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安土の会社`17 SE 風の音 仮面の男=織田信長、仁王立ち。背後に家老

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安土の会社`17 SE 風の音 仮面の男=織田信長、仁王立ち。背後に家老
安土の会社‘17
SE
風の音
仮面の男=織田信長、仁王立ち。背後に家老柴田修理亮勝家、小姓森蘭丸。
蘭丸
:(携帯電話で話している)わかった。そのまま密集体系で整列させておけ。足軽たちに私語はさせるな。
(切る)上総の介様。わが社の動員可能人員5千名。総員この熱田神宮に集合を完了しました。
信長
:デアルカ。・・・権六、あすこで上がっておる火炎は?
勝家
:はっ、丸根と鷲津の砦で今川との戦端が開かれております。以後当方からの呼び出しにも応じないところ
をみるとあの火の手はおそらく・・・。
信長
:落ちたか。
勝家
:遺憾ながら、左様で。
信長
:蘭丸、経過を報告せい。
蘭丸
:本年度永禄3年、5月12日。今川方駿府を進発。将兵の頭数、公称4万、実数はおそらく2万5千。
ち
り
ふ
5月15日、先鋒部隊が池鯉鮒に出没。翌16日岡崎に本隊到着。17日鳴海、18日沓掛に進出。以
後報告が途絶えております。
信長
:蘭よ、勝てると思うか?
蘭丸
:思います。
信長
:世間ではあのうつけ社長織田上総の介が、4万の軍団を率い上京せんとする東海の帝王、今川の義元
社長に手もなくひねられ、尾張はあえなく一巻の終わりよと声高に噂しておるそうな。
蘭丸
:わたくしは世間なぞ信じませぬ。あんな無責任で節操のないものどもの集合体に真実は見出せませぬ。
わたくしはこの世でただひとり上様をのみ信頼いたしております。
信長
:権六、参謀本部長としてありていに意見を述べよ。このいくさをどうみる。
勝家
:大軍に作戦はないと申します。彼我の戦力差は圧倒的。もしも勝ち目があるとすれば、奇襲のみ。今川
義元殿の首をあげることでござる。だがそれもよほど神がかった幸運がなければ、あの重厚な今川軍にはつ
けこめぬ。まずは索敵ができぬような悪天候でないといかんが、この五月晴れでは・・・。むっ?
SE
:雷鳴、嵐。
勝家
:!!なんと。こんなにも激しいにわか雨が!
蘭丸
:(傘を差しかけ)上様の梅雨将軍というあだ名は伊達ではございませぬな。
勝家
:天に意思があるとしか思えぬ。上総の介様は神なのか。ゴッド社長・・・。
秀吉
:お弁当!お弁当!お弁当~~~!!!(転がり込んでくる)
勝家
:血迷ったか、木下籐吉郎!弁当などいらぬわ!だがチキン南蛮ならば・・・。
秀吉
:上様お弁当でござる!いやさ鬼柴田権六勝家参謀本部長殿、弁当売りではござらぬ。今川義元社長
が全軍を休ませ、お弁当を食っておられた。これぞまさしく千載一遇の好機、奇襲をかけるなら今をおいて
ありえませぬ!
信長
:でかした!ハゲネズミ。
1
みんな
:グッジョブ。
秀吉
:やった!上様のお褒めのお言葉 GET。ネイよ、これでまたいい仕事まわしてもらえるぞ。
信長
:場所は?
秀吉
:あすこでござる、えっと、あの、なんとかハザマです・・・カンペイ?すいませんハザマなんとかです。
光秀
:桶狭間でござる。
秀吉
:これは明智十兵衛光秀情報部主任殿。
光秀
:ですぎた真似とは思いましたが、ここいらの土民に変装し、いや~~、貴方が義元さまですか!なんて尊
げな殿上眉だろう。貴方が上洛してくださるおかげで間違いなく天下泰平っすよ。織田とか屁です。ヘリウ
ムです。ヘリコバクター・ピロリです。うれしさのあまりうちで作ってる高級な明太子を大量にさしあげます。戦
国時代のこととて冷蔵庫ありませんから今食べてください。てなかんじで今川方へ戦勝祝いの酒肴を大量
に献上し、織田の本体は尾張で篭城してるとガセネタをつかませ、真昼間から戦争勝利のどんちゃん騒ぎ
をするようしむけました。ほらほら、飲んで飲んでゴクゴク。初体験話がしたくなってきた~~。俺のドキドキ
サマーエクスペアリアンスを聞いておくれ。春吉のタチンボのおばちゃんだったんだけどさ。なんか渥美清に似
てるのよね。眉間にホクロがあってさ。パ~パラララララ~(寅さんテーマ)さあ、お兄さんどうしたんだい?お
兄さんの怒張したキノコを見せてごらんよ。おや、毒キノコだ。なんだいこの水玉模様・・・。お兄さん童貞な
のに性病にかかったのかい?悲惨だねぇ。もう飲まなきゃやってらんないっての。飲んで飲んで~♪ってな感
じで全員グデングデンに酩酊させてまいりました。時は今!
信長
:あめぞしたしるゆうべかな。でかした、光秀。
光秀
:はっ、お言葉かたじけのうござる。
信長
:皆のもの、わが社の前途の邪魔をする今川は密集状態で狭い桶狭間に本隊がおる。天佑としか言いよ
うのないこの風がわれらの足音を消し、雨がやつらの視界を遮る。風林火山の旗印を揚げよ!
蘭丸
:殿、キャラが違います。それは甲州の武田信玄です。
秀吉
:なるほど、酔っ払って判断能力の落ちた今川方をさらにパニックに陥らせえるための策でございますな。
信長
:あのにっくき今川義元を、福岡吉本のように奈落の底へたたっこんでくれる。
光秀
:それはいくらなんでもひどすぎるのでは・・・。
信長
:人間 50 年、化転のうちをくらぶれば、夢幻のごとくなりじゃ。ものども、人間一回死ねば二度とは死なぬ。
安心して死ね。さてこそ、名を上げ家を興すはこの一戦にあるぞ。命のいらんやつだけついて来い。わしと共
に駆けよ。
全員
:お供!
信長
:抜け!(全員抜刀)ふるえや!ムジーク!
BGM
「恋愛レボリューション21」
信長
:行こかハライソ戻ろか尾張ここが思案の桶狭間。目標は義元の首、一直線ぞ。雑魚キャラには目もくれ
るな。名のある将軍を倒したとて、首は取るな。ひたすらに義元を目指せ!目先の功名なぞ捨てて走れ。
(今川軍との接触、激戦。義元の首、晒される。途中丹羽課長が死んだりする。)
蘭丸
:敵将今川義元殿の首級をあげました。ミッション・コンプリートです。
2
信長
:これでわが道をさえぎる悪は滅んだ。わしはこの世界にはびこる全ての無意味な権威とシステムを叩き潰
し、合理的で自由な世界を作り上げるのだ。第六天魔王としてな。いやさ、天竺の破壊神、シヴァとおき
かえても良かろう。ハゲネズミよ、お前は此度の戦功により、草履取りから足軽のバイト君のリーダに取り立
ててやる。
秀吉
:はっ!やります!マンモスうれP~♪ウッヒョ~♪やったぜ!ネイ。出世したぞ!今夜はお祝いパーテーだ。
勝家
:チッ、ゾウリムシめ、ナマイキな。
信長
:明智光秀よ、そなたは最もようやった。天下布武の途上、いずれは九州攻めとなろう。そのとき民衆に親
これとう
しまれ尊敬を受け円滑なる統治をなすため、九州の名族、維任の姓を名乗れ。官位は日向の守。
光秀
:はっ、光栄至極。これより以後維任情報部長日向守光秀と名乗り、その名に恥じぬよう励みまする。
信長
:権の官位は修理亮じゃ。
勝家
:はっ。心得ました。柴田参謀本部長修理亮勝家でござるな。
信長
:そなたは・・・。
蘭丸
:私はただの森第一秘書蘭丸で結構です。
信長
:デアルカ。以上だ。(去る)
光秀
:しかし丹羽総務課長長秀殿が戦死なさったのは痛いな。あらゆる業務に精通なさり、痒いところに手が
届く孫の手のような方だったのに。おお、柴田本部長にとっては比翼の友というべき長い付き合いの方であ
りましたな。丁重にお弔いもうさねば。
勝家
:戦場での生き死には武士のならい。感傷など栓もなきことよ。それより総務課長の穴埋めをするのが火急
の仕事。
秀吉
:馬鹿な!丹羽殿はこんな草履取りの私にまで、何か不足はないか?と気安くお声をかけてくださるような
同僚にも部下にも親しまれていらっしゃった立派なお方。そんな紳士が殉職なされば会社をあげて立派な
お葬式を出し、供養をさせていただくのが筋、でなければこの籐吉の義理が立ちませぬ。
勝家
:口はばったいことを言うな、エテ公め!今は戦国の世ぞ。この果て無き戦乱が平和へと向かうまでは夥し
い生命が軍神の血祭りにあげられ、勇者の血がこの大地に、海にとめどもなく吸い込まれるのだ。新たな
時代をその手で作ろうと思えば、代償は常に生命だ。貴様もその覚悟があってわが社に入社したのだろう
が。明日は我が身なればこそ、葬儀など無駄だというのだ。
秀吉
:しかし、それでもわたしは・・・。
勝家
:くどい。わしは参謀本部に帰投するぞ。これは歴史に残るあざやかで偉大な勝利であったが、織田社長の、
いやさわが社の天下布武という大いなる覇業の中のほんのイントロダクションにすぎん。(去る)
光秀
:木下さん。あなたの考えはまちがっていませんよ。こんな時代だからこそ、大切なものもあるのです。おっと、
こうしちゃいられない。私も次の作戦が待っています。情報部に戻ります。チャオ!(去る)
蘭丸
:わが社はいずれ大いなる栄光を掴むでありましょう。ですがその成功も栄誉も、こうして命がけで戦ってこら
れた数多の英霊たちの奮闘の上にあるのです。今は何も捧げられるものはありませんが、この花を総務課
長に。では失礼します。
秀吉
:ちょっと待ってください。
蘭丸
:なんでしょうか?お猿さん。いやさ・・・籐吉郎さん。
3
秀吉
:ウキッ!失礼ですが、あなたの性別なんですが・・・女性ですか?それとも男性?それとも特殊な設定?
蘭丸
:それはね、企業秘密です。(婉然と笑って去る)
秀吉
:あ、ちょっと待ってくださいよ。俺、足軽のバイトリーダになったんで、社宅とか保健を・・・。(去る、暗転)
BGM
「ダンスはうまく踊れない」井上陽水
飲み屋街の明かり、酒ビン持って男ダンスを踊っている。微妙なステップ。名を長田秀之という。時代は現
代。
長秀
:ふふふ、リストラされちまった。ダンスはうまく踊れない。だが、仕事はけっしてできない方じゃないのに。ちよっ
と回想でもするか。
社長(声):長田君。
長秀
:はい。(珍妙なステップで一回転してキメポーズ。
社長(声):キミはクビだ。
長秀
:ええっ!そそそそそんな!なんで?
社長(声):そんなふざけた社員はいらん。ていうか、この不況だ。我社も無用な社員は整理せねばな。ホレ、辞令だ。
長田秀之、右のものを解雇す。平成17年6月10日付け。長田さんのご健康とご発展をお祈りします。
長秀
:クソッ!世渡りがうまく渡れないからか。それとも人付き合いがうまく付き合えないからか。あ~あ、バブルの
時代に生まれたかったなぁ。しかも6月10日はしげさんの誕生日だってえのに。ん?これ何だろう?(なんか
変な人形を発見する)遺跡でもあるまいに、しかし小汚い人形だなぁ、元のとこに埋めとこう。まぁ、いい。
帰ってゲームでもやるか・・・。下級生2とか。らいむいろ戦記譚とか・・・。その前にもよおしてきたわい。ちょっ
くら失礼して、シッコさせていただこうかな。ジーっと、チャックあけて・・・。ハ~~~キモチ E~~~。やっぱこ
れからの時代は尿だよな・・・。うわっ!なんで?さっきまで星が見えてたのに。
SE
大雨、さらに轟く雷鳴が空気を引き裂く。長秀に直撃。
長秀
:ギャース!!マジで!?・・・まるでリングにかけろの全日本 Jr.石松のハリケーン・ボルトを食らったような衝
撃だ・・・。明日の新聞の 23 面が見える・・・紙面の 32 分の1のスペースに無職の長田秀之さん(27歳)
落雷にあたって死亡・・・。なんてついてないんだ。せめて昨日なら会社員長田さん(27歳)の死亡記事だ
ったのに!クッソ~~!親父、母ちゃんごめんな。世間体悪くて・・・。
課長(声):お~い。長田。
長秀
:あっ!課長!たったすけてください!長田大ピンチです!
課長(声):おまえの席片付けといたから。これ忘れものだ。水鉄砲な。会社は遊び場じゃないんだから頼むぜよ。てい
うかクビになったお前に言ってもしゃーないな。じゃ、元気でやれよ。
長秀
:あ、ちょちょちょっと待ってくださいよ。課長、俺の話聞いてくださいよ。課長、課長、困ってるんですって、課
長~~~~!!!
――溶暗。再び明かりがつくと戦国時代。周囲を取り囲んでいる、秀吉、勝家、光秀、家康、蘭丸。――
4
長秀
:課長!課長・・・。(突付かれたりしてがばっと)ここは何処?あなたは誰?ああっ頭が痛いっ。
勝家
:ここは会社だ。
秀吉
:俺たちは社員だ。
長秀
:会社!・・・戻れたんだ!やっぱりね、そうだよね。まさか 20 代でリストラされるなんて、ありえないもん。しか
し目の前真っ暗になったよ。いくら喝入れだって、ちょっとやりすぎ・・・ていうか知らない人たちですね。
蘭丸
:少しお静かに。今は取り込み中です。
長秀
:あ、どうかしたんですか?(長秀以外集まってボソボソ話)
光秀
:しかしタイミング良すぎ。織田社長兼右大臣が消えたと同時にあの男が・・・。
秀吉
:社長と入れ替わったがごとく雷の中から現れてきましたからな。
家康
:ならばあれが織田の兄上のマスクを取った姿・・・っていうか本人なのだろうか。
蘭丸
:どうなのかしら。
秀吉
:いやいや、まさかあれほどのキレ者社長織田信長様の素顔があんな間抜け面ってのはないっしょ。
勝家
:しかし解せぬ。各地でアンチ織田の大同盟を破りさり、ついに京都を押さえ、政治家としても正2位右大
う
ふ
臣こと右府の地位にまで上り詰められた。日本国でわが社の武威になびかぬ所といえば、もはや中国と四
国、そして九州のみ。その攻略も時間の問題だというのに、なぜ今行方をくらます必要などあるのか。
秀吉
:試されているのではないでしょうか?
勝家
:社長にか?
秀吉
:ええ、こういうわが社の危機に、我ら社員はバラバラになってしまうのか。それとも一致団結、一丸となってピ
ンチを切り抜けられるのかを、襖の隙間からじっと観察してる織田社長。
蘭丸
:織田右府様は市原悦子演じる家政婦石崎秋子でもないし、これは土曜ワイド劇場でもありません。
家康
:アンチ織田の勢力に拉致された線はございますまいか?
勝家
:宿所本能寺の警固は完璧であった。蟻の子一匹通しはせん。昨夜はわが社のセコム課の者を総動員し
てござった。警戒線をくぐろうとした蟻を 45 匹、カマドウマを 3 匹、その他虫約 3000 匹をエリミネートした。
秀吉
:おっと、あっしの 3 億 6 千万匹の虫も殺されかねねえ!グヘヘヘヘヘ。
勝家
:ボグシャー。
秀吉
:ぐえええ!
勝家
:冗談を言える状況か。ともあれ、徳川三河守家康殿、全国に名を轟かす貴社の忍者部長服部半蔵殿
といえども、あの鉄壁の警固はかいくぐれますまい。
秀吉
:ニンニン。
勝家
:ニンニンって言う・・・(蘭丸がさえぎって)
蘭丸
:ニンニン言うな!
秀吉
:はっ!
家康
:さもありなん。だがそれほど厳重に警戒された本能寺の宿所から、なぜ兄上は忽然と姿を消すことができ
たのか・・・。
勝家
:本能寺の庭に落雷がござってな。幸い怪我人はでなんだが、右府様のもとへも安全確認に参ったのでご
ざるが・・・。
5
家康
:兄上のお部屋はもぬけのからであったと。
光秀
:そこに降って沸いたように現れたあの男。
長秀
:ふむふむ、要するにその社長の織田右府って人が失踪したんだね。
勝家
:な!キサマなぜそれを!
長秀
:さっきから高らかにそう話してたじゃん。っていうかさ、なんか悪いこととかしちゃってて、ばれそうになって逃げち
ゃったのかもよ。うちの経理課長もやらかしちゃってさ。女に会社のカネ貢いじゃって、神戸に逃げたんだけど
大震災にあって、命からがら北海道奥尻島に逃げたんだって、するとふたたび震災にあって津波にあって、
さらに新潟に逃げたらみたび震災にあって。でスマトラに逃げたらフォース震災プラス津波。で福岡に舞い戻
った所でフィフス震災にあって、クエイクの呪文が使える課長ってちょっと都市伝説になったりならなかったりし
てね。
光秀
:全然意味わかんねえよ。
全員
:キチガイだよ。しゃべっちゃだめ、うわっ、こっち見た。目みちゃ駄目。キモっ・・・云々。
長秀
:うわっ、ショック・・・幼稚園から大学院まで、ずっとヒッキーで通してきて、やっと社会復帰できたのに、リスト
ラされるわ、キモがられるわ・・・。頭から心へ緊急連絡。心のレインボーブリッジを封鎖せよ。ガチャ・・・。ヒ
キコモロヲって芸名にしようかな。
秀吉
:やはり、コイツが社長ってのはありえねえな。
家康
:ヤツはどうしますか?
勝家
:怪しいのには間違いないからあとで拷問しましょう。この状況について、他の意見はござらぬか?・・・日向
守光秀殿はどうじゃ?
光秀
:はい・・・言いにくいことではありますが、わが社もほぼ国内の統一を終え、天下布武の事業は最終段階に
入ってきました。こうなると巨大な組織としては、不要な人間が出てきます。まずは無能者のリストラ、そし
て戦いの時代が終わり、政治が安定期に入る段階になれば社長の抵抗勢力となりうる、派閥を作れるよ
うな実力者が排除されてゆく。でかい手柄を立て、カリスマ性を持った社員ならばなおさら社長の目の上の
タンコブとなる。中国では BC202漢の建国後、功臣が次々粛清されました。これが歴史の宿命です。既
にわが社でも佐久間殿をはじめ、数名の重役がリストラされました。しかしこれ以上右府様が自らその手を
汚すのは面白くない。わが社のお歴々も一枚岩とは言いがたい関係。右府様がいなくなれば、おそらく権
力闘争が起こり、重役たちは潰しあい、自滅してゆかれるでしょう。
秀吉
ろう
:馬鹿な、右府様はそんな卑劣な策を弄する方ではない!第一そんな事をすればわが社の屋台骨はガタ
ガタになっしまうではありませんか。天下統一の一歩手前でそのような愚挙はありえない。
光秀
おそ
:しかし、いくら功績のあったものでも、いやさ手柄の大きかったものほど、この粛清への懼れはぬぐえないでし
ょう?
全員
:(しばし沈黙)
蘭丸
:憶測でいくらものを言ってもはじまらない。ここは実証的に現場検証をしてはいかがでしょう。
勝家
:そうだな、まずは社長に戻ってきていただくのが何より先決。本能寺庭園への落雷の折、一緒におられた
維任日向守殿。
光秀
:そうですな、あの落雷の直前、私と秘密会議をなさっておった右府様は尿意をもよおされた。そしてここら
6
でこうイチモツを露出なされて、ここらに勢い良く黄金水をジョパーっと・・・あ~~キモチエエ。
――――その瞬間雷鳴―――――
光秀
:ぐわぁぁぁぁ!(くるくる回りながら掃ける)
秀吉
:な!光秀殿!!
勝家
:なんという不可思議な・・・。これが超常現象というものか、たれぞ学研のムーか、グラフィック・サイエンス・マ
ガジン、ニュートンを持ってまいれ!
家康
:むっ、維任日向守殿の放尿の跡に、これが埋まってござるぞ。(変な人形掘り出す)
秀吉
:これは・・・、呪いの人形でごろうか?なんか不気味悪いものでござるな。
長秀
:あっ!それおれがしっこかけた人形やん。そしたらいきなり雷が落ちてきて・・・今に至る。
家康
:・・・なればこれに尿をかけると、兄上や日向守殿の後を追えるのではあんみゃあか?よし、さっそくかけてみ
ましょう。
蘭丸
:おやめなされ三河守殿。あなたはわが安土天下布武社にとって二無き貴重な提携会社、三河政治経
済軍事行政代行社、通称三河屋さんの社長さんです。おいそれとそのような危険を冒してはなりませぬ。
家康
:いやいや、わが三河屋にとって、兄上は神も同然の方でござれば、この三河屋地獄へまでもお供いたす。
ジョパ~~~は~~きもちんよか~。
――――雷鳴――――
家康
:うわぁあぁぁぁあぁぁあ!!(くるくる去る)
秀吉
:われらも追おう!
勝家
:待て、踏みとどまる勇気。我らまでいなくなったら、会社は動かなくなるぞ。ここは日向守と三河守殿を信
頼して、その帰参を待つべきだ。
蘭丸
:その通りでございますな。さすがは柴田参謀本部長。すぐさまプロジェクト・チームを結成して、この人形を
調べさせましょう。
秀吉
:くっ、右府様のためにも、今は仕方ありませぬな。この男はいかがいたしましょう。
勝家
:重要参考人として拷問するつもりだが。
長秀
:マジで?うわ、凹む・・・。
秀吉
:いや、お待ちください。少し私に考えがござれば、この者お預けいただきたく。
勝家
:ふむ・・・よかろう。のちほど尋問の折は呼び出すゆえ、それまで面倒をみてやれい。(去る)
秀吉
:承った。
蘭丸
:では何か動きがあれば即座に緊急対策会議を再開いたしましょう。(去る)
秀吉
:分かり申した。・・・おい、なんとか君、帰ってメシでも食おうや。
長秀
:だっておれ・・・。拷問されるし。
秀吉
:しないように計らうから、ネ。俺の直感だとキミ、なんかあるよね。話きかせてくれよ。
長秀
:だって俺、すごい場違いな雰囲気だし。無職だし。将来不安だし。
秀吉
:場合によってはなんか仕事やるから、気に病むなって。
7
長秀
:え?!マジっすか!やったぁ!いくいく、どこでもついていきますよ。
秀吉
:よしよし。ついてこい。
BGM
お茶の宣伝の曲
秀吉
:ていうかここがおれんちな。今帰ったぞ~。
ネイ
秀吉
:おかえりなさい。
:これが嫁のネイ、こっちは新人の長田秀之君だ、フルネームで呼ぶのもしゃらくさいから、長秀君って呼ぼう。
リストラされて、拷問されそうになってた所を連れてきた。
長秀
ネイ
:長秀です。よろしくお願いします。
:よろしくね~、じゃ長秀部屋用意しとくね。疲れたでしょ。はいお茶。長秀さんも。
長秀
:ありがとございます。
秀吉
:サンキュ。気が利くじゃん、ゴクゴク。うめ~、これ何茶?
ネイ
二人
ネイ
:トリカブト茶。
:ブフォッ!!それ猛毒やん。死ぬやん。
:大丈夫よ、うまく調合したから。ふぐと同じでね、毒の部分をうまくさばいたらすごい美味しいんだから。茶の
湯マニアのあんたにうってつけでしょ。それから滋養強壮にもいいのよ。漢方薬でも使うんだから。あんたは過
酷な仕事してるんだから、身体に気を使わないとね。
長秀
:なるほど、過酷なサラリーマンの奥さんに相応しい内助の功だ。いい奥さんもらいましたね~。
ネイ
:エヘッ♪
二人
:ムカッ。
ネイ
秀吉
:だってあたしのために一所懸命に働いてくれてるんだし、ね~あんた。
:あんたはやめれ。低所得者特有の所帯くささが臭ってきそうだ。おなごはもっと優雅じゃないとでけん。あな
た、若しくはダーリンって呼べよ。
ネイ
:絶対イヤ。ダーリンって顔じゃないじゃない。あんたはあんたって顔してんのよ。ていうか悲しい程にこの貧乏
長屋に相応しい言葉じゃなくて。あんた。
秀吉
:ダーリンをないがしろにすんな!確かに今はしがないボロ社宅の貧乏長屋住まいだがな、この先俺たちは
ハイソでセレブな生活をおくることになるんだぞ?ジャーン!見ろ見ろ!この辞令!オラとうとう今日から課
長に昇進したぞ。ネイ、お前の下着も今日よりセシールからワコールにグレードアップだ。
ネイ
秀吉
ネイ
:あら、おめでとう。
:パーテーだ、パーテー!にぎやかにやろうぜ。赤飯炊け、ビールかけじゃ、近所や親類のもん集めろ♪
:あんた面倒見がいいのはいいけど、そのまつり好きっていうか、浪費癖大概にしなさいよ。ケチは言いたくない
けど、ウチも火の車でやりくり大変なのよ。
秀吉
:バカ、これは必要経費だよ。こういう楽しい時間を重ねてこそ、過酷な仕事の中部下と心を一つにできる
んじゃないか。長秀。つうわけで今日からおまえうちの若い衆集団、「WASB」のメンツの仲間入りだ。
長秀
:WASB って何?WASP なら知ってるけど。ホワイト・アングロ・サクソン・プロテスタント。
秀吉
:ワカイ・シュー・ブッキョートだ。典型的なヤングの日本人な。歌って踊れて戦争ができて、政治ができる集
8
団さ。ジャニーズと自民党を足したようなイメージかな。
長秀
:どうも。よろしく。WASB の長田メンバーです。
秀吉
:自分ちと思って好き放題寛いでくれ、もう、ズボンとかさっさと脱げよ。パンツ一丁でうろついてかまわんぞ。
ネイ
秀吉
ネイ
:ちょっと、レディがいること忘れないでよね。
:レディなんてガラじゃねえだろ。この御徒町め!
:何それ?おかちめんこってこと?キー!!このクソザルめ!あんたなんかラッキョの皮を死ぬまで剥いてりゃい
いのよ。このエテキング!
秀吉
ネイ
:ムッキー!死ぬまで続けるのは別のことなんだよ、この巨乳 B カップめ!ボイン・クイーンめ!
:なんですって?韻を踏めば良いってもんじゃないのよ、この大きめの小人め!
長秀
:うわ、いたたまれねえ。やめてくれ~。
秀吉
: で も そ こ が い い 。
ネイ
秀吉
ネイ
:あたしもそこに惚れたのかも。
:今日はおみやげにパット買ってきたんだ。クラゲの頭のようにフィットするんだぜ。ぜひ装着してくれよ。
:わっ、うれしー。丁度谷間作りたかったんだ。あたしもあんたのためにビガーパンツとシークレットブーツ買っとい
たよ。古着だけど。
秀吉
ネイ
:うわ。ビンテージ・ビガーじゃん。ブーツも納豆みたいな匂いが。センキュ♪さすが愛妻。グフグフグフグフ。
:ウフウフウフウフ。
長秀
:うげっ、さっきとは別の気持ちででいたたまれねえ。何これ?いちゃついてんの?
秀吉
:ネイ。俺は生まれついた身分は超低かった。生きるため乞食もしたし、漫才師までやっていた。けどな、信
長様に、右府様にお仕えして、人がましい生活をさせてもらい会社でも中間管理職のポストをもらった。俺
のチカラをかっていただけたんだ。右府様は実力さえあれば家柄も過去も関係なく抜擢してくださる。乱世
とはいえ、その実力主義は徹底している。今まで勤めた会社はどこも俺の卑しい出自と愉快な外見から、
ショボイ仕事しかもらえなかった。その俺がこの安土天下布武社でなら、働き次第では重役も夢ではない。
そしたらお前にも良い暮らしさせてやれる。迷惑かけてきたおっかあにも存分に孝行できる。骨が粉になって
も、カルボーンのように働くつもりだ。ネイにも苦労をかけるが、宜しく頼む。
長秀
ネイ
:うおっ、夢を語ったよ。しかも熱い。
:それがダーリンの夢なら仕方ないね。手伝うよ。でもさ、覚えといてね。あたしにとっての良い暮らしは贅沢な
暮らしじゃないのよ。
秀吉
:カネで買えないものだろ。分かってるさ。俺たちは上り詰めようじゃないか。どこまでもどこまでも。よし、また
一段とやるきになってきたぞ。明日も一番で出社だ。さっさと寝るぞ。おやすみ!(皆寝る)
ネイ
:あんたがね、一緒にいてくれたらそれで・・・。
長秀
:コケコッコー!
秀吉
:お、もう朝か。
長秀
:寝言です。
秀吉
:それも寝言か?
長秀
:寝言です。
9
秀吉
ネイ
長秀
ネイ
秀吉
ネイ
:これも寝言だ。
:うるさいな。寝言は寝て言いなさいよ。
:それも寝言?
:寝言。
:うるさいな。寝言いわずに寝ろよ。
:それも寝言でしょ。
秀吉
:うん、寝言。
長秀
:メールが来てるよ。
ネイ
:それも寝言?
長秀
:いや熊のぷーさんの着メロ。ていうか着声。
秀吉
:だから寝言なんだろ?
長秀
:うんにゃ。マジマジ。メールの着声。
秀吉
:でもお前の声だったじゃん。
長秀
:なんつうか、演技だけど、芝居の中ではリアルの出来事。少なくとも寝言じゃない。
秀吉
:じゃ、重要なイベントだな。
長秀
:多分ね。
秀吉
:じゃ仕方ねえな。見てみるか。こんな時間に誰だよ全く。素破!今すぐ安土城へいくぞ!WASB も来い。
ネイ
秀吉
:何?緊急招集?いつもならホラ貝がブォーブォー鳴るのに。
:右府様からのメールだ。木下籐吉郎、右の者を行政部部長に任じ、筑前の守に任官する。姓も羽柴と
改め、羽柴行政部長、筑前の守秀吉とする。
長秀
:課長から部長への出世おめでとう!なら、失踪してた信長公が見つかったんですね。
秀吉
:わからんが、こうしちゃおれん。すぐ出社だ!(3人ムーンウォークで下がり、ネイ去る。勝家と蘭丸出てくる)
勝家
:ふむ、来たかゾウリムシ、いやさ猿。
秀吉
:修理亮殿、俺も軍隊で言えば将校級の身、いつまでもモンキッキ呼ばわりはおやめいただきたい。
勝家
:ほう、モンキッキも人並みな口をきくようになったな。いっちょ身の程を教えてやろうか。
長秀
:そんなことでもめてる場合じゃないっすよ。信長公からメールがきたんですよ。
勝家
:ムゥ、おまえらにもきたのか。
長秀
:というと貴方方にも?
勝家
:きた。
蘭丸
:きた。
秀吉
:内容は?
勝家
:わしは常務取締り役任命。
ネイ
秀吉
ネイ
秀吉
:わたしはパートでお茶くみするようにって。
:えっ!ネイ、なんで?
:家に一人でいるのも寂しいからさ。パートの募集に申し込んでたんだ。
:なんで?今はそこそこ俺の収入もあがったんだし、お前は専業主婦として家事全般と居候の世話を。
10
ネイ
蘭丸
:それにこうすればいつもそばにいられるじゃん。
:ゴホン、静粛に。私には少々長い命令書が貼付されてきました。前略、中略。よって中国地方は猿があ
たるべし、甲州と北陸は権六。尚長島の一向一揆は長秀に抑えさせるべし。
全員
:!
長秀
:なんで俺がいきなり・・・しかも一向一揆の鎮圧って難しそうだし。ていうか信長公はどこにいらっしゃるんで
す?俺のことご存知なんだから、今はもう会社か、ここんにきおんなはーとでしょ?
蘭丸
:上様はいまだ戻られておりません。
長秀
:なんか放浪癖のある社長さんなんですか?放浪記の主人公とか。
蘭丸
:お若い頃は知らず、今は社長なくてはわが社は回りません。ご存知のようにわが安土社は日本64州のう
ち、既に42州をその勢力下に収めています。その全土に対する行政及び立法、さらには民事、刑事、軍
事裁判を全てお一人で決裁なさっています。売れっ子アイドル真っ青の殺人的スケジュールをかいくぐって
放浪することなど、いくら上様とてできはしますまい。
ネイ
蘭丸
:じゃ、メールは贋物とか。
:いえ本物です。なぜなら社長から私へのメールはトップ・シークレットのものも多く、社長しかご存じないパス
ワードを入れないと自動的に受信拒否されるのです。それをクリヤしたということは。
勝家
:本物ということだな。フム。面白い、この謎解きはゴンロック・ホームズという異名をとるわしに任せよ!
秀吉
:え?そんな異名あったの?鬼って異名しか知らなかった。
蘭丸
:初めて聞いた。今作ったんじゃない?
勝家
:まず!状況の整理だ。・・・・・・無理。
全員
:ガックン。
勝家
:ぬおっ、頭痛くなってきた。ちょっと休む。誰かまとめサイト作ってくれ。
蘭丸
:仕方ないなぁ。じゃ代わりにまとめます。まず安土天下布武社が全国を制覇する直前織田社長が失踪
しました。社員の私たちは必死で捜索していますが、未だ行方はしれません。唯一の遺留品はあのキモイ
人形で、あれに尿をかけた日向の守殿と三河の守殿も雷鳴と共に忽然と消えました。その不可解なメカニ
ズムはまだ何も解析されておりません。状況から考えられることは、①拉致、誘拐された。②事故に巻き込
まれた。③何か考えがあって自らいなくなられた。④神隠しにあった。何か情報をお持ちの方がいらっしゃい
ましたらこちらのアドレスにメールをください。有力な情報には懸賞金を差し上げます。
秀吉
:さすが我が安土社きっての有能な秘書蘭丸だ。迅速な仕事だぜ。
長秀
:あと信長公の写真か似顔絵もアップしといたほうがいいんじゃない?俺会ったことないし。
秀吉
:マスクの写真しかないよね。
蘭丸
:ない。
長秀
:なんでマスク?シャー・アズナブル的な存在なの?それともオペラ座の怪人かしら。
ネイ
:あたしたち家臣のおなご衆の間ではマスクの下はすごいイケメンだって噂あるのよ。頭もいいし、実行力もあ
って、すごいカリスマなんだから。
勝家
きっ ぽ う し
:右府様の素顔を知っているものは誰もおらんのだ。右府様が幼名吉法師と名乗っておられた時代からお
仕えしておったわしですらな。
11
長秀
:子供の頃からマスク?
勝家
:赤子の頃からじゃ。
長秀
:え?それってがーば虐待やん。
勝家
:然り。虐待じゃ。右府様の実の母君、土田御前というお方はちょっとヒステリックでサデスチックな性癖の持
ち主でな。吉法師様を産み落とされた瞬間から吉法師様を毛嫌いあそばしてな。顔も見たくないとマスク
を装着なさったのじゃ。
ネイ
:お可哀相!なんてこと。
長秀
:鬼母!電話だ、すぐ相談しなくちゃ。みのさん!みのさ~~~ん!!はよせな。
秀吉
:みのもんたはこの時代にはいないから。
長秀
:そげんな。
秀吉
:あと時々なまってるのはどこの言葉?
長秀
:武雄弁です。
秀吉
:なるほど、道理で温泉くさいと思った。
勝家
:ボキッ。くおお・・・。
秀吉
:あっ、話の腰が折れた、整骨医!
蘭丸
:ゴキッ。
勝家
:それで虐待されておった吉法師様はな。
長秀
:よし、戻った。
勝家
:むしろそのマスクは自分が可愛がられてる証と思われたのじゃ。こんなカコイイマスクを装着させてもらえるの
は、ボクが特別な存在だからに違いないと。今ではその吉法師様も織田右大臣信長様。そのとき舐めて
たキャンデーはもちろんウェルタース・オリジナル。なぜなら彼もまた特別な存在だからです。
蘭丸
:その後母君は御弟君の織田長行様を擁立なさり弟くんにお家を相続させようとした。血みどろの合戦の
挙句、最愛の弟信行様の首を信長様御自らの手で・・・斬首。また親戚筋と尾張の縄張りをめぐり、戦
争を重ねまくったはてに、今の安土社の大繁栄があるわけです。
長秀
:親に裏切られ、いきなりアイデンチチーの喪失か。なんか想像できないけど、すごい幼少期を過ごしてきん
しゃったとね。
ネイ
:なんてカッコイイのかしら。カッコワルイイジメをねじ伏せてここまで・・・。お父様のご葬儀に居並ぶ家臣の中、
黙然と進み出て、おもむろに香を掴んでご位牌に投げつけた焼香投げつけ事件とか、その他数々のうつけ
伝説にもそういう裏があったのね。
蘭丸
:その結果、目的の為なら何ものも省みない過酷な人格が出来上がりました。例えば比叡山延暦寺。
勝家
:わはははは、わしは比叡山の僧兵。淫蕩に耽ったり、乱暴しまくったりやりたい放題暴れまくってるぜ!
秀吉
:南無阿弥陀仏。拙僧は徳の高いカリスマ坊主。真面目に修行してるぜ。
ネイ
:オホホホ、あたいはエロ坊主のラマン。比叡山は女人禁制だけどここに囲われてるわ。
長秀
:アハハハハ、おいらは稚児。マイケル・ジャクソンを訴えた子供のように可愛がられてるぜ。
蘭丸
:この破戒僧と売僧どもめ。殺してしまえ!ザクッ。
勝家
:無念!
12
ネイ
:あたしは女だし。
長秀
:おいらは子供だから許して~!
蘭丸
:ならん。殺してしまえ、殺してしまえ。死ねー!
2人
:ギャー!
秀吉
:拙僧は真面目にやってるし、世間の人からも崇拝されてる高僧だから。
蘭丸
:そなたのようなものが、腐った坊主の世界を世間の目から晦ましてるのだ!死ね!
秀吉
:ウギャー!そして腐敗した商業世界のウラで蠢き、甘い汁を吸うアブラムシの如き問屋やダニの如き商工
業者の闇カルテル、悪逆のトラスト座を叩き潰し、清潔な楽市楽座のシステムを作り、商品経済をめざま
しく発展させた。
勝家
:アブラムシ問屋です。
長秀
:ダニ商工業者です。
ネイ
:庶民の主婦です。そこのおくらおいくら?
勝家
:30文だけどわしらの組合の関税込みで300文です。
蘭丸
:死ねー!
長秀
:座やめます。関税いりまへん。楽市楽座にしまひょ。
ネイ
:おくらがお安くなったわ♪
勝家
:不合理なもの、化生のものも憎み、忍者の里伊賀を殲滅したこともあった。
全員
:ニンニン!やめてニンニン!
蘭丸
:殺してしまえ!ザクッ!ズバッ!ドブシュー!
長秀
:伊勢長島の一向一揆では。
蘭丸
:よし、降伏を許そう。武装解除してどこへなりと行くが良い。
全員
:(ゾンビ的に)助かった~。WE ARE ALIVE。
蘭丸
:やれ。
長秀
:ズギューン!ズギューン!
全員
:騙し討ちだ!おのれ!
蘭丸
:時には冷血で狡猾としか言いようがない手段も使われた。そして幼い頃から泥沼のような腐った世界と戦
ってこられた結果、寧ろ腐った世界を破壊することが、3 度の飯よりもお好きという奇妙な性癖になられた。
長秀
:貧弱な都会っ子で弱さに定評のある尾張兵を鉄砲という最新兵器で強化し、その火力は槍や弓矢が主
力だった言わばのどかな時代を葬った。当時の信長の鉄砲所持量は世界でも最大だったと言われる。
秀吉
:なんで未来的な物言いをしている。歴史を俯瞰せず今を生きろ。そうだ、レボリューションだよ。この行き詰
った一部の権力者だけがウハウハする蝿柱がたつようなナマゴミと粗大ゴミをつめこんだゴミ袋のような社会
をひっくり返すんだ。ここでならそれが出来る。右府様が戻っていらっしゃれば!
蘭丸
:社長は勿論のこと、情報部長光秀殿と三河屋社長家康殿が戻ってこないのも困ってるんですけどね。た
だでさえ能力のある人間は少ないんですから。人材不足もここへきて深刻です。
長秀
:ていうか今さら聞きにくいんですけど。
蘭丸
:私の性別等については黙秘します。
13
長秀
:いえ、自分が課長待遇されてる会社でこんなこと聞くのもどうかと思うんですけど。
勝家
:とろくせえな、さっさと言え。
長秀
:ここの会社って何する会社なんですか?
勝家
:・・・モンキー!
秀吉
:英語で言うな。
勝家
:貴様やつに何も教えずに昨夜なにやってたんだ。
秀吉
:ホームパーチーとかをちょっと。
ネイ
:あと寝言いったりとか。
勝家
:なんだと、右府様がいなくなって右往左往してるこの時期に貴様。
長秀
:ウォー!
秀吉
:サォー!
勝家
:(同時にパンチ)ギャラクチカ・なんとか!
長秀
:俺がくらったのは右のフィニッシュ・ブロー、ギャラクチカ・マグナム。
秀吉
:俺がくらったのは左のフィニッシュ・ブロー、ギャラクチカ・ファントム。
ネイ
勝家
:ああ、今続編が出てるあれね。リングにかけろ通称リンカケね。
:しかしジャンプの専属漫画家も続編ばっかしだな。生きるって大変だなって思うよな。そんなことはどうでも
いい!会社の説明だ。いいか、この安土天下布武社はな・・・。うっ、知恵熱が。
蘭丸
:わかりやすくいえば人材派遣会社です。今は戦国の世で、室町の統治体制は崩れに崩れ、守護地頭も
力を失い、群雄割拠で無法がまかり通っていますね。そこに政治、経済、軍事の専門家を派遣して、治
安を維持を請け負う会社です。基本的に政治も経済も軍事も全て一人でやってもらいます。地方行政
官、ローマ帝国でいうディクタトルのようなものですね。実力主義ですから有能な人は待遇も高給ですが、
ものすごく仕事を兼任させられ、全ての能力を搾りつくすように酷使されます。
長秀
:えっ、そんな能力の必要な会社にいるの?
蘭丸
:バイトくんの足軽や、契約社員の下級将校。パートさんの女官さんまで、各種派遣してますけどね。
長秀
:なるほど、食堂のおばちゃんや受付の益田さんも派遣なんですね。
蘭丸
:社風としては、兵隊の乱暴、窃盗、レイプは厳禁で、これを犯すと即座に死刑です。
長秀
:即刻打ち首ですか。
蘭丸
:コロンと落とされます。わが社が管轄して治安が良くなったと歓迎していただける場合が多いですね。
勝家
:市民からの絶大な人気も受けて急激にのしあがり膨張したぶん、各国の同業者から敵視され、常に臨
戦態勢の会社でもある。現に今も・・・。
長秀
:電話がきてるよ。
勝家
:おっとプーさんの着声だ。あ、プーさんって無職って意味ね。はい、参謀本部長の柴田だ。なぬっ!武田が
動いた?!
BGM
全員
Stand by Me ~John Lennon
(慌しく立ち上がり、各自各所に電話する、)
14
蘭丸
:バイト君全員集合かけて。リーダの高井君は?つぶれてるって昨日の飯星さんの送別会の酒?叩き起こ
しなさい。サブのヤマケンは?また寝坊?今月何回目、今すぐ降格させます。後任は山田くんね。倉庫か
ら備品全部出して。火薬と火縄は絶対濡らさないように梱包してね。予定戦場はおそらく長篠あたりです。
しちょう
馬に飼葉を十分与えて。輜重隊のリーダは大村君に。前回のように馬糞で大八車脱輪させないようにね。
大村君には馬が落し物をする都度片付けさせて。情報部は臨時にあたしが指揮をします。斥候を各方
面に出しなさい。甲府の忍とは連絡つきますか?できれば炊き出しのご飯とかに毒を盛れ。井戸に毒も効
果的ね。破壊活動はムリなの?敵の情報部には高名な忍者山本勘介専務がいるから?もしもし?もし
もし?・・・やられたようね。
ネイ
:はい、倉庫から兵糧米だしてください。おにぎり炊き出ししますから。味噌はあわせ味噌を。あ、お隣のおま
つちゃん?あたしあたし、ネイよ。今パートでお城にいるんだけど、すごい緊迫してんのよ。あんたの旦那さん
の利家さんね、第一師団だったよね、前方に配置されるよ。死傷率高そうだから、生命保険の証書確保
しとかないとね。うん、うちも増額したよ。いま 7000 万のに入ってる。今度 1 億にしようかと思ってるんだ。あ、
なんかすごい目で睨まれたから切るね、うんうん、またね~。デブ猫の百貫ちゃんにもよろしくね~。もしもし、
貯蓄米はコシヒカリですか?あたし夢乙女が好きなんですけど。
秀吉
:たっ、武田か・・・ジョワ~~~。(失禁)超コエー。あいつら武田家の武者ぶりは戦国最強だって。対する
うちの尾張兵は弱いので有名だし。いかん、パンツを履き替えてと。よし、ふんどし締めなおしたぞ!もしも
し!ラーメンまだですか?違う。ラーメンはいらない。毛利と長宗我部と島津はうごかねえだろうな。っていう
か絶対動かすな。費用はいくらかかってもかまわんから絶対だ。場合によっては不可侵条約の締結もにお
わせろ。しかしこっちの弱みはみせるな。ここで下手に出るな。舐められてつけこまれるぞ。むしろこっちは必
勝で武田の領地はすべていただく感じで交渉しろ。あんたんとこも占領後の甲州の利権わけてやってもい
いんだぞ?みたいなニュアンスだ。弱ってる時こそ強気だ。ラーメンで言えば固いタマだ。
勝家
:動員可能な者は全員投入する。全軍緊急招集だ。武田に呼応した会社はあるのか?確認いそげ。参
謀ども集合いそげよ。中国の毛利、四国の長宗我部、九州の島津が連動した場合の作戦指揮も用意
せよ。最悪の事態を想定しろ。籠城用の拠点、整備は万全か?第一第二第三第四師団を前方に配
備。同盟国三河に第五師団を派遣せよ。しかし第五師団長と参謀にはこう言い含めておけ。決して戦う
な。この戦は苦戦を極めるだろう。常に戦術的撤退を想定しておけ。正面から戦えば、まず負ける。この
状況では桶狭間のような奇襲は無理だ。ただ一瞬のスキを見逃すな。今回もなんとかトップである武田の
信玄社長を始末できりゃなぁ。
秀吉
:信玄社長さえ抹殺できれば、あとは軍事的には恐ろしいけど、政治的には愚か者しかいないから、なんと
かなりそうですが。
勝家
:クッ、右府様さえいてくだされば、このような絶望的苦境など鬼のような手配りと神のような幸運で吹き飛
ばしてくださろうものを。
蘭丸
:勝家殿らしくもない。怖気づきましたか?
勝家
:ふん、半々じゃな。
蘭丸
:ハーフ・アンド・ハーフ?
勝家
:面白いじゃないか。名にしおう戦国一のつわもの、武田の赤備えをわしの戦略と戦闘指揮により、蹴散ら
15
す。しかもわしが用いる兵はこらえ性のない貧弱な都会っ子の尾張兵。これで勝利を得れば男としてこれ
以上の快挙はあるまい。歴史に名を残す絶好のチャンスだ。やらいでか!って感じ。この気持ちが半分。
蘭丸
:あと半分は?
勝家
:この場で雲古しかぶるくらいえずい。やつらの強さは人間とは思えない程だ。しかしわしの偉大さは常にこの
恐怖に打ち勝ってきたことよ。わしはここでも男を上げる!
長秀
:うわっ、緊張してきたよ。あいたたた、おなか痛くなってきた。あの、トイレどこ?
勝家
:忙しいんじゃボケェ!その辺でしとけ。
長秀
:うへえ、ピリピリしてるよ。ま、生きるか死ぬかの切所だからね。ってひとごとじゃねえよ。超コエー!
ネイ
長秀
:はい、トイレットペーパないからこれで拭いてね。
:縄だし・・・。ありがと。雲古雲古。っていうかこのへんでしてまたあの人形埋まってねえだろうな。しっこひっか
けて雷だから雲古かけたりしたらどうなることか。またどっかへ吹っ飛ばされるか、地割れに飲み込まれるか。
秀吉
:おまえ今なんて言った?
長秀
:地震は恐ろしいなってことを。
秀吉
:言ってねえだろ。そうだよ、あの人形で!みんな、ちょっと集合!(集まる)ヒソヒソヒソヒソ。
勝家
:バカな、そんな非科学的なことは反対だ。もっと確実な作戦でゆくべきだ。
蘭丸
:イヤ、しかしかけてみる価値はありそうだ。すぐ手配しましょう。
秀吉
:じゃこの作戦でよござんすね?
全員
:ガッテンガッテンガッテン。
勝家
:早合点め、わしが反対したことは覚えておけよ。
蘭丸
:じゃこの人形を信玄が尿意をもよおしそうなここらに埋めてと。さっ、隠れて。
信玄
:はっはっはっは、わしは通りすがりの信玄。なんかもよおしてきたのぉ。勘介よ、どっかできるとこはないかの?
勘介
:はっはっはっは。わしは軍師兼忍者部長の勘介。ここらが、なんか便所っぽいですな。まわりからそういうこ
こでしてして、ってオーラが立ちのぼっております。ところで大ですかな?小ですかな?
信玄
:むふっ。両方じゃ。
勘介
:はっはっはっは。殿の剛毅さよ。ではそれがしが金隠しのように立ちはだかりますゆえ、存分になされよ。
信玄
:おうさ。脱糞したら臭いがこもらぬ様に扇いでくれよ。
勘介
:扇ぐぞ扇ぐぞ。
信玄
:扇げ扇げ。
勘介
:はっはっはっは。お戯れを。
信玄
:はっはっはっは。ブリッ。ふごおおおおおおお!!!!水洗便所で流される雲古の気持ちを理解した・・・。
(寝そべって助けてくれ~って感じのポーズで、そういいつつくるくる消える)
勘介
:信玄殿!信玄殿!う~~ん総大将消えちゃったし。甲府へ帰ろ。殿の死は 3 年隠そう。(帰る)
全員
:やったー!!イエーイ!
勝家
:めでてえのう。やっぱわしが認めた作戦のことだけはあったわ。
秀吉
:あなた反対したこと覚えとけっていってたじゃん。
長秀
:まあまあ、確執はそのくらいにして。まずは結果オーライってことで。
16
蘭丸
:しかし油断は禁物です。武田の滅亡で関東甲信越の脅威は小田原の北条物産のみ。その北条物産
は三河の徳川殿が同盟をされておりますれば、残る敵は中国の毛利株式会社、四国の長宗我部有限
会社、九州の島津興産。いずれも社員の兵は屈強で、管理職も一筋縄ではいかぬ武辺者ぞろい。今は
三社とも不仲でいがみあっていますが、これを機に対安土社の同盟を結ぶことは必定。
長秀
:武田に勝ったのは良いものの、ライバル会社にすごいマークされたってことね。
蘭丸
:今すぐこれらの状況に対するわが社の方針を決定しておくべきでしょう。後手に回ることは許されない。
ネイ
:でも右府様がいないのに、勝手にきめちゃっていいの?あとで大目玉じゃない。
蘭丸
:時期が時期です。それにわが社のブレインは、常にクビをかけて仕事をしています。
長秀
:マジで?前の会社の管理職とか責任逃れしか考えてなかったけどな。
勝家
:戦の一字あるのみ。もはや残りの国は全て武力で制圧するべきだ。
秀吉
:兵は兇器。不用意に用いるべきではない。ここは武力の威圧はみせつつも、政治でおとしてゆくべきです。
勝家
:異存があると?
秀吉
:無用に民衆の財産を奪い、血を流し、国力を疲弊させるものではありません。政治は最後の最後まで軍
隊を使うべきではない。ここは戦争をしなくても毛利も長宗我部も島津も従わせることができます。
勝家
:手ぬるい。政治など、所詮は自国に都合の良いウソのつきあい。足元のすくいあいにすぎん。いつ不意を
つかれ、襲われるかわからん。逆に我らの前に超巨大勢力が現れ、我らを支配下に置いたと仮定しよう。
我らはどうする?一旦は従順なふりをしたとしても、かならず反撃の狼煙をあげ、そやつらの息の根を止め
るまで戦い抜くであろう。なればこそ、不穏の芽は全て根絶やしにするのだ。
秀吉
:あなたは誇り高い軍人魂をお持ちだし、その才覚は超一流です。が、支配するべき軍隊の意思に、取り
付かれ支配されている。あまりに軍国主義だ。ファナティックで、ファッショだ。もっと平衡感覚を持たねば必
ず道を誤ります。
勝家
:逆らうか、猿。
秀吉
:軍はあくまでも政治によって統制されなければならない。その正規のルートを逆行して軍隊が独立した意
思を持ち政治に嘴をつっこむなど言語道断、右府様はこれを厳禁なさっていたはず
勝家
:よかろう、手切れだな。
秀吉
:お待ちください。これは議論です。互いに納得しあい、妥協点を見出さねば。こんなところで短気をおこし
内紛などブレイク・アウトしてはここまできた覇業が一夜にして頓挫してしまう。
勝家
:取るにたらん。議論などはどこまでいっても暇つぶしよ。そんなもので相手を言い負かしたところで、その場
限りの妥協点しかありはしない。わしらのやりあいは言葉ではない。命だ。それが武家というものよ。
秀吉
:命は安土の会社のためにのみ、かけてきたはずです。
勝家
:その通りよ、懸命だからこそ譲れぬのだ。貴様も思いは同じであろうに。マカーキよ。
秀吉
:ロシア語で猿・・・。
ネイ
勝家
:なんでロシア語で。
:いわばわれらは同志、タワーリシチならばこそ雌雄を決せねばならぬデステニーのようだ。さすれば全軍挙げ
ての大決戦とゆきたいところだが、それは今この事情が許さん。なれば双方精鋭部隊100を出し合い、限
定的局地戦とゆこう。
17
秀吉
:分かり申した。もはや拳でしか語り合うことは許されぬようだ。
勝家
:よう料簡した。キンシコウよ。
ネイ
:中国の伝説の猿?
勝家
:宣戦布告は今。ゆくぞ!
BGM
Kiss Me~氷室京介
秀吉
:第七飛行教導隊スクランブルだ。A 級爆装で全機ランニング・テイク・オフ。隊長機は直接俺が指揮する。
敵は柴田修理の亮参謀本部長。鶴翼の攻撃態勢からバンカーバスターでピンポイント爆撃。ヘッドオヒス
から各機へ、これは訓練ではない。繰り返す。これは訓練ではない!(プロポでガチャガチャ操縦する)
勝家
:やるな、猿。航空隊の最強エース集団、飛行教導隊をもってきたか。第一特殊機甲師団、第三防空兵
団、魚鱗の陣で向かえ討て。地対空ミサイル撃ち方はじめ!インターセプターにはわしが上がる!識別コ
ードはミズグモだ。間違ってもわしは撃つなよ。(ジョイステックでガキョガキョ操縦する)
ネイ
:あんた~!がんばって!!
長秀
:羽柴筑前の守!ボムバイエ!
秀吉
:ブーン、20㍉バルカンだ!ズドドドドドド!(飛んできて殴る)
勝家
:なんの!30㍉バルカン!ドガガガガガガ!(飛んできて殴り返す)
秀吉
:むう、壮絶な火力だ。だがこれならどうだ、秘技木の葉落とし!(仰向けざまに脱力してブラブラする)
勝家
:そっちがそうくるならこっちはツバメ返しだ!(仰向けざまに脱力して振り付けする)
秀吉
:くっ、壮絶なアクロバットだ。ならばこっちは仏壇返しだ!(ブリッヂしつつ、エロい腰つきになる)
勝家
:ふふふ、悪い腕ではないが、その程度ではわしの敵ではないな。ここからはマブでいくぞ!必殺、炎のコマ
ー!!
秀吉
:ギャー!!
勝家
:ムーンサルト!エレクトリック・サンダー!水魚のポーズ!
秀吉
:ぐはぁ、ゲームセンターアラシの技を次々と繰り出すとは。このコアなマニアック加減 30 代は伊達じゃない!
勝家
:ふははははは、ゆくぞ、惑星直列のエナジーをゲームにぶつける大技、グランド・クロス!
秀吉
:うわぁ、惑星が一直線に並んだ!ふおおおお、引力が!重力がよがむ!!
勝家
:ボグシャー!
秀吉
:ギャフン。
長秀
:すわっ、上司のピンチ、お世話になった羽柴筑前の守部長の窮地はこの俺が救う!燃え上がれ心の
コ
ス
モ
小宇宙!ペガソス、流星拳!
勝家
:ボグシャー!
長秀
:アフン。
全員
:よわっ!
勝家
:がはははは、お前の手は赤子の手。手もなく一ひねりにしてくれるわい。(手押し車する)おらおらおらおら。
秀吉
:うわっ、ギガきつい。くそっ!反転!(入れかわる)どらどらどらどら。
勝家
:むおっ、テラきつい。ならばこうじゃ!(秀吉をかがませ背を越える)おっしょい!
18
秀吉
:おっしょい!(飛び返す)
勝家
:おのれ猿、わしを向こうにまさかここまでやるとは。
秀吉
:さすがは鬼の異名を取る勝家殿よ。ぐっ!(片膝をつく)
勝家
:むおっ!(片膝をつく)くっ、腹減った・・・。
ネイ
:長秀たん!ダーリンにこれを渡してきて!
長秀
:これは!よし。秀吉殿!兵糧でござ~~る!あっ、手がすべった。
勝家
:(それを受け取る)おおっ、これはかしわのから揚げ!わしの大好物ではないか。これでやる気根気負けん
気勇気がみるみる湧いてきたわい!マンプクゥ!ゲエ~~ップゥ!パ~~~ンチ!!(スロー)
秀吉
:やんぬるかな!
長秀
:嗚呼、俺のミスで羽柴殿が!くうっ!(悲嘆)はっ!(と思い出す)確か 3 時のおやつの食べ残しがポケット
に!あった!秀吉殿、バナナですぞ!
秀吉
:え?何それ。
長秀
:猿の大好物モンキーバナナです。
秀吉
:猿っていうな。ていうか初めて見たんだけど、それ食えるのか?
長秀
:この時代にはまだバナナ入って来てなかったのか。あの、ルソンとか、台湾で取れる魅惑の果実です。
秀吉
:なんかエロい言い方だな。
長秀
:黙って食え。(口に突っ込む)セクシー。
秀吉
:うまっ!ヨッシャー!バナナを食ってアドレナリン、エンドルフィン、フェモグロビン、ドコサヘキサキン酸、デオキ
シリボ核酸の大量分泌!迎え撃つぞ!(バナナの皮放り捨てる)トロピカル・フルーツ・パーンチ!
勝家
:ズルッ!ボグシャー!ゴキーン!ガツーン!ドフッ!ギャフン。(滑って上手い具合に殴られた後、壁にぶつ
かったり、倒れて後頭部を打ったり、踏んだり蹴ったり)
秀吉
:か、勝ったぞ~~!!勝どきあげろ!
長秀
:パパパパンパパパパンパパパン!(若鷹軍団のメロデー)
ネイ
:あんた!
秀吉
:ネイ!勝利のポーズだ!(なんかする)いやー良かった良かった。(3 人そうとう嬉しそう)
勝家
:ピクッ、ピクピクッ!
ネイ
:なんか動き出したわ!
長秀
:まさか!ドラクエとかのラスボスお約束の一回倒した後、今度は本気でいくぞ的に強力になって復活、ラス
トバトル・アゲイン?
秀吉
:ちょっと、もう無理!
長秀
:強気強気。
秀吉
:じゃないけどネ。
ネイ
:それかバイオハザード的にゾンビとして復活とか。
秀吉
:ホラーこええよ。超コエー!
長秀
:強気強気。
秀吉
:コエー・・・人はサンタクロース♪
19
勝家
:ふっふっふ、ようやってくれたな猿。
秀吉
:そ、それほどでも、ナッシング。
勝家
:最後の手段だ、全身に巻きつけた核兵器で、きさまら全員冥土の道連れに自爆・・・!
ネイ
:キャー!やめて!メイドのコスプレしてあげるから!
長秀
:お、俺は銀河鉄道999のクレアのコスプレして欲しい!
秀吉
:あの透明な女の人?無理だろ。
長秀
:俺車掌さんのコスプレするから。
勝家
:じゃしてみろ。
長秀
:黒、黒のドーラン!あと豆電球と電池。
勝家
:そんなの会計課が認めてくれるわけないだろう。フフフ、猿よ良い部下をもったな。わしはキサマに遅れをとっ
たのではない。キサマらの友情パワーの前に敗れたのだ。わしは潔く自決するとしよう。離れておれ。なんの、
爆薬はわしを跡形もなく吹っ飛ばす程度の威力だ。伏せておれば問題ない。猿、いや羽柴秀吉よ。いざ
サラバだ。
秀吉
:待たれよ!勝家殿!
勝家
:言うな、猿よ。わしは人様の後塵を拝して生きていける人間ではない。ナムバー1になれぬのなら、生きて
おってもしょんなか。ここで死ぬるのがわし的に最も仕合わせというものなのだ。
秀吉
:これは同情などではござらん。切実にあなたの実力を欲しているのです。勝敗は時の運。今回は幸運もあ
った。政治的なやり方も成功した。が、純粋に軍事力だけの衝突であったならば、あなたには勝てなかった。
あなたはお強い。あなたのチカラがわが社には必要なのです!何より、俺にいくさというものを教えてくださっ
たのはあなたではありませんか。あなたのチカラなくては、天下布武は水泡に帰す。
長秀
:そうですよ。それにナムバーワンにならなくてもいいじゃないですか。元々特別なオンリーワンなんですから。
勝家
:わしはな、わしは過去の織田家相続争いのさなか、弟君の織田信行様をたて、右府様に楯突いた身な
のじゃ。右府様はああいうお方。過去のこととはいえ、部下の傷は許されぬ。いつか日向の守光秀が申し
ておったな。天下に安土社の敵がおる限りはわしの使い道があるゆえ、わしを使ってくだるだろう。だが、天
下が右府様の旗の下に靡いてしまったとき・・・。わしは無用の人間となり、過去の罪を被せられ、粛清さ
れる運命だったのだ。なればこそ、天下布武最終決戦の場で華々しく散り、死に際を美しくしたかった。
秀吉
:勝家殿・・・。
勝家
:しかしそこまでたどりつけなんだ。右府様が戻っていらっしゃらぬ今、天下布武社のトップは秀吉よ、おぬし
が座るしかあるまい。あと中国、四国、九州を征伐すれば天下の旗は我が安土天下布武社に帰趨する。
覇業はここまでくるのが困難で、ここまでくれば後は時勢が後押しをしてくれるものよ。さすればお主も右府
様同様、わしが不要になる日がくる。右府様に粛清されるのは仕方ないとしても、お主に殺されるのはやり
きれん。もはやその日が来るのは遠くない。
秀吉
:とんでもない!まだまだ遠く果て無き道のりでござる。勝家殿、地球儀というものをごらんになったことがある
か?
勝家
:地球儀とな?そはなんぞ。
秀吉
:われらの住む大地や海は、こう、西瓜やボールみたいに、まる~くなっておるんじゃそうな。南蛮から渡来し
20
た天主教の毛唐どもが申しておった。わが日本国はその地球の中の、わずかこんだけの領土に過ぎない。
俺はそれを右府様からレクチュアされてこう申し上げた。右府様が日本国のあるじになられた時は、九州を
1 年間だけ経営させてください。拙者はその経済力と兵力で朝鮮国を攻め取ります。そして明の国を切り
取り、果ては天竺、中央アジア、アフリカ、ヨーロッパ、南北アメリカ大陸に南極まで制覇してごらんにいれま
す。その全ての国を右府様に献上いたしますゆえ、拙者には朝鮮をください。右府様は笑って、ハッハッハ
ッハッハゲネズミよ、おんしゃ大気者じゃのうと仰ってくだされた。
勝家
:ふはっ、全世界を制覇か。確かにその野望の前には、日本の天下統一など、ほんのイントロダクションよの
う。
秀吉
:ならば。
勝家
:無理。わしは生粋の戦国時代っ子。生れ落ちたその地も戦場だったという。父も兄も戦の中に生き、戦の
中で死んだ。わしも戦場の空気しか肌に合わぬ、粗暴で粗忽な他に何の価値もない男。だが右府様は
そんなわしのチカラを存分に発揮させて下さった。忘れもせぬひとつひとつの戦場往来。わしは右府様にの
みお仕えする男だ。
秀吉
:拙者のためとは申しませぬ、右府様が丹精して作り上げてこられた、安土の会社のために!
蘭丸
:そうですよ。天下布武社、あなたに死んでもらうわけにはまいりません。
秀吉
:あ、むこうのブースでゆっくり寛いでた蘭丸。
蘭丸
:休める時に休んでおくのも仕事のうち。勝家殿、右府様からメールです。
勝家
:何!・・・「イキロ」。・・・くっ、ならば是非もない。わしはわしの仕事をやりつづけよう。
長秀
:わ~良かった良かった、丸く収まって。さすが右府様、キメるなぁ。
秀吉
:じゃ早速中国攻めの作戦練りましょう!まず 3 本の矢をですね。
ネイ
秀吉
:ね、ね、もう大分家空けてるよ、そろそろ一回帰らない?休憩も仕事のうちだしね~。
:先帰ってていいぞ。ここは水攻めはいかがでござろう。この毛利の城は水はけが悪い土地だから、川をせき
止めれば水浸しになってですね。
ネイ
:あんね、隣のおまっちゃんとこのデブ猫百貫が子供産んだんだって。約束通り一匹もらうんだ。かわいいよ~
名前はね、もう決めてるのよ。ニャーニャ。ニャーニャーニャー。
秀吉
:ニャーニャーうるさいニャー!で、この天気図からすると城攻めの時期に必ず大雨が降るんですね。するとど
うだろう。この備中高松城はひょっこりひょうたん島のように水にプカプカ浮かぶわけですよ。
長秀
:水攻めか~、スゲーな~こんな感じで水をビューって出すんですかね?(水鉄砲出す)
秀吉
:うおっ、なんだそりゃ?スッゲー、新兵器だよ。
勝家
:閃いたぞ、それで敵の火縄の火を消すんだ!
蘭丸
:あ、それはいいですね。すると鉄砲が全然使えなくなる。
秀吉
:それは画期的かも!スゲーなおい長秀、お前みたこともねえもんいっぱい持って、南蛮人か?
ネイ
:あんた、もう帰ろうよ。少し働きすぎだよ。カラダ壊すよ。労働基準監督署がくるよ。
長秀
:労基署は署長が会社の重役と裏で繋がってたりするから全然役にたたねえぜ。
秀吉
:労基署はこっちが訴えねえとこねえよ。ていうか、ここは俺の職場だ!邪魔すんな、女はすっこんでろ!
ネイ
:(ショックを受け秀吉にケツバットして去る)あたし邪魔?・・・バカ!
21
秀吉
:いてて。クソ、わからんちんめ。すいません。お見苦しいものをおめにかけまして。さ、中国攻略の続きを。
蘭丸
:おやすくありませんね、女はすっこんでろって言い草は。セクシャル・ハラスメントにあたりますよ。
秀吉
:まじっすか、アイヤ、そんなつもりでは・・・。
蘭丸
:ともあれもう夕暮れです。根をつめすぎるのも良くない。疲れていると思わぬヘマも出ます。続きは明日にし
ましょう。
長秀
:そうですね。お疲れ様でした。さ、帰ってナイター見ながらビール飲みましょう!
蘭丸
:あたしもカラオケ教室が19時からで、20時から英会話、21時から DJ のバイトだわ。
長秀
:そうですよね!切り替えないとね。俺もダンス甲子園申し込もう。
秀吉
:イヤ待って下さいよ。しかし天辺を目前にうかうか足踏みをしては、とんびにあぶらげをさらわれかねない。
蘭丸
:仕事も大事ですが、プライベートな趣味や家庭も大事ですよ。
秀吉
:いやいやそこは戦国時代。仕事あっての家庭ですよ、ねえ勝家殿。硬派な勝家殿もそう思いますよねぇ。
勝家
:わしゃ帰る。家で奥が首を長くしてわしを待っておるからな。(電話)あ、お市わし、カッツン。今から帰るから。
なんか買ってくものあるかい?豆腐と納豆と枝豆と黒豆大福ね。なんか豆多いな。豆祭り?(去る)
蘭丸
:勝家殿の奥方は再婚だけど右府様の妹君だからね。なかなか恐妻家みたいよ。じゃそういうことで明日9
時から会議再開です。お疲れ様。(去る)
秀吉
:あ・・・。仕方ねえな、おれらもねぐらに帰るか。な、長秀。
長秀
:あ、俺今日はダンス甲子園の地区予選があるんで。じゃ、また明日。(去る)
秀吉
:え?ちょっと、おい・・・。ちっ、いっちまいやがった。なんか帰りにくいよなぁ。(去ると暗転)
BGM
オーラルナイト・ニッポン
ネイ
:(忍び足で帰ってくる秀吉に)帰ったんなら声くらいかけたら?旦那様のお帰りにお出迎えくらいいたしますの
に。
秀吉
ネイ
秀吉
:いや、そんな大げさなもんじゃねえし。さっきはごめんちょ。イヒ。ご機嫌いかが?かわいこちゃん。
:いとわろし。
:機嫌直してくれよ、おねいちゃん。あ、そうだ!南蛮渡来の珍しいお土産もらってきたんだ。イモムシ饅頭。
なんでもオーストレイリアって国のアボリジニって土人部族の名物らしい。
ネイ
秀吉
:いらない。
:ならこれはどうだ?干し首。なんでもラテンアメリカという国のインデオの酋長たちが敵の首を秘密の薬品に
つけこんで干して結わえて作るそうだ。ネックレスとかにどうだ?文字通りネックがレスだし。
ネイ
秀吉
:いらない。
:じゃこれ、アフリカの呪いの仮面とディオの石仮面とスケバン刑事の鉄仮面と美内すずえのガラスの仮面と
仮面ライダー響鬼の仮面。
ネイ
秀吉
:仮面夫婦みたいだね、うちら。前はこんなじゃなかったよ。前は貧乏でもあんたちゃんと帰ってきてくれたし。
:昔の俺じゃなくなったんだよ。責任ができて、背負うものが増えてさ、朝は安土、昼は京都、夜は中洲。あ
ちこちと飛び回らなくちゃなんないんだよ。そりゃ俺だって家でゆっくりしたいけどさ。
ネイ
:すればいいじゃん。
22
秀吉
ネイ
秀吉
ネイ
秀吉
ネイ
:そういうわけにはいかないんだって。どうしたんだ、ヘヘイベイベ。機嫌なおしてくれよ。
:あたしと仕事とどっちが大事なの?
:お、子猫だ、かわいいな。これが百貫の子ニャーニャだな。ゴロゴロゴロゴロ。
:はぐらかさないで、ちゃんと答えてよ。
:聞くなよそういう愚かなことを。
:聞くのよ。そういう愚かなことを。いくら会社で出世して偉くなっても、しまいには天下に号令する全世界のド
ンになってもね、あんたの跡継ぎは誰もいないんだよ。百貫だってニャーニャ産んだよ。部下の家来さんたち
だってあんたが死んでもあんたの跡継ぎがいて家来を引き受けてくれるから安心してあんたについていけるの
にさ。
秀吉
ネイ
秀吉
ネイ
:いくら子供作ろうとしても全然できないんだから仕方ないじゃん。
:両親に申し訳ないじゃん。子供作れないと。ご先祖様の霊を弔う人がいなくなっちゃうんだよ。
:だから作ろうとしてるけどできないんだからしょうがないじゃん。
:あんたさ、大好きな種無し葡萄とか種無し西瓜ばっかり食べてるうちに自分が種無し人間になったんじゃな
いの?
秀吉
ネイ
秀吉
うめずめ
:そんなことあるわけねえだろ、お前こそ石女だろ。
:なによこの種無し種無し種無し種無し・・・。
:なんだとこの石女石女石女石女・・・はあはあ、よそう、こんな傷つけあいは不毛だ。お前にあんまりかまっ
てやれないのはすまんが、俺はどうしても働きたい。俺のこの手で荒廃しまくった戦乱の世を鎮めたいんだ。
わかってくれ。俺も極力帰るようにするから。(コケコッコ)もう朝か、いってくる。待っててくれよ、ネイ。(去る)
ネイ
:分かってあげたかったけど、ごめんね。わかっても、どうしようもないのよ。ダメな嫁だね。だけどあなたにだけは
分かって欲しかった♪(「待つわ」より)
家康
:帰ってきたぞ、帰ってきたぞ~♪プシュー。おおっ、ここは元の時代だろうか?そこな女子衆、今の年号は
なあに?
ネイ
家康
ネイ
家康
:天正17年だけど?
:平成17年じゃないんだね?
:なに平成って?古代の年号?今トレンディな年号は天正だよ。
:Yes!は~やっと戦国時代に戻ってこれたぜ。家康感激。とある糸井重里が徳川埋蔵金を掘り出してた
から、泥棒すんなって糸井殴りにいったら、現場からあの人形でてきてさ。慌てて尿かけたよ。ちょっと手にか
かったけど。あんだけ金かけて埋蔵金元とれるのか?俺は助かったけど。しかしあの人形は何かね、ニルス
の不思議な旅で、ニルスがいたずらして小人にされちまった、あの妖精のようなものなのかね。は~この安
普請の木造家屋の空気。最高♪平成はなってねえよ。花粉はひでえわ、言葉はなってねえわ。ちょっと女
子高生ひっかけてやったらすぐ性病感染ったし。親切心でそいつに、おいマンバ。そなたガングロだけじゃあき
たらずマングロなんだなって言ってやったら、MK5 とか言われたよ。ありえない。
ネイ
家康
:MK5って古すぎ。
:ていうか意味わかんねえよ。平成最低、戦国時代最高。おっとこうしちゃいられない。安土に顔出して三
河に帰ろう。
23
ネイ
家康
:あたしもつれてって。寂しいの。
:いや寂しいって・・・そうだな、俺も変な時代に一人ぼっちにされて、戦国時代臭いとか、日光東照宮臭い
とかキモがられ、孤独を極めた男。同じ痛みを持つお前の孤独は、この俺が埋めてしんぜよう。
ネイ
家康
BGM
秀吉
ネイ
家康
ネイ
家康
:バイバイ、あんた。あたしはいくよ。(電気消す)
:くるよ。悲しければこの胸で泣くが良い。俺は何も聞かぬ。ダンス、ミュージック!
見えるだろうバイストンウェル~MIO(二人すみっこで踊る。ていうかステップ)
:タダイマー!は~ちかれた。どうだ、今夜は珍しく約束通りに帰った・・・。ネ、ネイ!どこだ?!(去る)
:あなたは私だけを見つめてくれる?
:キミがそれを望むなら。
:うれしい。オカネなんかはちょっとでいいから、安心できるくらい一緒にいられる生活がいいの。
:一緒にいられる生活か・・・。いいだろう、だがそれを実現するためにはキミにも俺と共に命をかけてもらわね
ばならぬことになるが。
ネイ
家康
ネイ
:いいわ。どこへでもいく。
:ならば戦場へ。
:戦場へ!
光秀
:ハッハッハッハッハッ!わたしは毛利隆元!
家康
:ハッハッハッハッハッ!俺は吉川元春!
ネイ
:ハッハッハッハッハッ!あたしは小早川隆景!
光秀
:我々は中国の帝王毛利家の3人息子。
家康
:中国の3人といっても劉備玄徳!
ネイ
光秀
3人
家康
ネイ
:関羽雲長!
:張飛益徳!
:3 人揃って、三国志演義のメンツ!ではなく。
:3!
:本!
光秀
:の矢!
家康
:で有名な毛利元就の3人の倅。
ネイ
:われわれ 3 人は非常に仲が悪い。
光秀
:されど父の教えで3人が1本の矢となって戦うのだ。
家康
:織田の軍団が安土から攻めてくるぞ!
ネイ
:よし、亡き父の教えを守る時は今だ!
光秀
:3人合体!アイン。
家康
:ツバイ。
ネイ
:ドライ。
3人
:巨大武者、デラックス・モーリーズ!
24
勝家
:あっ、カモだ。
長秀
:動き鈍そう。
蘭丸
:油断せずに、速やかに片付けましょう。
秀吉
:じゃ、いくか。
勝家
:なんじゃ?元気ないな。
長秀
:まぁまぁ、ちょっと奥さんが家出したりして、ちょっとですね。
秀吉
:あ、大丈夫です。もう元気、元気!
蘭丸
:空元気?
長秀
:さ、いきますよ。
モーリーズ :ガオー!
長秀
:よし、早速あの種子島の火縄をこの水鉄砲で!シャー!
モーリーズ :ギャオース!
勝家
:敵は怯んだぞ、突撃!そりゃそりゃ!
蘭丸
:えい!えい!
長秀
:とう!とう!(それぞれ撃退するが長秀だけ逆にやられる、光秀正座ネイと家康は去る)
秀吉
:じゃ、戦後統治の処理に入ろう。まず領地だが、備中、美作、伯耆を割譲してもらう。だが備後と出雲は
毛利へお返ししよう。
光秀
:マジ?やった!もうかった!恩にきますぞ、羽柴殿。
長秀
:やりてだなぁ、5ヶ国を要求しておいて、2ヶ国を返せばめっちゃ感謝される。はじめから欲しかったのは3ヶ
国だったんだし。税金 20 万円取られても 3 万円返してもらったらしょうがないかって納得する国民性はこの
頃からあったんだ。さすが政治が得意な秀吉部長だ。
光秀
:いやぁ、親父の遺言「天下を望むなかれ」を守って良かった。10 ヶ国が7ヶ国になったが、ともかくお家は安
泰だ。ハッピ~♪
SE
落雷
光秀
:アンハッピー・・・毛利隆元死す。倅毛利輝元と弟吉川、小早川の川コンビよ。後は頼んだぞ・・・。プシュ
ー・・・。戻ってきたか、この時代に。
秀吉
:なんと!維任日向の守、情報部長光秀殿!ご、ご無事で祝着至極。して右府様、信長公は?
光秀
:ああ、ノブね。
勝家
:な!なんだと!右府様をノブとは、おのれ。
蘭丸
:乱心なさったのですか?光秀殿。
光秀
:ウフフフ、もういいでしょう。タネ明かしの時間にしましょう。(博士のようにグリグリメガネする)
長秀
:あっ、博士だ。マッドサイエンティストっぽい博士だ!
光秀
:そうです、私が悪役です。実は私はこの時代の人間ではない。
勝家
:悩乱したのか?この時代の人間ではないなどと・・・。日本脳炎にでもかかったんじゃないのか。
秀吉
:いえ、勝家殿、こいつ(長秀)の例もあります。あながち嘘とは言い切れませぬ。
25
光秀
:ああ、チミ何かの拍子でコイツに尿かけちゃったんだね。チミは21世紀の人だったっけ?コイツは4次元の
生命体でね。27世紀に発見されたのだよ。ちょくちょく過去にも目撃例はあるがね。大体、物の怪とか幽
霊、妖精といわれる存在さ。
秀吉
:ニルス的なものなのか。
光秀
:なんでチミがニルスを知ってるのか知らんが、そういうものだ。糞尿をかけると怒って遠い過去か遠い未来へ
ふっとばす性質があるのだよ。
長秀
:俺をこの時代へ拉致したのも、悪役!おまえの策略なのか!
光秀
:悪役っていうな。実際悪役なんだから傷つくだろ?ていうかチミのような雑魚キャラ目当てではない。チミは
防波堤にチヌ釣りにいったら、釣れんでいいのに釣れやがって、釣り人から怒って防波堤に叩きつけられ、カ
ピカピになって死んだチビフグのような外道だ。
長秀
:なんだと!あのチビフグは食えないと思われてるがちゃんと毒取って食うと相当旨いんだぞ、こん畜生め!
光秀
:私のターゲットは織田右大臣信長、やつだけよ。それ以外は全員外道の雑魚だ。
秀吉
:貴様!右府様をどこへお連れしたというんだ!
光秀
:さぁな。私にも分からんよ。確実なのはこの時代ではない。いずかたか歴史の闇の彼方へと消えてもらった。
利尿剤をノブの酒に混ぜておいたゆえ、それはスゲー勢いのユバリだった。恐竜の時代とかまで飛ばされて
おるのではないかな。
勝家
:キル・ユー!(斬りかかる)
光秀
:何を言う!(払う)私はキチガイ博士っぽいが、ただのキチガイ博士ではないぞ。
秀吉
:ではなんだというのだ!(斬りかかる)
光秀
:すごいキチガイ博士だ。(払う)折角この時代にきて信長を葬り去ったのだ。私が自ら幕府を開き私好みの
俺流世界を作り上げるのも一興。なんせ明智光秀といえば戦国時代屈指の由緒正しき源氏の家系だ
からな。軽く朝廷に猛烈な圧をかければ征夷大将軍の官位などすぐよこすさ。前代の将軍を追っ払って天
皇家に傀儡の象徴を移行させようとした信長は、慧眼としか言いようがない。私もそれに倣わせてもらう。
天皇と密着した幕府。これ最強。黒船もこの蜜月を壊すことはできない。いざ鎌倉。(人形に尿去る)シュ
ポーン!
勝家
:くそっ、追うぞ、鎌倉だ。
蘭丸
:京都です。
勝家
:しかし今鎌倉って。
蘭丸
:さっきの維任殿の話の必然から、行き先は帝のおわす王城の地京都でしょう。
勝家
:くっ、光秀めのあざとさよ。あやうくいっぱい食わされる所であったわい。
秀吉
:ゆこう!中国大返しだ。(昨日今日明日~♪京都~大原三千院~♪あああ~京都は今日も雨だった
~♪京都~シュガータウン~♪京都~泣いてどうなるのか~♪SAGA 京都~♪とか銘々歌いつつ)
長秀
:つきまいた。京どすえ。
蘭丸
:既に向こうは布陣しているようですね。
勝家
:場所は山崎、天王山か。決戦の地に相応しいのう。さぞや歴史に残る大決戦が巻き起こるに違いない。
秀吉
:既に各方面に手は打ちました。なんせ敵は逆賊維任日向の守光秀。全ての大名がわが社の味方です。
26
勝家
:筒井順慶と細川藤孝、忠興親子は?二人は前々から光秀めのマブダチであり、忠興は光秀の娘ガラシ
ヤの旦那であるぞ。
秀吉
:既に両名ともこちらへの帰属を申し出ておる。ぬかりはござらんよ。
勝家
:ふむ、大義名分はこっちのものだ。武家の誉れである主家の仇討ち、右府様の弔い合戦となれば燃える
なというのが無理だな。しかし光秀のあの奇妙な自信は気になる所だが。
秀吉
:兵はちからこぶり、世論は我らに右府様の仇を討てと沸騰している。ここは時勢という汗馬を駆って一気に
決着をつけるべきでしょう。
勝家
:敵は縦深陣地にエンゲツの陣か。さすがだな、維任。ならばこっちはクルマガカリの陣とゆくか。では総司令
官羽柴殿、号令を。
秀吉
:うむ。かかれい!
光秀
:ストッピ!ふふふ、羽柴殿よ、このプッティン・プディングが目に入らぬか?
秀吉
:な!それは俺がルソンから海のシルクロードでセイロン、ジブラルタルを経由してはるか南蛮の国エスパーニ
ヤのアルハンブラ宮殿から直輸入した3時のおやつ!返せ!うわぁぁぁん!返せよぉぉ!
光秀
:ふふふ、この時代のプッチンプリンといえば同じ大きさの黄金よりも価値があったという。ほれほれプルルル!
秀吉
:よせっ!崩れる!崩れるぅ!
光秀
:ふふふ、市原悦子によく似たあなたのお母さんの為に、特別に取り寄せたんですって?なんでも体調がお
悪く、ほとんど食べ物が口にできないそうで。
秀吉
:そうだ、きっと甘くてひんやりしてプルプルしたそれならばきっと食べられるに違いない。日向の守殿、あなたに
人間の心があるならそれを返してくんろ。
光秀
:ゴールデン・ドリル・フィンガー!!(プリンに穴ほがす)
秀吉
:そんなァァァァぁぁぁあああああっぁあぁぁぁ!!
光秀
:絶対零度のこの冷酷さ。私はごんぎつねのごん以上に親孝行を引き裂く、冷酷無比な男なのでね。(食
う)やっぱシャービックのほうが美味しいや。
秀吉
:あぁ~~~んまりだぁ~~~。
長秀
:ズイッ!これは親孝行を踏みにじられた秀吉部長のぶん!(殴るが弱い)これはプリンを横取りされたお母
さんのぶん!そしてこれは暑いのに狭くて暗くてジメジメした所に閉じ込められたお客さんと、俺の、俺の、こ
の俺の怒りだぁ!ブーメラン・フック!(殴ってたら自分に当たる)ぐはぁ・・・。なんて卑怯な罠だ。
全員
:しゃばっ。
秀吉
:鬼畜光秀め!絶!抜刀牙!(斬りかかるが素手で刀身を受けられ殴られる)
光秀
:グッバイ・マザコン!
秀吉
:ああ無情・・・ドシャッ!
光秀
:ウフフフ、鬼畜光秀か、素敵なあだ名をありがとう。
蘭丸
:さて、では私がいきましょう。
勝家
:でしゃばるでない、これは弔い合戦だがや。ならば男の中の男であるこのわしの出る幕だぎゃ。
蘭丸
:とろくしゃあこというでにゃあ!!
勝家
:はっ!その竜の逆鱗のような怒号は!
27
秀吉
:社長・・・。織田右大臣信長様!
蘭丸
:いかにも社長の織田だ。
光秀
:なるほど、どうも思い通り事が運びすぎると思ったら、そういう落とし穴があった訳か。ならば改めてあなたを
この世界ではないどこかへ。魑魅魍魎の棲むような異世界にお連れもうさねば。
勝家
:愚かな者よ、そうはいかの金玉。
光秀
:風魔忍法、催眠術。ひっこんでいろ。
勝家
:ひっこんでいよう。
光秀
:お邪魔虫たちは退治したところで、サシでいきましょうか。
長秀
:お邪魔女どれみ!
光秀
:めっ!しっ!
長秀
:ショボーン。
光秀
:チェーン・デスマッチってご存知ですか?
蘭丸
:これだ。(手錠だす)
光秀
:それだ。
蘭丸
:逮捕しちゃうぞ。(逮捕する)
光秀
:逮捕されちゃったぞ。
蘭丸
:ガチャッと。
光秀
:うおっ、いつの間にかイニシアティブを奪われてる。返せ!私のイニシアテブ!
蘭丸
:ふふふ、常に主人は私さ。ヒッキー!
BGM
Can You Keep A Secret
蘭丸
:では語るが良い、お前の悲しいカコバナを。
光秀
:私は迫害され続けてきた。ただ明智光秀の子孫だということだけで。戦国時代末期から江戸時代、明治
大正昭和平成、我が血筋のものは裏切りワールドカップの代表選手、主殺し界のトップ・アスリートとして
フルタイム後ろ指をさされ続け、後ろ髪をひかれ続け、1582 年からのミレニアムを差別され続けてきた。生
まれもって背負わされた裏切りの十字架によって、夢も希望も恋も一切合財踏みにじられ、社会的に抹
殺された存在。ボンクラな私ならばまだ諦めもついたかもしれんが、なぜ卓絶した才能と実力を持って生ま
れてきた私の前途がこうも暗澹としているのか。このカーストを抜け出すにはどうしたら良いのだ。
え た ひ に ん
長秀
:士農工商穢多非人じゃあるまいしそんなのあんの?
光秀
:士農工商穢多非人と同じだと思ってもらえばいいさ。私の暗黒の青春の原因は全て織田の社長さんにあ
え た ひ に ん
り。織田が性格破綻者でご先祖を公私に圧迫し続け、精神を崩壊させるまで追い込み、生きるためには
反逆の決断をせざるを得なかったのだ。父、祖父、曽祖父、1000 年のご先祖が名誉を取り戻し、私が太
陽のごとくきらめいた青春をおくるには、織田をご先祖が殺す前に拉致でもして闇に消えてもらえば良い。
歴史を遡る手段を、この人形によって GET した私は万里の波濤を越えてイベリヤ半島から日本へ渡来し
た南蛮僧ルイス・フロイスよろしく時の波を蹴ってここまでやってきた。今こそうちてしやまん!あれ?
蘭丸
:あ、ごめん聞いてなかった。
28
光秀
:ムキー!マジムカ。MK5!ギッタンギッタンにしてやるぅ!
蘭丸
:ていうか女々しい愚痴を述べてたんだろ?勝家!
勝家
:ハッ!
蘭丸
:ケツバーット!
勝家
:ハッ!ホーームラン!(バット出して叩く)
光秀
:ドッゲー!私の催眠術にかかってるはずが・・・。
蘭丸
:おい、それより私を腐った時代に連れてってくれるんだろ?
光秀
:ええ、まぁ・・・。
蘭丸
:よし、急いで連れていけ。
全員
:えっ?
蘭丸
:いったろ。私は腐った世界を私の手でぶっ壊して、私好みの世界を作り上げるのが好きなのだ。この戦国
時代もなかなかやり応えがあったけど、ほぼそれも完成した。私は出来上がった平和な世界に安穏とあぐら
をかき権力を楽しむことには興味ない。常に大汗をかいて腐った世界をこの手でこねくり回し、そこに私好
みの正義をもたらしたいのよ。この時代はもうこいつらに任すから、次の時代へ案内せい!
光秀
:え、いやでも何ていうか私いつのまにかあれですか?やられてるんですか?
蘭丸
:ケツバート!
勝家
:2ランホームラン!
光秀
:ドヘー!
蘭丸
:3ランもいくか?
光秀
:はい。お連れしますよ、どこへでも。私はナビ人間です。マンナビです。じゃ早速いきますか?
蘭丸
:いけ。
光秀
:あうぅ、いつの間にか奴隷か奴婢のような扱い。じゃ失礼してイチモツをちょっと出させていただきますね。モ
ゾモゾ。
蘭丸
:あっ、毒キノコだ。色ダメ艶ダメ形ダメ。毒汁が出た。うわっ、キモッ。
光秀
:あうう・・・。
蘭丸
:ださっ、泣きながら放尿。
光秀
:いざゆかん新たな生き地獄へ~~(くるくる回りながら蘭丸連れて退場)
蘭丸
:後は任せた。いってくるぞ。
全員
:・・・いってらっしゃい・・・。
長秀
:いっちゃいましたね・・・。あ!
秀吉
:うん?
長秀
:これで安土社の正当な後継者は秀吉部長ですよ。メールが着てるよ。
秀吉
:あ、右府様からだ。タイトル、ラスト・メール。私は安土の会社を退き、羽柴に豊臣の姓を与え、社長とす
る。官位は関白太政大臣を与える。貴社の益々のご発展をお祈りします。元社長織田右大臣信長より。
の、信長様・・・。
長秀
:これで天下は秀吉社長の手に委ねられましたね。さっき飛脚が来て聞いたんですけど、佐渡で金山が発
29
見されたんですって。ものすごい金銀財宝がザックザックですって!いや、ものすごいツキですね~秀吉社長
がいるかぎり日本の未来は明るいですよ。
家康
:それはどうだろう?
勝家
:あっ、家康殿、貴殿も帰っておられたのか。いや実はな。
家康
:いや結構です。今の光景は草葉の陰からみておった。
勝家
:左様か。我々は新社長秀吉殿のもと、信長公のご遺志にもとづき、ますます結束を固め業務にいそしま
ねばのう。
家康
:残念だが、わが三河屋は安土天下布武社との提携を解消させていただく。
勝家
:それは異なことを。
家康
:俺は未来の世界をこの目でつぶさに見てきたのです。そこはまぁ、なんてことでしょう。人の心は飢饉の時の
田畑よりも荒れ果て、権力者に騙され生き血をすすられながら亡者のようにお金を求めて彷徨い歩くゾン
ビかカネゴンのような拝金主義者の世界であった。そして神聖なるわが国土は毛唐どもに食い荒らされて
いた。今この戦国時代の状況を見るに、その時代の前夜にクリソツだ。この国の尊厳と、栄光を死守する
ため、俺自ら最高権力の座につかせてもらう。
勝家
:なんと、謀叛か。
家康
:謀叛という言葉はあたりませんな。わが三河屋は弟分とはいえ、安土の会社にとってはあくまで同盟軍。
対等な立場と己の意思を持つ独立した組織だ。利害が異なれば、いつでもマイウェイをゆく。豊臣殿、あ
なたに怨みはないが、男が天下に志を立てた以上、いつか必ず激突する運命だったのでしょうな。
秀吉
:この時代は血に塗れすぎた。社員のたれもがひどく疲れている。わが社だけではない。あんたも私も、ニー
トも社長さんも。もはや戦なぞ望むやつは、よほど血に飢えたビーストだけだ。
ネイ
秀吉
ネイ
秀吉
:ならば私たちにこの国の統治権を与えてくれますか?
:な!ネイなぜそなたが。
:紆余曲折がありまして。
:心配したぞ、もう。今夜はネイ帰宅記念パーテーだ!長秀、部屋を金モールで飾れ!16区のパティシエ
にケーキ焼かせろ。
ネイ
秀吉
ネイ
:(家康の腕を取り)私はこちらにつきましたんで。はい、離婚届け。印鑑よろしくね。
:バ・・・。(絶句。勝家や長秀も困惑)
:先日滝川伊賀の守一益常務が逝去なさったんで、その跡を継がせていただきました。滝川ネイってことで
宜しくお願いします。
家康
:色々ショックの中すいませんが、そういうことで。
秀吉
:ぁ・・・。
長秀
:ま、待たれよ!僭越ながらショックのあまり立ったまま気絶した筑前様にかわり俺が。貴殿ははどういうビジ
ョンがあってこの国を治めたいのだ?
家康
:この国を現状のまま、いつまでも暮らしてゆけるようにする。自給自足を旨とし、新奇なもの、珍妙なものを
新たに作り出すことを禁じ、栄光ある孤立政策、つまり鎖国をする。踏みとどまる勇気。
長秀
:なんと、時代に逆行したことを。人はこの暮らしにくい世界を住みよい土地に変えてゆくチカラを持って生ま
30
れてきたのだ。そして人と人は万里のみちのりをものともせず行き来するキャラバン・サライの如くつながり新
たな世界が生み出されてゆくのだ。
家康
:モンゴルにゴビ砂漠という不毛の大砂漠があるが、もとは遊牧可能な牧草地帯だったそうな。そこに中国
漢民族がのこのこ進入し、モンゴル人がいくら追い払っても勝手に田畑を耕した。だがその地質は田んぼに
は向かず、すぐに耕された大地は乾き、無残な砂漠となって果てしなく広がっていった。人は自分の手の届
く範囲で生きるべきだ。みどりの地球を守れ!
長秀
:あなたの話は唐突すぎる。現代社会はそこかしこ自然がうなっておるではないか。それに少々の夢や希望
が無ければ人生など。
家康
:夢や希望などとお題目を唱え、迂闊に現世利益などを追えば、人はアムの道アムウェイへまっさかさまだ。
抑えのきかない欲望が、損得勘定でしか人とつながらない人間を生むだけだ。快適な便利さも人を思い
上がらせ、スプーンのように心を捻じ曲げてゆく。
長秀
:太陽のちょっとしたきまぐれで大地はひび割れ、草木は枯れ、生き物は飢えて死ぬ。蓄えさえできれば、飢
えても南蛮やエイジアの国から食べ物を買える。凍え死ぬほどしばれる時も、ミンクのコートを着れる。生き
残れる可能性がぐっとあがる。あなたの意見は分かった。貴重なものです。(秀吉に耳打ち)いいですか?
秀吉
:ぁぁ。
長秀
:あなたには内大臣、内府の位を差し上げる。いっそわが社に取り締まり役待遇で入社していただけますよ
う。無論三河屋社長兼任で構いません。そして意見の融和を図り、よりよい社会のためやっていこうではあ
ーりませんか。な。内府殿。
家康
:SO SWEET!アメ公の作る邪悪な菓子のようだ。甘すぎる言葉よ。俺はカネにも権力にも飼いならさ
れるものでない。長らく生き死にを共にした方々ゆえ、悲しくはあるが武家のならい。次にあいまみえる時は
戦場ですな。
ネイ
:では古来の作法により宣戦布告を。
家康
:(丁寧に手袋を秀吉の前に置く)
秀吉
:(虚ろに手袋を落とす)
家康
:総兵力20万、日本国開闢以来の大決戦となれば、決戦場は近江、関が原がよろしかろう。戦闘開始
かいびゃく
時刻はいつになさる?
秀吉
ネイ
:え?ああ、明払暁。
:では、これを。(お茶漬けのもと渡す)
長秀
:これは食えってこと?
勝家
:帰れってことだ。京都の作法を知らぬのか。
長秀
:うわっ、感じわるっ。
家康
:フフフ、では帰るぞ。
ネイ
長秀
:はい。(2人去る)
:帰れって言っておいて自分が帰るのかよ。・・・決戦前夜か。緊張しますね。明日はもうこの世にいないかも
しれない。今までで最高に緊張したっていったら、就職活動で受けた面接と、初めて女子に告った時だった
んですけど、それ以上だな。うわぁ、帰って自分の部屋でエロゲーでもやりてぇ。
31
秀吉
:帰ってもいいぞ長秀、明日の戦勝てっこない。
長秀
:何いってんですか!勝てますよ。諦めるなんて社長らしくないっすよ。
勝家
:勝てば奥方の首をあげねばならぬものな。
長秀
:そんな、こうでいいじゃないですか。戦に勝ってあやまちをおかした嫁に一発ドメスティック・バイオレンスを加
える。するとネイさんはあやまちに気付き、熱い抱擁でラストシーンにする。
勝家
:筑前殿は確かに今まで極力人を殺さず、敵ですら自分の配下で重用し天下の大人気を得てきた。しか
しその優しさだけでは人から舐められる。裏切り者には峻烈な制裁を加え、ケジメをつける必要がある。つ
まり、おネイ殿を・・・な。それが分かっていればこそ、こうも呆けてしまったのだろう。その気持ちは分かるだ
が・・・。目覚めよ!(殴る)
秀吉
:ぅ・・・。(倒れて立てない)
勝家
:駄目か。貴様ならばこんなどん底でも神気を奮い起こし、手当てできる男だと思っていたのだが。残念だ。
わしは戦の準備にゆく。負けるわけにはゆかんゆえな。(去る)
秀吉
:俺な、天下の民を百姓から乞食から武士までうまくまとめてやれるとおもちょったが、嫁からも逃げられる男
ならいつか民も逃げてゆくじゃろう。無理じゃったなぁ。
長秀
:何ネガティブ・シンキングしてんですか。逆略奪婚すればいいじゃないっすか。
秀吉
:また逃げられるだけだ。
長秀
:重傷だわ。こうなったらもう戦場にたたっこんで、生きるか死ぬかの場で自分を取り戻してもらうしかない。
俺は信じてますよ。ヒデさん。あ、俺もヒデだ。ああ、夜明けだ。いきますよ!御大将。
BGM
入場行進曲 家康、ネイ、勝家入場。男子は海パン。
家康
:え~、秀吉公がいないみたいですが?
勝家
:大将は後詰として控えておられる。
家康
:さいですか。ではルールですが、この水玉をぶつけ合ったり、殴ったり蹴ったりドロレスしたりして勝ったほうが
勝ちです。ギブアップするか。3秒フォールされるか、20秒リングアウトするか、5秒以上反則すると負けです。
尚フェミニズムの立場から女子への攻撃は厳禁です。
勝家
:女子はドロレスじゃないんですか?
家康
:それをすると嫌な感じのお客さまが増えるのでしません。
勝家
:分かり申した。では修理の亮、まいる!
家康
:ゴング!
ネイ
BGM
:カーン!
なぜか上海
勝家
:先手必勝!(家康の顔面に直撃)
家康
:うおっ!目が!目が!
ネイ
家康
:しっかり!あなた。(顔タオルで拭いてやる)
:濡れてナーイ。
32
勝家
ネイ
家康
ネイ
:むおっ!卑怯なり!攻撃できねえし。
:ルールだから仕方ないでしょ。
:クリステル、いや滝川。インデアンデスロックで修理の亮殿を固めてくれ。
:あいあい。(適当に勝家を後ろ手にして動けなくする)
勝家
:おのれ卑劣な真似を。
家康
:フフフ。勝てば官軍ですよ。さ、取り出しましたるこの反則箱。何が出るかな、何が出るかな♪アイス!略
してアス。ではパンツの中これ入れさせてもらいますね。
勝家
:ふざけんな!やめんか!
長秀
:(海パンで)ああ、勇者の死が迫っている!させるかー!(水鉄砲で家康撃つ)
秀吉
:(海パンで出てくるがかなり鬱)
家康
:うわぁ~!耳に入った!中耳炎が!中耳炎がぁ!
ネイ
:タオルタオル。
家康
:いかん、こっちが少なくなっちまった。後詰の兵を呼ぼう。シャドー信玄カモーン!
光秀
:(海パンで)ははははは。拙者は武田信玄公の影武者であったが、信玄公が亡くなって家康方に再就職
したシャードー信玄。はっきり言って雑魚キャラである。
長秀
:くらえ!
光秀
:くらった!やられるためにだけ出てきたようなもんだ。ひでえよ。
ネイ
:タオルタオル。えい!(長秀を攻撃)
長秀
:あたた、やったな!
勝家
:よせ。滝川を攻撃すると反則負けになるぞ。
長秀
:マジ?じゃネイさんやり放題やん。
ネイ
:あ、そうよね、やり放題だわ。(バットで手当たり次第ポクポク殴る)
家康
:畳み込むぞ。軍楽隊!軍歌だ。歌で兵どもの士気を更に鼓舞せよ。
光秀
:天下の旗は徳川に、帰せし戦の関が原♪草生すカバネ今も尚、吹くか伊吹の山おろし♪(鉄道唱歌)
家康
:よし、この熱いビートのエモーション。いいぞ。圧勝ムードだ。
ネイ
家康
ネイ
:(秀吉に気付く)何しけたツラしてんだよ。オラオラ!(殴る)
:あのさ、その人元ダンだろ?俺がキメるからクリステルは手加減してやれよ。
:こんなヌケガラみたいな人間知らない。あたしが手を汚す価値もないわね。ならあたしが引導をあげるわ!
(秀吉のパンツの中に氷入れる)(あんまりだったら T シャツかなんか着せてその中に)
秀吉
:ギャー!!!目覚めた!ここは戦場か!ネイなんでこんなところに?そうか、家康に流行の拉致をされた
のだな。許さん!このケダモノめ!(家康に刀を投げつける)抜け!
家康
:いきなりマジモード突入か。望むところよ。でやー!!(数合斬り合わせ、刀合わせたまま固まる)
秀吉
:人の世は移ろいゆくもの。留めることなどできん。
家康
:無用な物を持つから人は惑い、苦しむのだ。全てを捨て去り生きてゆけば。
秀吉
:それが欣求浄土、厭離穢土か。が、貴様にだって捨てられぬものはあろうに。
家康
:俺はガキの頃、長いこと人質として生きてきた。大国今川と織田に挟まれ、無力さゆえ虫けらのように扱
33
われ何匹苦虫を噛み潰してきたかわからん。そんな中、織田の兄上だけが俺に優しかった。きっつい人だっ
た。しかし他人には見せない笑顔を、なぜか兄上は俺にむけてくれた。兄上だけが俺の全てだった。兄上の
強さと優しさに惹かれ、俺は犬コロのように兄上の後を後を追いかけた。敵中に置き去りにされたこともあっ
た。あらぬ謀反の疑いをかけられ、妻と嫡男信康を殺せと命令されたこともあった。俺は黙って妻子を滅ぼ
した。それだけ煮え湯を飲まされても尚兄上を追いかけ続けた。しかし兄上はこの俺を捨て、行ってしまわ
れた。ならば喜びも苦しみも、思い出の全てを捨てさせてもらう。ファイヤー!
勝家
:ああ、安土の城が燃える!
秀吉
:安土の会社が落ちる!
家康
:全てを失ったこの俺に、今さら捨てられないものなどあるか!(斬るが受けられる)
秀吉
:みじめな生い立ちなら俺の右に出るものはいまい。何も持たず生まれ落ちた俺は、命がけで拾い続けた。
この手に掴んだ宝物は何一つ捨てられやしない!(斬る、それを避けて家康後ろへ回り込み刺す)
家康
ネイ
秀吉
:もらった!
:あんた!
:これももっていけ!(自分ごと家康を刺す)そなたの兄上から授かった神剣。熱田神宮のご神体草薙の剣
だ。
家康
:ふっ、最期は命を捨てる気になったか。
秀吉
:どうかな。最期までなんか拾いたいものだが。
家康
:重過ぎると、三途の川を渡る舟が沈むぞ。
秀吉
:それもまた一興。
家康
:まあいい。では失礼仕る。(二人崩れる)
ネイ
:あんた・・・。死なないでよ。あんた、あんた、あんた。
長秀
:社長。俺、結局何もできなかった。
秀吉
:いや、まぁ、そこそこ使えるようになってきたぞ。
勝家
:社長。
秀吉
:この勝家専務はほっとくとすぐ戦争はじめちまうから。長秀、しっかり監督するんだぞ。ネイも仕事ちゃんとで
きるから、皆でチカラ合わせてがんばってな。露と落ち、露と消えにし我が身かな。安土のことも夢のまた夢。
ネイ、最後までうまく伝えらんなかったけど・・・。(死ぬ)
ネイ
:あんた!何よ、最後までいいなさいよ。
勝家
:長秀、三河殿を。
長秀
:あ、ハイ・・・。でも。
勝家
:今は・・・。な。
長秀
:わかりました。(家康を二人で運んで去る)
ネイ
:何よ好き放題やってさ。困るのよ、何かと。バカバカバカバカバカ。ムリムリムリ、絶対ムリ。やばいって。超や
ばい。やばいやばいやばいやばい。ていうかさ。ホントは生きてるんでしょ?(秀吉を頷かせる)うんうん。ウッ
キー、ばれたか。さっ黄泉がえり記念パーチーだぁ!親戚呼べ。お隣さんに声かけろ。家からはみだすくらい
人集めろ!レーザーカラオケ買ってこい。ビンゴゲームもやるぞ。一等賞品は黄金の小便小僧にしよう。て
34
いうか重いよあんた。ちゃんと自分で立ちなさいよ。それても寝言でもいってんの?
秀吉
ネイ
秀吉
ネイ
秀吉
:うん、寝言。
:あんた!
:あなたって言えよ。
:しぶといのね。茶羽ゴキみたいだわ。
:ひでえ言い草だなおい。しかしよ、運良く急所は外れたけど、手足の神経いかれちまったようだわ。手足が
まともにうごかねえ。これじゃ今までみたいにはたらけねえよ。
ネイ
秀吉
:まぁ生きてたから良しとしましょう。
:手足 4 本の内、左手一本しかうごかねえよ。可動率 25%だぜ。これじゃ俺が生きてくだけでアップアップだ
よ。お前養ってやれねえわ。別れよう。
ネイ
:ふざけんじゃないわよ、バカ。あたしは手足で 4 本あるから、二人合わせると可動率が8分の5あるじゃん。
なんとかなるわよ。うちらはもうなんていうか仕方ないのよ。腐れ縁なんだから。
秀吉
:でもお前、良く考えろよ。この先超大変だぞ。一人じゃ絶対きついって。
勝家
:一人とは限らんだろう?
秀吉
:専務。
長秀
:そうですよ。安土の会社は福利厚生がしっかりしてるんだから。みんなの手足を足して人数で割れば、ほと
んど 100%近い可動率っすよ。
秀吉
:おまえ・・・あの頼りないニートがそんな立派なこというようになったか。
長秀
:俺のアイデンティティにトロマでシャバイってのがあるんですが、そろそろ返上の時期かなと。うへへ。
勝家
:これで大団円だな。エンディングは何にするんだ?
長秀
:ちょっとその前に尿意が・・・もうあの人形ねえだろうな?キョロキョロ。よし、OK♪ジョパ~~。
SE
雷鳴
長秀
:うわぁぁぁぁぁぁ!
秀吉
:あ、超ミニマム人形が埋まってるじゃん・・・。(暗転)
3人
:やっぱトロマでしゃばかったわ。だせえ。
BGM
長秀
ダンスはうまく踊れない
:ハッ!今までのは夢だったのか?もしかしてもう一回最初から繰り返すんじゃないだろうな?まさかな。俺だ
ってやればできるんだ!現代社会でこれからの人生をがんばれ!俺!ってそういう落ちだよな。さりとて現
実のありさまは・・・なぁ。さて夢の余韻をひきずりつつ帰ってエロゲーでもやるか。らいむいろ万金譚とか、下
級生3とか。
蘭丸
:おう。長秀。
長秀
:あれっ!?蘭丸さんっていうか、信長様?
蘭丸
:これは都合がいい。お前も私の部下になれ。
長秀
:部下って・・・何するんですか?
35
蘭丸
:この日本をな、アメリカの51番目の州にするんだ。
長秀
:こっ、国賊!売国奴!
蘭丸
:なんだと、コラ!(ほっぺた引っ張る)
長秀
:あっ、すすすいません。ごめんなさい。
蘭丸
:アメリカの人口 2 億 8142 万人、日本の人口 1 億 2758 万人。これは乗っ取れるだろ。
長秀
:乗っ取るって・・・アメリカを?
蘭丸
:そうだ。しかしこの世界の腐り具合はすごいな。ジンジン痺れてきちゃうよ。絶対私の手でぶっつぶして、私
好みの世界に変えてみせるわ。それにはまずアメリカを始末します。
光秀
:右府様。ホワイトハウスへの直行便をチャーターしてきました。
長秀
:あっ、明智光秀。
蘭丸
:ごくろう。光秀、そなたはアメリカの民衆に親しまれ尊敬を受け円滑なる統治をなすため、アメリカの原住
民インディアンの伝説の帝王、ジェロニモの子孫ということにします。明智オクラホマの守ジェロニモと名乗り
なさい。
光秀
:かしこまりました。
蘭丸
:長秀は初代大統領ワシントンと奴隷解放のリンカーンの子孫にしましょう。ワシントン・ニューヨークの守・エ
イブラハムと名乗りなさい。
長秀
:もうわけわかんないです。
蘭丸
:うるさい!今から桶狭間以上の戦いに出陣します。どうするのか即決しなさい。
長秀
:いきます!連れてってください。
信長
:俺も!
蘭丸
:おお、我が影武者、蘭丸か。かまわんぞ。
秀吉ネイ勝家:ついでに我らも!
蘭丸
:その意気やよし。ならば、織田!!
全員
:ファイト・オー!ファイト・オー!ファイト・オー!!
蘭丸
:この世界に無限の正義を!
BGM
どんなときも。
終わり。
36
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