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銅電析における添加剤吸着機構の電気化学顕微鏡による解析

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銅電析における添加剤吸着機構の電気化学顕微鏡による解析
銅電析における添加剤吸着機構の電気化学顕微鏡による解析
関東学院大学工学部
○山下嗣人、高橋夏樹、本間英夫
1.緒言
硫酸銅浴からの銅電析が電解銅箔の製造やプリント基板の微細配線形成、MEMS の製造というナ
ノテクノロジーへ応用されている。機器の小型化に伴いさらなる微細配線化が進み、高密度・高精
度な銅電析皮膜が求められている。ビアフィリング用の添加剤としては、ポリエチレングリコール
(以下 PEG)
、塩化物イオン(以下 Cl-)およびビス(3‐スルホプロピル)ジスルファイド 2 ナト
リウム(以下 SPS)の複合添加が有効である 1)。
本研究においては、微小凹凸部への銅電析添加剤の吸着機構を走査型電気化学顕微鏡ならびに結
晶構造学的に解析した。
2.実験方法
電解液は 0.8 mol dm-3 CuSO4 5H2O、0.5 mol dm-3 H2SO4 を基本組成とし、添加剤は平均分子量
400~20000 の PEG 100ppm、塩化物イオン 50ppm、SPS 0.5~1.0ppm、MPS 0.5~1.0ppm を用
い、温度は 25℃とした。カソード試験極には純度 99.99%の圧延銅板(作用面積 0.093~1cm2)、参
照電極法の銅カソードには幅 400μm、深さ 30μm の溝を作製し、全作用面積を 1cm2 とした。凹
凸部における添加剤の吸着挙動は、走査型電気化学顕微鏡(SECM)を用いて解析した。
3.結果および考察
PEG+Cl-浴での銅電析電位は、無添加浴よりも約 100mV 卑へ移行し、大きな分極作用を示した
が、PEG+Cl-+SPS 系でのそれには復極作用が認められた。PEG+Cl-浴および PEG+Cl-+SPS 浴に
おける銅電析の交換電流密度は、無添加浴の約 1/30 および約 1/2 に低下し、
電荷移動速度は PEG+Clにより著しく抑制された。無添加浴における銅電析反応は1電子2段反応で進行するが、PEG+Cl浴でのそれは2電子1段反応との並列で進行する。PEG+Cl-+SPS 浴での反応素過程数は3であり、
1電子2段の電荷移動反応後に結晶化過程が含まれる。PEG+Cl-+SPS 系浴からの銅電析は、カソ
ード表面に吸着した SPS が銅の結晶成長を抑制して、結晶核の発生を促進させる機構である 2)。
無添加浴でのビア開口部(凸部)の銅電析電位は-190mV、PEG+Cl-および PEG+Cl-+SPS 浴での
それは-429mV および-425mV であった。PEG+Cl-は凸部表面に吸着して銅の電析を抑制しているが、
SPS は凸部表面には吸着していない。無添加浴および PEG+Cl-浴におけるビア底部(凹部)の銅電
析電位-197mV および約-425mV は、凸部表面の電位とほぼ同じであった。PEG+Cl-はビアの開口部
だけでなく、底部にも吸着して銅電析を抑制している。
PEG+Cl-+SPS 浴における底部の電析電位は-370mV であり、凸部のそれよりも 54mV 貴へ移行
する復極作用が示された。SPS は底部での結晶核生成を促進させてビアフィリングが達成される。
SPS の分解生成物である MPS は、凹部よりも凸部での結晶成長を促進させるので、ビアフィリン
グには適切でない。PEG 誘導体(PEG-Cl、PEG-Az)の吸着挙動についても述べる。
4.結論
酸性硫酸銅溶液からの銅電析におよぼす添加剤(PEG+Cl-+SPS または MPS)の吸着機構を電気
化学的ならびに結晶構造学的に解析した。SPS は PEG+Cl-の分極作用を復極させるが、その効果と
しては、銅の結晶核生成を促して微細結晶とする。特にビア底部の銅電析を促進させるので、ビア
フィリング用添加剤として適切である。
文献
1) 高田祐一,小山田仁子,三浦修平,本間英夫:エレクトロニクス実装学会誌, 4, No.3, 219 (2001)
2) H.Yamaguchi, T.Yamashita:J.of the Materials Science Society of Japan, 43, No.6, 37 (2006)
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