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2016年8月号(PDF/791MB)

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2016年8月号(PDF/791MB)
F R OM
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ベトナム事務所
第 98 号(2016 年 8 月号)
2016 年 8 月 25 日発行
ベトナムの都市整備支援
ハノイ市への支援は体系立てて行われています。日
本や世界中の大都市と同じ発展形態を踏襲しているか
らです。まずは、都市のゲートとしてノイバイ空港を
整備し、都市と郊外を結ぶ幹線高速道路を整備する。
次に都市交通の渋滞緩和・利便性向上のために環状線
道路を整備する。そして最後に都市鉄道。ここまで整
備出来れば都市の基本的な骨格整備はほぼ完了します
。JICA の都市整備支援はいつもこの線に沿っており
、ハノイ市の場合、これらはほぼ全て日本の支援で整
備されています。そして環状3号線の最後の高架部分
が数年後には完成し、紅河に架かるタンロン橋からタ
インチ橋(紅河橋)まで全て高架で結ばれます。並行
して、6年後にはニャッタン橋近くから市中心部まで
の都市鉄道が日本の支援で完成を予定しています。こ
れにより、日本からの都市整備支援は一定の段階が終
了すると思われます。
他方、ホーチミン市はというと、ゲートとしての
タンソンニャット空港が日本の支援で整備され、その
後、ホーチミン市中心部と未開発地区となっていた対
岸のトゥティエム地区を結ぶサイゴン東西高速道路、
更にその延長上に南北高速道路(ホーチミン ・ ゾー
ザイ)が共に日本の支援で整備されています。そして
現在は都市鉄道の建設が日本の支援で着々と進んでい
ます。こちらも、都市開発の基本に沿っています。イ
ンフラだけではなく、国立チョーライ病院やベトナム最
大の下水処理場といったセーフティネットも日本の支援
で整備されています。
改めて文章にしてみると、日本の支援のスケールの大
きさに圧倒されます。
さて、ここでなぜ、こんなに気長に忍耐強く日本は都
市開発支援を継続できるのか、と問うと、日本のプライ
ベートセクターがこれら支援に興味、関心を持ち続けて
いてくれるからに他なりません。日本の高い技術を活用
したベトナムでのインフラ整備や医療機器供給などに日
本企業がビジネスとしてのポテンシャルを見出だしてく
れるからこそ、日本の公的資金を用いた ODA でこれほど
までに長期にわたって計画的に整合の取れた支援が可能
になっています。目には見えませんが、官が切り開き、
民が発展させていく、という連携が ODA 実施に当たって
とても重要です。
最後に個人的な体験からエピソードを一つ。ハノイも
ホーチミン市も郊外と高速道路で繋がることにより、今
まで都会に出て来ることが出来なかった若者達が、週末
には安心して帰省できるだけで無く、その気になれば思
い立ったその日のうちに帰れるために、都会に出てくる
ことが出来るようになります。月 200 ドルの現金収入の
うち、自分で使うのは 100 ドル、残り 100 ドルを田舎に
送ることで、弟さんや妹さんが休まずに学校に通える、
と3人の若者から聞きました。
一見すると無機質な道路整備事業であっても、その道路
を使うのは一人一人のベトナム人です。彼らの生活向上
に少なからず貢献していることを目の当たりにし、自身
もまた、ODA を担う者の一人として、開発の原点に立ち
返り、気を引き締めて真剣に取り組まなければならな
い、と考えるようになりました。
(山本 賢一
JICA ベトナム事務所 次長)
今月のトピックス
脆弱性への対応
JICA 筑波・中小企業現地調査プログラムを農業分野で実施
(7 月 4 日~8 日)
の技術指導が重要である一方、生産・加工・流通・市場
JICA が 2012 年度から実施している中小企業海外展開支
実施(7月4日~8日)
援事業の一環として「中小企業現地調査プログラム 」
(JICA 筑波国際センター主催・ベトナム農業分野視察)を
実施しました。農産物の栽培や農業資材・機器の販売、物
流事業を手掛ける企業等を中心に、日系 14 社・団体が、
日本、ベトナム、タイから参加し、ホーチミン市のほか、
農業が盛んな中部高原ラムドン省と北中部ゲアン省を視察
しました。
JICA は、2014 年6月に開催された日越農業協力対話以
降、日越農業協力のモデル地域であるラムドン省、ゲアン
省での農業開発に力を入れています。農業開発にあたって
は ODA 等の政府支援による開発計画の策定や日本式
までを繋ぐフードバリューチェーンの構築にあたっては
民間企業による投資が不可欠です。本プログラムは、フ
ードバリューチェーン構築の重要なアクターである日本
企業をターゲットに、ベトナムの農業分野における開発
課題への理解を深め、投資参画を本格的に検討して頂く
機会を提供したものです。各省政府幹部への表敬や、現
地の生産・加工関連企業との交流会、実際の現場視察等
を通して、参加企業からは活発な質疑応答・意見が寄せ
られました。本プログラムを契機に、一社でも多くの日
本企業がベトナム農業開発へ貢献して頂けることを期待
しています。
ラムドン省政府・農業法人、施設園芸・植物工場展(GPEC)2016
に出展(7 月 27 日~29 日)
JICA ベトナム事務所では 2016 年3月より「ラムドン省
主要作物及びアグリツーリズムのブランディング・プロ
モーション戦略策定に係る情報収集・確認調査」を実施
中です。今回は本事業の一環として、ラムドン省の産地
としての魅力及び主要作物(野菜・花卉・コーヒー等)
を実際にプロモーションする機会として、日本最大規模
の農業関連展示会である施設園芸・植物工場展(GPEC)
2016 にラムドン省ブースを設け、同省政府幹部及び同省
の農業法人計 10 名が参加しました。
JICA は、2014 年6月に開催された日越農業協力対話以
降、日越農業協力のモデル地域であるラムドン省の農業
開発計画策定を支援してきましたが、その中でも重要な
戦略の一つが、ブランディング活動の強化とアグリツー
リズムの振興です。ラムドン省の野菜・花卉・コーヒー
等の農産物は、その一部が既に日本向けに輸出されてい
ますが、日本人で同省のことを知っているのはまだ
少数です。同省への観光についても欧米人が主流で
あり、日本人にとってはまだまだ知名度の低い地方
というのが現状です。ラムドン省の農業振興にあた
って、一つの有望なターゲット市場は日本であり、
同省の観光地としての魅力や農作物についてより知
ってもらうために、「あなたはまだ、ラムドンを知
らない」というキャッチフレーズや広告を駆使し、
プロモーションを行いました。また、展示にあわせ
「対越農業振興支援の概要とラムドン省・ゲアン省
での取組」と題し、柿岡ベトナム事務所次長が JICA
の対越農業支援の概要について基調講演を行いまし
た。今回の展示や講演を機に、少しでも多くの日本
人、日系農業法人が同省への関心を高め、同省の農
業・観光振興へ貢献して頂けることを期待していま
す。
中小企業海外展開支援事業「水道水質改善のための薬品を使わな
い『ケミレス』地下水処理システムに関する普及・実証事業」
通水式・ケミレスシステム竣工式開催(6 月 29 日)
ハノイ市水道公社、株式会社ナガオカ、ベトナム上水
道協会、JICA ベトナム事務所の参加の下、6月 29 日、
ハノイのトゥオン・マイ浄水場にて標題の通水式・ケミ
レスシステム竣工式が開催されました。
ハノイ市の浄化場は老朽化が進んでおり、浄水技術の
発展も遅れているため、水源の地下水に含まれる鉄、マ
ンガン、アンモニア等の除去に苦慮しています。本事業
は、株式会社ナガオカの、薬品を使わずに地下水中の不
純物を除去する超高速無薬注生物処理装置「ケミレス」
をトゥオン・マイ浄水場に導入し、水質改善を図るもの
で、従来製品と比較して、高速処理、低額ランニングコ
スト、薬品を使わないことによる低い環境負荷を特徴と
しています。
本普及・実証事業に先駆け、株式会社ナガオカは、
2014 年に半年間のハノイ市およびホーチミン市におい
てのパイロット試験を実施しており、今回は、その効
果が確認されたため、更に規模を拡大した実証機の導
入を実施することとなりました。
今後は、本実証事業の実績をもって、株式会社ナガ
オカのベトナムにおけるビジネス展開及び、ハノイ市
民に対する飲用可能な水道水提供への貢献が期待され
ています。
その他
ハノイ日本人学校にて「下水処理のしくみ」出前授業
7月 13 日、ハノイ日本人学校4年生(40 名)を対象
に、下水処理のしくみと役割について社会科の出前授
業と見学が行われました。出前授業を実施したのは、
若公崇敏 JICA 専門家(越建設省、下水道政策アドバイ
ザー)、桂井太郎企画調査員、笠原久美子事務所員。
国土交通省の小学生向けワークショップ教材「うんち
大研究!下水道ワークショップ~うんちはどこからや
ってきてどこへ行くの?~」をハノイ版の教材として
再構成し、ウンディ探検隊(若公専門家、桂井企画調
査員)が、子供達と共に「食べ物」「体」「排水と処
理」について、クイズに挑戦しながら下水道や水・資
源の循環について学ぶという参加型授業です。子供達
にとっては、排泄物・水が処理される過程を学ぶだけ
ではなく、日本とは異なり、ハノイの下水道処理施設
が未整備であるため、近辺の河川の汚染状況が深刻で
あること、さらに日本がベトナムに協力する理由も知
り、新しい発見で一杯でした。
授業の後、有償資金協力事業による北タンロン下水
処理場も見学し、下水処理の仕組みだけでなく、日本
の協力の現場を学ぶ良い機会となりました。これか
らも、ベトナムに在住する日本の子供達に、日本の
ODA 事業を通じて日越の関係を考えるきっかけを提
供できればと考えます。
OJT紹介
東南アジア第三課の井戸翔太郎と申します。ベトナ
ム事務所にて、三か月間研修をさせて頂きます。本部
ではベトナムの道路セクターを担当しています。学生
時代は法学部に所属し、JICA の法整備支援の一環で日
本に来た留学生の生活支援や交流を行うサークルで活
動していました。JICA を知ったのもこのサークルを通
じて法整備支援に触れたことがきっかけでした。本研
修では法・司法制度改革の活動も予定されており、私
の原点ともいえる事業をしっかりと学びたいと思いま
す。また円借款など本部で担当している業務の実際の
現場へ足を運び、本部からは見えない現場の様子や声
を理解できればと思います。どうぞ宜しくお願い致し
ます。
ベトナム事務所
2016年度入構、OJTでベトナム事務所に派遣中の村
上雅子です。本部では評価部に配属しているため、
OJT中は「ビズップヌイバ国立公園管理能力強化プロ
ジェクト」の内部評価にミッションリーダーとして携
わる予定です。他にも、「北西部省医療サービス強化
プロジェクト」業務補助や、青年海外協力隊、草の根
パートナー事業同行などを通し、ベトナムにおける多
様な案件に携わり、実際に現場で働くJICA関係者の案
件に対する視点・姿勢、カウンターパートとの関係づ
くりを体感・考察する予定です。また、現地の人との
関わりも大切にし、将来、JICA職員として多様なステ
ークホルダーの意見をバランスよく考慮し、人間中心
の国際協力に貢献できる人材になるよう努力します。
次長紹介
山本
私の担当業務は、PR(広報)、警察関連(公安省、海
上警察等)案件形成・管理、防災関連案件形成・管理、
汚職防止(全案件共通)、事務所内風紀委員長です。こ
の中で、最近、最も力を入れているのが PR です。
昨年は、一般国民を主眼とした「一般広報」とオピニ
オン・リーダーや専門媒体を活用した「専門広報」に加
えて、新たに、誤解や事実に基づかない批判記事に対し
て正しい理解および事実に基づく報告がなされるよう対
応する「ネガティブ対応」の3トラックアプローチに基
づき、戦略的に広報を実施しました。特に、「ネガティブ
対応」においては、透明性、正確性、迅速性を基本と
し、メディアを問わず日本の ODA に関して Negative ある
いは誤った理解に基づく記事が掲載されれば、直ちに、
FACT の提供を行い、いつでも自由に討論できるようして
きましたし、当該メディアのトップとも意見交換を繰り
返し、誤報に対しては、訂正記事を書いてもらうべく活
動しました。並行して、度々取り上げられる日本の ODA
への誤解・風評(日本の ODA は 100%タイド、日本企業し
か受注できない、高いなど)に対し、正しい日本の ODA
の理解促進を目的としたパンフレットの作成などを行っ
てきました。これを2年も続けてきた成果もあり、今で
は日本の ODA に対する批判記事は激減しています。
以上に対し、今年の PR は Enjoy Together & Human
story が基本です。メディアのリポーターが、JICA と一
緒になって ODA 案件を楽しむ、そして案件の広報には必
ず Human story を一緒に紹介するという考えです。
賢一
どんなに立派な橋や空港を見ても、そこに心に触れる
Human story が無ければ、記憶はいつか薄れ、案件の効
果についても実感が困難です。地方の小さな橋を ODA で
架橋し、その結果今まで遠くて通えなかった学校に毎日
通えるようになったとか、都市鉄道や高速道路が出来た
お陰で、年に一度しか帰省しなかったお父さんが毎週末
家 に 帰 って き てく れ るよう に な った 、 とい う ような
Human story が案件を身近に感じさせるのです。
現在、検討中の広報活動の一つに、地方の小規模な案
件の紹介があります。地元の小学生をプロジェクトサイ
トへ招待して絵を描いてもらうコンテストを実施し、優
秀な生徒には JICA から記念品を贈ります。そこにレポ
ー タ ー を招 待 して 、 メディ ア で 宣伝 し ても ら います
(Enjoy Together)。小さなイベントですが、子供たち
の心には日本の協力と JICA の名前がしっかり根付くは
ずです。
これは一例にすぎませんが、プロジェクトの現場には
知られざる Human Story が山ほどあるはずです。これら
のエピソードを一つでも多く発掘し、紹介することで、
日本の協力をベトナム国民に知らしめるだけでなく、ベ
トナム国民のプロジェクトへの理解・協力にもつながる
よう、引き続き「Enjoy」しつつ広報して参ります。
JICAベトナム事務所では、本月報を通じて皆様との情報共有を目指しています。ご意見、ご要望がありましたら
[email protected] までお送り下さい。本月報は当事務所のウェブサイト
http://www.jica.go.jp/vietnam/office/others/monthly.htmlに掲載されています。 発行:JICAベトナム事務所 広報班
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