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KLCニュース NO.5

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KLCニュース NO.5
2005 年初夏号
/ 通算第 5 号
contents
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最新研究紹介・・・・・・・・・・産業理工学部教授 藤井政幸
KLC の活動報告・・・・・・・ ■特許とライセンス収入
KLC からのお知らせ・・・・・・ ■インターネット会議システムの導入
スタッフの異動・・・・・・・・・2 名
大学発ベンチャー企業の紹介・・・ジーンコントロール株式会社
■工学部「産学連携活動」
■新しい近畿大学発ベンチャー企業
の誕生
最新 研究 紹介
■ 病気を遺伝子から治療する薬の開発
産業理工学部生物環境化学科教授
藤井政幸
このたび、独立行政法人科学技術振興機構(JST)のイノベーションプラザ研究課題に採択さ
れました。3 年間、9,000 万円の研究費で「ゲノム創薬のための革新的遺伝子ノックダウン法の
開発」を目指します。
2003 年にヒトゲノムプロジェクトが完了し、ヒト遺
伝子の塩基配列が明らかになりました。今後、遺伝子レ
ベルで病気の診断、治療が行われるようになり、いわゆ
るゲノム医療が一般化する時代が来ると言われていま
す。そのためには約 22,000 あると言われるヒト遺伝子
のそれぞれがどのような働きをしているのか、その機能
を解析する必要があります。その遺伝子機能解析に威力
を発揮するのが遺伝子ノックダウン法です。22,000 の
ヒト遺伝子のうち標的に定めたただ一つの遺伝子の発
現をノックダウン(抑制)することができれば、その遺伝
子が発現していた時と比較することでその機能が解析
できるわけです。そうすることで、病気の原因遺伝子が
解明できたり、その治療法が開発できたりしていきます。
もちろん、ヒトだけでなく、動物や植物の遺伝子機能を
解析すれば品種改良やモデル動物が作成できるように
なります。
従来の遺伝子ノックダウン技術は遺伝子をノックダ
ウンする物質(化学合成されるオリゴ DNA、RNAとい
う短いDNA や RNA)を細胞に導入するために遺伝子導
入剤と呼ばれる陽イオン性の界面活性剤を使用してい
ますが、その遺伝子導入剤は毒性が強く、マウスやヒト
に応用するには限界がありました。私たちのグループで
はオリゴ DNA,RNA に機能性ペプチドを化学結合(コ
ンジュゲート)させることで遺伝子導入剤を用いること
1
なく細胞内に導入することに成
功し、加えて細胞内に導入された
オリゴ DNA,RNA を細胞内の特
定の箇所に選択的にデリバリー
(能動輸送)することにも成功しま
した次頁(図1)。 天然の生体分子だけから構成される
コンジュゲート DNA/RNA を用いるので毒性はなく生
体内で安定に存在することができます。その技術を用い
て標的遺伝子のノックダウン効率を飛躍的に向上させ
ることが出来ました。
我々の開発した合成方法(固相フラグメント縮合法)
によって、従来法では困難であったオリゴ DNA、RNA
と任意のアミノ酸組成を持つペプチドや糖鎖とのコン
ジュゲート体が効率よく純粋に得ることができるよう
になりました。そして、この合成技術をベースに様々な
高機能性核酸を作り遺伝子機能解析、遺伝子変異検出の
ノックダウンマウウスの作成、遺伝子治療薬など多岐の
わたる技術開発を進めています次頁(図 2)。 今回プロ
ジェクトではゲノム解読の結果明らかとなったヒトゲ
ノムの塩基配列を元に病気の原因となっている遺伝子
などを標的に定め、その遺伝子の発現を選択的に抑制
(ノックダウン)することでポストゲノム研究の中核を
なす遺伝子機能解析法の確立を目指します。特にヒト白
血病細胞、大腸ガン細胞などに発現するガン特有の遺伝
KLC / NEWS
従来の方法
私たちの新技術
細胞内には導入されない
細胞質に導入される
図1
細胞核への局在化も可能
オリゴ DNA/RNA の細胞内局在化制御
子をノックダウンする技術を開発するとともに従来技
術では毒性のために困難とされている生体系への応用
を目指します。この遺伝子ノックダウン法によって、ヒ
トゲノム中に含まれる約 22,000 個の遺伝子が解明でき
ればゲノム情報に基づく新薬の開発(ゲノム創業)が実
現するほか、ノックダウンマウ
スの作成や遺伝子レベルで病
気を治療する医薬(遺伝子医
薬)の開発に突破口を開くこと
が期待されます。
我々の開発した合成技術に
より自然界では決して出会う
ことのない生体分子同士を化
学の力でつなぎ合わせること
で、自然の能力を超えた新しい
分子が構築できます。今回の研
究課題の直接の目標は遺伝子
機能解析のための遺伝子ノッ
クダウン技術の開発にありま
すが、その先にはガンやエイズ、先天性の遺伝病など現
在では治療法のない病気に対しても遺伝子レベルで根
本的に治療できる遺伝子医薬の開発を目指したいと思
っています。風邪薬を飲むようにガンやエイズが治せる
治療薬が開発できることを夢見ています。ゲノム研究、
ポストゲノム研究で米英に圧倒されっぱなしの日本か
ら世界に誇れる技術を発信し、近畿大学、とりわけ産業
理工学部の学生にも夢と希望を与えたいと張り切って
います。
KLC の活動報告
■特許とライセンス収入
下の表に示したように、平成16年度の特許等出願件数は、前年度比が大幅に増加しました。
( )商標件数
年度
合計
H14
文系
理工
薬
農
医
工
産業理工
生物理工
研究所
法人
37(2)
1
2
1
2
2
15
6
H15
36(2)
5
5
5
1
14
1
1
4(2)
H16
55(1)
9
2
11
1
10
5
8
5(1)
KLC
8(2)
4
本年度は、3 桁の出願を目指します。また、前号で紹介した 100 万コマ/ビデオカメラ(理工学部江藤剛治教授)の
特許によるライセンス収入があり、その他、産業理工学部 西田哲明助教授の開発した導電性ガラスは東海産業
(株)により商品化され、ライセンス収入が期待されています。
2
KLC / NEWS
■工学部(東広島キャンパス)
平成16年度工学部の産学連携活動を表に示します。工業技術研究所の所員18名が5グループ(情報発信,研
究企画,戦略研究,知的所有権,産学連携)に分れ、窓口業務および各案件の企画・フォロー業務を行っています。
平成 17 年度は、これを継続するとともに「技術相談」に力を入れ、「研究公開フォーラム」を常設展示に重点を移
して新設のメディアセンターで行います。
活動種別
平成16年度活動実績
協力会
・近畿大学工学部産学官連携推進協力会
活動
「総会・技術発表会」
(講演:会員企業 2 件、大学 1 件)
「特別講演会」(マツダ㈱技術研究所 山本所長の講演他)開催
地域連携 ・広島市 東広島市 呉地域などの各種専門委員会、
活動
調査委員会、企画運営協議会等への出席
技術相談 ・22 件
情報発信 ・近畿大学工学部「研究公開フォーラム」2004(於:福山)
産学官連携推進協力会
活動
(工学部 89 パネル、協力会会員企業ほか 13 パネル)
H16 年度特別講演会
・各種フェア出展
ちゅうごく先端的「医療機器等産業クラスター創出フェア」(6 パネル)
東広島産学官「マッチングフェア」
(5 パネル)
呉地域産学官「連携フォーラム」
(12 パネル)
研究活動 ・文科省:「産学連携研究推進事業研究」1 件
「科学研究費補助金」13 件
・企業等:
「受託研究」10 件、
「寄附研究」16 件、
「共同研究」2 件
工学部研究公開フォーラム 2004
知財活動 ・中国地域産学官ビジネスショー「特許流通フェア」(4 特許)
於:福山
・「技術移転」1 件(氷片ブラスト装置)
KLC からのお知らせ
■インターネットビデオ会議システムの導入
大学院東大阪モノづくり専攻では、各企業に所属する
学生と、会議や遠距離授業などに使用するため、インタ
ーネットを利用したビデオ会議システムとして、NTT
Meeting Plaza を導入しています。ビデオ会議のみなら
ず、ファイル共有やアプリケーション共有などが可能で
あり、同時に 10 人までが接続できます。産学連携の企
業と大学のパイプとして大いに活用していきます。
IT ビデオ会議のモニター画面
伊藤哲夫原子力研究所教授 資本金 1200 万円)で、(株)
千代田テクノルとのジョイントベンチャー会社です。事
業内容は、放射能測定及び分析に関する業務、原子力の
啓蒙活動に関する業務などです。大学が直接支援する 4
番目のべンチャー企業です。
二つ目は、(有)MSP (4 月 22 日設立 〒565-0802
吹田市青葉丘 8 番 P-505 代表者:三宅庄司 KLC 教授
資本金:300 万円)で、事業内容は電磁エネルギー照射
装置等の製造・販売ならびに関連技術コンサルティング
などです。文部科学省の「大学発ベンチャー創出支援制
度」(平成 14-16 年度) 「高密度ミリ波照射型電子材料加
工装置の開発」の成果として誕生しました。
スタッフの異動
(平成 17 年 4 月 1 日付 )
■新しい近畿大学発ベンチャー企業の誕生
河島信樹(リエゾンセンター副センター長)
理工学部
二つの大学発ベンチャー企業が新たに誕生しまし
との兼任から KLC 専任になりました。
た:一つは、本学原子力研究所のこれまでの実績をもと
根津俊一(コーディネーター)昨年に続き、嘱託職員と
にした、(株)ア・アトムテクノル近大(4 月 25 日設立〒
してKLCに勤務しています。
577-8502 東大阪市小若江 3-4-1 近畿大学内 代表者:
KLC 事務局:近畿大学総務部
TEL:06-6721-2332、FAX:06-6727-4435
E-mail: [email protected] [email protected] URL:http://www.kindai.ac.jp/
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KLC / NEWS
大学発ベンチャー企業の紹介
近畿大学先端技術研究所・生物工学技術センター施設全景
<設立の経緯と背景 >
近畿大学先端技術総合研究所および生物理工
学部が誇る発生工学技術を基盤に日本農産工業
(株)との産学協同によるベンチャー企業
<近年の生命科学の研究の流れ >
ヒトゲノムプロジェクトに代表される
「遺伝子解読の時代」=>「遺伝子機能の解析」
ポストゲノム時代へと急激にシフト
ヒトの遺伝子疾患の原因遺伝子や生活習慣病に
関与する遺伝子について解明し、その対処法、
治療法を確立
発生工学・生殖工学の先端技術
<設 立 の 目 的 >
遺伝子改変動物に関する研究並びに開発を行い
その成果を社会に提供して貢献します。
<事業内容>
○ 顧客からの依頼を受けその内容に基づいて
研究開発を実施します。
○ 開発成果として遺伝子改変マウスを作成し
皆様に提供します。
○ 提供されたマウスを研究や実験に利用でき
ます。
キメラマウス
ジーンコントロール株式会社
<ジーンコントロール社の目指すもの >
設
日本生命科学が世界をリードすることを願い
お手伝いします。
マウス以外での新たな実験動物モデルを視野
に入れた研究開発事業も展開していきます。
4
立
所在地
:平成 14 年
資本金:3,000 万円
:和歌山県海南市南赤坂 14-1(近畿大学先端技術
総合研究所内)
代表取締役 :入谷
電話:(073)483-3611
明
(近畿大学先端技術総合研究所長・教授・近畿大学理事)
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