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リアル熟議 - 文部科学省

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リアル熟議 - 文部科学省
ヨコハマ熟議 報告書
平成 22 年 8月 3日
リアル熟議「ヨコハマの学校と地域∼明日からできること∼」を振り返って
Ⅰ
実施概要
<日
時> 平成 22 年6月 23 日(水)午後6時∼8時(交流会:午後8時∼9時)
<場
所> 都筑区役所6階大会議室(交流会:同6階レストラン「アミアン」
)
<テーマ> ヨコハマの学校と地域 ∼明日からできること∼
<目
的> ともすると形式的になりがちな「学校と地域の連携」をテーマに、教育現場に参加して
いるさまざまな人たちが参加し、議論を重ねることで、現場課題を明確にし、解決策を
浮かび上がらせ、参加者同士のつながりや信頼感を醸成するとともに、関係者が同じ目
的に向けて行動していく契機とする。
<参加者> グループワーク参加者 63 人(1グループ7∼8人で8グループ)
傍聴者 72 人
<流
計 135 人(交流会参加者:105 人)
れ> ① グループワークの説明、② 第1ラウンド:学校と地域の課題、③ 第2ラウンド:課
題の解決策、④ 各グループからの発表
<共
催> 文部科学省、横浜市教育委員会・北部学校教育事務所、港北区役所、緑区役所、青葉区
役所、都筑区役所
<協
力> 東山田コミュニティハウス、あおば学校支援ネットワーク
◆ ワーキンググループによる検証 ◆
熟議開催後、共催団体のスタッフと参加者・傍聴者からの有志で、ワーキンググループを立ち上げ、
当日の成果を具体的活動につなげるための話し合いを、定期的に開催してきた。本報告書の作成も、
ワーキンググループによる検証結果を取りまとめたものである。
Ⅱ
グループワークで出された意見
ヨコハマ熟議では、参加者63人を、A∼Hの8グループに分け(1グループ7∼8人)、第1ラウ
ンド・第2ラウンドでグループメンバーを入れ替え、話し合いをすすめた。第1ラウンドは、学校・
地域の連携をすすめるうえでの「課題」を、第2ラウンドでは、課題に対する「解決策」を、それぞ
れ黄色の付箋紙、ピンク色の付箋紙に参加者各自が書き込み、模造紙に貼り付けながら、意見交換を
すすめた。 以下、付箋紙に書き込まれた意見を、内容別に分類した結果を報告する。
<主な課題 = 第1ラウンド:黄色の付箋紙に書き込まれた意見>
1.学校支援ボランティアや地域の人材の必要性と運用上の課題
2.教職員の業務、人事、教育や意識、能力、地域への関わりに関する課題
3.学校と地域の連携や関係を向上するうえでの課題
4.今の子どもたちが抱える問題や教育のあり方に関する課題
5.学校からの地域への情報提供・共有不足とIT化に関する課題
1
課題分類項目
件数
%
学校支援ボランティアや地域の人材の必要性と、運用上の課題
37
15%
学校と地域の連携や関係を向上するうえでの課題
33
13%
今の子どもたちが抱える問題や、教育のあり方
27
11%
教職員の業務、人事、教育に関する課題
21
8%
教職員の意識、能力、地域への関わりに関する課題
20
8%
学校からの地域への情報提供・共有不足とIT化の遅れ
19
8%
学校と地域をつなぐコーディネーターの必要性についての課題
17
7%
地域、社会、価値観の変化に関する課題
14
6%
学校支援活動の運営上の課題
13
5%
PTAのあり方や、保護者に関する課題
12
5%
学校の組織体制や運営に関する課題
11
4%
中学、高校、大学生、高齢者など異世代交流の不足
7
3%
行政、外部、民間機関などとの連携
2
1%
10
4%
8
3%
その他
不明
251
<主な解決策 = 第2ラウンド:ピンク色の付箋紙に書き込まれた意見>
1. 教職員の意識、教育、地域への関わり、採用、人事、業務の改革
2. 学校と地域をつなぐコーディネーターの活用、有償化など運営の改革
3. 学校と地域の連携への取り組み
4. 学校からの情報提供・共有の改善とIT化の推進
5. 学校支援ボランティア、地域の人材の活用と運営の改善
解決策分類項目
件数
%
学校と地域をつなぐコーディネーターの活用、有償化など運営の改革
30
13%
学校と地域の連携への取り組み
28
12%
学校からの情報提供・共有の改善とIT化の推進
26
12%
職員の採用、人事、業務の改革
24
11%
学校支援ボランティア、地域の人材の活用と運営の改善
23
10%
学校開放の推進、学校運営協議会の設置や新しい取り組み
21
9%
教職員の意識、教育、地域への関わりについての改革
16
7%
PTA や保護者、親の関わり方による改革
11
5%
子どもの現状についての取り組みや教育の改革
11
5%
多世代の交流や中高大生・卒業生の活用の促進
7
3%
行政、外部、民間機関などとの連携への取り組み
5
2%
制度や方針の改革、課題解決のシステム作り
5
2%
不明
8
4%
10
4%
その他
225
2
Ⅲ
グループワークでの主な発言要旨
各グループが、模造紙に張られた付箋紙をもとに、どのような意見交換が行われたか、A∼Hグル
ープのファシリテーター役を務めた方に、当日の状況を振り返ってもらい、まとめていただいたコメ
ントを参考に、主な発言内容・意見交換の要旨を整理した。
・学校・保護者・地域が、それぞれ同じ方向で、課題を解決していくための「情報共有」、そのための
「時間確保」
、その根底を支える「信頼関係」が必要である。
・地域と学校は並立するものではなく、地域の中に学校があるという認識に改める必要がある。
・学校は、学校を良くするために地域の力が必要と認識し、地域は、学校のために力を貸したいと考
えており、思いは同じである。
・地域からは「積極的に手伝ってもいいのか」
、学校からは「積極的にお願いしてもいいのか」という
発言があり、相互に心理的な壁がある。
・中学校は、複数の地域とつながりをつくる必要がある。連携の内容にも、地域格差がある。
・教員は、地域連携をすすめるための、まとまった時間がとれない。忙しすぎる。教員の定数増が必
要である。
・教員が地域とかかわる場所もない。学校に地域担当者を配置し、ボランティア用スペースを確保し
てもらいたい。
・ボランティアと保護者の話し合いの場づくり、地域・学校・ボランティアの協働によるイベント企
画などでコミュニケーションが良くなっていく。
・連携をすすめることで、教員が忙しくなっていく。一度はじめた活動をやめることができず、肥大
化していく。
・教員の地域連携に対する意識が低い。校長・副校長は理解していても、一般教員の理解は低い。教
員のコミュニケーション能力も高める必要がある。
・学校側の窓口である教員が異動すると、情報がうまく引き継がれず、これまでの関係が途絶える。
情報や経験の蓄積が継続的に引き継がれる仕組みづくりが必要である。
・連携を推進・定着するためには、人(特定の個人)に頼る連携ではなく、組織で対応する連携にす
べきで、学校運営協議会などの活用が望まれる。
・区役所と学校の連携が不十分である。区で、教育課題に取り組むようにすれば、学校を高めるため
に、地域力を活用できるようになる。
・人が集まる工夫、人を離さない工夫、情報を伝達する工夫が必要である。
・地域をよく知る教員を増やすため、教員の任期(異動年数)を長くしてほしい。
・マンションに自治会がなかったり、長く住む人と新しく住み始めた人とのギャップのあるところな
ど、地域コミュニティのあり様はさまざまである。
・ボランティアの学校への理解も十分ではない。学校からの情報発信が必要である。
・学校が何をしているのか、学校で何が起きているのか、地域に伝わってこない。学校情報をオープ
ンにする必要がある。
・どのような支援が必要か、学校から具体的な内容を示してほしい。
・地域と学校をつなぐコーディネーターの養成が重要である。
・学校支援ボランティア、コーディネーターが不足している。善意に頼っている状況である。地域の
社会福祉協議会との連携で、人材を掘り起こしてはどうか。
・地域の学校に対する関心や関わり方が十分ではない。コーディネーターの人材養成などについて、
地域から学校・教育委員会に働きかけを強めるべきである。
・コーディネーターなどの人材を確保するためには、財源を確保し、活動資金を保障する必要がある。
3
Ⅳ
見えてきた課題
グループワークでの発言内容を踏まえ、今後、地域と学校の連携を深めていくための課題を、次の
とおり整理した。
1.地域・学校とも、連携の必要性、重要性に共通理解があることは確認された。しかし、子どもに
とって、連携がどういう意味をもつのかについての意見交換は見られなかった。今後、子どもの視
点から、どういう連携が効果的かという議論が必要になってくると思われる。
2.学校運営の課題が地域から見えにくく、どのような支援が必要かわかりづらいことから、学校が
何に困っていて、どういうサポートを望んでいるのか、積極的に情報発信していく必要がある。
3.学校が地域のキーマンを知り、地域人材と学校の教員が信頼関係をつくることが不可欠である。
そのためには、特定の教員が属人的に地域との関わりを持つだけではなく、学校全体が組織的に地
域との連携に取り組む必要がある。地域との関係を継続的なものにするためには、教員の任期(異
動年数)も考慮すべきである。
4.学校のニーズに的確に応えることのできる人材の養成が求められており、人材育成に実績のある
地域の団体などに、その役割を担ってもらう方策を検討していくべきである。人材育成には、地域
の状況をよく把握している区役所が、主体的に取り組んでいくことも大切である。区役所が、地域
人材や活動団体を掘り起こし、学校のニーズとマッチングしていく役割を期待したい。
5.地域連携で成果をあげている効果的な事例もたくさんあり、いろいろな地域の取組に生かすこと
ができる。教育委員会や区役所が成功事例を情報収集し、発信していくことで、取組の輪を広げて
いくことが大切である。
6.コーディネーター、学校支援ボランティア等の活動を保障するため、教育支援隊を効果的に運用
していく必要がある。
◆ 横浜市の取組の現状 ◆
横浜市では、地域との連携を深め、地域の教育力を取り入れるため、地域交流室の整備、地域
コーディネーターの養成、学校支援地域本部の設置、教育支援隊の創設等をすすめている。また、
平成 17 年に、東山田中学校に学校運営協議会が初めて設置され、平成 21 年には 36 校、平成
22 年度中には 60 校まで増える予定となっている。
一方、市民の教育への関心も高く、学校支援ボランティアの活動も多彩に展開され、それに伴
い、中間組織のコーディネート機能が注目されている。
Ⅴ
今後の取組の方向性
課題を受けて、それぞれの立場から、どのような方向性で取り組んでいくべきか、ヨコハマ熟議ワ
ーキンググループが意見交換をし、具体策を考察した。
1.「学校」として・・・
①
地域や保護者が、
学校教育や子どもの今について理解がすすむよう、情報提供と共有を進める。
ホームページの充実のみならず、既存の方法にとらわれない工夫をする。
②
コーディネーターやボランティアとの連携を、意識だけでなく、具体的に学校運営の大切な一
部として位置づけ、時間の確保や機会の提供などに積極的に取り組む。
③
地域交流室など、コーディネーター・ボランティアの活動の場を、工夫して提供する。
④
学校運営協議会など既存組織の活用も含め、地域の実情に応じた地域連携推進体制を整備する。
4
⑤
地域人材とのパイプ役となる「地域連携担当」を指名し、コーディネーターと協働して、ボラ
ンティアの受け入れ調整や地域との行事共催企画、その他子どもを支援するための地域人材・地
域関係機関との連絡調整に取り組む。
2.「地域・保護者」として・・・
①
学校支援ボランティアや地域の人材として、学校を直接支援するよう努める。
②
コーディネーターとして、学校と地域をつなぐ活動のみならず、学校支援ボランティアの募集
や養成に主体的に取り組む。また、
自らもコーディネーター間の情報共有やスキルアップに努め、
ネットワーク化に寄与する。
③
学校のホームページや学校だよりの作成に、ボランティアとして貢献する。
④
教職員の地域を知る取組に積極的に協力し、顔の見える関係をつくる。
⑤
人材育成に実績のある団体のスタッフやボランティア研修修了者が、学校支援ボランティアの
育成に協力する。
3.「区役所」として・・・
①
ボランティア・コーディネーターの養成や、区全体の学校支援活動が効果的に進むように、地
域住民、市民グループ、学校、方面別学校教育事務所、関係機関等と連携する。
②
区民活動支援センター、国際交流ラウンジ、区社会福祉協議会、青少年指導員、体育指導委員、
NPO 団体等に働きかけて、ボランティアの拡充や教育支援隊の充実に努める。
③
地域情報(地域人材・各種団体の活動内容)を学校・教育委員会と共有化できるよう、情報提
供に努める。
④
それぞれの区において、地域の特性に合わせた地域連携事業を推進していく。
・港北区では、
「港北区学校・家庭・地域連携推進会議」を設置し、青少年が自立心を持ち、
人間性豊かに育つことを目的に、中学校区ごとに、各種団体や地域住民の方と連携調整を
図り、様々な事業を展開しており、引き続き取組をすすめていく。
・緑区では、区独自予算で、中学校区ごとの学校・家庭・地域連携事業と職場訪問事業を支
援していく。これにより、児童・生徒と地域の大人との交流が活発になり、地域で育む青
少年育成を進めていく。
・青葉区では、学校支援に関する取組の拡大を目指し、地域住民、市民グループ、大学、関
係機関等と連携し、情報の提供をすすめる。
・都筑区では、「都筑区こども・青少年育成計画」に基づき、中学校区ごとの学校・家庭・
地域の連携強化と子育て支援ネットワークの形成を目指し、取組をすすめる。
4.「教育委員会」として・・・
①
教育委員会の中に地域連携担当者を明確に位置づけ、地域や学校の実情に応じた教育支援隊の
活用方策のあり方検討や、効果的な人材育成プログラム開発をすすめる。
②
学校における地域連携担当の位置づけを明確にすることで、各学校での組織的な取組を推進す
る。また、方面別学校教育事務所にも地域連携担当を置き、地域連携事例の情報収集と効果的な
情報発信を行うとともに、学校間の情報交換・交流の場づくりをすすめる。
③
「地域コーディネーター」の養成・スキルアップに努めるとともに、学校における地域連携担
当とコーディネーター・ボランティアとの交流の場づくりなどに取り組み、ネットワーク化をす
すめる。
④
既存組織の活用も含めた地域連携推進体制の整備を、各学校に働きかける。
⑤
地域連携を推進する教職員の異動年限について、地域との良好な関係を持続する観点から検討
を行う。
5
⑥
市民局と調整しながら、地域と学校の連携を推進する「場」としてのコミュニティハウスのあ
り方を再構築する。
5.「すべての関係者」が・・・
地域と学校との連携をすすめる取組に、さまざまな立場の人たちが主体的に関わっていくため、
より身近な地域レベルで熟議が開催されるよう努めていく。
6.「文部科学省」には・・・
学校運営協議会や学校支援地域本部の推進、学校施設の柔軟な利用促進のほか、本報告書に提
案されている各種方策が円滑にすすむよう、必要な制度保障、財源確保に努めてもらいたい。
<概念図> 学校・地域の連携を推進するためのこれからの姿
学
校
地域連携担当
地
域
教育委員会
の
方面別事務所
コーディネーター
地域連携担当
コーディネーター
ネットワーク
団体・グループ
区 役 所
学校支援ボランテ
学校支援
ィアグループ等
連携担当
連携・協働して取り組んでいきます。
①
②
③
情報共有・情報発信
事業の企画・運営
人材育成(研修等)
6
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