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Ⅳ 学校組織マネジメント研究
平成21年度(2009 年度)紀要104号 Ⅳ 学校組織マネジメント研究 学校組織マネジメントを活かした学校づくり ~組織的な学校づくりに向けた校内体制の充実~ 学校組織マネジメント研究グループ 目 次 1.はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 2.学校の情報を共有することによる業務・事務の効率化について・・・・・・・・1 (1)情報の共有化グループの研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 (2)校内サーバーの共有フォルダの整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 (3)学校の事務の簡素化、効率化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 (4)今後の課題と方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 3.会議の精選と時間の短縮について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 (1)会議の精選グループの研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 (2)会議のスリム化や時間の短縮に向けた工夫・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 (3)組織的な学校運営を行うための校務分掌の再編・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 (4)職務の整理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 4.学校の業務の効率化に向けて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 ~学校組織マネジメント研究における今後の検討課題として~ 別紙 資料① 吹田市立学校首席及び指導教諭の職務等に関する要領・・・・12 別紙 資料② A小学校校務分掌表・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14 1.はじめに 1998(平成 10)年の『今後の地方教育行政の在り方について』と題する中教審答申では、教 育行政を含めた改革の必要性が指摘されました。中でも『第 3 章、5 学校の事務・業務の効 率化』では、 「学校が処理すべき事務・業務に係る負担軽減を図るため(中略)の措置を積極 的に講じる必要がある。」と指摘し、いくつかの具体的な項目も示されています。 「学校組織マネジメント研究グループ」は、昨年度まで行われた「学校事務研究グループ」 の研究内容を基礎に据えて新しく発足しました。昨年度までの「学校事務研究グループ」は、 事務職員で構成され、学校現場の多忙化を踏まえ、学校の事務の簡素化・効率化、組織の機 能化・スリム化などについて、制度としての整備が必要であることを提言してきました。 今年度からは「学校組織マネジメント研究グループ」として、 「首席」と「事務職員」で構 成し、 「組織マネジメント」を活かす取組について研究を進めています。学校における「組織 マネジメント」は、学校内外の能力・資源を開発・活用し、学校に関与する人たちのニーズ に適応させながら、学校教育目標を達成していく活動であると言えます。現在、学校が子ど もたちを取り巻く状況の複雑化・多様化に対応していくために、それらの業務を中心となっ て担う教員の負担を軽減する必要性が指摘されています。また、教員の負担を軽減していく ためにも、教職員が協働して組織的に学校運営を行うことが重要です。 具体的な研究を行っていくにあたって、まず、学校の負担軽減について、 「何が負担になっ ているのか」 「工夫してうまくいった例はないか」など意見を出し合うことからはじめました。 その中には、組織化、ICT化、簡素化・効率化、協働などのキーワードが多く含まれ、研 究課題の観点として、①首席と事務職員の協働。 ②首席・事務職員・教頭の仕事の役割分 担について、縦割りでの非効率や重なっている部分の整理。 の二点が必要であると考えま した。 目標としては、①学校の負担が軽減され、組織をスリム化できる提言を行う。②全市のス タンダードとして学校現場が活用できるグループ独自のプランを作る。こととしました。そ のための具体的な進め方については、 「学校の情報を共有することによる業務・事務の効率化」 (情報の共有化グループ)と「会議の精選と時間の短縮」 (会議の精選グループ)の二つのグ ループに分かれて、研究活動に取り組んできました。 2.学校の情報を共有することによる業務・事務の効率化について (1)情報の共有化グループの研究目的 校務の情報化は、校務が効率的に遂行でき教職員が児童生徒の指導等に多くの時間をあて ることを可能とします。また、学校の情報を共有することにより、きめ細かな学習指導や生 徒指導等がより実現できるようになります。校務の情報化に向け、ICT(情報通信技術: Information and Communication Technology)を効果的に活用し、学校の事務や業務の簡素化、 スリム化を進め、情報の共有化をいかに進めるかが重要です。そのような観点から情報の共 有化グループでは、「校内サーバーの共有フォルダの整理」「学校の事務の簡素化・効率化」 という二つの柱で論議を進めています。最終的には吹田市の全小・中学校で活用できるスタ ンダードモデルを提案できるようにしたいと考えています。 1 (2)校内サーバーの共有フォルダの整理 学校には膨大な情報があふれており、情報の管理や蓄積はそれぞれの学校によって異なっ ています。校内サーバー管理による共有フォルダの整理についても、行っている学校、行っ ていない学校様々であり、整理が行われていない学校では「必要なファイルを探すのに時間 がかかる」 「ファイルの内容がわかりにくい」 「ファイルが分散している」 「ファイルが重複し ている」などの問題が発生し、効率的に校務を推進することが難しくなっています。共有フ ォルダは、校務分掌や各係及び学年などのフォルダを年度ごとに分類・整理することで、そ れぞれの担当者個人の文書管理から学校としての文書管理となり、全教職員がデータを共有 することができます。担当者が不在であった場合や担当者が交替した場合であっても誰もが 簡単に文書を取り出すことができます。蓄積された文書の再利用も可能となり、特に、年度 当初や年度末の報告文書の多い繁忙期に、文書作成時間短縮による効率化が期待されます。 さらに、各学校の情報管理の面でのメリットもあります。また、学校によって校務分掌の形 態が様々であり一定の状況ではありませんが、全市の小・中学校が標準的なフォルダの分類・ 整理を行うことで、どの学校に異動しても教育活動の状況把握とスムーズな対応に繋がりま す。情報の共有化グループでは共有フォルダの標準化により、学校の事務の簡素化、効率化 が図れ、情報の継続性も確保されると考え、下記のようなモデル案を作成しました。 【共有フォルダ 1 校務文書 階層モデル案】 2 2007年度以前 2008年度 2009年度 ※斜体は文書ファイル 3 4 企画委員会 提案文書 委員会 努力目標 5 年間計画 反省etc… 行事予定 学年の取り組み 指導案 提案文書 生活指導 提案文書 人権教育 提案文書 教育課程 提案文書 教科等年間指導計画 総合年間指導計画 部会 学校行事 6 進路指導 時間割 時数 外国語活動 学校教育アンケート 提案文書 安全指導 提案文書 情報教育 提案文書 図書指導 提案文書 体育 提案文書 子ども支援 提案文書 学習環境 提案文書 特別活動 児童活動 クラブ活動 児童委員会 提案文書 入学式 年間計画 反省etc… 年間計画 反省etc… 年間計画 反省etc… 年間計画 反省etc… 1年 2年 3年 4年 5年 6年 3年 4年 5年 6年 年間計画 反省etc… 年間計画 反省etc… 年間計画 反省etc… 年間計画 反省etc… 年間計画 反省etc… 年間計画 反省etc… 年間計画 反省etc… 提案文書 計画 反省etc… 2 1 2 3 学年 4 行事記録写真 教務 6 計画 反省etc… 計画 反省etc… 計画 反省etc… 計画 反省etc… 計画 反省etc… 計画 反省etc… 提案文書 臨海学習 提案文書 音楽会 提案文書 図工展 提案文書 修学旅行 提案文書 林間学習 提案文書 運動会・体育大会 提案文書 プログラム 出発 場内整理 得点 応援団 放送 救護 決勝 準備 競技 進行 文化祭 提案文書 視聴覚行事 提案文書 計画 反省etc… 計画 反省etc… 校外学習予定表 校外学習 1年 学年だより 学年名簿 教材 学年行事 2年 3年 4年 5年 6年 支援学級 専科等 教科 5 卒業式 音楽 理科 保健指導 給食指導 少人数 国語(書写) 社会 算数・数学 理科 音楽 図工・美術 家庭・技術 体育・保健 道徳 総合 生活 英語 選択 教務 学校評価 教科書 通知表 日課表 授業時間数 校務分掌 学校だより 学期始・終 小中一貫教育 宿泊行事 保護者向け文書 首席 企画委員会 職員会議 小中連携 ケース会議 学力テスト 3 付添看護師関係 林間学習 臨海学習 修学旅行 危機管理 参観・懇談・家庭訪問 研究授業 宿泊学習関係 日課表関係 給食除去食 学力テスト 行事関係 1 2 3 4 学籍 調査・統計・報告 5 新学習指導要領 支援者・ボランティア関係 転出入 教育総務課 学校施設課 学務課 教育政策室 教職員課 指導課 幼稚園課 教育センター 保健給食課 その他 児童名簿 庶務 施設管理 経理 渉外 文書 掲示 庶務 営繕・補修 安全 環境整備 物品管理 給与 旅費 学校予算 教育扶助 徴収金 会計報告 小中連携 地域教育協議会 PTA 6 防災計画 教職員関係 読書支援 学年補助 全国学力学習状況調査 人権・支援 危機管理・生徒指導 基本調査・要覧 教育課程 情報教育 給食交流 校内研修 1年 2年 3年 4年 5年 6年 書記 会計 指名 企画 学年 広報 文化 生活 その他 個人 (3)学校の事務の簡素化、効率化 平成 18 年度に文部科学省委託事業により実施した「校務情報化に関する実態調査」におい て、80%以上の学校が「校務の情報化の効果あり」と下記のように回答しています。 ・ 情報の再利用により、転記作業が少なくなる。 ・ 情報の一元的蓄積により、情報を探す時間が減り、情報を活かす時間が増える。 ・ 情報の再利用により、通知表や指導要録作成の作業時間が減少する。 ・ 情報の再利用により、転記ミスなどが減少し、正確な資料が作成できる。 ・ 児童生徒の情報を一元的に蓄積することができ、学習指導に活かすことができる。 以上の、「校務情報化に関する実態調査」からもわかるように、校務の情報化は様々な事務 処理の効率化と業務の軽減を可能とします。現在、 各学校では、様々な事務処理の簡素化に向けパソ コンが利用されていますが、各々が個人的に必要 に応じて使用しているのがほとんどで、なかなか 学校全体での活用には至らないのが実情です。I CTを効果的に活用し、機能的な学校運営とより よい教育を実現するため、学校の事務の簡素化、 効率化の研究に取り組んでいる竹見台中学校ブロ 4 ックの実践をもとに、首席、事務職員それぞれの立場で意見を出し合いながら研究を進めま した。以下いくつかの具体例を挙げて紹介します。 ◇『児童生徒名簿ソフト』は、児童・生徒情報のデータを一つのファイルにまとめ、 「クラス名 簿」「学年名簿」や「在学者台帳」「指導要録」等の公簿書類作成、さらに「生徒数・家庭数 集計」 「生徒数調査票」 「地区別生徒数」 「卒業予定者名簿」などへのデータの活用もできます。 これらは、児童・生徒情報のデータとリンクしており、すべて自動作成のため事務処理の時 間短縮となり、機能的な学校運営に繋がります。 ◇『成績・評価集計ソフト』は「教科シート」「評価シート」「集計シート」に大きく 3 つに分 かれており、 『素点』と『評価』を入力すれば、そ れぞれのシートとリンクし自動集計できます。こ れらは自動転記されるソフトなので、今までのよ うに転記する作業時間の短縮ばかりでなく、転記 ミスも皆無になります。また、年度初め、学期末 や年度末などの慌しい時期の担任の事務負担も緩 和され、児童生徒と向き合う時間が増え、本来の 教育活動にあてる時間を生み出すことができます。 ◇『教材使用届ソフト』は、各学年のシート(小学 校)、各教科のシート(中学校)に購入教材に関す るデータを入力すると自動集計し、事務処理時間の短縮や計算ミスも防ぐことができ、会計 担当教員の事務負担の軽減になります。また、 「教材使用届」や保護者向け予算案「学年諸費 〔教材費〕の予算案」を作成することができ、全学年が同じ様式で同日に予算案を保護者に 配布することもでき、保護者への説明責任の向上にも繋がります。さらに、全教科の購入教 材がデータで管理されているので、公費及び保護者負担での購入が標準化することができ保 護者の負担軽減にも繋がります。 ◇『徴収金ソフト』は、 「徴収金」シートに各学年の月別徴収金額と「クラス表」シートに生徒 番号・生徒名(名簿ソフトデータの活用) ・PTA口数の入力により、学年諸費などの月ごと の徴収金未納者情報とともに未納者の納付書も簡単に作成することができ、事務処理時間の 短縮に繋がります。また、未納者や未納金の管理が容易にでき、在籍児童・生徒の納入状況 把握にも活用されています。 ◇『出納簿ソフト』は、学年諸費(教材費)の支出 項目・支出金額・購入者数(参加数)を入力して 出納管理を行っています。生徒一人当たりの執行 額の把握や教材を購入しなかった生徒や行事欠席 者の管理が簡単にできます。また、返金文書や決 算報告書・学期ごとの業者支払い明細書などの様 式や処理方法を標準化することで、全学年が共通 し学校としての対応が行え、説明責任への対応も より充実させることが可能になります。 ◇『市費予算ソフト』は、『教材使用届』を活用し たソフトで、各教科の購入希望のデータを入力すると「市費予算案」および「決算報告書」 の作成ができるものです。また、各教科の購入状況も簡単に把握でき、市費会計の透明性、 予算会議の時間短縮に繋がっています。さらに、このデータは会計年度ごとにフォルダ管理 5 されており、教職員全員がデータを共有することで、データの履歴を確認したり再利用も可 能になり、教員の事務負担軽減に結びつくものと考えます。 (4)今後の課題と方向性 ◆ 情報の共有化について 校務の情報化が進み、教職員間の文書の共有化ができれば、前年度の文書をもとに今年度 用の文書を作成することが容易になります。また、デシタル写真を保存しておけば、誰もが 教材や学校・学年・学級便りなどに利用ができます。このようなデータの共有が進めば、無 駄がなく教職員がお互いに効率的な仕事が出来る環境になります。 しかし、校務用パソコンのフォルダの整理をしている学校でも、ルール化を行っての整理 となると、一時保存したデータがデスクトップに残っていたり、指定されたフォルダに保存 していないなど、なかなか難しいのが現状です。今後、教職員全員が共有フォルダにおける 学校文書の整理の必要性や利用の仕方などを共通認識し、活用に向け取り組むことが大切で す。そして担当者や担当部署(委員会など)を明確にしておくことが重要です。 また、校内サーバーの共有フォルダの整理については、 ・ 小・中学校の業務の違いによる分掌の違い ・ 学校規模による分掌の違い ・ 各学校による呼称の違い などの課題がありますが、整理の基本を校務分掌におき、全学校に対応できるより良いモデ ル案を研究していきたいと考えています。 ◆ 学校の事務の簡素化・効率化について 今回紹介した竹見台中学校ブロックの事務ソフトは、事務職員が中心に作成したものです。 教職員全員が活用するためには、データの一元管理の方法やセキュリティー対策が重要とな りますが、今後、教頭、教員、事務職員それぞれが利用でき、学校の事務の簡素化、効率化 に向けて事務ソフトを吹田市全体の標準化システムとして構築することが、吹田市の小・中 学校全体の効率化に繋がると考えます。しかし、標準化システムの構築により、それを維持 していくための研修及びメンテナンスなどが必要となります。組織の整備や財政措置も関わ ってくることから、実現に向けては教育委員会と一体となって取り組む必要があります。 また、 「どのようなデータが必要なのか」 「どのようなソフトなら使いやすいのか」、さらに 「データの初期入力は誰がするのか」 「データの管理担当者は誰がするのか」などと言ったこ とについては、今後、これら事務ソフトを試行していく中で効果や課題を検証していくこと が必要であると考えています。 3.会議の精選と時間の短縮について (1)会議の精選グループの研究目的 多忙な学校の状況を改善するために、私たち学校現場の教職員が、学校組織マネジメント を活かした観点から、現場視点での様々な改革に取り組むことが重要となっています。この 間に行ってきた議論では、会議に費やす時間の多いことが挙げられていました。そこで、短 期間の研究でも学校教育活動の充実に大きな効果が期待できることから、会議等の工夫改善 による会議時間の短縮というテーマから研究を進めることにしました。 会議時間の短縮を実現していくためには、全教職員の共通理解のもとで取り組む必要があ 6 り、その際には会議を構成する基となる校務分掌の検証が欠かせないと考え、各学校の校務 分掌表を持ち寄って検討してきました。 (2)会議のスリム化や時間の短縮に向けた工夫 学校には、職員会議をはじめ、校務分掌にのっとった各分掌の会議など、いくつもの会議 があります。小学校では学級担任制であるため、空き時間も少なく、放課後以外の時間帯に 会議を持つことが困難な上に、対外的な会議も多く、出張で不在の職員がいると、なかなか 日程を組みにくい状況となっています。一方、中学校では教科担任制であるため、時間割の 中に、企画委員会や生徒指導、生徒会等の会議を持つことが可能ですが、放課後は部活動が あるため、なかなか会議を持ちにくい状況もあります。そのような中で、小学校、中学校そ れぞれの特徴に応じて、以下のような会議の持ち方が工夫されています。 ① 議案作成における工夫 ☆ 職員会議議案書 例示 ☆ 職員会議について考えてみると、議案 がばらばらで出てきたり、直前に出てき たりすることがあります。そのような中 で出てくる議案や会議の進め方によって は、議論に時間がかかったり、後日に修 正提案が必要となる場合があります。そ こで、事前に議案を集約し、連絡事項と 審議事項に分けて記載するなど整理した 議案書にすることで、スムーズに会議を 進行することができます。また、会議の 資料についても一括して印刷し、冊子に して配付すれば、手間はかかりますが紛 失することもなくなり、会議進行におい て大変効果的です。 A中学校においては、右図のような議 案書で、連絡事項・審議事項の順に記載し、 審議事項については校務分掌表の各部署をあらかじめ羅列し、それぞれの部署の欄へ案件を 書き込むような形になっています。議案や会議資料は職員会議の前日までに集約し、「首席」 が中心となり、事務職員も協力して資料の印刷をし、表紙に「鑑」をつけ、冊子として全職 員へ配付しています。 また、いくつかの学校では、管理職を含め、校務分掌上の各部の代表や各学年代表が集ま り、学校運営に関わる様々な案件を取り上げる基幹会議(企画委員会等)を設けています。 職員会議で検討する前に基幹会議のメンバーであらかじめ議案を練り、職員会議には、整理 した問題点や、結論に至った経過も含めて全職員に報告するという形で行えば、スムーズに 職員会議での議論を進めることができ、時間短縮に繋がります。つまり、 「透明性を確保しつ つ、整理された原案」が提示されることで、職員会議の効率化にも繋がります。 ② 会議の効率化 各学校で校務分掌表は異なり、学校独自の会議があります。放課後に会議を持つ場合、 「吹 田市外国人教育研究協議会」や「吹田市人権教育研究協議会」、情報教育、教育課程の対外的 な会議の日程がばらばらで、職員がそろう日がなく、なかなか会議の日程を決められないの が現状です。そこで、対外的な会議を第何週の第何曜日など、統一できれば効率的と考えま 7 すが、それには全市的な調整が必要となります。 また、校務分掌表は、年度ごとで担当が変わることも多く、その分掌の仕事を次の年度に 引き継ぐための、申し送りを充実させ、マニュアル化することで、次年度の担当者がうまく 動けるようになります。例えば、前にも述べていますが、教育用パソコンの共有フォルダを 整理し、誰でも見られるようにしておく方法があります。また、 「総合的な学習」など、年度 を越えて継続して行うもの、外部との打ち合わせが必要なものなどをマニュアル化すること により、共通理解や立案までの時間短縮ができます。 ☆ 職員会議を短縮する工夫の例 ☆ ①透明性のある原案の作成と内容(報告・連絡・議案等)の区分 →議案書での工夫(事前に配付、連絡と審議事項の区分、校務分掌に対応した形等) ②ファシリテーションスキルの向上(会議の効率的、効果的な進め方) ③企画委員会の活用(様々な観点から問題点や課題について検討し、整理して提示) →学校全体を見渡した意見の交流(少数職種や異なる学年からの違う視点で見て、見え てくる問題を整理し、本当に大事なことを残していけるようにする。) ④申し送りの充実、マニュアル化 ⑤会議時間の確保での工夫(対外的な会議日程の統一) (3)組織的な学校運営を行うための校務分掌の再編 校務分掌には、各学校の経緯や地域的な状況もあり、一概に論じることの難しい部分もあ りますが、学校が抱える負担を軽減しながら課題に対応していくためにも、組織的な学校運 営をめざし、会議のスリム化に向けた校務分掌の研究を行ってきました。現在の学校は、様々 な課題への対応が求められていることから、教職員の多忙化が顕著になっています。その中 には、学校の自主性・自律性の確立や地域との連携、情報管理や発信等のような業務も増え ている状況があります。そこでは、これまで“隙間の仕事”と言われてきたような業務も含 めて、学校事務職員をはじめとした“ノンティーチングスタッフ”と教員の協働を前提とし て、より機能的な“学校の組織マネジメント”が効果的です。 そこで、校務分掌表を検証していく中で、効果的な“学校の組織マネジメント”をめざし て、「首席・事務職員」の職務や役割、協働について研究を行ってきました。 (4)職務の整理 ① 首席の役割 『吹田市立学校首席及び指導教諭の職務等に関する要領』 (資料①P.12)から首席の職務を 考えると、各部署をコーディネートする役割と考えられます。 (例示参照)その上で、仕事上 の重なりが多い教頭と教務部の役割や、校務分掌表での首席が担う役割についても検討して きました。現在の学校は、様々なニーズや課題に対応していくために、リーダーシップの強 化と責任体制の明確化が必要であり、同時に、人材や組織を活用していくために役割の明確 化が必要です。例えば、 「総合的な学習」等での外部との打ち合わせについては、比較的電話 等をとりやすい職種の者との連絡を密にすることや、新任、経験の少ない教員への育成の担 当、会議をコーディネートする役割(次頁例示)として、首席を位置付けることが学校運営に おいて効果的です。また、校務分掌の仕事においても、経験の少ない教員等にもチーフ役を 充て、それを首席がサポートする(育成する側の補助的役割)といった形態もありえます。 8 ☆各部署をコーディネートする役割(例示)☆ *職員会議の運営 ・議案書づくり ・各部署の提案レジメ確認 ・司会との打ち合わせ 等 *企画委員会のまとめ役 ・提案事項の確認(例年の動きから提案する時期を考えて、素案を出す。) ・各部署からの提案事項の確認(例年の動きから時期を考えて、提案を促す。) ・決定事項の確認と、次年度への申し送り ・行事等の調整 ・各学年の動きの把握と調整 ・時間割や、時間設定の決定(教務の提案を受けて) ・各学年や各部署に提案を下ろし、再度期日を決めて吸い上げ、職員会議で提案 ・校内研修会の企画調整(校務分掌のチーフ役との連携・サポート) 等 *対外的な調整役 ・行事などでの対外的な事業所との調整 ・地域との連絡をつなぐパイプ役(生徒指導主事や管理職・事務職員と調整しながら) ・小中連携の推進係(研修、参観、行事、生徒相談 等) ・HP等での地域へのアナウンス 等 *学校全体の調整役 ・将来的な学校運営を見据える 等 ② 事務職員の役割 『学校事務職員の標準的な職務』に示されている職務内容は多岐にわたっており、その中 には事務職員以外の職員と協働して行っている仕事もあります。協働で行っている仕事の役 割分担を見直すことよって効率化をはかり、より改善できる仕事があると考えました。 例えば、学校予算を大きく分けると、 『配分予算』と『徴収金』に分けられます。これらを、 竹見台中学校ブロックの取組で紹介したような事務の簡素化を行いながら、事務職員が一括 管理することで、予算の透明性と公平性を確保し、保護者負担の軽減や説明責任に対応する ことに繋がります。 また、学校では、ホームページや学校ハンドブックなど様々な形で情報を発信しています。 このような役割の一部を事務職員が担うことによって、より透明性の高い会計報告の作成や 迅速なホームページの更新など、考えられる役割は多々あります。 ③ 「首席と事務職員との協働」 ☆(首席と事務職員の協働イメージ)図 次に、 『首席』と『事務職員』の役割の検 討から、 『首席』と『事務職員』の協働への 方策を考えました。そこでは、 「首席・事務 職員」そして、 「教頭」を学校組織マネジメ ントに携わる少数職種と位置づけ、仕事の 役割分担について、 “隙間の仕事”も抜け落 ちないようにしながら、職制にあわせて縦 割りであったり、重なっていたりする部分 9 の整理を考えました。 学校運営上で教員が中心になって進めているようなものでも、事務職員もあらゆる方面か ら関わっています。そのような例として、 「首席」と「事務職員」との協働の観点からも、よ りスムーズに進めていけるものをあげてみました。(前頁イメージ図参照) ④ 校務分掌表において 学校教育において、教員の業務となっている中に、事務職員の業務も多く混在しており、 専門性を活かして適材適所の配置を行うことで、スムーズに学校運営を行うことが可能と考 えます。そのためには、校務分掌における指導部門と管理・事務部門が連携する必要があり ます。また、効率的で機能的な組織とするためには、リーダーシップの発揮と責任を明確に した体制が必要となります。さらに、世代交代期となっている現在においては、若い世代へ の育成・支援を踏まえた体制を整える必要があります。したがって、それらを可能とする校 務分掌上の工夫が必要となっています。 例えば、校務分掌表を、 (ア) 指導部門と管理・事務部門に二分化する。→管理・事務部門を明確に位置づける。 (イ) 職制に基づいた、専門性を活かした役割分担の明確化をおこなう。 (ウ) 校務分掌表での役割の内容を、別紙 校務分掌表(資料②)の様にして見やすい形に 整理する。 といったことが考えられます。 4.学校の業務の効率化に向けて ~学校組織マネジメント研究における今後の検討課題として~ これまで、学校内での工夫を前提にした改善策を述べてきましたが、冒頭で述べた中教審 答申でも、教育委員会も含めて在り方や役割を検討する必要性が指摘されています。 例えば、家庭や地域の教育力の充実に向けて、学校と家庭・地域との連携の必要性が指摘 されている中で、地域行事への参加を求められる機会が増えています。また、義務教育 9 年 間の連続性や教員の指導力向上等に効果があると言われている「小中一貫教育の推進」にお いては、小・小間や小・中間に地域も含めた連携が求められています。学校が果たすべき役 割も含めて、より効果的な方法の検討が必要であり、今後は、以下のような点について研究 を行い、検討する必要があります。 ◆ 連携の充実による業務の効率化 ① 教育委員会と学校の連携 ② 学校間での連携・・・小中一貫教育推進における事務局機能の充実 ③ 地域と学校の連携・・・家庭や地域の教育力を高めながら、中学校ブロックでの学校教育と の連携 ◆ 事務処理の簡素化 ① 業務の標準化とICTの活用→事務処理での効率化・・・「報告書」の重なりの洗い出し。 ② 中学校ブロックや市町村単位での共同化→学校が担う業務の精選(教育委員会との連携が 必要) ◆ 家庭や地域の教育力向上に向けた学校の役割について ① 学校の業務の精選 ② 連携を担当する組織や役割分担などの『仕組み』の整備 10 最後に、学校組織マネジメントを活かし、学校が抱える困難を解決し、学校教育の充実を 実現するために、次年度も学校現場や関係機関等からの声も聞きながら、継続して研究活動 を行っていきます。 11 (別紙 資料①) 吹田市立学校首席及び指導教諭の職務等に関する要領 吹田市教育委員会 第1章 (目 第1条 総 則 的) この要領は、吹田市立小学校及び中学校の管理運営に関する規則第 4 条第 3 項及び第 4 条の 2 第 3 項の規定に基づき、首席及び指導教諭の職務内容等に関して必要な事項を定めるものとする。 第2章 首 席 (首席設置の趣旨) 第2条 学校が主体的、自律的に運営されるためには、校長が中長期的な経営ビジョンを示し、リーダ ーシップを発揮していくことに加え、様々な課題に対し、学校自らが判断し、適切かつ迅速に対処で きる組織的で機動的な学校運営体制の構築が必要である。 このため、学校運営組織において、教頭と教職員との間に校務の要となる職として、首席を設置し、 学校運営体制・機能の充実を図る。 (首席の職務) 第3条 首席は、校長の命を受け、一定の校務について教職員のリーダーとして組織を円滑に機能させ るとともに、その校務を着実に遂行していく上で、他の教職員に対して、必要な指導・総括にあたる。 2 首席は前項の職務を遂行するために、学校運営において次に掲げる職責(機能)を担う。 ① 意思決定支援 学校の意思決定を迅速化するため、教職員の意見のとりまとめ、及び教職員に対する校長の学 校運営方針の具現化 ② 校務等の調整 各々の分掌等における横断的・総合的な調整 ③ 相談支援・人材育成 教職員が抱える仕事上の問題点や悩みを把握した上での適切な指導・助言 ④ 渉外・広報 地域の窓口として、学校の教育活動、地域活動等の情報提供・説明 3 職務の具体的な内容は、各学校の実情に応じ、校長が決定する。 (首席の選考及び任命) 第4条 首席は、教諭及び養護教諭のうちから、大阪府教育委員会が命ずる。また、選考は、吹田市教 育委員会教育長の推薦に基づき、大阪府教育委員会が行う。 (首席の配置先及び配置数) 第5条 吹田市立小学校及び中学校に、課題等の実情に応じて配置する。 第3章 指導教諭 (指導教諭設置の趣旨) 第6条 教職員一人ひとりに対して、学習指導をはじめ、生徒指導など児童・生徒を指導していく教育 の専門職として高い能力が求められている。 このため、学校において、指導力に卓越した指導教諭を設置し、教職員の指導力の向上を図る。 (指導教諭の職務) 12 第7条 指導教諭は、学校に配置され、教育長及び校長の命を受け、専門的な知識や経験を活用し、次 に掲げる職責(機能)を担う。 ① 教員の育成 指導教諭の勤務校及び市内各学校の教員に対する授業改善等の指導 ② 研究・研修支援 市教育センターなどへの研究・研修の支援 ③ 地域連携 市内各学校や関係団体などへの情報提供及び保護者に対する相談活動 2 職務の具体的な内容は、各学校・各学校・地域の実情に応じ、校長が決定する。 (指導教諭の選考及び任命) 第 8 条指導教諭は、教諭及び養護教諭のうちから、大阪府教育委員会が命ずる。また、選考は、吹田市 教育委員会教育長の推薦に基づき、大阪府教育委員会が行う。 (指導教諭の配置先及び配置数) 第9条 吹田市立小学校及び中学校に教科等を配慮し配置する。 附則 この要領は平成 18 年 11 月 1 日から施行する。 13 (別紙 資料②) A小学校校務分掌表 部会 学年 企 画 委 員 会 校 長 指 導 研 究 部 教科 職 員 会 議 教 頭 努 力 目 標 生 活 指 導 人 権 教 育 教 育 課 程 事 務 管 理 部 安全指導 情報教育 図書指導 体育 子ども支援 学習環境 特別活動 1年 2年 3年 4年 5年 6年 支援学級 フリー 国語 社会 算数 理科 音楽 図工 家庭 体育 道徳 総合 生活 視聴覚 保健 教務 教務 学籍 調査・統計 庶務 文書 掲示 庶務 施設管理 営繕・補修 安全 環境整備 物品管理 経理 給与 旅費 学校予算 徴収金 渉外 小中連携 地域 PTA 【定例委員会】 14