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横浜市下水道設計指針(管きょ編)・同解説
横 浜 市 下 水 道 設 計 指 針 (管きょ編) 同 解 説 平成23年度改訂版 横 浜 市 環 創 造 局 横浜市下水道設計指針(管きょ編)同解説目次 第1章 総則 1-1 1.1 適用範囲 1-1 1.2 設計手順 1-2 1.3 下水道計画との整合 1-3 調査 2-1 2.1 資料収集 2-1 2.2 台帳調査 2-2 2.3 現地調査 2-6 2.4 測量調査 2-7 2.5 土質調査 2-8 2.6 関係官公署及び企業者との協議 2-10 管路施設の設計 3-1 3.1 排除方式 3-1 3.2 計画雨水量 3-2 第2章 第3章 3.2.1 雨水流出量算定式 3-3 3.2.2 降雨強度 3-5 3.2.3 排水面積 3-7 3.2.4 流出係数 3-8 3.2.5 流達時間 3-10 3.3 計画汚水量 3-12 3.3.1 生活汚水量 3-14 3.3.2 営業汚水量 3-16 3.3.3 工場排水量 3-19 3.3.4 地下水量及び水路等排水量 3-22 3.3.5 計画汚水量の集計 3-26 3.4 計画下水量 3-27 3.5 管きょの設計 3-28 3.5.1 管きょの余裕 3-28 3.5.2 管きょの流量計算 3-29 3.5.3 水位計算 3-31 3.5.4 流速及びこう配 3-32 3.5.5 管きょ及び継手の種類 3-34 3.5.6 管きょの断面形状 3-35 3.5.7 管きょの埋設位置 3-37 3.5.8 土被り 3-38 3.5.9 管きょの接合 3-40 3.5.10管きょの基礎 3-41 3.6 管の設計 3-45 3.6.1 剛性管の設計 3-45 3.6.2 可とう性管の設計 3-63 第4章 人孔 4-1 4.1.1 目的 4-1 4.1.2 配置 4-1 4.1.3 種類 4-2 4.1.4 人孔蓋 4-5 4.1.5 インバート 4-6 4.1.6 人孔基礎 4-6 4.1.7 足掛金物 4-7 4.1.8 副管 4-8 4.1.9 特殊人孔 4-9 4.1.10深い人孔の安全対策 4-10 第5章 雨水吐 5-1 5.1 雨水吐 5-1 5.1.1 雨水吐 5-1 5.1.2 計画外水位 5-2 5.1.3 雨水吐のせき頂高 5-4 5.1.4 雨水吐のせき長 5-5 5.2 遮集管きょ 5-10 5.3 吐口 5-11 桝及び取付管 6-1 桝 6-1 第6章 6.1 6.1.1 雨水桝 6-1 6.1.2 接続桝 6-2 6.1.3 集水桝 6-3 6.1.4 工場排水監視桝 6-3 6.1.5 接続雨水浸透桝 6-4 6.2 第7章 7.1 取付管 6-5 道路構造物 7-1 舗装 7-1 7.1.1 舗装種別 7-1 7.1.2 舗装の復旧方法 7-2 7.1.3 標示線の復旧 7-2 7.2 道路側溝 7-2 7.2.1 L型側溝 7-2 7.2.2 LU・LO型側溝 7-3 7.2.3 U型側溝 7-3 第8章 8.1 土留め工 8-1 総則 8-1 8.1.1 適用の範囲 8-1 8.1.2 参考文献及び関連法規 8-2 8.1.3 土留めを必要とする掘削 8-4 8.2 土留め工の設計 8-5 8.2.1 大規模掘削の場合 8-5 8.2.2 小規模掘削の場合 8-8 8.3 材料及び許容応力度 8.3.1 材料 8-11 8-11 8.3.2 許容応力度の決定 8-11 8.3.3 鋼材類の許容応力度 8-12 8.3.4 コンクリートの許容応力度 8-16 8.3.5 木材の許容応力度 8-17 8.4 荷重 8-18 8.4.1 荷重の種類 8-18 8.4.2 死荷重 8-19 8.4.3 活荷重 8-20 8.4.4 衝撃 8-21 8.4.5 側圧一般 8-21 8.4.6 その他の荷重 8-22 8.5 側圧 8-23 8.5.1 根入れ長算定に用いる土圧及び水圧 8-23 8.5.2 応力算定に用いる側圧 8-27 8.6 根入れ長の検討 8-31 8.6.1 根入れ部の側圧に対する安定 8-31 8.6.2 最小根入れ長 8-32 8.7 掘削底面の安定 8-33 8.7.1 ヒービング 8-36 8.7.2 ボイリング 8-41 8.7.3 パイピング 8-42 8.7.4 盤ぶくれ 8-43 8.8 断面の検討 8-44 8.8.1 土留め壁の断面計算 8-44 8.8.2 横矢板の断面計算 8-46 8.9 支保工の設計 8-47 8.9.1 支保工の設置位置 8-47 8.9.2 荷重 8-48 8.9.3 腹起しの設計 8-50 8.9.4 切ばりの設計 8-52 8.9.5 火打ちの設計 8-54 8.10 土留め壁の支持力 8-55 8.10.1 土留め壁に作用する鉛直荷重 8-55 8.10.2 許容支持力 8-56 8.11 中間杭の設計 8-60 8.11.1 中間杭の設計 8-60 8.11.2 中間杭の作用する荷重 8-60 8.11.3 中間杭の設置位置 8-60 8.11.4 中間杭の断面算定 8-61 8.12 覆工 8-62 8.12.1 概説 8-62 8.12.2 覆工板の設計 8-62 8.12.3 覆工桁の設計 8-63 8.12.4 覆工受け桁の設計 8-66 8.12.5 地下埋設物と覆工受け桁 8-67 8.12.6 覆工受け桁の転倒防止 8-67 第9章 耐震設計 9-1 9.1 耐震設計の適用 9-1 9.2 耐震対策の基本的な考え方 9-2 9.3 管路施設における耐震設計の基本的な考え方 9-3 第10章 管きょ更生工法 10-1 10.1 管きょ更生工法の適用 10-1 10.2 管きょ更生工法の分類 10-2 10.3 自立管の設計 10-7 10.4 許容たわみ率 10-9 10.5 有効支承角 10-10 10.6 自立管更生管厚の算定式 10-11 10.7 自立管の要求性能 10-12 10.8 耐荷能力 10-13 第11章 下水道設計図面の作成基準 11.1 設計図面 11-1 11-1 11.1.1図面の形状寸法 11-1 11.1.2記号 11-5 参考資料 1.マニング公式による円形管流量表(満流) 参-1 2.U型側溝流量表(8割水深) 参-7 第1章 総 則 1.1 適用範囲 本設計指針は、横浜市の下水道事業における「開削工法」の設計に適用する。 【解説】 下水道管路施設は、開削工法、推進工法並びにシールド工法などによって築造される。本指 針はこれらの工法のうち、主に開削工法によって下水道管路施設を布設する場合に適用するも のである。 なお、本指針に明示されていない特殊あるいは適用範囲外の工法などを採用するに当たって は、個別に十分な検討を行ったうえで設計することが必要である。 1-1 1.2 設計手順 設計は、原則として以下のような手順にしたがって実施する。 【解説】 下水道管路施設の設計は、次のような手順で実施するものとし、各項目毎に十分な審査を行う。 START 資料収集 現地踏査 仮平面図作成 下水道計画との整合 流量表作成 仮縦断図作成 土質調査 工法の検討 NO 関連機関との協議 測 量 平面・縦断図作成 管種・管基礎の検討 NO 管種・管基礎の計算 土留め工の検討 NO 仮設計算 設計図の作成 数 量 計 算 設計書の作成 END 図1.1 設計手順 1-2 1.3 下水道計画との整合 下水道管路施設の実施設計に先立ち、既往の下水道計画と十分な整合を図る。 (1) 排水区域、排除方式、排水区画割、排水路線は、原則として既往の下水道計画に合わせ る。 (2) 計画変更の必要性が生じた場合には、下水道事業調整課と協議を行わなければならない。 【解説】 (1) 既往の下水道計画との整合は、以下に示す下水道計画図書をもとにして行う。 ・基本計画図 (縮尺:1/10,000) ・排水施設区画割平面図(縮尺:1/2,500) ・下水道計画縦断面図 (縮尺:横1/2,500、縦1/100) ・管きょ流量表 (2) 既往の下水道計画に変更が生じた場合には、必ず下水道事業調整課と協議する。協議の 対象となる項目は、 1.排水区域 2.排除方式 3.排水区画割 4.排水路線 などである。 1-3 第2章 調 査 2.1 資料収集 実施設計に先立ち、必要資料を収集する。 【解説】 実施設計に必要な資料として、次のようなものがあげられる。 表2.1 資 料 資料収集項目 名 収集場所 横浜市地形図(白図) S=1/2,500 (株)中央ジオマチックス 都市計画区図(白図) S=1/10,000 (株)中央ジオマチックス 道路台帳 S=1/500 道路局道路調査課 道路認定路線図 道路局路政課 基本計画図 S=1/10,000 排水施設区画割平面図 S=1/2,500 下水道計画縦断面図 S= V:1/100 環境創造局下水道事業調整課 H:1/2,500 管きょ流量表 土質調査報告書 環境創造局環境科学研究所 水準基準点、位置及び高さ 設計担当者 接続点箇所の竣工図 設計担当者 公 法務局及び各出張所 図 水路調査図(H21年作成) 各土木事務所 その他必要な資料 2-1 2.2 台帳調査 台帳調査は、設計で必要となる次のような調査ごとに行う。 (1) 公図・境界調査 (2) 舗装掘削規制調査(舗装種別) (3) 地下埋設物調査 (4) 架空線調査 (5) 既設下水道管調査 (6) 急傾斜地調査 【解説】 (1) 公図・境界調査のうち公図については、横浜地方法務局又は各出張所にて閲覧する。ま た、境界査定図は、各土木事務所にて閲覧する。なお、道路台帳は道路局道路調査課に保 管してあり、参考資料として活用が可能である。 表2.2 法務局一覧表 2.3 法務局 土木事務所 横浜地方法務局 旭出張所 管轄区 土木事務所一覧 中、西、南 鶴 見土木事務所 旭、瀬谷 神 奈 川土木事務所 管轄区 鶴 見 神 奈 川 保土ヶ谷 鶴見、神奈川 西 土木事務所 西 中 土木事務所 中 金沢出張所 金沢、磯子 南 土木事務所 南 青葉出張所 緑、青葉 港 戸塚出張所 戸塚、泉 保土ヶ谷土木事務所 港北出張所 港北、都筑 神奈川出張所 栄出張所 南土木事務所 旭 港南、栄 南 保土ヶ谷 土木事務所 旭 磯 子土木事務所 磯 子 金 沢土木事務所 金 沢 港 北土木事務所 港 北 緑 土木事務所 緑 青 葉土木事務所 青 葉 都 筑土木事務所 都 筑 戸 塚土木事務所 戸 塚 瀬 2-2 港 栄 土木事務所 栄 泉 土木事務所 泉 谷土木事務所 瀬 谷 (2) 舗装掘削規制調査は、各道路管理者ごとに行う。調査場所を表2.4、掘削規制年度を表2.5 に示す。 表2.4 道路分類 舗装掘削規制調査場所一覧 道路名称・行政区 調査場所 横浜国道事務所 国 道 (指定区間) 国道1、15号、旧1号 神奈川出張所 国道16、246号、保土ヶ谷バイパス 保土ヶ谷出張所 国道16、357号 金沢出張所 国道246号 川崎国道事務所 国道(その他区間) 国道1、15、357号 県道及び市道 各土木事務所 各路線 表2.5 各土木事務所 舗装種別による掘削規制年度 掘削規制年度 舗 装 B舗装 C舗装 D舗装 S(1)舗装 S(2)舗装 5年規制 A舗装 L舗装 3年規制 R舗装 S(3)舗装 1年規制 上記以外 切削打換・補修をした道路 なお、透水性舗装については、別途道路管理者と協議する。 2-3 (3) 地下埋設物調査は、水道、ガス、NTT、東京電力、KDDI及びその他の埋設物を対 象に各管理事務所で行う。なお、NTT及び東京電力の台帳の閲覧に当たって、担当課の 依頼文書を必要とする場合がある。 表2.6 区名 鶴 水道調査先 管轄営業所 見 区 鶴 神奈川 区 神奈川 区 西 中 区 中 南 区 南 南 区 保土ヶ谷区 旭 港 区 磯 子 金 沢 区 金 沢 港 北 区 港 北 区 緑 青 葉 区 青 葉 都 筑 区 都 筑 戸 塚 区 戸 塚 栄 区 栄 泉 区 泉 区 保 全 ・照会 工事 グル ープ 旭 子 谷 神 奈 川 導 管 ネットワークセンター 南 磯 瀬 ガス調査先 保土ヶ谷 区 緑 横浜市全区 見 西 港 表2.7 瀬 谷 表2.8 水道給水調査先 給水維持課(φ75mm以上) 管 轄 区 中部給水維持課 西、中、南、保土ヶ谷区 北部給水維持課 鶴見、神奈川、港北、都筑区 西部給水維持課 旭、緑、青葉、泉、瀬谷区 南部給水維持課 港南、磯子、金沢、戸塚、栄区 2-4 表2.9 NTT調査先 NTT東日本 横浜市全区 神奈川支店 横浜エリア担当 表2.10 東京電力調査先 担当事業所 横浜支社 中営業センター 鶴見支社 中山営業センター 管 轄 区 西、中、南、磯子、旭、瀬谷、金沢区 神奈川区の一部、保土ヶ谷区の一部 港北区の一部、港南区の一部 鶴見、緑、青葉、都筑区 保土ヶ谷区の一部 港北区の一部、神奈川区の一部 藤沢支社 戸塚、泉、栄区 戸塚営業センター 港南区の一部 (4) 架空線調査はNTT、東京電力、信号機及びその他の架空線を対象に各管理事務所で行 う。なお、信号機関連(車両感知機、検知機)については、各所轄警察署交通課で調査を 行う。 (5) 既設下水道管調査は、環境創造局管路保全課で行なう。必要に応じて竣工図なども調査 する。 (6) 急傾斜地調査は、横浜川崎治水事務所で行う。 2-5 2.3 現地調査 現地調査は、設計で必要となる以下のものについて行う。 (1) 現地踏査 (2) 地下埋設物調査 (3) 既設下水道管調査 (4) 環境調査 【解説】 (1) 現地踏査は、排水区域、道路幅員、舗装種別、交通規制、道路の使用状況、水路状況、 現況排水系統、境界石、石積みなどの擁壁、架空線などの現地の状況を把握するために行 う。また、現地踏査では写真、ビデオなどを撮り、設計に役立てることも必要である。 (2) 地下埋設物調査は、台帳調査で収集した図面を基にして人孔、弁類、各種蓋などについ て現地とのつき合わせを必ず行うとともに、台帳調査において明確とならなかった箇所を 補足する。 存置仮設(鋼矢板やライナープレート)などがあれば、現地に表示し確認を行う。 台帳調査や現地調査において明確にならなかった箇所及び詳細な資料の必要な個所につ いては、試験掘りによって露出させ、土被り、占用位置、形状寸法及び種別などを明らか にする。 試験掘りは、幅0.80m、深さ1.50mを標準とし、各企業者の立ち会いのもとに行う。前 記試験掘りの範囲内で地下埋設物が確認できない場合は、探査棒、レーダ探査による確認 あるいは土留め計画のもとに掘削をさらに行う。 (3) 既設下水道管のある地区内で実施設計を行う場合には、土被り、占用位置、管種、老朽 度など、既設下水道管の状況を十分に調査して使用できるか否かについて検討する。 (4) 環境調査は、井戸の有無、周辺環境の特殊性(病院、学校、消防署、ガソリンスタンド、 工場、鉄道、高速道路など)の確認を行う。 2-6 2.4 測量調査 測量調査は、次の項目について実施する。 (1) 平板測量 (2) 鋲打ち (3) 測距 (4) 水準測量 (5) 仮BMの設置 (6) 横断測量 【解説】 (1) 設計に用いる平面図は原則として切り出し図を使用するが、切り出し図が不十分な場合 においては平板測量を追加して行うものとする。 平板測量は道路境界より片側1軒分程度の範囲を標準とするが、縮尺は原則として1/500 とする。 (2) 鋲打ちは、仮縦断面図作成時に設定した人孔位置を道路上に表示するために行う。鋲打 ちに当たっては、道路上には他企業の種々な測点が多いため、施工時に間違いなく判断で きるよう主要構造物からの距離(オフセット)を測定して記録しておく。 (3) 測距は、現場に鋲打ちした人孔間の距離を測定するために行う。 (4) 水準測量は、鋲打ちした位置の地盤高を求めるために行う。通常は人孔位置の地盤高だ けの測定でよいが、道路縦断勾配が人孔間で変化する場合など地盤高の変化点も必ず測定 する。 このほか、低宅地の戸数及び地盤高や水路底などについても測定する。 (5) 仮BMは発注工区毎に数箇所設置し、測量作業の効率化を図る。 (6) 横断測量は必要に応じて行う。 2-7 2.5 土質調査 掘削深が4mを超える場合においては、原則として次のような調査により土質状況を把握し なければならない。 (1) 資料調査 (2) 現地調査 (3) 土質試験 【解説】 (1) 資料調査は、設計路線付近の既調査報告書など、できるだけ多くの資料を収集して行う。 また、調査の総合的な判断材料としては、環境創造局環境科学研究所の土質データ、既存 の地形図、災害記録、土地利用図、地盤図などの資料を収集することが必要である。 (2) 現地調査は、現地での全体の地形や地盤の状況などを把握し、予定されている管きょの ルートや工法などを考慮し、資料調査と併せて調査深度などを検討する。 (3) 土質試験は原位置試験と室内試験とがあり、土質や施工方法などによって必要となる試 験を選定することが必要である。表2.11に検討事項と土質試験の関係を示す。 2-8 表2.11 土質試験における検討事項 (○:必要 検 試験種別 原 位 置 試 験 試験結果 土 圧 事 項 周 辺 地 下 水 低 下 周 辺 地 盤 沈 下 地 盤 の 支 持 力 構 造 物 の 設 計 ○ ○ ○ ○ ○ ボ イ リ ン グ ヒ | ビ ン グ 掘 削 面 の 安 定 湧 水 量 ○ ○ ○ ○ 資料採取 地盤構成 ○ ○ 標準貫入試験 N ○ ○ 孔内水位測定 地下水位 ○ ○ ○ ○ 間隙水圧測定 地下水の水圧 △ △ △ △ 現場透水試験 透水係数k ○ 孔内水平載荷 測定 変形係数E 50 △ 値 電気探査 粒度試験 室 工 法 の 選 定 討 ○ ○ ○ ○ 推 進 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ △ △ ○ ○ △ △ △ △ ○ ○ △ △ △ ○ ○ ○ ○ ○ 備 開 削 ○ △ △必要に応じ) 工 法 別 必 要 性 重量百分率 ○ ○ 均等係数U c △ △ 曲率係数U c △ △ 粒径加積曲線 ○ ○ 液性限界、塑 液性限界W L △ △ △ 性限界試験 塑性限界W P △ △ △ 塑性指数I P △ △ △ 考 液性指数I L 内 比重試験 土粒子の比重G Z 含水量試験 含水比W n 密度試験 含水比W n 湿潤密度P t ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 乾燥密度 試 一軸圧縮試験 間隙比e △ 飽和度S r △ 一軸圧縮強さq U ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 破壊ひずみ°f 験 quからCを 推定可能 変形係数E 50 三軸圧縮試験 圧密試験 三軸圧縮試験 を行う場合は 省略可能 粘着力C ○ ○ せん断抵抗角φ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 圧密降伏応力P △ △ 圧縮指数C c △ △ C、φはN値 から推定可能 施工規模、地 形等から必要 性を検討する 注)一軸圧縮、三軸圧縮、圧密試験は「乱さない試験」で行う。 2-9 2.6 関係官公署及び企業者との協議 下記に示す官公署及び企業者とは、必要に応じて占用位置、構造、施工方法、施工時期など について協議し、諸条件の調整及び確認を行う。 (1) 道路管理者 (2) 交通管理者 (3) 河川管理者 (4) 道路下占用企業管理者 (5) 鉄道管理者 (6) バス会社 【解説】 (1) 道路管理者とは、平面占用位置、土被りなどについて協議を行い、併せて道路復旧方式、 埋戻し方式、施工時期などを確認する。また、高速道路については、近接施工協議も併せ て行なう。 対象となる管轄は 2.2台帳調査(2)舗装掘削規制調査に示すとおりである。 (2) 交通管理者とは、施工区分(昼間施工、夜間施工、深夜間施工、昼夜間施工)について、 所轄の警察署交通課と行う。また、工事の予定範囲、道路占用面積、施工時期についても 協議し、安全対策(保安要員、標識、柵など)の指示も受ける。 (3) 河川管理者とは、河川区域及び保全区域内で施工する場合に占用・構造などの協議を行 う。 表2.12 河川の種類 河川各事務所一覧 管轄事務所 一級河川(直轄区間) 国土交通省京浜河川事務所 鶴見川 新横浜出張所・鶴見出張所 一級河川(指定区間) 横浜川崎治水事務所 備 考 河川第一課 横浜川崎治水事務所 二級河川 境川-藤沢土木事務所・厚木土木事務所 河川第二課 東部センター 準用河川及び水路(敷) 道路局河川管理課 2-10 各土木事務所 (4) 道路下占用企業管理者とは、地下埋設物や架空線の切回し並びに移設などについて、協 議を行う。 表2.13 主な道路下占用企業管理者一覧 企業名 管轄事務所 東京ガス 神奈川導管ネットワークセンター 東京電力 支社及び営業センター NTT 神奈川基盤整備担当者 上水道・工業用水 給水維持課及び営業所 (5) 鉄道管理者とは、軌道、鉄道横断並びに近接施工の協議を行う。 表2.14 鉄道管理者一覧 企業名 管轄事務所 JR東日本・JR貨物 保線区 JR東海 新幹線総局 京浜急行 鉄道事業本部工務部保線課 東京急行 交通事業部工務部保線課 相模鉄道 工務部施設課 市営地下鉄 交通局施設課 2-11 第3章 管路施設の設計 3.1 排除方式 下水道の排除方式には分流式と合流式とがあり、設計では下水道計画図に示されている排 除方式を採用する。 【解説】 排除方式は下水道計画図に示されている方式とするが、やむを得ず排除方式を変更する 場合には下水道事業調整課と協議する。 3-1 3.2 計画雨水量 計画雨水量は、最大計画雨水流出量と流出ハイドログラフ及び不定流モデルから求める方 法がある。流下型管きょ施設(開きょを含む)の断面などの決定には、最大計画雨水流出量 を用いる。 【解説】 下水道計画で対象とする計画雨水量の算定手法には、主に次の3種類がある。 (雨水排水施設) 最大計画雨水流出量による算定 (雨水貯留施設) 計画雨水量 流出ハイドログラフによる算定 不定流モデルによる算定 図3.1 計画雨水量の算定手法 最大計画雨水流出量は、計画降雨時に生じる計画地点の雨水流出量の最大値(最大流出 量)であり、流出ハイドログラフは雨水流出量の経時変化を表す一連の値である。また、 不定流モデルは、地域特性を反映した効率的・効果的な雨水排除施設計画の策定などに活 用することができる。 最大計画雨水流出量は、一般に管きょの断面やこう配の決定に用いられ、その算定式に は実験式と合理式がある。 流出ハイドログラフは、雨水貯留施設の容量などの算定に用いられ、不定流モデルは流 下型施設や雨水貯留施設など各種対策施設を組み込んだ浸水シュミレーションや雨水流出 量算定式が異なる施設が混在する地区の面的な評価などに用いられる。 管きょ断面やこう配決定 に用いる計画雨水量 最大計画雨水流出量 算定式 実験式 合理式 図3.2 管きょ断面やこう配決定に用いられる計画雨水量の算定式 3-2 3.2.1 雨水流出量算定式 流下型管きょ施設(開きょを含む)の断面決定などに用いる最大計画雨水流出量は、原則と して合理式で算定する。 Q= 1 ・C・I・A 360 ここに、Q:最大計画雨水流出量(m 3 /sec) C:流出係数 I:流達時間内の降雨強度(mm/hr) A:排水面積(ha) 【解説】 これまで、排水面積20ha未満の雨水流出量の算定において実験式を用いていたが、近年、 局地的な大雨による浸水被害が比較的流達時間の短い小流域で発生していることから、合 理式による算定を原則とする。合理式は確率年の評価や流達時間を的確に反映することが できる。 すでに実験式で整備された既存施設を合理式を用いて再整備する場合には、既存施設の 能力評価を行った上で、合理的な雨水排除計画を策定することが必要である。 なお、最大計画雨水流出量の算定過程は図3.3に示すとおりである。 また、旧計画基準で用いてきた実験式を表3.1に参考として示す。 表3.1 旧計画基準で用いた実験式(参考) 排水面積 算 定 式 備 Q r =R・C・A =0.1667・C・A 直線式 1ha~3ha未満 Q r =R・C・A・(S/A) 1/6 =0.1667・C・A 5/6 ブリックス式 S=1‰ 3ha~20ha未満 Q r =R・C・A ・(S/A) 1/6 =0.29385・C・A 5/6 ブリックス式 S=30‰ 1ha未満 ここに、 Q r:最大計画雨水流出量(m 3 /sec) R:実験式での降雨強度(0.1667m 3 /sec/ha) C:流出係数 A:排水面積(ha) S:地表平均こう配(‰) 3-3 考 単位ブロック割 単位ブロックごとの 工種配列及び工種別 面積の現況把握 仮想の管きょ ルートの決定 降雨に関する データ 仮想の管きょ 縦断決定 単位ブロックごとの 将来の土地利用、建 ぺい率、舗装率など の予測に基づく工種 別配列パターン及び 工種別面積の積算 注1 確率統計処理 流下時間の想定 I-t関係の 確率年別表示 確率年と降雨 強度式の選定 工種別の基礎 流出係数 計画地点の 排水面積 (A) 設計用I-t 関係の決定 計画地点の 総括流出係数 (C) 標準流入時間 の推定 計画地点のI の決定 注1.設計上安全側である短い流下時間 を与えるならば、満管流速を用い て流下時間を算定してもよい。 注2.流速が許容範囲内で、かつ、施工 可能な土被りと管きょ径であり、 計画地点の流速が計画地点の直前 の計算地点のそれに等しいか、よ り速くなる管きょ径及びこう配を 決定する。 合理式による 1 Q= C・I・A 360 の計算 注2 NO 適切な 管きょか YES 最大計画雨水流出量 図3.3 最大計画雨水流出量の算定過程の概要 出典:下水道施設計画・設計指針と解説 前編P.69-2009年版-日本下水道協会 3-4 3.2.2 降雨強度 合理式に用いる5年確率、10年確率の降雨強度は、次式を採用する。 ( 5年確率) I= 880 t 0.65 +4.4 (10年確率) I= 1,452 t 0.70 +7.5 ここに、I:降雨強度(mm/hr) t:降雨継続時間(min)=流達時間(min) 【解説】 下水道計画において従来から採用している降雨強度式は、横浜地方気象台における1926 年(昭和元年)~1968年(昭和43年)の毎年最大値資料からトーマスプロット法を用いて 求めたもので、市内の河川計画とほぼ整合が図れている。 雨水排除計画の目標整備水準は、原則として全市域に対し10年確率の降雨とする。 当面は、「自然排水区域 ※ 1 」については5年確率の降雨、「ポンプ排水区域 ※ 2 」につ いては10年確率の降雨を対象とする。 地区の状況に応じて、10年確率の降雨を対象とした整備地区の拡大・縮小を行う。特に 重大な被害が生じるおそれのある地区は、より高い目標整備水準を設定する。 なお、地域特性を反映して5年、10年以外の確率年を設定する場合は、その確率年に対 応した降雨強度式を適切に採用する。(表3.2) ※1:放流先水域が計画外水位となった場合に、自然流下による排水が可能な区域。 ※2:放流先水域が計画外水位となった場合に、自然流下による排水が不可能でポンプによる排水 が必要な区域。 3-5 表3.2 確率年別降雨強度式 確率年 降雨強度式 (年) 継続時間別の降雨強度と降雨量 10分 30分 1時間 24時間 99.2 65.1 47.0 7.5 16.5 32.5 47.0 180.0 1,452 t +7.5 116.0 79.3 57.9 8.5 19.3 39.6 57.9 205.0 I= 2,199 t 0.75 +11.1 131.5 91.9 67.3 9.0 21.9 46.0 67.3 215.5 I= 2,731 t +13.4 141.6 100.7 74.2 9.6 23.6 50.3 74.2 231.0 5 I= 880 t 0.65 +4.4 10 I= 20 30 0.70 0.77 注)上段:降雨強度(mm/hr)、下段:降雨量(mm) 出典:神奈川県土木部河港課資料 3-6 3.2.3 排水面積 (1) 排水面積、排水系統は下水道計画図を尊重することとするが、現地調査によって道路、 鉄道、河川、水路などの現況を踏査により十分調査し、将来の開発計画も考慮して正確 に求める。 (2) 自然排水区域とポンプ排水区域の境界では、計画外水位を基に水位計算を行い、安全 に排水可能かを確認する。 【解説】 (1)について 排水面積は、流量に比例的に影響するので慎重に算定する。調査計画から実施設計時点 までの間は長い時間が経過しているので、その間再開発や開発行為などにより土地が改変 されているおそれがある。このため、排水境界や排水系統は、原則として下水道計画図を 尊重することとするが、現地調査によって再確認することが重要である。 さらに、道路、鉄道、河川、水路などの現況の排水系統も十分に把握するとともに、将 来の開発計画をも調査し、排水境界を設定することが必要である。なお、河川区域につい ては、排水面積から除外することを原則とする。 また、隣接する自然排水区域から氾濫水の流入(落ち水)のおそれがあるポンプ排水区 域の雨水排除計画などにおいては、必要に応じてその排水面積または雨水流出量を見込む ことができる。 なお、計画区域外から雨水が流入する地域においては、その雨水流入量を見込むものと する。 (2)について 自然排水区域、ポンプ排水区域の境界において、局地的な浸水が発生しないよう、放流 先の計画外水位を用いて動水こう配をチェックする。また、河川改修が完了していない場 合には、安全の確認のため、堤防高などを用いることもできる。 3-7 3.2.4 流出係数 (1) 用途地域は横浜市国際港都計画図によるものとし、用途地域別の流出係数(C)は次 の値を採用する。 表3.3 用途地域別流出係数 用 途 地 域 記 号 流出係数(C) 第 1種 低 層 住 専 X1 第 2種 低 層 住 専 第1種中高層住専 X2 住居系 0.70 第2種中高層住専 第 1種 住 居 X3 第 2種 住 居 準 住 居 近 隣 商 業 Y1 商 業 Y2 業 Z1 業 Z2 工 業 専 用 Z3 市街化調整区域 W 商業系 0.80 準 工業系 その他 工 工 0.60 0.40 注) 都市機能が集積している地区や地下空間利用などが発達している地区などにおいては、 C=0.90を上限値として用いることができる。 (2) 雨水流出量の算定に用いる計画流出係数(C)は、排水区内の用途地域別面積によ る加重平均値を用いる。 【解説】 (1)について 流出係数は、合理式などで最大流出量を算出するための主なパラメータであり、土地利 用の状況によって異なるため、用途地域別の値を採用する。 3-8 m i i i 1 / m i 1 3-9 i 3.2.5 流達時間 (1) 流達時間は、流入時間と流下時間の和とする。 (2) 流入時間は、原則として5分とする。 (3) 流下時間は、管きょ延長を管きょの設計流速で除して求める。 (4) 複数の系統が合流する地点では、最長の流達時間を用いる。 【解説】 (1)について 合理式の降雨強度算定に用いる流達時間は、流入時間と流下時間の和とする。 (2)について 流入時間は、管きょに接続する区域の雨水排水が、管きょまで到達するのに要する時間 であり、一般に5~10分が用いられている。本市では、舗装率が高く家屋が密集している 区域が多いため、原則として最小値である5分を採用する。ただし、急傾斜地などの地区 で流入時間が5分に満たないことが想定される場合には、5分以内とすることができる。 (3)について 区間iの管きょの流下時間は、次のように求める。 tf= Li 60・V i ここに、t f :流下時間(min) ………(少数第2位を四捨五入) L i :管きょ延長(m) ………(少数第2位を四捨五入) V i :設計流速(m/sec)………(少数第2位を四捨五入) 3-10 (4)について 合理式の基本的な仮定は、「降雨強度Iの降雨による流出量は、その降雨が流達時間以 上継続する時最大になる」というものであり、排水区域に降った雨水が一律均等に流下す ることを前提にしている。このため、最遠点の雨水が計画地点に到達する時間、すなわち 計画地点までの最長流達時間に対応する降雨強度が最大計画雨水流出量の算定に用いられ る。 流達時間は、 Li t c =t e +∑t f =t e +∑ 60・V i ここに、t c :流達時間(min) t e :流入時間(min) t f :流下時間(min) であり、複数の系統が合流する地点では、それらのうちの最大値を用いる。 なお、河川計画では、下水道との管理区分である流域面積200haにおいて流達時間を一律 に30分としている。このため、河川の最上流部に放流する雨水幹線などの施設計画では、 計画放流量などについて河川計画との整合を図る。 3-11 3.3 計画汚水量 計画汚水量は、生活汚水量、営業汚水量、工場排水量(一般工場排水量、特定排水量)、 地下水量及び水路等排水量のうち必要なものを集計して求める。 【解説】 計画汚水量は、計画区域内における将来の汚水量予測である。管きょや水処理・汚泥処 理施設の規模を決定するための重要な基礎数値であることから、地域の特性を踏まえて適 切に算定する。 計画汚水量は、下水道法事業認可区域内の用途地域毎に区分して計上する。(表3.4を参 照) 表3.4 計画汚水量の計上区分 区域区分 分流区 域 合流区域 下水道法 事業認可 区域内 排除方式 区 分 用途地域区分 汚水量区分 業 調整 区域 住居系 商業系 準工業 生活汚水 ○ ○ ○ △ × ○ 営業汚水 ○ ○ ○ ○ × × 一般排水 × × ○ ○ ○ × 特定排水 △ △ △ △ △ △ 地下水 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 水路等排水 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 工場 排水 工 工業 専用 注)○:原則として汚水量を見込む、△:地域特性を考慮して見込む場合がある、×:原則として見込まない。 3-12 計画汚水量の下水種別は、生活汚水量、営業汚水量、 工場排水量、地下水量及び水路等 排水量に区分する。 計画汚水量の決定に当たっては、原則として下水種別毎に分けて算出する。 表3.5 汚水量の下水種別と算定方法 下水種別 定 義 算 定 方 法 水 道 計 画 で 定 め る 1人 1日 供 給 水 量 な ど を 基 に 1 生活汚水量 一般家庭から排出される汚水量 人1日生活汚水量を算定し、1人1日生活汚水量に 計画人口を乗じて算定 用途地域面積のうち営業活動を伴うものと想定 営業汚水量 営業活動に伴って発生する汚水量 される面積に用途地域別営業汚水量原単位を乗 じて算定 工場排水量 地下水量 水路等排水量 産業分類で製造業に該当する事業場からの 用途地域面積のうち工場敷地面積に工場排水量 汚水量 原単位を乗じて算定 地中から下水管に自然に侵入してくる水量 排水面積に地下水量原単位を乗じて算定 合流区域において湧水や地表水が水路など 合流区域排水面積に水路等排水量原単位を乗じ を介して下水管に流入する水量 て算定 計画汚水量は、晴天時における計画1日平均汚水量、計画1日最大汚水量及び計画時間 最大汚水量に分類される。その他、計画時間最大汚水量に遮集雨水量を加えた合流式下水 道における雨天時計画汚水量がある。 管きょの設計に用いる単位汚水量(汚水量原単位)は計画時間最大汚水量とする。 表3.6 汚水量の定義と設計対象施設 汚水量種別 定 義 主な検討目的 年 間 の 発 生 汚 水 量 の 合 計 を 360日 で 除 計画1日平均汚水量 使用料収入の予測 した発生汚水量 晴天 時 計画1日最大汚水量 年間最大汚水量発生日の発生汚水量 水再生センターの施設設計 計画1日最大汚水量発生日におけるピ 管きょ、ポンプ施設、導水管きょ ーク時1時間汚水量の24時間換算値 などの設計 計画時間最大汚水量に遮集雨水量を加 合流区域における管きょ、ポンプ えたもの 施設、導水管きょなどの設計 計画時間最大汚水量 雨天 時 雨天時計画汚水量 3-13 3.3.1 生活汚水量 生活汚水量は、次式により算出する。 生活汚水量=∑[生活汚水量原単位(5.440×10- 6 m 3 /s・人) ×人口密度(人/ha)×用途地域別面積(ha)] 【解説】 人口1人当たりの生活汚水量原単位(単位生活汚水量)は、上水道計画値(1人1日平均 家事用水量)を基に定める。水道事業長期構想(横浜市水道局)では、将来の1人1日当 たりの使用水量が 230 L/日・人前後と推計されている。また、実績値が推計値を上回って いることなどから、生活汚水量原単位は240 L/日・人(日平均)とする。 生活汚水量は一般家庭から排出される汚水量であり、次式により算出する。 生活汚水量=∑[生活汚水量原単位(m 3 /s・人)×人口密度(人/ha) ×用途地域別面積(ha)] ここで、生活汚水量原単位は常住人口1人当たりとし、次のとおりとする。 表3.7 生活汚水量原単位 計画1日平均汚水量 計画1日最大汚水量 計画時間最大汚水量 記号 qs QD Qs 生活汚水量原単位 240L/人・日 320L/人・日 470L/人・日 変 動 率 1.0 1.3qs 1.95qs 管きょの設計に用いる人口1人当たりの生活汚水量原単位(Qs)は、計画時間最大汚水 量を基に算出され、次式によって得られた値とする。 Qs=470× 1 =5.440×10 - 6 (m 3 /s・人) 24×60×60×10 3 また、流量計算に用いる計画人口密度の標準値は表3.8のとおりとする。 なお、本表は標準値であり、実際の計算にあたっては当該排水区域の現況人口密度を勘 案し、必要に応じて補正を行うものとする。 3-14 表3.8 計画人口密度の標準値 ( 単 位 : 人 /ha) 処理区 第 1種 低 層 第 2種 低 層 第 1種 中 高 層 第 2種 中 高 層 住居専用 住居専用 住居専用 住居専用 X1 第一 140 第 1種 住 居 第 2種 住 居 X2 140 160 準住居 近隣商業 X3 商業 準工業 工業 工業専用 市街化調整 Y1 Y2 Z1 Z2 Z3 W 160 170 170 170 210 230 120 40 0 10 130 200 200 200 220 210 180 30 0 0 30 北部 第二 神奈川 120 中 部 140 120 140 南 部 120 120 130 金 沢 100 100 110 港 北 130 130 都 筑 110 西 部 130 第一 第二 140 140 140 140 180 120 70 180 180 180 210 40 20 130 140 140 140 170 240 140 110 110 110 110 120 160 30 150 150 150 150 150 150 110 40 40 20 110 130 130 130 130 130 130 130 40 20 10 130 130 130 130 130 130 80 120 20 20 10 100 100 130 130 130 130 130 140 10 10 10 120 120 120 120 130 130 130 120 40 10 10 150 0 20 0 0 20 0 20 10 0 10 栄 130 表3.9 人口密度の補正 X 人口密度 Y X1 X2 X3 第 1種 低 層 第 1種 中 高 層 第 1種 住 居 第 2種 低 層 第 2種 中 高 層 第 2種 住 居 Z W Y1 Y2 Z1 Z2 W 近隣商業 商業 準工業 工業 市街化調整 ( 人 /ha) 標 準 値 -50 ○ ○ ○ ○ ○ ○ - ○ 標 準 値 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 標 準 値 +50 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 出典:横浜市下水道設計指針(管きょ編)同解説P.3-9(平成11年度改定版) 3-15 3.3.2 営業汚水量 営業汚水量は、次式により算出する。 営業汚水量=Σ[用途地域別営業汚水量原単位(m 3 /s・ha)×住居混合率 ×用途地域別面積(ha)] (1) 営業汚水量原単位 排水面積当たりの営業汚水量原単位は、商業地域は容積率別に、近隣商業地域は全 処理区一律に、その他の地域(臨海部を除く市街化区域の住居系及び工業系用途地域) は処理区別に設定する。 表3.10 用途地域別営業汚水量原単位 (時間最大:m 3 /s・ha) 処理区 400% 第一 北部 第二 神 奈 川 中 部 南 部 金 沢 港 北 都 筑 西 部 第一 栄 第二 9.03 ×10 - 4 商 容 500% 1.35 ×10 - 3 業 地 積 600% 1.35 ×10 - 3 域 率 700% 2.03 ×10 - 3 800% 2.26 ×10 - 3 近隣商業 地 域 その他の 地 域 4.51 ×10 - 4 1.13×10 - 4 2.26×10 - 5 9.03×10 - 5 1.24×10 - 4 5.64×10 - 5 9.03×10 - 5 7.90×10 - 5 5.64×10 - 5 5.64×10 - 5 7.90×10 - 5 1.02×10 - 4 注)処理区は、9区分であるが水再生センター毎に算出するため11区分とする。 (2) 住居混合率 住居混合率は、用途地域ごとに次のとおりとする。 表3.11 住居混合率 用途地域 準工業地域 工業地域 工業専用地域 上記以外の用途地域 3-16 住居混合率 0.50 0.10 0.00 1.00 【解説】 (1)について 営業汚水量は事務所や商店、官公署、公衆浴場などのサービス施設などから発生する汚 水であり、土地利用の状況、地域活動の状況などによって大きく変化する。このため、営 業汚水量原単位は用途地域別に設定する。なお、営業汚水量は市街化調整区域では考慮し ない。 用途地域別の営業汚水量原単位(計画1日平均汚水量)は表3.12のとおりである。 市街化調整区域 (見込まない) 住居系地域 (その他地域原単位×1.0) 近隣商業地域(一律原単位×1.0) 商業地域(容積率別原単位×1.0) 準工業地域 (その他地域原単位×0.5) 工業地域 (その他地域原単位×0.1) 工業専用地域 (見込まない) 図3.4 営業汚水量の算定模式図 表3.12 用途地域別営業汚水量原単位 (日平均:m 3 /日・ha) 処理区 400% 第一 北部 第二 神 奈 川 中 部 南 部 金 沢 港 北 都 筑 西 部 第一 栄 第二 40 商 容 500% 60 業 地 積 600% 域 率 700% 60 90 800% 100 近隣商業 地 域 その他の 地 域 20 5.0 1.0 4.0 5.5 2.5 4.0 3.5 2.5 2.5 3.5 4.5 注)処理区は、9区分であるが水再生センター毎に算出するため11区分とする。 3-17 営業汚水の計画時間最大汚水量は、計画1日平均汚水量に変動率を乗じて求めるものとし、 次により算出する。 計画時間最大汚水量=計画1日平均汚水量×1.95 管きょの設計に用いる排水面積当たりの営業汚水量原単位(Qs)は、計画時間最大汚水 量を基に算出される。 〔算定例〕 商業地域:容積率400% の場合 1 =9.03×10 - 4 (m3 /s・ha) Qs=40×1.95× 24×60×60 (2)について 住居混合率は当該用途地域に占める、住居系の面積割合を想定したものである。 3-18 3.3.3 工場排水量 工場排水量は、一般工場排水量と特定排水量に大別し、次のとおり算出する。 (1) 一般工場排水量 一般工場排水量は、次式により算出する。 一般工場排水量=Σ[工場排水量原単位(m 3/s・ha)×工場敷地面積率 ×用途地域別面積(ha)] 1) 工場排水量原単位 排水面積当たりの工場排水量原単位は、敷地面積あたりとし、処理区別に設定する。 表3.13 工場排水量原単位 (時間最大:m 3 /s・ha) 処理区 第一 北部 第二 神 奈 川 中 部 南 部 金 沢 港 北 都 筑 西 部 第一 栄 第二 敷地面積あたり原単位 5.79×10 - 4 2.31×10 - 4 8.10×10 - 4 2.31×10 - 4 6.94×10 - 4 3.47×10 - 4 5.79×10 - 4 1.04×10 - 3 2.31×10 - 4 2.31×10 - 4 8.10×10 - 4 2) 工場敷地面積率 工場敷地面積率は、用途地域ごとに次のとおりとする。 表3.14 工場敷地面積率 準工業地域 0.40 工業地域 0.72 工業専用地域 0.80 (2) 特定排水量 特に排水量の多い工場及びその他の事業所については、個別の点投入として取り扱う。 3-19 【解説】 (1)について 工場排水量は工業系の用途地域において、産業分類の製造業に該当する事業場から発生 する汚水量であり、工場排水量原単位は各処理区における工場敷地面積当たりに設定する。 なお、処理区別の工場排水量原単位(計画1日平均汚水量)は表3.15のとおりである。 表3.15 工場排水量原単位 (日平均:m 3 /日・ha) 処理区 第一 北部 第二 神 奈 川 中 部 南 部 金 沢 港 北 都 筑 西 部 第一 栄 第二 敷地面積あたり原単位 25 10 35 10 30 15 25 45 10 10 35 工場排水の計画時間最大汚水量は、計画1日平均汚水量に変動率を乗じて求めるものとし、 次により算出する。 計画時間最大汚水量=計画1日平均汚水量×2.00 管きょの設計に用いる排水面積当たりの工場排水量原単位(Qs)は、計画時間最大汚水 量を基に算出される。 〔算定例〕 北部第一 の場合 1 =5.79×10 - 4 (m 3 /s・ha) Qs=25×2.00× 24×60×60 また、工場敷地面積率とは、各用途地域の面積に対する工場敷地の占める面積割合であ る。工場敷地面積率は、各用途地域における現況面積を考慮して表3.16のように定める。 3-20 表3.16 工業系用途地域の工場敷地面積率 道路などの公共用地 住居混合率 工場敷地面積率 ① ② ③=(1-①)×(1-②) 準 工 業 地 域 0.2 0.5 0.40 工 域 0.2 0.1 0.72 工業専用地域 0.2 0.0 0.80 用途地域 業 地 (2)について 特定排水量とは、特に排水量の多い工場及びその他の事業所からの排水量である。 このような特定排水量は主として管きょ施設の能力に重大な影響を及ぼすため、管きょ 施設の流量計算で個別点投入として考慮すべきであり、個々の事業所の排水量調査を基に、 将来の拡張、新設などの見通しを考慮して排水量を定める。 なお、その他の事業所とは、共同ビル、デパート、マンションなどの高層建築物及び卸売 市場、駅舎、トラックターミナル、浄水場、清掃工場などの公益都市施設をいう。 3-21 3.3.4 地下水量及び水路等排水量 地下水量及び水路等排水量は、次のとおり算出する。 (1)地下水量 地下水量は、次式により算出する。 地下水量=地下水量原単位(m 3 /s・ha)×排水面積(ha) 表3.17 地下水量原単位 (時間最大:m 3/s・ha) 地下水量原単位 5.79×10 - 5 全 処 理 区 注1)地下水量原単位は全処理区に適用する。 注2)緑の七大拠点及び河川沿いのまとまりのある農地・樹林地の拠点(三つの拠点) にかかわる市街化調整区域については排水面積から控除する。 (2)水路等排水量 水路等排水量は、次式により算出する。 水路等排水量=水路等排水量原単位(m 3 /s・ha)×合流区域排水面積(ha) 表3.18 水路等排水量原単位 処 理 区 北部 栄 (時間最大:m 3 /s・ha) 水路等排水量原単位 第一 3.47×10 - 4 第二 1.74×10 - 4 神奈川 1.74×10 - 4 中 部 2.60×10 - 4 南 部 1.74×10 - 4 金 沢 1.74×10 - 4 港 北 2.60×10 - 4 都 築 - 西 部 - 第一 - 第二 0 注1)-は合流区域のない処理区を示す。 注2)緑の七大拠点及び河川沿いのまとまりのある農地・樹林地の拠点(三つの拠点) にかかわる市街化調整区域については排水面積から控除する。 注3)処理区は、9区分であるが水再生センター毎に算出するため11区分とする。 3-22 【解説】 (1)について 地下水量は、地中から下水管きょに自然に浸入してくる水量である。 排水面積当たりの地下水量原単位(計画1日平均汚水量)は、全処理区一律に設定する。 表3.19 地下水量原単位 (日平均:m 3 /日・ha) 地下水量原単位 全 処 理 区 5 地下水の計画時間最大汚水量は、計画1日平均汚水量に変動率を乗じて求めるものとし、 次により算出する。 計画時間最大汚水量=計画1日平均汚水量×1.00 管きょの設計に用いる排水面積当たりの地下水量原単位(Qs)は、計画時間最大汚水量 を基に算出される。 〔算定例〕 全処理区 の場合 1 Qs=5×1.00× =5.79×10 - 5 (m 3 /s・ha) 24×60×60 (2)について 水路等排水量は、合流区域において湧水や地表水が水路などを介して下水管きょに流入 する水量である。 排水面積当たりの水路等排水量原単位(湧水、地表水)は合流区域について処理区ごと に設定する。処理区別の水路等排水量原単位(計画1日平均汚水量)は、表3.20のとおりで ある。 表3.20 水路等排水量原単位 (日平均:m 3 /日・ha) 処 理 区 水路等排水量原単位 第一 第二 神 奈 川 中 部 南 部 金 沢 港 北 都 筑 西 部 第一 栄 第二 20 10 10 15 10 10 15 - - - 0 北部 3-23 水路等排水の計画時間最大汚水量は、計画1日平均汚水量に変動率を乗じて求めるものと し、次により算出する。 計画時間最大汚水量=計画1日平均汚水量×1.50 管きょの設計に用いる排水面積当たりの水路等排水原単位(Qs)は、計画時間最大汚水 量を基に算出される。 〔算定例〕 北部第一:合流区域 の場合 1 Qs=20×1.50× 24×60×60 =3.47×10 - 4 ( m 3 /s・ha) なお、地下水量及び水路等排水量の算定対象とする排水面積は、今後も下水道が布設さ れる予定がない区域については見込まないこととし、「横浜市水と緑の基本計画」におけ る緑の七大拠点及び河川沿いのまとまりのある農地・樹林地の拠点(三つの拠点)におけ る市街化調整区域内の面積を差引いた面積とする。対象外区域を図3.5に示す。 3-24 図3.5 地下水量などの算定における対象外区域 出典:横浜市水と緑の基本計画 3-25 3.3.5 計画汚水量の集計 管きょ設計で用いる計画時間最大汚水量は、汚水種別ごとに定めた変動率を計画1日平 均汚水量に乗じ、それらを集計して求める。 計画時間最大汚水量=∑(計画1日平均汚水量×時間最大変動率) 変動率の設定値を表3.21に示す。 表3.21 変動率 種 ※( 別 日 最 大 時間最大 生活汚水 1.3 1.95(1.5) 営業汚水 1.3 1.95(1.5) 工場排水 1.0 2.0 (2.0) 地下水 1.0 1.0 (1.0) 水路等排水 1.5 1.5 (1.0) )は計画時間最大汚水量の計画1日最大汚水量に対する変動率を示す。 【解説】 時間最大及び日最大の変動率は、上水道計画値や下水道協会指針及び実績水量などを踏 まえて設定する。 3-26 3.4 計画下水量 管路施設の計画下水量は、次のとおりとする。 (1) 汚水管きょは、計画時間最大汚水量とする。 (2) 雨水管きょ及び開きょは、計画雨水量とする。 (3) 合流管きょは、計画雨水量と計画時間最大汚水量を加えた流量とする。 (4) 遮集管きょは、雨天時計画汚水量とする。 【解説】 (1)について 汚水管きょは、汚水量の時間的変化に十分に対応し、汚水を遅滞なく流下させなければ ならない。 計画時間最大汚水量は、それぞれの地域の特性を踏まえて定める。 (2)について 雨水管きょは、流集する雨水を速やかに排除しなければならない。 計画雨水量は、採用する降雨強度、流出係数及び雨水流出量算定式によって、その結果 に大きな差が生じるため、それぞれの地域の特性を踏まえて定める。 (3)について 合流管きょは、汚水と雨水を円滑かつ速やかに流下させなければならない。計画雨水量 は計画時間最大汚水量に比べて極めて多量であるため、合流管きょの断面決定に際しては、 計画雨水量の算定が重要である。 (4)について 合流式下水道では、雨天時下水量の一部を雨天時計画汚水量(遮集量)として遮集管き ょで遅滞なく流下させなければならない。 雨天時計画汚水量は、雨天時における雨水吐からの雨天時越流水及びポンプ場からの放 流によって、公共用水域へ流出する汚濁負荷量の削減効果などを考慮して合流式下水道改 善計画で定める。 3-27 3.5 管きょの設計 3.5.1 管きょの余裕 管路施設の余裕は、次のとおりとする。 (1) 汚水管きょでは、100%以上の余裕を見込む。 (2) 雨水管きょ及び開きょでは、余裕は見込まない。 (3) 合流管きょでは、汚水量分のみに20%以上の余裕を見込み、雨水量分は余裕を見込 まない。 【解説】 計画下水量と実流量の間には、実績から大きな差異が生じる場合があるので、計画下水 量に対して施設に余裕を見込む。 表3.22 管きょ及び開きょの余裕 施設区分 余 裕 汚水管きょ 100%以上 雨水管きょ 開 き ょ 余裕なし 合流管きょ 汚水量分 20%以上 雨水量分 余裕なし 3-28 3.5.2 管きょの流量計算 管きょの流量の計算に用いる流速公式として、自然流下ではマニング公式、圧送ではヘー ゼン・ウィリアムス公式を用いる。 【解説】 管きょの流下量の算定に用いる流速公式として、自然流下では水理計算で一般的に用い られているマニング公式を用いることとし、流量及びこう配を定めることで管きょの断面 を決定することが出来る。 また、圧送においてはヘーゼン・ウィリアムス公式を採用する。 マニング公式(自然流下) Q=A・V V= 1 ・R 2 /3 ・I 1 /2 n ここに、 Q: 流 量(m 3 /秒) 小数3位(小数4位を四捨五入) A: 流水の断面積(㎡) V: 流 速(m/秒) 小数2位(小数3位を四捨五入) n: 粗度係数 R: 径 深(m)(=A/P) P: 流水の潤辺長(m) I: こう配(分数または小数) ヘーゼン・ウィリアムス公式(圧送) Q=A・V V=0.84935・C・R 0 .6 3 ・I 0 .5 4 ここに、 V: 平均流速(m/秒) 小数2位(小数3位を四捨五入) C: 流速係数 I: 動水こう配(h/L) h: 長さL(m)に対する摩擦損失水頭(m) 3-29 なお、流量計算に伴う諸元は以下の条件を基本とする。 (1) 流量計算における管きょの断面積 管きょの流下量の決定にあたっては、円形管は満流、く形きょは9割水深、馬てい形 きょは8割水深とし、所定の計画流量を流すのに十分な断面の大きさを定める。(この 条件の場合が最大流量ではないが、この条件で断面の大きさを定める。) (2) 流量計算における開きょの断面積 開きょの余裕高は、原則として0.2H(Hは開きょの深さ)以上とし、0.2H>0.6mの場合 は0.6mとする (3) 粗度係数 粗度係数は管きょの種類に応じて表3.23の値とする。 更生工法では工法の種類などにもよるが、更生材には一般的に硬質塩化ビニル管や強 化プラスチック複合管と同様な樹脂が使用されている。そのため、円滑な仕上がり状況 にある場合は粗度係数については、硬質塩化ビニル管と同程度が見込まれる。ただし、 施工状況によって管の表面性状が円滑でないことがあるため、施工については注意を要 する。 なお、開きょについては、水理公式集(土木学会)を参考とする。 表3.23 管きょの粗度係数 管きょの種類 粗度係数 鉄筋コンクリート管 陶 管 ボックスカルバート 0.013 硬質塩化ビニル管 強化プラスチック複合管 0.010 (4) ヘーゼン・ウィリアムス公式における流速係数 流速係数Cの値は、管内面の粗度、屈曲、分岐などの数で異なるが、これら屈曲損失 などを含み 110を標準とする。なお、直線部のみ(屈曲損失などを別途に計算する)の 場合は130を標準とする。 3-30 3.5.3 水位計算 流下型施設は、自由水面を確保することを原則とする。 自由水面が確保できない場合には、動水こう配線から地盤高までの水頭を、原則として 1.0m以上を確保する。 【解説】 本市では、これまで実験式の流出量に基づき流下型施設の整備を行ってきた。このため、 合理式を用いて算定した場合、能力不足により既存流下型施設が自由水面を確保できない おそれがある。最大計画雨水流出量が管きょの流下能力を上回る場合には、等流又は不等 流などの水理計算により動水こう配線を算出し、既存施設の浸水に対する危険性の評価を 行い、地盤高までの水頭差を原則として1.0m以上確保するものとする。 3-31 3.5.4 流速及びこう配 流速は、一般に下流に行くに従い漸増させ、こう配は下流に行くに従いしだいに緩くなる ように定めなければならない。 【解説】 管きょのこう配は、地表のこう配に応じて決定すれば経済的であるが、こう配を緩くし、 流速を小さくすれば管きょ内に沈殿物が堆積しやすくなり常時清掃作業が必要となる。ま た、逆に流速があまり大きいと管きょを損傷し、管きょの耐用年数を短くすることになる ので、適正なこう配を定めるため、流速の範囲を定めている。 (1) 汚水管きょの流速 汚水管きょの流速は計画下水量に対し、原則として、流速は最小0.60m/秒、最大3.00 m/秒とする。 (2) 雨水管きょ、合流管きょの流速 雨水管きょ及び合流管きょにあっては計画下水量に対し、原則として、流速は最小0.80 m/秒、最大3.00m/秒とする。 (3) 圧送管きょの流速 圧送式の場合、管内流速は、沈殿物が堆積しないよう最小流速を0.60m/秒とし、管 内面や内面のモルタルライニング、塗装などに損傷が起こらないよう最大流速は3.00m/ 秒程度とする。 なお、ここでいう流速は実流速を意味しているが、汚水については、絶対量が少なく最 小流速を割り込む例があることから、自然流下における設計上の流速として円形管におけ る場合は満流時の流速としてよい。また、剛性管及び可とう性管における流速及び流下量 のうち、雨水管きょ及び合流管きょのこう配は原則として標準値を採用する。ただし、汚 水管きょについては、内径250mmの場合で 2.5‰を最小こう配とすることができる。 雨水管きょ及び合流管きょにおいては、急傾斜地などで、最大流速が3.00m/秒を超える ような結果となるときは、単に管きょの損傷ばかりでなく、流下時間が短縮され、下流地 点における流量が大きくなるので、段差及び階段を設けてこう配を緩くし、流速を小さく する。 さらに、急こう配の道路(階段を含む)に隣接して石積みなどがあり、埋設深や施工上 3-32 の理由から管きょを標準的に埋設することがきわめて困難な地形の場合、管のこう配が急 に変わる地点の人孔では溢水の生じる危険があるので、緩和区間を設けなければならない。 緩和区間の設置例を図3.6に示す。 なお、理想的な流速は、汚水管きょ、雨水管きょ及び合流管きょとも1.00~1.80m/秒程 度である。 図3.6 緩和区間の設置例 3-33 3.5.5 管きょ及び継手の種類 管きょの種類は、用途に応じて内圧及び外圧に対して十分耐える構造及び材質のものを使 用する。 【解説】 管きょには、一般に次のものを使用する。これらの種類の選定に当たっては流量、水質、 布設場所の状況、外圧、内圧、継手の方法、管の特質、強度、腐食、形状、工事費、将来 の維持管理などを十分に検討し、合理的に選択するものとする。なお、継手については水 密性及び耐久性のあるものを使用する。 (1)管きょの種類 ・鉄筋コンクリート管 ・ボックスカルバート ・陶 管 ・硬質塩化ビニル管 ・強化プラスチック複合管 ・ダクタイル鋳鉄管 ・レジンコンクリート管 ・ポリエチレン管 (2)継手の種類 ・ソケット継手 ・いんろう継手 ・カラー継手 ・電気融着接合 ・その他 3-34 3.5.6 管きょの断面形状 管きょの断面形状は、円形またはく形を標準とする。なお、円形管における最小管径は原 則として250mmとする。 【解説】 管きょの断面形状には暗きょの場合、円形、く形、馬てい形、卵形などがあり、このう ち最も一般的なものとしては円形が使用されている。いずれの形状を採用する場合にも以 下の事項を考慮して定めるものとする。 ・水理学上有利である。 ・荷重に対して経済的である。 ・製造費が低廉である。 ・維持管理が容易である。 ・築造場所の状況に適応している。 管きょの形状それぞれについて以下のような特徴がある。 (1) 円 形 水理学的に有利な断面であり、経済的でもある。工場製品として一般化され、管きょ の断面として最も多く採用されている。 (2) く 形 道路幅員や土被りに拘束される場合、現場条件に対応して高さと幅を任意に設定する ことができる。構造は原則としてラーメン構造とし、底面には土砂などが堆積しないよ うにインバートを設ける。 (3) 馬てい形 大口径に使用され、水理学的にも構造的にも円形に近い。この断面は山岳隧道工法を 採用した場合に用いられることが多い。 (4) 卵 形 円形管に比較して流速が大きく掃流力が増すため、緩こう配で水量が少ない場合には 水理学上有利である。しかし、施工において垂直精度が要求されるため、入念な施工が 必要となる。 3-35 最小管径については、計画下水量が少なく管径が250mm未満で十分な場合でも、維持管理 上支障があることから最小管径は250mmとする。ただし、汚水管きょの最小管径は取付管の接 続が可能な材質の場合、若しくは取付管が将来とも接続されない場合においては200mmまでの ものを使用できる。 図3.7 管きょ断面の種類 3-36 3.5.7 管きょの埋設位置 管きょの埋設位置については、公道に布設する場合には道路管理者、河川区域内の場合に は河川管理者、河川保全区域内の場合には道路及び河川管理者、軌道敷内の場合には軌道事 業者とそれぞれ協議しなければならない。 【解説】 管きょの埋設位置及び占用位置などについては以下のとおりとする。 (1) 埋設場所 管きょの埋設場所は、原則として公道及び公有水路とする。民有地にやむを得ず埋設す る場合は、地上権の設定もしくは用地の買収のいずれかにより土地を使用することとなる。 水路に下水管きょを埋設する場合は、以下のように官民境界を明確にして不法占拠を防 止し、維持管理に支障のないようにする。 ① 公有水路に管きょを埋設する場合は、事前に公図写し、現況図、査定図により道路局 河川部と打ち合わせを行い、道路移管できる場合は道路局と協議を行う。 ② 単独小水路には、L型側溝を設置し簡易な舗装を施す。 ③ 狭小水路であって、公道と隣接平行している場合は道路局と移管について別途協議す る。 (2) 占用位置 管きょは、道路の線形に概ね平行に設置する。占用位置は道路占用許可基準に基づくが、 地下埋設物などが支障となる場合は、別途道路管理者と協議のうえ決定する。 (3) 道路幅員による埋設位置 道路幅員による埋設位置は原則として、取付管の長さが5.75m以上になると維持管理に 支障をきたすと考えられることから、合流式の場合、道路幅員が11mを超えたときはその 両側に合流管きょを布設する。一方、分流式の場合、道路幅員が10mを超えたときはそれ ぞれ両側に汚水管きょ及び雨水管きょを布設する。 (4) 雨水管と汚水管の交差 雨水管と汚水管の交差は、0.30m以上のクリアランスを確保する。 (5) 他企業との交差 他企業管との交差は一般的には0.30m以上を確保するとされているが、その種類や重要 度によっても異なり、原則として協議によるものとする。 3-37 3.5.8 土被り 管きょの最小土被りは、歩道及び交通量が少なく、道路幅員が6.50m以下の場合における 車道については原則として、1.20m以上とする。 【解説】 管きょの土被りは、道路法施行令第12条第4号においては最小 1.00mとされているが、 実際の設計においては取付管、路面荷重、路盤厚及び他の埋設物の関係、その他道路占用 条件を考慮して適切な土被りとしなければならない。 (1) 最小土被り 宅地内の排水設備は、横浜市下水道条例第3条により設置することとなるので、管き ょの最小土被りはこれらを考慮に入れ、表3.24 横浜市道路占用規定により枝線、準幹線、 幹線の最小土被りは規定されている。なお、やむを得ない場合には道路管理者と協議し て、0.60mとすることができる。 この他の計画道路・計画街路など道路幅員が6.5mを越える車道については、原則とし て1.5m以上とする。 なお、交通量の区分は表3.25のとおりとする。 表3.24 横浜市道路占用規定 土 被 り 幹 線 3.5m以上 準幹線(口径1,000mm未満の下水道管、圧送管) 1.8m以上 枝 線(口径300mm以下の汚水管、雨水管。口径 450mm以下の合流管) 1.2m以上 3-38 表3.25 交通量の区分 交通量の区分 大型車通行量(台/日・一方向) L 交通量 100未満 少ない 〃 A 100以上 250未満 B 250以上 1,000未満 C 1,000以上 3,000未満 D 3,000以上 多 い 〃 〃 As舗装要綱 (2) 河川横断を行う場合の最小土被り 河川を横断する場合は、河川管理者と協議して決定する。河川管理施設等構造令(以 下、構造令)では「伏越し」については規定されている。しかし、これは水路などが河 川と交差する場合において、サイフォン構造で河底を横過するものをいい、その他の河 底横過物は含まれないものとされている。(昭和51.11.23建設省河政発70号河川局長通 達)また、構造令第68条~70条解説は「河底横過物は、用途上の特質、埋設の深さ(計 画河床で2.00m以上)などを勘案のうえ個々にその構造を定めるものとし、構造令の対象 外とされているが伏越しの構造に関する規定の主旨を十分吟味のうえ、必要に応じ、関 係条項を準用することが望ましい。」となっている。 (3) 最大土被り 取付管が接続される下水管きょの最大土被りは、原則として3.00mを超えてはならな い。ただし、やむを得ない場合には維持管理上に支障のない範囲とする。 なお、隣接家屋が道路よりもかなり低く、最大土被り3.00mでは当該下水道に取付管 を接続できない場合には、下水道法第11条、民法214条、215条により、別の公共下水道 に接続することを原則とする。 3-39 3.5.9 管きょの接合 管きょの径、こう配、方向が変わる箇所及び合流する箇所には、人孔を設けて管きょの接 合を行わなければならない。 【解説】 管きょの接合方法は、次のとおりである。 ・水位(面)接合 ・管頂接合 ・管底接合 ・段差接合 (1) 水位(面)接合 水位(面)接合とは水理学的には上下流の計画水位を一致させて接合することを いうが、簡便法としては管径差の70%の段差をつけて接合する。水位(面)接合と するのが最も望ましいが、接続管底高に余裕がある場合は管頂接合とする。 (2) 管頂接合 管頂接合とは、管径差の分だけ段差をつけて接合する方法である。流水は円滑と なり水理学的には安全な方法であるが、管きょの埋設深が深くなり工事費の増大を まねく。 (3) 管底接合 管底接合は、接合部において掃流力が減少し、管内に汚物が堆積しやすくなるこ とから好ましくないが、同管径の接合または既設管底が浅くて最小土被りが確保で きない場合などに用いる方法である。 人孔での損失水頭を考慮し、中間人孔で3cm、一方からの流入管がある会合人孔 で5cm、二方向からの流入管がある会合人孔で10cmの段差をつけるのが望ましい。 (4) 段差接合 段差接合は道路こう配が急な場合などに用いられる。流速の調整、最大土被り、 その他の立地条件などを考慮して人孔を設置して、段差をつけるものである。段差 は原則として1.50mを超えてはならない。ただし、維持管理上支障がない構造とす ればこの限りでない。接合部の中心交角は90度を限度とすることが望ましい。 3-40 3.5.10 管きょの基礎 管きょの基礎は、管きょの種類、形状、土質などに応じて次の各号を考慮して定める。 (1) 剛性管きょの基礎 鉄筋コンクリート管、陶管などの剛性管きょには、条件に応じて砂(改良土)、切 込砕石、コンクリート及びはしご胴木などの基礎を設ける。また、必要に応じて鳥居 基礎またはこれらの組み合わせ基礎を施す。 (2) 可とう性管きょの基礎 硬質塩化ビニル管、強化プラスチック複合管などの可とう性管きょは、原則として 自由支承の砂(改良土)基礎とし、条件に応じてはしご胴木、布基礎などを設ける。 【解説】 管きょの基礎は、使用する管きょの種類、土質、地耐力、施工方法、荷重条件、埋設条件 などによって定めるが、工事費に著しく影響するので、管きょの耐久性と合わせて経済性に ついても十分に検討し、適切なものを選択する。いずれにしても、管きょの基礎は入念に施 工することが肝要であり、管きょの不同沈下は、下水の停滞による腐敗及び悪臭を生じる原 因となる。さらに、最悪の場合には管きょが破損して漏水や地下水の浸入又は周辺土砂の流 入などが発生し、施設の機能を損なうばかりでなく、道路陥没などの事故により第三者に損 害を与えることになる。 以下は、管きょの基礎を大別的に分類したものであるが、実際の管路では管体の補強と不 同沈下の防止を兼ね、これらの基礎を組み合わせて施工する場合が多い。(表3.26、表3.27 及び図3.8参照) ① 砂(改良土)または砕石基礎 多少湧水があっても地盤が比較的良好な場合に採用する。砂(改良土)または切 込砕石を管きょ外周(下部)に満遍なく密着するように締め固めて管きょを支持す る。 ② コンクリート基礎 地盤が軟弱な場合や管きょに働く外圧が大きい場合に採用する。管きょの底部を コンクリートで巻立てるもので、外圧荷重による管きょの変形を十分に拘束できる 剛性がなくてはならない。 3-41 ③ はしご胴木基礎 地盤が軟弱で地質や上載荷重が不均質な場合などに採用する。まくら木の下部に 管きょと平行に縦木を配置し、はしご状に組立てる。この場合、①に記述した砂(改 良土)又は切込砕石などの基礎を併用する場合が多い。 ④ 鳥居基礎 極軟弱な地盤で、ほとんど地耐力を期待できない場合に用いられ、はしご胴木の 下部を杭で支える構造である。 砂(改良土)または切込砕石基礎 コンクリート基礎 はしご胴木基礎 鳥居基礎 図3.8 剛性管きょの基礎工の種類 表3.26 管きょの種類と基礎 地 管 剛 盤 種 硬質土及び 普 通 土 軟弱土 鉄筋コンクリート管 切込砕石基礎 レジンコンクリート管 はしご胴木基礎 コンクリート基礎 陶 切込砕石基礎 コンクリート基礎 性 管 可 と う 性 管 管 切込砕石基礎 極軟弱土 はしご胴木基礎 鳥居基礎 鉄筋コンクリート基礎 硬質塩化ビニル管 ポリエチレン管 強化プラスチック 複合管 砂基礎 (改良土) 砂基礎(改良土) ベットシート基礎 ソイルセメント基礎 ベットシート基礎 ソイルセメント基礎 はしご胴木基礎 布基礎 ダクタイル鋳鉄管 鋼 管 砂基礎 (改良土) 砂基礎(改良土) 砂基礎(改良土) はしご胴木基礎 布基礎 注 1.岩盤に敷設する場合は、応力を均等に分布できる構造となる基礎とする。 2.地盤の区分を例示すると、表3.27のとおりである。 出典:下水道施設計画・設計指針と解説 前編P.222-2009年版-日本下水道協会 3-42 表3.27 地盤の区分例 地 盤 代表的な土質 硬 質 土 硬質粘土、レキ混じり土及びレキ混じり砂 普 通 土 砂、ローム及び砂質粘土 軟 弱 土 シルト及び有機質土 極軟弱土 非常に緩い、シルト及び有機質土 出典:下水道施設計画・設計指針と解説 前編P.222-2009年版-日本下水協会 剛性管きょの沈下に対する検討 下水道管きょが沈下しないために必要な、基礎地盤の抵抗に基づく基礎の許容支持力 の算定については次式により示され、Q 1 >Q 2 が成立すれば管きょは沈下しないもの と考えられる。 Q 1 =2A f ・f+Ab・qG Q 2 =A・q Q 1 >Q 2 ここに、Q 1 :基礎の支持力(KN/m) A f :側面積(㎡/m) f:単位面積当たりの平均許容周辺摩擦力(KN/㎡) Ab:基礎の支持面積(㎡/m) qG:地盤の許容支持力(KN/㎡) Q 2 :鉛直荷重が管きょに作用する力(KN/m) A:鉛直荷重が作用する面積(㎡/m) q:鉛直荷重(KN/㎡)(管及び基礎の自重も含む) 表3.28 地盤の許容支持力 地盤の種類 許容支持力qG (KN/㎡) 泥 土 粘 土 砂混じり粘土 水 多 き 砂 水少なき砂 硬 い 砂 硬 い れ き 土丹・砂岩 堅 岩 50 300 10 300 500 500 700 2000 0 ~ 200 ~ 400 ~ 300 ~ 500 ~ 700 ~ 800 ~ 2500 ~ 5000 出典:横浜市下水道設計指針(管きょ編)同解説P.3-29(平成11年度改定版) 3-43 一方、可とう性管きょの基礎は、原則として自由支障の砂(改良土)基礎とする。基床厚は 最小 100~ 300mmとすることが望ましい。また、地盤などの条件によっては、管体側部の土の受 動抵抗力を確保するため、ソイルセメント工法、ベットシート工法などを採用する場合がある。 なお、軟弱地盤などで不同沈下の恐れのある場合には砂(改良土)基礎とはしご胴木、鳥居、布 基礎などの工法とを併用することもあるが、胴木や布基礎と管体との間には十分に砂(改良土) を敷きならして突き固める。また、施工後、管に直接胴木などが当たらないように工夫をする必 要がある。(図3.9参照) 砂(改良土)基礎 はしご胴木基礎 砂(改良土)又は砕石基礎 布 基 礎 鳥 居 基 礎 はしご胴木基礎 ベットシート基礎 ソイルセメント基礎 図3.9 可とう性管きょの基礎工の種類 出典:下水道施設計画・設計指針と解説 前編P.225-2009年版-日本下水道協会 3-44 3.6 管の設計 3.6.1 剛性管の設計 剛性管の強度計算は、埋設管にかかる等分布荷重と基礎形状から、管体に生じる曲げモー メントを算出し、管体の有する許容曲げモーメントと比較することで安全性を確認する。 (1)設計の手順 開削工法における埋設管の設計の手順を示す。 呼び径、土被り、掘削幅 管材、土留め工の種類 設 計 条件 の決 定 活荷重、埋戻し土、周辺地盤の土質定数 埋戻し土による鉛直土圧 矢板引き抜きに伴う付加土圧 設 計 荷重 の計 算 活荷重による鉛直荷重 管種(1、2、3種管) 自由支承基礎 管種及び基礎の設定 固定支承基礎 強 NO 度 計 管に作用する最大曲げモーメント(Mmax) 算 管体が有する許容曲げモーメント(Mr) NO Mmax<Mr 360°コンクリート基礎の計算 YES END 図3.10 設計の手順 3-45 (2)埋設管にかかる荷重 埋設管にかかる荷重は、埋戻し土による鉛直土圧及び活荷重による荷重とし、以下のよ うに表される。 q=w+p ここに、 q:埋設管にかかる荷重(KN/㎡) w:埋戻し土による鉛直土圧(KN/㎡) p:活荷重(KN/㎡) (3)埋戻し土による鉛直土圧 鉛直土圧の算定については、埋設の方法により溝型と突出型に大きく分けられる。 埋設方法 溝 型 原地盤またはよく締め固めた盛土に溝を掘削して埋 設する方法。 突出型 管を直接地盤またはよく締め固められた地盤上に設 置し、その上に盛土をする方法。 また、溝を掘って管を埋設しても突出型と考えられる埋設の方法として、図3.11に示す ような形態がある。 図3.11 埋設方法例(突出型とする場合) 出典:道路土工 カルバート指針P.176-平成21年版-日本道路協会 3-46 (4)埋戻し土による鉛直土圧算定式の選定 埋設管に作用する土圧を算定する場合、次のことを考慮する。 ① 矢板引き抜きを行う場合 ・矢板引き抜きに伴う付加土圧を考慮する。 ② 矢板引き抜きを行わない場合 ・溝壁に作用する上向きの摩擦力 ・溝幅の影響 ・土圧の管への集中 ・管側部埋戻し土の土圧分布。 埋戻し土による鉛直土圧の算定方法として、一般には次の式が用いられている。 ・溝 型 ・突出型 下水道協会式(改訂式)、マーストン溝型式、直土圧式 マーストン突出型式 埋戻し土による鉛直土圧算定式の比較として、下水道協会式は上記①及び②を網羅して いるが、マーストン公式は埋戻し土の全重量が管に作用するとしていることから、過大な 土圧として算出される。また、矢板引き抜きに伴う付加土圧を考慮できない。 直土圧式は、管外径幅分の埋め戻し土の重量が管に作用すると考え、上記条件を考慮し ていないことから過小な土圧として算定される。 このようなことを考慮し、鉛直土圧算定式は下水道協会式(改訂式)を用いる。 3-47 (5)埋戻し土による鉛直土圧算定式 1)下水道協会式(改訂式) 下水道協会式(改訂式)は図3.12 に示すように施工方法(埋戻し後の矢板引抜きの 有無)、基礎の種類、土被りなどの設計条件により24通りに分けられている。本指針に おいて採用する計算式は施工方法及び基礎条件により図3.13 に示す4通りを採用する。 図3.12 土圧算定式の構成 3-48 土圧計算式の選定 (下水道協会改訂 式) 矢板引抜きを 行う場合 砂及び切込砕石基礎 式-1 矢板引抜きを 行わない場 合 コンクリート基礎 砂及び切込砕石基礎 コンクリート基礎 式-2 式-3 式-4 図3.13 土圧算定式の選定図 3-49 式-1 適合条件 矢板引抜きを行う場合の「砂及び切込砕石基礎」 埋戻し完了後の埋設管は図3.14のようになる。この状態で矢板の引抜きを行うと埋戻 し土と溝壁との間の摩擦力がなくなり図3.15に示すようなゆるみが生じる。 図3.14 管の埋設状態 管頂レベルにおける矢板とゆるみ境界線との距離「ゆるみ幅 B e 」は次式で表わされ る。 Be= B d -B c tan{(45°+φ/2)/2} 2 図3.15 ゆるみ幅B e 3-50 矢板引抜き後に管に作用する鉛直土圧ωはゆるみ幅B e により次式で表わされる。 γHB d ω=α・ (1-ξ)(B d -B c )2 B d -B e - ただし ξ= 4B e q2 q1 q1= γ{H 1 (B c +H 1 tanφ)Ψ 2 +(H-H 1 )B d Ψ 3 } Bc γ{H 1 B d -H 1 (B c +H 1 tanφ)Ψ 2 +(H-H 1 )B d (1-Ψ 3 )} q2= H1= B d -B c B d -B c 2tanφ A2 Ψ2= H 1 tanφ A2+ K 0 1 B c sinθ 1 A2 = Bc + K02 K01= K02= (1+cosθ) 2E g E0 B c sinθ 0.3 0.3 E0 H 1 tanφ 0.3 0.3 - 3 /4 - 3 /4 A3 Ψ3= A3+ B d -B c K 0 1 B c sinθ 1 A3= K01= K02= Bc + K02 (1+cosθ) 2E g E0 B c sinθ 0.3 0.3 E0 B d -B c 0.3 0.3 - 3 /4 - 3 /4 注)式中の各記号の説明は P.3-59に示す。 3-51 式-2 適合条件 矢板引抜きを行う場合の「コンクリート基礎」 埋戻し完了後の埋設管は図3.16のようになる。この状態で矢板の引抜きを行うと埋戻 し土と溝壁との間の摩擦力がなくなりゆるみが生じる。この現象はゆるみ境界線の位置 によって図3.17に示すように二つの場合が考えられる。 図3.16 管の埋設状態 管頂レベルにおける矢板とゆるみ境界線との距離「ゆるみ幅 求めたB e 2 とB e 3 の内の小さい方の値とする。 Be2= Be3= B d -B c tan{(45°+φ/2)/2} 2 B d -B b +B c (1+cosθ)tan(45°-φ/2) 2 ②ゆるみ幅B e 3 ①ゆるみ幅B e 2 図3.17 ゆるみ幅B e 3-52 B e 」は、次の二式で 矢板引抜き後に管に作用する鉛直土圧ωはゆるみ幅B e により次式で表わされる。 γHB d ω=α・ (1-ξ)(B d -B c )2 +(ξ-ζ)(B d -B b )2 B d -B e - ただし ξ= 4B e q2 q1 ξ= q3 q1 H1= HB= ① B d -B c 2tanφ B b -B c 2tanφ H B <H≦H 1 の場合のq 1 、q 2 、q 3 γ q1= ・[H B (B c +H B tanφ)+(H-H B ){B c Bc +(H B +H)tanφ}Ψc 1 ] q2= q3= ② γH B 2 γ(H-H B ) ・[B d -{B c +(H B +H)tanφ}Ψc 1 ]+γH B B d -B b H>H 1 の場合のq 1 、q 2 、q 3 γ q1= ・[H B (B c +H B tanφ)+(H 1 -H B )・{B c Bc +(H B +H 1 )tanφ}Ψc 2 +(H-H 1 )B d Ψc 3 ] q2= q3= γH B 2 γ(H-H B ) ・[B d -{B c +(H B B d -B b +H 1 )tanφ}Ψc 2 ]+(1-Ψc 3 )γ(H-H 1 )B d +γH B Ac 1 Ψc 1 = Ac 1 + (H-H B )tanφ K01Bb 1 Ac 1 = 1 Bc Eg 2 + K02 3-53 (1+cosθ)+C h K01= K02= E0 Bb 0.3 0.3 - 3 /4 E0 (H-H B )tanφ 0.3 0.3 - 3 /4 Ac 2 Ψc 2 = Ac 2 + (H 1 -H B )tanφ K01Bb 1 Ac 2 = K01= K02= 1 Bc Eg 2 + K02 Bb E0 - 3 /4 0.3 0.3 E0 (H 1 -H B )tanφ 0.3 (1+cosθ)+C h - 3 /4 0.3 Ac 3 Ψc 3 = Ac 3 + B d -B b K01Bb 1 Ac 3 = K01= K02= 1 Bc Eg 2 + K02 E0 Bb 0.3 0.3 E0 B d -B b 0.3 0.3 (1+cosθ)+C h - 3 /4 - 3 /4 注)式中の各記号の説明は P.3-59に示す。 3-54 式-3 適合条件 矢板引抜きを行わない場合の「砂及び切込砕石基礎」 埋戻し完了後の埋設管は図3.18のようになる。この場合、埋設管に作用する土圧に寄 与する土荷重は、着色部分の埋戻し土の荷重から、溝壁と埋戻し土の間に生ずる上向き の摩擦力を引いたものである。 図3.18 管の埋設状態 この土荷重について埋設管と管側部埋戻し土との分担比率を考慮し、埋設管に作用す る鉛直荷重ωは次式で表される。 1 ω=α・ Bc ・γB d {C d H 1 (B c +H 1 tanφ)Ψ 2 +(C d -C d H 1 )B d Ψ 3 } H1= B d -B c Cd= 2tanφ 1-exp(-2KμH/B d ) CdH1= 2Kμ 1-exp(-2KμH 1 /B d ) 2Kμ A2 Ψ2= A2+ H 1 tanφ K 0 1 B c sinθ 1 A2= K01= Bc + K02 (1+cosθ) 2E g E0 B c sinθ 0.3 0.3 3-55 - 3 /4 K02= E0 H 1 tanφ 0.3 0.3 - 3 /4 A3 Ψ3= A3+ B d -B c K 0 1 B c sinθ 1 A3= K01= K02= Bc + K02 (1+cosθ) 2E g E0 B c sinθ 0.3 0.3 E0 B d -B c 0.3 0.3 - 3 /4 - 3 /4 注)式中の各記号の説明は P.3-59に示す。 3-56 式-4 適合条件 矢板引抜きを行わない場合の「コンクリート基礎」 埋戻し完了後の埋設管は図3.19のようになる。この場合、埋設管に作用する土圧に寄 与する土荷重は、着色部分の埋戻し土の荷重から、溝壁と埋戻し土の間に生ずる上向き の摩擦力を引いたものである。 ② H>H 1 ① HB<H≦H 1 図3.19 管の埋設状態 この土荷重について埋設管と管側部埋戻し土との分担比率を考慮し、埋設管に作用す る鉛直荷重ωは埋設状態に応じて①式または②式で表わされる。 H1= HB= ① B d -B c 2tanφ B b -B c 2tanφ H B <H≦H 1 ω=α・ γB d Bc ・[C d H B (B c +H B tanφ) +(C d -C d H B ){B c +(H B +H)tanφ}Ψc 1 ② H>H 1 ω=α・ γB d Bc ・[C d H B (B c +H B tanφ) +(C d H 1 -C d H B ){B c +(H B +H 1 )tanφ}Ψc 2 +(C d -C d H 1 )B d Ψc 3 ] 3-57 ただし Cd= CdH1= CdHB= ΨC1= 1-exp(-2KμH/B d ) 2Kμ 1-exp(-2KμH 1 /B d ) 2Kμ 1-exp(-2KμH B /B d ) 2Kμ AC1 A C 1 +(H-H B )tanφ/(K 0 1 B b ) 1 AC1= K01= K02= ΨC2= Bc K02 Eg 2 E0 Bb 0.3 0.3 E0 - 3 /4 (H-H B )tanφ 0.3 (1+cosθ)+C h - 3 /4 0.3 AC2 A C 2 +(H 1 -H B )tanφ/(K 0 1 B b ) 1 AC2= K01= K02= ΨC3= 1 + 1 Bc Eg 2 + K02 E0 Bb 0.3 0.3 (1+cosθ)+C h - 3 /4 E0 (H 1 -H B )tanφ 0.3 0.3 - 3 /4 AC3 A C 3 +(B d -B b )/(K 0 1 B b ) 1 AC3= K01= K02= 1 Bc Eg 2 + K02 E0 Bb 0.3 0.3 (1+cosθ)+C h - 3 /4 E0 Bd-Bb 0.3 0.3 - 3 /4 注)式中の各記号の説明は P.3-59に示す。 3-58 式-1 ~ 式-4 に使用した各記号は以下のとおりである。 ω :管に作用する鉛直土圧(KN/㎡) α :補正係数(=1.1) γ :埋戻し土の単位積重量(KN/㎡) Bd :掘削溝幅(m) Bc :管外径(m) H :土被り(m) φ :埋戻し土の内部摩擦角(度) K :埋戻し土の主働土圧係数=tan 2 (45°-φ/2) (式-3、式-4に使用) C d 、C d H 1 :荷重係数 (式-3に使用) C d 、C d H B 、C d H 1 :荷重係数 (式-4に使用) Ψ 2 ~ 3 :土圧分担係数 (式-1、式-3に使用) Ψ C 1 ~ C 3 :土圧分担係数 (式-2、式-4に使用) μ :溝壁と埋戻し土の摩擦係数=tanδ δ :溝壁と埋戻し土の摩擦角(度) 素掘り、木矢板 鋼矢板 δ=φ (式-3、式-4に使用) δ=0.54φ θ :支承角の1/2(度) Eg :埋戻し土の変形係数(KN/㎡)(20,000KN/㎡) E0 :基礎地盤の変形係数(KN/㎡)(普通土 10,000KN/㎡ 軟弱土 6,000KN/㎡) K01 :管下部基礎地盤の反力係数(KN/㎡) K02 :管側部下部地盤の反力係数(KN/㎡) 3-59 (6)活荷重による鉛直土圧 埋設管にかかる活荷重は、輪荷重が下図のように分布するものと考え、後輪荷重は、 「道 路橋示方書・同解説(日本道路協会)」のT-25の後輪荷重を用いる。 図3.20 輪荷重の分布 p= 2P(1+i)×β C(a+2Htanθ) ここに、 p:活荷重による鉛直土圧(KN/㎡) P:後輪荷重T-25(100KN) C:車体占有幅(2.75m) a:車輪接地長さ(0.2m) H:土被り(m) θ:荷重の分布角(度)(=45) i:衝撃係数(Hによって表3.29の値となる。) β:断面力の低減係数(=0.9) 表3.29 衝撃係数 H(m) H<1.5 1.5≦H<6.5 H≧6.5 i 0.50 0.65-0.1H 0 3-60 (7)管の耐荷力 ①管の抵抗曲げモーメント 管の有する抵抗曲げモーメントMr(KN・m/m)は、ひび割れ荷重を載荷したとき に管体に生じる最大曲げモーメントに、管の自重によって生じる曲げモーメントを加え たものとして次式により表わされる。 なお、管の「外圧強さ」は、鉄筋コンクリート管の場合「ひび割れ荷重」、陶管の場 合「外圧強さ」を採用する。また、安全率は 1.25とするが、予期しない土圧などによ り管に変形が生じ、周囲の構造物に悪影響を及ぼす恐れがあるような場所では十分な検 討が必要である。 Mr=0.318QR+0.239WR ここに、 Q:ひび割れ荷重(KN/m) R:管厚中心半径(m) W:管の自重(KN/m) ②管に発生する最大曲げモーメント 埋設管に等分布荷重がかかるとき、管体に生じる最大曲げモーメントは次式により表 わされる。 Mmax=kqR 2 ここに、 k:支承条件による係数(表3.31) q:管にかかる荷重(KN/㎡) 砂又は切込砕石基礎 コンクリート基礎 図3.21 荷重と支承条件 表3.30 係数kの値 支承角(度) 砂及び切込砕石基礎 コンクリート基礎 60 0.377 - 90 0.314 0.303 120 0.275 0.243 180 - 0.220 3-61 (8)管の性能 表3.31 鉄筋コンクリート管の管厚中心半径、自重、外圧強さ ひび割れ荷重 呼び径 管厚中心半径 R(m) 内径D (m) A、B、NB、C、 NC形管 異形管 200 250 300 350 400 450 500 600 700 800 900 1,000 1,100 1,200 1,350 1,500 1,650 1,800 2,000 2,200 2,400 2,600 2,800 3,000 0.200 0.250 0.300 0.350 0.400 0.450 0.500 0.600 0.700 0.800 0.900 1.000 1.100 1.200 1.350 1.500 1.650 1.800 2.000 2.200 2.400 2.600 2.800 3.000 0.114 0.139 0.165 0.191 0.218 0.244 0.271 0.325 0.379 0.433 0.488 0.541 0.594 0.648 0.727 0.806 0.885 0.964 1.07 1.18 1.29 1.40 1.50 1.61 自 重 W (KN/m) A、B、NB、C、 NC形管 異形管 0.820 0.900 0.980 1.09 1.20 1.30 1.41 1.52 1.63 0.46 0.59 0.75 0.92 1.15 1.40 1.72 2.45 3.31 4.31 5.51 6.69 7.88 9.28 11.28 13.61 16.01 18.45 23.45 28.47 33.98 39.97 46.45 53.41 17.31 20.36 23.64 28.70 34.24 40.26 46.78 53.78 61.26 外圧強さQ (KN/m) 1種 2種 3種 16.7 16.7 17.7 19.7 21.6 23.6 25.6 29.5 32.4 35.4 38.3 41.3 43.2 45.2 47.1 50.1 53.0 56.0 58.9 61.9 64.8 67.7 70.7 73.6 23.6 23.6 25.6 27.5 32.4 36.3 41.3 49.1 54.0 58.9 63.8 68.7 72.6 75.6 79.5 83.4 88.3 93.2 98.1 104 108 113 118 123 110 117 123 130 137 143 150 155 162 注)ひび割れ荷重とは、管に幅0.05mmのひび割れを生じたときの試験機が示す荷重を有効長 (L)で除した値。 表3.32 陶管の管厚中心半径、自重、外圧強さ 呼び径 内径D (m) 管厚中心半径R (m) 管の自重W (KN/m) 外圧強さQ (KN/m) 150 0.150 0.085 0.255 28.0 200 0.200 0.112 0.373 30.0 250 0.250 0.138 0.530 32.0 300 0.300 0.165 0.735 34.0 注)陶管の外圧強さは、破壊荷重である。 3-62 3.6.2 可とう性管の設計 可とう性管の強度計算は、計画する埋設深さ及び活荷重により埋設管に作用する荷重と、 基礎構造によって管体に発生する最大曲げ応力及びたわみ率を計算し、そのいずれもが許容 値を満足することを確認する。 (1)設計の手順 開削工法における埋設管の設計の手順を示す。 設 計 条件 の決 定 呼び径、土被り 活荷重、土の単位体積重量 基礎構造 埋戻し土による鉛直土圧 荷 重 計 算 活荷重による鉛直土圧 管材料、基礎 などの検討 管種及び基礎の設定 硬質塩化ビニル管 強化プラスチック複合管 支承角の設定 管頂部曲げモーメント 強 度 計 算 管底部曲げモーメント たわみ量 NO σ<σa V <Va σa:許容曲げ応力 Va:許容たわみ率 YES END 図3.21 設計の手順 3-63 最大曲げ応力σ たわみ率V (2)埋設管に加わる荷重 埋設管に加わる荷重は、埋戻し土による荷重及び活荷重による荷重とする。 1)荷重による土圧分布 可とう性管を埋設した場合、埋設管の鉛直方向及び水平方向に作用する土圧と反力と の荷重分布は、埋戻し土によるものと活荷重によるものとでは多少異なる。 管の円周方向設計計算(曲げモーメント及びたわみ計算)に用いる鉛直土圧と水平土 圧の分布は図3.22に示すとおりである。 (a)埋戻し土による土圧分布 (b)活加重による土圧分布 ここに、q d :単位面積当たりの埋戻し土による鉛直土圧 q l :単位面積当たりの活荷重による鉛直土圧 2α:有効支承角 図3.22 土圧分布 3-64 2)埋戻し土による鉛直土圧 可とう性管は、上部土圧により管側部の埋戻し土と管が一様に変形するため、管に加 わる荷重は管幅のみの土圧とする。 埋戻し土による鉛直土圧は次式により算定される。 q d =γ・H ここに、 q d:埋戻し土による鉛直土圧(KN/㎡) γ:埋戻し土の単位体積重量(18KN/m 3) H:土被り(m) 3)活荷重による鉛直土圧 活荷重による鉛直土圧として、ここでは、「道路橋示方書・同解説(日本道路協会)」 に定められたT-25の後輪荷重を用いる。活荷重は図3.23のように分布するものとし、 活荷重による鉛直土圧は次式により求められる。 図3.23 ql= 活荷重の分布 2P(1+i)×β 2.75(0.2+2H) ここに、 q l:活荷重による鉛直土圧(KN/㎡) P:T-25の1後輪荷重 (100KN) H:土被り(m) i:衝撃係数(Hによって表3.33の値をとる。) β:断面力の低減係数(0.9) 表3.33 衝撃係数 土被りH H<1.5m 1.5m≦H<6.5m 6.5m≦H 衝撃係数i 0.5 0.65-0.1H 0 3-65 (3)可とう性管(硬質塩化ビニル管・強化プラスチック複合管)の強度計算 1)曲げ応力の計算 図3.22の土圧分布で、埋戻し土と活荷重により発生する曲げモーメント及び曲げ応力 は次式により求める。 M=(k 1 ・q d +k 2 ・q l )γ 2 σ= M = (k 1 ・q d +k 2 ・q l )γ 2 Z Z ここに、 M :単位長さ当りの埋戻し土と活荷重による曲げモーメントの和 (N・mm/mm) k 1 :埋戻し土による曲げモーメント係数(表3.34による。) k 2 :活荷重による曲げモーメント係数(表3.34による。) qd :埋戻し土による鉛直土圧(N/mm 2=10 -3 KN/m 2) ql :活荷重による鉛直土圧(N/mm 2 =10 -3 KN/m 2) γ :管厚中心半径(mmm)(表3.35~3.37による。) σ :埋戻し土と活荷重による曲げ応力(N/mm 2 ) Z :単位長さ当りの断面係数(mm 3 /mm)(表3.35~3.37による。) 2)たわみ率の計算 図3.22の土圧分布で、埋戻し土と活荷重により発生する鉛直方向のたわみ量及びたわ み率は次式により求める。 δ= (k 3・q d +k 4・q l ) γ4 EI V= δ ×100 2γ ここに、 δ :埋戻し土と活荷重によるたわみ量の和(mm) k 3 :埋戻し土による鉛直方向のたわみ係数(表3.34による。) k 4 :活荷重による鉛直方向のたわみ係数(表3.34による。) E :管の弾性係数(2,942N/mm 2) I :単位長さ当りの断面2次モーメント(mm 4 /mm) (表3.35による。) = EI:強化プラスチック複合管の曲げ剛性 (表3.36、3.37による。) V :たわみ率(%) 3-66 表3.34 基礎条件と係数の関係 条件 施 工 支承角 θ 施 工 支承角 2α A 90° 60° 基礎 B C 180° 360° 管の 曲げモーメント係数 基 礎 材 料 基礎施工状態 位置 k1 k2 管頂 0.132 0.079 管底 0.223 0.011 管頂 0.120 0.079 90° 120° たわみ係数 管底 0.160 0.011 管頂 0.107 0.079 管底 0.121 0.011 k3 k4 0.102 0.030 砂 (改良土) 0.085 0.030 砂 (改良土) 砕石 0.070 0.030 砂 (改良土) 砕石 表3.35 設計に用いる管の諸元(硬質塩化ビニル管) 管の寸法 呼び径 外 径 厚 管厚中心半径 さ D (mm) t (mm) 150 165.0 200 断 面 数 断面2次モーメント t2 D-t γ= 係 Z= t3 I= 2 (mm) 6 (mm 3 /mm) 12 (mm 4 /mm) 5.5 79.75 5.04 13.9 216.0 7.0 104.5 8.17 28.6 250 267.0 8.4 129.3 11.8 49.4 300 318.0 9.9 154.1 16.3 80.9 350 370.0 11.2 179.4 20.9 117 400 420.0 12.6 203.7 26.5 167 450 470.0 14.1 228.0 33.1 234 500 520.0 15.6 252.2 40.6 316 600 630.0 19.2 305.4 61.4 590 許容差 注)管の厚さtは、t(最小)+ である。 2 3-67 表3.36 設計に用いる寸法諸元(B型及びC型強化プラスチック複合管) 厚 呼び径 さ t (m) 管中心半径 r (m) 管の曲げ剛性 EI値 (kN・m 2 /m) 1 種 2 種 断面係数 Z (×10 -6 m 3 /m) 200 0.0070 0.10350 0.49163 0.32299 8.17 250 0.0075 0.12875 0.60469 0.39727 9.38 300 0.0080 0.15400 0.79360 0.52480 10.67 350 0.0085 0.17925 0.95189 0.62948 12.04 400 0.0090 0.20450 1.1907 0.80190 13.50 450 0.0095 0.22975 1.4004 0.94311 15.04 500 0.0100 0.25500 1.8417 1.2250 16.67 600 0.0120 0.30600 3.1824 2.1168 24.00 700 0.0140 0.35700 5.0535 3.3614 32.67 800 0.0160 0.40800 7.5435 5.0176 42.67 900 0.0180 0.45900 10.741 7.1442 54.00 1 000 0.0200 0.51000 14.733 9.8000 66.67 1 100 0.0220 0.56100 19.610 13.044 80.67 1 200 0.0240 0.61200 25.459 16.934 96.00 1 350 0.0270 0.68850 36.250 24.112 121.50 1 500 0.0300 0.76500 49.725 33.075 150.00 1 650 0.0330 0.84150 66.184 44.023 181.50 1 800 0.0360 0.91800 85.925 57.154 216.00 2 000 0.0400 1.02000 117.87 78.400 266.67 2 200 0.0440 1.12200 156.88 104.35 322.67 2 400 0.0480 1.22400 203.67 135.48 384.00 2 600 0.0520 1.32600 258.95 172.24 450.67 2 800 0.0560 1.42800 323.43 215.13 522.67 3 000 0.0600 1.53000 397.80 264.60 600.00 3-68 表3.37 設計に用いる寸法諸元(D型強化プラスチック複合管) 厚 呼び径 さ t (m) 管中心半径 r (m) 管の曲げ剛性 EI値 (kN・m 2 /m) 1 種 2 種 断面係数 Z (×10 -6 m 3 /m) 200 0.0100 0.10500 0.51332 0.33724 16.67 250 0.0105 0.13025 0.62607 0.41131 18.38 300 0.0110 0.15550 0.81702 0.54028 20.17 350 0.0115 0.18075 0.97599 0.64541 22.04 400 0.0120 0.20600 1.2171 0.81968 24.00 450 0.0125 0.23125 1.4280 0.96171 26.04 500 0.0130 0.25650 1.8744 1.2467 28.17 600 0.0155 0.30775 3.2373 2.1533 40.04 700 0.0180 0.35900 5.1389 3.4182 54.00 800 0.0200 0.41000 7.6549 5.0918 66.67 900 0.0220 0.46100 10.874 7.2380 80.67 1 000 0.0250 0.51250 14.951 9.9448 104.17 1 100 0.0280 0.56400 19.926 13.254 130.67 1 200 0.0310 0.61550 25.899 17.227 160.17 1 350 0.0340 0.69200 36.805 24.481 192.67 1 500 0.0370 0.76850 50.411 33.536 228.17 1 650 0.0410 0.84550 67.132 44.654 280.17 1 800 0.0450 0.92250 87.195 57.998 337.50 2 000 0.0490 1.02450 119.43 79.442 400.17 2 200 0.0540 1.12700 158.99 105.75 486.00 2 400 0.0590 1.22950 206.43 137.31 580.17 3-69 (4)曲げ応力とたわみ率の許容値 1) 硬質塩化ビニル管の場合 表3.38 曲げ応力とたわみ率 許容曲げ応力(σa) 許容たわみ率(Va) 17.7(N/mm 2 ) 硬質塩化ビニル管 5% ① 許容曲げ応力について 許容曲げ応力(σ a )は 17.7(N/mm 2 )とする。これは硬質塩化ビニル管の曲げ強さ88.3 (N/mm 2 )を安全率5で除したものである。安全率を5としたのは、硬質塩化ビニル管の 安全率を諸外国では破壊強度に対して4.0~5.0を考慮しているので、その安全側を採用し たものである。 ② 許容たわみ率について 許容たわみ率(V a )は5%とする。これは、管路機能保持の面から一般的に可とう性 管に適用されている基準に準じたものである。 2) 強化プラスチック複合管の場合 表3.39 許容曲げ応力(強化プラスチック複合管) (単位:MN/㎡) B形及びC形 D形 呼び径 1 種 2 種 1 種 2 種 200~ 250 85.0 55.7 42.3 27.7 300~ 350 90.0 60.3 48.1 32.2 400~ 450 94.7 65.3 53.6 37.0 62.3 42.9 63.1 43.4 67.3 46.3 500~ 900 1000~1500 105.0 72.0 1650~3000 許容曲げ応力は上表に示す値とする。これは、管の曲げ強さに 対して安全率を3としたものである。 ① 許容曲げ応力について 許容曲げ応力(σ a )は、管の曲げ強さに対して、安全率を3としたものである。 3-70 表3.40 設計に用いる許容たわみ率 基 礎 材 料 砂(改良土) 砕石 設計に用いる許容たわみ率 4% 5% ② 許容たわみ率について 設計に用いる許容たわみ率を表3.40のように定めたのは、以下の理由による。 ・基礎材料が砂の場合 基礎材料が砂の場合、管のたわみの実測値は、計算値とほぼ一致しているが、計 算値をわずかに超える場合がある。このため、実際の施工におけるたわみが、許容 たわみ率を超えないように、設計に用いる許容たわみ率は、許容たわみ率より1% 減じた値を採用するものである。 ・基礎材料が砕石の場合 基礎材料が砕石の場合、管のたわみの実測値は、計算値よりかなり低く、砂基礎 に比べ、たわみ抑制効果が高いことが確認されている。したがって、設計に用いる 許容たわみ率は、許容たわみ率と同じ値を採用するものである。 3-71 第4章 人孔 4.1.1 目的 人孔は管きょ内の点検及び清掃のために必要であるばかりでなく、管きょの接合や会合のた めにも設置しなければならない施設であり、これにより管きょ内の換気も図ることができる。 【解説】 人孔は、一定の長さの管きょを直線で接続することから、管きょと管きょが容易に接続でき るように設置するものである。その目的は管きょ内の点検及び清掃等の維持管理を容易なもの とするために設置するものであり、また、管きょ内の換気も図ることが可能となる。 4.1.2 配置 人孔は管きょの方向、勾配、管径等の変化する箇所、管きょの始点、段差の生ずる箇所、管 きょの会合する箇所並びに将来管きょの接合が見込まれる箇所、並びに維持管理の上で必要な 箇所には必ず設ける。管きょの直線部においても管径別に示す範囲内の間隔で設ける。 【解説】 管きょの直線部の人孔最大間隔は、管径によって次表を標準とする。 表4.1 管 径(mm) 最大間隔(m) 人孔の管径別最大間隔 250~300 350~600 700~1000 1100~1500 1650以上 50 75 100 150 200 4-1 4.1.3 種類 人孔の種類は標準人孔、組立人孔、特殊人孔に大別され、形状や寸法は管きょの径、管きょ 中間点及び会合点等の用途に適合するものを選定する。 第1種~第3種の人孔は組立人孔を基本とする。 【解説】 人孔の種別は、表4.2、4.3に示すとおりである。第1種~第3種人孔は、組立人孔を基本と する。ただし、将来接合が見込まれる箇所や、地下水位の高い場合、近接工事や地震等の影響 で継目から漏水する場合があるので、使用については側塊積みの高さを抑えるなど検討が必要 である。なお、現場打ち人孔における頂版の下面(ハンチがある場合にはハンチの下端)から 接続管きょの管頂までのはなれは図 4.1に示すように20cm以上とする。 表4.2 人孔の種類 型 種 類 内法(mm) 組 立 第1種組立人孔 900 ○ 第2種組立人孔 1,200 ○ 第3種組立人孔 1,500 ○ 標準型 B 型 C 型 第1種人孔 900 ○ ○ 第2種人孔 1,200 ○ ○ ○ 第3種人孔 1,500 ○ ○ ○ 第4種人孔 1,800 ○ ○ ○ 第5種人孔 2,100 ○ ○ ○ 角形組立人孔 1,000×600 角形人孔 1,000×600 ○ 角形人孔 1,000×700 ○ 特殊人孔 - 組 標 B C ○ ○ ○ 立:上下部ともに既製コンクリートブロックを使用。 (但し、第4種、5種を用いる場合については別途検討を行う) 準:既製の人孔側塊、頂版を併用。下部は現場打ちコンクリート。 (但し、第1種人孔は頂版を使用しない) 型:既製の頂版のみ使用するもの。下部は現場打ちコンクリート。 型:既製の人孔側塊、頂版、現場打ち直壁を併用するもの。 4-2 ○ 表4.3 種 類 組 立 標準型 B 型 C 型 角 形 特 殊 型の選定 使 用 範 囲 1~3種組立人孔----- 上流管きょの土被りが1.20m以上 角形組立人孔 ----- 管径が○250~300で、第1種組立人孔の設置が困難な場合 1~5種人孔 ----- 上流管きょの土被りが1.20m以上 (ただし、占用条件等に制約がある場合はC型とする) 構造上等の理由で、標準型が使用できない場合 4~5種人孔 ----- スラブまでの土被りは2.50m以上、 特殊人孔 ----- やむを得ない場合は1.50m以上 管径が○250~300で、第1種組立人孔の設置が困難な場合は1000×700 を使用し、やむを得ない場合は1000×600 4~5種(スラブ付きも含む)が不可の場合、幹線と幹線、幹線と支線、 その他雨水吐き、伏越し等の会合及び中間人孔に設置 図4.1 人孔頂版と管きょのはなれ 4-3 表4.4 種 類 中間人孔 内径(mm) 接 合 管 径(mm) 第1種組立人孔 900 250 300 350 第2種組立人孔 1,200 600 700 800 第3種組立人孔 1,500 900 1,000 1,100 第1種人孔 900 250 300 350 第2種人孔 1,200 700 800 900 第3種人孔 1,500 1,000 1,100 1,200 第4種人孔 1,800 1,350 1,500 第5種人孔 2,100 1,650 1,800 表4.5 200 250 300 350 400 450 500 600 400 400 450 450 500 500 600 会合人孔 700 800 900 1000 1100 1200 1350 1500 1650 1800 2000 200 250 300 第1種組立人孔 350 400 第1種人孔 450 500 600 700 第2種組立人孔 800 900 第2種人孔 1000 第3種組立人孔 1100 第3種人孔 1200 1350 第4種人孔 特殊人孔 1500 1650 第5種人孔 1800 2000 4-4 4.1.4 人孔蓋 人孔蓋は横浜市下水道設計標準図(管きょ編)による。なお、蓋の名称は用途別に定められ たものを用いる。 【解説】 特殊な人孔、伏越し人孔等の場合は、浚渫土砂の搬出等に用いるため、内径90cmの蓋を状況 に応じて設ける。人孔蓋は人の出入りを考慮して内径60cmを標準とし、蓋の構造は路面荷重に 十分耐える鋳鉄製を標準とする。人孔蓋には、合流、汚水、雨水、幹線等を明確にするために 表示をおこなう。 分流式汚水の蓋は雨水の流入を防ぐため、なるべく穴を少なくし、(換気のため最小限の穴 は必要)設置位置は凹地をさける。流下能力を上回る雨水流入や雨水とともに流入した空気が 圧縮され、管きょ内の水圧、空気圧が上昇、人孔蓋の耐圧力より大きくなることにより蓋が浮 上・飛散する現象が発生する。その対策としては構造的な原因を取り除くことが重要であるが、 煙突式のエアー抜きや圧力開放型浮上防止用の鉄蓋の採用を標準とする。 低地区等で放流先河川等の高水位の影響を受ける場合、密閉ふたを使用する。放流河川等の 高水位を始点とする動水勾配線の高さが地盤高さを超える場合、その箇所より下流の人孔につ いて密閉蓋を使用する。 鋳鉄蓋の種類と使用場所を表4.6に示す。 表4.6 鉄蓋の種類と使用場所 種類 設計荷重 主な使用場所 A型 T-14 L交通以下の道路 B型 T-25 A交通以上の道路 4-5 4.1.5 インバート 人孔の底部には、下水の円滑な流下を図るため、管きょの接合や会合の状況に応じたインバ -トを設ける。 【解説】 インバートは下水の円滑な流下を図るとともに、維持管理の場合の足場として設置される。 インバートは、次のようなことを考慮して設置する。 (1) インバートは、下流の管径及び勾配に合わせる。 (2) インバートの肩部には10~20%程度の横勾配を設ける。 (3) インバートの設置高は表 4.7によるものとする。 (4) 管が直角に交差するような中間部及び会合部では、内側部分の踏みしろが少ないこと から流水に支障のない範囲で足掛金物の設置を検討する。 表4.7 管径別のインバート設置高 本管径(mm) 4.1.6 インバート設置高 200~900 管径の1/2 1000以上 50cm(ただし、分流式汚水幹線を除く) 人孔基礎 人孔の基礎は、人孔の種別、土質、地耐力、荷重条件等によって定める。 【解説】 土質条件による人孔基礎の選定を表4.8に示す。 表4.8 土質別の人孔基礎 切込砕石または栗石基礎 井桁基礎 鳥居基礎 良質土 軟弱土 極軟弱土 4-6 4.1.7 足掛金物 足掛金物は、鋳鉄製またはこれと同等品以上のものを使用し、維持管理が容易に行えるよう に側壁の適切な位置に設置する。 【解説】 管きょ内の点検及び清掃のための昇降を容易にするため、人孔の側壁部に足掛金物を設置す る。材質は硫化水素による腐食に耐えうるものとするため、鋳鉄製、ステンレス製を用いる。 足掛金物は維持管理が容易に行えるように次のような事項を考慮して、適切な位置に設ける。 (1) 第1種組立人孔はステップ幅30cm、第2種・第3種組立人孔はステップ幅30cm、あるい は40cmのものを上下30cm間隔で設置する。 (2) 人孔に中間スラブがある場合は、そのスラブより上側に手掛りとして、足掛金物を4段 設置する。 (3) 点検口のスラブ及びハンチ箇所には原則として足掛金物を設置しないものとする。ただ し、やむを得ず設置する場合には、維持管理上支障をきたさないようにしなければならな い。 (4) 現場打ち人孔は上下30cm、水平36cmの間隔で、上部左より交互に設置する。 (5) 下水の流下方向に対して直角に設置し、将来計画管の流入位置を考慮して設置位置を定 める。また、原則として蝶番と直角に設置する。 4-7 4.1.8 副管 副管は、合流管及び分流管の人孔部で段差が60cm以上の場合に設けなければならない。 【解説】 副管は、マンホール内での点検や清掃作業を容易にするとともに、下水によるマンホール底 部や側壁等の摩耗を防止するために設ける。また、副管は原則として人孔の外側に設置するが、 施工上や構造的な都合から内側に設置する場合もある。ただし、内副管の場合は、維持管理上 の問題から、第2種人孔以上の場合に使用する。 (1) 副管の大きさは、次表による。分流式汚水管の場合には流出量に応じて、越流しないよ うに大きさを決定する。副管は、晴天時汚水量を流下させることができる大きさが望まし いが、構造的に困難な場合は、できるだけ大きな径のものとする。なお、分流式下水道の 雨水管きょの人孔には、副管を使用しないのが通例である。 表4.9 管径別の副管径 本管内径(mm) 副管内径(mm) ○250~○350 ○200 ○400~○500 ○250 ○600以上 ○300 (2) 副管を下流管きょに対して平行に設置する場合は、 5cm以上の段差を確保し、かつ副管 の管頂とインバート天端を一致させる。副管を下流管きょに対して直角に設置する場合の 段差は下図による。 図4.2 副管の段差(下流管きょに対して直角の場合) 4-8 (3) 幹線人孔が深く、将来、流入管きょを接続したとき副管を設けるようになる場合には、 予め副管を設置しておく。 このことは、人孔築造の仮設、山砂埋戻し、掘削規制等により面整備時において施工が 困難な場合も考えられるので、副管及び面整備の取り出しは人孔築造に合わせて設置する。 4.1.9 特殊人孔 特殊人孔は、維持管理上支障を来たさないよう、点検口及び掃除口を設けることを原則とす る。 【解説】 特殊人孔の形状は、標準型がないことから、現場状況、機能、目的等を十分に考慮し、構造 計算を実施し最終的に決定する。特殊人孔における点検口、掃除口及びインバート等の構造に ついては以下のとおりとする。 (1) 点検口の内法は60cm、掃除口の内法は90cm以上とする。 (2) 点検口及び掃除口の位置は、図4.3に示す位置を基本とする。このうち、掃除口は原則 としてインバート中央上の下流端とする。 (3) 特殊人孔の基礎については、不同沈下を起こさないよう、地盤の状況に応じた十分な 基礎工を施す。 (4) インバートの踏幅は30cm以上を確保する。 (5) 掃除口については、安全ネットを設置する。 図4.3 掃除口及び点検口 4-9 4.1.10 深い人孔の安全対策 深い人孔や特殊人孔については、維持管理における安全確保のために安全施設を設けるとと もに、維持管理上容易な構造としなければならない。 1.中間スラブ 2.昇降設備 3.照明設備 【解説】 1.中間スラブ 深い人孔や特殊人孔については維持管理における安全確保のために中間スラブを設ける。 (1) 人孔の深さが5m以上の場合には、3m以内に1箇所、中間スラブを設けなければ ならない。中間スラブにより仕切られる空間は、維持管理上支障を来さない程度とし、 最下部はインバート天端より2m以上確保する。 (2) 中間スラブには水抜きを設ける。 (3) 点検人孔及び掃除口の開閉部には、安全対策として保安柵及び保安蓋を設ける。た だし、保安柵の高さは 1.2m以上とし、保安蓋は FRP(硝子繊維強化プラスチック) 製とする。 (4) 中間スラブを設けることにより、流入水が支障を来すことなく、下流管きょに流れ るような構造とする。また、将来の流入管きょを考慮して中間スラブの構造を決める。 (5) 掃除口については、安全ネットを設置する。 2.昇降設備 (1) 特殊人孔を別系統の路線の起点人孔として接続する場合、流水に支障のない箇所に 足掛金物を設置する。 (2) 昇降設備としてはしご及び階段形式の採用を検討する。 3.照明設備 必要に応じて照明設備を設けることができるように、フック等を設ける。 4-10 第5章 雨水吐 5.1 雨水吐 5.1.1 雨水吐 雨水吐は、雨天時計画汚水量をポンプ場及び水再生センターへ送り、それを超える雨水は 公共用水域へ放流する。 【解説】 合流式下水道で雨水流出量の全量を水再生センターに導いて処理することは、管路及び処 理施設規模や経費の増大をまねくため、雨水吐を設け、汚水として取り扱う下水量(雨天時 計画汚水量)を遮集管きょにより流下させ、これを越える雨水を放流管きょによって公共用 水域に放流する。 なお、雨天時計画汚水量は合流式下水道改善計画で定める。 図5.1 雨水吐の例 資料:下水道施設計画・設計指針と解説 前編-2009年版-日本下水道協会を基に作成 雨水吐の構造は、下水道法施行令など関係法令及び合流式下水道改善計画などと整合を図 る。雨水の影響が少ない時は下水を放流させず、雨水の影響が大きい時は放流水質基準を満 足する放流下水量とするために適切な高さの堰を設置する必要がある。また、下水道法施行 令の改正により、きょう雑物(ごみ、オイルボールなど)の流出を最小限度とするように、 スクリーンの設置その他の措置を講ずる必要がある。スクリーンの設置については、「下水 道施設計画・設計指針と解説 前編P.262-2009年版-」(日本下水道協会)などを参考とする。 雨天時越流水によるきょう雑物の流出、悪臭の発生などの問題に対応するため、雨水吐の 数はできるだけ少なくすることが望ましい。なお、維持管理や経済性などを考慮し、雨水吐 1箇所あたりの対象排水区域面積を大きくとり、数を少なくするよう配慮する。 5-1 5.1.2 計画外水位 計画外水位は、次の各項を考慮して定める。 (1) 河川においては計画高水位とする。 (2) 海域においては年間最高潮位の平均 T.P.+1.10mとする。ただし、雨水吐の設置や改築 などにあたっては既往最高潮位T.P.+1.66mとすることを原則とする。 【解説】 計画外水位は、自然排水及びポンプ排水などの雨水を排除する場合や処理水などを放 流する場合の放流先の条件であり、この水位において、雨水や処理水を遅滞なく排除で きるように設計しなければならない。 なお、計画外水位の発生頻度は比較的少ないことから、ポンプ排水区域においても放 流先の水位変動に対応(フラップゲートの設置など)するなど、可能な限り自然排水に 努める。 (1)について 河川に放流する際の計画外水位は、原則として河川計画における計画高水位を対象と する。 計画高水位は、計画高水流量が河道断面(改修計画断面)を流下するときの河川水位 である。 河川計画で用いられる水位 計画高 水位(H.W.L):河 川計 画にお ける 計 画最大 水位 豊水 位: 1年 のうち 95日 はこれ 以下と ならな い水 位 平水位 :1年 のう ち185日は これ以 下と な らない 水位 低水位 :1年 のう ち275日は これ以 下と な らない 水位 渇水位 :1年 のう ち355日は これ以 下と な らない 水位 図5.2 河川に関する水位の名称 5-2 (2)について 海域及び運河に放流する際の計画外水位は、これまでの基準のT.P.+1.10mとする。 ただし、雨水吐の設置や改築にあたっては海水の浸入を極力防ぐため、せき高を既往 最高潮位のTP.+1.66m以上にしていくことが望ましい。 +1.660(1979.10.19) 既往最高潮位(H.H.W.L):高極潮位 +1.100 下水道計画外水位:年間最高潮位の平均 +0.903 朔望平均満潮面(H.W.L):朔(新月)及び望(満月)の日よリ5日以内に表れる各月の最も高い満潮位の平均 +0.000 東京湾中等潮位(T.M.S.L)=T.P. -0.993 朔望平均干潮面(L.W.L):朔(新月)及び望(満月)の日より5日以内に表れる各月の最も低い干潮位の平均 -1.520(1962.12.29) 既往最低潮位(L.L.W.L):低極潮位 (数値はT.P.表示) 図5.3 海域に関する水位の名称 5-3 5.1.3 雨水吐のせき頂高 雨水吐のせき頂高は、海域若しくは河川に放流する場合においては、計画外水位を始点とし て求めた動水こう配線の高さに対して完全越流することが望ましい。また、せき頂高は、雨天 時計画汚水量流下時の水位と一致させるものとする。 【解説】 海域放流、河川放流のいずれの場合においても、計画外水位を始点として求めた動水こう 配線の高さに対して完全越流することが望ましい。ただし、海域へ放流する場合のせき頂は 異常高潮位(高極潮位、既往 TP+1.66m)より高くし、河川へ放流する場合のせき頂は河川 改修計画に示されている計画高水位より高くして、いずれの場合でも逆流が生じない高さと する。 また、せき頂高は合流式下水道改善計画で定める雨天時計画汚水量に基づいて定めるもの とする。せき地点での計画外水位に対する水位上昇(H)は、放流管での損失水頭として得 られる。 V2 L H=(fe+fo+f )・ D 2g ここに、 H :損失水頭(m) fe:入口の損失係数 fo:出口の損失係数 f :摩擦損失係数 L :管路の長さ(m) D :管きょの内径(m) V :管きょ内流速(m/秒) 5-4 5.1.4 雨水吐のせき長 雨水吐のせきは、原則として完全横越流ぜきとして計算を行う。ただし、せきを曲線にして 雨水吐の長大化を防止する場合は完全越流ぜきとして計算してもよい。また、やむを得ず不完 全越流となる場合のせき長は潜りぜきとして計算を行う。 【解説】 合流式下水道の雨水吐の計算においては、一般に横越流ぜきを用いて算定を行ってい る。下水道での水の流れは複雑なことが多く、越流量を算定する公式を適用しにくい。 一般的にせき長はできるだけ長い方がよく、越流ぜきの平面形はなるべく直線がよいが、 雨水吐を大きくすることができない場合には、曲線にするなどの工夫が必要である。また、 合流管と雨水放流管との水位差が十分とれない場合には、やむを得ず潜りぜきとなる場合が ある。 雨水吐の構成は図5.4のようであり、留意点としては次のようなことがあげられる。 ①遮集管きょの水位は、越流ぜきより高くしない。 ②遮集管きょの管底高は、合流管の管底高より低くする。 ③不完全越流の場合には、遮集管きょは圧力管となるため、オリフィスなどの方法で遮集 管きょに所定量以上が流れないようにする。 ④放流水域の水位が上昇し、雨水吐へ逆流しないように、ゲートを設置するなどの対 策を講じる必要がある。 図5.4 雨水吐の構成例 以下に、せきの基本的な形状及び算定公式を示す。 5-5 図5.5 完全横越流ぜき 図5.6 完全越流ぜき 図5.7 潜り横越流ぜき 5-6 完全横越流ぜき 完全横越流ぜき長の計算は、伊藤・本間公式を使用する。 2 μ√2g・L・H 3/2 Q= 3 次式にμ=0.64を代入すると Q L= ここで小数第2位を切捨てると、 1.89H 3/2 Q L= となる。 1.8H 3/2 Q:越流量(m3/s) μ:越流係数 L:せきの長さ(m) H:せき頂を越える平均の水深(m) g:重力加速度(m/s2 ) 上式のHを正確に求める場合には不等流計算によるが、計算が複雑となるためHはせき 頂から上流側の水位までの高さの1/2として計算する。 完全越流ぜき せきを曲線にした場合、完全越流ぜきのせき長計算は長方形ぜきとしフランシス公式を 使用する。 Va 2 Q=1.84(L-0.1 n・H)[ (H+ 3/2 ) Va 2 - ( 2g 3/2 ) 2g ここで、接近流速 (Va) を無視し、断面収縮係数(n)を0とすると Q=1.84・L・H 3/2 Q L= ここで小数第2位を切捨てると、 1.89H 3/2 Q L= となる。 1.8H 3/2 Q:越流量(m3/s) L:せきの長さ(m) H:越流水深(m) 5-7 ] 潜りぜき H 1 の部分は完全落下の越流となり、H 2 の部分は大きなオリフィスと考える。 2 ・C 1 ・L・√2gH 1 3/ 2 Q1= 3 Q 2 は潜りオリフィスとして計算する。 Q 2 =C 2 ・a・√2gH 1 =C 2 ・H 2 ・L・√2gH 1 ここで接近流速Va=0、C 1 =0.62、C 2 =0.60とすると、越流量Qは 2 ・C 1 ・L・√2g・H 1 3/2 +C 2 ・H 2 ・L・√2g H 1 Q= 3 2 Q= 2 ・L・√2g・(C 1 ・H 1 + 3 2 = ・C 2 ・H 2 )・√H 1 3 ・C 1 ・√2g・L・(H 1 +1.45H 2 )・√H 1 3 =1.83・L・(H 1 +1.45H 2 )・√H 1 Q L= ここで小数第2位を切捨てると、 1.83(H 1 +1.45H 2 )・√H 1 Q L= となる。 1.8(H 1 +1.4H 2 )・√H 1 5-8 潜りぜき 【解説】 潜りぜきでは、遮集管への流入を一定量に 制限するためにオリフィスを用いる。したが って、hが大きければ多少の水位変動に対し ても、一定量に近いものが排出される。 遮集管こう配 また、放流管の水位は計画外水位を始点と する動水こう配線より得られる。 5-9 5.2 遮集管きょ 遮集管きょとは、雨水吐から低地区の合流管に接続するまでの管きょであり、管きょの断面 は合流式下水道改善計画で定める雨天時計画汚水量を流下可能なものとする。 【解説】 遮集管きょの接続位置及び構造として、完全越流ぜきの場合は管底接合とする。潜りぜき の場合は、雨水吐と人孔の間にオリフィスを設け、人孔から遮集管を接続する。なお、必要 に応じてオリフィス人孔流入側に非常用ゲートを設ける。 図5.8 遮集管きょの接続位置 5-10 5.3 吐 口 吐口の位置及び構造は、放流先水域の水量及び水質と以下の各項を考慮して定める。 ・吐口の位置及び構造(ゲートの形式など含む)は、放流する河川、港湾などの管理者と 事前に十分に協議のうえ定める。 ・吐口における流速は、船航や洗掘など周囲に影響を及ぼさないようにする。 ・吐口の管底高は、原則として河海などの低水位付近とする。ただし、いかなる場合にお いても吐口の管底高は河海の底面より上とする。 ・吐口の位置及び放流の方向は、放流水が付近に停滞しないように定める。 ・分流式雨水管きょの場合は、原則として計画外水位を始点として求めた動水こう配線と 地盤高の余裕を 1.0m以上とする。ただし、河川改修計画に示されている計画水位を始 点水位として求めた動水こう配線は、自然排水区域の地表面を出ないこととする。 ・吐口には、必要に応じて協議のうえゲートを設ける。 【解説】 吐口の位置及び構造を定める場合、放流先水域の水位、水量、利用状況及び水質環境基準 などの設定状況並びに流域別下水道整備総合計画及び河川の整備計画などを十分に調査し、 放流先水域の水量・水質及び利用形態に支障のないように配慮する必要がある。 また、吐口を設けるためには、護岸の一部を取り壊したり、改造したり、さらには河川、 港湾などに突き出して築造する場合もあり、吐口の不備によって流水を阻害したり、河床を 洗掘して護岸などに危害を及ぼすこともあるので、他の構造物に影響を与えないよう十分に 注意する必要がある。 5-11 第6章 桝及び取付管 6.1 桝 6.1.1 雨水桝 雨水桝は、歩車道の区分のある道路では歩車道境界の車道側に、区分のない道路では官民境 界線に接する道路側に設置し、雨水桝の設置間隔は概ね20m以内とする。 なお、雨水桝には、流入雨水の一部を浸透させる雨水浸透桝がある。 【解説】 雨水桝は、L型側溝その他により路面より流れてくる雨水を下水道本管に流入させるため、 概ね20m間隔に設置することを原則とするが、雨水を確実に取り込むため、水の集まりやすい 箇所やL型側溝の流水方向下流部等を考慮して設置する。なお、道路の形状(曲がり、勾配) によっては間隔を縮めたり、2連にしたり、取込口を大きくした特殊桝を設置するなどの工夫 が必要である。ただし、横断歩道及び家屋の出入口には設けてはならない。 また、雨水浸透桝を設置する場合は、地形及び地質を十分調査のうえ、有効で適切な位置に 計画し透水性の構造とする。 図6.1 雨水桝の設置例 6-1 6.1.2 接続桝 取付管きょに接続する桝には、接続汚水桝、接続雨水桝があり、それぞれ排水設備の終端の 官民境界線に接する民有地側に設置する。 接続桝の設置個数として、合流式区域では1家屋に接続汚水桝を1個、分流式区域では1家 屋に接続汚水桝、接続雨水桝(接続雨水浸透桝:6.1.5参照)をそれぞれ1個設置することを 原則とする。 接続桝の形状は円形とし、材質はコンクリート製とする。 接続桝の形状は表6.1によるものとする。 【解説】 接続桝の設置個所は官民境界に接する民有地側が原則であるが、横浜市下水道条例施行規則 第3条の (2)では例外規定を以下のように定めている。 -「取付管きょに接続する桝は、排水設備の終端に設け、公有地と民有地との境界線と桝 の吐出口が一致するように設置すること。ただし、市長が特別の理由があると認めた 場合はこの限りではない。」- 一方、接続桝の形状について、同じく横浜市下水道条例施行規則第3条 (3)では以下のよう に定めている。 -「ただし、地形上その他の理由により、これによることがきわめて困難な場合で、市長 が特に認めたときは、この限りではない。」- 接続桝の形状は表 6.1に示すとおりで、接続桝は深さに応じて内径を決定する。接続汚水桝 にはインバートを設け、接続雨水桝には深さ15cmの泥だめを設ける。表中の接続汚水桝のタイ プ4は宅地内に用い、形状は接続汚水桝のタイプ1に準ずるものとする。また、私道に複数の 宅地から排水がある場合には、原則として接続桝は第1種人孔とする。ただし、私道対策受託 工事で行う場合には別に定める。 表6.1 接続桝の深さ(cm) 接続桝の形状 接続桝の内径(cm) 接続桝の名称 90未満 45以上 タイプ1(接続汚水桝) タイプ7 (接続雨水桝) タイプ4( 〃 ) タイプ10( 〃 ) 90以上120未満 60以上 タイプ2( 〃 ) タイプ8 ( 〃 ) 120以上150未満 70以上 タイプ3( 〃 ) タイプ9 ( 〃 ) 150以上 90以上 第1種人孔等 6-2 6.1.3 集水桝 集水桝は開きょと下水管きょを接続する場合等に設け、蓋の構造はグレーチングとする。集 水桝の選択は、表6.2により行うものとする。 【解説】 集水桝は表6.2に示す接続排水施設の大きさに応じ、タイプ1から3の構造に分けられる。 表6.2 種 内径 (cm) 類 集水桝の選択 接続排水施設 開きょ 管きょ 桝の深さ 泥溜めの深さ (cm) (cm) タイプ1集水桝 60×60 1.85 15 U450×450以下 ○450以下 タイプ2集水桝 90×90 2.05 15 U600×600以下 ○600以下 タイプ3集水桝 45×45 1.15 15 U300×300以下 ○300以下 ※ 注1.集水桝の桝の深さは泥だめを含む。 注2.足掛金物は必要に応じて設置する。 6.1.4 工場排水監視桝 工場排水監視桝は、官民境界線に接する官地側に設置し、1事業所に1箇所を原則とする。 監視桝の構造は接続桝に準ずるが、蓋には監視桝の表示をする。 工場排水監視桝の形状は表6.3によるものとする。 【解説】 工場排水監視桝設置の対象となる事業所は、下水道法第12条の2第1項、第5項及び横浜市 下水道条例8条(2)の規定により、懲罰制度が適用される特定事業所(例、メッキ工場等) 1事業所に1箇所を原則とし、処理を必要とする工場排水系統は極力1箇所にまとめるよう に指導する。 表6.3 工場排水監視桝の深さ 内径(cm) 桝の深さ(cm) φ45以上 90未満 接続汚水桝タイプ1と共通 φ60以上 90以上120未満 接続汚水桝タイプ2と共通 φ70以上 120以上150未満 接続汚水桝タイプ3と共通 6-3 備 考 6.1.5 接続雨水浸透桝 接続雨水桝については、地質、地形、地下水位、土地利用状況等を考慮し、浸透効果を期待 できる区域において接続雨水浸透桝を設置する。 【解説】 接続雨水浸透桝の種類は、宅地内用φ 300及びφ 450の2種類とする。このうち、φ 450の 規格及び寸法はタイプ10に準ずる。一方、φ 300の桝の材質については、既成コンクリート及 び合成樹脂等の多孔浸透桝とする。 詳細は「雨水浸透施設設置判断基準(案)」を参照。 なお、桝の設置が適さない区域としては次の箇所が挙げられる。 ・急傾斜地崩壊危険区域 ・擁壁や崖の上部で浸透桝による影響を及ぼす恐れのある土地 ・隣接地の地盤が高く、浸透桝による影響を及ぼす恐れのある土地 ・粘性質のような地盤で雨水が浸透しにくい地域 ・雨水浸透桝からの排水管が水路や下水管等に接続できない場合 6-4 6.2 取付管 取付管の設置及び構造等については以下の基準により行うものとする。 【解説】 (1)取付管の設置 ・取付管の布設方向は、道路占用面積を最小にするため、本管に対して直角とする。 ・取付管の延長は、維持管理を考慮して5.75mを最大とする。 ・取付管の本管への接続位置は、本管の中心線より上方45度付近とする。これは本管の構 造上及び流水上、支障の最も少ない位置と考えられるからである。 ・取付管の最小土被りは60cmとする。 (2)取付管の管径 ・接続汚水桝及び接続雨水桝の取付管は最小内径 150mm、雨水桝の取付管は最小内径 200mm とする。 なお、本管へ直接接続ができる取付管の内径は最大 200mmとする。これは、最大内径が それ以上になると本管の強度が低下すると考えられるからである。内径が 250mm以上とな る場合は、本管と同様に考え人孔へ直接接続する。 (3)取付管の勾配 ・取付管の勾配は、内径150mmの場合15‰以上、内径200mmの場合12‰以上とする。 横浜市下水道条例(第3条(4)、(6))による基準を次表に示す。 表6.4 排水人口と取付管の内径及び勾配 排水人口(人) 取付管の内径(mm) 勾 配 500未満 150 100分の1.5以上 500以上 200以上 100分の1.2以上 表6.5 排水面積と取付管の内径及び勾配 排水面積(m2) 取付管の内径(mm) 勾 配 600未満 150 100分の1.5以上 600以上 200以上 100分の1.2以上 6-5 第7章 道路構造物 7.1 舗装 7.1.1 舗装種別 舗装の種類は、次のように分類される。 【解説】 舗装の種類は、交通量、舗装構成及び層厚により、次表のように分類される。 表7.1 舗装記号 B C D 大型車交通量 層 厚 大型車交通量 層 厚 舗装構成 舗装構成 舗装記号 (台/日・一方向) (cm) (台/日・一方向) (cm) 250以上 1000未満 5 10 20 25 密粒度As 安定処理 M-40 C-40 1000以上 3000未満 5 5 10 25 35 密粒度As R 粗粒度As 安定処理 生活道路 M-40 C-40 5 5 5 20 20 30 密粒度As 粗粒度As S(3) 粗粒度As 安定処理 (急坂用) M-40 C-40 15 20 C0 M-40 3000以上 S(1) (急坂用) 5 S(2) (急坂用) A(1) 舗装種類と舗装構成 100以上 250未満 5 20 30 100未満 5 15 20 As M-40 C-40 5 25 As M-40 5 開粒度As 表層以外はA、L R断面と同じ 切削打換 開粒度As 表層以外はB、C D断面と同じ L 補 修 5 25 透 水 性 舗 装 As M-40 C-40 A(2) 100以上 250未満 5 5 10 25 開粒度As C-40 密 粒 度 As 粗粒度As M-40 C-40 その他の舗装(P、C.R、G) 及びオーバーレイ等の補修 注)道路の掘削規制は、B、C、D、S(1)、S(2)は5年、A、L、R、S(3)、切削打換、 補修は3年、その他は1年である。 透水性舗装にはプライムコートを施さない。 7-1 7.1.2 舗装の復旧方法 原則として原形復旧とし、横浜市道路掘削跡復旧工事標準仕様書による。 【解説】 舗装の復旧方法は当該道路の管理者と協議し、決定する。 7.1.3 標示線の復旧 掘削に伴って消した道路標示線は原形に復旧する。 【解説】 道路標示線は、「道路標識ハンドブック(社)全国道路標識・標示業協会」を参照する。 7.2 道路側溝 7.2.1 L型側溝 L型側溝は、路面排水が民地に流入しないように、道路横断勾配にしたがって設置する。 【解説】 L型側溝の構造は、交通量と道路の構造に合わせて「横浜市下水道設計標準図」から選定す る。既設U型側溝がある場合、合流地区においてはL型側溝に築造換えし、分流地区において は雨水きょの有無に合わせて設置種類を決定する。 7-2 7.2.2 LU・LO型側溝 分流地区の雨水排除は原則として管きょにより行うものとするが、流域面積が比較的小さく 地下埋設物が輻輳しているなど雨水管きょの敷設が困難な場合は「雨水排水施設整備要領(昭 和60年4月1日)」に基づき、LU・LO型側溝を設置することができる。 LO型側溝に用いる管きょの内径は250mm~350mmとし、また、LU型側溝は LU-240若しく はLU-300とする。 【解説】 LU型側溝、LO型側溝は「横浜市下水道設計標準図」に示す構造とする。 7.2.3 U型側溝 雨水管きょ、合流管きょを埋設した場合、路面排水は原則としてL型側溝で集水するが、分 流地区の道路幅員が4.5m以下で汚水管きょとの併設が困難なときは、雨水きょとして道路の 両側にU型側溝を設置することができる。 【解説】 (1)U型側溝の設置 道路敷地内に設置するU型側溝は、240、300B型とする。なお、U型側溝を設置する ことにより道路有効幅員が狭くなるので集水上、維持管理上支障のないような蓋掛けを する。 (2)U型側溝の構造 U型側溝の断面形状及び流下量を決定するときは、施工区間(将来の施工区間も含む) が最小となる道路縦断勾配により決定する。最小道路縦断勾配は縦断距離20mを1スパ ンとしたときの最小値を採用する。 道路縦断勾配の急変箇所、会合箇所または流速が2.5m/秒以上となる場合は段差等を 設けて溢水が生じないような構造とする。 (3)U型側溝の流量計算 U型側溝の流下量はマニング公式により決定する。この場合、U型側溝の断面は8割 水深、粗度係数は0.013とする。 7-3 第8章 土留め工 8.1 総則 8.1.1 適用の範囲 本指針の土留め工は、管きょ工事並びに立坑を開削工法で施工する場合に用いる標準的な土 留め工の設計に適用する。 【解説】 本章は、土留め主材に鋼矢板、H型鋼などを用いた下水道管きょ工事仮設土留め工の設計に 適用するものである。土留め工における計算方法としては、これまでに数多くの方法が提案さ れているが、一般的には次に示す計算方法が用いられている。 土留め工の計算方法 慣用計算法 弾塑性法 現在一般に用いられている計算方法について、その基本理論及び仮定は同じようなものであ るが、細部においては各計算法固有の仮定条件なり制約条件を設けてその特徴を出している。 一般的には、砂質土のような良質の地盤なら15m程度、沖積粘性土のような軟弱地盤では10 m程度までの深さなら慣用計算法でも良いが、それ以上の規模の土留め工に対しては弾塑性法 など、掘削過程の変形を考慮した計算法などにより行うものとされている。本章で示す計算方 法は一般的に使用されている慣用計算法と弾塑性法であり、それぞれの適用範囲としては前者 が一般的な使用例から掘削深さを15m程度、後者については「トンネル標準示方書開削工法・ 同解説(土木学会)」で適用掘削深さを40m程度と限定していることから、本指針においても 40m程度とする。 ただし、立坑の場合、連続した溝状の土留めとは土圧の分布形状や大きさが異なると考えら れるので、適用に当たっては十分検討して適宜修正する必要がある。また、地山背面が傾斜し ている場合や付近に盛土がある場合でも、これらを考慮のうえ準用する。 掘削深さが40mを超えるような場合や、地盤のN値が全体的に2を下回るような地盤の掘削 においては慎重な検討が必要であり、条件によっては地盤改良などの補助工法の採用を考慮す るなど、開削工法から他の工法への検討を考える必要がある。 8-1 8.1.2 参考文献及び関連法規 土留め工に関連する参考文献及び関連法規は、「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説(建 設省監修)」及び「トンネル標準示方書開削工法・同解説(土木学会)」より引用する。 他企業構造物との近接施工となる場合には当該企業適用指針・基準の確認を行う。 各指針・基準類の適用は最新版とする。 【解説】 土留め工に引用または参考とした文献は上記のとおりであるが、このほか種々の設計指針及 び基準、関連法規があり、設計指針及び基準の主なものについて表8.1に示す。また、参考と して主な関連法規を表8.2に示す。 表8.1 土留め工に関する主な指針及び基準 学会・協会・企業社名 日 本 平成14年 2月 N E X C O 総 研 仮設構造物設計基準設計要領第二集 橋梁建設編 平成18年 4月 首都高速道路株式会社 仮設構造物設計要領 平成15年 5月 鉄道総合技術研究所 鉄道構造物等設計基準・同解説(開削トンネル) 平成13年 3月 日 本 下 水 道 事 業 団 設計基準(案)土木設計編 平成 4年 4月 日 会 道路土工・仮設構造物工指針 平成11年 3月 省 建設工事公衆災害防止対策要綱の解説 平成 5年 2月 会 トンネル標準示方書 開削工法・同解説 平成18年 7月 道 建 土 築 路 設 木 学 学 協 会 制定(改訂)年月 山留め設計施工指針 本 建 指針・基準名 8-2 表8.2 主な関連法規 種別 法 規 名 主な規制事項 公布年月 道路法 1.道路の占用 2.道路及び沿道地域の掘削 3.道路付属物の撤去など 4.土留め杭・アースアンカーなど の道路下存置 昭和27年6月 道路交通法 道路上の作業 昭和35年6月 騒音規制法 工事騒音に対する規制 昭和43年6月 振動規制法 建設騒音振動防止対策の指針 昭和51年6月 建設工事に伴う 騒音振動防止対 策技術指針 建設騒音振動防止対策の指針 昭和51年3 月 神奈川県公害防 止条例 環境保全のための工事の規制 昭和53年3 月 高含水の残土、廃泥水、建設廃材の 処理・処分に対する規制 昭和45年12月 道路 公害 廃棄物処理及び 清掃に関する法 律 安全 労働安全衛生法 労働安全衛生規 則及び関連法規 労働災害防止のため遵守する安全 措置 8-3 昭和47年6月 8.1.3 土留めを必要とする掘削 掘削の深さが 1.5mを超える場合には、原則として土留め工を施すものとする。また、掘削 深さが4mを超える場合や、周辺地域への影響が大きいと予想される場合など重要な仮設工事 においては鋼矢板、親杭横矢板などを用いた土留め工を施さなければならない 【解説】 土留め工法の選定に当たっては、安全性、確実性、経済性、工期及び周辺への影響などを考 慮しなければならない。土留め工の形式を土留めの種類によって分類すると以下のようである。 軽量鋼矢板工法(LSP-Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ) 鋼矢板工法(SP-Ⅱ、Ⅲ) 親杭横矢板工法 土留め工 柱列式地下連続壁工法 地下連続壁工法(地中連続壁工法) ライナープレート工法 小型立坑(鋼製・コンクリート製ケーシング) 図8.1 土留め工の種類 法令などが定める土留めを必要とする掘削深さとしては、建設工事公衆災害防止対策要綱の 解説に1.5mを超える場合と明記されていることから 1.5mを超える場合を採用するが、掘削 の深さが1.5m以内であっても崩壊の危険が大きいと判断される場合においては、土留め工を 施さなければならない。 掘削の深さが4mまでのもの(小規模掘削)で、計算を省略する場合には土留め選定表(後 述の表8.5参照)によるものとする。 掘削深さが4m以内のものであっても、崩壊の危険が大きいと判断される場合においては土 留め工の設計計算を行わなければならない。 土留め工において状況によっては地下水の処理が問題となるが、地下水位を掘削底面下に低 下させる排水工法と、掘削周面及び底面を不透水性にして地下水の流入を防ぐ止水工法とがあ る。 8-4 8.2 土留め工の設計 8.2.1 大規模掘削の場合 掘削の深さが4mを超えたり、周辺地域への影響が大きいと予想される場合など重要な仮設 工事を行う場合には、原則として土質調査などで土質状況を把握し、十分検討を行う必要があ る。 【解説】 (1)土留め工の設計手順 土留め工の計画は、災害・障害を防止し、安全な施工を行えることを前提とし、図8.2に示 す手順により行うものとする。なお、掘削の深さが4m以下の簡易な土留め工を小規模掘削と するのに対し、掘削の深さが4mを超えるような重要な土留め工を大規模掘削とする。 土留め工の設計手順としては、先ず、計画の基礎となる事前調査から始め、掘削の規模や工 事条件に適した土留め工法を選定し、工事施工手順を十分考慮した地盤の安定、土留め各部へ の応力状態変化の検討、さらに必要に応じて施工中の計測計画の立案と進める必要がある。 図8.2に設計手順、表8.3に大規模掘削及び立坑における土留めの特徴を示す。 8-5 START 調 事前調査 査 荷重・外力 土留め工法の選定 工事条件 土留め工法の仮定 地盤改良、排水、止水工法の検討 根入抵抗 ヒービング ボイリング 盤ぶくれ 一つでもNO 全てYES 土留め工法の選定 土留め壁・支保工の計算 NO 土留め壁・支保工検討 強 度 YES NO 変 形 部材の断面決定 計測計画の立案 総合評価 施工図書作成 完 了 図8.2 設計手順 8-6 表8.3 土留めの特徴(大規模掘削及び立坑) 粘 性 土 項 工 砂 質 土 目 N値 N値 N値 N値 砂礫 4 5 20 20 以下 以上 以下 以上 法 止 水 性 振 騒 施 工 施工 深 さ 地盤沈下 作業用地 (根切り 音 精度 面まで) 動 ○ ※-1 × ○ 低振動 低騒音 工法に より少 なくで きる △ △ 水ナシ 水ナシ ※-1 × × 同 上 同 上 ○ 軟弱な地 車両の 質では検 入 る 地下20m 討が必要 スペース である。 が必要 鋼 矢 板 工 法 ○ ○ 親杭横矢板工法 △ ○ 柱 列 式 地 下 連 続 壁 工 法 ○ ○ ○ ○ △ ○ ほとん ど無し な し 地下連続壁工法 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ほとん ど無し な し ライナー プレート工法 △ ○ × ほとん ど無し ○ ○ ○ ほとん ど無し (SM、BHなど) 小 型 立 坑 (鋼製・コンクリート製) 注)※-1 ※-2 ※-3 ◎ ○ △ × △ ○ ○ 水ナシ 水ナシ 水ナシ ○ ○ × △ な し ○ ◎ 地下20m △ ○ 地下25m △ △ △ ※-3 地下50m ○ × 大きな 用地は 不必要 土 質 により 異なる ○ ○ 大きな 用地は 不必要 地下 8m ○ ○ 同 上 △ ※-2 場合によりオーガ併用 BHの場合は狭くとも可。 泥水処理プラント、鉄筋かご、インターロッキングパイプの作業用地が必要。 最適 適 採用に当たり注意が必要 不適 8-7 経 済 性 (2)重要な仮設における土留め工の最小部材 重要な仮設における土留め工に使用する最小部材については、「建設工事公衆災害防止対策 要綱の解説」にしたがうものとする。 8.2.2 小規模掘削の場合 掘削の深さが4m以下の土留め工を小規模掘削とし、この場合は設計計算を省略することが できる。 【解説】 (1)計算の省略 掘削の深さが4m以下の簡易な土留め工を小規模掘削とする。掘削の深さが4m程度までの 掘削においては土質の変化が少なく、また、荷重の変動も小さいことから標準的な土性値を設 定し、これに基づく計算を数種類行いこの結果を整理して土留め選定表とし、計算を省略する 場合はこれを参考に選定するものとする。 掘削深さが4m以内のものであっても、崩壊の危険が大きいと判断される場合においては土 留め工の設計計算を行わなければならない。 表8.4に小規模掘削における土留めの特徴、表8.5に土留め選定表をそれぞれ示す。 表8.4 小規模掘削における土留めの特徴 盤 条 軟 普 硬 弱 通 質 土 土 土 LSP-Ⅰ型 △ ◎ LSP-Ⅱ、Ⅲ型 ○ SP-Ⅱ、Ⅲ型 使 用 条 件 土留めの種別 地 件 施 工 環 境 地 下 水 の あ る 箇 所 音 ・ 振 ○ ◎ ◎ 騒 その他 経 地 下 埋 設 物あ のる 箇 所 壁 体 の 曲 げ 剛 性 済 動 周 辺 の 地 盤 沈 下 × ◎ △ △ ◎ ◎ × ○ △ △ △ ○ × ◎ × ◎ △ ○ ○ △ × 性 H型鋼 打込み △ ◎ × × △ △ △ ○ ○ 横矢板工 建込み △ ◎ ◎ × ◎ △ × △ ◎ ◎:有利 ○:普通 △:不利 注1)地盤改良工及び他工法を併用しない場合。 8-8 ×:検討を要する 表8.5 土留め選定表 注4) 注1) 交通量が多い所及び家屋密集地では、矢板のランクを上げる。 注2) 支保工は、矢板がLSP-Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの場合には木製を標準とする。 注3) 適合範囲。 適合可否の土留め計算を行う。 注4) 根入れ長は仮設計算書を参照する。(技術監理課にて管理) 注5) 計算に用いる諸条件は、土質試験の数値を優先する。 注6) 軽量鋼矢板の最長は1枚ものとして使用するため、リース材においては運搬及び 市場性より5.0mとし、新材購入においては運搬及び市場性を考慮して10.0m未満 とする。 注7) LSP-Ⅰは軽量鋼矢板建込工法、LSP-Ⅱ、Ⅲは軽量鋼矢板圧入又は打込みとする。 注8) 地下水が高く、軟弱な地盤などにおいては別途計算を要する。 (参考)切りばりの設置位置は、次のとおりとする。 ① 切りばり1段目は、矢板上端から0.5mの位置とする。 ② 切りばり2段目は、床付け面から1.0mの位置とする。 8-9 (2)土質常数の推定 一般的に、小規模掘削においては土質試験を行わないが、土質状況(N値)から設計に必要 な土質常数を推定する方法が提案されており、参考として示す。 なお、鉄道や高速道路施設などの重要構造物が近接しているような場合は、土質試験を行う などして確認をしなければならない。 下記に「道路土工-土質調査指針」に示されるN値と土質定数を示す。 1) N値による砂質土地盤常数の推定 表8.6 砂のN値と相対密度、内部摩擦角との関係 2) N値による粘性土地盤常数の推定 表8.7 粘性土のN値とコンシステンシー、一軸圧縮強さとの関係 8-10 8.3 材料及び許容応力度 8.3.1 材料 仮設構造物の材料は、入手が容易で、かつ使用目的に合致した品質、形状及び寸法のものを 用いなければならない。 8.3.2 許容応力度の決定 仮設構造物に使用する材料の許容応力度は、「8.3.3~8.3.5」に定める値を上限値とし、必 要に応じてこれを低減して用いなければならない。 【解説】 仮設構造物の許容応力度は、一般に構造物の許容応力度に対して割増ししたものが用いられ る。これは、仮設構造物が本体構造物築造後に撤去され、供用期間が短いからである。しかし ながら、対象とする仮設構造物の重要度や荷重条件に応じて、許容応力度の上限値を低減して 用いなければならない。 なお、以下の各号に示していない材料の許容応力度については、関連する示方書や諸基準な どを参考にし、材料の強度を確認するための試験を行うなどして十分検討して定めるものとす る。 8-11 8.3.3 鋼材類の許容応力度 (1)鋼材の許容応力度 一般構造用圧延鋼材及び溶接構造用圧延鋼材の許容応力度は、下記に定める値以下とする。 表8.8 鋼材の許容応力度(N/mm2 ) 種 類 軸方向引長(純断面) 軸方向圧縮(総断面) 一般構造用圧延鋼材 (SS400) 溶接構造用圧延鋼材 (SM490) 210 280 l/r≦18 210 18<l/r≦92 210-1.23(l/r-18) 92≦l/r 1,800,000 6,700+(l/r)2 l/r≦16 280 16<l/r≦79 280-1.8(l/r-16) 79≦l/r 1,800,000 5,000+(l/r)2 L :部材の座屈長さ r:断面二次半径 L :部材の座屈長さ r:断面二次半径 引長縁(純断面) 210 285 圧縮縁(総断面) l/b≦4.5 210 4.5<l/b≦30 210-3.6(l/b-4.5) l :フランジの固定点間距離 b:フランジ幅 l/b≦4.0 280 4.0<l/b≦30 280-5.7(l/b-4.0) l :フランジの固定点間距離 b:フランジ幅 せ ん 断 ( 総 断 面 ) 120 160 支 315 420 曲 げ 圧 【解説】 上表の鋼材の許容応力度は、日本道路協会「道路橋示方書・同解説Ⅱ鋼橋編」に示されてい る許容応力度を基準とし、これを50%割増ししたものである。また、構造用鋼材の許容曲げ圧 縮応力度は、H型鋼及びI型鋼を対象として設定されたものであるので、これら以外の断面の 鋼材については「道路橋示方書」などに準拠して同様の割増しを行うものとする。 8-12 (2)鋼矢板、鋼管杭及び鋼管矢板の許容応力度 鋼矢板、鋼管杭及び鋼管矢板の許容応力度は、下記に定める値以下とする。 表8.9 鋼矢板、鋼管杭及び鋼管矢板の許容応力度(N/mm2 ) 鋼矢板 SY 295 許容曲げ引張応力度 許容曲げ圧縮応力度 許容せん断応力度 270 270 150 鋼 管 杭 SKK 400 SKK 490 210 280 210 280 120 160 鋼 管 SKY 400 210 210 120 矢 板 SKY 490 280 280 160 【解説】 上表に示した許容応力度は、(1)と同様の考え方によるもので、JISに示されている基準降伏 点に対して一般の鋼材と同じ割合(210/240=0.9)を乗じたものである。 (3)PC鋼材の許容引張力 土留めアンカーに用いるPC鋼材の許容引張力は、テンドン極限引張力の65%とテンドン降 伏引張力の80%のうちいずれか小さい値とする。 【解説】 土留めアンカーに用いるPC鋼材の許容引張応力度は、PC鋼線、PC鋼より線、多重PC より線、PC鋼棒などである。 8-13 (4)溶接部の許容応力度 一般構造用圧延鋼材(SS400)の溶接部の許容応力度は、下記に定める値以下とする。 表8.10 一般構造用圧延鋼材(SS400)の溶接部の許容応力度(N/mm2 ) 溶接の種類 開先溶接 すみ肉溶接 応力の種類 工場溶接 現場溶接 引 張 196 (210) 168 圧 縮 196 (210) 168 せ ん 断 112 (120) 96 せ ん 断 112 96 注)( )内は放射線検査または引張試験を行う場合 鋼矢板(SY295)の溶接部の許容応力度は、下記に定める値以下とする。 表8.11 鋼矢板(SY295)の溶接部の許容応力度(N/mm2 ) 工場溶接 現場溶接 備 考 応力の種類 引 圧 せ ん 注)( 張 240 (270) 縮 240 (270) 216 断 130 (150) 120 216 現場溶接継手は突合 せ溶接と添接板との 併用で行うものとす る )内は放射線検査または引張試験を行う場合 【解説】 工場溶接された鋼材、鋼矢板の溶接部の許容応力度は、放射線検査または引長試験を行う場 合には母材の許容応力度、すなわち「道路橋示方書・同解説Ⅱ鋼橋編」に示す許容応力度の50% 割増しとし、検査を行わない場合は40%の割増しと設定した。10%減じたのは検査をしないこ とによる信頼性の減少を考慮したものである。 鋼矢板の工場溶接は、鋼矢板が成分的に溶接しにくいこと、つめ部の完全溶込み溶接が難し いことなどが挙げられるが、つめの断面欠損分を添接板で補う方法が採られていることを考慮 し、放射線検査または引長試験を行う場合には母材の許容応力度、検査を行わない場合には信 頼性の減少を考慮して、母材許容応力度の90%とした。 現場溶接に対する許容応力度の低減は作業環境・施工条件などを考慮して定めなければなら ないが、鋼矢板の現場溶接は建込み前に鋼矢板を寝かせた状態で、下向きの姿勢で良好な突合 わせ溶接と添溶接板の溶接ができる場合を母材の80%以下で許容応力度を設定できるものと した。 現場建込み溶接は、足場の悪さ、上下鋼矢板開先のずれ、打ち込みによる開先の変形など悪 条件が考えられるので原則として行わないものとする。 8-14 (5)ボルトの許容応力度 ボルトの許容応力度は、下記に定める値以下とする。 表8.12 ボルトの許容応力度(N/mm2 ) ボルトの種類 応力の種類 許容応力度 備 考 普通ボルト せ ん 断 支 圧 135 315 SS 400 相当 高力ボルト (F10T) せ ん 断 支 圧 285 355 母材がSS 400の場合 【解説】 ボルトの許容応力度は「道路橋示方書・同解説Ⅱ鋼橋編」の仕上げボルト(SS400相当)及び 支圧接合用高力ボルトの許容応力度に準拠し、その値を50%割増しした値以下に設定した。 高力ボルトについては、H型鋼杭及び鋼矢板の縦継ぎ、火打ちなどに使用されている。これ については摩擦接合を考えないでボルト円筒部のせん断抵抗及び円筒部とボルト孔壁との間 の支圧力によって抵抗するという普通ボルトの考え方で設計するものとする。これは、仮設構 造物の施工現場においての高力ボルトは橋梁工事のような十分なボルト管理がなされていな いという判断によっている。 (6)鉄筋の許容応力度 鉄筋コンクリート用棒鋼は、SR235、SD295及びSD345を標準とし、その許容応力度は下記に 定める値以下とする。 表8.13 鉄筋の許容引張応力度(N/mm2 ) SR 235 SD 295 A SD 295 B SD 345 合 210 270 300 水中または泥水中の場合 - 270 300 鉄 筋 の 種 類 一 般 の 場 【解説】 土木学会「コンクリート標準示方書 構造性能照査編」に基づき、これを50%割増しを行っ たものを鉄筋の許容応力度とした。 8-15 8.3.4 コンクリートの許容応力度 (1)通常工法によるコンクリートの許容応力度 許容曲げ圧縮応力度は(軸圧縮を伴う場合を含む)、下記に定める値以下とする。 f'ck σ ca = +1.5 2 許容せん断応力度及び許容付着応力度は、次の値以下とする。 表8.14 許容せん断応力度・許容付着応力度(N/mm2 ) 種 類 18 24 30 40 曲 げ の 場 合 0.60 0.67 0.75 0.82 押 抜 き の 場 合 1.20 1.35 1.50 1.65 2.70 3.00 3.30 3.60 応力度の範囲 許容せん断 応力度 斜め引張鉄筋の計 算をしない場合 斜め引張鉄筋の計 せん断力のみの場合 算をする場合 許容付着応力度 計算基準強度 f'ck 普 通 丸 鋼 1.05 1.20 1.35 1.50 異 形 鉄 筋 2.10 2.40 2.70 3.00 許容支圧応力度は、次の値以下とする。 σ ca ≦0.45f'ck 局部載荷の場合には、コンクリート面の全面積をA、支圧を受ける面積をAaとした場合、 許容支圧応力度は次の値以下で設定してよい。 σ ca =1.5(0.25+0.05A/Aa)f'ck ただし σ ca ≦0.75f'ck 8-16 (2)安定液置換工法によるコンクリートの許容応力度 安定液置換工法によるコンクリートの許容応力度は、下記に定める値以下とする。ただし、 この場合のコンクリートの配合は、単位セメント量350kgf/m 3 (3.5kN/m3 )以上、水セメン ト比55%以下を標準とし、標準養生供試体の材齢28日における圧縮強度が30N/mm 2 以上を満 足するものとする。 表8.15 安定液置換工法によるコンクリートの許容応力度(N/mm2 ) 許容付着 許容せん断応力度 許容軸方向 許容曲げ 圧縮応力度 圧縮応力度 28日圧縮強度 30 9.5 注) 斜め引張鉄筋を 計算しない場合 斜め引張鉄筋を 計算する場合 0.35 2.55 12.0 応力度 (異形鉄筋) 1.80 安定液の濃度が10%を越える場合には、別に検討して定めるものとする。 【解説】 安定液置換工法に用いるコンクリートの配合は、「道路橋標準示方書・同解説Ⅳ下部構造編」 に準拠して定めた。コンクリートは、28日圧縮強度(JIS A 5308で保証されている圧縮強度) 30N/mm2 のコンクリートを用いることを基本とし、許容応力度を50%割増ししたものである。 8.3.5 木材の許容応力度 横矢板の設計に用いる木材の許容応力度は、材質、品質、使用条件などを考慮して定めなけ ればならない。木材を仮設構造物として長期にわたり使用する場合には、品質の劣化に対して 十分留意する。 表8.16 木材の許容応力度(N/mm2 ) 木 材 の 種 類 針 広 葉 葉 圧 縮 曲 げ せん断 あかまつ、くろまつ、からまつ、ひば、 ひのき、つが、べいまつ、べいひ 11.8 13.2 1.0 すぎ、もみ、えぞまつ、とどまつ、 べいすぎ、べいつが 8.8 10.3 0.7 かし 13.2 19.1 2.1 くり、なら、ぶな、けやき 10.3 14.7 1.5 樹 樹 8-17 【解説】 木材は、材種、品質および使用環境によって強度が異なる。地域によって入手できる材料が 制限される場合がある。また、木材は繊維方向によって強度が異なり、ばらつきも予想される。 これらを勘案し、現場の状況に応じて適切なものを選択する必要がある。木材は個々により特 性が異なり、十分な検討が行われていないため、ここでは、「労働安全衛生規則」を参考とし て、各材料における許容応力度の目安を例示する。 なお、長期にわたり使用する場合には、その品質の劣化および安定性について十分に留意す ることが必要である。 8.4 荷重 8.4.1 荷重の種類 仮設構造物の設計にあたっては、次の荷重を考慮する。 1.死荷重 2.活荷重 3.衝撃 4.側圧 5.その他の荷重 【解説】 仮設構造物の設計に当たって、一般的に考えなければならない荷重であり、仮設構造物の種 類や施工地点での諸条件を考慮して選択する必要がある。 下表に土留め壁や路面覆工などの設計における荷重の組合わせを示す。 表8.17 荷重の組合わせ 荷重の種類 土留め壁 根入れ長 支持力 死 荷 重 活 荷 重 衝 撃 側 圧 その他の 荷 重 ○ ○ 中間杭 応力・変形 支持力 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 応 力 切ばり 腹起し 応 応 力 8-18 たわみ ○ 応 力 ○ ○ ○ ○ ○ 必要に応じて考慮する 力 路面覆工 ○ 8.4.2 死荷重 死荷重の算出には、原則として実重量を用いるものとするが、下表に示す単位体積重量を用 いてもよい。 【解説】 死荷重の算出は、表8.18に示す「トンネル標準示方書 開削工法・同解説」による単位体積 重量を用いてよい。ただし、形鋼や覆工板などの単位体積重量で製作会社の表示する実重量の 明らかなものについてはその値を用いてもよい。地下埋設物の重量については、埋設物管理者 の定める値を用いるものとする。 木材の重量は樹齢や含水率によって異なり、8.0kN/m3 は通常の使用材に対してやや過大で あるが釘、鎹、ボルトなどを含んだ重量と考えてよい。 表8.18 材料の単位体積重量(kN/m3 ) 材 料 単位体積重量 材 料 単位体積重量 鋼・鋳鋼・鍛鋼 77.0 木材 8.0 鋳鉄 71.0 瀝青材 11.0 鉄筋コンクリート 24.5 アスファルト舗装 22.5 コンクリート 23.0 砂利・砕石 19.0 セメントモルタル 21.0 表8.19 覆工板の単位体積重量(kN/m2 ) 単位重量 種 類 支間2m 支間3m 鋼製 2.15 2.15 鋼製(すべり止め加工品) 2.3 2.3 鋼+アスファルト加工製 3.0 3.0 鋼+コンクリート加工製 3.0 3.3 8-19 8.4.3 活荷重 活荷重としては、自動車荷重、群衆荷重、地表面上載荷重などを考慮する。 【解説】 仮設構造物に作用する荷重としては自動車荷重、群衆荷重があり、その他必要に応じて建設 用重機械などの荷重を考慮する必要がある。 (1)自動車荷重 自動車荷重は、下記に示す「道路橋示方書・同解説Ⅰ.共通編」に規定するT荷重を用 いる。なお、T-25は占用長さなど規定されていないので、参考値とする。 表8.20 T荷重 荷重 総荷重 W(kN) 前輪荷重 0.1W(kN) 後輪荷重 0.4W(kN) T-25 250 25 T-20 200 T-14 140 b 1 (cm) b 2 (cm) a(cm) 軸 間 L(cm) 100 12.5 50 20 600 20 80 12.5 50 20 400 14 56 12.5 50 20 400 100 前輪輪帯幅 後輪輪帯幅 車輪設置長 200 軸間 L b1 50 b2 0.1w 0.4w 175 275 0.4w b1 b2 50 0.1w 後輪 前輪 図8.3 T荷重(単位:cm) 8-20 (2) 群衆荷重 歩道部分には群衆荷重を載荷するものとする。群衆荷重は「道路橋示方書・同解説 Ⅰ.共通編」に準拠し、5.0kN/㎡の等分布荷重とする。 (3) 地表面上載荷重 道路上の工事では換算自動車荷重として仮設構造物の範囲外に 10.0kN/㎡の載荷重 を考える。ただし、自動車、重機及び建築物などが土留め壁に近接するような場合で、 あきらかに 10.0kN/㎡では危険側と考えられるときは、別途適切な値を考慮しなければ ならない。 (4) その他 その他の荷重としては、土留め壁に近接する構造物重量、列車荷重、建設用重機の自 重及び吊り上げ荷重などを必要に応じて考慮する。 8.4.4 衝撃 活荷重には衝撃を考慮しなければならない。ただし、群衆荷重には衝撃は考慮しない。 【解説】 仮設構造物では、一般に衝撃係数 i=0.3を活荷重に乗じて設計するものとする。ただし、 覆工板の衝撃係数はi=0.4を標準とする。 自動車荷重による衝撃係数としては、「道路橋示方書・同解説、Ⅰ共通編」において、i= 20/(50+L)(L:支間 m)と定められているが、算出される部材の応力度に大差なく実質 的にも構造物に与える影響は少ないため、衝撃係数 i=0.3とした。しかし、覆工板の場合に は支間が小さく、衝撃を直接受けるのでi=0.4とする。 8.4.5 側圧一般 土留め壁の設計に用いる側圧の大きさは、地質、地盤の性状、地下水の状況、周囲の構造物、 施工方法などを考慮し、土留め工の設計に定めなければならない。 【解説】 土留め壁に働く側圧は土圧や水圧の他、上載荷重、近接構造物の影響など多様であり、その 大きさは地質、土留め壁の変形形状、変形量、施工方法などに大きく左右するので理論的に求 めるのは難しい。 8-21 一般に、土留め壁の計算に用いられる側圧は、極限平衡状態を想定して理論的による土圧及 び水圧の和として求められる側圧と、土圧、水圧あるいは切ばりの軸力の実測値から得られた 側圧の2種類がある。 前者は根入れ長算定や弾塑性法による応力算定などに用いられ、後者は慣用計算法による応 力算定に用いられる。 なお、この項については、本章8.5「側圧」の項を参照すること。 8.4.6 その他の荷重 仮設構造物の設計においては、通常の荷重のほかに施工箇所、地形、地質および特殊な施工 法の採用などの実状に応じて適切な荷重を設定し、その影響を考慮しなければならない。 軸力が作用する鋼製切ばりなどは、温度変化による影響として、部材一本当り120kNの軸力増 加を考慮する。 【解説】 その他の荷重として考えられるものには、以下のようなものがある。 ①温度変化の影響 ②地震の影響 ③雪荷重の影響 鋼製切ばりは、気温の変化による膨張によって軸力が増加する。切ばりの両端は完全固定で はないので、軸力の増加は熱膨張係数を用いて計算した値より小さいものと思われる。 文献によると、両端固定とした場合の理論的な値に対して18~19%程度となっており、また、 気温1℃の上昇に対する切りばり反力の増加は通常11.0~12.5kNといわれている。 夏と冬の温度差による軸力は土のクリープによって吸収されると考え、1日の最高と最低の 温度差が10℃程度であるとすれば、軸力の増加量は120kN程度であることから、温度変化の影 響はこの程度でよいとされている。 8-22 8.5 側圧 8.5.1 根入れ長算定に用いる土圧及び水圧 根入れ長の算定に用いる主働土圧および受働土圧は、砂質土地盤ではクーロンの式、粘性土 地盤ではランキン・レザールの式により求める。 水圧は基本的には、砂質土では土圧と分離し、粘性土では分離しないものとする。 【解説】 土留め壁に作用する設計外力としては土圧・水圧(総称して側圧)、覆工から作用する鉛直 荷重などがあるが、ここでは土留め工の支配的な荷重である土圧・水圧を外力とする。 (1) 側圧の分類 側圧の分類としては、実測値より推定された側圧と、理論式により求められた側圧に分 けられる。使用目的では、以下のように分類される。 ① 根入れ長の算定用の側圧 ② 土留め工の部材算定用の側圧 使用目的 切りばり軸力計より推定 実測値より推定 された側圧分布 見かけの土圧 ② 見かけの土圧 ② 側圧係数 ①② 土圧計より推定 ランキン・レザールの土圧 ①② クーロンの土圧 ①② 理論式による側圧分布 図8.4 側圧の分類 8-23 (2)見かけの土圧 見かけの土圧とは、切りばりに設置した軸力計測定値あるいは土留め壁に設置した土 圧計測定値より推定した土留め壁に作用する土圧の総称である。単純梁法などの慣用計 算法が適用される。 土圧の分布形状は、砂質土・粘性土で分類されており、各学会・協会などの基準毎に 分布状況が多少異なっているが、これは各学会・協会などが主に土留め掘削を行ってい た地盤が異なっていたためと考えられる。 (3)側圧係数 側圧係数は、土留め壁に設置された実測側圧(土圧+水圧)を整理し、深度毎の土被 りの荷重と比較して求めたものである。土圧計の測定値は、土留め壁に作用する土圧や 水圧など全ての側方荷重を直接測定していることから、真値に近いものと考えられる。 図8.5に示す図は日本建築学会「山留め工設計施工指針」に示されている各土層ごとの 側圧係数の一覧表であるが、側圧係数は実測値がかなり収集されているものの、土質及 び地下水の状況によって異なるためその変動幅はK=0.2~0.8と定量的に把握できるほ ど明確となっていないことが分かる。したがって、設計段階での側圧係数の設定には慎 重な判断が必要となってくる。 K :側圧係数 γ t :土の湿潤単位体積重量 H :根切り深さ 地 盤 側圧係数 砂 地 盤 地下水位の浅い場合 地下水位の深い場合 0.3~0.7 0.2~0.4 粘土地盤 軟らかい粘土 硬い粘土 0.5~0.8 0.2~0.5 図8.5 側圧形状と側圧係数 8-24 (4)根入れ長算定に用いる土圧及び水圧 根入れ長の算定は、一般に最下段切ばり設置時及び掘削完了時における掘削底面以下の 掘削面側の受動土圧及び水圧と、背面側の最下段切ばり、またはその1段上の切ばり以下 の主動土圧及び水圧のつり合いを考えて行う。ここで用いられる土圧としては、トンネル 標準示方書に基づき砂質土地盤に対してはランキン・レザール式、粘性土地盤ではクーロ ン式によるものとする。 粘着力をもつ地盤において主働土圧をランキン・レザール式により求めると、土留め壁 に作用する主働土圧が非常に小さな値となることがある。しかしながら、実際の工事にお いては、地表面付近は土留め壁の設置に伴う地盤の乱れが生じることや、背面地盤に生じ るテンションクラックに雨水などが浸入してランキン・レザール式の土圧式より大きな土 圧を生じることがある。そこで、側圧の下限値を P a =0.3γ t z とする。 図8.6 根入れ長算定に用いる土圧及び水圧 砂質土地盤でクーロンの式を採用したのは、図8.7に示すように良質な砂地盤で地下水位 の低い場合にはランキン・レザールの式による根入れ長は一般に過大な値を与え、施工実 績にそぐわないことや、わが国でのクーロン土圧による施工実績を考慮したことによるも のである。 8-25 水圧は基本的に、砂質土では土圧と分離し、粘性土では分離しないものとする。根入れ部 が単一砂層の場合には土留め背面側の地下水が土留め壁先端をまわって掘削面側にまわり 込み、掘削底面に向かって減少していく水圧分布となるので、土留め壁先端では両側の水圧 が等しくなる。したがって、このような地盤での水圧としては、土留め壁先端で0となる三 角形分布の水圧を考える。 適用に当たっての注意 ① 互層地盤の場合はそれぞれの土層の土質に応じた土圧式による土圧分布とする。 ② 根入れ部が粘性土と砂質土との互層地盤の場合には、土留め壁背面側の水圧が掘削に 伴って減少しないので、このような場合の水圧としては各滞水層の間隙水圧をそのまま 採用する必要がある。 ③ 軟弱な粘性土地盤で強度が深さ方向に全く増加しないような場合には、計算上の根入 れ長が施工実績に比べて著しく過大となったり、あるいは釣り合い深さが求められない ことも生じる。三軸圧縮試験などによっては粘性土地盤でも内部摩擦角φの存在が認め られることもあるので、このような場合は、地盤や付近の構造物への影響及びこれまで の根入れ長の施工実績などを総合的に判断し、φ≦ 5°の範囲で内部摩擦角を考慮して もよい。また、その時の土圧は次式により求める。 主動土圧 KA・〔γ t (H+D)+q〕-2C 受動土圧 KP・γ t ・D+2C KA KP ただし、受動土圧(KP)ではσ=0としなければならない。なお、ここで用いる各記 号の説明は図8.6に示したものと同様である。 図8.7 単一砂層における土圧式と根入れ長 8-26 8.5.2 応力算定に用いる側圧 土留め壁の応力計算にあたっては、掘削の深さに応じて見かけの土圧を土留め壁に作用させ、 切ばりの設置位置と仮想支点とを支点とする単純ばりとして断面力と応力度を算出する慣用計 算法と、切ばりをバネ支点、根入れ部を地盤の弾塑性バネ支点とし、各掘削段階ごとの先行地 中変位を考慮し、掘削段階、手順にしたがった断面力、応力度および変位量を算出する弾塑性 法とがある。 上記の計算方法のほか、シールド工事における立坑などのように最下段切ばりから掘削底面 まで間隔が大きい場合には別途適切な計算方法を検討する必要がある。 【解説】 (1) 慣用計算法に用いる土圧及び水圧は、図8.8に示す見かけの土圧分布と表8.21の係数によるも のとする。 P a =Kγ t H+P w ここに、 P a :主働側圧 K :見かけの土圧係数(表8.21 による) γ t :土の湿潤単位体積重量(kN/m3 ) (地質調査を基本とする[参考値:粘性土 γ t =16kN/m3、砂質土 γ t =17kN/m3 ]) H :換算掘削深さ(m) q :上載荷重(kN/m2 ) N :標準貫入試験のN値 P w :着目点における地盤の静水圧(ただし、粘性土においてはP w =0とする) 図8.8 慣用計算法に用いる見かけの土圧 表8.21 見かけの土圧係数(参考) 土 質 K 砂 0.2~0.3 硬い粘土(N>4) 0.2~0.4 軟らかい粘土(N≦4) 0.4~0.5 8-27 一般に、土圧及び水圧の大きさは掘削の進行に伴って再配分され、その大きさと分布が変化す る。したがって、慣用計算法による断面力の算定に用いる側圧としては掘削中に受ける最大値を 用いる必要がある。 図8.8及び表8.21を使用するにあたっては次の事項に注意する必要がある。 ① 図8.8に示す土圧及び水圧分布は見かけの土圧分布で、慣用計算法を用いることを前提 としていることから、適用の範囲は掘削深さが15m程度より浅い場合に限られる。 ② 根入れ部がN≦2あるいはヒービングのおそれがあるような軟弱な粘性土地盤では、地 盤改良などの補助工法を考慮することもあるが、安定数、鋭敏比、軟弱層の厚さなどによ ってはヒービング対策として土留め壁の先端を下部にある良質地盤に貫入させる場合も ある。このような場合には弾塑性法によって設計を行うのがよい。 ③ 計算に用いる地盤種別を、図8.9に示すように掘削深さに根入れ長の半分を加えた範囲 の地質で判断する。 ④ 粘性土と砂質土が互層をなす場合には、粘性土の層厚合計(Σhc)が図8.9に示す対象 地盤の厚さ(H+ L/2)の50%以上の場合には粘性土、50%未満の場合は砂質土の一様地 盤と考えてよい。また、地盤種別が粘土と判定された場合でΣhcの50%以上がN≦4のと きは軟らかい粘土、50%未満のときは硬い粘土とする。 図8.9 地盤種別を決定するための対象地盤 ⑤ 透水係数が大きく地下水の供給が豊富な砂地盤や、粘性土層が挟在するような砂質土の ように、土留め壁背面の地下水位が掘削に伴って低下しない地盤で遮水性の土留め壁を採 用する場合は、水圧を別途考慮する必要がある。この場合の地下水位以下の土の単位体積 重量は、水中重量を用いてよい。 8-28 ⑥ 親杭横矢板土留め壁のように遮水性が期待できない土留め壁の見掛けの土圧は、良質な 地盤に適用される場合が多いことや、作用する水圧が小さいことなどのため、図8.8およ び表8.21に示す見掛けの土圧よりも小さな値を示すことがある。したがって、土留め壁に 用いる場合の見掛けの土圧係数の大きさは状況に応じて検討するものとする。 (2) 弾塑性法に用いる側圧 弾塑性法に用いる側圧は、砂質土においては土圧と水圧の和を側圧とし、粘性土において は土圧と水圧を一体とした側圧とする。 弾塑性法は地盤条件、土留め工の形状寸法、掘削手順をモデル化することにより実際に近 い壁体の応力、変位量を求めることができるが、慣用計算法のように手計算で行うことは不 可能で、通常電子計算機によって行われる。弾塑性法では、地盤条件、土留め工の形状寸法、 掘削の施工順序など、モデル化する諸条件によって、異なる計算結果が得られるので、諸条 件、特に土質定数の設定にあたっては、土質試験結果をよく検討することが肝要である。 図8.10に弾塑性法の概念図などを示す。なお、図8.10における諸注意事項を以下に示す。 注1) 土圧係数(K A 、K p )は、山留め壁と地盤との摩擦角δをδ=φ/2(φ:土の 内部摩擦角)としたクーロンの土圧の水平成分を考える 2) 土留め壁の曲げ剛性のうち、U形鋼矢板については継手部のすべりに着目した既 往の研究を参考にして45%とし、地下連続壁については、通常の鉄筋量に対して「コ ンクリートライブラリー」第52号、11.4により求めたものである 3) 実測値を基に経験的に求められている場合は上の各式によらなくともよい 4) ここでの土圧は水圧を含んだものである 8-29 概念図 基本仮定 背面側主動土圧 静止土圧 掘削面側の受動 土圧 水平地盤反力係数 土留め壁の曲げ 剛性 切ばりのばね定数 ①掘削面側の抵抗土圧は、土留め壁の変位に比例し、かつ有効受動土圧を超 えない ②切りばりは、設置後弾性支承となる ③掘削に伴い発生する土留め壁の変位を考慮し、施工順序に従って計算を進 める Pa=Ka(γ t ・Z-p w )-2c Ka+p w ここに Pa :背面側の主動土圧(ただし、Pa≧0.3γ t ・Z)(kN/㎡) γ t ・Z:計算点における全鉛直圧力(kN/㎡) p w :計算点における間隙水圧(粘性土の場合はp w =0)(kN/㎡) C :土の粘着力(kN/㎡) Ka :主動土圧係数 有効側圧を求めるため、山留めの変形と無関係に掘削面以下の山留め壁に作 用している側圧を消去するために用いる。 砂質土:P O =K O (γ t Z′-p′ w )+p′ w 粘性土:P O =γ t Z′ ここにP O :静止土圧(kN/㎡) K O :静止土圧係数(K O =1- φ、φ:土の内部摩擦角) γ t Z′:計算点における掘削面側の全鉛直圧力(kN/㎡) p′ w :計算点における掘削面側の間隙水圧(kN/㎡) Pp=Kp(γ t Z´-pw )+2C´ K A +pw ここにPp:掘削面側の受動土圧(kN/㎡) Kp:受動土圧係数 C´:掘削面側地盤の土の粘着力(kN/㎡) 1 B -3/4 Kh= αEo( ) 0.3 0.3 ここに Eo:各種試験より求まる地盤の変形係数(kN/c㎡) B:載荷幅(一般にB=10m) α:Eo算定方法に対する補正係数 U型鋼矢板:継手拘束を100%として得られる場合の45% 柱列式地下連続壁:芯材のみの剛性 地中連続壁:コンクリート全断面の剛性の60% 試験などにより確認する場合は上記以外の値をとってよい 施工の条件などを考慮して次式により求める。 2EA Ks=α LS ここに Ks:切梁のばね定数(kN/㎡) L:切梁の長さ(m) EA:切梁の軸方向剛性(kN/㎡) S:切梁の水平間隔(m) α:切梁のゆるみを表す係数(0.5~1.0) 図8.10 弾塑性法の入力条件 8-30 8.6根入れ長の検討 8.6.1 根入れ部の側圧に対する安定 土留め壁の根入れ長は、掘削の各段階における掘削底面の安定や支持力に対して、十分安全 な長さとしなければならない。 【解説】 背面側から作用する土圧に対しては支保工と掘削面側の抵抗土圧で壁体の安定を保つため、 掘削面側の抵抗土圧と背面側側圧がつり合いを保つようにすることが、根入れ部の安定を検討 するうえでの基本となる。 つり合い深さの計算は、8.5.1根入れ長算定に用いる側圧にある荷重を用いて、掘削完了また は最下段切ばり設置直前の状態におけるモーメントのつり合いから必要根入れ長を求めるのが 一般的である。したがって、下図(a) 、(b)の両状態におけるつり合い状態を求め、その時の 根入れ長の大きい方を採り、その 1.2倍程度の長さを設計根入れ長とする。 図8.11 つり合い根入れ長の算定 8-31 なお、切ばりを1段しか設置しない掘削では、切ばり設置直前の状態としての自立の状態で 根入れ長が決まることが多いので注意が必要である。 親杭横矢板形式の土留め壁の場合、根入れ長部では土留め壁としては不連続となるが、土圧 の作用幅としては下表を最大値として、過去の実績、土質及び施工条件を考慮して低減した値 を用いるのがよい。 表8.22 親杭横矢板の土圧作用幅(根入れ部) 砂 質 土 N>30 30≧N>10 N≦10 粘 性 土 N>8 8≧N>4 N≦4 土圧作用幅 フランジ幅の3倍 フランジ幅の2倍 フランジ幅 ただし杭間隔以下 粘着力の大きな地盤においては、背面側の土圧の計算値が負の値となって根入れ長が求めら れない場合もあるが、特に市街地においては、このような場合でも安全のために最低 1.5m程 度を根入れ長とするのがよい。 8.6.2 最小根入れ長 杭及び鋼矢板などの根入れ長は、安定計算、支持力の計算、ボイリングの計算及びヒービン グの計算により決定するものとする。この場合、重要な仮設工事にあっては、原則として根入 れ長は、杭の場合においては1.5m、鋼矢板などの場合においては3.0mを下回ってはならない。 【解説】 掘削深さが4m以下の小規模掘削や周辺地域への影響が少ない場合など重要な仮設工事以 外であっても、過去に多くの事故が発生したケースが認められることから、計算の結果はもち ろんのこと、想定されるあらゆる場面を考慮して十分な検討評価を行い、総合的に判断する必 要がある。 8-32 8.7 掘削底面の安定 掘削の深さが4mを越える場合や、掘削を行うことにより周辺地域への影響が大きいと予想 される場合など重要な仮設を行うときには、次に示す事項に対して検討を行わなければならな い。 ・ヒービング ・ボイリング ・パイピング ・盤ぶくれ なお、この検討の結果において安定評価が不適当となった場合には対応策を講じる必要があ る。 【解説】 掘削底面の安定検討は、地盤の状態により次のように分類される。 ・軟弱な粘性地盤を掘削する場合(ヒービング) ・地下水位の高い砂質地盤を掘削する場合(ボイリング) ・被圧された砂質地盤を掘削する場合(パイピング) ・粘性土などの難透水性地盤の下に水頭の高い透水性地盤がある地盤を掘削する場合 (盤ぶくれ) 掘削底面の安定 ヒービング ボイリング ボイリング パイピング 盤ぶくれ 表8.23に掘削底面の安定検討の分類における地盤の状態を示す。 安定検討において安定評価が不適当となった場合においては対応策を検討する。表8.24にお いては一般的に用いられている対応策を示す。 8-33 表8.23 掘削底面の安定検討の分類における地盤の状態 分 類 地 盤 の 状 態 掘削底面付近に柔らかい粘性土 がある場合。 主として沖積粘性土地盤で、塑 ヒービング 性・含水比の高い粘性土が厚く堆積 ヒービング する場合。 地下水の高い砂質土の場合、土留 め付近に河川、海など地下水の供給 源がある場合。 ボイリング ボイリング、盤ぶくれと同じ地盤 で、水みちができやすい状態がある 場合。人工的な水みちとしては左図 に示すものがある。 ボイリング パイピング 基本的にはボイリングと同様な 現象として取り扱われている。 掘削底面付近が難透水層、水頭の 高い透水層の順で構成されている 場合。難透水層としては粘性土だけ でなく、細粒分の多い砂質土も含ま 盤ぶくれ れる。 8-34 表8.24 安定検討における対応策 対 応 改 策 善 す る 現 象 備 ヒービング ボイリング 盤ぶくれ 根入土圧の釣合い 根入れ長を長くする ○ ○ ○ ○ 底盤改良 ○ ○ △ ○ 背面地盤をすきとる ○ - - ○ 地下水位を下げる - ○ ○ ○ ※○:効果がある。△:場合によっては効果がある。 図8.12 根入れ長 図8.13 底盤改良 図8.14 地下水低下 8-35 考 8.7.1 ヒービング 柔らかい粘性土地盤を掘削する場合は、ヒービングに対する安定計算を行わなければならな い。 【解説】 柔らかい粘性土地盤を掘削する場合、掘削底面下の土の強度不足から掘削底面が隆起し、土 留め壁の背面地盤で大きな地表面沈下が生じることがある。土留め壁は大きく変形し、土留め 構造全体の崩壊につながる場合がある。このような現象をヒービングという。 図8.15 ヒービング ヒービングの検討方法の基本的な考え方は以下のようである。 M a:回転モーメント P r :積載重度 P d :極限支持力 M r:抵抗モーメント Pd Mr Fs= Fs= Pr Ma (a)Terzaghiの支持力公式による検討 (b)モーメント釣合検討 図8.16 ヒービングの検討方法の基本的な考え方 8-36 前図でみるように、これは土全体の移動であって土圧による現象のようなものであり、土の 回り込みに対して十分安全なだけの矢板の断面と根入れ長が必要である。 (1) ヒービングに対する検討方法 ヒービングに対する検討方法はいくつか提案されているが、いずれも土留め壁の断面と根入 れ長と同時に評価する方法にはなっていない。 ヒービングに対する検討方法としては、 ①テルツァギー・ペックの方法に代表される支持力公式に基づく方法 テルツァギー・ペックの方法 チュボタリホフの方法 ベーラム・エイドの方法 ②モーメントのつり合いによる方法 建築基礎構造設計基準など などが提案されており、本指針においては一般的に用いられているテルツァギー・ペックの 方法を採用する。 (2) ヒービングの検討の手順 ヒービングの検討の手順として、一般的には次に示すテルツァギー・ペックの安定数を計算 して、その値によって詳細な検討を加える必要があるか否かを判断して行われる。 γ t ・H Nb= Su ここに N b :ペックの安定係数 γ t :土の湿潤単位体積重量 H :掘削深さ S u :掘削底面以深の粘性土の非排水せん断強さ (粘着力に等しいとして良い) N b の値によって掘削底面は次のように変化する。 ①N b が3.14未満のとき掘削底面の上向きの変位はほとんど弾性的で、その量は少ない。 ②N b が3.14になると塑性域が掘削底面から広がり始める。 ③N b が3.14から5.14で掘削底面が膨れ上がり、背面地盤の沈下が顕著になる。 ④N b が5.14を超えると掘削底面はヒービングをおこして継続的に持ち上がる。 我が国における事例では、N b が3を超えると土留め壁の変形が増すが、N b が4程度までは ヒービングが発生したという例はない。N b が5を超えるとヒービングの発生例が増え、剛性が 8-37 高く根入れ長の長い土留め壁を採用する事例が多くなると報告されている。 このようなことから、概ね以下のように判断してよいとされている。 ①N b が3以下ではヒービングに対して安全である。 ②N b が5以上ではヒービングの危険性が高い。 なお、N b の計算に際しては、非排水せん断強さ(S u )の決定が重要となるが、S u は掘削 時の掘削底の下の地盤の乱れ、地盤の異方性、地層構成などの影響を受けやすいので過大に評 価することがないように注意する必要がある。互層地盤や深さ方向に非排水せん断強さが変化 する場合などには、掘削底付近のS u を用いる。 同じ安定数であっても、ヒービングに対しては一般に掘削幅が狭い場合、掘削深が浅い場合 に安定性は増す。掘削計画に際してはこれらの効果を考慮し、掘削の安全性を確保することも 大切である。 以上の検討においては、土留め壁の剛性とか根入れについての要素は入っていない。 しかし、ヒービングが生じないためには剛性の高い土留め壁が十分根入れされていなければ ならないと考えられ、そのためには次に述べる検討方法が妥当と思われる。 土のすべり面及び粘着力によるすべり抵抗を図8.17のようにとり、先ず最小の安全率を与え る可能すべり深さXoを求める。このときXoが仮想支持点(つり合い根入れ長を求めたときの 受動土圧の作用位置)より浅い場合、またそれより深くてもX=Xoの深さで安全率Fs≧1.2の ときは土のすべりは生ぜずヒービングに対しては安全である。Xoが仮想支持点よりも深く、か つ安全率Fs<1.2のときはX=Xoの点を仮想支持点として鋼矢板断面計算を行う。 根入れ長は、「仮設構造物設計要領・首都高技術株式会社」よりXoに5mを加えた長さとす る。 図8.17 土のすべり面及び粘着力によるすべり抵抗 8-38 可能すべり深さXo は粘着力が深さ方向に増加することを考慮した場合にのみ算出されるも のであるから、粘着力を深さの関数として決定しておかなければならない。 掘削底面下のかなりの深さまで、粘着力が一定と考えられる場合には、土の粘着力cとして、 安全率の計算式は次式のようになる。 ヒービングに対する安全率は「トンネル標準示方書 開削工法・同解説」より1.2とする。 8-39 粘着力をC=0.2zまたは C=az+bの形に仮定 X oの 計算及 びX= Xoに おける安全率の計算 Xoが仮想支持点よりも深 くかつ安全率<1.2 Xoが仮想支持点よりも浅 くまたは安全率≧1.2 X=Xoに仮想支持点をお き、再び断面計算を行い根 入れ長をXo+5mとする 鋼矢板剛性不足の時は、断 面アップ、または切りばり 位置変更、地中ばり設置な どの処理を行う。 ヒービングに対して安全 図8.18 掘削深さとヒービングの計算手順 8-40 8.7.2 ボイリング 地下水位の高い砂質土地盤を掘削する場合には、ボイリングに対する安定計算を行わなけれ ばならない。 【解説】 ボイリングとは、透水性地盤において遮水性土留めによって掘削する場合、土留め壁背面の 地下水位と掘削内の水位とに差が生じ、この水位差によって掘削内の地盤には上向きの浸透流 が生じ、この浸透力と土の水中での有効重量とのバランスが崩れると、掘削底面の特に土留め 壁付近の土はあたかも液体のようになって沸き立つ現象である。 最近の研究によれば、テルツァギーの方法では、掘削幅が狭い場合や平面形状が正方形に近 い場合には危険側の解を与えることがわかったので、次式を用いる。 テルツァギーの方法は、土留め壁の下端に水位差の半分に相当する平均過剰間隙水圧が発生 し、それに対して土の有効重量が抵抗するという考え方である。 図8.19 ボイリング 安全率は、「トンネル標準示方書 開削工法・同解説」より1.2とする。 8-41 8.7.3 パイピング 被圧されている砂質土の上部を掘削する場合は、パイピングに対する検討を行わなければな らない。 【解説】 パイピングとは、砂質地盤で透水性が高く、地下水位が高い地盤を掘削する場合、掘削底面 に地盤の弱い箇所や人工的なものである杭の引抜き後及びボーリング調査孔などの箇所に水 みちが形成され、土中の水の浸透流により順次拡大され、最終的にはボイリングと同様の現象 を引き起こすことをいう。 検討方法としてはクリープ比によるものとする。 パイピングは、ボイリングの検討方法のうちの限界動水勾配の方法に示す流線の長さ(l) と水位差(hw)の比をクリープ比(l/hw)として、地盤の種類に応じたクリープ比(Cγ) を確保する方法で検討する。 l Fs= hw ここに Fs:安全率(2.0) l :流線長(m) ただし、背面地盤に礫層のような透水性 の大きな地層がある場合には、その層圧 を・から控除する hw:水位差(m) 図8.20 パイピング 安全率は、「トンネル標準示方書 開削工法・同解説」および「道路土工仮設構造物工指針」 より2.0とする。 8-42 8.7.4 盤ぶくれ 掘削底面下に難透水性の粘性土層があり、その下に被圧水を持つ砂層がある場合には、盤ぶ くれに対する安全性の検討を行わなければならない。 【解説】 盤ぶくれは、掘削底面地盤が粘性土あるいはシルト質土などの難透水性地盤で、この難透水 性地盤下層に被圧水を持つ砂層か砂礫層などの透水性地盤がある場合、難透水性地盤に上向き の水圧が作用してこの地盤を押し上げ、最終的には難透水性地盤が突き破られて破壊される現 象である。 盤ぶくれの検討方法は、被圧層の上端面の重量Wと地下水の揚圧力Uのつり合いによる荷重 バランス法により検討する。地盤の力学的な特性である地盤のせん断強度や土留め壁との付着 強度などを考慮しないため、安全な検討方法であるといわれている。 盤ぶくれの検討方法に、土留め壁と地盤の摩擦抵抗を考慮する方法を用いる場合には、地盤 状態、間隙水圧などを十分に考慮したうえで、土留め壁の安定性や盤ぶくれに対する安全率を 検討する必要がある。 図8.21 盤ぶくれ 安全率は、「トンネル標準示方書 開削工法・同解説」より1.1とする。 8-43 8.8 断面の検討 8.8.1 土留め壁の断面計算 土留め壁の断面計算 (1) 土留め壁の断面算定にあたっては、掘削が完了したときの状態のみでなく、必要に応じ て掘削あるいは埋戻しの過程における安全性についても確認しなければならない。 (2) 土留め壁には、土圧及び水圧が水平荷重として作用し、場合によっては覆工からの荷重 グラウンドアンカーの鉛直成分などの鉛直力が作用するので、これらを考慮して安全性を 確認しなければならない。 (3) 土留め壁あるいは土留め杭の応力を求めるための計算モデルは、掘削深さ、地盤条件、 土留め支保工の種別などを考慮して決定しなければならない。 (4) 土留め壁の応力度計算は、曲げと軸力及びせん断に対して安全であるように行わなけれ ばならない。 【解説】 (1) 土留め壁の断面計算は、掘削が完了したときの状態が最も危険な場合が多いので、一般 にはこのときの状態について行うが、切ばりの鉛直方向の間隔や根入れ長によっては、掘 削途中の切ばり設置直前における状態の方が掘削完了時の状態より応力が大きく危険と なる場合もある。また、掘削が完了し、管きょを布設または構築する際に、支障となる切 ばりを撤去あるいは盛り替える場合や、埋め戻しに当たって切ばりを撤去する際にも、掘 削完了時の状態より危険となる場合がある。したがって、これらについても土留め壁の安 全性を十分確認する必要がある。 (2) 土留め壁に作用する水平荷重を求める方法としては、慣用計算法と弾塑性法の2つがあ る。(本章8.5.2参照) 慣用計算法と弾塑性法の使い分けとしては、前者は比較的規模の小さな掘削や良好な地 盤での設計に適し、土留め壁の変形を必要とする場合や掘削深さが深い場合(15m程度以 上)や軟弱地盤の掘削でヒービングに対する安全率が許容安全率に近い場合などにおいて は、弾塑性法によることが好ましい。 (3) 土留め壁に作用する鉛直荷重には、路面覆工の反力、グラウンドアンカーの鉛直成分、 土留め支保工自重及び土留め壁自重がある。 (4) 土留め壁または土留め杭の応力度の検討は次式により行う。 8-44 M σ= N + Z ≦σ a A ここに σ:土留め壁の応力度(N/mm2 ) σ a :土留め壁の許容応力度(N/mm2 ) M :土留め壁の最大曲げモーメント(N・mm) N :土留め壁の軸力(N) Z :土留め壁の断面係数(mm3 ) A:土留め壁の断面積(mm2 ) なお、柱列式連続地中壁の計算に当たっては、鉄筋を挿入する場合は鉄筋モルタル杭(ま たは鉄筋コンクリート杭)として計算し、形鋼を挿入する場合は形鋼とモルタルとの合成 は考えずに形鋼単独の計算とすることを原則とする。杭を千鳥配列する柱列式連続地中壁 では杭1本当たりに作用する水平力は土留め壁の単位幅当たりの水平力を単位幅当たり の杭の本数で割った値とすることができる。 U形鋼矢板では応力度計算上の断面性能は、継手の拘束を100%として得られる断面係 数の60%とし、変形計算に用いる曲げ剛性は、断面二次係数の45%とする。 8-45 8.8.2 横矢板の断面計算 横矢板部材の断面計算は、土留め杭の中心間隔からフランジ幅の1/2を差し引いた長さを支 間とし、本章8.5.2の設計土圧を等分布に作用させた単純ばりとして計算する。 【解説】 横矢板には一般に木材が使用されるが、この場合の計算式は次のとおりである。 下図に示すように、横矢板は両端が板厚以上で40mm以上を親杭に架かる長さとする。最小板 厚は、30mmとする。 3wL 2 6M σ= = bt2 ≦σa 4bt2 3w t= S ・l τ= 4b・σa ここに、 = ≦τa A σ :横矢板の曲げ応力度(N/mm2 ) σa:横矢板の許容曲げ応力度(N/mm2 ) τ :横矢板のせん断応力度(N/mm2 ) τa:横矢板の許容せん断応力度(N/mm2 ) w :横矢板に作用する土圧(N/mm2 ) ・ :横矢板計算上の支間(mm) b :横矢板の単位幅(mm) t :所要横矢板厚(mm) A :横矢板の断面積(mm2 ) M :横矢板の曲げモーメント(N・mm) S :横矢板のせん断力(N) 横矢板計算上の支間lは、l=L-B/2とする。 L :親杭中心間隔(cm) B :親杭のフランジ幅(cm) B/2 図8.22 横矢板寸法 8-46 8.9 支保工の設計 8.9.1 支保工の設置位置 1.切ばり設置位置 ① 水平間隔は3mとし、垂直間隔は原則として3m以下としなければならない。 ② 立坑では、水平間隔は原則として5m以下、垂直間隔は3m以下としなければならな い。また、火打ちは必ず設置すること。 2.腹起し設置位置 ① 腹起しの長さは原則として6m以上とし、垂直間隔は3m程度とする。 ② 第1段の腹起しの位置は矢板頂部から1m以内とする。 ただし、覆工の受げたがある場合は、1m以上で施すことを妨げない。 【解説】 支保工の設置位置間隔は、「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説(土木工事編)」による。 同要綱にはこのほかにも重要な事項を規定している。 8-47 8.9.2 荷重 支保工には、本章8.5.2の側圧が作用するものとする。 腹起し及び切ばりに働く力は、その切ばりとその下方の切ばりとの間に発生する荷重のみで あると考え、下方分担方により計算する。 弾塑性法の場合には、掘削、躯体の構造および支保工撤去の各段階の切ばり位置における土 留め壁の最大反力により計算する。 【解説】 腹起し及び切ばりに作用する荷重は、粘性土の場合には図8.24の水圧を含んだ土圧、地下水 位の特に浅い砂地盤で工事中地下水位の低下がほとんど期待できない場合には、図8.25の土圧 及び水圧とし、下方分担法により計算を行う。 図8.23 下方分担法による土圧 図8.24 下方分担法による土圧及び水圧 8-48 また、支保工撤去時の支点反力は、撤去する支保工の上下の支点をスパンとする単純ばりを 考え、撤去される支保工反力を集中荷重として上下の支点の増加反力を計算し、それぞれのも との反力に加算して求めた値としてよい。 図8.25 支保工撤去時の検討方法例 8-49 8.9.3 腹起しの設計 (1)腹起しの計算スパンは、原則として切ばりの中心間隔とする。ただし、火打ちを設ける 場合には図8.27のLを計算スパンとする。 (2)腹起しの曲げモーメント及びせん断力 ・土留め壁が鋼矢板や地下連続壁などの場合、腹起し位置の反力を等分布荷重とし、単 純ばりとして計算する。 ・親杭式などで腹起しを連続ばりとして計算する場合には、土留め杭の反力を移動荷重 として計算する。 【解説】 腹起しに火打ちをいれる場合のスパンの考え方を図8.26、27に示す。 図8.26 腹起しに火打ちをいれる場合のスパンの考え方 8-50 1 1 wL 2 M max= 、S max= wL 8 ここに 2 Mmax:最大曲げモーメント(N・mm) Smax:最大せん断力(N) w :等分布荷重(N・mm2 ) L :設計スパン(mm) 図8.27 親杭横矢板土留めの腹起しに作用する荷重 8-51 8.9.4 切ばりの設計 (1) 切ばりの設計は、腹起しから加わる最大反力を軸力として受ける長柱の座屈計算により 行う。 (2) 鋼製切ばりを使用する場合で、材料の仮置き程度の上載荷重が予測される場合には、自 重を含めて5kN/m程度の鉛直荷重を考慮し、軸力と曲げモーメントが作用する部材とし て計算する。 (3) 温度変化による軸力の増加として、120kN/本を加算する。 (4) 端部の腹起しで切ばりと兼ねる場合は、軸力と曲げモーメントが作用する部材として計 算する。 (5) 均しコンクリートを切ばりとして使用する場合には、十分な剛性を有する厚さとしなけ ばならない。 【解説】 切ばりのスパンの考え方を図8.28に示す。 L 図8.28 切ばりのスパンの考え方 均しコンクリートや捨ばりを切ばり替わりに使用する場合には、均しコンクリートの厚さは 概ね20cm程度とするのが望ましい。 (1) 軸力のみが作用する場合 N=w・L+N a L=1/2(l 1 +l 2 ) σ=N/A≦σ a 8-52 ここに N:切ばりに作用する軸力 A:切ばりの断面積 w:腹起しに作用する等分布荷重 L:切ばりが負担する荷重分担幅 N a :鋼製切ばり材などで、温度変化による影響を見込む場合(120kN/本) σ:切ばりの軸方向圧縮応力度 σ a :切ばりの許容軸方向圧縮応力度 均しコンクリートの厚さの検討方法としては、軸力を受ける長柱やスラブとして計算を行 ってよい。 (2) 軸力と曲げモーメントが作用する場合 b’ b’ t’ 図8.29 b’およびt’の取り方 8-53 8.9.5 火打ちの設計 (1) 隅角部に使用する火打ちは、45度の角度で取り付けることを原則とする。また、切ばり に取り付ける場合は必ず左右対称としなければならない。 (2) 切ばりと同断面の部材を使用する場合には、火打ちの計算を省略しても良い。 【解説】 図8.30に火打ちに作用する軸力及び軸力の計算式を示す。なお、火打ちの計算は切ばりの計 算に準ずる。 (a)中間部 (b)隅角部 図8.30 火打ちに作用する軸力の計算 8-54 8.10 土留め壁の支持力 8.10.1 土留め壁に作用する鉛直荷重 土留め壁に作用する鉛直荷重は、覆工桁に載荷された諸荷重によって生ずる最大反力とする 【解説】 (1) 土留め壁に作用する鉛直荷重は、主として次のようなものが考えられる。 ①路面荷重 ②路面覆工(覆工板、桁など)自重 ③埋設物自重(桁を含む) ④杭、土留め壁の自重及び切ばりの鉛直荷重 ⑤グラウンドアンカーなどの鉛直成分荷重 などがあり、土留めにおいては①、②および③より生じる覆工桁の最大反力を荷重とし て考慮すればよい。ただし、土留め壁本体の自重が大きいものについてはその自重も考慮 する必要があるが、一般には考えなくてもよい。 (2) 親杭に桁受け部材が取り付けられる場合には、覆工桁の荷重は桁受部材によって各親杭 に分配されるが、親杭間隔が広いので、1本の親杭で鉛直荷重を支持するものと考えてよ い。 (3) 鋼矢板は一般に連続したものであるが、鋼矢板継ぎ手のずれや変形などを考慮して、桁 受け部材と結合したものに限り、複数枚の鋼矢板で鉛直荷重を支持できるものとする。鉛 直荷重は図8.31(a)のように鋼矢板の片側に桁受け部材を取り付けた場合、鋼矢板2枚に 分布するものとする。 桁受け部材を図8.31(b)のように鋼矢板の両側に取付けたときは、鋼矢板4枚分に分布 するものとする。 図8.31 鋼矢板と桁受け部材 ただし、掘削規模が特に大きい場合は、なるべく鋼矢板に支持させない構造にすること が望ましい。 (4) 柱列式連続地中壁は芯材間隔が1m以内の場合は芯材2本で鉛直荷重を支持するものと し、それ以上の間隔になった場合は1本の芯材で支持するものとする。 8-55 8.10.2 許容支持力 土留め杭の許容支持力は、その極限支持力を所定の安全率で除した値とする。ただし、この 値は、本体の許容圧縮力を超えてはならない。 【解説】 (1) 土留め杭の許容支持力は、極限支持力を安全率で除した値としており、次式を用いて計 算する。 安全率は一般に、1.5~2.0が採用されているが、施工条件や仮設構造物の重要度に応じて 定めるものとする。地盤調査結果から支持力を推定する場合は安全率は、2.0とする。 1 Ra= Ru n ここに、 R a :許容鉛直支持力 n :安全率(1.5~2.0) R u :地盤から決まる土留め杭(壁)の極限支持力 鉄筋コンクリート地下連続壁のように土留め壁の自重が大きい場合は次式による。 1 Ra= (R u -W s )+Ws-W n ここに、 W S :土留め杭(壁)で置き換えられる部分の土の有効重量 W :土留め壁の有効重量 (2) 杭の静力学公式には、多くのものが提案されているが、土留め壁など壁状基礎の支持 力特性、杭の周長及び先端面積の取り方、掘削に伴う地盤の沈下などの問題があり、明確 には規定できない部分が多いとされている。とくに重要な仮設構造物の場合は、載荷試験 を行うなどして支持力および沈下量を確認する必要があるが、載荷試験を行わない場合に は、(3)に記す支持力度の推定方法により推定してよい。 (3) 極限支持力の算定式 RU= ここに qdAp + Uιf s R u :極限支持力度 A p :先端面積 q d :先端地盤の極限支持力度 U :周長 ι :根入れ部分の杭長 f s :周面摩擦力 土留め壁の周面摩擦力を考慮する範囲は、掘削に伴い土留め壁が掘削面側に変形すること を考慮して、根入れ部分のみ有効であるものとする。N≦2の軟弱層においては信頼性が 乏しいので、試験により粘着力を評価できる場合に限り周面摩擦力を考慮してもよい。 8-56 (4) 支持力度の推定方法 地盤調査結果から支持力を推定する方法としては、静力学公式によるものと既往の載荷 試験結果を整理して求めた支持力推定式がある。以下に、既往の載荷試験結果を整理し て求めた打込み杭と場所打ち杭の支持力推定式を示す。 H鋼杭、鋼矢板壁および鋼管矢板壁で先端処理を打撃方式による場合は、打込み杭を参 考にして求めてよい。 H鋼杭、地下連続壁および鋼管矢板壁で先端処理をセメントミルク噴射撹拌方式による 場合は、場所打ち杭の支持力を参考にして求めてよい。 表8.25 施工条件による先端支持力度の係数 α 表8.26 施工条件による周面摩擦力度の係数 β 8-57 (5) 支持力算定の留意点 中間杭における建込み杭、打撃杭の周長Uおよび先端面積Ap は図8.32 に示す値を用 いてよい。 図8.32 中間杭の周長及び先端面積の取り方 8-58 中間杭の根入れ長が短い場合や杭径が大きい場合は、先端支持力のみ考慮して、軟弱粘 性土地盤や比較的緩い砂層土地盤の場合では、先端支持力を考慮せず摩擦力のみとしなけ ればならない。 土留め壁の周長および先端面積は、土留め壁の種類によっても異なるため、鉄筋コンク リートおよび鋼製地下連続壁の場合は図8.33 (a)に示す値を用いることとし、そのほかの 地下連続壁の場合は、図8.33 を準用してよい。 鋼矢板では、一般に閉塞効果が期待できないので図8.33 (b)に示すように根入れ部の土 に接する部分の凸凹を考慮しない周長として考え先端支持力は考慮しない。 先端地盤の支持力を期待する場合は、良質層に十分に根入れさせることとする。杭幅が 大きく良質層に十分に根入れさせることができない場合は、先端支持力を低減する。 図8.33 土留め壁の周長および先端面積の取り方 8-59 8.11中間杭の設計 8.11.1 中間杭の設計 中間杭は、切ばりまたは覆工受け桁に連結した杭として、土留め杭に準じて設計を行う。 【解説】 中間杭は、切ばりの座屈防止、浮き上がり防止及び反力の鉛直分力を分散させるためなどに 設ける場合と、覆工受け桁の脚柱として設けられる場合がある。 原則として、切ばりの座屈防止などに設ける中間杭と覆工受け桁の脚柱を兼用してはならな い。やむを得ず兼用する場合には、十分検討を行いその安全性を確認しなければならない。 8.11.2 中間杭の作用する荷重 中間杭に作用する荷重は8.10.1を参照 8.11.3 中間杭の設置位置 中間杭は、原則として切ばりの中央部に設けるのが望ましい。 【解説】 中間杭は、切ばりの中央部に設けるのが望ましい。作業上の制約、構造物の関係などからそ のとおりにできない場合が多い。このような場合、杭1本当たりに負担される荷重が異なると 不同沈下の原因ともなるので、中間杭の設置間隔には十分注意する必要がある。 8-60 8.11.4 中間杭の断面算定 中間杭の断面は、最大垂直荷重に対して、柱材としての座屈計算によって決定する。 【解説】 中間杭の有効座屈長さは「道路土工 仮設構造物工指針」より、(a)断面方向はl1 、l2 、l3 のうち最大のものとし、(b)断面直角方向(杭が切ばりで固定されない場合)はlとする。 β :杭の特性値 (a)断面方向 (b)断面直角方向 (杭が切ばりで固定されない場合) 図8.34 中間杭の座屈長 8-61 8.12 覆工 8.12.1 概説 覆工とは、開削工事並びに立坑工事において道路交通の支障とならないよう、工事箇所の開 口部分を覆工板で覆い、交通に解放する目的で行うものである。 【解説】 (1) 覆工は主に開削工事並びに立坑工事に用いられるが、その他に工事用作業用地を確保す るために覆工を施すこともある。 (2) 覆工板には鋼製覆工板、ダクタイル鋳鉄覆工板、簡易覆工板とがあり、一般に鋼製覆工 板が用いられている。 8.12.2 覆工板の設計 覆工板は、載荷される荷重に対して十分な強度と剛性を有していなければならない。覆工板 の設計に当たっては、通行車両のスリップ及び騒音などの対策について考慮する必要がある。 覆工板は、覆工受け桁を支点とする単純ばりとして計算を行う。 【解説】 (1)覆工板の設計は、下図に示すように覆工受け桁を支点とする単純ばりとして行い、図8.34 に示す覆工板支間によって検討を行う。 図8.35 覆工板の支間 8-62 8.12.3 覆工桁の設計 覆工桁は、載荷される荷重に対し十分な強度と剛性を有していなければならない。また、載 荷の方法は、自動車の交通状況などを考慮し、決定しなければならない。 【解説】 (1) 荷重 覆工桁の強度及び剛性の検討は、覆工桁を単純ばりと仮定し、その際に用いる死荷重、 活荷重、衝撃は本章8.4によるものとする。 覆工桁のたわみが大きいと覆工面の段差により衝撃が大きくなったり、安定性が損なわ れることになるので活荷重(衝撃を含まない)によるたわみは、支間の 1/400以下または 25mm以下に押さえるように設計しなければならない。 (2) 荷重の載荷方法 自動車荷重は、道路管理者から特別に指示がある場合や特に重量車両が大量に通行する 場合を除いて、T荷重により設計するものとする。 活荷重は、総重量245kNの大型の自動車の走行頻度が比較的高い状況を想定したB活荷 重と、総重量245kNの大型の自動車の走行頻度が比較的低い状況を想定したA活荷重の2 つに区分する。 B荷重を適用する路線においては、連行荷重の影響を考慮するためT荷重によって算出 した断面力など(曲げモーメント、せん断力、反力、たわみなど)に部材の支間長に応じ て表8.26に示す係数を乗じるものとする。ただし、この係数は1.5を超えないものとする。 ここでいう支間長とは、自動車走行方向に平行な部材の支間長である。 表8.26 連行荷重の影響を考慮するための割り増し係数 部材の支間長L(m) 係 L≦4 4>L 1.0 L/32+7/8 数 1) 覆工桁と自動車走行方向が直角な場合 載荷方法は、自動車走行方向の直角方向にはT荷重は2組を限度とし、3組目からは 1/2に低減する。荷重配列によって覆工桁に最大応力が生ずるように載荷する。衝撃を 含む場合は、P 1 =130kN、P 2 =65kNとなる。 8-63 図8.36 曲げモーメントの検討ための荷重配列 図8.37 覆工桁と自動車走行方向が直角な場合の部材の支間 8-64 2) 覆工桁と自動車走行方向が平行な場合 載荷方法は、T荷重を覆工板に載荷し、各荷重による覆工桁への影響を考慮する。 作業重機などが載荷される場合は、最大応力が生じるように活荷重を載荷し、覆工桁 の安全性を確認する。 図8.38 曲げモーメントの検討ための荷重配列 図8.39 覆工桁と自動車走行方向が平行な場合の部材の支間 8-65 8.12.4 覆工受け桁の設計 桁受け部材は、載荷される荷重に対し十分な強度を有していなければならない。 【解説】 桁受け部材の強度及び剛性の検討は、下図のように桁受け部材を支持している杭の中心を支 点とする単純ばりとし、その際に用いる死荷重、活荷重及び衝撃は本章8.4によるものとする。 図8.40 桁受け部材の支間 桁受け部材に作用する荷重は覆工桁の最大反力を用いる。桁受け部材と自動車走行方向が平 行な場合、載荷位置はそれぞれの断面力が最大となる1箇所だけ載荷する。桁受け部材の自重 による応力への影響は小さいので省略してもよいが、地下埋設物の吊り防護を行う場合は吊り 桁の反力も荷重として取り扱う必要がある。 桁受け部材の計算は単純ばりとして行うものとしたが、桁受け部材が明らかに連続ばりとし ての性能を保持している場合は、連続ばりとしての計算を行ってもよい。この場合、覆工桁か らの荷重は桁受け部材の応力が最大となるように載荷する必要がある。部材を連結するボルト は適切な径を選び、荷重がスムーズに伝達されるようバランスのとれた配置とする必要がある。 桁受け部材と自動車走行方向が平行な場合は、上記で求めた断面力などに図8.37 の支間L 2 に応じて表8.26 に示す係数を乗じる。 8-66 8.12.5 地下埋設物と覆工受け桁 地下埋設物を覆工桁から吊ることはたわみや振動が埋設物に伝わり、事故防止上好ましくな いことから専用桁を設けなければならない。 8.12.6 覆工受け桁の転倒防止 覆工桁が、以下のように配置されているときには、覆工受け桁の転倒防止を行う必要がある 1.勾配2.5%以上の路面に、勾配直角方向に設置されるとき。 2.自動車の走行方向と直角に設置されるとき。 【解説】 覆工を設置する路面の勾配が 2.5%以上で、覆工板の受け桁を垂直に設置する場合には、覆 工板と受け桁との間にパッキングを挿入するなどして、覆工板などの荷重が受け桁に正確に伝 わるようにしなければならない。ただし、受け桁にH型鋼など幅の広い型鋼を使用する場合、 荷重が正確に伝えられるときは、受け桁は路面勾配にあわせてよい場合がある。 8-67 第9章 耐震設計 9.1 耐震設計の適用 管きょ施設の耐震設計は、「横浜市下水道耐震設計指針(管きょ編)」に準拠することを 基本とする。 【解説】 下水道施設の耐震設計にあたっては、地域特性・地盤特性及び施設の特性や規模並びに類似 施設の被害事例を考慮し、個々の下水道施設及び下水道システム全体として必要な耐震性を有 するように配慮しなければならない。 環境創造局では管きょ施設の耐震対策について、平成18年7月に「横浜市下水道耐震設計指針 (管きょ編)」を作成し、運用しているところである。 このことから、管きょ施設の耐震設計は上記の耐震設計指針に準拠することを基本とする。 9-1 9.2 耐震対策の基本的な考え方 耐震設計に用いる地震動レベルは、次の二段階の地震動を考慮する。 (1) レベル1 (2) レベル2 【解説】 (1) レベル1地震動 レベル1地震動は、確率論的には施設の供用期間内に1~2度経験するものである。こ のため「重要な幹線等」、「その他の管路」とも、このレベルの地震動に対し耐振性を確 保することを原則とする。これによって幹線・枝線すべての管路は、レベル1地震動に対 して流下機能に支障を与えることなく、設計流下能力が確保されることとなる。ただし、 既設の「その他の管路」については、布設された延長が膨大であり、新たに耐震対策を施 すことは難しいことから、改築時等に対策を考慮する。 (2) レベル2地震動 レベル2地震動は、陸地近傍に発生する大規模なプレート境界地震や直下型地震による 地震動のように、下水道施設の供用期間内に発生する確率は低いが大きな強度をもつ地震 動であることから、「重要な幹線等」を対象に耐震性を施し、流下機能を確保する。 9-2 9.3 管路施設における耐震設計の基本的な考え方 下水道管路をその重要度に応じて、次の二区分により設計地震動に応じた耐震性能を考慮 する。 ・重要な幹線等 ・その他の管路 【解説】 管路施設は、重要な幹線から末端の枝線まで重要度、設置条件等が多様であり、また、面的 に膨大な延長を有することから、すべての管路施設の耐震性を同一レベルで確保することは費 用対効果の観点から現実的でない。このため、耐震設計は「重要な幹線等」と「その他の管路」 に区分し、設計地震動に応じてそれぞれに要求される耐震性能を考慮して耐震設計を行う。 「重要な幹線等」とは、以下に揚げるものであり、これ以外のものを「その他の管路」と位 置付ける。 ① 原則として流域幹線の管路 ② ポンプ場・処理場に直結する幹線管路 ③ 河川・軌道等を横断する管路で地震被害によって二次災害を誘発するおそれのある もの、及び復旧が極めて困難と予想される幹線管路等 ④ 被災時に重要な交通機能への障害を及ぼすおそれのある緊急輸送路等に埋設されて いる管路 ⑤ 相当広範囲の排水区を受け持つ吐き口に直結する幹線道路 ⑥ 防災拠点や避難所、又は地域防災対策上必要と定めた施設等からの排水を受ける管 路 ⑦ その他、下水を流下収集させる機能面から見てシステムとして重要な管路 なお、処理場・ポンプ場は下水道施設の根幹的施設であるから、全てを重要な施設として耐 震設計を行う。 9-3 第10章 管きょ更生工法 10.1 管きょ更生工法の適用 管きょ更生工法の設計は、「管きょ更生工法における設計・施工管理の手引き(案)」(日 本下水道協会)などに準拠することを基本とする。 【解説】 下水道整備の進展に伴い、下水道管きょの資産は莫大なものになっている。 これら管きょが機能を発揮し続けていくためには、劣化、クラックなどの状況を的確に 把握し、老朽化・劣化した管きょの改築(更新・長寿命化対策)を計画的・効率的に進め ていく必要がある。 管きょの改築は、老朽化・劣化が著しく、流下能力などの確保が困難な管きょを更新す る布設替工法と管きょの長寿命化と耐用年数の延伸に寄与する更生工法に分類される。 管きょの更生工法の設計については、平成20年9月に「管きょ更生工法における設計・施 工管理の手引き(案)」(日本下水道協会)、平成21年10月に「下水道施設計画・設計指 針と解説-2009年版-」(日本下水道協会)が制定されていることから、管きょ更生工法の 設計はこれらに準拠することを基本とする。 10-1 10.2 管きょ更生工法の分類 管きょ更生工法は、構造形式から自立管・二層構造管・複合管に分類され、さらに以下の 工法があり、耐荷能力、耐久性及び流下能力の確保などを考慮して選定する必要がある。 (1) 反転工法 (2) 形成工法 (3) 製管工法 (4) さや管工法 【解説】 管きょの更生とは既設管に破損、クラック、腐食などが発生し、耐荷能力、耐久性の低 下及び流下能力が保持できなくなった場合、既設管内面に管を構築して既設管の更生及び 流下能力の確保を行うものをいう。管きょ更生工法は、構造形式から自立管・二層構造管・ 複合管に大別され、さらに反転工法、形成工法、製管工法及びさや管工法がある。 構造形式 自 立 工法分類 管 反 転 工 法 形 成 工 法 更 生 工 法 二 層 構 造 管 反 転 工 法 形 成 工 法 複 合 管 製 管 工 法 さ や 管 工 法 図10-1 更生工法の分類 10-2 <構造形式> 構造形式を選定するに当たっては、既設管きょの状況により次の方法がある。 (1) 自立管 自立管は、更生材単独で自立できるだけの強度を発揮させ、新設管と同等以上の耐荷 能力及び耐久性を有するものである。施工法上の分類として、工場または現場で樹脂な どを配合し、既設管きょ内面に密着し硬化させる反転工法、形成工法がある。 図10.2 自立管の概念 (2) 二層構造管 二層構造管は、残存強度を有する既設管きょとその内側の樹脂などで二層構造を構築 するものであり、施工法上の分類として、工場または現場で樹脂などを配合し、既設管 きょ内面に密着し硬化させる反転工法、形成工法がある。 また、「下水道管渠の更生工法による改築に関する国庫補助の運用について」(平成 13年3月30日一部改正)の別表では、自立管、複合管が国庫補助の対象であり、二層構造 管は国土交通省協議であり、その後の改正の通達もなく、国庫補助の対象工法になって いないのが現状である。 なお、二層構造管は既設管きょの残存強度で外力(土荷重、活荷重)に抵抗させ、内 側に新たに構築する管きょには水圧のみを負担させ、同外力を負担させないため、管き ょの長寿命化に寄与しないことから、本市では採用しない。 図10.3 二層構造管の概念 10-3 (3) 複合管 複合管は、既設管きょと更生材が構造的に一体となって、新設管と同等以上の耐荷能 力及び耐久性を有するものである。これには、製管材を既設管きょ内部で製管し、既設 管きょとの間隙にモルタルなどの充填材を注入する製管工法がある。 700mm以下の既設管に採用する際は、既設管の残存強度測定に課題があり、現状では 800mm以上の既設管の残存強度測定が可能であるため、800mm以上の既設管に採用する傾 向がある。 図10.4 複合管の概念 10-4 <更生工法> 工法の分類として反転工法、形成工法、製管工法及びさや管工法に大きく分類され、各 工法の概要については次のとおりである。 (1) 反転工法 熱又は光などで硬化する樹脂(熱硬化樹脂)を含浸させた材料を既設のマンホールか ら既設管きょ内に反転加圧させながら挿入し、既設管きょ内で加圧状態のまま樹脂が硬 化することで管を構築するものである。反転挿入には、水圧又は空気圧などによるもの があり、硬化方法も温水、蒸気、温水と蒸気の併用、光などがある。 ただし、目地ズレ、たるみなどを更生させるのではなく、あくまでも既設管の形状を 維持する断面を更生することとなる。 図10.5 反転工法の概要 (2) 形成工法 熱硬化性樹脂を含浸させたライナーや熱可塑性樹脂ライナーを既設管きょ内に引込み、 水圧又は空気圧などで拡張・圧着させた後に硬化させることで管を構築するものである。 形成工法には、更生材を管内径まで加圧拡張したまま温水、蒸気、光などで既設管きょに 圧着硬化又は加圧拡張したまま冷却固化する工法がある。 ただし、目地ズレ、たるみなどを更生させるのではなく、あくまでも既設管の形状を 維持する断面を更生することとなる。 図10.6 形成工法の概要 10-5 (3) 製管工法 既設管きょ内に硬質塩化ビニル材などをかん合させながら製管し、既設管きょとの間 隙にモルタルなどを充填することで管を構築するものである。流下量が少量であれば下 水を流下させながらの施工が可能である。 多少の目地ズレなどは、更生管径が縮小されることにより解消できるが、不陸、蛇行 がある場合には、原則として既設管の形状どおりに更生される。 図10.7 製管工法の概要 (4) さや管工法 既設管きょより小さな管径で製作された管きょ(新管)を牽引挿入し、間隙に充填材 を注入することで管を構築するものである。更生管が工場製品であり、仕上り後の信頼 性が高い。断面形状が維持されており、物理的に管きょが挿入できる程度の破損であれ ば施工可能であるが、既設人孔より新管を挿入することが難しいケースが多い。 また、充填材を注入すると管きょの継手の変位により、管きょの計画こう配が変化す る可能性があるので、充填材注入については、変化させないよう十分注意する必要があ る。 図10.8 さや管工法 10-6 10.3 自立管の設計 自立管に作用する荷重は、その使用材料が塩化ビニル管や強化プラスチック複合管と類 似し、可とう性があることから、JSWAS K-1 及び JSWAS K-2 に準拠し、土と活荷重によ る鉛直土圧の総和とする。 (1) 土による鉛直土圧 (2) 活荷重による鉛直土圧 【解説】 使用する材料特性から自立管を可とう性管として扱い、対比させる新管としては、JSWAS K-1、JSWAS K-2 などが妥当である。 (1)について 土による鉛直土圧については、周辺地盤が乱される場合を想定し、土被り2.0mまでは 直土圧公式を、それ以上の土被りの場合は、2.0m直土圧公式とマーストン溝型公式(溝 型;溝幅は既設管内径)のうち大きい方を採用する。 ①直土圧公式 q=γ・H ここに、 q:土による鉛直土圧(kN/m 2 ) γ:土の単位体積重量(kN/m 3 ) H:土被り(m) (更生工法に適用する土被り範囲 または適用最大土被りとする) 図10.9 直土圧公式 10-7 ②マーストン溝型公式 1-e -2K・μ ・H/Bd γ・Bd q= -f ・ 2 K・μ ここに、 q:土による鉛直土圧(kN/m 2 ) γ:土の単位体積重量(kN/m 3 ) Bd:仮想掘削溝幅(m) μ:埋戻し土と側壁との摩擦係数=tanφ φ:埋戻し土の内部摩擦角(°) K:埋戻し土の主働土圧係数 μ 2 +1-μ K= μ 2 +1+μ H:土被り(m) (更生工法に適用する土被り範囲または 適用最大土被りとする) f:埋戻し土の粘着力(kN/m 2) 図10.10 マーストン溝型公式 (2)について 活荷重による鉛直土圧の算定は、JSWAS K-1などの日本下水道協会規格に準じ、下式によ り計算する。 設計荷重(T荷重、後輪荷重)は、「道路橋示方書・同解説」(平成8年12月-(社)日本 道路協会)に基づくものとする。 2P(1+i)・β p= C(a+2H・tanθ) ここに、 p:活荷重による鉛直土圧(kN/m 2) H:土被り(m) P:後輪荷重(T-25の場合は100kN、T-20の場合は80kN) (T-14の場合は56kN) a:車輪接地長さ(m) 10-8 C:車体占有幅(m) θ:分布角(度) i:衝撃係数(表10-1参照) 表10.1 衝撃係数 H(m) H≦1.5 1.5<H<6.5 6.5≦H i 0.5 0.65-0.1H 0 β:低減係数 P P a θ H P C 図10.11 輪荷重の分布 10.4 許容たわみ率 反転工法及び形成工法による250~600mmの自立管の許容たわみ率は、5%とする。 また、700~800mmの自立管は、JSWAS K-2の基準たわみ外圧とする。 【解説】 反転工法及び形成工法で使用する更生材の性質は、250~600mmは塩化ビニル管、700~ 800mmは強化プラスチック複合管と類似し、可とう性があることから、JSWAS K-1 及び JSWAS K-2 に準拠する。 10-9 10.5 有効支承角 自立管の設計に用いる有効支承角は、120°(施工支承角360°)とする。 【解説】 自立管の有効支承角は、既設管きょの拘束力を期待した有効支承角とすることが望まし い。 既設管きょでは、基礎および管が剛体として残存機能を有している。実際の設計に際し て、既設管きょの拘束力を実験などにより確認できる場合などは、個々の条件に応じて設 計することが望ましい。 JSWAS K-1 及び JSWAS K-2 では、既設管きょの基礎施工状態に関して管周(360°)が 地盤に囲まれ、支持されている場合の有効支承角は120°としている。 また、有効支承角が更生管厚に与える影響が少ないこと、設計の標準化および簡素化を 図ることが望ましいことから、設計上の有効支承角は120°とする。 θ=360° 2α=120° 図10.12 有効支承角120°基礎施工状態 10-10 10.6 自立管更生管厚の算定式 更生管厚の算定では、「下水道用硬質塩化ビニル管(JSWAS K-1)」及び「下水道用強化 プラスチック複合管(JSWAS K-2)」に示す強度計算式を使用し、曲げ強度及びたわみ率の 計算に準じて算出した更生管厚の大きい方の値を採用する。 なお、各メーカーで規格化された材料厚との使用区分について十分留意する。 【解説】 自立管の更生材に使用している塩化ビニル樹脂及びポリエステル樹脂などは、新管であ る塩化ビニル管や強化プラスチック複合管と材質などが類似し、可とう性があることから、 JSWAS K-1 及び JSWAS K-2 に準じて更生管厚を算出する。 更生管厚の算定式は、次式に示すとおりである。 なお、計算による更生管厚の算定では、メーカーで定める施工限界厚を上回らないこと を確認する。 (1) 曲げ強度の計算から求めた式 D t= 2σ 1+ 3(k 1 ・q+k 2 ・p) ここに、 k 1 :土による曲げモーメント係数 k 2 :活荷重による曲げモーメント係数 q:土による鉛直土圧(kN/m 2 ) p:活荷重による鉛直土圧(kN/m 2) σ:設計曲げ強度(kN/m 2 ) D:更生管外径(m) 10-11 (2) たわみ率の計算から求めた式 D t= E・V 1+ 3 75(K 1 ・q+K 2 ・p) ここに、 K 1 :土によるたわみ係数 K 2 :活荷重によるたわみ係数 q:土による鉛直土圧(kN/m 2 ) p:活荷重による鉛直土圧(kN/m 2) E:設計曲げ弾性係数(kN/m 2 ) V:たわみ率(%) D:更生管外径(m) なお、更生管厚分の断面が縮小するための流下能力に配慮し、かつ下流側の更生管厚に より生じる逆段差について留意する必要がある。 10.7 自立管の要求性能 自立管の更生材が長期間の耐荷能力及び耐久性を保持しているか否かについては、更生材 の要求性能である耐荷能力、耐ストレインコロージョン性 ※ 1 、耐薬品性、耐摩耗性、耐劣化 性、水密性及び水理性能に関して、新管と同等以上の性能を有していることを確認する。 【解説】 自立管における更生材の要求性能は、更生材に塩化ビニル樹脂やポリエステル樹脂など を使用していることから、JSWAS K-1、JSWAS K-2 及び日本工業規格などに準じた耐荷能力、 耐ストレインコロージョン性、耐薬品性、耐摩耗性、耐劣化性、水密性及び水理性能とす る。これらの要求性能は、新管と同等以上であることとし、その証明が公的機関でなされ ていることを確認する。 10-12 ※1:耐ストレインコロージョン性について 応力ひずみと酸性条件(水溶液など)の環境が組み合わさった時に発生し、酸性条 件下で耐酸性の低いガラス繊維が応力を受け続けると破断する現象である。ガラス繊 維有りの工法のみが対象で、JIS K 7034 による試験結果に基づき、JSWAS K-2 に基づ いて求められる値を下回らないこととする。 その他の要求性能に対する試験は「管きょ更生工法における設計・施工管理の手引 き(案)[日本下水道協会]」のとおりとする。 10.8 耐荷能力 自立管が土圧などの外力に対して自らで抵抗できる耐荷能力については、構造計算なら びに外圧強度により確認する。 なお、更生後の品質管理試験の結果と比較する曲げ強度、曲げ弾性係数、引張強度、引 張弾性係数、圧縮強度及び圧縮弾性係数の短期保証値についても設計時に確認する。 【解説】 更生材の耐荷能力の目安となる曲げ強度及び曲げ弾性係数を用いた構造計算では、 更生材をガラス繊維により補強している場合と補強していない場合に区分し、JIS(日 本工業規格)の強度試験結果に基づくこととする。 更生管きょの外圧強さは、既設管きょ口径別に定めた試験方法で得られた数値とす る。 外圧強さ φ600mm以下 JSWAS K-1 規格の扁平試験 φ700mm以上 JSWAS K-2 規格の外圧試験 なお、設計時に確認する短期保証値の算出方法は、JIS K 7171試験による。保証値 は算出される短期試験値を安全率(現場硬化による品質のバラツキなどを考慮した値) で除いた値とする。 10-13 11-1 11-2 11-3 11-4 11-5 11-6 11-7 11-8 11-9 11-10 11-11 11-12 11-13 11-14 11-15