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ファイザー株式会社の研究所を前身と する創薬型ベンチャー企業

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ファイザー株式会社の研究所を前身と する創薬型ベンチャー企業
医薬品 / 日本
2011 年 7 月 20 日
ラクオリア創薬
新規公開
4579:JASDAQ
ファイザー株式会社の研究所を前身と
する創薬型ベンチャー企業
• 医薬品開発過程における「探索」から「POC」(ヒトでの開発
コンセプトの確認)までを事業領域とする
• 大和証券CM(以下、大和)では、“化合物を継続的に創り出せ
ること”が同社の強みだと考える
• 当面は営業損失が続く見込みだが、長期的な業績拡大ポテンシャ
ルは非常に大きいと大和ではみている
岩朝
亮忠 金融証券研究所
ƒ Background
ファイザー株式会社(Pfizer Inc.
の日本法人)の旧中央研究所を前身
として、2008 年2月に設立。医薬品
開発過程における「探索段階」から
「POC」までを事業領域とする。
低分子医薬品の創薬に特化してお
り、ファイザー中央研究所時代から
の強みである「疼痛疾患」と「消化
管疾患」をコア領域としている。特
に、米国イーライリリー社と共同研
究契約を締結したことからも、イオ
ンチャネル関連における同社の創
薬力はグローバルにみても高い水
準にあると考えられる。
ƒ Highlights
大和では、同社の強みは“化合物を
継続的に創り出せること”だと考え
る。開発品目の増加により、①個別
プロジェクトの成否が業績に与え
る影響が相対的に低下していくこ
とから業績の安定感が増していく
と考えられ、また、②長期的な事業
の拡大・発展が期待できる。
ンプ拮抗剤。EP4拮抗剤は検討さ
れている適応症が多岐に渡ること
などから、将来の収益ポテンシャル
が最も大きい開発品目群だとみて
いる。また、アシッドポンプ拮抗剤
については、消化管領域のグローバ
ルの市場規模が非常に大きいこと
から、他剤との差別化に成功すれば、
末端売上高 1,000 億円以上も十分に
狙えると考える。
公開要項
公開日
2011 年 7 月 20 日
公開株式数
公募:4,000,000 株
OAによる売出:600,000 株
発行価格
1,600 円
引受証券
大和証券CM:75%、野村:10%
みずほ 3%、SMBC 日興:3%
SMBC フレンド:1%、藍澤:1%
いちよし:1%、三菱 UFJ:1%、エース:1%
SBI 証券:1%、東海東京:1%
JP モルガン:1%、岡三:1%
How do we justify our view?
は会社概要
会社概要
設立年月日
2008 年 2 月 19 日
本社所在地
愛知県知多郡武豊町字 5-2
URL
http://www.raqualia.co.jp
代表取締役社長
長久
発行済株式数
13,267,200 株(公開後)
株(公開時)
厚
売買単位
100 株
資本金
5,529,850
8,489,850 千円
千円(公開時)
(11/3/31 現在)
従業員数(非連結)77 人(11/05)
主要株主
CIP V Japan Limited
(公開後)
Partnership Inc.
17.30%
NIFSMBC-V2006S3 投資
ƒ What we recommend
現時点では開発初期段階の品目が
多いため、当面は営業損失が続こ
う。大和では、導出品目の上市によ
り収益が安定化するのは早くても
15/12 期と予想する。一方で、同社
は大型化の可能性のある開発化合
物を複数保有している。開発の進展
次第ではあるが、長期的な業績拡大
ポテンシャルは非常に大きいと大
和ではみている。同社株式に対する
投資は長期的視点から考えたい。
事業有限責任組合
13.83%
ファイザー株式会社
13.36%
NIFSMBC-V2006S1 投資
事業有限責任組合
8.30%
ジャフコ・スーパー V3
共有投資事業有限責
任組合
長久 厚
2.41%
1.90%
JKPE 合同会社
1.81%
業績推移(非連結)
(百万円)
10/12
10/3
11/12
11/3 予
予
12/12
12/3 予
予
売上高
事業収益
1,186
1,530
2,010
営業利益
-1,346
-1,550
-1,250
経常利益
-1,296
-1,550
-1,250
当期利益
-1,308
-1,550
-1,250
EPS(円)
-652.7
-116.8
-94.2
DPS(円)
0.0
0.0
0.0
予想は大和証券CM
注:2011 年 1 月 28 日付で 1:400 の株式分割を実施
実績 EPS は遡及修正済み
個別品目で大和が特に注目してい
るのは、EP4拮抗剤とアシッドポ
大和証券キャピタル・マーケッツ株式会社 金融証券研究所
〒100-6753 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号 グラントウキョウ ノースタワー
このレポートは、投資の参考となる情報提供を目的としたもので、投資勧誘を意図するものではありません。投資の決定はご自身の判断と責任でなされますようお願い申し上げます。
レポートに記載された内容等は作成時点のものであり、正確性、完全性を保証するものではなく、今後予告なく修正、変更されることがあります。内容に関する一切の権利は大和証券CMにあります。
事前の了承なく複製または転送等を行わないようお願いします。ご利用に際しては、末尾の開示事項の記載もご覧ください。
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
表取締役社長)及び一部の従業員が中心となって旧
中央研究所の主たる機能を研究開発型の創薬企業と
して独立させることとなり、2008 年2月にラクオリ
ア創薬株式会社を設立した。2008 年7月には、旧中
央研究所の従業員約 380 名のうち希望する 59 名が同
社に移籍するなど、旧中央研究所の人的・物的資産、
研究開発ポートフォリオ及びその他を承継し、同社
は事業を開始している。
沿革
ファイザーの研究所を前身とする創薬型ベンチャー
同社は、米国 Pfizer Inc.(以下、米国ファイザー
社)の日本法人であるファイザー株式会社(非上場)
(以下、日本ファイザー社)の旧中央研究所を前身
としている。旧中央研究所は米国ファイザー社の創
薬活動のうち探索研究領域の拠点のひとつとして
1985 年6月に設立され、1996 年 12 月には日本ファ
イザー社の前臨床開発拠点である新薬開発センター
を統合した。その後、旧中央研究所は「疼痛疾患」
及び「消化管疾患」を中核領域として創薬研究を行
ってきた。
なお、同社の設立及び事業開始に際して、同社は米
国ファイザー社及び日本ファイザー社より以下のよ
うな支援を受けている。
①第三者割当増資の引受け
②知的財産権等の譲受及び使用許諾
③固定資産及び貯蔵品の譲受
④社屋の賃借契約の締結
2007 年1月、米国ファイザー社による世界的な研究
開発、製造及び販売体制の見直しが行われ、旧中央
研究所の閉鎖が決定された。当該決定を受け、当時
の旧中央研究所所長であった長久厚氏(現・同社代
ƒ 図表1:会社沿革-1
【同社の前身であるファイザー株式会社中央研究所の沿革】
年月
事項
1972年3月
台糖ファイザー株式会社(現ファイザー株式会社)の研究部門として、愛知県知多郡武豊町に
探索研究体制を持つ微生物研究所を設立
1985年6月
微生物研究所を統合して中央研究所へと名称変更を行い、「炎症」分野の探索研究を開始
1992年6月
中央研究所の探索部門の研究領域への「鎮痛(疼痛疾患)」の追加
1996年12月 新薬の前臨床開発を行う新薬開発センターを統合して研究開発体制を一元化
1999年6月
第4研究棟の完成
探索部門の研究領域への「神経疾患」の追加
2000年6月
研究領域を「炎症」、「鎮痛」及び「神経疾患」から、「鎮痛」及び「消化管疾患」へ変更
米国ファイザー社企業グループ内で唯一「消化管疾患」の研究領域を担当
2004年12月 研究領域に「肝臓疾患」を加えて、「鎮痛」「消化管疾患」と併せて3領域を担当
2006年9月
中央研究所で創出された開発化合物(商品名:Cerenia( R))が、動物用医薬品(イヌの制吐
剤)として欧州医薬品審査庁(EMEA:European Medicines Agency)の承認を取得
2007年1月
中央研究所の閉鎖決定
2008年6月
中央研究所の閉鎖
出所: 目論見書より大和証券CM作成
ƒ 業績推移(非連結:百万円;%)
08/12
09/12
10/12
11/12
12/12
13/12
大和予
大和予
大和予
11/12
会社予
事業収益
(百万円)
1,187
1,530
2,010
3,240
1,290~
1,777
伸率
(%)
29
31
61
8.7~
49.7
営業利益
(百万円)
-2,886
-2,678
-1,346
-1,550
-1,250
-220
-1,910~
-1,463
伸率
(%)
赤縮
赤縮
赤拡
赤縮
赤縮
赤拡
経常利益
(百万円)
-2,903
-2,639
-1,296
-1,550
-1,250
-220
-1,897~
-1,451
伸率
(%)
赤縮
赤縮
赤拡
赤縮
赤縮
赤拡
当期利益
(百万円)
-2,900
-2,642
-1,308
-1,550
-1,250
-220
-1,901~
-1,454
伸率
(%)
赤縮
赤縮
赤拡
赤縮
赤縮
赤拡
EPS
(円)
-10,518.84
-6,605.82
-652.74
-116.83
-94.22
-16.58
-171.66~
-131.36
CFPS
(円)
-113.06
-86.68
-9.04
配当
(円)
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
-
0.0
注:2011 年 1 月 28 日付で 1:400 の株式分割を実施、実績 EPS は遡及修正済。百万円未満を四捨五入しているため、表紙の業績推移とは異なる場合がある。
11/12 期会社予想の EPS は、公募予定株式数を含めた期中平均発行済み株式数により算出
-2-
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
ƒ 図表2:会社沿革-2
【同社の沿革】
年月
事項
2008年2月
医薬品の研究開発を目的として、愛知県知多郡武豊町にラクオリア創薬株式会社(資本金1百
万円)を設立
2008年6月
資本金を10百万円に増資
2008年7月
米国ファイザー社及び日本ファイザー社との間で事業開始に必要な知的財産権及び固定資産の
有償譲り受け等、各種契約の締結
日本ファイザー社中央研究所の閉鎖に伴い、従業員の一部が移籍するとともに、研究機器等の
設備を有償にて譲り受け、「疼痛疾患領域」及び「消化管疾患領域」を主として事業を開始
資本金を24億6千6百万円に増資
2008年12月 資本金を47億1千6百万円に新株予約権の行使により増資
2010年6月
資本金を48億7千35万円に新株予約権の行使により増資
2010年7月
米国食品薬品局(FDA:Food and Drug Administration)よりアシッドポンプ拮抗薬(RQ00000004)の臨床第Ⅰ相試験開始のための新薬治験申請(IND申請:Investigational New
Drug Application)について承認を取得
2010年8月
丸石製薬株式会社とEP 4拮抗薬(RQ-00000007)の注射剤としての日本及び東アジア地域におけ
る商用化に関する導出契約を締結
アシッドポンプ拮抗薬(RQ-00000004)の臨床第Ⅰ相試験を米国にて開始
2010年9月
CJ CheilJedang Corporation(韓国)とアシッドポンプ拮抗薬(RQ-00000004及びRQ00000774)の韓国、中国(香港を含む)及び台湾地域における商用化に関する導出契約を締結
2010年10月 資本金を55億2千9百85万円に新株予約権の行使により増資
2010年12月 Durata Therapeutics, Inc.(米国)とダルババンシンの日本における開発、販売及び製剤の
製造に関する権利の譲渡契約を締結
Eli Lilly and Company(米国)と特定のイオンチャネルに関するオプション権付き共同研究
契約を締結
Aratana Therapeutics, Inc.(米国)とEP4 拮抗薬(RQ-00000007)及びグレリン受容体作動薬
(RQ-00000005)の動物用医薬品としての全世界における商用化に関する導出契約を締結
2011年3月
明治製菓株式会社(現Meiji Seikaファルマ株式会社)とジプラシドンの日本における商用化に
関する導出契約を締結
出所: 目論見書より大和証券CM作成
ƒ 図表3:資本金等の推移
年 月
08年2月19日
08年6月16日
08年6月16日
08年6月18日
08年7月14日
新株発行
(株)
摘要
新規設立時の発起人の株式引受
資本準備金の資本組入
有償株主割当(1:5.1、割当先:役員・執行役員6名)
株式分割(1:5)
A種優先株式有償第三者割当(割当先:VC16社、役員・執行役員7名)
B種優先株式有償第三者割当(割当先:ファイザー株式会社)
普通
普通
普通
普通
A種優先
B種優先
33
167
800
6,100
3,800
08年12月26日 第1回新株予約権行使(A種優先株式)
A種優先
9,000
10年6月29日
第2回新株予約権行使(B種優先株式)
B種優先
630
10年10月7日
第1回新株予約権行使(A種優先株式)
A種優先
2,638
普通
22,168
10年10月27日 A種及びB種優先株式の普通株への転換(1:1)
A種及びB種優先株式の償却
11年1月28日
11年7月20日
A種優先
B種優先
-17,738
-4,430
9,244,032
普通 4,000,000
株式分割(1:400)
公募増資
出所: 目論見書より大和証券CM作成
-3-
発行価額
(円)
増加後株式数
(株)
普通
普通
普通
普通
普通
A種優先
B種優先
普通
A種優先
B種優先
普通
A種優先
B種優先
普通
A種優先
B種優先
普通
A種優先
B種優先
普通
33
33
200
1,000
1,000
6,100
3,800
1,000
15,100
3,800
1,000
15,100
4,430
1,000
17,738
4,430
23,168
17,738
4,430
23,168
普通
普通
9,267,200
13,267,200
50,000
500,000
490,000
増加後資本金
(千円)
1,000
1,650
10,000
10,000
2,466,000
500,000
4,716,000
490,000
4,870,350
500,000
5,529,850
-
5,529,850
-
5,529,850
1,600
5,529,850
8,489,850
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
効率はファイザー時代よりも向上したといえる。同
社は毎年2つの新規化合物創出を目標としている
が、会社設立から現在までの実績を鑑みれば、その
実現の可能性はある程度高いだろうと大和では推測
する。
事業概要
同社は創薬型ベンチャー企業である。医薬品開発過
程における「探索段階」から「POC」(Proof of
Concept:ヒトでの開発コンセプトの確認)までを事
業領域としている。低分子医薬品の創薬に特化して
おり、ファイザー中央研究所時代からの強みである
「疼痛疾患」と「消化管疾患」をコア領域とする。
特に、イオンチャネル関連で独自のスクリーニング
技術を保有しており、この点が他社との差別化の要
因になると考えられる。
事業環境
現在、製薬会社にとって、開発パイプラインの強化
が喫緊の課題となっている。しかし、多くの疾患領
域において薬剤による治療満足度が高まっている
(その疾患領域における新薬開発のハードルが上が
っている)こともあり、新薬開発の成功確率は低下
傾向にある。そのため、多くの製薬会社にとって、
企業買収や他社からの開発品目の導入が開発パイプ
ライン拡充の有力な手段となっている。今後、同社
のように新規化合物を創製することが出来る企業が
医薬品業界で果たす役割は大きいと考えられる。ま
た、開発品目の導入需要のさらなる拡大が見込まれ
ることから、導出側の企業にとっての事業環境は好
転していくものと想定される。
“化合物を継続的に創り出せること”が強み
大和では、同社の強みは“化合物を継続的に創り出
せること”だと考える。上場バイオベンチャーの中
には、当該企業の将来がひとつ、あるいは少数の開
発品目に大きく依存している場合があるが、同社は
現時点で多くの開発品目を保有しており、また、今
後も継続的に研究開発パイプラインを拡充すること
が可能である。開発品目の増加により、個別プロジ
ェクトが全体に与える影響が相対的に低下し、さら
に、長期的にも継続的な事業の拡大・発展が期待で
きる。
収益構造
同社の収入は、開発プロジェクトを製薬会社に導出
した段階から発生する。収入は①開発プロジェクト
を製薬会社に導出した際の契約一時金、②導出品の
開発進展などに伴うマイルストン収入、③発売後の
売上高に応じたロイヤリティ収入に大別される。契
約一時金やマイルストンの額、ロイヤリティ率は
個々の契約によって様々だが、一般的には、開発が
より進展した段階で導出した方が導出側の経済条件
が良くなる(導出までにより大きなリスクを負担す
るため)。
同社の強みの源泉はファイザー中央研究所から引き
継いだ組織にあると大和では考えている。同社には
医薬品開発の経験豊富な経営陣・研究者がおり、実
績・ノウハウの蓄積がある。また、試験設備などの
インフラ面も非常に充実している。グローバル大手
の一部門としての経験から、化合物を導入する側(製
薬会社側)のニーズを熟知していることも同社の特
長であろう。これらの要因により、質の高い化合物
を効率よく生み出すことができる。
同社の現在の開発パイプラインは初期段階のプロジ
ェクトが多いため、当面は契約一時金とマイルスト
ン収入が中心となろう。開発品目の上市により安定
的な収益(売上高に応じたロイヤリティ収入)が発
生するのは、早くても 15/12 期以降と予想される。
さらに、“大企業の一部”ではなくなったことも大
きいと考える。独立した企業となったことにより研
究開発における意思決定のスピードが高まり、また、
人員規模が小さくなったこともあり研究者間の情報
共有が一段と活発になった模様。結果として、年間
の成果(化合物数、特許数など)はファイザー時代
と遜色なく、研究所の人員規模を考慮すれば、研究
-4-
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
ƒ 図表4:開発パイプライン導出後の収入のイメージ
収入
売上高に応じたロイヤリティ
契約一時金
マイルストン
時間
導出契約
臨床試験
承認申請
承認
上市
出所: 大和証券CM作成
10 年8月、同社と丸石製薬(非上場)は、RQ-00000007
の注射剤としての製品化に向けた導出契約を締結し
た。当該契約により、日本及び東アジア(韓国・中
国・台湾)において独占的にヒト及び動物用医薬品
としての開発、販売及び製造を行う権利を丸石製薬
に付与している。丸石製薬はラクオリア創薬に対し、
契約一時金及び開発段階に応じたマイルストン、販
売後のロイヤリティを支払う。
個別プロジェクト
以下、主な個別プロジェクトを簡単にまとめる。
①米国イーライリリー社との共同研究
10 年 12 月、同社は米国イーライリリー社との間で
特定のイオンチャネルの共同研究およびライセンス
に関するオプション契約を締結した。両社は共同で
研究を行い、その結果創製された化合物について、
イーライリリー社は全世界における独占的な開発、
販売及び製造する権利のオプション権を保有する。
イーライリリー社はラクオリア創薬に対し、契約一
時金と開発段階に応じたマイルストンとして総額
172 百万ドル、加えて、販売後のロイヤリティを支
払う。大和では、イーライリリー社との共同研究契
約締結が、ラクオリア創薬のイオンチャネル関連に
おける創薬力の高さを示す格好の事例だとみてい
る。
10 年 12 月、同社と米国 Aratana 社は、RQ-00000007
の動物用医薬品としての製品化に向けた導出契約を
締結し、全世界において独占的に動物用医薬品とし
ての開発、販売及び製造を行う権利を Aratana 社に
付与した(ただし、日本・韓国・中国・台湾におけ
る剤形を注射剤とする動物用医薬品としての権利を
除く)。また、ラクオリア創薬は Aratana 社に既存
の原薬及び製剤の一定量を臨床試験用として無償で
供給する旨を別途定めている。Aratana 社はラクオ
リア創薬に対し、契約一時金及び開発段階に応じた
マイルストン、販売後のロイヤリティを支払う。
Aratana 社は、RQ-00000007 及びグレリン受容体作動
薬 RQ-00000005 を動物用医薬品として開発すること
を主な目的として、米国ベンチャーキャピタル数社
の出資により 10 年 12 月に設立されたバイオベンチ
ャーである。ラクオリア創薬は Aratana 社設立時に
おいて一部出資している。
② E P 4 拮 抗 剤 ( 開 発 コ ー ド : RQ-00000007 、
RQ-00000008)
両化合物ともに慢性炎症性疼痛を主な適応症として
旧中央研究所にて創出され、ラクオリア創薬は 08 年
7月に米国ファイザー社よりこれらを譲り受けた。
同一メカニズムでの競合品が少ないことから、競争
力が高いと考えられる。RQ-00000007 については米
国ファイザー社において PhaseⅡa 試験が終了して
おり、同社が獲得した収益の一定料率を米国ファイ
ザー社に支払う旨が契約により定められている。
さらに同社は上記の導出契約に加え、急性痛や自己
免疫疾患、アレルギー等への適応拡大も視野に入れ、
自社で前臨床試験を実施している。グローバルパー
トナー次第ではあるが、検討されている適応症が多
岐に渡ることなどから、大和では、EP4拮抗剤が
将来の収益ポテンシャルが最も大きい開発品目群だ
とみている。
-5-
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
ている。また、ラクオリア創薬は Aratana 社に既存
の原薬及び製剤の一定量を臨床試験用として無償で
供給する旨を別途定めている。Aratana 社はラクオ
リア創薬に対し、契約一時金及び開発段階に応じた
マイルストン、販売後のロイヤリティを支払う。
③アシッドポンプ拮抗剤(開発コード:RQ-00000004、
RQ-00000774)
RQ-00000004 は胃食道逆流症を主な適応として旧中
央研究所にて創出された化合物であり、同社は 08 年
7月に米国ファイザー社よりこれを譲り受けた。ま
た、RQ-00000774 は RQ-00000004 のバックアップ化
合物として同社が創製したものである。10 年8月、
同社は米国において RQ-00000004 の PhaseⅠ試験を
開始している。消化管領域のグローバルの市場規模
は非常に大きいことから、他剤との差別化に成功す
れば、末端売上高 1,000 億円以上も十分に狙える領
域である。
⑤ダルババンシン(抗 MRSA 抗菌剤、細胞壁ペプチド
グリカン合成阻害)
本化合物は海外において PhaseⅢ試験を実施中であ
り、ラクオリア創薬は日本国内における開発、販売
及び製造に関する権利を米国ファイザー社から譲り
受けている。
10 年 12 月、同社と米国デュラータ社は、本化合物
の製品化に向けた日本における開発、販売及び製造
に関する権利の譲渡契約を締結した。デュラータ社
は 09 年に米国ベンチャーキャピタル数社の出資に
より設立された抗菌剤の開発に特化したバイオベン
チャー企業である。日本を除く全世界におけるダル
ババンシンの開発、販売及び製造の権利をすでに保
有している。デュラータ社はラクオリア創薬に対し、
契約一時金及び開発段階に応じたマイルストン、販
売後のロイヤリティを支払う。大和では、国内での
ピーク時売上高を 20~40 億円程度と想定している。
10 年 9 月 、 同 社 と 韓 国 C J 第 一 製 糖 社 は 、
RQ-00000004 及び RQ-00000774 の製品化に向けた導
出契約を締結した。当該契約により、韓国・中国・
台湾地域において独占的にヒト用医薬品として開
発、販売及び製造する権利をCJ第一製糖社に付与
している。CJ第一製糖社はラクオリア創薬に対し、
契約一時金及び開発段階に応じたマイルストン、販
売後のロイヤリティを支払う。なお、同社とCJ第
一製糖社は 10 年6月に、ラクオリア創薬が創出した
消化管疾患領域における新薬候補物質の開発に向け
て、韓国及び東アジア地域を販売テリトリーとした
戦略的強力関係を構築していくことで合意してお
り、今後もCJ第一製糖社に対する開発品目の導出
が期待される。
⑥ジプラシドン(抗精神病剤、D2 及び 5-HT2A の拮
抗)
本化合物は米国ファイザー社が欧米において上市済
みであり(製品名:Geodon/Zeldox)、ラクオリア創
薬は日本国内における開発、販売及び製造に関する
権利を譲り受けている。
④グレリン受容体作動薬(開発コード:RQ-00000005)
RQ-00000005 は米国ファイザー社において創製され
た後、高齢者の脆弱、心不全、繊維筋痛症を適応症
として PhaseⅡ試験が実施された。高齢者の脆弱で
は薬理作用が確認されたものの、心不全及び繊維筋
痛症では十分な有効性が示されなかった。しかし、
安全性懸念が小さかったこと、実験動物において消
化管運動促進が観察されたことから、胃食道逆流症
を主な適応とした開発が開始され、高齢者の脆弱に
対する開発は保留された。米国ファイザー社はその
後の PhaseⅠ試験において、健常人における食道逆
流の減少を確認している。本化合物のこれらの特性
から、ラクオリア創薬は複数の消化管疾患への適用
の可能性があると判断し、09 年 10 月に米国ファイ
ザー社よりこれを譲り受けた。
11 年3月、同社と明治製菓は、本化合物に関するラ
イセンス契約を締結した。同社は明治製菓に対し、
日本における独占的な開発権および販売権を許諾し、
対価として契約締結時の一時金(11/12 期第1四半
期に受領済み)と開発進展等に応じたマイルストン、
上市後の売上高に応じたロイヤリティを受領する。
大和では、国内ピーク時売上高を 60~100 億円程度
と想定している。海外で上市済みであることから、
国内開発が失敗するリスクは小さいと考えられる。
⑦アニデュラファンギン(キャンディン系抗真菌剤、
1,3-β-D-グルカン合成阻害)
本化合物は米国ファイザー社が欧米において上市済
みであり(製品名:Eraxis/Ecalta)、ラクオリア創
薬は日本国内における開発、販売及び製造に関する
権利を譲り受けている。11 年6月 22 日の上場前説
10 年 12 月、同社と Aratana 社は、RQ-00000005 の製
品化に向けた導出契約を締結した。当該契約により、
全世界において独占的に動物用医薬品としての開
発、販売及び製造を行う権利を Aratana 社に付与し
-6-
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
明会において会社側は、11 年秋頃に導出契約を締結
できる見込みと述べている。大和では、国内でのピ
ーク時売上高を 20~40 億円程度と想定している。海
外で上市済みであることから、国内開発が失敗する
リスクは小さいと考えられる。
ƒ 図表5:開発パイプライン
【開発プロジェクト】
名称
薬効・効能
RQ-00317076
急性痛
(シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害薬)
RQ-00000007
(EP 4拮抗薬)
慢性炎症性疼痛
導出先/権利地域
フェーズⅡ
丸石製薬/日本及び東アジア
急性痛、炎症、自己免
Aratana Terapeutics,Inc./
疫疾患、アレルギー、
全世界
癌
RQ-00000005
(グレリン受容体薬)
RQ-00000004
(アジットポンプ拮抗薬)
RQ-00000774
(アジットポンプ拮抗薬)
脆弱
開発段階
Aratana Terapeutics,Inc./
全世界
フェーズⅡ
前臨床
フェーズⅡ
胃食道逆流症
フェーズⅠ
胃食道逆流症
CJ CheilJedang Corporation/
フェーズⅠ
韓国、中国及び台湾
備考
米国ファイザー社にて、前期フェズⅡ試験終
了
米国ファイザー社にて、前期フェーズⅡ試験終
了
自社にて、各適応症に係る前臨床試験
を実施中
米国ファイザー社にて、他の適応症に係る
臨床第Ⅰ相を終了
米国ファイザー社にて、フェーズⅡ実施
他適応症開発のため、開発を保留
米国ファイザー社にて、フェーズⅠを終了
自社にて、フェーズⅠを実施中
胃食道逆流症
前臨床
自社にて、前臨床試験を実施中
RQ-00000008
(EP4拮抗薬)
慢性炎症性疼痛、急性
痛、炎症、自己免疫疾
患、アレルギー、癌
前臨床
自社にて、各適応症に係る前臨床試験
を実施中
RQ-00000009
(5-HT 4部分作動薬)
アルツハイマー病
前臨床
自社にて、前臨床試験を実施中
米国ファイザー社にて、他の適応症に係る
臨床第Ⅰ相を終了
RQ-00000010
(5-HT 4部分作動薬)
胃食道逆流症
前臨床
自社にて、前臨床試験を実施中
【探索プロジェクト】
名称
RQ-00310941
(5-HT 2B拮抗薬)
RQ-00202730
(CB 2作動薬)
RQ-00201894
(モチリン受容体作動薬)
RQ-00203066
(Nav1.3ナトリウムチャネル遮断薬)
T型(Cav3.2)
カルシウムチャネル遮断薬
薬効・効能
導出先
過敏性腸症候群
-
過敏性腸症候群
-
機能性胃腸症
-
神経因性疼痛
-
神経因性疼痛
-
TRPM8遮断薬
神経因性疼痛
-
Nav1.7ナトリウムチャネル遮断薬
炎症性疼痛
神経因性疼痛
-
開発段階
自社にて、リード化合物の最適化を完了し、
開発化合物の創出に向けた研究開発を実施中
自社にて、リード化合物の最適化を完了し、
開発化合物の創出に向けた研究開発を実施中
自社にて、リード化合物の最適化を完了し、
開発化合物の創出に向けた研究開発を実施中
自社にて、リード化合物の最適化を完了し、
開発化合物の創出に向けた研究開発を実施中
自社にて、リード化合物の最適化を完了し、
開発化合物の創出に向けた研究開発を実施中
自社にて、リード化合物の最適化を完了し、
開発化合物の創出に向けた研究開発を実施中
自社にて、リード化合物の最適化を完了し、
開発化合物の創出に向けた研究開発を実施中
導出先
国内開発段階
【国内開発・販売権保有プロジェクト】
名称
薬効・効能
海外の状況
アニデュラファギン [注射剤]
(キャンディン系/抗真菌剤)
(1,3-β-D-グルカン合成阻害)
ガンジダ症
ジプラシドン [経口剤/筋注剤]
第2世代(非定型)/抗精神病薬
(D2及び5-HT2Aの拮抗)
統合失調症
双極性障害
権利再許諾先:
Meiji Seikaファルマ
経口剤:フェーズⅠ終了
筋注剤:前臨床試験終了
上市済(欧米他)
(Geodon/Zeldox)
ダルババンシン [注射剤]
グリコペプチド系/抗MRSA抗菌薬
(細胞壁ペプチドグリカン合成阻
害)
MRSA感染症
権利譲渡先:
Durata Therapeutics, Inc.
前臨床試験終了
フェーズⅢ(海外)
前臨床終了(日本)
上市済(欧米他)
(Eraxis/Ecalta)
出所: 目論見書より大和証券CM作成
-7-
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
ら、事業が軌道に乗れば高い利益率を実現すること
ができよう。一方で、14/12 期までは契約一時金と
マイルストン収入が中心であるため、導出や開発進
展のタイミング次第で収益見通しが変動しやすいこ
とに注意が必要である。
業績動向
10/12 期は、売上高 11.9 億円(前期は売上高無し)、
営業損失 13.5 億円(前期は 26.8 億円の営業損失)。
事業費用は前期比ほぼ横ばいであったが、6つのプ
ロジェクトの導出に成功したことにより契約一時金
が計上され、全体の損益は改善した。期末の現預金
残高は 33.9 億円であった。
現在の大和業績予想は、プロジェクトを導出できる
確率や臨床試験の成功確率などを考慮して算出して
いる。そのため、導出契約の締結や開発プロジェク
トの進展があれば、大和業績予想は増額修正されて
いくこととなろう。
11/12 期は、売上高 15.3 億円(前期比 28.9%増)、
営業損失 15.5 億円(赤字拡大)を見込む。同社は現
在、複数のプロジェクトの導出交渉を行っており、
大和では新たに4つのプロジェクトの導出に成功す
ると想定している(明治製菓へのジプラシドンの導
出を含む)。10/12 期に導出したプロジェクトから
の追加のマイルストン収入は見込んでいない。一方
で、費用面では開発費用の増加や支払手数料の発生
が見込まれることなどから、営業損失は若干拡大す
ると考える。
大和予想を基に、同社の企業価値を試算した。DC
F法により図表6のような前提条件で試算した結果、
同社の時価総額は 20,180~24,890 百万円と算出さ
れた。理論株価は 1,500~1,851 円程度となる。ただ
し、DCF法においては前提条件の変更により試算
結果が大きく変動することに留意したい。
ƒ 図表6:DCF法による時価総額の算出
25年度以降の永久成長率
β(オンコセラピーの過去60ヶ月)
リスクフリーレート
リスクプレミアム
WACC
導出プロジェクトの上市による安定的な収入が期待
できるのは 15/12 期からとなろう。大和では、15/12
期には Aratana 社に導出した EP4 拮抗剤(動物薬)
が上市できると想定している。16/12 期以降、国内
で、ジプラシドンやダルババンシン、アニデュラフ
ァンギンなどが順次上市に至ると予想され、同社の
収益の安定感は徐々に増していくと考えられる。費
用構造は大きくは変わらないと推測されることか
時価総額(百万円)
理論株価(円)
0.00%
0.81
1.12%
6.2%~7.2%
6.14%~6.95%
20,180~24,890
1,500~1,851
出所:大和証券CM作成
ƒ 図表7:業績推移
( 百 万円 )
大和予想
10 ,00 0
8 ,00 0
6 ,00 0
4 ,00 0
2 ,00 0
0
-2 ,00 0
-4 ,00 0
08
09
10
11
12
13
14
15
16
売上 高
17
18
営 業利 益
出所: 目論見書より大和証券CM作成。予想は大和証券CM
-8-
19
20
21
22
23
24
25
(年 度 )
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
社の予想PSR、PBRはバラつきが大きいものの、
ラクオリア創薬の予想PSR、PBRはベンチャー
各社の平均値に近く、DCF法により算出された理
論株価は違和感のない水準と考えられる。
DCF法により試算された時価総額を、他社のバリ
ュエーション水準と比較する。株価を 1,500~1,851
円とすると、
今 11/12 期予想PSRは 13.2~16.3 倍、
来 12/12 期予想PSRは 10.0~12.4 倍となる。また、
今回の株式公開による資金調達を考慮した際の今期
末の純資産額は 100 億円前後と予想され、その場合、
PBRは 2.0~2.5 倍となる。国内上場ベンチャー各
ƒ 図表8:バリュエーション比較
2160 ジーエヌアイグループ
4563 アンジェスMG
4564 オンコセラピー・サイエンス
4565 そーせいグループ
4566 LTTバイオファーマ
4571 ナノキャリア
4573 アールテック・ウエノ
4575 キャンバス
4576 デ・ウエスタン・セラピテクス研究所
最大値
単純平均
中央値
最小値
株価
時価総額
(11/07/19) (百万円)
30
2,693
78,000
9,534
145,200
30,362
149,600
17,703
1,501
198
25,480
5,705
90,100
8,870
611
1,778
149
2,581
予想売上高(百万円)
今期
来期
110
300
300
400
6,000
6,800
1,780
2,500
160
180
440
700
4,250
4,350
0
1,000
130
0
1,530
13.2
10.0
24,890
16.3
12.4
~
ラクオリア創薬
1,851
予想PSR(倍)
今期
来期
24.5
9.0
31.8
23.8
5.1
4.5
9.9
7.1
1.2
1.1
13.0
8.1
2.1
2.0
1.8
19.9
31.8
23.8
13.4
7.2
11.5
5.8
1.2
1.1
~
20,180
~
~
1,500
実績PBR(倍)
(通期)
3.4
2.2
3.0
2.1
0.2
3.0
1.2
0.7
2.7
3.4
2.1
2.2
0.2
2,010
出所: 大和証券CM、予想はラクオリア創薬は大和証券CM、それ以外の銘柄は東洋経済
また、各開発プロジェクトのポテンシャルについて
も、ラクオリア創薬は他社と比較して期待値が高い
と考える。前述のように、大和では、同社の開発パ
イプラインの中で特にEP4拮抗剤とアシッドポン
プ拮抗剤に注目している。今後の開発次第ではある
が、グローバルで上市することとなれば、これらは
いずれも末端売上高 1,000 億円以上を狙える製品と
なる可能性がある。
他社比較
同社を、主な国内上場ベンチャー、ならびに、過去
1年程度に新規上場した米国のベンチャー企業と比
較する。
国内上場ベンチャー3社との比較
同社と主な国内上場ベンチャー(アンジェスMG
[4563]、オンコセラピー・サイエンス[4564]、そー
せいグループ[4565])を比較すると、ラクオリア創
薬は前臨床以降の開発プロジェクト数が最も多い。
開発プロジェクト数が多ければ、必然的に開発関連
のニュースフローが多くなる。実際に、同社の直近
1年程度の開発プロジェクト関連のニュースフロー
数は他社を上回っている。創薬型ベンチャーの株価
はニュースフローに左右されることが多いが、同社
は今後も継続的なニュースフローが期待され、ポジ
ティブ・ニュースが続けば株価評価を高める要因と
なろう(当然ながら、その逆もあり得る)。
一方で、上場ベンチャー3社と比較してやや見劣り
してしまう点は、開発プロジェクトの進展度合いで
ある。3社はいずれも後期開発段階にプロジェクト
があり、先行投資費用の収穫期が近づいている。一
方で、ラクオリア創薬の最も進んでいる品目はフェ
ーズⅡ段階である。収穫期を迎えるにはいましばら
く時間がかかろう。ただし、同社のパイプラインに
は動物用薬や海外データをブリッジングできる品目
など開発期間が比較的短い品目がいくつかあること
から、大和では、15/12 期にも製品上市に伴う安定
的な収入が期待できるものと考えている。
-9-
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
米国の新規上場ベンチャーとの比較
業績面では、国内上場ベンチャーの中ではオンコセ
ラピーがすでに黒字化を達成している。これは、複
数の企業と導出契約を締結し、かつ、それらのプロ
ジェクトの開発が進展していることが要因と考えら
れる。ラクオリア創薬が導出契約を締結したのは
10/12 期からだが、すでに複数の企業と契約してお
り、プロジェクト数が多いことから今後も新たな導
出契約の締結が見込まれる。さらに、12/12 期以降
は導出プロジェクトの開発進展に伴うマイルストン
収入の発生も期待されよう。導出時の契約内容次第
ではあるが、同社もオンコセラピーのように、契約
一時金とマイルストン収入のみで黒字化を達成する
可能性がある。
同社と過去1年程度に新規上場した米国のベンチャ
ー4社を比較すると、国内上場ベンチャーとの比較
と同様に、開発プロジェクトの総数ではラクオリア
創薬は決して見劣りしない。少数の品目に依存して
いる企業と比較すれば、同社の事業継続性・安定性
はむしろ高いと考えられる。
注目すべきは各社の時価総額の変化である。海外の
新規上場ベンチャーは、上場後半年~1年半で、時
価総額が公募時点から大きく上昇している。これは、
開発関連でポジティブなニュースが発表されたこと
などが要因であろう。繰り返しになるが、ラクオリ
ア創薬は今後も継続的なニュースフローが期待され
ることから、ポジティブ・ニュースに伴って株価評
価が高まる可能性があると考えられる。
以上
ƒ 図表9:他社比較
(百万円)
ラクオリア創薬 アンジェスMG オンコセラピー
上場日
市場
公募時 時価総額
[4579]
[4563]
2011/7/20
2002/09/25
JASDAQグロース
マザーズ
18,042
[4564]
2003/12/8
マザーズ
60,070
AVEO
ANTHERA
ENDOCYTE
そーせい
PHARMACEU PHARMACEU
INC
TICALS INC TICALS INC
[4565]
[ECYT]
[AVEO]
[ANTH]
2004/7/29
2011/02/04
2010/03/11
2010/03/01
マザーズ
NASDAQ GM NASDAQ GM NASDAQ GM
48,976
166
267
121
(百万ドル)
IRONWOOD
PHARMACEU
TICALS INC
[IRWD]
2010/02/10
NASDAQ GS
1,096
【業績推移】
売上高
当期純利益
売上高
09年度
当期純利益
売上高
10年度
当期純利益
売上高
11年度予
当期純利益
売上高
12年度予
当期純利益
0
▲ 2,900
0
▲ 2,642
1,187
▲ 1,308
1,530
▲ 1,550
2,010
▲ 1,250
951
▲ 3,534
585
▲ 2,921
286
▲ 1,967
300
▲ 2,000
400
▲ 1,900
3,327
148
5,257
510
5,361
566
6,000
630
6,800
730
152
▲ 3,938
919
▲ 1,769
716
▲ 1,871
1,780
▲ 1,470
2,500
▲ 700
1
▲ 18
3
▲ 17
0
▲ 20
0
▲ 39
8
▲ 41
20
▲ 32
21
▲ 44
45
▲ 59
158
23
69
▲ 76
0
▲ 18
0
▲ 12
0
▲ 40
0
▲ 70
65
▲ 49
22
▲ 54
34
▲ 71
44
▲ 53
52
▲ 69
107
▲ 37
時価総額 (11/07/19)
PSR(倍)
今期
来期
PER(倍)
今期
来期
-
9,534
31.8
23.8
-
30,362
5.1
4.5
48.2
41.6
17,703
9.9
7.1
-
331
41.1
-
833
5.3
12.1
36.8
-
272
4.2
-
1,588
30.4
14.9
-
08年度
【開発パイプライン】
承認・上市
申請
フェーズⅢ
フェーズⅡ/Ⅲ
フェーズⅡ
フェーズⅠ/Ⅱ
フェーズⅠ
前臨床
total
1
2
3
1
4
5
12
1
2
6
2
1
2
3
1
4
6
2
1
1
1
3
2
3
5
11
6
1
11
2
5
出所: 大和証券CM作成、予想はラクオリア創薬は大和証券CM、その他日本の企業は東洋経済、海外は Bloomberg。
- 10 -
2
2
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
ƒ 図表 10:要約財務データ
要約貸借対照表(非連結)
流動資産
現預金
受取手形・売掛金
棚卸資産
その他の流動資産
固定資産
有形固定資産
無形固定資産
投資有価証券
流動負債
未払金
未払費用
未払法人税等
その他の流動負債
固定負債
負債合計
株主資本合計
資本金
資本剰余金
利益剰余金
自己株式
評価・換算差額等合計
純資産合計
負債純資産合計
08/12
6,319,734
6,160,480
55,811
103,443
370,944
266,281
33,084
0
168,427
82,951
61,217
19,341
4,918
0
168,427
6,522,251
4,716,000
4,706,000
-2,899,748
0
0
6,522,251
6,690,678
09/12
3,921,065
3,710,932
57,052
153,081
190,106
84,537
34,304
0
231,248
135,457
72,196
18,357
5,238
0
231,248
3,879,923
4,716,000
4,706,000
-5,542,076
0
0
3,879,923
4,111,171
要約損益計算書(非連結)
08/12
事業収益
事業費用
事業原価
研究開発費
その他の販管費
営業利益(損失)
営業外収支
経常利益(損失)
特別利益
特別損失
税引前当期利益(損失)
税金等
当期利益(損失)
09/12
2,886,411
2,487,664
398,746
-2,886,411
-17,065
-2,903,476
7,000
105
-2,896,582
3,166
-2,899,748
出所: 目論見書より大和証券CM作成
- 11 -
2,678,343
1,877,201
801,141
-2,678,343
39,816
-2,638,527
-2,638,527
3,800
-2,642,327
(単位:千円)
10/12
11/3
3,845,385
3,816,933
3,392,722
2,198,723
353,320
737,078
50,836
49,235
48,507
831,897
615,387
623,973
70,811
71,231
26,049
25,169
447,920
457,325
269,629
226,573
193,551
135,230
64,958
66,926
7,203
4,227
3,917
20,190
0
241
269,629
226,814
4,199,944
4,213,729
5,529,850
5,529,850
813,850
813,850
-2,143,755 -2,129,970
0
0
0
363
4,191,144
4,214,092
4,460,773
4,440,907
(単位:千円)
11/3
10/12
(1-3月)
1,186,759
602,086
2,532,308
588,032
101,734
0
1,652,672
361,743
777,901
226,289
-1,345,549
14,053
49,711
8,990
-1,295,839
14,745
0
0
-1,295,839
14,745
11,840
960
-1,307,679
13,785
ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
開示事項
【株式レーティング記号について】
株式レーティング記号は、今後 6 ヶ月程度のパフォーマンスがベンチマークとする株価指数の騰落率と比べて、1=15%以上上回る、2=5%~
15%上回る、3=±5%未満、4=5%~15%下回る、5=15%以上下回る、と判断したことを示すものです。各国におけるベンチマークは以下の通りで
す。
日本:TOPIX、米国:S&P 500、欧州:DJ STOXX 600、香港:ハンセン指数、シンガポール:ストレイト・タイムズ指数、韓国:韓国総合指
数、台湾:加権指数、オーストラリア:S&P ASX200 指数
【利益相反関係の可能性について】
大和証券CMは、このレポートに記載された会社に対し、投資銀行業務に係るサービスの提供、その他の取引等を行っている、または行う場
合があります。そのような場合には、大和証券CMに利益相反が生じる可能性があります。
【当社及び大和証券グループについて】
大和証券CMは、㈱大和証券グループ本社の子会社です。
【保有株式等について】
大和証券CMは、このレポートに記載された会社が発行する株券等を保有し、売買し、または今後売買することがあります。大和証券グルー
プが、株式等を合計 5%超保有しているとして大量保有報告を行っている会社は以下の通りです。(平成 23 年 6 月 30 日現在)
三井住友建設(1821)
MCJ(6670)
日本ドライケミカル(1909)
明星電気(6709)
GABA(2133)
三社電機製作所(6882)
GMB(7214)
ケイブ(3760)
日特エンジニアリング(6145)
東京ラヂエーター製造(7235)
ティラド(7236)
オカダアイヨン(6294)
新星堂(7415)
大興電
子通信(8023) マネーパートナーズ(8732) アストマックス(8734) 大和証券オフィス投資法人(8976) 角川グループホールディングス(9477)
帝国ホテル(9708)
バロー(9956)(銘柄コード順)
【主幹事を担当した会社について】
大和証券CMは、平成 22 年 7 月以降下記の銘柄に関する募集・売出し(普通社債を除く)にあたり主幹事会社を担当しています。
日本ドライケミカル(1909) アコーディア・ゴルフ(2131) カルビー(2229) ベストブライダル(2418) JP ホールディングス(2749) 物語
コーポレーション(3097)
ハウスコム(3275)
ソフトクリエイト(3371)
1st ホールディングス(3644)
日本メディカルネットコミュニケ
ーションズ(3645) 日医工(4541) ラクオリア創薬(4579) 日本板硝子(5202) キトー(6409) 第一精工(6640) エルピーダメモリ(6665) ア
ンリツ(6754)
フェローテック(6890)
梅の花(7604)
りそなホールディングス(8308)
北國銀行(8363)
フジ住宅(8860)
オリックス不
動産投資法人(8954) スカイマーク(9204)(銘柄コード順)
【金融商品取引法第 37 条に基づく表示について】
広告等審査済
本書面と一緒に提供する資料に記載した情報に基づき弊社とお取引いただく場合は、次の事項に十分ご注意ください。
・
お取引にあたっては、商品の購入対価の他に、個々のお取引ごとに、あらかじめお客様と弊社との間で決定した売買手数料(注)をいただ
きます。また、購入対価に含まれる場合や手数料をいただかないお取引もありますので、お取引の都度、ご確認ください。なお、非居住
者のお客様につきましては、有価証券をお預かりする場合には、最大で 1 年間に 2 百万円(税込)の常任代理人手数料をいただく場合があ
ります。
・
デリバティブ取引や信用取引等の場合、あらかじめお客様と弊社との間で決定した担保や委託保証金を差し入れていただく場合がありま
す。その場合、お取引の額は、通常、差し入れていただいた担保や委託保証金の額を上回ります。
・
金利水準、為替相場、株式相場、不動産相場、商品相場等の変動に伴い、金融商品の市場価格が変動すること等によって、損失が生じる
・
弊社がご案内する店頭デリバティブ取引の売付け価格等と買付け価格等には差がある場合があります。
・
金融商品の経理、税務処理については、事前に監査法人等の専門家に十分にご確認ください。
おそれがあります。また、お取引の内容によっては、損失の額が差し入れていただいた担保や委託保証金の額を上回るおそれがあります。
(注) 売買手数料の額は、その時々の市場状況や個々のお取引の内容等に応じて、お客様と弊社との間で決定しますので、本書面上に
その額をあらかじめ記載することはできません。
なお、実際のお取引にあたっては、必ず契約締結前交付書面等をよくお読みになり、お客様のご判断と責任に基づいてご契約ください。
商号等
:大和証券キャピタル・マーケッツ株式会社
金融商品取引業者
関東財務局長(金商)第 109 号
加入協会:日本証券業協会、社団法人金融先物取引業協会、
社団法人日本証券投資顧問業協会、
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
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ラクオリア創薬(4579)
2011 年 7 月 20 日
大和証券㈱のお客様へ
【重要な注意事項】
お取引にあたっての手数料等およびリスクについて
手数料等およびリスクについて
z 株式等の売買等にあたっては、
「ダイワ・コンサルティング」コースの店舗(支店担当者)経由で国内委
託取引を行う場合、約定代金に対して最大 1.20750%(但し、最低 2,625 円)の委託手数料(税込)が必
要となります。また、外国株式等の外国取引にあたっては、現地諸費用等を別途いただくことがありま
す。
z 株式等の売買等にあたっては、価格等の変動による損失が生じるおそれがあります。また、外国株式等
の売買等にあたっては価格変動のほかに為替相場の変動等による損失が生じるおそれがあります。
z 信用取引を行うにあたっては、売買代金の 30%以上で、かつ 30 万円以上の委託保証金が事前に必要で
す。信用取引は、少額の委託保証金で多額の取引を行うことができることから、損失の額が差し入れた
委託保証金の額を上回るおそれがあります。
z 債券を当社との相対取引によりお買付けいただく場合は、購入対価のみお支払いいただきます。円貨建
て債券は、金利水準の変動等により価格が上下し、損失を生じるおそれがあります。外貨建て債券は、
金利水準の変動に加え、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。
z 投資信託をお取引していただく際に、銘柄ごとに設定された販売手数料および信託報酬等の諸経費、等
をご負担いただきます。また、各商品等には価格の変動等による損失を生じるおそれがあります。
ご投資にあたっての留意点
z 取引コースや商品毎に手数料等およびリスクは異なりますので、上場有価証券等書面、契約締結前交付
書面、目論見書、等をよくお読みください。
z 外国株式、外国債券の銘柄には、我が国の金融商品取引法に基づく企業内容の開示が行われていないも
のもあります。
商号等 :大和証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 108 号
加入協会:日本証券業協会、社団法人 日本証券投資顧問業協会、社団法人 金融先物取引業協会、
一般社団法人 第二種金融商品取引業協会
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