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板ガラス用バイオフィルム抑制 コーティング膜の開発

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板ガラス用バイオフィルム抑制 コーティング膜の開発
研究課題名
板ガラス用バイオフィルム抑制
コーティング膜の開発
鈴鹿工業高等専門学校
材料工学科 幸後 健
背景 ~太陽光発電事業の計画~
※(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構NEDO 太陽熱発電の技術の現状とロードマップより
※(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構太陽光発電ロードマップ(PV2030+)より
太陽光発電を普及させる課題
〇太陽光,太陽熱発電設備の効率化
セル高効率化,生産の低コスト化
→革新的な技術改革が必要であり莫大な費用がかかる
〇太陽光発電運用に関して
発電低下抑制,ランニングコスト低下, 施工費用低減
→特に人件費に掛かる費用の割合が大きい
採算のためには施工初期の発電能力を長期間
低コストで維持させることが重要
問題:汚れの付着による発電効率の低下
ガラス基板の透過率経年変化
~
~
~
~
~
~
~
~
奈良県農業試験場研究報告 第14号 1983年
日射透過率で見ると年間1~2%程度、汚れの付着により低下
太陽熱発電や太陽光発電での
エネルギーロスはさらに増える
透過率低下による各発電エネルギーロス
太陽熱の場合:鏡の反射=(透過率)の二乗、汚れによる散乱による集光性の低下
太陽光発電の場合:特に直列回路での電流の大幅な低下
-目的-
板ガラスの透明度を維持しながら、汚れが付着し
づらいガラスコーティング材料を開発し太陽光発電
の効率低下を抑制させる
汚れの固着原因はバイオフィルムが鍵?
バイオフィルムとは微生物細菌が作り出す膜である。
粘着性のある多糖類膜で出来ているために周辺の汚れ成分を蓄
積しやすく、汚れが固着して光透過率が透過すると考えられる。
海岸に3か月暴露のガラス
バイオフィルム中の細菌を
クリスタルバイオレットで染色
金属材料を用いた
細菌やバイオフィルムに対する効果の報告
H. Kanematsu, et.al. Bulletin of The Iron and steel Institute of Japan (Ferrum), 13, 27 (2008)
T.Kougo et.al Thermal Spray Conference
and Exposition (ITSC) 2013,
イオン化した金属やイオン化する際の電子の授受などで
抗菌効果,バイオフィルム抑制効果を示す
根本的な問題として
金属材料では光が透過しない
~新技術の提案~
-シラン系樹脂にバイオフィルム抑制材料
を均一に分散・添加させ光透過性を有した
バイオフィルム形成抑制材料を作製する-
バイオフィルム形成材料
~試料の作製手順~
ガラス上に前駆体を
塗布し重合
シラン樹脂前駆体に
バイオフィルム抑制材料を分散・添加
ガラス基板上に
20μm程度の製膜
重合を繰り返す
ことで硬化
防汚性ガラス評価実験各種
①循環型バイオフィルム
加速形成装置
・短期間でバイオフィルムが
形成し汚れ固着の評価ができる
②擬似暴露試験装置
・水‐空気の暴露をサイクル的に実施、
実環境の湿潤‐乾燥を再現
・バイオフィルム形成速度はゆるやか
・サンプルは常に水中にあり
湿潤雰囲気での評価だけである
③海岸暴露
・実環境下での暴露試験
・評価時間が長い
評価方法について
透過率測定
バイオフィルム
加速形成装置
300~1000nm
ガラス基板を取
り出す
クリスタルバイ
オレット粉末
蒸留水
クリスタルバイオ
レット水溶液の調製
20分間浸漬
蒸留水でよくリンス
バイオフイルム加速試験試料
No
有機金属
試験片
1
ガラスのみ
2
3
4
5
6
ガラス+コーディング材料のみ(バ
イオフィルム抑制材料添加なし)
有機Ti
有機Sn
有機Ni
有機Ag
チタンイソプロポキシド
ジブチルスズジアセテート
銅(Ⅱ)イソプロポキシド
ニッケル(Ⅱ)アセチルアセトナート二水和物
銀アセチルアセトナート
試験片
No
7
有機Cu
8
9
10
11
12
ナノパウダーTi
ナノパウダーSn
ナノパウダーNi
ナノパウダーAg
ナノパウダーCu
金属ナノパウダー
チタンナノパウダー
スズナノパウダー
銅ナノパウダー
ニッケルナノパウダー
銀ナノパウダー
循環型加速装置による試験結果
~クリスタルバイオレットによる染色写真~
①ガラス(コーティング加工前) 、③有機Ti、④有機Sn、⑥有機Ag、⑦有
機Cu、⑫nano Cu、バイオフィルムの増殖が抑制された。
循環型加速試験による試験結果
~分光光度計による透過率測定結果~
1
2
3
4
5
6
6
7
8
9
10
11
12
有機Ti,Sn,Ag,CuおよびナノパウダーCu分散膜は、
バイオフィルム抑制効果があり、光透過率低下が抑制
ただしフロートガラスに比べてまだ低い
ガラス基板
標準品
有機Ti
有機Sn
有機Ni
有機Ag
有機Ag
有機Cu
Tiナノ
Snナノ
Niナノ
Agナノ
Cuナノ(再必要
透過率を向上するために
①ガラス基板と試料の密着性向上(剥離抑制効果も)
→試料とガラス界面の屈折が影響
↓
ガラス基板表面の特性改善をはかる
②試料平滑性の向上
→表面の凹凸があるとバイオフィルムが
成長しやすい
↓
添加剤増加による製膜時の試料流動性改善
防汚膜剥離抑制の検討
防汚膜
接着部分の物理的・化学的表面改質
ガラス
●紙やすり(800番)湿式研磨
●フッ化水素酸によるエッチング
OH OH
OH OH
●親水処理(アンモニア:過酸化水素)
ガラス(未処理)
CH3 CH3
CH3 CH3
●疏水処理(ジシラザン)
擬似暴露試験(湿潤‐乾燥)による剥離評価試験の結果
サンプル名 表面処理条件 剥離耐久性
処理な し
○
ヤスリ
×
Sn
フッ酸処理
○
疎水処理
○
親水処理
○
処理なし
×
ヤスリ
×
Cu
フッ酸処理
×
疎水処理
×
親水処理
○
処理な し
○
ヤスリ
×
Ag
フッ酸処理
×
疎水処理
×
親水処理
○
●親水性処理によってガラスとの密着性が向上
Sn系での抑制剤添加量による効果
透過率T% / 透過率変化(14day/0day)
120
530nmにおける透過率および変化率
100
No.
80
60
40
サンプル名
1
glass
-
4
Sn(IV)acetylacetonate
0.1mol%
16 Sn(IV)acetylacetonate
0.5mol%
17 Sn(IV)acetylacetonate
1.0mol%
20
0
1
0day
4
水循環式加速試験
14day
16
金属濃度
17
変化率
14day/0day
金属の添加量増やすことで膜表面が平滑になり、
ガラスよりも透過率低下が抑制された。
➡バイオフィルム形成抑制効果が向上
長期加速試験(1か月)結果
530nmにおける変化率
透過率変化/T%(1month/0day)
80.0
74.1
60.0
40.0
39.7
33.0
20.0
No.
サンプル名
1 glass
0.0
1
21
金属濃度 表面処理
-
-
21 Sn(IV)acetylacetonate 1.0mol%
親水処理
22 Ag(I)acetylacetonate
親水処理
1.0mol%
22
長期加速実験により、さらに効果が顕著に表れた
砂粒付着による透過率観察
砂粒については、JIS Z 8901 1の 3 種を使用
日本粉体工業技術協会
( 2006. 7.20. )
砂粒付着による透過率観察結果
~ JIS Z 8901 1の 3 種による防汚性評価試験~
530nmにおける変化率
100.0
透過率変化/T%(試験後/試験前)
86.4
81.5 83.0
80.0
68.1
61.6
60.0
No.
89.7
62.9
53.5
40.0
79.4
28.6
20.0
0.0
1
2
3
4
5
6
7
サンプル名
金属濃度 表面処理
1 glass
-
-
2 金属なし
-
-
3 Ti(IV)butoxide
0.1mol%
-
4 Sn(IV)acetylacetonate
0.1mol%
-
5 Ni(II)acetylacetonate
0.1mol%
-
6 Ag(I)acetylacetonate
0.1mol%
-
7 Cu(II)isopropoxide
0.1mol%
-
12 nanopowder Cu
0.1mol%
-
21 Sn(IV)acetylacetonate
1.0mol%
親水処理
22 Ag(I)acetylacetonate
1.0mol%
親水処理
12 21 22
未被覆のガラス比べてSn,Ti,Ag,Cuのいずれも砂粒の付着による
光透過率低下が抑制 →(静電的反発などが予想、現在調査中)
暴露試験~海岸2か月~
ガラス
Ni有機
ガラス
Ni粒子
Ag有機
Sn有機
Cu有機
Ti有機
Ag粒子
Sn粒子
Cu粒子
Ti粒子
有機系はNi,Agが白色・黄色劣化
粒子系はCu以外が白色・黄色劣化
Sn,Ti有機系及びCu粒子が耐久性として実用的
まとめ
最終的に提案する防汚ガラスの被覆技術
〇金属のアルコキシドあるいはアセテート化合物を
シラン系樹脂に分散させることでバイオフィルム形成抑制
を有した高い光透過率材料ができた
〇チタン、銅、すず、銀などの金属元素がバイオフィルム形成抑制には
効果的である。特に紫外線などの劣化を考慮するとすずやチタンが良い。
〇親水性処理したガラス基板を用いることで、被覆材料とガラス
の密着性が向上
謝辞
本研究は独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
(NEDO)の委託により実施された。
改めてここに感謝の意を表明する。
採択テーマ
「 バイオ技術活用の防汚鏡と低バックラッシ*機構により
ライフサイクルコストを最小化する集光装置(ヘリオスタッ
ト)の開発」
出願特許
兼松秀行、幸後健、野田美和、和田憲幸、水越重和、佐野勝彦:特願2014‐36716
(出願者:国立校等専門学校機構、株式会社ディーアンドディー)
平成26年2月27日 日本特許庁
関連論文・発表など
T.Kougo, H.Kanematsu, S.Tasaki, S.Kirihara,
"Unti‐Biofouling of Metal On Glass Substrate Deposited by Thermal Spray",
International Thermal Spray Conference and Exposition (ITSC) 2013, 5/13, 2013.
他16件
問い合わせ
担当教員 幸後 健
鈴鹿工業高等専門学校
材料工学科 助教
Phone: 059‐368‐1849
Mail :[email protected]‐ct.ac.jp
産学官連携コーディネータ(兼任)
井上 哲雄
鈴鹿工業高等専門学校
材料工学科 嘱託教授
Phone:059‐368‐1629
Mail :[email protected]‐ct.ac.jp
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