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SPRING 2011
7
この度の東北地方太平洋沖地震により犠牲になられた方々とご遺族の皆様に深くお悔やみを申し上げるとともに、被害
にあわれた皆様に謹んでお見舞い申し上げます。
また、一日も早く、被災された皆様が普段の生活を取り戻せますよう、心より祈念申し上げます。クライアントの
皆様方におかれましても社員の方々またそのご家族の方々がご無事であることを祈っております。
我々は、今回の震災による影響を直接・間接に受けた皆様に対する法的支援を提供していくことを社会的使命と考え、
これまで以上に努力してまいる所存でございます。
TMI 総合法律事務所
代表パートナー 田中 克郎
CONTENTS
P.1
債権法改正が債権譲渡に及ぼす影響
P.2
インド会社法および新会社法案の概要
P.4
まねきTVとロクラクⅡ
P.5
統計に見る近年の特許判決及び審決の傾向
P.8
TMI月例セミナー紹介、書籍紹介
債権法改正が債権譲渡に
及ぼす影響
── 弁護士 成本治男
第1 はじめに
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
債権法改正については、民法(債権法)改正検討委員会によ
り平成21年3月末に取りまとめられた「債権法改正の基本方
針」が公表されたのに続き、法制審議会民法(債権関係)部会
において平成21年11月から23回(平成23年2月17日現在)
に及ぶ会議が開催され検討が行われている。
今回は、
この債権法改正の中でも大きな実務上の影響をも
たらす可能性があるものとして、また、多くの企業に広く影響
を及ぼしうるものとして、債権譲渡に関する改正について説明
を行いたい。
第2 債権譲渡に影響を及ぼす改正
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1 譲
渡禁止特約
■
譲渡禁止特約の効力について相対的効力(譲渡禁止特約は
原則として相対的な効力を有するにとどまり、債権譲渡の当事
者間では有効とする。)
とした上で、その譲渡禁止特約の効力
を債権の譲受人に対抗することができない新たな事由として、
譲渡人について倒産手続の開始決定があったこと
(倒産手続
開始決定時に譲受人が第三者対抗要件を具備しているときに
限る。)
という規定を新設することが提案されている。
しかし、
債務者の立場からすると、譲渡禁止特約を付していたとしても
譲渡人が倒産した場合には譲渡人以外の者から請求を受ける
可能性があることになる上、譲渡人について倒産手続開始決
定の有無を逐次調査・確認しなければならない必要性が生じ
ることにもなり、実務界からの反対も想定されるところである。
2 将来債権譲渡
■
まず、従来の判例法理を踏まえて、将来債権の譲渡が原則
として有効であることや、債権譲渡の対抗要件の方法により
第三者対抗要件を具備することができることについて、明文
の規定を設ける方向で議論がなされている。
また、将来債権の譲渡の後に譲渡人の地位に変動があった場
合に、その将来債権譲渡の効力を第三者に対抗することができ
る範囲について立法により明確にする規定を設ける方向で検討
はなされているものの、
未だ様々な見解が提示されている状況で
ある。
具体的には、例えば、以下の事例のような場合に各説によっ
て結論が異なることになる。
不動産取引の場合、過去の所有者兼
賃貸人が将来債権(賃料債権)の譲渡を行っていたか否かを調
査・確認することは必ずしも容易ではなく、かかる観点からも改正
内容次第では実務上大きな影響があり得るところと思われる。
<事例>
対抗要件具備
X
将来債権譲渡
平成 22 年 4 月 1 日
A
不動産譲渡
平成 22 年 10 月 1 日
甲
賃借
(∼平成 23 年 3 月 31 日)
Y
乙
賃借
(平成 23 年 4 月 1 日∼)
A社は、A社が所有するαビルの15階部分を甲社に賃貸して
いたところ、
「αビルの15階部分から生じる今後5年分の賃料
債権」を、平成22年4月1日付けでX社に譲渡し、X社から譲渡
代金を受領した(X社は対抗要件を具備)。その後、平成22年
10月1日、A社はαビル全体をY社に対して譲渡し、甲社に対
する賃貸人たる地位もY社に移転した。甲社によるαビル15
階部分の賃貸期間が平成23年3月31日で満了したため、平成
23年4月1日付けで、Y社は新たに乙社との間でαビル15階
部分の賃貸借契約を締結した。
[A説]債権譲受人は将来債権譲渡の効力を新賃貸人に対抗で
き、将来債権譲渡の対象となった債権はすべて債権譲受人に帰
属する。=平成27年3月31日までの債権はX社に帰属。
[B説]旧賃貸人が締結した賃貸借契約に基づく債権については
債権譲受人に帰属し
(新賃貸人に対抗でき)
、新賃貸人が締結し
た賃貸借契約に基づく債権については新賃貸人に帰属する。=
平成23年4月1日より前の甲に対する債権はX社に帰属し、同日
以後の乙に対する債権はY社に帰属。
[C説]債権譲受人は、将来債権譲渡の効力を新賃貸人に対抗で
きない。=所有権移転後の債権はY社に帰属。
3 第三者対抗要件の具備方法
■
債権譲渡の対抗要件制度について、動産及び債権の譲渡の
対抗要件に関する民法の特例等に関する法律上の登記制度を
更に利用しやすいものとするための方策とともに、債権譲渡の
第三者対抗要件を登記に一元化する案が検討されている一方
で、現在の二元的な対抗要件制度を維持するという案も検討さ
れている。
「債権法改正の基本方針」においても、金銭債権につ
いては、譲渡人が個人であるか法人であるかを問わず、債権譲
インド会社法および
新会社法案の概要
インド・東南アジア・プラクティス・チーム*
── 弁護士 岡田英之
── 弁護士 大井修平
── 弁護士 関 真也
── 弁護士 林 志野
第1 はじめに
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
現行のインド会社法は、1956年に制定されたものであるが、
渡登記に一元化し、非金銭債権については譲渡契約書への確定
日付をもって第三者対抗要件とするという案が提示されている。
このような債権譲渡登記への一元化という案に対しては、登
記申請の利便性の向上、
コストの低減化の必要、法務局の対応
が困難となる可能性、
自然人を譲渡人とする債権譲渡登記の編
纂方法など、登記制度構築上の課題が多数指摘されている。
ま
た、従来簡易な方法として用いられてきた債務者の確定日付あ
る承諾による第三者対抗要件の具備が不可能になってしまう点
や、金銭債権と非金銭債権を同時に譲渡する場合にはそれぞれ
の第三者対抗要件具備手続が必要となってしまう点などから、
コ
ストや手間を要する懸念も示されている。
4 契約上の地位の移転の対抗要件制度
■
現在の民法では明文規定はないが、契約上の地位の移転が可
能であることには異論がないところと思われ、その要件・効果や
対抗要件制度に関する明文規定を設けることが検討されている。
この点、実務上、契約上の地位の移転に際して債権譲渡が伴
うのが通常であるが、契約上の地位移転の要件としての承諾と、
債権譲渡の対抗要件としての承諾を一通の承諾書で取得する
ことが多いものと思われる。
しかし、前述のとおり、債権譲渡の対
抗要件についても改正が検討されているところ、債権譲渡の対
抗要件と契約上の地位の移転の対抗要件が異なる方法で要求
されることになった場合には、その分コストや手間が増加するこ
とになると考えられる。
第3 おわりに
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
平成23年に入ってからは、法制審議会民法(債権関係)部会
において、今春の公表を予定しているパブリックコメントに向け
た中間的な論点整理のとりまとめ作業・議論が行われている。債
権譲渡取引に限らず、多様な取引に影響を及ぼしうる債権法の
改正であるだけに、今後も注視していく必要があると思われる。
以上
弁護士
成本治男
(1975年生)
Haruo Narimoto
直通/ 03-6438-5538
MAIL/ [email protected]
【主な取扱分野】
金融取引
不動産
証券化/プロジェクトファイナンス
【登録、所属】
東京弁護士会(2000)
流動化・証券化協議会
信託法学会
マンション再生協議会
急成長を続ける21世紀のインド経済をより効果的な方法で規
制するものとして2009年に新会社法案が起草され、近い将来、
成立する見通しである。
そこで、本稿では、現行会社法の概略を
解説しつつ、新会社法案での主な変更点を紹介する。
第2 会社の種類・株式・設立
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1 会
社の種類
■
(1)
概要
インド会 社 法 上 、会 社 の 種 類 に は 、株 式 有 限 責 任 会 社
(company limited by shares)
、保証有限責任会社(company
limited by guarantee)、無限責任会社(unlimited company)
の3つがある。
このうち、株式有限責任会社とは、株主がその株
式引受価額の限度でのみ責任を負う会社であり、日本におけ
る株式会社に相当する。
また、
インド会社法上、会社は公開会社
(public company)
と非公開会社(private company)の2種類
に区別される。非公開会社とは、払込済資本金額が10万ルピー
以上であって、かつ附属定款(Articles of Association)
に株式譲
渡制限規定その他の一定の規定がある会社であり、
これに該当
する場合、インド会社法上の手続規定等の適用が免除される。
一方、公開会社とは、要約すると、株式譲渡制限等の規定がな
く、払込済資本金額が50万ルピー以上である会社、又は、公開
会社の子会社である。
(2)新会社法案における改正点
1960年のインド会社法の改正で導入された
「みなし公開会社
(deemed public company)」の概念は、2000年の改正によっ
て廃止されたが、
これに対する例外規定は削除されないまま現
行法中に残されている。その結果、現在、外国公開会社(インド
国外で設立された会社であって、
インドで設立されたとした場合
にインド会社法上公開会社となる会社)
はその子会社を、
そのす
べての株式を保有することで、非公開会社として設立することが
できるとする解釈があり得る一方で、会社登記局(Registrar of
Companies)はこのような場合に公開会社として子会社を設立
するよう指導している状況にある。
これに対し、新会社法案の下
では、公開会社の子会社である非公開会社は、そのすべての株
式が外国公開会社によって保有されている場合であっても例外
ではなく、公開会社とされる。
また、新会社法案は、一人会社(One Person Company)
、小会
社(Small Company)
という新たな概念を導入している。一人会
社とは、株主が一人のみである会社であり、定時株主総会の開
催を免除されるなど、会社運営が簡素化されている。小会社と
は、公開会社以外の会社であって、
(i)資本金の額が、5000万ル
ピー以下で定められる額を超えないか、又は(ii)直前の期の損
益計算書上の粗利益が、2億ルピー以下で定められる額を超え
ない会社である。
2 株式
■
現行会社法では、
株式の種類は資本株式
(equity share)
(優先
株式以外の株式)
、優先株式(preference share)
(議決権が一定
の事項に制限されるが、利益配当等について優先的権利を有す
る株式)に分けられ、資本株式はクラス株式(class share)
(資本
株式のうち、利益配当、議決権その他について差異のある権利を
有する株式)
とそうでないものに分けられている。
一方、新会社法
案では、株式の種類は資本株式と優先株式の2種類のみで、
クラ
ス株式の発行は認めていない。
3 会社の設立
■
日本企業がインドに子会社を設立するには、
インターネットを
通じてインド企業省(www.mca.gov.in)
に必要書類を提出し、所
定の書類をインド会社登記局に提出する。
第3 会社の組織・運営
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1 概
要
■
(1)
インド会社法における会社は、株主(member)
、取締役・取締
役会(director、board of directors)及び監査役(auditor)
で構
成されており、
これらに加えて監査委員会(audit committee)及
び会社秘書役(company secretary)の設置が義務付けられる
場合がある。
2 組織
■
(1)株主・株主総会
現行法上、公開会社は7名以上、非公開会社は2名以上の株
主が必要であるが、新会社法案では株主1名による一人会社も
許容される。
株主総会の種類には、①法定株主総会(公開会社の設立から
6ヶ月以内に開催)、②定時株主総会、③臨時株主総会の3種類
があり、会社の登記住所又は登記住所のある区域内のいずれか
の場所で行う。
株主総会の定足数及び決議は株主の頭数で算定される。
公開
会社は5名以上、非公開会社は2名以上の株主の出席が必要で
あり、決議の重大性に応じて①普通決議(出席株主の過半数の
賛成)
及び②特別決議
(出席株主の4分の3以上の賛成)
がある。
(2)
取締役・取締役会
公開会社は3名以上、非公開会社は2名以上の取締役が必要
である
(新会社法案における一人会社は、最低1名の取締役の
設置で足りる)
。
現行会社法では、取締役の居住地に制限がないが、新会社法
案では、取締役の最低1名はインド国内に通常の住居地を有し
ていることが求められる。
何れの会社も、会社の業務執行全般の意思決定は取締役会
で行う。取締役会の開催地には制限がなく、国外でも可能だが、
実際に3ヶ月に1回以上開催する必要がある。なお、新会社法案
では、
ビデオ会議による取締役会の開催が可能となる。
(3)
監査役
何れの会社も監査役の設置が必要である。監査役は日本の会
計監査人に相当する機関であり、会計監査権限のみ有している。
(4)
監査委員会
5000万ルピー以上の資本金を有する公開会社は、取締役3
名以上で構成された監査委員会設置が必要である。
日本の会社
法における委員会設置会社の監査委員会に類似した機関であ
り、内部統制システムや監査範囲に関する監査役との定期的な
協議、監査意見の表明等を職務とする。
(5)
会社秘書役
資本金2000万ルピー以上の会社は常勤の会社秘書役が必
要である。資本金100万ルピー以上2000万ルピー未満の会社
は常勤の会社秘書役に代えて外部の会社秘書役によるコンプラ
イアンス証明の提出が必要である。
会社秘書役はコンプライアンスの責任者として、文書管理や
契約への署名、会社による各種証明等の発行を職務とする。
第4 組織再編
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1 イ
ンドにおけるM&A
■
インドにおけるM&Aの手法としては、大きく、①当事者の合
意に基づく契約上の行為としてなされる場合と、②裁判所が関
与する会社法上の組織再編行為(Scheme of arrangement)
として行われる場合に整理でき、事業譲渡(Slump Sale)、
合併(Amalg amat ion)、会社分割(Demerger)、株式取得
(Acquisition)等の手法及びそれらの組み合わせ等実務上、
様々な手法がとられている。
新会社法案においては、新たに外国企業によるインド企業と
の合併を認める規定が設けられ、外国企業とインド企業の間の
直接の合併環境が整う予定となっている。
2 各手法の概要
■
(1)
事業譲渡
(Slump Sale)
事業譲渡については、
1961年所得税法
(Income Tax Act, 1961)
に定義規定がある。
これは、裁判所が関わる組織再編に適用され
る優遇税制があるためである。かかる定義によれば、事業譲渡と
は、
一つ又は複数の事業を、
個々の資産及び負債の評価によるの
ではなく、
事業全体に対する対価で売却し、
移転することをいう。
前述のとおり、事業譲渡を裁判所の関与する会社法上の組織
再編として行う場合があり、株主総会や債権者集会等において
それぞれ4分の3以上の賛成を得る必要がある。裁判所の監督
下で法定の手続、要件を経ることで、将来の個別の紛争の発生
を可及的に回避することが可能となる。
(2)合併(Amalgamation)
合併についても、1961年所得税法に定義規定があり、合併と
は、複数の会社が一つの会社になり、すべての資産及び負債が
合併消滅会社から合併存続会社に引き継がれ、かつ原則として
合併消滅会社の10分の9を超える株式の株主が合併存続会社
の株主となることをいう。
(3)会社分割(Demerger)
会社分割についても、1961年所得税法に定義規定があり、会
社分割とは、譲渡事業のすべての資産及び負債が簿価にて分割
会社から分割承継会社に承継され、かつ原則として分割会社の
4分の3以上の株式の株主が分割承継会社の株主となること、分
割承継会社が分割会社に対して譲渡事業の対価として株式を
発行すること、会社分割後の事業が存続すること、
その他同法上
の一定要件を満たすものをいう。
3 上場会社に関する規制
■
組織再編における当事者が上場会社である場合、
インド証券
取引委員会
(Securities and Exchange Board of India
(“SEBI”)
)
の定める様々な規則に従う必要があり、例えば、上場株式を
取得する場面では、株式の大量取得及び公開買付けに関す
る規則(Securities and Exchange Board of India(Substantial
Acquisition of Shares and Takeovers)Regulation, 1997)
により、
(2)
(3)
開示義務や公開買付けに関する規制等が課される場合がある。
以上
(1)
訳語については、
前述の株式有限責任会社に相当するわが国の株式会社の用語で対応
(2)
例えば、
インドの上場会社の株式を一定割合以上取得した場合には開示義務があり、対
象会社の5%、10%、14%、54%及び74%の持分又は議決権
(以下「議決権等」
という)
を超える割合の株式を取得した場合には、各割合を超えた各段階で自己の所有する株
式総数を対象会社及びインド証券取引所に対して開示する必要がある
(Securities and
Exchange Board of India(Substantial Acquisition of Shares and Takeovers)
Regulation,1997,7条)
。
(3)
例えば、
対象となる上場会社の議決権等の15%を超えて株式を取得しようとする場合は、
公開買付けによらなければならず、対象会社の議決権等の20%以上の株式の買付公告
が義務付けられる
(SEBI Regulation,1997,21条)
。
弁護士
岡田英之
Hideyuki Okada
直通/ 03-6438-5527
MAIL/ [email protected]
【主な取扱分野】
金融取引
証券化/プロジェクトファイナンス
倒産処理/企業再建
企業合併・買収(M&A)
不動産
【登録、所属】
第二東京弁護士会(1995)
弁護士
大井修平
Shuhei Oi
直通/ 03-6438-5440
MAIL/ [email protected]
【主な取扱分野】
金融取引
証券化/プロジェクトファイナンス
不動産
デリバティブ取引
一般企業法務
【登録、所属】
第二東京弁護士会(2007)
弁護士
【登録、所属】
第一東京弁護士会(2008)
関 真也
Masaya Seki
直通/ 03-6438-5349
MAIL/ [email protected]
弁護士
【登録、所属】
東京弁護士会(2008)
林 志野
Shino Hayashi
直通/ 03-6438-5359
MAIL/ [email protected]
するそれを選択した。
*TMIは、
各国の現地法律事務所とのネットワークを活かして、
インド・東南アジアの各法律分野に精通する弁護士や弁理士、
さらにわが国で研修中のインド共和国弁護
士が加わったチームによって、
インド・東南アジアに進出する日本の企業の皆様に総合的かつ専門的な法的アドバイスを機動的に提供することができる体制を整えて
います。
まねきTVとロクラクⅡ
── 弁護士 水戸重之
── 弁護士 小坂準記
第1 はじめに
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
著作権侵害の主体論
(間接侵害論)
に関して、
今年1月に出され
た2つの最高裁判決が、波紋を呼んでいる。いわゆる
「まねきTV
(1)
(2)
「ロクラクⅡ事件」最高裁判決である。著作権
事件」最高裁判決と
(3)
侵害事件の世界に長らく君臨していた
「カラオケ法理」の見直し
が両事件の原審でなされたところ、
最高裁が弁論再開を決定した
ため、
その帰趨に注目が集まっていたものである。
いわゆる
「カラオケ法理」
とは、
著作権侵害を直接行っていない
者についても、
「管理支配」
と
「営業上の利益」
を要件として侵害主
体性を認めるという法理である。
最高裁は、結論としては、両事件
について、
それぞれの原審である知財高裁判決の枠組みを覆し、
「カラオケ法理」の要素を踏まえつつも、新たな枠組みを提示し
ているように思われる。結論については批判的なコメントも見ら
(4)
れるところであるが、実務としては、最高裁判決が出た以上、立法
的手当てがなされるか、最高裁での判例変更(極めて稀である)
がなされない限りは、両判決の解釈を前提としてビジネスをして
いなければならず、実務上も重要な判例であることから紹介する
次第である。
第2 著作権法における侵害主体論の視点
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
著作権の侵害主体論
(間接侵害論)
の視点は、
次の2つである。
①著作権侵害への救済を求める立場からすれば対象の範囲を
広げて救済の実効性を高めたいと考える。他方、侵害行為と
関連の低い者まで侵害者として扱われることの不利益も考
慮する必要がある
(たとえば著作権侵害に利用可能だからと
いって市販のコピー機やビデオ機の製造販売の差止めを認
めるべきではない)
。
この利益衡量をどう考えるか。
②著作物の利用形態が複雑化し利用に関与する者が多様化す
る現代において、
どこまでを著作権者の許諾が必要な行為と
し、
どこからが許諾不要の自由利用の範囲とするか。
間接侵害を特許権侵害とみなす特許法101条のような明文
規定のない著作権の間接侵害について、裁判所がどのような法
解釈を行ったのかが、両判決の見所となる。
第3 2つの最高裁判決の読み方
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
1ま
ねきTV事件とロクラクⅡ事件の相違点
■
まねきTV事件とロクラクⅡ事件の事案は、
まねきTV事件が放
送番組の同時送信サービスであったのに対し、ロクラクⅡ事件
は放送番組の録画サービスであったという違いがある。
この違
いから放送事業者(上告人)は、
まねきTV事件では、送信可能化
権(著作権法99条の2)及び公衆送信権(同23条1項)
を主張の
根拠とするのに対し、ロクラクⅡ事件では、複製権(同21条、同
98条)
を主張の根拠としている。
とはいえ、いずれも著作権侵害
の主体論(間接侵害論)
の議論である点では共通である。
2ま
ねきTV事件最高裁判決の解釈手法
■
まねきTV事件の原審では、1対1対応の機器であるベース
ステーションは、
自動公衆送信装置に該当しないとして、送信可
能化権侵害は成立しないと結論付け、送信可能化に関し、明示
的に侵害主体論の検討をしなかった。
これに対し、最高裁は、1
対1対応の機器であっても、送信の主体からみて自動公衆送信
を行っている機器であれば自動公衆送信装置に該当すると判断
し、侵害主体論の検討に入っている。最高裁が、1対1対応の機
器であっても、送信の主体のとらえ方次第では、
自動公衆送信装
置になり得るとの解釈を示した点に意義があるといえよう。
次に、最高裁は、
自動公衆送信の主体に関し、電気通信回線に
接続し、継続的に情報が入力されている装置の場合には、装置に
情報を入力する者が送信の主体となると判示している。
そして、
本件では、被上告人が、ベースステーションを分配器、
アンテナ
に接続し、放送を受信できるよう設定するとともに、
ベースステー
ションを事務所に設置、管理していたことから、被上告人を
「送信
の主体」
と認定している。
最高裁が「公衆」
の解釈において規範的
に解釈したように
「装置に情報を入力する者」についても規範的
に解釈するのであれば、物理的にテレビアンテナを装置に接続
した事業者ではなく、装置に情報の入力を指示した利用者こそが
「装置に情報を入力する者」
であると解する余地もあったところ
である。最高裁は「入力」の解釈について十分な根拠を示したと
は言い難く、今後はこの点が議論の対象になるものと思われる。
クラクⅡ事件最高裁判決の解釈手法
3 ロ
■
ロクラクⅡ事件の原審では、侵害主体論について、控訴人(上
告人)の主張に沿う形で検討するにとどまり、特段の規範を定立
しなかったのに対し、ロクラクⅡ事件最高裁判決は、複製の主
体は、複製の対象、方法、複製への関与の内容、程度等の諸要素
を考慮要素として判断するという新たな枠組みを定立したよう
にみえる。
ロクラクⅡ事件最高裁判決で示されたこのような法理
は、いわば諸般の事情を総合考慮するものではあるが、なお管
理、支配性を判断要素の一つと考えているという意味では、
「カ
ラオケ法理」の流れに与するものとの評価もありえよう。
また、最高裁は、放送番組等の複製物を取得することを可能に
統計に見る近年の特許判決及び
審決の傾向
── 弁理士 佐藤 睦
第1 はじめに
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
平成16年の特許法改正において、特許権者等の権利行使の
制限について定めた特許法104条の3が立法された。平成17年
4月1日に同改正が施行されてから、特許庁における特許無効審
するサービスにおける複製の主体については、サービス提供者
が、
その管理、支配下において、放送を受信して複製機器に対し
て放送番組等に係る情報を入力している場合には、サービス提
供者が複製の主体にあたると判示している。複製の主体の判断
においても、今後は「入力」の解釈が議論となり得ることはまねき
TV最高裁判決と同様である。
第4 おわりに
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
今回の2つの事件を巡る、知財高裁と最高裁の判断は、同じ
ビジネスについて合法・違法の判断が分かれることがある、
とい
う意味で、改めて裁判所の有する法(=規範)形成機能のダイナ
ミズムを認識させることとなった。両最高裁判決が、新しいビジ
ネスモデルを違法と判断した影響は決して小さくない。今後、企
業は、
この種の新たなビジネスモデルが登場するごとに、両最高
裁判決の枠組みを意識した慎重な法的検討を迫られることに
なったといえよう。
以上
(1)
判平成23年1月18日最高裁ホームページ。
最
(2)
判平成23年1月20日最高裁ホームページ。
最
(3)
判昭和63年3月15日民集42巻3号199頁
最
(クラブ・キャッツアイ事件)
。
(4)
成23年1月25日付け朝日新聞
平
「著作権のルールがデジタル化の進んだ社会に追いつ
いていないのに司法が無理に踏み込んだ判断をした」
(北海道大学・田村善之教授)
、平
成23年2月7日付け日本経済新聞「知財高裁の方が時代の流れに配慮した」
など。
弁護士
水戸重之
(1957年生)
Shigeyuki Mito
直通/ 03-6438-5508
MAIL/ [email protected]
【主な取扱分野】
一般企業法務
企業合併・買収(M&A)
ベンチャー関連
知的財産
メディア/エンタテインメント/スポーツ
IT関連
【登録、所属】
第一東京弁護士会(1989)
慶応義塾大学法科大学院講師
早稲田大学スポーツ科学学術院講師
弁護士
小坂準記
(1981年生)
Junki Kosaka
直通/ 03-6438-5367
MAIL/ [email protected]
【主な取扱分野】
知的財産
メディア/エンタテインメント/スポーツ
訴訟/税関手続/仲裁
【登録、所属】
東京弁護士会(2008)
日本スポーツ法学会
エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク
判のみならず、特許権侵害訴訟においても、同条に基づいて特
許の有効性が審理され、
それに基づく判決が多数なされている。
また、同じく、平成17年4月1日には、知的財産高等裁判所設置
法に基づいて、知的財産高等裁判所(以下「知財高裁」
という。)
が設置され、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所(以下「地裁」
という。)における特許権侵害訴訟の判決に対する控訴審、並び
に、特許庁における特許無効審判の審決に対する審決取消訴訟
(以下「無効審判の審決取消訴訟」
という。)は、知財高裁が専属
管轄となった。
このような経緯を踏まえ、平成18年~22年においてなされ
た、(1)地裁における特許権侵害訴訟の判決、
(2)特許庁におけ
る特許無効審判の審決、及び、
(3)知財高裁における無効審判
の審決取消訴訟の判決等を精査し、統計的な分析を行ったとこ
(1)(2)
ろ、平成20年前後を境に、その判断傾向に大きな変化が見られ
ることが分かった。
第2 平成18年~20年における地裁及び特許庁の判断傾向
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
平成17年4月1日に特許法104条の3が導入され、地裁にお
ける特許権侵害訴訟においても、特許の有効性が、特許庁に
(3)
おける特許無効審判と同様に判断されることが明文化された。
これを受けて、特許権侵害訴訟における被告は、同条に基づい
て、積極的に特許無効の抗弁を主張するようになり、地裁もま
た、かかる特許無効の抗弁を採用し、特許無効を理由とする権
利者敗訴の判決を多くなすようになった。具体的には、図1に
示すとおり、平成18年~20年の3年間になされた、地裁の特許
権侵害訴訟の判決において、権利者が敗訴した理由の6割弱
が、特許無効の抗弁によるものであった。
4%
39%
57%
■ 非充足
■ 無効
■ その他
図1 特許権侵害訴訟(地裁)における権利者敗訴の理由の内
訳(平成18年~20年)
また、特許庁における特許無効審判の審決においても、同様
の傾向が見られた。具体的には、図2に示すとおり、平成18年
~20年の3年間になされた、特許庁の特許無効審判の審決の
うち、約3分の2が特許を無効とする審決であった。
34%
■ 特許無効
■ 特許維持
66%
図2 特許無効審判における審決の内訳(平成18年~20年)
このように、平成18年~20年の3年間になされた地裁判決及
び特許庁審決は、統計上、権利者にとって不利な傾向が伺える。
第3 知財高裁の判断傾向の変遷
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
地裁及び特許庁が、
平成18年~20年において、
権利者に厳しい
判断をなしてきた背景として、知財高裁における判断傾向がある
ものと考えられる。
図3は、知財高裁が、無効審判の審決取消訴訟
において、
特許庁の審決を取り消した割合を示したグラフである。
60%
50%
40%
無効審決取消
30%
有効審決取消
20%
10%
0%
平成 18
平成 19
平成 20
平成 21
平成 22
図3 無効審判の審決取消訴訟において審決が取り消された割合
同図において、
ピンク色のグラフは、特許庁が特許無効審判
において特許が有効であると判断した審決(以下「特許有効審
決」
という。
)
に対して提起された審決取消訴訟において、
その審
決が取り消された割合を示している。
また、同図において、青色
のグラフは、特許庁が特許無効審判において特許が無効である
と判断した審決(以下「特許無効審決」
という。)に対して提起さ
れた審決取消訴訟において、その審決が取り消された割合を示
している。すなわち、
ピンク色のグラフで示す割合が高く、
また、
青色のグラフで示す割合が低いほど、権利者にとって厳しい判
断がなされる傾向にあると言える。他方、青色のグラフで示す
割合が高く、
ピンク色のグラフで示す割合が低いほど、権利者に
とって有利な判断がなされる傾向にあると言える。
同図に示すとおり、平成18年及び19年になされた、特許無効
審判の審決取消訴訟の判決においては、権利者に極めて厳しい
判断傾向があったことが伺える。すなわち、特許有効審決に対
する審決取消訴訟の50%以上において、審決を取り消す判決、
つまり、特許庁においてなされた特許有効との判断を否定する
判決がなされている。他方、特許無効審決に対する審決取消訴
訟においては、数%乃至15%程度しか、審決が取り消されていな
い。
このような、知財高裁における、権利者に厳しい判断傾向を
受けて、その下級審である地裁及び特許庁おいても、図1及び2
に示したとおり、平成18年~20年において、権利者に厳しい判
決及び審決がなされたものと推測される。
しかし、平成20年を境に、知財高裁の判断傾向は、権利者に
とって有利な方向に一転している。すなわち、図3に示すとおり、
平成18年及び19年には、特許有効審決が特許無効審決に対
して圧倒的に高い割合で取り消されていたが、平成20年には、
特許有効審決及び特許無効審決の取消割合が略同一となり、
平成21年及び22年には、それらの割合が逆転している。すなわ
ち、知財高裁の審決取消訴訟における判断傾向は、平成20年を
境に、特許を維持する方向、すなわち、権利者に有利な方向へと
一転したのである。
このような知財高裁の判断傾向の変化の要因は、進歩性にお
ける容易想到性の判断基準の変化にあるものと考えられる。具
体的には、特許発明が先行技術から容易想到であった根拠とし
て、先行技術から特許発明に至るための十分な動機付けを求
める判決が多くなされている。例えば、平成20年行(ケ)10096
号(平成21年1月28日判決)は、
「当該発明の特徴点に到達する
ためにしたはずであるという示唆等が存在することが必要であ
るというべきであるのは当然である。
」
と判示しており、特許発明
が容易想到であるとするためには、先行技術と特許発明との相
違点を埋めるために十分な示唆等の存在が要求されている。
こ
の容易想到性の判断基準は、必ずしも知財高裁のスタンダード
となっているとは言えないものの、昨年末である平成22年12月
28日になされた平成22年(行ケ)10187号の判決においても、
(4)
同様の判断基準が適用されている。
また、先行技術と特許発明
との相違点が周知技術である場合においても、周知技術を先行
技術に適用して特許発明に至ることに、動機付けの存在を要求
(5)
する判決もなされている。
なお、特許無効審判のみならず、拒絶査定不服審判の審決に
対する審決取消訴訟(以下「拒絶審決取消訴訟」
という。
)
におい
ても、同様の変化が現れている。すなわち、図5に示すとおり、特
許庁の拒絶査定不服審判において、特許出願を拒絶すべき
(つ
まり、特許を付与すべきではない)
と判断した審決が、拒絶審決
取消訴訟において取り消された割合は、平成20年までは10~
15%程度で推移していたところ、平成21年に急激に増加した。
こ
のように、近年は、拒絶査定不服審判においても、特許出願人に
有利な判断がなされていると考えられる。
た、知財高裁の特許の有効性に対する判断基準の変化によると
ころがあるものと考えられる。
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
■ 無効
■ 非充足
平成 18
平成 19
平成 20
平成 21
平成 22
図6 特許権侵害訴訟(地裁)の権利者敗訴判決において特許
無効及び非充足が理由とされた割合
35%
第5 まとめ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
30%
25%
20%
審決取消
15%
10%
5%
0%
平成 18
平成 19
平成 20
平成 21
平成 22
図4 拒絶審決取消訴訟における審決取消の割合
第4 地裁判決及び特許庁審決の近年の傾向
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
これまでに説明した知財高裁の判断傾向の変化は、特許無
効審判における特許庁の判断にも影響を与えているものと考え
られる。すなわち、図5に示すとおり、特許庁の特許無効審判に
おいて、特許無効審決がなされた割合は、平成20年までは概ね
2/3前後の高い割合であったところ、平成21年においては、突
如、約50%まで低下した。
このように、図3及び4に示した知財高
裁の判断傾向の変化は、特許庁における特許の有効性の判断
に影響を与え、特許庁も、知財高裁と同様に、権利者に有利な判
断をする傾向にあるものと考えられる。
80%
70%
60%
無効審決
50%
40%
30%
平成 18
平成 19
平成 20
特許法104条の3が導入されて以降、
特許権侵害訴訟を提起し
ても、特許無効を理由に請求が棄却されるケースが多く、
その結
果、
日本で特許権を取得する意義に疑問を呈する声まで聞かれる
ようになった。
しかし、本稿で紹介したとおり、近年は、知財高裁、
地裁及び特許庁のいずれもが、統計上、特許の有効性について、
権利者に有利な判断をする傾向にあることが分かった。
構成要件
充足性については、提訴前に十分な検討をしていれば、
そのリス
クがある程度予測可能であることからすれば、近年の特許無効の
判断傾向の変化は、
従前は困難であった、
特許権侵害訴訟におけ
る敗訴リスクの予測可能性を高めているとも言える。
このように、
近年は、従前とは異なり、権利者が特許権を行使しやすい状況に
なってきていると考えられる。
以上
(1)
稿における地裁及び知財高裁の判決に関する統計データは、
本
最高裁判所HPの判決
データの弊所分析によるものである。
また、特許庁の審決に関する統計データは、
「産業財
産権の現状と課題 特許行政年次報告書2010年版」
(特許庁)
の審決データの弊所分
析によるものである。
(2)
稿における統計データは、
本
特許権及び実用新案権の双方を含むものである。ただし、説
明の便宜上、特許権及び実用新案権を
「特許権」
と総称し、特許権者及び実用新案権者
を
「権利者」
と総称する。
(3)
許法104条の3第1項:
特
「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、当該特
許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者又は専用実
施権者は、相手方に対しその権利を行使することができない。」
(4)
成22年
平
(行ケ)10187号判決(平成22年12月28日)
:
「当該発明の相違点に係る構成に到
達するためにしたはずであるという程度の示唆等の存在していたことが必要である」
(5)
成21年
平
(行ケ)
10257号判決
(平成22年6月29日)
:
「ロッドタイプリニアモータが周知の
技術であったか否かにかかわらず、
引用例1に、
ロッドタイプリニアモータを適用する示唆等
が何ら記載されていない以上、当業者が、周知技術を適用することにより、相違点1、
2及び
6に係る本願発明の構成とすることを容易に想到し得たものであるということはできない。」
平成19年
(行ケ)
10059号判決
(平成22年12月22日)
:
「ステートマシーンによる通信制
御それ自体が、本件特許出願当時、当業者に周知の技術であったとしても、
引用例1ないし
3には、
引用発明1の通信制御手段として本件構成1を採用することについて、
いずれも示
唆ないし動機付けがあるとはいえない。」
平成 21
図5 無効審判において特許無効審決がなされた割合
地裁においても、統計上、興味深い傾向が現れている。図6
は、特許権侵害訴訟の権利者敗訴判決において、その理由が、
特許無効又は構成要件非充足とされた割合を示したグラフであ
る。同図に示すとおり、平成21年までは、権利者敗訴の理由は、
約50%又はそれ以上が特許無効であったところ、平成22年に
は、特許無効を理由とする権利者敗訴の割合は大きく低下して
いる。地裁においても、知財高裁においてなされた判決と同様の
判断基準により、容易想到性について判断した判決がなされて
いることからすると、
このような地裁における統計上の変化もま
弁理士
佐藤 睦
(1971年生)
Atsushi Sato
直通/ 03-6438-5580
MAIL/ [email protected]
【主な取扱分野】
特許訴訟・特許出願
半導体・電気・電子
IT・通信
【登録、所属】
日本弁理士会(2003)
T M I 月 例 セミナ ー 紹 介
TMIでは、皆様への情報提供の場として、毎月無料にてセミナーを開催して
おります。2011年1月から3月までに開催しましたセミナーの概要は以下の
とおりです。今後のセミナーのご案内等につきましては、セミナー開催日の
1ヶ月前を目処にTMIのHPの「Topics」
(http://www.tmi.gr.jp/information/
topic/)に掲載いたしますので、
こちらをご参照いただき奮ってご参加いただ
ければ幸いです。
過去に開催されたセミナーについてご興味のある方は、広報担当:蜂谷までお問い合わせ下さい。
【電話】
(03)6438-5511(代表)
【email】[email protected]
1
2
第32回セミナー
(平成23年2月10日)
テーマ:
「ドイツにおける会社法・労働法入門」
講 師:アーキス・デュッセルドルフ 山口 重雄 ドイツ弁護士
同 アンドレア・パンツァー ドイツ弁護士
アーキス・東京 エバハルド・ハファマルツ ドイツ弁護士
3
第33回セミナー
(平成23年3月4日)
テーマ:
「2010年における注目される特許裁判例」
第31回セミナー
(平成23年1月14日)
講 師:弁護士 松山 智恵、同 上野 さやか、弁理士 髙村 和宗
テーマ:
「M&A取引と大量保有報告規制の必須基本知識」
同 伊藤 健太郎、同 山田 拓
M&A取引における大量保有報告書の提出については、実務上、多くの複雑な問題が
存在するため、高額の課徴金納付命令を受けかねない潜在的なリスクが常に存在して
います。そこで、大量保有報告規制及び課徴金制度について、M&Aに携わる方が最低
限知っておくべき基本的な枠組みを説明し、具体的な取引事例における実務上の留意
点について、近時の実例を踏まえつつ解説しました。
近年、特許権侵害訴訟においては、特許の有効・無効も訴訟の中で判断されるな
ど争点が複雑化する傾向が見られます。本セミナーにおいては、進歩性、記載要
件、新規事項、特許を受ける権利及びダブルトラック問題という特許実務における
主要なテーマのそれぞれについて、2010年に知的財産高等裁判所で判示された
裁判例の中から注目すべき重要判決を取り上げ、近時の考え方を説明するととも
に、実務上の留意点等を具体的に解説しました。
講 師:弁護士 宮下 央
■その他セミナー
TMI総合法律事務所 / Morgan, Lewis & Bockius LLP ジョイントセミナー
(平成23年1月27日、
28日)
テーマ:
「日米の特許訴訟の実務」
講 師:T M I 弁護士 塚原 朋一、同 根本 浩、弁理士 佐藤 睦
MLB 米国弁護士 Robert
Gaybrick、同 Winstol Carter、同 松尾 悟
日米の特許訴訟に携わる、
TMI総合法律事務所及びMorgan, Lewis & Bockius LLPの弁護士、弁理士が、
それぞれの観点から、
日本国内及び米国における特許紛争を有利に進めるための主な留意点を解説しました。
書 籍 紹 介
『事業再生とバイアウト』
【 編 者 】日本バイアウト研究所編
【発行月】 2011年3月
【出版社】 中央経済社
【 価 格 】 3,990円(税込)
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本書は、
「 事業再編とバイアウト」、
「 事業承継とバイアウ
ト」
と並ぶ、バイアウトに関する実務を記した3部作の一
つとして出版されており、
バイアウトに携わる多数の業界
関係者の執筆分担により実現された、
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す。バイアウト・ファンドの投資担当者、会計・税務の専門
家、法律家等が執筆に参加することで、具体的な投資事
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実務を理解する上で非常に有益なリソースになる書籍で
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の3名の弁護士が、執筆に関与しております。
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【発行日】 2011年1月15日
【出版社】 中央経済社
【 価 格 】 4,200円(税込)
【判/頁】 A5判/392頁
本書は、企業担当者が決算修正を検討しなければなら
ない事象に直面した際に、法務・会計・税務の分野にお
いて検討しなければならない事項を分かりやすく、具体的
に、
かつ網羅的に解説したもので、TMI総合法律事務
所の弁護士が多数執筆に関与しております。実務に耐
え得る理論的根拠を示すとともに、具体例を多数挙げる
等、決算修正に携わられる方々の実務の即戦力となる
書籍です。
『債権法改正と事業再生』
【著者/訳者名】 髙山崇彦(共著)
生頼雅志、松下茜、
高野大滋郎、滝琢磨
【発行日】 2011年2月25日
【出版社】 株式会社商事法務
【 価 格 】 3,360円(税込)
【判/頁】 A5判/360頁
法制審議会民法(債権関係)部会で審議が進められる
債権法改正に関して、事業再生研究機構に設けられた
「債権法改正と事業再生に関する研究会」のメンバー
による研究結果を集めた論文集。民事手続法・民法の
研究者、弁護士及び金融実務家が倒産・事業再生の視
点から債権法改正議論について討議を重ねた結果が集
約されており、TMI総合法律事務所からは高山崇彦をは
じめ複数の弁護士が執筆に携わっています。
本ニューズレターで採り上げて欲しいテーマなど、是非、皆様の忌憚ないご意見・ご要望を下記までお寄せください。
また、今後Eメールでの配信をご希望の方や送付
先が変更となる方も、下記までご連絡ください。
(連絡先)編集部:[email protected] 編集長:[email protected] 03-6438-5533(直通)/TMIニューズレター編集部 編集長 弁護士 高橋 聖
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