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平成26年度 国際エネルギー使用合理化等対策事業 「サウジアラビア

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平成26年度 国際エネルギー使用合理化等対策事業 「サウジアラビア
平成26年度
国際エネルギー使用合理化等対策事業
「サウジアラビアにおける
省エネ制度確立・普及支援事業」
報告書
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所
平成 27 年 3 月
1
はじめに
我が国のエネルギーセキュリティ確保及び地球温暖化対策を目的とし、エネルギー需要
の急増が見込まれるアジアを中心とした途上国及び中東等の産油国において省エネルギー
対策を促進する必要がある。そのためには、我が国の優れた省エネルギー制度等が同地域
に広く普及することが重要であり、各国において省エネルギー制度を構築し、整備するこ
とが有効な手段となる。
取り分けサウジアラビアにおいては、近年、高水準を維持する原油価格に支えられた経
済成長により、産業、輸送及び民生分野における国内エネルギー消費が急速に拡大してお
り、これらの削減が重要な政策課題とされ、これらの課題を解決することは、世界のエネ
ルギー需給の安定化に資するのみならず、引いては、我が国のエネルギーセキュリティの
強化に資する。さらに、サウジアラビアにおいては、2030年までに省エネルギー制度
を確立・普及するため、新たに関係機関を設立するなど真摯な検討が行われており、この
ような状況において、我が国の知見と過去の経験の提供に対する期待が寄せられている。
本事業では、サウジアラビアにおける省エネルギーに関わる現状や問題点、ニーズを把
握し、我が国の優れた省エネルギー制度・技術にかかる知見・経験を活用し、サウジアラ
ビアにおける省エネルギー制度の確立・普及支援を行うことを目的とする。
平成 27 年 3 月
一般財団法人 日本エネルギー経済研究所
2
目次
1.
2.
3.
サウジアラビアのエネルギー需給及び将来見通し ........................................................ 4
1.1.
エネルギー需給の推移 ............................................................................................. 4
1.2.
エネルギー需給見通し ............................................................................................. 9
サウジアラビアの省エネルギー政策概観 ..................................................................... 16
2.1.
省エネルギー政策の概観 ....................................................................................... 16
2.2.
省エネルギー行政機関 ........................................................................................... 16
2.3.
NEEP ..................................................................................................................... 17
2.4.
SEEC ..................................................................................................................... 17
2.5.
SEEP の主な活動 .................................................................................................. 18
省エネルギー政策にかかわる最近の動向 ..................................................................... 21
3.1.
建築物部門 ............................................................................................................. 21
3.1.1.
(1)
エアコン ............................................................................................................. 22
(2)
その他の製品 ...................................................................................................... 23
(3)
今後の予定 ......................................................................................................... 23
3.1.2.
新築建築物の断熱 ........................................................................................... 23
3.1.3.
既存建築物の省エネ ....................................................................................... 24
3.2.
運輸部門 ................................................................................................................. 24
3.2.1.
燃費基準.......................................................................................................... 24
3.2.2.
燃費ラベリング制度 ....................................................................................... 26
3.2.3.
タイヤの転がり抵抗基準 ................................................................................ 28
3.3.
4.
機器 ................................................................................................................. 21
産業部門 ................................................................................................................. 29
サウジアラビアの省エネルギー推進の課題と政策提言 ............................................... 30
4.1.
省エネルギー推進課題 ........................................................................................... 30
4.1.1.
民生部門.......................................................................................................... 30
4.1.2.
運輸部門.......................................................................................................... 31
4.1.3.
産業部門.......................................................................................................... 31
4.1.4.
部門横断アプローチ ....................................................................................... 32
5.
電話会議録 .................................................................................................................... 33
6.
ワークショップの成果 .................................................................................................. 34
参考文献 ............................................................................................................................... 36
3
1. サウジアラビアのエネルギー需給及び将来見通し
1.1.
エネルギー需給の推移
2005 年以降の国際原油価格の急騰は、サウジアラビア経済の急成長に貢献し、2013 年ま
で GDP は年平均 6%のペースで急速に拡大してきた(図 1.1-1)
。これは国際原油価格がバ
レルあたり 20 ドル程度で低迷した 1990 年から 2000 年の GDP 成長率が年平均 2.7%程度
であったことと大きな対比をなす。世界最大の原油生産国であるサウジアラビアの輸出に
おける原油及び石油製品関連の割合は 85%(2013 年)であり、産業別の GDP に占める割合
では石油関連産業の付加価値額は 47%を占める(2013 年)。
600
120
GDP (10億ドル, 2005年米ドル)
国際原油価格(ドル/バレル)
500
100
400
80
300
60
200
40
100
20
0
0
1980
1990
2000
2010 2013
図 1.1-1 GDP の推移と国際原油価格の比較
出典: World Bank. 2014. World Development Indicators, BP. 2014. Statistical Review of World Energy
サウジアラビアは GDP の急成長と共に政府支出も拡大させてきた(図 1.1-1)
。図が示
す通り、特に 2005 年以降 2010 年までの間に政府支出は年率 15.1%のペースで急増してい
る。図 1.1-2 の用途別政府支出から明らかなように、軍事関係の支出を除くと、教育、医
療、そして住宅へ政府支出を拡大させてきたことが分かる。サウジアラビアでは発展計画
を策定しており、その第 6 次発展計画期(1995-1999 年)において、戦略的に人的資源の
開発に政府支出を投じる優先順位を掲げている。また、第 7 次発展計画期(2000-2004 年)
において、さらに人的資源の開発を高い優先項目としている。これ以外にもインフラ開発
にも政府支出を拡大させている。
4
GDP (10億ドル, 2005年米ドル)
国際原油価格 (ドル/バレル)
160
120
140
Gross Capital Formation (10億ドル, 2005年米ドル)
国際原油価格(ドル/バレル)
120
100
80
100
80
60
60
40
40
20
20
0
0
1980
1990
2000
2005
2010 2013
図 1.1-2 公的資本形成と国際原油価格の比較
出典: World Bank. 2014. World Development Indicators, BP. 2014. Statistical Review of World Energy
図 1.1-3 用途別政府支出の推移
出典: SAMA 2011. Annual Report.
5
セメント生産量 (1,000トン)
政府支出 (10億ドル, 2005年米ドル)
160
60,000
政府支出 (10億ドル, 2005年米ドル)
セメント生産量(1,000トン)
140
50,000
120
40,000
100
80
30,000
60
20,000
40
10,000
20
0
0
1980
1990
2000
2005
2010 2013
図 1.1-4 政府支出とセメント生産量
出典: World Bank. 2014. World Development Indicators, BP. 2014. Statistical Review of World Energy
政府支出や民間支出の増加による経済活動への波及効果は大きい。一例として、セメン
ト生産量と政府支出の推移の比較を図 1.1-4 に示す。図から明らかな通り、両者の推移は
1990 年以降高い相関を示している。国際原油価格の高騰に起因する経済の急拡大は、住宅
を含むインフラ関連の政府支出への増加にも寄与し、結果としてセメントの生産量増にも
大きく貢献しているのである。
GDP (10億ドル, 2005年米ドル)
自動車保有台数(1,000台)
GDP (10億ドル、2005年米ドル)
7,000
600
自動車保有台数(1,000台)
6,000
500
GDP (10億ドル, 2005年米ドル)
5,000
400
4,000
300
3,000
200
2,000
100
1,000
0
0
1980
1990
2000
2005
2010 2013
図 1.1-5 自動車保有台数の推移
出典: EDMC.2014.「エネルギー・経済統計要覧 2014」、World Bank. 2014. World Development Indicators
6
公共交通インフラが整備されておらず、陸上輸送への依存が高いサウジアラビアでは、
経済の急拡大と共に、自動車保有台数も大きく増加している(図 1.1-5)。図が示す通り、2005
年以降自動車保有台数は 5 百万台から 2012 年には 5.8 百万台へと増加した。
急速な経済成長の結果として、サウジアラビアのエネルギー消費量も急速に増加してい
る。国内で供給される電力・石油製品は国際価格から大幅に乖離、低廉な水準で販売され
ていることも消費量の急増に寄与している。一次エネルギー消費では、以下の図 1.1-6 が
示す通り、1980 年の水準と比較して 2012 年には 6 倍以上の水準に達している。2005 年以
降の増加ペースが急速であり、年率換算で 7.3%に上り、同期間の GDP 成長率である 5.9%
を上回っている。
石油換算百万トン
200
180
廃棄物その他
160
天然ガス
石油
140
120
100
80
60
40
20
0
1980
1990
2000
2012
図 1.1-6 エネルギー源別一次エネルギーの推移
出典: IEA. 2014. Energy Balances of Non-OECD Countries.
1980 年以降、図 1.1-6 が示す通り、一次エネルギーのエネルギー源別構成では、70%弱
を石油が占め残りの 30%程度を天然ガスが占めている。わずかながら、廃棄物その他再生
可能エネルギーも利用されている。
なお、
2012 年のエネルギー源別構成では、
石油が 66.9%、
天然ガスが 33.0%、その他再生可能エネルギーの割合は 0.003%であった。
7
12
mb/d
国内石油生産
10
8
6
輸出
4
28%
国内消費の割合
2
0
1980
15%国内需要
11%
4%
国内消費
1990
2000
2012
図 1.1-7 石油生産と国内消費及び輸出量の推移
出典: IEA. 2014. Energy Balances of Non-OECD Countries.
石油換算百万トン
45
40
産業
5%
39.7
民生
1%
33.7
35
30
非エネ
23%
23.5
25
発電等
38%
20
15
10
運輸
33%
5.1
5
0.7
0
発電等
運輸
非エネ
産業
民生
図 1.1-8 石油消費の増分への部門別貢献(1980 年から 2012 年の間)
国内エネルギー消費の拡大は、石油の輸出余力を圧迫する事態を招いている。国内原油
生産と、消費量を比較したのが図 1.1-7 である。サウジアラビアでは、世界第一位の石油
確認埋蔵量を背景に、国際石油需給状況ならびに原油価格の動向の変化に応じながら石油
生産量を調整してきた。2012 年時点では、石油生産量は 950 万バレルに達している。他方、
国内の石油消費量は前述の通り急増しており、生産に占める割合も 1980 年の 4%から 2012
年には 28%へと大きく拡大している。
1980 年から 2012 年の間に生じた石油消費増加に対する部門別の貢献を図 1.1-8 に示す。
左の図はサウジアラビアでは、電力需要の拡大を石油火力が大部分を担うことから、発電
部門の貢献が 38%と最も大きく、これに運輸部門の 33%、石油化学等の原料としての利用
8
である非エネルギーの 23%が続く。石油輸出はサウジアラビアにとって、貴重な外貨獲得
手段であり、省エネルギーを推進し、持続可能な形での利用を検討する必要がある。
2014 年 9 月以降、国際原油価格が大幅に下落している現在でも、サウジアラビア国内で
のエネルギー供給価格は国際的にみても低い水準で販売されているため、過去の趨勢と比
較してそのペースはやや鈍化するものの、国内エネルギー需要は継続して増加するだろう。
国際原油価格の低迷とあいまって、経済成長ペースも減速する見通しであり、そうした中、
省エネルギーを推進することによる経済的意義がさらに一層高まる。
一人当たり一次エネルギー (石油換算トン/人)
10.0
ブルネイ
9.0
8.0
6.0
シンガポール
ニュージーランド フランス
ロシア
4.0
イラン
ウクライナ
イタリア
南アフリカ
中国
タイ
日本
英国
スペイン
チリ
メキシコ
1.0
フィリピン
インド
ペルー
ベトナム
0.0 インドネシア
0
オーストラリア
ドイツ
台湾
マレーシア
2.0
米国
韓国
5.0
3.0
カナダ
サウジアラビア
7.0
香港
ブラジル
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
60,000
一人当たりGDP (2010年価格米ドル/人)
図 1.1-9 一人あたり一次エネルギー消費と一人当たり GDP の比較(2011 年)
図 1.1-9 に示す通り、サウジアラビアの一人当たり一次エネルギー消費は日本と 1.9 倍、
一人当たり GDP がサウジアラビアとほぼ同水準の台湾・韓国と比較すると 1.3-1.4 倍程度
の水準にある。資源国であるサウジアラビアと、製造業主体の台湾・韓国及びサービス産
業へ経済構造がシフトする日本との比較には注意を要するものの、国際比較による水準の
差からサウジアラビアにエネルギー効率改善余地が大きい事は明らかである。
1.2.
エネルギー需給見通し
貴重な外貨獲得手段である石油ならびに天然ガスの節減目的で省エネルギーを推進する
ことはサウジアラビアにとって重要な政策課題である。ここでは、2035 年までのサウジア
ラビアのエネルギー需給見通しを作成、技術別の省エネルギーポテンシャルを考慮した上
9
で、石油と天然ガスの節減による経済便益を分析し、政策への示唆を得る。
2035 年までのエネルギー需給見通しの作成には、日本エネルギー経済研究所のエネルギ
ーモデルを活用した。本モデルはマクロ経済モデルとエネルギー需給モデルの二つの部分
から構成される。エネルギー需給分析には主にエネルギー需要と様々な経済の活動指標と
の相関を分析するトップダウン手法を適用している。またこれを補完する目的で技術別の
評価モデルを構築している。
(主要前提)
マクロ経済モデル†
GDP、原油価格、為替レート
人口、電源計画、世界貿易など
GDP関連指標
物価指数・金融等
†素材系生産高や自動車普及を含め詳細
産業活動指標
に分析・予測。
運輸関連指標等
技術評価モデル
エネルギー需給モデル
エネルギー需要
電源構成、自動車、民生機
器等
エネルギー転換
電源構成モデル
エネルギー供給
モデル利用により諸要因間の関係を客観的に
捉えるとともに数量間の整合をとる
CO2排出量
図 1.2-1 モデルの構造
出典: 日本エネルギー経済研究所.2014. アジア・世界エネルギーアウトルック.
GDP 想定
高成長ケース GDP成長率 6.6%/年 (2012-2035)
低成長ケース GDP成長率 3.5%/年 (2012-2035)
レファレンスケース
現在の政策を継続するケース
省エネケース
最先端の省エネ技術を導入するケース
図 1.2-2 GDP 想定
出典: 日本エネルギー経済研究所.
エネルギー需給見通しの作成にあたって、異なる二つの GDP 想定を行った。高成長ケー
スでは、2035 年までの GDP の年平均成長率をサウジアラビアの計画値である 6.6%とし、
低成長ケースではモデル試算値である 3.5%/年を想定した。2035 年までの省エネルギーポ
10
テンシャルを分析するにあたって、現在の政策を継続するレファレンスケースと最先端の
省エネ技術を導入する省エネケースの 2 ケースを構築、レファレンスケースから省エネケ
ースへの差分を技術上の省エネポテンシャルとする。
18 Mb/d
実績 ←
→ 見通し
16
GDP成長率 6.6%/年
14
12
10
8
6
4
GDP成長率 3.5%/年
2
0
1980
1990
2012
2020
2035
図 1.2-3 異なる GDP 想定に基づく一次エネルギー需要見通し
出典: 日本エネルギー経済研究所
18
12
Mboe/d
実績 ←
mb/d
→ 見通し
国内石油生産
16
10
0.3
Mb/d
14
8
12
輸出
天然ガス
10
42%
6
8
97%
4
6
国内石油需要の割合
4
33%
石油
58%
国内需要
2
2
28%
67%
0
1980
1990
2000
2012
0
2020
2035
1980
1990
2000
2012
2020
図 1.2-4 高成長ケース:一次エネルギー需要見通し(左図)と石油需給見通し(右図)
出典: 日本エネルギー経済研究所
図 1.2-3 はサウジアラビアが現在の政策を継続、最先端の省エネルギー技術を導入しな
い場合に異なる二つの GDP 成長率を想定し、一次エネルギー需要の 2035 年までの見通し
を提示するものである。GDP が 2035 年まで年率 6.6%で増加する場合、サウジアラビアの
一次エネルギー需要(石油・天然ガス・その他再生可能エネルギーのすべてを含む)は 2012
11
2035
年の 400 万バレルから 2035 年には 4.1 倍の 1,670 万バレルに達する。他方、GDP が 2035
年まで年率 3.5%で増加する場合、一次エネルギー需要は 2012 年の水準から 1.9 倍の 750
万バレルに達する。
高成長ケースの場合、国内の石油生産量を 2013 年時点の 1000 万バレル/日を維持すると
想定した場合、国内需要が 2012 年の 270 万バレル/日から 2035 年には 970 万バレル/日に
達し、これにより国内需要が国内石油生産に占める割合は 97%に及び、輸出余力を大きく
圧迫する。また石油供給量が現状水準と想定した場合、天然ガスへの依存割合が現状より
も拡大することになる。すなわち、高成長ケースでは、2035 年における石油の一次エネル
ギー需要に占める割合が 58%、残りの 42%が天然ガスとなる。
8
Mboe/d
実績 ←
12
→ 見通し
mb/d
国内石油生産
7
10
6
25%
5
8
輸出
天然ガス
4
6
3
4
33%
2
石油
1
国内石油需要の割合
75%
67%
1990
2000
2012
2020
56%
2
0
1980
4.4
Mb/d
2035
国内需要
28%
0
1980
1990
2000
2012
2020
図 1.2-5 低成長ケース:一次エネルギー需要見通し(左図)と石油需給見通し(右図)
出典: 日本エネルギー経済研究所
低成長ケースでは石油需要が 2012 年の 270 万バレル/日から 2035 年には 560 万バレル/
日へと年率 3.2%で増加する。これにより国内石油需要が国内石油生産に占める割合は 2012
年の 28%から 2035 年には 56%へと増加、石油輸出量では 2012 年の 680 万バレル/日から
440 万バレル/日へと 36%減少する。
レファレンスケースとは対象的に、最先端の機器・技術を導入した場合の省エネルギー
効果を分析する目的で省エネケースを構築、GDP 成長率が年率 3.5%の低成長ケースの場合
のレファレンスケースとの差分をこれらの機器・技術による省エネルギー効果として提示
する。本試算には、以下の通り、家庭・運輸・産業部門いかかわる最良技術の導入を想定
するとともに、太陽光発電の大幅拡大、ならびに原子力発電の導入を考慮、これらによる
省化石燃料効果も試算する。
12
2035
表 1.2-6 要素技術別高効率技術の普及想定
部門
想定
家庭
エアコン (EER 5.81 (2012) → 3.37 (2035)へ改善)
照明 (高効率照明の普及)
冷蔵庫 (EER 445→271へ改善)
断熱 (Q値 2.7→2.16へ改善)
運輸
ハイブリッド自動車の普及 (レファレンス 14% (2035)
vs 省エネケース 42% (2035))
プラグインハイブリッド自動車の普及(レファレンス 2%
(2035) vs 省エネケース 9% (2035))
産業
鉄鋼、セメント、石油化学等での最良技術(BATs: Best
Available Technologies)の導入
再生可能エネ
ルギー
太陽光発電 (レファレンス 1.1 GW vs 省エネケース
8.3 GW (2035))
原子力
省エネケースでの原子力発電の導入 (2021年: 1GW,
2030年: 5GW, 2035年: 8GW)
出典: 日本エネルギー経済研究所.
8
Mboe/d
実績 ←
7
12
→ 予測
原子力・再生可能 5%
エネルギー
6
25%
5
天然ガス
4
3
0
1980
8
5.2
Mb/d
輸出
4
2
1
国内石油生産
10
6
38%
62%
mb/d
70%
石油
国内石油需要の割合
2
28%
0
1990
2000
2012
2020
2035
48%
国内需要
1980
1990
2000
2012
2020
図 1.2-7 省エネケース:一次エネルギー需要見通し(左図)と石油需給見通し(右図)
出典: 日本エネルギー経済研究所
省エネケースの一次エネルギー需要は 2012 年から年率 2.3%で増加、2035 年には 680 万
バレル/日に達する。省エネケースの一次エネルギー需要に占める原子力及び再生可能エネ
ルギーの割合は 2035 年において 5%であり、これを控除し、レファレンスケース(低成長ケ
ース)と比較すると 68 万バレル/日が化石燃料の節減量として推計される。
図 1.2-7 の右図に示す通り、
石油需要見通しでは 2012 年の 270 万バレル/日から年率 2.5%
で増加、2035 年には 480 万バレル/日に達する。2035 年における輸出可能な石油がレファ
13
2035
レンスケース(低成長ケース)では 440 万バレル/日であったのに対し、省エネケースでは
同 520 万バレル/日と 80 万バレル/日節減されたことになる。
Mboe/d
6
5.6
4.8
16%
5
4.0
19%
4
非エネルギー
43%
2.7
3
37%
18%
2
#DI
34%
0.8
1
27%
#DIV
30%
18%
0
1990
2012
民生
14%
2020
2035
30%
運輸
14%
産業
2035
(BPS)
省エネケース
レファレンスケース
図 1.2-8 部門別石油需要(一次エネルギーベース)のケース間比較
出典: 日本エネルギー経済研究所
図 1.2-8 は部門別の石油需要を一次エネルギーベースにしたものをレファレンスケース
と省エネケースについて、それぞれ GDP 成長率を年率 3.5%増とした場合の比較を行うも
のである。なお、各部門の電力需要は、必要な石油の投入量に応じて一次エネルギー変換
されている。図から明らかな通り、石油の節減量に対する部門別の貢献では民生部門が最
も大きく(70 万バレル/日)、これに産業(12 万バレル/日)、運輸(7 万バレル/日)が続く。民生
部門ではエネルギー源として電力への依存が大きく、機器・技術の効率改善は発電部門の
主要な投入エネルギーである石油の節減に大きく影響するのである。
10億米ドル(2012年価格)
10億米ドル(2012年価格)
45.0
500.0
42.2
450.0
40.0
444.4
400.0
35.0
350.0
30.0
300.0
25.0
18.7
20.0
250.0
197.5
200.0
15.0
150.0
10.0
4.8
2.8
5.0
0.0
原油
天然ガス
高価格ケ ース
原油
天然ガス
低価格ケ ース
76.9
100.0
44.8
50.0
0.0
原油
天然ガス
原油
高価格ケ ース
図 1.2-9 省エネルギーの便益(左図:2035 年時点、右図:2013-2035 年の累積)
出典: 日本エネルギー経済研究所
14
天然ガス
低価格ケ ース
表 1.2-10 原油・天然ガス価格の想定
ケース
エネルギー
価格
高
原油
135 $/bbl
高
天然ガス
15.45 $/Mbtu
低
原油
60 $/bbl
低
天然ガス
9 $/Mbtu
出典: 日本エネルギー経済研究所
石油・天然ガスの節減による経済便益を試算したものが図 1.2-9 である。本試算は節減
した石油・天然ガスが国際市場に輸出されたものと想定、それぞれの節減量に想定した国
際価格を乗じたものである。国際価格の想定は、高ケースと低ケースの二つの想定を行っ
ている。
図 1.2-9 が示す通り、石油・天然ガスの節減による経済便益は、石油が 2013-2035 年の
累積で 1,970 億ドルから 4,444 億ドルに上り、天然ガスでは同期間の累積で 448 億ドルか
ら 769 億ドルに及ぶ。
このような石油・天然ガスの節減による便益には投資を伴う。特に照明やエアコンの高
効率化といった費用対効果の高い省エネ対策もあれば、太陽光発電の導入や高断熱化など、
投資回収年数が比較的長い技術もある。要素技術別のこうした費用対効果を把握した上で、
省エネルギー政策実施に向けた優先順位を決定する必要がある。
15
2. サウジアラビアの省エネルギー政策概観
2.1.
省エネルギー政策の概観
サウジアラビアは石油資源が豊富であるため、国内では安価なエネルギー価格を享受す
る国民と産業がエネルギー多消費経済を形成してきた。しかし、国内需要は急速に増加し
ており、第 1 章で述べた通り、現在と同じペースで国内需要が増え続け場合には、2030 年
代に国内石油需要と国内生産水準が均衡し、輸出余力を失う可能性がある。
サウジアラビア政府はこうした状況に危機感を募らせており、国家プロジェクトとして
省エネルギー政策が 2003 年からスタートした。サウジアラビアの科学技術政策を担うアブ
ド ル ア ジ ー ズ 国 王 科 学 技 術 都 市 (King Abdulaziz City for Science and Technology:
KACST)を実施主体として、国家エネルギー効率化計画(National Energy Efficiency
Program: NEEP)が設置された。2010 年には、独立組織としてサウジエネルギー効率セン
ター(Saudi Energy Efficiency Center: SEEC)を設立した。さらに、2012 年に石油天然
資源副大臣であるアブドラアジズ皇太子を長とする省庁横断型の組織としてサウジエネル
ギー効率プログラム(Saudi Energy Efficiency Program: SEEP)が組織され、省エネルギ
ー政策推進の中核をなしている。これらの組織は、規制と啓発活動による省エネルギー推
進を任務とし、産業部門の TOU 電力料金制度の整備、産業部門の省エネルギー診断や啓発
活動を行った。
最近の活動の成果として、建築物部門における省エネ建築基準の設定や断熱材の基準策
定が行われた。民生部門では、エアコン、冷蔵庫、洗濯機の最低エネルギー効率基準策定
及びラベリングを導入した。こうした活動の一環として、基準に満たないエアコンを回収
し、ショベルカーで破壊するという大胆な PR 活動も行っている。運輸部門では、燃費基準
の設定とラベリングの制度を導入した。その他にも、省エネルギー法案の起草や、エネル
ギー管理システムの導入など多岐にわたって政策を検討している1。
2.2.
省エネルギー行政機関
サウジアラビアの省エネルギー政策は、KACST を母体とする省庁横断型の常設組織であ
る SEEC が全体を統括している。また、部門ごと、分野ごとに各省庁・国営企業が省エネ
ルギー政策を実行している。
例えば、エネルギー効率基準とラベリング制度はサウジ標準化公団(Saudi Arabia
Standard Organization: SASO)が実施母体となっている。電力料金制度は、水電力省
(Ministry of Water and Electricity)とサウジ電力公社(Saudi Electric Corporation: SEC)
が計画と実施を担っている。また、都市村落省(Ministry of Municipality and Regional
Affairs: MOMRA)は、特に建築物部門の規制を担当し、SEC と共同で省エネルギー政策
を実施している。
1
Arab News, “Energy efficiency vital for KSA’s economic and social development,”
http://www.arabnews.com/news/605031
16
したがって、このため後述の SEEP のような組織では、省庁間のコンセンサスを重視す
ることが行動規範とされている。
2.3.
NEEP
2003 年から 2010 年にかけて、KACST、SEC、SASO を主な実施主体とした NEEP が
組織され、以下の 8 項目が重点政策として進められた。

エネルギー診断サービスの育成及び産業部門の省エネ支援

省エネルギーに関する情報提供及び啓蒙活動

TOU 料金及び負荷管理

石油・ガスの効率的利用

ESCO の推進

エネルギー効率基準策定トラベリング制度の整備

新築ビルの省エネ建築基準の整備

人材育成
上記の政策について、JICA による省エネルギーマスタープランプロジェクトによる支援が
なされた。
2.4.
SEEC
NEEP の成果と反省を踏まえ、常設の組織として SEEC が発足された。組織の中心は、
NEEP から引き続き KACST が担っており、2010 年に発足した。図 2.4-1 に SEEC の組
織体制を示す。
図 2.4-1 SEEC 管理委員会の構成
出典:SEEC パンフレット
17
SEEC は中期的なビジョンとして、2020 年までにサウジアラビア経済のエネルギー原単
位を世界の平均的な水準まで引き下げることを目標としている。この目標のために、省庁
の垣根を越えた協力が必須であり、省エネルギー政策が様々な部門に影響を及ぼすことか
ら、ステークホルダーとの協調を重視した省エネルギー政策の推進を原則としている。以
下が SEEC の主な活動である。

省エネルギー政策、規制、計画と実施状況のモニタリング

エネルギー診断の基準設定と診断サービスの提供

省エネルギー指標の構築とそれらの適用状況のモニタリング

省エネルギーの教育と啓蒙活動

省エネルギーデータベースの構築と管理

電力負荷管理の支援

高効率技術の導入促進

機器のエネルギー効率基準ラベリング制度の支援

省エネルギートレーニングと認証システム構築の支援

高効率技術の研究開発支援

省エネルギー政策のための国際協力
2.5.
SEEP の主な活動
2012 年から、SEEC の政策を強化するために SEEP が設置された。SEEP は、石油鉱物
資源相副大臣アブドラアジズ・ビン・サルマン皇太子殿下を長とし、20 の関係省庁と国内
外の企業や政府関係機関からの専門家で組織されている。図 2.5-1 はは SEEP の体制図で
ある。
図 2.5-1 SEEP 組織図
出典:SEEP パンフレット
18
SEEP は、関連省庁と国営企業の幹部で構成される運営員会を最高の意思決定機関として
いる。また、個別の政策分野ごとに技術チームがあり、重点分野である建築物、運輸、産
業分野にそれぞれを専門とするチームが活動している。また、啓発活動、都市計画、資金
的支援、ESCO、TIC、そして省エネルギー法策定チームが設置されている。それぞれのチ
ームは、政府機関や国営企業のメンバーから構成されている。さらに、資金支援チームに
世界銀行からの出向者がメンバーとして加わっており、ESCO チームにもドイツ国際協力
公社(GIZ)からの出向者がメンバーに含まれる等、国際機関や外国政府との国際協力体制
が構築されている。
SEEP の活動は 4 点の原則に基づいて行われる。
•
第一に、SEEP は需要側への働きかけのみを活動の対象とする。
•
第二に、エネルギー価格の改定は SEEP の活動には含まれない。
•
第三に、消費者の便益を損なわない形で省エネルギーを推進することを規制導入や
施策実施の前提条件とする。
•
第四に、複数ステークホルダーが参加している中、これらのコンセンサスに基づい
て意思決定を行い、施策を実施する。
SEEP は政策ツールとして、主に啓蒙活動、省エネガバナンスの整備、資金的支援、ESCO、
そして規制的手段を用いて分野ごとに省エネルギーを推進している。図 2.5-2 に SEEP の
政策体系図を示す
図 2.5-2 SEEP の政策体系
出典:SEEP パンフレット
19
建築物、運輸、産業のそれぞれの部門において、新規・既存の規制対象について施策を
行うことを予定している。このうち、建築物部門では新築物件の断熱基準を策定済みであ
る。また、家電製品のエネルギー効率基準とラベリング制度が導入された。運輸部門では、
新車の企業平均燃費基準(Corporate Average Fuel Economy: CAFE)と中古車の最低燃費
基準が導入され、ラベリング制度の整備が行われた。産業部門については、新規及び既存
事業所二対するエネルギー効率ベンチマーク設定等が進められている。それぞれの詳細に
ついては次章にて述べる。
20
3. 省エネルギー政策にかかわる最近の動向
ここでは、SEEP において重点分野として取り組まれている建築物、運輸、産業部門につ
いて述べる。ただし、SEEP の政策体系ではエアコン等の機器は建築物部門の中に位置付け
られているため、ここでは建築物部門の一部として整理した。
3.1.
建築物部門
3.1.1. 機器
現在、サウジアラビアではエアコン、冷凍冷蔵庫、洗濯乾燥機に省エネ最低効率基準及
び、ラベリング制度がサウジ標準化機構(SASO)により実施されている。これらの基準とラ
ベリング情報は Saudi Label & Standard のウェブサイトで一元的に公開されている。
図 3.1-1
Saudi Label & Standard ホームページ
出典:http://www.sls.gov.sa/Pages/ar/Default.aspx
21
(1) エアコン
サウジアラビアの家電製品の中で、最もエネルギー消費量が大きいのはエアコンであり、
2001 年に窓設置タイプの家庭用エアコンに最低エネルギー効率基準が導入された。さらに、
、
2012 年にスプリット型家庭用エアコンに最低エネルギー効率基準が SASO 基準 2663 号と
して発表された。この基準は 2 段階に分けて施行され、第一フェーズは 2013 年 9 月から施
行されている。そして、さらに厳しい第二フェーズは 2015 年 1 月から施行されている。省
エネ基準値を表 3.1-1 に示す。
また、ラベリングについても 2013 年に更新され、6 段階の星印による等級の表示が実施
されている。
表 3.1-1 エアコンのエネルギー効率基準
出典:SASO 基準から日本エネルギー経済研究所作成
図 3.1-2 ラベリングの例とエアコンのエネルギー効率基準値
出典:SASO 及び Saudi Labeling and Standards
22
(2) その他の製品
エアコン以外には、2007 年に洗濯機と冷凍冷蔵庫に対してエネルギー効率基準とラベリ
ング制度が導入され、いずれも 2013 年に厳格化された。この結果として、これまでの6段
階の星印における一つ星から三つ星が販売禁止となった。
(3) 今後の予定
現在、照明機器と業務用エアコンのエネルギー効率基準を策定中である。照明機器につ
いて策定スケジュールは明らかにされていないが、業務用エアコンについては 2015 年の第
二四半期までに基準が公表され、2016 年の第一四半期までに施行されることが予定されて
いる。さらに、給湯器、電気コンロそして食器洗機についてエネルギー効率基準を策定す
る可能性があるとみられる。
3.1.2. 新築建築物の断熱
SEEP は SASO と共同で新築建築物を対象とした材質基準と断熱基準を策定した。材質
基準は以下の素材について制定され、いずれも 2014 年から施行されている。

ポリスチレン (SASO-ASTM-C578: 2014)

発泡ポリウレタン (SASO-GSO-ISO-8873-1/2: 2014)

ポリウレタン及びポリイソシアレート製品 (SASO-GSO-BS-4841-1/2/3/4/5/6:2014)

ミネラルウール (SASO-GSN-EN-13162:2014)

気泡ガラス (SASO-EN-13167: 2014)

パーライト (SASO-ASTM C-549: 2014)

バーミキュライト (SASO-ASTM C-516: 2014)
また、新築建築物については断熱基準が設定されている。この基準は、屋根や壁面など
の断熱性能に関するもので、図 3.1-3 に示すようにサウジアラビアの三種類の気候帯毎に
設定されている。また、表 3.1-2 に示す通り、2014 年開始の第一ステージと 2014 年開始
の第二ステージに分けられている。
基準の遵守状況は SEC の立ち入り検査によってチェックされ、不遵守が確認された場合
は、電力供給を拒否するという形で実効性を保つとしている。
23
図 3.1-3 断熱基準と気候区分
出典:SASO
表 3.1-2 断熱基準値
ステージ1
ステージ2
(2014 年 11 月〜)
(2017 年 1 月〜)
ゾーン1
ゾーン2
ゾーン3
ゾーン1
ゾーン2
ゾーン3
0.31
0.37
0.42
0.20
0.24
0.27
0.53
0.61
0.70
0.34
0.40
0.45
0.25
0.25
0.25
0.25
0.25
0.25
屋根
(熱貫流率、U 値)
壁
(熱貫流率、U 値)
垂直面グレージング
(日射熱取得率、η 値)
出典:SASO 基準より日本エネルギー経済研究所作成
3.1.3. 既存建築物の省エネ
既存建築物に関して、SEEP は政府が政府建築物の改修等に率先して取り組むことを目指
しており、これによって他分野に手本を示すことを念頭に検討が進められている。
3.2.
運輸部門
3.2.1. 燃費基準
2014 年にサウジアラビア政府が、2020 年までの新車と中古輸入車の燃費基準案を発表し
24
た。基準は、いずれも乗用車と小型トラックを対象とし、2015 年 7 月 1 日施行となる。
サウジアラビアの新車燃費基準は企業平均燃費(Corporate Average Fuel Economy:
CAFE)での基準値を採用し、2015 年から 2020 年まで段階的に引き上げていくことが予
定されている。また、日本の自動車重量別の基準値と異なり、車両のフットプリント(自
動車のホイールベースと平均車幅を掛け合わせた面積)毎の基準設定となっている。
目標達成において、特定のフットプリント階級で基準を上回る目標を達成した場合、超
過分を他のフットプリント階級に移すことができる。また、目標は年度ごとに達成を目指
すが、特定の年度で基準を上回る目標達成をした場合、翌年度以降超過分を繰り越すこと
ができる。また、目標達成できなかった場合は翌年度以降の超過分で未達成分と相殺する
こともできる。このように、目標達成には柔軟性措置が導入されている。
図 3.2-1 サウジアラビアの自動車燃費基準
出典:SASO 基準より日本エネルギー経済研究所作成
サウジアラビアの燃費基準の特徴として、フットプリント方式を採用しているほか、燃
費測定方法も米国環境保護庁の都市部と高速道路と分けて実際燃費を計測する方式を採用
しているように、米国の CAFE 基準をモデルにしていることがわかる。
他 方 、 燃 費 規 制 の 検 討 と 実 施 状 況 の レ ビ ュ ー を 行 う 燃 費 委 員 会 ( Fuel Economy
Committee)が発足する。その委員として湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council: GCC)
の組織の一つである湾岸標準化機構(Gulf Standardization Organization: GSO)のメンバ
ーが参加することが予定されている。また、自動車に添付することが義務付けられる性能
諸元表の発行は、同じく GSO が行うなど、湾岸諸国における省エネルギー政策の協力とい
25
う側面がある。
中古輸入車の燃費基準は最低エネルギー性能基準(MEPS)方式を採用しており、2020
年までは乗用車で 10.3km/l、小型トラックで 9.0km/l となっている2。
3.2.2. 燃費ラベリング制度
燃費ラベリング制度は 2015 年から 2017 年の新車の乗用車と小型トラックを対象とし、
燃費ランクごとに 6 段階の評価となっている。ラベルの貼付を行っていない自動車は販売
禁止となる。表 3.2-1 と表 3.2-2 にラベルの評価基準、図 3.2-2 は燃費ラベルの例である。
表示方法は EU のものを踏襲し、アラビア語の文字方向(右から左)に変更した形になっ
ている。
表 3.2-1 乗用車のラベリング等級
出典:SASO 基準より日本エネルギー経済研究所作成
表 3.2-2 小型トラックのラベリング等級
出典:SASO 基準より日本エネルギー経済研究所作成
2
SAUDI STANDARD, DRAFT No. 29242/2014, SAUDI ARABIA FUEL ECONOMY STANDARD FOR
INCOMING LIGHT DUTY VEHICLES,
(2016 – 2020) http://www.saso.gov.sa/en/standards/Pages/Standard_fuel_economy.aspx
26
図 3.2-2 サウジアラビアの自動車燃費ラベル
出典:SASO
なお、それぞれ等級の燃費に関する下限値と上限値の間隔は 0.5km/liter であり、後述す
る米国の等級区分と比較すると極めて狭い間隔での設定になっている。これは、サウジア
ラビアの小型車の場合、1 ランクの Excellent 等級車であっても 14.7km/liter と、米国の燃
費水準と比較やや緩い設定になっているためである。
米国のラベリングの基準値を表 3.2-3 に示す。同様の燃費ラベリング制度を行っている
米国においては、最良等級の燃費水準は 19.35 km/liter と、サウジアラビアの Excellent 等
級より 32%優れた水準になっている。また、各等級間に異なる幅で燃費水準が設定されて
いるだけでなく、その幅も 0.43km から 3.01km と等級間の差異がより大きく設定されてい
る。サウジアラビアのラベリング制度も最良水準の燃費を向上させるとともに、各等級間
の差異化を行う等、さらなる改良が今後望まれる。
27
表 3.2-3 米国の 2015 年のラベリング等級
注: レンジ幅は下の等級との差異を表す
出典:米国連邦政府燃費基準ウェブサイトから弊所作成
3.2.3. タイヤの転がり抵抗基準
2014 年に、タイヤの転がり抵抗基準も発表された。基準値は、C1、C2、C3 クラスを対
象としており、2015 年から 2019 年を遵守期限とするフェーズ1、2019 年から 2023 年を
順守期限とするフェーズ2に分けられている。これらの遵守期限は、下表に示す通り、タ
イヤのクラスごとに設定されるだけでなく、サプライチェーンを①国内生産と輸入段階、
②新車への装着段階、そして③小売店における販売段階の三段階に分け、それぞれ異なる
期限を設定している。
転がり抵抗基準は安全基準であるウェットグリップ性能基準と一体となっている。下表
に示す通り、単一フェーズで 2015 年から 2019 年が遵守期限となっている。
表 3.2-4 転がり抵抗基準値と遵守期限(フェーズ1)
出典:SASO 基準より日本エネルギー経済研究所作成
28
表 3.2-5 転がり抵抗基準値と遵守期限(フェーズ2)
出典:SASO 基準より日本エネルギー経済研究所作成
表 3.2-6 ウェットグリップ性能基準と遵守期限
出典:SASO 基準より日本エネルギー経済研究所作成
3.3.
産業部門
SEEP は、鉄鋼、セメント、石油化学の3セクターと対象とした、新規・既存プラントに
対するエネルギー効率ベンチマークの設定を進めており、これに基づく省エネルギー推進
とエネルギー管理士制度の構築に向けた作業が進められている。
SEEP の産業部門の省エネ政策は、鉄鋼、セメントそして石油化学の3セクターを対象と
しており、それぞれ既存プラントと新規プラントにエネルギー原単位の目標値を設定して
いる。既存プラントのエネルギー現単位改善については、SEEC が立ち入り検査とベース
ラインの把握を行い、ベンチマーク設定等を行っている。その上で、個別企業ごとにエネ
ルギー原単位改善指導を行っている。こうした取組みの実態について、現地企業にヒアリ
ングを行ったところ、既に SEEC が設定したエネルギー原単位目標及び改善策を受領して
いた。しかし、その内容については、これまで企業が取り組んできた省エネルギー対策の
考え方と異なる方法であった。目標値の設定に際して、企業側との意見の摺り合わせが行
われず、継続的なフォローアップ等も難しい状況にある。
新規プラントについては、エネルギー効率基準が設定される予定である。基準発効後は、
新規プラントの建設時に基準を満たすことが義務付けられ、基準の遵守が各種の許認可取
得の条件とされる予定である。また、産業用モーターについてはすでにエネルギー効率基
準が導入されており、今後はボイラー等の設備についても基準が導入される予定である3。
3
前掲注 1。
29
4. サウジアラビアの省エネルギー推進の課題と政策提言
省エネルギー推進課題
4.1.
ここでは、部門別に省エネルギーの進捗をまとめるとともに、その推進課題を提示、そ
れらに対し日本の政策・制度を踏まえ、サウジアラビアの状況に適した制度構築に向けた
政策提言を行う。
4.1.1. 民生部門
(1) 省エネルギーの推進課題:機器の省エネ基準遵守及びラベリング制度
エアコン、洗濯機ならびに家庭用冷蔵庫を対象として、エネルギー効率基準が導入済みで
あり、今後、他の家電製品にも拡大される予定となっている。しかしながら、国内市場で
販売される家電製品がエネルギー効率基準を遵守しているか、把握するシステムが構築さ
れていない。これに加え、製造業者ならびに輸入業者は同製品に対する省エネラベル貼付
が義務付けられているが、その遵守状況を把握するシステムが構築されていない。
政策提言
•
サウジアラビアの輸入・卸・小売段階の製品に関する基準・ラベル制度遵守に関す
る報告制度を確立し、データベースを通して遵守状況が把握できるようにすること
が必要である。
•
小売販売店等での製品に関する抜き打ちでの立ち入り調査や、罰則制度を導入し、
基準・ラベリング制度の遵守を徹底することが望まれる。サウジアラビアにおいて、
基準・ラベリング制度の策定はサウジ標準化公団(SASO)が担当しているが、こ
れとは別の機関が制度遵守に関する役割を担い、チェック機能を徹底することも検
討される必要がある。
•
消費者には省エネルギー型の機器に対する補助金等のインセンティブを付与するな
ど、啓発の観点からも政府の対応が求められる。その際、省エネルギー基準の試験
を通過した製品に対して、適切にラベルで等級を提示することが消費者への情報提
供の上で前提となる。
(2) 省エネルギーの推進課題:住宅・建築物の省エネ基準遵守
サウジアラビアでも建築基準に省エネルギー基準(SBC Section 601)が追加された。しかし、
多くの新築建築物において、断熱などの対策がとられていない。
政策提言
•
新たに高断熱住宅・建築物を建築するオーナーに対しては、資金面でのインセンテ
ィブを付与することが望ましい。既にサウジアラビアでは、住宅や建築物の建設に
公的資金が投入されているが、高断熱住宅・建築物に対しては、相対的に高い資金
30
面でのインセンティブを付与するなど、差別化が必要である。
•
新築の公共建築物では省エネ基準の遵守を義務化するなど、その他住宅・建築物に
対して模範を示すことが望まれる。また特定の開発地域を指定、そこでの新築住宅・
建築物は厳格な省エネ基準の達成を義務化するなどし、建築事業者への経験を蓄積
させることが必要であろう。
•
産業部門ならびに住宅・建築物に対しても、エネルギー管理士制度を活用した建築
基準遵守のモニタリングメカニズム策定が検討されているところである。設計段階
で、省エネルギー基準を満たす住宅・建築物への申請許可を行うとともに、エネル
ギー管理士制度を活用し、建築が完了した住宅・建築物への基準遵守にかかわるモ
ニタリングが必要である。これに加え、住宅・建築物の建築担当者が省エネルギー
基準を遵守できるよう、マニュアルを作成するとともに、政府主導で建設事業者に
対する教育の機会を設けることで、省エネ基準への理解と遵守徹底が求められる。
4.1.2. 運輸部門
(1) 省エネルギーの推進課題:乗用車のラベリング制度と燃費基準の導入
国内に自動車製造業が無く、サウジアラビアでは輸入中古車の保有が高い。その上、鉄道
といったインフラが整備されていないことから、通勤・長距離移動共に自動車への依存が
高い。2014 年から乗用車燃費ラベルが導入、2015 年 7 月 1 日から自動車燃費基準が導入
される予定で、本格的な省エネルギー推進に向けた取組みを始動するところにある。他方、
2014 年から先行して導入されているラベル貼付制度については、遵守状況を把握するシス
テムが構築されていない。
政策提言
•
乗用車の販売段階におけるラベル貼付にかかわる立ち入り検査制度の導入等、遵守
を徹底する制度構築の検討が必要である。
•
車検制度の確立と、ラベル貼付・基準遵守にかかわる検査システムの導入、ならび
にデータベースの構築が望まれる。こうしたデータベースを活用し、基準やラベル
貼付制度に関する課題を抽出、それに応じた対策の検討が望まれる。
•
低燃費車への買い替えに際してインセンティブを付与することへも乗用車オーナー
に対する啓発の観点から重要である。
4.1.3. 産業部門
(1) 省エネルギーの推進課題:中小工場での省エネルギー推進
石油化学・石油精製等の大企業の工場では、最新の設備を導入し、省エネルギーを推進し
ている。しかしながら、それ以外の中小工場では資金不足や電力・石油製品等の国内価格
が低いことから、省エネルギーへのインセンティブが働かず、エネルギー効率の高い設備
31
への投資が進まないのが現状である。エネルギー管理士制度を導入、運用面での省エネル
ギー推進に向けた期待が持たれている。また、産業の育成によって、近年問題となってい
る若年者の雇用先確保への期待が高まり、若年層の雇用確保策の一つとしても、エネルギ
ー管理士の配置が検討されているところである。
政策提言
•
日本におけるエネルギー管理士育成にかかわる制度を紹介し、サウジアラビアでの
同制度導入に向けた制度設計を検討することが望まれる。
•
日本の省エネ表彰制度で対象となった事例のうち汎用性の高いものを抽出、ベスト
プラクティスとして、サウジアラビアの中小工場において、現場の担当者にも分か
りやすい事例集などが必要だろう。こうした事例集を活用し、日本の知見共有とい
った定例のワークショップをサウジアラビアで開催するなどのフォローアップも重
要である。
•
首都リヤドにおけるワークショップの開催以外にも、サウジアラビア国内にこうし
た情報・知見の共有を行う教育機会を展開、中小工場における省エネルギーにかか
わる実践のきっかけを創出することも同様に望まれる。
•
運用面のエネルギー効率改善以外に、中小工場への支援として高効率技術導入に関
する補助金支給など技術面での政府対応も求められる。
4.1.4. 部門横断アプローチ
(1) 省エネルギーの推進課題:省エネ政策導にかかわる優先順位
全ての部門を網羅する省エネルギー政策の実施ならびに基準の設定が検討されているもの
の、将来的な方向性は提示されていない。
政策提言
•
関係省庁ならびに国内製造業者等の省エネに関するステークホルダーに対して、将
来的な省エネ基準ならびに政策の方向性とその効果を提示することは、関係者に対
して準備に十分な時間を与えることと、協力を得る上で重要である。
•
サウジアラビアで導入が検討されている省エネ政策・制度を整理した上で、それら
を技術・機器別の効率改善想定を行い定量評価、2035 年までのシナリオを作成し、
省エネ政策・制度が実施されなかった場合(レファレンスケース)との比較を省エ
ネケースとし、差分を省エネ効果として提示することが手法として提案できる。
•
こうした省エネ政策・制度の効果分析に加え、導入される政策・制度別の費用対効
果分析を行い、サウジアラビアが取りうる政策・制度の優先順位を決定、部門を横
断して関係者間の協力を得るためのロードマップを提示することは重要である。
32
5. 電話会議録
SEEC からの要望の聞き取りと、日本の省エネルギー政策の取組に関する情報提供を主
な目的として、サウジアラビア側からは SEEC と日本側からは経済産業省(METI)
、省エ
ネルギーセンター(ECCJ)
、日本エネルギー経済研究所(IEEJ)及びトピックに応じた専
門家が出席し、下記の通り電話会議を 6 回開催した。
表 4.1-1 電話会議録
日付
第一回
第二回
参加者
内容
2014 年
SEEC、METI、ECCJ、 ・日本のエネルギー管理士制度について
4月8日
IEEJ
2014 年
SEEC、METI、ECCJ、
4 月 24 日
・日本における ISO50001
・日本のエネルギー管理士制度について(フォローア
ップ)
IEEJ
・日本の産業ベンチマークについて
2014 年
第三回
6 月 16 日
SEEC、METI、ECCJ、
・セメント製造業における省エネについて
セメント協会、石油化
・石油化学工業における省エネについて
学協会、IEEJ
2014 年
第四回
第五回
第六回
6 月 26 日
SEEC、METI、ECCJ、 ・エネルギー管理士の育成について
IEEJ
・出張日程について
2014 年
SEEC、METI、ECCJ、 ・日本におけるエネルギー管理士の活用事例
9月3日
IEEJ
2015 年
SEEC、METI、ECCJ、 ・IEEJ の省エネポテンシャル分析及び省エネ事例デ
1月9日
IEEJ
・IEEJ の省エネポテンシャル分析等について
ータベースについて
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6. ワークショップの成果
2015 年 3 月 10 日に、本共同研究の一環としてのワークショップをリヤドで開催した。
プログラムについて Appendix 1 を参照されたい。
はじめに、オープニングセッションにおいて在サウジアラビア日本国大使館の高橋公使
からサウジアラビアと日本の関係が極めて重要であり、なかでも省エネルギーにおける協
力は近年の日本とサウジアラビアのパートナーシップにおいて大きな前進であると式辞が
述べられた。
続いて、第 1 セッションでは、SEEC の Nasser Al Ghamdi 氏及び Hakam Zummo 氏、
経済産業省の日野氏から発表があった。
SEEC の Nasser Al Ghamdi 氏からは、近年サウジアラビアではエネルギー消費量、エ
ネルギー原単位ともに増加を続けており、省エネルギーの推進が急務であることが述べら
れた。また、SEEP のガバナンス構造及び、以下の方針が説明された。

エネルギー価格の改定は含まない

需要側への働きかけのみとする

最終消費者の便益を損なわない形での省エネルギーとする

ステークホルダー間のコンセンサスを重視して政策立案を行う
同じく SEEC の Hakam Zummo から建物部門の省エネルギー政策について説明があっ
た。機器については、既に発行した SASO のエアコン、洗濯乾燥機、及び冷蔵庫の基準と
ラベリング制度の進捗についての説明があったほか、現在照明機器と業務用エアコンの基
準が策定中であると述べられた。さらに今後は、温水器、電気コンロそして食器洗浄機の
基準の策定が考えられると述べた。建物の断熱については、3 つの異なる気候帯に異なる基
準を導入し、不遵守の場合は電力供給を拒否する形で実効性を確保するとの説明がなされ
た。加えて、建物部門の省エネルギーは政府建物から率先して進めることで手本となって
いく方針が説明された。
経済産業省の日野氏からは、エネルギー消費量及びエネルギー原単位の国際比較と日本
の省エネルギー政策の概要とその成果の上、サウジアラビアにおける省エネルギーの推進
が自国企業の競争力を強化し、国富の増進をもたらすとの示唆が述べられた。さらに、今
後の施策として政府調達における省エネ機器の優先的調達が提案された。
次の第 2 セッションでは、弊所からサウジアラビアにおける今後の省エネルギーポテン
シャルと日本のエネルギー管理士制度の外観とエネルギー管理士制度のサウジアラビアに
おける有効性について発表を行った。サウジアラビアの省エネルギーポテンシャルの発表
においては、簡潔に弊所のモデルの説明を行ったうえで、サウジアラビアの省エネルギー
ポテンシャルと取りうる政策について説明した。さらにその節約した炭化水素資源を輸出
した場合の金銭的便益を説明した。エネルギー管理士制度の発表においては、優秀なエネ
ルギー管理士を養成することで可能となる省エネルギー施策を説明した。そのなかで、高
額な設備投資を行わずとも、工場や建物におけるオペレーションの効率化を通じた省エネ
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ルギー施策が可能となった事例が数多くあることを示し、高効率設備の導入とオペレーシ
ョン改善でさらなる省エネルギーが可能になるという示唆を述べた。
フロアを交えたディスカッションにおいては、特に厳しいペナルティーと実効性のある
規制の執行が必要であるという意見が多くみられた。また、モニタリングにも課題が残る
とし、SEEC ではデータベースの構築が急務であるという見解が表明された。さらに、エ
ネルギー管理士制度を含む、行動の変化による省エネについては文化のレベルで改革が必
要であることが指摘され、SEEC としても継続して啓発活動を積極的に行うことの重要性
が再認識された。
クロージングセッションでは経済産業省の猪口氏よりサウジアラビアにおける省エネル
ギー政策の重要性が述べられ、引き続きこの分野で日本とサウジアラビアが協力していく
と述べられた。
図 4.1-1 ワークショップ写真
35
参考文献

Dr. Naif M. Alabbadi, “Why Energy Efficiency?” Presentation material for 4th
Industrials Forum, “Renewable Energy & Energy Efficiency: Emerging business
opportunities for the KSA, Asharqia Chamber of Commerce and Industry, 14 May
2012
(http://www.chamber.org.sa/Arabic/Events/ipfin2012/Presentations%20and%20Pap
er%20Work/%D8%A7%D9%84%D9%8A%D9%88%D9%85%20%D8%A7%D9%84%
D8%A3%D9%88%D9%84/Dr.%20Naif%20Al-Abbady.pdf).

Dr. Naif M. Alabbadi, “Energy Efficiency Potential in the Building Sector,”
Presentation
material
for
The
Saudi
International
Advanced
Materials
Technologies Conference 2012, KACST December 3 2012
(http://www.kacstbtc.org/2012/EN/images/speakers/pdf/Alabbadi.pdf).

Dr. Naif M. Alabbadi, Presentation material for AFED 6th Annual Conference
Sustainable Energy: Prospects, Challenges, Opportunities, Sharjah, 28 October
2013
(http://www.afedonline.org/uploads/Presentation/pdf/SEEC_AFED_Oct2013-naif.pd
f).

Saudi Energy Efficiency Program Technical Team, “Energy efficiency efforts in the
Saudi transportation sector,” Presentation material for Saudi Energy Efficiency
Forum 2014, May 2015
(http://eeforum.sa/2014/ar/img/Speakers/pdf/Al-Ibrahim.pdf).

Saudi Energy Efficiency Program Technical Team, “Improving the energy efficiency
of the Buildings sector in Saudi Arabia: Two years of success!” 21 May 2014.
(http://eeforum.sa/2014/ar/img/Speakers/pdf/Zimmo.pdf)

SEEC Annual Report 2013, March 2014
(http://www.seec.gov.sa/wp-content/uploads/2014/03/‫ال ت قري ر‬-‫ال س نوي‬-‫ل عام‬-2013-‫ن سخة‬‫ن هائ ية‬-1.pdf)

SEEC Annual Report 2012, March 2013
(http://www.seec.gov.sa/wp-content/uploads/2014/03/1‫ال ت قري ر‬-‫ال س نوي‬-‫ل عام‬-2013-‫ن سخ‬
‫ة‬-‫ن هائ ية‬.pdf)

Saudi Program for Energy Efficiency, 2012
(http://www.seec.gov.sa/wp-content/uploads/2014/03/1‫ال ت قري ر‬-‫ال س نوي‬-‫ل عام‬-2013-‫ن سخ‬
‫ة‬-‫ن هائ ية‬.pdf)

SASO 断熱基準案
SAUDI STANDARD, DRAFT No. 28793/2014, Thermal Transmittance Values for
36
Residential Buildings
(http://www.momra.gov.sa/GeneralServ/heatiso/Insulation%20Regulation%20Sum
mary%20%28English%29.pdf)

SASO 自動車燃費ラベリング基準
SASO 2847/2013, FUEL ECONOMY LABELLING REQUIREMENTS FOR NEW
LIGHT DUTTY VEHICLES
(http://www.saso.gov.sa/en/standards/Pages/Requirements_for_fuel_economy.aspx)

SASO 企業平均燃費基準案
SAUDI STANDARD, DRAFT No. 29242/2014, SAUDI ARABIA FUEL ECONOMY
STANDARD FOR INCOMING LIGHT DUTY VEHICLES (2016 – 2020)
(http://www.saso.gov.sa/en/standards/Pages/Standard_fuel_economy.aspx)

SASO タイヤ転がり抵抗基準
SASO 2875/2014, VEHICLE TIRES ROLLING RESISTANCE AND WET GRIP
REQUIREMENTS
(http://www.saso.gov.sa/en/standards/Pages/Requirements_for_rolling_resistance_a
nd_cohesion.aspx)
参考ウェブサイト

SEEC (http://www.seec.gov.sa/)

SASO(http://www.saso.gov.sa/en/)

Saudi Label & Standard (http://www.sls.gov.sa/)
37
Appendix 1
Workshop on Promoting Energy Efficiency and Conservation in KSA
- Japanese Experiences and Future Cooperation between KSA and Japan Date:
10 March 2015
Venue:
Riyadh Chamber of Commerce & Industry
P.O. Box 596, Riyadh, 11421
Kingdom of Saudi Arabia
http://www.riyadhchamber.org.sa
Language:
English
Workshop Agenda:
Registration:
08:30 – 09:00
Session 1: Opening Session
09:00 - 09:10(10)
Welcoming Remarks
Mr. Fahad S. Al Harbi, Director, SEHAI
09:10 - 09:20 (10)
Opening Remarks
Minister Katsuhiro Takahashi, Japanese
Embassy to KSA
Session 2: Understanding Current EE&C Policies and Programs in KSA and Japanese Experiences
09:20 - 10:00(40)
S2-1: KSA’s Energy Efficiency and
Mr.
Conservation Policy and Programs –
Collaboration, SEEP
Achievements and Way Forward
Mr.
Nasser
Hakam
Al
Gham,
Zummo,
International
Building
Team
Leader, SEEP
10:00 - 10:20(20)
S2-2: Evolution of Japanese Energy
Ms. Yukari Hino, METI
Efficiency and Conservation Policy
10:20- 10:40 (20)
Floor Discussion
10:40 - 10:50 (10)
Coffee Break
10:50 - 11:10 (20)
S2-3: KSA’s Energy Outlook and
Energy Savings Potential – Benefits
Mr. Akihiro Kuroki, Managing Director,
IEEJ
and Costs
11:10 - 11:30 (20)
S2-4:
Japanese
Promoting
Experiences
EE&C
–
in
Mr. Shumpei Watanabe, Researcher, IEEJ
Energy
Manager Program and Residential
EE&C Expert Certificate
11:30- 11:50 (20)
Floor Discussion
Session 3: Closing Session
11:50-12:00 (10)
Closing Remarks
Mr. Sho Inokuchi, Deputy Director, METI
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