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日本のフロンティアは日本の中にあ る

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日本のフロンティアは日本の中にあ る
21世紀日本の構想
日本のフロンティアは日本の中にあ
る
―自立と協治で築く新世紀―
2000年1月
「21世紀日本の構想」懇談会
はじめに
本報告書は、小渕恵三首相の委嘱による「21 世紀日本の構想」懇談会の 10 ヵ月に及ぶ集中的な論議の結
果生まれてきたものである。これは来世紀に向かう日本の課題と方策を中長期の観点から整理し、広く国
民の論議に供しようと意図している。
今、日本が重大な転機――危機と言ってもよい――を迎えていることは、万人の認めるところであろう。
その自覚に立って、ここには 21 世紀に向かう日本が備えるべき新しい理念や組織、15 年から 20 年後に
到達することが望まれる日本人の姿、および、それに至る道筋が述べられている。
明治以来、欧米に追いつき追いこせの道を歩みつつ、日本は日本らしさをある程度保持してきた。その間
の努力により、現在の日本は非西洋文化圏から唯一、先進国の仲間入りをしている。このことは誇ってよ
いことである。しかし、来世紀に世界全体をまきこんで生じようとしている、グローバリゼーションの力
の強さを見るとき、日本がこのままでよいとは決して思われない。
日本人が「日本のよさ」を誇るにしろ、それは特異に閉じこもることではなく、普遍へと開かれたもので
なくてはならない。そのためには、立ち止まって日本のよさをあげつらうよりは、世界の未来に向かって、
全身をあげて参加することがまず大切ではないか。それによってこそ、時には矛盾に苦しむことはあって
も、日本人のよさ――われわれでさえ未知の潜在力も含めて――が普遍性をもつものとして磨かれるので
はなかろうか。こういう態度で生きていけば、日本のフロンティアは日本の中にあることが見えてくる。
このような考えに立って、ここにわれわれの進むべき方向性を描き、必要と思われる方策の提言をできる
だけ書きこむことに努力した。
本報告書は、全 6 章と付属資料からなっている。第 1 章は総論であり、懇談会の責任においてこれを取り
まとめた。第 2 章から第 6 章には、各分科会の責任において取りまとめられた分科会報告書を収録してい
る。構想の全体像をご理解していただくには、全編を通してお読みいただければ幸いである。
多様性が重視される今日において、何によらず唯一の答があるとは考えられない。そのなかにあって、わ
れわれはわれわれなりに、方向性を考え、提言も行ったが、これはあくまでも一つの考え方である。この
報告書がたたき台となって、さらに国民的論議が活発に起こり、「21 世紀日本の構想」が国民の間で着
実に構築されていくことを強く願うものである。
「21 世紀日本の構想」懇談会
座長
河合
隼雄
目 次
はじめに
1
第1章 日本のフロンティアは日本の中にある(総論)
9
Ⅰ.日本の巨大な潜在力
9
Ⅱ.変革強いる世界の潮流
12
Ⅲ.何が問われているか
15
1.統治からガバナンス(協治)へ
2.個の確立と新しい公の創出
Ⅳ.21世紀日本のフロンティア
18
1.先駆性を活かす
(1)教育を転換する
(2)グローバル・リテラシー(国際対話能力)を確立する
2.多様性を力とする
(1)自ら生涯を設計する
(2)地域は自治で自立する
(3)非営利民間セクターを立ちあげる
(4)移民政策へ踏み出す
3.ガバナンス(協治)を築く
(1)政策選択を多様化し透明化する
(2)選挙権を 18 歳に
(3)政府の役割を絞り込む
(4)ルールにもとづく
4.「開かれた国益」を求める
(1)グローバル・シビリアン・パワー
(2)総合的・重層的安全保障
(3)隣交
Ⅴ.日本の志 ひとりひとりの志
31
第2章 豊かさと活力(第2分科会報告書)
35
Ⅰ.はじめに ― 活力を通して豊かさへ
35
1.20 世紀から 21 世紀へ
2.組織と人間との多様な関わり方 ― ガバナンスの問いかけ
Ⅱ.「富を創り、富を活かす」― 企業のガバナンスと経済の活力
38
1.これからの企業とその担い手たち
2.企業と個人との関係
3.企業の新しいミッション
Ⅲ.「参加し、公を担う」 ― 社会のガバナンスを担う活力
44
1.「官」の統治から自治的統治へ
2.社会のガバナンスを担う主体
3.「参加」のための条件整備
Ⅳ.中央政府の役割と国民 ― 21世紀型ガバナンス
48
1.パターナリズムからの脱却
2.中央政府の役割
3.政策決定プロセスの見直し ― アカウンタビリティの確立
Ⅴ.おわりに ― 専門的人材の育成と新しい公平の観念
52
1.人材の流動性と活力ある社会
2.新しい公平の観念
第3章 安心とうるおいの生活(第3分科会報告書)
59
Ⅰ.はじめに ― 夢を持ち、信頼しあう社会を求めて
59
Ⅱ.不安の本質と対処
60
Ⅲ.時代の転換が引き起こす不安
60
1.20 世紀の安心の保障
2.21 世紀の不安
Ⅳ.転換期を生かして21世紀を安心の社会に
64
1.新しい価値軸の設定
2.個人を活かす社会システムへの転換
Ⅴ.安心とうるおいの社会の提案
1.安心を支えるために
(1)教育 ― いつでも、どこでも、誰もが学べる
67
(2)仕事 ― 複線社会の中で
(3)家庭・地域社会 ― 多様性を活かし、自ら選ぶ人間関係
(4)社会保障(医療・介護・年金) ―
生き生きとした「健康長寿」の確保
(5)文化・芸術活動 ― 新しい道を探す気持ちの表現
2.ライフステージ・分散協調型ネットワーク社会を支える情報と科学技術
(1)情報 ― 共有とコミュニケーションにより新しいコミュニティを
(2)科学および科学技術 ― 自然・人間・人工の関係の再構築
Ⅵ.おわりに
79
第4章 美しい国土と安全な社会(第4分科会報告書)
83
Ⅰ.開かれた社会の環境と安全の確保に向けて
83
Ⅱ.物心ともに豊かな暮らし
84
1.魅力ある暮らしの創造
2.ものの価値の再発見
Ⅲ.「活かし合う社会」づくり ― 個と公の新しい関係
87
1.関わり合う「たくましくて、しなやかな人」
2.活かし合う透明な制度
Ⅳ.「地域」の自決 ― 住民主体の地域づくり
89
1.暮らしの場としての「地域」
2.住民主体の地域ガバナンスに向けて
Ⅴ.危機に強い国づくり
92
1.戦略的に思考する
2.科学と情報を使いこなす
3.連携して危機を管理する
Ⅵ.おわりに ― 新しいソフトパワーの創造
94
第5章 日本人の未来(第5分科会報告書)
99
Ⅰ.はじめに
99
Ⅱ.教育のもつ二面性
100
Ⅲ.日本の教育をめぐる現状と課題
102
Ⅳ.改革のための提言
103
Ⅴ.最後に
105
第6章 世界に生きる日本(第1分科会報告書)
109
Ⅰ.はじめに
109
Ⅱ.20世紀の財産目録 ― 自由、民主主義、日米同盟
110
1.近代(戦前期)の日本
2.戦後の日本
Ⅲ.21世紀の課題
114
1.開かれた国益
(1)「開かれた国益」の提唱
(2)国民に開かれた国益
2.隣交 ― 近隣アジアとの協調
(1)隣交の提唱
(2)障害の克服と国民的交流の促進
(3)東アジアの多国間協調体制
3.シビリアン・パワー
(1)シビリアン・パワー日本の変容
(2)シビリアン・パワーの安全保障
(3)国際経済秩序の再編
(4)途上国の発展への貢献 ― ODAの活用
Ⅳ.21世紀の世界に生きるための国内基盤
128
1.言力政治(ワード・ポリティクス)の強化
2.国際知識の集積・人材育成
3.国際的言語能力(グローバル・リテラシー)のために
Ⅴ.おわりに
132
<付属資料>
資料 1:「21 世紀日本の構想」懇談会の経緯
137
資料 2:「21 世紀日本の構想」懇談会・分科会全メンバーリスト
139
資料 3:国内ヒアリング先一覧
143
資料 4:海外有識者との意見交換先一覧
144
資料 5:国民から寄せられた提言の概要
148
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