Comments
Description
Transcript
SHIGA
欧州における知財の現状 欧州知的財産制度と特許・商標出願・訴訟実務 平成19年1月17日~19日 志賀国際特許事務所 弁理士 村山 靖彦 SHIGA International Patent Office SHIGA International Patent Office 特許:日本と主要国との関係 2004年における5極特許庁間の特許出願件数 欧州 米国 20,584 64,812 22,995 21,522 14,794 25,542 255 中国 5,781 韓国 特許庁行政年次報告書2006年版より 2 SHIGA 特許:特許制度(EPC) • International Patent Office 特徴 – 欧州特許庁に出願することにより加盟国に対して、その出願日に出願したものと 同じ効果が生じる – 欧州特許庁で特許されると、各国の法制度に従うことを条件に各国でその効果 が生じる – 公用語(英独仏)にて出願、手続 – “権利の束”であり、特許付与後、クレーム及び明細書の全文を、指定国の公用 語に翻訳しなければならい 語に翻訳 – 付与後異議制度があり、異議が認められると、その効果は指定国に及ぶ • 歴史 1973:ミュンヘンにて調印(特許付与を簡便かつ経済的に) 1977:発効 1978:初の出願 • 加盟国 31カ国(2005年7月1日時点)、その他、拡張国5カ国(加盟国でないが欧州出願 およびそれによる特許の効果を、出願人の要請により拡張できる国) 3 SHIGA International Patent Office 特許:主要国の特許制度 英 独 仏 審査 実体審査 実体審査 新規性、発明活 発性に関する調 査報告の通知 (文献通知書) 実用新案 × ○ ○ 特許裁判所 訴訟 侵害訴訟 取消訴訟 4つの地方 裁判所の管 轄 民事裁判所 侵害訴訟 無効訴訟 侵害訴訟 無効訴訟 4 SHIGA International Patent Office 特許:欧州への出願時のルート • 欧州への出願方法 – 直接(パリ条約に基づく優先権主張を含む) – PCT出願経由 • 権利取得の手続 – 欧州特許制度を利用(欧州特許出願) – 各国への出願 • 権利取得までのルート 出願 PCT 日本出願 各国登録 ① 各国出願・登録 ② 各国登録 ③ 各国出願・登録 ④ 欧州特許出願 欧州特許出願 5 SHIGA 特許:出願の際の検討事項 International Patent Office • 出願、権利取得の目的は • どの国に出願したいか – 販売 – 製造 – 競合他社への牽制 • 活用の仕方 • 権利取得段階 – 早期保護が必要か – 異議申立が多数発生する分野か • コスト – どの手続までのコストを考慮しなければならないか ↓ ルートの決定 6 SHIGA International Patent Office 特許:統計(欧州への出願状況) 日本からの欧州特許庁への出願の推移 16000 14000 出願件数 12000 10000 EP EP/PCT 8000 6000 4000 2000 0 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 EPO Annual Report より 7 SHIGA 特許:統計(欧州主要国への出願状況) International Patent Office 日本から英仏独への出願件数の推移 4000 3500 出願件数 3000 2500 GB 2000 DE 1500 FR 1000 500 0 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 主要3国の出願はQuestel/Orbitを利用 ドイツ出願は実用新案登録出案を含まず 8 SHIGA 特許:ロンドン・プロトコル International Patent Office 背景 ・現行のEPCでは、特許付与後、クレーム及び明細書の全文を、指定国の公用語に翻 訳しなければならい⇒翻訳コストが負担 ・ロンドン政府間会合( 2000年10月)で「欧州特許条約における翻訳に関する議定書」 (ロンドン・プロトコル)が採択される 概要 (1)EPOでの手続言語(英・独・仏)を公用語とする指定国においては、明細書の全文に ついて、当該指定国の公用語への翻訳を要求できない。ただし、クレームについては、 3つの手続言語に翻訳しなければならない。 (2)EPOでの手続言語(英・独・仏)以外の言語を公用語とする指定国は、手続言語のう ち少なくとも1つを選択指定し、その言語で特許が付与された場合(又はその翻訳がさ れた場合)は、当該指定国の公用語への翻訳を要求できない。ただし、クレームにつ いては、その公用語への翻訳を要求することができる。 (3)侵害訴訟等の紛争が生じた場合に、侵害被疑者や裁判所等司法当局の求めに応じ、 その国の公用語への翻訳を求めることができる。 9 SHIGA 特許:特許保護の一元化の動向 International Patent Office 特許保護を一元的に行うために、“共同体特許制度”および“ 共同体 共同体特許制度 特許裁判所”が議論されている 特許裁判所 一元的な特許保護が期待される理由: ○低コスト – 現行の欧州特許制度では、指定国で効力を持たせるために、締約国の 指定の公用語にクレームおよび明細書の翻訳文提出を求めることを認 めている ○欧州全域における効力 – EUは単一市場戦略の為に人/物/金/サービスの自由移動が認めら れているが、知的財産権はその例外となっている ○訴訟手続の統合 – 欧州特許は“権利の束”であることから、複数国で侵害行為が生じた場 合、それぞれの国で訴訟を提起する必要があり、かつ、各国の裁判所 が同様の判決をするという保証がない 10 SHIGA 特許:共同体特許制度 International Patent Office • 言語 – 手続言語(英独仏)の何れかで出願書類を提出+他の2言語に クレームを翻訳 – 特許付与時点で、全クレームをすべての共同体公用語に翻訳 (構成国が公用語への翻訳を放棄している場合を除く) • 手続 – EPOに出願、あるいは、各国特許庁が出願を受理しEPOへ送付 • その他 – 欧州特許制度、国内特許制度と共存(共同体特許は第3の選択 肢) 11 SHIGA 特許:共同体特許裁判所 International Patent Office • 設立 – 欧州第一審裁判所(ルクセンブルク)に新たに付設 • 裁判管轄 – 共同体特許の無効/侵害訴訟、非侵害の確認訴訟、etc. • 控訴 – 判決から2ヶ月以内に欧州第一審裁判所に提起できる 12 SHIGA 特許:特許保護の一元化の経緯 International Patent Office • 1997 – 欧州委員会による「共同体特許および欧州の特許制度に関する グリーンペーパー」の公表 • 2000 – 共同体特許に関する理事会規則案の提出 • 2003年3月 – 閣僚理事会において、共同体特許に関する共通政治的アプロー チの合意 • 現状 – 言語に関する問題が解決されず、制度成立の見込みが立たな い? 13 SHIGA 特許:EPC2000 International Patent Office • 2000年にミュンヘンで署名(EPC2000) • EPC2000は、15番目の加盟国がこれを批准してから2年 後もしくはすべてのEPC加盟国が批准してから3ヶ月後 に発効する • 15番目の加盟国としてギリシャがEPC2000 を2005年1 2月13日に批准 ⇒EPC2000は遅くとも2007年12月13日に実施 遅くとも2007年12月13日 • EPC1973は改廃 14 SHIGA 特許:EPC2000 International Patent Office 日本の出願人にとってメリットとなる改正点 – 出願時には締約国が全指定(各締約国の指定は、欧州特許が 付与されるまではいつでも取り下げ可) – 優先日から16ヶ月以内であれば、優先権申立あるいはその補 正をおこなえる – 日本語による出願が可能(実質3ヶ月以内に提出:通知を受けた 日本語による出願が可能 後2ヶ月以内に翻訳文を提出可能) – 優先権主張が特許性の決定にかかわる場合のみ、優先権書類 の翻訳が必要(⇒コスト削減) – 許可(Grant)後、権利範囲の限定を請求することが可能:理由 (先行技術等)の提示は不要⇒明確性、追加事項、クレーム範囲 の拡大などについて欧州特許庁の審査局により審査、ただし、 異議申立がある場合、異議が優先 15 SHIGA 商標:共同体商標制度 International Patent Office 特徴 • • • • • • EU全域を対象とする商標保護が1つの出願で可能 EUの公用語のいずれでも出願できる。ただし、第2言語としてOHIM の公用語(スペイン語、英語、独語、フランス語、イタリア語)を出願 人が可能な手続言語として選択する必要あり 単一の料金制度のもとで、手続が行える(コスト・メリット) 共同体登録商標の存続期間中に生じる事項が共同体全域で効果を 発する(商標の登録、譲渡、放棄等) 特定の範囲での名声や使用を根拠とした商標の取得、維持は、共 同体域内のいずれかの名声または使用でよい マドリッド・プロトコルに基づく商標保護とは異なり、事前に国内商標 を出願する必要がない 16 SHIGA 商標:共同体商標制度 International Patent Office 経緯 1993 1994年3月15日 1996年4月1日 欧州連合理事会にて最終採択 規則発効 施行 手続 ・OHIM [Office for Harmonization in the Internal Market (Trademarks and Designs)]:欧州共同体商標意匠庁)へ直接出願; or ・各国商標庁を通じて出願 権利侵害 • • EU加盟国に設置されているCTM裁判所に訴えを提起 CTM裁判所による判決の効力は全EU加盟国に及ぶ 17 SHIGA 商標:共同体商標制度(手続) International Patent Office CTM出願 方式&絶対拒絶理由審査 拒絶 先行CTM調査 不服申立 EU各国官庁 先行調査 異議申立 出願公告 不容認 容認 容認 不服申立 登録 不容認 18 SHIGA 商標:マドリッド・プロトコル International Patent Office • 概要 – 加盟国の一国(本国)に出願・登録されている商標を基礎として、 保護を求める加盟国(指定国)を指定してWIPO国際事務局に本 国官庁を経由して国際出願 – 国際登録簿に商標が国際登録 – 指定国の官庁が1年(又は、宣言により18ヶ月)以内に拒絶理由 を通告しない限り、指定国において保護される • 日本 – 2000年3月14日 • 言語 – 英語、フランス語 19 SHIGA International Patent Office 商標:マドリッド・プロトコル マドプロを利用しない場合 マドプロを利用する場合 出願人 出願人 日本国特許庁 WIPO国際事務局 CTM A国 Z国 CTM A国 Z国 “権利の束”の取得を簡易、迅速、 低コストで可能とする 20 SHIGA International Patent Office 商標:出願統計 日本から海外への商標出願 10000 出願件数 8000 6000 中国 OHIM 4000 2000 0 1998 1999 2000 2001 2002 特許庁行政年次報告書2006年版より 21 SHIGA International Patent Office 商標:出願統計 マドリッド・プロトコルに基づく商標の国際出願動向 8000 7000 6000 5000 4000 3000 2000 1000 0 出願件数(本国官庁) 1000 800 600 400 200 0 2000 2001 2002 2003 2004 指定国数 日本から海外への国際登録出願件数 2005 2004年にECが加盟 特許庁行政年次報告書2006年版より 22 SHIGA 意匠:共同体意匠制度 International Patent Office 2003年1月1日より、EU域内全域に権利が及ぶ単一意匠制度が開始 特徴 権利期間: 出願から5年、5年毎の更新で最長25年 多意匠出願: • 出願人、創作者、意匠分類(ロカルノ分類)が同一であることを条件 に、複数の意匠を1出願に含めることが可能。 • 2件目以降の意匠の費用は、1件目の半額分加算 • 1出願に含める意匠の数に制限なし 出願言語: 共同体商標制度と同様 審査: • 方式審査と限定された実体審査で登録(意匠の規定を満たすか、 公序良俗に反しないか) • 新規性、独自性は、登録後(無効宣言の申請)に争われる 侵害訴訟: 共同体意匠裁判所にて審理 23 SHIGA International Patent Office 意匠:出願統計 日本から海外への意匠出願 8000 出願件数 6000 中国 OHIM 4000 2000 0 2000 2001 2002 2003 2004 2005 欧州共同体意出願では一出願複数意匠が認 められることから、意匠数を示す 特許庁行政年次報告書2006年版より 24 SHIGA International Patent Office 欧州における知財制度 知的財産制度の層構造 共同体全域 指定された国 各国 特許 (共同体特許制度) 欧州特許制度 ○ 商標 共同体商標制度 - ○ 意匠 共同体意匠制度 - ○ 25 SHIGA 欧州における知財制度 International Patent Office 権利付与と行使との関係 制度 権利付与主体 (共同体特許制度) 欧州特許制度 権利行使 (共同体特許裁判所) EPO(欧州特許庁) 各国裁判所 各国特許制度 各国特許商標庁 共同体意匠・商標制度 OHIM(共同体意匠商標庁) 共同体意匠商標裁判所 各国意匠・商標制度 各国特許商標庁 各国裁判所 26