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2011年1月1日 用語の決定PDF

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2011年1月1日 用語の決定PDF
放送用語委員会(東京)
用語の決定
平 成 22 年 9月24日( 金 )に 放 送 センターで 第
1336 回放送用語委員会が開催された。
現在,放送用語班では,NHK の放送での漢字
・二次感染 *そのほか,
「二次被害」
「二次災害」なども漢数字
*ただし「1 次試験」
「2 次試験」は算用数字のまま
表記を掲載している『NHK 新用字用語辞典』の改
・二重衝突 訂作業をすすめている。
『新用字用語辞典』の掲
・二期作 載内容を国が新しく定める予定の「常用漢字表」に
・二毛作 合わせたものに切り替えるための作業である。ま
・一輪車・二輪車・三輪車・四輪車・四輪駆動車
た,この機会に表記を変更したほうがよいと考えら
れる語を変更し,掲載することにしている。新しい
「常用漢字表」に採用予定の漢字を放送でどのよう
に扱うかについては,すでに,放送用語委員会で
審議・決定している
(くわしくは,
『放送研究と調査』
2010 年 8,9月号参照)。
*ただし「4WD」は算用数字のまま
・東京六大学 ・一眼レフ・二眼レフ ・六・三制(六・三・三制)
今回提案した語は,現在 NHK の放送では算用
数字で表記している語である。それを漢数字に変
今回の放送用語委員会では,数字の書き表し方
更する提案を行った。いずれも縦書き・横書きに関
や,特例表記として放送で使うことを認める語など
係なく,語として漢数字で書くことが定着している
について「用語の決定」を行った。決定された語と
と考えられるもので,新聞社・通信社も同様の表記
決定内容は次のとおりである。
を使っている。
放送では,テレビ画面の構成上,横書きの字幕
1.用語の決定
が中心であり,数字は算用数字を中心にしている。
漢数字に変更する語
一方,新聞社・通信社は縦書きのため,漢数字を
・非核三原則 中心にしていた。近年,インターネットや携帯電話
・三原色 例:光の三原色,色の三原色 へのニュース配信が始まり,新聞社・通信社でも横
・第三セクター 書きニュースが配信されるようになった。また,縦
・百条委員会
書きであっても算用数字のほうが読みやすい場合も
*ただし,条文を表す「地方自治法 100 条」は算
用数字化がすすみ始めた。
用数字)
・一合升
こうした算用数字化の動きの中でも,新聞社・通
*ただし,酒の分量を言う場合で数字が増えるよう
信社が漢数字を守っている語がある。漢数字を使
な場合は算用数字(例:1 合,2 合,3 合・・・)
う慣用のある語である。こうした語で NHK の表記
・一升瓶 が算用数字になっているものを再検討し,いくつか
*ただし,酒の分量を言う場合で数字が増えるよう
を漢数字に変更することとした。NHK の放送で使
な場合は算用数字(例:1 升,2 升,3 升・・・)
う数字は,横書き字幕の場合は,原則として,算
*「四斗だる(しとだる)」は漢数字のまま)
・従三位など位階は漢数字 86
あることから,新聞社・通信社でも数字表記の算
DECEMBER 2010
用数字であることには変更はない。
算用数字・漢数字両用認める語
・新嘗祭 ・第1党(「第一党」とも)
・幕内 《相撲》
(読み:まくのうち)
*ただし,
「幕内 《芸能》読み:まくうち」
表記の決定(一般用語)
「幕の内 ~弁当」
・①陰うつ
②陰鬱
いずれも表外字および表外音訓であり,本来は
・①うっ血
②鬱血
放送では使わない漢字である。これまでは交ぜ書
・①うっせき ②鬱積
きまたは代用の漢字を使用していたが,特定の分
・うっそう〔鬱×蒼〕
野で使われる語であり,また,新聞社・通信社も
・うっとうしい〔鬱陶〕
読みがなをつけるなどして漢字を使用している。こ
・うつ(状態)
〔鬱〕
うしたことから,NHK の放送でも漢字または読み
・うつ病〔鬱〕
がなつきで使用できるようにする。
・①うっぷん ②鬱憤
・そううつ病〔×躁鬱〕
表記と読みの決定
・①沈うつ
②沈鬱
・憧憬
・①憂うつ
②憂鬱
表記「憧憬」
「常用漢字表(新)
」に「鬱」が採用される予定だが,
これまでにNHK が行った調査の結果,
「鬱」をひら
がなで表記したいという人が多いことがわかってい
発音
ショーケイ(本来の読み)
ドーケイ(慣用読み)
*できるだけ「憧れ」
「憧れる」などと言いかえる
る。このため,原則として「鬱」のつく語は「①ひら
・貼付
がな②漢字」とした。ただし,
「そううつ病」
「うつ病」
表記「貼付」
など病名に関係する語は,当面はひらがなとし,医
発音
チョーフ(本来の読み) 学界や社会の動きも見て検討する。また,語源と漢
テンプ(慣用読み)
字のかかわりがわかりにくい「うっとうしい」や「蒼」
が表外字で,
「鬱」を漢字で書いても交ぜ書きになっ
てしまう「うっそう」はひらがな表記とする。
*できるだけ「貼る」
「貼り付ける」などと言いかえる
「常用漢字表(新)」に,
「憧」
「憬」
「貼」が採用さ
れる。そのため,NHK でも「憧憬」
「貼付」を漢字
で表記することができるようになる。
・大家〔屋〕 アパートの~ ・割 ~に合わない 読み方は,
「常用漢字表(新)」では,いずれの語
も本来の読みを用例にし,慣用読みも備考に示され
現在の『新用字用語辞典』では,
「おおや」
「割り
ているが,文研が行った調査の結果,一般には慣
に合わない」と書くことになっている。
「大屋/大家」
用読みが多く使われていることがわかった。放送で
という2とおりの表記がありうることと,
「大家」では
は,これらの語が定着するまでの間,いずれの読
「たいか」と読む場合があることが理由である。しか
み方も認め,「本来の読み」
「慣用読み」という説明
し,新聞社・通信社でも「大家」と書いており,
「た
を入れることにしたい。なお,この語を知らない人
いか」とは使う場面が異なり,誤読することは少ない。
も多いことから,
「憧れる」
「貼り付ける」など言いか
また「割り/割」は国が決めた送りがなを省く例の1
えることをすすめる。
つと考えられ,国の決まりのとおり「割」とする。
使い方の変更
表記の決定(特例)
・校倉 ~造り ぎ がく
・伎楽 きょうかい
・教誨(教え諭すこと)
さん しん
・三線 ・立 て直し( 一 般 用 語 )計 画の ~。 形 勢 の ~。
赤字経営の~。財政の~。
・建て直し(建築)家の~。社屋の~。
新聞社・通信各社に合わせて,
「立て直し」は一般
用語,
「建て直し」は,建築の場合と使い方を定める。
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2.そのほかの議題
らがな②漢字」とした。昭和 56 年当時に比べると,
・数字の書き表し方の原則
漢字で書くことが多くなっていると考えられる語は
『新用字用語辞典』の原則にある「数字の書き方」
に次の文言を入れる。
原則として,左横書きの場合は,算用数字を用い,
縦書きの場合は,漢数字を用いる。
ただし,横書きの場合でも,慣用として,漢数
字で書く語もある。また,縦書きの場合でも,
数量や年月日,時刻などを算用数字で書くことも
ある。
「漢字表記を優先させる語」とした。また,同じ表
記で 2 とおりの読みがあり,誤読のおそれがあると
考えられるものは「ひらがな表記」とした。
なお,改訂版の『新用字用語辞典』に漢字で書く
ように示している語は「漢字で書かなければいけな
い」のではない。
「かな表記」のほうが放送ではわか
りやすいと判断した場合は,かなで書くこととする。
「漢字で書ける語」として示した語であっても,ひら
がなで書くことを「禁止」するわけではない。
放送用語委員会では,平成 20 年 2月に「数字の
書き方」について審議した。その際,
「左横書き・
算用数字」
「縦書き・漢数字」とすることを再確認し
た注)。しかし,その後,平成 21年 3月から共同通
・字体について
『新用字用語辞典』
(第 4 版)では,「常用漢字表
(新)」に示された字体をもとにした。
信社,時事通信社で,縦書き・算用数字化が採用
ただし,放送で使用する字体は,多様な字体が
されるなど,新聞・通信各社では,縦書き・算用数
使われる可能性があり,当分の間は特に規制しない。
字化が使われるようになっている。
「縦書き・漢数字」
考え方は以下のとおりである。
という原則だけを示すことが現実的ではない状況に
ある。
「常用漢字表(新)」では,追加された 196 字の
そのため,NHK でも,場面によっては縦 書き・
漢字は,表外から表内に移っても字体を変えること
算用数字を使うことがある,ということを明記する
なく「表外漢字字体表」の「印刷標準字体」と「人
必要があると考える。
名用漢字字体」をそのまま通用字体として掲げてい
る。ただし,
「曽」
「痩」
「麺」の 3 字については,
「表
・
「許容」の表記について
『新用字用語辞典』には,初版(昭和 56 年)から
「許容の表記」が示されている。たとえば,
「ことば」
は,
「言葉」と漢字で書く場合があるが,放送では
外漢字字体表」の「簡易慣用字体」を使っている。
『新用字用語辞典』
(第 4 版)でもほぼこの考え方
による字体を載せることとする。
NHK が独自に先行して使ってきた漢字の一 部
「ことば」を優先させ,
「言葉」という表記も「許容」
(
「賭」
「餌」
「謎」など)は表外字ではあったが,こ
するというものである。おもに,漢字表記が当て字
れまで「常用漢字表」の表内漢字に近い字体を使っ
と考えられるものや,ひらがなで書く慣用の強い「副
てきた。しかし,今回「常用漢字表」に採用された
詞」などの語を「許容」とした。
ことにより「常用漢字表(新)」の原則どおり,これ
昭和 56 年に現在の「常用漢字表」が告示された。
それまで使われていた「当用漢字表」から切り替わ
らの漢字も「表外字漢字字体表」の「印刷標準字
体」どおりの字体に変えた。
る際に,すでにひらがな表記で書く慣用が定着し
「表外漢字字体表」とは,平成 12 年12月8日に
ている語がいくつかあり,それらを一気に漢字表記
国語 審議会から答申されたものである。全部で
に変更すると違和感が生じると考え,一部「許容」
1,022 字。このうち22 字については,簡易慣用字体
として,ひらがな表記と漢字表記両方を示したので
も示している。
ある。
今回,
「常用漢字表(新)
」が示されるにあたって,
『新用字用語辞典』の「許容の語」を見直すことと
した。現在「許容」になっている語の多くは,
「①ひ
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3.議論
議論は,
「数字の書き方」が中心であった。以下
語」というのは世間の動きに逆行する。
「数字の書
き方」について,以前,用語委員会で議論したとき
にまとめる。
も算用数字を増やす意見が多かった。一般人の表
天野祐吉委員:提案に異論はない。全体的に,統
記をみると,熟語・成句を除くと,算用数字が
一をするという考え方には反対はしないが,実際は
増えている。学生は,熟語・成句でさえも算用数
難しいだろうと思う。たとえば「ひとりもいない」は
「1
字を書くようになってきている。今,漢数字にして
人」「一人」「ひとり」どの表記だろうか。では「ひ
おいても,近いうちにまた見直すことになる。
「表記
とりとしていない」になるとどうなるだろう。
「全然
を変更」ではなく,漢数字と算用数字,両用認めて,
いない」という意味で,単純に人数を表すものとは
様子を見るほうがいいのではないか。
異なると考える人もいるだろう。最終的には使う人の
野村雅昭委員:NHK は縦書き・横書きどちらを原
考え方によって,表記が違ってくる。その場合,テ
則とするのかをどこかで明確にしたほうがよいと考
レビを見ていて,同じことばが違う表記で書かれて
える。新聞は縦書きを原則にしている。縦書きを原
いると,気になる人もいるかもしれない。そういう点,
則にしているのに,算用数字が増えているのが最近
決めがないと混乱するようにも思う。不統一感が画
の傾向である。NHK の方針は,なるべく新聞に歩
面に出なければよいなと思う。
調を合わせるという考え方をとっている。これまで
清水義範委員:大きな流れとしては,今回の提案に
の『新用字用語辞典』は新聞とかなり違っていたが,
異論はない。
「数字」の原則には,
「原則として」と
それを合わせようということのようだ。NHK の場合
書かれている。言外に「原則」にはずれるものもあ
は横書きだが,新聞に歩調を合わせるということで,
るということがわかる。その点,
「原則とは違う場合
やや漢数字が多くなっている。そこが矛盾している
もある」ということをわざわざ書いているのがわかり
ように思う。マスコミの中で,あえて異論を唱えるの
にくい。数字の書き方は,自分で書く場合にも迷う。
ではなく,合わせていくということであれば,この
「ひとり」などは,いろいろな表記が出てきてしまう。
原案に賛成したい。新聞は今後も永久に縦書きで
原則を含めて例外を教えてあげて,絶対なものでは
いくと考えているのか,横書きになると考えるのか,
ない,というふうにしておくしかない。今回の改定
それによって考えるべきだろう。むしろ,新聞や教
でのルールはこれ,次の改定ではまた少し変えると
科書のほうに考え直してもらいたい。
いうふうにやっていくしかないだろう。
荻野綱男委員:全体としては賛成である。
「数字の
書き方」の原則は提案のままでもいいだろうと思う。
(そのほか)
そのほか,相撲の「幕内」の読みと表記について,
数字の書き方はどう決めても違和感がある。現在,
意見があった。当初,相撲の場合は「幕内」と書い
多くは横書きであり,パソコンなどの変換の問題も
て「まくのうち」と読む慣用があり,これに従うこと
あり,算用数字が増えているように感じる。ただ,
にする,という提案だった。しかし,委員からの意
無制限に算用数字というわけにはいかない。今回
見があり,
「特例」とすることにした。
のようにルールを決めて,なるべく迷わないようにし
山下洋子(やました ようこ)
ておく必要はあるだろう。
「ひとつ」の表記がいろ
いろになって困った経験がある。
「ひとつ,ふたつ」
と和語を使う場合には,算用数字に違和感があっ
た。
「ひとり」の場合はどうだろうか?「ひとり」は
和語なので「一人」とすると決めても,
「さんにん」
は漢語なので,
「3 人」と表記するべきだろうか?
どれが正解というのはない。当面どうするかを決め
るということでいいと思う。
井上史雄委員:提案の「漢数字に表記を変更する
注)山下洋子(2008)
「数字の書き方について(第
1306 回放送用語委員会)
」
『放送研究と調査』第
58 巻 4 号
第 1336 回放送用語委員会(東京)
【開催日】平成 22 年 9 月 24 日(金)
【出席者】天野祐吉 氏,井上史雄 氏,荻野綱男 氏
清水義範 氏,野村雅昭 氏
岩澤忠彦 放送文化研究所長 ほか
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