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66 - 電子情報通信学会
平成 19 年度電子情報通信学会東京支部学生会研究発表会 講演番号:66 電子レンジ干渉環境下における IEEE802.11g 無線 LAN 伝送特性の実験的評価 Experimental Performance Evaluation of IEEE802.11g Wireless LAN under Interference from Microwave Oven B-5B 小口 英明 Hideaki Koguchi 前原 文明 Fumiaki Maehara 早稲田大学基幹理工学部情報理工学科 School of Fundamental Science and Engineering, Waseda University 1. まえがき 近年,オフィスや家庭において,2.4GHz 帯無線 LAN の急速な普及と伝送速度の高速化がめざましい [1].しかしなが ら,2.4GHz 帯無線 LAN では,その使用周波数帯が電子レンジ や医療機器といった ISM 機器の周波数帯と重複するため,無線 LAN と ISM 機器が同時に使用される場合,システム間干渉が生 じる問題がある.具体的には,無線通信特有の劣化要因である フェージングに加えて,ISM 機器から非意図的に放射される干渉 の影響により,無線 LAN の伝送特性が大きく劣化する [1],[2]. 本稿では,電子レンジからの干渉信号が 2.4GHz 帯無線 LAN の 信号に与える影響を把握すべく,IEEE802.11g を採り上げ,電子 レンジからの干渉信号と IEEE802.11g で適用される OFDM 信号 をスペクトラムアナライザにより観測するととともに,電子レン ジによる干渉環境下における FTP スループット特性を実験的に 取得・評価する. 電子レンジとクライアントPCの距 実験構成(発表資料用) 1hop+oven 1hop 離を変化させる(1hop) microwave oven d Wireless Wired 50cm 図 1 実験構成 8ms プレス, 2005 年 1 月.[2]A. Shiotsuki, S. Miyamoto, N. Morinaga, “Performance of wireless LAN system based on IEEE802.11g standard under man-made noise environment,” IEICE Trans. Commun., Vol. E88-B, NO. 8, pp. 3213-3220, August 2005. -66- 12ms 電子レンジ使用中の中心周波 数の時間スペクトル 図 2 電子レンジ使用中の中心周波数での時間波形 干渉時のスペクトル(rev 用)ver1.2 用)ver1.3 用)ver1.1 (b) 干渉なし I S (a) 時間変動 (c) 干渉あり 図 3 IEEE802.11g における干渉時の周波数スペクトル -5 20 実験結果(実験3)ver3 実験結果(実験3)ver4 -35 10 0 Average throughput without interference Average throughput with interference Desired signal power Interference power 0 10 20 SIR[dB] 30 Interference power [dBm] 験的に評価した.特性評価の結果,電子レンジ干渉存在下におけ る FTP スループットは,干渉信号電力と無線 LAN キャリヤセン ス・レベルの大小関係に起因することがわかった. 参考文献 [1] 守倉正博, 久保田周治, 改訂版 802.11 高速無線 LAN 教科書, イン Client spectrum analyzer Average Throughput [Mbps] 4. まとめ 本稿では,電子レンジからの干渉信号が IEEE802.11g に与える影響を信号波形および FTP スループットの観点から実 AP Server 2. 実験構成 図 1 は,実験の構成を示したものである.同図に示 すように,アクセスポイント (AP) に FTP サーバ機とクライアン ト機がそれぞれ有線と無線で接続された構成を想定する.なお, 特性評価の指標である電子レンジからの干渉の影響は,AP から の距離 d を変化させることにより実現し,無線 LAN の信号と電 子レンジからの干渉信号の測定は,AP の近傍にリアルタイムス ペクトルアナライザを設置することにより実施するものとする. 3. 特性評価 図 2 は,2463MHz における電子レンジからの干渉 信号の時間領域波形を測定したものである.同図からわかるよう に,干渉信号は 8ms と 12ms の時間間隔で ON と OFF を繰り返 す信号であることがわかる.図 3(a) および (b) は,IEEE802.11g 無線 LAN の周波数スペクトルとその時間変動を測定したもので ある.同図からわかるように,変調方式として OFDM 方式が適 用されることから,方形の形状を有する周波数スペクトルである ことがわかる.また,図 3(c) は,電子レンジによる干渉信号が 存在するときの周波数スペクトルを測定したものである.同図よ り,広帯域の OFDM 信号に電子レンジによる狭帯域の干渉信号 が加えられていることがわかる.図 4 は,電子レンジが使用する 2463MHz における信号電力対干渉電力比(SIR) 対 FTP スルー プット特性を示したものである.ここで,SIR は,図 3(c) に示す ように,干渉がない場合の無線 LAN 信号電力 (S) と無線 LAN を 用いない場合の電子レンジからの干渉電力 (I) の測定値により算 出したものであり,参考のため,各 SIR において,S と I の測定 値も併せて示す.同図より,FTP スループットが,SIR が 30dB 程度まで変化しないが,これを越えると急激に増加することがわ かる.これは,SIR が 30dB よりも小さい場合,電子レンジから の干渉電力がキャリヤセンス・レベルを上回り,無線 LAN に割 り当てられる時間が電子レンジ波形の OFF となる時間に制限さ れる一方で,SIR が 30dB より大きくなると,電子レンジからの 干渉電力がキャリヤセンス・レベルを頻繁に下回り,無線 LAN に割り当てられる時間が大幅に増加するためと考えられる. 使用無線LANシステム IEEE802.11g 無線LANの中心周波数 2484MHz 電子レンジの中心周波数 2463MHz スペクトルアナライザの 250kHz 分解能帯域幅(RBW) -65 40 図 4 IEEE802.11g における SIR 対 FTP スループット特性 Copyright © 2008 IEICE