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学会抄録

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学会抄録
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198
日本皮膚科学会雑誌 第80巻 第3号
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学会抄録
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東京地方会第467回例会
(研 究 会)
(昭和44年10月25日,日本医大)
座長 原田誠一教授
の所属リンパ腺のみが腫脹するのか.3)聶麻疹様紅斑
Chloracetophenone皮膚炎 肥田野 信,木下正
ははじめの皮膚炎の部位には全く起らなくて,別の部位
子,小松 忍,川上登喜子(東京警察)
に生ずるのか.
接触後の皮膚症状は二相性を示す.第一相は接触直後
肥田野 信 1)第一相は第一刺激皮膚炎と考える.
の刺激感に続いて項,頚,手首などに粟粒∼米粒大紅色
2)リンパ節腫脹は接触部の領域に限られている.3)暮
丘疹が散生して蝉い.外見上毛虫皮膚炎に類似する.小
麻疹様紅斑は,接触部(第一相の発疹部)以外にでる.
水庖または水庖を生ずる場合もあるが,10日位で上皮化
野口義圀(横市大):1)催涙ガスとしての状態と湿
する.第二相は接触後7∼14日で発生する募麻疹様紅斑
潤した状態で接触した時とで炎症の程度は違うか,2)
で非露出部(大腿,上肢,躯幹)にみられる.朕捺は激
感作原性はどの位か?
烈または軽度である.この頃接触部領域リンパ節の有痛
肥田野 信:1)エアゾルの状態で皮膚障害は起らな
性腫大を来し皮疹と消長をともにし,1∼2週で消える.
いと思う.2)感作の経路として経皮,経結膜,経気道
時に血中エオジノフィリーがあるが経過は不定.肝・
の3ルートが考えられるが,第1の路が一番重要ではな
腎・副腎機能,免疫グロブリソは正常範囲に止まる.副
かろうか.
腎皮質ホルモンは内服・外用とも効はあるが著明ではな
毛包に深い関連性があると思われる腫瘍について 鈴
く抗ヒ剤・抗プラスミン剤併用がよいようである.次に
木啓之,荒川秀夫,森岡貞雄(日大)
播種性紅斑丘疹型薬疹における表在リンパ節腫脹を認め
毛包はかなり分化した皮膚附属器である.そこでわれ
た(1∼数ヵ所,対側性)6例を例示し,このような形
われは毛包を形態ならびに機能の面から,1)毛包漏斗
の薬疹にもリンパ節腫脹の生じうることを説いた.原因
部,2)毛包深部((イ)外毛根鞘,(ロ)内毛根鞘),
薬はキャソサイクリソ,シノミソ,タソデリール,ブタ
3)毛母とにわけて,これらの点に留意して毛包に関連
ゾリジン,サルフア剤,コンドール各1例である.
性があるといわれている腫瘍の再分類を試みた.さら
討 論
にclear
cell hidradenoma
の一部のもの,
basal cell
小嶋理−(東医大):1)リンパ節の腫脹は薬疹の湿
epitheliomaの一部のものは毛包の腫瘍と考えられる
疹型に顕著であると考えている.2)皮膚素因の問題は
点があることを主張した.
どうか.3)二相性というが,二相性の皮疹はid疹と
みることはできないか.
追 加
森岡貞雄:毛嚢起源あるいは分化を示す腫瘍の確認は
肥田野 信:1)皮膚炎発生は素因×接触条件×直後
の処置の条件によって左右されるだろうが,そのうち接
触の条件が最も重要と考える.2)募麻疹様紅斑の発生
機序はアレルギー性と想像するが,むしろ皆様の意見を
非常にむずかしい.ただalkaline
phosphatase陽性塊
が上皮性細胞集塊に接して見える毛乳頭様構造の存在は
hair matrix
の腫瘍を考えさせる所見である.毛嚢深
伺いたい.
部の腫瘍はtrichohyalin穎粒の存在は毛嚢性腫瘍(毛
笹川正二(東大):1)はじめに生ずる毛虫皮膚炎様
嚢深部)を明確に示すものと考えられる.原型質澄明な
皮疹はprimary
外毛根鞘細胞はBowen's
irritant dermatitisと考えてよいか.
2)リンパ腺の腫脹があるというが,皮膚炎のある部位
disease, seborrheic keratosis
などにしばしば見られる退行変性表皮細胞,汗器官腫瘍
昭和45年3月20日
199
に見られるclearな細胞,
Paget細胞などとの鑑別が必
笹川正二(東大):1)
24時間後にSkin
windowの
要であり.慎重を要する.
局所にbasophilsが多いとのことだが,そのとき末梢血
組織肥満細胞の螢光法による観察 森嶋隆文,遠藤幹
のbasophilsはどうなっているか.
夫(日大)
メロサールのdelayed
色素性募麻疹6例の病巣皮膚,ラット,マウス,ハ
ういうわけか,
ムスター,家兎,モルモットの舌および耳皮を蛍光法
いたい.3)アトピー皮膚炎,貨幣状湿疹,薬疹,天庖
(Faick and
癒などでは局所にbasophilsが出やすいというので,こ
Hillarp)にて観察し,次の結果をえた.1)
人の肥満細胞のあるものはその細胞質内に,
Serotonin
2)
Basophilsがチ
hyper sensitivityに出るのはど
basophilsの免疫的役割についてうかが
ういうときの判定はむずかしいと思うがどうか.
あるいはその前駆物質である5-hydroxytryptophanに
滝野長平:1)
基く黄色の蛍光物質を含有している.2)ラットおよび
の白血球百分率は出していない.文献的には余り変動か
Skin-window
マウスの肥満細胞は黄色の蛍光を発しSerotonin含有
ないとされている.
性である.かかる蛍光はprimary
に関する役割は不明であるが,文献的にはDNCB皮膚
catecholamines(CA),
2)
24時間における流血中
Basophilsの遅延型アレルギー
reserpine, codeineなどの薬物の処理により変動をみ
炎でWolf-Jar
ないが,
の出現を示し,また遅延型反応部におけるCantharid-
compound
48/ 8 日の投与により消失する.
gensenがSkin-window部にBasophils
3)家兎およびハムスターの舌および耳皮にみられる肥
in水庖中に好塩基球が著明に出現するとする報告もあ
満細胞はDOPAの投与により緑色の蛍光を発する.
る.3)モの他皮膚疾患にっいてはSkid-window法
Noradrenalineおよびdopamineの投与では,蛍光の
での検討は余り行なっていない.今後検討したいと考え
発来は認められない.4)モルモットの未処置および
ている.
primary
座長 宮崎寛明教授
CAを投与し,肥満細胞を観察したが,蛍光
物質の存在は証しえなかった.5)生化学的観点から,
オロナイン皮膚炎にみられた特異な角化異常について
肥満細胞は,
水野房子,清寺 真(東医歯大)
monoamineforming
amineforming
Ray
mast
mast cells と no
cells に分類できるとのAdams-
et al. の見解に賛意を表する.
3名の患者の頚部より得た生検材料の電顕的観察によ
りhyperkeratosisを示す角層内の,一見parakeratosis
Thimerosal過敏症検査に関するSkm・:Win・low万法
と思われる変化が,実はkeratohyalin穎粒を主体と
の応用 滝野長平,山口淳子(東医歯大)
する特異な角化異常であることがわかった.これとps-
Thimerosalに過敏を示し,接触性皮膚炎を生ずる症
oriasisにみられる典型的なparakeratosisとを,光頭的
例4例についてRebuckらのSkin-window法に準じ
および電顕的に比較してその違いを明らかにした.この
て検索を行ない,さらにこれを簡易化して臨床検査法と
穎粒の角層内増加の理由は不明であるが,角層自体の粗
しての応用を試みた.
換を3,
Window部のカバーグラスの交
10, 24, 32, 48時間について行なったところ,
で,細胞成分が残留し,また定型的なkeratin
pattern
をもたないことから,穎粒の正常な角層形成に対する役
好塩基球,好酸球の異常に多く出現する炎症反応が認め
割を大なものと考えた.
られ,特に24時間以後の好塩基球の割合はpathognom-
も有縁層,角層に多数みられ,角層では数個ないし10数
onicで2%以上(最高42,4%)の高値を示した.次に
個が集塊をなして,細胞内,間にみられた.この穎粒増
操作を簡易化し,
3, 24時間の2回あるいは24時間1回
Membrane
coating granule
加と角化異常との関係は明らかでない.
の交換では,両者ともに24時間値に同様の特異反応を得
追 加
た.なお,対照であるthimerosal貼布試験陰性例8
清寺 真 :この種の異常角化は実はまれなものだと
例にっいては好中球,単核球を主とする普通の炎症反
思ったが,UV照射,
応で,好塩基球の出現も0.4%以下であった.これら
見られるそうである.ただこのような異常角化が何故お
friction blister などのときにも
Window部は検査終了後速やかに痴皮を形成して治癒
こるのかを考えることが非常に興味あることと思う.
し,貼布試験陽性反応に附随するごとき弊害は僅微であ
服山 公江(Univ.
った.以上,技術的に若干の馴れは必要と思われるが,
Medical Center):角層にケラトヒアリソ穎粒がみられ
充分臨床的に応用できるものと考える.
ることは,他の実験的条件にも見られるのでspecific
討 論
な変化とは考えられない.しかしこの軟膏が細胞に影響
of California,
San Francisco・
日本皮膚科学会雑誌 第80巻 第3号
200
をあたえ,穎粒細胞が正常な角化機転を中止するという
ものをつくりはじめることがありうると思う.
事実は興味深い.
堀嘉昭:Junction
石原 勝(東京逓信):1)同様の角化異常(乾皮症
行の際のjラノソームの問題であるが,この移り変りの
様皮膚)は,
ときの電顕を経時的に見たわけではないので,何ともい
ABTMA以外の諸界面活性剤によっても
nevisからmelanosomeへの移
発生せしめうる.刺激反応で,高濃度の水溶液の場合に
えない.
は紅斑(炎症)が先行して早期に乾皮症様になり,軟膏
Metastatic
の形で外用した場合には角層の障害が次第に増強してゆ
らびに電顕所見 堀 嘉昭,茂呂アキ子(東大),池田
くのであろうと考える.2)本症と肉眼的,組織学的所
重雄,鳥居ゆき(東大分院)
見,および経過の上で類似性をもっ,疾患は進行性指掌
21才,男子例.全転移巣は,
角皮症と思うが,
反応陰性の細胞集団よりなるが,これを,組織培養に
KTPPについて検索されたか.3)
Amelanotic
Melanoma
の組織培養な
amelanoticかっドーパ
乾皮症様または魚鱗癖様皮膚の灰褐色の原因は何である
て,10日間以上観察したところ,腫瘍細胞は,ドーパ反
か..
応陽性に転じ,また,メラニンの産生も認められた.電
安田利顕(東邦大):角層に変性がまず起って,次第
子顕微鏡にて,ドーパ反応陰性のものの細胞と,組織培
に穎粒層,有鯨層にまで変性が及ぶという変化が続発し
養中の,ドーパ反応陽性に転じたものの細胞の観察所見
てくるのが,本症の本態と考える.したがって,遂次的
について述べる.組織培養は,回転培養法により,37°C
に,いろいろのスタジウムを分析して追及していく必要
に保ち,培地はEagleのMinimal
がある.このためにはdry
を用いた.
skin の人に,オロナインを
Essential Medium
ぬると案外簡単にこの皮膚炎が発生するので,試みられ
座長 清寺 真教授
ては如何.
表皮における脂酸生合成機構について 1)
切除後再発をみた黒色癌前駆症の光顕ならびに電顕所
yl-CoA
見 堀 嘉昭,水谷ひろみ(東大),池田重雄,鳥居ゆき
大)
(東大分院)
表皮は活発に脂酸の生合成をおこなっている.表皮細
43才,家婦.30才頃,左下眼険部に淡褐色斑出現.5
胞の画分をとりその生合成を,
∼6年来,同色素斑内に濃褐色斑が混じ,漸次増大す.
"C,
昭和40年9月,病巣辺縁より約2m外方に皮切を置いて
生合成のmain
切除,4年後手術創を中心に,典型的皮疹の再発と,下
はl04,000Xg60分上清のいわゆる可溶性画分とマイク
眼険結膜部への病巣拡大をみる.光顕所見:表皮基底層
ロソームにみられることが明らかになった。Malonyl-
pathway
malon-
麻生和雄,長岐 徹,坂本信夫(千
acetate-"C, acetyl-CoA-
malonyI-CoA-"Cをもちいて観察すると,脂酸
pathway
に大小不同,概してやや大型のドーパ反応陽性の細胞
CoA
.が,あるいは密に,あるいは粗に存在.毛嚢上皮にも同
acetyl-CoA-carboxylaseによりmalonyl-CoAとな
様の所見を認めた.電顕所見:表皮内に,多数のjラノ
りNADPHを主たるcofactorとしてpalmitin酸ま
ーサイトが存在し,多数のメラノソームを含有する.メラ
でを生成する経路をいう.この合成系はDiabeticな状
ノソームの大部分は,個々に存在するが,一部のもの
況やcarticosteroidその他のホルモンによっていちじ
は, Autophagosome内に貪食されている像を呈する,
るしい影響をうける.表皮の可溶性画分におけるこの
渋皮細胞内へのメラノソームの移行は認められる.真皮
acetyl-CoA
内にも,メラノサイトと思われる細胞の存在が認められ
説明した.
尭.
pathway
といわれるmalonyl-CoA系
とはacetyl-CoAがビオチソ依存性の
carboxylase および脂酸合成酵素の存在を
表皮における脂酸生合成機構について 2)
Elonga-
討 論
tion system 麻生和雄,坂本信夫,長岐 徹(千大)
清寺 真(東医歯大):Melanosomeの形態からma-
表皮のミトコンドリアでは可溶性画分のmalony!-
]lignantmelanomaの分類をすることは非常に興味があ
COA系とは別箇の機構で脂酸生合成が行なわれている
るが, Lurtigs maligna
をのぞいては,なかなかむず
かしいと思う.それは例えばjnnction
nevisがmail一
ことを説明する.
Acety!-CoAから2個の炭素が既存の
脂酸に取込れ鎖の延長を行なうと思われる心のでこれを
名nant melanomaになるprocess上を考えてみても,
elongationと名づける.
^■egularなmelanosomeがirregularな形や大きさの
PH. NADH,
Acetyl-CoA-"CにATP,
Mg*などのcofactorsを加えると脂酸が
NAD
昭和45年3月20日
201
生成されるがoctanic
acid (C:8)を添加すると生成
される14C一脂酸はいちじるしい増加を示す.
Malonyl-
COA系がビオチンを利用するのに対し,このミトコンド
リア系ではB,を利用すると考えられる.
Elongation
エステル化がcofactor添加により,かなり回復するこ
とから,このコレステロールエステル化酵素系に少なく
とも質的な異常は認められないのではないかと考えてい
る.
はdesoxypyridoxineの添加によりいちじるしい阻害
大城戸宗男(,慶応):Co-enzymeを充分いれた試験
をうける.
管内実験を行なうのは,例えばpsoriasisである酵素活
討 論
性に異常かあっても結果として不明になってくるのでは
中山秀夫(川崎市立):ガスクロマト分析のデータを
ないか.
示されたが,現在かなり定量方法が統一され,信頼性の
麻生和雄:Psoriasisにおいて燐脂質やfree
ふえたcholesterolなどと比べると,脂肪酸のガスクp
acidの生合成すなわちLipogenesisの充進している事
による分析値は偏差が大きく,したがって2つの数値を
実はわたくしらも認める.しかしこれらのLipogenesis
比較した場合その差が有意であるとするのに困難を感じ
とcholesterolをエステル化する反応はcholesterolエ
ることが多い.実験に使用されたガスクロマトにおい
ステル化という酵素反応で全く別箇であると考へる.
て,脂肪酸の分析値の標準偏差が分っていたら教示され
服山公江(Univ.
たい.
dical Center):乾癖表皮の蛋白質合成をオートラジオ
(authentic
sample
によるdataでも可)
fatty
of California, San Francisco Me-
麻生和雄:Gaschromatographyは現在確立された方
グラフで見ると下層では正常より上昇している蛋白合成
法であるのでその成績は信用してもよいと考えている.
か下層ではかえって低下している.このような細胞機能
表皮コレステロールエステル化酵素 第3報 乾癖表
の部位的な差が脂質合成においても関与するかどうかを
皮におけるコレステロールエステル化について 藤田
考慮する必要があるのではないだろうか?
優,麻生和雄(干大)
麻生和雄:Cholesterolエステル化酵素は表皮細胞の
Rothman一派らにより問題とされて来た角化とコレ
可溶性蛋白部(
ステg−ルエステルについて,著者らはすでにコレステ
在する.この酵素が表皮細胞の上層部に特にactivity
ロールエステル化酵素が表皮細胞の可溶性画分にあり
が増加するか否かについては検討していない.
cofactors としてATP,
佐藤悦久(資生堂):Cholesterol
CoAを必要とすることを明ら
104,000〉くg60分上清部)に主として存
Fatty Acid
癖表皮のコレステロールエステル化について述べる.10
か使われるのか.
例の乾疸の病巣部,健常部皮膚の表皮のコレステロール
麻生和雄:表皮でのcholesterolエステルの脂酸はオ
エステル化は1‘C−コレステp−ルをもちいて,いずれも
レイソ酸リノール酸およびC
病巣部表皮が健常部より明らかに低値であった.病巣部
ソ酸,パルミチソ酸がエステル化する.これらは活性化
表皮ホモジネートにATP,
されacyl
CoAをC
2.0,
0.2μm)
くわえるとエステル化は上昇するが,それでも健康部表
は外部から補なわずに700
Esterificationの
かにしてきた.これら基礎的なデータを基とし今回は乾
CoA
gsup.
中のFA
: 18, C:16のスラアリ
となってcholesterolにエステル化する.
角化現象における脂質代謝(IV)乾癖表皮におけるリ
皮と比べて低値であった.以上の成績にっいての考察お
ン脂質生合成 大城戸宗男,松尾米朗(慶大)
よび見解を最後に述べた.
前報において乾柳表皮内で'H-acetateより合成され
討 論
る脂質について検討し,リソ脂質と2レステフールの代
大城戸宗男(慶応):1)
Co-Aをco-enzyme
謝が盛んであると結論した.これらの脂質は細胞内にお
にとるとのことであるが,乾癖ではこれらの量が増加し
ATP,
ける構成脂質として知られるため,今回は主要なリン脂
ているのではないか.
2)
質の生合成を調べ,本症にみられる異常角化過程でのそ
無疹部のcholesterol
ester イヒ機能が正常皮膚に比べて
Rothmanらがいわれたのは
れらの態度について論じた.なお詳細は原著にて発表予
低下しているのではないか.
定である.
藤田 優:Rothmanらは乾癖患者では遺伝的にコレ
討 論
ステロールエステル化酵素系に欠陥があるといyことを
大城戸宗男:1)
いっているわけだが,われわれの実験では,1)健常部
り,リン脂質に入り込む.この実験の目的はいかなる経
Acetateからいろいろなrouteをと
より病巣部が高いエステル化を示したこと,2)病巣部
路から入ろうと,もしリソ脂質に代謝異常があれば,結
日本皮膚科学会雑誌 第80巻 第3号
202
果がもつとはつきりしてくるかと思う。例えばSwanb-
皮膚へ種々の穎粒内にリン脂質は入り込んでいくと考え
eckらのいう結晶が事実としたら,ある特定のsubfra-
ている.
ction力沁つと上昇するのではないだろうか。2)正常
東京地方会第468回例会
(東京医学会と共催)
(昭和44年10月31日,エザーイ)
Hormonal
Aaron
Control
of Pigmentation Prof.
Dr.
B. Lerner*
ることを決定した.蛙や魚の皮膚色の濃淡はjラニン穎
粒がメラノサイト内で移動することに因っておこる.す
下垂体の除去によって,動物の皮膚色がうすくなるこ
なわちメラノサイトが核の周囲に集合すれば,メラノサ
とはすでに1920年代から知られていたが,
イトは,したがって皮膚色もまた淡くなる.またメラノ
1950年代には
これに関する研究は誰もやっていなかった.演者はMS
サイトが細胞体内に拡散すれば,メラノサイトが濃色に
Hの研究にまず着手,さらにこれと逆に皮膚色をうすく
なり,皮膚の色も黒く見える.
するホルモンであるメラトニンにっいても研究した.こ
はcyclic
れら研究を通じてMSHやメラトニンを検出するため
ソ穎粒がMSHやメラトニンによって移動するという証
に使用されたものは,鎮目和夫博士によって工夫された
跡はない.しかしながら,
bioassayの器具である.これは蛙の皮膚を蛙リンガー
ソ増加もまた,何らかの機序によりcyclic
AMP
MSHなどのかかる作用
によって仲介される.哺乳類のメラニ
MSHによる哺乳類のメラニ
AMP
の液につけ,これを透過する光線の量をフォトメーター
って仲介されるものと推臆したい.
で計ることによって皮膚色の濃淡,別言すればこれらホ
Early
ルモンの効果を量的に表現することができる.演者はア
つき) Prof. Dr. Thomas
ジソソ病で皮膚色が濃くなることが,
悪性黒色腫の治癒率はこれを早期に正しく診断された
MSH分泌増加に
Diagnosis
によ
of MI・!Ignant Melanom・:(映画
B. Fitzpatrick**
因っておこるということを証明した.またα-MSHを
場合と然らざる場合とでは著しく異る.悪性黒色腫と似
分離し,その構造式を決定した.その後,蛙や魚の皮膚
て非なる無害の疾患もある.悪性黒色腫の中にも臨床形
色を淡色にするホルモンの追求を行ない,高橋善弥太博
態学的,ならびに病理組織学的に種々のものがあり,そ
士,森亘教授その他の協力を得て,松果腺にこの物質の
れぞれの間には治療の難易ならびに予後に著しい差異が
あることを知り,これを抽出,メラトニンと命名,さら
ある.以上につきカラー映画を用いて説明した.
にその構造式がN-Acetyl-5-methoxytryptamineであ
Section of Dermatology,
Yale University School of Medicine, New Haven, Connecticut,
Department
of Dermatology,
Harvard Medical School, Boston, Massachusetts, U.S.A.
U.S.A.
昭和45年3月20日
203
東京地方会第469回例会
(昭和44年11月5日,興和ビル・ホール)
座長 安田利顕教授
一般演題
Hereditary
れは腫瘤を作らぬ点5-B型ではなく,アネトデルミーと
Onycho-osteodysplasia
Syndromeの
することも不賛成である.癩痕または癩痕様変化を示す
1例 山碕 順,関戸孝雄(群大)
未知の疾患か?
14才,男子.昭和44年8月2日初診.家族に同症はな
清寺 真(東北大):数が増すということは,私か観
く,母親によると全指趾爪の変形は生下時よりあり,ま
察した範囲で増していると思う.ただSchweninger-
た本人は遠く走れないとい凱現在,全指趾爪は変形萎
Buzzi型としては皮膚のもり上りがない点が問題だと思
縮し,特に指爪は匙形を呈する.整形外科的に両側性の
うし,経験が乏しいのでこれらの点について意見をいた
膝蓋骨形成不全,腸骨外側円錐状突起(iliac
だきたい.
horns)
外反肘ならびに腰椎前寫および第五腰椎分離症を認め
た.一般に皮膚科からの報告は少ないが,整形外科から
は本邦でも20例報告されている.
川村太郎(東大):こういうまれなものは,衆知を集
めて考える必要があるかと思われるので,古い症例報告
(日皮会誌23年頃の号末埋草参照)を申上げる.その例で
Anetodermieの1例 大熊守也(東医歯大)
は辺縁で一旦陥凹することなく,直ちに膨隆にうっって
29才,男子.既応歴,家族歴とも特記することなし.
いた,また演者が最も気にしていた弾力線維であるが,
8ヵ月前頃より,前駆病変なしに,全身特に躯幹,両上
周辺の皮膚に比べて見るとほとんど全く消失していた.
腕などに直径3em大までの円形ないし楕円形境界鮮明の
私の見たものが厳密にSchweninger-Buzzi型といえ
表面が不規則で浅く陥凹した皮疹が出現,次第に数を増
るかも含めて,参考に供する.
して来た.また全身筋肉の自発鈍痛,嘸下時っかえる感
大熊守也:1)皮疹の数が増えているということは直
じなどがみられ,漢方,物理療法,内科的薬物療法を試
接観察してないが患者の言によった.2)押すと手の指
みたが軽決しないので当科を受診した.初診時上記皮膚
が抵抗なく押し込める.3)脂肪組織が上方へProlaps
所見と自律神経機能異常以外は特記すべきこともなく,
している像はみられなかった.
知覚異常もみられなかった.食道鏡,胃カメラ,胸部レ
Artefaktの1例 福原 右(東医大)
線,筋電図,心電図などの諸検査も異常なく,病理組織
12才,女児.初診昭和43年5月14日.家族歴,既往歴
所見では,病巣部の表皮は薄く,表皮突起は扁平とな
とも多彩.はじめ顔面のチリノソ皺様皮疹で来院.接触
り,膠原線維東と弾力線維が軽度に細くなっていたが,細
皮膚炎として加療するも軽快せず,以来全身各所に雲母
網線維は著変なく,アミロイド沈着もみられなかった。
様物質が固着したごとき外観を呈し,除去後その部皮膚
Inositol hexanicotinate
に炎症を認めない.入院精査の結果異常所見を認めず,
およびCyclandelateなどの
血管拡張剤を約4ヵ月使用したが効果はみられなかっ
雲母様物質の化学的検索および経過観察中にArtefakt
た. Schweninger-Buzzi型のAnetodermieと思われ
を疑い,自分で接着剤を塗布していたとの確診を得た.
る.
精神科的に軽度の精薄.
討 論
IHfiFuse NonnoUpemic
Plane
xs1万nthoma番場
長島正治(慶大):臨床的にtumorooの膨隆がない.
秀和(国立国府台),飯谷稲子,麻生和雄(千大)
なにかのNarbeではないかと思う.
20才,女子.家族歴,既往歴に特記すべき事実はな
Anetodermieな
れば軟い腫瘤状の発疹としてみられ,ヘルニア内を触診
い.7才頃両側上眼険内側に僅かに隆起した扁平な黄色
するごとき感触がある.組織学的には弾力線維の減少,
斑が出現した.ついで項部,頚部,四肢伸飢躯幹(汗溝
消失があるべきである.
部を除く)のほぼ全面に同様の斑が続発した.癈稼など
肥田野 信(東京警察):アネトデルミーの診断上最
の自覚症ならびに全身症状はなかった.一般臨床検査所
も重要な所見は指で押して容易に嵌入する点である.こ
見は骨髄穿刺で網状織内皮細胞の増加はみられず,血液
日本皮膚科学会雑誌 第80巻 第3号
204
像,糞尿,血清脂質分画,肝機能,電解質,尿素窒素,
福代良一(金大):1)腫瘍細胞同志の間と腫瘍細胞と
尿酸,糖負荷試験,胸部レ線,
ケラチノサイトとの間とで接着様式に差があったか.何
EKGなどに著変を認め
なかった.主たる組織所見は真皮上層一中層に巣状に散
れかにtight
在する血管周囲のfoam
胞内にグリコゲソ穎粒は認められなかったか.材料の固
M, Sudan
cellの集団で,これらはSudan
Black 陽性であった.
junction が認められたか.2)腫瘍細
定は? 3)腫瘍細胞内にjラノソームの集りがあった
討 論
由であるが,その意味は如何か.
大城戸宗男(慶大):血清脂質の変化をまとめると
鈴木啓之:1)接着様式ではほぼ同様と思う.
Tight
Cholesterol ester とPhospholipidの量的変化がなく
junctionがあるかどうかは,未だ検索が不十分である
質的変化があると結論してよろしいか.
2)固定はOsmium単独とGTA-Osmium同時固定
番場秀和:Altmanらのいう意味のnormolipemic
を用いた.グリコーゲン穎粒としてはみられなかった.
なる意味は,脂質の「量」にっいてであって,構成成分
3)
にっいては言及していない.本例では血清脂質のchol-
あると思う.
esterol ester および燐脂質の脂酸構成に若干の異常が
堀 嘉昭(東大):Paget
認められている.
だが,汗腺の細胞が遊走するのか,あるいは表皮内で分
Paget 細胞内のメラノソームはライソソーム内に
cell が汗腺由来とのこと
麻生和雄:血清のガスクロマトでコレステロール,ph-
裂するのか,分裂像を見たか?東大の宮里先生の例
ospholipidの異常が認められたことは,あるいは本症
(mammary
例が,いままでの意味で(定量法その他)
かな多発像が見られたので追加する.
normolipemic
であったので,実際には厳密な意味で脂質を転送する
Paget)では表皮内にPaget
cell の明ら
鈴木啓之:1)はっきりmitosisを示した所見はみら
lipoproteinの構成の異常もある可能性もあるかと考へ
れなかった.
ている.
走するかどうかは今後の問題と思うが,可能性はあると
2)
Paget細胞がケラチノサイト間を遊
川村太郎(東大):総脂質量だけでなく,分画を詳か
思う.
にされたこと特に興味深くうかがった.古くXanthoma
宮里 肇(都立墨東):1)
Paget細胞中にTonofi-
disseminatumとよばれたものに近いと思われる.
Nor-
lamentは認められたか.2)真皮内のアポクリン腺あ
molipidemicのものを,直ちにHand-SchuUer
Chr-
るいは汗管の所見は如何か.
istianに結びっけることに未だ問題がありそうに思わし
鈴木啓之:1)
める点で興味深い.
造はきわめて粗にみられる.
Paget細胞内にはfilamentosusな構
乳房外ページェット氏病2例の電顕的観察 鈴木啓之
スライド供覧
(日大)
カンジダ性肉芽腫 荒川秀夫(日大)
63才,男子と55才,女子のいずれも外陰部に生じたペ
48才,男子.長野県在住.現病歴.7∼8年前に下口
ージェット氏病2例の電顕的観察所見を報告した.ペー
唇の皮疹に気づき,近医にて治療を受けていたが,軽快
ジェット細胞は比較的大型で,細胞質は明るく,小器官
しないので,その後は放置していた.昭和42年7月,当
の発達も比較的よく,しばしば細胞質内に高電子密度小
科を受診し,慢性円板状エリテマトーデスの疑診で皮疹
体が多数観察される.ページェット細胞同志は貧弱なデ
部を仝摘,組織学的に不規則な表皮肥厚と真皮上層の軽
スモソームあるいはintermediate
度の細胞浸潤がみられ,一種の上皮性腫瘍と診断され
junction により結
合している.また隣接せるケラチノサイトとも同様の結
た.昨年10月頃より切除部が隆起してきたので本年8月
合様式をもっが,ケラチノサイト間に孤立散在性に存在
再び当科を受診した.現症.下口唇右側の唇紅と粘膜移
するページェット細胞では隣接ケラチノサイトとの結合
行部に一致してエンドウ大,表面扁平,灰白色を呈する
は不鮮明である.白験例2例での観察所見では,ページ
やや浸潤ある結節1個,軽度圧痛を訴える.組織所見.
ェット細胞はケラチノサイトとの類似よりは汗腺系統の
表皮は角質増殖,不全角化,表皮肥厚を認め,真皮は全
細胞との類似を考えたい.また隣接せるケラチノサイト
体に小円形細胞,類上皮細胞,形質細胞の例密な細胞浸
との間にみられる貧弱なデスモソームは両者の細胞が接
潤をみるPAS染色にて角質内に豊富な菌要素を認め
した後に再形成された可能性も考えたい.
る.培素によりCandida
討 論
クリプトコッカス症の1例 河村俊光,深田馨子,関
albicansが同定された.
昭和45年3月20日
205
藤成文(武蔵野赤十字)
よれば表皮および真皮はほぼ正常.真皮中層以下の弾性
33才,男.機械工.昭和44年3月上旬左頬部に皮疹を
線維は断裂・膨化・巻転・短絡し,穎粒状,短棒状を示,
生じ次第に増大,さらに6月より7月にかけて後頭部,
している.石灰沈着像は認め得ず,トルイジン青にても
左下顎部および胸部にも皮疹を生じた.この間咳,喀
異染性をも認め得なかった.し
痰,頭痛などはなく,また神経症状や眼科症状もなかっ
討 論
た.皮疹は左頬部は3.2×3.3cni大で隆起し,一部結痴
座長:Dormatochalasisに心障害とMediastinalzyste
した腫瘤,後頭部は小指頭大の結節,左下顎部は指頭大
を有しているとすると,何か症候群としての名称がない
の皮下膿瘍,胸部は2個の小豆大までの淡紅色丘疹であ
か.
った.組織学的検査および湯出液から莱膜を有する胞
菅原 宏:文献上見当らなかった.
子を多数認め,また病巣組織片の培養でCryptococcus
Pasini-Fierini型特発性皮膚萎縮症 斎藤隆三(都立
neoformansを証明した,しかし胸部レ線像で異常な
大塚)
く,脳脊髄も正常であった.ブアソギソソ点滴静注と病
24才,男子.多発性脳動脈瘤にて5年前および2年前
巣内注射計775iiigおよび切除術で軽快した.
に手術を受けている.約5年前右背部に淡褐色やや陥凹
尋常性狼庸 矢代昭夫,滝口都三(昭大)
せる斑状皮疹に気付き,漸次拡大するとともに「たす
28才,男.約10年前,右耳介の耳輪部に数個の紅色の
き」掛け状に右肩より右前胸部に10数個,右側頭部,左
小結節を生じ,徐々にこれが融合して局面を形成,時に
肩即部にも2∼3cm大同様皮疹をみる.右背部では手掌
浅い潰瘍を生じ,モれが巌痕治癒して,変形をきたし
大,境界鮮明,直角に近い傾斜をもって陥凹する円形褐,
た.自覚症状は全くなく,初めて当科受診す.現症は,
色斑状皮疹で,深部血管が透視できる.触診上弾性軟,
右耳介で耳輪部下方1/
硬化硬結はなく,周辺にlilac
yモの後面に暗紅色の浸潤ある
ring はない.知覚異貴
紅斑がみられ,癩痕萎縮した部分もあり,また耳垂部に
なく,自覚症状もない.組織学的には表皮に基底細胞層
は,紅色ないし紅褐色の丘疹,小結節が集族して存し,
にメラニン穎粒増加をみる.真皮上層に充血性血管拡張,
硝子圧にて,黄色の狼療結節が認められた.さらに一部
と軽度の血管周囲性小円形細胞浸潤があり,膠原線組ふ
に浅い潰瘍があり,痴皮を被り,肉芽は不良であった.
均質化,膨化なく,真皮下層の汗腺周囲に弾力線維の消
耳後部淋巴腺の腫脹はなく,臨床検査成績では,ツ反応
失をみる.一般臨床検査成績には特に異常所見はなかっ・,
陽性,胸部レ線異常なく,組織片からの結核菌培養は陽
た.
性であった.組織学的に,真皮内に巨細胞をまじえた類
扁平苔癖 田辺義次(成田日赤),藤田 優(千大)
上皮細胞の集団を淋巴球がとりまき,ところどころに乾
61才,女子.6年前より,両膝,両肘頭部に癈埠性皮
酪壊死もみられ,いわゆる結核結節の像を示した.片側
疹ある乱現在まで放置して来た.また4年前より口豚
耳介部のみに限局した,尋常性狼唐の1例である.
粘膜,頬粘膜に潮紅4腫脹-ダ癩痕治癒する粘膜疹が出現,
Dermatoch・lasisの1例 菅原 宏(千大)
しはじめたが,特に自覚症状ないまま,医治を受けてい・
1年1ヵ月の男児.主訴:頚部皮膚の「たるみ」.家
ない.なお,初診時には,新疹が認められない.現症:
族歴:両親血族結婚(−).母親に同症あり.現病歴:帝
両膝,両肘は境界鮮な肥厚性変化で,表面は軽度粗鎚で
王切開にて出生.生下時2,850
枇糠様落屑を帯びている.口内では,白色索状物か不規
8.度々弓状嘔吐を示
し,6ヵ月頃の月間体重増加は60g程度であったとい
則網目状に配列しているが,その間の粘膜はほとんど正
う.10ヵ月頃から頚囲・躯幹の深い皺が目立ち始めた.
常部と変りない.一般検査成績では異常なし.組織学的
検査所見:血液像・肝機能・尿いずれも正常S.T.S陰
には,皮疹:過角化症,穎粒層の増加,真皮は表皮直下
性.血清Ca・Pともに低値.トルコ鞍計測・手根骨発育
に巣状,帯状の細胞浸潤あり,粘膜疹:皮疹と似るが,
および眼底検査異常なし.レ線的検索などによりVen-
表皮直下には裂隙形成も認められる.
trikelseptumdefekt.
Poststeroid
analriB, Mediastinalzysteを発
見.皮膚所見:頬がたるみ老人様顔貌を呈し,頚囲・側
Panniculitis
松岡滋美(立川共済)
10才,男子.初診昭和44年8月180.慢性腎炎ネフロ
胸部・四肢近位部に著明に重畳下垂する皺壁形成.関節
ーゼ期にて昭和42年11月より小児科に入院し,プレドユ
過伸展,ゴム様弾力はこれを欠く.また弾性線維仮性黄
ソμソ4,070iiig,ベタメサソソ211.25liig,パラメサソ
色腫も認めず.祖織学的所見:HE,
ソ60噌を内服,さらに昭和44年3月よりパラメサソン・
Vang,
PASなどに
日本皮膚科学会雑誌 第80巻 第3号
206
483.5iiigを内服したところ,中止2ヵ月後,両顎下部,
Necrobiosis
肘裔部に多発性皮下硬結を認めた.硬結は小指頭大ない
31才,女性.初診:昭和44年7月23日.主訴:左下腿
Lipoidica
北村啓次部(慶大)
し鴬卵大,一部は癒合し.弾性硬,圧痛がある.表皮は
仲側の紅斑性局面.既往歴および家族歴:糖尿病なし.
淡紅色のも常色を呈し癈禅はない.満月様顔貌,多毛,
現病歴:約1年半前,凍唐様の紅斑が左下腿に生じた
腹部皮下脂肪異常沈着を伴う.蛋白尿高度.血清総蛋白
が,特に自覚症状ないため放置.本年1月頃より軽度の
5.4g/dl, Alubumin
癈蝉と浸潤,皮疹の拡大を認め,近医にてアレルギー性
18.0%,
≪2-Globulin
46.7^,
血清リポ蛋白比14.2.血清白濁し総脂質2,160ing風総
血管炎の診断で治療を受けたが反応しなかった.現症:
コレステロール590nig/dl,中性脂肪976nig/dL燐脂質
初診時,皮疹は左下腿内側の約6×4cmの色素沈着を伴
・20.8mgP/dl.ソーンテスト39.1%.尿中17KS,
17-OH
う境界明確,表面光沢を有する楕円形の紅斑性局面で辺
・CSほぽ正常.組織所見;皮下脂肪組織に異物巨細胞,
縁は軽度膨隆,中央部やや陥凹し萎縮性である.触診す
小円形細胞の浸潤著しく,脂肪細胞は変性し,脂肪染色
るに翠皮症様の硬度を呈し,結節状の浸潤を触れ,軽度
にて重屈折性の針状結晶を証明する.硬結は2ヵ月後に
の圧痛を訴える.検査所見:一般末梢血液,尿,リウマ
;はほとんど自然消槌した.
チ反応,糖負荷試験,コーチゾン糖負荷試験,血圧など
Wcgener肉芽腫症の1例 谷奥喜平,木村恭一
いずれも正常.血沈中間値14.ツ反応と}回U卜組織所
ヽ(岡大)
見:真皮に結合織の類壊死巣とそれを取り囲むように散
17才,女子.小児喘息の既往はあるが薬物過敏症な
在する巨細胞を伴う肉芽腫巣および血管病変が認めら
’し.昨年8月躯幹順に壊疸性潰瘍を数個生じ約8ヵ月加
れ,脂肪染色にて類壊死巣の線維間に穎粒状の脂肪滴が
療により巌痕治癒.本年7月顔,四肢に同様の壊疸性潰
みられた.現在,フルオシノロソアセトナイドクリーム
瘍を多発し高熱を伴い,皮疹に少し遅れ鼻閉症状を来し
ODTにて軽央しつつある.
来院.皮疹から典型的壊死性血管炎の組織像を,耳鼻
Atypical
科的に進行性壊疸性鼻炎の臨床像を示したが,下気道
正治(慶大)
’(肺)および腎には未だ異常所見を認めていない.血沈
48才,男.昭和44年6月初旬,左腕の熱傷で当科通院
促進, CRP
中,左額の皮疹を指摘さる.父および次女(17才)に糖
(十)RA(十)を呈した他には,血清蛋白
Annulajr
Necrobiosis
Lipoidica 長島
系常,免疫電気泳動,血液培養,真菌培養などすべて異
尿病ある乱本人には小児麻庫(5才)の既往のほか著
貴所見なし.抗生物質が無効であった高熱および皮膚並
患なし.約1年前,外傷などの誘因なく,左額に抑指頭
びに鼻症状がステロイドに著明に反応し,血沈の軽快と
大・褐色斑発生.徐々に遠心性に拡大,初診時径4.0×
平行して潰瘍の改善を見つつある.
3.4C1I1の環状皮疹となる.辺縁幅1∼2m,境界明画・
討 論
赤褐色を呈し,堤防状に軽度隆起する.中心部は軽度の
西山茂夫(東大):鼻の肉芽腫性炎症および腎の病変
色素増強を示す.自覚症・知覚異常・神経肥厚・リンパ
の欠如からWegenerの肉芽腫症の典型的像とはいい難
節腫大などいずれも(一).全身状態良好,尿糖(−).ツ
`い.本例が真に壊死性血管炎によるものかどうか明らか
反応
ではないが,若しそうであれば,広義の結節性動脈周囲
査,胸部レ線像,眼科所見いずれも異常なし.組織学的
ト炎としても差支えないが,さらに細かく分類するなら
に真皮上・中層に多数の多核巨細胞を含む類上皮細胞性
ば,その組織像はむしろallergic
sranulomatosisに
l近い.
0
20×26
50gブドゥ糖負荷試験正常.一般臨床検
肉芽腫散在寸.数個の巨細胞中にAsteroid
bodyを認
む.膠原線維の一部に硝子化あり,血管変化著明なら
木村恭−: 真皮の浅層にまでに病変があるのは
ず.病変部弾力線組消失.脂質沈着(−).ムチソ沈着正
T?NよりWegenerがふさわしいと考えるが.1)腎病変
常範囲.フルオシノロンアセトナイドリターム外用で辺
jは欠くWegenerもある.将来発生してよいと考える,
縁多少扁平化し不明瞭となる.なお経過観察中.
で2)鼻腔の病変は特異的でWegenerとするにふさわし
討 論
い病変と考える.このような鼻変化は限られた疾患しか
なく,皮疹と合せてWegenerがふさわしい.
3)
Ast-
谷奥喜平(岡大): Granulomatosis disciformis
もnaは,小児期に一時期見られたのみでEosinophilieも
Miescherとの区別は?
久如している点Churg
長島正治:Necrobiosis
&
Straussは適当でない.
Iipoidica とGranulomatosis
昭和45年3月20日
207
disciformis (Miescher)とは本質的に同一疾患として
平隆起性結節で,表面は灰褐・褐色痴皮で被われ,これ
理解した上でこの名称を使用した.脂肪沈着がなく,血
を除くと,下は淡紅褐色の肉芽腫様外観,周囲に紅筆あ
管変化もほとんどなく,肉芽腫性病変を主体とする点か
り.ボトリオミコーゼとして切除.組織所見:前者は中
らみれば,
央に深く育入する角質塊あり,これを包むように球根断
Granulomatosis
disciformis の額に生じた
例といっても差支えない.
面様表皮増殖が存し,中に多数のsquamous
CoUoid
容れる.後者は一見Bloch
Maium 吉永和恵(日大)
eddies を
n型を思わす表皮増殖であ
53才,女子.既往歴,17∼18年前から右下肢のしびれ
るが,その中に多数のsquamous
感.家族歴,特記するものなし.現病歴,若い頃から農
討 論
業に従事,数年来日雇労務者である.約4年前から両頬
川村太郎(東大):日皮会会誌61巻313頁(昭26)に
部に一致して水庖様皮疹が発来してきた.日常は自覚症
報告した症例(標本5)は当時は老人性角化腫と考えた
を欠くが日光にあたると,ほてりを感じ,同時に皮疹が
が, Freudenthal-Pinkusの特徴を欠くから,この診断
増大する.現症,鼻背を中心として上頬部から外眼角側
は適当でなく,上皮細胞−メラノサイト系の所見では池
方に左右対側性に粟粒大∼半米粒大,淡褐色水庖様皮疹
田のいわゆるBloch中間型,三島-PinkusのMelano
が密集多発.圧出により攬黄色ゼリー状物質排出.検査
acanthomaとすべく,
Porome
成績,尿,肝,血液一般Tiseliusともに正常.組織所
を知った今日Porome
folliculaireと考えたい. Porome
見,表皮は圧排され真皮乳頭層∼中層に及んで横に連な
foUiculaireの場合,毛嚢漏斗部上皮(外毛根鞘細胞)の
る大なる空洞を形成し,中にエオジンに淡染する均一無
増殖がさらに進行してより深い部位のPilary
構造物質が,裂隙により数個の小塊に分れる.この物質
(内毛根鞘・毛母・皮脂腺)を圧倒して典型的のBloch
はPAS陽性,トルイジソブルーで異染性なく,コソゴ
中間型に移行するという現象も有りうると考えてよい
eddiesを認める.
folliculaireというもの
complex
レッド,メチル紫で陰性,これをとりまく真皮は著明な
か?
結合織線維(膠原および弾性線維)の変性をみる.
森岡真雄(口大):10月東京地方会で教室の鈴木が
アミロイド苔癖の1例 中島国夫(日大)
「毛嚢に関係する腫瘍」について述べたが,われわれも
74才,女子.家族歴ならびに既往歴;特記すべきこと
池田氏のBloch中間型,また川村教授が先に「毛嚢様
がない.現病歴:約10年前より左膝蓋部に癈疹性皮疹が
構造をもっ角化腫」として報告されているものは,何れ
あるのに気づいていた.その後拡大傾向がないため放置
も毛嚢に関連する腫瘍と考えている.ただ「毛嚢漏斗部
していたところ,2∼3年前より右膝蓋部,左肘頭にも
の腫瘍」とするためには如何なる組織学的所見を必要と
同様の皮疹が発来し,治療に抗するため来院した.現
するか?また併せてsquamous
症:両膝蓋部に鷲卵大,左肘頭から左前腕伸側下1/3にい
腫瘍を示す所見と考えてよいかを伺いたい.
eddiesは毛嚢性起原の
たる範囲に帯状を呈する病巣がみられる.かかる病巣
上野賢一:1)(川村教授へ):Bloch
は,粟粒大から米粒大の淡黒褐色の角化性丘疹が,多発
中間型(basosquamous
集族し,苔癖化局面を呈し,その中央では,灰白色のや
昭26発表の標本5との関係は,非常に興味のあるところ
cell acanthoma)
l型,
Bloch
,川村教授の
や光沢ある鱗屑を附している.病理組織学的所見;真皮
であり,一応推測したことをシェーマとして表示したわ
乳頭層から乳頭下層にかけて,HE染色でエオジンに淡
けである.ただ同一症か否かという問題は,先人の記載
染しvan
がすべてを尽くしているか,またどこに焦点を合わせて
Gieson染色で灰黄色,
Thioflavirre T染
色では黄色の蛍光を発する小塊状物質の沈着を認める.
考按記載したかによってかなりニュアンスの異なるもの
アミロイド沈着部に対向する表皮は,角質増殖,軽度の
であるので,一般に比較するということは難かしいもの
辣細胞層肥厚を呈する.
である. 2)
毛孔腫(porome
を以て毛嚢性腫瘍となす文献か多いが,この点にかん
foUiculalre)の2例 上野賢一,
してはむしろ森岡先生の意見を伺いたいSquamous
鍋島謙五(東医大)
1)
59才,男.数年来眉間に径4mの小丘疹.老人性
枕贅の診断の下に切除.
(森岡教授へ):標本中に毛嚢構造の存在
2)
62才,女.2年前,左腹部
eddiesの存在力い‘毛嚢性”といり強い証拠にはならぬ
と思う.
に扁平隆起性黒色小丘疹あり.1ヵ月来急に増大隆起
追 加
し,時に膿状分泌物あり.
池田重雄(東大分院):1)私がBloch中間型と命
14x12×3回のほぼ円形,扁
日本皮膚科学会雑誌 第80巻 第3号
208
名したのは,かつてLundがBasosquamous
cellaca一
眼homaと記載してある症例のBasaloid
cell prolife-
たので,他の2例と合せて3例の皮膚混合腫瘍を報告す
rationの部分にメラノサイトの共棲を認めた症例であ
る.数年前10例のporome
大)
最近われわれは左肩部に生じた皮膚混合腫瘍を経験し
foUiculaire を本地方会で
る.第1例は27才,女性.左肩部に1.5×1.5cni程の皮
発表したが,その時10例中数例に同様な症例を経験し,
下腫瘤を訴えて来院,組織学的に皮膚混合腫瘍であっ
Bloch中間型と呼ばれるものの内にはporome
た.第2,3例は76才,52才の女性で,第2例は鼻下部
ulaire with melanocyte-symbiosis
follic-
がかなりあっても
に,第3例は鼻尖部に,小腫瘤を生じ,切除して組織学
よいのではないかと考えるようになって来ている.2)
的検索の結果,皮膚混合腫瘍と判明した.以上3例に,
Basosquamous
2,3の組織化学的検索を加え報告した.
cell acanthoma
主張するごとくInverted
すべてがHelwigの
foUicuIar Keratosisである
表在性基底細胞上皮腫の1例 松島伊三雄(東邦大)
かどうかは,さらに多くの症例を検討する必要がある.
33才,主婦.現病歴:7才頃から右大腿外側中央に小
3)日本人のporome
黒色斑点あり,放置していたところ,3年前より癈蝉を
folliculaireではメラノサイト
の共棲がしばしば認められる点,臨床上時にpigment-
生じ,ひっかくと出血したり,分泌物がでたりした.皮
ed basal cell epithelioma
疹は徐々に大きさをますも,ここ1年位の間にその傾向
とまちがえられることが
が強い.現症:右大腿外側中央に境界鮮明で不規則な小
あるので注意されたい.
Steatocystoma
Multiplex
の3例 遠藤幹夫(日
指頭大の茶褐色斑を見,皮膚よりやや隆起し,表面は皮
大)
溝著明で凹凸不平である.一部に輝裂と黒色痴皮をみ
症例1は25才,女子で約半年前より,主として両側胸
る.組織的には3つの部分からなる.中央部では角質肥
部に,症例2は24才,女子で14才の頃より,両前腕屈
厚し,萎縮した表皮から円錐状,索状,梶棒状に腫瘍胞
側に,症例3は23才,女子で,約1年前より両前腕仲側
巣が真皮に突出している.それらはbasaloidの細胞か
に,いずれも自覚症を欠く皮疹に気づいた.家族歴;3
らなり,メラニン穎粒を含み,その周辺は細胞がpal
例とも家族内に同症はみられないという.現症;上記部
ade状に配列している.いわゆるSuperficial
is-
位に粟粒大から大豆大の円形わずかに隆起,あるいは半
cell epithelioma
球状に隆起した弾性硬の小結節が孤立性に多数散在して
質細胞などの細胞浸潤を例密に認める.標本の左側では
basal
の像である.真皮には円形細胞,形
いる.覆皮と癒着あるいは可動性で,下層とはいずれも
これまでintraepidermal
可動である.その色調は多くは健康皮膚色であり,小な
された組織像と一致する.右側ではBowen様の組織所
basal cell epithelioma
と
るものでは淡黄色で,一見黄色腫様外観を呈する.組織
見をみる.中央部の所見からSuperficial
学的所見;真皮中層から下層に嚢腫が存在し,嚢腫壁は
epitheliomaとした.
数層の上皮細胞よりなり,皮脂腺を認める.嚢腫内腔に
追 加
は,エオジンに淡染する均一無構造の物質がみられ,数
座 長:臨床的にも扁平なもので,角質肥厚を主とし
本の短い詣毛を認めるものもある.
て,浸潤のないもので,浅在性であるが,組織学的にも
basal cell
Kerathoacanthomの1例 外間治夫,徳田安基(東
superficial basal cell epithelioma に一致するもので
医大)
ある.
55才,女.1ヵ月前右手背に小外傷を負った.同部が
池田重雄(東大分院):中央部の組織は典型的なsu-
徐々に隆起し,大豆大,半球状隆起,中心部が噴火口状
perficial basal cell epithelioma, 右辺縁部ではintr-
に陥凹した腫瘍となる.組織所見,角質増生,
aepithelial basal cell epithelioma. 左辺縁部では一
ose, Lippenhildung,
acanth-
中心部陥凹し,核残座を容れた
見Bowenoidということであるが,やはりbasal
角質塊を認む.腫瘍底は汗腺域をこえず,多数の角質嚢
epitheliomaと見倣さ.゛れる.
腫,軽度の細胞異型,
Jadassohn型Intraepithelial
mitoseはほとんど認’められず,
Mehregan
&
cell
Pinkusは
basal cell epithelioma
細胞配列の乱れも軽度.数個の細胞各個角化も認められ
なるものの存在を否定しsuperficial
た.真皮にリンパ球,組織球,多核球よりなる伺密な細
heliomaの1型にすぎないとしているが,この症例が
胞浸潤を認む.
その説をsupportするよい実例ではないかと思われる.
所謂皮膚混合腫瘍の3例 丸山光雄,内山光明(横市
上野賢一(東医大):診断(表在性という)は臨床的
basal cell epit-
昭和45年3月20日
209
なものであるか組織学的なものであるか.この臨床像で
討 論 し
は表在性基底細胞腫とeinwandfrei といえぬと思う.
座 長:われわれもangioblastomの1例をみて,皮
表在型がただちにすべてbud-likeの増殖を示すもので
膚臨床昭43年1月号にでているが,これは1年以上の経
はなく,基底細胞腫においては臨床型と組織型との間に
過をみているうちに,自然に縮小軽快してきている.そ
(特に表在型において)必ずしも一定の不動の関係には
skinではdeep
angioma
of skin とし
てあるもので,皮下組織にもあるものに一致していると
ない.
森岡寞雄(日天):Intraepidermal
構造が見られたがbasal
epithelioma様
cell epithelioma
Bloch ll型,あるいはその他のseborrheic
にも認められることがあり,
のみならず
keratosis
basal cell epitheliomaを
裏付ける所見とはいえない.
Lymphadenosis
れはAllenのThe
考えられる.そりすると,いわゆるStrawberrymark
との異同が問題になって,
Angiomaの特殊型とみてよ
いように思うが如何か.
園田節也:デルモパソ照射は疼痛を消失せしめ,適応
と考える.
Be㎡gna Cutis の1例 森 弘子
(日大)
上野賢一:1)加療せずに1年以上観察した例はな
い.ただし発生して数∼十数年,皮疹不変のため来診し
65才,女.約3ヵ月前に左旅下方の皮疹に気付いた.
たものはある.2)本例のほかに約7例の軟レ線加療例
大きさは余り変化なく,発汗時に軽度の瑕禅があるほか
を有するが,いずれも疼痛の早期消失(大体1回照射
自覚症はない.既往歴 胃潰瘍,甲状腺腫,腹膜炎の手
後),浸潤の減退,色調の槌色などきわめてすぐれた結果
術を受けている.家族歴 特記すべきものなし.現症
左肢寓前縁下方に指頭大の境界明確に扁平隆起せる浸潤
をみている.細かくは改めて報告する予定である.
山碕 順(群大):Gitterfaser染色所見は?細胞増
性の紅斑があり,その中に粟粒大∼麻実大の丘疹が5∼
殖はGitterfaserの外側にあるようにみえたが.
6個集族または散在して認められる.またその直下に小
園田節也:嗜銀線維のまわりに細胞増殖していくとい
指頭大の境界明確な紅斑かあり,この中にも粟粒大の丘
う傾向ははっきりしない/
疹が2∼3個存在する.この紅斑は浸潤はない.所属リ
北村包彦(東医大):血管腫にも部分的に血管芽細胞
ンパ節の腫張はなく,検査成績も正常である.組織学的
腫の所見があり,段階的の差ともいえる.疼痛はこの腫
所見 表皮は全体に萎縮性で表皮突起は不規則あるいは
瘍の特徴であるが,神経終末装置に何か特異のものがあ
消失している.真皮乳頭下層から深層にわたる柄密な細
るか,どうか.間葉性のこの腫瘍にそのような外葉性神
胞浸潤が認められ,浸潤細胞はリンパ球ないし細網様細
経装置の異状がある(?)ことはどういうわけか,この
胞から成り,しばしばリンパ濾胞様構造を形成している.
あたり川村教授の見解を伺いたい.
血管芽細胞腫 園田節也,上野賢一(東医大)
川村太郎(東大):疼痛に関しては,若し微細な神経
4ヵ月,男児.3ヵ月の健康診断の時,右側胸上部に
を染めて調べれば,その数,形態ないしは周囲細胞との
鶏卵大の暗紅色浸潤局面に気付く.その部を圧すると啼
接触の状態などの変化が見られるのではないかと思われ
泣すると.正常満期分娩,生.下時体重2,800
9, 家族
るが,未だ調べていない.血管芽細胞腫は一応臨床・組
歴,既往歴に特記すべきことなし.全身状態良好.皮疹
織所見ならびに圧痛あることにより,
はその後増大する傾向なく,初診時45×201)11,やや隆起
と区別して考えた方がよさそうに思われる.血管芽細胞
strawbarry
mark
する暗紅色,比較的硬い浸潤局面で,表面はわずかに凹
腫と誤って診断したものが,後にKassabach一八ilerritt
凸を触れる.圧痛あり.組織像,表皮には著変ない.真
症候群と判明した経験もあったので参考までに.
皮中層より一部は皮下脂肪織内にかけて大小の充実した
“グロームス腫瘍”露木重明(関東逓信)
細胞集塊がある.集塊は核の卵円形ないし紡錘状の比較
40才,主婦.昭和44年8月12日初診.家族歴,既往歴
的明るい細胞の不規則な増殖からなる.増殖した細胞は
に特別なことはない.27才頃より右中指爪根部に圧痛,
管腔を形成する傾向があり,管腔形成の完全なものまた
放散痛,寒冷時の放散痛あり,5∼6年前より爪の変形
不完全なものも認められるが,ともに赤血球を入れてい
を併発.右中指爪中心部に縦に亀裂あり,爪半月に一致
る.異型性,核分裂像は認められない.治療 ブルモパ
した暗赤色調と膨瘤あり.抜爪すると,爪床近位端に暗
ンStⅢ 1回300
赤色13iiiHixl2iiiin大の半球状腫瘤が存在する.組織学的に
R 1 ヵ月間隔で4回計l,200R.現
在,わずかに浸潤をふれるのみ.圧痛なし.
は線維性被膜に囲まれた腫瘍組織で,一層の扁平な内被
210
日本皮膚科学会雑誌 第80巻 第3号
細胞をもつた血管腔に接してグロームス細胞か腫瘍間質
に向つて増殖している.
van Gieson染色では結合織線
維が腫瘍塊を取り囲みAzan染色,嗜銀染色では格子
線維が個々の腫瘍細胞をてん絡している.神経線維染色
はしていない.以上爪床に発生した単発型グロームス腫
瘍の典型例である.
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