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日本原子力学会標準 原子力発電所の内部火災を起因とした 確率論的

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日本原子力学会標準 原子力発電所の内部火災を起因とした 確率論的
公衆審査用
査
AESJ-SC-RK00X : 201X
学会の
マーク
日本原子力学会標準
公衆
審
原子力発電所の内部火災を起因とした
確率論的リスク評価に関する実施基準:201X
201X 年 X 月
一般社団法人
日本原子力学会
公衆
審
査
RK00*:201*
RK00*:201*
査
まえがき
原子力発電所の内部火災を起因とした確率論的リスク評価に関する実施基準:201*は,(社)
日本原子力学会が標準委員会リスク専門部会火災 PRA 分科会,同専門部会,同委員会の審議
を経て,制定したもので,出力運転状態にある原子力発電所の内的要因で発生する火災を起因
とする事故に関する確率論的リスク評価(PRA)の有すべき要件及びそれを満たす具体的方
法を,PRA 実施の手順を踏まえて実施基準として規定したものです。
2011 年 3 月に発生した福島第一原子力発電所事故は,津波という単一の原因によって,複
数の安全上重要な設備が一度に機能喪失してしまった事故(共通原因故障)ですが,火災とい
公衆
審
う現象も,津波と同様に,このような安全上重要な設備の共通原因故障を引き起こす恐れがあ
ります。
実際,1975 年 3 月に発生した米国ブラウンズフェリー1 号機における火災では,一つの火災
が複数の安全系機器の誤作動,誤表示を引き起こし,プラントの状態を確認できない事態に陥
りました。
この事故以降,我が国の原子力発電所においては,種々の火災防護対策を施してきましたが,
福島第一原子力発電所事故が津波による共通原因故障に起因した大事故であったことに鑑み
るならば,設計想定の範囲を超える火災についても,そのリスクを評価し,脆弱な点を摘出し,
それに対する対策を施すことが,原子力発電所のより一層の安全性向上のために必要なことと
考えます。
この火災によるリスクを定量的に評価するために,火災 PRA という技術が既に開発されて
おり,それを用いることにより,火災による起因事象の発生と,それに続く安全上重要な設備
の共通原因故障が炉心や格納容器などに及ぼす影響を分析することが可能となっています。
この標準を活用することにより,原子力発電所の火災リスクの把握と,火災に対する弱点の
摘出が可能となりますので,その結果を原子力発電所の設計・建設・運転保守管理に用いるこ
とにより,原子力発電所のより一層の安全性向上に資することができるものと考えます。
RK00*:201*
査
FOREWORD
The Implementation Standard Concerning the Internal Fire Probabilistic Risk Assessment of
Nuclear Power Plants: 201*, has been developed and issued by the Atomic Energy Society of Japan
(AESJ), following studies and discussion by the Fire PRA Subcommittee under the Risk Technical
Committee (RTC) for the Standards Committee (SC), and the approval both by the RTC and the SC.
The Implementation Standard provides for addresses requirement and the specific method to
implement the probabilistic risk assessment (PRA) for accidents induced by internal fire at nuclear
power plants (NPPs) during power operation, according to the PRA procedure.
The accident of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant in March of 2011 was caused by
simultaneous loss of functions of many safety equipments due to common cause failures caused by
公衆
審
tsunami-induced flooding into the reactor building. Those kinds of common cause failures could be
also induced by fire as well as tsunami.
Actually, Brownsferry-1 in the U.S. had a fire accident in March of 1975, which caused
malfunctions and/or false indications of its safety equipments, finally having led to a situation in
which the state of the plant could not be confirmed.
After this accident, various kinds of fire protection measures have been taken for the nuclear power
plants in Japan, however, considering the accident of Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant was
caused by the common cause failures induced by only one reason of the tsunami, it is absolutely
necessary to evaluate the risk of common cause failures induced by fire, and also to extract the weak
points for the fire, and finally to take adequate countermeasures for the fire. We believe that this is the
best way to improve the safety for the fire.
Fire PRA technique, which has already been developed in order to quantitatively evaluate the risk of
the fire, can analyze initiating events and consequential common cause failures which influence on the
reactor core and/or containment.
We believe that this standard can contribute to enhanced safety of nuclear power plants, in the
areas of design, construction, operation, and maintenance, through comprehensive understanding of fire
risks and complete extraction of plant features vulnerable to fire.
制定:201*年**月**日
この実施基準についての意見又は質問は,一般社団法人 日本原子力学会事務局標準委員会担当
(〒105-0004
東京都港区新橋 2-3-7 TEL 03-3508-1263)にご連絡ください。
(xii)
RK00*:201*
免責条項
査
この標準は,審議の公正,中立,透明性を確保することを基本方針とした標準委員会規約に
従って,所属業種のバランスに配慮して選出された委員で構成された委員会にて,専門知識及
び関心を有する人々が参加できるように配慮しながら審議され,さらにその草案に対して産業
界,学界,規制当局を含め広く社会から意見を求める公衆審査の手続きを経て制定されました。
日本原子力学会は,この標準に関する説明責任を有しますが,この標準に基づく設備の建設,
維持,廃止等の活動に起因する損害に対しては責任を有しません。また,この標準に関連して
主張される特許権及び著作権の有効性を判断する責任もそれらの利用によって生じた特許権
や著作権の侵害に係る損害賠償請求に応ずる責任もありません。そうした責任はすべてこの標
準の利用者にあります。
公衆
審
なお,この標準の審議に規制当局,産業界の委員が参加していますが,このことはこの標準
が規制当局及び産業界によって承認されたことを意味するものではありません。
Disclaimer
This Standard was developed and approved by the Standards Committee of AESJ in accordance with
the Standards Committee Rules, which assure fairness, impartiality, and transparency in the process of
deliberating on a standard.
The Committee is composed of individuals who are competent or
interested in the subject and elected, keeping the balance of organizations they belong in the subject,
with their professional affiliations well-balanced as specified in the Rules. Furthermore, the standard
proposed by the Committee was made available for public review and comment, providing an
opportunity for additional input from industry, academia, regulatory agencies and the public-at-large.
AESJ accepts the responsibility for interpreting this standard, but no responsibility is assumed for any
detriment caused by the actions based on this standard during construction, operation, or
decommissioning of facilities.
AESJ does not endorse or approve any item, construction, device, or
activity based on this standard.
AESJ does not take any position with respect to the validity of any patent rights or copyrights claimed
in relation to any items mentioned in this document, nor assume any liability for the infringement of
patent rights or copyrights as a result of using this standard. The risk of infringement of such rights
shall be assumed entirely by the users.
The Committee acknowledges with appreciation the participation by regulatory agency representatives
and industry-affiliated representatives, whose contribution is not to be interpreted that the government
or industry has endorsed this standard.
RK00*:201*
著作権
ん。
査
文書による出版者の事前了解なしに,この標準のいかなる形の複写・転載も行ってはなりませ
この標準の著作権は,全て日本原子力学会に帰属します。
Copyright
No part of this publication may be reproduced in any form without the prior written permission of
AESJ.
Copyright © 201X Atomic Energy Society of Japan
公衆
審
All Rights Reserved.
(xiv)
RK00*:201*
査
日本原子力学会における原子力標準の策定について
標準委員会は,原子力安全の確保を目指して公平,公正,公開の原則の遵守のもとに活動を
進めています。産業界と学界及び国に広く所属する各分野の専門家が共同して我が国の経済的,
社会的環境,国民性,産業構造,技術の発達等を十分勘案し,原子力発電所など原子力に係る
製品やシステム,仕組みが健全であると識別する基準を,上述のステークホールダのみならず
広く国民に提供することを目指して,合意できるところを原子力標準として随時制定し,それ
を最新の知見を反映して改定していくことを使命としています。これにより,国民が当該技術
についての最新の知見を迅速に利用することが可能になる一方,市場競争を行いながら原子力
安全を最優先としている産業界は,当該技術が標準化されたことを前提として,比較優位性を
公衆
審
生み出す技術領域の開発に努力することが可能になり,ひいては原子力安全をより確実にする
ことにも注力することが容易となります。
また,我が国においてはこれまで,国民の生活の質を確保し,経済社会の安定な発展を支え
るため,国が規制行政活動の一部として所要の標準を国家標準として制定し,行政判断に使用
してきました。この姿勢は,ここ数年来,機能性化として標準策定の活動を学会に委ねる方向
に進むこととしたものの,その体系化は整わず,技術革新のスピードが速く,新技術の利用範
囲が連続的に拡大していく今日にあり,技術の変化に合わせて国家標準を適正化していく作業
が追いつかないため,国としての原子力安全の確保の観点で陳腐化が進んでしまいました。結
果,2011 年 3 月 11 日の福島第一原子力発電所の津波被災が史上稀に見る原子力事故にまで展
開する事態となった要因の一つと考えます。このような状況を鑑み,新たに発足した原子力規
制委員会の原子力安全を担う独立した行政機関を補足すべく,学会が中心となって原子力安全
に係る適正な判断基準を策定する役割を担うことが,重要な教訓の一つと考えます。
このような精神に則り,標準委員会は構成する委員一人ひとりが学会の倫理規程を遵守し,
先に示した公正,公平,公開の原則のもとに原子力標準を策定し,国民の合意を得て制定され
たいわゆるコンセンサス標準を国の行政ニーズに応じて利用していくことになれば,新しい技
術的知見を迅速に,また国民の利用に供することになります。さらに,これを国際標準化して
いく努力を行うことも学会でこそ可能であり,これの実現は我が国の国際技術戦略上重要な貢
献となると考えます。
201X 年 X 月
標準委員会
委員長
宮野
廣
RK00*:201*
査
原子力標準の位置付けについて
“原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的リスク評価に関する実施基準(レベル
1PRA 編)
:200x”は,1999 年 9 月 22 日に設置された日本原子力学会標準委員会(Standards
Committee of AESJ)が,原子力施設の安全性と信頼性を確保してその技術水準の維持・向
上を図る観点から,原子力施設の設計・建設・運転・廃止措置などの活動において実現すべき
技術のあり方を,原子力技術の提供者,利用者,専門家の有する最新の知見を踏まえ,影響を
受ける可能性のある関係者の意見をパブリックコメントをも通じて聴取するなど公平,公正,
公開の原則を遵守しながら審議し,合意したところを文書化した原子力標準の一つです。
標準委員会は,専門家集団の果たすべきこのような役割と責任を意識しながら,ボランティ
公衆
審
ア精神を基盤に,原子力施設におけるニーズに対応する標準策定活動を行うために,公平,公
正,公開の原則に則って定めた運営規約に従い,リスク専門部会で本標準の原案を作成しまし
た。この標準が標準委員会設置の趣旨を踏まえて各方面で活用されることを期待します。なお,
この内容については原則として 5 年ごとに改定することとしておりますので,本委員会はこ
の標準の利用に際してのご質問や改定に向けてのご提案をいつでも歓迎します。
201X 年 X 月
(xvi)
標準委員会
委員長
宮野
廣
RK00*:201*
査
リスク専門部会の活動について
リスク専門部会(以下,本専門部会)は,標準委員会の専門部会構成の見直しに伴い,リス
ク情報活用のための考え方,各原子力施設における PRA(Probabilistic Risk Assessment)
の手法およびそれから得られるリスク情報を各分野において活用するための具体的方法など
に関連した標準の整備を行う専門部会として,2008 年 12 月以来,活動を行っています。
PRA は 1960 年代に米国において研究開発が進められ,1975 年の WASH-1400,さらに 1991
年の NUREG-1150 に至り,その後の PRA の礎が築かれました。PRA には,原子力施設のリ
スク抑制の程度に加え,リスクに寄与する要因やその寄与の程度などを把握できるという利点
があります。このことを踏まえて,欧米では PRA から得られるこれらのリスク情報の活用が
公衆
審
進んでいます。我が国においても,1970 年代に PRA 手法の導入を行い,その後,安全評価
としての利用を経て,1990 年代には,アクシデントマネジメント整備の取り組みが具体化し,
さらに 2000 年代にはリスク情報を規制や安全確保活動に活用する動きとなり,当時の原子力
安全委員会および原子力安全・保安院からリスク情報を安全規制に活用する基本的考え方など
が示され,安全目標,性能目標や規制資源の適正配分の議論も行われてきました。標準委員会
は,これらに先駆け,2002 年に“原子力発電所の停止状態を対象とした確率論的安全評価手順”
を制定して以来,内的事象のレベル 1PRA,外的事象の地震 PRA などの実施基準策定を行っ
てきました。
2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波により,東日本の太
平洋沿岸に大きな被害がもたらされ,福島第一原子力発電所では,設計想定を超える地震と津
波のため,全交流電源喪失事象となり,3 基の原子炉が炉心損傷に至り,環境へ大量の放射性
物質が放出される事態となりました。震源地に近い宮城,福島,茨城各県のその他の原子力発
電所も大きな設備被害を受けましたが,アクシデントマネジメントが功を奏し原子炉停止を達
成することができました。
これらの事故を PRA の観点から見ると,自然災害のハザード解析,
外的事象に対するリスクの把握からのアクシデントマネジメント整備,高影響事象に対する柔
軟な対応策整備などの,PRA が貢献できる多くの点があったことが見出せます。
本専門部会としては,シビアアクシデントと公衆や環境への重大な影響の阻止に PRA の活
用が不十分かつ不適切であったことを反省し,実効性のある対策につながるリスク情報を与え
るとともに PRA の活用促進を働きかけることが最重要課題であると考えています。既に整備
してきた標準について,福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえた上で,PRA 技術の進歩,
活用事例の増加に伴う評価経験の蓄積などに基づき,より実効的で使いやすいものに見直して
いくとともに,PRA をはじめとするリスク評価の拡充および活用分野の拡大に努力していく
ことが必要と考えています。そのため,傘下にタスクを設け,リスク評価の拡充を図るための
整備計画およびリスク情報を意思決定に活用する際に必要な事項について,標準策定の視点か
らの意見交換を行い,時宜を得て必要な PRA 標準を策定することにより,原子力の安全に役
立つリスク評価手法を提供していきます。
RK00*:201*
本専門部会は公開で行われていますので,事前に連絡いただければ傍聴することができます。
だくことも可能です。
査
また審議過程は議事録として残し,ホームページにも掲載されますので,活動状況を確認いた
標準は,新技術の開発状況や新たに得られた知見に基づいて適切に改定されていくことによ
って,その利用価値が維持できるものです。そのため,少なくとも年に一度は本専門部会で改
定の必要性について検討を行い,原則として 5 年ごとに改定版を作成していくこととしてそ
の原案を作成していきたいと考えています。
201X 年 X 月
標準委員会
公衆
審
リスク専門部会
(xviii)
部会長 山口 彰
RK00*:201*
委員名簿
査
標準委員会,専門部会,分科会
標 準 委 員 会
(順不同,敬称略)
(20XX 年 XX 月 XX 日現在)
宮野
廣
法政大学
副委員長
有冨
正憲
東京工業大学
副委員長
関村
直人
東京大学
幹事
岡本
孝司
東京大学
幹事
山口
彰
大阪大学
委員
青柳
春樹
日本原燃(株)
委員
喜多尾 憲助
ISO/TC85・IEC/TC45 国内委員会
委員
三枝 利有
(一財)電力中央研究所
委員
谷川
尚司
日立 GE ニュークリア・エナジー(株)
委員
谷本
亮二
三菱マテリアル(株)
委員
千種
直樹
関西電力(株)
公衆
審
委員長
常松
睦生
委員
姉川
尚史
東京電力(株)
委員
井口
哲夫
名古屋大学
委員
伊藤
裕之
一般社団法人
委員
津山
雅樹
一般社団法人 日本電機工業会
原子力安全推進協会
委員
鶴来
俊弘
中部電力(株)
委員
ウェスティングハウス
・エレクトリック・ジャパン
委員
岩田
修一
事業構想大学院大学
委員
中井
良大
(独)日本原子力研究開発機構
委員
梅津
成光
三菱重工業(株)
委員
西岡
周二
日本原子力保険プール
委員
岡本
太志
富士電機(株)
委員
西脇
由弘
東京大学
委員
小原
徹
東京工業大学
委員
渡辺
宏
日揮(株)
委員
笠野
博之
九州電力(株)
委員
本間
俊充
(独)日本原子力研究開発機構
委員
川崎
邦裕
(独)原子力安全基盤機構
旧委員(所属は退任時所属)
平野
雅司 ((独)原子力安全基盤機構), 古川
山下
和彦( 東京電力(株)),加藤
牧
雄二(三菱重工業(株)),水越
正美((独)原子力安全基盤機構),林
大作(日揮(株)),
慎一郎(経済産業省 原子力安全・保安院)
常時参加者
小口
一成( 原子燃料工業(株)), 菊池
恂( 内閣府
原子力安全委員会)
事務局
中村
隆夫(大阪大学)
制定後修正
浩一(九州電力(株)),
RK00*:201*
査
リスク専門部会
(順不同,敬称略)
(20XX 年 XX 月 XX 日現在)
山口
彰
大阪大学
副部会長
山下
正弘
(独)原子力安全基盤機構
幹事
成宮
祥介
関西電力(株)
委員
岡本
孝司
東京大学
委員
梶本
光廣
(独)原子力安全基盤機構
委員
山岸
誠
三菱重工業(株)
委員
竹山
弘恭
中部電力(株)
委員
野中
信之
(独)日本原子力研究開発機構
委員
藤井
正彦
(株)東芝
委員
鈴木
雅克
日本原子力発電(株)
委員
丸山
結
(独)日本原子力研究開発機構
公衆
審
部会長
委員
喜多
利亘
(株)テプコシステムズ
委員
松本
精二
日本エヌ・ユー・エス(株)
委員
北村
豊
(株)三菱総研
委員
村田
尚之
一般社団法人
委員
桐本
順広
(一財)電力中央研究所
委員
倉本
孝弘
(株)原子力エンジニアリング
委員
曾根田 秀夫
日立 GE ニュークリア・エナジー(株)
委員
越塚
誠一
東京大学
委員
山中
康慎
東京電力(株)
委員
上田
吉徳
(独)原子力安全基盤機構
委員
山本
章夫
名古屋大学
委員
鈴木
嘉章
三菱原子燃料(株)
委員
吉田
一雄
(独)日本原子力研究開発機構
委員
関根
啓二
日本原燃(株)
委員
Steven Woody Epstein
委員
高田
毅士
東京大学
原子力安全推進協会
Scandpower Inc.
旧委員(所属は退任時所属)
小野
裕司(経済産業省 原子力安全・保安院),日野
馬場
厚視 (三菱原子燃料(株)),宮田
浩一(東京電力(株)),河合
佐々木 憲明((独)原子力安全基盤機構),橋本
本間
裕司(経済産業省 原子力安全・保安院),
勝則(三菱重工業(株)),
和典((株)東芝),福山
智(日本原子力発電(株)),
俊充((独)日本原子力研究開発機構),守屋 公三明(日立 GE ニュークリア・エナジー(株))
常時参加者
安田
宗浩( 関西電力(株))
制定後修正
(xx)
RK00*:201*
火災 PRA 分科会
委員
山内
景介
東京電力(株)
委員
伊東
智道
(独)原子力安全基盤機構
委員
織田
伸吾
日立 GE ニュークリア・エナジー(株)
委員
佐藤
親宏
(株)テプコシステムズ
査
(順不同,敬称略)
(20XX 年 XX 月 XX 日現在)
委員
高田
孝
大阪大学
委員
山野
秀将
(独)日本原子力研究開発機構
委員
辻本
誠
東京理科大学
委員
角谷 核二郎
東北大学
主査
高木
副主査
白井 孝治
(一財)電力中央研究所
幹事
村田
一般社団法人
敏行
尚之
佐藤
大輔
東北電力(株)
委員
片桐
康寛
(株)原子力エンジニアリング
委員
菅原
淳
関西電力(株)
委員
平尾
勇介
日本原子力発電(株)
委員
長岐
雅博
日本エヌ・ユー・エス(株)
委員
榊
勲
(株)東芝
公衆
審
原子力安全推進協会
委員
三菱重工業(株)
旧委員(所属は退任時所属)
内田
剛志((独)原子力安全基盤機構),前原
小倉
克規((独)原子力安全基盤機構,伊東
啓吾(関西電力(株)),中西
繁之(日本原子力発電(株)),
智道((独)原子力安全基盤機構)
常時参加者
松山
賢(東京理科大学),鎌田
高井
睦夫((社) 原子力安全推進協会),二口
政信((社) 原子力安全推進協会),
坂下
元昭((社) 原子力安全推進協会),橋本
和典((社) 原子力安全推進協会),
倉本
孝弘((株)原子力エンジニアリング),下浦
加賀谷
信也((社) 原子力安全推進協会),
弘幸(日立 GE ニュークリア・エナジー(株)),柏木
敦((株)原子力エンジニアリング),
智仁(原子力規制庁),
圭子(三菱重工業(株)),成宮
松中
修平(原電情報システム(株)),長谷川
小原
教弘(関西電力(株)),白石
夏樹((株)テプコシステムズ),玉内
菊池
和彦(四国電力(株)),崎濱
孝(MHI 原子力エンジニアリング(株)),
椛島
一((独)原子力安全基盤機構),小倉
伊東
智道((独)原子力安全基盤機構),村上
祥介(関西電力(株)),
義一(日本原燃(株)),
克規((独)原子力安全基盤機構)
直志(原電情報システム(株))
制定後修正
RK00*:201*
査
標準の利用にあたって
標準は対象とする技術,活動あるいは結果の仕様についての関係者のコンセンサスを規定しているもの
です。標準にはこうあるべきという義務的事項の他,こうあってもよいとして合意された非義務的な事項
も含まれています。しかし,標準は,対象としている技術,活動あるいは結果の仕様について,規定して
いる以外のものを排除するものではありません。
また,標準が規定のために引用している他規格及び標準は,記載された年度版のものに限定されます。
標準は全体として利用されることを前提に作成されており,公式な解釈は標準委員会が行います。標準委
員会はそれ以外の解釈については責任を持ちません。標準を使用するにあたってはこれらのことを踏まえ
て下さい。
なお,標準委員会では,技術の進歩に対応するため,定期的に標準を見直しています。利用にあたって
公衆
審
は,標準が最新版であることを確認して下さい。
(xxii)
RK00*:201*
次
査
目
ページ
1
適用範囲 .................................................................................................................................................................. 1
2
引用規格 .................................................................................................................................................................. 1
3
用語及び定義 .......................................................................................................................................................... 1
4
内部火災 PRA の実施手順及び品質の確保 ........................................................................................................ 3
4.1
内部火災 PRA の実施手順 ................................................................................................................................. 4
4.2
レベル 2PRA を実施する場合の留意事項 ....................................................................................................... 4
4.3
内部火災 PRA の品質を確保するための方策 ................................................................................................. 4
5
プラント情報の収集 ............................................................................................................................................ 10
内部火災 PRA 実施のための情報収集 ........................................................................................................... 10
5.2
プラントウォークダウン ................................................................................................................................. 10
公衆
審
5.1
6
プラント情報の整理 ............................................................................................................................................ 10
6.1
火災区画の設定 ................................................................................................................................................. 10
6.2
火災源の同定 ..................................................................................................................................................... 10
6.3
火災の影響を受ける可能性のある設備の同定 ............................................................................................. 10
7
火災区画のスクリーニング ................................................................................................................................ 11
8
定量的スクリーニング解析用火災シナリオの設定 ........................................................................................ 11
8.1 一般事項 ............................................................................................................................................................... 11
8.2 火災によって影響を受ける設備の同定 ........................................................................................................... 11
8.3 火災によって誘発される起因事象の同定 ....................................................................................................... 12
8.4 定量的スクリーニング解析用の火災シナリオの作成 ................................................................................... 12
火災シナリオ発生頻度の算出 ......................................................................................................................... 12
8.5
9
火災シナリオのスクリーニング ........................................................................................................................ 13
9.1 一般事項 ............................................................................................................................................................... 13
9.2
火災シナリオの定量的スクリーニング ......................................................................................................... 13
9.2.1
内部火災 PRA モデルの作成 ........................................................................................................................ 13
9.2.2
定量的スクリーニング解析における人的過誤の評価 .............................................................................. 13
9.2.3
火災シナリオの炉心損傷頻度の算出 .......................................................................................................... 14
9.3
解析結果に基づくスクリーニング ................................................................................................................. 14
10 詳細解析のための火災シナリオの設定 .......................................................................................................... 14
10.1 一般事項 ............................................................................................................................................................. 14
10.2 火災防護設備及び手段の同定 ....................................................................................................................... 14
10.3 詳細解析の対象となる火災源の同定 ........................................................................................................... 14
10.4 火災の影響を受ける設備の同定 ................................................................................................................... 15
10.5 火災による回路故障の影響の同定 ............................................................................................................... 15
10.6 火災に起因する人的過誤の同定 ................................................................................................................... 16
10.7 火災によって誘発される起因事象の見直し ............................................................................................... 16
10.8 詳細解析のための火災シナリオの同定 ....................................................................................................... 16
(1)
RK00*:201*
10.9 火災シナリオ発生頻度の評価 ....................................................................................................................... 17
事故シーケンスの定量化 .................................................................................................................................. 17
11
一般事項 ........................................................................................................................................................... 17
11.2
炉心損傷頻度評価 ........................................................................................................................................... 17
査
11.1
11.2.1
炉心損傷頻度の算出 .................................................................................................................................... 17
11.2.2
定量的スクリーニング解析のスクリーニング基準の妥当性確認......................................................... 17
11.3
重要度解析 ....................................................................................................................................................... 18
11.4
感度解析及び不確実さ解析 ........................................................................................................................... 18
11.4.1
感度解析 ........................................................................................................................................................ 18
11.4.2
不確実さ解析 ................................................................................................................................................ 18
12 文書化 .................................................................................................................................................................. 18
12.1 目的・範囲・結果及び手法等の文書化 ....................................................................................................... 18
公衆
審
12.2 規定への適合性の文書化 ............................................................................................................................... 18
12.3 除外事項等の適用の妥当性の文書化 ........................................................................................................... 18
12.4 専門家判断の活用,ピアレビューの実施及び品質保証活動の実施の文書化 ....................................... 19
附属書 A
(規定) 内部火災 PRA の品質を確保するための方策 ................................................................. 20
附属書 B
(参考) 内部火災 PRA の品質を確保するための具体的な方策の留意事項について ............. 23
附属書 C
(参考) 情報収集及びその整理方法の例 ....................................................................................... 25
附属書 D
(参考) プラントウォークダウンで収集・整理する情報 ........................................................... 28
附属書 E
(参考) 火災区画の設定及び火災発生区画と火災伝播区画の組合せの例 ............................... 30
附属書 F
(参考) 火災シナリオ発生頻度の評価例 ....................................................................................... 35
附属書 G
(参考) 人的過誤事象の評価手法の例 ........................................................................................... 45
附属書 H
(参考) 火災シナリオの炉心損傷頻度算出における複数の起因事象の扱い ........................... 52
附属書 I
(参考) 定量的スクリーニング解析におけるスクリーニング基準の例 ................................... 53
附属書 J
(参考) 火災シナリオと事故シーケンスの定量化の例 ............................................................... 55
附属書 K
(参考) 火災防護設備及び手段の同定で考慮すべき性能の例 ................................................... 60
附属書 L
(参考) 火災影響範囲の評価及び火災源の同定の例 ................................................................... 61
附属書 M
(参考) 火災によって影響を受ける回路及びケーブルの同定の例 ........................................... 69
附属書 N
(参考) 中央制御室に関わる火災シナリオの同定の例 ............................................................. 74
附属書 O
(参考) 火災シナリオの詳細解析の例 ........................................................................................... 75
附属書 P
(参考) 重要度指標の例 ................................................................................................................... 78
附属書 Q
(参考) 感度解析項目の例 ............................................................................................................... 81
附属書 R
(参考) 不確実さ解析の例 ............................................................................................................... 82
附属書 S
(参考) 不確実さ解析のためのスクリーニング基準 ................................................................... 84
附属書 T
(参考) 文書化すべき項目の例 ....................................................................................................... 85
解
説
................................................................................................................................................................... 89
1
この標準の適用について .................................................................................................................................... 89
2
プラント情報の整理 ............................................................................................................................................ 93
(2)
AESJ-SCPK00X:201X
日本原子力学会標準
査
原子力発電所の内部火災を起因とした
確率論的リスク評価に関する実施基準:201*
Implementation Standard Concerning the Internal Fire
Probabilistic Risk Assessment of Nuclear Power Plants:201*
1 適用範囲
この標準では,出力運転状態にある軽水型原子力発電所を対象とする確率論的リスク評価
(Probabilistic Risk Assessment(PRA))のうち,内部火災を起因とするレベル 1PRA(以下,内部火
公衆
審
災 PRA という。
)を実施するにあたり,有すべき要件及びその要件を満たす具体的方法を実施基準として
規定する。ただし,地震などの外的要因による設備の破損等に伴う内部火災は,この標準の適用範囲外と
する。
(解説 1.1
この標準の対象とする範囲
解説 1.2
内部火災の定義とこの標準の適用範囲について
参照)
また,この標準では,内部火災のうち,起因事象を引き起こす機器の機能喪失又は誤動作を発生させる
火災,及び起因事象を緩和する設備の機能喪失又は誤動作を発生させる火災を対象とする。
なお,火災時の発熱と燃焼により生じる種々の物理化学現象については,火災が発生した火災区画及び
火災が伝播した火災区画における火災源及び高温ガス層の周囲に設置された機器等への熱的影響を評価
対象とし,火災により発生する煙に含まれる微粒子等の燃焼生成物が機器等に与える影響等については,
この標準の評価の対象範囲外とする。(解説 1.3 この標準の対象とする物理化学現象について 参照)
2 引用規格
次に示す規格は,この標準に引用されることによって,この標準の規定の一部を構成する。引用規格とこ
の標準との規定に相違がある場合は,この標準の規定を優先する。
AESJ-SC-RK003:2011 原子力発電所の確率論的リスク評価標準で共通に使用される用語の定義:
2011
AESJ-SC-RK001:2010 原子力発電所の確率論的安全評価用のパラメータ推定に関する実施基
準:2010
AESJ-SC-P008:2008 原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施
基準(レベル 1PSA 編)
:2008
注記
2010 年以前に制定された標準(AESJ-SC-RK001:2010,AESJ-SC-P008:2008)では“PSA
( 確 率 論 的 安 全 評 価 ) ” と い う 用 語 を 使 用 し て き た が , 2011 年 以 降 に 制 定 さ れ る 標 準
(AESJ-SC-RK003:2011,この標準)では“PRA(確率論的リスク評価)”という用語を使用する。
3 用語及び定義
この標準で用いる主な用語の定義は,2
引用規格に示した規格によるほか,次による。
2
RK00*: 201*
3.1
回路
査
制御回路のうち,火災によって損傷した場合に起因事象となる機器の機能喪失又は誤動作を引き起こす
可能性があるもの,及び緩和設備の機能喪失又は誤動作を引き起こす可能性があるもの。
3.2
回路故障解析
火災によって損傷した場合に機器が機能喪失又は誤動作するケーブル及び回路を同定し,誤動作又は不
動作の発生確率を評価するプロセス。
3.3
隔壁
必要な耐火能力を有することが認証されていない建築物の構成要素。
3.4
公衆
審
過酷度因子
火災源の熱放出率の確率密度。
3.5
火災
人の意図に反して発生し,又は拡大し,消火の必要がある燃焼現象であって,これを消火するための消
火設備又はこれと同程度の効果のある設備の利用を必要とするもの。
3.6
火災影響範囲
設置された設備,仮置物などが火災源により引き起こされた火災の影響を受ける空間的範囲。
3.7
火災区画
火災のプラントへの影響を適切に考慮するために内部火災 PRA 実施時に評価対象のプラント内に設定
する便宜上の評価単位区画。
例 【解説 2.1
内部火災 PRA 標準の火災区画について
参照】
3.8
火災源
内部火災 PRA を実施する際に燃え始めと想定する設備又は仮置可燃物。
3.9
火災検知装置
火災の発生の検知を行い,警報を発する設備。
3.10
火災シナリオ
ある火災区画で発生した火災が,その火災区画内の設備に影響を与えるかどうか,さらに当該火災が隣
接火災区画に伝播して,伝播先の火災区画内の設備にも影響を与えるかどうか,そしてそれらの結果とし
てどのような起因事象及び緩和設備への影響が起こりうるのかを示す一連の状態推移。
3.11
火災障壁
必要な耐火能力を有することが認証された建造物の構成要素。
3
RK00*:201*
例
耐火能力をもつ壁,床,梁,接合部,柱,貫通部のシール,防火ドア,防火ダンパ
火災伝播
査
3.12
火災が発生した火災区画から他の火災区画へ火災の熱的な影響が伝播すること。
3.13
火災伝播経路
ある火災区画から他の火災区画へ火災が伝播する経路。
例
ドア,エレベータシャフト,換気口,グレーチング床,バスダクト
3.14
可燃物
発火,引火の可能性がある物質。
公衆
審
3.15
仮置可燃物
恒常設備以外の一時的に持ち込まれた可燃物。
3.16
ケーブル
電流を流すための集合体。
注記
単一(一芯導線ケーブル)又は各々が絶縁された複線(複芯導線ケーブル)の集合体であり(一
般的に導線は銅又はアルミニウム),被覆されているもの,されていないものがある。
(光ケーブル
は除く)
例
動力ケーブル,制御信号ケーブル,表示または計装信号を伝達するためのケーブル
3.17
煙
燃焼生成物と空気との混合気体であって,煤,水滴などの微粒子からなる。
注記
燃焼生成物には一酸化炭素などの有害物質も含まれる。
3.18
高温ガス層
火災障壁又は隔壁に囲まれた空間の天井付近に形成される高温の煙の層
3.19
消火設備
火災の初期段階で消火すること,又は火勢を抑え他への延焼を防止することを目的として設置された防
護設備。
例
消火器具,移動式消火設備(消防車など),消火栓設備,固定式消火設備(自動消火設備,及び遠
隔又は現場手動消火設備)
3.20
内部火災
発電所内の火災源から生じる火災。
4 内部火災 PRA の実施手順及び品質の確保
4
RK00*: 201*
4.1 内部火災 PRA の実施手順
内部火災 PRA は,図 1 に示す手順に従って実施する。8
火災シナリオのスクリーニング, 10 詳細解析のための火災シナリオの設定,及び 11
査
の設定,9
定量的スクリーニング解析用火災シナリオ
事
故シーケンスの定量化は複数の章・節で規定された作業のアウトプットが他の作業のインプットとなるな
ど相互に密接に関係していることから,解析作業の流れをそれぞれ図 2∼図 5 に示す。なお,図 1∼図 5
に示す手順は標準的なものであり,これと同等の手順を排除するものではない。
4.2 レベル 2PRA を実施する場合の留意事項
内部火災のレベル 1PRA に引き続いて内部火災のレベル 2PRA を実施する場合には,レベル 2PRA へ
のインターフェイスとなるプラント損傷状態及びその発生頻度を算出できるように,格納容器健全性及び
/又はソースタームの評価結果に重要な影響を与える因子のモデル化を行う。また,スクリーニングによ
ってレベル 2PRA で重要な因子が除外されていないことを確認する。さらに,火災による格納容器隔離
機能への影響を, 8
定量的スクリーニング解析用火災シナリオの設定で述べる火災シナリオの設定に
公衆
審
おいて確認する。
4.3 内部火災 PRA の品質を確保するための方策
専門家判断の活用は内部火災 PRA の実施の各段階において,附属書 A.1 専門家判断の活用の要領で
実施する。ピアレビュー及び品質保証活動は,それぞれ附属書 A.2
ピアレビューの実施及び A.3
品質
保証の確保の要領で,内部火災 PRA の目的に応じて実施する。
(附属書 A(規定)内部火災 PRA の品質
を確保するための方策 参照)
(附属書 B(参考)内部火災 PRA の品質を確保するための具体的な方策の
留意事項について 参照)
内部火災 PRA 手順
6
プラント情報の整理
7
火災区画のスクリーニング
内部火災 PRA 出力
火災区画ごとの火災源,設備等
評価対象となる火災区画
プラント情報の収集
公衆
審
5
査
5
RK00*:201*
8
定量的スクリーニング解析
用火災シナリオの設定
火災区画ごとの火災発生頻度,シ
ナリオごとの起因事象,緩和設
備,火災シナリオ発生頻度等
9
火災シナリオのスクリーニ
ング
定量的スクリーニング解析によ
って絞りこまれた,詳細評価を実
施する火災シナリオ
10 詳細解析のための火災シ
ナリオの設定
11
事故シーケンスの定量化
詳細評価に基づき火災シナリオ
ごとに同定された,火災源,利用
可能な緩和設備,緩和操作の人的
過誤確率,火災シナリオの発生頻
度等
炉心損傷頻度,主要な事故シーケ
ンス, 設備・操作等の重要度,不確
実さ解析結果,感度解析結果等
12 文書化
附属書 A(規定)
内部火災 PRA の品質を確保す
るための方策
A.1 専門家判断の活用
附属書 A(規定)
内部火災 PRA の品質を確保するための方策
A.2 ピアレビューの実施
A.3 品質保証の確保
図 1
内部火災 PRA 作業フロー
図2
「8 章 定量的スクリーニング解析用火災シナリオの設定」の作業フロー
査
公衆
審
6
RK00*: 201*
図3
「9 章 火災シナリオのスクリーニング」の作業フロー
査
公衆
審
7
RK00*:201*
図 4 「10 章
詳細解析のための火災シナリオの設定」の作業フロー
査
公衆
審
8
RK00*: 201*
図 5 「11 章 事故シーケンスの定量化」の作業フロー
査
公衆
審
9
RK00*:201*
10
RK00*: 201*
5 プラント情報の収集
5.1 内部火災 PRA 実施のための情報収集
査
“AESJ-SC-P008:2008 原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基
準(レベル 1PSA 編)
:2008”に基づき検討された PRA(以下,内的事象 PRA という。
)から得られる
情報に加えて,火災源の特徴及びプラント配置上の特徴を把握するため,プラント設計図書,国内外の事
故事象データなどを基に,内部火災 PRA を実施する上で必要となる情報を収集する。
(附属書 C(参考)
情報収集及びその整理方法の例 参照)
5.2 プラントウォークダウン
図書類では確認の難しい情報の取得,及び火災シナリオの詳細設定の段階において火災シナリオの妥当
性を確認するために,プラントウォークダウンを実施する。
(附属書 D(参考) プラントウォークダウン
で収集・整理する情報 参照)確認内容を次に示す。
火災区画境界
−
火災源の種類と位置
−
火災の影響を受ける可能性のある設備の設置場所
−
火災区画内の設備間の位置関係
公衆
審
−
6 プラント情報の整理
6.1 火災区画の設定
プラントの機器配置図などから,火災区画を設定する。火災区画の設定は,原則として建屋ごとに行い,
次の状況などを考慮する。
(解説 2.1 内部火災 PRA 標準の火災区画について,附属書 E(参考)火災区
画の設定及び火災発生区画と火災伝播区画の組合せの例 参照)
−
物理的障壁(火災障壁(防火ドアなどを含む)
,延焼が防止できる隔壁など)
−
開口部(通常のドア,機器ハッチなど)
−
空間分離
6.2 火災源の同定
火災源の種類,位置,及び数量を同定し,火災区画ごとに整理する。設備故障起因の火災事象,及び人
為的事象によって火災源となりうる,原子力発電所内に設置されている設備及び仮置可燃物の例を示す。
(解説 2.2 火災源の同定 参照)
− 電動機器
− 電源盤
− 制御盤
− 油脂(潤滑オイル,燃料油,グリスなど)を扱う設備
− ケーブル(電気,計装)
− 仮置可燃物
6.3 火災の影響を受ける可能性のある設備の同定
火災区画内の設備の火災の影響による誤動作又は機能喪失によって,起因事象を誘発する可能性のある
設備(ケーブル,電子機器を含む)を同定する。また,火災の影響によって誤動作又は機能喪失となる可
能性のある緩和設備を同定し,火災の影響を受ける可能性のある設備を火災区画ごとに対応づけ,このよ
うな情報を整理し,リスト化して管理する。この場合,静的設備である熱交換器,タンク,配管などは,
11
RK00*:201*
火災によって機能が阻害される要因が存在しないため,火災による誤動作及び機能喪失とはならないこと
7 火災区画のスクリーニング
6
査
に留意する。
プラント情報の整理で整理した区画ごとの火災源と影響を受ける可能性のある設備の情報を基に,
次に示す観点から区画を除外し,8 定量的スクリーニング解析用火災シナリオの設定において火災シナ
リオの設定の対象となる区画を絞り込む。
− 区画内に火災源が存在せず,かつ,隣接する火災区画からの火災の影響がない場合には,当該火災
区画を除外する。
− 区画内に火災源が存在する場合において,6.3
火災の影響を受ける可能性のある設備の同定で同定
した設備がない場合には,当該火災区画を除外する。ただし,隣接する区画に 6.3
火災の影響を
受ける可能性のある設備の同定で同定した設備がない場合に限る。
公衆
審
− 中央制御室にはプラント停止操作に必要な制御盤が設置されており,重要な火災区画である。従っ
て,中央制御室は定量的スクリーニング解析では対象とせず,その火災シナリオは 10.8
詳細解析
のための火災シナリオの同定で設定する。
8 定量的スクリーニング解析用火災シナリオの設定
8.1 一般事項
7
火災区画のスクリーニングで抽出された火災区画によっては,火災が発生してもプラントの安全性
に影響を及ぼさない,又は,影響を無視できる火災区画も存在する。そこで,CDF(Core Damage
Frequency:炉心損傷頻度)に有意に寄与する火災区画を同定することを目的として,定量的スクリーニ
ング解析を実施する。その中では,7 火災区画のスクリーニングで抽出された火災区画ごとに保守的な
仮定の下で火災シナリオを作成し,9
火災シナリオのスクリーニングで火災シナリオごとの CDF を算
出して,支配的な火災シナリオを抽出する。抽出された火災シナリオに関連する火災区画が 10
詳細解
析のための火災シナリオの設定の対象となる。
ここでは,定量的スクリーニング解析用の火災シナリオの作成及び火災シナリオ発生頻度の算出を行う。
なお,中央制御室は重要な火災区画であるため,スクリーニング解析の対象とはせず,その火災シナリオ
は 10.8
詳細解析のための火災シナリオの同定で設定される。
8.2 火災によって影響を受ける設備の同定
7
火災区画のスクリーニングで抽出された火災区画に対して,火災区画内の火災により影響を受ける
全ての設備が機能喪失又は誤動作をするとの保守的な仮定の下で火災シナリオを作成し,その発生頻度を
算出する。
火災シナリオとしては,火災が発生した区画内で留まる単一区画火災シナリオと火災が他の区画へ伝播
する複数区画火災シナリオを設定する。複数区画火災シナリオは,火災が発生する火災区画(以下,火災
発生区画という。)と火災が伝播する火災区画(以下,火災伝播区画という。)の組合せと火災伝播経路及
びその特徴を同定することにより設定する。
a)
単一区画火災シナリオ
6.3
火災の影響を受ける可能性のある設備の同定で火災区画ごとに整理した設備及びケーブルリ
ストを用いて,火災区画ごとに火災により影響を受ける設備とケーブル及びそのケーブルに関連する
12
RK00*: 201*
設備を同定し,整理する。
b)
1)
火災発生区画と火災伝播区画の組合せ
査
複数区画火災シナリオ
火災発生区画と火災伝播区画の組合せを作成する。(附属書 E(参考)火災区画の設定及び火災
発生区画と火災伝播区画の組合せの例 参照)この場合,火災区画の組合せごとに火災伝播経路を
特定する。火災伝播の方向としては,水平方向の伝播の他に上下方向の伝播も考慮する。
2)
組合せの定性的スクリーニング
以下の基準を用いて,前項 1)で作成した火災区画の組合せを定性的に除外し,8.4 定量的スクリ
ーニング解析用の火災シナリオの作成で対象となる火災区画の組み合わせを抽出する。
除外基準:
以下の何れかを満たす火災区画の組合せは,除外する。
• 火災伝播区画内に火災の影響を受ける設備又はケーブルが設置されていない。
公衆
審
• 火災伝播区画内に設置されている火災の影響を受ける設備又はケーブルが火災により損
傷した場合のプラントへの火災の影響が火災発生区画と同一である。
3)
火災によって影響を受ける設備の同定
単一区画火災シナリオと同様に,6.3
火災の影響を受ける可能性のある設備の同定で火災区画
ごとに整理した設備及びケーブルリストを用いて,火災発生区画と火災伝播区画の組合せごとに火
災により影響を受ける設備とケーブル及びそのケーブルに関連する設備を同定し,整理する。
8.3 火災によって誘発される起因事象の同定
6.3
火災の影響を受ける可能性のある設備の同定で整理した起因事象を発生させる設備の同定結果に
基づき,火災シナリオごとに火災によって誘発される起因事象を同定する。
8.4 定量的スクリーニング解析用の火災シナリオの作成
8.2 火災によって影響を受ける設備の同定及び 8.3 火災によって誘発される起因事象の同定の結果か
ら,火災により影響を受ける緩和設備と火災により発生する起因事象を表す火災シナリオを作成する。
8.5 火災シナリオ発生頻度の算出
定量的スクリーニング解析のための火災シナリオの発生頻度を,次の手順で算出する。
(附属書 F(参
考)火災シナリオ発生頻度の評価例
参照)
適用性が説明できれば,他の手順により火災シナリオ発生頻度を評価してもよい。
a)
火災源ごとの火災発生頻度の算出
火災源ごとの火災発生頻度及び不確実さ幅を新規に算出する場合は“AESJ-SC-RK001:2010 原子
力発電所の確率論的安全評価用のパラメータ推定に関する実施基準:2010”を準用する。
既存の火災発生頻度をそのまま用いる場合,又はベイズ手法などで既存の火災発生頻度を事前分
布とする場合は,必要な火災発生頻度への適用性を確認し,裏づけがあり,評価対象プラントの特
性とよく整合するものを使用する。原子力産業界での情報が不足している火災源に対しては,適用
する根拠を明確にした上で,原子力産業界以外の情報を適用してもよい。
b)
火災区画の火災発生頻度の算出
火災区画内にある全ての火災源の火災発生頻度を合計することで,火災区画ごとの火災発生頻度
を算出する。評価対象とした全ての火災区画についてゼロよりも大きい火災発生頻度を算出する。
c)
火災シナリオ発生頻度の算出
b)で算出された火災区画の火災発生頻度に,8.4 定量的スクリーニング解析用の火災シナリオの
13
RK00*:201*
作成で作成した火災シナリオへ進展する確率を乗じることで,火災シナリオ発生頻度を算出する。
定量的スクリーニング解析時は,火災区画内の設備は全て機能喪失する,又は運転員による消火活
9 火災シナリオのスクリーニング
9.1 一般事項
9
査
動に期待しないなど,火災シナリオの特徴を表す条件を保守的に定めてもよい。
火災シナリオのスクリーニングでは,内部火災 PRA モデルの作成と火災シナリオごとの HEP
(Human Error Probability:人的過誤確率)のスクリーニング値の設定を行い,8
定量的スクリーニ
ング解析用火災シナリオの設定で作成した火災シナリオごとに CDF を算出し,支配的な火災シナリオを
定量的に抽出することにより,10
詳細解析のための火災シナリオの設定の対象となる火災区画を同定
する。
9.2 火災シナリオの定量的スクリーニング
公衆
審
9.2.1 内部火災 PRA モデルの作成
“AESJ-SC-P008:2008 原子力発電所の出力運転状態を対象とした確率論的安全評価に関する実施基準
(レベル 1PSA 編)
:2008”に基づき作成された PRA モデル(以下,内的事象 PRA モデルという。)を基
に,6.3
火災の影響を受ける可能性のある設備の同定で同定した設備への火災による影響及び火災時に
おける人的過誤事象を反映した PRA モデル(以下,内部火災 PRA モデルという。)を作成する。
a) 内的事象 PRA モデルのレビュー
8.3 火災によって誘発される起因事象の同定で同定された火災により誘発される起因事象に対し
ては,内的事象 PRA モデルのイベントツリーのレビューを行い,火災時の影響を評価するために,
内部火災 PRA モデルにおいて新たに追加すべき事故シーケンスを同定する。また,6.3
火災の影響
を受ける可能性のある設備の同定で同定した設備への火災による影響を評価できるように,火災によ
って誘発される起因事象に関連する内的事象 PRA モデルのイベントツリー又はフォールトツリーの
レビューを行い,追加すべき機器故障を同定する。
b) 火災により誘発される機器故障の PRA モデルへの組み込み
前項 a)で同定した事故シーケンスを内的事象 PRA モデルのイベントツリーに反映する。また,
前項 a)で同定した機器故障を内的事象 PRA モデルのイベントツリー又はフォールトツリーに組込
み,内部火災 PRA モデル用のイベントツリー及びフォールトツリーを作成する。
c) 火災時における人的過誤事象の PRA モデルへの組み込み
火災時における人的過誤事象を前項 b)で作成したイベントツリー又はフォールトツリーに組み込
み,内部火災 PRA モデルを作成する。なお,火災時における人的過誤事象の同定及び HEP の設定
は,9.2.2
定量的スクリーニング解析における人的過誤の評価で行う。
9.2.2 定量的スクリーニング解析における人的過誤の評価
火災シナリオで発生する人的過誤事象を同定し,人的過誤事象に対する HEP を設定する。
a) 人的過誤事象の同定
内的事象 PRA モデルのレビューを行い,内的事象 PRA でモデル化されている人的過誤事象の適用
性を確認する。また,内的事象 PRA では発生する可能性が低いとしてモデル化されていないが,火
災時には顕在化する可能性のある人的過誤事象を同定する。さらに,火災時特有の人的過誤事象を同
定し,内部火災 PRA でモデル化すべき人的過誤事象を同定する。
(附属書 G(参考)人的過誤事象の
14
RK00*: 201*
評価手法の例 参照)
b) 定量的スクリーニング解析における人的過誤の設定
査
前項 a)で同定した内部火災 PRA でモデル化すべき人的過誤事象に対する HEP を火災シナリオご
とに設定する。その際には,火災によるプラント及び運転員への影響を考慮して人的過誤事象間の従
属性を評価する。(附属書 G(参考)人的過誤事象の評価手法の例 参照)
9.2.3 火災シナリオの炉心損傷頻度の算出
9.2.1 項で作成した内部火災 PRA モデルと 9.2.2 項で設定した HEP を用いて火災シナリオごとの CDF
を算出する。CDF は,火災発生時の CCDP(Conditional Core Damage Probability:条件付炉心損傷確
率)に 8.5
火災シナリオ発生頻度の算出で得られた火災シナリオ発生頻度を乗じることで算出される。
なお,定量的スクリーニング解析における火災シナリオは保守的な条件の下で作成されるため,火災シナ
リオによっては複数の起因事象が同時に発生する場合がある。このような場合には,複数の起因事象の発
生の可能性を考慮して火災シナリオの CDF を算出する。(附属書 H(参考)火災シナリオの炉心損傷頻
公衆
審
度算出における複数の起因事象の扱い 参照)
9.3 解析結果に基づくスクリーニング
詳細解析を実施する火災シナリオを抽出するための適切なスクリーニング基準を設け(附属書 I(参考)
定量的スクリーニング解析におけるスクリーニング基準の例 参照),9.2
火災シナリオの定量的スクリ
ーニングで得られた結果とこの基準に基づき,詳細解析の対象となる火災シナリオを抽出する。
10 詳細解析のための火災シナリオの設定
10.1 一般事項
9
火災シナリオのスクリーニングで同定された詳細解析の対象となる火災シナリオについて,火災防
護設備及び手段を同定するとともに,詳細解析の対象となる火災源と火災の影響を受ける設備を同定する。
また,火災による回路故障の影響を同定するとともに,火災後に発生する可能性のある人的過誤事象を同
定する。さらに,火災によって機能喪失する緩和系と火災によって誘発される起因事象の見直しを行う。
これらの同定結果と見直し結果を受けて,詳細解析のための火災シナリオを同定するとともに,その発
生頻度を評価する。
(附属書 J(参考)火災シナリオと事故シーケンスの定量化の例 参照)
10.2 火災防護設備及び手段の同定
9.3
解析結果に基づくスクリーニングにおいて,火災シナリオの定量的スクリーニング解析の結果か
ら抽出された火災シナリオごとに,各火災区画と火災源に対して,火災の拡大を防止させる又は遅延させ
る可能性を持つ設備及び手段を同定する。この設備及び手段の例を以下に示す。
−
火災検知装置
−
耐火能力が認証されていない火災区画の境界となる構造物
−
防火ダンパ,防火ドア
−
油火災面積限定施設(ドレンリム,オイルパンなど)
−
消火装置
−
貫通部シール
−
消火操作
同定に際し,プラント設備図書などに加え,解析の詳細さ又は情報の不足度に応じて,5.2
ウォークダウンで収集された情報を活用する。
10.3 詳細解析の対象となる火災源の同定
プラント
15
RK00*:201*
各火災区画内の火災源ごとに,火災による熱的影響を評価して,詳細解析のための火災源を同定する。
また,この際には火災によって発生する高温ガス層によって設備が加熱される影響についても考慮する。
査
さらに,複数区画に影響を及ぼす火災シナリオの場合にはそのシナリオに対しても熱的影響評価を実施し
て,詳細解析のための火災源を同定する。(解説 1.3
照)
6.2
この標準の対象とする物理化学現象について
参
火災源の同定で摘出した火災源のうち,火災源の熱的影響によって対象火災区画の設備のいずれ
も損傷させないと評価できる場合には,その火災源を含む火災シナリオを以降の評価から除外してもよい。
火災による影響の評価で必要となる情報を以下に例示する。
設備の配置情報
−
火災区画情報(天井の高さなど)
−
損傷距離又は発火距離を計算するツール
−
火災源の熱放出率
−
火災源から影響を受けて機能喪失する設備の損傷温度
−
換気空調設備の有無(容量および運転状態(運転中か停止中か))
−
二次可燃物(同一区画内に存在し,火災源からの影響によって延焼する可能性のある物質)の
公衆
審
−
有無
火災による影響の評価に際して解析ツールを使用する場合には,そのツールの適用範囲を明確にする。
また,各火災シナリオに対し,火災源の発熱量や火災の継続期間などの火災源の特性を考慮して周囲の設
備への影響を評価する。また,火災の発生頻度は低いが発生した際の影響が大きくなる火災シナリオ(ポ
ンプの潤滑油全量流出後に火災が発生するシナリオなど)に対してもその特性を考慮して評価を実施する。
さらに,火災の影響による損傷基準(損傷温度又は発火温度)は各火災シナリオの損傷対象設備に対し
て代表値を用い,かつ入手可能なものはプラント固有の損傷基準を適用する。
(附属書 E(参考)火災区
画の設定及び火災発生区画と火災伝播区画の組合せの例,附属書 L(参考) 火災影響範囲の評価及び火
災源の同定の例
参照)
10.4 火災の影響を受ける設備の同定
10.5
火災による回路故障の影響の同定,10.6
火災に起因する人的過誤の同定,及び 10.8
詳細解
析のための火災シナリオの同定の対象となる設備を同定する。
8.4 定量的スクリーニング解析用の火災シナリオの作成で同定された火災シナリオの定量的スクリー
ニング解析結果は保守的であることから,より現実的な解析を行うために,9 火災シナリオのスクリー
ニングで抽出された火災シナリオごとに,10.3
詳細解析の対象となる火災源の同定の結果に基づいて,
8.2 火災によって影響を受ける設備の同定で火災の影響を受けると同定された設備について見直しを行
う。
10.5 火災による回路故障の影響の同定
8.2 火災によって影響を受ける設備の同定で同定した回路及びケーブルのうち,火災の影響によって起
因事象を誘発する可能性のある回路及びケーブルを同定するとともに,緩和系の機能喪失確率と起因事象
の発生確率を評価する。また,回路故障の影響としては以下を考慮する。
−
誤動作
−
電源喪失
−
制御不能
16
RK00*: 201*
−
その他考慮すべき影響
−
影響なし
査
なお,誤動作の発生確率を回路故障解析で評価する場合には,プラント固有の回路構成及び回路故障時
の機器の応答を考慮する。
(附属書 M(参考)火災によって影響を受ける回路及びケーブルの同定の例 参
照)
10.6 火災に起因する人的過誤の同定
9
火災シナリオのスクリーニングで抽出された火災シナリオごとの人的過誤事象に対して, 10.3
細解析の対象となる火災源の同定,及び 10.4
詳
火災の影響を受ける設備の同定で摘出された火災源と影
響を受ける設備を考慮して人的過誤事象の見直しを行う。また,見直された人的過誤事象のうち,影響が
類似している場合には複数の人的過誤事象をグループ化してもよい。さらに,グループ化した事象を一つ
の事象で代表される場合には,非保守的にならないように代表事象の HEP を評価する。
人的過誤事象の見直しにおいては,運転操作手順書などの文書情報収集に加えて,運転員へのインタビ
公衆
審
ュー,プラントウォークダウンなどの情報を活用して,人的操作の実現可能性を評価する。
(附属書 C(参
考) 情報収集及びその整理方法の例, 附属書 D(参考)プラントウォークダウンで収集・整理する情報,
附属書 G(参考)人的過誤事象の評価手法の例参照)
10.7 火災によって誘発される起因事象の見直し
8.4 定量的スクリーニング解析用の火災シナリオの作成で同定された火災シナリオは保守的であるた
め,9
火災シナリオのスクリーニングで抽出された火災シナリオごとに,10.3
火災源の同定,10.4
火災の影響を受ける設備の同定,及び 10.5
詳細解析の対象となる
火災による回路故障の影響の同定の
結果に基づき,8.3 火災によって誘発される起因事象の同定で同定された起因事象を見直す。また,この
際には,同じ起因事象が発生するか,新たな起因事象が発生するか,全く起因事象が発生しないかの観点
で見直しを行う。
同じ起因事象が発生する場合には,8.3 火災によって誘発される起因事象の同定で同定された起因事象
を対象に 10.8
詳細解析のための火災シナリオの同定を行う。
また,火災によって回路又はケーブルが損傷した場合には,関連する機器が正常に動作しなくなること
で新たな起因事象が発生する可能性がある。その場合にはこの起因事象も対象として,10.8 詳細解析の
ための火災シナリオの同定を行う。なお,新たな起因事象が複数発生し,それらの起因事象が重畳する場
合には,もっとも結果が厳しくなる(緩和系への影響がもっとも大きくなる)と考えられる事象で新たな
起因事象を代表させてもよい。さらに,火災によって誘発される起因事象の見直しによって全く起因事象
が発生しない場合には火災によって誘発される起因事象に関わる火災シナリオを以降の評価から除外す
る。
10.8 詳細解析のための火災シナリオの同定
10.2
火災防護設備及び手段の同定,10.3
詳細解析の対象となる火災源の同定,10.4
受ける設備の同定,10.5 火災による回路故障の影響の同定,10.6
び 10.7
火災の影響を
火災に起因する人的過誤の同定,及
火災によって誘発される起因事象の見直しの結果を統合して,11
事故シーケンスの定量化の
対象となる火災区画の火災源ごとの発生起因事象,及び緩和設備への影響を火災シナリオとして取りまと
める。
この際には,新たに中央制御室にかかわる火災シナリオも(退避後のバックアップ操作も考慮して)同
定する。なお,中央制御室は,他の火災区画と異なり火災発生時に消火に失敗した場合には,中央制御室
からの退避を余儀なくされる可能性があるため,中央制御室からの退避の可能性を含めて同定する必要が
17
RK00*:201*
ある。
(附属書 N(参考) 中央制御室に関わる火災シナリオの同定の例
参照)
また,火災シナリオの同定に際して,解析対象の火災シナリオに経験的なモデル(確率など数値的な根
査
拠ではなく,経験に基づきモデル化したもの)を適用する場合にはその根拠を示す。また,11
事故シー
ケンスの定量化の詳細度に応じて,火災源が異なっていても,起因事象と緩和設備への影響が等しいもの
は,同一の火災シナリオにグループ化してもよい。
10.9 火災シナリオ発生頻度の評価
10.8
詳細解析のための火災シナリオの同定で同定した定量的スクリーニング解析で考慮する火災シ
ナリオを対象として,火災源ごとの火災発生頻度に火災シナリオの特徴を表す係数を乗じることによって,
火災シナリオごとの発生頻度を算出する。この火災シナリオの特徴を表す係数は火災源の過酷度因子に対
象物の損傷時間及び火災源の消火に失敗する要因(拡大防止操作に対する運転員の HEP など)を考慮し
た消火失敗確率を乗じることによって算出する。
公衆
審
過酷度因子は火災源の特徴を表すパラメータであり,火災源の特性を考慮して設定する。また,対象物
の損傷時間の評価では,以下を実施する。
−
火災源ごとの熱放出率の設定
−
火災の熱放出率ごとの影響評価(損傷又は発火の可能性の判断)
−
損傷又は発火が発生するまでの時間
さらに,火災源の消火に失敗する要因の評価では,以下を実施する。
−
火災防護設備および手段のアンアベイラビリティの算出
−
火災検知と消火に関する有効性の検討(時間余裕内での消火の可能性の検討など)
−
HEP の算出
(附属書 O(参考) 火災シナリオの詳細解析の例 参照)
11 事故シーケンスの定量化
11.1 一般事項
10
詳細解析のための火災シナリオの設定で設定された詳細な火災シナリオを 9.2.1
内部火災 PRA
モデルの作成で作成した内部火災 PRA モデルに反映し,点推定解析を行うことで内部火災に起因する
CDF を算出する。
(附属書 J(参考) 火災シナリオと事故シーケンスの定量化の例
参照)また,重要
度解析,感度解析及び不確実さ解析を行うことで,内部火災 PRA モデルの支配的な因子の影響を確認す
る。
11.2 炉心損傷頻度評価
11.2.1 炉心損傷頻度の算出
9
火災シナリオのスクリーニングで抽出され 10
詳細解析のための火災シナリオの設定で決定した
火災シナリオを対象に,火災シナリオを特徴づける諸条件である火災シナリオ発生頻度,利用可能な緩和
設備及び緩和操作の HEP などを適切に表現する内部火災 PRA モデル(イベントツリー及びフォールト
ツリー)を作成し,点推定解析によって CDF の算出を行う。事故シーケンスの発生頻度の定量化におい
て復旧を考慮する場合は,事故時操作手順書などの有無,火災による作業環境の変化などを確認し,復旧
に期待できることの妥当性を示す。
11.2.2 定量的スクリーニング解析のスクリーニング基準の妥当性確認
9.3
解析結果に基づくスクリーニングで設定した定量的スクリーニング解析のスクリーニング基準が
18
RK00*: 201*
11.2.1
炉心損傷頻度の算出で計算した CDF に比べて,無視し得る程度であることで確認する。無視し
得ない場合には 9.3
解析結果に基づくスクリーニングに戻って,
スクリーニング基準をより低く設定し,
11.3 重要度解析
査
新たに評価が必要となったシナリオに対して詳細解析を行う。
CDF に支配的な因子などの内部火災 PRA の活用に有用な定量的情報を得るために重要度解析を実施す
る。重要度解析では,CDF に有意な寄与を持つ火災シナリオの発生の要因(火災の消火失敗確率など)
,
事故シーケンスの緩和に対する設備のランダム故障確率,事故シーケンスの緩和操作失敗確率などを対象
に,Fussell-Vesely 重要度,リスク増加価値(RAW)などの重要度指標を目的に応じて算出する。
(附属
書 P(参考) 重要度指標の例 参照)
11.4 感度解析及び不確実さ解析
11.4.1 感度解析
内部火災 PRA モデルを構成する要素の値で,不確実さが大きい因子を対象として,その変動が結果に
公衆
審
及ぼす影響を確認するために感度解析を実施する。また,複数の因子による組合せが重要な影響を与える
と考えられる場合には,これらの組合せについて感度解析を実施する。
感度解析の対象項目としては,評価結果に重要な影響を及ぼしうる仮定,モデル,データなどを選定す
る(附属書 Q(参考) 感度解析項目の例 参照)。
11.4.2 不確実さ解析
まず,CDF に影響を及ぼす不確実さの要因から重要な要因を選び,それぞれの要因に不確実さ(確率
分布形状など)を設定する。次に,それらの不確実さを伝播させた不確実さ解析を行い CDF の平均値及
び確率分布(又は不確実さ幅)を算出する。評価目的によって不確実さ解析は省略してもよい。
不確実さ解析ではモンテカルロ法,又は同等の不確実さ伝播解析手法を用いる。不確実さ幅の設定に関
する一般的な方法が確立されていない場合には感度解析で影響を確認する。
(附属書 R(参考) 不確実さ
解析の例 参照)
不確実さ解析のシナリオ数が多くなり過ぎる場合には,評価の目的に応じて適切なスクリーニング基準
を設け,当該基準以下の火災シナリオを除外してもよい。
(附属書 S(参考) 不確実さ解析のためのスク
リーニング基準 参照)
12 文書化
12.1 目的・範囲・結果及び手法などの文書化
内部火災 PRA 実施の目的,評価範囲,用いた手法,条件,モデル,パラメータ,評価結果などを追跡
可能な詳細さで文書化する。特に,定量的スクリーニング解析における火災シナリオのスクリーニング基
準,及び適用した火災評価モデルなどについては,詳細解析の最終結果を踏まえて,その妥当性を文書化
する。
(附属書 T(参考) 文書化項目の例 参照)
12.2 規定への適合性の文書化
5
プラント情報の収集から 11
事故シーケンスの定量化までの内容に関して,実施した内部火災 PRA
において,この標準の具体的な規定を満足していることを文書化する。
12.3 除外事項などの適用の妥当性の文書化
5
プラント情報の収集から 11
事故シーケンスの定量化までの内容に関して,実施した内部火災 PRA
において,この標準の具体的な規定で許容されている除外事項及び例外事項を適用した場合には,その妥
当性を文書化する。
19
RK00*:201*
また,9
火災シナリオのスクリーニングから 11 事故シーケンスの定量化に関して,実施した内部火
災 PRA において,スクリーニングで除外したシナリオについてはレベル 2PRA 実施時の有益な情報とな
査
るため,スクリーニングの妥当性が把握できるよう文書化する。
12.4 専門家判断の活用,ピアレビューの実施及び品質保証活動の実施の文書化
附属書 A(規定)内部火災 PRA の品質を確保するための方策の規定を満足するために実施した A.1
ピアレビューの実施及び A.3
品質保証の確保について文書化する。
公衆
審
門家判断の活用,A.2
専
20
RK00*: 201*
序文
査
附属書 A
(規定)
内部火災 PRA の品質を確保するための方策
この附属書は,内部火災 PRA の品質を確保するために実施する専門家判断の活用,ピアレビュー及び
品質保証活動について規定する。また,内部火災 PRA の品質を確保するための具体的な方策の留意事項
については,附属書 B(参考)内部火災 PRA の品質を確保するための具体的な方策の留意事項について
に示す。
A.1
専門家判断の活用
専門家判断を活用する場合とは,その判断を必要とする技術要素に関する専門家が内部火災 PRA 実施
公衆
審
者の中に含まれていない場合,又は幅広い視点から専門家判断を必要とするような場合であり,次の a)
からd)のようにして行う。
a)
関連する技術分野に深い知識,知見及び経験を有している専門家を選任し,この専門家による判断を
集約して,内部火災 PRA を実施する場合に必要となる技術的な判断を行う。ただし,合理的な理由
なく特定の専門家に判断が集中しないようにする。
b)
内部火災 PRA の実施者は,内部火災 PRA において専門家判断がどのように処理され,活用され,文
書化されるかなどを,専門家に対し明確に説明する。
c)
専門家の判断が必要となる技術的な課題の難易度に応じて,内部火災 PRA 実施者が個別に専門家の
判断を聴取して活用するか,又は複数の専門家を組織して統合的に判断する方法がある。ただし,い
ずれの方法でも専門家及び内部火災 PRA 実施者などの責任範囲を明確にする。
d)
専門家判断の集約に用いた方法及び/又は手順は,専門家判断を採用した理由,専門家判断の活用の
経過及び結果とともに,文書にまとめる。
A.2
ピアレビューの実施
ピアレビューの対象とする内部火災 PRA が,この標準を満足していることを客観的に確認するため,
当該 PRA の優良な点及び/又は脆弱な点を把握するため,及び内部火災 PRA の品質を確保するために
ピアレビューを実施する。ただし,内部火災 PRA の目的及び/又は内部火災 PRA の意思決定への活用
の程度によってはピアレビューを簡略化してもよい。
ピアレビューの実施要領の概要を次の a)から c)に示す。
a)
ピアレビューチームの構成者
次の 1)から 5)の条件を満たす者で構成するチームによって,公正かつ客観的にピアレビューを行う。
1)
レビューする内部火災 PRA に参加していない。
2)
レビューする内部火災 PRA に係る技術的内容に対する専門技術を,チーム全体として包絡してい
る。
3)
プラントの設計,運転,保守・管理,安全評価,火災防護,火災解析などのいずれか一分野以上の
知識を有している。
4)
この標準の当該専門部分の内容を十分理解している。
5)
レビューの方法に関する知識を有している。
21
RK00*:201*
b)
ピアレビューの要領
次の 1)から 7)の要領でピアレビューを実施する。
内部火災 PRA の利用目的に適合するようにレビューの項目を定め,レビューの範囲,項目間の整
合性及び一貫性を確認する。
査
1)
2)
この標準に準拠して,内部火災 PRA が実施されていることを確認する。
3)
評価に用いている手法及びその手法の適用が妥当かをレビューする。
4)
重要な不確実さの要因に対応した仮定又は近似などの妥当性を評価する。
5)
評価対象としたプラントの設計,運転及び保守・管理などの特徴が評価に適切に反映されているか
をレビューする。
6)
各評価作業の過程で得られた結果が妥当であることをレビューする。
7)
必要に応じて実施される火災 PRA の結果の更新の方法をレビューする。
c)
ピアレビューの文書化
公衆
審
ピアレビューの結果について,次の 1)から 5)を文書化する。
1)
ピアレビューチーム及びメンバー構成の適格性
2)
適用したレビューの方法
3)
レビューした各技術内容のレビュー結果
4)
この標準と異なる手法などが用いられている場合,その部分の妥当性
5)
内部火災 PRA に対するレビューチームの見解
A.3
品質保証の確保
この標準は,内部火災 PRA の手法に関する要求事項及び実施手順を規定したものである。したがって,
内部火災 PRA の品質を継続的に確保するためには,この標準のほか,原子力に係る品質保証に関する基
準(1)(2)に従い,PRA の利用目的に応じた品質保証活動を実施する。質保証活動は,次の a)から f)の要領に
従って実施する。
a)
内部火災 PRA の実施に当たっては,責任及び作業の分担を明確にする。ピアレビューを実施する場
合には,メンバーの責任及び作業の分担を明確にする。
b)
文書及び記録などに関する管理体制及び管理方法を明確にする。
c)
内部火災 PRA で用いるデータ,モデル及び計算コードなどの更新管理の方法を明確にする。
d)
内部火災 PRA の実施に十分な技術的能力を有する者を配置する。
e)
先行内部火災 PRA から得られる知見,及び/又は内部火災 PRA に関連する最新の技術的知見を反映
する仕組みを定める。
f)
文書化に当たっては,内部火災 PRA の結果をトレースできる(追跡可能)とともに,理解可能なよ
うな構成及び内容とする。また,活用した専門家の判断及びピアレビューの結果の反映についても含
める。なお,PRA 又はその利用の透明性を確保するため,文書を公開又は利用可能とする必要がある
場合には,核物質防護,商業機密などの観点から公開すべきでないと判断されるものを除き,内部火
災 PRA の結果並びに重要なモデル,パラメータ,仮定及び条件を公開用文書として文書化する。
参考文献
(1) (社)日本電気協会,
「原子力発電所における安全のための品質保証規程」,JEAC4111-2009,平成
22
RK00*: 201*
21 年 9 月
(2) 原子力安全・保安院,「実用発電用原子炉の設置,運転等に関する規則第 7 条の 3 から第 7 条の 3
査
の 7 及び研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置,運転等に関する規則第 26 条の 2 か
ら第 26 条の 2 の 7 の要求事項に対する社団法人日本電気協会電気技術規程『原子力発電所におけ
る安全のための品質保証規程(JEAC4111-2009)』の取扱いについて(内規)
」,平成 21・09・14 原
公衆
審
院第 1 号,平成 21 年 10 月
23
RK00*:201*
序文
査
附属書 B
(参考)
内部火災 PRA の品質を確保するための具体的な方策の留意事項について
この附属書には,内部火災 PRA の品質を確保するために実施する,専門家判断の活用,ピアレビュー
についての留意事項について記載する。
B.1
専門家判断の活用
a)
専門家による判断は,次の 1)から 4)のような場合に活用することができる。
1)
異なる解釈がされているデータを用いる場合
公衆
審
異なる解釈が存在するような複雑な実験データに対して,どのような解釈が適切であるかを判断す
る場合。
2)
複数のモデルが存在し,その一つの適用性を判断する場合
技術的問題に関連する評価モデルが複数提案されており,内部火災 PRA に用いた評価モデルが,
それら評価モデルの中で適用性が高いかどうかを判断する必要がある場合。
3)
評価上の仮定及び計算が適切になっているかを判断する場合
評価上の仮定及び計算が非保守的となっていないか又は過度に保守的となっていないかどうかを
評価するために判断が必要な場合。
4)
情報が少ない又は不確実さが大きいデータなどを用いる場合
情報が少ないため又は物理現象などによって本質的に不確実さが大きく,結果に対して大きな影響
を与えるようなデータなどを用いる場合。
b)
内部火災 PRA において特に専門家判断が必要となりうる技術分野は次の 1)から 5)などである。
1)
火災影響の種類及びその発生頻度
2)
火災荷重(火災区画内に保持されている可燃物の潜在的発熱量)及び熱放出率(単位時間当たりに
放出される熱量)の同定
3)
火災の伝播の考え方
4)
火災による所定の機能への影響
5)
復旧操作に係わる検討
c)
専門家判断の活用に関しての責任範囲の例を次の 1)から 3)に示す。
1)
専門家による個々の専門技術に対する判断は当該専門家が責任を有する。
2)
個々の専門家判断を集約し,統合的判断としてまとめる場合は,専門家判断を統合する者が統合的
判断に対して責任を有する。
3)
専門家判断及び/又は統合的判断結果を尊重し,火災 PRA にどう活用するかは,火災 PRA 実施者
が責任を有する。
B.2
a)
ピアレビューの実施
ピアレビューを行う者は,プラントの設計・運転管理,システム信頼性解析,人間信頼性解析など,
内部火災 PRA に必要な広範囲な技術分野のいずれかに精通するとともに,担当する技術分野での内
24
RK00*: 201*
部火災 PRA 実施基準に精通している必要がある。また,ピアレビューのチーム全体として,これら
技術分野の全体を包絡するよう組織する。
ピアレビューを行う者は,独自の視点からレビューができるよう,附属書 A(規定)A.2.a)において
査
b)
レビューする内部火災 PRA に参加していないことが定められている。
c)
当該内部火災 PRA の優良な点及び/又は脆弱な点について,ピアレビューを通じて把握し,改善に
公衆
審
役立てることも重要である。
25
RK00*:201*
序文
査
附属書 C
(参考)
情報収集及びその整理方法の例
この附属書は,内部火災 PRA を実施する上で必要となる情報源と,情報源から収集される情報の整理
方法を例示したものである。
C.1
情報収集
内部火災 PRA を実施する上で必要となるプラントの構成・特性の情報源としては,原子炉設置許可申
請書,配管計装線図,電気系統図,プラント機器配置図などがある。表 C.1に主な情報源をまとめる。
これらの情報源から,プラントの概要に関する情報を収集できる。特に,これらの情報は,火災源の特
公衆
審
徴及びプラントの配置上の特徴,並びに火災区画間の延焼の特徴を把握する上で有用となる。火災源の特
徴としては,火災源となる電源盤などの有無,仮置可燃物の管理などがある。また,プラント配置上の特
徴としては,火災源の配置,ケーブルルートなどがある。運転管理に関する情報源としては,保安規定,
運転手順書類,定期検査要領書,試験・保守点検手順書,火災発生後の対応手順書などがある。これらの
情報源から,保守点検時,事故時対応操作時の人的過誤の可能性が評価できる。なお,内部火災 PRA の
詳細解析の段階では,内部火災 PRA に関連した特有の情報を確認する場合がある。例えば,火災シナリ
オの詳細設定として消火設備や火災検知装置に関する信頼性データを確認したい場合には,消防庁データ
ベースや先行 PRA で記載されている情報が参考となる。また,これらの信頼性データについてプラント
固有データが存在する場合には,「AESJ-SC-RK001:2010
原子力発電所の確率論的安全評価用のパラメ
ータ推定に関する実施基準:2010」に基づき信頼性データを求めることもできる。
プラントの訪問,設計技術者及びプラント職員との議論を通じて得られる情報は,理解を深める上で有
用であり,必要に応じてプラント訪問などを実施することが望ましい。
また,先行の内部火災 PRA 報告書,及び過去の火災が発生した事例などから,評価対象プラントにも
適用できる情報を収集し,評価上の留意点としてまとめておくことも推奨される。
26
RK00*: 201*
表 C.1−プラントの構成及び特性の主な情報源
内部火災PRAにお
ける主な情報源
・ 建屋躯体図
・ 機器構造図
・ ケーブルトレイ
敷設図
・安全系などの 1)上記1の情報源
シ ス テ ム 使 用 2)成功基準に対するシステ
ムの現実的性能評価報告
条件
・システムの現 書
3)運転手順書(設備別操作
実的な性能
・運転員による 手順書,事故時操作手順
書,サーベランス手順書)
緩和操作
4)定期検査要領書
5)運転員などの訓練プログ
ラム
・対象プラント 6)先行PRA報告書及びそ
に 則 し た 機 器 れに関する報告書
故障モード,運
転形態など
・火災後の対応手順
(火災発生確認手
順なども確認)
プラントの設計・運転の
把握
PRA 実 施 に あ
たり必要とさ
れる設計,運転
管理に関する
情報
・基本仕様
・系統設備の構
成特性
・設備設計上の
特徴
・プラントの配
置上の特徴
査
必要な情報
公衆
審
1
PRAにおける主な情報源
(内的事象PRA)
1)原子炉設置許可申請書
2)配管計装線図
3)電気系統図(送電系統一
覧,所内単線結線図など)
4)プラント機器配置図
5)工事計画認可申請書
6)系統設計仕様書
7)機器設計仕様書
8)保安規定
9)アクシデントマネジメン
ト・シビアアクシデント対
応に関する文書
10)プラント訪問
11)設計技術者,
職員との議
論
1)上記1の情報源
2)先行PRA報告書及びそ
れに関連する報告書
PRAの評価作業
2
事故シーケ
ンスの定量
化
a) 火 災 に
よる起因
事象の選
定
b) 成 功 基
準の設定
c)イベント
ツリーの
作成
d) シ ス テ
ムのモデ
ル化
火災時に想定
されるプラン
ト状態
27
RK00*:201*
C.2
収集した情報の整理方法の例
内部火災 PRA にて,調査によって収集した次のような情報をリスト化し,整理する例を示す。
査
【火災源設計情報】
系統名,機器名・機器番号,通常運転状態
設計情報(建屋・配置,機種,設置数,数量(体積,長さ)
),形状寸法,材質,物性値など)
【建屋設計情報】
建屋,エリア番号
設計情報(火災区画面積,高さ,火災区画境界(物理的障壁,開口部など))
火災防護設備情報(火災検知装置,消火設備,換気空調設備などの設置状況など)
【事故シーケンスの定量化関連情報】
火災によって発生する起因事象
公衆
審
火災によって影響を受ける緩和設備
【特記事項及び関連情報】
スクリーニングに関連した情報
相互依存性(電源・信号)
損傷による二次的影響に関する情報
火災源を特定するために必要な設計情報を整理したリストの例を次に示す。
火災区画:
建屋:
系統
火災源
種類
量
○○系
△△ポンプ
潤滑油
400ℓ
□□系
ケーブルトレイ
動力用
200m
備考
また,火災によって想定されるプラント影響を整理したリストの例を次に示す。
火災区画:
建屋:
主要設備
使用できない系統
想定されるプラント影響
○○ポンプ
○○系
手動停止
△△ポンプ
◇◇系
タービントリップ
備考
28
RK00*: 201*
序文
査
附属書 D
(参考)
プラントウォークダウンで収集・整理する情報
この附属書は,プラントウォークダウンで情報を収集するための要領を例示したものである。プラ
ントウォークダウンは,プラント情報の収集の一環として実施する場合と,スクリーニング解析後に
詳細評価を実施する火災区画情報の収集を実施する場合がある。
D.1
プラントウォークダウンにおけるプラント情報の収集
プラントウォークダウンでは火災区画ごとのチェックリストを事前に作成準備し,以下の項目を参
考に調査・確認を実施する。
公衆
審
① 火災区画境界の確認
火災区画は原則として火災が他の区画へ延焼することを制限できる物理的障壁,開口部などの状況
を考慮し設定されていることから,プラントウォークダウンでは火災区画設定時の判断の妥当性,
物理的障壁,開口部などの火災区画境界の確認を行う。
各火災区画境界の確認事項の例を下記に示す。
−
壁(火災障壁,隔壁)
壁の厚み,開口部の有無の確認を行う。
−
ドア(防火ドア,シャッターを含む)
開閉状態,ドアフレームの状態,シール性の確認を行う。
−
機器搬入ハッチ
開閉状態,取付け状態の確認を行う。
−
階段(階段室を含む)
各階段の出入口に対しドアの開閉状態,取付け状態の確認を行う。
−
グレーチング
グレーチングの設置位置及び範囲の確認を行う。
−
貫通スリーブ
配管,ダクト及びケーブルトレイ貫通部のシールの有無及び状況の確認を行う。
−
空調用ダクト
火災延焼及び煙伝播経路となるような給気口又は排気口が無いかの確認を行う。
−
防火ダンパ設置位置などの確認を行う。
−
その他
上記以外で火災区画間に火災影響の伝播経路となる開口部が無いかの確認を行う。
② 火災源の確認
火災区画内に火災源となる電動機器,電源盤,油脂を扱う設備,ケーブル及び仮置可燃物などが存
在するか調査確認を行う。特に,油脂を扱う設備については油溜り(ドレンリム)の設置位置につ
いて確認する。
29
RK00*:201*
③ 火災の影響を受ける可能性のある設備の設置場所の確認
査
各火災区画内に設置されている火災の影響を受ける可能性のある設備の確認を行う。火災源の近傍
にて熱に対して脆弱な電気・計装品について設置場所を確認し,そのプラントへの影響を確認する。
なお,電気・計装品への煙の影響については,影響の定量化は実施しないが参考として確認する。
④ 火災区画内の設備間の位置関係の調査
火災区画内の火災源及び火災によって影響を受ける可能性のある設備間の位置関係(3 次元的な離
隔など)は,設備が火災の影響を受けるか否かを評価するのに必要となるデータである。火災源を
同定した後,火災源と火災によって影響を受ける可能性のある設備の位置関係を調査し,保守的に
決定する。
詳細評価を実施する火災区画情報の収集
公衆
審
D.2
プラントウォークダウンによって,D.1 プラントウォークダウンにおけるプラント情報の収集で得
られる情報に加えて,詳細評価を実施する火災区画において次の情報を調査・収集する。必要な情報
の詳細さは,解析の程度,及び火災区画の状況に依存する。
−
火災区画の面積,高さ
−
換気空調系の特徴
−
火災検知装置,及び消火設備の状況
−
火災区画内の機器,ケーブルルートの特定
−
火災区画へのアクセスルート
30
RK00*: 201*
序文
査
附属書 E
(参考)
火災区画の設定及び火災発生区画と火災伝播区画の組合せの例
この附属書は,火災区画の設定及び定量的スクリーニング解析用火災シナリオの設定における複数
区画火災シナリオの火災発生区画と火災伝播区画の組合せについて例示したものである。
E.1
火災区画の設定の例
火災区画は,解析対象領域の全てを含み,複数の火災区画で同一の領域を共有しないように設定す
公衆
審
る。
火災区画は,火災障壁以外にも,火災の延焼が防止できると判断できる隔壁により設定することも
可能である。NUREG/CR-6850(1)では,火災障壁と明確にされていない隔壁でも実力上問題のないもの
は火災障壁として扱うことができるとしており,その例として,4 インチ厚(10cm 厚)のシールコン
クリート壁は,耐火能力が明示されなくても内部火災 PRA においては火災障壁と同等な能力をもつと
みなすことができるとしている。
また,壁自体には火災の延焼防止に期待できるが,シールのない貫通部又は開口部を有する隔壁に
より火災区画を設定することも可能である。ただし,この場合には,これらを火災伝播経路とする他
の火災区画への火災伝播を評価する必要がある。NUREG/CR-6850 には,このような隔壁を用いて火災
区画を設定する際の留意事項が記載されており,その概要を表 E.1 に示す。
さらに,空間分離により火災区画を設定することも可能であり,NUREG/CR-6850 における空間分離
の例を以下に示す。
 屋外設備が設置されている領域
 屋内の領域のうち,大きな空間に小規模な火災源しかない場合
なお,NUREG/CR-6850 では,以下により火災区画を設定することはできないとしている。
 部分的な高さしかない壁及び防護設備
 梁(躯体の一部)
 放射熱防護設備
 機器などによる障害物
31
RK00*:201*
表 E.1−NUREG/CR-6850 に記載された隔壁により火災区画を設定する際の留意事項の概要
概
要
査
隔壁の状態
出入り口付近に可燃物が存在しないならば,火災区画の境界
とすることができる。
ケーブル貫通部がシールされ
ていない隔壁(注)
基本的に火災区画の境界とすることはできない。
ただし,ケーブルが以下の場合には,火災区画の境界とする
ことができる。
— コーティング又はラッピングされたケーブル
— 電線管内のケーブル
グレーチングのある隔壁
基本的に火災区画の境界とすることができる。ただし,隔壁
に対するグレーチングの占める面積が広い場合には,火災区
画の境界とすることはできない。
公衆
審
開いた出入り口のある隔壁
吹き抜けのある隔壁
ハッチ,シャフトなどの吹き抜けの付近に可燃物が存在しな
いならば,火災区画の境界とすることができる。
(注)本標準では,ケーブル貫通部がシールされていない隔壁を火災区画の境界に設定すること
は可能である。ただし,貫通部を火災伝播経路とする他の火災区画への火災伝播を評価する
必要がある。
32
RK00*: 201*
E.2
火災発生区画と火災伝播区画の組合せの例
シールのない貫通部や開口部のある隔壁により火災区画を設定した場合には,これらを火災伝播経
査
路とする他の火災区画への火災伝播を評価する必要がある。また,火災障壁のうち,防火ドア,貫通
部シール又は防火ダンパが機能喪失した場合には,これらを火災伝播経路として,火災が他の火災区
画に伝播する可能性がある。ここでは,これらの火災障壁が機能喪失しない場合と機能喪失する場合
とに分けて,火災発生区画と火災伝播区画の組合せの例を示す。
a) 防火ドア,貫通部シール及び防火ダンパの機能喪失を考慮しない場合の火災発生区画と火災伝播区
画の組合せ
防火ドア,貫通部シール及び防火ダンパのアンアベイラビリティが無視できるほど小さい場合,そ
の機能喪失を考慮する必要はなく,これらを火災伝播経路として考える必要はない。図 E.1 に示す区
公衆
審
画配置において,他の火災区画に火災が伝播する可能性があるのは,区画境界の空調ダクトに防火ダ
ンパが設置されていない火災区画 A と火災区画 B,区画境界のドアが常時開いている火災区画 B と C
及び区画境界に貫通部がある火災区画 G と H である。したがって,図 E.1 示す区画配置における火災
発生区画と火災伝播区画の組合せは,表 E.2 に示す通りとなる。
表 E.2−防火ドア,貫通部シール及び防火ダンパの機能喪失を考慮しない場合の火災発生区画と火
災伝播区画の組合せ(例)
火災発生区画
火災区画 A
火災伝播区画
火災伝播経路
備
考
火災区画 B
ダクト,
火災区画 A で発生した火災は,火災区画
火災区画 C
常時開のドア
B を経由して,火災区画 C まで伝播する。
火災区画 A
ダクト,
−
火災区画 C
常時開のドア
火災区画 A
ダクト,
火災区画 C で発生した火災は,火災区画
火災区画 B
常時開のドア
B を経由して,火災区画 A まで伝播する。
火災区画 G
火災区画 H
貫通部
−
火災区画 H
火災区画 G
貫通部
−
火災区画 B
火災区画 C
b) 防火ドア,貫通部シール及び防火ダンパの機能喪失を考慮した場合の火災発生区画と火災伝播区画
の組合せ
防火ドア,貫通部シール及び防火ダンパのアンアベイラビリティが無視できない場合,その機能喪
失を考慮する必要があり,上記 a)で設定した組合せに加え,これらを火災伝播経路とする組合せを設
定する。この場合,図 E.1 に示す火災区画のうち,火災区画 D 及び火災区画 E を火災発生区画とする
火災伝播区画の組合せは表 E.3 に示す通りとなる。なお,表 E.3 に示す例では,複数の火災障壁が同
時機能喪失する可能性は低いため,一つの火災障壁の機能喪失による火災伝播のみを考慮している。
33
RK00*:201*
表 E.3−防火ドア,貫通部シール及び防火ダンパの機能損傷を考慮した場合の火災発生区画と
火災発生区画
火災区画 D
火災伝播区画
火災区画 A,
査
火災伝播区画の組合せ(例)
火災伝播経路
防火ドア
火災区画 B,
備
考
火災区画 A と B,火災区画 B と C の境
界に開口部(ダクト,常時開のドア)
火災区画 C
があるため,火災区画 A,B 及び C の
どの防火ドアが機能喪失しても,火災
区画 A,B 及び C に火災が伝播する。
火災区画 D
火災区画 E
防火ドア
火災区画 D
火災区画 F
防火ドア
火災区画 D
火災区画 G,
防火ドア
−
火災区画 G と H の境界に貫通部がある
ため,火災区画 G を経由して火災区画
公衆
審
火災区画 H
−
H まで火災が伝播する。
火災区画 E
火災区画 D
防火ドア
−
火災区画 E
火災区画 F
防火ダンパ
防火ダンパが機能喪失した場合,ダク
トを経由して,火災が伝播する。
防火ダンパが設置されていないダクト
火災区画 A
常時開のドア
火災区画 B
火災区画 C
火災区画 D
火災区画 F
火災区画 E
防火ダンパが設置されているダクト
火災区画 G
貫通部(シール無)
通常閉の防火ドア
防火ダンパ
図 E.1−火災区画と火災伝播経路の例
火災区画 H
参考文献
査
34
RK00*: 201*
(1) EPRI/NRC, “EPRI/NRC-RES Fire PRA Methodology for Nuclear Power Facilities”,
公衆
審
NUREG/CR-6850, September 2005
35
RK00*:201*
序文
査
附属書 F
(参考)
火災シナリオ発生頻度の評価例
この附属書は,定量的スクリーニング解析時の火災シナリオ発生頻度の評価における算出フロ
ーを例示したものである。
F.1
火災シナリオ発生頻度の算出フロー
定量的スクリーニング解析時の火災シナリオ発生頻度の算出フローを図 F.1 に示す。
公衆
審
詳細解析時の火災シナリオ発生頻度は,対象とした火災源の火災発生頻度と,火災がプラント
に影響を及ぼすシナリオへの進展確率を乗じることで定量化されるが,定量的スクリーニング解
析時には,火災により影響を受ける可能性のある全ての設備が機能喪失又は誤動作をするとの保
守的な仮定の下で火災シナリオ発生頻度を算出する。この場合,定量的スクリーニング解析時の
火災シナリオ発生頻度は対象とした火災区画に含まれる火災源の火災発生頻度(図 F.1 内 a)を
合計することで求めることができる。
36
RK00*: 201*
国内プラント実績データ
(NUCIA など)
国内火災発生頻度
データベース
既存の火災発生頻度データベース
(米国実績データ,原子力産業界以外のデータなど)
査
パラメータ標準を参照準用する範囲
火災源ごとの火災発生頻度の算出
︵ F.2.1
︶
a)
評価対象プラント個別
データによるベイズ更新
①
②
③
公衆
審
評価に使用する火災発生頻度データベース
火災区画の
火災発生頻度の算出
︵ F.2.2
b)
火災区画内の火災源の種類,数量などを設定
・設備(F.2.2.1)
・仮置可燃物又は火気作業(F.2.2.2)
)
火災区画内の火災源ごとの火災発生頻度
定量的スクリーニングにおける
火災シナリオ発生頻度の算出
︵ F.2.3
︶
c)
火災区画内の火災源ごとの火災発生頻度
の総和を算出
火災シナリオ発生頻度
図 F.1−火災シナリオ発生頻度の算出フロー
④
F.2
火災シナリオ発生頻度の算出
F.2.1
火災源ごとの火災発生頻度の算出
査
37
RK00*:201*
火災源ごとの火災発生頻度の算出にあたっては,6.2
火災源の同定において対象とした火災
源に対して,火災データ(火災発生件数など)の分析及び収集,確率モデルの選定及び妥当性の
検証,パラメータの推定などについて,
“AESJ-SC-RK001:2010 原子力発電所の確率論的安全
評価用のパラメータ推定に関する実施基準:2010”(以下,パラメータ標準という。)を参照で
きる。
ただし,パラメータ標準は火災発生頻度の算出を考慮した記載になっていないため, 6.2
火
災源の同定において対象とした火災源を分析対象とする必要がある。
公衆
審
図 F.1 には①から④の火災発生頻度の算出フロー例を示しており,その詳細を次に示す。なお,
ここでいう一般パラメータとは,他の複数プラントに関連したデータ又は専門家判断を活用して
作成されたパラメータを指す。
① 国内の実績データから推定された一般パラメータをそのまま用いる場合
② 国内の実績データから推定された一般パラメータを事前分布とし,評価対象プラント個別
データによるベイズ更新から得られた事後分布を用いる場合
③ 米国実績又は原子力産業界以外のデータから推定された一般パラメータを事前分布とし,
評価対象プラント個別データによるベイズ更新から得られた事後分布を用いる場合
④ 米国実績データ又は原子力産業界以外のデータから推定された一般パラメータをそのま
ま用いる場合
NUREG/CR-6850(1)においては,F.2.1 のアウトプットである火災源(IS:Ignition Source)
ごとの火災発生頻度は表 F.1 に示すようなグループ単位で算出される。例えば表 F.1 におけるグ
ループ 21「ポンプにおける火災」の火災発生頻度λ
「電動ポンプ」,
「タービン駆動ポン
IS,21 は,
プ」のような機種ごとの発生頻度ではなく,ポンプを火災源としたプラントあたりの火災発生頻
度と定義されている。従って,評価対象とされたポンプがプラント内に 50 台設置されていると
すると,ポンプ 1 台あたりの火災発生頻度はλIS,21 / 50 となる。
F.2.2
F.2.2.1
火災区画ごとの火災発生頻度の算出
設備の火災による火災区画の火災発生頻度の算出
火災区画ごとに火災源を同定し,火災源の種類及び数量を基に,火災区画ごとの火災発生頻度
を算出する。
ここでは米国 NUREG/CR-6850 の評価方法を例示する。火災区画 j の火災発生頻度は,火災
区画に設置された全ての火災源の火災発生頻度を累積することで求めることができ,各火災源の
属するグループ i のプラントあたりの火災発生頻度 λIS,i,火災源加重係数 WIS,i,j 及び位置加重係
38
RK00*: 201*
数 WP,i,j を用いて式(F.1)で算出される。
i∈A
ここに,
A:火災区画 j に含まれる火災源の集合
査
φ j =  λ IS,i W IS,i , jWP,i , j ·················································································· (F.1)
例えば,火災区画 j に含まれる火災源が {i | i = 2 ,3,14 } とすると,式(F.2)でφj を求めるこ
とができる。
公衆
審
φ j = (λ IS, 2 WIS, 2, j WP, 2, j ) + (λ IS,3 WIS,3, j WP ,3, j ) + (λ IS,14 WIS,14, j WP,14, j ) ··························· (F.2)
39
RK00*:201*
表 F.1 NUREG/CR-6850 における火災のグループ分け
火災のグループ
蓄電池における火災
一次冷却材ポンプにおける火災
仮置可燃物及び火気作業
制御盤における火災
ケーブル火災(溶接及び切断作業による発火)
仮置可燃物における火災(溶接及び切断作業による発火)
仮置可燃物における火災
ディーゼル発電機における火災
空気圧縮機における火災
充電器における火災
ケーブル火災(溶接及び切断作業による発火)
ケーブル火災(自己発火)
乾燥機(作業服の洗濯用)における火災
電動機における火災
電源盤における火災
高エネルギーアーク故障による火災
水素タンクにおける火災
配電盤における火災
その他の水素火災
オフガス/水素再結合器における火災
ポンプにおける火災
RPS MG セットにおける火災
変圧器火災(油入)
変圧器火災(乾式)
仮置可燃物における火災(溶接及び切断作業による発火)
仮置可燃物における火災
空調機器における火災
変圧器火災(主変圧器など大型な変圧器の場合)
変圧器火災(その他)
変圧器に関わる設備における火災
ボイラー火災
ケーブル火災(溶接及び切断作業による発火)
主給水ポンプにおける火災
タービン発電機励磁機における火災
タービン発電機における水素火災
タービン発電機における油火災
仮置可燃物における火災(溶接及び切断作業による発火)
仮置可燃物における火災
査
場所
蓄電池室
格納容器(PWR)
格納容器(PWR)
中央制御室
制御/補助/原子炉建屋
制御/補助/原子炉建屋
制御/補助/原子炉建屋
ディーゼル発電機室
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
プラント全域
ヤード
ヤード
ヤード
タービン建屋
タービン建屋
タービン建屋
タービン建屋
タービン建屋
タービン建屋
タービン建屋
タービン建屋
公衆
審
番号
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23a
23b
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
40
RK00*: 201*
1)
火災源加重係数
査
火災源加重係数 WIS,i,j はプラント全体に占める火災区画内の火災源の数量の割合として算
出され,プラントあたりの火災源の火災発生頻度を火災区画内の火災源 1 つあたりの火災発
生頻度に補正する目的で用いられる。
例えば,ある火災区画において,表 F.1 内のグループ 21「ポンプにおける火災」に含まれ
るポンプが 2 台設置されており,プラント全体でグループ 21 に含まれるポンプの総数が 50
台である場合,その火災区画におけるポンプ 2 台に対する火災源加重係数 WIS,21,j は
2/50=0.04 となる。
また,ケーブル火災に対する火災源加重係数の算出方法として,NUREG/CR-6850 におい
ては,火災に対するハザード解析の際に火災区画ごとに特定されたケーブル量の情報を用い
公衆
審
る方法が例示されている。
2) 位置加重係数
位置加重係数 WP,i,j は,複数のプラント間で火災源を共有している場合に適用する係数で
あり,プラントあたりの火災源の火災発生頻度を複数プラントあたりの火災発生頻度に補正
する目的で用いられる。位置加重係数には対象となる火災源を共有するプラント数 N が与え
られ,火災源が共有されていない場合の位置加重係数は 1 となる。
例えば,2 ユニットで 1 つのタービン建屋を共有している場合,タービン建屋に係る火災
発生頻度に適用する位置加重係数 WP,i,j は 2 となる。
F.2.2.2
仮置可燃物又は火気作業による火災区画の火災発生頻度の算出
本項では運転時においてこれらの火災を想定する場合を考慮し,NUREG/CR-6850 における
評価手法を例示する。
仮置可燃物又は火気作業による火災区画 j の火災発生頻度 λTR,j は,NUREG/CR-6850 には一
般式が定義されていないものの,その評価手法を基に一般式で表現すれば,仮置可燃物又は火気
作業の火災発生頻度及び火災源加重係数を用いて式(F.3)で算出される。
λTR,j = λGTWGT,j+ λWCWWC,j+ λCFWCF,j ······························································ (F.3)
ここに,
λGTWGT,j:一般的な仮置可燃物による火災区画 j の火災発生頻度
λWCWWC,j:火気作業で発生する仮置可燃物による火災区画 j の火災発生頻度
λCFWCF,j:火気作業で発生するケーブル火災による火災区画 j の火災発生頻度
仮置可燃物又は火気作業に対する火災源加重係数は,各火災のプラントあたりの火災発生頻度
を火災区画あたりの火災発生頻度に補正する目的で用いられ,各火災源加重係数を
NUREG/CR-6850 では「相対的ランク付け法」で算出している。相対的ランク付け法は,火災
41
RK00*:201*
区画における「保全活動:保全活動の種類及び頻度」
,
「出入状況:人の出入りの状況」及び「保
査
管状況:仮置可燃物の保管状況」の 3 つの影響要因に対し,プラント固有の配置及び運用を考
慮して,次の 5 つの相対的ランクを用いて評価するものである。表 F.2 に影響要因ごとの相対的
ランクを示す。
ゼロ(0)
設計又は運用によって仮置可燃物による火災が防止されている火
災区画にのみ使用できる。
低(1)
影響要因が最も小さい。
中(3)
影響要因が平均レベルである。
高(10)
影響要因が平均レベルより高い。
非常に高い(50) 影響要因が平均レベルよりかなり高い(「保全活動」の影響要因に
公衆
審
のみ適用)。
42
RK00*: 201*
表 F.2−影響要因と相対的ランクの対応について
影響要因
保全活動
査
相対的ランク
ゼロ
低
中
高
非常に高い
(0)
(1)
(3)
(10)
(50)
出力運転時に
予防保全又は
予防保全又は
予防保全又は
予防保全又は
保全活動が行
事後保全の頻
事後保全の頻
事後保全の頻
事後保全の頻
えない設計に
度が,一般的な
度が平均的。
度が,一般的な
度が一般的な
なっている。
火災区画の平
火災区画の平
火災区画の平
均より多い。
均よりかなり
均より少ない。
多い。
出力運転時に
往来の少ない
人は継続的に
人が継続的に
公衆
審
出入状況
出入できない。 又 は 一 般 的 な
通り道から外
いないが,常に
存在する。
往来がある。
−
れている。
保管状況
出力運転時に
可燃性又は引
可燃性又は引
可燃性又は引
可燃性又は引
火性物質が保
火性物質が全
火性物質が,
火性物質の保
管されない。
て,専用防火キ
時々持ち込ま
管のための出
ャビネットに
れ,短期間だけ
入ができない。
入った密閉容
開放容器に保
器に保管され
管されている,
ている。
もしくは長期
間にわたって
専用防火キャ
ビネットに入
っていない密
閉容器に保管
されている。
−
43
RK00*:201*
1) 仮置可燃物による火災
査
火災区画 j において,火災源が仮置可燃物(GT:General Transients)である場合,その
火災源加重係数 WGT,j は式(F.4)で算出される。
WGT,j = (nm,j + no,j + ns,j) / NGT
NGT =

j =1
(nm, j + n o, j + n s, j ) ······································································ (F.4)
ここに,
nm,j:火災区画 j での「保全活動」の相対的ランク
公衆
審
no,j:火災区画 j での「出入状況」の相対的ランク
ns, j:火災区画 j での「保管状況」の相対的ランク
NGT:相対的ランクの総和
2) 火気作業で発生する仮置可燃物の火災
火災区画 j において,火災源が火気作業(溶接,切断作業など)で発生する仮置可燃物(WC:
Welding and Cutting)である場合,その火災源加重係数 WWC,j は式(F.5)で算出される。な
お,WWC,j は「保全活動」による影響要因のみで表され,
「出入状況」及び「保管状況」の影
響要因は要素に含まれない。
WWC,j = nm,j / NWC
NWC =

j =1
nm , j ························································································ (F.5)
ここに,
NWC:「保全活動」の相対的ランクの総和
3) 火気作業で発生するケーブル火災
火災区画 j において,火災源が火気作業(溶接,切断作業など)で発生するケーブル火災
(CF:Cable Fire)である場合,火災源加重係数 WCF,j は式(F.6)で得られる。なお,WWC,j
は F.2.2.2 2)の場合と同様に,
「保全活動」による影響要因のみで表され,
「出入状況」及び「保
管状況」は要素に含まれない。また,ケーブル火災においては,評価対象とされた全ケーブ
ルの合計長さに占める対象区画内のケーブル長さ割合,すなわちケーブル加重係数 WCable,j
を考慮することで,ケーブル火災の発生可能性の重み付けを行う。なお,NUREG/CR-6850
の方法以外でケーブル加重係数を得る方法としては,F.2.2.1 1)に示した方法も考えられる。
WCF,j = nm,jWCable,j / NCF
44
RK00*: 201*

n W Cable, j ················································································ (F.6)
j =1 m , j
ここに,
NCF
査
NCF =
:「保全活動」の相対的ランクとケーブル加重係数の積和
WCable,j:評価対象とされた全ケーブルの合計長さに占める火災区画 j 内に設置されたケー
ブル長さ割合(ケーブル加重係数)
F.2.3
定量的スクリーニングにおける火災シナリオ発生頻度の算出
NUREG/CR-6850 には記載はないが,上記の評価結果を用いて得られる定量的スクリーニン
公衆
審
グにおける火災区画 j における火災シナリオ k の発生頻度Λj,k は,式(F.1)及び式(F.3)で得られる
対象とした火災区画での火災発生頻度の総和となり,式(F.7)で表現できる。なお,式(F.7)は定
量的スクリーニングへの適用を想定しており,消火活動には期待せず火災の影響で周辺の機器は
必ず損傷するとした保守的な火災シナリオ発生頻度である。
Λ j, k = φ j + λ GTW GT, j + λ WCW WC, j + λ CFW CF, j ························································ (F.7)
参考文献
(1) EPRI/NRC, “EPRI/NRC-RES Fire PRA Methodology for Nuclear Power Facilities”,
NUREG/CR-6850, September 2005
45
RK00*:201*
序文
査
附属書 G
(参考)
人的過誤事象の評価手法の例
この附属書は,内部火災 PRA で対象とする人的過誤事象の同定方法及び火災時の HEP の評価手法に
ついて例示したものである。
G.1
内部火災 PRA で対象とする人的過誤事象の同定方法の例
内部火災 PRA モデルで対象とする人的過誤事象の同定方法の例を以下に示す。
公衆
審
a) 内的事象PRAでモデル化されている人的過誤事象からの同定
内的事象PRAモデルでモデル化されている人的過誤事象の適用性を検討し,内部火災PRAで対象と
する人的過誤事象を同定する。内的事象PRAモデルの人的過誤事象の適用性の検討は,事故時運転手
順書,警報発生時手順書,関連する訓練(特に火災対応関連)などを調査することにより実施する。
b)
内的事象PRAではモデル化されていないが火災により顕在化する人的過誤事象の同定
内的事象PRAでは,発生する可能性が低いとしてモデル化されていないが,火災による影響で顕在
化する可能性のある人的過誤事象を同定する。例えば,事故時運転手順書に「ポンプの自動起動に失
敗した場合には運転員はポンプの手動起動を行う」と記載されている場合,その運転員操作に対する
人的過誤事象としては,“ポンプ自動起動失敗後の運転員によるポンプの起動失敗”がある。しかし,
ポンプの自動起動失敗確率が十分小さい場合には,この人的過誤事象は内的事象PRAではモデル化さ
れない。一方,火災によりポンプの自動起動に係る設備が損傷又はその信頼性が低下する場合,内部
火災PRAでは,上記の人的過誤事象をモデル化する必要がある。
c)
火災時特有の人的過誤事象の同定
火災に関連する手順書や訓練などを調査することにより,火災時特有の操作を同定し,その操作に
関する人的過誤事象を同定する。火災時特有の操作としては,現場における手動操作,中央制御室退
避後の中央制御室外安全停止操作や緩和設備の保護及び機器の誤動作を防ぐために実行される事前
操作があり,その例を以下に示す。
G.2
・
火災の影響で中央制御室からポンプを起動できない場合,現場にてポンプを起動する。
・
機器の誤動作を防止するために電源を切る,又は制御系を無効にする。
スクリーニング解析における評価例
スクリーニング解析における人的過誤事象の評価例として NUREG/CR-6850(1)のスクリーニング解析で
使用されている方法を例示する。この方法は,内的事象 PRA で使用されている HEP をベースとして,
火災の状況に応じて HEP を決定する簡易的な手法である。
NUREG/CR-6850 のスクリーニング解析で使用されている 4 つのスクリーニング値を図 G.1 及び以下
に示す。
46
RK00*: 201*
スクリーニング値 1:
査
火災影響を考慮しても,内的事象 PRA モデルにおいてモデル化された人的過誤事象が単純に準用で
きる場合に適用する。スクリーニング値としては,内的事象 PRA モデルの HEP を 10 倍にした値
を用いる。なお,スクリーニング値 1 を適用する場合は,新たにモデル化した火災時特有の人的過
誤事象が,内的事象 PRA モデルの人的過誤事象との間において従属性を著しく変化させないことを
確認する必要がある。
スクリーニング値 2:
一部の運転員らに火災特有の対応が求められる場合など,内的事象 PRA でモデル化された人的過誤
事象を単純に適用できないものの,異なるスクリーニング値の適用が可能である場合に適用する。
公衆
審
内的事象 PRA モデルでモデル化された類似の事故シナリオから得た人的過誤事象に対して適切に
従属性が考慮される場合に限り,スクリーニング値としては 0.1 と内的事象 PRA モデルの既存の
HEP を 10 倍にした値を比較し,値が大きい方を用いる。
スクリーニング値 3:
内的事象 PRA でモデル化された人的過誤事象を内部火災 PRA モデルへ適用することが適切でない
ため,火災時特有の人的過誤事象のモデル化が必要になる場合に適用する。スクリーニング値とし
て 1.0 または 0.1 を設定する。また,スクリーニング値 0.1 を設定できるのは以下の条件を全て満た
している場合に限定される。
−
診断と操作に必要な時間余裕が 1 時間以上ある。
−
火災は消火され,遅発性の誤動作及び混乱を複雑化させる他のシナリオが継続しない。
−
新たにモデル化した火災特有の人的過誤事象のモデルと内部火災 PRA モデル内の人的過誤
事象の間に,新たな著しい従属性が発生しない。
スクリーニング値 4:
中央制御室の放棄及び放棄の判断に係る行為に対して適用する。大きな不確実さを伴う対応である
ためスクリーニング値としては 1.0 を用いる。
47
RK00*:201*
NUREG/CR-6850 の
内的事象 PRA のモデル
が流用できる場合
査
スクリーニング解析
内的事象 PRA のモデル
が流用できない場合
(スクリーニング値 2)
(スクリーニング値 3)
(スクリーニング値 4)
内的事象 PRA モデルを
一部火災時特有の
火災時特有の
中央制御室の放棄
そのまま流用できる場合
モデル化が必要な場合
モデル化が必要な場合
をモデル化する場合
公衆
審
(スクリーニング値 1)
HEP として内的事象
HEP として 0.1 と内的
操作に必要な時間余裕
大きな不確実さを伴う
PRA の 10 倍の値を
事象 PRA の HEP の 10 倍
等を基に HEP として
対応操作であるため
設定
の大きい方の値を設定
1.0 または 0.1 を設定
HEP として 1.0 を設定
図 G.1−NUREG/CR-6850 のスクリーニング値の設定方法
G.3
その他の参考となる評価手法
G.2 で述べた評価方法以外に以下の評価方法が存在するが,これらは実際のプラントの評価に適用した
事例が少ないため,ここでは,参考情報として紹介する。
・
米国で新たにスコーピング評価手法として開発された手法(NUREG-1921(2))
・
NUREG/CR-6850 の詳細解析として紹介されている手法
前者は,G.2 の評価の保守性を排除して更に簡便に HEP を評価する為に開発された方法である。また,
この方法では様々な火災シナリオに対して準備されたフローチャートに従って HEP を引用することがで
きる。
後者は,火災時の実現象に即して行動形成因子を特定して HEP を詳細に評価する方法であり,G.2 の
方法に比べて,過度な保守性を排除できる可能性がある。
以下にこれらの評価手法の概要を示す。
G.3.1
HEP のスコーピング評価手法
a) スコーピング評価手法の特徴
スコーピング評価手法は HEP 算出における条件設定を無くして,フローチャートを用いて評価す
る手法である。また,フローチャートの分岐に火災時の条件を適用して,それに適合した HEP を設
定することを可能とした手法である。フローチャートは,以下の 4 種類が用意されており,それぞれ
のフローチャートで火災時の運転員や消火支援隊などの操作失敗確率が考慮されている。
48
RK00*: 201*
中央制御室内での操作:INCR
−
中央制御室外での操作:EX-CR
−
代替停止操作(中央制御室から退避した後の操作):ASD
−
中央制御室で誤信号・誤表示が発生した時の操作:SPI
b) スコーピング評価手法による HEP の評価例
査
−
1) 中央制御室内での操作:INCR フローチャートの使用例
INCR のフローチャートでは,主要な分岐として火災シナリオごとに以下を判断する。また,フロ
ーチャートの流れに従い,到達先の HEP の表から別途算出するタイムマージンに該当する確率値を
引用する。図 G.2 にフローチャートの例と HEP の表の一部分を示す。
火災シナリオと火災時の手順書との適合性
−
評価対象とする操作の複雑さ
−
火災発生を検出するまでの時間(図 G.3 の Tdelay)
−
消火に期待できる時間 (図 G.3 の Tavail)
−
消火活動に必要な時間(図 G.3 の Treqd)
−
消火活動完了後の時間余裕(図 G.3 で Tavail から Treqd を差引いた時間)
−
煙または他のハザード要因
−
火災現場へのアクセス性
公衆
審
−
2) タイムマージンの設定
タイムマージンは,フローチャートに従い HEP を引用する際に必要となる。
タイムマージンは,火災シナリオに対応した消火活動を行なうために必要な時間と消火活動完了後
の時間余裕との比で定義される(図 G.3 参照)。
3) HEP の引用
設定したタイムマージンの値に従い,HEP を表から引用する。
図 G.2 に記載される表で示すと,HEP を参照する表 U(HEP Lookup Table U)ではタイムマー
ジンが 50%未満の場合には 1.0,50%から 99%の場合は 0.5 を引用し,100%を超える場合は 0.1 を
引用する。
前 フ ロ ー 図 より
消 火活 動 の 時 間余 裕
は 30 分 以 上 あ る か?
Yes
No
No
別 フ ロ ー 図へ
別 フ ロ ー 図へ
公衆
審
消火 活 動 の 操作 は
査
49
RK00*:201*
単純 か ?
Yes
煙 又は 他 の 危 険要 因
No
が 存 在す る か ?
Yes
下表(H EP L ookup
Table U) を 参 照
次 の フ ロ ー 図へ
タ イ ム マ ー ジン ( 図 G.3 参 照 )
を評 価 し て 対 応す る HE P を 選 択
注 ) NURE G-1921 の 中 央 制 御室 外 の フ ロー チ ャ ー ト の一 部 を 用 いて ス コ ー ピ ング 手 法 の HEP 算 出方 法 を 例 示し た
図 G.2−スコーピング評価手法のフローチャート及び人的過誤算出表の例
50
RK00*: 201*
査
火災発生から消火活動が有効な限界まで
火災検知から消火活動が有効な限界まで
火災発生から
消火活動時間
検知まで
火災検知から 移動、防護服
診断完了まで 必要機器の
公衆
審
操作を含む
火災発生
火災検知
クルー
診断完了
消火活動
完了
図 G.3−タイムマージンの定義
消火活動が
有効な限界
51
RK00*:201*
G.3.2
a)
HEP の詳細評価手法
考慮すべき行動形成因子及び火災影響
査
ここでは,詳細なHEPを評価する際に考慮する行動形成因子(PSF)及び火災影響を示す。ただし,
特定のシナリオにおける特定の操作において,これらのPSFが適用されない場合がある。また,ある
PSFがあまりに重要なために,他が問題にならないような状況が発生する可能性もある(例えば,時
間余裕が極端に短く,他のPSFの内容に関わらず操作を行うことがほぼ不可能である場合など)。PSF
の影響は,プラント及び事故シーケンス特有の状況によるものであり,インタビュー,プラントウォ
ークダウン,フィールド観察,シミュレーションなどによって何が重要なのかを確認し,現実的とな
るよう過去の事象を調査する。
b)
中央制御室の放棄
公衆
審
中央制御室内において居住に不適当な環境を直接引き起こす,又は,中央制御室からのプラントの
監視及び制御を極端に困難にするような火災に関しては,運転員は中央制御室を離れ,中央制御室外
からの安全停止を遂行する。その後の行動に関しては,中央制御室外停止操作盤を用いるか,又は多
数の現場操作盤と機器を用いることが想定される。この場合,全てのPSF及び火災の影響は,現実的
な推定値の算出に対して考慮される必要がある。
c)
人的行動(運転員による緩和操作並びに消火活動)がほとんど期待できないケース
次に示す人的行動には期待しないか,または次に示す様に限定的に扱う。
− 自給式呼吸器(空気ボンベ)を装着中の個人の重要な活動及びコミュニケーション,並びに多
数の複雑な行動が必要なタスク。このような状況下でのコミュニケーションは困難であり,作
業が成功する見込みは極端に低いことが想定されるため,視野及び他の類似した問題から発生
する活動の遅延も含めて考慮する。
− 火災は,著しい数の機器の誤動作(又は停止)及び,複数の計装系の信頼性に影響を与える原
因となりうる。代わりの信頼に足りる情報源がない限り,火災の影響を受ける計装及び機器に
基づく行動は失敗すると仮定する。追加される時間,複雑さ,手順書の利用可能性,及び代わ
りの情報源の同定及び使用に寄与する重要なPSFは,考慮する必要がある。
− 火災区画内において実行される行動,又は,作業者が複数の火災区画の横断に迫られた場合に
とる行動。代わりのルートが可能な場合,そのようなルートの同定に関連する条件及び代わり
のルートを用いるための時間余裕を,考慮する。
− 手動操作さえ困難なほど損傷を受ける可能性のある機器の修復による復旧。
− 手順書,訓練,特殊なツール,又は十分な時間余裕がない行動。
参考文献
(1) EPRI/NRC, “EPRI/NRC-RES Fire PRA Methodology for Nuclear Power Facilities”,
NUREG/CR-6850, September 2005
(2) EPRI/NRC, “EPRI/NRC-RES Fire Human Reliability Analysis Guidelines”, NUREG-1921,
July 2012
52
RK00*: 201*
序文
査
附属書 H
(参考)
火災シナリオの炉心損傷頻度算出における複数の起因事象の扱い
この附属書は,定量的スクリーニング解析において,複数の起因事象が同時に発生する火災シナリオの
炉心損傷頻度の算出方法を例示したものである。
H.1
複数起因事象が同時に発生する火災シナリオの炉心損傷頻度の算出例
内的事象 PRA では,発生頻度が非常に小さいと考えられることから複数の起因事象の同時発生は考慮
していない。一方,火災では複数の設備が損傷する可能性があるため,1 件の火災により複数の起因事象
公衆
審
が発生する可能性がある。例えば,PWR プラントの1つの区画内に二つのケーブルトレイがあり,一つ
のケーブルトレイには小破断 LOCA の発生要因である加圧器逃がし弁の制御ケーブルが敷設されており,
残りのケーブルトレイには 2 次系破断の発生要因となる主蒸気逃がし弁のケーブルが敷設されている場
合,火災による影響で二つのケーブルトレイが損傷すると複数の起因事象が発生する可能性がある。特に,
火災シナリオの定量的スクリーニング解析においては,区画内の全ての設備が機能喪失又は誤動作すると
の保守的な条件の下で評価を行うため,火災シナリオによっては複数の起因事象が同時に発生することに
なる。このような場合に,定量的スクリーニング解析を適切に実施する方法として,次の a)及び b)に示
す方法が考えられる。
a)
複数の起因事象のうちで,条件付き炉心損傷確率が最も高くなる,“事象の終息に使用可能な緩和系
の種類や数が最も少ない起因事象”を代表事象として炉心損傷頻度を算出し,火災シナリオをスクリ
ーニングする方法が考えられる。以下の理由から,この方法により火災シナリオの定量的なスクリー
ニングは適切に実施できると考えられる。
① 1つの火災シナリオで発生する複数の起因事象のうち,最も条件付き炉心損傷確率が高い起因事
象を代表事象とすること,及び区画内の全ての設備が機能喪失又は誤動作するとの保守的な仮定
をして炉心損傷頻度を定量化するので,火災シナリオの炉心損傷頻度を過小評価して重要なシナ
リオをスクリーニングアウトすることはない。
② 火災シナリオのスクリーニングのために代表事象のみ定量化するものであり,詳細解析にて当該
火災シナリオで評価対象とすべき起因事象を絞り込むものではない。詳細解析で,当該火災シナ
リオで発生する可能性のある起因事象は全て評価の対象とする。従って,スクリーニングのため
に代表事象のみ定量化しても,詳細解析での当該火災シナリオの定量化に影響しない。
b) 複数の起因事象が発生する可能性のある火災シナリオの条件付き炉心損傷確率を 1.0 として炉心損傷
頻度を算出し,火災シナリオをスクリーニングする方法が考えられる。この方法は,起因事象ごとの
条件付き炉心損傷確率を求める必要がないので,簡単であるが,上記 a)よりも保守的な条件付き炉心
損傷確率を用いるために,スクリーニングアウトされる火災シナリオの数は少なくなる。
53
RK00*:201*
序文
査
附属書 I
(参考)
定量的スクリーニング解析におけるスクリーニング基準の例
この附属書は,火災シナリオの定量的スクリーニング解析におけるスクリーニング基準について例示し
たものである。
I.1
単一区画火災シナリオの定量的スクリーニング
定量的スクリーニング解析におけるスクリーニング基準としては,NUREG/CR-6850(1)に記載されてい
る値がある。ここでは,単一区画火災シナリオの CDF を表 I.1 に示すスクリーニング基準と比較し,火
公衆
審
災区画のスクリーニングを行う。また,詳細解析対象から除外された火災区画の CDF の合計を表 I.2 に
示す定量的スクリーニング基準と比較し,除外された火災区画に対するスクリーニングの妥当性を確認す
る。なお,表 I.1 のスクリーニング基準は必要に応じて,表 I.2 のスクリーニング基準を満たすように調
整する。
表 I.1
単一区画火災シナリオの定量的スクリーニング基準
対象
スクリーニング基準
< 1.0×10-7/炉年
単一区画火災シナリオの CDF
表 I.2
注)基準値は必要に応じて,表 I.2 の基準を
満たすように調整する。
除外された単一区画火災シナリオの定量的スクリーニング基準
対象
除外された単一区画火災シナリオの
CDF の合計
スクリーニング基準
< 0.1×内的事象 PRA の全 CDF
なお,表 I.2 のスクリーニング基準は,ASME/ANS PRA 標準(2)の QNS-C1 のカテゴリーⅡと同様であ
る。
また,JNES/SAE05-117(3)では,火災シナリオの CDF が内的事象 PRA の CDF の 0.1%未満であれば
以降の評価から除外している。
スクリーニング基準を設定する場合の注意事項として,重要な火災シナリオが設定した基準によって除
外されないように適切な値を設定する必要がある。
参考文献
(1) EPRI/NRC, “EPRI/NRC-RES Fire PRA Methodology for Nuclear Power Facilities”,
NUREG/CR-6850, September 2005
54
RK00*: 201*
(2) ASME/ANS, “Addenda to ASME/ANS RA-S–2008 Standard for Level 1/Large Early Release
RA-Sa–2009, February, 2009
査
Frequency Probabilistic Risk Assessment for Nuclear Power Plant Applications”, ASME/ANS
(3) (独)原子力安全基盤機構,“火災・溢水に係る確率論的安全評価手法の整備に関する報告書”05 解
公衆
審
部報-0117,JNES/SAE05-117,平成 19 年 3 月
55
RK00*:201*
序文
査
附属書 J
(参考)
火災シナリオと事故シーケンスの定量化の例
この附属書は,火災シナリオに起因する事故シーケンスの定量化の概念及び火災シナリオと事故シーケ
ンスのインターフェイスについて例示したものである。
J.1
火災シナリオの概要
火災シナリオは火災の特徴を示すものであり,火災源ごとに同定される。例として図 J.1 に示すような
火災区画において,火災が発生した場合のシナリオについて示す。例示するシナリオの仮定は次の通りで
公衆
審
ある。
・ 火災区画 A,B,C にはそれぞれ緩和系 A,B,C に属する電動ポンプ A,B,C が設置されている。
また,火災区画 A には電動ポンプ C の動作に必要なケーブル C が敷設されている。
・ 火災区画 A に設置された緩和系 A の電動ポンプ A が発火し火災源となり,緩和系 A が機能喪失す
る。
・ 火災区画 A での消火に失敗する。
・ 火災区画 A での火災の影響(高温ガス)により,ケーブル C が損傷する。このため,電動ポンプ C
が運転不能となり,緩和系 C が機能喪失する。
・ 火災区画 A の火災は火災区画 B に影響を及ぼすが,火災の影響が電動ポンプ B に波及する前に,運
転員により消火されるため,緩和系 B の健全性は保たれる。(消火成功により緩和系 B は火災の影
響を受けない。)
・ 緩和系 D 及び E は火災区画 A,B 及び C からは火災防護の観点で隔離されるよう設計された火災区
画に設置されており,火災区画 A で発生した火災の影響は受けない。
表 J.1 にこれらの火災シナリオの要素を示す。内部火災 PRA では火災の影響による機能喪失などだけ
でなく,機器などのランダム故障による機能喪失なども考慮して最終状態の発生頻度を評価する。ここで
の例示では,火災シナリオに関連する事故シーケンスの評価において,火災の影響を受けない緩和系 B,
緩和系 D 及び緩和系 E についてはランダム故障のみを考慮する。また,1 つの火災源から複数の火災シ
ナリオを作成する場合もあることから,参考として,火災区画 B において火災の拡大防止(延焼した火
災の消火)に失敗した場合の要素を示す。
56
RK00*: 201*
表 J.1−火災シナリオの要素
火災発生区画
火災区画 A
火災源
電動ポンプ A
火災源数
1
火災拡大防止の 火災区画 A
失敗
火災区画 B
成功
成否
延焼範囲
場合の例
同左
同左
同左
失敗
失敗
火災区画 A(火災区画 B の機器に影火災区画 A →火災区画 B
響を与える前に消火)
電動ポンプ A:起因事象 X 発生
電動ポンプ A:起因事象 X 発生
緩和系 A 機能喪失
ケーブル C:緩和系 C 機能喪失
緩和系 A 機能喪失
電動ポンプ B:緩和系 B 機能喪失
公衆
審
影響を受ける機器及び
参考:火災拡大防止に失敗した
査
図 J.1 に示す火災発生時の例
火災シナリオの要素
その影響
ケーブル C:緩和系 C 機能喪失
緩和系 B:消火成功により火災の影緩和系 D:火災の影響なし(ランダ
響なし(ランダム故障のみを考慮)ム故障のみを考慮)
関連する事故シーケンスにお 緩和系 D:火災の影響なし(ランダ緩和系 E:火災の影響なし(ランダ
いて考慮する機器
ム故障のみを考慮)
緩和系 E:火災の影響なし(ランダ
ム故障のみを考慮)
ム故障のみを考慮)
57
RK00*:201*
火災区画 D 及び E は,火災区画 A,B
査
及び C からは火災防護の観点で隔離さ
れるよう設計されており,火災区画 A で
発生した火災の影響は受けない。
火災区画 C
電動ポンプ C
火災区画 A
高温ガス
火災区画 E
電動ポンプ D
電動ポンプ E
(火災の影響
(火災の影響
を受けないの
を受けないの
でランダム故
でランダム故
障のみを考慮)
障のみを考慮)
公衆
審
(ケーブル C 損傷
により機能喪失)
火災区画 D
延焼→ 運転員 の
消火に より火 災
区画 B への火災
の影響 の拡大 を
防止
ケーブル C
(火災(高温ガス)
により損傷)
火災区画 B
電動ポンプ B
(健全)
電動ポンプ A
(火災源:機能喪失)
図 J.1−火災シナリオの例
注)当該シナリオが発生した際の最終状態は緩和系 D 及び E の成否により異なる。この緩和系 D
及び E に関連する機器として,電動ポンプ D 及び E がありそれぞれ火災区画 D 及び E に設置
されている。火災区画 D 及び E は,火災区画 A,B 及び C からは火災防護の観点で隔離され
るよう設計されており,火災区画 A で発生した火災の影響を受けることはない。従って,緩和
系 D 及び E については,当該火災シナリオに関連する事故シーケンスの評価においてランダ
ム故障のみを考慮する。
58
RK00*: 201*
J.2 事故シーケンスの定量化
事故シーケンスは,”起因事象の発生から緩和機能及び人的操作の成功又は失敗の組合せを経て望まし
査
くない最終状態(炉心損傷,放射性物質放出,公衆被ばくなど)に至る経路”と定義され,内部火災 PRA
では火災シナリオを同定することによって,事故シーケンスを決定することができる。
事故シーケンスの定量化の際は,図 J.2 に示すように,火災によって誘発される起因事象及び火災によ
って使用不能になる緩和系及び起因事象の緩和に必要となる緩和系を考慮したイベントツリーを作成し
評価する。例として,
“電動ポンプ A が火災源となる火災によって起因事象Xが誘発され,緩和系 A が機
能喪失する。次に火災源と同じ火災区画に設置されたケーブル C が火災により損傷し,電動ポンプ C が
動作不能となり緩和系 C が機能喪失する。さらに火災区画 A から火災区画 B に延焼するものの,運転員
により電動ポンプ B に火災の影響が波及する前に消火されることで緩和系 B の健全性は保たれる。また,
当該シナリオに関連する最終状態は緩和系 D 及び E の成否により異なるが,緩和系 D 及び E は火災区画
A,B 及び C とは火災防護の観点で隔離されるよう設計された火災区画に設置されており火災区画 A で発
公衆
審
生した火災の影響は受けない(図 J.1 に相当)
”という火災シナリオが同定された場合について次に示す。
まず,火災によって誘発する起因事象 X 発生時のイベントツリーを作成する。そして,火災によって
緩和系 A 及び緩和系 C には期待できないという情報をイベントツリーに反映し,当該イベントツリーの
評価を行う。具体的には,作成した起因事象 X 発生時のイベントツリーで火災区画 A での火災の影響に
より機能を喪失する緩和系 A 及び C を確率 1.0 で失敗,火災の影響を受けない緩和系 B,D 及び E につ
いてはランダム故障確率を考慮するように設定し,起因事象 X の発生頻度を 1.0 として図 J.2 に太線で示
した,No.10∼No.12 及び No.14∼No.16 の事故シーケンスの条件付炉心損傷確率(CCDP)を算出する。
その後,別途算出した火災シナリオの発生頻度(附属書 O(参考)火災シナリオの詳細解析の例 参照)
を CCDP に乗ずることで事故シーケンスの発生頻度を評価する。火災シナリオと事故シーケンスのイン
ターフェイスの例について図 J.3 に示す。
起因事象X 緩和系A 緩和系B 緩和系C 緩和系D 緩和系E
シーケンス
No.
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
(注記:太線が火災シナリオの事故シーケンスとなる。)
図 J.2−事故シーケンス解析
図 J.3−火災シナリオと事故シーケンスとのインターフェイスの例
査
公衆
審
59
RK00*:201*
60
RK00*: 201*
序文
査
附属書 K
(参考)
火災防護設備及び手段の同定で考慮すべき性能の例
この附属書は,火災防護設備及び手段の同定において考慮すべき性能について例示したもので
ある。
K.1
火災防護設備及び手段の同定
火災の拡大を防止させる又は遅延させる可能性を持つ表 K.1 の設備及び手段並びに各設備に
公衆
審
対して考慮すべき性能を同定する。
表 K.1−火災防護設備及び手段並びに考慮すべき性能
火災防護設備及び手段
火災検知装置
耐火能力が認証されていない火
災区画の境界となる構造物
防火ダンパ,防火ドア
油火災面積限定施設
(ドレンリム,オイルパンなど)
消火装置
貫通部シール
消火操作
考慮すべき性能
使用環境,検知する火災の性質,検知条件,型式,検知器の
アンアベイラビリティ,火災発生箇所の特定の可能性など
位置,材料,厚さ,耐火能力など
位置,材料,厚さ,耐火能力,アンアベイラビリティなど
設置位置,油回収容量,周辺機器との距離など
位置,数量,消火剤の種類,消火可能範囲,消火設備のアン
アベイラビリティなど
位置,材料,貫通部断面積など
火災検知から消火までに必要な時間,現場へのアクセス性な
ど
注釈)本表の内容は,JEAG-4607-2010(1)を参考に作成した。
参考文献
(1) JEAG 4607-2010, 原子力発電所の火災防護指針
61
RK00*:201*
序文
査
附属書 L
(参考)
火災影響範囲の評価及び火災源の同定の例
この附属書は,火災影響範囲の評価及び火災源の同定について例示したものである。
L.1
火災影響範囲の評価
9
火災シナリオのスクリーニングにおいて特定された各火災区画内の火災源のリストを
準備する。各火災源のタイプが特定された後(例えば,電源盤,ポンプの潤滑油など),各火
公衆
審
災源のタイプに対して火災による熱影響範囲(対象物が損傷また発火する範囲)を評価する。
高エネルギーアーク火災や水素火災については爆発現象を伴った火災になる可能性があり,
その際には爆発的な燃焼に伴って発生する高温ガスなどによる熱的影響,衝撃波の影響,及び
飛来物などの衝突による影響を受ける(以下,爆発的な燃焼に伴うこれらの影響を爆発的影響
という。)
。爆発的影響については既往知見を考慮して影響範囲を設定するとともに,影響を受
ける範囲では対象設備が全損するなどの保守的な仮定を考慮する。さらに,火災による熱影響
範囲と爆発的影響範囲も考慮して高エネルギーアーク火災や水素火災の影響範囲を評価する。
(解説 1.3 この標準の対象とする物理化学現象について)
a)
火災源のスクリーニング
火災源から発生した火炎が,他の可燃物を損傷または発火させる場合には,その火災源を
除外することはできない。また,ケーブルは自己発火による火災の可能性があることから,緩
和機能に影響を及ぼすケーブルは火災源から除外できない。
b)
対象物の損傷又は発火基準
最も近い火災源と損傷対象物の同定においては,損傷対象物としてケーブル又は電子機器を
同定する場合が多い。これらの損傷対象物の損傷又は発火基準に関しては,評価対象プラント
の設計データをもとに設定する必要がある。参考に NUREG/CR-6850(1)に記載されている基
準を表 L1 に示す。
62
RK00*: 201*
表 L.1−対象物の損傷又は発火基準の例
対象設備
査
(NUREG/CR-6850 に記載されている基準)
損傷又は発火基準*1
雰囲気温度
火災源からの熱流束
熱可塑性ケーブル
205℃
6kW/m2
熱硬化性ケーブル
330℃
11kW/m2
電子機器*2
65℃
3kW/m2
205℃
6kW/m2
*1:各対象物の損傷又は発火は対象物の雰囲気温度と火災源からの熱流束のどちらかが各基準
公衆
審
を超えた場合に発生するものとする。また,NUREG/CR-6850 では損傷温度に達すると発火
すると仮定している。
*2:損傷対象物として電子機器を含む火災シナリオの場合には,スクリーニングに適用される
損傷基準としては,65℃又は 3 kW/m2 である。電子機器が火災源として振舞う場合,発火基
準は熱可塑性ケーブルと同等の特性(205℃又は 6 kW/m2 )とする。
火災に曝される環境が損傷しきい値(基準値)を超えた時,対象の損傷が起こると仮定する。
また,損傷対象の熱応答に基づき対象の損傷時間を解析する。
なお,火災源と損傷対象物を扱う場合には次の項目について注意が必要である。
−
電線管内のケーブルは,潜在的な損傷対象物として考慮されるが,火災源としない。電線
管内のケーブルは,火災の成長と拡大に寄与しない。電線管は,熱的損傷の開始を遅延さ
せることはできないものとする。
−
延焼防止剤は,損傷もしくは発火の開始を遅延又は防止できないものとする。
−
火災源として特定されている設備は,全損として扱う。
−
鋼鉄製の配管,タンク及び熱交換器などは火災損傷がないものとする。
−
モータ及び弁のような主要な機器の火災による機能喪失は,関連する電力ケーブル,制御
ケーブル及び計装ケーブルの損傷の影響も考慮する。
c)
火災影響範囲の評価
火災区画内の火炎が引き起こす要素(火炎要素)として,火災源(火炎),プルーム(火災
により生成される高温の燃焼生成物が引起す上昇気流),火炎ふく射,天井ジェット(直接天
井に当たる高温ガスも含む流体),高温ガス層がある。火災による影響範囲の評価では,熱放
出率及び損傷温度又は発火温度から得られる損傷距離や発火距離を計算できるモデルが必要
となる。このモデルには単純な手計算モデル,ゾーンモデル及び数値解析流体力学モデルがあ
り,多数のツールが使用可能である。これらのモデルとツールの例を次に示す。
63
RK00*:201*
FIVE-Rev1 など
査
− 手計算による方法(工学的計算法(engineering calculations)とも呼ばれる):FDT,
− ゾーンモデル: CFAST 及び MAGIC など
− 数値解析流体力学(Computational fluid dynamics):FDS など
手計算による方法を適用する場合,各火炎要素の熱放出率は表 L.2 に示す式を用いて算出す
ることができる。
他の設備の損傷を引き起こさない火災源については詳細な火災モデリングは不要である。
さらに,火災源自体が火災によって損傷しても緩和系への影響がない場合には,その火災源そ
のものを以降の評価から除外することができる。
公衆
審
さらに,火災の発生頻度は低いが発生した際の影響が大きくなる火災シナリオ(ポンプの
潤滑油全量流出後に火災が発生するシナリオなど)に対してはその影響を評価する。
L.2
a)
火災源の熱放出率
火災源の同定のための熱放出率
火災時の影響評価を実施して詳細解析の対象とする火災源を同定する際には,火災源の強
度を最大のピーク強度で特徴付けて影響を評価する。
また,ガンマ分布で特徴付けられた熱放出率を用いて評価を実施する場合には,98%確率
値の熱放出率を用いて評価を実施する。参考として,NUREG/CR-6850 に記載されている電
気品火災の熱放出率を表 L-3 に示す。
b)
火災の影響を受ける設備を同定するための熱放出率
火災の影響を受ける設備を同定する際には,火災源に適切な時間依存の火災成長プロファ
イル(すなわち,時間依存の熱放出率)を割り当てて同定する。また,同定の際の評価にお
いて火災源が燃え尽きることを考慮する場合は,その時間と条件の妥当性を示す。
L.3
火災解析ツールとその適用範囲
各火災区画内の火災源ごとの影響範囲を評価するために火災解析ツールを使用する場合に
は,使用する火災解析ツール名とその特徴および使用する目的を明記する。また,表 L.4 に
示すような検証結果を引用することで火災解析ツールの適用範囲や適用能力を把握するとと
もに,それらを踏まえて解析結果を評価に反映させる。
さらに,原子力発電所を対象とした解析では,放射性物質の漏えいを防止する観点から,
換気空調設備により負圧に保つ設計を原則とするため,機械換気制限下における区画内の耐
火評価となる。火災源の位置や熱量,区画の形状や熱物性などを入力とすることで,区画内
温度などの分布や時間変化を推定可能であるものの,実現象に対する推定精度は火災解析ツ
ールの特性に依存するともに,入力パラメータの与え方やそのパラメータが持つ不確実さに
も依存することに留意する必要がある。
64
RK00*: 201*
表 L.2−火災影響の評価式の例(1/2)
インプット項目
火炎影響の評価式
高温ガス層の温度: T (自然換気の場合)
T∞ :雰囲気の温度 (℃)
1/ 3

Q 2

T = T∞ + 6.85 ⋅
A H h A
0 k T
 0




査
(NUREG-1824 Volume 4: Fire-Induced Vulnerability Evaluation (FIVE-Rev1) (2)の評価式)
(℃)
Q :火災源の熱放出率 (kW)
A0 :開口部の面積 (m2)
熱伝達率: hk
H 0 :開口部の高さ (m)
(t ≤ t )
p
AT :開口部を除いた区画の表面積 (m2)
公衆
審
 k ⋅ dm ⋅ cp

t
hk = 
k


th
(t > t )
(kW/m2-℃)
d m :壁材料の密度 (kg/m3)
熱浸透時間: t p
tp =
k :壁材料の熱伝導率 (kW/m-℃)
p
c p :壁材料の比熱 (kJ/kg-℃)
th 2


4⋅ k (

)
⋅
d
c
m
p 

火炎の高さ: L
(sec)
2
L = 0.235Q f 5 − 1.02 D
t :時間 (sec)
th :壁の厚さ (m)
(m)
Q f :火災源の熱放出率 (kW)
D :燃焼面の直径 (m)
′′ (点源モデル、無風条件、対
放射熱流束: q irr
象物が地面に位置している場合)
′′ =
q irr
Q f χ r
4πR 2
Q f :火災源の熱放出率 (kW)
(kW/m2)
この式は火炎の中心から対象物までの距離が、
燃焼面の直径の 2 倍以上の場合で適用される。
χ r :放射されるエネルギーの割合(Five
Rev.1 では 0.4 を推奨)
R :火炎の中心から対象物までの半径方
向距離
(m)
65
RK00*:201*
表 L.2−火災影響の評価式の例(2/2)
査
(NUREG-1824 Volume 4: Fire-Induced Vulnerability Evaluation (FIVE-Rev1)の評価式)
インプット項目
火炎影響と定義式
プルームの中心軸温度: T pl
Tamb :雰囲気の温度 (℃)
1
3
 T

−5 3
Tpl = Tamb + 9.1 2amb2  Q c2 3 ((H p − Fe ) − z0 )
 gc ρ 
 p amb 
(℃)
g :重力加速度 (m/sec2)
c p :壁材料の比熱 (kJ/kg-℃)
ρ amb :空気の密度
Q c :対流による熱放出率 (kW)
公衆
審
仮想点源位置: Z 0
z 0 = 0.083Q f
2
5
(kg/m3)
− 1.02 D
H p :対象物の高さ (m)
(m)
Fe :燃焼面の高さ (m)
Q f :火災源の熱放出率 (kW)
D :燃焼面の直径 (m)
天井ジェットの温度: Tcj
Tcj =
(
5.38 k f ⋅ Q f / R
h − Fe
)
2
Tamb :雰囲気の温度 (℃)
3
+ Tamb
(℃)
k f :火災位置係数(火災源が区画
中心:1、壁沿い:0.5、隅:
0.25)
Q f :火災源の熱放出率 (kW)
天井ジェットの速度: Vcj
(
)
 0.195 ⋅ k Q 1 3 (h − F )1 2 
f
f
e

Vcj = 
56


R


R :火炎の中心からの対象物までの
水平距離 (m)
(m/s)
h :部屋の高さ (m)
Fe :燃焼面の高さ (m)
66
RK00*: 201*
表 L.3−電気品の熱放出率(HRR)の例
火災源
査
(NUREG/CR-6850 に記載されている例)
認証ケーブルを用いた電気盤(垂直盤)
,火災が
1 ケーブルバンドル内の場合
認証ケーブルを用いた電気盤(垂直盤)
,火災が
2 ケーブルバンドル以上の場合
非認証ケーブルを用いた電気盤(垂直盤),火災が
1 ケーブルバンドル内の場合
非認証ケーブルを用いた電気盤(垂直盤),火災が
75th*
98th*
69
211
211
702
90
211
232
464
公衆
審
2 ケーブルバンドル以上で扉が閉じている場合
HRR(kW)
非認証ケーブルを用いた電気盤(垂直盤),火災が
232
1002
ポンプ(電気火災)
69
211
モーター
32
69
仮置可燃物
142
317
2 ケーブルバンドル以上で扉が開いている場合
*:ガンマ分布で表される HRR の 75%確率値と 98%確率値
67
RK00*:201*
表 L.4-火災解析ツールの適用範囲と解析能力
査
(NUREG-1824:Verification and Validation of Selected Fire Models for Nuclear Power
Plant Application(3))
パラメータ
火災解析ツール
FDT
高温ガス層の温度
対象区画
黄
(上部層の温度)
隣接区画
N/A
高温ガス層の高さ(層の境界高さ)
N/A
天井ジェット温度(ターゲット(評
N/A
価対象設備)及びガスの温度)
プルーム温度
黄 UP
FIVE-Rev1
CFAST
MAGIC
FDS
黄 OP
緑
緑
緑
N/A
黄
黄
緑
N/A
緑
緑
緑
黄 OP
黄色+
緑
緑
黄 OP
N/A
緑
黄
緑
緑
緑
黄
緑
酸素濃度
N/A
N/A
緑
黄
緑
煙の濃度
N/A
N/A
黄
黄
黄
部屋(区画)の圧力
N/A
N/A
緑
緑
緑
ターゲットの温度
N/A
N/A
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
黄
トータルの熱流束
N/A
N/A
黄
黄
黄
壁の温度
N/A
N/A
黄
黄
黄
公衆
審
火炎温度
放射熱流束
注 1)火災解析ツール
・ FDT(Fire Dynamics Tools):米国 NRC が開発した手計算ベースの火災力学ツール。
・ FIVE(Fire-Induced Vulnerability Evaluation)-Rev1:米国の EPRI が開発した火災脆弱
性評価ツール。
・ CFAST(Consolidated Model of Fire Growth and Smoke Transport):アメリカ国立標準技
術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)が開発したゾーンモ
デルを用いた解析ツール。
・ MAGIC:仏国 EdF が開発したゾーンモデルを用いた解析ツール。
・ FDS:NIST が開発したフィールド(数値流体解析)モデルを用いた解析ツール。
注 2)適用範囲と解析能力
・ N/A:適用範囲外
・ 緑:予測精度が保証できるレベル。
・ 黄 OP:保守的な予測結果(over-prediction)になるツール。
・ 黄 UP:非保守的な予測結果(under-prediction)になるツール。
・ 黄:解析結果が保守的か非保守的かを判断できないツール。
68
RK00*: 201*
参考文献
NUREG/CR-6850, September 2005
査
(1) EPRI/NRC, “EPRI/NRC-RES Fire PRA Methodology for Nuclear Power Facilities”,
(2) EPRI, Verification and Validation of Selected Fire Models for Nuclear Plant
Application,
Volume
4,
Fire-Induced
NUREG-1824, May 2007
Vulnerability
Evaluation
(FIVE-Rev1),
(3) EPRI, Verification and Validation of Selected Fire Models for Nuclear Plant
公衆
審
Application, NUREG-1824, May 2007
69
RK00*:201*
序文
査
附属書 M
(参考)
火災によって影響を受ける回路及びケーブルの同定の例
この附属書は,回路故障解析によって火災の影響を受ける回路とケーブルの同定方法につ
いて例示したものである。
M.1
事前情報及びデータの収集
a)
内部火災 PRA 用設備リストにおける内部火災 PRA 用ケーブルリストの活用
公衆
審
内部火災 PRA において考慮するケーブルが同定され,内部火災 PRA 用設備リストに入
力されていることを確認する。確認する上では,次の内容を考慮する。
−
火災区画にケーブルトレイが配置されていること,ケーブルがケーブルトレイに敷設され
ていること,及びケーブルが火災区画と関連付けられていること。
内部火災 PRA 用ケーブルリストには,内部火災 PRA において考慮する機器との関連が
−
確認されている。
b)
除外されなかった区画及びシナリオの確認
回路故障解析が必要となる機器範囲を明確化する。機器範囲を確認する上では,次の内容
を考慮する。
−
除外されなかった火災区画及び火災シナリオのリストから,各火災区画及び火災シナリオ
において影響を受ける機器のリストを作成する。
−
回路故障解析が必要な機器に関する機器番号,通常運転状態及び要求機能が内部火災
PRA 用設備リストに含まれていることを確認する。
M.2
ケーブル火災時の回路故障解析の手順
火災発生後,火災区画内に設置されているケーブルに影響が及ぶとそのケーブルと関係する回
路,さらにはケーブルの信号発信先である各種機器に影響が及ぶ。さらに,ホットショートが発
生した場合には,機器の誤動作なども発生する可能性がある。なお,ホットショートは単一のケ
ーブル内で発生する場合と隣接するケーブルにまたがって発生する場合がある。
NUREG/CR-6850(1)の記載をもとに,火災源からのケーブルへの影響,回路への影響,安全機
能への影響の整理の手順を例示する。
a)
火災源からのケーブルへの影響
火災により影響を受けたケーブルは,以下の故障モードの発生を考慮する。
70
RK00*: 201*
− 地絡
査
− 断線
− ホットショート(通電された導体と別の通電されていない導体間でのショート)
ケーブルごとに,3 つの故障モードに対して回路への影響の有無を把握する。
b)
回路への影響
当該ケーブルに影響を及ぼす故障モードに対して,ケーブルが関連する回路への影響
を解析する。解析の際には,ケーブルの故障モードにより回路への影響が異なるのでケ
ーブル識別子と回路との関連を回路図(機器の制御回路,プラント又は系統制御用とし
ての論理回路など)に基づき調査を行う。回路への影響の分類例を以下に示す。
公衆
審
− 電源喪失
− 誤表示
− 誤動作
− その他の影響
− 影響なし
c)
安全機能への影響
回路への影響評価結果に基づき,原子炉プラントやシステムなどに与える影響を評価
する。安全機能への影響分類例を以下に示す。機器によってはシステムの機能喪失や新
たな起因事象の発生を引き起こすことがある。
− システムの誤動作
− システム機能喪失
− システム制御喪失
これらの作業を実施することにより,火災発生時の当該ケーブルに関する影響範囲が定
まる。ただし,ホットショートに対する回路故障解析は,内的火災 PRA の評価の目的に応
じて,概略評価で代用する場合と詳細評価を行う場合がある。以下,M.3 節に概略評価の
実施例を示し,M.4 節に詳細評価の実施例を示す。
M.3
概略評価の実施例
火災によって損傷するケーブルトレイごとに発生する可能性のある誤動作を既存の評価例(例
えば,米国 EPRI の誤動作に関するジェネリックリスト)などをもとに推定し,回路故障解析結
果の代替とする。この方法では,個別ケーブルに対する安全機能への影響は解析できないものの,
安全機能レベルでの主要な影響が把握できる。その際に,複数の誤動作が発生すると推定される
場合には,緩和機能に最も大きく影響する誤動作で代表させてもよい。さらに,誤動作の発生
確率を保守的に 1.0 として誤動作が発生した場合の影響を評価する。
71
RK00*:201*
M.4
詳細評価の実施例
査
詳細評価はケーブル内及びケーブル間のホットショートを含めた回路故障解析が必要であり,
ケーブルトレイ内の隣接するケーブル間の関連やケーブル内の芯数調査だけでなく,ホットショ
ートが発生した際の回路への影響と安全機能への影響の評価,さらにホットショートの発生確率
の算出が必要となる。
a)
詳細な回路故障解析の評価方法
回路故障解析を行うための詳細な評価方法を以下に例示する。
− 回路故障の評価は,通常の運転状態にある機器を対象に行う。機器の状態が不確実な
場合(通常のプラント運転によって変化しうる場合),解析では最も厳しい(緩和系
公衆
審
の影響が最も大きい)状態を選定する。
− 回路故障によって機器の状態が変化する場合,その変化によって当該機器が属してい
る設備や系統に及ぼす影響を考慮する。
− 詳細な回路故障解析では,回路図に基づいて,個別のケーブル故障で誘発される機器
の応答を評価する。
− 信頼性の高いシールド(金属の保護ケーブル,電線管など)で保護されているケーブ
ルの場合にはケーブル間のホットショートの発生が防止される。
− 実施された回路故障解析の結果は他の火災区画並びに火災シナリオの同じケーブル
に対して適用できる。
b)
詳細な回路故障解析の実施例
回路故障解析を実施する場合には,当該ケーブルが関連する回路図,ケーブルトレイ図などを
参照する必要がある。以下に,図 M.1 を用いて例示する。
1) 関連する回路影響の確認
① ケーブルの起点と終点及びケーブルの種類の確認
該当するケーブルに対して,
「機器リスト」の起点と終点情報から,影響範囲を確認する。
また,同じケーブルトレイに敷設されている他のケーブルに対しても同様に確認する。さら
に,同一被覆内に格納されているケーブルの場合は「芯数」も確認する。
② 関連する回路図の確認
個別ケーブルに対して,影響が発生する可能性がある回路図を確認する。この確認によっ
てケーブルが火災により地絡又は,ホットショートした場合の影響範囲を明確化する。
③ ケーブル火災による影響の整理
影響を受けるケーブルごとに,回路図を確認して断線,地絡又はホットショート発生時の
72
RK00*: 201*
影響を整理する。ホットショートの影響を示した概略を図 M-1 に示す。ケーブルの種類に
これらに相違に留意して整理する。
2) ケーブルごとの回路故障発生確率の算出
査
より,系統起動信号,機器停止信号又はインターロック信号に関連している場合があるので,
ホットショートの発生確率は,火災源からの影響範囲の評価結果を参考に設定する。また,
公衆
審
ホットショートの発生確率は,NUREG/CR-6850 を参考に設定することができる。
A B
公衆
審
C
査
73
RK00*:201*
図 M.1−ホットショートの発生事例
参考文献
(1) EPRI/NRC, “EPRI/NRC-RES Fire PRA Methodology for Nuclear Power Facilities,”
NUREG/CR-6850, September 2005
74
RK00*: 201*
序文
査
附属書 N
(参考)
中央制御室に関わる火災シナリオの同定の例
この附属書は,中央制御室の火災シナリオの同定手順を例示したものである。
N.1
中央制御室の火災シナリオの同定手順
中央制御室は,他の火災区画と異なり火災発生時に消火に失敗した場合には,中央制御室から
の退避を余儀なくされる可能性がある。中央制御室からの退避の可能性含めて評価を行う必要が
公衆
審
ある。
以下,中央制御室の解析手順例(NUREG/CR-6850(1))を示す。
・ステップ1:中央制御室の特徴の識別と特徴づけ
・ステップ2:中央制御室内の火災頻度の評価(米国データを基に国内火災事例を用いてベイ
ズ更新)
・ステップ3:火災検知と消火設備の識別と特徴づけ
・ステップ4:通常停止以外の停止手順の特徴づけ
・ステップ5:火災の影響を受けて損傷する設備の識別と特徴づけ
・ステップ6:火災源の識別と特徴づけ
・ステップ7:火災シナリオの定義
・ステップ8:火災成長解析の実施
・ステップ9:火災検知と消火の解析と火災シナリオを特徴付ける係数の設定
・ステップ10:代替停止手順の失敗確率の評価
・ステップ11:中央制御室退避確率の評価
・ステップ12:火災シナリオの発生頻度の算出
・ステップ13:文書化
中央制御室の火災シナリオの同定で特異な事項は,他の火災区画とステップでは考慮していな
いステップ 4,10,11 となる。これらのステップでは,火災発生後のプラント停止手順(中央制御
室外操作盤など)を確保することと,火災の初期における検知及び消火に失敗した場合の中央制
御室からの退避確率を算出することが必要になる。
参考文献
(1) EPRI/NRC, “EPRI/NRC-RES Fire PRA Methodology for Nuclear Power Facilities,”
NUREG/CR-6850, September 2005
75
RK00*:201*
序文
査
附属書 O
(参考)
火災シナリオの詳細解析の例
この附属書では,火災シナリオのスクリーニングによって詳細解析の対象となった火災シナリ
オを対象にその発生頻度の算出方法を例示する。また,ここでは 1 つの火災源から発生した火
災によって 1 つの対象物が損傷する火災シナリオを対象として算出方法を例示する。
O.1
火災シナリオ発生頻度の算出
公衆
審
詳細解析の対象となった火災シナリオの発生頻度は,次の式に示すように,火災源の火災発生
頻度に火災シナリオの特徴を表す係数(火災源の過酷度因子と火災が発生した際に延焼防止に失
敗する確率(消火失敗確率)の積で表される)を乗じることによって算出する。
Λ =λ×χ
ここで,
Λ :火災シナリオの発生頻度
λ :火災源の火災発生頻度(附属書 F(参考)火災シナリオ発生頻度の評価例 参照)
χ
O.2
:火災シナリオの特徴を表す係数
火災シナリオの特徴を表す係数の定義
火災シナリオの特徴を表す係数は,以下で表される。
χ = SF ⋅ Pns =  Pdamage (t )Pns (t )dt
ここで,
SF :火災シナリオの過酷度因子(火災源の熱放出率の確率密度)
Pns :火災シナリオの消火失敗確率
Pdamage :火災シナリオの対象物の損傷確率
t :火災発生後の経過時間
また,上式は離散化することによって以下で表される。
m
χ = SF ⋅ Pns =  Pi ⋅ Pns,i
i =1
ここで,
Pi :火災シナリオ の離散化された区分ビン i の過酷度因子
76
RK00*: 201*
t i ,u
t i ,l
査
( =  Pdamage,i (t )dt )
Pns,i :火災シナリオのビン i の消火失敗確率( = Pns ,i (t ) )
t i,l :火災シナリオのビン i の対象物の損傷時間の最小値
t i, u :火災シナリオのビン i の対象物の損傷時間の最大値
O.3
火災シナリオの特徴を表す係数の設定例
図 O.1 に火災シナリオの特徴を表す係数χの設定例を示す。また,以下の手順でこの係数
公衆
審
を設定する。
①
火災源の熱放出率(確率密度関数で表される)を適当な数のビン数 i に分割し(HRR1
から HRRm)
,各ビンの発生確率(各ビンの中間値,P1 から Pm)を設定する。
②
ビンごとの熱放出率を反映した火災解析ツールなどの火災影響評価から,対象物が損傷
する時間(t1 から tm)を設定する。
③
設定された各ビンの損傷時間(消火のための時間余裕)からビンごとの消火失敗確率
(Pns,1 から Pns,m)を評価する。
④
各ビンの発生確率と消火失敗確率の積からビンごとの火災シナリオの特徴を表す係数
(P1・Pns,1 から Pm・Pns,m)を算出する。さらに各ビンの係数を総和することによっての
火災シナリオの特徴を表す係数χを算出する。
査
77
RK00*:201*
公衆
審
①
②
③
④
HRR の値
HRR1
HRR2
HRR3
HRR4
…
HRRm
個別の過酷度因子
P1
P2
P3
P4
…
Pm
対象物の損傷時間
t1
t2
t3
t4
…
tm
消火失敗確率
Pns,1
Pns,2
Pns,3
Pns,4
…
Pns,m
シナリオの特徴を表
P1 ×
P2 ×
P3 ×
P4 ×
…
Pm ×
す係数χ
Pns,1
Pns,2
Pns,3
Pns,4
Pns,m
図 O.1−火災シナリオの特徴を表す係数の評価の流れ
参考文献
(1) EPRI/NRC, “EPRI/NRC-RES Fire PRA Methodology for Nuclear Power Facilities,”
NUREG/CR-6850, September 2005
78
RK00*: 201*
査
附属書 P
(参考)
重要度指標の例
序文
この附属書は,重要度指標の意味及び定義を例示したものである。
P.1
はじめに
代表的な重要度指標の意味及び定義は次の通りである。重要度はリスクの指標として用いられ
る炉心損傷頻度,格納容器機能喪失頻度,システムのアンアベイラビリティなどに対して定義す
ることができるが,ここでは記述の煩雑さをさけるために炉心損傷頻度(F(CD))に対する重要
公衆
審
度として示している。
P.2
Fussell-Vesely 重要度
Fussell-Vesely 重要度は,炉心損傷の発生を仮定したときに,当該事象の発生が寄与している
割合を表す指標であり,次式で定義される。
Fussell-Vesely 重要度=
FA(CD)
F(CD)
ここに,
FA (CD):事象Aの発生が寄与して発生する炉心損傷頻度
F (CD):炉心損傷頻度
また,上式は次式と等価である。
Fussell-Vesely 重要度=
F(CD)- F(CD/A=0)
F(CD)
ここに,
F (CD/A=0):事象Aの生起確率が 0 の場合の炉心損傷頻度
このため,Fussell-Vesely 重要度は,特定の機器の故障又は人的過誤の発生確率を低減するこ
とによって,どれほどの安全性の向上が望めるかを示す指標とみることもできる。
Fussell-Vesely 重要度は,例えば,点検及び/又は定例試験などの計画作成における優先度の
設定,又は何らかの改良を行ってリスク低減化を図ろうとする時に注目すべき機器の候補を同定
する際に有用である。
P.3
リスク増加価値(Risk Achievement Worth:RAW)
リスク増加価値は,ある事象が必ず発生するとした時に,リスクがどれだけ増加するかを示す
79
RK00*:201*
指標であり,次式で定義される。
ここに,
F(CD/A=1)
F(CD)
査
リスク増加価値=
F (CD/A=1):事象Aの生起確率が 1 の場合の炉心損傷頻度
F (CD):炉心損傷頻度
リスク増加価値を用いることによって,機器,システム,構築物の故障,運転員操作の失敗,
他の原因による使用不能な状態(待機除外など)を想定した場合に,リスクがどの程度増大する
かを示すことができる。
公衆
審
リスク増加価値は,例えば,点検及び/又は定例試験の計画作成などの参考とすることができ
るが,その利用にあたっては十分注意を払う必要がある。リスク増加価値が低い場合には機器の
点検及び/又は定例試験を省略しても安全への影響は小さいと判断できるのに対して,リスク増
加価値が高くても点検及び/又は定例試験の強化が直接,機器の信頼性向上に繋がらない場合,
又はリスク増加価値が高くても Fussell-Vesely 重要度及びリスク低減価値が低く,点検及び/
又は定例試験の強化が有意な安全性向上に繋がらない場合もある。また,リスク増加価値は,機
能の完全喪失を想定して算出するものであることから,静的機器のように信頼性の高い機器に対
しては極めて大きな値となり得ることにも留意する必要がある。
P.4
リスク低減価値(Risk Reduction Worth:RRW)
リスク低減価値は,ある事象(例えばある機器の故障)の生起確率を 0 とした時に,リスク
がどれだけ低減されるかを示す指標であり,次式で定義される。
F(CD)
リスク低減価値= F(CD/A=0)
ここに,
F (CD/A=0):事象Aの生起確率が 0 の場合の炉心損傷頻度
F (CD):炉心損傷頻度
リスク低減価値を用いることによって,特定の機器の故障又は人的過誤確率を 0 とすること
によって,どれほどの安全性の向上が望めるかを示すことができる。この指標は,例えば,何ら
かの改良を行ってリスクの低減を図ろうとする時に,注目すべき機器の候補を同定する際に使用
することができる。
P.5
Birnbaum 重要度
Birnbaum 重要度は,ある事象の生起確率が変化したときに,炉心損傷頻度がどれほど変化す
80
RK00*: 201*
るかを表す指標であり,次式で定義される。
ここに,
査
F(CD/A=1)
Birnbaum 重要度= F(CD/A=0)
F (CD/A=1):事象Aの生起確率が 1 の場合の炉心損傷頻度
F (CD/A=0):事象Aの生起確率が 0 の場合の炉心損傷頻度
Birnbaum 重要度はリスク低減価値とリスク増加価値との積に等しい。なお,リスク低減価値,
リスク増加価値及び Birnbaum 重要度は,ここに示したように炉心損傷頻度の変化を比で表す
場合のほかに,差で表す場合もある。
クリティカリティ重要度(Criticality Importance)
公衆
審
P.6
クリティカリティ重要度は,炉心損傷の発生にとって,当該事象の発生がクリティカル(致命
的)となっている割合を表す指標であり,次式で定義される。
クリティカリティ重要度=
ここに,
P(A):事象Aの生起確率
{F(CD/A=1)- F(CD/A=0)}×P(A)
F(CD)
81
RK00*:201*
序文
査
附属書 Q
(参考)
感度解析項目の例
この附属書は,感度解析項目について例示したものである。
Q.1
感度解析項目の例
事故シーケンスの定量化においては,モデル上の仮定など解析者の判断に基づいた仮定が,解
析結果にどの程度影響しうるかを把握することが重要である。このための感度解析の対象項目と
しては,結果に重要な影響を及ぼしうる仮定を選定する。
公衆
審
通常考慮される感度解析の対象項目は,重要と考えられる解析上の仮定,重要度評価の結果か
ら重要と判明した設備損傷,故障確率,計算結果として得られた支配的因子を含めて,評価結果
に重要な影響を及ぼしうる仮定,モデル,データなどを選定する。
内部火災 PRA の場合には次のような項目が感度解析の例として考えられる。
・ 十分なデータが得られていない設備などの火災発生頻度
・ 複数の経路が想定される場合の火災伝播経路
・ 内部火災に起因する炉心損傷頻度評価の結果,事故シーケンスの発生頻度に大きな影響を
与えうる,火災の影響の有無
・ 消火失敗確率
・ 運転員による復旧操作の失敗確率
・ 回路故障解析のモデルに適用した仮定
・ 火災源の過酷度因子算出における仮定(熱放出率など)
82
RK00*: 201*
序文
査
附属書 R
(参考)
不確実さ解析の例
この附属書は,不確実さ解析について例示したものである。
R.1
不確実さ解析
不確実さ解析では,確率変数として扱うパラメータを選定し,それらのパラメータの不確実さ
を表現する確率分布を用いて不確実さ伝播解析を行う。
不確実さ解析において確率変数として扱う因子
公衆
審
R.2
不確実さ解析において確率変数として扱う因子は,火災発生頻度,共通原因故障パラメータ,
人的過誤確率及び機器故障確率の 4 種のパラメータとする。これら以外の因子については,不
確実さ幅の設定に関する一般的な方法が確立されていないことなどを考慮し,感度解析で影響を
確認することとする。
R.3
モンテカルロ法による不確実さ伝播解析
不確実さ伝播解析で一般に用いられている方法はモンテカルロ法である。モンテカルロ法は,
目的関数(具体的には,確率計算式)の値を求めるために,その構成要素のデータをランダム変
数として扱う方法である。図 R.1 に示すように,入力パラメータ Xi の分布型が与えられれば,
各確率分布からランダムに1つずつ値を取り出し,(X1,X2,・・・,Xn)の組を作り,これを
確率計算式 Y=f(X1,X2,・・・,Xn)に代入して,当該組に対応する Y の値を計算する。こ
の手順を多数回繰り返すことによって Y の値が確率分布の形で求められる。設備故障又は人的
過誤などの発生確率の各々に与えた分布型に従ってランダムに任意の確率を抽出し,事故シーケ
ンスの発生頻度を計算する。この計算処理を多数回行い,それらの結果から炉心損傷頻度が確率
分布の形で求められる。
イベントツリーの分岐確率から炉心損傷シーケンスを定量化する場合には,イベントツリーの
分岐ごとの不確実さを求め,さらに,その不確実さを伝播させる解析を行うことによって,炉心
損傷頻度が確率分布の形で求められる。
83
RK00*:201*
入力
確率変数
査
出力
Y=f(X1,X2,・・・,Xn)
X1
・・・
公衆
審
X2
確率変数
計算モデル
Y
Xn
図 R.1−入力データに起因する不確実さ解析
確率分布からパラメータをサンプリングする手法としてランダムサンプリング法より少ない
サンプリング回数で,ランダムサンプリング法と同等の網羅的な不確実さを表現することが可能
な Latin Hypercube Sampling(LHS)法がある。LHS 法では,各パラメータについて,それぞれ
の確率分布の範囲を等確率に n 個の区間に分割し,この n 個の区間を重複なくランダムに組合
せた後,各区間から1回の計算で使用するパラメータをランダムに抽出する。これによって,ラ
ンダムサンプリングより少ないサンプル数でも確率分布からまんべんなくサンプリングを行い,
不確実さを網羅的に考慮した解析を行うことができる。
また,特別な方法としてパラメータ間の従属性を考慮したモンテカルロ法を用いられることが
ある。たとえば,故障確率 λ1 と λ2 とが同一の機器故障確率を参照する場合,故障確率に対する
知見は同一となるので,不確実さの影響は同じように受けると考える。完全な従属性を考慮した
サンプリングを行う場合は,λ1=λ2となるようにパラメータ値を設定して計算する。
なお,重要度指標に関する不確実さを求めたい場合には,モンテカルロ法を用いて重要度評価
式に従い多数回の計算処理によって,各重要度指標の不確実さを求めることができる。
84
RK00*: 201*
序文
査
附属書 S
(参考)
不確実さ解析のためのスクリーニング基準
この附属書は,不確実さ解析のためのスクリーニング基準について例示したものである。
S.1
不確実さ解析のためのスクリーニング基準の例
モンテカルロ計算により不確実さ解析を実施する場合には炉心損傷頻度計算を試行回数(サンプル数)
繰り返すことになり,計算時間が膨大となる可能性がある。この計算を効率的に行なうため,評価の目的
に応じて,計算の精度を維持するための適切なスクリーニング基準を設け,当該基準以下の火災シナリオ
公衆
審
を除外する場合がある。
不確実さ解析の PRA モデルから火災シナリオを除外する適切なスクリーニング基準は,炉心損傷頻度
の不確実さ分布を適切に評価するために,点推定解析で得られた炉心損傷頻度の 0.1%∼1%が望ましい。
具体的なスクリーニング基準は,解析を効率的に実施する観点から解析体系の大きさを小さくすることを,
計算精度を維持する観点から過度に火災シナリオを除外しないことなどを考慮して,試行錯誤によって解
析の結果から判断されることもある。
85
RK00*:201*
序文
査
附属書 T
(参考)
文書化すべき項目の例
この附属書は,文書化すべき項目について例示したものである。
T.1
一般事項
文書化において,目的,評価範囲,用いた手法,条件,モデル,パラメータ,評価結果などの記述とし
て含める項目の例を次に示す。次の b)から i)における方法及び使用データの記述では,PRA の目的に応
じて,この標準の 5 プラント情報の収集から 11
事故シーケンスの定量化に示された規定に適合する
公衆
審
こと及び除外事項などの適用が妥当であることが理解できるように留意する。
なお,次に示す事項と共に,附属書 A(規定)内部火災 PRA の妥当性を確保するための方策に規定さ
れる A.1
専門家判断の活用,A.2
ピアレビューの実施及び A.3
品質保証の確保についても文書化す
る。
T.2
文書化項目の例
a) 目的,評価範囲及び評価結果の概要
1) 実施目的
2) 評価範囲及び留意すべき制限事項
3) 評価結果の概要
b) 内部火災 PRA の実施手順
c) プラント情報の収集
1) 内部火災 PRA 実施のための情報収集
−
プラントの概要
−
内的事象 PRA モデルに関する文書
−
先行 PRA に関する文書
−
プラントの設計に関する文書
−
プラントの運転・保守管理に関する文書
−
国内外の運転実績(事故事象データなど)
2) プラントウォークダウン
−
火災区画境界
−
火災源の種類と位置
−
火災の影響を受ける可能性のある設備の設置場所
−
火災区画内の設備間の位置関係
−
プラント職員,及び設計技術者などからの聞き取り調査結果
d) プラント情報の整理
1) 火災区画の設定
−
火災区画の境界設定の根拠(物理的障壁の種類,開口部の有無,空間分離)
86
RK00*: 201*
−
設定された火災区画
2) 火災源の同定
同定した火災区画ごとの火災源の種類(電動機,電源盤,油脂,ケーブル,仮置可燃物など)
−
同定した火災区画ごとの火災源の位置
−
同定した火災区画ごとの火災源の数量
3) 火災の影響を受ける可能性のある設備の同定
査
−
−
同定した火災区画ごとの火災の影響により誤動作及び機能喪失となる可能性のある機器
−
同定した火災区画ごとの火災の影響による誤動作及び機能喪失により起因事象を誘発する可能
性のある設備
e) 火災区画のスクリーニング
−
スクリーニングアウトされる火災区画
−
定量的スクリーニング解析の対象となる火災区画
公衆
審
f) 定量的スクリーニング解析用の火災シナリオの設定
1) 火災によって影響を受ける設備の同定
−
同定した単一区画火災により影響を受ける設備とケーブル及びそのケーブルに関連する設備
−
火災発生区画と火災伝播区画の組み合わせ(複数区画火災の設定)
−
複数区画火災のスクリーニング基準
−
同定した複数区画火災により影響を受ける設備とケーブル及びそのケーブルに関連する設備
2) 火災によって誘発される起因事象の同定
−
同定した火災シナリオごとの火災により誘発される起因事象
3) 定量的スクリーニング解析用の火災シナリオの作成
−
火災により影響を受ける緩和設備
−
火災シナリオ
4) 火災シナリオ発生頻度の算出
−
火災源ごとの火災発生頻度の評価方法
−
火災源ごとの火災発生頻度
−
火災区画の火災発生頻度
−
火災シナリオの発生頻度
g) 火災シナリオのスクリーニング
1) 火災シナリオの定量的スクリーニング
−
同定した火災シナリオごとの火災により誘発される設備故障
−
同定した火災シナリオごとの人的過誤事象及び人的過誤確率
−
内部火災 PRA モデル
−
定量的スクリーニング解析における人的過誤の評価
−
火災シナリオの条件付炉心損傷確率及び炉心損傷頻度
2) 解析結果に基づくスクリーニング
−
定量的スクリーニング解析におけるスクリーニング基準
−
スクリーニングアウトされる火災シナリオ
−
詳細解析の対象となる火災シナリオ
h) 詳細解析のための火災シナリオの設定
87
RK00*:201*
−
同定した火災防護設備
−
同定した火災防護手段
−
同定した設備と手段の考慮すべき性能
2) 詳細解析の対象となる火災源の同定
査
1) 火災防護設備及び手段の同定
−
火災影響範囲の評価方法・評価ツール
−
火災影響範囲の評価方法・評価ツールの適用範囲
−
火災影響範囲の評価で使用したパラメータ(火災源の熱放出率,火災の影響を受ける設備などの
損傷基準など)
−
火災影響範囲の評価条件(火災源及び火災の影響を受ける設備などの設置位置,換気空調設備の
有無など)
−
同定した詳細解析の火災源
公衆
審
3) 火災の影響を受ける設備の同定
−
同定した火災源から影響を受ける設備など
4) 火災による回路故障の影響の同定
−
ケーブル損傷によって影響を受ける回路
−
回路故障により誘発される起因事象及び条件付起因事象の発生確率
−
回路故障により機能喪失する緩和系及び機能喪失確率
5) 火災に起因する人的過誤の同定
−
火災で考慮する人的過誤事象
−
人的過誤事象のグループ化
−
人的過誤確率の評価方法
−
人的過誤確率の評価結果
6) 火災によって誘発される起因事象の見直し
−
新たに抽出した起因事象
−
グループ化した起因事象
7) 詳細解析のための火災シナリオの同定
−
同定した火災シナリオ
−
グループ化した火災シナリオ
8)火災シナリオ発生頻度の評価
−
−
火災シナリオの特徴を表す係数の評価
・
火災源の過酷度因子
・
対象物の損傷時間
・
消火失敗確率
火災シナリオの発生頻度の算出
i) 事故シーケンスの定量化
1) 炉心損傷頻度評価
−
事故シーケンスの定量化手法
−
定量化プロセス
88
RK00*: 201*
見直された火災 PRA モデル
−
復旧操作の確認結果
−
火災シナリオごとの条件付炉心損傷確率
−
火災シナリオごとの炉心損傷頻度
−
定量的スクリーニング解析のスクリーニング基準
−
全炉心損傷頻度
2) 重要度解析
−
機器故障,運転員操作などの重要度
3) 感度解析及び不確実さ解析
感度解析
・
評価結果の不確実さの要因の整理
・
感度解析項目の選定結果及び感度解析の方法
・
感度解析結果
公衆
審
−
査
−
−
不確実さ解析
・
不確実さの要因の選定及び不確実さ(確率分布など)の設定
・
不確実さ解析の方法
・
不確実さ解析結果
j) まとめ
1) 炉心損傷頻度と主要な寄与因子
2) 評価目的に関して得られた知見
89
RK00*:201*
1 この標準の適用について
1.1
この標準の対象とする範囲
査
解 説
原子力発電所の PRA は,確率論を用いてそのリスクを総合的かつ定量的に評価する手法であり,公衆
への放射性物質放出による影響に係る事象に着目して,事故シナリオを想定し定量化することによって,
発生頻度及び影響を評価する。炉心損傷の発生頻度までを評価するレベル 1PRA,これに加えて格納容器
機能喪失の発生頻度,並びにその際の放射性物質の環境への放出の量やタイミングなど(ソースターム)
までの評価を行うレベル 2PRA,さらに,公衆及び環境への影響の発生頻度及び大きさまでを評価するレ
ベル 3PRA に分類される。また,運転状態については,出力運転時と停止時とを区別して PRA を分類し,
想定すべき事象については,その発端となる事象の特性に応じて,ランダムな機器故障及び人的過誤(内
公衆
審
的要因)を対象とする内的事象の PRA と,地震など(外的要因)を対象とする外的事象の PRA とに大
別される。
この標準では,内部火災 PRA を実施するにあたり,有すべき要件及びその要件を満たす具体的方法を
実施基準として規定する。
停止時の内部火災事象,外的要因に起因する二次的な内部火災は,次に示すようにこの標準の対象範囲
外とする。
内部火災 PRA の手法は原理的には出力運転時も停止時も同様であると考えられる。しかしながら,停
止時の内部火災に対する PRA については,現時点では国内での評価実績が存在せず,停止時特有の工程
に伴って様々に状況が変化する事項(プラント状態の分類,人的過誤,火災源,火災区画の変更)と,火
災事象との関係が十分に検討されていない。したがって,定量的評価が困難であり停止時の内部火災はこ
の標準の対象範囲外とする。また,地震による設備損傷などの外的要因に起因する内部火災に対する PRA
についても,現時点では国内での評価実績は存在せず検討課題も多いため,この標準の対象範囲外とする。
なお,本標準は,それぞれの炉型に固有な安全設計上の特徴,機器・システム及び建物・構築物の配置など
を十分に考慮すれば,他の炉型に対しても適用可能である。
1.2
内部火災の定義とこの標準の適用範囲について
内部火災の定義とこの標準の適用範囲を検討するため,原子力発電所で発生する可能性のある火災事象
を,火災源の場所(発電所の内部か外部か)と火災の発生要因(内的か外的か)により,解説表 1.1 に示
す①②③の3通りに分類した。
まず,①については,発生要因が内的要因であり,かつ火災源が発電所内部にあるので,“内部火災”の
定義に適合し,かつこの標準の適用対象である。
次に,②については,火災源が発電所内部にあることから“内部火災”の定義に適合するが,火災の発生
要因が地震などの外的要因であることから,この標準の適用対象外である。
最後に,③については,火災源が発電所外部にあることから“内部火災”の定義には含まれないので,こ
の標準の適用対象外である。
以上より,この標準の“内部火災”の定義に該当するものは,火災源が発電所内部にある①②であり,そ
のうち,この標準の適用範囲は,内的要因起因の①のみである。
なお,東日本大震災の際に女川原子力発電所で発生した高エネルギーアーク故障※1 と考えられる電源盤
90
RK00*: 201*
火災は地震に起因する機器故障が原因であり,外的要因の内部火災(解説表 1.1 の②)に分類される。
※1:高エネルギーアーク故障(HEAF:High Energy Arcing Faults):高電流が通電された導体や通
査
電された電気機器と電位の低い箇所間で発生した高電圧アークにより,熱,光,気化した金属の
放出及び圧力上昇といった形で大きなエネルギーが放出される,アーク発生時の圧力による電気
機器の故障,電源盤火災の熱的影響のみならず,損傷した電源盤の一部などが飛来物となり周辺
機器を損傷させる可能性がある。
解説表 1.1 火災事象の整理
火災の発生要因
内的要因
的過誤などの内的要因によって
発生する火災
② 地震などの外的要因によって発
電所内部の機器などが破損し,
それが原因となって発生する火
公衆
審
火災源の場所
発電所の内部
(内部火災)
① 機器の不具合や保守活動時の人
外的要因
③ 地震などの外的要因によって発
発電所の外部
(外部火災)
1.3
災
−
電所外部で火災が発生し,それ
が発電所内部へ延焼する火災。
この標準の対象とする物理化学現象について
火災発生時には,熱的影響,爆発,高温ガス(煙)などの種々の物理化学現象が発生し得る。これらの
物理化学現象について,この標準で評価対象とする現象を整理し解説表 1.2 に示す。
これらの物理化学現象のうち,火災源から周囲に設置された機器などへの熱的影響(損傷・発火)が評
価対象となる。そこで,本解説ではその他の物理化学現象の扱いについて述べる。
まず,火災の成長に伴い発生する高温ガス(煙)からの影響については,熱的影響及び煙に含まれる微
粒子などの燃焼生成物が機器などに与える影響が挙げられる。熱的影響については火災源からのものと同
様に考慮することとした。煙に含まれる微粒子などの燃焼生成物が電子機器に与える影響については,分
科会において,実験などに基づき,すすなどが接点に付着することによる機能喪失などの可能性が指摘さ
れていることについて紹介があったが,公開されたすすなどの付着による電子機器の機能喪失確率などを
評価する手法がないことから,この標準では考慮しないこととした。このすすなどの付着による電子機器
の機能喪失を考慮することにより,現状の評価においては想定されていない火災シナリオが発生すると考
えられることから,次回以降の改訂の際には最新の知見に基づき見直しなどを行うものとする。
高温ガスからの熱的影響の一つであるフラッシュオーバー現象(蓄積した高温ガスからの放射熱により,
室内の可燃物が一斉発火することで火災が爆発的に拡大する現象)については,直接的にはこの標準で言
及していないが,火災が発生した火災区画を全損とした保守的な仮定に基づき定量的スクリーニング解析
を実施すること,及び詳細解析では,火災源の消火に失敗した場合には,火災区画の可燃物の量及び火災
源と機器などとの空間的な配置などの条件によっては,火災区画内の機器などを全損とした評価になるこ
とから,結果としてフラッシュオーバーによる影響は考慮されることになる。
次に,火災が発生した火災区画以外の火災区画に影響を与える現象として,火災の伝播及び構造用鋼材
の崩壊が挙げられる。火災の伝播については,火災が発生した火災区画からの伝熱による隣接する火災区
画への伝播及び煙によるダクトなどにより接続された火災区画への伝播を考慮することとした。構造用鋼
91
RK00*:201*
材の崩壊に関しては,ASME/ANS 標準(1)では,火災に曝される構造用鋼材が存在し,かつ高危険度火災
源※2 が存在する火災区画が同定された場合には,構造用鋼材の崩壊を含む火災シナリオを選定し,カテ
査
ゴリーⅠでは定性評価,カテゴリーⅡ及びⅢでは定量評価を実施することが要求されているが,構造用鋼
材の崩壊を火災 PRA で考慮した事例については「国内外を問わず見聞したことがない」というのが分科
会委員の意見であった。また,NUREG/CR-6850(2)の Appendix-O “TURBINE GENERATOR FIRES”
などでは建屋構造の損傷に関する説明はあるものの,建屋構造の崩壊までは PRA において考慮されてい
ない。さらに,国内外の原子力発電所における内部火災事例を調査してみても,建屋構造が崩壊した事例
を見出すことはできなかった。以上より,構造用鋼材の崩壊については,この標準では考慮しないことと
するが,構造用鋼材の崩壊を考慮することにより,現状の評価においては想定されていない火災シナリオ
が発生すると考えられることから,次回以降の改訂の際には最新の知見に基づき見直しなどを行うものと
する。
公衆
審
また,爆発的な燃焼を伴う火災として,水素ガスなどの可燃性ガスの燃焼及び高エネルギーアークが挙
げられる。これらの火災が発生した場合,火災源の周囲に設置された機器などは火災源からの熱的影響に
加え,爆発的な燃焼に伴って発生する高温ガスなどによる熱的影響,衝撃波の影響,及び飛来物などの衝
突による影響を受ける(以下,爆発的な燃焼に伴うこれらの影響を爆発的影響という。)。そのため,可
燃性ガスによる火災及び高エネルギーアークによる火災については,他の火災源と同様な熱的影響の評価
に加え,爆発的影響による機器などの損傷を評価することとした。前者の可燃性ガスによる火災について
は,爆発的影響を受ける範囲(以下,爆発的影響範囲という。)を,火災区画の空間形状,火災源が保有
する可燃性ガスの量,火災源と安全上重要な機器との空間的な配置,及び空調系などの緩和システムの信
頼度などのプラントの固有の条件,及び過去の類似の火災事例などに基づき設定し,爆発的影響範囲内の機器
を全損として扱うなどの保守的な評価を実施することとした。この可燃性ガスによる火災の評価の実施に際し,
NUREG/CR-6850(2) の Appendix-N“HYDROGEN FIRES”及び Appendix-O “TURBINE GENERATOR
FIRES”が参考になる。
一方,後者の高エネルギーアークによる火災については,爆発的影響範囲を火災区画の空間形状,電源
盤の容量,電源盤と安全上重要な機器との空間的な配置などに基づき設定し,爆発的影響範囲内の機器を
全損として扱うなどの保守的な評価を実施することとした。この高エネルギーアークによる火災の評価の実
施に際し,NUREG/CR-6850(2) の Appendix-M “HIGH ENERGY ARCING FAULTS”が参考になる。
なお,可燃性ガスの燃焼 1)や高エネルギーアーク故障(3),(4)については,OECD/NEA(経済協力開発機構・
原子力機関)が主導する HEAF(High Energy Arc Faults)プロジェクトなどにより更なる知見の蓄積が図
られている段階にあることから,次回以降の改訂の際には最新の知見に基づき規定事項の見直しなどを行
うものとする。
※2:過酷かつ対応困難な火災を導く可能性がある火災源。高危険度火災源としては次のようなものが挙
げられる。油入り変圧器の故障,引火性または可燃性液体の無制限放出,引火性または可燃性液体
を含む加圧システムからの漏洩,水素またはその他の引火性ガスの大量放出もしくは漏洩。
参考文献
(1) ASME/ANS, “Standard for Level 1/Large Early Release Frequency Probability Risk Assessment
for Nuclear Power Plant Applications (Addenda to ASME/ANS RA-S-2008)”, ASME/ANS
RA-Sa-2009, Febrary, 2009
92
RK00*: 201*
(2) EPRI/NRC, “EPRI/NRC-RES Fire PRA Methodology for Nuclear Power Facilities”,
NUREG/CR-6850, 2005
査
(3) H.P.Berg1and M. Röwekamp, “Chap.7, Investigation of High Energy Arcing Fault Events in Nuclear
Power Plants”, Chap.7 Nuclear Power -Operation, Safety and Environment, ISBN 978-953-307-507-5,
INTECH, July, 2011
(4) OECD/NEA, “OECD FIRE Project - TOPICAL REPORT No. 1, Analysis of High Energy Arcing
Fault (HEAF) Fire Events”, NEA/CSNI/R, 25.June, 2013
解説表 1.2 内部火災 PRA で考慮する物理化学現象とこの標準での扱い
物理化学現象
影響
火災源の熱
内部火災 PRA 標準での扱い
周辺の物資への熱的影響(損傷・発火)を考慮するこ
ととした。
公衆
審
高温ガス(煙)の熱
放射熱及び対流熱
伝達
フラッシュオーバー
煙に含まれる微粒子の発
生
伝熱による火災の伝播
煙による火災の伝播
機器の機能喪失及
び誤動作
放射熱及び対流熱
伝達
直接的に言及していないが,火災が発生した火災区画
を全損とした保守的な仮定に基づき定量的スクリーニ
ング解析を実施すること,及び詳細解析では火災源の
消火に失敗した場合には,火災区画の可燃物の量及び
火災源と機器などとの空間的な配置などの条件によっ
ては,火災区画内の機器などを全損とした評価になる
ことから,結果としてフラッシュオーバーによる影響
は考慮されることになる。
煙に含まれる微粒子などによる電子機器への影響につ
いては,公開されたすすなどの付着による機能喪失確
率などを評価する手法がないことから,考慮しないこ
ととした。
隣接する火災区画への火災の伝播を考慮することとし
た。
ダクトなどにより接続された火災区画への火災の伝播
を考慮することとした。
ASME/ANS 標準で要求されているが,構造用鋼材の崩
壊を火災 PRA で考慮した事例については「国内外を問
わず見聞したことがない」というのが分科会委員の意
見であること,NUREG/CR-6850 では建屋構造の損傷
構造用鋼材の崩壊
建屋,及び火災区
画の崩壊
に関する説明はあるものの,建屋構造の崩壊までは
PRA において考慮されていないこと,さらに,国内外
の原子力発電所における内部火災事例を調査してみて
も,建屋構造が崩壊した事例を見出せなかったことか
ら,考慮しないこととした。
可燃性ガスの爆発
高エネルギーアーク
放射熱,対流熱伝
達及び飛来物の影
響
爆発的な燃焼に伴って発生する飛来物などの影響につ
いては,その影響が及ぶ範囲を爆発的影響範囲として
設定し,爆発的影響範囲内に含まれる機器などを全損
と扱い,保守的に評価することとした。
93
RK00*:201*
2 プラント情報の整理
2.1
内部火災 PRA 標準の火災区画について
査
火災区画は,火災のプラントへの影響を適切に考慮するために,内部火災 PRA 実施時に設定する便宜
上の評価単位であり,
「軽水型原子炉施設の火災防護に関する審査指針」
(以下,旧火災防護指針)におけ
る火災区域とは,その設定の目的が異なる。この標準における火災区画と旧火災防護指針における火災区
域の違いについて,解説表 2.1 及び解説図 2.1 に示す。
解説表 2.1 火災区画について
用語の説明・定義
設定の目的・使用方法
備考
この標準では,内部
設定した火災区画は以下のようにプラント情報の整理
旧火災防護指針類
と評価の単位区画として使用される。
に「火災区画」とい
際に,評価のために
① 区画ごとの火災源の種類,位置,数量の整理
う用語はないが,プ
設定する区画。
(本文
② 区画ごとの火災の影響を受ける可能性のある設備の同
ラントによっては火
定・整理(火災により起因事象を誘発する可能性のある設
災防護設計の用語と
備と火災により影響を受ける可能性のある起因事象の緩
して使用している例
和設備の同定・整理)
がある。火災防護設
公衆
審
火災 PRA を実施する
の 6.1 項にて設定)
本文 3.章の定義は
以下のとおり。
「火災のプラントへ
③ 火災シナリオを設定する際の単位区画
計にて「火災区画」
の影響を適切に考慮
④ 火災発生頻度を算出する際の単位区画
という用語を既に使
するために内部火災
⑤ シナリオスクリーニング時の評価単位区画
用しているプラント
PRA 実施時に設定す
内部火災 PRA を実施する際には,火災防護設計にて設
*1
では,内部火災 PRA
る便宜上の評価単位
定されている火災区域
を流用するか,火災区域をベース
用の区画と火災防護
区画」
として,内部火災 PRA として評価し易いように一部を変
設計上の区画を混同
更するケースが多くなると思われる
*1
*2
。
しないよう注意が必
要である。
火災区域とは
・ 定義:旧火災防護指針での定義は,耐火壁,隔壁,間隔又は,それらの組み合わせによって,他の区
域と分離され,火災防護の見地から,1つの単位と考えられる空間。
・ 火災区域に関する要求事項:旧火災防護指針の記載を要約して以下に示す。
① 安全機能を有する構築物,系統及び機器を含む区域のうち,火災の影響を受けるおそれのある所で
は,適切な区画により火災区域を設定する。
② 各火災区域について,以下の何れかの方法で隣接区域間及び火災区域内の延焼防止・火災影響軽減
を行う。
a.耐火壁
b.耐火壁,隔壁,間隔及び消火装置の組合せ
③ 以下の a 及び b を満足するように,隣接区域間及び火災区域内の延焼防止及び火災影響軽減を行う。
(火災時のプラントの高温停止・低温停止機能を確保する。
)
a.火災による原子炉外乱発生時に単一故障を想定しても高温停止できること
b.火災により低温停止機能を失わないこと
*2
火災区画の設定における火災区域の流用,火災区域をベースとした火災区画の設定
火災区域は上記*1 に示したとおり,火災時のプラントの高温停止及び低温停止機能確保を目的に設定
94
RK00*: 201*
している。内部火災 PRA では,炉心損傷防止の可否の評価を目的に火災区画を設定する。火災区域と火
災区画は設定の目的が異なるが,プラントの高温停止に必要な設備と炉心損傷防止に必要な設備は重複し
査
ている設備が多いこと,及び火災区域単位で火災防護設計の情報(例えば,火災区域間の影響軽減対策や
各火災区域内の設備の情報)が整理されていることから,火災区画の設定にあたって,火災区域を流用す
るか,火災区域をベースとして一部を内部火災 PRA 用に変更することが実作業としては効率的と考えら
れる。
(解説図 2.1参照)
ポンプ F
(火災時のプラント
の高温停止・低温停
止に不要。事故時の
炉心損傷防止にも不
要。)
ポンプ G
(火災時のプラ
ントの高温停
止・低温停止に
不要。
事故時の炉心損
傷防止に必要。)
公衆
審
ポンプ E
(火災時のプラントの
高温停止・低温停止に
不要。事故時の炉心損
傷防止にも不要。)
ポンプ A
(火災時のプラン
トの高温停止・低
温停止に必要。ま
た、事故時の炉心
損傷防止に必要。)
ポンプ B
(火災時のプラン
トの高温停止・低
温停止に必要。ま
た、事故時の炉心
損傷防止に必要。)
(プラントの
高温停止・低温
停止に必要な
ケーブルの敷
設エリア。事故
時の炉心損傷
防止に必要な
ケーブルも敷
設されてい
る。)
ポンプ H
(火災時のプラ
ントの高温停
止・低温停止に不
要。
事故時の炉心損
傷防止に必要。)
ポンプ C
(火災時のプラントの
高温停止・低温停止に必
要。事故時の炉心損傷防
止にも必要。
)
ポンプ D
(火災時のプラントの
高温停止・低温停止に
必要。事故時の炉心損
傷防止にも必要。)
太線の実線は耐火壁による火災区域の境界。火災区画の境界として流用
太線の破線は隔壁による火災区域の境界。火災区画の境界として流用
太線の一点鎖線は隔壁による火災区画の境界
(内部火災 PRA 用に火災区域の境界を流用するだけでなく,新たに区画の境界を設
定した例)
破線は火災防護設計上の火災区域の境界としても内部火災 PRA 上の火災区画の境
界としても期待していない隔壁
解説図 2.1
火災区画の設定例
① 火災区域は太線(耐火壁を表す)及び太い破線(隔壁を表す)を境界として設定されている。
なお,ポンプ E,F,G,H は,火災時の高温停止・低温停止に必要な設備ではないので,ポンプ E,F,G,H の
部屋は一つの火災区域とし,プラントの高温停止・低温停止に必要なケーブルの敷設エリアとは,間隔・
隔壁で分離している。また,ポンプ C,D 間は間隔・隔壁にて火災の影響軽減をし,周囲とは耐火壁で分
離している。
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② ポンプ G とポンプ H は,火災時のプラントの高温停止・低温停止に必要ではないが,炉心損傷防止に
必要な設備なので,内部火災 PRA では火災による損傷に着目する必要がある。このため,ポンプ F,G,
査
H の間の隔壁を境界として内部火災 PRA のため火災区画を設定した。
なお,解説図 2.1 では,記載を単純にするため,起因事象の発生に係る設備は記載していない。実際の
火災区画の設定では起因事象の発生に係る設備の配置も考慮する。
2.2
火災源の同定
火災源の同定において,「設備故障起因の火災事象,及び人為的事象」について以下に示す。
“設備故障起因の火災事象”としては,原子力発電所内に設置されている設備の火災によって緩和設備に
影響を与える可能性のある事象(火災によって起因事象を発生する事象も含む)が対象となる。例えば,
公衆
審
燃料油を貯蔵しているタンクまたは電源盤などの設備故障の火災が対象となり,火災箇所は設備の運転経
験情報及び設備設計情報に基づき,火災を仮定する。
火災の”人為的事象”としては,溶接などの火気を伴う保守作業において,一時的に持ち込まれた可燃物
に引火する事象が考えられる。このような”人為的事象”は,評価対象とするプラントの運用情報,運転経
験情報などを考慮しながら,火災源を選定する。具体的には,プラントの運転経験情報として,火災発生
事例などを摘出し,その火災の程度及び発生要因などを分析する。
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