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大和郡山市清掃センター 運営管理効率化検討報告書

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大和郡山市清掃センター 運営管理効率化検討報告書
大和郡山市清掃センター
運営管理効率化検討報告 書
平成 27 年2月9日
大和郡山市清掃センター
運営管理効率化検討委員会
目
次
1
検討の趣旨 ······························································
1
2
現状と課題 ······························································
2
2.1 現状のごみ処理体制 ····················································
2
2.2 施設の概要 ····························································
4
2.3 運転管理の状況 ························································
7
2.4 基幹的設備改良工事の内容 ·············································· 12
2.5 検討課題 ······························································ 15
3
導入が想定される事業方式 ················································ 16
3.1 事業方式の抽出 ························································ 16
3.2 各事業方式の導入実績 ·················································· 18
3.3 事業方式の比較評価 ···················································· 19
4
長期委託導入に関する課題の整理 ·········································· 22
4.1 課題の抽出 ···························································· 22
4.2 先進事例の状況 ························································ 24
4.3 関係業者アンケートのための条件設定 ···································· 25
5
関係業者アンケート ······················································ 28
5.1 調査の内容 ···························································· 28
5.2 調査の結果 ···························································· 29
6
関係業者アンケートを踏まえた事業スキームの検討 ·························· 35
6.1 事業期間 ······························································ 35
6.2 業務範囲 ······························································ 35
6.3 リスク分担 ···························································· 36
6.4 SPC設立について ···················································· 36
7
VFMの算定 ···························································· 38
7.1 VFMの算定の考え方 ·················································· 38
7.2 VFMの算定 ·························································· 40
8
導入可能性の評価と今後の検討事項 ········································ 41
8.1 長期委託導入可能性の評価 ·············································· 41
8.2 今後の検討課題 ························································ 43
8.3 今後のスケジュール ···················································· 48
資 料 編
1
検討の趣旨
大和郡山市(以下「本市」という。)では、昭和 60 年 11 月竣工の「大和郡山市清掃セン
ター(ごみ処理施設)」
(以下「清掃センター」という。)において、搬入されるごみの適正
処理を行うとともに、必要な補修・整備や適切な維持管理を行うことにより、施設の保全
及び延命化にも努めてきた。
しかし、稼動後 28 年が経過し、経年劣化による施設の老朽化が進行しており、一般的な
ごみ処理施設の更新時期(20~25 年)を超える状況において、財政状況等も考慮し、抜本
的な基幹的設備改良工事を行うことにより施設の延命化を図ることとした。
そこで、平成 24 年度に施設の長寿命化計画を策定し、国の循環型社会形成推進交付金事
業として平成 27~29 年度の 3 年間で基幹的設備改良工事を行い、工事後 15 年間の延命化
を図るとともに、新たにごみ発電を行うことにより熱エネルギーの有効利用及び温室効果
ガス排出抑制にも努めることとした。
一方、施設の運転管理、物品・用役調達及び点検・補修等の運営管理については、これ
まで個別かつ単年度での仕様発注を行ってきたが、単年度契約の場合、長期的な視点でラ
イフサイクルを最適化させる機能が働きにくく、民間事業者のノウハウを活かしにくいと
いわれている。
近年では、運転管理業務に加え施設運営管理業務すべてについて、複数年度にわたり包
括的に委託する「包括的民間委託」の導入事例が増えている。包括的民間委託導入は、一
般的にはコストの削減と適切な運営・管理につながるとされている。
本市においても、基幹的設備改良工事後の清掃センターについて、長期的視点で計画的
な運営管理を行うことが、安定的な施設稼動と財政負担の削減の両面から必要不可欠であ
ることから、包括的民間委託の導入について検討するものである。
1
2
現状と課題
2.1 現状のごみ処理体制
現状のごみ処理体制を図 2-1-1 に、収集・運搬体制を表 2-1-1 に、ごみ処理施設等の位
置を図 2-1-2 に示す。
本市では、家庭系ごみを可燃ごみ、不燃ごみ等(カン・ビン類を含む)
、粗大ごみ・有害
ごみ、ペットボトル及び資源ごみ(ダンボール・古新聞・古雑誌・牛乳パック・古布)に
区分して直営もしくは委託業者による収集を行っている。事業系ごみについては、主に可
燃系ごみを対象に許可業者による収集もしくは自己搬入を行っている。
ごみとして排出されたもののうち、不燃ごみ等以外のごみは清掃センターへ搬入し、ご
み焼却施設やペットボトルリサイクル施設等で中間処理を行っている。また、不燃ごみ等
は環境事業協同組合に処理を委託しており、そのうち可燃物は清掃センターで焼却処理し、
資源化物は資源回収している。
ごみ焼却施設では、可燃ごみ等の焼却処理及び粗大ごみの破砕選別処理を行っており、
処理後の固化灰(焼却灰)や不燃物については主に大阪湾広域臨海環境整備センター(フ
ェニックス処分場)で埋立処分を行っている。
不燃ごみ
空かん
空びん
無色・茶・その他ビン、アルミ・スチール缶
委託業者
可
燃
物
大和郡山市清掃センター
可
燃
物
固化灰
可燃ごみ
(家庭系、事業系)
不燃物
ごみ焼却施設
(破砕選別設備を含む)
焼鉄、冷鉄
粗大ごみ
ペットボトル
フェニックス
処分場
大和郡山市
最終処分場
ペットボトル
リサイクル施設
かん・びん丸※
紙・布類
食品トレー
再資源化
有害ごみ
委託業者
※かん・びん丸「市内小学校に設置された回収ボックスに空缶を集め、その資源売却益で学校図書購入の一部補助
を行う事業を環境教育として行っている。」
図 2-1-1 現状のごみ処理体制フロー
2
表 2-1-1 家庭系ごみの収集・運搬体制
ごみの種類
収集主体
燃えるごみ
燃えないごみ(不燃ごみ等)
(可燃ごみ)
カン・ビン
その他のもの
粗大ごみ
有害ごみ
直営・委託
委託
委託
委託
委託
排出容器
内 訳
ペットボトル
資源ごみ
直営
直営
月1回
月1回注1
ステーション方式
収集方式
収集頻度
粗大ごみ・有害ごみ
月1回
週2回
市販のビニール袋
専用袋
(半透明)
(緑色)
生ごみ
空缶類
紙くず
ビン類
ポリ容器
発砲スチロール
片
ポリパック
ガードホイール
バッグ
皮革品
専用袋
(透明)
陶磁器類
なべ
花びん
灰皿
ガラス片
フライパン
包丁
年3回
専用袋
(ピンク)
タンス
乾電池
ソファ
蛍光灯
単車(50cc以下) 体温計
机、フトン
鏡
掃除機
水屋
かさ
一斗缶
指定無し注2
市販のビニール袋
指定無し
(半透明)
飲料用・酒類 ダンボール
用・しょうゆ用 古新聞
のペットボトル 古雑誌
牛乳パック
古布
注1)資源ごみは原則として地域の集団回収活動へ出すが、実施されていない場合は自治会単位で申し込めば月1回の収集を行う。
注2)粗大ごみは、焼却処理物と金属類に分ける。
図 2-1-2 ごみ処理施設等の位置図
3
2.2 施設の概要
(1)清掃センター
施設の概要を表 2-2-1 に、全体配置図を図 2-2-1 に、処理工程図を図 2-2-2 に示す。
ごみ焼却施設は流動床式焼却炉(全連続燃焼式)であり、平成 10~12 年度には排ガス
高度処理施設整備工事を行っている。焼却炉の余熱は蒸気として回収し、隣接する温水
プール等で有効利用している。
また、平成 9 年度からは敷地内にペットボトルリサイクル施設を整備し、ペットボト
ルの圧縮梱包処理を行っている。
表 2-2-1 清掃センターの概要
施
設
所
在
敷
ご
み
焼
却
施
設
名
地
設
備
概
要
ペットボトル
リサイクル施設
面
称
大和郡山市清掃センター
地
奈良県大和郡山市九条町80番地
積
11,500㎡
施 設 面 積
延床面積:7,840㎡、建築面積:4,080㎡
建 設 時 期
工事期間:昭和58年10月~昭和60年11月、稼働開始:昭和60年12月
(排ガス高度処理施設整備工事:平成10年9月~平成13年3月)
施 設 規 模
180t/日(60t/24h×3炉)
炉
全連続燃焼式(1日24時間運転)
型
式
設 計 ・ 施 工
三井造船株式会社
施 設 建 設 費
本体工事費:3,045,760千円
(排ガス高度処理施設整備工事費:6,573,207千円)
受入・供給設備
ピットアンドクレーン方式
燃
流動床式焼却炉
焼
設
備
燃焼ガス冷却設備
廃熱ボイラ式、減温塔
排ガス処理設備
ろ過式集じん器、乾式有害ガス除去装置、触媒反応塔
余 熱 利 用 設 備
場内:給湯・冷暖房、場外:九条公園温水プール、給湯・冷暖房
※平成31年度からごみ発電を行う予定
通
平衡通風方式
風
設
備
灰 出 し 設 備
バンカ方式、灰固化設備(薬剤処理)
破 砕 選 別 設 備
破砕機+磁選機+トロンメル
排 水 処 理 設 備
プラント排水等:生物処理+凝集沈殿処理
ごみピット汚水:蒸発酸化方式(炉内噴霧)
延 床 面 積
223㎡
建 設 時 期
竣工:平成9年3月、稼働開始:平成9年4月
施 設 規 模
200~300kg/h
形
圧縮梱包機(平成13年4月より稼働):2基
式
4
図 2-2-1 清掃センター全体配置図
図 2-2-2 ごみ焼却施設処理工程図
5
(2)最終処分場
本市最終処分場の概要を表 2-2-2 に示す。
固化灰や不燃物等は、基本的にフェニックス処分場へ搬入しており、近年では、本市
最終処分場への搬入はほとんどないが、浸出水処理施設の稼働は継続している。
表 2-2-2 最終処分場の概要
項
施
目
設
所
名
在
内
容
称
大和郡山市一般廃棄物最終処分場
地
奈良県大和郡山市山田町843番地
埋 立 開 始 時 期
昭和59年
埋
立
面
積
22,000m2
埋
立
容
量
180,000m3
残
余
容
量
33,175m3(平成24年度末現在)
物
不燃物、焼却残渣
埋
立
対
象
埋
立
方
法
サンドイッチ方法
し
ゃ
水
工
有り
浸出水処理施設
100m3/日(日平均)
回転円盤+凝集沈殿+砂ろ過+活性炭吸着+キレート樹脂
6
2.3 運転管理の状況
(1)運転管理体制
清掃センターは、表 2-3-1 に示すように直営及び委託による運転管理を行っている。
表 2-3-1 運転管理体制(平成 26 年度現在)
項 目
内
直営
施設人員
委託
直営
勤務体制
委託
容
総 数:60人(清掃センター職員)
収 集:係長5名、班長6名、係員29名
庶 務:センター長1名、係長1名、係員3名
施設管理:係長2名、主査1名、班長3名、係員9名
総 数:33人
運転管理総括責任者1名、業務管理責任者1名、業務管理副責任者1名
特級ボイラ技師1名、清掃員1名 日勤運転員 3人
焼却設備運転操作:1班5名(班長1名、現場責任者1名、運転操作員3名)×4班
粗大ごみ設備操作:責任者1名、運転操作員2名
灰固化装置操作:責任者1名、運転操作員1名
勤務時間:8:30~17:00(月~金曜日)
公 休 日:土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始(12/29~1/3)
日勤
・勤務時間:8:30~17:30(月~金曜日)
・公 休 日:土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始(1/1~1/3)
直勤
・勤務時間:1直 8:30~17:30
12/31 17:30から1/3 17:15まで
2直 17:15~00:00
年末年始公休日
3直 00:00~ 8:45
ただし上記期間も宿直勤務あり
・公 休 日:土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始(12/31~1/3)
(2)運転実績
① 搬入・処理実績
過去 5 年間(平成 21~25 年度)の清掃センターへの搬入量を図 2-3-1 に、清掃センタ
ーの処理実績を表 2-3-2 に示す。
可燃ごみ等搬入量
粗大ごみ搬入量
(t/年)
(t/年)
35,000
2,000
34,000
1,800
33,000
1,600
32,000
33,799
34,091
34,125
34,221
34,369
1,400
31,000
1,200
30,000
H21
H22
H23
H24
1,510
1,569
1,513
1,435
1,357
1,000
H25
H21
H22
(年度)
H23
(年度)
図 2-3-1 清掃センターへの搬入量の実績
7
H24
H25
表 2-3-2 清掃センターの処理実績
項目\年度
搬
入
量
年間焼却量
(t/年)
日平均焼却量
(t/日)
時間平均焼却量
(t/h)
ボ
イ
ラ
ー
蒸気発生量
(t/年)
1,513.27
1,435.14
1,356.81
35,637.80
35,656.16
35,726.28
1系
201
229
216
209
214
2系
206
214
197
232
225
3系
194
195
230
207
230
計
601
638
643
648
669
1系
4,519.9
5,128.5
4,727.0
4,623.1
4,613.9
2系
4,654.4
4,768.8
4,372.1
5,057.6
4,802.3
3系
4,341.8
4,296.3
5,057.8
4,535.9
5,065.1
計
13,516.1
14,193.6
14,156.9
14,216.6
14,481.3
1系
11,295.80
12,660.26
11,539.30
11,237.34
11,430.11
2系
11,583.80
11,852.40
10,641.80
12,344.38
11,566.21
3系
10,859.50
10,674.25
12,341.20
11,212.24
12,362.27
計
33,739.10
35,186.91
34,522.30
34,793.96
35,358.59
1系
56.20
55.28
53.42
53.77
53.41 計画条件:60t
2系
56.23
55.39
54.02
53.21
51.41 〃
3系
55.98
54.74
53.66
54.17
計
168.41
165.41
161.10
161.14
1系
2.50
2.47
2.44
2.43
2.48 計画条件:2.5t
2系
2.49
2.49
2.43
2.44
2.41 〃
3系
2.50
2.48
2.44
2.47
2.44 〃
平均
2.50
2.48
2.44
2.45
2.44 〃
61
64
54
55
50
353.0
391.0
311.3
308.3
281.5
(t/年)
1,682.26
1,739.59
1,612.14
1,530.62
1,540.82
(t/日)
27.58
27.18
29.85
27.83
30.82
(t/h)
4.77
4.45
5.18
4.96
5.47
1系
21,285.20
23,780.90
21,323.50
20,994.90
21,334.10
2系
21,869.40
22,437.20
20,214.80
23,172.70
21,574.60
3系
20,452.80
20,353.40
22,905.30
20,681.40
22,715.80
計
63,607.40
66,571.50
64,443.60
64,849.00
65,624.50
1.89
1.89
1.87
1.86
1,989.93
1,836.81
1,761.52
2,050.27
2,407.63
2,471.97
2,600.55
2,534.38
2,489.70
2,456.34 灰固化物
7.33%
7.39%
7.34%
7.16%
1,336.97
1,389.13
1,398.50
1,459.12
(t/t)
焼却灰(t/年)
(%)
不燃物(t/年)
冷鉄(t/年)
60.74
61.76
56.71
7.35
焼鉄(t/年)
195.82
197.23
214.83
230.68
(%)
電力(kW/年)
(kW/t)
灯油(ℓ/年)
(ℓ/t)
市水(㎥/年)
(㎥/t)
ユ
ー
テ
ィ
リ
テ
ィ
備 考
34,369.47
1,569.23
純水使用量(㎥/年)
搬
出
量
H25
34,221.02
35,660.66
運転時間(時間/年)
破砕処理量
H24
34,124.53
1,509.63
運転日数(日/年)
破
砕
設
備
H23
34,091.43
35,308.45
計
運転時間
(時間/年)
H22
33,798.82
粗大ごみ(t/年)
運転日数
(日/年)
焼
却
設
備
H21
可燃ごみ(t/年)
硫酸(kg/年)
(kg/t)
苛性ソーダ(ℓ/年)
(ℓ/t)
塩酸(ℓ/年)
(ℓ/t)
井水(㎥/年)
(㎥/t)
0.58%
0.56%
0.62%
0.66%
6,596,946
3,888,012
6,810,992
6,549,733
196
110
197
188
39,671
35,483
36,705
34,918
1.2
1.0
1.1
1.0
11,635.52
11,015.83
11,576.93
10,392.26
53.75 〃
158.57 計画条件:180t
1.86 焼却ごみ1t当たり
6.95% 焼却ごみ1t当たり%
1,439.69
21.06 破砕選別鉄
223.34
0.63% 焼却ごみ1t当たり%
6,675,923
189 焼却ごみ1t当たり
38,191
1.1 焼却ごみ1t当たり
11,180.94
0.34
0.31
0.34
0.30
1,800
1,720
1,080
2,500
3,220
0.053
0.049
0.031
0.072
0.091 焼却ごみ1t当たり
6,900
8,290
6,060
8,630
9,520
0.20
0.24
0.18
0.25
930
1,070
1,070
1,130
0.028
0.030
0.031
0.032
17,222.80
19,383.20
19,768.60
19,136.40
0.32 焼却ごみ1t当たり
0.27 焼却ごみ1t当たり
2,210
0.063 焼却ごみ1t当たり
22,428.20
0.51
0.55
0.57
0.55
160.44
175.60
126.31
126.66
138.39
(t/t)
0.0048
0.0050
0.0037
0.0036
0.0039 焼却ごみ1t当たり
(t/t)
42.14
0.0012
48.09
0.0014
50.05
0.0014
58.11
0.0017
56.06 ハイセーブHK801
0.0016 焼却ごみ1t当たり
消石灰(t/年)
重金属固定剤(t/年)
8
0.63 焼却ごみ1t当たり
② ごみ質(焼却ごみ)
過去 5 年間(平成 21~25 年度)のごみ質調査結果(年度別平均値)は、表 2-3-3 及び
図 2-3-2 に示すように、低位発熱量は平成 23 年度までは年々高質化していたが、平成
25 年度では計画条件の基準ごみ時とほぼ同程度となっている。
表 2-3-3 ごみ質調査結果(年度別平均値)
項目\年度
ご
み
の
種
類
・
組
成
H21
H22
H23
H24
H25
計画条件
平均
紙・布類
%
40.13
48.68
42.01
41.45
43.75
43.20
ビニール・合成樹脂類
%
27.92
19.91
26.77
28.00
23.34
25.19
木・竹・わら類
%
10.32
5.52
8.92
7.85
7.96
8.11
厨芥類
%
13.71
17.16
13.32
15.01
15.25
14.89
不燃物類
%
4.17
3.49
5.23
4.07
3.91
4.17
その他
%
3.75
5.24
3.75
3.62
5.79
4.44
186
170
200
170
185
182
単位容積重量
三
成
分
kg/m
3
低質
基準
高質
230
水 分
%
50.23
44.63
50.31
44.69
53.19
48.61
57.5
49.2
22.5
可燃分
%
44.10
47.96
42.82
48.71
40.54
44.83
31.4
39.0
63.8
灰 分
%
5.67
7.41
6.87
6.60
6.27
6.56
11.1
11.8
13.7
kJ/kg
7,050
7,900
8,580
8,090
6,280
7,580
4,610
6,620
11,730
kcal/kg
1,700
1,900
2,100
1,900
1,500
1,800
1,100
1,580
2,800
13.7
4.2 3.7
低位発熱量
注) 各年度6回測定値の平均値
ごみの種類組成(年度別平均値)
40.1
平成21
27.9
48.7
平成22
10.3
19.9
5.5
17.2
平成23
42.0
26.8
8.9
13.3
平成24
41.5
28.0
7.9
15.0
43.8
平成25
0%
10%
20%
紙・布類
23.3
30%
40%
合成樹脂類
50%
木・竹・藁類
厨芥類
8.0
60%
ごみの三成分(年度別平均値)
80%
5.2
5.2
3.7
4.1 3.6
15.3
70%
その他可燃物
3.5
3.9
5.8
90%
100%
その他不燃物
低位発熱量(年度別平均値)
(kJ/kg)
15,000
50.2
平成21
44.1
44.6
平成22
5.7
48.0
7.4
10,000
50.3
平成23
42.8
44.7
平成24
6.9
48.7
6.6
5,000
53.2
平成25
0%
20%
40.5
40%
水 分
60%
灰 分
80%
7,050
7,900
8,580
8,090
6,280
6.3
100%
0
平成21
可燃分
平成22
図 2-3-2 ごみ質の推移(年度別平均値)
9
平成23
平成24
平成25
③ 排ガス濃度等
過去 5 年間(平成 21~25 年度)の排ガス濃度測定結果は表 2-3-4 に示すように、いず
れも法規制値や計画条件(公害防止基準値)を満足している。
また、過去 5 年間(平成 21~25 年度)の排ガス及び飛灰のダイオキシン類測定結果は、
表 2-3-5 に示すように排ガス濃度は法規制値や計画条件を満足している。
表 2-3-4 排ガス濃度測定結果
年度
H21
H22
H23
H24
H25
区分
ばいじん(mg/m3N)
塩化水素(mg/m3N)
硫黄酸化物(K値)
窒素酸化物(ppm)
1系
1系
1系
1系
2系
3系
2系
3系
2系
3系
2系
3系
水銀(mg/m3N)
1系
2系
3系
平均
0.2
0.3
0.3
20
29
22
0.01
0.01
0.01
100
95
93 0.028
0.03 0.021
最大
0.2
0.3
0.5
30
54
28
0.01
0.01
0.01
110
110
100 0.048
0.06 0.043
平均
0.3
0.2
0.2
21
22
14
0.03
0.02
0.03
98
94
102 0.018 0.022 0.021
最大
0.3
0.2
0.3
35
43
22
0.03
0.03
0.03
110
110
110 0.024 0.047 0.059
平均
0.4
0.3
0.3
22
31
21
0.02
0.02
0.02
89
89
95 0.017 0.032 0.019
最大
0.4
0.4
0.4
31
62
56
0.02
0.02
0.02
97
96
110 0.026 0.059 0.036
平均
0.3
0.2
0.3
23
20
21
0.02
0.02
0.02
88
79
91 0.024 0.011 0.012
最大
0.3
0.2
0.4
45
31
38
0.02
0.02
0.02
120
92
120 0.041 0.017 0.031
平均
0.2
0.3
0.3
28
25
19
0.04
0.02
0.02
103
90
89 0.016 0.021 0.017
最大
0.3
0.4
0.4
42
35
30
0.06
0.03
0.02
120
96
98 0.026 0.036 0.033
計画条件
10以下
114以下(70ppm以下)
K値1.75
150以下
排出基準
150以下
700以下
K値17.5
250以下
-
表 2-3-5 ダイオキシン類測定結果
排ガス(ng-TEQ/㎥)
年度
1系
2系
飛灰(ng-TEQ/g)
3系
1系
2系
3系
H21
0.0034
0.0073
0.02
1.2
1.5
1.4
H22
0.011
0.028
0.029
0.62
2.3
0.74
H23
0.013
0.012
0.016
0.49
0.64
0.48
H24
0.062
0.094
0.051
1.1
1.2
1.5
H25
0.0076
0.0049
0.017
0.51
0.59
0.83
計画条件
1.0以下
-
基準値
5以下
3以下
10
(3)運転・維持管理費の実績
過去 5 年間(平成 21~25 年度)における清掃センターの運転・維持管理費は、表 2-3-6
及び図 2-3-3 に示すように、運転管理委託費が全体の約 1/3 を占めており、人件費、用
益費及び点検・補修費の占める割合は各々約 20%前後で推移している。また、平成 25
年度は電力費や燃料費の高騰により、用役費が増加している。
表 2-3-6 運転・維持管理費の実績
人
件
費
用
役
費
中間処理
132,664
134,105
127,716
126,612
最終処分
15,817
15,735
16,022
16,024
16,234 技能職
148,481
149,840
143,738
142,636
138,801
75,223
78,032
82,044
83,539
107,414
水道費
3,187
3,026
3,208
2,864
3,024
3,604 灯油
3,069
2,463
3,725
2,508
35,973
42,678
39,351
43,417
117,452
126,199
128,328
132,328
157,374
228,226
228,226
228,226
228,226
228,226
補修整備費
91,356
47,837
24,877
47,644
108,126
法定・点検費
35,823
37,556
59,764
37,379
36,323
修繕費
25,953
21,779
20,712
25,558
19,124
施設点検委託
4,112
3,802
3,828
3,974
2,977 注)
補修整備等精査業務
1,680
1,680
1,680
1,680
1,680
386
481
399
481
159,310
113,135
111,260
116,716
6,274
6,450
6,662
6,389
フェニックスへの委託料
19,913
20,832
20,501
27,563
27,225
フェニックスへの通行料
1,767
1,878
1,843
1,933
2,025
工場修理・車両修理
2,578
2,118
2,709
4,426
1,428 フェニックス持込車両
86
209
511
228
1,035
30,618
31,487
32,226
40,539
40,523
684,087
648,887
643,778
660,445
733,553
燃料費
薬品費等
計
性能検査手数料
計
環境調査委託
そ
の
他
備 考
122,567 一般職+技能職
電力費
計
運転管理委託費
点
検
・
補
修
費
単位:千円
H25
H24
H23
H22
H21
項目\年度
その他保守業務
計
計
合
43,332 注)
399 注)
168,629
8,810 注)
注) 薬品費等:ハイセーブ、スーパーバグガード、オイル・グリス等・計測用酸素等・ボイラー用薬剤等・工場用薬剤
施設点検委託費:電気保安業務・熱しゃく減量及び水質分析測定・誘導灯非常照明及び自動火災報知機設備法定点検・浄化槽
法定点検・消防法点検・各種分析測定委託
性能検査手数料:ボイラー性能検査・トラックスケール定期検査
環境調査委託:灰固化溶出試験分析測定・ダイオキシン類等測定分析
800,000
(千円/年)
733,553
684,087
700,000
600,000
30,618
648,887
40,539
32,226
31,487
40,523
660,445
643,778
168,629
159,310
113,135
111,260
116,716
228,226
228,226
228,226
228,226
228,226
117,452
126,199
128,328
132,328
157,374
148,481
149,840
143,738
142,636
138,801
H21
H22
H23
H24
H25
500,000
400,000
300,000
200,000
100,000
0
(年度)
人件費
用役費
運転管理委託費
点検・補修費
図 2-3-3 運転・維持管理費の推移
11
その他
2.4 基幹的設備改良工事の内容
清掃センターは、稼動後 28 年が経過し、経年劣化による施設の老朽化が進行しており、
一般的なごみ処理施設の更新時期(20~25 年)を超える状況である。そのため、本市では、
財政状況等も考慮し、平成 27~29 年度の 3 年間で基幹的設備改良工事を行い、工事後 15
年間の延命化を図ることとした。
基幹的設備改良工事(以下「基幹改良」という。)の内容は、以下に示すとおりであり、
概算工事費用は 5,130,000 千円を予定している。
(1)発電によるエネルギー回収の向上
蒸気式小型発電機(150kW×2 基)を設置し、これまで利用されていなかった余剰蒸気
による発電を行うことで、熱エネルギーの有効利用及び購入電力量の削減を図るものと
する。
(2)電力使用量の削減
1)工場用空気圧縮機(2 基)をインバータ式に更新する。
2)計装用空気圧縮機(3 基)をインバータ式オイルフリー型に更新する。
3)ごみ投入扉を油圧跳ね上げ式から小型電動式観音開き式に変更・更新する。
4)ごみピット室・炉室の水銀灯(400W)をセラミックランプ(190W)に交換する。
5)天井ルーフファンを最新高効率型に変更・更新する。
(3)性能・機能回復
設備・機器等の機能回復を図る更新等の内容については、表 2-4-1~表 2-4-3 に示す
とおりである。
表 2-4-1 基幹的設備改良工事の内容(1/3)
設備名称
受入供給設備
燃焼設備
機 器 名 称
基数
ごみ投入扉(電動化)
ごみクレーン(制御のインバータ化)
焼却炉(耐火物交換)
エアシール
給じん機
ごみ供給機
供給コンベヤ
一廃破砕機
砂循環エレベータ
不燃物抜出装置
不燃物振動篩
炉直投コンベヤ
不燃物コンベヤ
砂循環シール装置
砂循環乗継コンベヤ
4+2
2
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
3
12
工事年度
備 考
平成27年度 平成28年度 平成29年度
○
○
交付対象
○
○
交付対象
○
○
○
交付対象
○
○
○
交付対象
○
○
○
交付対象
○
○
○
交付対象
○
○
○
交付対象
○
○
○
交付対象
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
表 2-4-2 基幹的設備改良工事の内容(2/3)
設備名称
燃焼ガス冷却設備
排ガス処理設備
余熱利用設備
通風設備
灰出し設備
給水設備
機 器 名 称
基数
平成27年度
平成28年度
平成29年度
備考
廃熱ボイラ(水管更新)
3
○
○
○
交付対象
ボイラ給水ポンプ
4
○
○
○
交付対象
脱酸剤・pH調整ポンプ・貯留槽
1
○
高圧復水器
1
○
○
交付対象
噴霧用コンプレッサ(インバータ化)
3
○
○
交付対象
純水装置
○
1
交付対象
○
交付対象
空気圧縮機(インバータ化)
(1式)
○
○
○
交付対象
ガス冷却機(耐火物交換)
3
○
○
○
交付対象
減温塔(下部本体交換)
3
○
○
○
ノズル冷却ファン
3
○
○
○
噴射水加圧ポンプ
3
○
○
○
減温塔噴射水ポンプ
3
○
○
○
排ガス再加熱器
3
○
○
○
集塵機(下部ケーシング)
3
○
○
○
飛灰排出ロータリーバルブ
3
○
○
○
飛灰掻寄機
3
○
○
○
飛灰排出機
3
○
○
○
薬品圧送用ブロワ
3
○
○
○
再加熱用空気予熱器/加熱器(送風機含む)
3
○
○
○
発電関連(復水器、電源設備含む)
1
○
空調用温水熱交換器
1
○
冷水発生器
1
○
空調用冷却塔
1
○
ポンプ類
(1式)
○
送風機類(押込みNo.1,2、誘引送風機)
3×3
○
○
○
3
○
○
○
灰振分スクリュー
1
○
○
○
成形機用灰コンベヤ
1
○
○
○
加湿機用灰コンベヤ
1
○
○
○
加熱処理灰定量供給機
1
○
○
○
成形機供給スクリュー
1
○
○
○
養生コンベヤ
1
○
○
○
振分コンベヤ
1
○
○
○
灰コンベヤNo.3
1
○
○
○
加温水ポンプ
2
○
○
○
キレートポンプ
2
○
○
混練成形機
1
○
○
灰固化物バンカ
2
○
切出機
1
○
機器冷却用クリングタワー
1
○
除鉄ろ過器
2
○
凝集沈殿分離槽
1
○
○
1
○
○
○
その他ポンプ類
(1式)
○
○
○
排水処理設備(ポンプ類)
(1式)
○
生物処理装置
(1式)
○
13
交付対象
交付対象
灰コンベヤNo.1
給水ユニットポンプ
排水処理設備
工事年度
表 2-4-3 基幹的設備改良工事の内容(3/3)
設備名称
電気計装設備
破砕前処理設備
その他
機 器 名 称
基数
工事年度
平成27年度
平成28年度
平成29年度
備考
DCS(発電関連)
(1式)
○
交付対象
高圧受電設備/高圧コンデンサ(高効率化)
(1式)
○
交付対象
高圧受電設備/変圧器(高効率化)
(1式)
○
交付対象
分析計
(1式)
ITV
(1式)
○
一般計器
(1式)
○
非常用発電機
(1式)
低圧盤
(1式)
No.2ブースバー
(1式)
○
現場制御盤
(1式)
○
動力・電灯版
(1式)
○
MCC盤
(1式)
VVVF装置
(1式)
交流無停電電源装置
(1式)
○
ACフィルター盤
○
○
○
○
○
○
(1式)
○
ごみ供給コンベヤ
1
○
粗大ごみ破砕物コンベヤ
1
○
一廃、粗大ごみ切替コンベヤ
1
○
鉄分コンベヤ
2
○
可燃物コンベヤ
3
○
粗大ごみ用破砕機(本体及びフード等更新)
1
○
磁選機
2
○
ギロチンカッター
1
○
せん断物破砕機
1
○
不燃物バンカ
1
○
鉄分バンカ
1
○
破砕機サイクロン
1
○
破砕機バグフィルタ
1
○
排風機サイレンサ
1
○
水銀灯(セラミックランプ)
(1式)
○
交付対象
天井ルーフファン(高効率化)
(1式)
○
交付対象
14
交付対象
2.5 検討課題
清掃センターの運営管理は、本市が主体となって施設の運転管理、物品・用役調達及び
補修点検等を個別かつ単年度での仕様発注を行っており、公共人件費も含めた運転・維持
管理費は、年間約 6~7 億円程度となっている。
施設の運営管理を個別に単年度で仕様発注する場合の課題は、以下のとおりである。
・運転管理業務については、仕様発注のため、運転管理費を削減することが難しい。
・物品・用役調達業務については、単年度契約のため調達単価引き下げが期待できず、
所定の性能を維持しながら、使用量の節約努力を行うこと期待できない。
・点検・補修業務については、補修の必要性及び工事発注の判断を公共が主体的に行う
のは難しい。
・個々の業務を別々の民間事業者に委託すると、物品・用役の使用を節約する努力や、
施設の寿命を延ばす努力が期待できない。また、運転管理業務と点検・補修業務の個
別発注により、責任分担が不明確になりやすい。
また、清掃センターは、基幹改良後に 15 年間の延命化を図ることとしており、その 15
年間において施設の安定稼働を継続するためには、日常点検や予防保全による適切な維持
管理が必要である。
予防保全とは、突発故障を未然に防止するための定期修繕や、異常の初期段階に不具合
個所を改善する予防修繕、将来的に性能低下が予想される機器に対して行う計画修繕等の
総称であり、適切な予防保全を行うことが結果的にトータルでのコスト削減にもなる。
しかし、現在の発注方式では、以下の理由から適切な予防保全が難しくなっている。
①予防保全に必要な予算の確保
通常、施設運営に要する予算は前年度実績を基にコスト削減努力を加味して設定され
ることが多いため、前年度実績に基づく予算では、経年劣化によるコスト増が賄えない
可能性が高く、予算的な制約により予防保全を実施できない場合が生じやすい。
②予防保全に必要なノウハウ
全ての設備・機器を予防保全するためには莫大なコストが必要であるため、各機械・
電気設備の経年特性や他施設での実績データ等から危険度やリスクを判定し、優先度を
つけて予防保全を行う必要がある。こうしたノウハウは、公共よりも全国各地の同種施
設の維持管理に関与している民間事業者の方に蓄積されている。
③予防保全に必要な期間
現在の運転管理受託者はプラントメーカーであるが、単年度契約であるため、長期的
な視点でライフサイクルを最適化させる機能が働きにくく、民間事業者のノウハウを活
かせる契約にはなっていない。
このように、基幹改良後の清掃センターの運営管理において、安定的な施設稼働と財政
負担の削減を図るためには、民間活力(能力)の導入と長期的視点で計画的に運営管理を
行うことが必要不可欠である。
15
3
導入が想定される事業方式
3.1 事業方式の抽出
(1)事業方式の種類と概要
清掃センターへの導入が想定される事業方式としては、表 3-1-1 に示す従来型の「単
年度委託」や包括的民間委託として「中期委託」と「長期委託」があり、各方式の役割
分担は表 3-1-2 に示すとおりである。なお、この他にも「指定管理者制度」や「公共施
設等運営権」もあるが、一般廃棄物処理施設にはなじまないことから本検討では除外す
る。(次項参照)
表 3-1-1 事業方式の種類と概要
事業方式
概
要
単年度契約で、公共がその権限に属する事務・事業等を直接実施せず、他の機
単年度委託
関又は特定の者に行わせる方式であり、民間事業者の業務内容は日常的な運転管
理や点検程度である。
契約期間は 3~7 年であり、公共で行う運転計画の作成や各種消耗品の調達・
中期委託
管理も民間事業者が担うこととなる。ただし、定期修繕や補修工事は、民間事業
者の業務範囲には含まれないことが一般的である。
長期委託
契約期間が 10~20 年程度と長期間であり、定期修繕や補修工事まで民間事業
者に委ねることとなる。
表 3-1-2 各事業方式の役割分担
単年度委託
中期委託
長期委託
長期補修計画
公共
公共
民間
年間運転計画
公共
民間
民間
運転管理
民間
民間
民間
日常点検
民間
民間
民間
小規模修繕
民間
民間
民間
消耗品の調達管理
公共
民間
民間
光熱水費の調達管理
公共
民間又は公共
民間又は公共
定期修繕等
公共(民間に委託)
公共(民間に委託)
民間
補修工事
公共(民間に請負)
公共(民間に請負)
民間
公共
公共
公共又は民間
資源化物の売却
(2)指定管理者制度について
公共が設置する「公の施設」
(地方自治法第 244 条第 1 項)の管理を、公共が指定する
民間事業者などに実施させる制度であり、主に文化・教育施設、都市公園、公営住宅、
16
病院、スポーツ施設など、市民が直接利用する施設で導入されている。
一般廃棄物処理施設については、地方自治法における「公の施設」に該当するかどう
かの判断が明確になっておらず、市町村の判断に委ねられていることから、指定管理者
制度が積極的に活用されていない状況にあり、導入事例も全国で1例と非常に少ない。
また、契約期間は通常 3~5 年程度であり、定期修繕や補修工事等、資産に手を加える業
務を行うことはできないことから、今回の検討からは除外することとする。
(3)公共施設等運営権について
平成 23 年度の「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(P
FI法)
」改正により制度化された手法である。公的主体が所有権を有しており、かつ利
用料金を徴収する施設(独立採算型等)について、民間事業者が運営等を行い、利用料
金を自らの収入として収受する方式であり、主に上下水道、高速道路、空港などの料金
徴収を伴う公共施設を対象としている。
一般廃棄物処理施設については、直接搬入ごみの処理手数料や資源化物の売却益等は
あるものの少額であり、独立採算型の施設ではないため、適用対象にならないと考えら
れる。なお、PFI法に基づく「民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する
事業の実施に関する基本方針(PFI基本方針)
」
(平成 25 年 9 月 20 日)では、利用料
金を徴収する産業廃棄物処理施設について、従来から民間事業者による設置管理が認め
られており、かつ、設置主体が管理することを原則としているため、地方公共団体が設
置する産業廃棄物処理施設への運営権の設定は馴染まないとしている。(表 3-1-3 参照)
表 3-1-3 PFI基本方針における公共施設等運営権の設定について
施 設
水道施設
医療施設
社会福祉施設
管理者等
水道事業者
水道用水供給事業者
国、地方公共団体
独立行政法人等
社会福祉事業者
漁港(プレジャーボート収容施設) 地方公共団体
中央卸売市場
工業用水道事業
都道府県又は人口20万人以
上の人口を有する市等
地方公共団体
地方公共団体以外の者等
根拠法令
公共施設等運営権の設定について
水道法
設定は可能(注)
医療法
設定は可能。ただし、医療法第7条第5項の趣旨に照らし、営利を
目的とする者が医業本体を事業範囲とすることは認められない。
社会福祉関係各法
設定は可能(注)
漁港漁場整備法
設定は可能
卸売市場法
設定は可能
工業用水道事業法
設定は可能(注)
熱供給施設
熱供給事業者
熱供給事業法
設定は可能(注)
駐車場
地方公共団体等
駐車場法
設定は可能
都市公園
地方公共団体等
都市公園法
設定は可能
下水道
地方公共団体
下水道法
設定は可能
道路
地方公共団体等
道路整備特別措置法
地方道路公社の有料道路事業における運営権の設定を可
能とする措置を検討
賃貸住宅
地方公共団体等
公営住宅法等
設定は可能
鉄道(軌道を含む)
地方公共団体等
鉄道事業法
軌道法
設定は可能(注)
港湾施設
地方公共団体等
港湾法
設定は可能
空港
国、地方公共団体、空港会社 航空法、空港法等
設定は可能
民間事業者
廃棄物の処理及び清掃
産業廃棄物処理施設
設定はなじまない
廃棄物処理センター
に関する法律
個人、法人、市町村又は一部
浄化槽
浄化槽法
設定は可能
事務組合
(注)各事業を経営するためには、別途、各事業法に基づく許可等を受けることが必要。
資料:民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する事業の実施に関する基本方針(平成25年9月20日 閣議決定)
17
3.2 各事業方式の導入実績
現在、国内で稼働しているごみ焼却施設(廃止・休止施設を除く)のうち、運転管理等
を民間委託(委託・一部委託)している施設は約 70%であり、その大半は単年度委託によ
るものである(環境省 平成 24 年度一般廃棄物処理事業実態調査結果より)。
そのうち、包括的民間委託を導入している施設の実績を表 3-2-1 に示す。
施設の整備と運営事業を一体的に行うPFI方式※やDBO方式※では、事業期間が全て
15 年間以上の長期委託であり、20 年間の事業期間が最も多い。
また、運営事業のみの場合でも、長期委託の導入実績が多く、新設時導入実績では 15 年
間が最も多く、稼働後導入実績では 10 年間が最も多い。
なお、過去に中期委託を導入した事例では、新設時の瑕疵期間中の 3 年間に試験的に導
入し、その後、長期委託を導入している事例もある。
表 3-2-1 ごみ焼却施設における包括的民間委託の導入実績
(3~7年)
整備・
運営事業
長期委託
中期委託
区 分
10年
15年
20年
合 計
25年
計
PFI方式
2
4
1
7
7
DBO方式
3
12
1
16
16
1
14
2
17
17
1
13
8
21
22
1
14
27
61
62
新設時導入実績
運営事業
稼働後導入実績
合
計
18
2
注)実績は、平成25年度末までに竣工したごみ焼却施設を対象に、文献やWeb上で公表されているものを集計した。
既設は平成25年度末までに導入(発注)された実績。詳細は資料編参照。
長期委託の実績は、5年単位で集計した(例 10年:8~12年)。
※PFI(Private Finance Initiative)方式:公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の
資金、経営能力及び技術的能力を活用して行う手法。
※DBO(Design Build Operate)方式:公共の資金調達により民間事業者が施設の設計・建設
及び維持管理・運営を一体的に行う手法。
18
3.3 事業方式の比較評価
各事業方式について、財政負担の削減効果、運営業務の質の向上の見込み、リスク対応
の容易さ、競争性の確保及び導入実績といった視点から、清掃センターの状況も踏まえて
比較すると、表 3-3-1 及び以下に示すとおりである。
① 単年度委託
公共から指定された業務に対して民間事業者が必要なコストを積み上げて契約を行う
ものであり、効率化の余地があると考えられるが、契約金額が減ることを恐れ積極的に
提案されない傾向がある。また、補修や修繕は業務委託とは別途発注されるが、これら
もより多くの補修や修繕を実施するほうに動機が働きやすく、ライフサイクルの観点か
ら合理化するという視点は生まれにくい。このため、コストは高くなりやすい。
民間事業者との交渉や、入札などによりコストを下げることは可能であるが、業務委
託費を下げることは、民間事業者が本来かけるべきコストの削減に直結するため、財政
負担の削減には成功しても、委託業務の質の低下や長期的な施設トラブル等のリスクが
増大することが懸念される。また、業務期間が単年度のため、民間事業者が有するノウ
ハウを活かし、創意工夫による業務の効率化などを期待することができない。
② 中期委託
運転業務について複数年契約とすることで、学習効果が働き、人件費や消耗品に係る
コストを中心に削減効果が期待できる。しかし、3~7 年程度の事業期間ではコスト削減
の余地は少ないため、大きな削減効果にはなりにくい。また、補修や修繕については業
務委託と同様に別途発注であるため、コストの削減・最適化は難しい。
運営業務の質については、事業期間が 3~7 年のため、運転管理や消耗品の調達管理の
面で効率化が期待されるが、期間内では施設の致命的なトラブルの可能性が低いことか
ら、日常点検による設備の状態確認やメンテナンスが十分に行われない可能性がある。
③ 長期委託
事業期間が 10 年以上の長期になり、運転業務だけでなく補修や修繕についても民間事
業者の業務範囲となる。民間事業者にとっては、長期的視点から補修や修繕を合理化す
ることで利益が増える余地が生まれることから、従来のように補修や修繕を手厚く実施
するのではなく、予防保全を効率的・効果的に行うことで、運転経費と維持補修費との
最適化により大きなコスト削減効果が期待できる。また、公共にとっては、後年度の維
持補修費の上昇を契約に盛り込み、平準化して支払うことができるため、突発的な財政
負担が必要となることがなく、安定的な財政運営が可能である。
運営業務の質についても、事業期間が長期のため、民間事業者は多くのノウハウを蓄
積することが可能となり、創意工夫による運営業務の質の向上が期待できる。
19
このように、単年度委託ではコストの削減が難しく、無理に削減しようとすると、点
検や修繕の間引きや行き過ぎたコスト削減などにより、運営業務の質の低下につながる
可能性がある。また、中期委託は人員の習熟によるコスト削減は見込めるが、修繕が業
務の範囲外であり、長期的視点からの最適化ができない。
これに対して、長期委託では長期にわたる補修・修繕を最適化することで、コスト削
減と運営業務の質を両立することができることから、本事業においては「長期委託」の
導入が望ましいと考えられる。
長期委託導入によるコスト削減のイメージを図 3-3-1 に示す。
・運転管理における民間の創意工
夫による効率化
・施設を運営していた公共人件費
の削減
公共人件費
・民間の創意工夫(調達の柔軟化、大
口購入による単価の引き下げ 、品質
の適正化、節約等によるコスト削減)
・ユーティリティーの調達を行っていた
公共人件費の削減
削減
・民間による補修の必要性の
見極め、保守点検との一体的
な実施等による効率化
・補修の発注、管理を行ってい
た公共人件費の削減
公共人件費
削減
公共人件費
直接経費
(ユーティリ
ティー費)
削減
同レベル
直接経費
(ユーティリ
ティー費)
同レベル
公共人件費
公共人件費
直接経費
(ユーティリ
ティー費)
運転管理
+
ユーティリ
ティー管理
削減
運転管理
委託費
運転管理
委託費
削減
削減
削減
運転管理
委託費
削減
(一体発注)
運転管理
+
ユーティリ
ティー管理
+
補修
(一体発注)
補修費
直営
同レベル
補修費
現行委託
同レベル
補修費
同レベル
補修費
レベル1
レベル2
レベル3
運転管理の
性能発注
運転管理とユーティリティー
管理を併せた性能発注
補修と併せた
性能発注
図 3-3-1 長期委託導入によるコスト削減のイメージ
20
表 3-3-1 各事業方式の比較
項
目
単年度委託(1 年)
・入札などによりコストを下げることは可能であるが、そ
の場合、運営業務の質が低下する。
・補修費、修繕費等の後年度の支払いをコントロールでき
コスト削減
効果
ないため、ライフサイクルコストがかかる可能性が高い。
中期委託(3~7 年間)
×
×
・特に維持補修費について、年度変動が大きく、コントロ
果などによるコスト削減が期待できる。
・補修費、修繕費等の後年度の支払いをコントロールでき
ないため、ライフサイクルコストがかかる。
×
×
・特に維持補修費について、年度変動が大きく、コントロ
×
ールが難しい。
・単年度業務に比べると、民間事業者の創意工夫や学習効
長期委託(10 年以上)
ールが難しい。
(補修工事は当該委託には、通常はいらな
・稼動開始後、10~15 年程度以降に発生する維持補修費の
上昇リスクを当初契約に盛り込むことができる。
・運転経費と維持補修費との最適化が図り易いため、コス
ト削減効果が大きい。
○
◎
・維持補修費の支払いを平準化できるため、財政運営上の
×
◎
メリットがある。
い)
・単年度契約のため、継続性に課題がある。入札を行う場
合、価格競争を助長し運営業務の質が担保されない。
運営業務の
質の向上
×
・業務に係る内容が細部に至るまで規定されているため、
長期的な視野に基づいた運営事業の実施及び民間事業者
・業務委託に比べると、運転管理や消耗品の調達管理で運
営業務の質の向上が期待できる。
△
・コスト削減のため、予防保全の基本である日常点検の水
×
が高まる。
◎
・一定の委託費の中から、必要な修繕を適切に行うため、
×
準が低下する可能性がある。
・民間事業者の創意工夫やノウハウにより、運営業務の質
機械設備の性能等も維持されやすい。
○
の創意工夫による業務の効率化等が発揮できない。
・1 年ごとに契約が切れるため、新旧の事業者でリスク区
リスク対応
の容易さ
・前半期と後半期で事業者が変わることがあるため、新旧
×
分が不明瞭である。
事業者でのリスク区分が不明瞭で、トラブル(損害賠償
・廃炉までの長期契約となるため、事業者が変わらず、責
×
◎
任の所在が明確である。
請求)の当事者限定が困難である。
・事業期間が短く、民間事業者が負うリスクが小さいため、
多くの民間事業者の応募が見込める。
競争性の
確保
○
・単年度契約では想定できないリスクが多いため、民間事
・単年度契約では想定できないリスクが多いため、民間事
業者にとって負担があり、応募可能な民間事業者は事業
業者にとって負担があり、応募可能な民間事業者は事業
経験のある者に限定される。前半期を契約した事業者以
×
△
経験のある者に限定される。
外は後半期間の入札に参加しにくい。後半期間において
競争性が確保できない。
・予算の制約により、必要な維持補修ができずに、施設寿
命を縮める可能性がある。
その他の
比較事項
×
・十分に実績を持たない企業が落札し、安定した処理がで
準が低下する可能性がある。
△
・実績や提案を重視した総合評価方式を用いるには委託期
×
きなくなる可能性がある。
・コスト削減のため、予防保全の基本である日常点検の水
間が短い。そのため、事業者選定にかけるコスト増につ
・従来からの方式であるため、実績は多い。
○
コストを無理に削減しようとすると、点検や修繕の間引き等に
総合評価
より、運営業務の質の低下につながる可能性がある。
械設備の性能等も維持されやすい。
○
・実績や提案を重視した総合評価方式を用いることにより、
△
ながる。
導入実績
・一定の委託費の中から必要な修繕を適切に行うため、機
能力のある企業を選定することが可能であり、廃炉まで
○
に一度選定すればよく効率的である。
・長期委託に比べて実績は少なく、長期委託を導入するた
めに試験的に導入している事例もある。
△
人員の習熟によるコスト削減は見込めるが、修繕が業務の範囲
外であり、長期的視点からの最適化ができない。
×
△
21
・中期委託に比べて実績は多く、近年の導入実績も年々増
えている。
○
長期にわたる補修・修繕を最適化することで、コスト削減と運
営業務の質を両立することができる。
◎
4
長期委託導入に関する課題の整理
4.1 課題の抽出
(1)事業期間
長期委託の事業期間は 10 年以上となる。事業期間が長いほど、長期にわたる学習効果
や維持管理の効率化の余地が拡大するため、ライフサイクルコストの削減が可能であり、
コスト面でのメリットは大きくなる。一方で、長期になるほど事業の不確実性が増す可
能性もあることから、清掃センターの状況も踏まえて適切な事業期間を設定する必要が
ある。
(2)業務範囲
本市では、清掃センター及び最終処分場の運営管理について、長期委託の導入を検討
しており、民間事業者に委託することにより業務の効率化及びコストの削減が期待でき
る業務については、可能な限り民間事業者へ委託することを基本とするが、以下の業務
については検討の必要がある。
① 受入管理業務
現在、清掃センターでは搬入出車両等の計量・受付やプラットホームでの受入監視等
を直営で行っているが、長期委託の導入により、民間事業者による搬入違反物の検査・
指導内容が緩くなる可能性がある。また、直接搬入ごみ等の処理手数料徴収について、
本市の職員が料金徴収を行うのか、それとも民間事業者に業務を委託するのかについて、
責任分担等の観点から検討する必要がある。
② 最終処分場の運営管理業務
現在、本市の最終処分場では埋立処分を行っていないが、長期委託導入後に埋立処分
が必要となった場合、本市が埋立処分を行うのか、それとも民間事業者が埋立処分を行
うのかを明確にしておく必要がある。
③ 資源化物の売却業務
資源化物の売却業務は、民間事業者の業務範囲とすることで、より高い価格で売却す
る動機が働くと考えられるものの、資源化物の市況変動は大きく、民間事業者からはリ
スクが大きいと見られることもある。特に長期にわたる資源化物の価格変動は予測が難
しい。資源化物が有価で売却することができなくなったときには、逆有償にて処理しな
ければならないことについても留意が必要であり、こうした観点から本市が行うか民間
事業者に行わせるかについて検討する必要がある。
④ 特定部品の調達及び当該部品に係る補修業務
特定部品とは、清掃センターの維持管理に必要となる部品のうち、性能保証の面や代
22
替品がない等の理由により、施工企業から調達することが必須となるものである。長期
委託を施工企業以外の企業が受託した場合に、施工企業は価格や納期の面から取引に応
じないことや、価格・納期等条件を厳しくする可能性がある。このため、施工企業との
取引を引き続き本市が行うか、民間事業者が不利にならないよう措置をとったうえで民
間事業者に委託するか等について、検討を行う必要がある。
⑤ 見学者及び行政視察への対応に係る業務
見学者対応は、主には施設の紹介であり、施設内容や運転業務状況について常時把握
している民間事業者が担える業務と考えられるが、市民との接点という観点から官民ど
ちらが担うかが論点となる。
行政視察に対しても、本市の方針を重要視した対応を行うか、民間事業者による対応
を期待するかについて検討が必要である。
(3)リスクへの対応
リスクとは、事業期間中に発生し得る事故、需要の変動、天災、物価の上昇等によっ
て、事業に要する支出または事業から得られる収入が影響を受けるおそれがあり、その
影響を正確には想定できない不確実性のある事由によって損失が発生する可能性をいう。
長期包括委託の導入に伴い、公共が負担していたリスクを民間事業者へ移転する場合、
民間事業者はリスク回避のために、リスクの発生を抑制するシステムの構築や保険への
加入等により、コストが増大するため、公共が支払うサービス提供費も増大することに
なる。しかし、公共がリスクを負担するケースよりも安価であれば、コストの削減につ
ながる。
また、官民のリスク分担を行う際には、
「契約当事者の内、個々のリスクを最も適切に
対処できる者が当該リスクの責任を負う」という考え方に基づくことで、リスク分担に
よるコスト削減効果を最大限にすることが出来る。
(4)モニタリング(業務監視)
一般廃棄物の処理は、市町村の固有事務であり、長期委託を導入した場合においても、
施設の設置者としての管理責任は公共にある。
このため、民間事業者が契約に基づき適切に事業を実施しているか否かについて、公
共による厳格なモニタリング(業務監視)体制づくりが必要である。
なお、モニタリングは単なる「履行確認」ではなく、民間事業者の実施した業務の内
容や質を監視・評価するものである。
23
4.2 先進事例の状況
(1)事業期間
表 3-2-1 で示したごみ焼却施設の長期委託導入事例(62 施設)では、15 年間が 27 施
設と最も多く、次いで 20 年間の 19 施設、10 年間の 14 施設となっている。
そのうち既設での導入事例(21 施設)では、10 年間が 13 施設、15 年間が 8 施設であ
り、20 年間以上の導入事例はない。
また、事業準備期間について、導入事例(資料編 表 1-2,3 参照)では 1.5~6 ヶ月程
度としており、3 ヶ月としている事例が比較的多い。
(2)業務範囲
本市では、平成 26 年 7 月に長期委託を導入している自治体に対してアンケート調査を
行い、調査を依頼した 49 団体のうち 40 団体から回答が得られた。
そのうち業務範囲(役割分担)についての調査結果を表 4-2-1 に示す。
全体的に委託している事例が多くなっているが、資源物(鉄くず等)の売却について
は自治体の分担としている事例が多くなっている。
表 4-2-1 業務範囲(役割分担)についての調査結果
No
自治体
業 務 内 容
委託(受託者)
(発注者)
委託比率
1
処理対象物の受入
2
38
95%
2
処理対象物の計量
6
34
85%
3
手数料の徴収(受入にかかるもの)
10
28
74%
4
処理不適物の搬出・処分
18
20
53%
5
焼却残渣等の運搬(最終処分場までの運搬)
18
22
55%
6
搬入違反物(市域外廃棄物)の検査
18
22
55%
7
資源物(鉄くず等)の分別
5
30
86%
8
資源物(鉄くず等)の売却
22
15
41%
9
施設見学者への対応
19
21
53%
10
運転管理に伴う環境測定
2
37
95%
11
余剰電力の売電
8
21
72%
12
余熱利用施設の熱供給契約等
10
12
55%
(3)モニタリング(業務監視)
本市が実施した自治体アンケート調査において、モニタリング(業務監視)委員会を
設置した自治体は回答のあった 37 団体のうち、5 団体のみであった。
また、モニタリング(業務監視)を委託している自治体は回答のあった 35 団体のうち、
6 割の 21 団体であった。
24
4.3 関係業者アンケートのための条件設定
(1)事業期間
本事業において長期委託を導入する場合、事業期間は 10~15 年間となるが、関係業者
アンケートでは民間事業者の意向を確認するため、中期委託も含めた 5 年間、10 年間及
び 15 年間とする。
なお、事業準備期間は先進事例等より 3 ヶ月程度とする。
(2)業務範囲
本事業における受託者の業務範囲は、図 4-3-1 及び表 4-3-1 に示すように清掃センタ
ー及び最終処分場(埋立地、浸出水処理施設)の運営管理とするが、清掃センター内の
ペットボトルリサイクル施設の運転管理については、本市の業務範囲とする。
なお、搬入違反物の検査業務と施設見学及び行政視察への対応については、基本的に
は受託者の業務範囲とするが、必要に応じて本市も関与していくこととする。
【受託者の業務範囲】
A
(蒸気供給)
余熱利用
余熱利用施設
可燃ごみ
焼却灰固化物
受
付
・
計
量
・
受
入
管
理
粗大ごみ
かん・びん
紙・布類
食品トレー
有害ごみ
計
量
ごみ焼却施設
破砕選別設備
不燃物
運搬
冷鉄・焼鉄
売却
保
管
・
計
量
ペットボトル
可燃物
委託業者
(選別等)
可燃物
※
かん・びん
※不燃ごみから分別された可燃物はAへ
図 4-3-1 受託者の業務範囲(案)
25
売却
引渡し
※
不燃ごみ
かん・びん
フェニックス
処分場
大和郡山市
最終処分場
ペットボトル
リサイクル施設
ペットボトル
運搬
資
源
化
表 4-3-1 業務分担表(案)
業務区分
ごみ収集・運搬業務
受
入
管
理
業
務
受付業務
受入監視業務
(プラットホーム監視)
業 務 内 容
家庭から排出されるごみの収集・運搬及び搬入
市
○
搬入車両の計量・記録・確認
○
搬出車両の計量・記録・確認
○
直接搬入者の受付・料金徴収
○
搬入車両の確認・車両誘導等
○
搬入禁止物・処理不適物の混入確認
搬入禁止物・処理不適物の指導
○
○
ごみ処理計画等に基づく運転計画(年間・月間)の作成
運転管理業務
余熱利用業務
資源化物保管・搬出業
務
残渣等搬出業務
○
運転計画に基づく余熱利用計画の作成
○
発電による施設内利用
○
場内熱供給(給湯・冷暖房)
○
余熱利用施設(温水プール)への熱供給(蒸気)
○
搬入された資源ごみ等の保管
○
回収された資源化物の保管
○
資源化物等の売却・引渡し
○
焼却灰固化物、不燃物の搬出車両への積込み作業
○
焼却灰固化物、不燃物の搬出・運搬
○
○
ごみ質の測定分析
○
排ガス、排水、焼却灰等の測定分析
○
作業環境測定
○
物品・用役等調達計画(年間・月間)の作成
○
調達計画に基づく備品・什器・物品・用役の調達・管理
○
点検・検査計画(毎年度、事業期間)の作成
○
点検・検査計画に基づく点検・検査の実施
○
補修計画(毎年度、事業期間)の作成
○
補修計画に基づく補修・修繕の実施
○
建物、建築設備等
維持管理業務
建築物、建築設備、外構施設(道路、駐車場、植栽等)の維持管理
○
施設性能の確認
検査業務
機能検査、精密機能検査(第三者機関への委託)の実施
○
運転管理、余熱利用管理、環境管理、用役管理、保守管理等各種データの記録
○
環境等管理業務
物品・用役等調達
業務
点検・補修業務
情報管理業務
そ
の
他
関
連
業
務
○
○
最終処分場(埋立地、浸出水処理施設)の適正な運転管理
焼却灰固化物、不燃物の最終処分
維
持
管
理
業
務
○
○
運転計画に基づくごみ焼却施設(破砕選別設備を含む)の適正な運転管理
ペットボトルリサイクル施設の適正な運転管理
運
転
管
理
等
業
務
受託者
各種記録データの管理・保管、報告・公開
安全衛生管理業務
○
○
作業員の安全衛生管理
○
見学者等の安全管理
○
清掃業務
施設及び外構施設の清掃
○
警備業務
敷地内全域の警備(防火・防犯等)
施設見学対応業務
施設見学及び行政視察への対応
○
○
見学設備(展示物、備品等)の維持管理
26
○
○
(3)リスク分担
本事業における受託者と本市とのリスク分担案を表 4-3-2 に示すとおりとし、関係業
者アンケートの結果も踏まえて検討する。
表 4-3-2 リスク分担(案)
リスク項目
制度・法令変更リスク
税制変更リスク
概 要
関係法令・許認可の変更等に係るリスク
共 政治・行政リスク
資金調達リスク
金利変動リスク
債務不履行リスク
不可抗力リスク
一定の範囲内
通
性能リスク
委託費超過リスク
施設・設備損傷リスク
○
○
政策方針の変更等による事業の停止・変更に係るリスク
○
受託者の事業の実施に必要な資金調達に係るリスク
○
金利上昇に伴う資金の調達に係るリスク
○
受託者の事由による事業破綻、契約破棄、契約不履行のリスク
○
市の事由による事業破綻、契約破棄、契約不履行のリスク
○
天災等により事業の実施が不可能となる場合のリスク
○
○
天災等による損害が発生し、修復のため事業の遅延が発生する場合のリスク
○
受託者の責めに帰すべき事由による場合のリスク
○
○
受託者の責めに帰すべき事由による場合のリスク
上記以外の場合のリスク
環境保全リスク
○
一定の範囲内を超えた物価変動に係るリスク
上記以外の場合のリスク
第三者賠償リスク
○
一定の範囲内での物価変動に係るリスク
一定の範囲外
住民対応リスク
○
○
受託者の責めに帰すべき事由による場合のリスク
提示条件の不備や要求変更等、市の責めに帰すべき事由による場合のリスク
○
○
その他施設の運営維持管理業務において、本事業契約に規定する仕様及び性
能の未達成等、受託者の責めに帰すべき事由による場合のリスク
○
事故や火災等により施設が破損した場合のリスク
第三者の責めに帰すべき事由により施設が破損した場合のリスク
○
○
受託者の善良なる管理者の注意義務違反の場合のリスク
運
営
段
階
不適正ごみ混入リスク
○
受託者の善良なる管理者の注意義務を以ってしても排除できない場合のリスク
○
技術革新リスク
技術革新に伴い設備が陳腐化した場合において、新技術採用のためのコストが
増大した場合のリスク
○
ごみ量・ごみ質変動
リスク
搬入する廃棄物のごみ量が契約で規定した範囲を著しく逸脱した場合、または、
ごみ質が契約で規定した範囲を逸脱した場合のリスク
○
蒸気の供給停止に伴うリスク(供給停止の帰責事由が受託者にある場合)
蒸気の供給停止に伴うリスク(供給停止の帰責事由が市にある場合)
熱供給に関するリスク
資源化物に関するリスク
事業終了段階での施設の性能
確保
受託者
○
受託者の利益に課せられる税制度の変更(例:法人税等)、新税創設に伴うリスク
上記以外の税制度の変更、新税創設に伴うリスク
物価変動リスク
分担
市
○
○
蒸気供給用埋設管の破損・更新等に係るリスク(破損等の帰責事由が受託者に
ある場合)
○
蒸気供給用埋設管の破損・更新等に係るリスク(破損等の帰責事由が市にある
場合)
○
回収資源化物の売却、有効利用に係るリスク
○
回収資源化物の品質基準の遵守に係るリスク
○
事業終了時における施設の性能確保が未達の場合のリスク
○
27
5
関係業者アンケート
5.1 調査の内容
本事業に対する民間事業者の関心や、事業条件に対する考え方の確認及び見積りを取得
するための関係業者アンケートを実施した。
調査対象とした民間事業者は、一定程度の実績と経験を持つ 15 社とした。
回収状況は、アンケートを送付した 15 社のうち、4 社から回答が得られた。
表 5-1-1 関係業者アンケートの内容
項
目
内
容
1)実施時期
平成 26 年 9 月
2)対象企業
15 社(施工企業、運転管理事業者、廃棄物処理業者等)
1.本事業への参入意思について
2.運営期間について(5 年間、10 年間、15 年間、その他)
3.業務範囲について(変更希望業務)
4.リスク分担について(変更希望項目)
5.概算金額について
① 運転管理業務費(人件費、その他)
② 用役費(電力費、水道費、燃料費、薬品費、その他)
3)調査項目
③ 点検・補修業務費(点検費、補修費、予備品・消耗品費、その他)
④ SPC関連費用(設立費、維持費)
⑤ 人員配置計画
6.効率化について(提案事項)
7.委託費等の削減について
8.補修修繕工事の取扱いについて
9.受注実績について(過去 10 年間)
10.事業者募集時の公表資料について
11.その他本事業への意見・要望等
28
5.2 調査の結果
(1)本事業への関心について
回答のあった 4 社とも、
「非常に関心があり、現時点では参入に前向きである」との回
答を得ており、その理由等は下記のとおりである
■参入する理由等(回答書より抜粋)
・運営事業者としてのノウハウを活かした最適コストと安定化方策を提案できるため。
・当社はごみ処理事業において、長い歴史と多くの実績を積み重ね、民間委託のパイオニアとして
事業展開しており、工事ノウハウを持つ専業業者である当社が参入することにより大幅なコスト
削減が期待でき、貴市及び地域住民へのメリットが大きいと考えます。
・当社は一般廃棄物処理施設(焼却施設及び破砕・資源化処理施設)の運転維持管理、点検・整備
工事を主に事業活動を行っており、当社の実績を踏まえましても本事業への対応も十分可能であ
り、是非参加したいと考えております。
・現在ご計画中の延命化工事と合わせて包括的にごみ処理事業を行うことで、相乗効果を発揮出来
ると考えるため。
(2)運営期間について
運営期間について、4 社のうち 3 社が「15 年間」
、1 社が「10 年間」を希望しており、
「5 年間」の回答はなかった。
15 年間を希望する理由は下記のとおりであり、10 年間を希望する理由は「10 年周期
で大規模な補修・更新工事が必要になるため」としている。
■15 年間を希望する理由等(回答書より抜粋)
・包括委託事業において、耐用年数を踏まえるとコスト削減効果が期待できるのは 15 年間が最適と
考えられ、同じ業者による一貫運営が効率的であると考えます。
・運営期間が長期になることにより、事業活動の安定性が確保されます。また、計画的な機械設備
の整備計画実施と人材確保並びに人材育成計画が可能となり、民間事業者としての経験と実績に
基づくノウハウが発揮でき、効率的な運営が行えると考えております。
・PFI事業や長期包括委託事業で多くの実績があること、またご計画中の延命化工事の延命化目
標である15年間を一括して弊社で運営管理させて頂くことが最も効果的であると考えるため。
29
(3)業務範囲について
変更希望業務として下記の 3 業務について回答があり、そのうち 2 業務は最終処分場
の運営管理についての変更希望であった。
■変更希望業務とその理由等(回答書より抜粋)
変更希望業務
理由等
ペットボトルリサイクル施設の運転
受入、保管及び引渡しは受託者の業務範囲であり、リサイク
管理(市→受託者)
ル業務との取り合いが難しくなる為。
最終処分場の管理
焼却灰、不燃物の最終処分場は市の業務範囲であり、運転管
理との取り合いが曖昧になることや、浸出水処理は埋立の影
響を大きく受ける為、業務の統一が望ましい。
最終処分場の補修業務
浸出水処理施設等の整備状況が把握できないので、運転管理
は委託範囲内とし、補修業務は範囲外として頂くことが合理
的であると考えます。
(4)リスク分担について
変更希望項目として下記の 4 項目について回答があった。
■変更希望項目とその理由等(回答書より抜粋)
変更希望項目
不可抗力リスク(一定の範囲内)
理由等
天災等の不可抗力について、一定の範囲内を設定するのは困
難である為。
環境保全リスク
「上記以外のリスク」を追記し、市の分担として欲しい。
施設・設備損傷リスク
施設・設備損傷リスクに「最終処分場浸出水処理施設の機器
交換等の補修リスク」を追記し、市の分担として欲しい。
(事故や火災等により施設が破損した場合のリスク)に「受
託者の責めに帰すべき事由による場合」を追記して欲しい。
熱供給に関するリスク
「蒸気の停止に伴うリスク(上記以外のリスク)
」を追記し、
市の分担として欲しい。
蒸気供給埋設管における責任境界の設定を定めるようにご配
慮願います。
30
(5)概算金額について
各社の事業期間における年平均の概算費用は 666,090~775,445 千円/年
(平均 644,014
千円/年)であり、15 年間と回答した 3 社の概算費用は 8,050,000~11,631,671 千円(平
均 9,660,209 千円)であった。
運転人員数は 40 人~46 人(平均 44 人)であり、1 人当たりの平均人件費単価は 5,066
~6,396 千円/人・年(平均 5,674 千円/人・年)となっている。
表 5-2-1 概算金額
項目\業者
A社
B社
C社
D社
集計値(概算金額は15年間の3社)
平均値
最大値
最小値
運営期間
10年間
15年間
15年間
概算金額(千円、税抜き)
6,660,900
8,050,000
9,298,958
11,631,671
9,660,209
11,631,671
8,050,000
666,090
536,667
619,931
775,445
644,014
775,445
536,667
2,627,480
3,718,900
3,949,323
4,745,600
4,137,941
4,745,600
3,718,900
人件費
2,520,000
3,611,300
3,039,462
4,317,500
3,656,087
4,317,500
3,039,462
その他
107,480
107,600
909,861
428,100
481,854
909,861
107,600
1,247,420
1,527,000
1,840,635
2,149,421
1,839,018
2,149,421
1,527,000
電力費
906,280
1,050,000
1,350,000
1,509,976
1,303,325
1,509,976
1,050,000
水道費
30,570
30,000
43,350
56,254
43,201
56,254
30,000
燃料費
40,100
58,500
57,285
52,254
56,013
58,500
52,254
薬品費
174,950
316,500
345,000
508,437
389,979
508,437
316,500
その他
95,520
72,000
45,000
22,500
46,500
72,000
22,500
2,586,000
2,391,800
3,395,000
4,268,800
3,351,867
4,268,800
2,391,800
点検費
170,000
784,800
260,000
1,242,500
762,433
1,242,500
260,000
補修費
2,266,000
1,119,500
2,775,000
1,996,200
1,963,567
2,775,000
1,119,500
150,000
300,000
180,000
518,100
332,700
518,100
180,000
0
187,500
180,000
512,000
293,167
512,000
180,000
200,000
412,300
114,000
467,850
331,383
467,850
114,000
SPC設立費
100,000
4,300
30,000
17,850
17,383
30,000
4,300
SPC維持費
100,000
408,000
84,000
450,000
314,000
450,000
84,000
年平均(千円/年)
①運転管理業務費
②用役費
③点検・補修業務費
予備品・消耗品費
その他
④SPC関連費用
人
員
数
15年間
日勤
23人
30人
20人
25人
25人
30人
20人
直勤
19人
16人
20人
20人
19人
20人
16人
計
42人
46人
40人
45人
44人
46人
40人
6,000
5,234
5,066
6,396
5,674
6,396
5,066
人件費(千円/人・年)
注) 概算金額の集計値は、運営期間が15年間の3社(B,C,D社)の集計値。
最大値と最小値は項目ごとの集計値であるため、合計値と整合しない。
31
(6)効率化について
効率化についての提案事項として、下記の回答が得られた。
■提案事項と留意点(回答書より抜粋)
提案事項
留意点
3施設一括の運転管理で運用の効率化(焼
適正な運転人員体制の構築。
却施設、破砕選別設備、ペットボトルリサイクル施設)
人員配置の効率化
配置場所を特定せず、フレキシブルな人員配置運用
を行うことによりスケールメリットが生かせます。
設備の変更に伴う効率化
運転実績等を踏まえ、電気代をはじめ薬品等の用役
費の削減を検討します。
ユーティリティーの一括購入と管理による
業務の効率化
運営・維持管理の一体的な運営によりシナ
・資機材の融通
ジー効果を発揮できる。
・効率的な人員配置(一担当が複数業務を受持つ等)
(7)委託費等の削減について
コスト削減率等について、下記の提案があった。
■コスト削減率と理由等(回答書より抜粋)
項目
コスト削減率
理由等
人件費
20%
人員の適正配置による運用の効率化が図れる為。
修繕費
15%
最適な予防保全を実施し、施設の長寿命化が図れる為。
用役費
10%
運用効率化により、受電量の削減、平準化が見込める為。
計量、ピット業務経費
30%
多様化等による人件費の削減
業務運営経費
10%
長期運用による経費の削減
施設整備費
10%
計画的整備による経費の削減
用役費
5%
電力会社の自由選択等による経費の削減
薬品類
3%
使用量の適正化や民間事業者として企業間取引先の一元化
にてスケールメリットを生かす。
32
(8)補修修繕工事の取扱いについて
補修修繕工事の取り扱いについて、下記の提案等があった。
■補修修繕工事取扱いについての提案等(回答書より抜粋)
・焼却及びリサイクル施設では、10 年周期で大規模な補修・更新工事が必要になると想定されます。
これらの大規模修繕以外の修繕工事を予防保全の観点から極力平準化して実施することが重要
であると考えます。受託者の予防保全計画立案に対し、貴市との協議、承諾を得て、受託者の責
任において、補修修繕工事を実施していく業務分担が適切であると考えます。
・「長期責任運用する」ことを条件に、事業者が実施する補修修繕工事に関する承諾行為の範囲を
限定して頂くことにより、コスト削減や迅速・円滑な運営が期待できます。
・施工メーカ以外から入手困難な部品・製品などがございましたら予め要求水準等に記載をお願い
いたします。また、民間事業者の自由度を確保するために定期修繕工事等にて使用する資材・部
品等については同等若しくは同等品以上のものを使用することをご許可願います。
・予防保全(点検/整備)を積極的に行い現設備の性能維持を主体とした費用を算定しました。しかし、稼
動年数を考慮し、主要機器更新等大規模修繕が必要になった場合は、都度ご協議頂けるよう検討頂き
たく。
(9)受注実績について
過去 10 年間(平成 16 年 4 月~平成 26 年 7 月)の包括運営委託事業等の受注実績は、
1~4 件程度であり、各社とも運営期間が 10 年以上のごみ焼却施設について実績を有し
ている。
表 5-2-2 受注実績
項目\業者
受
A社
B社
C社
D社
数
1件
3件
3件
4件
内公共施設
1件
3件
3件
3件
内ごみ焼却施設
1件
2件
3件
1件
(運営期間)
(19.7年)
(10年、10年)
(5年、20年、5年)
(14.5年)
注
件
33
(10)事業者募集時の公表資料について
事業者募集時の公表資料として、下記の要望があった。
■公表希望資料等(回答書より抜粋)
公表希望資料名
基幹的設備改良工事計画書
内容等
平成 27 年度~平成 29 年度に実施予定である改良工事につ
いて、その内容がわかる資料。
維持管理(検査・補修)報告書
過去の各施設の検査及び補修工事記録等。
現施設の配置図、各フロー図
最終処分場の構造図、浸出水処理施設
の機器仕様書
基幹的設備改良工事発注仕様書、契約
①設備改良の範囲
仕様書及び設計計算書
②瑕疵担保の条件
③性能確認試験の実施要領
④各機器の設計基本数値
現施設の維持管理データ、整備履歴
特注部品・製品一覧
施工メーカ以外から入手困難及び特殊製品等が記載され
ている一覧また入手時の単価
メーカ推奨定期修繕計画
施工メーカが推奨する定期点検計画など
(11)その他本事業への意見・要望等
その他本事業に関して下記の意見・要望等があった。
■その他の意見・要望等(回答書より抜粋)
・入札に向けた具体のスケジュールをご教示ください。
・資料の閲覧、複写や施設見学は検討に十分な日数を設定してください。
・機器の取り扱い説明書並びに用役などの見込みデータについて長期延命化工事後の施設について
も、ご開示をお願いいたします。
・貴清掃センターは、既に稼働後 28 年を経過しており、常に老朽化対応を意識した事業運営が必
要です。延命化目標である平成 45 年度以上の稼働をさせるには、積極的な予防保全を行い大切
に使うことが必要と考えます。
・多額な市の税金を使いますので、費用の削減も必須ですが、安易な価格低減ではなく根拠のある
具体的な提案をします。事業者選定に当たっては、こうした観点から総合的なご判断を賜ります
様お願い申し上げます。
34
6
関係業者アンケートを踏まえた事業スキームの検討
6.1 事業期間
関係業者アンケートの結果、回答のあった 4 社のうち 3 社は事業期間を 15 年間としてお
り、1 社のみが 10 年間としている。10 年間とした理由は、10 年周期で大規模な補修・更
新工事が必要になるためとしているが、清掃センターは基幹改良後の 15 年間延命化した後
は廃炉とする計画であり、大規模な補修・更新工事は想定していない。
また、関係業者アンケートによる概算金額(表 5-2-1)において、事業期間を 15 年間と
した 3 社の年平均額が 644,014 千円/年(3 社平均)であるのに対して、10 年間とした 1 社
の年平均額は 666,090 千円/年と高くなっている。さらに、事業期間を 10 年間とした場合、
残りの 5 年間について再度、中期委託か単年度委託による契約が必要となり、15 年間での
トータルコストは更に高くなる可能性がある。
以上より、事業期間は 15 年間とすることが望ましいと考えられる。
6.2 業務範囲
(1)受入管理業務
関係業者アンケートの結果、受入管理業務についての変更希望はなく、民間事業者に
委託することでコスト削減効果が期待されるため、民間事業者の業務範囲とする。
なお、料金徴収業務については、代理収納が必要となるため、委託先との連携・協議
を行う。また、搬入違反物の検査・指導業務については、業務監視職員を配置し、委託
先との協議によって業務内容の充実を図る。
(2)最終処分場の運営管理業務
関係業者アンケートの結果、最終処分場の運営管理業務について 2 社から変更希望(受
託者→本市)があったが、民間事業者に委託することでコスト削減効果が期待されるた
め、民間事業者の業務範囲とする。
(3)資源化物の売却業務
関係業者アンケートの結果、資源化物の売却業務についての変更希望はなく、民間事
業者に委託することでコスト削減効果が期待でき、また民間事業者が独自のルートを活
用し、より有利な条件の売却先を確保する可能性もあることから、民間事業者の業務範
囲とする。
(4)特定部品の調達及び当該部品に係る補修業務
施工企業と異なる企業が受託者となった場合、特定部品の調達及び当該部品に係る補
修については、本市が施工企業と協定を結ぶ等の措置を行い、民間事業者の特定部品調
達リスクを取り除いたうえで、民間事業者の業務範囲とする。
35
(5)見学者及び行政視察への対応に係る業務
関係業者アンケートの結果、施設見学者及び行政視察への対応に係る業務に関する意
見はなく、必要に応じて本市も関与することにより、民間事業者の業務範囲とする。
6.3 リスク分担
関係業者アンケートの結果、不可抗力リスク(一定の範囲内)、環境保全リスク、施設・
設備損傷リスク及び熱供給に関するリスクについて変更希望(受託者→本市)があった。
不可抗力リスク(一定の範囲内)については、天災等の不可抗力事由によって生じる損
害を最小限にとどめるインセンティブを与えるため、民間事業者の損害又は増加費用のう
ちの一部を民間事業者が負担し、それを超過する部分について、合理的な範囲で公共が負
担することが一般的に行われている。民間事業者が負担する損害額としては、
・運営管理期間中の累計で、運営管理期間中の運営管理費の総額に相当する額に一定の
比率を乗じた額に至るまでの損害等の額
・一事業年度中に生じた不可抗力に起因する損害金の累計で、一事業年度の運営管理費
に相当する金額に一定の比率を乗じた額に至るまでの損害等の額
・定額
等が考えられ、一定の範囲内については今後も検討していくこととする。
また、他の変更希望項目についても、今後、検討していくこととする。
6.4 SPC設立について
廃棄物処理施設の運営管理事業は公共事業であり、長期の事業期間にわたり安定かつ円
滑に事業運営を行う必要があり、各企業が有する経営リスクを分離し事業の独立性を担保
するため、本事業のみを行う別会社としてSPC(Special Purpose Company:特別目的会
社)を設立することが重要であると考えられる。
SPCとは、ある特定の事業を実施する目的で設立された事業会社であり、特定のプロ
ジェクトから生み出される利益で事業を行うことにより、会計上も事業上も出資会社の責
任・信用から切り離すことができる。
SPCは、本事業のみを行う別会社であることから、経営の独立性や透明性が確保され
る。また、SPCへの出資会社は、SPCからの委託先と同一である場合が多いため、出
資会社の破綻に伴い、委託先も消滅することが考えられるが、委託先の技術者等の人材を
再雇用する等により、事業継続することは可能である。
一方、SPCを設立し、運営維持していくためには、会社登記費用や運営費用等が必要
となるが、SPCを市内に設立させることでSPCの納める市税が見込める。
さらに、本市が実施した自治体アンケート調査において、回答のあった 39 団体のうち 8
割以上の 32 団体がSPCを設立(内構成会社が複数の事例:26 団体)していることなど
から、本事業においてもSPCを設立することが望ましいと考えられる。
36
表 6-4-1 SPC設立についての比較検討
項
概
目
SPCを設立する場合
SPCを設立しない場合
自 治 体
自 治 体
長期委託契約
長期委託契約
SPC
(特別目的会社)
運転・維持管理会社等
要
業
務
委
託
出
資
維持管理会社
メリット
出
資
業
務
委
託
運転管理会社
・経営の独立性が確保されるため、仮に
出資会社が破綻しても、SPC 自体が破
綻することはない。
業
務
委
託
維持管理会社
業
務
委
託
運転管理会社
・SPCの設立・運営に関する費用が不
要である。
・煩雑な契約手続等が不要である。
・本事業のみを行う会社であるため、経
営の透明性が確保される。
・SPCを市内に設立することで、SP
Cの市税が納められる。
デメリット
・SPCの設立・運営に関する費用が必
要である。
・仮に運営事業者が破綻した場合、再度
運営事業者選定を行うことになり、事
・煩雑な契約手続等が必要である。
業が長期にわたり中断する可能性があ
る。
・運営事業者が、本事業のみを行う会社
でないため、経営状況等の透明性が確
保できない。
導入実績※
32 団体(82%)
7 団体(18%)
※導入実績は、本市が実施した自治体アンケート調査において回答のあった 39 団体の内訳
37
7
VFMの算定
7.1 VFMの算定の考え方
(1)VFMの算出方法
VFM(Value For Money)とは、支払に対して最も価値の高いサービスを提供すると
いう考え方であり、以下の式により算出される。
■VFMの算出方法
VFM=(PSC-LCC)/PSC
PSC (Public Sector Comparator):公共が自ら実施する場合の事業期間全体を通じた
公共財政負担の見込額。
LCC (Life Cycle Cost):民間事業者が、計画から維持管理、運営、修繕、事業終了ま
での事業全体にわたり必要なコスト。
VFMの評価は、PSCとLCCとの比較により行う。この場合、LCCがPSCを
下回ればVFMがあり、上回ればVFMがないということになる。公共サービス水準を
同一に設定することなく評価する場合、PSCとLCCが等しくても、公共サービス水
準の向上が期待できるとき、VFMがあると言える。
VFMはPFIの基本的な考え方の一つであり、PFI事業実施の可否を判断する重
要指標としてPFI法にもその算定・評価が義務付けられている。清掃センターで検討
しているのは長期委託であり、PFIとは異なるが、VFMがあるかどうか、導入可否
を判断する要素として重視する。
また、PSCとLCCについて比較する場合、基準年度の価格に換算する必要がある。
基準年度価値への換算においては、一般的に割引率が用いられており、基準年度を現在
とした場合の価格が現在価値であることから、割引率による現在価値化によりPSCと
LCCを算定する。
t年度における価値Vtの現在価値=Vt× Rt
Rt=1/(1+r)(t-基準年)
Rt:現在価値化係数
r:割引率 4%
38
(2)費目ごとのPSC及びLCCの算出方法
LCCは、関係業者アンケートにおいて事業期間を 15 年間と回答した 3 社の平均値を
使用し、これにモニタリング費用(公共人件費、委託費)を加算した額とする。
PSCについては、現在の各費用(平成 25 年度実績)を基に設定するが、電力費につ
いては基幹改良による削減効果(省エネ化、発電)を考慮して、LCCと同額と設定す
る。また、点検・補修費についても、延命化工事により現状とは異なることからLCC
と同額と設定する。
PSC及びLCC算出の考え方を表 7-1-1 に示す。
表 7-1-1 PSC及びLCC算出の考え方
費
運転管理費
目
公共人件費
PSC
現在の人件費を 15 年間に換算
LCC
モニタリングに必要な職員の人
件費を算定
民間委託費
用役費
電力費
水道費、燃料
現在の運転管理委託費を 15 年間
関係業者アンケートの回答より
に換算
算定
基幹改良の効果を考慮して、LC
関係業者アンケートの回答より
Cと同額に設定
算定
現在の費用を 15 年間に換算
関係業者アンケートの回答より
費、薬品費等
点検・補修費
その他費用
算定
基幹改良の効果を考慮して、LC
関係業者アンケートの回答より
Cと同額に設定
算定
現在のその他費用を 15 年間に換
SPC関連費用は関係業者アン
算
ケートの回答より算定
モニタリングに必要な委託費を
算定
注)関係業者アンケートの回答より算定:事業期間を 15 年間と回答した 3 社の平均値
39
7.2 VFMの算定
現行どおり本市が単年度委託を実施した場合の 15 年間のコスト(PSC)と、長期委託
の場合の 15 年間のコスト(LCC)は、表 7-2-1 のとおり推計される。
清掃センターに 15 年間の長期委託を導入した場合、現時点の事業条件設定において 15
年間で削減されるのは約 6 億 4 千万円(現在価値)、VFMは 8.0%であった。
このうち、運転管理業務費は 15 年間で約 9 億円削減されており、その大半は人件費であ
る。民間事業者は、職員の人件費が公共人件費よりも安価であり、一人の職員に複数の役
割を与えたりすることにより、人件費を抑制しているものと考えられる。
用役費は 15 年間で約 1 億 8 千万円削減されており、民間事業者が消耗品等を独自のルー
トで大量に購入することにより、費用の削減が可能であると想定される。
点検・補修費は、現時点で延命化工事後の推定が困難なためLCCと同額と設定したが、
民間事業者の様々な工夫が発揮されることにより、補修費等の抑制が想定される。
その他費用は、SPC関連費用により増額となっている。
表 7-2-1 PSC、LCC及びVFMの算定結果
単位:千円
費目
PSC
LCC
削減額
備 考
運 転 管 理 業 務 費
5,243,242
4,347,941
895,301 人件費
用
費
2,017,040
1,839,018
178,022 電気、水道、燃料、薬品等
点 検 ・ 補 修 費
3,351,867
3,351,867
用
578,900
750,318
計
11,191,049
10,289,144
消 費 税 相 当 額
1,119,105
1,028,914
合 計 ( 税 込 み )
12,310,154
11,318,058
現在価値換算額
8,011,132
7,369,727
そ
役
の
他
合
費
0
▲ 171,418 LCC:SPC費用等
901,905
90,191 税率:10%
992,096
641,405 割引率:4%
VFM
財
政
支
出
8.0%
VFM:8.0%
運転管理業務費
用
役
費
削減
削減
運転管理業務費
用
役
費
点検・ 補 修費
点検・ 補 修費
そ の 他 費 用
そ の 他 費 用
PSC
LCC
40
8
導入可能性の評価と今後の検討事項
8.1 長期委託導入可能性の評価
(1)定量的メリット(VFM)
VFMの算定結果において、長期委託は従来型の単年度委託と比較して 15 年間で約 6
億 4 千万円(VFM:8.0%)のコスト削減が期待できる。
(2)定性的メリット
① 財政の平準化
長期委託により、清掃センター等の運営経費を長期にわたり平準化することができ、
本市の安定的な財政運営が可能となる。
② リスク管理
廃棄物処理施設の運営において公共が負担していたリスクの中には、公共よりも民間
事業者の方がより適切に管理できるものがあり、長期委託では、官民の適切なリスク分
担によりメリットが生じる。また、廃炉までの長期契約となるため、事業者が変わらず、
責任の所在が明確になる。
③ サービス水準の向上
長期委託により、民間事業者から改善提案の自由度が高くなり、民間事業者の技術力
やノウハウを発揮する余地が広がることになるため、民間事業者の創意工夫による質の
高い公共サービスの提供が可能である。
④ 事業の透明性、公平性の確保
PFI法で定める事業実施プロセスに則る場合、実施方針の公表、特定事業の選定及
び学識経験者からなる事業者選定委員会による事業者の選定と公表からなり、事業者提
案等の活用及び透明性、公平性の確保等に一貫して配慮したものとなる。
⑤ 事業期間中の事務手続の簡素化
長期委託による包括的一括発注のため、従来の単年度委託に比べて事業期間中の事務
手続が簡素化される。
⑥ 事故などの安全対策
長期委託により、計画的な予防保全等を行うことで、全体コストを圧縮しながらも、
事故などの施設の稼働停止リスクを回避することが可能となる。
41
(3)懸念事項と対策
① 安定的な運営
民間事業者(SPC)が倒産又は財務状況が著しく悪化した場合、安定的な運営が困
難になることが懸念される。
→事業の継続が困難となった場合には契約解除及び原状回復義務等のリスク分担を明確
にしておくことで、対策が可能である。
② 長期委託に係るリスク
長期委託において、事業期間中に発生する可能性のある事故、ごみ量・ごみ質の変化、
天災、経済状況の変化等により、本事業に損失が発生することが懸念される。
→それぞれの事由によるリスク分担をできる限り細分化し、リスク分担を明確にしてお
くことで、対策が可能である。
③ 処理品質、サービス水準の確保
長期委託においては、実際の施設を運営するのは民間事業者となるため、処理品質・
サービス水準が確保されているか懸念される。
→民間事業者に行わせるサービスについて定期的なモニタリングを行い、そのサービス
水準が契約どおり行われていない場合は、サービス提供料を減額するシステム等によっ
て対策が可能である。
④ モニタリングに必要なコスト・チェック体制
長期委託を事業として継続させるには、本市による契約条件・要求水準を満たしてい
るかを監視するモニタリングが重要であり、これらの監視には実務上の経験と技術力を
必要とし、モニタリングに必要なコストや充分なチェック体制の整備の確保が懸念され
る。
→モニタリングにかかるコストについては、VFM算出の際にモニタリング委託費、人
件費を含めての検討を行い、チェック体制は先進事例と同様に、必要に応じてモニタリ
ング委員会の設置や外部委託を行うことで対策が可能である。
(4)総合評価
廃棄物処理施設は常に安全安心な運営が求められ、長期委託にあっても一般廃棄物の
処理において責任は公共にある。経済性を合理的に追求する長期委託においても、なお
一層の安全性を確保するための工夫が必要となる。
長期委託におけるメリット、懸念事項を検証した結果、リスク分担の明確化とモニタ
リング委員会の設置もしくは外部委託により、充分なサービス水準が確保でき、コスト
削減と安定的な運営により施設の安全性を確保することができる。
よって、長期委託の導入が望ましいと判断できる。
42
8.2 今後の検討課題
(1)事業スキームに関する検討事項
本検討において、事業スキームについても一定の検討を行ったが、実際に導入すると
なった場合には、官民の認識の相違がないよう、より明確に、詳細に検討していく必要
がある。主な検討事項は以下の通りである。
① 適切なリスク分担
関係業者アンケートの回答において、不可抗力リスク、環境保全リスク、施設・設備
損傷リスク及び熱供給に関するリスク等の変更希望があったことから、事業を適正かつ
確実な実施を確保するうえで、できる限りあいまいさを避け、具体的に規定されたリス
ク分担を検討する必要がある。
特に、不可抗力に係るリスクについては、地震、火災、人為的ミス、犯罪破壊行為等、
通常必要と認められる注意や予防方法を尽くしてもなお防止し得ないケースが生じると
考えられることから、それぞれの事由によるリスク分担をできる限り細分化し、予め検
討することにより、事業実施に影響を与えないよう措置する必要がある。
また、長期間にわたる事業であることから、著しい環境の変動を考慮し、リスクの大
小の段階だけではなく、進捗段階(事業準備期間、委託初期、委託中期、委託後期)に
応じたリスク分担についても予め検討しておくことが望ましい。
② 競争性確保のための方策(部品の調達、運営の引継ぎ等)
一般的に、長期委託を導入する場合、施工企業や業務委託を受けていた企業(運転事
業者)が、当該施設の運転実績やその他当該施設の情報量等、他の民間事業者に比べて
有利になることが多く、競争が働きにくい。また、長期委託導入に関する課題として先
述したとおり、施工企業以外には調達できない部品(特定部品)等がある場合には、他
の民間事業者がその部品を調達できないことにより、事業への参画が難しくなる可能性
がある。これらの課題を解決するために、公募開始前の十分な情報提供や、本市と施工
企業が協定を締結し、民間事業者間で公平な競争が行われるようにスキームを構築して
いく必要がある。
(2)事業者選定に関する検討事項
① 事業者選定方式
従来の事業者選定方式は、主に落札額の低価格化を目的として、価格のみを評価する
「一般競争入札」による選定が中心であったが、価格のみを評価するため事業者の技術
力を評価できない可能性があり、品質や性能の低下が懸念されてきた。
平成 17 年には「公共工事の品質確保の促進に関する法律」が施行されるなど、近年で
は、価格だけでなく品質や技術力を総合的に評価して事業者を選定する「総合評価型の
事業者選定方式」の導入が求められている。
また、環境省による「廃棄物処理施設建設工事等の入札・契約の手引き(平成 18 年 7
43
月)」では、長期包括的運営事業やPFIの導入において、総合評価落札方式による事業
者選定を行うことが適切である※としている。
本事業においても、コスト削減だけでなく施設の安定稼働を図ることが必要不可欠で
あることから、価格及び技術力(質)を総合的に評価して事業者を選定する必要がある。
上記の事業者選定方式には、入札方法の一つである「総合評価一般競争入札方式」と、
随意契約となる「公募型プロポーザル方式」の2種類があり、各方式の概要等は表 8-2-1
で示している。
いずれの方式においても、公平性・透明性を確保して事業者を選定することから、そ
れほど大きな差は見られないが、表 8-2-1 の各項目の評価は以下のとおりである。
○契約書(案)の作成
事前に条件を提示する点に差は見られないが、民間事業者による提案の要素が大き
い公募型プロポーザル方式の方が作成に要する期間は短い。
○価格要素を含めた事業者の選定
審査基準にもよるが、総合評価一般競争入札方式の方が、価格による要素が大きい
ため、コスト削減をより図ることが出来る。
○契約交渉
公募型プロポーザル方式では契約交渉に数ヶ月を必要とするが、総合評価一般競争
入札方式では、契約交渉は基本的に不要である。
○適した事業分野
本事業が従来と異なる革新的な技術を要求する事業ではなく、発注者が求めるサー
ビス水準も明確になっていることから、総合評価一般競争入札の方が適している。
○契約内容の変更
公募型プロポーザル方式では、事業者選定後に契約内容を決めていくことができる。
○契約締結に至らない場合
公募型プロポーザル方式では、次順位者との交渉が可能であり、再入札が不要であ
る。
○その他
本事業はWTO政府調達協定の対象となる案件であり、原則として総合評価一般競
争入札を用いる。
事業者選定方式については、総合評価一般競争入札の方が本事業に適しており、より
コスト削減を図ることが出来る。
よって、総合評価一般競争入札方式で実施することが望ましいと考えられる。
44
※「廃棄物処理施設建設工事等の入札・契約の手引き」
(平成 18 年 7 月環境省大臣官房廃棄
物・リサイクル対策部)より抜粋
検討すべき発注・選定方式-PFI事業、長期包括的運営事業(発注範囲の改善)
廃棄物処理施設建設工事に加え、しゅん工後の長期包括的運営事業を一括して価格競争を求める発
注・選定方式(PFI事業を含めた長期包括的運営事業)は、運営を含めたトータルの事業での競争
を促し、長期間にわたる運営をも含めた契約によりライフサイクルコストの低減を図ることが可能と
なるため、市町村等において、この発注方式を積極的に導入することが有効である。中でも、民間の
資金・活力を取り入れるPFI方式は、建設と運営のトータルコストと技術や事業内容の工夫での競
争を促すものであるから、建設工事と運営事業を併せて発注する方法として適している。
(第6章)
なお、長期包括的運営事業やPFIの導入においても、方式や機種選定を含めて競争を行い、総合
評価落札方式により事業者選定を行うことが適切である。
45
表 8-2-1 事業者選定方式の種類と比較
項目
評価
地方自治法上の
位置付け
□
競争入札
□
予 定価 格の 範囲 内で 最低 価格 の入
札 者 が落 札者 とな る一 般競 争入 札方
式 と 異な り、 価格 だけ では なく 、そ
の 他 の条 件( 維持 管理 ・運 営サ ービ
ス 水 準、 技術 力等 )を 総合 的に 評価
し 、 評価 点の 最も 高い 提案 を行 った
も の を落 札者 とし て選 定し 、契 約締
結 す る方 式。 (地 方自 治法 施行 令第
167 条の10 の2 に基づく方式)
○
入札前に市側より提示する。
概要
総合評価一般競争入札方式
契約書 (案)
の作成
評価
公募型プロポーザル方式
□
随意契約
□
公 募 に よ り 提 案 書を 募集 し、 あら
か じ め 示 さ れ た 評 価基 準に 従っ て評
価 し 、 評 価 点 の 最 も高 い提 案を 行っ
た も の を 優 秀 交 渉 権 者と して 選定
し 、 発 注 者 と の 契 約交 渉を 経て 随意
契 約 と し て 契 約 締 結す る方 式。 (地
方 自 治 法 施 行 令 第 167 条 の2 第1 項に
基づく方式)
○
市 は 公 募 前 に 「条 件規 定書 」と いう
形 で 骨 格 を 提 示 す る。 契約 書案 に比
較して粗いものでも可。
▼
入 札前 に数 カ月 の作 成期 間を 要す
ることになる。
価格要素を含めた
事業者の選定
○
審 査基 準に もよ るが 、最 終的 には
公 募 型プ ロポ ーザ ル方 式よ りも 価格
による要素が大きい。
▼
審 査 基 準 に も よ るが 、価 格に 関わ
ら ず 、 最 も 優 れ た 提案 を採 用す るこ
とができる。
契約交渉
○
基 本的 に不 要。 詳細 部分 の調 整の
み 。 現実 的に は「 調整 」に も段 階が
あり必ずしも容易ではない。
▼
必 要 。 数 カ 月 を 要 する こと にな
る 。 契 約 交 渉 が 整 わな い可 能性 も残
される。
○
発 注者 が求 める サー ビス 水準 が明
確 で あり 、求 める サー ビス 水準 を性
能仕様に反映しやすい事業。
▼
高 度 な 技 術 や 専 門的 な知 識が 必要
な 事 業 で 、 事 業 者 のノ ウハ ウの 余地
が 大 き く 、 発 注 者 がサ ービ ス水 準を
明 確 に し て 性 能 仕 様を 作成 する こと
が困難な事業。
□
サ ービ スの 内容 ・水 準が 長期 的に
安 定 して おり 、契 約時 の事 業内 容の
交渉余地がない事業。
□
事 業 者 の ノ ウ ハ ウに 頼る 部分 が大
き く 、 契 約 時 に 、 事業 内容 につ いて
交 渉 の 余 地 が 発 生 する 可能 性が 高い
事業。
▼
事業者選定後には基本的に契約書
の内容は変更はできない。
○
基本的には条件規定書に従うが、
事業者の提案に応じて契約内容を決
めていくことになる。弾力性があ
る。
契約締結に至らな
い場合
▼
当 選者 以外 は落 選者 とな るの で再
入 札 が必 要と され る。 ただ し、 会計
法 令 に従 い随 意契 約で きる 場合 もあ
る。
○
優 先 交 渉 権 者 と の交 渉が 決裂 した
場 合 、 当 初 の 取 り 決め に従 い次 順位
者と交渉することになる
その他
○
W TO 政府 調達 協定 の対 象と なる
案 件 につ いて は原 則と して 総合 評価
一般競争入札を用いる。
適した事業分野
契約内容の変更
○:メリット ▼:デメリット □:その他
46
② 参加資格要件
長期委託は、事業期間が長期にわたることから、安定的に施設を運営できる民間事業
者を選定する必要があり、そのためには資格要件の設定が一つのポイントとなる。
ごみ処理施設の運営業務は、実績に基づく経験以外の要素で能力を判断することは難
しく、実績を重視せざるを得ないが、過大な実績を資格要件とすると応募者が限られる。
十分な運営能力と競争環境の両方を勘案して資格要件を設定する。
③ 評価基準
事業者の選定基準としては、
「価格」と「運営業務の質」の両面を審査するという観点
から、価格要素と非価格要素(運営業務の質)を各点数化し、その総合得点をもって最
も優れた提案を選定する方法が一般的である。運営業務の質とは、運転の安定性、修繕
計画等の妥当性などの提案内容が該当する。
価格要素を重視した選定を行うと、十分な技術力を有しない事業者が安値で提案して
落札してしまう恐れがある。また、昨今では財政的な制約のため、低めに予定価格を設
定せざるを得ないことが多く、価格面の差が付きにくいこともある。このため、入札時
の予定価格は、現状の委託費を基準とした価格ではなく、VFMが確実に確保できるよ
うな水準で予定価格を設定し、その中で応募者を競争させることにより、非価格要素を
重視した選定を行っても十分なVFMが担保される環境を整えるという考え方が一般的
となっている。
こうした点も踏まえ、価格要素と非価格要素の配点や、非価格要素の評価項目につい
て、本市に沿ったものを設定する。
④ 審査体制
事業者選定の審査は、審査委員会にて行われる。審査委員会は、対象とする事業の中
身や技術に関する専門家や官民連携事業についての有識者から構成され、運営能力や事
業を通した地域への貢献など、非価格要素に関して専門的な視点から評価が行われる。
また、審査委員会には本市職員も含めることで、本市の方針や、市民の意向を反映する
ことのできる仕組みが担保されていることを踏まえて、審査委員の選定等を行う必要が
ある。
47
8.3 今後のスケジュール
清掃センターでは、平成 27 年度から平成 29 年度の 3 年間で基幹改良を行い、平成 30 年
度から長期委託の導入を検討している。
今後のスケジュール(案)を図 8-3-1 に示す。
平成 27 年度から本事業の詳細な検討を行うとともに実施方針等を策定し、平成 28 年度
中には入札公告、平成 29 年度には事業者の選定及び契約協議・締結を行い、平成 30 年度
からの長期委託の運営を開始する。
事業の詳細検討
実施方針等作成 8ヶ月
実施方針公表
質疑回答
平成27~28年度
2ヶ月
基
幹
的
設
備
改
良
工
事
入 札 公 告
質疑回答
6ヶ月
提案書の受領
6ヶ月
事業者の選定
4ヶ月
平成29年度
契約協議・締結
事業準備期間 6ヶ月
長期委託運営開始
平成30年度
図 8-3-1 今後のスケジュール(案)
48
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