・リサーチ
Fly UP