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21世紀の高等教育アドミッション
アメリカは初中等教育と高等教育の間の“溝(Chasm)”に
橋をかけることができるだろうか?
Dr. Amy Elizabeth Schmidt
Dr. Wayne J. Camara
June 2010
アメリカのおけるカレッジ・アドミッションの略史:
如何にして今に至るか?
1900年11月にカレッジボード(College Board)が誕生した。それは、「
19世紀が終わろうとする時、無秩序な教育界に法律と規律を持ち込む
試みではあったが、高校の校長たちにとっては、彼らを憤慨させ、実際
、我慢のならないものとなった。」(Angoff& Dyer, 1971)
カレッジボード(College Board)の誕生以前には、志願者は大学で学ぶ
ために、どのような準備ができているべきだ、といったことについて、大
学間の合意は全くなかった。
略史 (つづき ・・・・・・)
高校や大学と協力をしながら、カレッジボードは、試験制度
の基盤を形成する科目履修要件のシステムを構築した。
• 最初の試験は、1901年に実施され、9科目(英語、フランス語、ドイツ語、ラ
テン語、ギリシャ語、歴史、数学、化学、物理)によるエッセー試験であった。
• 1926年6月、多肢選択法(Multiple Choice)によるSAT (Scholastic
Aptitude Test 大学進学適性試験、現在は、Scholastic Assessment Test)
が実施され、8,040名が受験した。従来のエッセー試験は新しい試験に代わ
った。
略史 (つづき ・・・・・・)
Testing(テストの開発と利用)は、1940年代および50年代
に、アメリカで急速に発展した。
• カレッジボードは、大学入学の試験プログラムに多肢選択法の到達度テスト
を導入した。
• 1944年に軍人社会復帰法(Servicemen’s Readjustment Act, 通称”GIビル”)
が導入され、第二次世界大戦の終結とともに、大量の帰還兵に高等教育の
門が開かれた。そして、アドミッションテストの要求が高まった。
• ETS (Educational Testing Service)は、カレッジボード、カーネギー財団、
ACEアメリカ教育協議会のテスト事業を合併するかたちで発足した。
略史 (つづき ・・・・・・)
• 1950年代、カレッジボードは、AP(アドバンスト・プレイスメント)
のコースと試験を開発し、更なる事業展開を行った。
• ACT, Inc.( American College Testing)プログラムは、1959
年にアイオワ州(Iowa City)に誕生した。彼らの開発した試験
は、中西部の大学を中心としてアドミッションのために利用さ
れた。現在では、中西部に止まることなく、広く全米で利用され
ている。
• SATは、改良を重ね、現在は、Critical Reading(語彙力と文
の構造の理解)、Mathematical Reasoning(数学) 、Writing
(英文法の知識や文章構成力の技量、エッセイを書く技量)か
ら構成されている。そして、広く全米で利用されている。
現在、アメリカのアドミッション・プロセス(入学者選抜
の過程)はどのようになっているか?
• 現在、4年制大学が2,100校、2年制大学が1,700校。
• 2年制大学(コミュニティカレッジとテクニカルカレッジ)の多くは、オープ
ン・アドミッション(入学の際に高校卒業等の基本的条件を満たせば、成
績に関係なく入学できる制度) を取っている。すなわち、高校の卒業証
書、もしくはGED(高卒認定証書)が求められるが、アドミッションテスト
の成績は求められない。
• 4年制大学の内、14%が選抜的(Selective:志願者の内、入学が許可
されるのが50%未満)と認識されている。実際、71%の大学は、志願者
の内、尐なくとも70%に入学許可を与えている。
Factors Used by Colleges to Make Admissions
Decisions (大学で入学者決定に利用される要因)
Percentage of colleges who responded that a factor was of “considerable
importance” (“かなり重要”と大学が回答した要因の%)
Data Source: NACAC Admission Trends Survey, 2008
大学で入学者決定に利用される要因
• 様々な要因の重要性は、大学のタイプによって異なる ー
公立vs私立、大規模vs小規模、選抜的vs非選抜的。
• たとえば、私立の選抜的大学は、エッセー、インタビュー、課外活動実績、科目
テストの成績(SAT科目テスト、APテスト)を重視する傾向にあり、非選抜的公
立大学は、高校でクラス内順位、成績、アドミッションテストの成績を重視する傾
向にある。
• 大学はそれぞれ、理念、使命、そして、その大学に学ぶ実
際の学生集団の特徴によって、アドミッションに際してそれ
ぞれに異なったタイプのアプローチを用いる。
実際に利用されるアドミッションモデル
• 1998年と1999年、カレッジボードは、全米の大学からアドミッ
ションオフィサーたちを招集した。アドミッションモデルの分類
法を構築するための準備であった。その結果、理念によって9
つの異なったアドミッションモデルが明らかになった。
• 非選抜的大学では2つのモデルが利用される。資格型アクセスおよび
開放型アクセスのモデルである。これらのモデルでは、資格(高校の卒
業証書など)を示すことで、あるいは、学力の証明(プレイスメントテスト
の成績など)を持っている志願者に入学を許可する。
実際に利用されるアドミッションモデル
• 競争的志願者の集団の中で、ある程度、なにかしらの選抜
機能を内包するモデル:
• “実践(Perform)する能力”モデルでは、学業上の、そして人間的な資質
はもっとも重要な要因である。
• “利益(Benefit)に対する可能性”モデルでは、志願者は高等教育からの
恩恵の程度で評価される。そして、彼らは教育における逆境を乗り越え
たかどうかで判断される。
• “貢献(Contribute)の可能性” モデルでは、経済力とか、才能/技能/
知識といった要因は、学生数の“拡大” に必要であり、また、将来の大
学に対する貢献力は非常に重要であると認められる。
実際に利用されるアドミッションモデル
• 実際、大学は、異なった生徒集団に対して異なったモデル
を適用している。
• 多様な州民を受け入れる州立大学において顕著であるが、人種/民族
的に多様な生徒をリクルートし、入学させることに関心が高い。こうした
生徒集団にとっては、“利益性”モデルは最適である。
• 大学は、芸術や音楽、そして身体能力と言った特別な才能を持つ生徒
をリクルートすることに関心が高い。そして、こうした生徒集団にとって
は、“貢献性”モデルが適している。
• いわゆる”遺産型“志願者。彼らは、特定の大学で入学を許可されたこ
とのある人が家族内にいる志願者であり、卒業後も大学を支援し続け
ている人たちである。こうした生徒集団も “貢献性”モデルが適している
。
Example of an Admissions “Decision Tree”
アドミッション“決定ツリー”の事例
From Perfetto, Graff, Escandon, Schmidt, & Rigol, 1999, “Toward a
Taxonomy of the Admissions Decision-Making Process”. College Board,
New York, NY.
何が大学を動かしているか?
• アドミッションにおいて、アドミッション・ポリシー(入学者選抜
の方針)は、内的な、そして外的な様々な要因に影響を受け
ている。
• 組織の考慮 ーアドミッションは、毎年、適切な数の学生を入学させる。そ
れによって大学は資金を得るが、適性規模は超過しない。
• 社会的な認知 ー大学は、様々な機関によってランク付けされる。その中
で、最も影響力が大きいのは、US News and World Report である。
→ “選抜性 (Selectivity)” ーすなわち、大学に入学を許可された生徒の比率、
そして、”産出 (Yield)” ーすなわち、大学からの入学許可を受入れた生徒
の実際の数。 これらは、ランキング決定のための重要な要因となる。
何が学生を動かしているか?
• 準備ができていて、高成績の生徒は、できる限り“最高
(Best)の”大学から入学許可を得たいと思っている。
• アメリカのメディアは、トップ20−30校の大学にもっぱら関心を寄せてい
る。
• 十分な資質を持った生徒は、より多くの大学に出願することで、彼ら自
身が突出する機会を増やす。
• APの履修者は増加し続けている。
• SATの科目テストの受験者数も増加している。
• テスト・トレーニングのプログラムも安定的に増加している。
• Early Decision(早期決定型、1校のみ出願、必ず入学せねばならない)/
Early Action(早期決定型、複数出願、必ずしも入学しなくてよい)といったプ
ログラムがいっそうの広まりを見せている。
出願行動の動向:
3大学以上出願する生徒の%と7大学以上出願する生徒の%:
1990 to 2008
•Interestingly, very selective institutions receive the largest number of applications
even though they accept the fewest students.
しかし、・・・・アメリカの高校生は大学教育を受ける準
備はできているのか?
• 研究者1は、アメリカは強力な3つの影響力を
経験していると言う:
•
識字力、計算力において、学校の中での個人差が大きい。成人の中では、高校卒業者率
が減尐している。
•
経済システムにおける大きな変化は、製造業から大学卒業者を対象とした労働市場、具
体的には、プロフェッショナル、マネジメント、テクニカル/ハイレベルの販売職へとシフト
している。
•
人口動態における大きな変化は、高齢者人口の増加と多様化の進展、そして、移民の増
加は労働者の構成に重要な影響を及ぼしている。
1In
Kirsch, I., Braun, H., & Yamamoto, K. (2007). America’s Perfect
Storm: Three Forces Changing our Nation’s Future. ETS, Princeton, NJ.
(人種/民族で)異なるスキルの分布:
人種/民族別の散文に関する識字力(複雑な文書を読み,推定する能力)
における成人の%
Data Source: Adult Literacy and Life Skills (ALLS) Survey, 2005.
Performance in Levels 3 and higher is considered to be a minimum standard
for success in the labor market.
経済:
製造業関連の特定の職における、アメリカの労働者のWeekly Earnings
Premiums(週間収入保険料)の概算(%)
Source: Organisation for Economic Co-operation and Development and
Statistics Canada, Learning Living, 2005.
人口動態:
アメリカにおける新たな移民(18歳以上)の教育レベル到達度の分布
(2000−2004)
Educational Attainment
Number
Percent
1 to 12 years, no diploma
1,671,000
34
12 years, high school diploma or GED
1,147,000
23
13 to 15 years
777,000
15
Bachelor’s degree
828,000
17
Master’s degree or higher
556,000
11
Source: 2004 American Community Surveys, public use files. Tabulation
by Kirsch, et al., 2007.
アメリカの高校生は大学教育を受ける準備ができていない
・・・ という声が数多くある。
• 近年の新聞記事の見出しから:
“Study Finds College-Prep Courses in High School Leave Many
Students Lagging (高校の大学進学準備コースで多くの生徒が遅れていること
が分かった)” - New York Times, May 16th, 2007
“State Report Shows Many Students are Not Ready for College (多くの
生徒が大学教育を受ける準備ができていないことを州の報告書が示唆)” Boston Globe, February 8, 2008
“Test shows many students not ready for college (テストは多くの生徒が大
学教育を受ける準備ができていないことを示している)” – Denver Post, May
18, 2008
“Sonoma County lags in college-ready grads (ソノマ郡は大学進学の準備
ができている高卒者において遅れている)” – Santa Rosa Press Democrat,
May 4, 2010
“大学進学の準備ができている”とはどういう意味か?
• カレッジボードの定義:
生徒は、彼らが知識、スキル、行動において、リメディアル(補習)を受
けることなく、首尾よく4年間のコースワークを修了できる状態にある時
、”College Ready(大学進学の準備ができている)“と言う。
• College Readiness (カレッジ・レディネス:大学進学の準備ができてい
ること)は複合的な要素から成っており、複合的な尺度によって測られ
る:
•
アカデミックな知識とスキルの獲得は、高校での厳格なコアカリキュラムを
首尾よく修了することが根拠となる。
•
高校で履修できるカレッジレベルのコースでの成功には、教科における詳
細な知識、高次思考技術、高い学習/研究スキルが求められる。
•
上級のアカデミックスキルとは、たとえば、推論、問題解決、分析、そしてラ
イティング力である。
•
カレッジプランニングのスキルは、大学や職業の理解、カレッジアドミッショ
ンや財源確保の過程、と同時に、学習における持続力、柔軟性、そして成
熟度といったノンコグニティブ(非認知的)な特性によって実証される。
大学で成功するとはどういう意味か?
• 研究1では、アカデミックな成功を説明する3つの要因が明
確にされている。
• 高校の成績
• 高校でのコースの厳格性
• 科目の数 (4 ないし、3 年間の数学)
• 最上級コースの終了 (微分積分学ないし、代数 II)
• コース履修の厳格性(Honors, そして/もしくは、AP ないし、Standard)
• Cognitive Ability Tests (アドミッションテスト) での成績
1Studies
by the United States Department of Education, the Education Trust, the
National Center for Educational Statistics and others have been widely cited and
accepted by policymakers.
しかし、Academic Success(学業上の成功)は、大
学での成功の一部分にすぎない。
• 学生は、その他のスキルが必要である。たとえば、知的好奇心、スタディス
キル、自己効力感、メタ認知的スキル、など。
• 彼らは、同時に、やる気があり、実直で、自己主導的であり、課題を追求し
続けることができることが必要である。
College Success (大学での成功)の指標
College Skills
Content Knowledge
Achievement
Non-Cognitive
Personal Qualities/
Experiences/
Characteristics
School Performance/
Context
Guidance
Verbal Reasoning
Math
Motivation
Letters
Grades
Career Interests
Math Reasoning
Language Arts
Follow-through
Essay
GPA
Study Skills
Writing
Science
Communication
Community Service
Weighted GPA
Interest in Major
Metacognition
Social Studies/ Humanities
Conscientiousness
Extra-curricular
Rank
Self Efficacy
Creativity
Foreign Language
Leadership
Work Experience
Courses Completed
Aspirations/
Practical Knowledge
Language Proficiency
Other Personality
Literacy in a 2nd Language
Academic Rigor
Realistic Self-concept
Spatial Relations
Teacher Ratings
AP/Honors Courses
Intellectual Curiosity
Gender
School Size
Ethnicity
School Quality
Residence
Age
Family Education/ Income
Ability to Pay
Ability to Benefit
CollegeBoard
Provides
Colleges Obtain through
the Admission Process
Not Yet
Developed
私たちはいかに生徒の大学進学準備を支援できるのか?
• カレッジボードは、組織全体でカレッジレディネス(College
Readiness:大学進学の準備)に深く関わっており、カレッジボ
ードのCollege Readiness Systemを利用するアメリカの多く
の高校を支援している。
College Readiness
College –Level Studies (大学レベルの学び)の準備
• カレッジボードは、カリキュラム教材の開発や専門性の向上に
寄与するために、大学での成功(College Success)について、
Science, English, Language Arts, Mathと言った科目でのカ
レッジボード水準を開発している。
• 同時に、中等教育の生徒のためのEnglishおよび Mathにお
いてSpring Boardと呼ばれる総合的なPre-APプログラムを提
供しており、そこで、生徒はAPコースを首尾よくこなせるため
のスキルや理解を養い、リメディエーション(補習)を経験する
ことなく大学での学業をなんなくこなせる力を身につける。
College-Level Studies(大学レベルの学び)の準備
• Educational Testing Service (ETS)は、カリフォルニア、メリ
ーランド、ワシントンといった個別の州やSRED ( Southern
Regional Education Board)のような独立した機関と共同で、
K-12(初中等)教育用の形成的および集約的評価を開発して
いる。
• ETSは、教室の中での優秀性を確実なものとするために、
TCT (Teacher Certification Test:教員証明テスト)の開発を
先導してきた。
College-Level Studies(大学レベルの学び)の実践
• カレッジボードのアドバンスト・プレイスメント(AP)プログラ
ムは、50年以上の歴史があり、高校生が在学中に19の領
域でCollege-Levelのコースを履修する機会を提供している
。
• 年度末にAP試験を受験した生徒は、進学した先の大学で既得単位とし
て認められるか、もしくは、同等科目の履修が免除される。
• 大学は、アドミッションの過程で、生徒のAPコースの取得を好意的に受
け止めている。
アメリカにおけるカレッジ・アドミッションの未来
• 2008年、NACAC ( National Association for College
Admission Counseling)は、Standardized Test(標準テスト)の
使用についての報告書を公表した。この報告書は、テストが高
校のカリキュラムといっそう密接に関与しているとした。具体的に
は、SATの科目テストやAP試験などであるが、SATやACTの一
般認知能力テストに比べてアドミッションの目的にむしろ叶って
いる、とした。
今後の展開はどうか?
• アメリカ社会では、今後も、多様化が進行するだろうし、より高
次の教育を受けた労働力の必要性はますます高まる。カレッ
ジボードとETSは、質の高い教育へのアクセスを高める方法
を今後も探し続ける。そして、生徒と大学そしてCollege
Successを繋ぐ方法を探り続ける。
• ご清聴ありがとうございました。ご質問等ありましたら、どうぞ
下記のメールアドレスにご連絡下さい。
[email protected].
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