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DVDプレーヤやディジタル・ カメラなど,大量生産されるディジ

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DVDプレーヤやディジタル・ カメラなど,大量生産されるディジ
ここでは,大量生産される電子機器の中核となるASIC を開発
パソコンはもちろんのこと,DVDプレーヤやディジタル・
するにあたって,設計技術者に求められる素養や技能について
カメラなど,大量生産されるディジタル情報家電機器には
説明する.設計技術者には,開発目標となる製品についての知
大規模なASIC(application specific integrated circuit;
識はもちろん,それらの製品や要素技術の将来動向を見通す先
特定用途向け IC)が必要不可欠になっています(写真 1,
見性が要求される.また,量産 ASIC の開発では,歩留まり,
図1).言い換えれば,
「大規模ASICの機能や性能が情報家
すなわち回路設計余裕度(マージン)を意識した設計が重要にな
電機器の価値を決める」と言っても過言ではない時代にな
る.機能や性能に加えて,歩留まりもまた,その製品の成否を
ってきたということでしょう.これは,ディジタル技術の
左右する重要な要素となる.
発展による高度なサービスの出現により,従来のような,
エーシック
(編集部)
だれにでも手に入る汎用半導体部品を組み合わせるだけで
は,特徴のある製品を作り出せなくなってきたということ
です.
映像機能
(画像プロファイル)
ゲート規模
1,500万
HD
(high definition)
ホーム・
サーバ
1,000万
DVD
レコーダ
SD
(standard defintion)
500万
DVD
プレーヤ
低速通信
セットトップ・
ボックス
Mbps
ネットワーク
ブロード
バンド放送
通信機能
〔図1〕ディジタル情報家電機器のASIC 規模
〔写真1〕最近の大規模ASIC の例
MPEG-2 CODEC(coder / decoder)のASIC.東芝のMePプロセッサ・コ
アを6個使用している.そのうちの4個を使って映像データの圧縮・伸張を
行う.ほかの1個はオーディオ・データの圧縮・伸張,最後の1個はシステ
ム全体の制御を行う.このASICの規模は約350万ゲート.
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Design Wave Magazine 2003 November
ネットワーク接続対応のディジタル情報家電機器に搭載されるASICの回路
規模は,映像機能と通信機能から推測できる.DVDプレーヤ用ASICでは,
MPEG-2デコーダと周辺機器接続の低速通信インターフェースで構成され,
約400万∼500万ゲートの規模となる.さらにDVD録画機能を持ったDVD
レコーダでは,MPEG-2エンコーダが追加されるとともに,Ethernetなどの
高速通信機能が必要となるため,700万∼800万ゲートの規模となる.MPEG
CODECを持たないセットトップ・ボックスは200万∼300万ゲートの規模
となり,HD(high definition;ハイビジョン解像度)の映像データを複数本処
理するホーム・サーバ用ASICの規模は1,000万ゲートをはるかに超える.
量産設計で,
のるか そるかの大勝負!
そるかの大勝
大勝負!
!
120日
RTL設計のASIC
90日
仕様設計
機能設計・検証
90日
60日
論理合成・検証
レイアウト,ES製造
ファームウェア設計・検証
120日
仕様設計
Cベース設計のASIC
Cモデリング・検証
(ハードウェア・ファームウェア協調設計)
90日
60日
論理合成・検証
レイアウト,ES製造
ファームウェア検証
ES:engineering sample
(機能評価用の試作チップ)
〔図3〕300 万∼500 万ゲート規模のASIC の開発期間
300万∼500万ゲート規模のディジタル情報家電機器用ASICの開発期間の例を示す.これは,既存のIPコア(MPEG CODECなど)の組み合わせによってASICを
設計した例である.機能設計をRTL(register transfer level)で行う手法では,開発に1年近くかかっている.なお,筆者らはC言語ベースの設計環境も利用してい
る.この手法だと,開発期間を約30%短縮できる.
●量産ASIC の設計技術者に要求される二つの素養
このように大量生産される大規模ASICを設計する技術
者には,次のような素養が必要とされています(図2).
まず,ASIC設計者は開発目標となる製品に精通している
ことが要求されます.製品の付加価値となる機能や性能,
それらを実現する回路構成を熟知しておかなければなりま
せん.もちろん,それらの回路を半導体上で効率良く実現
1
するための半導体技術の知識も必要です.また,実際の設
計には,多くの機能を集積した半導体回路が正しく動作す
ることを検証するための手法やEDAツールを高度に使い
こなす能力も必要でしょう.
〔図2〕量産ASIC の設計者に必要な素養
ASIC設計者は,開発目標となる製品に精通していなければならない.また,
開発目標となる製品やASIC技術の将来を予測する技能も必要になる.
次に必要となるのは,開発目標となる製品やASIC技術
の将来を予測する技能です.ASIC開発は大規模になれば
なるほどその期間が長くなります(図3).開発を開始した
ト・パソコンの性能向上を図ることにありました.
時点では先進的な技術であったはずのものが,開発が完了
ここでの大きな課題は,
「電池駆動であるノート・パソコ
した時点では陳腐化してしまっていた,ということもまれ
ンのために,いかにして電力消費を抑えながらシステムを
ではありません.逆に,容易に実現可能だろうと予測した
実現するか」
,そして「32ビットとバス幅の広いPCIバスを,
技術が,実際には実現困難だったという事態も起こります.
いかにしてコンパクトに実装するか」ということでした.
ノート・パソコンにPCIバスを導入する場合,実装上の
●2 年の開発期間の間に先進技術のコストが下がっていた
制約が大きいことから,まず,PCIバスの電気的特性をノ
筆者が経験したプロジェクトを二つほど紹介します.
ート・パソコン向けに最適化することにしました.そのた
一つ目の例は,ノート・パソコン用チップセットを開発
めに,バスの消費電力を低減し,ASIC内部にも低消費電
するプロジェクトです.
力化のための回路を組み込みました.実装面については,
本プロジェクトを企画した当時は,デスクトップ・パソコ
BGA(ball grid array)パッケージを採用してコンパクトな
ンが入出力バスとしてPCI( Peripheral Component Inter-
実装を達成しました.プロジェクトを開始した当時は,ま
connect)を採用し始めたころで,この新方式のおかげで高
だBGAは一般的な技術ではありませんでした.ところが,
性能を実現することが可能となりました.一方,ノート・
2年の開発期間が過ぎるころには,コスト的にも安価に利
パソコンでは従来のISA(Industry Standard Architecture)
用できるようになっていたのです.
バスが使用されていました.この開発プロジェクトの目標
は,PCIバスをノート・パソコンの世界に持ち込み,ノー
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