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医療現場や生活の場で安全かつ簡単に活用できる
医療現場や生活の場で安全かつ簡単に活用できる、 歩行能力検査システムの確立を目指す 「高齢者転倒事故防止のための移動能力評価システムの社会実装」は、立命館大学スポーツ健康科学部 准教授の塩澤 成 弘先生を責任者とする実装活動です。 「平成 22 年国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省)によれば、介護が必要となった原因の5位に骨折・転倒(10.2%) が挙げられています。転倒して大腿骨などを骨折すると、寝たきりや認知症につながることもあります。超高齢社会が到 来した今、お年寄りの転倒を予防する取り組みは、社会にとって大変重要かつ緊急の課題です。 お年寄りの身体能力は個人差が大きいため、転倒しやすいかどうかを知るためには、一人一人の歩行能力を客観的に測 定し、その人の能力にあった支援を行うことが必要です。 そこで塩澤先生は「滋賀県提案公募型産学官新技術開発委託事業」で開発した携帯型の運動モニタ装置を用い、病院の リハビリ室や体操教室など狭い空間で使うことのできる、お年寄りのための歩行能力検査方法の実装活動を行っています。 ■安全・安心なまちづくりの一環としての お年寄りのための転倒防止体操会 平成 24 年 3 月 1 日、朝9時 30 分。京都府亀岡市篠町の自治 会館に、近所のお年寄りが集まり始めました。毎月一回開催さ れている「篠町なんたん元気づくり体操会」に参加するためです。 亀岡市は WHO 地域の安全向上のための協働センターが全世 界で推進している「セーフコミュニティ」に、平成 20 年、日 本で初めて認証されました。行政はもちろん、地域住民、NPO、 民間団体など多くの主体の協働により、人々が健やかで元気に 暮らすことのできる安全・安心なまちづくりを進めています。 「亀岡市民は 上:安静後、椅子から立ち上がって歩く 右:高さ 25cm のスポンジをまたぎながら歩く “ セーフコミュニ 「転倒しやすいのは姿勢や歩く速度が変化する時です。一 ティ ” の日本第一号であることを 年以内に転んだ経験のある人は、転倒への恐れから歩きだし 誇りにしています。自主的に危険 たり急に止まったりという動作の変化にすぐに対応できませ な場所をチェックしたり、高齢者 ん。測定結果が転倒の経験のある人の平均値と近ければ、転 の見守りなども積極的に行ってい 倒の可能性が高いということになるので、転倒予防体操を積 ます」と語るのは篠町自治会長の 極的にやっていただいたり、理学療法士などに相談すること 牧野吉明さん。この体操会もセー をお勧めして、転倒予防につなげたいと考えています。」 フコミュニティの取り組みの一環として行われています。 前回の測定に参加された方には、茶話会の途中で結果が簡 この日集まった 単な説明とともにフィードバックされました。 参加者は 65 歳以 ■将来は自宅や公民館などで安全・簡単に使用可能に 上 の 方、44 名。 全員で転倒予防 従来の歩行評価システムは、 を目的として作 ①体育館のような広いスペース られた体操を 20 を必要とし、②全力で歩かなけ 分ほどかけて ればならず、③機器が高額であ 行ったあと、塩澤 るなど、医療現場になじみにく 先生の開発した装置を使っての歩行能力測定が始まりました。 いものです。そのため現在は理学 手のひらに乗る程度の小さくて軽い装置を腰付近に装着 療法士の主観で能力評価が行われていることが多いそうで し、落とさないように上から腹巻をかぶせます。 すが、やはり客観的な評価の必要性は高く、塩澤先生の開 参加者は椅子で安静にした後、立ち上がってすぐ 携帯型の運動モニタ装置 3 m歩きま 発した狭いスペースで、身体能力の低下したお年寄りに対 す。その後5秒間停止し、また 5m 歩きます。5 秒間の停止を しても安全に測定することのでき、大量生産すれば安価に はさんで、今度は早足で 5m。最後に 25cm の高さのスポンジ 頒布することが可能な歩行能力評価システムの実用化に期 でできた障害物を二回またぎながら 5m 歩いて終了です。 待が高まります。 JST・社会技術研究開発センター(RISTEX)の WEB サイト http://www.ristex.jp 研究開発成果実装支援プログラムの WEB サイト http://www.ristex.jp/implementation/index.html