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2005年宣言の実現に向けて① - JFA Community

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2005年宣言の実現に向けて① - JFA Community
Technical
news
Vol.23
特集①
2005年宣言の実現に向けて①
特集② ナショナルトレセン関連活動報告
47FAユースダイレクター研修会
TOYOTA プレゼンツ FIFAクラブワールドカップ ジャパン2007
JFAテクニカルスタディ
財団法人 日本サッカー協会
2005年宣言の実現に向けて①
2
特集②
ナショナルトレセン関連活動報告
2007ナショナルトレーニングキャンプU-16
2007ナショナルトレセンU-14
JFAエリートプログラム
2007 U-17地域対抗戦
50
47FAユースダイレクター研修会
FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2007
JFAテクニカルスタディ
各種指導者養成講習会および研修会報告
10
53
55
58
12
34
連載 キッズドリル紹介・第18回
16
連載 一語一会
17
活動報告 目指せ世界のトップ10
18
GKプロジェクト活動報告
21
JFAアカデミー福島活動報告
26
各地のユース育成の取り組み
28
連載 トレーニングの発展
30
連載 My Favorite Training
32
連載 育成の現場をたずねて・・・
42
「めざせファンタジスタ!」チャレンジ開始
43
海外で活躍する指導者⑤
44
連載 JFAフィジカルフィットネスプロジェクト
46
連載 審判員と指導者ともに手を取り合って・・・
48
技術委員会刊行物・販売案内
60
A MEETING PLACE FOR READERS AND JFA
62
vol.23
1 3
2 4
Technical news
特集①
① JFAエリートプログラム
(U-13日本選抜vsU-13韓国代表)
より훿AGC/JFAnews
② TOYOTAプレゼンツ FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2007より훿Jリーグフォト㈱
③ 47FAユースダイレクター研修会より
④ 2007ナショナルトレーニングキャンプU-16より훿AGC/JFAnews
○制作協力:エルグランツ㈱
○印刷:製本:サンメッセ㈱
※本誌掲載の記事・図版・写真の無断転用を禁止します。
本誌はJFA指導者登録制度において、所定の手続きを行ったJFA公認指導者の方に無償で配布されています。
1
2007ナショナルトレセンU-12東海より훿AGC/JFAnews
特集
①
2005年宣言の実現に向けて①
実現のための
ロードマップの作成
「JFA2005年宣言」
実現に向けて
す。
ずは目指す姿を描き、そこから逆算すること
特にまずは2015年、
「世界のトップ10を目
指す」という約束の実現を、どのようにして
が重要です。その大きな方向性を軸として、
必要な体制や具体的な方法を考え、どのよう
「JFA2005年宣言」は、われわれのミッシ
いくのかを具体的にイメージし、それを皆で
に実現していくのか、スケジュールも含め、
ョンステートメントであり、日々のあらゆる
活動を方向付けるものです。2015年の約束、
共有していく必要があります。それを明確に
することを目的として、今回、2005年宣言
明確なイメージを持つことを目的としまし
た。
2050年の約束の実現に向け、さまざまな取
り組みを重ねてきています。
の実現、2015年トップ10に向けてのロード
マップの作成に着手しました。2015年に向
しかし、当初あらゆる場で耳にしていた
け、2009年、2012年と中間の目標を明確に
「世界のトップ10」という言葉も、年を経る
ごとにその頻度が減りつつあるような気がし
しつつ、実現の方法をイメージするためのも
のであり、もう一度誰しもがミッションステ
これを、日本サッカー協会(JFA)全体の
考え方、方向性として共有できるよう、さま
ます。どのような分野であれ、成功を手にし
ている組織は、どの部署、どんな役職の人
ートメントを常に口にするためのものです。
ざまな場でプレゼンテーションをし、意見を
聴きながら、完成させる作業を進めていま
も、掲げた“ミッションステートメント”を
文化として持ち、口にしているものです。逆
目指す姿を
全体像としてとらえる
方向性の共有
す。さまざまな取り組みを総合的に重ねてい
くことは今後も変わりませんが、その中で、
に言えば、目標を本当に共有できているから
2015年の約束を、現実のこととして目指
重点や優先事項を考えないと、この大きな目
こそ、大きな力が発揮できているのでしょ
う。
すに当たり、部分の取り組みの集積というこ
とではなく、全体像として、目指す姿を確認
標に近づくことはできません。これを、日本
サッカー界全体で共有し、取り組んでいける
その約束は、漠然とイメージとしてとらえ
ているだけでは、実現に近づいていきませ
する必要があります。さまざまな取り組みは
リンクしているものであって、それらを総合
ようにしたいと考えています。
ん。非常に高く実現が難しい目標であるだけ
的視野でとらえることが重要です。
に、それが単にイメージ化してしまってきつ
つある感も否めません。気がつけば10年がた
目指す姿からの逆算
目指す姿
2015年世界トップ10に向けては、
「すそ野
ってしまっていた、ということになりかねま
せん。しかし、これは単なるシンボルではな
また、とかく現実の体制から発想をスター
を広げ、育成の土台を堅固にし、総合力を高
めることで、頂上を高くする」という方向性
く、現実に総力をあげて目指すべき目標で
トしてしまいがちですが、そうではなく、ま
です。すなわち、単に2015年の目標の対象
2
となるターゲットグループだけを取り出し
て、そこに取り組みを集中することでその一
瞬の目的を達成しようとするのではなく、あ
くまでも総合力を上げることで世界のトップ
10を目指すということです。もともと世界の
トップ10を目標に掲げたのは、トップ10に
コンスタントに入り続ける地力をつけ、その
上でFIFAワールドカップの優勝を争う強豪国
の仲間入りをしたいという願いです。
そのためには、2015年、日本をこういう
姿にしたいと考えます。
1.競技環境:リーグ戦文化の定着
2007ナショナルトレセンU-12東海より훿AGC/JFAnews
リーグ戦文化が醸成され定着し、長期にわた
る拮抗した競技環境が整備され、日々の厳しい
切磋琢磨から選手が育つこと。
2.拠点整備:さまざまな活動の
核として
「JFAアカデミー」
、
「指導者養成」
、
「ゲーム環
を創出し、からだを動かすことが好きな子
境」
、
「トレセン」
、
「Jリーグ、Jクラブとの連
携」
、
「その他」を挙げました。
どもたちを増やす
●キッズエリートプログラム=ベースとして
今号より、それらを順次説明していきたい
と思います。
のキッズプログラムを行う中で、成長や能
力、関心の個人差の存在を認め、それぞれ
地域に拠点が整備され、そこを核としてトレ
セン活動、指導者養成、アカデミー等が積極的
の能力や関心に適したより良い刺激を与え
「JFA2005年宣言」の夢
に展開され、有効に発信されること。
ていく。
“エリート”という言葉をあえて使うのは、
もちろん全国の皆さんに大変な労力をかけ
ていることは承知しています。しかし、ここ
日本社会における「平等」の概念への提言
であり、真の意味での“エリート”を浸透
優れたフットボーラーとしての基礎を築く年
で頑張らないと、おそらく20年先、30年先
させ、サッカーの面で言えばその才能と努
代であるU-12指導の重要性が認識され、子ども
もまだ同じような議論を同じように続けてい
ることになるのではないかと思います。
力で培った能力を遺憾なく発揮して活躍
し、社会にさまざまな面で貢献できるよう
「JFA2005年宣言」の夢。その姿を思い描
き、これを共有して皆の手で、確信を持って
な選手を育てていきたいと考えています。
追求し続けていきたいと思います。
キッズ年代の目標
3.U-12年代の重要性の認識
たちが全国で日常的に質の高い指導を受けられ
る環境が整備されていること。
4.キッズ年代の充実
キッズ年代で、全国で多くの子どもたちがス
ポーツ・サッカーに良い出会いをし、生涯スポ
ーツ・サッカーを愛し支えるしっかりとした基
礎を築くこと。
キッズ年代でスポーツ・サッカーに親しみ、コ
ーディネーションに優れ、技術の基礎を身につ
けた子どもたちがU-12へと進んでいくこと。
5.トレーニング環境:
指導者の質の向上
究極には、指導者の質があらゆる問題に関わ
る。
育成年代の選手たちが、全国で日常的に質の
高い指導を受けることができるよう、数多くの
質の高い指導者がベクトルを共有し活動してい
ること。
キッズ、
キッズエリート
キッズ、キッズエリート(∼U-10)を、
育成のためのより良い準備という
位置づけでU-12へつなげていく
概念の確認
キッズに対する取り組みは、ポスト2002、
ー、スポーツに親しみ、成長に適した刺激
を受けることで、生涯にわたりスポーツを
愛する人を増やすとともに、心身共に健康
でコーディネーションに優れた子どもたち
を日本全国で増やすこと。
②ゴールデンエイジ前の準備として、左右の
足でボールを自由自在に扱うことができる
FIFAワールドカップ自国開催を受けて、開始
ようになった状態で、U-12以降の育成を
されました。
ここで、それぞれの概念を確認しておきた
より充実させることができるようにする。
いと思います。
●キッズ=U-12に至る前の段階(U-6、U-8、
U-10)
主要な軸
その中で、キッズ年代の目標は、大きく、
以下になります。
①小さいころからからだを動かして、サッカ
育成を突き詰めれば突き詰めるほど、下の
年代で良い準備ができているかどうかが重要
になってきます。ただし、それはあくまで
U-6のサッカー、スポーツとの出会いから、 「年齢、成長に即した」準備です。その誤解
発育発達に応じて、その後への準備をして
のないよう、年齢、成長に即した中で、質の
これらに取り組むために、総合的な取り組
みの中で、主要な軸として、
「キッズ、キッ
いく。
●キッズプログラム=多くの子どもたちに、
ズエリート」、「U-12に対する取り組み」、
サッカー、スポーツとの良い出会いの機会
高い刺激を与えることで、その後の育成のた
めのしっかりとした土台をつくることができ
ます。
3
そしてそれは、普及の広いすそ野の大前提
があって、はじめて実現することです。
今までの主な取り組み
その目標のために、今までさまざまな取り
組みを重ねてきました。技術委員会としての
主な取り組みは以下の通りです。
・U-6、8、10キッズ指導ガイドラインの作
成
・指導者養成:
キッズリーダーインストラクター養成
⇒ キッズリーダー養成
その他の公認指導者講習会でキッズの内容
をカバー
・U-6、U-8・10キッズハンドブックの作成
・キッズプログラム、キッズエリートプログ
ラムリーフレットの作成
・保護者向けハンドブック「めざせベストサ
ポーター」の作成
・キッズドリルの作成
・JFAチャレンジゲーム めざせクラッキ/
2007JFAキッズサッカーフェスティバルより훿Jリーグフォト㈱
ムーズにしていく必要
期にきています。キッズ指導ガイドラインの
・キッズ年代に不適切なゲーム形式で行われ
る大会がある
内容を再検討し、キッズ年代にふさわしいゲ
ームのあり方、最近の新たな取り組みやキッ
・「めざせクラッキ」のより広い普及を
ズエリートの考え方、ガイドラインも含め
・保護者へのアプローチが不十分
・グリーンカードの普及が不十分
て、指導ガイドラインを更新することで、コ
ンセプトを再度確認し、徹底していきます。
めざせファンタジスタの作成
今後の主要な取り組み
現状の問題点
2.サッカー外へのアプローチの強化(教育機
2003年からの活動を受け、現状の問題点
関等)
キッズ年代に関しては、必ずしもサッカー
をとらえ、あらためて以下の点を中心に取り
に限定したものではなく、より広い対象への
十分な点、改善が必要な点が存在します。
・「キッズ」の概念、
「キッズエリート」の
組んでいきたいと考えます。
発信が目的です。キッズプログラムの考え方、
キッズ指導ガイドライン、保護者向けハンド
概念の理解と浸透が不十分
・キッズエリートプログラムのガイドライン
1.キッズ、キッズエリートのコンセプトの徹底
2003年からのさまざまな活動、キッズエ
ブック、めざせクラッキ等は、サッカーを越
えた対象へ届けたいものです。そのため、他
リートのリードFAによるトライアルを受け、
競技団体や教育機関等へのアプローチを強化
キッズエリートのガイドラインをまとめる時
し、広げていくことが必要と考えます。
取り組みを重ねてきた中で、現状、まだ不
の作成が必要
・4種年代への移行、種別を越えた連携をス
3.キッズから4種年代へのスムーズな移行
キッズとは、もともとU-12年代に至る過程
全体を想定したものであり、だからこそU-10
までとしていますが、一部、それが十分に理
解されておらず、U-6のことというイメージ
が強いケースがあります。また、大きな新規
事業として、キッズに特化する組織を組んで
取り組んできたことで、その努力でキッズ年
代自体の発展は大いに進みましたが、他の種
別のケースと同様、4種との連携、キッズか
ら4種への移行がうまくいっていないケース
があります。子どもたちが良い準備をして、
その後の過程に良い形で進むことができるよ
う、環境を整える必要があります。キッズU6でサッカーに出会い楽しんだ子どもたちが、
その後やる場を失うようなことがないよう、
その環境について考えていく必要がありま
2007JFAキッズサッカーフェスティバルより훿Jリーグフォト㈱
4
す。
4.保護者、関わる大人へのアプローチの強化
キッズの範囲に限りませんが、低い年代で
あればあるほど、保護者や関わる大人はポジ
ティブにもネガティブにも大きな影響を与え
ます。そのため保護者へのアプローチとし
て、ハンドブック「めざせベストサポータ
ー」を作成し、配布してきましたが、大会等
で見られる情景、あるいは指導者とのディス
カッションからは、まだまだ、保護者や周囲
の大人の理解、関わり方について、さまざま
な問題が挙げられます。ハンドブックのみで
なく、他の手段も検討し、アプローチを強化
していく必要があります。
これらの課題に、2008年より積極的に取
すべての子どもたちに良い準備をさせておく
ことが重要です。
主に以下の取り組みをしてきました。
・ナショナルトレセンU-12を9地域開催へ
また、U-12年代ではより多くの子どもたち
従来、全国で1カ所の開催でしたが、それ
に大きな可能性があるため、より多くの選手
に日常的に良い働きかけをする必要がありま
では対象とできる参加選手が非常に限られて
しまいます。この年代ではより多くの選手に
す。
大きな可能性があり、良い刺激を広く与えた
いと考え、参加選手を増やすことを主な目的
この年代の主要な目標
そのため、この年代に関しては、以下の点
に地域ごとの開催に変更しました。
・公認C級コーチ養成講習会カリキュラム改
訂
が主要な目標になります。
・U-12指導の向上
公認C級コーチはU-12年代の指導を内容と
したライセンスです。今までも4年に一度、
・質の高い地区レベルのトレセン活動を、
全国で戦略的に充実させる。
カリキュラムを見直しています。2007年が
その年にあたり、2006年FIFAワールドカッ
・U-12に適したトレーニング環境、試合環 プドイツ大会のテクニカルレポート、JFAテ
り組んでいきたいと考えています。この年代
境の改善
のサッカー・スポーツ環境が、充実した質の
高いものとなることは、日本サッカー全体を
クニカルアドバイザーであるクロード・デュ
ソー氏とのディスカッション等を踏まえ、現
今までの主な取り組み
直接・間接に支える大きな堅固な土台となり
ます。
代サッカーのトレンド、その中で日本サッカ
ーの目指すべき方向性、そのためにU-12でし
この年代に関しては、技術委員会として、
ておくべき準備を考え、カリキュラムを改訂
U-12に対する
取り組み
サッカー選手としての将来の成長に
必要なベースとしての基本要素を
この年代で高いレベルで獲得しておく
2007年に韓国で行われたFIFA U-17ワール
ドカップでは、ドイツがそれまでのイメージ
を破るクリエイティブなプレーで3位という
結果を残しました。これを紐解いてみると、
ドイツは2000年のUEFA EURO(ヨーロッ
パ選手権)でグループリーグ1勝もできず姿
を消すという結果に終わりました。そのどん
2007ナショナルトレセンU-12東海より훿AGC/JFAnews
底の中で彼らが採った道は、付け焼刃的な代
表強化ではなく、まさにU-12年代からの再構
築でした。
この年代の位置づけ
U-12年代は、個人としての基礎作りを完成
させるU-13、U-14年代の前段階として重要
な準備期間となります。以前より、ゴールデ
ンエイジという技術習得に有利な特別な期間
として重視されてきました。そのレベルをさ
らに上げる必要があります。この年代で必要
な準備ができていないと、いかにそれ以外
の、例えば体格や運動能力の面で人より秀で
た面を持つようになったとしても、そのスペ
シャリティーを高いレベルで発揮できるよう
には決してなりません。そういった意味で、
2007年度公認A級コーチU-12養成講習会より훿Jリーグフォト㈱
5
しました。
・公認A級コーチU-12を新設
従来のライセンスの構成は、公認C級コー
チがU-12、同B級コーチがU-18、同A級コー
チがプロを除くすべて、という対象の内容と
なっていましたが、U-12年代の特別な時期と
して重視し、その専門性を高め、この年代の
スペシャリストを養成するために、2007年
度に公認A級コーチU-12を新設しました。
・U-12指導指針作成(2004、2007)
2003年より、キッズU-6をはじめとし、2
歳刻みで年代別指導指針を作成しました。
2006年FIFAワールドカップドイツ大会のテ
クニカルレポート、テクニカルアドバイザー
であるクロード・デュソー氏とのディスカッ
ション等を踏まえ、現代サッカーのトレン
ド、その中で日本サッカーの目指すべき方向
性、そのためにU-12でしておくべき準備を考
え、指導指針2007年版を作成しました。
・U-12年代での8対8の推奨
U-12年代でサッカーを学ぶのにより適した
第31回全日本少年サッカー大会より훿Jリーグフォト㈱
をもっと上げる必要がある
・この年代でふさわしいゲーム環境
ゲーム形式として8対8を推奨してきました。
①左右の足で自由自在にボールを扱える選手
はあまり多くありません。
この年代の子どもがサッカーを学ぶのにふ
さわしいゲーム環境になっていない現実があ
・キッズ∼U-12年代でのグリーンカードの推
奨
②止まった状態でのボール扱いはできても、
実際のゲーム局面で必要となる動きながら
ります。まず第一にゲーム形式、そして、指
導者や保護者等環境を含めた問題もありま
フェアプレーのポジティブなとらえ方とし
て、グリーンカードを作成、推奨してきまし
の技術となるとまだまだ不十分です。
③パスをしたら動く、ボールに寄るといった
す。
た。
個人の基本が習慣としては身についていま
せん。
④パスかドリブルかという両方の選択肢がな
現状の問題点
その中で、現状、問題点としては以下が挙
げられます。
・子どもたちの個人技術、個人戦術習得の質
左図のようになっています。このシステムに
よって、ナショナルトレセンからの発信が、
なりがちです。
地域、都道府県、地区へと伝えられる仕組み
・多くの子どもたちに良い刺激を有効に与え
る必要がある
ナショナルトレセン
地域トレセン
都道府県トレセン
地区トレセン
Player
指導者
Coach
チーム
トレセンシステムにおける情報の流れは、
く、ある一定のレベルでは思うようにプレ
ーできても、レベルが高くなるとできなく
情報の流れ
選手
「モデル地区トレセン」の
トライアル
になっており、この機能によって全国で活動
が展開されています。
年令が低いほど、
可能性がある選手は
ただし、それが先に行けば行くほど、伝達
に多くの人・時間がかかることで、間接的な
多くどこでも存在し
アプローチとなり、情報の迅速で正確な伝達
ます。U-12の場合、
より多くの可能性が
に困難をきたす場合が多々あります。各地区
で頑張ってくれている指導者に十分なサポー
ある子どもたちに刺
激を与えるには、地
ト、コミュニケーションができていなかった
という現状があります。
区トレセン単位の活
その一方で、育成のベースを築くU-12年代
動が有効ですが、間
接的なアプローチと
の重要性を考えると、下の年代であればある
ほど可能性は広く、多くの選手にあると言
なるため、情報やコ
ンセプトの迅速で正
え、したがって、多くの選手に質の高いアプ
ローチをする必要があります。また、下の年
確な伝達が困難であ
る場合が多いのが現
代であればあるほど、生活圏内を越えた活動
が困難であり、日常生活の環境の中で、頻度
状です。
高く良い刺激を与える方が効果的となりま
す。
6
つまり、多くの可能性のある全国の子ども
たちに、日常生活圏内で、なるべく頻度高く
次号以降提示するとともに、普及、徹底のた
めに有効な発信方法を、検討していきたいと
さらに、多くの選手に良い準備をさせる方
法の検討として、ピリオド制の導入、複数チ
良い刺激を与えたい。そのためには、地区ト
レセンの活用が有用であり、その充実が望ま
考えています。
U-12年代に関しては、8対8を推奨してい
ーム参加等を考えていくとともに、あらゆる
ポジションを経験させていくことも考えてい
れます。そして、良い刺激を与えるために、
ます。この年代の育成において、各選手がよ
く必要があります。
質を重視する必要があり、間接的なアプロー
チだけですまさず、既存の地区トレセンシス
り多くボールに触り、常にプレーに関わり続
ける環境が必要です。そのためにはハーフピ
U-12にふさわしい、日常生活圏内でのゲー
ム環境の整備も併せて行っていきます。次の
テムへ、直接的にアプローチできる可能性を
探ることとしました。それが「モデル地区ト
ッチでの8対8が有効と考えます(図1)
。
また、長期にわたり日本の課題であるゴー
年代へスムーズに移行していくことも重要で
す。
レセン」です。
ル前の攻防のレベルを上げるためには、ゴー
この年代もキッズ同様、大人(親や保護
「モデル地区トレセン」の考え方は、以下
の通りです。
ル前のシーンが頻繁に出現するという意味で
も、8対8は有効です(図2)
。ましてや、さら
者)の関わり方の影響が非常に大きいもので
す。適切な関わり方について、この年代でも
能力の高い子どもたちが無理なく集まるこ
とのできる生活圏内での地区トレセンで、高
に下の年代では、8対8、4対4等のゲームを
多くとり入れていく必要があります。これを
発信を強化していく必要があります。
い頻度で(週1回目標)
、公認A級コーチU-12
保持者によるトレセン活動を実施する。JFA
さらに普及、徹底させていく必要があると考
えています。
※次号以降、他の項目についても説明していきます。
のコンセプトのもとA級コーチU-12指導者が
直接的に指導することにより、さらなる質の
向上を図る。A級コーチU-12取得者の中から、
図1
指導者を認定して選出していき、
「地区トレ
セン」の内容、質、方向性に直接JFAがサポ
140
ートすることを狙いとします。担当指導者
120
は、定期的な研修により、コンセプトの確認
を行いつつ活動します。
100
この名称が示す通り、地区トレセンの「モ
デル」となり、周囲の他の地区トレセンへの
80
発信、レベルアップの一助になることも期待
60
します。
これには、参考としてドイツやフランス
40
等、海外の事例があります。世界も、この年
代へ広く直接的にアプローチする方向性にな
ボールタッチ回数(5分間あたり)
128
125
108
72
0
4対4
5対5
6対6
7対7
8対8
11対11
サッカーおもしろ科学 ー科学的分析に基づいた合理的な練習ー
掛水隆 大橋二郎 赤木真二 1996年 東京電気大学出版局
2008∼2009年をトライアルとし、A級コー
チU-12養成講習会の展開とともに、この数を
図2
BOX近辺の攻防∼試合人数による比較
11人制:全日本少年サッカー大会
8人制:チビリンピック
の数字、速度はもっともっと上げていかなく
てはならないところです。
U-12にふさわしい
ゲーム環境
123
20
ってきています。
増やし、2015年には150カ所、最終的には300
カ所を目標としています。可能であれば、こ
114
シュート数
このたび、
「育成の観点」をより強く出し
た形で、大会ガイドラインを改訂しました。
この趣旨、意図を効果的に発信し、徹底して
いきたいと考えています。
選手はトレーニング(指導)とゲームで成
(準決勝・決勝)
11人制
8人制
ペナルティー
エリア
進入回数
長していきます。ゲームのあり方が育成の成
果に与える影響は、非常に大きいものです。
大会が選手を育てると言っても過言ではあり
ません。この大会ガイドラインについては、
0.0
1.0
2.0
3.0
4.0
5.0
※フィールドプレーヤー 1人 1試合(40分)あたり
7
公認A級コーチ
U-12養成講習会
報告
【報告者】眞藤邦彦
(JFA技術委員/
JFAナショナルトレセンコーチ
指導者養成チーフ)
ミッションステートメント
2005年宣言
公認A級コーチU-12養成講習会は、
「JFA2005年宣言」を達成していくために、と
りわけ、その後の育成の土台の準備としてU-
ーマでトレーニング2とゲームを行いました。
日々、子どもたちが入れ変わるので、実際の
り、戸惑いを感じながらの指導実践になって
いました。ところが現場で指導実践を積み重
指導では子どもたちの観察、把握から始ま
ねてきている方々は、子どもたちの変化をつ
ぶさにとらえ、目の前の子どもに合った指導
公認A級コーチU-12養成講習会
主催・主管 (財)日本サッカー協会
公認B級コーチ以上保持者で、
受講資格 U-12年代の指導現場に携わり、
コーチングデモンストレーションが
できること。
【前期】5日間
実技(10.5時間)、講義(10.5時間)、
カリキュラム JFAアカデミー福島研修など
【後期】5日間
概要
実技(2.5時間)、講義(1.5時間)、
JFAアカデミー福島研修、
導実践試験など
12年代の指導が重要であると考え、開設しま
した。
目的は育成年代の指導のスペシャリストを
養成することです。U-12年代のトレーニング
環境やゲーム環境の改善に向けて取り組める
地域のリーダーになっていただくための専門
のカリキュラムを組み込みました。
特に後期では、プレゼンテーション実習や
指導実践を通しての個々のスキルアップを図
りました。受講者は前期と後期の間で地域に
おけるゲーム環境やトレーニング環境を見聞
し、成果と課題をまとめ、より良くするため
の改善プランを練るためにインターンシップ
を行ってきました。そして、その中から一つ
に絞ってプレゼンテーションをしました。ま
た、後期で指導実践するテーマをプランニン
グし、実践してきたことを子どもたちに指導
しました。
そのほか、前期に引き続きクロード・デュ
ソー氏のレクチャー、布啓一郎JFA技術委員
2007年度公認A級コーチU-12養成講習会より훿Jリーグフォト㈱
会副委員長による「たくましい選手を育てる
ために」をテーマとした講義、メディカルと
現場指導との関係を、オリンピック世代以下
のユース年代の代表チームドクターを務める
加藤晴康先生に講義していただきました。
『自分を変えたければ、
今までの常識を
疑ってみる必要がある。
』
クロード・デュソー
指導実践では、地域のU-12年代の子どもた
ちの協力を受けて行いました。受講者は同じ
テーマで1回目はウォームアップからトレー
ニング1を指導実践し、そこでディスカッシ
ョンされた内容を参考に、より良いものを目
指しました。2回目の指導実践では、同じテ
8
2007ナショナルトレセンU-12東海より훿AGC/JFAnews
を行うことができているようでした。まさに
最適なサッカー経験、プレーの確保ができて
おり、パフォーマンスは向上していきまし
た。そして、なにより子どもたち自身がサッ
カーをやっている実感をつかみ、表情が生き
生きとしていた様子を見ていると、私自身が
うれしくなると同時に、このようなシーンが
全国至るところで見られるようにしていきた
いと強く感じました。日々子どもたちのレベ
ルが変わったことは、受講者にとっても、指
導がうまくいっているのか、そうでないのか
が実感でき、受講者同士でのディスカッショ
です。タレントは偶然に生まれ出てくるもの
ではなく、計画によって生まれるものです。
していきたいと考えています。そこで今後
は、地域で戦略的に可能性のある指導者を受
ンにも反映されて良かったのではないかと考
えます。
少なくともそうすることで少しでもタレント
の生まれる確率やスピードを高めていかなく
講させていただきたいと考えています。
JFAでは今後、U-12年代のモデル地区トレ
てはなりません。そのために、一つは地域の
センを展開しようと考えています。ぜひ、今
回の修了生から関われる指導者が出てきてほ
指導者を教育することが必要です。なぜな
ら、タレントをヒーローへと変えていく過程
A級コーチU-12を終えた次の週、Jヴィレッ
しいと願っています。
に関わる指導者だからです。そしてもう一つ
は、子どもたちを取り囲むゲーム環境の改善
ジにおいてJFAアカデミー福島3期生の最終選
考会がありました。対象はU-12年代の子ども
に向けての指導者の輪を広げていくことで
たちです。その際、ゲームを見ていて驚いた
す。U-12年代のサッカー環境をより良いもの
にしていくために、このA級コーチU-12養成
ことを述べてまとめにしたいと思います。
ゲーム中、子どもたちはそれぞれが名前を
講習会が存在するのです。
呼び合い、戦術的なコーチングを激しくして
『これからの取り組みに1つの
答えはないかもしれない』
地域でのトレーニング環境、ゲーム環境の
現状や課題、より良くするための改善プラン
を取りまとめたプレゼンテーションでは、受
子どもには無限の
可能性がある
いました。また、味方の良いプレーを賞賛
講者同士の意見やJFAの意見を交えて活発な
ディスカッションがなされました。それぞれ
約束を果たすための
ロードマップ
が発言内容に責任を持って活発にでき、大変
2005年宣言の約束を果たすために、どの
な闘いが展開されていました。もちろん、最
うれしく思いました。受講者を20名に絞った
ことが良かったのではないかと考えていま
ような取り組みを今後していくことが必要で
あるかを考えたとき、日本全国津々浦々にU-
終選考だけに、子どもたちのモチベーション
が高かったことは当たり前ですが、こうした
す。さまざまな地域の取り組みや情報交換は
大変有意義であり、それぞれが参考になりま
12年代のトレセンで質の高い指導がなされる
ようにすること。そのためにはその中でJFA
ゲームの光景が至るところで見られればいい
のにと思いました。
した。これからさらに地域の特性を踏まえ、
のコンセプトを伝えていける指導者の輩出が
子どもたちは本来、闘う姿勢を持ち、ゴー
創造的な独自性を持った取り組みがなされる
ための方向性が見出せたのではないでしょう
急務です。そのためにA級コーチU-12の修了
生の中から適任者を選び、質の高い指導が継
ルを目指し、ボールを奪うことをすでに知っ
ているのではないでしょうか。もしかしたら
か。いずれにしても、今回の一期生が今後と
もしっかりとしたつながりを保ち、それぞれ
続的に行われる環境をつくり出していく必要
性を感じています。そこで、将来的には全国
大人がそれを良くない方へ変えているのでは
ないのかと考えたのは私だけでしょうか。あ
の地域で活躍されることを願っています。そ
で300カ所のモデル地区トレセンを展開しよ
らためて指導者養成のあり方を考えさせられ
のための応援はJFAとしてさらに強めたいと
考えています。
うと考えていますが、2008年はトライアル
として展開したいと思います。子どもたちが
ました。それにしても11月のJヴィレッジの
夕焼けは美しかった。目の前にいる子どもた
「これからの取り組みに1つの答えはない
かもしれない」
。しかし、A級コーチU-12の
日常的に月2回以上、できれば週1回程度活動
でき、しかも生活圏内で子どもたちが負担を
ちも、自然の美しさを愛し、サッカーの楽し
さをいつまでも追求してほしいと感じた一日
修了生同士がJFAを交えて地域での取り組み
感じないような範囲での活動ができるように
でした。
し、ミスしたときは互いが励まし合っていま
した。ゲームも激しくフェアでスピーディー
の情報交換をしつつ、互いのエネルギーを受
け取りながら進めていくことが大事です。そ
して、さらに大きなエネルギーにしていくた
めにも地域での仲間づくりが重要な鍵となっ
ている気がします。ディスカッションでも、
決して簡単ではないさまざまな課題を解決に
近づけていくためには「まずは仲間を増やし
ていくしかない」という意見は何度も出てき
ました。キーワードは「仲間づくり」と言え
ると思います。JFAのコンセプトに深い確信
を持ち、ビジョンを持って地域に浸透させて
いくことが大事なのです。
『タレントは偶然に生まれない』
アンディー・ロクスブルグ
われわれの役割は、今日の若いタレントた
ちを明日のヒーローに変えていくことです。
そして計画的にタレントを輩出することなの
2007年度公認A級コーチU-12養成講習会より훿Jリーグフォト㈱
9
훿Jリーグフォト㈱
TOYOTA プレゼンツ
FIFAクラブワールドカップジャパン 2007
JFAテクニカルスタディ
(抜粋)
【報告者】
吉田靖
(JFAテクニカルスタディグループ/JFA技術委員)
1.大会概要
り、大会の価値が高くなったことによるもの
3.チーム分析
(1)大会期間:2007年12月7日∼16日
と思われる。このことは、ヨーロッパ代表の
ACミランが十分な準備期間をとって大会に
(1)ACミラン
(2)会場:横浜国際総合競技場、
臨んだことからもうかがわれる(前回のヨー
ロッパ代表のFCバルセロナ/スペインは大
〔攻撃〕
①ファストブレイク
国立競技場、豊田スタジアム
会直前に来日した)
。
基本的にはボールを素早く動かしながら攻
優勝したACミランは世界の最高レベルの
プレーを見せてくれた。現在は、FIFAワール
撃を組み立ててくるが、ボールを奪ったと
き、相手の守備組織が整わず、スペースが相
ヨーロッパ:ACミラン(イタリア)
南米:ボカ・ジュニアーズ
ドカップと同様、世界のサッカーのトレンド
はUEFAチャンピオンズリーグで決まると言
手陣にあるときはそこをシンプルに突き、決
定的チャンスをつくっていた。特に カカは
(アルゼンチン)
われている。そのUEFAでも実績がトップク
一瞬の相手の隙をゴールに結びつける力を持
っていた。
(3)参加チーム
北中米カリブ海:CFパチューカ
(メキシコ)
ラスのACミランの真剣勝負の試合を観るこ
とができたことは、われわれにとって世界の
アフリカ:エトワール・サヘル
(チュニジア)
スタンダードを知る上で非常に有益であった
と思う。また決勝で惜しくも敗れたボカ・ジ
相手の守備組織が整っているときは、 ア
ンドレア・ピルロを中心にDF、MFでボール
オセアニア:ワイタケレ・ユナイテッド
(ニュージーランド)
ュニアーズも、ACミランに決して劣らない
すばらしいチームであった。
を素早く動かしながらアタッキングエリアに
進入してくる。
アジア:浦和レッズ、セパハン
(AFCチャンピオンリーグ2007
準優勝/イラン)
2.大会総括
このような大会形式で日本開催されるのは
今回で3回目になるが、今までより各試合と
も好ゲームが展開され、レベルの高い大会と
なった。これは、この大会の認知度が高ま
12
②ビルドアップ
また、大会が大いに盛り上がった要因の一
個々のパスのスピード、判断が早い(ワン
つに、浦和レッズがアジア代表として今大会
初めて日本のチームとして参加したことが挙
タッチが多い)ため、相手はプレスをかけら
れず、後手後手の対応となっていた。またボ
げられる。世界の強豪相手に好ゲームを展開
し、3位という結果を残した健闘は賞賛され
ールだけでなく、選手も流動的に動くため、
相手は捕まえきれなかった。
るものである。日本のトップが出場し、特に
特に ピルロはボールを素早く動かすだけ
ACミランと真剣勝負ができたことは、日本
にとって非常に有益であった。
でなく、あるときは自分でキープして(ボー
ルの置き所が良いため、相手に奪うチャンス
を与えない)
、攻撃のリズムに変化を与えた
前を守る守備に切り替えていた。
全員の戦術理解が高いため、状況に応じた
(3)浦和レッズ
守備網をその都度構築していたように思う。
9
インザーギ
( 11 ジラルディーノ)
22
カカ
23
アンブロ
シーニ
10
セードルフ
21
ピルロ
8
ガットゥーゾ
3
4
13
25
マルディーニ カラーゼ ネスタ ボネーラ
44
( オ
ッド)
18
( ヤンクロフスキ)
1
ジダ
り、ピンポイントのパスを通してゴールに結
びつけることもできる特別の選手であった。
③崩し∼ゴール
中盤からアタッキングサードでもボールを
素早く、幅広く動かしながら、選手も流動的
に動いて、相手守備陣の変化からスペースを
見つけ、スピードアップしてゴールにしかけ
てくる。相手が中央を固めてきたらサイドを
使い、サイドを使いながら中央が空いてきた
らバイタルエリアにしかけてくる変化のある
攻撃は相手守備陣を混乱させていた。
ただ、決定的なチャンスをつくっていたの
は、組織的なボール回しから相手に隙ができ
たときに見せる カカ、⑩クラレンス・セー
ドルフ、⑨フィリッポ・インザーギ等の個人
技であった。⑨インザーギのDFの裏への飛
またMF、DFの選手(⑬アレッサンドロ・
ネスタ、⑧ジェンナーロ・ガットゥーゾ等)
21
ワシントン
のインターセプトに対する意識の高さには驚
きを覚えた。パススピードが少しでも弱かっ
たり、ある程度前線が方向を限定してきた
ら、必ずといっていいほどボールにアタック
9
永井
17
長谷部
16
相馬
22
阿部
13
鈴木
3
細貝
に行っていた。近くで守備をしながら裏も取
られない対応は、まさしくワールドクラスの
守備者であった。中盤の⑧ガットゥーゾ、
5
ネネ
4
闘莉王
マッシモ・アンブロシー二等のMFの守備範
囲の広さも特質されるべきである。もちろん
2
坪井
23
都築
前線の カカ、⑩セードルフ、⑨インザーギ
等もしっかりと守備のタスクをこなしていた
ように思う。
しっかりした守備から素早い攻撃で数多く
のチャンスをつくっていた。特に守備におけ
るゴール前での粘り強い対応は見応えがあっ
た(④田中マルクス闘莉王、②坪井慶介)
。
〔攻守の切り替え〕
攻守の切り替えが速いため、攻守とも常に
先手を取ってゲームを進めていた。全員がま
さしくハードワークしていた。前線の選手
攻撃では、ACミラン戦では中盤で思うよ
うにボールを動かせないため、あまりチャン
スをつくれなかったが、準々決勝のセパハン
も、守備時も大きく動いてハードワークして
おり、そのため、対戦相手に「つかめなかっ
戦、3位決定戦のエトワール・サヘル戦では、
阿部勇樹、⑰長谷部誠、⑬鈴木啓太等の中
た」と言わしめている。そのハードワークの
中で個々の特長を出す選手の集まりであっ
盤の組み立てから、⑯相馬崇人のサイドの突
、⑨永井雄一郎
破、 ワシントン(3得点)
(1得点)の決定力で4点を奪った。
た。
(4)エトワール・サヘル
(2)ボカ・ジュニアーズ
び出しのタイミング、そのための相手DFと
の駆け引きはすばらしいものであった。特に
MVPになった カカは、一瞬のスピードで
9
パレルモ
相手を置き去りにできるドリブルを持ってお
り、相手チームに個人で脅威を与えていた。
14
パラシオ
19
カルドソ
〔守備〕
相手陣でもボールを失うと基本的には切り
替えを速くし、すぐボールにアタックに行っ
ていた(前から人を抑えに行く)
。アタック
9
シェルミティ
28
( ベンディ
ファラー)
24
バネガ
15
ゴンサレス
( 5 バタグリア)
18
トラウィ
19
アリナフハ
5
バタグリア
( 22 バルガス)
5
モレル
に行けないときは無理せずに全員が素早く帰
陣し、中盤にブロックをつくりそこに入って
29
パレッタ
20
4
マイダナ イバーラ
12
カランタ
14
サッコ
11
メリア
4
ファルヒ
25
オグンビイ
24
ナリー
2
ゲザル
13
フレジュ
1
バルブーリ
きたボールにプレスをかける守備を行ってい
た。ボールの失い方が悪いとき等は、中盤に
ブロックをつくることできないため、ゴール
攻撃は、ACミランと同様、素早いボール
中盤にしっかりとしたコンパクトなブロッ
の動かしから攻撃を組み立てる。ただショー
トパスをつなぐだけでなく、時々前線の⑨マ
クをつくり、そこでボールを奪ってからの素
早い攻撃が持ち味。非常によく組織された守
ルティン・パレルモ、⑭ロドリゴ・パラシオ
へのロングボールもあり、変化のある攻撃か
備で、相手がポゼッションしていても冷静で
あり、したたかなメンタリティーがあった。
らチャンスをつくっていた。
特にセンターDFとダブルボランチのつくる
守備では、前線から積極的に奪いに行く守
備とゴールを守る守備の使い分けがうまく、
ブロックは強固で、相手にバイタルエリアを
簡単に使わせない守備は強力であった。
組織的な守備を構築していた。ただし、組織
だけでなく、個々の1対1の守備の強さも目立
攻撃ではボールを奪ってからの素早い攻め
には迫力があった(⑨アミン・シェルミティ
っていた。
のスピード)
。ただ、ボカ・ジュニアーズ戦
⑭パラシオの運動量と質の高い動き出し、
エベル・バネガのキープ力等、個々の能力
ACミラン・カカ훿Jリーグフォト㈱
では相手の守備組織が整うと攻撃の糸口を見
つけられずにいた。
の高さは際立っていた。
13
らの技術の精度の高さは世界トップクラス
であった。
界のトップクラスであった。たとえ最後に
シュートをうたれようが、そのシュートを
⑤中盤の組み立てからゴールへのしかけにお
身体でほとんどブロックしていた。イタリ
4.技術・戦術分析
(1)攻撃
①ボールを奪ってからの素早い攻撃(ファス
トブレイク)が、やはり得点を奪うには重
いては、相手の守備組織に応じて攻撃をし
かけられなくてはいけなくなっている。例
ア伝統のカテナチオの守備であった。
要である。守備の組織は年々強固になって
おり、守備が整ってから崩すのは非常に難
えば相手が中央を固めてきたらサイドを使
い、サイドを使いながら中央が空いてきた
(3)切り替え
攻撃から守備への切り替え、守備から攻撃
しくなっている(ACミラン、エトワー
ル・サヘル、ボカ・ジュニアーズ、浦和レ
らバイタルエリアにしかけてくる、相手を
観た変化のある攻撃ができないと強固の守
への切り替えとも非常に速くなり、攻守一
体となったサッカーが展開されていた。そ
備組織は崩せない。
のためには、11人全員がチームのために
ッズ)
。
②攻撃から守備の切り替えが速くなり、簡単
には素早い攻撃を許してくれない状況にな
⑥決定的な場面をつくっていたのは相手の隙
を見つけて突破する個人であった。
ハードワークしていた。
5.その他
っている。相手の守備が整う前だけでな
く、相手の守備が整ってからも、ある程度
それは、ACミラン カカのようなドリブ
ル突破であったり、⑨インザーギのよう 相手の守備を崩しに行けないと現代サッカ
なボールを持ってない選手の突破であった
各チームのゴールキーパー(GK)は非常
ーでは通用しなくなっている(ACミラン、
ボカ・ジュニアーズと浦和レッズ、エトワ
りする。ただその個人も組織プレーの中で
自分の特徴を発揮していたのは印象に残った
にレベルの高いGKであった。ACミランの①
ジダは大型だが、安定した守備力だけでな
ール・サヘルの差)
。
つまり、相手の状況により、ファストブレ
(1)ゴールキーパー
く、守備範囲の広さは見事であった。
(2)守備
イクもビルドアップもできないと、世界で
①ACミラン、ボカ・ジュニアーズはボール
は通用しなくなっている。
③攻撃を組み立てる(ビルドアップ)ために
を失ったら、チャンスがあれば積極的に中
盤の前方からプレスをかけていた。そのた
ACミラン、エトワール・サヘルは大型の
選手が多く、パワフルでフィジカルコンタク
は、DF、MFで相手の守備組織に応じて意
図的にボールを動かせなくてはならない
めには全員の守備意識の高さと運動量、切
り替えの速さが必要になる。ACミランの
トも強かった。ボカ・ジュニアーズ、パチュ
ーカ等は日本人と変わらない体格であった
(ACミラン、ボカ・ジュニアーズ)
。ただ
カカ、⑩セードルフ、⑨インザーギ等
が、フィジカルコンタクトも強く、見習う面
中盤でのプレスは年々厳しくなっているこ
とから、素早いボールの動かしから縦パス
も積極的に守備に参加していた。
②センターDFとボランチでつくるブロック
を入れていかないとすべて潰されてしま
う。そのためにはパスのスピードと判断の
は年々強固になっている。エトワール・サ
ヘルのパチューカ戦、ボカ・ジュニアーズ
早さ(ワンタッチプレーの重要性)が重要
である。ACミランの ピルロを中心とし
戦のバイタルエリアに入れさせない守備は
見事であった。
たビルドアップのボールの動かしの速さ
③ACミランの中盤の⑧ガットゥーゾ、 ア
(2)フィジカル
があった。
6.まとめ
やはり世界のサッカーはより早く、よりタ
イト(ハイプレッシャー)になってきてい
る。それを打破するには判断の早さと流動性
(活動量)が求められている。チーム自体、
ンブロシー二等のMFの守備範囲の広さも
特筆されるべきである。
攻守ともに組織化され、洗練したフットボー
ルを志向しているが、その組織を崩すのは
ら、ボールを素早く動かすだけでは相手の
守備を混乱させることができなくなってい
④ACミランのDFラインの1対1の守備の強さ
は世界のトップクラスであった。特に⑬ネ
ACミラン カカのような強烈な個人であっ
た。その カカにしてもチームのために献身
る。流動的に人が動きながらボールも動か
スタ、④カハ・カラーゼのインターセプト
的にプレーしていた姿は印象に残った。
していくことができないと、世界のトップ
レベルではプレスを回避できなくなってい
を常に狙っている守備は見事であった。そ
の1対1の守備の強さがあるため、ACミラ
また、ミランの組織的な強固な守備網の元
は個々の1対1の守備の強さから出ている。つ
るようだ。攻撃では運動量と動きながらの
技術がより重要になっている。ACミラン
ンは攻撃に人数をかけることができたので
はないか(あるときは相手2トップに対し
まり世界のトップで勝つには、組織だけでも
だめであり、強烈な個人能力だけでもだめで
てセンターDF2人で守っていた)
。
あり、その両方が必要である。基本+個人の
は、まさしく世界のトップクラスである。
④守備が強固で組織的になってきたことか
の カカ、⑩セードルフを含めた5人のMF
の運動量、ポジションチェンジと動きなが
⑤ACミランのゴール前の守備もまさしく世
■大会結果
特長を持った個が、チームのために献身的に
プレーすることなくして世界のトップに立つ
ことができない時代になってきているのでは
ないだろうか。
ボカ・ジュニアーズ
(アルゼンチン)
エトワール・サヘル
(チュニジア)
CFパチューカ
(メキシコ)
浦和レッズ
(日本)
セパハン
(イラン)
ワイタケレ・ユナイテッド
(ニュージランド)
ACミラン
(イタリア)
1
0
3
1
1
0
2
4
3
1
0
1
優勝: ACミラン(イタリア)
準優勝: ボカ・ジュニアーズ(アルゼンチン)
第3位: 浦和レッズ(日本)
【3位決定戦】
エトワール・サヘル
浦和レッズ
14
PK2-4
2
2
日本の代表として出場した浦和レッズ。見事3位に輝いた
훿Jリーグフォト㈱
連 載 第 18 回
キッズドリル紹介
1 迷路オニごっこ
<オーガナイズ>
・グリッドの中に■や●など大小さまざまな島をつくる
・島にはオニも子も入れない
・グリッドの中でオニごっこ。迷路に見立てて
STEP
!
キーファクター
(注意)
・オニは走れない
・オニは急に反転
すると、子同士
でぶつかるので
反転前は立ち止
まること
・ボールを持たずにオニごっこ
・ドリブルで迷路を動き回る(オニなし)
・ドリブル(ボール運び)でオニごっこ
↑あわてないで、ボールの近くで、
いつでも止まったりできるように声かけを行う
オニの動きを良く見て → 子はオニの動きを見て、オニ
が来る方と反対に逃げる → 島の影に隠れる
=オニ(コーチ)
=子(子ども)
〔サガン鳥栖 井上裕介〕
2 迷路を抜けてオニ退治
①
<オーガナイズ>
・①から次の人がレールを使ってボールを転がす
・オニ退治に行く人は、②に立って①から転がってきた
ボールを足の裏でストップ。
反対を向いてオニ(コーチ)がいない所をドリブルで
抜ける
・③のラインにボールを止めて、オニ(コーチ)にボー
ルをぶつけて退治する
!
キーファクター
・コーンとバーでつくった
ボール用すべり台を転がす
②
すべり台から転がってくるボールとオニの動きを
良く見て反応(判断)する
③
(コーンの数は多くてもOK)
〔サガン鳥栖 井上裕介〕
3 宝物を奪え
<オーガナイズ>
・ はオニにタッチされないように宝物を金庫に持って
いく
・ はタッチされたら「でんぐり返し」をすると復活で
きる
・役割を交代して対抗戦にします
!
キーファクター
・手をつないだことにより、2人のコミュニケーショ
ンが大切になる。
状況に応じて、ボールを増減したり、ゴールを増減
してもOK。
宝物
オニ
金庫
〔川崎フロンターレ 藤原隆詞〕
2007Jリーグアカデミー キッズ研修会より
16
一語一会
指導者は常に新たなチャレンジを受け入れなくてはな
らない。なぜなら、成長したい、もっとうまくなりたいと
願っているプレーヤー達を指導するのだから、コーチ
もより良くならなくてはならない。さ
もないとアンバラン
さもないとアンバラ
スが生じ、全く機能しなくなってしまう。
ホルガー・オジェック
ホルガー・オジェック氏(FIFAクラブワールドカップ ジャパン 2007より) Jリーグフォト㈱
ホルガー・オジェック
(浦和レッズ監督、前FIFAテクニカルディベロップメントヘッド)
第4回フットボールカンファレンス(2005年)での言葉。
17
活動報告
Reports from
Japan National Teams
目指せ!世界のトップ10
(1)オン・ザ・ピッチ
U-18日本代表
●確かな技術 「正確にボールを扱える」
【報告者】牧内辰也(U-18日本代表監督)
●●●●●●●●●●●●●●●●●●
AFC U-19選手権予選
※2008年はU-19日本代表
1.概要
(1)日程・会場
直前キャンプ(新潟県十日町):2007年10月28日∼11月1日
大会期間(タイ・バンコク) :2007年11月6日∼18日
プレッシャー下であってもボールを自在に扱え、冷静にプレー
できる。コントロール、パス、ドルブル(しかけ)が自然な状態
で発揮できる。
●攻撃と守備の両方に関わる
奪ったら攻撃をしかけ、奪われたらすぐさまボールに、人にチ
ャレンジできる。単発ではなく味方と連動し、連続しながら試合
を通して機能する。
●走力
奪ったら前方へ飛び出し、ボールを追い越してチャンスメイク
し、ゴールに絡む。奪われたらすぐさま帰陣し、守備に対応でき
(2)環境
①気温:日中は30∼33℃、湿度70%前後、夕方は25℃前後で湿度
は低く、過ごしやすかった。
②グラウンド:良好な天然芝。長めで平坦ではないが問題はなか
った。
③宿舎:タイを除く5チームが同じホテルだったが、食事会場・
ミーティング会場等、ストレスを感じさせない規模と受け入れ
に慣れたスタッフがそろい問題は少なかった。
④食事:バイキング形式。タイ料理・洋食・中華料理・和食にフ
ルーツ・デザートがそろい充実していた。ただし、選手は最初
の2∼3日は独特の香辛料と香りに戸惑い、思うように食事が摂
れない選手もいた。
⑤移動:交通渋滞が激しく、時間が読めなかった。何もなければ
30分程度でも、渋滞が激しい時間帯では倍くらい掛かってしま
うことも何回かあった。
2. 大会の目標、狙い
る走力。20∼30mくらいの距離をアップダウンでき、プレーの質
を保ちながら90分間プレーできる。
●DF/MFを中心とした展開力
相手の背後が突けない、くさびのコースも消されている状況で
相手守備陣にギャップを生み出し、チャンスをつくるには、GKも
含めDF、MFでボールを動かしてリズムをつくる展開力が試合の
流れを左右する。
●前方への進入
プレッシャー下であってもGK、DFラインから相手の様子をう
かがい、前方スペースへ進入し攻撃の組み立てに関わる意識とボ
ール扱い(特にリトリートし、スペースを消された場合、後方か
らの組み立て、機を見ての攻撃参加、スペースへの進入は必要不
可欠)
。
●個人で「しかけ」突破する打開力
ペナルティーエリア付近で突破し、局面を打開する選手の存在
は、得点、相手守備陣への影響も大きく勝敗を分ける要因となる。
①AFC U-19選手権本大会(アジア最終予選)への出場権獲得、グ
ループ1位通過
②チームコンセプトの理解、実践(攻守にアグレッシブでダイナ
ミックなサッカーへの挑戦)
③19歳、18歳、17歳の3世代が大会を通じ、予選という壁を乗り
越え1つのチームになること
3. 今後に向けて
対戦した5試合を大別して、①リトリートしてスペースを消し、
少ないチャンスを生かしカウンターアタックをしかけてくるチー
ム(チャイニーズ・タイペイ、モルディブ) ②コンパクトフィー
ルドを保ち、攻守に主導権を取ろうとして戦ってくるチームとに
分かれた(ミャンマー、ラオス、タイ)
。
これら5試合の戦いを踏まえ、今後に向けて必要と思われるこ
とを挙げてみたい。
18
U-18日本代表vsU-18ミャンマー代表훿JUN MATSUO
Reports from Japan National Teams
自信を持って「しかけ」打開する力と技術を備えた選手とそこに
絡める選手。
このような状況下でも自身の役割、チームの目標に向かって真
摯に取り組み、行動が取れるかどうか。ピッチ上では皆、前向き
●ゴール前での決定力
スペースを消された状態でも正確なシュートを冷静にゴールに
に挑戦する姿を見せてくれた。
「選手の本当の姿」
、逆境時の強さ、
弱さは同じ空間で時を共に過ごした選手同士が一番良く分かって
送り込む技術。
いることと思う。うまくいかないとき、苦しいときにこそ、その
1タッチでコースへ流し込む技術、相手をブロックし、反転して
のシュート、クロスボールに対して中への詰め方など冷静にゴー
人の真価が問われる。逆境時にこそキラリと輝きを放ち続ける選
手がいて、やがてはチーム全員がそんな存在となりたくましいチ
ルする決定力。
ームに成長していってほしいと切に願う。
(2)オフ・ザ・ピッチ
●適応力
①環境への適応力
時差、気候、食事、グラウンド、移動距離(時間)
、対戦相手な
どの変化に柔軟に対応でき、自分のパフォーマンスを普段と変わ
U-15日本代表
【報告者】池内豊(U-15日本代表監督)
AFC U-16選手権予選
※2008年はU-16日本代表
らない状態で発揮できる適応力。
②人への適応力
新しいグループが形成され、短期間で自分を表現でき、相手の
1. 概要
ことを理解しようとするオープンな姿勢(殻を破り自分をさらけ
出せる表現力)
。学年、年代を超えても抵抗なく表現しプレーでき
日程・場所
直前キャンプ 2007年10月15日∼19日
ること。
●食事
大会期間
環境が変わり食事を摂れる選手とそうでない選手に分かれた。
また、食事が摂れるようになってもバランスよく食事ができずに
パフォーマンスに影響した選手も見られた。食材や調理方法、香
Jヴィレッジ
2007年10月20日∼11月7日
インドネシア・ジャカルタ
2. チームコンセプト
辛料や香草を使った料理、気候の違い、時差、集団生活への適応
力などの差で食事の摂り方に個人差が見られた。今後、厳しい環
アクションサッカーの追求
「選手全員がゲームに関わり続ける」
境下でも柔軟に適応し、試合で戦う強い意志とパフォーマンスを
〈攻撃〉
発揮しなければならないことを考えると、さらに経験を重ね、も
っともっとたくましくなっていかなければならない。
(3)その他
●ジャッジ
・常に数的優位をつくる
・守備のポジションの選手でも効果的に攻撃参加
・攻撃の優先順位を共有
・シュートの積極性
〈守備〉
ヘディングの競り合いで、後方から少しでも相手に手がかかる
とファウルをとられてしまい、慣れるまで時間がかかりストレス
・ポジショニング
・前線からの守備
の一つになっていた。また、レフェリーによってレベルが異なり、
あいまいな判定も多々あるので、笛が鳴ったらすぐさま切り替え
・後ろに無駄に人を余らせない
・コンパクト
て次のプレーに集中する習慣をさらに徹底する。
〈切り替え〉
●集中する力
ミスジャッジ、相手からの挑発、自身・チームのパフォーマン
・ボールを失ったらすぐに奪い返す
・ボールを奪ったら全員がアクションをすぐに起こす
スの出来、不出来に左右されず、いつも次のプレーに意識があり、
集中していること。試合の最初から最後までプレーに集中した状
・セットプレーを早くする、早くさせない
態を保ち、冷静に落ち着いてプレーができること
初戦のチャイニーズ・タイペイ戦、最終戦のタイ戦などは先制
3. 大会に向けての準備
直前キャンプはJヴィレッジで、大会登録選手23名で5日間行い
されても慌てず落ち着いてやるべきことに意識を持ち、最後まで
ました。結果的には、怪我によって1人、入れ替えがありましたが、
集中してプレーしたことが勝利へとつながった。
それ以外は予定通りに行うことができました。
今回のキャンプも今までのキャンプと変わりなく、上の年代の
(4)全般
事前キャンプを含めると22日間と長期間の予選になった。国内
チーム(10/16vs湯本高校、10/18vs平工業高校)とトレーニング
ゲームを行い、チームコンセプトの確認をしていきました。大会
から海外へと移動、調整し大会に臨む。どの選手もチームに戻れ
を少し意識して、チームコンセプトの中でも「ゴール前の攻防」
ば中心選手だが、ここでは試合に出場するかどうかも分からない。
常にポジション争いをしながら自らの力でポジションを獲得して
と「ピッチを広く使う」ことを特に強調してトレーニングとゲー
ムで確認していきました。
いく。最初から試合に出られる保障はどの選手にも与えていない。
スタメンは11名、交代選手を加えると14名のみが、その日の試合
ピッチ外では、東南アジアのチームの特徴を映像で確認してい
きました。また、大会の準備として、ドーピングの知識や生活に
に関ることができる。残りの9名はその日の試合には直接絡めない。
ついての確認もしていきました。
19
Reports from Japan National Teams
暑熱対策として、初戦の4日前に現地に入りました。暑さ、グラ
ウンド状態、食事に関して最悪の状態を想定して準備してきまし
ちは、所属チームに帰ればそのチームの中心選手で、ベンチから
試合を見ることに慣れていない選手も多くいます。チームでの役
たので、すべてが想定内で、特に大きな問題はありませんでした。
暑さに関しては、試合時間の夕方には気温が下がり、試合に大き
割を明確にしてあげることでチームの一員として、大会に参加し
ているという意識を常に持たせていきました。
な影響を与えるほどではありませんでした。グラウンドに関して
も、東南アジア特有の葉っぱが大きい野芝でしたが、慣れてきた
ら問題なくプレーできていました。食事も問題ありませんでした。
6. 成果と課題
選手一人ひとりが「次のステージに進みたい」という強い意志
4.試合結果
を持って戦えたことが良かったと言えます。アウェイの戦いにお
いても自分たちで冷静に戦えたことが良い結果につながりました。
10月24日 vsラオス(2-0)
チームコンセプトの「選手全員がゲームに関わり続ける」サッカ
2大会連続でAFC U-16選手権本大会に進出しているチームで、
前回大会はオーストラリアを破って本大会に進出しています。前
ーの追求と、その質を上げることが、少しずつではありますが具
現化されてきたことは事実です。しかし、プレーの質と量を上げ
半は両チームとも硬さが見られました。その中で少しだけ日本が
決定機をつくりましたが、得点にはなりませんでした。後半は相
ていくことは常に取り組んでいかなくてはいけません。例えば、
パスのスピードが遅くて展開がスムーズにいかないこともありま
手のショートパス、ドリブル突破を許す場面も多く、3回ほどの決
した。ボールを足元に止めてパスを探すプレーもいまだに見受け
定機をつくられました。日本は高さを生かしたコーナーキックで
先制してからは、落ち着いてゲームを運ぶことができました。
られます。ボールに寄ることができず、インターセプトされるこ
ともありました。もちろん、テクニックの質も一人ひとりが上げ
10月26日 vsカンボジア(7-0)
キックオフから12秒で得点することができました。この得点で
ていく必要があります。ヘディング、クロス、シュート、ワンタ
ッチのパスの質などは日々のトレーニングでしか改善されていか
攻守共に主導権を握るゲームができました。また、1試合目は攻守
ないと考えます。
共に不安定なところがありましたが、この得点をきっかけに大会
全般で思い切りの良いプレーができるようになりました。
7. まとめ
10月30日 vsインドネシア(2-1)
レフェリーの不可解なジャッジで前半にPKをとられてしまいま
各キャンプにおいて、コンディションや判断スピードが集合時
にまちまちであることに苦労することは、選抜チームでは当たり
した。また、そのPKを日本のGKが好セーブで防いだと思ったら、
早く動いたとしてやり直しとなり、先制点を許してしまいました。
前のことです。しかし、国際試合に向かう過程においては、選手
にとって取り返しのつかないことになりかねないことも事実です。
失点から10数分間で同点、逆転と早い時間帯で得点がとれたこと
キャンプに常に参加できていない選手の中には、各チームの上
で、その後は主導権を握りながらのゲームができました。相手PK
のときに相手FWに対応していた日本のDFが膝を痛めた(重症)
のカテゴリー(U-18)のレギュラーで出場している選手がいます。
今大会では、それらの選手の活躍が目に付きました。常にキャン
ことが非常に残念でした。
11月1日 vs香港(7-0)
プに参加できない選手の中に、継続して参加している選手と比べ、
コンセプトの理解・実行にかなりのギャップが出てきていること
日本はインドネシア戦のメンバーから半分程度を変えて臨みま
も事実です。今以上に各所属チームと連携をとっていく必要性を
した。新しい選手のモチベーションも高く、リトリートした相手
守備を問題なく崩すことができました。前半で4得点と試合が決ま
あらためて感じました。
大会の日程が一週間ずれた関係で国内大会(高円宮杯全日本ユ
ってしまいました。この試合でFグループ1位通過が決まりました。
11月5日 vsベトナム(4-0)
ース(U-15)地域大会)の変更にご尽力いただいた方々、公式戦
があるにも関わらず、また、長期間に関わらず、選手を派遣して
新しいメンバーを起用し、またポジションを変えて試合に臨み
いただいたチームの関係者の方々に、この場を借りてお礼申し上
ました。相手が前半のうちに1人退場したことから、数的優位でゲ
ームを終始、優位に進めることができました。
げます。
5. 大会期間中の取り組み
結果的には5戦全勝で予選を1位通過することができました。し
かし、初戦のラオス戦とインドネシア戦のアウェイの戦いは、ど
ちらに転んでもおかしくない試合でした。これらの試合を勝てた
ことは、選手の今後の力になっていくでしょう。
大会中、先発メンバーの固定は避けていきました。少しでも多
くの選手に試合を体験させることにも注意を払っていきました。
ボランチは、3人を試合ごとにローテーションしていきました。ポ
ジションの特性を見ることも大会中に試みていきました。左右の
ポジションチェンジやFWとDFの両ポジションを試みた選手もい
ました。4試合を消化して、GKの1人を除く22人全員がピッチに立
てたことも良かったです。
毎回のミーティングで確認していったことは、試合に出ていな
い選手のチームでの役割です。今回の大会に参加している選手た
20
U-15日本代表
活動報告
JFA GK
プロジェクト
U-22日本代表(アジア男子サッカー2008 最終予選より)
훿Jリーグフォト㈱
U-22日本代表
アジア男子サッカー2008 最終予選
(北京オリンピック2008 最終予選)
【報告者】川俣則幸(U-22日本代表GKコーチ)
※2008年はU-23日本代表
JFA Goalkeeper Project
since 1998
今号ではアジア男子サッカー
2008 最終予選(北京オリンピ
ック2008 最終予選)
、AFC U19/ U-16選 手 権 1次 予 選 、
JFAスーパー少女プロジェクト
セレクションキャンプの報告を
お送りします。
いう点に留意した。
らず気温37℃、湿度70%超という厳しい
3.試合について
状況下ではあったが、最後まで集中を切ら
さずしっかりプレーして0-0で引き分けた。
(1)8月22日 ベトナム戦(東京)
GK山本も無失点に貢献した。
中国遠征でトップパフォーマンスを見せ
ホームに戻ってのカタール戦では、時差
た西川が負傷により招集できなかった。山
の解消に時間がかかり、GKのコンディシ
U-22日本代表は、2007年8月28日のベト
本、松井は怪我からなんとか回復し、林は
ユニバーシアードから8月18日に帰国した
ョンに不安があった。日本が先制するも、
途中で退場者を出し、カタールの追い上げ
ナム戦(国立競技場)から11月21日のサ
ウジアラビア戦(国立競技場)まで、約3
ばかりと、万全のコンディションではない
中、実質2日間の準備で最終予選の初戦を
に苦しんだ。後半、相手FWとGKが1対1の
場面で、山本が左足で防いだシュートは、
カ月間、ホーム&アウェイ方式で6試合を
迎え、準備が非常に難しかった。また、最
この予選を左右する大きなプレーとなっ
戦った。
この間、GKは山本海人(清水エスパル
終予選の開幕戦をホームで戦うというプレ
ッシャーのかかる状況下で、いかに自信を
た。3試合続けて無失点で乗り切ったこと
も評価できる。
ス)
、松井謙弥(ジュビロ磐田)
、西川周作
(大分トリニータ)
、林彰洋(流通経済大学)
持ってピッチに立つかをポイントに準備を
行った。
1.期間、参加GK
(3)10月17日 カタール戦(ドーハ)
の4名が参加した。試合の準備合宿には3
試合には山本が出場し、1-0で勝利を収
名のGKが選出され、その中から試合ごと
に2名が登録され、山本が前半4試合、西
めることができた。GKはDFと連携し、自
信を持ってプレーできた。この一因には、
西川、林の3名が招集された。前回のサウ
ジアラビア戦で、事前合宿を行ったドバイ
川が後半2試合に出場した。
2次予選の最終戦、ホームでのマレーシア
戦に山本が出場していたことが大きかっ
(UAE)での事前合宿からスムーズに準備
ができた。この試合もGKは山本が務めた。
た。チームとして戦略的な選手起用による
準備が功を奏したと言える。
先制点を奪いながらもセットプレーで追い
つかれ、ロスタイムにPKで逆転を許すと
2.GKとしてのテーマ
チームは常に、代表の「情熱と誇り」を
持ち、
「集中・コミュニケーション・闘う」
GKは、西川が負傷から回復し、山本、
いう一番悪い状況で敗れた。セットプレー、
の3つを柱に、人とボールが動くことを指
向した。また、最終予選直前の8月に行わ
(2)9月8日 サウジアラビア戦(ダンマ
ン)
、 9月12日 カタール戦(東京)
PKに関しても十分に情報を収集し、シミ
ュレーションを行ったが、あとわずかのと
れたU-22 4カ国トーナメント(中国・瀋陽)
から、U-20世代も合流し、世代間の融合
GKは、山本、松井、林の3名が招集され
た。この2試合はアウェイでサウジアラビ
ころで失点を防ぐことができなかった。試
合終了間際、同点に追いつかれた段階での
を目指した。
アと戦い、その4日後にホームでカタール
試合の進め方に、GKとしても大きな課題
GKもチームの掲げるテーマに加えて
「積極的なゴールキーピング」「良い準備」
と戦うという厳しい日程で、時差と暑熱環
境とも戦わなければいけないという難しい
を残す試合となった。
「DFとの連携」「効果的な攻撃参加」をこ
れまで同様のテーマとして掲げ、試合の中
戦いであった。時差と暑熱対策は経験豊富
なメディカルスタッフ主導の下、チームと
で、特に「相手の攻撃の意図を読む」、そ
してしっかり行われたので、コーチ陣は対
カタール戦での敗戦により、予選突破の
の上で「リスクマネジメント」を行うこと。
また、これまでの失点パターンを反省し、
戦国対策に絞って準備を進めることができ
た。戦術的な部分では、サウジアラビア戦
ためには、ベトナム戦での勝点3が絶対に
必要な状況となった。GKは山本、西川、
「セットプレーの守備の向上」をアウェイ
の大観衆の声の通りにくい環境の中でも
では、カウンター攻撃に対するリスクマネ
ジメントと、積極的に狙ってくるミドルシ
林の3名が招集され、ハノイに乗り込んだ。
チームとして一番取り組んだことは、意思
「指示を的確に伝える」ことをテーマに取
ュートへの対策を行った。カタール戦では、
統一を再確認し、自分たちの本来の力を発
り組み、プレッシャーのかかった試合でい
かに普段通りのパフォーマンスを出すかと
サイドアタックへの準備を行った。
サウジアラビア戦は、夜の試合にも関わ
揮して勝つことであった。GKもそうした
チーム内の雰囲気づくりに率先して取り組
(4)11月17日 ベトナム戦(ハノイ)
11月21日 サウジアラビア戦(東京)
21
み、試合までの準備段階で高い集中と連携
がつくり出せていたことが試合の結果につ
確認を行い、混乱することなく試合を進め
ることができた。GKも的確なコーチング
また、攻撃面でもより確実に味方にボール
をつなぐ技術と戦術を磨くことが必要にな
ながった。また、GKの攻撃参加では、日
本のボール支配率が高くなることが想定さ
と落ち着いたプレーで貢献できた。
るだろう。さらに、本大会は集中開催で短
いインターバルで試合を行う。このことを
れたので、GKからのディストリビューシ
4.今後に向けて
考慮したフィジカル面の強化も必要になる
ョン、パス&サポートでは、時間をかけず
にシンプルに素早く味方につなぐことに取
ホーム&アウェイの戦いを3カ月続け、
その間は所属チームで試合を継続するとい
であろう。
予選期間中、山本がJリーグに初出場し、
り組んだ。
試合にはGKは西川が出場し、4-0、無失
う非常に厳しい環境に加え、マスメディア
から厳しいプレッシャーを受けるという、
林も継続して大学での試合に出場した。ま
た、松井もJリーグヤマザキナビスコカッ
点での勝利に貢献できた。課題であったセ
選手たちにとって初めての経験の中で、厳
プに出場し、負傷していた西川がJリーグ
ットプレーに対しても、GKからの的確な
指示も組織づくりに貢献し、隙をつくらな
しいながらも予選を勝ち抜けたことはチー
ムならびに選手たちにとって大きな財産と
に復帰するなど、各選手が以前より高いレ
ベルでの競争ができるようになったことが
かった。
ベトナム戦を終えて帰国し、翌日、すぐ
なるであろう。また、最終予選に招集され
た4名のGKは、ピッチ上では非常に高い競
それぞれのレベルアップにつながった。今
後は、オリンピック代表チームとして、本
に日本でトレーニングができたことで、コ
争意識の中で、トレーニング、試合に臨み、
大会に向けてよりレベルの高いチームと試
ンディション面でサウジアラビアより優位
に立てたことは大きかった。カタール対サ
ピッチを離れれば一つのグループ、チーム
として結束を固め、選手としての成長を見
合をすることと並行して、GKも所属チー
ムでの試合経験を積んで、さらに成長する
ウジアラビアは、サウジアラビアが勝利し
たので、サウジアラビアとの最終戦に引き
せてくれたことは大きな成果である。
今後は予選におけるアジアレベルでの戦
ことが求められる。
分け以上で日本の予選突破が決まるとい
う、自力での予選突破ができる状況になり、
いとは異なり、オリンピック本大会で世界
の強豪を相手に戦うための準備が必要にな
U-18日本代表
選手たちのモチベーションはさらに高くな
る。アジア最終予選では、時間帯によって
った。日本に戻ってからの2回のトレーニ
ングでは、カウンター攻撃に対するリスク
は攻め込まれても、試合全体を通じると日
本がボール保持率で勝るという展開で、
マネジメントとセットプレーの守備を主に
確認し、心身共に良いコンディションで試
GKの守備機会も少なかった。しかし、世
界大会では、日本の方が低いボール保持率
合に臨むことに留意した。試合には西川が
の中で、少ないチャンスを生かして攻撃す
1989年3月3日生、187cm/80kg
出場し、0-0で引き分けて予選を勝ち抜く
ことができた。試合終盤、得点のほしい相
るという展開が予想され、GKの守備機会
も増え、その内容も難易度が上がることが
松本拓也(順天堂大学)
1989年2月20日生、182cm/67kg
手が攻撃の選手を次々と投入する状況下で
も、選手たちは落ち着いてマークや役割の
予想される。そうしたことを念頭に置き、
より守備場面での能力向上が求められる。
大谷幸輝(浦和レッズ)
1989年4月8日生、185cm/80kg
AFC U-19選手権予選
【報告者】慶越雄二(U-18日本代表GKコーチ)
※2008年はU-19日本代表
1.大会参加選手
権田修一(FC東京)
2.GKテーマ
1.積極的かつ堅実なゴールキーピング
(大胆さと繊細さ)
2.良い準備(位置と姿勢、観る→状況把握
→予測→判断/決断→実行)
3.DFとの連携(コミュニケーション、コ
ンビネーション)
4.攻撃への参加(効果的な配球)
5.つかむか弾くかの判断
6.リスクマネジメント
このチームを立ち上げてから10個のテ
ーマを選定し、2007年2月から8月のSBS
アジア男子サッカー2008 最終予選(U-22日本代表vsU-22サウジアラビア代表)
より
훿Jリーグフォト㈱
22
カップまで、上記1∼4までを追求し、仙
台カップから5∼6を新たに加えて、AFC
U-19選手権1次予選に向け、6つのことを
JFA Goalkeeper Project
活動報告 JFA GKプロジェクト
念頭に置き、トレーニング、ゲームと追求
し、大会期間も引き続き継続して行った。
ていて一発のカウンターで流れを持って
いかれ、失点してしまうことのないよう
2.参加選手
3.成果
にしなくてはならない。今後1点を争う
試合展開になっていくので、その部分は
藤嶋栄介(熊本県立大津高校)
1992年1月31日生、184cm/72kg
・大会5試合中4試合(初戦を除く)
、GKが
ゲームを優位に進める上で徹底しなくて
松澤香輝(東京ヴェルディ1969ジュニア
はいけない。
ユース)
1992年4月3日生、182cm/75kg
ゲームキャプテンを務めてリーダーシッ
プを発揮し、チームの勝利に貢献した。
・クロス、ブレイクアウェイと積極的にプ
レーし、守備範囲が広く安定した守りで
DFを統率した。
5.今後の展開
2009年FIFA U-20ワールドカップへの第
一関門を突破し、AFC U-19選手権本大会
三浦龍輝(町田JFCジュニアユース)
1992年5月17日生、175cm/65kg
3.GKテーマ
・攻撃の参加で奪ったボールを素早くスロ
ーイングで高い位置の選手につなげ、ス
(アジア最終予選)の切符を手にすること
ができた。今回の3名と今まで招集した選
①攻撃参加(ダイレクトプレー、ビルドア
ムーズな展開で攻撃をサポートした。
・今回、キャンプから1次予選終了まで22
手をフラットな状況に戻し、次のステップ
へと進むために新たな選手選考を2007年
ップ)
②グッドポジション(観て状況を判断し、
日間と長期間であったが、トレーニング
12月のJユースカップ、全国高校選手権と
からゲームと集中して取り組み、それぞ
れがさまざまな立場で役割を果たし、チ
視察を重ね、2008年1月中旬のカタールU19国際親善トーナメントへ準備を進めて
③DFとの連携(コミュニケーション&リ
ーダーシップ)
ームに貢献した(先発、サブetc.)
。
いきたい。また、今までキャンプに招集し
た選手の進路先の調査をし、選手の情報を
④積極的なゴールキーピング(プレーエリ
アの拡大、DF裏のスペースカバー)
4.課題
・DFとの連携の部分で声のタイミングが
遅くなることと、コーチングが明確でな
いのでDFが素早くボールを処理できず、
不利な状況をつくってしまう。
・FKの場面でピッチ状況を把握できてい
たにもかかわらず、バウンドを合わせ損
ないリバウンドをつくってしまい失点し
てしまった。またDFもカバーリングが
遅れ、相手に先に触られてしまった。
しっかり把握した中で新たなラージグルー
良い準備)
プを形成し、選手の動向を見守りたい。
4.成果と課題
U-15日本代表
価したい。この大会に向けた国内キャンプ、
海外遠征で、各自がGKテーマを謙虚に追
5試合を通じて失点1(PKによる)は評
AFC U-16選手権予選
【報告者】岡中勇人(U-15日本代表GKコーチ)
※2008年はU-16日本代表
1.期日・場所
求し、努力した結果だと考える。チームの
一員としてスタメン、それ以外で非常に協
力的に戦った。他国と比べて、3人のGKの
差はほとんどなく、良いライバル関係を築
いていた。
またペナルティーエリア近辺でのFKで、
DFラインの高さの設定とそのマーキン
期日:2007年10月15日∼11月7日
場所:Lebak Bulus Stadium(インドネシ
課題は、ロングフィードの正確性(ワン
タッチも含む)、リスク管理、ブレイクア
グとCK時の役割の部分が徹底されなか
ア・ジャカルタ)
ウェイとクロスのプレーエリアの拡大、セ
った。これは今後チームの課題になって
いくことであるので、ポジションの役割、
Jヴィレッジ(直前合宿10月15日∼19日)
ットプレー時のリーダーシップである。
チームとしての守り方と約束事を明確に
していかなくてはならない。今回、攻撃
面でセットプレーでの得点で流れを変
え、優位にゲームを運べた状況からして
も、守備面はもっと詰めていかなくては
ならない。
・リスク管理の部分でカウンターの起点を
つくられることが多かった。その後、相
手のミスで助けられたが、攻撃時の具体
的なDFへの指示でマークの確認ができ
ていないので、その部分の徹底が必要で
ある。AFC U-19選手権本大会(アジア
最終予選)を迎えるにあたって、攻撃し
U-15日本代表(AFC U-16選手権1次予選より)
23
AFC U-16選手権本大会(アジア最終予選)
に向けて、攻守において観る、判断、予測、
ールドプレーヤー(FP)と同じ資質を求
められるが、サッカーで唯一手を使える特
よって行われたセレクションキャンプであ
る。
プレーの向上は必須であり、切り替えの良
い準備は当然としたい。具体的には、コン
性のあるポジションでもある。そういった
ことから、現在または今までにFPとして
2.参加選手
タクトの強さを身につけ、フィールドプレ
サッカーを行ってきてGKを経験したこと
今回のトレーニングキャンプには、今年
ーヤーをオーガナイズしながら相手ボール
を奪う技術の獲得やセットプレーで相手に
のない選手や、サッカー競技を行っていな
い少女の中にも、GKとして将来可能性の
度新たに応募(自己推薦)してきた選手の
中からU-15年代(小学5年生∼中学3年生)
隙を与えないコーチング能力の向上などで
ある。
ある選手はいるのではないかと考えられ
る。実際に過去3年間で行われたキャンプ
の選手30名を選び、怪我や都合により不
参加の3名を除き、27名でのキャンプとな
には、バスケットボール、バレーボール、
った。【中学3年:6名・中学2年:11名・
ソフトボール、陸上といった他競技からの
参加選手も見られ、このプロジェクトによ
中学1年:3名・小学6年:6名・小学5年:
1名】
ってサッカーのGKを続けている選手も多
く見られる。また、このプロジェクトで発
●参加資格
掘した選手が各年代の全国大会へ出場した
①将来のなでしこジャパン(日本女子代表)
「スーパー少女プロジェクト」は、日本
り、各地域トレセンの場に出てきたり、U19・U-16日本女子代表のGKとしてアジア
のGKを目指す意欲のある少女
②年齢:1992年4月2日∼1996年4月1日生
の女子サッカーの「U-15年代選手の発掘
と育成」を目的に、2004年度にスタート
予選を勝ち抜き、各年代のFIFA女子ワー
ルドカップ出場権を獲得するケースが出て
まれ
③身長:165㎝以上
した。このプロジェクトは現在、ゴールキ
きている。
ーパー(GK)というポジションに限定し
て行われている。
2007年度は6回のキャンプを実施予定
で、そのうちの5回を育成・強化を目的と
この年代の女子サッカーの現状として、
続けるチーム・環境がない等で選手数の急
した継続グループを対象にしたトレーニン
グキャンプ、1回を今年度新たに申し込ん
(基本姿勢・構え・キャッチング・ロー
リングダウン)
激な減少などが見られる。その中で、サッ
カーを続けている選手の中には大きな可能
できた、選手発掘・普及を目的とした新規
グループ対象キャンプとして予定してい
●クロス
(ハイボールキャッチング)
性を持ち、体格や身体能力に恵まれ、GK
る。すでに2006年度からの継続グループ
●測定
というポジションでの専門的な指導を受け
ることで著しく成長する選手が存在するの
のキャンプを7月と8月に2回実施した。そ
して、2007年11月22日∼24日、Jステップ
(10m、40mスプリント・キック・オー
バースロー・バウンディング・10mシャ
ではないかと考えられる。そして、GKと
で行った今回のキャンプが、発掘・普及に
あたる、今年度新たに応募してきた選手に
トル・反復横跳び・垂直跳び・身長・体
重)
スーパー少女プロジェクト
セレクションキャンプ
【報告者】西入俊浩
(JFAナショナルトレセンコーチ)
1.スーパー少女プロジェクト
キャンプについて
いうポジションはサッカー選手としてフィ
3.トレーニングテーマ
●シュートストップ
4.成果
今回のキャンプでは、サッカー経験者が
ほとんどでGK経験者も多く、ボールを手
で扱うことや足で扱うことはある程度でき
ており、ここ何年かのセレクションキャン
プとは違った形でスムーズにできた。その
中で、ある程度チームやトレセンなどで教
わっていることで「良い準備をする・構え
る」ことへの意識が高い選手も見られた。
中には形に意識がいき過ぎてしまい、構え
る形がぎこちなかったり、構えるタイミン
グが取れていない選手も見られた。しかし
経験者が多かったということもあり、選手
の意識も非常に高く、ヒントを出すことで
スーパー少女プロジェクトセレクションキャンプより
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スムーズに構えることができたり、キャッ
JFA Goalkeeper Project
活動報告 JFA GKプロジェクト
チングにおいても簡単にファンブルしてい
たボールをスムーズにキャッチしたりと、
吸収力の早さには驚かされた。
ローリングダウンに関しては、天然芝と
いう環境によってスムーズに入れたのでは
ないかと思う。地面に倒れることへの恐怖
心が少なく、ゲームの中でもローリングダ
ウンによってシュートストップする選手も
見られた。クロス(ハイボールキャッチン
グ)に関しては、クロスというよりも高い
位置のボールをキャッチする感覚を身につ
けながら、より高い位置でキャッチするこ
とや、ジャンプしてより高い位置でキャッ
チするというトレーニングを行った。また、
ハイボールをキャッチングする上での「キ
スーパー少女プロジェクトセレクションキャンプより
ーパー!」という声であったり、「自分の
身体を守る・プレーエリアを確保する」た
と聞くことができ、選手一人ひとりの状況
を把握することができた。
ッカーの楽しさ、GKの楽しさなどを感じ
られたのではないかと思う。また、最初の
めの振り上げ足であったりと、グループに
よっては発展した形でトレーニングを行っ
全体を通して、選手が非常に積極的にト
ゲームではできなかったプレーが、トレー
レーニングやミーティングなどに取り組
み、サッカーやGKを楽しむことができ、
ニングの中でコーチからの指導を受け、最
後のゲームでは随所に良いプレーが見ら
手と競り合いながら高い位置でジャンプし
てキャッチしたり、より高い位置でキャッ
その中でGKとしての基本的な技術やGKに
れ、選手は成功した・うまくなったという
喜びも感じられたのではないかと思う。
チングするためにステップを踏んでからジ
ャンプしてキャッチしたりと、積極的にハ
たのではないかと思う。
ていた。ハンドパスゲームの中でも相手選
大切な要素などを選手に伝えることができ
今後の展開として、このセレクションキ
5.総括と今後への展開
ャンプの中でレベル差はあったが、さまざ
まな選手を見ることができ、今後の可能性
今回のセレクションキャンプでは、2泊
3日と短い期間ではあったが、いろいろな
の感じられる選手も見られた。このキャン
プで見た選手も含め、各年代の大会、地
部分でこのプロジェクトの成果や課題が見
域・ナショナルトレセンで活動している選
られたのではないかと思う。今回のキャン
プでは、参加選手全員がサッカー経験者で、
手、今まで招集した選手を含めて、今後3
回あるトレーニングキャンプで招集し育
GKをすることが初めてあるいはGKを始め
て1年や数カ月といった選手が10名くらい
成・強化を図っていきたい。また、次のキ
ャンプに選ばれなくてもGKの活動ができ
で、残りの選手はある程度GKを経験して
る環境を紹介したり、各地域などに選手の
いる選手であった。サッカーやGK経験者
が多かったことで、ある程度ゲームやトレ
情報も伝えていき、今後も情報を把握して
いきたい。
選手それぞれがサッカーやGKを始めたき
ーニングなどスムーズにできたと思う。ま
た、中には地域トレセンなどにも参加して
次回、2008年1月の第3回キャンプは、
高校生年代(U-18)を対象に実施する予
っかけや自分の今の課題、このキャンプで
の目標を発表し、緊張を隠せない選手や自
いる選手もおり、基本技術や基本的なこと
を理解している選手も見られ、ナショナル
定である。この年代での課題やGKの専門
的な指導を受ける環境が少ない選手の育
信を持って堂々と話している選手など、ピ
ッチとはまた違った一面も観ることができ
トレセンを通して地域でGKを教わる環境
成・強化も図っていかなくてはならない。
が普及していることを、選手を通じて感じ
た。2日目には個人面談を行い、現在のサ
ることができた。
そしてU-19・U-16日本女子代表候補の選
手も継続して招集しながら選手の状況を把
ッカーをする環境や様子、GKをしている
中での悩み、または進学・進級によって今
GK経験者・未経験者それぞれレベルの
違いが見られたが、経験者は今まで教わっ
握し、各年代の代表チームとの連携をより
深め、育成・強化をこのプロジェクトを通
後サッカーをどういう環境で続けていきた
いかなどを聞き、サッカーを楽しめる環境、
ていた技術にさらに細かい部分にも目を向
して図っていき、近い将来、日本女子サッ
けてトレーニングに取り組み、未経験者は
すべてが初めての体験であったと思うがサ
カー界を背負って立つ可能性のある「スー
パー少女」を見守っていきたい。
イボールにチャレンジしていた。
トレーニングセッションの流れとして
M-T-M(ウォーミングアップ→ゲーム→ト
レーニング→ゲーム)を用いた。最初のゲ
ームでできなかったプレーの課題をトレー
ニングでコーチからヒントをもらい、改善
して、最後のゲームでは良いプレーとして
できている選手が全体的に多く見られたの
ではないかと思われる。
また、初日のミーティングでは、選手そ
れぞれがこのキャンプでの目標を立て、自
己紹介とともに全員の前で発表を行った。
GKとしてプレーできる環境などいろいろ
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