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中文契約書の基礎知識 目 次
第1講 中日契約書翻訳 基本教材 【体験版】 中文契約書の基礎知識 目 一 中国の法制度 1 中国の法源体系 2 中国の司法制度 二 中国契約法 1 中国契約法制定の背景・経緯 2 中国契約法の構成 3 中国契約法の特徴 4 中国契約法の体系 5 中国契約法の適用範囲 6 中国契約法と司法解釈 三 中文契約書の背景 1 中文契約書の特徴 2 中文契約書の構成 3 中文契約書の基礎知識 四 次 中文契約書雛型(モデル契約書) 1 @2008 BUPST 中日契約書翻訳 第1講 基本教材 一 1 【体験版】 中国の法制度 中国の法源体系 (1)中国法の形式 広義の中国法の形式には、①「憲法」、②「法律」、③「行政法規」、④「国務院部門規章」、 ⑤「地方性法規」、⑥「自治条例」・ 「単行条例」 、⑦「地方政府規章」、⑧「軍事法規」、 ⑨「特別行政区法令(香港、マカオ)」、および⑩「国際条約」がある。 なお、最高裁(最高人民法院)が随時公布する司法解釈というものが存在する。厳密な 意味では、これは法源とはいえない。 法の形式・法の制定機構図 法の形式 法の制定機構 憲法 全国人民代表大会 法律 全国人民代表大会またはその常務委員会 行政法規 国務院 国務院部門規章 国務院の下にある各部、委員会、中国人 (部門規則) 民銀行等(29)および直属機構(18) 地方性法規 ①省レベル、②比較的大きな市の人民代 表大会又はその常務委員会 地方政府規章 ①省レベル、②比較的大きな市の人民政 (地方規則) 府 自治条例・単行条例 民族自治地方の人民代表大会 司法解釈 最高裁(最高人民法院) 注:比較的大きな市とは、①省、自治区人民政府所在地の市、②経済特区所在地の市、 ③国務院が批准したその他の比較的大きな市をいう。 2 @2008 BUPST 中日契約書翻訳 第1講 基本教材 【体験版】 国家の機構図 中国 日本 全国人民代表大会 国会 国務院 内閣府 国務院の下にある各部、委員会、中国人民銀行 等(29)および行政管理職能を有する 内閣府の下にある各省 直属機構(18)(たとえば、工商局) 最高人民法院 最高裁判所 ①「憲法」 「憲法」は、国家の基本的な政治制度(社会主義制度)や基本原理を定める最も根本的 な法規範であり、全国人民代表大会(日本の国会に相当するもの)がこれを制定する。 「憲法」については、1954 年に最初の憲法が制定され、1975 年、1978 年、1982 年に憲 法がそれぞれ新たに制定された。憲法が 1982 年に制定して以来、4 回にわたって、その改 正を経て現在に至ったのである。 ②「法律」 「法律」は、全国人民代表大会及び全国人民代表大会常務委員会がこれを制定する(立法 法 7 条 1 項) 。法律のうち、基本的法律というものがある。基本的法律は、全国人民代表大会 が制定し、基本的法律以外のものは、全国人民代表大会およびその常務委員会がこれを制 定する。基本的法律という概念は、中国の独特なものである。 物権法及び独占禁止法を除いて、日本や欧米等の先進国にある法律は、すべて中国にも ある。物権法及び独占禁止法については、立法検討作業が進められており、来年成立する 予定である。 ③「行政法規」 「行政法規」は、国務院(日本の内閣府に相当するもの)が「憲法」および「法律」に 基づきこれを制定する(立法法 56 条 1 項)。その形式は、条例、規定、弁法等と表記される。 たとえば、「中外合資経営企業法実施条例」等がある。これは、日本の「府・政令」に相当 するものである。 ④「国務院部門規章」(部門規則) 「国務院部門規章」は、国務院の下にある各部門、委員会、中国人民銀行、審計署、お よび行政管理職能を有する直属機構(日本の内閣府の各省庁に相当するもの)が「法律」、 並びに国務院の「行政法規」、 「決定」及び「命令」に基づき、これを制定する(立法法 71 条 1 項) 。その形式は、規定、弁法等と表記される。たとえば、 「中外合作経営企業法実施細則」 3 @2008 BUPST 中日契約書翻訳 第1講 基本教材 【体験版】 等がある。これは、日本の「省令」に相当するものである。 ⑤「地方性法規」 「地方性法規」は、①省・自治区・直轄市、②比較的大きな市、の人民代表大会又はそ の常務委員会がこれを制定する(立法法 63 条 1 項、2 項)。その形式は、条例、規定、および 弁法等と表記される。 比較的大きな市とは、①省・自治区人民政府所在地の市、②経済特区所在地の市、③国 務院が批准したその他の比較的大きな市ということである(立法法 63 条 4 項)。 ⑥「自治条例」・「単行条例」 「自治条例」・「単行条例」(同個別分野の条例)は、民族自治地方の人民代表大会が当該 地方の民族の政治、経済、および文化の特色に従って、これを制定する(立法法 66 条 1 項)。 これは、地方性法規に属するものである。 自治区の「自治条例」・「単行条例」は、全国人民代表大会常務委員会の認可を受けて効 力を生じる。自治州、自治県の「自治条例」と「単行条例」は、自治区、自治省の人民代 表大会常務委員会の認可を受けて効力を生じる。 ⑦「地方政府規章」(地方規則) 「地方政府規章」は、①省・自治区・直轄市、②比較的大きな市、の人民政府が法律、 行政法規および当該省・自治区・直轄市等の「地方性法規」に基づきこれを制定する(立法 法 73 条 1 項)。その形式は、規定、および弁法等と表記される。 比較的大きな市という定義については、前述の⑤を参照。 ⑧ 司法解釈 司法解釈とは、最高裁(最高人民法院)が、法律の実施過程で生じた法律問題において、 いかに具体的に対応するかについて、一般的な法的効力の解釈を示すことをいう。すなわ ち、法令の適用に関する最高裁(最高人民法院)の公式の解釈を意味する。 4 @2008 BUPST 中日契約書翻訳 第1講 基本教材 【体験版】 (2)中国法の効力の順位 中国法の効力の順位図 憲法 法律 行政法規 地方性法規{①省レベル地方性法規・②比較的大きな市の地方性法規} 部門規章 地方政府規章{①省レベル政府規章・②比較的大きな市の地方政府規章} 注: 上、下位関係を有することを指す。 上、下位関係を有せず、同等関係を有することを指す。 ① 「憲法」は、最高規範性を有するものである。 「法律」、 「行政法規」、 「地方性法規」、 「自治条例」・「単行条例」、「国務院部門規章」、「地方政府規章」などは、すべて憲法に抵 触してはならない(立法法 78 条)。 ② 「法律」の効力は、「行政法規」、「地方性法規」、「国務院部門規章」および「地方政 府規章」などより上位である(立法法 79 条 1 項)。 ③ 「行政法規」の効力は、「地方性法規」、「国務院部門規章」および「地方政府規章」 より上位である(立法法 79 条 2 項)。 ④ 「地方性法規」の効力は、同レベルおよび下位の「地方政府規章」より上位である。 省・自治区の人民政府が制定した「規章」の効力は、同行政区域内の比較的大きな人民 政府が制定した「規章」より上位である(立法法 80 条)。 ⑤ 「国務院部門規章」と他の「国務院部門規章」、及び「国務院部門規章」と「地方政 府規章」、ならびに「国務院部門規章」と「地方性法規」との間には、その効力において同 等であり、各自の権限の範囲内に権限を行う(立法法 82 条、立法法 86 条 1 項 2 号、3 号)。 ⑥ 前述のとおり、その効力において同等であるが、「国務院部門規章」と他の「国務院 部門規章」、および「国務院部門規章」と「地方政府規章」との間に齟齬が生じることもあ る。この場合、国務院が決定するとされている(立法法 86 条 1 項 3 号)。また、「国務院部門 規章」と「地方性法規」との間に齟齬が生じることもある。この場合、国務院が決定する 5 @2008 BUPST 中日契約書翻訳 第1講 基本教材 【体験版】 とされている。ただし、国務院が「国務院部門規章」の適用を受けるべきであると判断し た場合は、国務院が全国人民代表大会常務委員会にその旨の採決を求めることになる(立法法 86 条 1 項 2 号)。 2 中国の司法制度 中国の司法制度には、調査制度、検査制度、裁判制度、監獄制度、司法行政管理制度、 人民調停制度、弁護士制度、公証制度、国家賠償制度などがある。 民事に関する法的紛争を解決する方法は、大別として、裁判所に訴訟を起こす方法と仲 裁にその解決を求める方法がある。中国の民事訴訟法では、裁判所に訴訟を起こす方法に するか仲裁にその解決を求める方法にするか、その解決方法として一つしか選択すること ができないとされている(民事訴訟法 257 条)。 (1)裁判制度 中国の裁判制度は、厳格にいえば、人民法院の制度である。中国において「人民法院」 というものは、日本の裁判所に相当するものである。人民法院は、憲法において、①「最 高人民法院」 、②「地方レベルの人民法院」、③「専門人民法院」という 3 種がある。 「地方 レベルの人民法院」は、「高級人民法院」、「中級人民法院」、および「基層人民法院」に分 けられている。「専門人民法院」には、「軍事法院」、「海事法院」、および「鉄道運輸法院」 などがある。なお、「専門人民法院」は、「中級人民法院」のレベルに属する。 段階別に分けると、中国の「人民法院」は、「最高人民法院」、「高級人民法院」、 「中級人 民法院」、「基層人民法院」の4階層がある。 なお、中国の裁判制度は、日本の三審制と異なり、二審制である。この点について注意 すべきである。 (2)仲裁制度 ● 仲裁のメリット 仲裁のメリットとしては、①専門的知識を有する者を仲裁人に選任できること、②非公 開なので、秘密を保持できること、③手続が簡単であること、④一審限りなので迅速に解 決できることなどがある。 法的紛争を裁判所で解決しようとしても、日本と中国のいずれかの国で出された裁判所 の判決が、他方の国では執行することができない。 しかし、仲裁の場合は、日本と中国のいずれの国で出された仲裁判断は、他方の国では 執行することができる。よって、民事に関する法的紛争を解決する方法として、仲裁を利 用する場合は多い。 6 @2008 BUPST 中日契約書翻訳 ● ・ 第1講 基本教材 【体験版】 仲裁機関 日本において国際商事紛争を取り扱う仲裁機関は、「日本商事仲裁協会」(Japan Commercial Arbitration Association)である。 ・ 中国で国際商事紛争を取り扱う代表的な仲裁機関は、①「中国国際経済貿易仲裁委員 会 」( China International Economic and Trade Arbitration Commission= 「CIETAC」)、②「海事仲裁委員会」(China Maritime Arbitration Commission= 「CMAC」)がある。 「CIETAC」は商事紛争一般、 「CMAC」は海事紛争専門である。 「CIETAC」は世界最大の仲裁センターである。 ・ 香港において国際商事紛争を取り扱う仲裁機関は、「香港国際仲裁センター」(Hong Kong International Arbitration Centre)である。 ・ 英国において国際商事紛争を取り扱う仲裁機関は、 「ロンドン国際仲裁裁判所」(London Court of International Arbitration)である。 米国で国際商事紛争を取り扱う仲裁機関は、「米国仲裁機関」(American Arbitration ・ Association)である。 ・ シンガポールにおいて国際商事紛争を取り扱う仲裁機関は、「シンガポール国際仲裁セ ンター」(Singapore International Arbitration Centre)である。 ・ 日本・東京、フランス・パリなどで国際商事紛争を取り扱う仲裁機関は、「国際商工会 議所」(International Chamber of Commerce)である。 ● 契約書における仲裁条項の規定の方法 実務上、契約書における「仲裁条項」の規定の方法としては、以下のとおりである ① 日本商事仲裁協会による仲裁とする方法 ② 中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)による仲裁とする方法 ③ 第三国(日本と中国以外の国)の仲裁機関による仲裁とする方法 ④ 被申立人の所在国の仲裁機関による仲裁とする方法 (中国企業が申立人となる場合は、日本商事仲裁協会によって仲裁を行うのに対して、日本企業が申立 人となる場合は、中国国際経済貿易仲裁委員会によって仲裁を行う) 以降は正規版をご覧ください 7 @2008 BUPST