...

SRO 年報平成 13 年度版

by user

on
Category: Documents
26

views

Report

Comments

Transcript

SRO 年報平成 13 年度版
競艇の交付金による日本財団の助成金を受けて作成しました
SRO 年報平成 13 年度版
(マラッカ・シンガポール海峡の情勢)
2002 年 12 月
社団法人
日本海難防止協会
シンガポール連絡事務所
はじめに
SRO 年報平成13年度版(マラッカ・シンガポール海峡の情勢)をお届けします。本年
報は平成13年4月∼平成14年3月の間にマラッカ・シンガポール海峡で発生した、海
賊事件、海難事故及び海洋汚染事故について概観するとともに、関係者による取組みや新
たな動向について説明したものです。
平成13年には、9月11日の米国における同時多発テロとそれに続く対アフガン戦争
という2つの大きな事件が発生し、テロリストによる一般市民や公的施設を対象とした攻
撃の脅威の存在が明らかになりました。シンガポールでは、いち早く、港・空港でのセキ
ュリティを強化するとともに、12月には、13名のイスラム過激派「ジュマ・イスラミ
ア(イスラム共同体)」メンバーを含む15名を逮捕しました。イスラム教徒の多いインド
ネシア、マレーシアにおいても、首脳がテロリズムに対しては断固たる態度をとることを
宣言するとともに、米国主導の対アフガン戦争にも支持を表明しました。
世界的ネットワークを持つと言われるテロリスト集団とマ・シ海峡の海賊とは決して同
一のものではありませんが、そのようなテロ集団が船舶・船員や臨海施設を対象とした攻
撃をする可能性は排除できず、また、両者は海上治安対策の面で共通する点があると言え
ます。
海賊対策については、10月に東京で開催された政府間の「海賊対策アジア協力会議」
で、(1)情報ネットワークの構築、(2)キャパシティ・ビルディング、(3)海賊の防止及び
抑止のための国際協力を主な内容とする地域協力協定の締結が提案されました。海上保安
庁も、12月にはタイと海賊対策連携訓練を行い、平成14年3月にはジャカルタで第2
回の海賊対策専門家会合を開催するとともに、インドネシアと海賊対策連携訓練を実施し
ました。
海難・海洋汚染事故としては、6月にジョホール水道で発生したケミカルタンカー「イ
ンダ・ルスタリ」の転覆事故が挙げられます。流出したフェノールにより付近の養魚場に
約 1,500 万円の被害が生じましたが、この事故を受けて、ジョホール港湾庁はケミカル防
除対策を充実させました。また、シンガポールでも5月に、ケミカル産業協議会が、ケミ
カル流出時の対応サービスを提供する「アジアケミカル輸送緊急センター」を設立する等、
対応が難しいといわれてきたケミカル流出対策についても取組みが具体化していることが
注目されます。
この他、当事務所が参加した各種国際会議、マレーシア及びインドネシアに対して実施
した現地調査等の結果もとりまとめてありますので、これらが、少しでも皆様のご参考に
なれば幸いです。
平成14年12月
(社)日本海難防止協会シンガポール連絡事務所
所長
志村 格
目 次
第1編
海賊事件の実態と海賊対策
第1章 総論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
第2章 海賊事件の実態
第1節 海賊事件の発生状況∼IMB 年次報告書より∼・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
第2節 マラッカ海峡における海賊事件の新たな傾向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12
第3節 インドネシア・カリムン島の調査結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
第4節 雑船を狙ったハイジャック事件の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
第3章 海賊対策のその後の進展
第1節 マラッカ・シンガポール海峡海上治安機関の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
第2節 インドネシア海上警察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
第3節 マレーシア海事執行調整センター ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
第4節 IMO・国連における海賊対策の動向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
第5節 第4回国際海事局(IMB)海賊対策会合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29
第6節 ICS 等国際海運団体による海賊問題会合 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32
第7節 海上保安庁・タイ海上警察・港湾局による海賊対策連携訓練 ・・・・・・・・・・ 35
第8節 ハイジャック事件における船舶位置自動通報装置の効果 ・・・・・・・・・・・・・・ 37
第9節 メダン・ベラワン港調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 39
第2編
航行安全対策
第1章 総論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 41
第2章 航行安全対策
第1節 マレーシア・ジョーホール VTS・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43
第2節 インドネシアの港湾システムの全体像 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 46
第3節 マラッカ・シンガポール海峡に関する航行安全アンケート調査 ・・・・・・・・ 48
第3編
海洋汚染事故の実態と防止対策
第1章 総論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 53
第2章 油流出事故と防止対策
第1節 ICOPCE 会議 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54
第2節 マラッカ海峡会議 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 59
第3節 海上電子ハイウエー作業部会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62
第4節 3国合同流出油訓練 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65
第3章 ケミカル流出事故と防止対策
第1節 ケミカル流出緊急対応 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66
第2節 シンガポール港におけるケミカル流出対応訓練 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68
第3節 ジョホールバル港ケミカル対策調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 69
第4編
その他
第1章 日本海難防止協会シンガポール連絡事務所業務実績 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 73
第2章 関連情報(新聞記事)
第1節 海賊 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 76
第2節 海難、航行安全 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 119
第3節 海洋汚染 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 126
第4節 海運・港湾 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138
第5節 社会・経済 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 166
第1編 海賊事件の実態と海賊対策
第1章 総論
2001 年における海賊及び船舶に対する武装強盗事件(以下「海賊事件」という。
)の発生
件数は、国際海事局(IMB)海賊情報センターの統計によると、全世界で 335 件であり、
前年の 469 件(過去最高)に比べ 28.6%の減少を示しています。これまで、海賊事件の発
生件数は、統計をとり始めた 1991 年から前年の 2000 年まで、増加傾向を示してきました。
ここにきて、やや傾向に変化が見え始めたといった感がありますが、海上交通の大動脈で
あるマラッカ・シンガポール海峡は海賊多発地域であり、我が国にとっても、決して見過
ごすことのできない大きな問題となっています。
マ・シ海峡における海賊事件の新たな傾向としては、マラッカ海峡に面したスマトラ島
北部の海域において、船舶の乗組員が人質に取られ身代金を要求されるという事件が続い
て発生しました。犯人像について、一部のマスコミは、インドネシアからの分離独立を求
めるアチェのゲリア組織(自由アチェ運動)が「マラッカ海峡を通航する船舶は、自由ア
チェ運動から許可を得なければならない」と発表したことを受け、これらの人質身代金要
求事件との関連性を指摘していますが、確定的なことは判明していません。
海賊の正体は何か?といったことがよく議論されますが、前述の人質身代金要求事件の
ようにゲリラ組織ではないかとされたり、また、アロンドラ・レインボー号事件のような
ハイジャック事件においては、国際犯罪組織の関与が明らかになっている反面、夜陰に乗
じて船を襲い船員の金品を強奪するといった多くのケースでは、経済的に困窮した海峡付
近の漁民が行っていると言われたりしています。また、特定の地域では国家警察や海軍の
一部の者が海賊行為に関与しているといったことも言われており、その実態は、海賊行為
の規模・態様によっても異なっています。このように、一慨に海賊事件といっても、その
実態は多様かつ複雑であり、これが海賊撲滅を一層難しくしている要因の一つでもありま
す。
マ・シ海峡の海賊事件に対処するため、同海峡沿岸国であるインドネシア、マレーシア
及びシンガポールでは、それぞれの国の海上警察組織が単独で海賊対策を実施するととも
に、共同で対処するための取り組みも行われていますが、ある国の領海内で海賊を行い他
の国の領海へ逃亡した場合等には、国家管轄権という大きな壁が立ちはだかり、なかなか
思うような効果が上がっていなのが実状です。
この海峡沿岸三国の中では、シンガポール沿岸警備隊が装備的にも勢力的にも、一番し
っかりとした組織ですが、その守備範囲はシンガポール海峡のシンガポール領海内に限ら
れています。マレーシアの海上警察も昨年から海賊に対して威嚇射撃を行う等警備を強化
し、それなりの成果を挙げていますが、インドネシアについては、そもそも、実質的な取
締権限がどの組織にあるのか、つまり、海上警察なのか、海軍なのか、海運総局警備救難
局なのか、また、どの組織が一義的な責務を有しているのかなどが不明であり、かつ、装
備についても、海賊側にも劣ると言われるほど非近代的なものとなっています。
1
海賊対策については、沿岸当事国のみならず、国際海事機関(IMO)においても、積極的な
取り組みが行われています。1998 年から 2000 年にかけて実施された IMO 海賊対策プロジ
ェクト第1フェーズに引き続き、新たに第2フェーズが開始されました。また、
「海賊捜査
コード」の策定、IMO 識別番号の船体への表示などの取り組みが行われています。また、
民間組織についても、国際海事局が海賊情報センターを運営したり、インタータンコ他国
際海運団体が海賊をテーマにした会合を開催するなど積極的な取り組みを行っています。
更に、マラッカ・シンガポール海峡の利用国の一つである日本も、2000 年4月に開催さ
れた海賊対策国際会議以降、海上保安庁が定期的に巡視船、航空機を東南アジアに派遣し、
海賊パトロールや沿岸国海上警備機関との海賊対策連携訓練を実施したり、海賊対策専門
家による会合を定期的に開催したり、東南アジアの海上警備機関から留学生を受け入れる
といった取り組みを実施しています。2001 年の 10 月には、アジアにおける海賊対策のた
めの地域協力協定締結に向けての取り組みも始まりました。
しかしながら、海賊問題のうち、発生件数の大部分を占める追いはぎ的な海賊について
は海上警備の強化が有効であると考えられますが、それとてもマ・シ海峡の全域にわたっ
て常時パトロールを実施するといったことは無理であり、さらに、ゲリラ組織・テロ組織
によるものや、麻薬組織を含む国際シンジケートがからむものについては、海上警備の強
化だけでは対応しきれないものがあります。昨年来、海賊対策として、各国海上警備機関
の能力向上、海上警備機関間の連携や情報ネットワークの整備が有効であるとの国際的な
共通認識が得られ、関係国の関係機関、民間団体などが一致団結し海賊対策に取り組んで
いるという姿勢は十分評価できるものであり、海賊撲滅のため継続的にねばり強く実施し
ていくことが大切であると考えられます。
2
第2章 海賊事件の実態
第1節 海賊事件の発生状況∼IMB 年次報告書より∼
国際海事局海賊情報センター(以下、単に「IMB」と言う。
)による 2001 年の海賊事件
発生状況は以下のとおりです。
なお、IMB レポートでは、海賊の定義について、
「海賊行為とは、盗難やその他の犯罪行
為或いは暴力を振るう目的で、船舶に乗り組む全ての行為」としており、公海その他いず
れの国の管轄権にも服さない場所における行為に限定する国連海洋法条約の定義より広く
なっています。
また、既遂、未遂事件も含めて海賊件数として計上されています。
ちなみに 2001 年の海賊件数は 335 件とされているが、そのうち 238 件が既遂、97 件、
約 30%が未遂事件となっています。
1
総件数
1991 年以降、全世界で発生した海賊件数は増加傾向を示しています。
特に、1998 年から 2000 年にかけては 202 件から 469 件へと 2 年間で 2 倍以上に急
激な増加傾向を示しました。
なお、2001 年に発生した海賊事件は 335 件。IMB 統計史上、過去最高を記録した
2000 年の 469 件から 135 件、28.6%減少しました。(図 1)
図1 海賊発生件数の推移
件
500
469
450
400
335
350
300
300
250
228
247
202
188
200
150
107
106
103
1991
1992
1993
100
90
50
0
年
1994
1995
1996
3
1997
1998
1999
2000
2001
2
海域別発生件数
2001 年に発生した 335 件の海賊事件を海域別にみると、インドネシアが 91 件と最
も多く全体の約 27%を占め、次いでインドが 27 件(8%)
、バングラディシュが 25 件
(7%)、マレーシアが 19 件(6%)
、マラッカ海峡が 17 件(5%)と続いています。
インドネシア、マレーシア、マラッカ海峡、シンガポール海峡を合計すると 134 件、
全体の 40%を占めています。(図 2)
なお、ここでいうマラッカ海峡とは、西端をインドネシア・スマトラ島北端からタ
イ・プーケット島に至る線、南東側をマレーシア南端のタンジョン・ピアイからカリ
ムン・クチル島を結ぶ線で囲まれた海域、また、シンガポール海峡は、マラッカ海峡
南東境界線から、東端はマレーシア半島東端からホースバーグ灯台を経てインドネシ
ア・ビンタン島に至る線に囲まれた海域とされています。上記海域で発生した海賊事
件については、それがインドネシア、マレーシア、シンガポールの領海内で発生した
ものであっても、マラッカ海峡あるいはシンガポール海峡として計上され、再掲値で
はないので注意が必要です。
図2 海賊事件発生件数(2001年・海域別)
インドネシア
27%
その他
45%
シンガポール海
峡
2%
マラッカ海峡
5%
インド
8%
バングラディ
マレーシア
シュ
6%
7%
海域名
件数
インドネシア
91
インド
27
バングラディシュ
25
マレーシア
19
マラッカ海峡
17
その他
149
合計
335
また、海域別にみた海賊事件発生件数の推移をみると、2001 年には減少しているも
のの長期的に見るとインドネシアの増加傾向が顕著です。また、マラッカ海峡は 1999
年から 2000 年にかけて 2 件から 75 件へと急激な増加傾向を示しましたが、2001 年は
17 件に減少しています。
その他、マレーシアはゆるやかな増加傾向、シンガポール海峡は 1999 年の 14 件を
ピークに減少しています。
(図 3)
4
図3 海賊発生件数の推移(海域別)
140
インドネシア
マラッカ海峡
バングラディシュ
インド
マレーシア
シンガポール海峡
120
100
80
60
40
20
0
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
3
インドネシア
55
49
10
22
33
57
47
60
115
119
91
マラッカ海峡
32
7
5
3
2
3
0
1
2
75
17
バングラディシュ
0
0
0
2
2
4
9
9
25
55
25
インド
0
5
1
0
8
11
15
12
14
35
27
マレーシア
1
2
0
4
5
5
4
10
18
21
19
シンガポール海峡
0
0
0
3
2
2
5
1
14
5
7
地域別発生件数
2001 年に発生した海賊事件を地域別にみると、東南アジアが 170 件と全体の 51%、
過半数を占めています。
以下、アフリカ 86 件(26%)インド洋 25 件(7%)、アメリカ 21 件(6%)の順に
続いています。
(図 4)
また、その推移をみると、特に東南アジアにおける海賊件数が 1998 年から 2000 年
にかけて僅か 2 年間で 2 倍以上に急激に増加(99 件→262 件)しましたが、2001 年に
は 170 件へと約 35%減少しています。
また、総件数が 2001 年には減少したなかで、アフリカ、アメリカ地域が増加傾向を
5
維持しています。(図 5)
図4 地域別海賊事件発生件数の割合(2001年)
その他
10%
アメリカ
6%
インド洋
7%
地域別
件数
東南アジア
170
アフリカ
86
インド洋
25
アメリカ
21
その他
33
合計
335
東南アジア
51%
アフリカ
26%
図5 地域別・海賊発生件数の推移 .
300
東南アジア
インド洋
アフリカ
アメリカ
その他
250
200
150
100
50
0
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
東南アジア
102
70
85
70
118
141
111
99
167
262
170
インド洋
0
5
3
3
16
24
37
22
45
93
25
アフリカ
0
0
7
6
20
25
46
41
55
68
86
アメリカ
0
0
6
11
21
32
37
35
28
39
21
その他
5
31
2
0
13
6
17
5
5
7
33
6
4
被襲撃船舶の船主国別割合
2001 年に襲撃された船舶の船主国別割合をみると、ギリシャが 50 隻(16%)を占
め、次いでシンガポール 45 隻(13%)、ドイツ 20 隻(6%)、マレーシア、キプロスが
それぞれ 18 隻(5%)となっています。
(図 6)
なお、日本は 11 隻(3%)となっています。
(※2001 年のレポートから掲載されることとなった新しい統計です。
)
図6 被襲撃船舶の船主国別割合(2001年)
ギリシャ
16%
その他
40%
ノルウェー
3%
5
シンガポール
13%
日本
3%
英国
4%
香港
5%
ドイツ
6%
マレーシア
5%
キプロス
5%
地域別
ギリシャ
シンガポール
ドイツ
マレーシア
キプロス
香港
英国
日本
ノルウェー
その他
計
件数
50
45
20
18
18
16
15
11
11
131
335
人的被害
2001 年に海賊事件による人的被害は 331 人となっており、2000 年の 480 人と比べ
ると 149 人(31.0%)の減少となっています。
人的被害の推移をみると、1994 年までは 50 名前後で推移していたものが 1995 年に
410 人と急激に増加しています。1997 年には 643 人を記録していますが、以後は 480
人前後でほぼ横ばい状態となっています。海賊事件数の増加傾向とは対照的です。(図
7)
2001 年の海賊事件による人的被害を海域別にみてみると、インドネシアが 100 人と
全体の 30%を占めており、次いで、ソマリア 48 人(14.5%)
、マラッカ海峡 27 人(8.2%)
となっています。(図 8)
一方、海賊による死亡者数についてみると、2000 年の 72 人(さらに 26 人が未だ行
方不明)から 2001 年には 21 人に減少しています。(図 9)
また、その推移をみてみると 1998 年まで顕著な増加傾向を示し 1998 年には 78 人
となったものが 1999 年には一挙に 3 人にまで激減、そして 2000 年に再度急激に増加
しています。
7
海賊事件を武装・非武装別にみてみると、武装海賊による海賊事件が増加傾向を示
しており、上記の殺傷事件の増加傾向の要因として考えられます。
(図 10)また、武装
海賊の中でも、拳銃による海賊事件が増加傾向を示しており、総件数の減少とは対照
的に、海賊事件の深刻性は増加していると言えます。(図 11)
図7 海賊事件による人的被害(人)
700
643
600
485
500
480
473
410
400
331
293
300
200
100
42
58
14
29
0
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
図8 海賊事件による人的被害(2001年・海域別)
シンガポール海
峡
4%
その他
18%
インドネシア
31%
ブラジル
5%
タンザニア
6%
バングラディシュ
6%
インド
7%
ソマリア
15%
マラッカ海峡
8%
8
海域名
件数
インドネシア
100
ソマリア
48
マラッカ海峡
27
インド
24
バングラディシュ
21
タンザニア
21
ブラジル
18
シンガポール海峡
14
その他
58
合計
331
図9 海賊事件による死亡者数の推移(人) .
90
78
80
72
70
60
51
50
40
30
26
26
21
20
10
0
0
1991
3
1992
0
0
1993
1994
3
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
図10 武装・非武装海賊の推移 .
250
223
217
200
163
150
117
109
100
126
106
97
82
50
59
46
55
47
38
28
46
36
0
1991
1992
1993
1994
1995
1996
9
1
1997
2
1998
1
1999
3
3
2000
2001
図11 武装海賊の推移
140
120
拳銃
ナイフ
100
80
60
40
20
0
1991
6
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
船舶の状態別発生件数
2001 年に発生した海賊事件のうち、約半数の 156 件(46%)が錨泊中に発生してい
ます。次いで、航行中が 130 件(39%)、岸壁停泊中が 47 件(14%)となっています。
(図 12)
図12 海賊襲撃時の状態(2001) .
不 明
1%
岸壁停泊中
14%
航 行 中
39%
錨 泊 中
46%
10
岸壁停泊中
47
錨 泊 中
156
航 行 中
130
不
明
2
合
計
335
7
ハイジャック事件の発生状況
2001 年におけるハイジャック事件は 16 件で、2000 年の 8 件に比べ倍増しました。
ハイジャック事件の推移をみると、1991 年以降急激に増加し、1997 年、1998 年には
年間 17 件を記録したものの、以降は減少傾向に転じたが、2001 年にはまた増加して
います。
ハイジャック事件の海域別発生状況をみると、マレーシア 6 件、インドネシア 4 件、
マラッカ海峡 2 件とこれら3海域で 12 件、全体の 75%を占めています。
(図 13、14)
(※ハイジャック事件とは、船舶の貨物、船体を乗っ取る意思を持って、船舶のコン
トロールを奪う行為とされています。)
図13 ハイジャック発生件数の推移
件
18
17
17
16
16
14
12
12
10
10
8
8
6
5
5
4
2
1
1
0
0
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
図14 ハイジャック事件発生件数(2001年・海域別)
インド
6%
南シナ海
6%
その他
13%
マレーシア
37%
マラッカ海峡
13%
インドネシア
25%
地域別
件数
マレーシア
6
インドネシア
4
マラッカ海峡
2
南シナ海
1
インド
1
その他
2
16
11
第2節 マラッカ海峡における海賊事件の新たな傾向
1
人質身代金要求事件の発生
最近になって、マラッカ海峡、特にそのインドネシア沿岸北部海域において、船舶の乗
組員が人質に取られ、身代金が要求されるという事件が続いており、これまでとは様相の
違うさらに深刻な傾向として、関係者の間で憂慮する声が高まっています。
当事務所が把握している事件は以下のとおりです。
(1)
「Arbey Jaya」号事件(IMB 海賊情報センター情報)
4月 25 日、インドネシア・カンピ島付(べラワン港北部)において、航行中のインド
ネシア籍スピードボート「Arbey Jaya」号が、拳銃で武装した海賊にハイジャックされ、
3名が人質に取られ、身代金が要求された。
(IMB 海賊情報センターによれば、人質に取られたのは日本人との情報もあったが、
未確認情報の模様。なお、人質は解放された可能性が高いとのこと。
)
(2)
「Tirta Niaga Ⅳ」号事件(IMB 海賊情報センター情報)
6月 25 日、マラッカ海峡北部インドネシア側海域(ジャンボアエ沖)において、機関
部品修理中のインドネシア籍船「Tirta Niaga Ⅳ」
(マレーシア・バターワースからイン
ド向け。パームオイル 2,850 トン積載)が海賊に襲撃された。海賊は、同船及び乗組員の
所有物を奪った後、船長及び2等航海士を人質として誘拐し、身代金を要求した。
その後の交渉により、2等航海士は解放されたものの、船長は依然として拘束されたま
まの状態となっている。なお、同船は、6月 27 日、マレーシア・ペナン島に無事到着し
ている。
(3)
「Ocean Silver 号」事件(ストレーツ・タイムス、IMB 海賊情報センター情報)
8月 25 日頃、インドネシアからマレーシア・ルムへ石炭を輸送中のホンジュラス籍船
「Ocean Silver 号」
(343 総トン、乗組員 12 名、Tanoto Guan Hai(シンガポール)所
有)が、マラッカ海峡北部バンダル・アチェ沖(ジャンボアエ沖との情報もあり)にて襲
撃された。
乗組員 12 名のうち6名が人質となり、身代金が要求された。交渉の結果、全員が解放
された。
2
犯人像等
犯人像について、一部マスコミは、分離独立を求めるアチェのゲリラ組織(自由アチェ
運動)が先日、
「マラッカ海峡を通航する船舶は、自由アチェ運動から許可を得なければな
らない」と発表したことを受け、これら事件との関連性を指摘していますが、情報筋によ
12
れば自由アチェ運動から犯行声明は行われていないことや、別グループによる犯行である
との情報が寄せられているとのことで、犯人像は未だ把握されておりません。
また、これらが一連の組織的犯罪なのか偶発的なものなのかについても定かではありま
せんが、IMB 海賊情報センター所長によれば、通常、この手の犯罪は人質が解放されれば
それで良しとし、以降の煩わしい警察当局からの調査を回避するため、当局へ通報しない
ことが多く、故に、これまでに報告されている3件以外にも、実際にはもっと多くの類似
犯があると推測されるとのことでした。
また、いずれの場合も身代金は支払われていると考えるのが妥当であり、それが新たな
事件を助長させているとも考えられるとのことでした。
このような深刻な状況を受けて、IMB 海賊情報センターは、マラッカ海峡における海賊
事件が新たな傾向を示し始めたこと、そしてそれが相当に深刻であること等を踏まえ、イ
ンドネシア、マレーシア、シンガポール当局に対して、一層の取締り強化を要請するレタ
ーを発出したとのことです。
いずれにしても、マラッカ海峡北部インドネシア沿岸域、特に、べラワン港からジャンボ
アエ沖は要注意海域と言えます。
バンダアチェ
マラッカ海峡
ジャンボアエ
べラワン港
人質事件
13
第3節 インドネシア・カリムン島の調査結果
平成13年8月13日(月)∼15日(水)の間、フィリップ・チャネルにおける海賊
事件が、同島付近を根拠地として実行されている可能性が高いとされていたことから、イ
ンドネシア・カリムン島付近海域の調査を実施しました。
フィリップ・チャネル
カリムン島
1
訪問先
(1)インドネシア港湾当局関係者(カリムン島タンジョン・バライ港)
(2)インドネシア海上警察関係者(カリムン島タンジョン・バツ港)
2
結果概要
(1)港湾当局関係者の主な発言
① 海賊
先日、同島から出発し航行中の船舶を襲撃した海賊のうち6人が、その後、一般
陸上警察によって逮捕拘留されている。逮捕された6人は地元の人間で、同島北東
岸に居住していた。逮捕された当時、海賊は就寝していたとのこと。現在、裁判所
による判決を待っているところである。
但し、カリムン島に、いわゆる海賊集落、部落はない。
カリムン近辺での海賊事件は、客船埠頭に係留されている小型高速海上タクシー
14
(写真下)を地元の人間がハイヤーして実行している模様。
海賊は、生活苦からやむなく実行している行為である。仕事があって、ちゃんと
食事をすることができればしないだろう。今の経済的困窮が海賊行為助長の一因と
なっていることは否定できない。
② ネクタイを締めた海賊?
某国のドレッジャーがインドネシアの土砂を採取し、近隣の繁栄国へ運んでいる。
身なりは良くネクタイを締めてはいるが、彼らこそ、インドネシアの国土を奪う
海賊、すなわち「ネクタイを締めた海賊」である。
彼ら「ネクタイを締めた海賊達」は、企業間の商取引との姿勢で政府の関与を否
定するが、この種の問題は政府間の合意事項が先ず必要であると思う。
当局権限で、これらドレッジャーを捕捉すれば、彼らはたちまち反発し、自分の
家など一夜にしてなくなる。現に過去、20人の暴徒が当局関係者の家を取り囲ん
だことがある。
③ 港湾事情
旅客、貨物の海上交通輸送が非常に盛んで、インドネシア内はジャカルタ、メダ
ン間に大型貨客船が就航している他、バタム、ドマイに高速旅客船が就航している。
また、国際航路として、マレーシア(ククップ島)
、シンガポールとの間に高速旅
15
客船直行便が就航している。特に、シンガポール間は1日12便の高速旅客船が就
航している。
貨物船も併せると、毎月 3,500∼3,600 隻が入港している。
カリムン島東方沖には、沖荷役(オフショアトランスファー)のための海域「STS
海域」が設定されており、毎月80隻前後の貨物船が沖荷役を実施している。
島には人口 90,000 人が居住する。30%が地元民で残りは移住者。また、全人口の
15%が中国系。
最近、安価な物価、飲食費のため、マレーシア、シンガポールの人々から人気と
なっており、毎月 30,000 人(マレーシア 10,000 人、シンガポール 20,000 人)が訪
れる。
観光客の増加に従い、生活は以前よりも良くなって来ている。タクシードライバ
ーの悪質な客引き等は厳禁されており、観光客の誘致に努力しているところである。
カリムン島のランクも上がり、今ではバタム、ビンタンと同じランクになった。
(日
本で言えば中核都市のような地域のランク付けの話)
(2)インドネシア海上警察関係者
① 管轄区域
カリムンを管轄区域とするのは全国26管区ある海上警察のうちの1つで、規模
的には5番目に大きな管区である。内陸部まで続く河川、湖も管轄区域に含まれる。
②
役割
一般海上犯罪、木材・土砂・幼児・魚類密輸出入、密出入国、麻薬の取締り。
③
組織
管轄区域内に9基地。
Tanjong BATU、BLK PADAN、SLT BELIA、BUTON、PANIPAHAN、SINABOI、
KL.ENOK、
P.GALANG、S.GUNTUNG
更に、以下の9基地の新設計画あり。
P.BATAM、T.B.KARIMUN、T.PINANG、MORO、SENAYANG、DABO、
S.PANJANG、KUALA SIAK、
NATUNA
④
職員数
現在約200人。(定員約600人)
⑤ 装備
・巡視艇19隻(高速艇2隻(1996 年建造)、ファイバーグラス艇3隻(1993 年建
造)、漁船改造木艇 14 隻)
(写真)
・航空機1機(バタム島空港)
16
⑤ 問題点
インドネシア事情の多分に漏れず予算が少なく、燃料や装備の維持整備まで予算
を回すのに苦労しているとのこと。
過去、高速巡視艇が導入された頃には、フィリップチャネルの巡視警戒を積極的
に実施し、相当の効果を揚げたとのことであるが、現在は、高速巡視艇の稼働率も
悪く十分に効果を上げる取締りができない状況である。
17
第4節 雑船を狙ったハイジャック事件の概要
2001 年 9 月 14 日、東マレーシアのコタキナバルを出港し、インドネシアのバタム島向
け航行中であったタグボート「MAYANG SARI」号、及び同タグボートに曳航されていた
バージ「Daiho 88」
(空船)が、2001 年 9 月 18 日 2345、インドネシア SUBI BESAR 島
沖(コタキナバルとバタム島に直線通過地点にある島)で、武装した 12 人の海賊にハイジ
ャックされました。
海賊は、ハイジャック後、同船の乗組員を縛り目隠しの上拘束、同 25 日にバタム島のマ
ングローブ林にて解放しました。海賊は、乗組員を解放する際に、本件を警察機関等に通
報すれば、乗組員のみならずその家族まで殺すと脅迫し、脅迫を恐れた乗組員は船主、警
察への通報を行わないまま、まずインドネシア、ビンタン島のタンジョン・ピナンに到着
し、その後バタム島を経て、それぞれの実家に戻っています。
同船々長は実家に戻った後、事件のあらましを船主宛通報し、詳細が明らかになりまし
た。なお、海賊は、船用金、乗組員の金品には手をつけなかったとのことで、同船または
積荷の奪取が目的であったと考えられます。
IMB 海賊情報センターでは、情報を入手した 2001 年 9 月 27 日に特別警報を発し、同船
の行方を追っていたところ、翌 28 日午後、インドネシア当局がカリマンタンにおいて同船
を発見捕捉したとの情報が寄せられました。
インドネシア当局は同船を調査していますが、発見された当時、タグボートは無人状態
で、バージは消えていたとのことです。
同船の要目は以下のとおりです。
①
タグボート
・船
名 「MAYANG SARI」
・船
籍 マレーシア(ポートクラン港登録)
・総トン数 289 総トン
・全
長 32m
② バージ
・船
名 「Daiho 88」
・船
籍 シンガポール
・総トン数 2,132 総トン
・全
長 82m
18
第3章 海賊対策のその後の進展
第1節 マラッカ・シンガポール海峡海上治安機関の概要
マ・シ海峡はインドネシア、マレーシア、シンガポールのいわゆる沿岸3国の領海によ
り構成されています。マ・シ海峡で発生する海賊事件(正確には「海上武装強盗事件」)が
問題となっていますが、その取締の任にあたる警察当局について、簡単に御照会します。
シンガポール
マレーシア
インドネシア※
組織
警察沿岸警備隊
海上警察
海運総局沿岸警備局
概要
・国家警察組織の一部。
・国家警察組織の一部。
・従前から、マ・シ海峡の ・最近、マ海峡の海賊取締
に非常に積極的に取り ・マレーシア、シンガポ
極的に取り組んでいる。
組んでおり、昨年には2
ールと連携協力し、
・組織、船艇、装備、職員、
つの海賊グループを内
マ・シ海峡の海賊問題
施設の充実度は極めて
偵捜査の上、摘発・逮捕
に真剣に取り組みた
高い。
している。
いとしているが、勢
も極めて高い。
・国連海洋法条約に則り
ープを逮捕したとの情
報もある。
マ・シ海峡の海賊事件は ・新たに新型高速巡視艇
力、財源不足は否めな
い状況。
・海賊犯の刑事訴追権を
有していない。
正確には海上強盗事件
15 隻を導入するなど、 ・インドネシアは、海上
であり海賊事件ではな
装備も相当に充実させ
警察、税関、海洋漁業
いこと、また、シンガポ
ている。
省等関連政府機関で
ール領海内では海賊事 ・警察組織に「SMART」
構成される「ナショナ
件は発生していないこ
と呼ばれる特殊部隊を
ル・セキュリティ・ボ
という基本的スタンス。
設置しており、昨年11
ード」と呼ばれる海上
月の日本国海上保安庁
治安機構があり、その
との合同海賊対策訓練
中心的役割は海軍が
に投入していた。
担っている。
5基地(シンガポール島 2基地(ポートクラン、ジ 1基地(ビンタン島タン
内)
巡視船艇
部。
海賊問題には非常に積
・教育訓練制度、業務効率 ・今年4月に新たに1グル
基地
・運輸通信省組織の一
ョホールバル)
巡視艇99隻
ポートクラン基地20隻
ジョンウバン)
9隻
程度
但し、ジャカルタ・アル
ジョホール基地4隻程度
マダ基地(本部基地)か
19
ら大型巡視船2隻が交
代で長期派遣(3ヶ月交
代)されている。
航空機
無し
保有(機数不明)
保有(機数不明)
職員数
未調査
未調査
未調査
パトロー
ル体制
常時 12 隻を沖合いに配備 常時大型巡視船をマラッ
不明
カ海峡に配備。小型高速巡
視艇は24時間体制で事
件発生時に出動
※インドネシアの海上治安体制の一角を占める海上警察については第2節参照。
20
第2節 インドネシア海上警察
1
調査の経緯
先般、インドネシア海上警察リアウ州管区本部(タンジョン・バツ所在)を訪問し、マ・
シ海峡における海賊事件に絡め、組織概要、船艇勢力、任務等について調査を実施したと
ころ、インドネシア海上警察はインドネシア海域における犯罪訴追権限を有する唯一の機
関であるとされ、海賊対策上重要な位置付けにあることが判明しました。
このため、インドネシア海上警察の組織、船艇総勢力、定員、任務、他海上治安機関と
の協力関係、隣国との協力関係について、その全体像を把握することとし、ジャカルタに
所在するインドネシア海上警察本庁を訪問し調査を実施したものです。
2
調 査 日
平成13年9月18日(火)
3
訪問機関
インドネシア海上警察本庁(ジャカルタ)
4
結果概要
(1)組織
インドネシア海上警察は、インドネシア国家警察(Indonesian National Police)に
属し、3つのセクション(運用司令、後方支援、人事)、4つのユニット(巡視船艇、
維持管理、通信、捜査)から構成されています。
インドネシア海上警察の地方組織は、インドネシアの 27 州全てに管区本部を置き、
さらに 70 の Office Unit 及び 150 の Station を設置している。なお、Station の数につ
いては毎年設置が進み、その数は増加しているとのことです。
マラッカ・シンガポール海峡周辺では、タンジョン・バツにリアウ州の管区本部が
設置され、バタム島スクパン港に Station が設置されています。
なお、インドネシア国家警察は、2000 年に発せられた大統領令により、それまでの
インドネシア国軍傘下の組織から独立しています。
(2)勢力・定員
① 勢力(巡視船艇)
総計 306 隻の巡視船艇を所有しています。クラス別に、A∼C の3つのカテゴリー
に分類されていますが、大型船であるカテゴリーA の老朽化(1962 年建造、稼働率
55%∼65%)が顕著です。
21
他の小型艇であるカテゴリーB、C は、建造年も比較的新しく稼働率も高くなって
います。
なお、燃料、維持管理の予算措置として、大型船であるカテゴリーA は本庁から、
小型艇のカテゴリーB、C は州政府から拠出されています。
② 定員
本庁職員(ジャカルタ)1,119 人、地方職員 4,531 人となっています。
(3)任務
海上巡視警戒
海上における法令の執行
海軍、厚生省食品薬物取締局、法務省入管、海運総局沿岸警備局との協力
海上捜索救助
海上火災対応
(4)過去の主要犯罪件数統計
①
海賊
1998 年 26 件、1999 年 18 件、2000 年 33 件となっています。
②
薬物・銃器の密輸
1998 年 953 件 1,308 人、1999 年 1,833 件 2,590 人、2000 年 2,345 件 3,314 人となっ
てます。
③
密航
1998 年 1 件 18 人、1999 年 1 件 26 人、2000 年 2 件 178 人となっています。
(5)海賊対策
①
危険海域における巡視警戒
海賊取締りを目的の一つとする特別ミッション「OPERASI SIKAT GAJAH(象の櫛作
戦) 1999」を実行しています。
②
常習犯の監視
③
隣国(シンガポール、マレーシア)との協調パトロールの実施
シンガポール警察沿岸警備隊、マレーシア海上警察との間でそれぞれ、協調パトロー
ルを実施しています。
なお、この隣国との海上治安に関する協力体制は、各国の海上治安機関(海軍、海上
警察、沿岸警備隊、税関、入管)による総合的な運営委員会(Steering Committee)が
組織され基本的な枠組み等が決定されており、その枠組みの中で、各カウンターパート
ナー機関、例えば海上警察同士、海軍同士間において年1回程度の会合を開催し具体的
22
な合意事項が策定される仕組みとなっています。
協調パトロールはこの合意事項の一項目となっており、他の内容は、定期的な会合に
よる緊密な関係の維持、治安犯罪情報の交換、現場指揮官による相互通信、合同訓練等
となっています。
また、インドネシアは海軍、海上警察、海運総局沿岸警備局、税関、入管をメンバー
とする海上治安調整機関(バコカムラ)を組織し、上記隣国との海上治安協力体制の母
体となっていましたが、1999 年に解散したようです。
(理由は定かではないが、海軍によ
る強力な支配があったことから各機関の平等化を狙ったものとされている。
)
④ 国際警察との情報交換
⑤ 国内外の海上治安機関との情報交換
⑥
陸上警察との協力
(6)所管法令
① 刑法(PENAL LAW ACT 1946 NO.1)
② 漁業法(FISHERIES ACT 1985 NO.9)
③ 排他的経済水域法(EEZ ACT 1983 NO.5)
④ 森林管理法(FORESTRY ACT 1999 NO.4)
⑤ 入国管理法(IMMIGRATION ACT 1992 NO.9)
⑥ 向精神法(PSYCHOTROPIC ACT 1997 NO.5)
⑦ 関税法(CUSTOMS ACT 1997 NO10)
6
留意点
(1)海賊事情について
先方の把握するインドネシア海域における海賊事件数(2000 年 33 件)と IMB が発
表する海賊件数(2000 年 119 件)に相当の開きが見られますが、これは、インドネシ
ア当局と船舶間における通信、通報に関する問題と考えられます。
(2)海上警察の任務について
所管法令、犯罪統計、他海上治安機関との役割分担・調整が比較的良く整理されて
おり、海上警察がインドネシア海域における海上治安を担っている主要機関であると
考えられますが、海軍の存在も無視し得ないものがあります。
海賊事件の訴追権を有している唯一の機関とのことで、インドネシアにおける海賊
事件撲滅のために有効に機能しなければならない機関の一つと思料されるところです。
23
第3節 マレーシア海事執行調整センター
マレーシア海事執行調整センターは、マレーシアにおける海上法令執行機関(海上警察、
税関、入管、漁業省、海軍)の調整機関として位置付けられ、またこれまでの国際海賊対
策会議等においても、マレーシアにおける海事法令執行機関を代表する立場で積極的に発
言しています。
1
概要
「マレーシア海上執行調整センター」(MECC:Maritime Enforcement Coordination
Center)は、マレーシア首相府国家安全保障局に所属する組織です。
本部はクアラルンプールの北約 200Km の都市ルムットに所在しています。
ルムットは、
マレーシア海軍本部基地のある都市で、MECC は海軍基地の一角に設置されています。
MECC 所長は、マレーシア海軍からの出向者です。
2
役割
役割は、収集した海上治安に関係する情報を、海上警察、税関、入管、漁業省、海軍等
関係組織に情報提供することとされています。
3
施設、装備
MECC は、船艇、航空機等の実働部隊を有していません。
施設としては、クラン及びジョホールに設置されているマレーシア船舶交通情報センタ
ー(ポートクラン VTIS、ジョホール VTIS)(※1)に MECC 運用卓を設置し、海上警
察、海軍職員を常駐させ、マラッカ海峡における海上治安に関する情報を収集しています。
さらに、MECC 本部にポートクラン VTIS、ジョホール VTIS とリンクする集中情報セ
ンターを設置しています。なお、MECC としては、マレーシア船舶交通情報提供システ
ム(VTIS)用に設置された 8 つのレーダーサイトとは別に、MECC 用としてランカウイ
島にレーダーサイトを設置運用しています。
(※1)マレーシア船舶交通情報センターは、マラッカ海峡、特に分離通航路における
船舶交通の安全確保、強制船位通報制度の運用を目的として 1998 年 12 月から運
用を開始している施設。マラッカ海峡に沿って、8 つのレーダーを設置、ポートク
ランとジョホールに集中管理センターを設置し、レーダー映像による船舶交通の
監視、情報提供、航行中船舶との無線交信等を実施している。
4
職員
職員は 92 人∼100 人。
24
5
インドネシアとの協力
マラッカ海峡における海上治安に関するインドネシアとの協力関係については、インド
ネシアのビンタン島タンジュン・ピナンに設置されている「GUSKAMLABAR」
(グスカ
ムラバ)という組織がマレーシア MECC のカウンターパートナーとなっています。
GUSKAMLABAR(グスカムラバ)とは、マレーシア MECC のインドネシア版で、海
軍、海上警察、沿岸警備局、税関、入管、漁業監督省等の海上治安関係組織が参画してい
ます。
年 1 回の会合をそれぞれ交代で実施し、マラッカ海峡における海賊問題、海上治安問題
等について話し合う他、海上法令執行機関間における合同訓練を実施しています。
MECC 所長と意見交換、情報交換する当事務所志村所長
海軍基地の一角に所在する MECC
MECC 正門
25
第4節 IMO・国連における海賊対策の動向
1
IMO の動向
(1) IMO による海賊統計
国際海事機関(IMO)が加盟各国からの報告に基づき作成した海賊統計は以下のと
おりになっています。
①
2000年に発生した海賊及び武装強盗件数(以下、単に「海賊件数」という。)
は471件(72人死亡、129名負傷、2隻ハイジャック、3隻行方不明、1隻破
壊)。
1999年の同期間に比べ162件52%の増加を示している。
IMO が海賊統計を取り始めた1984年から本年(2001年)5月末までに発
②
生した海賊等件数の累計数は2,309件。
③ 地域別にみると、
地域
1999
2000
4
2
−
2
西アフリカ
36
33
−
3
マラッカ海峡
37
122
+85
南シナ海
136
140
+
インド洋
51
109
+58
東アフリカ
16
29
+13
南アメリカ
29
41
+12
地中海
増減
4
④
ほとんどの事件が船舶の錨泊中又は停泊中に領海内で発生している。
⑤
多くの報告において、ナイフや銃を持った5∼10人のグループに襲撃されてい
る。
※ 海賊の実態をより正確に反映する統計が必要との意見が IMO へ多く寄せられてい
るとのこと。これらの意見は、一般的に言われている「海賊行為」を一国の刑事管
轄権に属することが明確な「武装強盗行為」と区別すべきという意見と、
「既遂」
「未
遂」を区別すべきという2つの意見が大勢を占める。
IMO では、今後の IMO 統計はこれらの意見を踏まえて作成することとなった。
なお、現在、最も活用されている IMB(国際海事局)統計については、既に統計
は相当に細分化され区別されているとの姿勢を取っている。
26
(2)IMO 海賊対策プロジェクト第2フェーズ
1998年から開始された IMO 海賊対策事業は、2000年3月、インドのムンバ
イ地域セミナーでその第1フェーズを完了しましたが、海賊等が依然として多発し、航
行安全、海洋環境の脅威となっていることに鑑み、IMO は予算を勘案しつつ第2フェ
ーズを進めることを決定しました。
先般、その初回ミッションが、日本等の財政援助を得て、インドネシアのジャカル
タ及びシンガポールに派遣され、地域セミナーに参加した各国の対応状況、IMO ガイ
ドラインの履行状況、海賊の発生状況等の確認を行いました。今後、中南米及び西中
央アフリカへ評価ミッションを派遣する予定とのことです。
IMO では、「地域間合意」の必要性が今後の方向性として強調されています。
(3)海賊捜査コード
海賊によりハイジャックされた船舶が第3国に入港した際の捜査手続きについての
指針を定めた「海賊捜査コード」が次回、IMO 総会で決議されることとなりました。
なお、同総会における決議文のなかで、海賊事件多発海域に責任を有する政府に対
して、付近航行入港船舶にとって有効なアドバイスをその周知のために IMO へ報告す
ることを要請することとなりました。
(4)IMO 識別番号の船体への表示
偽船名、偽造書類による船舶の運航を防止することを目的として、IMO 識別番号を
船体外板及び主隔壁(機関室)に強制的に標記させることが提案されています。
2006年7月からの強制化を目指し、1974年 SOLAS 条約 11 章を改正すると
いうものです。
基本的には多数の国が賛成している模様ですが、SOLAS 条約改正に伴う技術的検討
の必要性から今後さらに詳細に検討される模様です。
2
国連(UNICPOLOS)関連
2001年5月7日から11日にかけて、ニューヨークにおいて開催された
「UNICPOLOS」
(United Nations open-ended Inforaml Consultative Process on Ocean
and Law of the Sea)会合においては、以下の結論が出されました。
(1)
国連総会は、各国に対して海賊及び武装強盗の防止、撲滅を図るため、適切な国
際機関等と協力することを求める。
(2) IMO は、STCW 条約の下、乗組員に対する海賊及び武装強盗に対する警戒訓練に
ついて検討すべきである。
(3)
船舶登録の適正化が、海賊事件等に関与している船舶の発見に有効であることを
27
踏まえ、IMO はその実行手段を検討すべきである。
(4)
国連総会は、各国に対してローマ条約の批准、武装強盗を訴追するための適切な
法体制の整備を求める。
(5)
効果的な海賊対策を実行するためには、地域間の協力が必要不可欠である。IMO
他各国が地域間協力のイニシアチブを取ることが望ましい。
(6) 船舶所有者、乗組員は海賊事件を適切な当局及び旗国を通じて IMO へ通報するこ
とが推奨される。
(7) IMO は「海賊捜査コード」を可及的速やかにファイナライズすべきである。
また、海賊及び武装強盗事件が多く発生している沿岸国は、適切な緊急対応計画を
策定すべきである。
28
第5節 第4回国際海事局(IMB)海賊対策会合
1
開催日 2001年6月26∼27日
2
開催地 マレーシア・クアラルンプール
3
出席者
35カ国から海運産業、政府、法執行機関、海軍、そのほか6つの国際機関
の代表等約165名が出席しました。
4
主催者 国際海事局、マレーシア海上警察、マレーシア海事研究所
5
協 賛 日本財団
6
特記すべき事項
(1)マレーシアの海賊対策
マレーシア海上治安調整センター(MECC:Maritime Enforcement Coordination
Center)のノール・アズマン第一司令官は、マラッカ海峡の海賊被害を減少させるに
は、海賊の隠れ家を陸上から急襲するという攻撃的な行動に出る段階に入ったのでは
ないかという意見を述べました。
また、マレーシア海上警察司令官のムハマド・ムダ氏は、マレーシア政府は最近3
千万リンギを費やし、20機の航空機と10隻の巡視艇を購入したこと、また昨年6
月以降、海峡内の危険海域で毎日22時から5時まで海賊対策パトロールを実施して
いること、昨年には、マラッカ海峡で活動していた2つの組織犯罪シンジケートを検
挙したこと等を説明し、マレーシア警察と警察航空隊は、領海内でのいかなる犯罪行
為を取り締まる能力を有していることを力説しました。
(2)海賊対策モデル法
バージニア大学法学部のサム・メネフィー教授は、CMI(Committee Maritime
International)が海賊及び海上暴力に関する国内法モデルの作成に取り組んでいると
し、同モデルの長所として、内容が項目的に分類されていることから、その一部でも
現存する国内法と自由に組み合わせて採用することができると説明しました。例えば、
タイやフィリピンではすでに海賊の求刑に関する法律があることから、同モデルにあ
る司法権や定義、海賊行為の報告等に関する法律を採用すれば包括的な海賊対策にか
かる法体制が整備されることになるとしました。
(3)アロンドラ・レインボー号の裁判経過
インド沿岸警備隊のバーマ氏は、1999年12月に発生したアロンドラ・レイン
ボー号にかかる15名のインドネシア人海賊は、これまで4回ムンバイの法廷に姿を
見せている、高名な弁護士を雇ったと言われているが、今年末までに判決が下される
ことが期待されているとしました。
29
(4)中国の対応
中国インターポールのアン氏は、過去中国で発見されたハイジャック船 Cheung Son
号、Siam XianXai 号、Marine Master 号、Global Mars 号の海賊逮捕について説明し
ました。しかし、どの事件についても証拠を集めるのに困難を極め、中には海外から
の協力を必要とする事例もあったとしました。なお、Cheung Son 号の海賊逮捕成功に
ついては、確かな証拠があったことから、外国人 1 名を含む海賊13名全員が死刑に
処せられたと説明しました。
(5)ファントムシップ
IMB のアビヤンカ氏は、暫定的一時的な船舶登録を許可している旗国があり、この
制度が犯罪者に利用されていると述べました。罪のない荷主がこういった犯罪の犠牲
になっており、船の特徴が変えられて積荷が輸送先に届いていない段階になって、騙
されたことに気がつくとしました。
そのような意味で、IMO・MSC74 で提案された IMO
ナンバーを船体の見える部分に永久に残るように記すという案が実現すれば、
「ファン
トムシップ」を運航する犯罪者は大きな打撃を受けるだろうとしました。
(6)インドネシアにおける海賊対策
会合主催者である IMB からの促しもあり、事前プログラムには組み込まれていなか
ったインドネシア海軍によるプレゼンテーションが急遽行われました。
インドネシア海軍によれば、西部方面軍を中心として海賊対策を積極的に実施して
いること、特にマラッカ・シンガポール海峡を中心とする海域における海賊対策につ
いて、バタム島にコマンドセンターを設置、その下部組織として、べラワン(スマト
ラ島メダン)、タンジョンピナン(ビンタン島)、パンカルバラム(バンカ島)
、ナツナ
にサブ・コマンドセンターを設置する将来計画を有しているとしました。
(7)船舶位置追跡装置
CLS アジアの Phillippe Courrouyan 氏は、船舶位置追跡装置が自社船舶の運航管理
にも用いることができること、Shiploc のセカンドババージョンが2001年7月から
販売される予定で、1分30秒毎の位置がわかるようになること、月々の使用料金が
250ドル程度であること等を説明しました。
(8)地域的取組の必要性
日本財団の寺島紘士常務は、地域の海賊対策への取り組みに関するプレゼンテーシ
ョンを行い、マラッカ・シンガポール海峡の海上治安を確保するためには、長期的な
戦略を構築する必要があり、関係政府と海運産業関係者とともにこれを進めていく上
30
で、日本財団がある一定の役割を担えるのではないかとしました。
さらに、海賊対策ばかりでなく、航行船舶の官制、航行援助施設の設置とメンテナ
ンス、油流出事故への対応や航路のパトロールなど、海洋秩序の安定を目的とする全
体的総合的な枠組みが必要で、沿岸国と利用者が協力し合うことで、このような提案
を具体化することができるのではないかとしました。
31
第6節
ICS 等国際海運団体による海賊問題会合
、バルチック国際海運同
2002 年 2 月 4 日シンガポールで、国際海運集会所(ICS)
盟(BIMCO)、国際独立タンカー船主協会(INTERTANKO)及び国際乾貨
物船主協会(INTERCARGO)の国際海運4団体主催の海賊問題に関する会合が
開催され、沿岸3カ国の当局者との情報・意見交換を行いました。IMO、IMB、日
海防シンガポール事務所も参加しました。
主催側4団体によるラウンドテーブル的な会合は定期的に開催されており、前回(な
いし前々回)の会合で海賊対策について本件のような会合を開くことが提案されたもの
で、海賊対策における民間機関の役割等について、4団体が沿岸3国政府機関と直接対
話することが主目的であり、この会合がおそらく初めての機会であると思われます。
1
参加者
海運団体側は、ICS ウェストファル・ラーセン会長、BIMCO エヴァラード会長、
INTERTANKO カールソン会長、INTERCARGO ツァオ会長他、沿岸3国側は、シン
ガポールの警察沿岸警備、海軍、海事港湾庁、海事研究所等、マレーシアの国家安全保
障局、海上警察、海軍、海事執行調整センター、海事研究所等、インドネシアの海運総
局沿岸警備局、海軍、在星大使館運輸アタッシェが参加し、この他に IMO ミトロプー
ロス事務次長と IMB ムクンダン局長が参加しました。
2
結果概要
(1)IMB による海賊事件の現状説明
2001 年の海賊発生件数は前年に比べ減少したものの、ハイジャック事件は 8 件から
16 件に増加するとともに、新しい傾向として、人質事件等が発生した。IMBとして
は、海賊年次レポートの中で、被襲撃船支配国表を新たに追加した。
(2)IMO による海賊対策の現状説明
(1992 年以降の IMO による海賊対策プロジェクトの概要説明の後)IMO は海賊対策
に取り組んで来たが、目に見える効果を上げておらず、現在、フォローアップミッショ
ンを実施中である。対策を有効ならしめるためには、各国は、IMO 回章 622、623 を
尊重すべきである他、海賊事件多発海域の特定をすべきである。また、被襲撃船舶の支
配国の海賊事件関係国への外交的接触を可能とすべきである。IMO以外にも、日本政
府、日本財団の海賊対策への取組み、地域のイニシアティブ等があり、IMOも今後地
域レベルで予定されている海賊対策会合(2 月末フィリピン、3 月インドネシア、日本)
に参加していきたい。
(3)マレーシア海事研究所による研究発表
32
同研究所は、独自の海賊事件統計や分析を行っており、それは、従来の IMB 統計や
海賊に関する定義と異なる。
日本の巡視船派遣計画には反対であり、むしろ、日本は、この地域の警察力の増強を
財政的に支援すべきである。
(4)討議
(沿岸国の取組みについて)
始めに、ICSより、国際海運4団体は、沿岸3国と何らかの直接的協力関係を構
築したいと希望している旨が述べられ、IMOからは、1999 年のIMO海賊対策会
合(シンガポール)において合意された地域協定が未だに実行されておらず、IMO事
務局長から 2 度に渡りレターを発出したが、ロシア、インド、シンガポール以外の国
からは全く反応がない等、取組みが余り進展していないことについての懸念が表明さ
れました。
これに対して、マレーシアからは、44 隻の巡視船艇をマラッカ海峡に配置、4∼
5箇所の海賊多発海域を特定し、巡視船艇を集中配置している等の取組みが紹介され
た後、今年のマラッカ海峡における海賊事件は、漁船が1隻襲撃されたのみで、商船
への襲撃事件は今のところ報告されていないとの説明がありました。また、マレーシ
アは、マラッカ海峡の治安維持に莫大な経費を注ぎ込んでおり、ICS 等の海運業界は
一定の財政支援をすべきではないか、或いは、海運業界が沿岸国と協力したいと言う
のであれば、まず国連海洋法条約第 43 条の具体的実行を検討、導入すべきではない
かと問い返す局面もありました。
シンガポールは、一国の管轄権に属する海賊事件と複数国の管轄権にまたがる海賊
事件に分けて考えるべきで、問題とすべきは後者であるとし、沿岸国間で、必要に応
じて連絡を行う体制は整えられているが、海賊情報の遅延や艦艇の事前配備の困難性
があると指摘しました。
インドネシアは、隣接国とは緊密な連携を実施しているが、海賊事件の多発には経
済的、社会的問題が背景としてあると述べるに留まりました。
(日本の取組みについて)
ICS より、日本の取組み、日本の地域へのイニシアティブは効果的か、との問いが
なされ、IMO は、日本にとって、マラッカ海峡は重要な位置付けにあるため、日本
がこの地域の海賊対策に取り組んでいるのであり、日本の取組みは歓迎されるべきで
ある、また、昨年 10 月の日本での会合で提案された地域協定の策定は効果を上げる
のではないか、と述べました。
次いで、シンガポールからは、
(おそらく日本の巡視船によるパトロールを指して)
日本とは外交的に対話をしてきており、日本は当地の状況を既に理解しているとの反
33
応がありました。
3
当事務所注
本件会合は、国際海運団体とマラッカ海峡沿岸 3 カ国との海賊問題に関する初めて
の意見交換の機会であり、その意味で大きな意義がありますが、同時に、ヨーロッパ
に本拠地を置く海運4団体側の、海賊問題に対する沿岸 3 カ国や日本の取組みについ
ての情報不足も明らかになりました。
今回の会合では、海運団体側の協力し得る分野に関する問い合わせに対して、沿岸
国が自国の警察力への資金援助を要望する等議論が初歩的な段階に留まっており、今
後、海運団体と沿岸 3 カ国等との協力関係が発展していくか否かは、このような会合
やワーキングレベルの会合が継続的に開かれていくかどうか等を見た上でないと一概
には判断できません。
他方、日本にとって留意すべき点は、①日本のこの分野でのイニシアティブがIMO、
IMB以外の国際団体にほとんど知られていないこと、②沿岸 3 カ国も日本の取組みに
対して一定の評価は与えているものの、日本の巡視船によるマ・シ海峡パトロール等に
ついては明らかに反対であること、③今後、アジア地域での海賊対策を検討していく際
に、政府当局、国際機関のみならず、海運団体も招請したり、検討状況について周知し
たりしていく必要があると思われること等です。
34
第7節 海上保安庁タイ海上警察・港湾局による海賊対策連携訓練
日本の海上保安庁は、最近の東南アジア周辺海域における海賊及び船舶に対する武装強
盗事件の多発・凶悪化を懸念し、海賊対策国際会議、海上犯罪取締セミナーの開催、東南
アジア諸国からの海上保安大学校への留学生の受入等各種の対策を推進しているところで
す。
さらに、この対策の一環として、本年度は、大型巡視船を年4回、航空機は年2回、東
南アジア周辺海域に派遣し、関係国を訪問のうえ相互理解の推進や連携訓練の実施などを
通じ、東南アジア海域の航行安全の確保に貢献しています。
本年度は、8月にシンガポールを、10 月にフィリピンを訪問し、海賊対策連携訓練等を
実施したところですが、これに引続く 12 月、ヘリコプター搭載大型巡視船「りゅうきゅう」
(船長 濱田 喜代治)をタイへ派遣し、タイ海上警察、港湾局とともに海賊対策連携訓練を
実施しました。
当事務所はこれまで、海上保安庁や日本財団が主体となって実施したシンガポール、マ
レーシアでの海賊対策国際会議への支援業務や、各種海賊対策国際会議への出席、海上警
備機関からの情報収集等、マラッカ・シンガポール海峡をはじめとする東南アジア海域で
発生している深刻な海賊事件への対策構築に一定の貢献をして来たところです。
今般、海上保安庁のタイ寄港、連携訓練実施の機会を捉え、当事務所所長志村がタイ国
家警察、海上警察、港湾局への表敬訪問に同行、当事務所の先方機関への紹介、海上警備
機関の現状、海賊関係情報の収集等を実施した他、タイ・バンコク南部のレムチャバン港
沖で実施された連携訓練を見学する機会を得ました。
連携訓練は、12 月 12 日、レムチャバン港沖にて、タイ海上警察巡視船3隻、王立タイ警
察航空隊航空機1機、タイ港湾局巡視船2隻、海上保安庁巡視船「りゅうきゅう」及び同
搭載機 MH619、同搭載警救艇、被害想定船としてチャーターされた貨物船1隻の合計船艇
8隻、航空機2機で実施されました。
訓練内容は、タイ沿岸公海上を航行中の貨物船「HARIN 号」が海賊に襲撃されたとの想
定で、被襲撃通報をタイ海上警察エマージェンシーセンターが受信、同センターがタイ関
係機関及び海上保安庁に情報を伝達、その後、海上保安庁が巡視船「りゅうきゅう」を派
遣し、海上警察及び港湾局と連携し被襲撃船及び救命艇から計6名を救助するまでの諸作
業を実施するものでした。訓練は、3機関の船艇に訓練調整官を互いに派遣のうえ実施し
たこと等から、初めての連携訓練であったにもかかわらず、スムーズに進行し無事終了し
ました。
日本の海上保安庁巡視船のタイ訪問ははじめてとのことでしたが、タイ側の海賊対策へ
の関心は高く、これまでに日本が講じて来た海賊対策へ積極姿勢を高く評価するとともに、
「りゅうきゅう」の滞在中は極めて友好的で、かつ「りゅうきゅう」側も訓練のみならず
35
他海上警備機関間の関係強化を目指した友好活動にも限られた人員をフル稼働させ、当初
の目的を十分に達したと考えられます。
今回の連携訓練に参画したタイ海上警察職員の中に、昨年実施された日本財団の招聘事
業で訪日し、日本の海上保安庁で研修を受けた方がおり、今回連携訓練の企画立案、巡視
船の受入準備に中心的役割を果たしていました。このような人的交流の必要性、重要性を
痛感するとともに、確実に実を結びつつあることを実感しました。
今後は、これら近隣諸国と構築した良好な関係を維持し、海賊対策等具体的な業務に結
び付けていくことが肝要かと考えます。
なお、巡視船「りゅうきゅう」はタイでの連携訓練終了後、帰国の途につきましたが、
昨年末に発生した不審船事件に休む間もなく出動したとのことです。
36
第8節 ハイジャック事件における船舶位置自動通報装置の効果
6月19日、マレーシアポートディクソンを出港し、東マレーシアのラブアン港向け
航行中のインドネシア貨物船「Selayang」号(4,050総トン、所有者 Petrojaya Marine
Sendirian Bhd (Singapore)、運航者 Shell Malaysia、軽油3,500トン積載、イン
ドネシア乗組員17名乗組)がマラッカ海峡でハイジャックされました。
本事件は、その約1週間後の6月27日、インドネシア海軍及び海上警察が海賊を逮
捕する結末を迎えることになりますが、それに至るまでの過程は、これまでのハイジャ
ック事件とは様相を異にするものでした。
それは、同船には船舶位置自動通報装置が装備されていたことから、ハイジャックさ
れた後も同船の位置がリアルタイムで把握され、事件解決に決定的な役割を果たしたか
らです。
具体的な装置名や同船の航跡は公表されていませんが、関係者によれば同船はシンガ
ポール海峡へ入る直前(イユ・クチル沖)に襲撃され、当初予定されていた航路を大き
く南に逸れ、ボルネオ島の南沖合いを経由して東方へ向かい、フィリピンへ抜ける針路
を取っておりました。
しかしながら、船主から同船の正確な位置を入手していた IMB 海賊情報センターが、
インドネシア当局へ位置情報を通報し続けた結果、遂にバリクパパンの北東約65海里
のサマリンダ沖でインドネシア海軍及び海上警察が取り押さえたものです。インドネシ
ア海上警察は、大小8隻の高速艇とヘリコプターを使用したとのことです。
発見された当時、同船の船名は「Wang Yu」と変えられていたとのことです。
当時乗船していたインドネシア人海賊10名は全員逮捕されるとともに、当時まだ船
内にいたインドネシア人乗組員17名全員が無事保護されました。積荷の軽油もまだ手
がつけられていない状態で発見され、同船はインドネシア海軍によりバリクパパン港ま
で曳航されています。
現在、逮捕された海賊の取り調べが続けられているということですが、報道によれば、
同船は積荷である軽油を売却するためにフィリピンへ向かっていたとのことです。
同船の位置が詳細に把握されているにもかかわらず、同船の発見逮捕まで約8日間と
いう日数を要したことは、今後の課題として検討すべき事項と考えられますが、船舶位
置自動通報装置の威力の高さが改めて認識される結果となりました。
37
38
38
ハイジャック地点
ハイジャック後の航跡
予定航路
捕捉
第9節 メダン・べラワン港調査
IMB の統計によれば、昨年1年間にインドネシアで発生した海賊事件は119件です。
その内訳をみてみると21件がメダン・べラワン港で発生し(ジャカルタ・タンジョンプ
リオク港は8件)、全体の約2割を占めていることから、メダン・べラワン港を調査しまし
た。
メダン・べラワン港
マレー半島
KL
スマトラ島
左はべラワン港の港湾図。港湾当局者によれば、同港は川港になっており、最近の入港船舶の大型化に伴い、水深
が不十分で、浚渫の必要性が出て来ているとのこと。
インドネシア海運総局沿岸警備隊の船艇。沿岸警備隊船艇の船内。海上警察の船艇、税関とともに基地を共有し
ていた。
39
沿岸警備隊船艇によるパトロールの状況。写真右は、停泊中船舶をリストにより逐次チェ
ックする係官。
べラワン港停泊中の船舶。インドネシア・スマトラ島北端に近いが、インドネシア有数の
規模を誇る港湾だけあって、多くの船舶が停泊し荷役をしていた。
アチェ∼べラワン∼ジャカルタ間を運航し
インドネシア海軍基地。ジェットフォイル、
ている大型旅客船。
大型上陸用舟艇等が配備されており、かな
りの規模と見受けられた。
40
第2編 航行安全対策
第1章 総論
マラッカ・シンガポール海峡は、我が国の生命線とも喩えられるように、原油や貨物を
満載した大型船が絶え間なく通航する海上交通の要衝です。また、このマ・シ海峡には、
世界第2のコンテナ取扱量を誇るシンガポール港があり、東南アジア地域の主要なハブ港
としての役割も果たしています。
これまで、マ・シ海峡を船舶が安全に航行できるよう様々な取り組みが行われてきたわ
けですが、この海峡はインドネシア、マレーシア及びシンガポールといった海峡沿岸国の
領海が相互に接し合っているため、航路の設定にしても1国単独で為し得るものではあり
ません。このため、沿岸3ケ国が協調しながら海峡全体を対象とした総合的な航行安全対
策を実施していく必要があるという特色を有しています。一方、海峡利用国である日本も、
沿岸3ケ国と協調しながら、これまで多大な貢献をしてきており、沿岸3カ国から相当の
評価を受けているところです。
このようなマ・シ海峡の航行安全環境が画期的に改善されたのは、国際海事機関(IMO)
に対し、分離通航方式に係る提案を沿岸3ケ国共同で行い、同提案が採択され、分離通航
方式及び強制船位通報制度を導入し、船舶交通センターの運用を開始した 1998 年以降のこ
とです。この制度に重要な役割を果たしている船舶交通センターは、現在、マレーシアに
は、首都クアラルンプール近郊のポートクラン、シンガポールとの国境に位置するジョホ
ールに1ケ所づつの計2ケ所、シンガポールには、中心部に近いタンジョンパガー及び西
海岸のパシルパンジャンの2ケ所に設置され、通航船舶に対し必要な安全情報等提供業務
を実施しています。
以上のような環境整備により、海難件数は劇的に減少したわけですが、航行安全対策を
講じる上は、実際に発生した海難事故に係るデータに基づき、航行安全対策実施の必要性
を判断するばかりではなく、海難事故には至らないものの、潜在的な危険性を有している
海域についても調べる必要があります。船舶運行者が実際にどのように感じているのかを
踏まえて、将来的な航行安全対策を講じていくため、当事務所は、2000 年末に、マ・シ海
峡を航行する船舶の乗組員を対象としたアンケート調査を行いました。その結果によると、
海難には至らないヒヤリハット的事例が随所で報告されており、まだまだ、航行安全対策
に関し改善の余地が多数残っていることを示唆しています。今後、更なる航行安全対策の
充実が期待されるところです。
一方、マ・シ海峡は、今後とも原油や貨物といった海上輸送の大動脈としての役割を担
い続けると考えられ、シンガポール港以外にも、マレーシアのポートクラン港、コンテナ
専用港のタンジュンプラパス港などの重要な港が存在します。インドネシアについては、
近代的な設備を備えた大規模な港は存在していませんが、世界最大の群島国家であり、ま
た、天然資源も豊富であるため、海上輸送が国の発展のため重要な役割を担っており、ス
マトラ島やリアウ州の港も将来的には発展することが予想されます。
41
マ・シ海峡にそれぞれ目的を異にした大規模な港が複数整備されることになれば、ます
ます通航船舶の数が増加し、更なる航行安全対策の充実が必要となってきます。近年は、
電子海図(ENC)
、船舶自動識別装置(AIS)
、ディファレンシャル GPS 等の最新の航行援
助装置を設置する船舶が増えてきており、これら最新の技術を導入することにより、航行
安全環境も更に改善されることが期待されています。沿岸 3 カ国により構成される技術専
門家グループ(TTEG)においても、新技術を用いた海峡の航行安全対策を検討するととも
に、国連海洋法条約第 43 条に示されたような海峡沿岸国と海峡利用国による国際的協力の
枠組み作りのための検討が始まりました。これまでマ・シ海峡の安全確保等のために多大
な貢献をしてきた日本としても、このような新たな状況に対応して、適切な協力のあり方
を考えていく必要があることは言うまでもありません。
42
第2章 航行安全対策
第1節 マレーシア・ジョホール VTIS
マレーシアには船舶交通情報システム(VTIS)が2個所あります。1個所はマレーシア
の首都クアラルンプール近郊のポートクラン VTIS、そしてシンガポールとの国境に位置す
るジョホール VTIS です。ここでは、ジョホール VTIS について簡単に報告します。
1
概要
(1)歴史
ポートクラン VTIS 同様に、1998 年 12 月 1 日、マラッカ・シンガポール海峡改正
分離通航方式、強制船位通報制度の発効とともに運用を開始しました。
(2)場所
マレー半島西部最南端に近いタンジョン・ピアイに建設されています。(図1)
建物の周囲はココナツ森に覆われていますが、高さ約 20 メートルに位置するコント
ロールルームは、360 度見渡せる構造となっており、担当海域が目視で良く観測でき
るよう工夫されています。
(写真1、2)
(3)担当海域
ジョホール VTIS は、マラッカ・シンガポール海峡のうちシンガポールに隣接する「セ
クター6」を担当しています。
(図2)
(4)内部機器
コントロール・ルームにあるコンソールは、DUTY OFFICER 用コンソール(写真
3)、オペレータ用コンソール(写真4)
、セキュリティ用コンソール、予備コンソー
ルの全部で4つ配置されています。
(5)当直体制
1直4人体制(オペレーター3人、DUTY OFFICER1人)の8時間勤務の3直制を
とっています。職員数は、4人 3直=12 人に、オペレーター、DUTY OFFICER に
それぞれ1人計2人の休暇要員を設置しており、全体としては 14 人体制となっていま
す。
2
シンガポール VTIS との情報交換について
隣接するシンガポール VTIS との強制船位通報制度に基づく通航船舶にかかる情報交
換は直接的には実施していません。従って、マレーシア(セクター6)とシンガポール
(セクター7)の境界を通過する船舶は、境界を通過する時点で、それぞれの VTIS へ
通報することを要します。
43
3
分離通航方式違反船について
韓国、中国、台湾、日本の漁船(注:マ・シ海峡を通過通航する比較的大型の漁船と
思われる)が分離通航方式に違反して、分離通航路を逆行する事例が多く見られるとの
ことです。特に、東航する場合に、西航ルートを真正面から反航する場合が多いとのこ
とです。
違反船舶に対しては、基本的には VHF 等による警告を行っていますが、マレーシア国
内法により罰金刑も科されることになっています。
写真1
写真3
概観(その1)
写真2
DUTY OFFICER 用
写真4
44
概観(その2)
オペレーター用
図1
ジョホール VTIS
ククップ島
図2
セクター6
セクター7
45
第2節 インドネシアの港湾システムの全体像
1
はじめに
世界最大の群島国であるインドネシアは、地域間輸送及び国内運輸システムの開発の
面で課題を抱えています。インドネシアの経済や社会が海や川を利用した輸送に大きく
頼っていることは明らかですが、インドネシア各港の現実や役割に関してはほとんど知
られていません。ここではインドネシアの港湾システムの全体像を追ってみたいと思い
ます。
2
インドネシアの州について
インドネシアの港湾システムを理解するためには、インドネシアの州政府について知
ることが大変役に立ちます。西のアチェから東のイリアンジャヤまで30の州があり、4
つのエリアに分けることができます。このようなエリア別の分類は、インドネシア統計
局(BPS)の港湾名録でも広く使われています。1997年版の港湾名録には、671
の公共港が掲載されています。マラッカ・シンガポール海峡は、エリア 1 に位置します。
3
港湾の分類
671の公共港は、さらに「(1)商業公共港」
「(2)非商業公共港」の2つに分類さ
れています。
(1)商業公共港
現在、117の商業港があるとされています。これらの港は、州政府港湾当局の傘
下にある第一、第二、第三、第四インドネシア港湾公社(通称「PTPelabuhan」
「Pelindo」
と呼ばれる。)の管轄にあります。(管轄区については、別添の地図を参照)
。これらの
商業公共港には、着桟、荷役施設が整備されています。
インドネシア港湾公社は州政府港湾当局の傘下にあります。インドネシア政府は、
1998年10月に国際通貨基金(IMF)と共同で企業救済措置を実施しましたが、
その資金490億ドル確保のため、これらの港の運営権を売却した経緯があります。
なお、インドネシア全体で117ある商業公共港のうち25港のみが、経済の発展
を期待できる地点にあると言えます。
インドネシアの主要港25港は表1の通りです。
(2)非商業公共港
現在、554の非商業公共港があるとされています。これらの港は、インドネシア
運輸省の地域事務所によって運営されています。基本的には、小さな港で着桟、荷役
施設が整備されていません。漁港として、または船の乗客が降りる上陸地点としての
み機能している港等です。
46
報道によれば、最近の地方分権化の推進に伴い、これら運輸省傘下の港についても、
州政府への移管が計画されているとのことです。
(3)私営ターミナルについて
インドネシア石油(プルタミナ)
、材木、化学肥料、石炭、造船、船の修理等の企業
産業界は、先に述べた117ヵ所の商業公共港に独自のターミナルを所有しています。
インドネシア全体で、497の私営ターミナルがあり、このうちの103のターミナ
ルがエリア 1 内に位置しています。
4
マラッカ・シンガポール海峡に位置するインドネシアの港
エリア1(第一インドネシア港湾公社管轄(アチェ、北スマトラ、リアウ)
)に所在す
る主要港14ヵ所は、表2の通りです。
表1 インドネシアの主要商業公共港25ヵ所
第一インドネシア港湾公社
Lhoksumawe
Pekanbaru
(アチェ、北スマトラ、リアウ)
Belawan
Batam
Dumai
Tanjong Pinang
第二インドネシア港湾公社
Teluk Bayur
Banten/Bojonegara
(西スマトラ、ジャンビ、ベンクル、南スマトラ、
Pelembang
Tanjong Priok
ランプン、西カリマンタン、西ジャワ、ジャカルタ、 Panjang
Pontianak
ベンカベリトゥン、バンテン)
Tanjong Emas
第三インドネシア港湾公社
Balikpapan
(中央カリマンタン、南カリマンタン、中央ジャワ、 Tanjong Perak
Benoa
東ジャワ、バリ、ジョグジャカルタ、ヌサテンガラ、 Banjarmasin
Tenau/Kupang
ヌサテンガラティモール)
Dili
第四インドネシア港湾公社
Samarinda
Sorong
(東カリマンタン、イリアンジャヤ、マルク、北マ
Bitung
Biak
ルク、ゴロンタロ、北マルク、南スラウェシ、中央
Makasar
Jayapura
スラウェシ、東南スラウェシ、北スラウェシ)
Ambon
表2 エリア1に所在する主要港
アチェ
北スマトラ
Malahayati(Sabang、Melaboh) Belawan(Kuala Tanjong)
リアウ
Dumai、Pekanbaru
Lhokseumawe
Sibolga、Tg.Balai
Tanjong Pinang、Tembilahan
Kuala Langsa
Gunung Sitoli
Bengkalis、Selat Panjang
Rengat
47
第3節 マラッカ・シンガポール海峡に関する航行安全アンケート調査
マラッカ・シンガポール海峡の通航船舶の現状、1998 年 12 月に発効したマ・シ海峡改
正分離通航方式及び強制船位通報制度についての効果等について、アンケート調査を実施
しましたので結果を報告します。
このアンケート調査については、沿岸3国海事当局と当事務所の定期会合「第5回海峡
安全連絡会議」
(平成12年2月)において当事務所から提案し、その内容等について吟味
し、沿岸3国の了解を頂いて実施したものです。
1
調査方法
シンガポール港に入港した船舶を中心に、マ・シ海峡を航行する船舶の船舶職員を対
象に調査を行いました。
2
回収結果
平成12年11月∼12月の2ヶ月間に約100部を配布し、平成13年2月までに
56通の回答を得ました。
3
結果概要
(1)1998 年 12 月に発効した改正分離通航方式については、マ・シ海峡全般に渡り、大
多数がその効果を認め、かつ大多数の船舶がそれを遵守していると考えられます。
(2)また、同時に発効した強制船位通報制度についても、シンガポール、マレーシアに
設置されている3つの VTS との連絡も大多数の船舶が容易であると答え、新しく運用
を開始したマレーシアの VTS も含め、順調に運用されている状況が伺えます。
(3)衝突海難が多数発生しているシンガポール海峡東側のホースバーグ灯台付近でのニ
アミス経験については、半数以上の船舶が「よくある」
「時々ある」と答え、その潜在
的危険性を裏付ける結果となりました。また、現在、沿岸3国で検討されている同海
域付近までの分離通航方式延長については、25%が「改善される」と返答し、ある程
度の効果が期待できるものと考えられます。
(4)マ・シ海峡に面する主要港付近でのニアミス状況については、予想に違わず、シン
ガポール港沖でのニアミスが比較的多く発生しているとの回答が多く寄せられました。
48
質問1 マ・シ海峡の通航は以前より容易で安全になったと思いますか?
60
1 ワンファザムバンク∼ポートディクソン
50
2 ポートディクソン∼イユクチル灯台
40
3 イユクチル灯台∼ホースバーグ灯台
30
4 ホースバーグ灯台東部
20
10
0
1
53
2
1
はい、改善されました
いいえ、改善されていません
無回答
2
52
3
1
3
51
4
1
4
53
3
0
質問2 通航船舶は分離通航方式を遵守していますか?
50
45
1 ワンファザムバンク∼ポートディクソン
40
2 ポートディクソン∼イユクチル灯台
35
3 イユクチル灯台∼ホースバーグ灯台
4 ホースバーグ灯台東部
30
25
20
15
10
5
0
1
46
8
2
はい、遵守しています
いいえ、遵守していません
無回答
49
2
45
8
3
3
42
12
2
4
47
9
0
質問3 船位通報時の各VTSセンターとの連絡は容易ですか?
60
50
1. KLANG VTS
40
2. JOHOR VTS
30
3. SINGAPORE VTIS
20
10
0
1
2
3
はい、容易です
51
51
52
いいえ、容易ではありません
3
2
4
無回答
2
3
0
質問4−1 イースタンバンク付近で他船とのニアミス経験がありますか?
30
25
20
1 東航
2 西航
15
10
5
0
はい、よくあります
はい、時々あります
いいえ、ほとんどありません
いいえ、全くありません
無回答
1
27
10
15
4
0
50
2
22
15
15
3
1
問4−2 通航分離方式が北東に延長されれば、
ニアミス問題は改善されると思いますか?
はい、改善されると思
います
25%
無回答
48%
どちらとも言えません
18%
いいえ、改善されるとは
思いません
9%
質問5 出入港時にニアミスになったことがありますか?
30
25
1 PORT KLANG
2 PORT DICKSON
20
3 MALACCA
4 TANJONG PELEPAS
15
5 SINGAPORE
10
5
0
無回答
いいえ、全くありません
いいえ、ほとんどありません
はい、時々あります
はい、よくあります
1
20
28
4
4
0
2
27
24
3
2
0
51
3
24
22
4
4
2
4
26
20
6
2
2
5
1
20
13
12
10
質問6 分離通航内を徐行する船舶に進路を妨害されたことはありますか?
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
1
13
41
2
はい、あります
いいえ、ありません
無回答
質問7 ニアミス状態に陥ったことはありますか?
35
30
1. ONE FATHOM BANK
25
2. BATU BERHANTI
20
3. HORSBURGH LT.
15
10
5
0
いいえ、全くありません
いいえ、ほとんどありません
はい、時々あります
はい、よくあります
無回答
1
33
6
10
3
4
2
27
14
7
5
3
52
3
31
11
8
4
2
第3編 海洋汚染事故の実態と防止対策
第1章 総論
油流出事故等の海洋汚染事故は、海洋環境を破壊する主要な原因の一つですが、これま
で、様々なところで、様々な取り組みが行われているものの、依然として、座礁、衝突に
よる海洋汚染事故が発生しています。海洋汚染の主な原因である石油は、エネルギー源と
して、また、プラスチック類などの工業原材料として我々の生活に欠かせないものであり、
大量の石油が、中東とアジアの間を、日夜、巨大なタンカーによって輸送されています。
また、最近においては、様々な種類の化学物質など有害危険物質(HNS)についても、海
上を船舶で運送されているという状況があります。このように、海上を船舶で運送される
石油類や HNS が、船舶事故等により海上に流出した場合、その環境や人体への影響は計り
知れないものがあります。
石油類については、これまでの経験の蓄積により、ある程度、防除手法というものが確
立されてきました。しかし、HNS については、現在のところ、全ての物資に係る適切な防
除方法が確立されていないというのが現状です。HNS の船舶からの流出事故に対処するた
め、国際海事機関(IMO)において HNS 議定書に係る検討が行われ採択されたにもかかわら
ず、批准国が少なく、その発効はもうしばらく待たなければなりません。以上のように、
海洋汚染対策というと、これまで油流出対策が中心を占めてきましたが、これに加え、HNS
への対応についても、あわせて、対応する必要が生じてきています。
アセアン諸国の中でも、特にシンガポールは、HNS 流出事故への対応体制を早急に進め
ている国です。シンガポールには、ジュロン島という石油精製工場や石油化学工場が多数
立地する工業地域がありますが、これまで、60 を超える大手企業が、1兆3千億円を超え
る投資してきています。各種ケミカル工場が立地するこの地域では、ある工場で完成した
製品を同地域内の別の工場で原料として使用することが可能であり、原材料や製品の輸送、
保管等の費用が大幅に削減することができ、多数の投資者をひき付けています。このため、
シンガポールに寄港するケミカル・タンカーの数も、1999 年には 1,080 隻であったのが、
2000 年には、1,430 隻に増加するなど、前年比 38%の増加を示しています。これは、当該
ケミカル・タンカーによる HNS 流出事故の蓋然性も高まっているということを示唆するも
のであり、早急に緊急時における対応体制の整備が望まれているところです。
一方、別な観点から、現在、海上電子ハイウエーというツールの検討が順次行われてい
ます。これは、マラッカ・シンガポール海峡の電子海図(現在、沿岸3ケ国及び日本によ
り発行に向け作業中)を利用し、海洋環境保全に関する各種情報をこの中に情報として取
り込むことにより、同海峡の海洋環境に係るプロファイルを一目で把握可能とするもので
す。一方で、船舶運行者のために開発された電子海図が他の利用者にも広がり、電子海図
の普及を一層促進するという副次的な効果もあります。いずれにせよ、この海域は、閉鎖
海的性格を有するものでもあり、様々なツールを活用し、海峡沿岸国が協調して海洋環境
保全対策に取り組んでいく必要があります。
53
第2章
油流出事故と防止対策
第1節 ICOPCE 会議
2001 年 9 月 3 日∼5 日、シンガポールにおいて、世界各国の環境防災関連政府機関、関
連企業等から 350 名が出席し、油流出、ケミカル流出問題について検討する ICOPCE カン
ファレンスが開催されました。
このカンファレンスでは、シンガポールの HNS 条約対応動向、シンガポールの石油・ケ
ミカル産業、ケミカル流出緊急時対応計画、最近の石油・ケミカル流出のケース・スタデ
ィ、油流出事故対応における ITOPF の責任に出席者の関心が集まりました。
以下、その概要をお伝えします。
1
オープニング・アドレス(シンガポール運輸情報通信兼国家開発担当国務相
ジョン・
チェン)
世界のハブ港として船舶交通が輻輳するシンガポール港では、ケミカル流出事故、油
流出事故の危険性は以前に比べれば格段に高くなっており、一度事故が発生すれば、海
洋環境汚染はもちろん海岸付近に居住する人々の生活にも重大な危険を及ぼすことにな
る。
これら事故を防止し海洋環境を保護するには、適切なメンテナンス、適切な乗組員に
よる船舶の運航が重要なキーポイントであり、そのためには旗国や船級協会による厳重
なチェックが必要である。
また、シンガポールは、2002 年末までに HNS 議定書を批准する予定であり、この議
定書が発効されれば、有害・有毒液体物質を輸送している船舶に対し、現存する油濁事
故に対する管理様式と同じような制度が適用されるようになる。
さらに、シンガポール港において不幸にしてケミカル流出事故が発生した時に備え、
シンガポールは「ケミカル流出緊急時プラン(海上)」を作成し、政府、企業の責任と役
割を明確にし、かつ、適切な初動措置が取られるよう政府とケミカル企業の共同作業を
可能とする体制を整えている。例えば、SCIC(Singapore Chemical Industry Council)
は、ケミカルを扱うターミナルのための安全基準を策定し、また 2000 年 11 月には、JTC
( Jurong Town Corporation ) の 管 理 下 に HESS ( The Jurong Island Health,
Environment, Safety and Security Committee)が設立され、ケミカルハブ港としての
ジュロン島の安全対策について幅広い取組みを始めている。
また、本年(2001 年)5 月には ASCTEC(The Asia Chemical Transportation
Emergency Center)が設立され、アジア、太平洋地区におけるケミカル流出事故に対応
する基本的な体制を整え、今年末までにはケミカル流出事故に対する実活動を可能にし
たい。
54
2
第1セッション「法的側面」
油流出事故対応、ケミカル事故対応に関する法的側面について、IMO 関水海洋環境部
長等から MARPOL 条約や HNS 条約、議定書等の解説、各国の批准状況と問題点等につ
いての検討が行われました。
この中で、2001 年 8 月現在、HNS 議定書に同意した国はないが、HNS 議定書は、OPRC
条約の原則に倣っており、それぞれの加盟国政府は、国内または他国と協力した汚染事
故対応の確立を求められている、また、船舶は、有害・有毒物質が関与した事故に対応
するよう求められているとしました。
さらに、HNS 議定書が発効すれば、有害・有毒液体物質を輸送している船舶に対し、
現存する油濁事故に対する管理保障制度と同じような制度が適用されるようになるとし
ました。
一方、イギリス環境・運輸地域省環境部海運政策担当ジョン・レン氏は、1996 年に IMO
は海上における HNS 条約を採択し、これによって、有害・有毒物質の関わった事故につ
いて、補償される体制が整えられたとしたが、現在は未だ施行されておらず、HNS 条約
に同意したのはロシアのみであるとしました。
3
第2セッション(緊急時対応)
主にケミカル流出時の具体的な緊急時対応のための組織、体制、緊急時対応プラン、
そしてケミカル流出防止策等についての検討が行われました。
この中で、シンガポール・ケミカル産業協議会(SCIC)の Ooi Chwee Kim 会長、BP
ケミカル地域ロジスティックマネージャーCapt. A. Hari、JTC Corporation のデビッ
ド・タン副局長らが、シンガポールのケミカル産業について、プレゼンテーションを行
いました。その概要は以下のとおりです。
シンガポールのケミカル産業の多くが、ジュロン島に集中している。60 を超える大手
企業が、これまでジュロン島に 200 億シンガポールドルを投資してきた。
1999 年のシンガポール・ケミカル産業の生産高は、230 億シンガポールドルであった
が、2010 年までに、150 社以上から合計 400 億ドル以上の投資が予想されており、生産
高も現在の倍の 450 億シンガポールドルになるとみられている。
シンガポールのケミカル産業で特に発達しているのが、石油、石油化学、特殊ケミカ
ル産業である。2000 年にはこの分野で前年に比べ 37%の成長があり、生産高は 317 億
シンガポールドルに上った。
シンガポールに輸入された原油の多くは、ガソリンなどへの精製ではなく、石油化学
製品に使われる。ジュロン島石油化学産業の統合によって、ある工場で完成した製品が、
同島内の別の工場で原料として使用されることが可能になった。ロジスティック及び保
55
管費用がかからないことから、各工場に 20 から 30%の運営コスト削減をもたらしたとし
た。
シンガポールのケミカル産業は、付加価値の高い製品、調査・研究活動、地域本部の
大型地盤などで投資をひきつけたいと考えている。
ちなみに、シンガポールへのケミカルタンカー寄港隻数は、1999 年には 1,080 隻であ
ったものが、2000 年には約 1,430 隻となり、
前年に比べて 38%もの上昇を記録している。
SCIC は、多くのケミカル産業企業を代表しているが、事故対策への取組みの一環とし
て、アジア・ケミカル輸送緊急センター(ASCTEC)を設置した。
1999 年 7 月、アジア・ケミカル輸送緊急センター(ASCTEC)は、緊急時対応コント
ラクターを選ぶため、入札を実施、6つの候補企業がこれに応募し、最終的に一社「SGS
−ALERT」を選定し、ケミカル流出対応サービス提供体制の整備を始めた。
現在、ASCTEC は実行委員会と顧問委員会を組織している。実行委員会は、ケミカル
製造業、ターミナル運営者、海運会社など 25 社から構成されている(うち海運会社は3
社)。顧問委員会には、シンガポール海事港湾庁(MPA)、シンガポール市民防衛軍(Civil
Defence Force)
、環境省が含まれている。シンガポールの石油産業で EARL が担ってい
るような役割を ASCTEC が果たすよう期待されている。
4
第3セッション(油及びケミカル流出事故ケース・スタディ)
最近発生した「Erika」
(フランス沖で船体が損傷)
、
「Amorgos」
(台湾で座礁)
、
「Ievoli
Sun」
(フランス沖で沈没)、「Natuna Sea」
(シンガポール海峡で座礁)等油及びケミカ
ル流出事故を例について、事故対応、補償問題等のケーススタディを行いました。
この中で、リクス・マネージメント社の Toralf Sorenes 氏は、80 隻以上のケミカルタ
ンカーを運航しているが、全世界でケミカル輸送は海上輸送の 3%にしかあたらないとい
う調査結果を発表しました。
また、ケミカルと油の相違点について、ケミカルタンカーには多くのタンク(最高 50
タンク(区画)
)がありそれぞれ違う種類のケミカルを運送しており、当然ながら港での
荷役作業は複雑である一方で、油タンカーのタンク数は少なく、港での作業も容易であ
るとしました。また、ケミカルタンカーはさまざまな種類のケミカルを運んでおり、各
ケミカルは個々の性質を持つが、油タンカーの運ぶ製品は種類も少なく、その性質も似
通っているとしました。
ケミカル流出と油流出では、その態様、環境への影響、対応が大きく異なるとし、以
下の点を指摘しました。
①
ケミカル流出は、汚染のリスクよりも乗組員の安全に与える影響の方が先に心配
される。
②
ケミカル流出は、海底・海水・環境に影響を与える可能性がある。
③
流出したケミカルを希釈することで、速やかにケミカル流出による悪影響を食い
56
止めることができる。
④
ケミカル流出から引き起こされる結果について、予想するのは難しい。そのため、
適切な対応を即座に行うのは困難である。
Toralf Sorenes 氏によると、現在最も懸念されるのは、乗組員及び関係者の安全を如何
に確保するかという問題で、環境や船舶、貨物については、二の次だと考えています。
これに関して、詳細なケミカルに関する情報や専門的な医療に関する助言、複雑な汚染
問題に関する助言などが、早急に取り組む必要のある課題であるとしました。
また、フランス CEDRE 社の取締役 Michel Girin 氏は、エリカ号の油流出事故にかか
った全費用(14 億フラン・1 億 9 千万米ドル)は、フランス国民の血税で賄われること
になったが、ほかの大臣の起こした悪事に免じてか、環境大臣は未だ免職になっていな
い等と、フランス政府当局の対応を痛烈に批判しました。エリカ号の経験から、汚染し
た者が支払うという原理(Polluter Pays Principle)、そして予防措置を行うという原理
は、現実には有効ではないと主張し、油及びケミカル流出への最良の対応方法は、関連
する条約の規定と、政治家やメディア、そして一般市民の要求をうまく調整することで
あるとしました。
さらに、シンガポール海事港湾庁(MPA)港湾海運局マーク・ヘー副局長は、2000 年
10 月にシンガポール海峡で発生したナツナ・シー号油流出事故の概要について発表する
とともに、1997 年 10 月に同じくシンガポール海峡で発生したエボイコス号とオラピン・
グローバル号の衝突事故について、その補償金を 2001 年 8 月に受け取ったことも明らか
にしました。
MPA は、補償金の支払いが遅れたことは残念であったとし、この原因の一つに ITOPF
(国際タンカーオーナー汚染連合)が問題を軽視したことが挙げられると主張しました。
また、MPA は ITOPF の基金の 90%が P&I クラブによって支払われていることから、
ITOPF は汚染の被害者に対して油防除の適切な助言をするのに中立的な立場にないとし
ました。(P&I クラブは「汚染を起こした者が支払う」を原則とした CLC 条約の請求を
担当している)ロイズリスト紙上でも、MPA と ITOPF の論争が展開されました。
インタータンコの環境委員会の議長を務める Nikos Mikelis 氏は MPA に対して港湾使
用料を値上げして、その一部を油防除業者に即金で支払えるよう基金を設立すべきだと
提案しました。
MPA は、OPA90 と同様の形式で船主が油防除業者と契約を結ぶという方法も一策であ
ると述べました。Nikos Mikelis 氏は、船主がそれぞれ全世界の港と契約を結ぶことにな
れば、多くの契約とロジステックが関連することになると述べました。
57
5
関連情報
(1)VLCC 桟橋
PSA マリンからの情報によれば、現在ジュロン島で建設が進められている VLCC 第
一桟橋は、2002 年の第一四半期から運用開始される予定です。第二桟橋は、2002 年末
までに運用開始される予定です。第一桟橋の運用を Exxon−Mobile と TMS(PSA マ
リンの子会社)のどちらが請け負うのかは明らかになっていません。
(2)PSA マリンの活動
PSA マリン社からの情報によれば、PSA コープの子会社である PSA マリン社は、
2001 年 3 月に SEMCO 社を買収したとのことです。これによって、PSA マリン社は
SEMCO の名を通じてサルベージ会社として、シンガポール油流出対応センター
(SOSRC)の名を通じて油防除コントラクターとしての顔を持つことになりました。
結局、現在 PSA は、総合的な海上災害対応パッケージを持つこととなり、シンガポ
ール政府の掲げるケミカル・ハブ港ジュロン島の安全対策施策が実質的に向上するこ
ととなりました。
また、PSA マリン社は、自身の立場を OPRC−HNS 条約で求められている海上危機
管理制度に基づき MPA が最初に連絡する機関であるとしています。同時に PSA マリ
ンは、2001 年末までに ASCTEC で求められているレベル 2・3 の対応ができるような
体制を構築したいとしています。
(3)Briggs Maritime Environmental Services 社の活動
PSA マリン社とは別の企業 Briggs Maritime Environmental Services 社は、複雑な
ケミカル事故に対応するためにジュロン島に資機材と専門家を置く陸上基地を設置す
る案について、ジュロンタウンコープと現在話し合いを持っているとしました。
6
所見
今回のカンファレンスでは、ケミカル流出対応と油流出対応の相違点について指摘す
る声が多く聞かれ、専門家の間でも、流出油対策はある程度画一化された手法が確立さ
れているのに比べ、ケミカルはその多様性、水溶性からその対応が非常に複雑で困難性
を伴うものとされているようです。
シンガポールは、ケミカル産業の誘致に積極的である一方、最近発生した 2 度の大規
模流出油事故やジョホール水道におけるフェノール流出事故の苦い経験を持っています。
このようなことを背景に、シンガポールは今回の国際カンファレンスの開催や HNS 議
定書の批准等国際的な枠組みへの参加、またケミカル流出に対応する国内体制の整備等、
その積極性が強く感じられました。
58
第2節 マラッカ海峡会議
第 2 回のマラッカ海峡会議が、10 月 15 日∼17 日、マレーシアのペナンで開催され、
11 カ国から 130 名が参加しました。会議の主催者は、マレーシア・プトラ大学にあるマラ
ッカ海峡研究開発センター(MASDEC)で、日本の JICA と IMO の PEMSEA(東アジア
海域海洋汚染防止プログラム)が後援しています。
第1回目マラッカ海峡会議は、1999 年 4 月にマラッカで開催され、マラッカ海峡の経済
的価値や環境管理維持にかかる主な問題が議論されましたが、今回開かれた第2回会議で
は、環境管理体制の構築のための課題と方策が議論されました。概要は以下のとおりです。
1.プログラム
会議は、①環境管理に関する共通の認識の形成、②資源管理、③価値と利用の調和、④
環境管理の技術、⑤生物工学、⑥沿岸海洋管理のための原則・政策、⑦地域協力の枠組み
の 7 つのテーマに分けられ、講義形式で進められました。
2.テーマ毎の議事概要
(1)マレーシア海事研究所主任アーマド・ラミル氏による総括講義
海上汚染の原因の 85%は陸上からのものであり、船舶によるものは 15%を占めるに過ぎ
ないが、全ての海上廃棄物について早急に対処する必要があるとして、
沿岸三国及び利用国間の協力を促進するための実用的な枠組みの構築を目指した新た
な取り組み
国際的な海事・環境条約を実施するための総合的な取り組み
マラッカ海峡の海洋環境の現状に関する科学的調査及び政府間の協議等による考証の
強化
を提案しました。
(2)環境管理に関する共通の認識の形成について
政府と海運産業が共に参加する形の海峡の環境管理に焦点が置かれました。
基調講演者であるロス博士(PEMSEA、IMO)は、経済についてはサイクルがあるが、
海洋環境に関しては、景気の良し悪しに関わらず、政府は長期的な政策を押し進め、それ
を維持する必要があり、そのためには、関係団体が協力して、実用的な地域の枠組みを構
築し、施行する必要があるとしました。
インタータンコの代表は、今日タンカーを運航するには、増え続ける法律を遵守しなけ
ればならず、タンカーの 99.99%が、事故を起こすことなく、無事に石油を目的地まで運搬
しているが、一度事故が発生しただけで、それがメディアの関心を引き付け、これまで築
いてきた評判を一気に下げることになってしまう。1994 年以降、インタータンコは、
「協力
による事故防止プログラム」に乗り出したが、このプログラムでは、タンカー産業全体で
59
「責任連鎖」を結んで、タンカー運航に関する安全・環境問題に集合的に対応していると
述べました。
インドネシア環境汚染管理局(BAPEDAL)の代表は、長期的な沿岸海洋環境管理問題
への理解を深めるために、インドネシア政府が行っている国家全体または地方における
様々な試みについて説明するとともに、環境問題に対処する場合、地方別の取り組みをす
ることが多いが、全体で取り組むのに比べ効率的ではないとしました。
(3)資源管理について
海峡の自然財産を維持するための海洋資源管理について焦点が置かれました。
海峡環境システムに対する阻害要因を割り出す際に、人間の健康状態、人間の活動、海
洋環境システムの健全性の三角関係を考慮する必要があるとともに、陸上及び海上からの
汚染、または過度の漁業等によってストレスを受けた海洋環境システムの健康状態に関す
る研究を早急に実施する必要があるとされました。
(4)マラッカ海峡の価値と利用の調和について
価値と利用のバランスをとる必要があるものの、マラッカ海峡における利用側には、石
油探査、石油精製、漁業、海産物、海運、港、沿岸観光事業、沿岸開発産業など、広範囲
の産業が海上で活動していることから、バランスをとることは難しいとの意見が出されま
した。
シンガポール大学の研究者からは、「汚染した者が支払う」という制度では、船主に責任
が押し付けられる傾向があるが、例えば、港も利益を得ているのであり、適切な廃棄油処
理施設を妥当な料金で提供しなければ、船舶は海上で不法に油を廃棄するようになるとの
指摘がありました。
(5)環境管理の技術について
現在、IMO・世銀・沿岸 3 カ国等が検討中のマリン・エレクトロニック・ハイウェイ(MEH)
について、環境管理のための有効な手段ではあるが、資金調達をどう行うかという問題提
起がありました。
(6)沿岸海洋管理に関する原則、政策について
マラッカ海峡の沿岸海洋管理に関する原則、政策、制度上の取り決めに焦点が置かれま
した。
基調講演者であるマイルズ・米国ワシントン大学教授は、長期的な海洋政策を立案する
ことは、沿岸各国の利害に関わることであるとした上で、海洋政策策定に当たっての問題
点として、以下の事項を挙げました。
60
陸上からの汚染
油流出や油の不法投棄による海上での汚染
マラッカ海峡の通航船舶を管理するための巨額の財政負担
複数の利用による争いの最小化(油 vs.魚、通航 vs.環境、観光 vs.珊瑚礁等)
(7)地域協力の枠組みの構築について
マラッカ海峡の環境管理に関する地域協力の実用的な枠組みの確立に焦点が置かれまし
た。基調講演者のイブラヒム・プトラ大学教授は、既存の枠組みとして、MASDEC、JICA、
マラッカ海峡協議会等に言及しつつ、沿岸三国の政治的意志、実用的な枠組みを完全に実
施するための地域協力が不足しているように思われると述べました。沿岸三国の間で管理
政策や責任は大きく異なっているほか、マレーシアやインドネシアでは国内でも州や村で
も異なるところがあることを指摘しました。
マレーシア科学技術環境省の代表は、同省が集めた油流出データの 68%は油の不法投棄
によるものであることを明らかにしました。
3.当事務所コメント
(1)出席者の間で、現状の利用パターンではマ・シ海峡のエコシステムは持続可能でない
との意見の共有が実現されましたが、沿岸三国政府からの出席は概して低調であり、
マラッカ海峡の大きな受益者である漁業団体、観光業者からも出席者はなく、アカデ
ミックな議論に留まっているとの印象を受けました。
(2)海運関係者は、講演で述べられた「マラッカ海峡の海洋汚染の大半は陸上から発生し
たもの」という意見を強調しましたが、この点について議論は深まりませんでした。
(3)ただし、論者の中には日本の貢献に言及したり、マラッカ海峡協議会による協力の方
式を評価したりする者もいて、本件会議のようなイベントによりマ・シ海峡の環境問
題が世界の海事関係者の注目を集めること及びその中での日本の貢献度が認知される
ことは有意義であると考えられます。
61
第3節 海上電子ハイウエー作業部会
マラッカ海峡沿岸3カ国とIMOが、世界銀行の支援を得て推進する Marine Electronic
Highway(海上電子ハイウエー、MEH)の作業部会が、1月21日∼24日の間当地で
開催され、IMO、シンガポール海事港湾庁、マレーシア海事局、インドネシア環境省等
の他、オブザーバーとして、日本財団寺島常務理事、沿岸3カ国の海運協会代表、インタ
ータンコ代表、米国・カナダの電子海図関係者、日本海難防止協会シンガポール事務所等
が参加しました。
MEHについては、これまでのところ、①すべての構成要素(電子海図、DGPS、自
動識別システム、VTS、潮汐、海流、気象等)を完全に実施すると3千万米ドル以上か
かることが見込まれること、②その前段階として、2003年からの3年間に1千万米ド
ル程度をかけてデモンストレーション・システムを構築すること、③その内約5百万米ド
ルは世銀が負担するが、残りの1.5−2百万米ドルは海峡沿岸国、3−3.5百万米ド
ルは利用国政府、海運会社、機器メーカー等から調達することなど議論されてきました。
1
セッション毎の結果概要
(1) 一般的コメントのセッションの主な発言
IMOの関水氏は、IMOの役割について、マ・シ海峡におけるMEHの完全実施に
至るまでの促進役であるとし、プロジェクトの推進のためには沿岸 3 カ国の決意が必要
であるとしました。
日本財団の寺島常務は、①MEHプロジェクトを検討するに当たっては、当初デモン
ストレーションの開始前から海運業界の理解と協力を得る必要があること、及び②マ・
シ海峡の利用状況を把握し、誰が利用者か、誰が負担を共有すべきか等を議論する必要
があることを指摘しました。
それらから、MEHの便益が議論になり、海運業界にとってはリアルタイムの潮汐・
海流データ、気象データが有益であるという意見が多く出され、副次的な便益として、
船舶の積載能力の向上、交通監視や海上治安の強化も挙げられるという意見もありまし
た。
MEHの利用者については、MEHによって提供される情報・施設の利用者であり、
マ・シ海峡の利用者と同一であるとは言えないものの、海運業界からは、旗国だけでな
く、物資の輸入・輸出国、損保業界等も便益を受けるはずのものであり、受益者の範囲
を詳細に議論すべきであるという意見が出ました。
62
(2) 沿岸 3 カ国によるプレゼンテーション
インドネシアは、財政的制約があるなら、デモンストレーション・プロジェクトの範
囲をワン・ファザム・バンクからホースバーグまでではなく、ドゥマイからホースバー
グまでに縮小することも可能であると述べました。
マレーシアは、自分達としては海峡の安全に十分な設備を提供しており、MEHを立
ち上げるためには、利用国の貢献を期待する旨述べました。
シンガポールは、MEHに対する支持を表明するとともに、自国領海内で利用可能な
電子航行援助施設について説明しました。
(3) 昨年9月の地域会合以来の進展
MEHプロジェクトチームから、昨年10月べラワン港とクラン港で実施した、電子
海図とGPS、潮汐情報を船上のパソコン上で結びつけた実験の結果が紹介されました
が、マ・シ海峡全域に渡ってデータ収集設備を設置することの難しさも指摘されました。
(4) 今後の進め方に関する討議
資金調達方法について議論がなされましたが、世銀と沿岸国以外による負担分につい
ては掘り下げられませんでした。
(5) 3つの分科会による検討・報告
デモンストレーション・プロジェクトの技術的枠組み(WG1)
、デモンストレーショ
ン・プロジェクトにおけるECDISとAIS(WG2)、MEH完全実施時のパートナ
ーシップ(WG3)の3つのテーマについて分科会が設置され、それぞれの検討結果が
報告されました。WG1では、プロジェクトの地理的範囲をどのように設定するかとい
う問題が残り、WG2では、ECDISとAISの装着状況や現行ECDISではME
Hが想定するリアルタイム情報を処理できない等の問題点が指摘されました。WG3で
は、海運業界から、コスト要因が詳細に洗い出されていないのではないかという懸念が
表明され、IMOからは、沿岸 3 カ国が強い決意を表明する必要があるとの意見が出さ
れました。
(6) アクションプランとプロジェクト・ブリーフの素案の検討
IMOが、沿岸 3 カ国に対して、今回議論されたアクションプランとMEHの技術的
63
諸元を承認するよう要請しましたが、プロジェクト・ブリーフの準備は今後の作業とさ
れました。
2
今後の日程
3月 IMO・MEPC第47回会合(ロンドン)
PEMSEA運営委員会(ブサン)
4月 IMOがプロジェクト・ブリーフの最終案を沿岸3カ国に提示
5月 第 2 回MEHプロジェクト運営委員会(ジャカルタ)
IMO・MSC第75回会合(ロンドン)
6月 沿岸 3 カ国による正式承認
64
第4節 3国合同流出油訓練
去る 11 月 8 日、インドネシア・バリ島にて、インドネシア、フィリピン、日本の3カ国
による合同流出油防除訓練が実施されました。
そもそも、フィリピンとインドネシアの流出油防除協力体制の歴史は古く、約 13 年前の
1988 年からほぼ 2 年に 1 度の割合で、
「スラウエジ海油汚染防除ネットワーク」という計
画に基づいて、両国合同の流出油防除訓練(MARPOL 訓練)を実施してきた経緯がありま
す。
日本の海上保安庁は、1993 年の訓練より参加招請を受け、OPRC 条約に規定されている
海洋汚染への対応に関する国際協力を推進するという観点から、1995 年フィリピン・セブ
島で実施された合同訓練から参加し、その後、1997 年インドネシア・ウジュパンダン、及
び 1999 年フィリピン・バタンガスで実施された訓練に巡視船艇、航空機を参加させていま
す。
訓練の主体は、インドネシアは海運総局沿岸警備局、フィリピンは沿岸警備隊となって
おり、これら組織から巡視船、航空機が参加しています。
訓練の内容についてですが、訓練海域、日時が事前に指定されるだけで、訓練シナリオ
は事前に配布されず、訓練中に随時新たな想定が発生し、臨機応変に対応が要求されると
いう実践的なものでした。
このような定期的な訓練は、参加国相互の技量向上や連携強化の点で有意義であるもの
と考えられ、今後とも継続する必要性があるものと考えられます。
65
第3章
ケミカル流出事故と防止対策
第1節ケミカル流出緊急対応
今年5月、アジア地域におけるケミカル流出対応制度の整備を目指した新たな取組みが
始まりました。以下にその概要を紹介します。
1
組織及び体制の概要
ケミカル流出については、その特性の特殊性、多様性から石油流出のような一般的な
対応策の準備が難しいと言われていますが、今回の取組みは、実際のケミカル流出時に、
①情報の提供、②専門家の派遣、③実際の除去作業の3段階に分けてサービスを行う緊
急時対応センターを民間ベースで設立しようと言うものです。
この制度は、シンガポールケミカル産業協議会(SCIC:The Singapore Chemical
Industry Council)の主導により設 立された「アジアケミ カル輸送緊急センター 」
(ASCTEC:Asia Chemical Transportation and Emergency Center)が中心となりま
す。
サービスを受けようとする企業は、このアジアケミカル輸送緊急センター(ASCTEC)
に登録することで、ケミカル流出時の対応援助を受けることが可能になるという仕組み
です。
2
サービスの内容
サービスの内容は上述したとおり、3段階に分けて実施されます。
①
レベル1
無料電話により、特定のケミカルの特性、危険性、成分等を24時間体制で情報提
供するサービス。
②
レベル2
ケミカル流出現場へ専門家を派遣し、除去作業についての専門的助言、連絡調整を
行うサービス。但し、実施する業務アドバイスに限定され、実際の作業、作業指示は
行わない。
③
レベル3
実際のケミカル除去作業を実施するサービス。除去作業に要する支払い行為につい
てのエンドースが必要。
3
開始時期
なお、当面はレベル1「情報提供」からスタートしますが、来年の早い時期にレベル
2「専門家派遣」からレベル3「除去作業」までの対応を可能にしたいとしております。
66
4
料金
年間登録費用は登録する企業の所在国や提供するサービスのレベルよって変わるとの
ことですが、その範囲は 5,000∼20,000 シンガポールドルとのことです。これまでにケ
ミカル船運航会社2社が会員登録をしたとのことです。
5
実際作業の請負企業
実際にこれらのサービス作業を行うのは、「アジアケミカル輸送緊急センター」から委
託を受けたケミカル対応専門企業体「SGS−ALERT」が行うことになっています。
「SGS
−ALERT」の組織概要を以下に概略説明します。
「SGS−ALERT」は「SGS 社」と「ALERT 社」の共同運営体となっています。
「SGS 社」は、石油、ガス、ケミカルに関する検査、認証業務を行う世界最大の企業
で、スイスを拠点とし、全世界に 1600 を超える事務所を構え、140,000 種類を超えるケ
ミカルのデータベースを保有していると言われています。
また、
「ALERT 社」とは、
「ALERT DISASTER CONTROL 社」のことで、油田発掘
作業の暴噴、火災、ケミカルプラント災害における緊急時対応、安全管理技術、職員の
トレーニング等を行う企業とされています。カナダを拠点とし、アラブ首長国連邦(ド
バイ)
、カナダ(カルガリー)、米国(ヒューストン)、シンガポールに事務所を構えてい
ます。
6
まとめ
簡単に言えば、ケミカルについてのデータを豊富に所有する「SGS 社」と緊急時対応
を専門に行う「ALERT 社」が「SGS−ALERT」を共同で組織し、専門的知識と機動力
を活用し、「アジアケミカル輸送緊急センター」(ASCTEC)の名前の下、ケミカル流出
対応サービスをすることになったということです。
石油産業でいえば「EARL」(East Asia Response Limited)に相当する組織がケミカ
ル対策として設立されたということになります。
67
第2節 シンガポール港におけるケミカル流出対応訓練
2001 年 9 月 5 日、シェルのパンダン桟橋において MPA とシェルがケミカル流出訓
練を実施しました。
コードネームは「CHEMSPILL2001」で、シェルによってケミカル流出訓練が行わ
れるのは、これが初めてのことです。
この訓練では、市民防衛軍(日本の消防庁に相当する。
)等陸上に基地を持つさまざ
まな団体からも出席を得て、合計 120 名が参加する大規模なものとなりました。
MPA の港湾運用管理センター2(POCC2)に配置されている MPA の緊急事態運用
委員会(EOC)が、「ケミカル海上緊急対応プラン(CCPM)」を発動させ、対応活動
を調整し、訓練の総合指揮を務めました。
なお、以下は本訓練のシナリオです。
「訓練のシナリオ」
2001 年 9 月 5 日 0845、コンテナ船「ブルー・シー」(総トン数 37,398 トン)が、
パシルパンジャンのコンテナターミナルに向かっていたところ、エンジンが故障し、
シェルのパンダン桟橋に横付けしていたケミカルタンカー「フジガワ」(総トン数
10,800 トン)に接触した。事故発生当時、フジガワ号は 5 種類の異なるケミカルを積
載しており、そのなかにはスチレンモノマー2,100 メートルトンも含まれていた。この
接触でケミカルタンカーの貨物タンクに 0.8 メートルの亀裂が生じ、スチレンモノマー
が海上に流出した。続いて第二右舷タンクから火災が発生し、該船の周囲の海上にも
火災が広まった。両船の乗組員がひどい火傷を負った。
0900 に報告を受けた MPA は、海上ケミカル緊急対応プランを発動した。緊急事態
運用委員会(EOC)及びその他関係団体の代表らが、事故管理のため召集された。MPA
の港長が議長を務める EOC は、PSA ビスタの POCC2 で開かれた。警察沿岸警備隊
(PCG)とサルベージ会社に事件が報告された。環境省(MOE)の代表、市民防衛軍
(SCDF)、シンガポール警察、保健省(MOH)、AVA、シェル、東京タンカー(タン
カー船主)
、SGS Redwood、Alert Disaster Control(対応会社)などが訓練に参加し
た。
68
第3節 ジョホールバル港のケミカル対策
1
調査の概要
日本海上保安庁の国家対策チームのメンバー3名から構成された JICA 調査団は、マレ
ーシア政府の招待を受け、有害・有毒物資(HNS)の海上輸送に関する調査を実施しま
した。調査団は、2日間にわたってジョホール港の以下の場所を訪れ、現地調査を実施
しました。
① ジョホール港湾庁事務所
② チタン石油化学工場
③ パシルグダン港周辺海域
④ ケミカル流出事故(Endah Lestari 号)事故現場
⑤ 出光ケミカル工場と桟橋
2
調査結果の概要
(1)パシルグダンのジョホール港湾庁事務所
ジョホール港湾庁(JPA)は、港の所有者であり、ジョホール州にある港の取締りを行
っている政府機関です。ジョホール港湾庁は、ジョホール港社(JPB)
、タンジョンペレ
パス港(PTP)その他私営ターミナル運営者等を取り締まっています。
ジョホール港湾庁は、今年 6 月 13 日 0335 にカンポンパシルプテ沖でケミカルタンカ
ーEndah Lestari 号が転覆してフェノール流出した際にも、先頭に立って調整を行いまし
た。
E号の事件は、地元のみならず国際ニュースとしても広く伝えられました。ジョホー
ル港湾庁は、この種の事故が発生したのは初めてのことで、十分な対策がとられていな
かったことを認めています。
幸いケミカル物質は海水に分解されましたが、これによって流出したケミカルの回収
は難しくなりました。最初の数日間は、科学技術環境省の化学局からケミカルが腐食性
であることが知らされたことから、たいした対応はとられず、その後 6 月 17 日になって
から、やっとダイバーが現場に派遣されました。同月 23 日には全ての防除作業が終了し
ました。
ジョホール港湾庁によると、603 トンから 608 トンのフェノール及び海水が回収され、
別の船舶 Suhaila 号に瀬取りされました。ジョホール港湾庁は一旦 E 号の船体及び積荷
を取り押さえましたが、その後解放しました。
ケミカル流出事故を経て、ジョホール港湾庁は小さなエリアにケミカルの流出を保つ
ことのできる装置を作成しました。それはある素材を用いて「封筒」を作り、流出した
ケミカルが保たれるよう船体全体に覆うというものです。強度の酸性剤を運ぶのに用い
るプラスチックの容器が、丈夫で値段も安いとジョホール港湾庁は述べています。
69
パシルグダン油流出対策委員会は(PAGOSTAF)は、石油・ケミカル産業と政府機関
がジョホール港で流出が発生した際に資機材を共有するための非公式な集りですが、同
対策委員会は、年に一度緊急対応訓練を実施し、レベル 1 の油流出事故に対応できる資
機材を保有しています。同委員会には、ケミカル流出に対応できる資機材はありません。
このほかに、石油産業業者・ケミカル産業業者・政府当局は個別に消防器具を所有して
おり、これをまとめて保管することも可能です。ジョホール港で火災が発生した際には、
地元の消防局が先頭に立って、消火作業が行われます。
(2)パシルグダンのチタン石油化学工場
ジョホール港は液体ばら荷ターミナルを運用していますが、このターミナルでは、チ
タン石油化学製品も多く見られます。見学中にも、有害・有毒物資の海上輸送について
話し合われました。チタン石油化学工場側は、同ターミナルで安全予防措置を実施する
のはジョホール港社の責任であるとしていますが、チタン石油化学工場も、ジョホール
港自由貿易ゾーンに位置しています。
(3)海上でのパシルグダン港見学
ジョホール港社は、港湾施設及び E 号事故現場の見学のためにボートを用意してくれ
ました。すでに漁師は仕事を再開しており、漁村は普通の状態に戻っていました。
フェノールの流出で 30 の養魚場が被害を受け、その被害額は 50 万リンギに及びまし
た。フェノール流出の数日後には、マレーシア漁業開発局が事故現場を訪れ、被害の査
定と養魚場への補償の手配をしました。
このほかに、ボートから一般貨物、食用油、液体ばら荷、コンテナターミナル等を見
学しました。ジョホール港湾庁の職員は、液体ばら荷ターミナルでの安全予防措置の実
施は利用者全員が共有する責任であると述べました。
(4)出光ケミカル工場と桟橋
出光ケミカルの親会社は、1972 年にマレーシアに進出しました。出光ケミカル工場及
び桟橋は、ジョホール港自由貿易ゾーン外の私有地にあります。
出光の取り扱っている 2 つの主要原料は、エチレンとベンゼンです。エチレンは、ト
レガンヌ沖の天然ガスから抽出され、船でパシルグダンの出光専用桟橋まで運ばれます。
出光ケミカルの完成した製品はポリスチレンで、固形・無害・不燃性であるため、出光
ケミカルは液状のケミカル流出対策をとる必要がないと言っています。
船舶からの油流出対応のため、出光の桟橋には 250 メートルのオイルブーム 2 つが設
置されています。このほか、工場には消防車が配備され、安全器具が取り付けられてい
る。出光ケミカルは、ほかのパシルグダン油流出対策委員会のメンバーとともに、積極
的に緊急火災・油防除訓練に参加しています。
70
3
結論
ジョホール港自由貿易ゾーン内のケミカル産業では、液体ばら荷ターミナルで誰が安全
基準を施行するかはっきりとした責任分担がありません。
ジョホール港自由貿易ゾーン内に多数のケミカル工場があり、これらの工場の多くが液
体ばら荷ターミナルを利用しています。ケミカル産業の安全確保のため、正式な緊急時の
体制を整える必要があります。
71 (72、欠)
第4編 その他
第1章 2001 年度 日本海難防止協会シンガポール事務所 業務実績
期日
項目
4月10∼12日
マレーシア海事局との打合せ
4月17∼19日
海上警察、IMB 海賊センター、海軍、国家安全保障局訪問
(マレーシア)
4月20日
シンガポール海事港湾庁にて船員養成シミュレータ装置説明
見学
4月23∼26日
シンガポール海峡航行安全体制調査
4月28∼29日
第26回TTEG出席
5月4日
シンガポール海事協会海事法律セミナー
5月9日∼11日
インドネシア べラワン港調査
5月13∼15日
インドネシア政府関係者との海賊問題意見交換
5月28∼29日
第6回オスパー管理委員会出席
5月30∼31日
CSCAP 会合出席
5月30∼6月8日
IMO・MSC74 出席
6月25日
日本財団表敬訪問対応(マレーシア運輸省、海事局)
6月26∼27日
IMB海賊対策会議出席
6月28日
マレーシア国家安全保障局、IMB海賊情報センター訪問
7月9∼11日
インドネシア海運総局訪問
7月16∼17日
マレーシア海事局訪問(ケミカル対策情報収集)
7月19日
SGS−ALERT シンガポール訪問(ケミカル対応、情報収集)
7月22∼27日
志村新所長沿岸三国出張対応
9月3∼5日
ICOPCE会議出席
9月5∼9日
フィリピン沿岸警備隊訪問・情報収集
9月6∼7日
MEH会合出席
9月7日
国土交通省木村政務官来星対応
9月16∼18日
インドネシア海運総局等所長表敬訪問・情報収集
9月25∼28日
マレーシア海事局、国家安全保障局等所長表敬訪問・情報収
集
9月28日
シンガポール海事協会創立記念式参加
10月2∼5日
インドネシアJICA航行安全マスタープラン会合出席
10月4日
インタータンコ主催レセプション出席
10月5日
SMIT主催レセプション出席
10月12∼13日
マラッカ海峡協議会寺嶋顧問来星対応
73
10月16∼17日
マラッカ海峡会議出席(マレーシア・ペナン島)
10月29∼11月2日
シンガポールR&Dセミナー開催
10月29日
マレーシア海事執行調整センター訪問
10月30日
マレーシア海事局訪問
11月1日
タイ海上警察組織等現状調査
11月5日
第7回 JAMS 海峡安全会議
11月6日
日本財団寺島常務・山田課長マレーシア国家安全保障局、IMB
海賊情報センター訪問対応
11月8日
日本・フィリピン・インドネシア油流出事故対策合同訓練出
席
11月12∼15日
海上治安関係情報収集
11月21日
槇田新シンガポール大使表敬訪問
11月26日
シンガポールPOCC訪問
11月27日
シンガポール警察沿岸警備隊訪問
11月28日
マレーシア国家安全保障局訪問
11月29日
タイ海上警察との打ち合わせ
12月10∼15日
日本海上保安庁タイ海上警察・港湾局海賊対策合同訓練参加
12月12日
天皇誕生日レセプション出席
12月19∼21日
国土交通省羽生国土交通審議官来星
1月6∼8日
国土交通省港湾局金澤技術参事官来星
1月10日
シンガポール海運協会主催 STCW95 講演出席
1月14日
小泉首相シンガポール訪問講演出席
1月21∼25日
日本海上保安庁・インドネシア海運総局海賊対策国際会議・
連携訓練準備支援
1月20∼23日
日本財団寺島常務来星
1月21∼24日
MEH 会議参加
1月29∼31日
タイ・オスパー管理委員会関連情報収集
2月4日
マレーシア海事局訪問マ協連携業務打合せ
2月4日
ICS・インタータンコ主催海賊対策会議出席
2月5日
シンガポール海事港湾庁訪問海賊情報収集
2月6日
インドネシア海運総局訪問マ協連携業務打合せ
2月6∼8日
IMB 海賊情報センター訪問海賊関係情報収集
マレーシア運輸省、国家安全保障局、海事局訪問情報収集
2月14∼15日、19∼ 海賊専門家会合事前打合せ
22日、25∼28日
74
2月14∼19日
日海防本部、日本財団、国土交通省との調整会合
2月20日
国土交通省国際協力課伊崎国際協力官等来星
2月27日
国土交通省外航課三膳専門家等シンガポール港視察同行
2月28日
国土交通省外航課三膳専門家国際協力課伊崎国際協力官ほか
来所情報提供
3月4日
海賊対策専門家会合準備
3月5∼6日
海賊対策専門家会合出席
3月7日
インドネシア・日本海賊対策合同訓練見学
3月8日
国土交通省中西情報管理部長ほか来星
3月11日
インドネシア海軍水路部訪問
3月12日
タイ海上警察訪問
3月14∼15日
国土交通省国際企画課東井企画官ほか来星
3月19∼20日
マラッカ・シンガポール海峡航行安全対策検討委員会出席
3月25日
シンガポール海事港湾庁訪問意見交換
75
第2章 関連情報(新聞記事)
第1節 海賊
ハイジャックされた貨物船 Inabukwa 号を船主が確認
フィリピン沿岸警備隊によると、現在フィリピン当局によって取り押さえられている貨
物船 Inabukwa 号がインドネシア船主によって確認された。
インドネシア国営会社 Pelayaran Nasional の代表が、I 号を確認したほか、貨物所有者
も現場を訪れ、貨物が無傷だったことを喜んでいたと沿岸警備隊関係者は述べている。
インドネシア大使館は外務省と調整し、海賊と船を同国の監視下に置くため解放するよ
うフィリピンに求めている。これに対し、フィリピン政府は原則としてインドネシアへの
国外退去に合意している。
沿岸警備隊による当初の貨物の調査記録では、12,800 枚の錫インゴット、亜鉛の入った
ドラム缶 105 本、529 袋の Muntok 紙が I 号に積まれていたとされた。I 号は 432 トンの錫
インゴット及び濃縮物を運んでいたと報告されていた。
沿岸警備隊は、船の身元確認と貨物の証明を行うため、船主と貨物所有者、I 号の当初の
船長に I 号の書類の原文と貨物証明書を持ってマニラに来るよう求めている。
フィリピン当局は、I 号の航海士 2 名と船員 5 名に対する処置について、静観している状
態である。当局は、地方裁判所で彼等を不法入国の罪で訴えることを考えている。しかし
現在、フィリピン政府が、インドネシアへの海賊の国外退去に合意した理由はわかってい
ない。インドネシアでは彼等はハイジャックの罪に問われる可能性もある。事件が発生し
たのは、インドネシア領海内であった。
I 号はシンガポールに向けインドネシア・バタム島を出発した後、1 日も経たないうちに
13 人の武装した海賊に襲われた。
その後、3 月 25 日フィリピン沿岸警備隊が、北ルソンの Salomague 沖でポートステー
トコントロールの調査のため、貨物船 Chugsin 号に乗り込んで調べたところ、溶接されて
いた Inabukwa という名前の上に Chugsin と書かれているのを発見した。
船長は船の書類を提出しなかったが、船員は船員手帳とパスポートを持っており、I 号に
はシンガポール港沖に停泊していたところを乗船しただけであると話している。
(2001 年 4 月 12 日シッピングタイムズ)
IMB「Inabukwa」の海賊は起訴されるべき
インドネシア船籍の Inabukwa 号をハイジャックした海賊が逮捕されたことについて、
海賊がインドネシアに引き渡され、同国で起訴されるべきだと IMB のムクンダン局長は述
べている。
同局長は、インドネシアへの海賊の引渡しがなされたのに、もし起訴されないというこ
76
とになれば、それは悲劇的だとも述べている。
事件が起こったのはインドネシア領海内で、インドネシア船籍の船がインドネシア人海
賊に襲われたということから、インドネシア政府が海賊を起訴する司法権を持たないとい
うことはないだろうと同局長は語っている。
フィリピンとインドネシアが海賊のインドネシアへの送還に相互合意すれば、法的障害
はなくなるとも同局長は述べている。
インドネシアとフィリピンの両国は、SUA 条約を批准していない。
(2001 年 4 月 16 日スター)
アロンドラ・レインボー号裁判に日本人船長が証人として出頭
インドのムンバイで行われているアロンドラ・レインボー号裁判に日本人船長が証人と
して出頭した。また、インドネシア人海賊が英語を理解しないことから、インドネシア語
の通訳の手配を許可し、これにかかる費用についてはインドネシア領事館が負担すること
(2001 年 4 月 27 日 Press Trust of India)
になった。
IMB、第一四半期海賊報告書を発表
IMBの発表によると、今年第一四半期に発生した海賊事件及び未遂事件は68件あっ
た(昨年同時期は56件)
。このうち半数近くがインドネシアとマラッカ海峡で発生してい
る。その数はインドネシアが23件、マラッカ海峡が9件になっており、昨年同時期より
被害が増えた(昨年同時期にはインドネシア19件、マラッカ海峡7件)
。世界でも有数の
輻輳した航路であるマラッカ海峡は、マレーシア海上警察がパトロールを強化しているの
にもかかわらず、引き続き海賊多発地帯として注目されている。IMBの報告書によると、
「最も危険な海域は、北緯2度、東経102度の地点の半径25海里以内で、武装した海
賊が繰り返し船を襲っている」という。また、
「インドネシアの海賊は地元の貧民に戦利品
を分け与えており、村の住民からは『現代のロビン・フッド』という扱いを受けている。
自分達のヒーローを海賊呼ばわりされた村民が暴動を起こすのを恐れて、当局は手が出せ
ないでいる」という。
(2001 年 5 月 2 日マリタイムアジア、ストレートタイムズ)
東南アジアで海賊被害が増加
海賊撲滅の努力にもかかわらず、東南アジアでの発生件数が増加している。
国際海事局(IMB)がこのほど発表した海賊被害調査報告によると、今年第一四半期に
世界中で報告された 68 件のうち、63%が東南アジアで発生している。
過去 2 年間の調査では、同地域が占める割合は 50%程度だった。
国・地域別では、最も多いインドネシア海域が 23 件、続いてマラッカ海峡が 9 件となっ
ている。シンガポールとマレーシアの近海はそれぞれ 2 件、4 件だった。
当局によると、マラッカ海峡を縄張りとするインドネシアの海賊は、略奪品を沿岸地域
77
の村落に分配し、同地域では「義賊」と見なされているという。
海賊が逮捕された場合、村民らは恩人のために蜂起する可能性もあり、海賊一掃の実現
は困難なものとなっている。
国際海事機関(IMO)では、各国からの協力を取り付け、沿岸警備の強化を図る方針で
(2001 年 5 月 2 日シッピングタイムズ)
ある。
国連総会で海賊問題が話し合われる
先週シンガポールで開催された海洋法セミナーによると、5月10日の国連総会で海賊
及び海上強盗対策に関する協力について話し合いが持たれる予定である。
これについて、シンガポール大学のロバート・ベックマン助教授は、最近の国連の進展
で最も興味深いものの一つであると述べている。 (2001 年 5 月 7 日マリタイムアジア)
シンガポール 大統領が警察沿岸警備隊を訪問
5 月 10 日、ナザン大統領が警察沿岸警備隊本部を訪問した。
ナザン大統領が警察沿岸警備隊を訪問するのは、大統領就任後初めてのことである。
施設の視察には、ウォン・カンセン内相が同行し、大統領は警察沿岸警備隊が日常の業
務で用いている武器等を視察した。
沿岸警備隊は、大統領のために 11 隻のボートを出動させ、Sail-past を披露した。
このほかにも、不法入国者を逮捕する現場を再現してみせた。
大統領は沿岸警備隊の能力に感銘を受け、最新の技術を取り入れようとする職員の意欲
(2001 年 5 月 11 日ストレートタイムズ)
を賞賛した。
マレーシアが海賊対策を強化
この日、マレーシア海上警察巡視船「KPD Balong」は、マシンガンで武装し、シンガポ
ールからペナンまで約 300 メートルにわたる徹夜のパトロールを実施した。船長は、武装
は警告であると話す。
43 メートルのこの巡視船は、マレーシアの海賊対策パトロールの指揮船として機能する。
傘下には、黒色に塗装され海賊取締のために特別に訓練された特殊部隊の乗る 4 隻の高速
艇を従える。
取材中、武装乗組員により 2 隻のボートが立ち入り検査された。
インドネシア・スマトラ島とマレーシア、シンガポールに挟まれた狭い海峡は、貧困を
原因とする海賊行為に病んでいる。
今年第一四半期に報告された 68 件の海賊事件のうち、その 3 分の 1 がインドネシア海域
で発生している。
経済状態の悪化が、海賊行為を助長させていることは明らかである。近隣国はさまざま
(2001 年 5 月 15 日シッピングタイムズ)
な対策を検討し、実行に移している。
78
インドネシアの貧困が海賊を助長
インドネシアにおける慢性的な政情及び経済の不安定が、地方地域における政府の管理
機能と治安維持を損ないつつあり、一方で海賊を助長する貧困を発生させている。
各国政府は、海賊は国際貿易に対する重大な脅威であるとし、必要とされる地位間協力
について合意しているものの、1997 年におけるアジア経済危機、政治腐敗等により、事態
は困難な状況に陥っている。
1997 年には海賊事件は 0 件であったこの海峡は、2000 年には 73 件の海賊事件を記録し
た。
マレーシア警察幹部は、海賊はインドネシアから来て、現金は勿論、係留策に至るまで
彼らが売ることができそうなものを何もかも奪い去っていく」と述べている。
IMB レポートには、奪った金品を貧しい村へ配分する代わりに、村人に匿って貰うロビ
ンフッド型海賊について記載されている。
マレーシア海上警察幹部は、例え追跡中であっても、海賊がインドネシアとの領海線を
越えてしまえば、できることは限られている、それでもインドネシアに対する警告は必要
であるし、仮に海賊がマレーシア海域に入れば直ちにそれを食い止めると述べる。
インドネシア政府は、インドネシアから多くの海賊がマラッカ海峡に来ていることは事
実として認めているが、一方で、国家予算の欠如を訴える。
インドネシア外務省は、次のように述べている。
「我々はこの問題に取り組んでいるが、適切に対応するための予算、施設が不足している。
問題の一つは、それぞれの国の海軍が海賊追跡のため他国の領海内に入れないということ
である。我々はマレーシア、シンガポールとこの点についての合意事項が必要だと考えて
いる。これはインドネシアだけの問題ではない、国際的な問題である」
(2001 年 5 月 15 日シッピングタイムズ)
武器を搭載した日本船が地域の海賊対策を援助
日本からの報道によると、武器を搭載した日本海上保安庁(JCG)の船が、近々東南ア
ジア海域で海賊及び海上強盗の抑制援助活動を始める予定である。昨日(6 日)の AP 通信
の報道によると、JCG から派遣される初の巡視艇は、早ければ来月にもシンガポールに送
られる予定で、地域各国と共同訓練及びパトロールの面で協力する予定である。武器を搭
載した船は、年に 4 回この地域に派遣される予定で、2 機のヘリコプターを輸送することが
できるという。
JCG のスポークスマンは以下のように発言している。
「多くの日本のタンカーがこの海域を通航しており、彼らを守るために対策を講じなけれ
ばならない。また、我々は地域各国と政策・調整面を強化していきたいと考えている」
また、パトロールの日程、活動、ルートの詳細については、現在作成が進められている
ところだとスポークスマンは付け加えた。
79
シッピングタイムズが東京のスポークスマンに連絡をとったところ、JCG が地域当局の
海賊及び海上強盗対策を援助することは確認できたが、詳細については明らかにされなか
った。
しかし、この報道について海運団体や現地当局に確認を取ったところ、共同訓練及び(ま
たは)共同パトロール計画について知らされていないということがわかり、この報道に対
して驚いていたようである。
日本はここ一年以上共同パトロール案を積極的に奨励しており、昨年 11 月には JCG が
インドとマレーシアと訓練を行っている。しかし、マレーシアは自国に十分な対応能力が
あるため不要だとして、共同パトロール案を拒否している。
(2001 年 6 月 7 日シッピングタイムズ)
日本海上保安庁「東南アジアでの海賊対策パトロールはしない」
日本海上保安庁は昨日、日本は今後も東南アジア地域との協力を訴えていくが、東南ア
ジア海域で海賊対策パトロールを実施する予定はないと述べた。
日本海上保安庁(JCG)国際刑事課の大根潔課長補佐は、シッピングタイムズに対し、
JCG が東南アジア地域で「共同パトロール(joint patrol)」を実施する予定だという報道に
驚いたと述べている。「共同パトロール(joint patrol)に関して、我々は話し合いを持って
いない。このため、共同パトロール(joint patrol)を実施するつもりはない」と大根課長補
佐は語っている。
大根課長補佐は、海賊及び武装強盗の問題に対応するため、JCG が武器を搭載した巡視
艇を東南アジア海域に派遣するという東京から発信された報道について、シッピングタイ
ムズに回答した。
「今年度は、東南アジアの国々の沿岸警備隊との合同訓練を未だ計画中である」と述べて
はいるものの、
「このような訓練は、二国間またはそれ以上の国々の合意を経て計画される
ものであり、まだどの国にも連絡をとっていないため、どこの当局といつ、どのように行
うのかについてはまだわかっていない」としている。
「今のところ、シンガポール当局と訓練を実施する予定は全くない」と大根課長補佐は付
け加えた。
シッピングタイムズが理解したところでは、マラッカ・シンガポール海峡を通航する沿
岸警備隊や海軍の船と同様に、JCG の巡視艇が1年に数回シンガポールに寄港するという
ことである。
一部問題とされるのが定義についてである。調整パトロール(coordinated patrol)とい
うのは自国の海域内のみで行われるもので、一方共同パトロール(joint patrol)というのは
ある国の巡視艇が別の国の海域に入って行うものである。
これについては、国家の統治権問題のため、支持が得られなかった。戦争時の日本によ
る占領時の記憶が消えていないことが障害になったものとみられる。
80
大根課長補佐は、JCG が多くの武器を備えた船を派遣するという報道とは逆に、巡視艇
は武器を備えているものの、それらは「いわば基本的なものであり、数も少なく」、法の執
行時においてのみ使用されると述べている。
アジアの集合的な海賊問題への取り組みは、日本が起こしたもので、昨年 3 月のシンガ
ポールでの準備会議から始まったものである。
続いて 2000 年 4 月に東京で地域会議が開かれ、
これにアジア 15 カ国の代表が出席した。
この会議で持ち上がった 5 つの主要な提案は、以下のとおりである。①専門家会議開催
続行
②各国の巡視艇の相互訪問
③合同訓練
④日本海上保安大学校または訓練学校で
の訓練を提供 ④海事法律執行強化のためのセミナー
第 1 回専門家会議は昨年 11 月にクアラルンプールで開催され、同時に JCG とマレーシ
アが共同訓練を行った。この一週間前には JCG とインド沿岸警備隊が同様の訓練を実施し
(2001 年 6 月 8 日シッピングタイムズ)
ている。
フィリピン人の武装グループが 6 隻の船をハイジャック
水曜日(13 日)に 6 隻の船がフィリピン人武装グループにハイジャックされ、うち 2 隻
は未だ拘束されている模様。
ある情報筋によると、午後 7 時頃、Tawau から Labuan に向かってサンダカン沖の国際
海域を航行中のタグボートが武装グループに襲撃された。タグボートとそのトロール漁船
はフィリピンの Bangukan Besar に連れて行かれ、そこで武装グループは 45,000 マレーシ
アリンギの身代金を要求した。
別のグループは Lihiman 島でトロール漁船を襲って、船と乗組員と引き換えに身代金
5,000 リンギを要求している。
各事件とも、船主が犯人と話し合いを進めているようだが、マレーシア・サバ州の警察
等に報告はされていない。
武装グループは、これより前にタグボートとバージを襲い、25,000 リンギの身代金を受
け取って 6 名の乗組員を解放している。このほかに、3 隻のトロール漁船も被害を受け、各
5,000 リンギの身代金を支払った。
Kudat から来たタグボートの乗組員は、5 時間の間人質にとられた後、身代金が支払われ、
解放された。
サンダカンに拠点を置くバージとタグボートの所有者は、水曜日(13 日)の遅くにフィ
リピンの Lagahan 島沖で武装グループに身代金を支払った。
これらの事件を受け、マレーシア海軍及び海上警察は、マレーシア海域内の警備を強化
した。
午後 2 時にフィリピンの Lagahan 島沖の国際海域で、盗難したものとみられるトロール
漁船に乗った武装グループが、木材を積んだバージを曳いていたタグボートを襲撃したと
いう事件が、一連のハイジャック事件の、最初の被害であった。武装グループの襲撃を受
81
けた後、同船から船主に電話があり、武装グループが身代金を要求していることが伝えら
れた。その後午後 3 時に再び船から連絡が入り、13 日の夜までに身代金が支払われない場
合、武装グループは船を爆破すると脅していると連絡があった。このため、船主は身代金
(2001 年 6 月 15 日スター)
の支払いに応じた。
乗組員を負傷させた後、何も奪わずに海賊が逃走
事件発生地点:シンガポールから北東約 100 海里の Pengibu 島付近
被害船名及びその詳細:Miri Energy、2,500 トン、乗組員 15 名
Shell Malaysia チャーター船
ポートディクソン発サバ行き
状況:該船は月曜日(11 日)の早朝、サンダカン港で積荷の油を降ろした。約 10 名の海賊
は船尾から該船に乗り込んだとみられる。海賊は機関室にいた乗組員の頭を殴り、この乗
組員を縛ったが、別の乗組員が現れたことから、何も奪わずに逃走した。事故発生当時、
負傷した乗組員のほか 1 名の計 2 名が当直にあたっていた。
Shell Malaysia は、負傷した乗組員が治療を受けられるよう該船をシンガポールに向か
(2001 年 6 月 15 日スター)
わせていると発表している。
海賊問題、国連総会で焦点に
国連事務局はこのほど、世界各地で海賊被害が拡大していることを受け、近く開く予定
の総会で海賊問題を主要議題に取り上げる考えを明らかにした。先頃行われた第 74 回総会
で発表された。
国際海事機関(IMO)の海上安全委員会(MSC)ではこれを受け入れ、総会への同議題
提出に向けた準備に入っている。
IMO の 2000 年 3 月から 2001 年 3 月の統計によると、世界各地の海賊被害発生件数は前
年に比べほとんどの地域で増加傾向にある。特にマラッカ海峡周辺は、前年の 37 件から 112
件と一番の増加率を示しており、順位は東シナ海についで 2 位となっている。IMO では、
海賊襲撃に備えた乗組員の訓練に関する基準を制定するよう、国際会議で呼び掛ける予定
のほか、地域間協力に向けた協定の早期締結を目指している。(2001 年 6 月 19 日 NNA)
タイ警察が悪名高い海賊を逮捕
6 月 23 日にタイ警察は、今年 1 月にミャンマーのトロール漁船「Thorae」を襲った疑い
で、悪名高い海賊 Viroj Buasuwan(50 歳)をタイ南部ラノーン県で逮捕した。Viroj は、
乗組員に対する残忍な扱いから Roj 100 Corpses(Corpse は死体の意味)の別名で知られ
ている。
トロール漁船「Thorae」を襲った事件では、20 名の一団を率いて、T 号の乗組員に海に
飛び込むよう強制し、漁船と捕獲された魚(300 万バーツ相当)を奪った。乗組員は無事救
82
助され、ラノーン県の警察に被害を通報した。警察によると、Viroj の手下であるタイ人 4
名とミャンマー人 16 名も一斉検挙されているという。
Viroj は Thorae 号をミャンマーの海軍の船と間違えたとしており、ミャンマーの刑務所
で過去にひどい仕打ちを受けたことから、その仕返しをしようと思ったと話している。
(2001 年 6 月 26 日シッピングタイムズ)
マラッカ海峡でタンカーがハイジャックされる
発生地点:マラッカ海峡と思われる
被害船の詳細:タンカー、Selayang 号、1,877 トン、1981 年建造、船体:黒、シェル・マ
レーシアがチャーター、ポートディクソン発 Labuan 行き
状況:該船は、6 月 19 日の夜ポートディクソンの石油精製会社を出発した後、武装した海
賊に襲撃され、乗組員が人質にとられている模様。最後に確認された位置は、北緯 0 度 11
分、東経 106 度。事件が発生したのはインドネシア海域であると思われる。マレーシア海
軍はインドネシア当局に協力を求めている。付近を航行中の船は見張りを強化し、援助が
必要な場合はこれに応じるよう求められている。
(2001 年 6 月 26 日ロイズリスト)
インドネシア海域でまたハイジャック事件 船長が人質に
発生日時:2001 年 6 月 25 日(月)夜
被害船及びその詳細:Tirta Niaga Ⅳ(旧名:Raisa)、2,863gt、1985 年建造、インドネシ
ア船籍、貨物:パーム油、マレーシア北部バターワース発インド行
き、船長+乗組員 20 名
状況:バターワース港を出港した後、25 日夜に海賊が T 号を襲撃した。北スマトラ沖で船
長が、
身代金要求のために人質にとられている模様。
ほかの乗組員 20 名はまだ船上にいる。
この情報は IMB 主催海賊会議で、マレーシア内務副大臣が公表したもの。マレーシア当局
は、インドネシアと IMB と緊密に働き合っていくとしている。
(2001 年 6 月 27 日ロイズリスト、シッピングタイムズ)
会議開催時にハイジャック事件が 2 件発生
IMB(国際海事局)がクアラルンプールで会議を開いたのと同時に、マラッカ海峡で 2
隻の船がハイジャックされた。
マレーシア内務副大臣 Zaimal Abidin Bin Zin 氏は、会議の開会時に先週 2 隻の船がハイ
ジャックされたと発表した。
タンカーSelayang 号は、ポートディクソンを出発した 6 月 19 日に、もう 1 隻は日曜日
(24 日)の夜にハイジャックされた。
これらの事件について、詳細はまだわかっていないが、ある産業筋の話では、マラッカ
海峡でインドネシアのアチェから来た海賊に襲われたとのことである。
83
船長が人質にとられており、ほかの乗組員は船から逃げて当局に通報した模様。船の詳
細についてはわかっていない。
ハイジャック事件は、偶然にもマレーシアで開催された第 4 回 IMB 国際海賊会議の開会
と重なった。この会議には 20 カ国以上の代表が出席した。
今年初めには、IMO の代表団がシンガポールで海賊問題について話し合いを進めている
間にインドネシアの貨物船 Inabukua がハイジャックされた。また、1999 年にはシンガポ
ール船主協会が海賊会議を開催したと同時に Alondra Rainbow 号がハイジャックされてい
る。
一方、シェル・マレーシアがチャーターしていた Selayang 号の捜索は現在進行中である。
該船は 6 月 19 日にポートディクソンの石油精製所を出発した後、
行方がわからなくなった。
武装した海賊が該船に乗り込み、乗組員 17 名を人質にしている。
マレーシア当局は、インドネシア当局に対し、該船の追跡及び捕獲のための援助を求め
ている。
産業筋の話では、現在該船はインドネシアのカリマンタン沖に位置しているが、マレー
シア当局はインドネシア側からの援助確保に困難しているという。
一方、海賊問題に大きな懸念を示している日本の海上安全専門家は、東南アジア各国に
対し、海賊問題に立ち向かうために完全に協力するよう求めた。
日本財団の寺島紘士常務理事は、会議の中で、マラッカ海峡における海賊対策のための
協力は最も重要であるが、これまで十分になされてなかったと述べた。
「国家間の協力は最も理想的なものである必要はない。今後の地域協力の確立をどのよう
に進めていくかということが、重要な問題である」と寺島常務理事は述べた。
寺島常務理事は、日本の石油輸入の 80%がマラッカ海峡を通じて行われていると会議の
席で述べた。過去 5 年間に海賊問題が日本産業界に与えた損失は約 2,400 万ドルに上る。
日本は、海賊対策のための東南アジア諸国との共同パトロール等、協力強化を押し進め
ている。
しかし、国家の司法権を始めとした政治上の問題は、未解決のままである。
(2001 年 6 月 27 日ロイズリスト)
インドネシア沖で3件目の海賊事件が発生
発生日時:2001 年 6 月 27 日未明
発生位置:インドネシア カリムン島沖
被害船名及び詳細:タンカー
状況:5人の海賊が該船に乗り込み、現金と貴重品を奪って逃走した。
∼海賊事件①、②の続報∼
Selayang 号をインドネシア海軍が拿捕
84
6 月 27 日 1530、インドネシア・カリマンタンの東海岸沖、サマリンダの北で、インドネ
シア海軍が Selayang 号(マレーシア船籍)を拿捕した。該船は先週マラッカ海峡で海賊に
ハイジャックされた。該船は船舶追跡システム「Shiploc」を搭載していた可能性が高く、
これによって該船の正確な位置が明らかになったとみられる。このような技術によって、
海賊が逮捕されたのは初めてのこと。該船はインドネシア海軍の基地に曳航された。乗組
員 17 人の安否及び貨物(軽油 3,500 トン)の状況については明らかになっていないが、該
船拿捕時には海賊は船上にいたとのこと。
Tirta Niaga 号、人質になった船長の引渡しを交渉中
6 月 24 日夜、アチェ沖で海賊に襲われたタンカーTirta Niaga 号(インドネシア船主、
貨物:パーム油製品 2,850 トン)は、現在マレーシアのバターワースに無事戻った。該船
の乗組員(船長を除く)も無事マレーシアに戻ったが、船長(Simon Perera)は現在も人
質にとられており、海賊は身代金 10 億ルピア(88,000 ドル)を要求していて、交渉が行わ
れているところである。該船はエンジントラブルに見舞われ、修理のためにアチェの海岸
近くに停泊したところを海賊に襲撃された。Selayang 号と同様、Tirta Niaga 号もその正
確な位置が明らかになっていた。マレーシア警察は、マラッカ海峡でエンジントラブルに
見舞われた場合、まだ動けそうであればマレーシア海域内に移動して修理を行うよう警告
している。
IMB のムクンダン局長は、インドネシア海軍が Selayang 号を拿捕したことを受け、こ
のハイジャック計画を立てた犯人に対し、インドネシア、マレーシア、シンガポールが海
賊天国ではないことを証明できたと話している。
日本海上保安庁の渡辺晃久氏は、日本は地域当局との共同訓練実施に積極的であるが、
パトロールをするかどうかは関係各国政府の決定に委ねるとしている。
一方、マレーシアのマハティール首相は、マラッカ海峡、サバ、サラワク沖でのパトロ
ールと船舶の安全確保を強化すると述べている。
(2001 年 6 月 28 日ストレートタイムズ・ロイズリスト)
マレーシア 海賊に対する監視を強化
マレーシア政府は、通航船舶の安全を確保し、海賊の脅威を最小限に抑えるために、マ
ラッカ海峡及びサバ、サラワクでの監視を強化する。
マハティール首相は、マレーシア海域を通航中の船舶をこのような脅威から守ることは
国家の任務であると述べた。
マレーシア政府は、最近マラッカ海峡で船舶がハイジャックされる事件が増加している
ことに懸念を示しているとマハティール首相は話している。同首相によると、年間 63,000
(2001 年 6 月 28 日スター)
隻の船舶がマラッカ海峡を通航している。
85
インドネシア海軍がマレーシア海域に侵入
インドネシア海軍の巡視艇がマレーシア海域に侵入し、インドネシア海域に侵入したこ
とを理由にマレーシア漁船の漁師を銃殺した。
漁業会社 Hilir Perak によると、群れになった漁船は少なくともインドネシア海域から 9
海里は離れたところにいたとのこと。
漁船が沈没した位置は、漁船に搭載されていた GPS から確認でき、その位置は北緯 3 度
19.95 分、東経 100 度 30.85 分であった。
マレーシア漁船がインドネシア海域に侵入し、そのうちの 1 隻がインドネシア海軍船に
激突してきたとインドネシア海軍は発表している。
午前 7 時 30 分、インドネシア海軍から逃れようとした漁師 Heng Beng Hong(43 歳)
がインドネシア海軍によって銃殺された。
漁船は木造で、海軍の船に激突した場合その衝撃に耐えらないと思われることから、漁
船が巡視艇に激突しようとしたというのは考えられないと Hilir Perak は話しており、別の
漁船が事件を目撃しているという。
漁師等がクアラセランゴール沖から 43 海里、スンガイベラナムから 33 海里のところで
漁をしていた時に、インドネシア船が接近して来るのに気が付いた。最初は無視していた
が、漁船の方に高速で近づいてきて発砲を始めたため、別々の方向に向かって疾走した。
巡視艇は漁船に警告等は一切しなかった模様。
桟橋に集まった約 200 名の漁師は、Heng の漁船はバラワン港沖 20 海里沖で高波に襲わ
れて沈没したというインドネシア海軍の言い分に異論を唱えていた。
Heng の遺体は海上で行方不明になったとみられる。ほかの 3 人は、ベラワン港に拘留さ
(2001 年 6 月 28 日サン)
れている。
フィリピンがインドネシアに海賊を引き渡し
フィリピン沿岸警備隊は 27 日、インドネシアの貨物船 Inabukwa 号をハイジャックした
海賊 7 名をインドネシア政府の代理人に引き渡した。海賊は全員インドネシアのパスポー
トを所有していた。
海賊の名前は以下の通り。
Ade Sumarlin
船長
Berthy Julius Koloay - chief mate 一等航海士
Yanto Haryanto 一等機関士
Sumitra Binagkit 二等航海士
Milky Wilhelmus Pangemanan 注油者
Saul Boyke Sambirang コック
Roland Kalesaran 船員
フィリピン沿岸警備隊は、海賊がインドネシア人であること、被害船がインドネシア政
86
府の所有する船であったことから、調査及び海賊の求刑はフィリピンで行うよりインドネ
(2001 年 6 月 29 日ロイズリスト)
シアで行う方がよいだろうと述べている。
海賊事件増加の原因はインドネシアの経済及び情勢の混乱
IMB(国際海事局)のムクンダン局長は、インドネシアの経済と情勢の混乱が地域の海
賊事件増加の原因であると指摘している。
「海賊事件がインドネシアから生じていることは周知のことであり、インドネシアの治安
の崩壊がこの状況を助長している。沿岸沖の警備を強化する必要がある」とムクンダン局
長は 27日、IMB が主催した会議の閉会の席で述べた。
2 日間にわたる会議には、行政機関や海運産業から約 175 名が出席した。
会議の開催と同時期に 3 件の海賊事件が連続発生し、ある会議出席者は「海賊問題が現
実であり、深刻であることを再度実感した」として、以下のように述べた。
「会議では海賊問題について率直で開かれた話し合いが持たれた。海賊事件の発生を受け、
インドネシアからの出席者には相当のプレッシャーがかかっていた。会議の中で持ち上が
った提案というのはほとんどなかったが、地域協力に関する取り組みが求められ、日本海
上保安庁が再び共同訓練の参加を申し出た。
」
(2001 年 6 月 29 日シッピングタイムズ)
印、馬、星が海賊撲滅のためセキュリティネットを形成
インドネシア、マレーシア、シンガポールの政府代表が、近々セキュリティプランを綿
密に計画するため会合を持つ予定である。これはロンドンに拠点を置く国際海事局(IMB)
の地域に対する海賊対策の呼びかけに応えたもの。
IMB(国際海事局)のムクンダン局長は AFP に対し、沿岸三国の警備当局間協力のみが
海賊行為の鎮圧に有効であると述べた。
「今後、インドネシア、マレーシア、シンガポールは、マラッカ海峡での海賊被害を抑圧
するために緊密に働きあっていくだろう」
先週、IMB は 2 日間にわたる会議を開催し、これに法執行機関職員、船員、海運産業関
係者が参加した。
会議の焦点は、海賊が多発しているアジア、特にインドネシアに集まった。
クアラルンプールに拠点を置く IMB 海賊通報センターによると、今年 1 月から 3 月まで
に全世界で発生した海賊事件または海賊未遂事件は 68 件あり、十年来で最多である。
インドネシアでは 23 件の被害があり、マラッカ海峡では 9 件の被害があった。
IMB は海賊行為が撲滅されなければ、マラッカ海峡で大規模な環境被害が起こる恐れが
あると懸念している。
ムクンダン局長によると、海賊が船を襲撃している間、船橋にいる乗組員を含む全員が
部屋に閉じ込められて縛られ、船を操縦する者がいなくなることがよくあるという。
「我々が恐れていることは現実に存在する。マラッカ海峡で発生した事件の多くで、船を
87
操縦する者がいない状態になっている。海賊事件が衝突や座礁につながる可能性がある」
とムクンダン氏は話している。
20 万トンの原油を積載したタンカーが衝突事故を起こし、それが海峡に流れ出すという
状況もありうるとムクンダン氏は述べている。
「海賊がたった数百ドルの現金を奪って逃走する場合もあるが、地域各国が海賊事件に危
険性に注意を払っていることは明らかである」
日本が輸入する石油の 80%が、輻輳したマラッカ海峡を通じて輸送されている。
ムクンダン氏は、マレーシアの海賊対策プランに満足しているが、近隣国であるインド
ネシアが対応資源に欠けていることに懸念を示している。
マレーシア海上警察のムハマド・ムダ氏は、AFP に対し、三国の治安当局が近々会合を
持ち、三国間のパトロールを実施するための計画を立てると述べている。
「今、我々は海賊行為を撲滅するために三国間の協力関係に焦点を置くべきである」とム
ハマド氏は述べた。マレーシアはインドネシア、またはシンガポールと二国間のみの強力
しか行っていない。
ムハマド氏は、三国間の協力によって各国がお互いの長所や短所を伸ばしたり、かばい
合ったり、パトロールを調整することができると述べている。
「各国当局のオフィサーを相互乗船させるなどして、共同・合同パトロールを含めて協力
関係を高めていけるよう望んでいる」と述べた。
ムハマド氏の海賊へのメッセージは、
「我々はお前達が誰なのか、どこにいるのかわかっ
ている、これから排除していくから覚悟しておけ」
ムクンダン氏は、海賊による経済性、環境上の危険性のほか、ハイジャックに遭った乗
組員のトラウマが問題になっているとしている。
「彼らには全く助けがない。海の真ん中で支援もなく、海賊の言いなりになっている」と
ムクンダン氏は述べた。
両氏は、マラッカ海峡から海賊行為を排除するためには日本が重要な役割を担うという
点で合意している。
「日本は訓練や装置を提供できる。日本はすでに海峡のセキュリティ面を強化するために
多くの費用を投入している」とムクンダン氏は述べた。
(2001 年 7 月 1 日 APF)
シンガポールのニュース専門ラジオ局による報道
マレーシア、インドネシア、シンガポールの政府代表が、安全プランに関する話し合い
を持つためクアラルンプールに集まる。これはロンドンに拠点を置く国際海事局(IMB)
の地域に対する海賊対策の呼びかけに応えたもの。
IMB のムクンダン局長は、海賊行為を鎮圧するためには三国の警備当局が協力していく
必要があると強調した。先週、IMB は 2 日間にわたる会議を開催し、これに法の執行者、
船員、海運産業関係者が参加した。会議の焦点は、海賊が多発しているアジア、特にイン
88
ドネシアに集まった。
推定によると、今年上四半期の全世界における海賊事件または海賊未遂事件は 68 件あり、
十年来の数に上る。インドネシアでは 23 件の被害があり、マラッカ海峡では 9 件の被害が
(2001 年 7 月 1 日 FM93.8)
あった。
Selayang 号の乗組員は無事
インドネシア当局は、タンカーSelayang 号をハイジャックしたとして、海賊容疑者 10
名を逮捕した。インドネシアのアンタラ通信によると、インドネシア海軍はタンカーを襲
ったとみられる 10 名のインドネシア人海賊を逮捕した。タンカーの乗組員 17 名は無事で
ある模様。S号は 6 月 27 日(水)に拿捕された。海軍によると、海上警察との援助を受け、
小型ボート 2 隻と大型スピードボート 7 隻、ヘリコプターがタンカーの追跡に使われた。
ハイジャックされたタンカーはフィリピンに向かっていたとみられ、そこで積荷 3,500 ト
ンの軽油を売却する取引が交わされていた模様。海賊はS号を Wang Yu 号と改名し、発見
されるのを回避していた。S 号はシェル・マレーシアがチャーターしていた船で、19 日に
シェルの石油精製所を出発してから行方がわからなくなっていた。タンカーの所有者はシ
ンガポールの Petrojaya Marine Sendirian Bhd で、同社のタンカーPetchem 号は昨年シェ
ルにチャーターされていた時にハイジャックされている。
(2001 年 7 月 2 日マリタイムアジア)
海峡の安全確保に国際協力が求められる
マラッカ・シンガポール海峡は国際海運に多く利用されているため、海賊対策にかかる
費用は沿岸国のみの負担にすべきではないとビビアン・フォーブス教授は述べている。
フォーブス教授の最新の著書は、西オーストラリア大学での博士号論文に基づいている。
この著書の中で教授は、マレーシア、シンガポール、インドネシアの各国が個別に海賊問
題に取り組むのも立派なことではあるが、海賊問題を協力が必要な国際越境問題として扱
えば、大きな躍進が見込めるだろうと述べている。
マレーシア、シンガポール、インドネシアの協力関係から、今後領海の原則ではなく、
国家の原則として海賊を逮捕できるようになることを教授は奨励している。これによって、
海賊の帰属する国の当局が、海賊を逮捕した国から起訴や裁判を引き継ぐことができるよ
うになる。
油を満載した多くのタンカーがマラッカ・シンガポール海峡を毎日東航しており、海賊
事件が地域に大きな環境破壊をもたらす危険性が非常に高い。海賊に襲撃された船舶の乗
組員が縛られた場合、海賊が逃走した後素早く縄を解かなければ、混雑した海域で衝突事
故が発生する危険性が非常に高い。
1992 年 9 月 20 日に発生した油タンカー「ナガサキ・スピリット」とコンテナ船「オー
シャン・ブレッシング」が衝突した事件も、海賊の襲撃が原因で起こったのではないかと
89
言われている。
海賊事件の多くはインドネシア海域内のマラッカ・シンガポール海峡で発生しており、
海上の境界線について話し合いを持つ必要がある。
海賊対策に取り組むにはさまざまな国際協力が必要であり、提案や議定書は全ての国に
よって誠意を持って評価され、採用されるべきだと教授は述べている。
(2001 年 7 月 3 日シッピングタイムズ)
米沿岸警備隊がアジアの海賊行為防止に乗り出す
米沿岸警備隊の職員が、東南アジアの海軍に対し、最近急増している海賊行為の取り締
まりに関する訓練援助を行う予定である。
カリフォルニアのアラメダに拠点を置く米沿岸警備隊海賊対策チームは、現在シンガポ
ール海軍と話し合いを進めており、最近は同様の訓練をインドネシア、フィリピン、タイ
の海軍・沿岸警備隊を実施した。このほかマレーシアとブルネイとも今後訓練を行う予定
である。
米沿岸警備隊は、麻薬の取引や人身売買に対する取り組みのなかで、被疑船への乗り込
みや捜索に関する技術を磨いてきた。現在はこの技術を伝授したいとしている。
2000 年には全世界で 469 件の海賊事件が発生し、その数は 99 年に比べて 56%も上昇し
ている。
1991 年と比べて、海賊被害の件数は 4 倍に急増しており、その 3 分の 2 以上が東南アジ
ア海域で発生している。
マラッカ海峡は海賊事件の発生件数が最も多く、年間 5 万隻以上の船がこの海峡を利用
(2001 年 7 月 9 日ロイズリスト)
している。
マラッカ海峡の無国籍海賊対策パトロールが求められる
シンガポールに拠点を置く船主であり、過去に所有する船舶が海賊に襲撃された経験を
持つ Petro Ship 社の会長アラン・チャン氏は、マラッカ海峡での海賊を撲滅させるための
無国籍調整パトロールが緊急に求められていると述べた。
最近開かれた IMB 主催海賊対策会議で講演したチャン氏は、講演の内容について詳しく
説明し、今は話し合いよりも行動を起こす時だと述べた。
Petro Ship 社の所有する Petro Ranger 号は、1997 年にマラッカ海峡で海賊にハイジャ
ックされた。
チャン氏が提唱しているマラッカ海峡の海賊多発地帯に IMO のフラッグの下、日本、シ
ンガポール、マレーシア、インドネシアの無国籍巡視艇を導入するという案に対し、疑問
が示されている。チャン氏はこれに対して、批判を行うだけでなく、もっといい解決方法
や改善方法を提案してほしいと述べている。
海賊被害の発生件数が世界最多であり、世界海運の 30%が利用しているマラッカ・シン
90
ガポール海峡の海賊対策は緊急課題である。領有問題も含めて、関係各国が取り組んでい
く必要がある。
「現在、実質的なアウトラインを伴った解決方法を探っているところである。日本がこの
ような解決方法を受け入れたが、三国(シンガポール、マレーシア、インドネシア)の完
全な受け入れは得られていない」
また、チャン氏は、シンガポールとマレーシアは自国領海のパトロールがうまくいって
いるが、インドネシア側はこれと同レベルの監視をするのは不可能だと当局が述べていて、
「ぞんざいな対応がはっきり」していると語っている。
海賊問題が主要港としてのシンガポール港の評価・地位に影響を与えていること、そし
てマレーシア当局が長い狭い沿岸線、それもその片側に入る権利のないところをなんとか
して監視しようとしているとチャン氏は述べた。
「シンガポール海域外で起こっていることが、シンガポールに大きな影響を与えることが
あるため、視野を広げる必要がある」
「この地域の海上交通や評判は共同のものである。マラッカ海峡における航行障害につい
て話し合った場合、多くの人が最初にシンガポールを思い浮かべるだろう。海運関係者、
船主、ビジネスマンなら、シンガポールという名前がぱっと浮かぶだろう。もちろん、マ
レーシアやインドネシアを挙げる人もいるだろうが、シンガポールは海運ハブとして、海
峡の安全に大きく関わっている。よいイメージを保つことはシンガポールにとってプラス
になる。現在は海賊によってそのイメージが若干汚されている」
多くの海賊事件が「海上強盗」という種類に当てはまるため軽視されがちであるが、こ
ういった事件が大きな被害に結びつくことがあるとチャン氏は述べた。
「小さな事件がとんでもない海上災害になることもある。約 2 年ほど前になるが、フラン
スの VLCC「Chaumont」が武装した海賊に襲われた。乗組員が身動きを取れない間、該船
はシンガポールの南方を 1 時間近くも漂流していた。このような操縦士のいない船は航行
や環境にとって脅威である」
海峡利用船から集めた小額の基金で、専用の巡視艇 1 隻から開始することから始めて、
将来的には 4 隻程の巡視艇を持てるようになればいいとチャン氏は語った。
「重要なのは、こういった海域に絶えず活動的に問題を起こす者がいないか見張りをする
船が存在するということである。越境が可能で、標的を見つけ出す能力があれば、巡視艇 1
隻から始めても、効果が見込めるのではないか」
最大のハードルは、インドネシア、マレーシア、シンガポールの各当局が満足する提案
を作成することである。どうして IMO のフラッグの下で、無国籍の船舶と共同乗組員を利
用する必要があるのか、その理由がここにある。
「資金を集めるのは難しくない。問題は受け入れられるかどうかである」
(2001 年 7 月 6 日シッピングタイムズ)
91
ロイズリスト ニュースフォーカス
悪名高い黒ひげの末裔は、現在も東南アジアで活動を続け、国際海運を襲っている。先
週、20 カ国以上の代表がクアラルンプールに集まり、どのようにして増大する脅威を撲滅
すべきか探った。マーカス・ハンドがこれまでの動きを追った。
マラッカ海峡でハイジャックされた 2 隻の船が奪還されたのを祝いながら、クアラルン
プールで開かれた第 4 回国際海事局(IMB)主催海賊対策会議は幕を閉じた。
海賊が逮捕される様子を見ると元気付けられるが、東南アジアで急増している海賊行為
を実際どのようにして減少させるかという広範囲な問題については、未だに解決されてい
ない。
「残念なことに、海賊行為の数は減っていない」と 2 日間にわたる会議の後に開かれた記
者会見の席で IMB のムクンダン局長は述べた。昨年は全世界で海賊被害が 56%増加し、
469
件が IMB に通報された。
海賊問題についてはこれまでに何度も会議が開かれているが、東南アジアに蔓延る海賊
対策のための行動は、うんざりするほどのろのろとした過程を経てきた。
各国の安全問題や対応の難しい司法権問題から話し合いはもつれ、現在のところ、地域
での取り組みというのは何一つとして採択されていない。
これまでこれといった対応策は取られていないが、海賊対策に関わってきた者は、現在
まで何度も話し合われてきた問題解決のための地域的取り組みが前進を見せていると考え
ている。
日本は、地域の海賊被害撲滅を目指したキャンペーンで大変活動的な役割を担ってきた。
多くの日本の試みは、慈善団体である日本財団が先頭を切って行ってきたものである。
日本財団は、マラッカ海峡の航行援助施設を過去 30 年以上にわたり支援しており、これま
で 1 億ドル以上の費用を費やしている。
日本財団の寺島紘士常務理事は、事態が前進を見せていると静かに確信している。
同氏は、
「我々は活動が起こるのを期待して種をまいた。種のなかには現在根を伸ばして
いるものや、形になろうとしているものがあると感じている」と述べた。
日本財団は慈善団体ではあるが、国際海運の戦略的水路であるマラッカ・シンガポール
海峡を確保することについて、強力な行政及び財政的支持を受けている。
日本に輸入される石油の 80%がこの海峡を通じて輸送されており、日本にとって大変重
要なものになっている。
日本財団は過去 3 年間にわたり、海賊被害の解決法の発見に活動的に取り組んできた。
寺島常務は、海賊行為をマラッカ海峡の航行安全問題の一部として見ており、より完全
で整然とした枠組のなかで、この 2 つの問題が同時に対処されるようになってほしいとし
ている。
合理的な運用の枠組みが、利用国から沿岸国への財政援助を奨励するとみられる。
92
「個人的な考えだが、司法権について問題があるのであれば、沿岸国と利用者の間で話し
合いを持って、両者にとって適切な枠組を作成することができるのではないかと思う。ア
セアンの発展に最も重要である海峡の航行安全が、沿岸国と利用国の合意と協力の下、国
連海洋法に記されている通り確保されるのが最も重要なことである」
寺島氏は、日本財団は直接的に物事を行う立場にはないと強調したものの、今年末まで
に特定の協力案が出されることを確信している。
日本と沿岸国の共同訓練が受け入れられることが最初の一歩だと見られている。日本海
上保安庁は東南アジア海域に年 4 回船舶を派遣し、共同訓練を実施する予定である。
「この提案は地域の海運安全強化に日本が真剣であることを示した。これは大変重要な序
曲である」とペトロシップ社のアラン・チャン会長は述べている。
しかし、今後もさまざまな経過を必要するという事実は明らかであり、日本海上保安庁
は現在、地域のいずれの国とも訓練の実施に合意していない。
より効果的な海賊防衛策を確保するために解決しなければならない問題は、地域協力に
限ったことではない。
海賊を逮捕しても、犯罪として海賊行為を取り扱う法律の枠組に欠けている国が多く、
容疑者が罰を免れることもある。特に中国は、1990 年代後半罰を与えることなく海賊を釈
放し、大きな非難を受けた。
IMB はこれまでずっと各国に対し、海賊を訴追するための法的な枠組として、ローマ条
約(SUA88)を批准するよう求めている。
皮肉にもムクンダン氏は、東南アジアのなかでこの条約の批准を考慮している国はいく
つかあるけれど、実際に批准している国はないとしている。このほかに、IMB は Comite
Maritime International の海賊行為に関する国内法のモデルの採択を奨励している。
99 年に日本の貨物船「アロンドラ・レインボー」を襲撃した海賊 15 人の裁判は、現在イ
ンドで進行しており、高い関心を集めることは間違いないだろう。
インドには特定の海賊法律はないが、さまざまな罪で海賊を告訴している。インド政府
関係者によると、今年末までにこの事件の結末が出るとみられる。
インドネシアが貨物船 Inabukwa 号をハイジャックした海賊をどう扱うのかが、海賊の
訴追・未然防止に関する国家の能力を問うまた別のテストになると思われる。
東南アジア各国が海賊対策の調整解決法を見出すまでには、少し時間がかかりそうであ
る。
各国独自の取り組みは始められており、マレーシアは新高性能スピードボートでパトロ
ールを強化している。
しかし、政治や社会問題が深刻化するインドネシアの海賊多発地帯は現在も問題を抱え
ている。
共同パトロールが実現するのかどうかは、関係各国の政治的意志によると思われる。現
在のところ、マラッカ海峡を通航する船舶は各自海賊対策をとる必要がある。
93
(2001 年 7 月 7 日ロイズリスト)
政府間の協力で海賊撲滅目指す
インドネシアの政情不安定による法秩序の乱れにより、燃料・施設及び人材の不足等か
ら効果的な治安維持が困難になっている。
インドネシアの情勢が悪化するにつれ、周辺海域の商業海運が危険に晒されている。
1997 年にアジアが経済危機に襲われて以来、インドネシア海域での海賊被害は 47 件か
ら昨年は実際の被害及び被害未遂が 119 件に急増した。
先日 IMB 主催海賊対策会議の開催中に海賊事件が発生したが、IMB 海賊通報センターの
情報をもとに、インドネシア海軍が海賊を検挙した。インドネシア当局が海賊を逮捕した
のは初めてのことであり、問題の根源とされるインドネシアの努力を IMB のムクンダン局
長は高く評価している。
2 日間にわたる IMB 主催海賊対策会議では、東南アジア、特にマラッカ・シンガポール
海峡における海賊事件の危機的状況に関するものが中心となった。
マレーシアとインドネシアの間にまたがるマラッカ海峡では、98 年に 1 件、99 年に 2 件
だった海賊被害が昨年(2000 年)は 75 件に急増した。
マレーシア当局は、海賊対策に懸命に取り組んでいる。
マレーシア海上警察のムハマド・ムダ司令官は、海賊事件は全長 600 キロの海峡のイン
ドネシア側で度々起こっていると述べ、
「マレーシア海域の体制は万全である。パトロール
も強化されており、これまでに 2 つの海賊グループを検挙している。海賊もマレーシア海
上警察の存在にうんざりしている様子で、これからも監視を続けたい」としている。
実際、マレーシア政府は海賊問題に真剣に取り組んでいる。昨年は 20 隻の巡視艇に 4,000
万米ドル、そして今年は 10 隻の巡視艇を 2,600 米ドルで新たに購入するなど多額の費用を
注ぎ込んでいる。
しかし、マラッカ海峡のインドネシア側ではほとんどパトロールは実施されておらず、
インドネシアの軍人が不法行為に関与しているという問題まで浮上している。
実際、マレーシア側のマラッカ海峡で船舶を襲撃した海賊は、簡単にインドネシア海域
に逃走することができる。海賊を追跡していたマレーシアの巡視艇は、海賊船がインドネ
シア海域に入ってしまったら、追跡を断念しなければならない。
海賊はこの限界を知っていて、それを巧みに利用している。
シンガポール当局は、その領海が狭いこともあり、取り締まりは比較的容易である。
シンガポール海峡での海賊被害が増加した時には、パトロールが強化され、99 年には 13
件あった被害が昨年(2000 年)には 5 件に減り、今年(2001 年)はこれまで被害はない。
シンガポールのペトロシップ社の会長アラン・チャン氏は、自身の所有する船舶ペトロ・
レンジャー号が海賊に襲われた経験を持っており、各国の司法権の問題があるのならば、
国連が率いる無国籍パトロールを実施すべきだと述べている。この無国籍パトロールは、
94
船主、保険会社による財政支援、IMO からの指名による日本、マレーシア、インドネシア、
シンガポールによる共同オペレーションにより実施可能とも言えるとしている。そしてそ
れは、地域間合意の枠組の中で実現できるだろうとしている。
しかし、これまで IMO にはこのような提案は出されていない。
IMO 側は、このような提案を行うには、加盟国が関連する委員会に提案を行う必要があ
るとしており、また一般的に IMO 加盟国は、このような協力・調整は地域間の合意で達成
できると合意していると述べた。
一方、これまで三回の政府間会議が、主に日本財団の後援を受けて開催された。日本財
団は、これまで効果のなかった 2 カ国間による取り組みに取って代わる地域協力の枠組の
構築を目指している。
1998 年 9 月にテンユウ号がハイジャックされ、中国人乗組員 13 名、韓国人乗組員 2 名
が行方不明になった(おそらく殺害された)ことから、日本の商業団体も海賊問題に注目
している。
日本財団の寺島紘士常務理事は、海賊問題が放置された場合、最近経済危機に襲われた
アジア経済は再び危険に晒されるだろうと警告した。
「90 年代の中頃から全世界の海賊被害は増加を見せ始め、2000 年には 1 年間に 469 件も
の海賊事件が発生した。前年の 99 年に比べ、56%も増加している。南シナ海、マラッカ海
峡、アンダマン海での海賊被害は増加する一方で、被害が減少する様子は見られない。も
しこのような傾向が続くならば、アジアの海上運輸は大きな打撃を受けるだろう。海賊行
為の蔓延は、アジアの経済成長を妨げている」と寺島氏は述べ、関係者一同が協力を目指
した機能的で目的のある具体的な手段を取る段階に来たと付け加えた。
IMB は寺島氏の意見に共感するものの、国家の安全問題やその他の問題を含めた司法権
問題が解決される必要があるとしている。
「商業団体は、政府間の協力を期待している。共有・共同パトロールが実現すれば、海賊
がある国領海から別の国の領海へ逃走するといった状況にも対応できるようになる。近隣
国同士が密接に支え合うようになった時に、共有・共同パトロールは実現する可能性が高
い。我々はこれまで築き上げてきた状態を続行していかねばならない。海賊問題を即座に
解決する手段はないかもしれないが、この取り組みを維持していかなければならない」と
IMB のムクンダン局長は述べた。
同局長は、共同パトロールを行ったり、海賊の追跡時には領海線を取り払ったりという
ようなことを実施する段階に来ていると述べた。
(2001 年 7 月 16 日スター)
幽霊船詐欺とハイジャック事件の結びつき
過去数年間の複雑な海賊の活動は、より大きな国際犯罪シンジケートと結びついている
と言われる。
95
また、海賊の活動は、幽霊船詐欺と呼ばれる書類改ざん犯罪とも結びついている。
IMB(国際海事局)によると、ハイジャック事件と幽霊船の間に緊密な関係がある。
IMB のムクンダン局長は、以下のように述べている。
「ハイジャックされた船舶の貨物が不法に降ろされた後、その船舶は幽霊船になる。その
後、この船は偽造の証書を使って貨物の盗難に利用される。シンジケートは、これらの不
法行為によって得た利益を様々な方法によりマネーロータリングしている。ハイジャック
事件は、法秩序の乱れた国の領海内で発生することが多い。幽霊船はポートステートコン
トロールの緩い国で、貨物を降ろすことが多い」
通常沖合業者(offshore company)は当局に勘定報告をする必要がないことから、シン
ジケートによるマネーロータリングに利用されてきた。
また、ムクンダン局長は、東マレーシアに登録されている企業が幽霊船詐欺とハイジャ
ックされた船からの貨物の引き降ろしに関与していたと公表した。
日本財団の寺島紘士常務は、次のように述べた。
「経済のグローバライゼーションが進むなかで、犯罪組織はこれまでの薬物、武器、人身
売買に加えて海賊行為にも手を出すようになったと述べた。
かつての海賊といえば、沿岸の貧困な住民が生活苦から通航船で盗みを働くというもの
であったが、多くの乗組員が経験した海賊は残忍で、組織化されている。
さらに、組織犯罪グループや国際シンジケートが関与しているということも大きな懸念
材料である。このようなグループは世界的に犯罪を拡大していくことのできるネットワー
クを持っている。最近、東アジアにおける海賊対策は確実に強化されているところでもあ
り、少なくとも、麻薬密輸に関しては効果が出ている。しかし、まだ相当の努力が必要で
ある。これらの国際シンジケートは、絶えず産業界や政策当局の抜け穴を狙っているので
ある。このような犯罪に対する最善の対策は、アジアの全ての国が協力関係を強化して、
海賊に圧力をかけ続けることである」
言い換えれば、現代の海賊は手当たり次第に通航船を襲撃したりしない。襲撃は計算の
上で実行される。海賊は、合法を装うための船舶・乗組員の偽造証書を用意しているので
ある。
幽霊船の運航に関する大規模な組織が、国際犯罪シンジケートの傘下にあると寺島氏は
述べた。
「ある船舶がハイジャックされた後、ペンキが塗られ、船名が変えられ、貨物は売却され、
船を運航するための偽造登録証書、偽造海技免許証が用意される。幽霊船問題がこれ以上
大きくなる前に、我々は越境犯罪対策や国際海事団体による対策を講じるなどして対応す
る必要がある」と寺島氏は述べた。
(2001 年 7 月 23 日スター)
96
Selayang 号ハイジャック事件 乗組員が関与か?
第一調査の段階で、マレーシア海上警察は、タンカーSelayang 号ハイジャック事件につ
いて、マラッカ海峡のスマトラ沖のひっそりとした海域に S 号を航行させた乗組員に疑い
を持っている。
海上警察のムハマド・ムダ司令官によると、南航していた S 号はジョホール州ポンティ
アンの向かいのカリムン島に向かっていたとのこと。
S 号が 6 月 21 日にポートディクソンのシェルを出航してからの足取りは、海上警察がカ
リマンタンのバリクパパンに派遣した職員によって明らかにされた。
同司令官は以下のように述べている。
「どうして S 号が TSS(通航分離帯)を外れて航行していたのか、その理由をはっきりさ
せる必要がある。現在の時点では、まだ容疑は確認されていない。インドネシア警察の調
査結果を待っているところである」
「TSS は混雑しているとはいえ、航路を離れた海域よりは安全である。海賊の温床である
輻輳した航路を航行する際には、いかなる場合も TSS を利用すべきである」
「インドネシア人乗組員は、混雑した海域を避けて、自国の海域を航行する傾向にあるが、
船主はこの点に注意を払うべきである」
S 号はハイジャックされた 6 日後の 6 月 27 日、インドネシア海軍によって拿捕された。
その後事件は警察の担当になっているが、海賊がいつ処罰されるのか、そして船がいつ船
主に戻されるのかは明らかにされていない。
海賊は、S 号の船名を二度にわたって変え(「Wang Yung」と 「San Ho」
)、15 名の乗組
員を人質にしていた。
最近の事例では、ポートクランに向かっていた貨物船が近隣国の法執行機関所属船に似
た船舶から警告射撃を受け、200 リンギットを取られるという事件が発生している。
(2001 年 7 月 30 日スター)
IMB2001 年上半期海賊報告書発表 不景気のため海賊が蔓延る
昨日 IMB が 2001 年上半期海賊報告書を発表した。インドネシアの経済の減速と海上パ
トロールの欠落から、今年上半期の海賊事件は増加している。
今年上半期に全世界で 165 件の海賊事件が発生したが、このうちの 85%が東南アジアで
発生しており、東南アジアは引き続き海賊天国になっていると IMB は述べた。
昨年(2000 年)同時期には全世界で 161 件、一昨年(1999 年)同時期には 115 件の海
賊事件が発生しており、海賊事件の発生件数は若干の増加をみせた。
IMB は以下のように述べている。
「海賊事件の根源にインドネシアの存在があることは周知の事実である。経済減退と海上
パトロールの欠落が、海賊の脅威を悪化させている」
しかし、インドネシアでは海賊事件が減少した。昨年の同時期には 56 件あった海賊事件
97
が、今年は 44 件に減っている。
反対に、マレーシアでは海賊事件が 2 倍に増えた。昨年上半期には 7 件あった事件が、
マレーシア海軍のパトロール強化にもかかわらず今年は 13 件に増えている。
フィリピンでは、身代金を目的とした誘拐事件が絶えず発生しており、今年はこれまで
に 4 件の海賊事件が報告されている。(昨年同時期は 1 件のみ)
また、昨年の上半期は、海賊襲撃による死者は 0、負傷者は 13 名だったのに対して、今
年上半期では 3 名の乗組員が殺され、19 名が負傷している。
報告書によれば、ある国が共同パトロールの意向を示しているのに対して、一方では海
賊の温床になっている国が一元的に進めるのが一番の海賊対策であるとの意見もあり、こ
れらの意見の相違により海賊対策が阻まれているとしている。
(2001 年 8 月 3 日ストレートタイムズ)
Inabukwa 号インドネシアに返還
インドネシア籍船 Inabukwa 号は、積荷の錫インゴットを降ろし、インドネシアへ曳航
されるとのことである。
I号は、今年 3 月 15 日にシンガポール沖南東 280 メートルのところでハイジャックされ
た。23 名の乗組員は無人島に置き去りにされ、I号はフィリピンで沿岸警備隊のポートス
テートコントロールの際に発見された。I 号は、7 月に台風に遭い、船底と機関室が浸水、
プロペラが損傷し、フィリピン北部の Currimao 港で座礁していた。
I号の船主であるインドネシア国営会社 Pelayaran によると、I 号の積荷であるインゴッ
ト(200 万 US ドル相当)は別の船に載せられるとのことで、I 号はジャカルタで修理され
(2001 年 8 月 17 日シッピングタイムズ)
る予定である。
マラッカ海峡で通航船がアチェのゲリラに襲撃される 乗組員 6 名が人質に
被害船及びその詳細:Ocean Silver 号、小型船(詳細不明)
、ホンデュラス船籍
乗組員 12 名、Tanoto Guan Hai(シンガポール)所有
状況:分離独立を求めるアチェのゲリラ組織(自由アチェ運動)が、マラッカ海峡を通行
中の船舶を襲撃した。救出は難航し、ゲリラ戦士 2 名とインドネシア国軍兵士 1 名が銃弾
を受けて死亡した。現在も O 号の乗組員 12 名のうち 6 名が人質になっている。
マラッカ海峡を通航する船舶は、自由アチェ運動から許可を得なければならないと同グ
ループのスポークスマンがマスコミに発表していたが、インドネシア国軍はこれに対し、
多くの船舶が通航する海峡を通行止めにするような力を自由アチェ運動は有していないと
していた。また、同国軍はパトロールを 2 倍に増やすとも述べていた。ところが、今回こ
のような事件が発生し、事態を軽くみてはならないことがわかった。
国際海運集会所(ICS)の安全顧問であるブライアン・パーキンソン氏は、以下のように
述べている。
98
「同海峡において犯罪活動としてではなく、革命活動として船舶が襲われた初めてのケー
スである。新たな進展であり、今後監視を続けて当局に知らせる必要がある」
自由アチェ運動は、アチェにある Exxon Mobil 社のガス田を連続して襲撃し、ガス田を
今年 4 ヶ月間にわたり閉鎖に追い込んでおり、陸上でも有力であることを見せつけている。
IMB(国際海事局)は事態を重く受け取り、同局のウェブサイトには以下のような警告
が出されている。
「船舶は非常事態を除き、マラッカ海峡のインドネシア沿岸沖に停泊しないよう忠告され
ている。特にアチェ沿岸は非常に危険である。インドネシアの港、Belawan、Dumai、Merak、
Samarinda、Tanjong Priok に寄港した船舶から停泊中に襲撃を受けたとの報告が多くあっ
た。最近では、何隻かの船舶がインドネシア海域でハイジャックされている。ハイジャッ
ク事件が多発していることから、船舶所有者は衛星追跡システムを船舶に設置するよう忠
(2001 年 9 月 6 日ロイズリスト)
告されている」
日本が海賊取り締まりに関する援助を表明
今月4日から5日間の日程で日本を訪問しているトニー・タン副首相兼国防相は5日、
中谷防衛庁長官との昼食会において、シンガポール近海の南シナ海での海賊問題が議題に
上り、
「日本政府はこの問題を重視しており、シンガポールを含む関係諸国に協力する用意
があることを明らかにした。日本政府は南シナ海における安全確保のためシンガポールば
かりでなく他国との協力関係についても関心を持っている」と語った。
近隣海域での海賊取り締まりに関してシンガポールは、すでにマレーシア、インドネシア
といった近隣諸国と協力している。
今回の防衛トップ会談で両国は、防衛分野での幅広い協力関係を再確認し、IT・通信の
ほか、海軍を中心とした二国間または多国間の共同活動を進めることで合意した。
同相はまた、中谷長官にシンガポールへの訪問を促したことも明らかにした。
(2001 年 9 月 6 日ストレートタイムズ)
個人レベルでの海賊撲滅運動
ペトロシップ社のベテランマネージャーであるアラン・チャン氏は、1998 年に同社が運
航していたペトロ・レンジャー号がハイジャックされた経験を持つ。事件後、チャン氏は
危険海域の調整パトロールの実施を求めてきた。国連に対して、領有権等の問題の解決に
向け導くよう提案した。チャン氏は自身の活動を「個人レベルでの海賊撲滅運動」と呼び、
「この業界に何年も携わってきた者として、何かしなければならないと思った」と語る。
まだ具体的なスケジュールは決まっていないが、
「年末までにマレーシア、シンガポール、
インドネシアの意思決定者と会い、提案を発表したいと思っている」
。
また、海賊問題に深い関心を持つ日本の団体、すなわち日本財団や日本海上保安庁に働
きかけたいとしている。
99
6 月にクアラルンプールで開催された第四回 ICC−IMB 海賊及び幽霊船に関する会議の
席で、チャン氏は沿岸三国のほか日本の乗組員を乗せた国連が指名した船舶による共同パ
トロールを提案した。
運用資金をどうするかについて、チャン氏は船主、保険会社、その他関係団体から公平
な仕組みのもと装備一式に必要な費用を援助してもらえばよいと提案している。
この提案は過激なアプローチであるとしながら、チャン氏は海賊を野放しにしてはなら
ないと述べ、一国で海賊を取り締まるのは領海線の問題などから困難であり、現在のとこ
ろ海賊対策は効果的に実施されていないと語った。
チャン氏の提案は、IMB の高レベルでの協力を求めるという姿勢と一致している。しか
し、IMB のムクンダン局長は、領海線の緩和は関係各国が近い将来、外部からの圧力の全
くない状況で話し合われなければならないものだとしている。(2001 年 9 月 17 日スター)
海賊に襲われたマレーシアのタグボートをインドネシア当局が発見
事件発生日時:2001 年 9 月 18 日 2345
事件発生位置:インドネシア海域の Subi Besar 島沖
被害船の詳細:タグボート
空のバージ
Mayang Sari 号、289gt
Daiho88 号、シンガポール籍船
状況:タグボート Mayang Sari 号は 9 月 14 日、空のバージ Daiho88 号を曳航して、東マ
レーシアのコタキナバルからインドネシアのバタム島に向けて出航した。18 日 2345、イン
ドネシア海域の Subi Besar 島沖で、12 人から 17 人の銃で武装した海賊が M 号に乗り込ん
できた。海賊は乗組員 10 人を縛り目隠しをした。乗組員は 25 日まで人質にとられた。25
日の夜、海賊はバタム島付近の湿地で乗組員を解放し、乗組員はその後数時間歩き回って、
やっと人里に辿り着いた。船長を除く乗組員全員は、事件の状況を警察に話すことを恐れ
て帰宅してしまった。M 号の船主が IMB に通報し、IMB は 27 日に特別警報を出し、イン
ドネシア当局にも連絡した。IMB 海賊情報センターのノエル・チュン所長によると、タグ
ボートのような小さな船は隠れるのが容易なため、発見は困難だと思われたが、インドネ
シア当局は 24 時間以内にカリマンタンで M 号を発見し、拿捕した。当局が拿捕した時に
は、タグボートは空の状態だった。IMB は、M 号の捜索に衛星追跡システムを利用した。
(2001 年 10 月 3 日ロイズリスト)
日本が増加する海賊行為に措置
日本外務省は、アジア各国と海賊対策の調整について話し合うため、今日(10 月 4 日)
から海賊対策会議を開催する。
最近では、東南アジア海域で海賊が船舶やボートをハイジャックして、身代金を要求す
るケースが増加している。
非営利団体である日本財団の山田吉彦氏は、「最近まで、海賊が商船を襲って、身代金を
100
要求するケースはほとんどみられなかった。地域の政治が不安定な中、反政府ゲリラがこ
のような活動の背後に存在することは明らかである」と述べた。
日本は、17 の国家及び地域(中国、韓国、台湾、インド、アセアン加盟諸国)から政府
関係者と船主をこの 2 日間の会議に招待した。
IMB によると、今年上半期には 165 件の海賊事件が発生し、昨年同時期の 161 件を凌い
だ。165 件中 90 件が、東南アジア海域で発生した。
4 月には、日本の石油関連会社とインドネシア国営会社の共同ベンチャー会社の職員 2 名
を載せた客船が、インドネシア・スマトラ沖で武装した海賊にハイジャックされた。
6 月には、ボルネオ北部沖でトロール漁船や木材運搬船が武装した海賊に襲われる事件が、
1 日に 6 件も発生した。
同じ頃、インドネシア船籍のタンカーがマラッカ海峡で襲われ、船長と乗組員が誘拐さ
れた。ハイジャックに関与した容疑者が、その後身代金を要求してきた。日本からの報告
によると、このようなケースに関しては身代金が支払われたようであるが、詳細について
は明らかにされていない。
日本財団は、1998 年 9 月のテンユウ号事件以降、地域の海賊対策で指揮をとろうと努め
ている。テンユウ号事件では、日本船主のテンユウ号がハイジャックされ、外国人乗組員
(2001 年 10 月 4 日ロイズリスト)
は殺害されたとみられている。
東京での海賊対策会議、アジア公海での海賊対策を探る
世界的に海賊事件が増加していることを受け、昨日から東京において2日間の海賊対策
会議が開催されている。
この会議には、海賊の温床であるインドネシアのほか、シンガポール、マレーシアなど
も参加し、今後の海賊対策が話し合われた。
開会の挨拶で、日本外務省の杉浦正健副大臣は、
「各国がこのような犯罪を抑圧するため、
それぞれ責任を負うべきであるが、このような犯罪は国境を越えることがあることから、
国境を越えた各国間の緊密な協力及び調整も強化されるべきである」と述べた。
昨年(2000 年)
、全世界で 469 件の海賊事件が発生し、前年(1999 年)に比べ 56%増加、
1991 年に報告のあった数の 4 倍にも上った。2000 年には乗組員約 72 名が殺害され、99
名が負傷した。99 年には、3 名が殺害され、24 名が負傷している。
(2001 年 10 月 5 日シッピングタイムズ)
最近の海賊の傾向:海賊から誘拐犯へ
最近マラッカ海峡の海賊が、人質の解放に身代金を要求するケースが増加していること
から、海運関係者は警戒を高めている。
過去2ヶ月の間にこのような事件が2件発生しており、IMB 海賊情報センターは、この
ほかにも復讐を恐れて報告をしていないケースが多くあるはずだと話している。
101
IMB は最新の報告書のなかで、自由アチェ運動の分離主義者のグループが事件に関わっ
ている可能性があるとしている。
IMB は第三四半期報告書で、
「海賊対策は、乗組員を誘拐し身代金を要求するという新た
な風潮に脅かされている」と述べている。
今年1月から 9 月までに全世界で 253 件の海賊事件が発生し、インドネシア、マレーシ
ア、マラッカ海峡で発生した事件の数はその 40 パーセントにも上っている。
最近発生した 2 件の詳細は以下のとおり。
6 月末にインドネシア船籍のタンカーTirta NiagaIV 号の船長と二等航海士が誘拐され、
身代金が要求された。2 日後、船体に続いて航海士が解放された。しかし、船長は現在
も拘束されたままである。
2 ヵ月後、ホンデュラス船籍のタグボート Ocean Silver 号が、武装した海賊にハイジ
ャックされた。タグボートはアチェに向かわされ、乗組員のうち 6 名が解放され、残
りの 6 名が人質にとられて身代金が要求された。彼らが解放されたのかどうかは報告
されていない。
国際海事専門家は、資金不足とインドネシアの政治・経済の混乱から海賊対策が妨げら
れていると述べている。
IMB の報告書には、分離主義者に海峡を閉鎖する力はないというインドネシア軍の発言
が載せられている。
しかし、インドネシアでは今年 1 月から 9 月までに 71 件の海賊事件が発生している。こ
れは全世界で同時期に発生した事件 253 件の 28 パーセントを占めている。
同時期にマレーシアでは 15 件、マラッカ海峡では 14 件の事件が起こっており、インド
(22 件)
、バングラディッシュ(19 件)、ナイジェリア(12 件)でも海賊事件が増加して
(2001 年 10 月 16 日ストレートタイムズ)
いる。
IMB 第三四半期海賊報告書発表:海賊行為は減少したが、誘拐が増加
昨年に比べ、全世界の海賊事件は減少したが、国際海事局(IMB)は、マラッカ海峡に
おける誘拐事件の増加に懸念を示している。
IMB の最新報告書によると、2001 年 1 月から 9 月までの海賊事件の発生件数は、昨年同
時期の 294 件から 253 件に減った。
しかし、IMB 海賊情報センターのノエル・チュン所長は、まだ報告されていないケース
があることから、実際はこれより増える可能性があると述べている。
海賊の温床と言われるインドネシア海域及びマラッカ海峡では、インドネシア海域で昨
年の 90 件から 71 件、マラッカ海峡で昨年の 32 件から 14 件と海賊事件が大幅に減少した。
これはマレーシアなどがパトロールを強化した成果だと言える。
しかし、海賊事件が減る一方、マラッカ海峡北部では身代金目当てで乗組員を誘拐する
事件が発生している。身代金がそれほど高額でないため、お金で解決して事件を報告しな
102
(2001 年 10 月 19 日マリタイムアジア)
い船主が多いのが現状である。
BIMCO 凶暴化する海賊への 4 つの対策案を提案
先週、バルト海国際海運協議会(BIMCO)が、国連のアナン事務局長に海賊対策を講じ
るよう求めた。
BIMCO の要求は、偶然にも IMB の第三四半期海賊及び海上強盗に関する報告書の発表
と重なった。報告書では、昨年同時期の 294 件から 253 件によりも海賊事件の発生件数が
減少しているように見えるが、実際には 1 月から 9 月までの間だけですでに 9 名の乗組員
が殺害されており(昨年は 1 名)、事件は凶暴化している。また、乗組員を人質にとり、身
代金を要求するといった厄介な傾向もみられる。
BIMCO は、国連及びその専門機関である IMO に対し、以下の 4 つの海賊対策を講じる
よう求めている。
1. 各国が当局の職員を十分に配備し、法的な海賊取り締まりの権限と装備を与えること。
あたりまえのことのように思われるが、実際ほとんどの国で海賊パトロールに必要な資
源が不足している。
2. 各国が、このような特定の犯罪に関する国内法を制定し、犯人に適切な処罰を与えるこ
と。
3. 沿岸国、旗国、海運産業界が海賊に立ち向かうため協力すること。現在アジアでこうい
った取り組みが進行している。
4. 出入港する船舶、停泊している船舶や港に横付けしている船舶等全てのターミナル付近
の船舶に対するパトロールを実施すること。同時に、関係者以外の港エリアへの進入を
(2001 年 10 月 24 日シッピングタイムズ)
禁止すること。
IMB インドネシア政府に海賊の起訴を求める
IMB(国際海事局)は、インドネシア政府に対し、今年初めに逮捕された Inabukwa 号
と Selayang 号の海賊の起訴を公式に要求した。海賊は、現在のところまだ起訴されておら
ず、IMBは海賊の刑罰が軽減されるのではないかと懸念している。
IMBのムクンダン局長は、海賊の黒幕がインドネシア当局に逮捕され、禁錮7年の宣
告を受けたが、後に禁錮4年に軽減されたことを過去の例として挙げた。
現在、Inabukwa 号と Selayang 号の海賊 17名が、インドネシアによって拘留されてい
る。
ムクンダン局長は、「インドネシアが海賊を起訴しなければ、これまで実施してきた海賊
対策が全て無駄になる。しかし、海賊を起訴すれば、海賊に対して容赦しないという姿勢
を見せるほか、国際海運産業に対してもインドネシアが領海内の船舶や船員の安全確保に
取り組んでいることを知らせることができる」と述べている。
(2001 年 10 月 25 日ロイズリスト)
103
インドネシア海賊対策センターへの冷ややかな反応
2001 年 10 月 24 日、インドネシア海軍、シンガポール海軍、シンガポール警察沿岸警備
隊が、海賊対策合同演習を実施した。シンガポール海軍から RSS Resilience1 隻、シンガ
ポール沿岸警備隊から巡視艇 1 隻が、この合同演習に参加した。
この席で、バタム海賊対策センターの司令官モハマド・ザイナル少佐は、海賊対策セン
ターの取り組みについて以下のように述べた。
「今年後半、パレンバンのバンカ島に新たな海賊対策センターが設置される予定である。
すでに、バタムとメダンに近いベラワンに海賊対策センターが設置されている。我々は公
海での強盗撲滅に取り組んでいる。海賊対策センターが設置されてから、マラッカ海峡で
の海賊事件の報告はない。迅速に対応できるよう、被害船の乗組員が直ちに事件を報告す
ることを望んでいる。シンガポール海軍、シンガポール警察沿岸警備隊とインドネシア海
軍の協力関係は良好で、いかなる海賊や密輸をも取り締まるつもりである。バタムには特
殊部隊があり、偵察航空機や高速艇も備えている。今後はシンガポール当局との協力関係
を一層深めていきたい」
しかし、実際のところ、世界の海事当局は地域海域の海賊対策パトロールが十分に実施
(2001 年 10 月 27 日ストレートタイムズ)
されているのか懐疑的である。
日本海上保安庁 フィリピン沿岸警備隊と合同海賊対策訓練を実施
2001 年 10 月 31 日、日本海上保安庁は、フィリピン沿岸警備隊とマニラ湾で海賊及びテ
ロ行為対策を強化するための合同訓練を開催した。訓練では、フィリピン沿岸警備隊の後
援を受け、日本海上保安庁の部隊がハイジャックされた船に突入するという想定で行われ
(2001 年 11 月 2 日ストレートタイムズ)
た。
船主「アジア各国政府は合同で海賊と戦わねばならない」
先週土曜日(11 月 3 日)
、マレーシアのクアラルンプールで開かれたアセアン船主協会連
合会の通常総会で、アジアの船主グループは、アジア各国政府に対して海賊及び海上強盗
に対して断固たる措置をとるよう要求した。
アセアン船主協会連合会(FASA)及びアジア船主協会・航行安全環境委員会(SNEC)
は、アセアン各国に対し、海上航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(ロー
マ条約)を批准するよう求めた。
アセアン加盟国でローマ条約を批准している国はないのが現状で、実際にローマ条約を
批准しているのは全世界でも、中国、日本、オーストラリア、インドのみである。
主な議題になっていたこの問題には、シンガポール、フィリピン、インドネシア、マレ
ーシア、タイ、ベトナム、ミャンマーの各船主協会が深い関心を示した。
FASA は声明で以下のように述べている。
「最近のテロ事件を受けて、そしてアセアン海域での海賊及び武装強盗への対策を強化す
104
るため、FASA は全てのアセアン加盟国に対し、ローマ条約の批准を求めたい。
会議では、アセアン海域、特にマラッカ・シンガポール海峡では、マレーシア、インド
ネシア、シンガポールが協力し調整パトロールをしているにもかかわらず、依然として増
加する海賊行為に懸念が示された。このようなことから、FASA はアセアン加盟国政府に対
し、海峡を通航する船舶を守るため、海賊を撲滅・抑圧するための監視を強化することで
各国間の協力関係を高めるよう求めた。FASA は、IMO による海賊及び武装強盗の捜査に
関する国際的なコードの制定を支持している」
また、SNEC もアジアの全ての国に対し、海賊及び武装強盗に対処するため地域協力を
強化するよう訴えたほか、各国政府に対し一日も早くローマ条約を国内法として取り入れ
るよう求めた。また、同委員会は、先にアメリカでのテロ事件に対して懸念を示し、貨物
船がテロリスト・グループとつながった海賊やハイジャック犯のターゲットになる可能性
もあるとした。SNEC は、IMO に対して今後も船員のための船内セキュリティに関するモ
(2001 年 11 月 6 日シッピングタイムズ)
デル・コースを作成するよう求めた。
インドネシアとフィリピンが合同海上パトロール実施へ
フィリピンのアロヨ大統領は、インドネシアのジャカルタを公式訪問し、メガワティ大
統領と会談した。この席で、両大統領は海賊の蔓延する両国の間の海域を合同パトロール
することに合意した。メガワティ大統領は、近いうちに、密輸と海賊で悪名高いフィリピ
ン南部とインドネシア中央から北部の間の海域を両国の海軍が合同パトロールする予定だ
(2001 年 11 月 12 日ロイズリスト)
と述べた。
シンガポール ローマ条約加盟に取り組む
先日シッピングタイムズに掲載されたローマ条約関連記事に対して、運輸情報通信省か
ら以下のような返答があった。
11 月 6 日付けシッピングタイムズに掲載された「船主:アジア各国政府は合同で海賊と
戦わねばならない」という見出しの、アセアン船主協会連合会(FASA)はアセアン各国に
対し、海上航行の安全に対する不法な行為の防止に関する条約(ローマ条約)を批准する
よう求めた記事について、海事国家そして責任ある国際海事界のメンバーとして、シンガ
ポールは海賊及び海上強盗行為を重大視している。我が国での海上強盗対策は成果を上げ
ており、1991 年以来、シンガポール海域内で海上強盗事件は発生していない。
しかし、我が国の海域で事件は発生していないものの、地域の海賊事件増加に対する
FASA の懸念を我々も共有している。FASA が指摘したとおり、ローマ条約は、政府が船舶
に対する海賊行為及び海上強盗に対処する際に役に立つものだと認識している。
これに関し、2001 年 7 月 25 日、ヨー・チョートン運輸情報通信相は国会でシンガポー
ルはローマ条約に加盟することを決定したと述べた。現在、条約加盟に必要な法律の制定
(2001 年 11 月 15 日シッピングタイムズ)
に取り組んでいるところである。
105
東南アジアのシーレーン、テロリストの標的になる可能性も
11 月 21 日から 23 日まで、シンガポールにおいて保安関連の会議「セキュリティ・アジ
ア」が開催された。
この席で、ロンドンに拠点を置く保安コンサルタント会社トライデントのティム・スパ
イサー氏は、東南アジアのシーレーンは攻撃されやすいため、テロリストの標的にされる
可能性があると述べた。
同氏によると、地域には以下のような要因が交じり合っているとのことである。
地域での活動的なテロ集団の存在
密集した海上交通
攻撃されやすいシーレーン
地域の貿易・通商の海運への依存(特に石油製品の輸送)
IMB(国際海事局)からの報告によると、昨年全世界で発生した海賊事件 469 件の半数
が、インドネシア海域とマラッカ海峡で発生しており、スパイサー氏は東南アジア海域で
海上テロが増加する傾向がある。アルカイーダが世界的に活動しているほか、アブサヤフ
に関連したテロリスト集団も存在することから、この地域は攻撃を受けやすいと述べてい
る。
また、同氏はテロ集団同士の結びつきについて懸念しており、情報や意見交換も行われ
ているのではないかとしている。
例えば、オサマ・ビンラディンのアルカイーダが、昨年 10 月にイエメンでアメリカのコ
ール艦を襲撃した時に使用されたボートは、スリランカのテロ集団タミールタイガーが使
っていたものに類似していた。
「テロ集団が意見を交換していることは明らかである」とスパイサー氏は述べている。
タミール・タイガーには、シー・タイガーと呼ばれる部隊があり、通航船舶を襲撃する
ための高度な技術を持つと言われている。
東南アジア海域におけるテロ脅威に立ち向かうためには、保安上の脅威及びテロリスト
の手口に関する最大限の情報を海事業者に提供する必要がある。情報は、各国政府と民間
企業の両方から提供されるべきである。対敵諜報活動には、対テロリスト計画に関する機
密情報の保護、乗組員に対する調査などが含まれる。
他の危機管理としては、テロ対策の開発、訓練された保安要員の配置、保安検査の実施
等が考えられる。テロ対策には、政府と民間企業の密接な協力が求められている。
また、海賊対策のために商船、特に無防備である油タンカーの乗組員を武装させること
について、スパイサー氏は海賊の凶暴性をエスカレートさせるだけで、乗組員を訓練させ
たり、24 時間体制で保安要員を配置したりするのは時間・金銭面で問題があると批判した。
このほか、もし海賊に発砲する場合にはどの国の法律のもと実行するのかなど問題が出て
くる。
ただ、湾岸戦争の際には油タンカーに保安要員が配置されたように、戦争の起こってい
106
る地域については、保安要員の配置は認められるのではないか。たとえば、最近核廃棄物
を積んだイギリスのタンカー2 隻に武装した保安要員が配置されたが、これは政府の承認を
(2001 年 11 月 23 日ストレートタイムズ)
得て行われたものであった。
マレーシアとインドネシアの海軍が海賊対策で協力
マレーシア海軍とインドネシア海軍は、昨日(11 月 28 日)からマラッカ海峡で 10 日間
にわたる合同演習を開始した。
マレーシア海軍関係者によると、合同演習には高官 16 名と職員 120 名が参加、両国から
各 2 隻のフリゲート艦が派遣される。合同演習の目的は、海賊に精神的なプレッシャーを
与えることである。
また、インドネシア政府は、マレーシア政府との保安協力に積極的で、このような合同
演習を年間 2 回から 4 回に増やすべきだとしている。
(2001 年 11 月 29 日ストレートタイムズ、Today)
アメリカ マラッカ海峡を通航する主要物資調達船を護衛
テロリストによる攻撃を未然に防ぐため、アメリカ海軍はマラッカ海峡を通過してアフ
ガニスタンに向かう主要物資調達船を護衛している。
主要物資調達船の護衛は、シンガポール、マレーシア、インドネシアの支持を受け、約
1ヶ月前から開始された。
アメリカ海軍関係者によると、
「現在の取り決めでは、重要な船が通航する場合、アメリ
カ海軍がフリゲート艦を派遣して護衛にあたるほか、3 カ国との間に敷かれた通航保護シス
テムを経由して、重要な船が通航することを 3 カ国に知らせる。マレーシア、シンガポー
ル、インドネシアはそういった船を捕捉し、特別な注意を払っている」とのこと。
東南アジアは、これまでも「通行・育成基地」に適しているとアルカイーダに関連した
テロリストから重要視されてきた。
西側及びアジアの諜報機関の情報によると、東南アジアでは、インドネシアとフィリピ
ンに次いでマレーシアで、イスラム過激派が多く活動しているとのこと。これは、イスラ
ム教徒が多いことと世界的な不景気で失業者が増加していることが要因になっている。
アメリカ海軍の関係者は、我々が懸念しているのは、いつアルカイーダがアフガニスタ
ンから追放されるのか、どこに活動の拠点を移すのか、どこで再組成するつもりなのかと
いうことだと述べている。
(2001 年 12 月 4 日ストレートタイムズ)
日本の船が海賊対策訓練に参加
タイ海上警察と日本海上保安庁が、本日(12 月 12 日)パタヤ沖の海上で合同海賊対策訓
練を実施する。
海上警察の監督にあたる中央捜査局の Chat Kulladilok 監督官は、訓練の目的は、タイ海
107
域で増加する海賊行為を取り締まるため、両国警察隊の協力関係を強化することであると
述べた。
同監督官によると、タイ海上警察はこれまで海賊対策訓練を実施したことはなく、今回
が初めての訓練であるとのこと。
タイ海上警察からは職員 100 名と巡視艇 8 隻、日本海上保安庁からは職員 50 名とヘリコ
プターを搭載した巡視船「りゅうきゅう」が訓練に参加する予定である。
日本海上保安庁の巡視船は、
「アジア海賊対策チャレンジ 2000」の一環として、現在タイ
を訪問中。
「アジア海賊対策チャレンジ 2000」は、4 月に東京で開催された海賊対策国際会
(2001 年 12 月 12 日バンコクタイムス)
議で採択されたもの。
タイと日本が合同海賊対策訓練を実施
タイと日本は昨日(12 月 12 日)、公海での海賊及び武装強盗対策のための合同海上訓練
を実施した。
パタヤ海岸沖の海上において終日に及んだ訓練は、海賊が船舶を襲撃したという想定で
行われ、その後捜索救助訓練も実施された。
タイ海上警察職員及び港湾局職員 100 名と現在タイを訪問中の日本海上保安庁職員 51 名
が、訓練に参加した。
タイからは巡視船 7 隻が、日本海上保安庁からは巡視船 1 隻とヘリコプター2 機が、訓練
に派遣された。
日本海上保安庁の辻村邦康参事官は、日本は、東南アジア、特にこの地域において増加
する海賊及び武装強盗による襲撃に懸念を示していると述べた。日本政府は、地域各国に
対し自国海域の監視に責任を持つよう求めている。
(2001 年 12 月 13 日バンコクタイムス)
海賊に対して海事当局が警戒を高める
東南アジア海域が世界で最も海賊事件が多いという報告を受けて、タイ海事当局は海賊
行為に対する警戒を高めている。
IMB(国際海事局)によると、今年は 9 月までの時点で 300 件、昨年は 471 件の海賊事
件が発生し、今年 300 件のうちの 100 件、昨年 471 件のうちの 162 件が東南アジア海域で
発生したものである。
昨年、東南アジアでは 5 人が海賊に殺され、40 人が重傷を負った。今年はこれまでに 8
人が殺され、9 人が負傷している。
この報告は、先週パタヤで実施されたタイと日本の海事当局による海賊対策訓練の際に
発表されたもの。
海上警察及び港湾当局の関係者らは、海賊問題の現状を理解しており、パトロールを強
化するための調整が必要であることを認めているとのこと。
108
海上警察の Suchart Sripen 副司令官は、同局の職員は海賊問題について警戒するよう指
示を受けており、航路のパトロールを強化したとし、「海賊による襲撃では、多くの船員が
殺害され、負傷している。船員にとって災難であり恐怖である」と述べている。
同副司令官によると、過去タイ海域では、小型漁船に対する強盗行為を除いて重大な海
賊事件は発生していないとのこと。
日本海上保安庁佐々木幸男海上保安渉外官は、錫、アルミニウム、パーム油が海賊に狙
われやすい貨物であるが、組織犯罪とつながった海賊は薬物、売春、武器の密輸も行って
いると述べている。
佐々木渉外官によると、東南アジア海域とマラッカ海峡では昨年 80 件、今年はこれまで
に 20 件の海賊事件が発生しており、国際海運で最も危険な地点だと考えられていると述べ
た。昨年の事件では船員 4 人が負傷している。 (2001 年 12 月 17 日バンコクタイムス)
日本がタイとも海賊対策訓練実施
日本はタイとも海賊対策合同訓練を実施したが、インドネシアについては、働きかけて
いる段階である。
合同訓練は、タイ海上警察と日本海上保安庁によってパタヤ沖で行われた。タイ海上警
察から 100 名、日本海上保安庁から 51 名が訓練に参加した。
タイ海上警察がこのような海賊対策訓練を受けるのは、今回が初めてのことである。
日本は、東南アジア海域、特にマラッカ海峡での海賊取り締まりに積極的である。近年
発生したハイジャック事件では、多くの被害船がタイ海域で発見されている。
今年初めには、マレーシアで同様の海賊対策訓練が実施された。
(2001 年 12 月 13 日ロイズリスト)
海賊対策協定は最優先課題
昨日、小泉純一郎首相はシンガポールで講演を行い、アジアにおける正式な海賊対策協
力の合意が最優先課題であると再確認した。
小泉首相は、さまざまな問題について国際協力を強化する必要があると触れ、日本とア
セアン各国の 5 つの未来への協力分野の 1 つとして、「海賊行為の発生」を強調した。
「海賊に関する地域協力の合意が必要だと考えており、合意に至るための協議を促進する。
海賊行為を撲滅するために我々は絆を深めなければならない。これに加え、日本海上保安
庁とアセアン各国の当局との協力関係を強化したい」と同首相は述べた。
先に訪れたインドネシアで、小泉首相はメガワティ大統領に海賊問題などについて日本
とインドネシアの協力に関する質問をした。海賊について小泉首相は、「ビジネスと個人」
に対する脅威だと述べた。
昨年 9 月、シンガポールのトニー・タン副首相兼国防相が、中谷防衛庁長官と会合を持
ち、この席で日本が海賊対策でシンガポールや他国と協力する用意があることが伝えられ
109
た。
昨日の講演の後、タン博士はアジア海域における海上強盗及び海賊行為の増加について、
「日本政府は海賊問題に懸念を示しており、南シナ海の安全航行を確保するため、地域各
国またはその他の国々と協力する用意ができているとしている」と述べた。
日本は 2000 年 3 月にシンガポールで会議を開催して以来、繰り返し海賊対策合同パトロ
ール及び訓練の開催を促進しており、これまでシンガポール、マレーシア、インドネシア
と取り組みを行った。
日本に輸入される石油の 80%が海賊の多発地点であるマラッカ海峡を経由して運ばれて
おり、過去 5 年間の海賊事件による損害額 30 億円(4,180 万シンガポールドル)にも上る。
(2002 年 1 月 15 日シッピング・タイムズ、14 日マリタイムアジア)
海賊問題の国際会議を提案:運輸相
東京で開催された「交通に関する大臣会合」に出席したヨー・チャウトン運輸相は 16 日、
シンガポールでマラッカ海峡の海賊問題を協議する国際会議を開催する意向を明らかにし
た。
17 日付「ストレートタイムズ」によると、扇千景国土交通相との会談でもこの話題を取
り上げ、日本の積極的な関与を要請。扇氏もこれに同意したという。
開催時期などの詳細は不明だが、運輸相は「数ヶ月以内に実施する」としている。
同会談では、日本からシンガポールへの観光誘致の問題も話し合われた。両国の観光促
進は、13 日に調印された「経済連携協定」の中にも含まれている。同相は「観光促進のひ
とつの方法は、シンガポール∼日本間の航空便を増やすことだ」と述べた。これに先立ち
同相は 15 日に、日本航空の兼子勲社長などと会い、昨年 9 月の米テロ事件後の業況などを
話し合った。
また同相は、
「チャンネル・ニュースアジア」に対し、シンガポール港湾公社(PSA コー
プ)率いるコンソーシアムが話し合いを進めている「ひびきコンテナターミナル事業」に
関して、PSA が投資をすることは確実との考えを示した。
(2002 年 1 月 18 日 NNA)
マレーシア海上警察 マラッカ海峡海賊事件ゼロを目指す
マラッカ海峡での海賊対策に取り組んでいるマレーシア海上警察は、今年同海峡での海
賊事件ゼロを目指したいとしている。
海上警察の統計によると、昨年は商船に対する海上強盗事件 4 件、未遂事件 6 件が領海
内で発生した。これらのほとんどがマラッカ海峡で発生したものである。26 件の海賊事件、
30 件の海賊未遂事件が発生した一昨年に比べ、大幅に減少している。
(*上記の件数は、マ
ラッカ海峡のマレーシア領海内で発生したものと思われる)
ムハマド司令官は、海賊事件が減少した要素を 3 つ挙げている。
1.
海運業界が海賊の危険性についてより警戒を高め、見張りを強化するなど防止措置を講
110
じた。
2.
MRCC や海軍を含む関係機関が共同で監視するための情報伝達を常に行った。
3.
海上警察がマラッカ海峡で 24 時間体制の警備活動を実施し、海上警察の存在を高めた
ほか、怪しい船については厳しく取り調べた。
(2002 年 1 月 29 日スター)
マラッカ海峡の海賊事件はインドネシアの政情不安とつながっている
1 月 24 日、東南アジア研究所によるセミナーが開催された。
この席で、海軍戦略に詳しいイギリスのジェフリー・ティル教授は、
「インドネシアの法
と秩序の乱れが回復しない限り、マラッカ海峡の海賊事件はなくならない。海賊は陸で経
済・政治問題が発生している兆しだとも言える。インドネシアの政情不安定が商船や漁船
への海賊行為の一因になっていることから、地域による海賊対策が求められている」と述
べ、解決策として「援助を差し伸べ、政情不安を切り抜ける方法を提供すること」を挙げ
た。
IMB(国際海事局)が発表した昨年 1 月から 9 月までのインドネシア領海における海賊
発生件数は 71 件に上り、世界最多である。このほか、2000 年に全世界で発生した 469 件
の海賊事件のうち半分以上がマラッカ海峡のインドネシア部分で発生している。
同教授は、海賊対策に成功した例として、東シナ海に蔓延っていた海賊を撲滅した中国
当局のケースなどを挙げた。また、東南アジアでの海賊対策には、海賊問題に対する政治
的な意志と海軍などによる直接的な海上防衛のほか、船舶の詳細や船主に関する情報の共
有が必要であると述べた。
ヨーロッパでは、一国で高性能船隊の購入・保守費用を捻出することは困難であること
から、地域での取り組みが具体化されていることに同教授は触れたが、ヨーロッパに比べ
アジアでは共通の利害関係に関する自覚が著しく低いとしている。
また、アセアン加盟国内の海軍二国間協力については、北東アジアに比べて実現する可
能性が高いとしている。
当事務所注:マラッカ海峡の海賊問題の背景にインドネシアの政治経済状況があるとの主
張自体は、新しいものではないが、当地紙に大きく取り上げられている点で
(2002 年 1 月 27 日サンディタイムス)
注目される。
地域の海賊事件の背後にアチェの独立運動
IMB(国際海事局)の発表によると、2001 年に全世界で発生した海賊事件(未遂含む)
は 335 件で、過去最高を記録した前年(469 件)より 29%減少した。
昨年一年間にインドネシアで発生した海賊事件は 91 件。マラッカ海峡では 17 件で、前
年(2000 年)の 75 件から大幅に減少した。
昨年は、マラッカ海峡北部のアチェ沖で海賊事件が増加するという新たな傾向がみられ
た。こういったケースでは、海賊は船を襲撃して乗組員を誘拐し、身代金を要求している。
111
同報告書によると、自由アチェ運動はマラッカ海峡の航行を妨害しており、インドネシア
当局から誘拐事件で非難されている。
(2002 年 2 月 4 日ストレートタイムズ、シッピング・タイムズ)
ICS 等主催海賊対策会合、シンガポールで開催
先週シンガポールでインタータンコ、インターカーゴ、ICS、BIMCO 主催の海賊対策会
合が開催された。
海賊事件、特にハイジャック事件は越境したケースがほとんどで、一国のみの取り組み
では解決は不可能である。しかし、共同パトロールや他国の領海で海賊を追撃する権利な
ど微妙な問題があり、海賊問題に対する国際的な取り組みは、まだまだ先になることが強
調された。
IMO のミトロポリス事務局長補佐は、IMO は過去 18 年間にわたって海賊問題に取り組
んできていると述べた。IMO は 1999 年初めにシンガポールで各国の政府関係者を集めた
海賊対策ワークショップを開催し、海賊及び海上強盗への対策協力に関する地域合意の原
案を作成した。このことからも、IMO が海賊問題に業を煮やしていることは明らかである。
IMO の決議案に応えたのはシンガポール、インド、ロシアの三国のみで、今回の会合で
もマレーシアとインドネシアからの出席者に対して、合意する予定があるのかどうか繰り
返し質問されたが、回答は得られなかった。
FASA の事務局長であるダニエル・タン氏は、
「FASA は現在、アセアン加盟国とアセア
ンにおける枠組について話し合っているところである。アセアン各国政府は海賊問題を重
要視している」と述べた。
会議では、海運業界で海賊対策委員会を編成するという案が出された。この海賊対策委
員会も、これまで行われた取り組みと同じように失敗に終わるかもしれないが、
「何かしな
ければ、海賊行為は決してなくなることはない」とインターカーゴのフレデリック・シャ
(2002 年 2 月 12 日ロイズリスト)
オ会長は述べている。
インドネシア 海賊対策パトロールを強化
海賊の多発地帯になっているインドネシアが、マラッカ海峡のパトロールを強化、6 隻の
海軍艦艇をパトロールに投入した。
インドネシア海軍のスポークスマンによると、インドネシア海軍は 3 隻の艦艇をアチェ
沖に常時配備し、武器の密輸入を防止、ほかの 3 隻をマラッカ海峡に配備し、同海峡を通
航する貨物船への海賊の襲撃を防ぐとのことである。
マラッカ海峡のアチェ沖の海域では、身代金目当てに乗組員を誘拐する事件が増加して
いる。
これまでもインドネシアは海賊対策に取り組んでいたが、十分な設備が整っていなかっ
た。
112
日本は、インドネシアに対し、海賊問題の地域的取り組みへの呼びかけに苦心してきた。
(2002 年 2 月 13 日ロイズリスト)
インドネシアによる海賊対策の標石
海賊の多発地帯であるインドネシアで 16 カ国の代表を集めた海賊対策専門家会合が開催
され、日本が先頭を切って行っている東南アジアでの海賊対策は新たな一歩を踏み出した。
海賊事件の多発地帯であるインドネシアがこのような会合の主催したことから、関係者
は日本海上保安庁による今回の会合が地域の海賊対策の「標石」になるのではないかと期
待している。
「インドネシアが会合の実施に合意したことから、同国が海賊による経済損害を認知して
いることが窺われる」と関係者は述べている。
インドネシアは、輻輳するマラッカ海峡での海賊事件の拠点になっているとみられてい
る。
マレーシアとシンガポールが海賊対策を強化し、地域での海賊事件を減少に導く一方で、
海賊行為の根絶にはインドネシアの関与が必要とされている。今回の会合では、インドネ
シア当局との共同訓練も実施される予定である。
インドネシアは最近マラッカ海峡のパトロールに海軍の艦艇を派遣し、海賊行為に対し
断固とした姿勢を見せている。
今回の会合には、日本、バングラディッシュ、ブルネイ、カンボジア、中国、香港、イ
ンド、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、韓国、シンガポー
ル、スリランカ、タイ、ベトナムが参加している。
(2002 年 3 月 5 日ロイズリスト)
インドネシア政府 海賊対策での団結を呼びかける
昨日、ジャカルタで開催中の第 2 回東アジア海賊対策専門家会合の席で、インドネシア
の Agum Gumelar 運輸通信大臣は声明を発表し、同国海域及び国際海上交通路であるマラ
ッカ海峡での海賊撲滅には地域協力が唯一の方法であると公けに認め、以下のように述べ
た。
「アジアにおける海賊及び海上強盗は警戒が必要なレベルに達しており、このような犯罪
を根絶するには(地域協力以外)ほかに方法がない。このため、インドネシアは各国と互
いに協力せねばならないという考えを他国と同様に共有している」
インドネシアは世界的な海賊の多発地域になっており、(昨年)全世界で発生した海賊事
件 335 件中 91 件が同国海域で起こった。
また、インドネシア海域外のマラッカ海峡で起こった海賊事件についても、その多くが
インドネシアを拠点にしたものだと見られている。
同大臣は、インドネシアは海賊対策を強化したものの、2001 年も海賊問題は続いたと認
めた。
113
IMB(国際海事局)に通報された事件の多くが、インドネシアの境界海域で発生してい
るとの言及があった。
「海賊行為のような越境犯罪は、国によって異なった法制度が関与してくるため、特殊な
方法で対処する必要がある」と同大臣は述べた。
3 日間にわたる今回の会合には、16 カ国の代表が参加している。このような会合がイン
ドネシアで開催されるのは初めてのことで、インドネシアの海賊問題への取り組みに対す
る標石になるのではないかと期待されている。
今回、インドネシアは初めて日本と海賊対策訓練を実施する。
インドネシア運輸通信大臣による声明の内容は、日本財団寺島紘士常務理事によっても
繰り返された。
「基本的な問題が未解決であるため、地域協力と我々の打ち出した海賊対策を継続してい
くことが重要である」と寺島氏は述べた。
この協力というのは、特に各国の間の調整パトロール、そして将来的には共同パトロー
ルを目指したものである。日本海上保安庁は、同庁の中古巡視艇の提供をインドネシアに
申し出ている。
「我々は、日本の退役巡視艇をアジアの友人達に提供することに積極的である」と日本海
上保安庁・須之内康幸次長は述べている。
インドネシアでは、海軍、海上警察、海運総局の間の調整が取れていないとの声もあり、
海賊対策に取り組む前に関係省庁内の再調整が必要だと言われている。
各国が協力する際に発生する国家主権の問題は、沿岸国の間で未だ大きな問題であるが、
寺島氏は、海賊はこの盲点を利用して、当局の手から逃れていると警告している。
「各国にとって海上境界線は大変重要なものであるが、検問所もなく、自由に行き来でき
るため、海賊や犯罪者は海上境界線を利用している。実際、海賊はある国の当局に追跡さ
れた場合、別の国の領海に逃げ込むため、追跡を断念せざるを得ない。海賊は、法的な取
り決めを逆手にとって、逃走を続けているのである」 (2002 年 3 月 6 日ロイズリスト)
海賊対策専門家会合で地域の海賊対策、一歩前進
昨日より 3 日間にわたる海賊対策専門家会合がインドネシアのジャカルタで開催され、
アジア 16 カ国から代表が参加した。この会合により地域の海賊対策は前進をみせ、会合は
その標石になると期待されている。
本会合は、インドネシア政府が非営利団体である日本財団の支援の下に実施したもので、
現在も蔓延する海賊問題への対策に関する地域的合意に達するための重要な一歩だとみら
れている。
日本財団の寺島紘士常務理事は、会合において実現を期待するものとして、各国の有効
な法の執行を核とした海賊問題への取り組みを支えるための地域協力が必要であると示し
た。
114
この過程で、各国の主権問題は尊重されるべきであると寺島氏は述べている。
「海賊行為は地域の人々の社会・経済を脅かす存在となっていることから、我々は海賊を
取り締まり、罰するために地域で協力するという政治的意思を明確に表明しなければなら
ない」と寺島氏は述べた。
また、同氏は、2000 年に東京で開催された地域会合から始まった地域協力の具体化の強
化を主張した。この地域協力には、情報交換のほか共同訓練、調整パトロールの運用があ
り、なかでも調整パトロールは将来的には共同パトロールとなるのが好ましいとしている。
「さらに、各国の対応能力を高めるような基本的な協力に焦点を当てることも重要である。
具体的に述べると、ソフトとハードの両面から、たとえば職員の教育・訓練、巡視艇の増
加や監視施設の設置などで、能力向上を図る」と同氏は述べた。
日本側の関係者によると、本会合は隠れた目標である地域協定締結の標石になると期待
されているとのことである。
主権問題及び沿岸国と利用者の負担分担問題が、合意を手間取らせる主な障害になって
いるとみられている。
インドネシアが今回初めてこのような会合を実施したことは、肯定的に捉えられている。
これはインドネシアが海賊対策において重要な役割を担っていることが理由である。
昨年全世界で発生した海賊事件 335 件のうち 91 件がインドネシアで発生した。その割合
は全体の 27%を占めた。
会合の開会に際して、インドネシアの Agum Gumelar 運輸通信大臣は、世界最大の群島
国家である同国にとって、パトロールする海域は 790 万平方キロメートルに及び、
「港と海
の両方で海上安全や法律の施行を確保することは大変困難な作業である」とした。
同大臣は、インドネシアは海賊対策のため最善の努力を尽くしているが、船舶への海賊
及び海上強盗行為は現在も続いていると述べた。
多くの海賊事件がインドネシア海域周辺で発生しているが、
「海賊行為のような越境犯罪
は、国によって異なった法制度が関与してくるため、特殊な方法で対処する必要がある。
このため、インドネシアは各国と互いに協力せねばならないという考えを他国と同様に共
有している」と同大臣は述べた。
(2002 年 3 月 6 日シッピング・タイムズ)
日本が海賊対策に巡視艇を提供
日本は、アジア海域での海賊及び海上強盗の防止のため、アジア各国に退役巡視艇を提
供すると申し出ている。アジア海域での海賊の脅威に立ち向かうためには、確固とした意
志が必要だということを示すため、先日行われた海賊対策専門家会合では、今年後半に開
催が予定されている政府間専門家ワーキンググループで海賊問題を取り上げることに合意
した。
先日ジャカルタで開催された海賊対策アジア地域専門家会合によると、東京で開催予定
の政府間専門家ワーキンググループでは、アジア地域間の高レベルな協力が模索されると
115
(2002 年 3 月 12 日マリタイムアジア)
のことである。
アセアン、海賊対策タスクフォースの設置へ
アセアンが海賊対策タスクフォースを設置することから、地域の海賊問題への取り組み
は高まっている。
「シッピング・タイムズ」の調査によると、最近バリで開催された越境犯罪に関するア
セアン専門家会合で、8 つのタスクフォースの1つとして、海賊及び海上強盗タスクフォー
スが設置された。
タスクフォースは、薬物の不正取引、マネー・ロンダリング、テロ行為、武器の密輸、
人身売買等の問題に焦点を当てるため、創設された。
アセアン事務局に近い筋からの情報では、海賊対策のための 6 つの協力分野(情報交換、
法律上の事柄、法の執行に関する事柄、訓練、組織の強化、域外協力)が検討されている。
これらの提議は、承認を得るため、4 月にクアラルンプールで開催が予定されている第二
回アセアン越境犯罪対策高級事務レベル会合で提出される。
「シッピング・タイムズ」の調査によると、情報交換案は、マレーシアが強く推してい
るアセアン海賊通報運用センター設置の第一歩とみられる。
このアセアンの動きは、日本が先頭を切って行ってきた、地域協力を目指した海賊対策
の取り組みに加わったことになる。日本の取り組みは現在も続いており、先週はジャカル
タでインドネシア主催の第 2 回海賊対策専門家会合を実施している。
海賊の温床であるインドネシアがこのような会合を開催するのは、画期的であると考え
られている。会合は 3 日間にわたり、17 カ国の代表が参加した。ある出席者は、
「ついにイ
ンドネシア政府は、海賊が直接・間接的に経済に損害を与えていることを認めたのではな
いか」と話している。
会合の狙いは、海賊対策の状況と地域協力の評価、地域海事当局とのネットワークの構
築で、インドネシアと日本の海賊対策合同訓練も実施された。
また、日本、オランダ、アメリカが、退役巡視艇のインドネシアへの提供を申し出てい
る。
今回の会合は、2000 年 11 月にクアラルンプールで開催された第 1 回専門家会合に次ぐ
もので、日本政府、日本海上保安庁、非営利団体日本財団が 2000 年 4 月から開始してきた
取り組みの一環である。
今回インドネシアで開催された会合は、実動レベルでの会合であったが、今年 10 月には
外務省高官による政策レベルの会合が開催される予定である。
この動きは、日本が IMO の支持の下に積極的に押し進めてきたアジア全体の協力に関す
る正式な協定に一歩近づいたとみられている。
二者による取り組みが相補的であるかどうかについて、前出の出席者は、
「多様な取り組
みによって、さまざまな形の多国間協力が進められている。日本側は海賊対策を進めるた
116
めの地域協力協定を締結したいと考えており、アセアンの取り組みもこれに一致すると思
われる。課題は重複を避け、シナジー効果を出すことである」としている。
(2002 年 3 月 13 日シッピング・タイムズ)
マレーシア 海賊情報センター本部設置を申し出る
マレーシアは、現在提案されている地域海賊情報センター本部の設置を申し出た。これ
により、マレーシアはアジアの海賊対策で先頭を切ることになる。
海賊情報センター本部設置への取り組みは、先日ジャカルタで開催された海賊及び海上
強盗に関するアジア地域専門家会合で、マレーシア MECC が明らかにしたものである。セ
ンターの役割は、地域各国の政府と法執行機関管轄内における海賊及び海上強盗の情報の
収集・分析、データ提供などの活動の中心になることである。センターの設置による関係
各所間の調整の迅速化・効率化が、期待されている。
この動きは、日本政府から強く提唱され、支持を得ている。関係する国々は以下の通り。
ブルネイ、カンボジア、中国、香港、インド、インドネシア、日本、ラオス、シンガポー
ル、スリランカ、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア。
情報の収集・提供のほか、クアラルンプールに拠点を置く IMB(国際海事局)海賊通報
センターと情報交換や各国からの海賊関係活動の詳細の入手で提携する予定である。その
後、データはインターネットで法の執行機関や調整機関に転送される。
地域情報センターの設置は、関係各国が締結する予定のアジア海賊対策協力協定に含ま
れている。
地域における情報交換の重要性は、昨年 10 月に開催された海賊及び海上強盗対策会合の
席で初めて話し合われた。この案はおおむね専門家の同意を得たが、センターの設置は各
国政府の決定に委ねられていた。
出席者は、より深い調査を実施し、次回フィリピンで開催される会合にその結果を提出
するよう求めた。マレーシアがこの調査のリーダーを務める予定である。
情報ネットワークの一部であるセンター設置のほかに、ジャカルタでの会合では各国の
活動の中心となる機関が必要であるとの判断が下された。これは、各国がデータの受取り・
提供の中心となる法執行機関を 1 つまたは複数選ぶということである。領海内または領海
外で海賊行為の通報があった場合、これらの活動の中心となる機関は直ちに地域センター
に連絡しなければならない。
IMB のアビヤンカ副局長は、この動きを海賊対策の肯定的な進展ととらえ、今後 3 ヶ月
内にコンセプトがより明確になるだろうと述べている。
「このネットワークは、地域各国に情報共有に必要な正式な手段をもたらし、法の執行を
より効果的にするだろう」とアビヤンカ氏は述べ、全ての国々が地域内で発生した海賊事
件について通知されるべきであると付け加えた。
アジア海賊対策地域協力協定の草案は、3 つの柱からなっている。3 つの柱とは、協力関
117
係を容易にするための情報ネットワークの構築、海賊及び海上強盗を取り締まるための枠
組み、各国の海賊取り締まり能力を強化するための協力である。
(2002 年 3 月 18 日スター)
118
第2節 海難・航行安全
シンガポール海峡で座礁したコンテナ船の引き揚げ、Wijsmuller が請負
3 月 29 日の夜、インドネシア寄りのシンガポール海峡、ヘレンマー礁で座礁したコンテ
ナ船 CGA CGM Normandie 号(4,688TEU)の引き揚げ作業は Wijsmuller が請け負うこ
とになった。
該船の引き揚げ作業の入札には、Smit International、Semco、Kasel Salvage も参加し
ていたとみられている。
30 日 Wijsmuller は、現場に 40 名の救難作業員を派遣した。同社によると、N 号は 5 つ
の船倉が損傷を受けており、ダイバーが損傷した船底の補修をしているという。バンカー
油の流出に備えて、オイルフェンスも用意されている。
W 社のスポークスマンによると、油の流出があったが「少量であった」とのことである。
クレーンを搭載したバージが派遣され、コンテナが瀬取りされる予定である。
N 号のフランス船主は 29 日、1,950 個あるコンテナのうちの 1,200 個が瀬取りされない
といけないと話している。
コンテナの瀬取り後、N 号は離礁し、シンガポールで修理を受ける予定である。
作業は全体で約 1 週間かかるとみられる。
事故発生当時、N 号はマレーシアのクラン港からインドネシアのジャカルタに向かって
(2001 年 4 月 2 日マリタイムアジア)
いるところであった。
マレーシア パシルグダン沖インドネシアのドレッジャーがタンカーと衝突
事故発生日時:2001 年 3 月 31 日午前 11 時前
事故船の詳細:ドレッジャー
SulawesiⅡ号 1974 年建造 3,699 トン
インドネシア政府運航
タンカー
Andahika Aryandhi 号
4,251 トン
Andahika Shipping 運航 1983 年建造
状況:事故発生当時、ひどい悪天候で視界はゼロに近い状態であった。暴雨により、通信
機器にも影響が及んだとみられる。
Andahika Aryandhi 号側のスポークスマンによると、事故発生時 A 号はパイロットを乗
船させるため、パシルグダンのアンカーポイントに向かっているところであった。その時、
悪天候の中を左舷側から S 号が A 号の進路を横切るように近づいてきて、A 号の右舷にぶ
つかった。同スポークスマンは、S 号が航路を譲らなかったとしており、左舷側から接近し
てきた船が航路を譲るのは当然のことだと述べている。
事故によるケガ人はなく、A 号の貨物(やし油)も無事であった。
A 号は右舷側の船体に少々へこみができたが、当局は総点検が行われる 8 月まで運航を
続けることを許可した。
119
S 号の損傷の程度は明らかではないが、船体が浸水し始めたとの報告があったことから乗
組員は船から下ろされた。S 号の衝突による損傷は、A 号よりもひどいとみられる。
事故の直後に S 号は、Semco サルベージによって修理のためシンガポールに曳航された。
(2001 年 4 月 10 日シッピングタイムズ)
保険会社と当局が、調査を進めている。
東ジョホール水道でコンテナ船とバージが衝突
事故発生日時:2001 年 4 月 18 日午後 3 時 15 分頃
事故発生地点:東ジョホール水道 ウビン島南沖1キロの地点(シンガポール領海内)
事故船の詳細:コンテナ船
バージ
「JohanⅡ」 マレーシア船籍(登録:ラブアン) 1,969gt
「IT338」 シンガポール船籍 1,216gt
状況:事故発生当時、バージ「IT338」はタグボート「Island TamaraⅡ」によって曳航さ
れていた。シンガポール海事港湾庁(MPA)は、現在調査を進めており、非難をするつも
りはないと述べ、以下のような声明を発表した。
「事故発生当時、「JohanⅡ」はジョホール港湾庁のパイロットによって水先案内され、パ
シルグダン港から出港するところであった。一方、タグボートとバージは、インドネシア
からパシルリス総合ターミナルに向かっているところであった。事故によって、J 号の船首
がバージの右舷側に突き刺さっている。損傷については現在も調査が行われているが、両
船とも安定した状態で、けが人はなく、汚染の問題もない」
バージ、コンテナ船ともに主要航路から移動されて、現在はスンゲイ・セラングーンの
近くに投錨している。MPA によれば、東ジョホール水道の船舶交通に影響はない。
ヘレンマー礁で座礁したコンテナ船についての続報
3 週間以上前(3 月 27 日深夜)
にヘレンマー礁で座礁したフランスのコンテナ船 CMA CGM
Normandie 号(4,734TEU)は、現在も座礁した状態のままである。
該船はマレーシアのクラン港からインドネシアのジャカルタに向かっているところ、通
(2001 年 4 月 20 日シッピングタイムズ)
航分離帯を外れた地点で座礁した。
Normandie 号をシンガポールに移動
3 月 27 日にシンガポール海峡で座礁した CMA CGM Normandie 号(4,688TEU)は、
Wijsmuller Salvage によって日曜(4 月 22 日)
、離礁され、残りの貨物を降ろし、修理を
受けるためシンガポールに向けて移動した。
N 号は 48 時間にわたり乾ドックに入り、詳細な検査を受ける。N 号が貨物の引き下ろし
と修理のためにシンガポール港に入ることについて、シンガポール海事港湾庁(MPA)は
入港許可を出している。
元々1,950 個あったコンテナのうち 800 個が、まだ船内に残っている。1,150 個について
は、サルベージ会社がクレーンとバージを用いて瀬取りし、マレーシアのタンジュンペレ
120
パス港に輸送された。
シンガポールで降ろされたコンテナは別の CMA CGM 船によって各到着地へと輸送され
る。
船内に残っているコンテナのうち約 100 個は、座礁によって損傷を受けているとみられ
(2001 年 4 月 27 日マリタイムアジア、ロイズリスト)
ている。
ジョホール・ショールでバンカーが座礁
事故発生日時:2001 年 5 月 25 日(金)午後 10 時頃
事故発生地点:ジョホール・ショール、シンガポールのチャンギ沖東約 3 キロ
事故船名・詳細:Lowlands Beilun 号、バルクキャリアー、シンガポール船籍、85,906GRT、
貨物:鉄鉱石 165,000MT
The Tai Chong Cheang Co 運航
状況:シンガポール海事港湾庁(MPA)の発表によると、L 号は午後 10 時 10 分にバンカ
ーの燃料を補給した後、チャンギ特殊目的停泊地から出発したところ座礁、左舷側の第 2
バラストタンクに穴が開いた。
MPA によると、油の流出及びけが人の報告はなく、L 号は安定した状態にある。MPA は、
L 号への援助と万一の油流出に備えて、タグボートと防災船を各 2 隻派遣した。航行警戒も
出された。
土曜日(26 日)午前 1 時の満潮時に、パイロット 1 名とタグボート 3 隻による船の離礁
作業が行われたが、
失敗に終わった。
L 号の運航会社は、サルベージ会社
(Smit International
と Semco Salvage and Marine)に援助を求めた。
土曜日(26 日)からサルベージ会社が離礁作業を開始したが、27 日現在 MPA は新たな
情報を入手していない。現在、MPA が事故の調査を進めている。
(2001 年 5 月 28 日シッピングタイムズ)
マラッカ海峡で貨物船がタンカーと衝突後沈没 乗組員全員無事
事故発生日時:2001 年 5 月 28 日午前 2 時 45 分
事故発生地点:マラッカ海峡 スダン島(Palau Udan)西沖約 8 海里
水深 40∼50 メートルのところで沈没
事故船の船名及び詳細:貨物船 Singapura Timur 号、1,369gt、パナマ船籍、アスファルト
とビチューメン積載、運航会社 Odyssey Maritime、1997 年建造、
乗組員 12 名
タンカーRowan 号、24,731gt、バハマ船籍、貨物は空
乗組員 27 名
状況:貨物船とタンカーが衝突、その約 1 時間後に貨物船は沈没し始めた。
(同日午後 3 時
48 分に完全に沈没)貨物船 S 号の乗組員は救命筏 2 隻で脱出し、その後海上警察に救助さ
121
れた。S 号の運航会社 Odyssey Maritime のスポークスマンによると、乗組員 1 名が軽傷を
負い、ジョホール州の病院で手当を受けた。ほかの乗組員もジョホール州で休息をとって
いる。
同スポークスマンによると、事故発生当時 S 号はシンガポールからマレーシアのクラン
港に向けて 1,000 トン以上のアスファルトと積んで航行していた。
事故の詳しい状況は明らかになっていないが、衝突によって S 号の船体はひどい損傷を
負ったものと思われる。
マレーシア海難救助調整本部(MRCC)のよると、S 号のバンカーから少量を油が流出し
た。当局は状況の監視を続けているが、その後油の流出は見られていない。
タンカーR 号は、マラッカ沖に安全に停泊している。衝突によって R 号の船体に穴が開
いたが、損傷はそれほどひどくなく、航海に支障を与えるほどではない模様。R 号の乗組員
にけがはなかった。事故発生当時、R 号はシンガポールからパキスタンの Kassim 港に向か
って航行していた。貨物は空であった。
現在、MRCC が事故の調査にあたっている。
(2001 年 5 月 29 日シッピングタイムズ、ストレートタイムズ、スター)
マラッカ海峡での小型タンカー沈没事故続報
5 月 28 日に発生したマラッカ海峡でタンカー大型 Rowan 号と小型タンカーSingapura
Timur 号の衝突事故から、船舶の通航分離帯(TSS)違反問題が浮き彫りになった。
マレーシア海事局は、今回の事故について、船が別の船の船尾に衝突するというケース
は初めてで、このような事件は「普通でない」と述べている。
海事局航行安全課のアーマッド・オスマン課長は、どういった経緯で事故が発生したの
か調査にあたっている。
事故当時両船は TSS 内を航行中で、当初の報告では大型タンカーが小型タンカーに突っ
込んだと伝えられていた。
アーマッド課長と職員らは、VTMS(Vessel Traffic Management System)の記録をチ
ェックして、どのようにして衝突事故が発生したのか検証する予定である。
マレーシア海事研究所の副所長は、今回の事件は両船が規則に従っていれば避けられた
(2001 年 5 月 29 日スター)
はずだと述べている。
シンガポール イーストコースト沖でタンカーが火災・沈没
事故発生日時:2001 年 6 月 15 日 0805 現地時間(0005GMT)
事故発生地点:シンガポール イーストコースト沖
事故船名及び詳細:
「Satama3」
、タンカー、ベリーズ船籍、木造、115gt
状況:シンガポール海事港湾庁(MPA)の発表によると、該船で 0805 に火災が発生。シン
ガポール沿岸警備隊、MPA、市民防衛軍の船舶が現場に急行し、火災は約 1 時間後に鎮火
122
されたが、その後 0940(0140GMT)に該船は沈没した。乗組員 2 名がシンガポールジェ
ネラルホスピタルに収容された。1 名はやけど、もう 1 名は煙を吸い込んだため、治療を受
けている。事故発生当時、この 2 名(インド国籍とインドネシア国籍)のみが船上にいた。
防災船が現場に派遣されているが、今のところ(事故発生 6 時間後)油濁は確認されてい
ない。
(2001 年 6 月 15 日ストレートタイムズ、ビジネスタイムズ、MPA ステートメント)
シンガポールで火災・沈没した Samta3 号の乗組員、危険な状態
一方、シンガポールのイーストコースト沖で火災・沈没したシンガポール所有・ベリー
ズ船籍の Samta3 号のインドネシア人乗組員は、全身の 90%に及ぶやけどを負っており、
危険な状態にある。
MPA によると、サルベージ会社 Smit International は 17 日の午後までにクレーンバー
ジが 4 つの貨物タンクを引き揚げ、サルベージ作業を終えた。
(2001 年 6 月 19 日ストレートタイムズ)
台湾沖で貨物船が台風に襲われ乗組員行方不明
事故発生日時:2001 年 6 月 23 日
事故発生地点:台湾台南沖
事故船の詳細:Kuangyuan 号、5,300 トン、ベリーズ船籍、乗組員 23 名
鉱石積載
状況:警察によると、船体が傾いて船尾から浸水していると該船から連絡が入った。その
後、該船は行方不明になった。翌日 24 日巡視艇が該船及びその乗組員を捜索したところ、
油膜とベリーズと書かれた救命具 3 つが見つかった。警察は該船が沈没したのではないか
(2001 年 6 月 25 日シッピングタイムズ)
とみている。
Inabukwa 号、二度目の打撃
3 月 15 日に 13 名の海賊ハイジャックされ、その後フィリピンで沿岸警備隊に発見され
た貨物船 Inabukwa 号(インドネシア国営企業 Pelayaran Nasional Indonesia 所有、1,710
トン)が、ルソン北部の Salomague 港で台風による強風と荒波によって座礁した。I 号の
損傷状態はひどい模様。I 号を含め 9 隻の船が過去 3 日間に沈没または座礁している。
フィリピン沿岸警備隊によると、フィリピンは最近 I 号のインドネシアへの引渡しに合意
したところであった。
新たなインドネシア人乗組員が Salomague 港で I 号を引き継いで、5 日の出発に備えて
いたところを台風に襲われた。
I 号は桟橋まで曳航されたが、台風によって係留ロープとアンカーが損傷を負った。該船
123
は浸水してエンジンが故障して座礁したとみられる。
(2001 年 7 月 6 日ロイズリスト)
マラッカ海峡で貨物船と油タンカーが衝突
事故発生日時:8 月 29 日(水)午前 3 時頃(現地時間)
事故発生地点:マラッカ海峡(クラン港沖 6 海里)
事故船名及び詳細:タンカーSilversea 号、パナマ船籍
貨物船 ParisⅡ号、ギリシャ船籍
状況:貨物船と油タンカー(両船とも空船)が衝突、タンカーの乗組員 9 名が負傷し、救
急車でクラン病院に運ばれた。事故発生時、タンカーはパシルグダン港からクラン港に、
貨物船はシンガポールからアラブ首長国連邦のフジャイラに向かっていた。
(2001 年 8 月 29 日 ロイター通信)
CMA CGM Normandie 号座礁 事故原因船橋の判断ミス
フランス海難審判庁の報告書によると、2001 年 3 月 27 日の夜、マラッカ海峡で発生し
た CMA CGM Normandie 号座礁事故の原因は、速度の遅い沿岸船と追い越そうとした判
断ミスにあったとのことである。
見張りにあたっていた乗組員の責任が問われたほか、事故発生当時船橋にいた船長にも
一部責任があるとされた。
該船はクラン港からジャカルタに向かっていたところ、現地時間 2300 を過ぎた頃、左舷
側を航行していた沿岸船を追い越して通航分離帯に戻ろうという誤った判断を下し、ヘレ
ン・マー礁に乗り上げた。
報告書には、以下のように記されている。
「該船が通航分離帯から外れた右側に針路を変えたことが、本質上の事故原因である。座
礁の直前になって事態に気が付いた船長は、誤った判断を共有し、認めていたものとみな
される。その時には残された時間もなく、船の舵を左に取って暴走を止めることぐらいし
かできなかった」
事故によって、該船は甚大な損傷を負い、ベトナムの造船所で修理を受けた後、今月に
なってやっと運航を開始することになった。
(2001 年 10 月 17 日ロイズリスト)
マレーシア クアンタン港で貨物船の乗組員 5 名が毒性の煙を吸い込み死亡
事件発生日時:2001 年 12 月 25 日
事件発生地点:マレーシア東海岸のクアンタン港
船舶名及び詳細:MV Sunvaz 号、18,000 トン、旗国:セントヴィンセント
状況:該船はタイで貨物の化学肥料を下ろした後、空の状態でクアンタン港に入港した。
船内の清掃中に乗組員 5 名(全員中国籍)が毒性の煙を吸い込み、死亡した。死亡した乗
124
組員は、中国江蘇省の出身であった。該船のエージェントからのコメントは得られなかっ
(2001 年 12 月 27 日シッピングタイムズ)
た。
バタム島に向かっていたインドネシア船が沈没
事故発生日時:2002 年 1 月 27 日(日)
事故船及び詳細: Jaya Abadi 号、コンテナ船、インドネシア船籍、全長 38m
状況:J 号は、シンガポールからシンガポールの南 20km のところにあるインドネシア領バ
タム島に向かっていた。インドネシア領海に入った直後、船首の穴から浸水し始め、沈没
した。乗組員 7 名は全員救助されたが、船内に残っていた船長が死亡した。J 号の貨物につ
いてはまだ明らかになっていない。
(2002 年 1 月 29 日シッピング・タイムズ)
125
第3節 海洋汚染
マレーシア海事局が 4 隻の油防除艇を導入
マレーシア海事局は、新しい 4 隻の油防除艇を導入する。全長 24 メートルの双胴艇は油
防除のほかにも捜索援助活動を実施する。
1 番艇は 5 月中にも配属される予定になっており、残りも 9 月中には配属される。
費用は 1 隻 640 万リンギット。
速力は 20 ノット、沿岸から 100 海里進出できる航続距離を持つ。
(2001 年 5 月 14 日スター)
油流出は国境を越えた問題(ブルネイオスパー会議)
5 月 28 日にブルネイで2日間にわたる第6回オスパー会議が開催された。インドネシア、
マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、そしてオスパープロジェクト
の支援国である日本が、この会議に出席した。
ブルネイ通信省の事務次官は開会の挨拶で、「油流出は国境を越えた問題である。領海線
を共有するアセアン地域において、オスパーの資機材を用いれば迅速に大規模な油流出に
対応することができる」と述べている。
オスパープロジェクトは、IMO の OPRC 条約(油汚染に対する準備、対応及び協力に関
する国際条約)の採択を受け、日本が先頭になって進めてきた。
OPRC 条約は、大規模な油流出事故が発生した際の各国及び地域の油濁対応計画、技術、
相互援助を調整する目的で策定された。
またこの条約は、国際システムに参加するための基本油濁対応制度の開発を義務付けて
いる。
中東からの油輸送でアセアン海域の主要利用国である日本は、先頭を切って当時のアセ
アン加盟国 6 カ国相互対応能力の確立を目指してきた。日本政府はアセアン諸国の油防除
対応資機材の改善及び強化のために 10 億円を投入している。ブルネイ王国は 1994 年に
8,000 万円相当の資機材及びネットワークシステムを正式に受理している。
(2001 年 5 月 29 日 Borneo Bulletin、News Express)
油流出対策グループを拡大
先週ブルネイで行われた第6回オスパー会議では規模の拡大が合意され、アセアン新加
盟国(カンボジア、ベトナム、ミャンマー)がオスパー管理委員会に招待参加される予定
である。
ブルネイ通信省の事務次官は開会の挨拶で、カンボジア、ベトナム、ミャンマーのオス
パー管理委員会参加を強く訴え、以下のように述べた。
「油流出は国境や政治の境界を越え
た問題である。大規模な油流出はあっという間に国家の資源を蝕んでしまう。我々の確立
126
したオスパープロジェクトというのは、油濁対応提携である。費用効果の高めながら対応
能力を引き出せるように、資機材を出し合って、情報を交換している。委員会はその課題
と役割を見直すべきであり、個人的には対応計画の効果を高めるのに必要な条件を包含す
るための課題及び役割を拡大すべきだと考えている」
オスパープロジェクトは、IMO の OPRC 条約(油汚染に対する準備、対応及び協力に関
する国際条約)の採択を受け、1993 年に日本が先頭になって開始・援助した。
中東からの油輸送でアセアン海域の主要利用国である日本は、先頭を切って 10 億円を投
入し、アセアン加盟国への油防除対応資機材を提供した。
OPRC 条約には、油濁対応計画の確立、油流出事故が発生した際の加盟国間援助の相互
義務が含まれている。
しかし、当時のオスパー協定には、1995 年にアセアンに加盟したベトナム、1997 年の加
盟したミャンマーとラオス、1999 年に加盟したカンボジアは含まれていなかった。
シンガポールに拠点を置く海上安全関連団体の関係者は、これらの国の参加がオスパー
の活動範囲を広げるだろうと述べている。
昨日(5 日)IMO は来年 3 月 11 日から 13 日にフランスで開催される第 3 回油流出対応
に関する国際研究開発フォーラムで発表する論文を募集し、世界的にこの問題を強調した。
論文の募集は、流出油の検出・追跡・回収・輸送・処理に関する最新情報及び進展情報
の収集・共有の第一歩になるだろうと言われている。
(2001 年 6 月 6 日シッピングタイムズ)
シンガポール船籍 VLCC のタンクが爆発
事故発生日時:2001 年 6 月 12 日(火)0455(現地時間)
(GMT:6 月 13 日 2355)
事故発生地点:インド北西部 Laccadive 島沖のアラビア海
北緯 13 度 47 分、東経 68 度 30 分
事故船とその詳細:VLCC「Heng San」シンガポール船籍、241,168dwt
Ocean Tanker(拠点:シンガポール)運航、乗組員 42 名
1977 年建造
状況:救出に向かったノルウェー船「Probo Baro」
(Torvald 運航、1986 年建造、48,062dwt、)
の船長は、H 号の中央タンク 4 つが爆発し、タンカーの横の部分が甲板まで裂けていて、
損傷がひどい状態であったと報告している。P 号は 0455 に H 号から「爆発と火災」の報告
を受けた。P 号はオーストラリアからペルシャ湾に向かっているところであったが、0520
に方向転換した。0535、H 号から再び連絡が入り、42 名の乗組員全員が無事であるとのこ
とだった。P 号は、0720 頃事故現場に到着したが、その時にはすでに火災は鎮火されてい
た。
事故に関して、ムンバイの海難救助調整センターとノルウェーのスタヴァンガー沿岸警
127
備隊が常時連絡を取り合っていたが、H 号の乗組員を救助する必要はなかった。
P 号はムンバイからテレックスを受け取った後、1344 に航海を再開した。
H 号は、シンガポールの石油貿易会社 Hin Leong Marine International に代わって、
Ocean Tanker が運航していた。Hin Leong は、1970 年代に建造された大型タンカー70 隻
(2001 年 6 月 13 日ロイズリスト)
を所有している。
シンガポール船籍 VLCC「Heng San」爆発事故続報
インド沿岸警備隊の発表によると、北緯 14 度 12.15 分、東経 69 度 10.0 分の地点でタン
クが爆発した Heng San 号(VLCC、241,168dwt、1976 年建造)は、船体が 2 つに裂けて
沈没した。この事故で H 号の乗組員 42 人中 4 人が行方不明になっている。そのほかの 38
名については無事救出された。爆発が発生したのは貨物タンク内であるが、その原因と詳
細は明らかになっていない。
インド海軍、インド沿岸警備隊、付近を航行中の船が救出作業を行った。
Heng San 号のかつての船名は「Shinanogawa−95」で、日本海事協会から船級を受け、
シンガポールの Ocean Tankers によって運航されていた。
(2001 年 6 月 13 日海事関係者からの情報提供等)
ジョホール水道でケミカルタンカーが座礁(第一報)
事故発生日時:6 月 13 日(水)0340
事故発生地点:パシルプテ沖のマレーシア領海内
事故船及び詳細:ケミカルタンカー「Indah Lestari」、インドネシア籍船
フェノール積載
状況:マレーシア海事局によれば、該船は 13 日 0130 にパシグダンを出港、0340 にビーチ
に乗り上げたとのこと。積荷のフェノールが少しずつ流出しており、サルベージ会社が作
業を開始した模様。
シンガポール海事港湾庁によれば、事故発生地点はマレーシア領海内であるものの、対
応策を検討しているとのこと。
(2001 年 6 月 13 日マレーシア海事局・シンガポール海事港湾庁)
ジョホール水道でケミカルタンカーが座礁(第二報)
第一報による船名「Indah Restari」を「Indah Lestari」に訂正します。
シンガポール環境省によれば、同船が積載していた積荷のフェノールは、630 トン。座礁
による軽度の船体損傷により、フェノールが少量流出している模様。
現在、付近海域の水質をモニタリングしているが、予備措置として、付近海域での遊泳、
魚釣を避けるよう周知しているとのこと。
(2001 年 6 月 14 日シンガポール海事港湾庁・シンガポール環境省)
128
シンガポール船籍「Heng San」爆発事故続報(第三報)
3 名が死亡、1 名が行方不明。
火曜日(12 日)にアラビア海で爆発したシンガポール船籍タンカー「Heng San」の乗組
員 3 名の死亡が確認された。1 名が未だ行方不明になっている。
インド沿岸警備隊によると、3 名は爆発による負傷が原因で死亡したとのこと。また、同
沿岸警備隊は、H 号の船上で火災が二度発生していたと述べている。一度目の火災はイン
ド時間の 12 日午前 0 時を少しまわった頃に、二度目の火災はその約 24 時間後のインド時
間 12 日午後 11 時 15 分に起こった。
H 号からの SOS を受け、商船 2 隻が乗組員の救出に向い、乗組員 42 名中 38 名が救出さ
れた。救出された乗組員は現在も商船に乗船していると思われる。
インド沿岸警備隊は、明日も引き続き航空機を使った行方不明者の捜索を行うと述べて
いる。
H 号を運航していたシンガポールの Ocean Tankers は、昨日(13 日)の時点でも、乗組
員 4 名は「行方不明」であると述べていた。
同社のスポークスマンは、救助の際に行方不明になった 4 名(韓国人 1 名、中国人 3 名)
の捜索が現在も行われていると話し、4 名が現在も行方不明であるという姿勢を崩していな
い。
タンカーは空船状態で中東に向かっていたところで、ゴア沖 500 キロの地点を航行中で
あった。一旦鎮火の後、H 号は北の方向に向かって航海を続けたが、2 回目の火災から爆発
により、船体が 2 つに裂けたものとみられる。インド沿岸警備隊によると、最初の火災が
起こった地点から北西に 55 キロ離れた地点(ゴア沖約 520 キロ)で該船は沈没した。
シンガポール海事港湾庁(MPA)は、乗組員の詳細を中国人 34 名、韓国人 7 名、ミャン
マー人 1 名と発表した。
MPA は状況を監視していくと述べている。
(2001 年 6 月 14 日ストレートタイムズ)
ジョホール水道でケミカルタンカーが座礁(第四報)
シンガポール海事港湾庁によれば以下のとおり。
(事故発生地点がマレーシア海域であり、
対応当局はマレーシアであることを前提)
1
同船の要目
船
2
名 「Enda Lertari」(第二報による船名「Indah Lestari」は訂正)
総トン数
533 トン
船
種
ケミカルタンカー
全
長
48m
全
幅
18m
積
荷
フェノール 630 トン
現在の状況
129
同船は右舷側に傾斜して砂浜に安定した状態で鎮座している。現在まで流出したフェノ
ールの量は不明。
シンガポール当局は、付近のシンガポール海域の水質を調査、モニター中。これまでの
ところ異常は検知されていない。
また、シンガポールのサルベージ会社「Kasel Salvage」が、同船のフェノールを瀬取り
する作業を実施するため、資材を準備中。本日中に作業を完了させる見込み。
(2001 年 6 月 14 日シンガポール海事港湾庁からの情報)
シンガポール船籍「Heng San」爆発事故続報(第三報)
3 名が死亡、1 名が行方不明
火曜日(12 日)にアラビア海で爆発したシンガポール船籍タンカー「Heng San」の乗組
員 3 名の死亡が確認された。1 名が未だ行方不明になっている。
インド沿岸警備隊によると、3 名は爆発による負傷が原因で死亡したとのこと。また、同
沿岸警備隊は、H 号の船上で火災が二度発生していたと述べている。一度目の火災はイン
ド時間の 12 日午前 0 時を少しまわった頃に、二度目の火災はその約 24 時間後のインド時
間 12 日午後 11 時 15 分に起こった。
H 号からの SOS を受け、商船 2 隻が乗組員の救出に向い、乗組員 42 名中 38 名が救出さ
れた。救出された乗組員は現在も商船に乗船していると思われる。
インド沿岸警備隊は、明日も引き続き航空機を使った行方不明者の捜索を行うと述べて
いる。
H 号を運航していたシンガポールの Ocean Tankers は、昨日(13 日)の時点でも、乗組
員 4 名は「行方不明」であると述べていた。
同社のスポークスマンは、救助の際に行方不明になった 4 名(韓国人 1 名、中国人 3 名)
の捜索が現在も行われていると話し、4 名が現在も行方不明であるという姿勢を崩していな
い。
タンカーは空船状態で中東に向かっていたところで、ゴア沖 500 キロの地点を航行中で
あった。一旦鎮火の後、H 号は北の方向に向かって航海を続けたが、2 回目の火災から爆発
により、船体が 2 つに裂けたものとみられる。インド沿岸警備隊によると、最初の火災が
起こった地点から北西に 55 キロ離れた地点(ゴア沖約 520 キロ)で該船は沈没した。
シンガポール海事港湾庁(MPA)は、乗組員の詳細を中国人 34 名、韓国人 7 名、ミャン
マー人 1 名と発表した。
MPA は状況を監視していくと述べている。 (2001 年 6 月 14 日ストレートタイムズ)
シンガポール船籍「Heng San」爆発事故続報(第四報)
救助時に乗組員4名が犠牲に
爆発により船の側面と甲板が裂けた VLCC「Heng San」
(241,168dwt)は昨日(13 日)
、
130
悪天候の中沈没し、乗組員 4 名が犠牲になった。
救助に関わった 2 隻のタンカーの船長に話を聞いたところ、月曜日(11 日)に起こった
爆発では負傷者はなかったという。
しかし、その後、インドに進んできた南西モンスーンによる悪天候によって、乗組員 4
名が犠牲になった。
H 号の乗組員 2 名は、救助にかけつけたパナマ船籍の Clovely 号(248,034dwt)によじ
登ろうとした時に振り落とされた。
救命艇の指揮にあたっていた一等機関士は、水先人用はしごから救命艇に乗り込む際に
振り落とされた。4 人目の犠牲者は機関士で、C 号に向かっていた救命艇から振り落とされ
たとみられる。C 号によって H 号の乗組員 16 名が救助された。
同時に、第二救命艇に乗り込んだ 22 名の乗組員はギリシャ船籍の Aztec 号(68,300dwt、
建造されたばかりの新しいタンカー)に救助された。A 号は、C 号や現場に向かったほかの
VLCC に比べ、小型で操縦が容易であった。
A 号によると、H 号の第二救命艇はエンジントラブルに見舞われ、あてもなく海上をさ
まよっていたという。最も難しかったのは、A 号を安定させたまま、救命艇の乗組員を A
号に乗り込ませることだったと A 号の船長は述べており、当時波の高さは 10 メートルあっ
たと話した。
「天候はもっと悪くなるという警告を受けていたので、彼らが一刻も早くよじ登って乗船
できるよう 2 つのはしご、ロープ、ネットを降ろした。救助は困難を極めたが、乗組員が
協力し合い、22 名全員を救助することができた」と A 号船長は語った。
救助された乗組員 38 名は全員体調に問題はないが、事件によるショックは大きかったよ
うで、特に船長はひどいショックを受けていたとのこと。
C 号と A 号は、Fujairah に向かっており、救助された H 号の乗組員を数日後にそこで降
ろしたいとしている。
C 号の船長によると、5 時間にわたる救助作業が終わり、現場を去ろうとした時には、H
号の船体は船首の部分のみが海面から見えていたとのこと。
インド沿岸警備隊は昨日(13 日)、成果が得られなかったため、海上の捜索活動を打ち切
(2001 年 6 月 14 日ロイズリスト)
ると発表した。
有害物質が流出、ジョホールで被害拡大
ジョホール州パシクダン港沖で 13 日、インドネシア船籍のタンカーが転覆し、積荷の有
害化学物質が流出した事故は、ジョホール水道一帯で被害が拡大しているもようだ。事故
現場周辺での漁業や養殖業は壊滅的な打撃を受けたほか、シンガポール側では遊泳禁止な
どの措置を取っている。
沈没したタンカー「MV エンダ・レスター」は 13 日午前 3 時頃、パシクダン港から東カ
リマンタンに向けて出航した。
シンガポールに近いプンゴル島沖 2 海里に差し掛かった頃、
131
船長が異常に気がついてジョホール港湾庁に通報。その後、タンカーは転覆し、2 隻のタグ
ボートに引かれ、カンプンパシルプティから 100 メートルほどの浅瀬に移動した。船長と
乗組員 13 人は無事だった。
同タンカーは有害産業化学物質「フェノール」を 630 トン積載していた。今回の事故に
よってフェノール 600 トンとディーゼルが流出したもようだ。
「フェノール」は、プラスチックや消毒剤、殺虫剤などの製造に使われる石炭酸の一種。
毒性が強く、体内に入ると呼吸困難、心拍数変調、昏睡などの症状を引き起こし、1 グラム
を超えると死に至る。
ジョホール港湾庁では、タンカーからの流出を防ぐために、あらゆる措置を講じたが、
周辺海域では養殖されていた貝や魚が大量に死亡しているのが確認された。
ジョホール漁業協会は、付近の住民に魚を食べないよう通達している。ただ、この通達
が出たのは 13 日午前 9 時。市場では早朝 4 時から魚の売買が開始されていたため、通達が
遅かったと非難する声もある。
一方、シンガポール側でも監視を強めており、ウビン島、パシルリス、チャンギ、プン
ゴル島周辺での漁や遊泳が禁止されたもようだ。
カンポンパシルプティでの漁業経営者は 125 人。周辺の海域は死んだ魚が浮かぶ死の海
と化しており、
「これでは生物がいるとは思えない。今後 1 年は影響が残り続けるだろう」
と怒りを隠せない。なかには損失が 7,000 リンギの上ったケースもあるという。転覆した
タンカーは住民の目と鼻の先に放置されており、不安といら立ちは募るばかりだ。
マレーシア漁業開発庁のザイナル・マット・アリ長官は、今後の潮流によって汚染が拡
大する恐れがあると指摘。漁民の訴えには最大の協力をする考えを示した。
現在はジョホール港湾庁を中心に事故原因について調査が進められている。一方、ジョ
ホール州環境局はフェノールについて、
「ディーゼルのように凝固することはなく、揮発性
も高い」とし、海水で次第に薄められて毒性が弱まっていくとの見方を示した。
(2001 年 6 月 15 日 NNA)
ケミカル流出のための地域防除計画
ケミカル産業界は、地域のケミカル災害に対応するための緊急対応センターを設置した。
先月から始まった計画は、現在第一期の段階で、アジアケミカル輸送緊急センター(Asctec)
に登録している企業は、今後災害管理会社 SGS Alert から流出防除援助を受けることが可
能になる。年間登録費用は、1,000∼20,000 シンガポールドル(レベル 1 対応)
。来年の早
い時期には計画は第二期に入り、その頃には SGS Alert が企業に代わって災害対応を行う
予定である。
シンガポールケミカル産業協議会(SCIS)率いる Asctec 登録会社 10 社は、今後展開を
続け、最終的には主要ケミカル産業にかかわるアジアの国全てをカバーしたいとしている。
ケミカル流出は運搬時にトラックからドラム缶が転がり落ちるというケースが多いが、
132
海上での事故も増加の傾向にあると SCIS の会長は述べている。
(2001 年 6 月 19 日ストレートタイムズ)
ITF、Heng San 号事件についての調査を求める
ITF(船舶・港湾荷役、河岸荷役国際労働者連合)は、シンガポール海事港湾庁(MPA)
に対し、乗組員 4 名が犠牲になったシンガポール船籍 Heng San 号沈没事件にかかる乗組
員の退船時期の遅れについての調査を公式に求めた。
ITF がこのような調査を求めることは稀なことであるが、これについて ITF 側は、
「この
事件は H 号の船長が商業的なことを理由に救助を断ったと疑われる特殊なケースだ。当初
から同船の状況は深刻で退船時期を失した。最初の援助措置を断り、港へ向かおうとした
のは商業的なプレッシャーがあったと考えられる」と説明している。ITF は旗国のシンガポ
ールに対し徹底した調査を行うよう期待している。
INTERTANKO(国際独立タンカー船主協会)も、事件に対し関心を示しており、状況
を見ながら詳細な報告を待ちたいとしている。
MPA は、救助された H 号の乗組員 38 名が運ばれたアラブ首長国連邦の Fujairah に職
員を派遣した。MPA は、職員を派遣した理由として、乗組員の世話と「事件の調査の一環
として面接を行うこと」の両方を挙げている。
公式には、行方不明者の捜索は現在も続いているとされているが、インドのある情報筋
によると、捜索活動は大幅に縮小されている模様。
H 号の救助に向かった船によると、12 日の時点では H 号は救助は必要でないとし、翌日
船体が 2 つに裂けた段階になって初めて救助を求めたという。
(2001 年 6 月 19 日ストレートタイムズ)
沈没船からの汚染報道を運航会社が否定
5 月 28 日にマレーシアのウンダン島付近で油タンカーRowan 号と衝突・沈没した
Singapura Timur 号(1,369gt、パナマ船籍)から漏れたビチューメンとディーゼルがター
ル汚染を引き起こしているという報道について、シンガポールに拠点を置く S 号の運航会
社は、日本サルベージによって流出の予想される穴は全て塞がれたとしてこの報道を否定
している。
現在、S 号の船首は海面に出ている状態である。法律及び責任に関する話し合いが現在も
進行中のため、S 号の引き揚げにはまだ時間がかかる模様である。
事故当時 S 号の船内にいた乗組員全員
(12 名)は救助されたが、
貨物のアスファルト 1,000
トンは船内に残ったままになっている。
事故原因について、現在調査が進められている。
(2001 年 6 月 20 日シッピングタイムズ)
133
転覆したケミカルタンカーEndah Lestari 号から残留貨物が瀬取りされる
保険会社の発表によると、転覆したケミカルタンカーEndah Lestari 号から残留貨物が全
て瀬取りされた。
瀬取り作業は 6 月 22 日金曜日午後 1 時に行われ、E 号から約 608 メートルトンのフェノ
ールが別のケミカルタンカーSuhaila 号に移された。現在 E 号はジョホール州のパシルプ
テから 100 メートルのところにあり、これから Kasel Salvage が引上げ作業を行うところ
である。引き揚げ作業は 10 日間かかると思われる。
E 号は 6 月 13 日に転覆し、貨物のフェノールの一部が流出した。これによって多くの魚
や貝類が死滅した。シンガポールとマレーシアの当局は、現在も周辺海域での釣りや遊泳
(2001 年 6 月 25 日シッピングタイムズ)
を禁止している。
マレーシア ジョホール州パシクダンの造船所で爆発事故 工員 9 名が死亡
事故発生日時:2001 年 6 月 20 日(水)朝
状況:事故発生当時、MSE(Malaysian Shipyard Engineering)の工員 9 名(マレーシア
人 8 名、マレーシア永住権保持者 1 名)は油タンカー「New Renown」
(リベリア船籍、
240,830DWT、1976 年建造、香港に拠点を置く Associated Maritime 所有)の貨物タンク
から液体を移すためのパイプの溶接修理を行っていたところであった。10 時に火災警報が
鳴った数分後に造船所の緊急対応隊が駆けつけた時には、すでに工員は死亡していた。工
員は横 15 メートル、高さ 20 メートルの貨物タンクの中に安全服を着用したまま、やけど
の後もなく、大の字になって倒れていたという。
MSE は、造船所に安全面で問題はなかったとしている。
マレーシア運輸省が詳しい事故調査を行う予定である。
(2001 年 6 月 26 日シッピングタイムズ)
ケミカル流出対応計画、アジアでの訓練が求められる
ICOPE(国際ケミカル及び油汚染会議・展覧会)が 2001 年 9 月 3 日から 5 日までシン
ガポールで開催される。これに伴い、シンガポール海事港湾庁(MPA)がシェルと合同で
9 月 5 日に年に一度のケミカル流出訓練を行う予定である。ICOPE の参加者は、この訓練
(2001 年 7 月 24 日マリタイムアジア)
に出席することができる。
シンガポールが ITOPF を批判
先日当地で行われた IOPCE 会議の席で、シンガポールは ITOPF(国際タンカーオーナ
ー汚染連合)が汚染問題について各国に助言するという役割を批判し、別の機関に掛け合
った方がよいと忠告した。たとえ当局がそれまでの知識に照らし最良の方法として判断し
ても、ITOPF が反対すれば補償が得られないからである。
134
1997 年 10 月に発生したエボイコス号とオラピン・グローバル号の衝突事故では 28,000
トンの油が流出した。シンガポール海事港湾庁(MPA)は、ITOPF と事故の対応方法の違
いから意見が分かれ、汚染補償処理に 4 年の月日を要した。
このほかにも、MPA は昨年のナツナシー号事故でも、特にケミカル分散剤の使用につい
て ITOPF と意見が食い違った。MPA のマーク・ヘー港湾・海運局長代理は、ITOPF の役
割は助言することであって、最終的な判断は海事港湾庁に委ねられるべきだと述べている。
(2001 年 9 月 4 日ロイズリスト)
ITOPF 偏った意見を出したり、費用削減したりといった圧力は受けていない
先日当地で行われた IOCPCE 会議の席で、シンガポール海事港湾庁(MPA)が ITOPF
(国際タンカーオーナー汚染連合)を批判し、別の機関に掛け合った方がよいと言及した
と 9 月 5 日のロイズリストに掲載された。これに対し、ITOPF 側がロイズリストに投書し
反論した。
MPA は、ITOPF はその収入の大半を PI クラブの会費が占め、船主や保険会社を優遇す
る立場にあると批判している。しかし、ITOPF とその技術者らは、油濁防除作業やその他
の対応に関する豊富な経験を持ち、過去 23 年にわたって技術的な面で IOPCF の中心的な
アドバイザーを務め、同時に船主や保険会社にも仕えてきた。ITOPF がこの特殊な役割を
果たせるのは、海上油流出に効果的な対応に関する客観的な技術上のアドバイスを与える
とともに、補償請求が可能な範囲を始めとする国際補償条約の統一的な適用を助けるとい
うことを唯一の使命としているためである。
補償請求が可能な範囲については、ITOPF ではなく基金の加盟国によって定められたも
のである。
PI クラブは、統一的な条約解釈を重要視しており、ITOPF は偏った意見を出したり、費
用削減したりといった圧力は受けていない。
実際、ITOPF の職員がそのようなことをする動機はない。
MPA の指摘の通り、ITOPF の役割は助言をすることに過ぎず、ITOPF の助言に従うか
どうかは油防除を行う当局が決めることである。PI クラブと IOPC ファンドに対して当局
がその対応を正当だと理由付けられるのであれば、助言を無視したからといって、当局が
補償を得るのが困難になることはない。
PI クラブと IOPC ファンドは、今後も ITOPF を主要な技術的アドバイザーとして続投
させるつもりであり、このことは他の独立した専門家の世界的なネットワークから支持さ
(2001 年 9 月 19 日ロイズリスト)
れている。
ITF、Heng San 号事件の報告書の公開をシンガポールに求める
ITF(International Transport Workers’ Federation)は、シンガポールに対し、Heng San
号事故の詳細な報告書の作成と最終報告書の公開を要求した。
135
シンガポール籍船 Heng San 号は、今年 6 月にインド沖で爆発・炎上した。現場付近を
航行していた船舶が救助しようとしたが、H 号の船長及び乗組員は、商業なプレッシャー
から船内に残って航海を続けることを選んだ。
MPA のスポークスマンによると、同庁が現在 IMO に提出する報告書を作成しているこ
とは確認されたが、完成予定日及び報告書が公開されるかどうかについては明らかになっ
(2001 年 10 月 1 日シッピングタイムズ)
ていないとのことである。
シンガポール 来年新ケミカル研究所を設立
昨年ケミカル産業がシンガポールにもたらしたビジネスは、317 億ドルに上り、急成長を
みせている。これを受け、来年には新たなケミカル研究所が設立される予定である。
新たに設置されるケミカル・サイエンス研究所は、シンガポールのケミカルハブである
ジュロン島に建設される予定である。
シンガポール大学が現在運営している 2 つのケミカル研究センターが、新ケミカル・サ
イエンス研究所に吸収されるほか、少なくとも国内 5 ヵ所の研究所と連携していく予定。
(2001 年 12 月 19 日ストレートタイムズ)
シンガポールでケミカル流出事故が 2 件発生
1. Duyen Phat 01 号
事故発生日時:2002 年 1 月 5 日深夜
事故発生地点:ジュロン港
事故船詳細:貨物船 Duyen Phat 01 号、ベトナム船籍、756gt
ビチューメンの入ったドラム缶、鉄鋼製品、救急車積載
状況:D 号は転覆し、貨物の一部が海上に投げ出された。このため、バース付近が通航止
めになった。セムコ・サルベージがサルベージ作業にあたり、海上に落ちたビチューメン
の入ったドラム缶 40 個を回収した。
シンガポール海事港湾庁(MPA)の声明は以下のとおり。「MPA から巡視艇 2 隻と汚染
防止航空機 1 機が現場に出動。警察沿岸警備隊からも船 1 隻が現場に派遣された。油の流
出はなく、乗組員にもけがはなかった。事故のあったバース付近の交通に影響が出ており、
隣接したバースについても航行安全が保証されるまで使用中止になっている。MPA は現在
現場海域の水路調査を行っている」
ジュロン港が発表した声明によると、荷積み作業はD号の代理店(Imkov Shipping)が
契約している港湾労働者及びクレーンによって行われたものであるとのこと。
MPA は現在ジュロン港と代理店とともに事故の調査にあたっている。
2. Eastern Tera 号
事故発生日時:2002 年 1 月 5 日朝
事故発生地点:シンガポール海域
136
事故船詳細:タンカーEastern Tera 号、パナマ船籍
状況:荷積み作業中の E 号からスチレンモノマー1,000 リットルが流出。MPA の声明によ
ると、沿岸警備隊から 2 隻、MPA から 4 隻の船が出動し、スチレンモノマーは 2 時間程で
取り除かれた。この事故によるけが人は出ていない。MPA は、事故後の周辺大気の状態は
(2002 年 1 月 7 日シッピングタイムズ)
安全範囲内であるとしている。
タイ湾でケミカルタンカーが座礁 油 20 万リットルが流出
事故発生日時:2002 年 1 月 15 日(火)
事故発生地点:タイ・チョンブリ県(バンコクから南東に 70km)沖
事故船名及び詳細:Eastern Fortitude 号、ケミカルタンカー、パナマ船籍
状況:該船は岩に座礁し、20 万リットルの油が海上に流出した。現在タイ海軍の職員や市
民ボランティアが油防除にあたっているが、作業は難航している。港の関係者によると、
油膜は幅 60 メートル、長さは 4 キロあり、油防除には 10 日以上かかるとのこと。油膜は
ラヨーン県の方に東に向かって流れており、これまでに 40 キロの距離を進んできた。別の
港関係者によると、該船の船長が最初の 2 日間油の流出を報告せず隠していたことが、過
去 5 年間で最悪の油濁を招いたとしている。昨日(22 日)には旅行者で賑わうメー・ラン
プーン・ビーチに油膜が到達しており、油膜はリゾート島であるサメット島沖 15 キロのと
ころまで近づいている。該船の保険会社であるロンドンのブリタニアは、油防除作業費や
環境汚染被害を含めた今回の油流出事故で発生した損害にかかる補償金を支払うとしてい
る。
(2002 年 1 月 23 日シッピング・タイムズ、ロイズリスト)
137
第4節 海運・港湾
PSA 公社とバタムが提携協力
シンガポールの南にあるインドネシア・バタム島をシンガポール海域に進入する船の通
過港として開発すると PSA 公社が申し出ている。
バタム港関係者によると、政府が現在 PSA 公社との協力について実行可能性調査を行っ
ている。同関係者は、PSA は活発な港湾活動の一部、特にバース操りが難しい夜間の活動
をバタムの方に移動したいとしている。これまでシンガポールとバタムの間で協力が延期
されていたのは、海軍や警察などとの調整が必要だったためである。
(2001 年 4 月 6 日マリタイムアジア)
PSA 公社とバタムとの提携協力を否定
PSA 公社は、同社がインドネシア・バタム島をシンガポール海域に進入する船の通過港
として開発を申し出ているという報告を否定した。
PSA 公社の Wong Fong Tze 副社長は、バタムの港開発プロジェクトを申し出たことはな
いと発表しており、日中または深夜とも PSA は出入りする船舶の収容に問題はないと話し
ている。
先の報道では、政府が現在 PSA 公社との協力について実行可能性調査を行っているとい
うバタム港湾事務所の Insan Kamil 所長の発言が掲載された。また、同所長は、PSA は特
に夜間の港湾作業をバタムの方に移動したいとしているとも述べていた。
(2001 年 4 月 10 日マリタイムアジア)
港湾公社、中国広州でコンテナ事業合弁会社を設立
シンガポール港湾公社(PSA コープ)は 10 日、中国の広州港務局と、港湾運営の合弁会
社「広州コンテナターミナル社」を設立した。同社は広州地区の 3 つのコンテナバース(停
泊地)を管理運営する。同地区は華南の貨物の輸出拠点にあたり、今後の発展に期待が集
(2001 年 4 月 11 日ビジネスタイムズ)
まっている。
バタム島に船員訓練センターを設置
インドネシア海運総局の局長は、インドネシア船員の向上を図るための訓練センターを
設置する予定で、設置用地にバタム島を選んでいる。
バタム島が選ばれた理由について関係者は、同地はインドネシア船員が外国船に乗船す
る際の勤務基地になっていると述べている。訓練センターの設置は、最近のインドネシア
の IMO ホワイトリスト入りを受けて計画されたものである。ホワイトリスト入りをしたこ
とで、インドネシアは同国の船員を STCW95 に適応させなければならない。
138
(2001 年 4 月 12 日マリタイムアジア)
マレーシア及びアジア太平洋地域のコンテナ取扱量、将来の見通し
マレーシア海事産業研究所(MIMA)が4月の第一週に開催したセミナーで、2006 年と
2011 年のマレーシア及びアジア太平洋地域のコンテナ取扱量について調査が行われた。
国連のアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)と韓国海事研究所(KMI)が第一回調査
を行っている。この予想結果は 2001 年 6 月に発表される予定である。
順位
2006 年の主要国
2006 年予想取扱量
2011 年の主要国
2011 年の予想取扱量
1
中国
34.0
中国
60.0
2
シンガポール
25.6
シンガポール
31.8
3
香港
20.0
香港
22.1
4
韓国
15.2
韓国
?
5
台湾
12.6
マレーシア
6
日本
12.4
7
マレーシア
10.9
19.7
(取扱量の単位:百万TEU)
2006 年と 2011 年のマレーシア港コンテナ取扱量予想
順位
2006 年の主要港
2006 年予想取扱量
2011 年の主要港
2011 年の予想取扱量
1
クラン港
5.0
クラン港
8.9
2
PT ペレパス
3.6
PT ペレパス
8.2
3
ペナン
0.967
ペナン
1.12
4
ジョホール
0.808
ジョホール
0.892
5
K キナバル
0.155
クチン
0.292
6
クチン
0.220
K キナバル
0.206
7
クアンタン
0.057
クアンタン
0.083
(取扱量の単位:百万TEU)
(2001 年 4 月 9 日スター)
オーストラリアがインドネシアを支援
オーストラリア政府は、インドネシアに対し、海洋資源の探査及び保護のための支援を
提供する予定である。これは、インドネシアと海外諸国との関係に海事分野が重要な要素
となっているためである。最近開催されたインドネシア初の海事会議において、在ジャカ
ルタオーストラリア大使館の Leslie Rowe 氏は、オーストラリアが関与すべき領域につい
て、海洋監視と漁業管理がそのうちの 1 つに挙げられると述べている。
139
「インドネシアとオーストラリアの領海線が重なっていることから、海洋監視はとても重
要である。両国の政府は、協力して境界を効率的に管理することに意欲的である」と同氏
は述べている。
オーストラリアは、海洋監視ソフトウェア、人材、巡視艇についてインドネシア政府と
話し合いと持ちたいとしている。一方、インドネシアの海事・漁業大臣は、不法な船の侵
入を防ぐため、インドネシアは MCS(monitoring, controlling and surveillance)システ
ムを導入したと話している。
「このシステムを導入することにより、規制強化や船舶監視システムの基盤構造、巡視艇
の水上レーダー、空中監視を改善することになるだろう」と同大臣は述べている。
(2001 年 4 月 13 日マリタイムアジア)
2000 年にマレーシアの主要港に寄港した船舶の総数を運輸省が発表
2000 年にマレーシアの主要港に寄港した船舶の総数
寄港した船舶の総数
:
32,168 隻
貨物総取扱量
:
1 億 4,200 万トン
マレーシアの各主要港の詳細
順位
港名
寄港船舶数
貨物取扱量
コンテナ取扱量
(百万トン)
(TEU)
1
クラン
12,416
65.2
3,200,000
2
ペナン
7,263
20.4
635,780
3
パシルクダン
6,485
23.5
659,181
4
ビントゥル
4,047
24.8
47,609
5
クアンタン
1,677
6.02
60,376
6
ケママン
280
2.1
?
総数
32,168
142.02
4,602,946
(2001 年 4 月 16 日スター)
主要港を結ぶアジア横断鉄道計画
シンガポールから中国の昆明(クンミン)を結ぶアジア横断鉄道案の技術調査が、現在
進められている。実現すれば、沿線各国の主要港が結ばれることになる。
マレーシア鉄道の Abdul Radzak Abdul Malek 氏は、アジア横断鉄道は、地域の越境貿
易を後押しするだろうと述べている。
この案は、同氏が最近オーストラリアのメルボルンで開催された会議で発表したもので
ある。
現在、タイ国鉄が後援したコンサルタントによって技術調査が進められているが、プロ
ジェクトには援助国からの基金が必要だという。
140
マレーシアが調査委員長を務めており、最終報告が昨年のアセアン運輸大臣会議で提出
された。
現在、ミャンマーとタイが書記を務めており、詳細な調査の実行を担当する予定である。
(2001 年 4 月 18 日ストレートタイムズ)
PSAの北九州港湾事業、出資予定者が「離脱発言」
シンガポール港湾公社主導のコンソーシアムが進めている「ひびきコンテナターミナル
事業」で、日本側の出資予定者の一部が離脱を示唆したもようだ。コンソーシアムの交渉
相手となる北九州市港湾局は、現時点では離脱について報告を受けていないと語り、交渉
(2001 年 4 月 24 日シッピングタイムズ)
の年内締結に期待を示している。
インドネシア・カリムン島の瀬取りビジネスが繁栄 昨年は 200 隻の船が利用
インドネシア・カリムン島の瀬取りビジネスは、過去 2 年で急成長を遂げている。
シンガポールに登録されている Sobeldia International Pte Ltd の運営マネージャーであ
るポール・キャッシュ氏によれば、現在カリムンは効率及び費用効果の高い瀬取り用停泊
地に様変わりしている。昨年 1 年でこの瀬取り停泊地を利用した船は 200 隻とも言われ、
このなかには VLCC やアフラマックス級のタンカー、ガス運搬船、ケミカル運搬船も含ま
れていた。
数年前には規制や司法権が曖昧だったため、瀬取り作業はニパ灯台の付近で行われてい
たが、その後インドネシア当局からの完全な支持を得て、カリムンのタンジュンバライ港
に 20 平方キロの指定停泊地が設置された。
(2001 年 4 月 26 日シッピングタイムズ)
シンガポール政府系 2 社、ブラジルに進出 造船所をオープン
シンガポールとブラジルが海洋産業や観光業を通じて 2 国間関係を強化し、アジアと中
南米の経済協力を先導する方針だ。シンガポールの政府系 2 社(ケップフェルズとジュロ
ン・シップヤード)は、それぞれブラジル企業と合弁でリオデジャネイロに造船所を設立
(2001 年 4 月 25 日ストレートタイムズ)
した。
APL、タンジュンペレパス港への寄港を取りやめ
APL がタンジュンペレパス港への寄港を取りやめたことから、同港を利用するのはマー
スク・シーランドのみとなった。
APL はシンガポールの船会社 NOL の傘下にある。昨年 6 月、APL が西アジアエキスプ
レス便で毎週タンジュンペレパス港に寄港を開始した時には、論争が起きた。
今回の寄港取りやめについて NOL は、寄港を決定した時と同様に商業的観点から決めら
れたことであると話しており、必要な場合があれば今後もタンジュンペレパス港に寄港す
141
ると述べている。
これに対し、タンジュンペレパス港側は、これまでも APL の寄港は不定期であったとし
て、APL 側の毎週寄港していたという APL の言い分を否定している。
(2001 年 4 月 27 日マリタイムアジア)
シンガポール海事協会主催海洋法セミナー 適切な海洋法が求められる
シンガポールで開催されたシンガポール海事協会主催海洋法セミナーにおいて、シンガ
ポール国際法協会の会長であるロバート・ベックマン教授が講演を行った。このなかで、
ベックマン教授は、東南アジア地域は積極的な弁護士協会を持ち、IMOから届く草案文
書に目を通し、それがこの地域に適切なものなのか見極めるべきであると述べた。法律が
増えていくなか、これらの法律がベトナムやカンボジアなどの東南アジアの発展途上国に
適切なのかどうか懸念されている。ベックマン教授は、IMOは新たな法律を多く作成し
ているようだが、アメリカやイギリスに適した法律がアジアには適切でないこともあると
語った。世界の船舶所有権のおよそ半数がアジアにあるというのに、国際法の作成につい
てはIMO及び西洋諸国が優位を占めており、アジアは副次的な地位にある。エリカ号事
件後の環境及び安全に対するヨーロッパの進展は、アジアとヨーロッパの溝を深めると思
(2001 年 5 月 7 日マリタイムアジア)
われる。
繁栄にはシーレーンの安全が不可欠
5 月 8 日、シンガポールで行われた国際海事防衛展覧会及び会議(IMDEX アジア 2001)
の開会式で、シンガポール国務相(国防兼情報芸術担当)のデヴィッド・リム相は、
「シー
レーンの安全は、地域の安全と国際社会の発展に直接的な影響を与えるものである。この
ため、この地域での国際的な協力の強化が重要である」と述べた。
この開会式には、15 名の将官が出席した。
会議には、33 カ国から 2,500 名が参加する見込みである。
また、リム相は「世界のほとんどの国が貿易に関わっている今日、航行の自由及び安全
を確保することは不可欠である」とも付け加えた。
リム相は、天災、事故、犯罪が海上で問題になっている事項であると述べ、これらは越
境した問題であると語った。
各事項について、情報交換、捜索救助、安全確保のために国際協力が必要不可欠である
とリム相は語り、IMDEX アジア 2001 の開催によって、各国の意見交換の機会が設けられ
たと語っている。
IMDEX アジアの開催期間は 5 月 11 日まで。 (2001 年 5 月 8 日ストレートタイムズ)
クルーズ船の船長が TSS 違反船の取り締まりを求める
スタークルーズの船長が、マレーシアとインドネシアの沿岸警備隊に対し、通航分離方
142
式を遵守しない船を罰するように求めている。
これらの違反船は指定通航帯を使用せず、その通航帯を横断しているという。
スタークルーズの客船の中でも最大のスーパースター・バーゴ号(76,800grt、最大 1,960
名収容可能)の Peterstam 船長は、以下のように述べている。
「これまでに数回の正面衝突未遂があったことから、早めの回避行為を余儀なくされてい
る。回避行為のため正規の航路から外れる際に、こちらが座礁する危険性もある。マラッ
カ海峡は多くの通航船を有する輻輳した航路であり、船橋では緊急時に備えてオフィサー2
名が見張りと操船にあたっている」
同船長は、海賊は貨物船を狙うことが多いため、海賊よりも航行安全に懸念しているが、
最近の海賊事件の増加を受け、船上のセキュリティも強化させたと述べている。
マレーシア海事局航行安全課のアーマッド・オスマン課長は、以下のように述べた。
「TSS を通航する船舶は然るべき規則を遵守しなければならない。通航路を反航する船舶
を発見した場合、VTS オペレーターは船長に正規の航路に戻るように伝えることはできる。
しかしながら、それは強制ではない。もし利用しないのであれば、分離帯に入らなければ
よい。安全な速力は船舶交通の状況、気象、水深、漁船の集密度等いくつかの要素に左右
される。多くの命を預かる身として、クルーズ船の船長が衝突事故を懸念する気持ちは理
(2001 年 5 月 21 日スター)
解している」
シンガポールのコンテナ取扱量、域内シェア縮小
シンガポールは今後も東南アジア地域の中心的なコンテナ港の地位を維持する見通しだ
が、域内シェアは 2015 年までに 15%も下がるだろう――英オーシャン・シッピング・コ
ンサルタンツ(OSC)が、最近レポート「2015 年までの東アジア・コンテナ港市場」でこ
う予測した。
東南アジア域内のコンテナ取扱量は、1999 年の 3,170 万 TEU(20 フィートコンテナ換
算)から、2015 年には 1 億 1,000 万 TEU に達する見込み。同期にシンガポールのシェア
は 50%から 34%に低下する見通しだ。
落ち込みの原因としては【1】マレーシア・クランやタイ・レムチャバンなど、他の港へ
の直接寄港が増えている。【2】デンマークの海運大手マースク・シーランドがコンテナ積
み替え業務をシンガポールからマレーシア・ジョホール州のタンジュンプルパス港(PTP)
に移転した影響【3】PTP をはじめとする他の域内港が競争力をつけ、価格競争が激化して
いる――ことなどが挙げられる。
OSC はまた、東アジアの港湾が 1998 年の経済危機後に急速に回復した様子を報告して
いる。日本、韓国、中国北部、ロシア極東部を含むアジア北東市場のコンテナ取扱量は 1999
∼2000 年に 30%近くも増加。
香港、中国東部・南東部、
台湾を含む中国圏は 1999 年に 24%、
2000 年に 35.5%も伸びた。
香港のコンテナ取扱量は、1995∼2000 年に 44%もアップして、
1,810 万 TEU に達した。
143
2000∼2005 年にさらに 25∼37%伸び、2,270 万∼2,470 万 TEU に達する見込み。
(2001 年 6 月 22 日 NNA)
マレーシア 国家海事当局の設置遅れる
現在持ち上がっているマレーシア国家海事当局の設置は、2002 年に実行される予定であ
る。これは「コンテナアジア 2001」の開会の席でリン運輸大臣が述べたもの。今年 2 月マ
レーシア政府は、国内に 9 ヶ所ある海事当局を 2001 年後半に包括するという計画を発表し
ていた。これについて、リン運輸大臣は、計画は現在進行中で、来年には準備が整うだろ
うと述べている。提案されているマレーシア港湾委員会に対しては、マレーシアの港湾私
有化計画の下に交わされた契約が変更されるのではないかと恐れたターミナル運営者から
非難の声が上がった。タンジュンペレパスやウエストポートなどの海外投資を受けている
港に対して、特に懸念が示されている。マレーシア港湾運営会社連盟は、すでに政府に対
して懸念を表明している。連邦に近い情報筋によると、現在政府からの返事を待っている
状態で、もし自分達の意見に注意が向けられない場合は、ほかの手段で意見を訴えていき
たいとしている。リン大臣は、新海事当局は今あちこちに向いている方向を一本にまとめ、
国内全ての港と優先開発プロジェクトを担当する予定であると話している。
(2001 年 6 月 29 日マリタイムアジア)
インドネシア海軍がマレーシアの漁師に現金を要求
マレーシア当局の発表によると、インドネシア海軍はインドネシア領海に侵入したマレ
ーシアの漁師に対し、現金を要求してきたとのことである。
マレーシア防衛省への報告では、インドネシアの海軍職員がマレーシア漁師に対し、解
放されたいのなら3万∼4万マレーシアリンギの支払うよう要求したとされている。
マレーシア防衛大臣は報告を受け、現在調査を進めているところであるが、他国の海軍
職員が関与していることから、事件の真意を問うのは難しいとしている。
インドネシア海軍への申し立ては、6 月 25 日にインドネシア海軍によってマレーシア漁
師 1 名が銃殺されたことから持ち上がった。インドネシア海軍はこの事件について、警告
発砲を行ったが、この漁船は停止せずインドネシア領海に侵入したため、発砲を余儀なく
されたとしている。しかし、マレーシアの漁師等は当局に対し、これまでインドネシア海
軍はインドネシア領海内でマレーシアの漁師を逮捕し、その保釈金を要求してきたと述べ
(2001 年 7 月 7 日ストレートタイムズ)
ている。
クラ運河計画、最終的承認は得ず
昨日(7 月 17 日)
、タイの外務大臣は、タイがクラ運河の実現可能性調査を実施するから
といって、タイ政府が計画を進めると決定したわけではないと述べた。
このプロジェクトは、タイ湾とアンダマン海をつなげるというもので、実現すればシン
144
ガポール港が大きな影響を受けると言われている。
これはシンガポールでの公開講義の席で出された質問に答えたもので、同大臣は、
「未だ
環境への影響や周辺国家への影響などを含めた実現可能性調査は完了されていない。科学
的な視点から見たプロジェクトのよい面と悪い面はわからない」としている。
(2001 年 7 月 18 日ストレートタイムズ)
インドネシア国営旅客船会社 PELNI、ドイツの財政援助を打ち切る
インドネシア国営旅客船会社 PELNI は、23 隻目の船舶に対するドイツの会社 KfW から
の財政援助を打ち切った。しかし、この 23 隻目の船舶は調達される見込みで、このほかに
計画されている 70 隻に及ぶ船舶の調達は続行される。これらの船舶については、今後、当
初の運用リース計画の下調達される予定で、ギリシャ、イタリア、日本がリース元の候補
に上がっていると PELNI の関係者は述べており、KfW 側は今回の措置を受け入れている
(2001 年 7 月 20 日マリタイムアジア)
と付け加えた。
シンガポールとフィリピンが訓練に関する MOU に署名
8 月 25 日、海上安全と船員の能力向上に焦点を置いた訓練、海技免状、見張りに関する
MOU がシンガポールとフィリピンの間で署名された。
署名式には、シンガポールのゴー首相、シンガポールを 3 日にわたって訪問中だったフ
ィリピンのアロヨ大統領が出席した。MOU は、シンガポール籍船に勤務する約 5,500 人の
フィリピン人船員に影響を与えるとみられる。
運輸情報通信省の発表によると、この MOU によって、シンガポール籍船が船員を雇う
際にフィリピンで発行された海技免状が認められるようになる。
詳しい内容は明らかにされていないが、MOU の最も重要な役割は有効でない海技免状を
排除することである。
今後はシンガポール籍船が「資格をもった能力の高い」船員にしっかり管理されるよう、
フィリピンの海事訓練所の検査をシンガポールが実施できるようになる。
このほかに MOU には、法的責任、船員の能力・海外での健康状態を改善するための見
張りのシフト制、休息時間の条件等が含まれている。
(2001 年 8 月 27 日シッピングタイムズ)
ブルネイもフィリピンの海技免状を認める
フィリピンは、シンガポールに続いてブルネイとも MOU に署名し、ブルネイでもフィ
リピンで発行された海技免状が有効になる。MOU は先週末、アロヨ大統領が両国を訪れた
(2001 年 8 月 28 日マリタイムアジア)
際に交わされた。
145
オーストラリア 難破の中東難民、政府が受け入れ拒否
400 人以上の中東難民を乗せたノルウェー船籍の貨物船が、入国を目指して豪州領クリス
マス島近くに停泊している。不法入国を企てる人々が後を絶たないことから、ハワード首
相は、これら難民を受け入れるつもりはないとの強い姿勢を示している。これら難民の乗
った船は 26 日午後遅く、インドネシア領海で難破。これを、通りかかったノルウェー船籍
の貨物船『タンパ』が救助した。
『タンパ』は当初、インドネシアのジャワ島に向かっていたが、救助された難民らが豪
州に行くよう強要したという。
豪海上保安局(AMSA)の広報担当官は、同船舶の船長がこれに逆らうことができない
状態にあると説明。
船長の話では、難民のうち、非常に興奮した様子の5人がインドネシアに行くことを強
く拒否。要求をのまなければ海に身を投げると脅したという。
難民の多くは、アフガニスタン人とみられている。27 日午後現在、
『タンパ』はクリスマス
島の北西 17 海里に停泊している。
この件について、ハワード首相は、不法入国者を乗せているとみられる船を受け入れる
ことはできないと発言。国際法上、同船舶は難破した海域から最も近いインドネシアの港
に向かうべきだと主張した。
同首相はまた、豪州政府は人道的援助を惜しまないとした上で、この問題は今や、イン
ドネシアとノルウェー政府に帰すると述べている。
「密入国しようとしている人々に、豪州
は人道的で、礼儀正しい国だが、決してつけ込まれやすくはないことを知ってほしい」(同
首相)
。野党労働党も同首相の方針を支持している。
同首相の発言の背景には、最近になって不法入国者が増えている現状がある。
16 日には、イラク人を中心とする難民 350 人が同島に漂着。今回のノルウェー船に乗っ
た不法入国者のほかに現在、約 500 人を乗せた船がクリスマス島を目指しているとみられ
ている。
豪州政府の決断に対し、
『タンパ』を所有する船会社の副社長は、この問題をノルウェー
政府にゆだねる考えを示している。在豪ノルウェー大使館も今のところ、本国の判断を待
つとコメントしている。
7月以降、豪州に不法入国した難民は既に 980 人に上っている。
(2001 年 8 月 28 日 NNA)
ひびき港開発、小泉首相が後押し
シンガポール港湾公社(PSAコープ)率いるコンソーシアムと北九州市との間で協議
が進められている「ひびきコンテナターミナル事業」について小泉純一郎首相は、「日本経
済回復のきっかけとなる3大インフラ開発の一つである」との見解を明らかにした。同事
業は一部出資予定者の離脱がささやかれるなど、一時は先行きが危ぶまれていたが、小泉
146
首相の支持表明を受け、計画が加速するとみられている。PSAコンソーシアムは昨年 12
月末、同事業への参加を希望する複数の民間事業者の中から、北九州市当局との優先的な
交渉相手として選出された。双方はその後、事業の詳細について話し合いを進めていたが、
日本港運協会会長を務める尾崎睦氏が、自身が経営する港湾運送大手「上組」を同コンソ
ーシアムから引き揚げると発言したことで、交渉の行方が懸念されていた。
小泉内閣はこのほど、ひびきコンテナ事業は日本で最初のPFI(民間資金などの活用
による公共施設の整備)事業であるとした上で、
「日本の国家プロジェクト」に位置付ける
方針を明らかにした。小泉首相は声明で、「われわれは都市再開発問題について重大な決定
を下した。関係閣僚にはそれぞれの構想を積極的に押し進めるよう要請した」と語った。
北九州市当局者も、
「小泉内閣が経済回復や構造改革を推進する上で、ひびき事業を最重要
プロジェクトと定めたことは、PSAグループとわれわれが政府の強力な支援を取りつけ
たことを意味する」と、その意義を強調。PSAとの正式契約の早期実現に前向きな姿勢
をみせている。
ひびきコンテナターミナル事業の出資比率は、北九州市が 10%、PSAが 60%、そのほ
かの企業が 30%となっている。北九州港は日本で6番目に大きな港湾で、黄海海域での物
流ハブを目指し、1997 年 12 月から再開発が進められている。ひびきターミナルは北九州
市若松区にあり、完成時には 12 のコンテナバース(停泊地)を備えた日本初の 24 時間操
(2001 年 9 月 13 日 NNA)
業港となる見込みだ。
シンガポール、第二クルーズセンター建設計画
9 月 11 日にアメリカでテロ事件が起こって以来、全世界のクルーズ産業は急激に下降し
ているが、シンガポールは第二クルーズセンターの建設調査をコンサルタントに依頼した。
第二クルーズセンターの建設案は、2 年前に浮上した。現存するクルーズセンターでは収
容できない総トン数 100,000 トン級の超大型船が寄港することを見込んで、これに対応で
きるよう目指したもの。
先週行われたシンガポール海運協会の 16 周年記念式の席で、リム・スイセイ国務相(運
輸情報通信担当)は、
「シンガポール海事港湾庁(MPA)は、クルーズ産業が今後も成長す
ると予想しており、マリーナサウスにより大きなクルーズ船が寄港できる新たなクルーズ
センターを建設するためのフィージビリティ調査をコンサルタントに依頼した」と述べた。
9 月 11 日の事件以降、全世界のクルーズ産業は急激に減速しており、シンガポールも今
年の同国への旅行者の数は、5%減少の見込みだと発表した。
シンガポールのクルーズ産業は、スタークルーズ社の登場によって 1990 年代に急速に成
長したが、過去 2 年間は成長が落ち込んでいる。
現存するクルーズセンターを運営している PSA コープは、2000 年には 1,213 隻のクル
ーズ船を取り扱ったが、外国からの乗客は 99 年に比べて 12.6%減少した。
第二クルーズセンターは、別の運営会社に賃借されるとみられる。
147
9 月 11 日の事件以前から、PSA コープのヨー・ニンホン会長は、第二クルーズセンター
には十分な需要がないとして、新たなクルーズセンターの計画に冷ややかな反応を示して
(2001 年 10 月 4 日ロイズリスト)
いた。
来年 2 月に入札開始
バタム港拡大プロジェクト
バタム産業開発局(BIDA)は、Batu Ampar 一般貨物・コンテナ港の拡大プロジェクト
の国際入札を来年 2 月から開始する予定である。
同局の会長によると、現在 9 社の外国企業がフィージビリティ調査を実施しており、4 ヵ
月後に終了する予定である。その後、建設プロジェクトの国際入札が行われる見込みであ
る。
現在、バタムの主要港である Batu Ampar 港では、一年で 7 万 TEU のコンテナ、300 万
トンの一般貨物を取り扱うことができる。
同会長は、将来的には需要が 20 万 TEU に達すると予想されているが、現存する施設で
は対応できないと述べている。
この 2,400 万米ドルのプロジェクトの目標は、5 年後に同港が 100 万 TEU のコンテナと
500 万トンの一般貨物に対応できるようにすることである。
(2001 年 10 月 9 日マリタイムアジア)
フィリピン沿岸警備隊 近代化計画に着手
フィリピン沿岸警備隊は、新たな船舶、航空機、海上安全装置の取得を含めた5年にわ
たる近代化計画に着手した。日本からは、2隻のブイテンダーが提供される予定である。
現在、フィリピン沿岸警備隊が所有するブイテンダーは日本で建造された1隻のみで、こ
の1隻で国内 479 の灯台の点検にあたっている。このほか、オーストラリアから Osprey
クラスの全長 56 メートルの捜索救助船2隻、ノルウェーから火災や油濁への対応を強化す
るための多目的船 6 隻、フランスから Dauphin のヘリコプター4機、カナダから
Bombardier の水上飛行機を取得する予定である。
(2001 年 10 月 17 日マリタイムアジア)
エバーグリーン コンテナハブを PSA からタンジュンペレパス港に移転予定
Containerisation International’s の発信している ci-online からの情報によると、台湾海
運大手エバーグリーンは、同社のコンテナハブをシンガポールからマレーシアのタンジュ
ンペレパス港(PTP)に移転する予定である。
今月初めに PSA に対し、エバーグリーンから使用終了届けが出されたとのこと。
これによって、PTP のコンテナ取扱量は年間 120 万 TEU の増加が見込まれ、東南アジ
アにおける積み替え事業の状況に変化をもたらすと予想される。PTP が低料金で効率の良
いことが、今回の動きの要因と思われる。
148
エバーグリーンは、すでに PTP との MOU に署名したと思われるが、最終的な決断はま
だ下されていない模様。
シンガポールにとっては、マースク・シーランドに続く第二の打撃となる。昨年 12 月の
マースクの PTP への移転によって、
マレーシアのコンテナ取扱量は 200 万 TEU 増加した。
PTP 側は、この件について肯定も否定もしなかったが、引き続き大手海運会社の引き寄
せを強化したいと述べている。
PSA のスポークスマンは、同社はこの件についてコメントできないとしている。
声明では、
「PSA が業務計画や顧客との取引についてコメントすることは、契約で禁止さ
れている」と述べられた。
エバーグリーンからのコメントは得られなかった。 (2001 年 10 月 23 日ロイズリスト)
PSA エバーグリーン社を引き止め
産業筋の情報によると、PSA コープは台湾海運大手のエバーグリーン社に対し、PSA か
らマレーシアのタンジュン・ペレパス港(PTP)での移転を止めるよう対抗オファーを出
している。
エバーグリーン社は、PSA に長期ターミナル契約の終了届けを提出し、東南アジア向け
のトランスシップ事業を PTP に移転するため、PTP との MOU に署名した。
情報筋によると、PSA は台北でのエバーグリーングループの首脳会議に代案を提示した
模様である。世界第二の海運大手を顧客から失うことを考えれば、PSA が代案を提示する
のは不思議ではない。
海運関係者のなかには、PTP への移転までにまだ時間があることから、PSA と交渉する
目的で、エバーグリーンが PTP への移転をちらつかせているのではないかとする声もある。
(2001 年 11 月 5 日マリタイムアジア)
海事業者は提携・合併せよ:経済開発庁
「シンガポールの海事産業は国際的な競争力を強化するために、同盟や合併、アウトソー
シング、造船所の共有などを検討しなくてはならない」経済企画庁(EDB)のコー・ケン
ホア会長はこのほど、オランダのセントラル・インダストリー・グループが西部ジュロン
に建設した造船所の正式開幕式のスピーチでこうした考えを明らかにした。
シンガポールでは先月 24 日、セムコープ・インダストリーズとケッペル日立造船所が、
国内造船事業の合理化や、両社の提携の可能性をめぐって協議を進めていることを明らか
にしたばかり。コー会長は国内に海事関連会社が 100 社、海事建設会社が 200 社を数える
ことを挙げ、中でもこれらの大部分を占める中小企業について、戦略提携や企業連合の結
成、合併を真剣に検討するよう呼び掛けた。
セントラルは同造船所の建設におよそ 1,000 万シンガポールドルを投資。今年 5 月から
操業を開始していた。発注元の要求する設計・製造に従って作業を請け負うため、低コス
149
トかつ効率の高いサービスを提供できる点が特徴で、顧客にはケッペル日立造船所、ジュ
ロン・シップヤードなどが含まれるという。
(2001 年 11 月 5 日シッピングタイムズ・11 月 6 日 NNA)
世界銀行、マラッカ海峡の MEH に援助するよう求められる
アジアの船主グループは、現在提案されているマラッカ海峡の MEH(マリン・エレクト
ロニック・ハイウェイ)について、海運産業が財政負担を負うことのないよう資金供給機
構を確立するよう求めた。
MEH は、電子海図のネットワークと AIS 装置を利用した情報の即時更新を合体したも
のである。
IMO は、海峡内の海上安全の向上と環境保護のため、MEH を実行すると思われる。
MEH プロジェクトについては、世界銀行がその開発に資金を提供し、海峡の利用者が毎
年使用料を支払うという提案が出された。
先週開かれた第8回アジア船主フォーラム・航行安全環境委員会(SNEC)では、MEH
について「注目するに足る」と述べられたが、導入される際にかかる費用に関して懸念が
示された。
「SNEC は MEH プロジェクトの提議者に対し、海運業界が財政負担を負うことのないよ
う資金供給機構の確立を考慮するよう求める。」
提案されている MEH の使用料(年間)は、1,000US ドルから 5,000US ドルの間だと言
われているが、この金額を船舶毎または会社毎に支払うのかははっきりしていない。
(2001 年 11 月 7 日ロイズリスト)
シンガポール ひびき港開発、PSAの参入ほぼ確実に
シンガポール港湾公社(PSAコープ)率いるコンソーシアムが北九州市と話し合いを
進めている「ひびきコンテナターミナル事業」は、今年4月にコンソーシアムからの離脱
を表明した日本側有力者が、同事業を認める方針を示したことで、最終決着へとはずみが
ついた。関係者は年内の基本合意、来春の最終契約に期待を示している。ひびきコンテナ
ターミナルは 1995 年に日本政府がまとめた港湾計画の長期ビジョンに基づき北九州市若松
区に建設されている。完成時には 12 のコンテナバースを備え、処理能力は年間 150 万TE
U(20 フィートコンテナ換算)に達する見込み。
東京と中国・上海の中間点(両地まで直線で 1,000 キロメートル)に位置し、中国の青島
(山東省)・新港(河北省)・大連(遼寧省)といった黄海沿岸の主要港から航路約2日の
距離にあるという地の利を生かし、黄海圏∼北米・欧州間の貨物の中継拠点として利用さ
れる予定だ。
PSAと日本企業 16 社から成るコンソーシアムは同事業への参画をめぐり、昨年 12 月末
から北九州市当局と協議していたが、今年3月半ばに同 16 社のうちの1社である「上組」
150
の社長で、日本港運協会会長を兼任する尾崎睦氏が同コンソーシアムを離脱する意向を示
したため、交渉の先行きが危ぶまれていた。
19 日付『シッピング・タイムズ』によると、尾崎氏は先週の記者会見で、PSAが同事業
の運営企業の最大株主(持ち株比率 60%)になることを認める意向を明らかにしたという。
3月の離脱表明の時点で同氏は、「PSAは貨物の積み替えをすると言いながら、近港の貨
物を『横取り』しようとしている」などと非難していたとされる。同紙は日本側消息筋の
話として、今回同氏が容認姿勢に転じたのはPSAとの直接対話によるものではなく、各
層の日本政府筋との協議によってもたらされたとしている。
ひびき港事業については先ごろ小泉純一郎首相が「日本経済回復のきっかけとなる3大イ
ンフラ開発の一つである」と述べ、国家プロジェクトに位置付ける考えを表明したことで、
改めて脚光を浴びるといった経緯もあった。
北九州市当局の担当者は日本港運協会の事業支援表明について、
「非常に素晴らしいニュ
ース」と述べ、2003 年 10 月のターミナル操業に向け、必要な交渉が大きく前進すると期
(2001 年 11 月 20 日 NNA)
待感を示した。
マレーシア高官:エバーグリーン社、近いうちに星からジョホールへ移転
台湾の海運大手エバーグリーン社は、近いうちにシンガポール港からジョホール州のタ
ンジュン・プルパス港にコンテナハブを移転するとマレーシア・ジョホール州のガニ・オ
スマン長官が述べた。
「タンジュン・プルパス港(PTP)はシーレーンから近く、コスト面での競争力が高い。
デンマークの海運大手マースク・シーランド社がシンガポールから PTP に移転したのが、
その証拠である。同じく海運大手である台湾のエバーグリーン社も、近いうちに移転して
くる予定である」
エバーグリーン社のシンガポール港から PTP への移転について、政府高官がコメントす
るのは初めてのことである。
ある情報筋によると、エバーグリーン社は、来年 8 月までに PTP に移転する旨記した
MOU に署名したとのことである。
エバーグリーン社とその子会社であるユニグローリーは、毎年シンガポール港を通じて
120 万 TEU のコンテナを運搬している。昨年のマースク社の移転によって、200 万 TEU
のコンテナが PTP にもたらされた。エバーグリーンとマースク、両社のコンテナ量の合計
は、シンガポール港が昨年取り扱ったコンテナ総数 1,700 万 TEU の 19 パーセントを占め
る。ジョホール州政府は、マハティール首相の南部地域を海運・航空ハブにするという提
唱を受けて、同州のスナイ空港をアップグレードするほか、その優位な立地条件を生かし、
世界に通用する港のサービスを提供していく予定で、これによってシンガポールに多少の
(2001 年 11 月 26 日ビジネスタイムズ)
影響が出るかもしれないとしている。
151
MPA 長官 IMO 理事会議長に選ばれる
11 月 30 日、シンガポール海事港湾庁(MPA)のチェン・ツーペン長官が、IMO 理事会
の議長に選ばれた。
チェン長官は、29 カ国の理事国によって議長に選ばれた。MPA の声明によると、中国が
チェン長官を推薦し、イギリスとカナダがこれを支持した。
前回の理事会議長は、オランダの G.A. Dubbeld 氏。
チェン長官は、IMO 問題の取扱いに 10 年以上の経験を持つ。議長として、今後 2 年間
IMO を先導し、組織的・財政的改正を実行していく。
(2001 年 12 月 1 日ストレートタイムズ、2 日シッピングタイムズ)
アメリカ海軍による立ち入り検査中にシンガポール船の船員が負傷
先週、パキスタン沖の北アラビア海を航行中のコンテナ船 Kota Sejarah 号(シンガポー
ル PIL 社チャーター)にアメリカ海軍が立ち入り検査のため乗り込んだ。この時、K号の
乗組員 6 名が 30 分にわたって両手を縛られ、甲板にうつ伏せになるよう強いられた。PIL
のスポークスマンによると、船長の報告では、船長及び乗組員は検査に協力したが、乗組
員 1 名が指に傷を負い、もう 1 名はアメリカ海軍の兵士の一人に足を数回に渡って蹴られ
たとのこと。結局、この検査では、不法な武器及びテロリストは発見されなかった。
(2001 年 12 月 12 日ビジネスタイムズ)
海事当局、燃料 2 業者の営業差し止め
シンガポール港で供給される船舶用燃料が汚染されていることが判明したのを受け、海
事港湾庁(MPA)は、燃料供給業者とタンカー運営業者に対する捜査を進めている。これ
により、すでに 2 つの燃料タンカー業者が、汚染燃料を供給していた疑いで一時的な免許
停止処分となった。
免許停止になったのは「SB469B MT アレクサンドラ」と「SB435HMT メンフィス」の
2 タンカー。MPA は先月、シンガポールを拠点にする船舶用燃料(バンカー)検査会社 DVN
ペトロリウム・サービス(DNVPS)から、バンカーの一部に汚染物資が含まれているとの
報告を受けており、今回 2 社の処分に踏み切った。
業者向けの文書のなかで MPA は、
「原因と特定し、シンガポールのバンカー港としての
評価を守るため」と処分に踏み切った理由を説明した。
12 日付けビジネスタイムズによると、シンガポール港はバンカー供給量が年間 1,800 万
トン以上(50 億シンガポールドル相当)に達し、世界でも最大級の燃料供給港となってい
る。
同紙はバンカーに含まれていた物質が「ISO(国際標準化機構)8217」で使用禁止が明
示されている石油系溶剤や有機塩化物だと推測している。
MPA は DNVPS からの報告を受け、ただちに詳しい調査に着手。現在までのところ、汚
152
染物質を含んでいるとみられたサンプルは、いずれも「ISO8217」の基準を満たしている
とされるが、MPA は捜査を継続しており、結論が出るまでにはまだ時間がかかるもようだ。
バンカー業界に当局の捜査のメスが入るのは今回が初めてではない。今年 10 月 8 日には
「独立タンカー・オーナー国際協会(INTERTANKO)のシンガポール支部がバンカー供
給業者が燃料に空気を入れてかさ増しする「カプチーノ効果」を悪用しているとして、MPA
に取り締まりを求めた。その後、捜査が進み、先月 20 日にバンカー計量業者 5 社が供給量
のごまかし容疑を認める結果となった。
また現在でも、「カプチーノ効果」を使った燃料を供給したとされる複数の業者に対する
(2001 年 12 月 13 日 NNA)
捜査が引き続き行われているという。
MPA:船会社は海上での米海軍による立ち入り検査を覚悟すべし
シンガポールがチャーターした船にアメリカ海軍の特殊部隊が立ち入り検査のため乗り
込んだことを受け、シンガポール海事港湾庁(MPA)は、海運団体に対し米軍や連携軍に
よる立ち入り検査に全面協力するよう求めた。
シンガポール大学のロバート・ベックマン教授によると、アメリカの行動が合法であっ
たのかどうかは、いくつかの要因によると述べている。
一つは立ち入り検査の行われた場所である。先日のケースは、パキスタンの領海から 12
海里離れた国際海域で発生した。
国際海域における船舶の司法権は、旗国にあるとされており、今回のケースではパナマ
に司法権があるとされる。
アメリカ海軍は特殊な状況を除いて、他国の船舶に無断で乗り込むことはできない。
例えば、湾岸戦争時にアメリカ海軍が船舶に対し立ち入り検査を実施したことがあった
が、これは国連安全保障理事会決議を根拠に行われたものであり、合法であった。
最近、安保理は、テロ組織の資金を絶つための措置などからなる包括的なテロ対策決議
を採択した。
しかし、アメリカが今回の立ち入り捜査を正当化するために、このテロ対策決議を利用
できるのかどうかは不明である。
ベックマン教授によると、ほかに国際海域で船舶に乗り込むことのできる場合として、
船舶が海賊行為、奴隷売買、薬物密輸などに関わっている場合が挙げられるとのこと。
「9 月 11 日の事件を受けて、テロ行為がそのような例外のリストに加わったと言えるかも
(2001 年 12 月 15 日ストレートタイムズ)
しれない」と同教授は述べた。
シンガポールのコスト削減や強制的な廃棄手順を避けた深刻なバンカー問題
業界筋の話によると、シンガポールの汚染船舶用燃料(バンカー)問題は、当初の予想
より深刻なようである。
過去3ヶ月にわたり、異常に多くの船舶が、燃料を取り除くためのデバンカー装置を要
153
求しているとのことである。
「ビジネスタイムズ」は、シンガポールで一度燃料を補給した船舶が、燃料を取り除か
なければならなくなったというケースが最近急増していると記された文書も入手している。
業界筋によると、商業的な解決方法に至っているため、ほとんどがシンガポール海事港
湾庁(MPA)に苦情を申し出ていないとのことである。このため、デバンカーの理由につ
いて、調査は行われていない。
アメリカの石油評価試験所 Visma Lab 社はシンガポールのバンカー燃料に関する報告書
を発表し、シンガポールで補給されたバンカーに有毒廃棄物が混じっていたとした。コス
ト削減や強制的な廃棄手順を避けたことがその理由である。
過去数週間にわたり、主にシンガポールで、汚染された、または粗悪なバンカーの影響
で多くの船舶が機器の故障に見舞われていると報告書には記されていた。
同試験所は汚染の出所について明らかにしていないものの、信頼のおける筋からの情報
では、このようなケミカルを地元の業者から入手するのは困難なため、海外から持ち込ま
れたのではないかとのことである。
汚染された燃料を検査したところ、危険な有毒物質及びエンジンに損傷を与える工業用
洗浄溶剤が検出された。
このような石油溶剤は、試験所による通常の検査では検出されず、バンカーとの混じり
やすいため、「手違いまたは利益を上げるために混ざられたのではないか」と報告書では述
べられている。
これらの汚染した燃料が普通にシンガポールで売られていたのかは明らかではないが、
最近になるまで発見されていなかった。
シンガポール海事港湾庁(MPA)は、燃料タンカー業者を免許停止にして依頼、捜査を
進めている。
(2001 年 1 月 4 日ビジネスタイムズ、シッピングタイムズ)
シンガポール 公認バンカー供給業者のリスト作成へ
シンガポール海事港湾庁(MPA)とシンガポール海運協会(SSA)は、不当なバンカー
の汚染問題を受け、バンカー供給業者の公認システムを計画している。
また、MPA は現在責任者の追及とバンカー汚染源の追跡を行っていることを明らかにし
た。
MPA によると、バンカー供給業者の公認システムには、品質と信頼性を高め、不正行為
を防止するための減点システムが含まれるとのことである。
MPA は、当地におけるバンカーの汚染問題を深刻に受け止めており、汚染されたバンカ
ーのサンプルも入手済みで、環境省等とともに調査を進めていくとしている。
(2002 年 1 月 7 日シッピングタイムズ)
154
交通大臣会議に関する現地報道
交通問題を話し合う大臣会合が、東京で開催され、米国、欧州各国、オーストラリア、
韓国、シンガポールなど計 20 カ国が参加した。
2日間にわたる会合では、
「海上安全の強化と海洋汚染の防止のためのサブスタンダード
船の排除」を目指した行動計画が確立された。
海洋汚染に関するセッションでは、シンガポールのヨー運輸大臣が議長を務めた。
サブスタンダード船が多くの問題を引き起こしていることは、IMO(国際海事機構)も
認めているが、現存する条約が十分に施行されていないことから、いまだにサブスタンダ
ード船の横行により航行、人命財産の安全面が脅かされているのが現状である。
「寄港国の対応を強化することで、サブスタンダード船の影響を緩和することは可能だと
わかっているが、旗国の強固な対応とともに船主と運航者の責任ある対応が得られれば、
より有効にサブスタンダード船を排除できるはずである」という IMO 及び欧州委員会の支
持を得たステートメントが発表された。
参加国は、旗国、寄港国、海事産業の利害を考慮に入れた、新たなサブスタンダード船
使用取り締まり対策を立案することに合意した。
船級協会の役割が再認識され、船級協会が旗国に代わって行う検査を「適当な監査及び
監督を通じて、監視することの重要性が強調された。
参加国は IMO に行動計画を提出することに合意し、ILO(国際労働機構)などほかの国
際機構との協力を呼びかけた。このほか、サブスタンダード船の取り締まり及び使用排除
を目指した国際条約がきちんと施行されるよう促進することに合意した。
今回の会合では、都市の交通問題についても話し合いが持たれ、扇大臣が議長を務め、
(2002 年 1 月 17 日シッピング・タイムズ)
低公害車の開発について論議された。
ジョホール・ハブ構想、着実に進行
ジョホールを輸送のハブに――。昨年 10 月、2002 年度予算案を発表した時のマレーシ
ア・マハティール首相の演説内容が、着々を実行に移されつつある。マレーシア政府は 21
日、○ジョホール州のタンジュンプルパス港(PTP)拡張○同州のスルタン・イスマイル
空港(スナイ空港)とクアラルンプール国際空港(KLIA)
、PTP 港、ジョホール港の貨物
取扱業務を統合――など 3 つのプロジェクト内容を明らかにした。
PTP を拡張することにより、政府は「6 つの波止場を増やすことができる」
(マハティー
ル首相)としており、同港と内陸を結ぶ鉄道整備との相乗効果で取扱量を大幅に増加させ
ることができるとみて、約 8 億リンギを投じ KLIA とジョホール州の海運、空運の拠点を
2006 年までに統合させる計画を発表した。
この計画には、世界クラスの貨物施設の建造、鉄道・道路の建設、スナイ空港の貨物取
扱量を現状の 7,000 トンから 10 万トンにまで拡大させる(2008 年をめど)
、などの案が含
まれている。
155
同計画を受け、スナイ空港を運営するスナイ・エアポート・ターミナル・サービスは独
ホキテフ・エアポートの航空部門との契約に合意した。
一方、ジョホール州政府は同州の土地 1,600 ヘクタールあまりを石油化学コンビナート
を建設するための用地として提供するという内容で、シーポート・ターミナルと基本合意
した。同コンビナートには発電所や給油所も設けられる予定で、PTP の機能拡大の補助が
大きな目的とされている。
ジョホール州に石炭火力発電所を建設する計画については、電力大手テナガ・ナショナ
ルと SKS ベンチャーズがすでに合意に達している。
この日、ジョホール州の出入国管理所を訪れたマハティール首相は、都市開発を手掛け
る GBS 社から、コーズウェイに代わる新橋の建設と出入国管理所を新設する構想(サザン・
ゲートウェイ・プロジェクト)の説明を受け、大筋で合意。
「政府は早急に結論を出す。こ
のプロジェクトはすべて有益だ」とコメントした。
ジョホール州とシンガポールを結ぶ新たなプロジェクトは、深刻化しているコーズウェ
イの渋滞を緩和させることを目的に、マレーシアの国土に高さ 25 メートルの高速道路を建
設するというもの。この道路をコーズウェイのシンガポールとの国境地点まで結んだ後、
既存のマレーシア側のコーズウェイは取り壊す予定となっている。
国境を結ぶ道路の建設について、シンガポール政府との交渉の必要性を問われたマハテ
ィール首相は、
「これはシンガポールには関与しない。マレーシア側の問題だ」とし、マレ
ーシア国内で工事を行うのに、シンガポール政府に許可を得る必要はない、との見解を示
した。
港の拡張、ジョホール州近辺の環状道路を含む高速道路の整備に加え、政府はマレー鉄
道の複線化に着手していることから、マハティール首相はジョホール州を近隣諸国の輸送
拠点とする構想に自信をのぞかせている。鉄道の複線化が進み、マレー鉄道に電車を走ら
せれば、クアラルンプールからシンガポールまでの移動時間は 2 時間 30 分程度となる(マ
ハティール首相)ことから、「PTP は近隣国のハブになる」と強調している。
(2002 年 1 月 23 日 NNA)
米向け船舶貨物の保安強化へ
米政府は、テロ対策の一環として、米国向け船舶貨物に対する保安強化を各国に要請す
る見通しだ。特に核兵器製造に使用される恐れのある関連部品の持ち込みに対する調査を
強化するのが狙い。
同保安強化策は、米国関税局のロバート・ボナー長官がこのほど米政府に提案したもの。
世界 10 大港を抱える各国政府と協力し、世界レベルでコンテナ輸送の保安を強化するよう
示唆した。対象港は、シンガポールのほか、香港、中国・上海、台湾・高雄、韓国・釜山、
東京、オランダ、ロッテルダムなど。世界 10 大港の米向け貨物取扱量は、世界全体のおよ
そ半分、このうちシンガポールは 5%を占めている。
156
同長官は、X 線検査のほか保安に適した梱包機材の開発・管理を充実させることや、米国
からの専門調査団派遣などを通じて保安対策を徹底するよう要請した。また、昨年 9 月の
テロ事件が航空業界に与えた衝撃を考慮し、テロの脅威が海運業界に及ぶ可能性も熟慮す
(2002 年 1 月 23 日 NNA)
るべきだとしている。
エバーグリーン 海運ハブをシンガポールからマレーシアに移転
台湾船社エバーグリーンは、現在利用しているシンガポール港に替え、近接するマレー
シアのタンジュン・プルパス港(PTP)の利用を開始する。
エバーグリーンの広報担当者によると、同社の張榮發会長はすでに PTP をトランシップ
ハブとすると決定したとのこと。エバーグリーンの決断の背景には、PTP の格段に低いコ
ストがあったとみられる。
PTP への移転で、エバーグリーンは年間1億台湾ドルの経費削減が見込まれるとみられ
ているが、契約の詳細はまだ明らかにされていない。
2000 年にシンガポール港湾公社(PSA)が年間取り扱った貨物の 5%をエバーグリーン
が占めていたと言われている。
PSA のスポークスマンは、
「顧客との契約についてコメントはしないし、できない」とし
ている。
エバーグリーンの PTP 移転計画は、昨年 10 月に浮上した。
PSA は今月初めにエバーグリーンと直接話し合いを持ったと伝えられていた。エバーグ
リーンと PSA のターミナル契約は 8 月で期限が切れる。
PTP 側からのコメントは得られなかったが、マレーシアのマハティール首相は、あるイ
ンタビューで「マレーシアは PTP だけでなく、他の港も拡大していくつもりである。その
戦略的な地理条件はシンガポールと変わらないのだから、我々が貿易・海運ハブになれな
いわけがない」と述べている。
シンガポールにとっては、2000 年にマースク・シーランドが PTP に移転して以来、2 年
間で二度目の大打撃となる。
(2002 年 1 月 17 日ストレートタイムズ)
シンガポール バンカー検査員 5 名に有罪判決
汚職行為調査局(CPIB)は昨日(24 日)
、汚職疑惑のあるバンカー(船舶燃料)検査員
42 名のうち 5 名がバンカー供給業者ナビ・マリンサービスから 100 ドルから 3,156 ドルの
賄賂を受け取り、偽った品質や量の燃料を申告したとして、8,000 ドルから 20,000 ドルの
罰金の支払いを命じた。
バンカーの不正問題が明るみになったのは今回が初めてのことだが、検察官の報告によ
ると、バンカー産業の 20∼30%に汚職が浸透しているとのこと。
昨年 7 月から CPIB が行ってきた調査で、8 名に汚職疑惑がかけられ、今回そのうちの 5
名に有罪判決が下された。残りの 3 名は裁判を要求している。
157
判事は、これらの背任行為は氷山の一角だとし、船舶運航者を狙ったバンカー産業の不
正行為の一部でしかないと述べたほか、
「このような不正行為はシンガポールのバンカー・
ハブとしての地位を著しく傷つけ、海運産業全体にも影響を与える。バンカーの品質や量
を保証するという重要な役割を与えられた検査員がこのような不正行為に手を染めるとは、
大問題である」と述べた。
今回告発された 8 名は、CPIB によって汚職疑惑があるとされた 42 名の最初のグループ
で、残りグループ(17 業者)が引き続き法廷に立たされる。
バンカー検査員 42 名は、バンカー供給業者ナビ・マリンサービスから賄賂を受け取って
いたとみられているが、これについては現在調査が行われている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1 月 25 日付けビジネス・タイムズによると、MPA は 1 月 24 日、ナビ・マリンサービス
を営業停止処分にした。これにより、ナビ・マリンサービスは、シンガポール港における
バンカーの供給及びバンカー供給船の運航を禁止される。ナビ・マリンサービスの営業停
止処分は、MPA による調査の結果が出るまで続く。
(2002 年 1 月 24 日、25 日ビジネス・タイムズ)
星港 2001 年の貨物取扱量は 9 億 6 千万総トンで世界最高新記録
シンガポール港は、昨年のトン数別貨物取扱量で世界新記録を出し、再び世界で最も忙
しい港の地位を維持した。
1 月 25 日にシンガポール海事港湾庁(MPA)が発表したところによると、シンガポール
港の 2001 年の貨物取扱量は、一昨年の 9 億 1,020 万総トンの 5.5%増で、9 億 6,010 万総
トンに上り、新記録を確立した。
なかでもコンテナ船の貢献度は高く、3 億 3,720 万総トンに上り、全体の 35.1%を占め
た。次いでタンカーが 3 億 430 万総トンで、31.7%を占め、ばら積み船が 1 億 6,640 万総
トンで 17.3%を占めた。
船舶の寄港数も増加し、一昨年の 0.6%増、14 万 6,265 回に上った。
このほか、船舶燃料油(バンカー)の売上も、一昨年の 1,890 万トンから 2,040 万トン
に増加している。バンカー産業の快挙について MPA は、
「昨年シンガポールがバンカー港
として世界の頂点に立ったという証であり、主要バンカー港として今後も世界を引きつけ
ることを再認識した」と述べている。汚染燃料油の供給に、検査員が関わった不祥事で揺
らいでいたバンカー業界には、朗報であろう。
コンテナの取扱では一昨年の 1,701 万 TEU から 1,560 万 TEU に 8.9%ダウンした。
MPA のチェン長官は、
「不景気や地域での競争が背景にあり、2001 年はシンガポール港
にとって厳しい一年であった。景気が低迷したにもかかわらず、シンガポール港は立派な
成績を達成した」と述べた。
MPA は今後もサービスの向上を図り、
積み替え港としての地位を維持すると述べている。
158
(2002 年 1 月 26 日ストレートタイムズ)
IMO のマラッカ海峡 MEH プロジェクト、資金調達に困る
IMO(国際海事機構)の 3,000 万ドルに及ぶマラッカ海峡 MEH(マリン・エレクトロニ
ック・ハイウェイ)プロジェクトは、資金調達面で困難している。
先週 IMO は、シンガポールでハイレベル会議を開催した。この会議には、シンガポール、
マレーシア、インドネシアの沿岸国の代表らも出席し、プロジェクトのデモに必要な 1,000
万ドルの支援を求めた。
MEH は、世界でも有数の輻輳海域であるマラッカ海峡の全ての電子的航行システムを 1
つにまとめるという大掛かりなプロジェクトで、将来的には提供する情報を船主が買い取
ることが計画されている。
IMO の海洋環境部関水部長は会議で講演し、同プロジェクトの立ち上げには 3,000 万ド
ルかかると述べた。約 1,000 万ドルが、電子海図を作成するためのマラッカ海峡の再測量
調査に使われ、2,000 万ドルが新たな装置の設置に使われる。
MEH は大変革新的で、このようなプロジェクトは世界でも初めてだが、資金調達は難し
(2002 年 1 月 30 日ロイズリスト)
く、解決方法がなかなか見つからない。
川崎汽船、星に貨物業務専用の組織設立
川崎汽船はこのほど、シンガポールにコンテナ船運航業務に関わる新組織、アジア・オ
ペレーション・センター(AOC)を設立することを明らかにした。4 月 1 日に設立、7 月 1
日の業務開始を予定している。
AOC は、同社の 100%出資シンガポール現地法人「 K” Line(KLPL:志賀十良社長)
」
内に設置される。
北米や欧州、地中海など東西主要航路におけるアジア及び日本発の貨物船積み替えや港
湾施設内のコンテナ管理をはじめとする運航業務、日本を含むアジア地域のコンテナ配置
業務、コスト管理業務を行う。
KLPL は現在、アジア、アフリカ、中南米航路の航路管理業務を担当しているが、東京、
米リッチモンド、英ロンドンの 3 ヵ所で行われている東西主要航路における運航業務のう
ち、日本を含むアジア域内の運営を AOC に一元委託することで、業務効率化を目指す。
(2002 年 2 月 1 日 NNA)
海事裁判所、最高裁判所内に設立
最高裁判所にこのほど、国内外の海運争議を扱う海事裁判所が設置された。これを契機
に、シンガポールはアジア太平洋地域において、海事訴訟の主要取扱国としての地位確立
を目指す。
同裁判所は、拿捕(だほ)船や船舶抵当権の処理、チャーター船や貨物輸送などに関す
159
る争議の調停や仲裁を行う。
海事訴訟はこれまで、最高裁判所の特別法廷で処理されていたが、今後は通常法廷で審
議が行われることになる。2005 年には、新しい最高裁判所ビルの完成に伴い、特別室が設
けられる予定だ。
国内の弁護士らは「シンガポールは、今回の新法廷の設置で、海事法廷制度が発達して
いる英国や米国と肩を並べることを期待している」と歓迎の意向を示している。
(2002 年 2 月 5 日 NNA)
政府は港湾事業の発展に尽力:運輸相
ヨー・チャウトン運輸相は 4 日、シンガポールが域内の競争に打ち勝ち、世界有数の貨
物積替地として発展するため、政府は港湾運営者を全面支援するとの見解を示した。中国
系、海運大手コスコ・シンガポールの 5,400TEU(20 フィートコンテナ換算)コンテナ船
の進水式で述べたもの。
同相は、海外の大手海運業者がシンガポールの港湾施設を選ぶ要素として、○世界各地
を結ぶ 250 の海運会社が展開し、およそ 600 港との交易ルートを持つという広大なネット
ワーク○シンガポール港湾公社(PSA コープ)が情報技術(IT)を駆使し、船舶航行時間
の短縮を図っていること○政府が港湾施設整備の迅速化や貿易関連書類の能率的な処理を
徹底していること――の 3 点を挙げている。
同相はまた、政府が港湾事業に尽力している別の例として、海事港湾庁(MPA)がコン
テナ船に 20%の税割戻しを行っていることを挙げた。
(2002 年 2 月 6 日 NNA)
港湾庁、1 社の船舶燃料免許停止を検討
海事港湾庁(MPA)は、新たに 1 社の船舶燃料供給免許を停止することを検討中だ。米
検査会社により、汚染燃料の供給が確認されたことによる。
5 日付「シッピング・タイムズ」によると、燃料検査会社ビスワ・ラボ・コーポレーショ
ンは 42 の燃料サンプルを分析、現在までに 6 つの燃料補給船から供給された燃料に、エン
ジンに故障を引き起こすレベルの汚染物質を検出している。1 つはすでに免許停止処分にな
っているメリディアン・ペトロリウム・サービシズからのものだった。ビスワによると、
発見された汚染物資はタンク洗浄などに用いられる石油系溶剤やメチル・エステルなど。
これらの含有が疑われる燃料が供給された昨年 10 月∼12 月に、少なくとも 6 隻のエンジ
ンが故障している。これらの船舶はすべてシンガポールで燃料供給を受けていた。
ビスワの R・ビスウエスワラン代表によると、タンク洗浄の後に残った有害物質は環境基
準に沿って処理されなければならない。ただ、この規則を無視する業者により、石油とと
もに燃料として売却されている疑いがあるという。
MPA は、メリディアンのほか、燃料検査官に現金を渡して虚偽の報告をさせていたナビ・
マリン・サービシズの免許も停止している。
160
(2002 年 2 月 6 日 NNA)
川崎汽船の港湾使用交渉、料金で難航
川崎汽船とシンガポール港湾公社(PSA コープ)の間で結ばれているターミナル使用合
意更新にあたり、料金交渉が難航しているもようだ。域内での港湾事業者間の競争が激化
する中で行われている交渉に関係者の注目が集まっている。
昨年 8 月に営業を開始した同社の現地法人「 K” Line(KLPL)」の披露パーティに出席す
るためシンガポールを訪問した川崎汽船の新谷功会長は 4 日、料金交渉で PSA と折り合い
がついていないことを明らかにした。
両社の実質ターミナル合意(VTA)は昨年末に期限切れを迎えており、更新のための協
議を継続中だ。VTA では、貨物量に従って取扱料金が決定される仕組み。
6 日付「ビジネス・タイムズ」によると、PSA はこれまでと同じ条件で最大 1 年の契約
更新を提示しているという。ただ PSA は、顧客との個別の契約内容は明らかにできないと
している。
一方、新谷会長は寄港地をシンガポールからマレーシア・ジョホール州のタンジュンプ
ルパス(PTP)港などにする計画は今のところないと語っている。
川崎汽船は、現在 PTP には寄港しておらず、マレーシアではスランゴール州のクラン港
を使用している。また、シンガポールでの積替貨物量は明らかにできないとしたものの、
マレーシアとの比較では 9:1 程度としている。
川崎汽船と PSA の交渉は、PTP との港湾事業の競争が激化するなかで行われており、関
係者の注目を集めている。
2000 年にはデンマークの海運大手マースク・シーランドが積替地をシンガポールから
PTP に変更した。また今年に入り、台湾のコンテナ輸送大手エバー・グリーン・マリン(長
栄海運)が同様に PTP に移管する意向との報道が伝えられている。両社を合わせたシンガ
ポールでの貨物積替量は年間約 300 万 TEU(20 フィートコンテナ換算)に上っていた。
(2002 年 2 月 7 日 NNA)
港湾公社、1 月の貨物取扱量 11.4%増
シンガポール港湾公社(PSA コープ)は 5 日、1 月のシンガポールでの貨物取扱量が 131
万 TEU(20 フィートコンテナ換算)と、前年同月比で 11.4%増加したと発表した。
世界的な貿易取引の増加や経済の上向きが貢献した。
また海外での貨物取扱量は、前年同月比 51%増の 33 万 2,000TEU となり、全世界での
貨物取扱量は、前年同月比 17.6%を記録した。
昨年 7 月に事業を開始した中国広州港務局との港湾運営合併会社「広州コンテナターミ
ナル社」の好業務が数字を押し上げた。
向こう数ヶ月の見通しについては、経済は回復基調にあるものの、産業によってその表
れ方が異なるため、輸送量は不安定に推移するとしている。
161
(2002 年 2 月 7 日 NNA)
タイ湾に難破船、航行注意が出される
タイ海軍は昨日、タイ湾のトラート県沖を航行する船舶に対し、同海域に LPG を積んで
いると思われる難破船が漂流しており、これを回避するよう航行注意を出した。
難破船 Pac One 号は、1996 年にクット島沖 60 海里のところで沈没した。2 月 5 日、P
号の船体が海面に浮上して、リゾート島チャーン島の方向に 2km 漂流した。
タイ海軍は現場にダイバーを派遣して状況を調査し、全世界に向けて警戒を出す予定で
ある。
しかし、該船はイギリスの保険会社の所有物で、タイ海軍には該船に手立てをする権利
はない。タイ海軍は、保険会社からの要請があれば援助したいとしている。
該船の船内には 65 万トン以上の LPG が残っている可能性があり、海軍側は「事実関係
の確認はできないが、その可能性はある。そのためにも船体を引き揚げる必要がある」と
(2002 年 2 月 7 日シッピング・タイムズ)
している。
タイ海軍 航行障害になっている LPG タンカーを沈没させる予定
タイ海軍は、6 年前にタイ湾で沈没し、最近船体が海面に浮上してきた LPG タンカー
Pack-One 号(全長 60 メートル)を沈没させる予定である。
海軍によると、費用は P 号の保険会社と船主が負担するとのことである。
P 号は 1996 年 8 月 23 日にベトナムに向けて航行していたところ、行方不明になった。
その 2 日後、海底に沈んでいるのが発見された。P 号の船内には、LPG650 トンが残って
いるとみられている。
P 号は、今年の 2 月 4 日に海面に浮上し、付近を航行する船舶の航行障害になっている。
(2002 年 2 月 19 日ロイズリスト)
港湾庁、汚染燃料供給者の免許はく奪
海事港湾庁(MPA)は 14 日、汚染物資を含んだ船舶燃料を供給した事業者メリディアン・
ペトロレアム・アンド・バンカリングの免許はく奪を正式に発表するとともに、燃料を供
給した船舶の所有者を訴える方針を明らかにした。
MPA が免許はく奪の措置を取ったのは今月 8 日。メリディアンは 7 日以内に異議申し立
てを行うことができる。
MPA は調査の結果、同社が汚染物資の混入した燃料の販売に関わっていたと断定、調査
の期間中、一時的に免許を停止していたが、今回はく奪に踏み切った。問題の汚染物質は、
燃料検査会社などによりタンク洗浄などに用いられる石油系溶剤やメチル・エステルなど
と特定されている。
MPA はまた、メリディアンが運営していた燃料供給船舶 MT アレクサンドラと MT メン
フィスの所有者をも訴える意向だ。
162
MPA の声明によると、「海洋汚染防止法」で義務付けられている石油記録書の記入を所
有者が怠っていたことを法的手段に訴える原因として挙げている。
2 隻ともシンガポール船籍とされているが、所有者の氏名などは明らかにされていない。
これまでに免許を停止された業者はメリディアンのほか、燃料検査官に現金を渡して虚
偽の報告をさせていたナビ・マリン・サービシズ。ナビ社は、17 社の 42 検査官に現金を渡
していた疑いがあり、現在捜査中だ。すでに 10 数人の検査官に有罪判決が下っている。
検察は 42 人全員を起訴する意向だ。
(2002 年 2 月 15 日 NNA)
PTP 港、シンガポール港と協調へ
ジョホール州のタンジュン・プルパス港(PTP)がシンガポール港との協調路線を模索
し始めたもようだ。PTP 港の運営母体である PTP 社のモハマド・ジディック社長が 20 日、
記者会見で明らかにした。
同社長は、両港が提携することが双方に有益であることを協調し、
「新しい関係を築くこ
とによって、競争力を身につける必要がある」としている。
PTP 港は 2 年前、当時シンガポール港に拠点を置いていたデンマークの海運大手マース
ク・シーランドの誘致に成功しているほか、8 月には台湾海運大手のエバー・グリーン・マ
リーン(長栄海運)がシンガポール港からの機能移管を予定しているという。
PTP 港の年間貨物取扱量は約 200 万 TEU(20 フィート標準コンテナ換算)
、シンガポー
ル港は同 1,560 万 TEU(2001 年度実績)となっている。
(2002 年 2 月 22 日 NNA)
海運会社の離税阻止 税優遇では不十分
貿易開発庁(TDB)は、海運会社をシンガポールに引き止めておくには、税優遇策は不
十分であり、サービスの強化がなければ港湾利用の域内競争を勝ち抜けないとの考えを示
した。
20 日付「シッピング・タイムズ」によると、TDB 国際貿易・貿易物流部門のタン・ベン
ティー局長は、シンガポールは英国の例に倣い海運会社に適した金融サービスや保険、ブ
ローカーなどサービス部門を拡大することが必要で、交通の要所としての地理的優位性や
税優遇対策だけでは他港をしのぐことができないとした。
タン局長は、「どの国でも税優遇はできる」と述べ、国内の人材育成に努めるとともに、
海外から専門家を招く必要性があるとした。
また先ごろアジア地域のコンテナ船運航拠点を東京からシンガポールに移した川崎汽船
のシンガポール法人「 K Line(KLPL)
」の志賀十良社長も「税制を軽視することはない
が、ひとつの要因にすぎない」とし、効率性の向上やインフラの整備などが競争のカギを
(2002 年 3 月 21 日 NNA)
なるとの考えを述べている。
163
シンガポール、世界海事国ランキングでトップ 10 入り
国連貿易開発会議(UNCTAD)がまとめた海事国家ランキングで、シンガポールが 9 位
を確保した。ランキングでシンガポールがトップ 10 入りするのは今回が初めて。
世界 35 の海事国家・地域を対象とした同ランキングは、年間の寄港船舶数や海運貨物取
扱トン数を基に順位付けしたもの。
これによると、シンガポールは 2001 年 1 月の時点で、英国やデンマークを抜いて 9 位に
付けた。船舶収容数は 756 隻、貨物取扱トン数は 2,063 万 2,150 トンで、世界市場のシェ
アは、2.75%となっている。
シンガポールは 1991 年に 19 位、1999 年に 11 位と順位を上げ、今回初めてトップ 10
入りした。
首位はギリシャ、2 位は日本、3 位はノルウェーだった。
貿易開発庁(TDB)の国際貿易・ロジスティックス部門にディレクター、タン・ベンテ
ィー氏は「シンガポールはまさに今、世界の主要海事国家の仲間入りを果たそうとしてい
る」とした。
TDB は海運産業の振興にさらに力を入れる意向を表明、海外業者の誘致促進と世界各国
との包括的な海運ネットワークの構築を目指すとしている。
(2002 年 3 月 21 日 NNA)
シンガポール港湾庁 船舶燃料汚染で 9 社を処分
海事港湾庁(MPA)は 20 日、汚染物質を含んだ船舶燃料が販売されていた問題の調査結
果を発表し、燃料供給会社 9 社の処分を発表した。MPA は 4 ヶ月にわたる調査の終了を宣
言、再発防止対策の策定を行う。
MPA は造船所で集められた廃油から汚染が広がったと断定した。
21 日付「ストレート・タイムズ」によると、廃油を購入していたのは、すでに免許はく
奪処分を受けているメリディアン・アンド・バンカリングで、この廃油を木材運搬船を経
由して 2 隻の燃料タンカーに供給。このタンカーから燃料注入を受けた船舶 14 隻が被害に
遭った。
この燃料タンカーの所有会社 JS ピンク・フューエルは起訴される。MPA は、木材運搬
船所有会社のうち、レガシー・ペトロリアムの免許をはく奪。ペガサス・マリタイム・バ
ンカーを 1 ヶ月の営業停止処分にする。
また、メリディアンを下請けとしていたエルフ・トレーディング、トランプ・オイル、
ボミン・バンカーの 3 社を、監視を怠ったとして 2 ヶ月の免許停止に、ワイアード・バン
カリングとバレル・オイルに警告を行った。
MPA 港湾局のコン・シェンピン局長は、汚染燃料の供給は大規模なものではなかったと
しながらも、事件が燃料供給基地としてのシンガポールに与える影響を考慮した厳しい処
分が必要だとした。
汚染問題が取り上げられて以来、日本など多くの国の船舶協会から懸念の声が上がって
164
いたという。同局長はまた、1 月の船舶燃料販売が 6.2%減少したのも、この問題が一因と
の見方を示した。
MPA は今後、シンガポール船舶協会(SSA)と共同で再発防止策を策定するという。こ
れには、業界の監視強化などが盛り込まれるもようだ。
(2002 年 3 月 22 日 NNA)
セキュリティ強化で船員のシンガポール上陸が厄介に
アメリカでのテロ事件からちょうど半年経った 3 月 11 日から、シンガポールは新たなセ
キュリティ強化対策を導入した。これにより、代理店は、停泊地または港に入った船員か
らパスポートと船員手帳を受取り、移民局に出向いて上陸許可の判を押してもらわなけれ
ばならなくなった。その後、船員は初めて 2 ヶ所の指定上陸所のみからの上陸が許される。
船舶運航会社及び代理店は、セキュリティが重要なことは十分理解しているが、その煩
わしい手順について国内の海運業界で論争を招いている。
以前は船員の名簿を提出していれば、上陸は事前に許可されていた。
(2002 年 3 月 26 日マリタイムアジア)
165
第5節 社会・経済
インドネシアリアウ州にシンガポール領事館を設置
4 月 16 日、インドネシアのリアウ州ペカンバルにシンガポール領事館が開設される。ペ
カンバルに設置される外国領事館は、マレーシアに続いてシンガポールで 2 つ目である。
(2001 年 4 月 10 日ストレートタイムズ)
マレーシア ポートクラン沖で不法入国者 77 人が検挙される
マレーシア海上警察は 12 日、Selat Che Mat Zain 付近で、同国に入り込もうとしている
77人の不法入国者を検挙した。
「Ops Nyah Ⅰ」ミッション中の海上警察の巡視艇が沿岸
をパトロールしていたところ、午前 11 時 20 分に不法入国者を乗せたボートを発見、10 分
間の追跡の後、検挙に至った。船長は海に飛び込んで逃走した。不法入国者 77 人のうち、
72 名が男性で、残りの 5 名が女性、年齢は 14 歳から 59 歳。彼等は検挙を逃れるためのお
守りを腕や腰に巻きつけていた。出身はスマトラの Batu Bara で、旅券を所持している者
はいなかった。
不法入国者の検挙は今月に入って 3 回目で、検挙者は 109 名に上っている。
1 ヶ月間行われた「Ops Nyah Ⅰ」ミッションは明日(4 月 14 日)終了する。3 隻の巡
視艇と職員 18 人が本ミッションに携わった。
(2001 年 4 月 13 日マリタイムアジア)
マレーシア ジョホール州沖でインドネシア不法入国者 14 名が捕まる
6 月 14 日、女性 4 名と 2 歳の幼児を含む 14 名がボート(長さ 6 メートル)でマレーシ
アに不法入国しようとしているところを検挙された。
マレーシア海上警察は、当初 1 名がボートに乗っているのを確認し、その後コタティン
ギからパシルクダンまで 19 キロにわたって追跡を続けた。
ボートはインドネシアのタンジュンピナンから来たものとみられる。
海上警察は、午後 2 時ごろジョホールの東海岸沖でこのボートを発見したが、ボートは
海岸寄りの浅瀬を航行していたことから、接近するのが困難であったと述べている。
「これまで不法入国しようとする者は、深夜、ジョホール東海岸からマレーシアに入るの
が常であったが、昼間に小型ボートで入国を企てるというのは新しい手段だ」と海上警察
は述べている。
不法入国者はぺカンナナスの入国管理局拘留センターに送られた。
(2001 年 6 月 16 日ストレートタイムズ)
シンガポール新内閣 運輸情報通信省が運輸省と情報通信芸術省の2省庁に
ゴー・チョクトン首相は 17 日、内閣の顔ぶれを発表した。リチャード・フー氏の引退を
166
受けて注目されていた蔵相には、リー・シェンロン副首相の兼任が決まった。同時に新人
議員7人を国務相レベルで登用し、次期総選挙までの閣僚若返りに布石を打った。今月 23
日に発足する内閣の注目点は、リー副首相の蔵相兼任のほかリー・ヨクスアン情報芸術相
を首相府相兼第2外相としたこと、デビッド・リム国務相(情報芸術担当)を新しいポス
トである情報通信芸術相代理に指名したことだ。リム・スイセイ国務相(環境担当)を環
境相に格上げし、リム・ブンヘン無任所相を首相府相に指名した。
ほかの閣僚クラスに変更はないが、来年3月 25 日からの国会開催に伴いアブドラ・タル
ムジ社会開発兼スポーツ相が国会議長となるため、ヤコブ・イブラヒム情報技術通信省(M
CIT)政務次官がタルムジ氏の代理を務める。また1年後にリー・ブンヤン人的資源相
とリム情報通信相代理がポストを交換する。
2省庁再編
今回の組閣に伴い、情報通信担当の省庁が再編される。MCITの情報技術(IT)部
門を情報芸術省(MITA)が吸収し、情報通信芸術省となる。ただし通称の「MITA」
は今後も使用される。残るMCITの部門は運輸省へと改名されヨー・チャウトン運輸通
信・情報技術相がそのまま運輸相となる。この組織変更は今月 28 日に行われる。
18 日付『ストレート・タイムズ』によると、この2省庁の再編は予想されていなかった
ものの、MCITとMITAには重複する部分が多かったことことから、プラスの評価を
受けているという。
新人議員7人を国務相に
今回の指名でゴー首相は、7人の新人議員を国務相に抜擢した。首相は、2007 年までの
次期総選挙までに人材を育てる考えを総選挙中から度々表明しており、今回の登用で彼ら
の政治手腕をテストするとしている。
国務相就任が内定していたタルマン・シャンムガラトナム金融管理庁(MAS)元理事
とコー・ブーンワン通産省元事務次官は高級国務相に任命される。シャンガラトナム氏は
通産と教育担当。コー氏は運輸と情報通信芸術担当を務める。コー氏は『チャンネル・ニ
ュース・アジア』に対し「どちらもシンガポール経済にとって重要な柱であり、果敢な挑
戦が求められる」と述べている。
ほかの5人は国務相で、シンガポール航空(SIA)幹部のセドリック・フー・チーケ
ン氏が国防担当来年(4月1日以降)、シンガポール総合病院のビビアン・バラクリシュナ
ン最高経営責任者(CEO)が国家開発担当(来年1月1日以降)、政府系投資会社テマセ
ク・ホールディングスのレイモンド・リム社長が外務と通産担当(12 月1日以降)
、医師ン
ー・エンヘン氏が教育と人的資源担当(来年1月1日以降)
、医師バラジ・サダジバン氏が
保険と環境担当。
3人の区長も指名
11 日に発表された地域住民組織「社会開発理事会(CDC)」の再編に当たり決定してい
なかった「西北」「中央」「東北」地区の区長が発表された。西北CDC区長にテオ・ホー
167
ピン氏(ホランド/ブキパンジャン選出)
、中央にヘン・チーハウ氏(ジャランベサール選出)
、
東北にザイヌル・アビディン・ラシッド氏(アルジュニード選出)が決定した。
(2001 年 11 月 19 日 NNA)
(追加情報:運輸情報通信兼国家開発担当のジョン・チェン旧国務相は、民間企業でのキ
ャリアに専念したいとの要望があり、任命を辞退した)
マレーシア政府、毎月 1 万人のインドネシア不法滞在者を本国に送還する予定
マレーシア政府は、毎月 1 万人のインドネシアからの不法滞在者を本国に送還する予定
である。
マレーシアの副内相によると、インドネシア政府が輸送船を提供し、マレーシア政府が
不法滞在者の本国送還にかかる費用(一人につき 170 マレーシアリンギ)を負担するとの
こと。毎週、インドネシア海軍の船で、マレーシア・ジョホール州のパシル・グダン港か
ら 2,500 人をインドネシアに送還する予定である。
現在、マレーシアに不法滞在しているインドネシア人は 45,000 人に上り、半島マレーシ
アに 30,000 人、サバ州及びサラワク州に 15,000 人が不法に滞在している。
マレーシアのほかの港からも、毎週インドネシア不法滞在者が本国に送還される。
マレーシア政府は、特定の産業において、国民に就業のチャンスを与えるため、300,000
人の不法滞在者を本国へ送還したいとしている。
(2001 年 11 月 29 日ストレートタイムズ)
アメリカ マラッカ海峡を通航する主要物資調達船を護衛
テロリストによる攻撃を未然に防ぐため、アメリカ海軍はマラッカ海峡を通過してアフ
ガニスタンに向かう主要物資調達船を護衛している。
主要物資調達船の護衛は、シンガポール、マレーシア、インドネシアの支持を受け、約
1ヶ月前から開始された。
アメリカ海軍関係者によると、
「現在の取り決めでは、重要な船が通航する場合、アメリ
カ海軍がフリゲート艦を派遣して護衛にあたるほか、3 カ国との間に敷かれた通航保護シス
テムを経由して、重要な船が通航することを 3 カ国に知らせる。マレーシア、シンガポー
ル、インドネシアはそういった船を捕捉し、特別な注意を払っている」とのこと。
東南アジアは、これまでも「通行・育成基地」に適しているとアルカイーダに関連した
テロリストから重要視されてきた。
西側及びアジアの諜報機関の情報によると、東南アジアでは、インドネシアとフィリピ
ンに次いでマレーシアで、イスラム過激派が多く活動しているとのこと。これは、イスラ
ム教徒が多いことと世界的な不景気で失業者が増加していることが要因になっている。
アメリカ海軍の関係者は、我々が懸念しているのは、いつアルカイーダがアフガニスタ
ンから追放されるのか、どこに活動の拠点を移すのか、どこで再組成するつもりなのかと
168
(2001 年 12 月 4 日ストレートタイムズ)
いうことだと述べている。
【シンガポール】公安局、テロ計画で 15 人を逮捕
内務省は5日、昨年 12 月にテロを企てた容疑で秘密組織のメンバー15 人を逮捕していた
ことを公表した。このうちの数人は、アフガニスタンでオサマ・ビンラディン氏が率いる
テロ組織アルカイダによる訓練を受けていたとされる。内務省に属する公安局は、先月9
∼24 日に、14 人のシンガポール人とシンガポールからマレーシアへと国籍を移した1人を
国内治安法(ISA)の適用により逮捕した。
ISAは、裁判を行わず逮捕者の拘束を可能とする法律。
同省の発表によると、容疑者のうち少なくとも 13 人は『ジェマー・イスラミア(イスラ
ム共同体)
』と名乗る組織に属している。残る2人がこの組織と関連があるのかを現在捜査
中。
内務省では、この組織の主な活動について、テロリストを支援するための資金集めや国
内でテロ行為を行う場合の場所の特定、硝酸アンモニウムなど爆発物の材料調達としてい
る。家宅捜索の結果、公安局は爆発物の製造法の詳細な解説書や標的と定めた場所の写真
やビデオ、偽造パスポートのほかアルカイダとの関連を示唆する物品を押収した。
逮捕された容疑者の中には、アフガニスタン国内のアルカイダの施設で短期間の訓練を
受けた者も含まれているとされる。ただ同局は、詳細については明らかにしていない。ま
た 15 人以外のメンバーのうち数人は海外へ逃亡したもようだ。
同組織の中核には、マレーシアやインドネシアの過激派グループとつながりを持つ者も
いると見られる。マレーシアで指名手配中のリドゥアン・イサムディン氏などが含まれる
という。
6日付『ストレート・タイムズ』によると、英軍事雑誌『ジェーンズ・インテリジェン
ス・レビュー』が、
「シンガポール国内のアルカイダ・メンバーは、テロ活動を間近に控え
ていたものの、ビンラディン氏が中止を命じた」と報じていた。
同時期の先月9日から、マレーシアでも過激派とみられる 13 人が逮捕されている。
■マレー系市民に団結を呼びかけ
逮捕を受けて、マレー系の要人は、イスラム教徒が団結して政府を支持するように呼び
かけた。ヤコブ・イブラヒム国務相(社会開発・スポーツ担当)は「(事件により)ほかの
コミュニティーによるわれわれ(イスラム教徒)への見方は変わるだろう。だからこそ、
われわれが国家に忠実であることを示すことが重要だ」と説いた。
またアブドゥラ・タルムギ・ムスリム問題担当相は5日、ハリラヤ・プアサ(断食明け
大祭)の式典の席で「われわれは非マレー、非ムスリム・コミュニティーと同じ立場にあ
り、(テロ行為を)認めない」と述べている。
ムスリム・コミュニティー発展会議(MENDAKI)のロズラン・ギリ氏も、マレー系
(2002 年 1 月 7 日 NNA)
住民に平静さを保つよう呼びかけた。
169
社団法人 日本海難防止協会
東京都港区虎ノ門一丁目 15 番 16 号
(〒105-0001) 海洋船舶ビル4階
TEL 03-3502-2231
FAX 03-3581-6136
シンガポール連絡事務所
16 Raffles Quay,#27-03 Hong Leong Building,
SINGAPORE 048581
TEL 001-65-226-1231
FAX 001-65-226-1219
Fly UP