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SAMPLE 禁無断転載

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SAMPLE 禁無断転載
第1講
計測問題(その1)
●今日の学習
今日は面積や長さを求める問題に取り組みます。図形に関する問題の中で、計算を要
するものは一見難しそうですが、中学や高校で学んだ知識を基に正答にたどり着くこと
ができるので、逆に取り組みやすいはずです。しかも、合同、三平方の定理など、かな
り限られた単元から集中して出題されているため、ポイントを絞って復習することが可
能です。手元に高校時代の教科書、参考書があれば、さっと眺めてみるとよいでしょう。
次の図のように、辺 AB が 20cm の直角三角形 ABC に半径 4cm の円 O
1
が内接しているとき、直角三角形 ABC の面積はどれか。
A
20cm
4cm
O
1 95 cm2
2 96 cm2
C
3 97 cm2
4 98 cm2
5 99 cm2
M
無 PL
断 E
転
載
B
長さや面積を求める問題では、三角形の内接円に関する出題がよく見られ
ます。三角形の中に円があったら、
次の解説にある 2 つの性質を思い出しましょ
96
禁
SA
う。
step1 解法の検討
長さが与えられているのは辺 AB と円 O の半径だけである。そこで AB(または
円 O との接点で分割した線分(下図の AH、BH)
)を底辺とし、下図の OH を高さ
とする三角形の面積から、三角形 ABC の面積を求めることを検討する。ここで、
三角形の内接円の性質を利用したい。三角形の内接円には、
・ 内接円の中心(内心)から接点に下ろした線(下図の OH、OI、OJ)と各辺は垂直
に交わり、かつ、どれも長さが等しい。
・ 内心から三角形の各頂点に引いた線(下図の OA、OB、OC)はそれぞれの内角を
二等分する。
という 2 つの性質がある。
step 2 △ ABC を分割する
まず、
三角形 ABC を内接円の性質が利用できる形に分割する。内心 O から頂点 A、
頂点 B、頂点 C、および各辺の接点 H、I、J に線をおろす。
A
H
第
図形問題
2
(注 1)
解説を簡潔にするた
め、
以下の説明では「三
角形」を△、
「四角形」
を□と表す。
3
講
step 3 合同な三角形を見つける
第 講
三角形 ABC は以下のように表すことができる。
△ ABC =△ AOH +△ AOJ +△ BOH +△ BOI +□ CJOI 注 1 ................ ①
図形問題
1
C
I
講
第
B
J
図形問題
O
設問条件より、△ OAB(つまり、△ AOH +△ BOH)の面積を計算できる。また、
M
無 PL
断 E
転
載
□ CJOI は 1 辺の長さが 4cm の正方形であり、面積を求められる。図をみると、
△ AOJ、△ BOI はそれぞれ△ AOH、△ BOH と合同であるように見える。そこで、
∠ OHB =∠ OIB = 90°
OH = OI
OB は共通
禁
△ BOH と△ BOI において
SA
内接円の性質を利用して、この 2 組の合同を証明しよう。注 2
(注 2)
実際に試験場で問題に
取り組む際には、以下
の過程は不要である。
試 験 本 番 の 場 合、
「合
同」であると直感でき
たら、すぐに最後の計
算に進むこと。ここは
解法の背景となる考え
方を紹介している。
97
よって、直角三角形において、斜辺と他の1辺が等しい注 1 ので
△ BOH ≡△ BOI ......................................................................................... ②
同様に△ AOH と△ AOJ において
∠ OHA =∠ OJA = 90°
(注 1)
直角三角形の合同条
件:
・斜辺と 1 つの鋭角が
合同
・斜辺と他の 1 辺が合
同
OH = OJ
OA は共通
よって△ AOH ≡△ AOJ .....................................................................................③
②、③より、①の式は次のように言い換えることができる。
△ ABC =△ AOH +△ AOJ +△ BOH +△ BOI +□ CJOI
= 2 △ AOH + 2 △ BOH +□ CJOI
= 2(△ AOH +△ BOH)
+□ CJOI
= 2 △ AOB +□ CJOI .................................................................. ④
④より、△ ABC の面積は△ AOB の面積の 2 倍に□ CJOI の面積を加えたもの
と等しいことがわかった。
△ ABC = 2 △ AOB +□ CJOI = 2 ×
(20 × 4 ×
= 80 + 16 = 96
正解
1
2
)+ 4 × 4
2 (96cm2)
下図のような、辺 AB = AC、BC = a の二等辺三角形 ABC があり、点 D
2
を辺 AB 上に AD = CD = BC となるようにおくことができるとき、辺 AC
1 +√5
2
a
2
2 +√2
2
a
3
1 +√6
2
a
4
1 +√7
a
2
5
1 +√3
2
禁
98
1
SA
M
無 PL
断 E
転
載
の長さとして、正しいのはどれか。
a
設問条件から、三角形 ABC は二等辺三角形であり、また、三角形 CBD も
二等辺三角形であることがわかります。見た感じでは 2 つの三角形は相似形
のようですね。まず、相似であるかどうかはっきりさせたところで、相似で
あればどのような性質注 1 が利用できるのか考えてみましょう。
(注 1)
相似形の性質:[ 必修!
試験のツボ ] 参照
step 1 2 つの三角形の相似の確認
△ ABC と△ CBD において、
AB = AC、かつ、CB = CD
∠ CBD は共通。ゆえに底角が等しい。
したがって、△ ABC は△ CBD と相似である。注 2
(注 2)
三角形の相似条件:
・対応する 3 辺の比が
等しい
・対応する 2 辺の比と
間の角の大きさが等
しい
・対応する 2 角の大き
さが等しい
ここで対応する辺の比より AC の長さを求める。
step 2 相似形の辺の比を利用する
△ ABC と△ CBD において
AC:BC = CB:DB
AC:BC = BC:(AB − AD)
BC = AD = a、AB = AC を代入する。
2
=
a ± 5a2
2
=
1 ±√5
2
a
2
2
3
(注 4)
二次方程式の解の公
式:ax2+bx+c=0 のとき
− b ± b2 − 4ac
x=
2a
a)
M
無 PL
断 E
転
載
1 +√5
禁
1(
1
SA
正解
(注 3)
a:b=c:d のとき、ad=bc
である。これを「内項
の積は外項の積に等し
い」という。
簡単に説明しよう。比
は分数でも表すことが
で き る が、a:b=c:d を
a
c
分数で表すと
=
b
d
となる。分母を互いに
移動する(つまり、両
辺に b と d をかける)
と、ad=bc となる。
講
AC の長さなので、正の数が答えとなる。
第
AC =
a ± a2 + 4a2
図形問題
AC に関する 2 次方程式が得られた。ここで解の公式注 4 を利用する。
第 講
2
図形問題
AC − a ・ AC − a = 0
2
講
AC(AC − a)= a2
第
内項と外項の積は等しいので、以下の式が得られる。注 3
図形問題
AC:a = a:(AC − a)
99
3
次の図のような、一辺の長さが 2a の正三角形とその内接する円で構成さ
れた斜線部の面積はどれか。ただし、円周率はπとする。
1(√3 −
4(√3 −
1
3
4
3
π)
a2
2(√3 −
π)
a2
5(√3 −
2
3
5
3
π)
a2
a2
3(√3 −π)
π)
a2
これも三角形の内接円の問題です。この問題では外側の三角形が正三角形
となっていますね。正三角形の特徴、三角形の内接円の性質を思い出し、そ
れらを利用できないか考えてみましょう。
step 1 解法の検討
内接円の中心(内心)と各辺の接点を結ぶ線分は内接円の半径であるとともに、
正三角形を 3 分割したそれぞれの三角形の高さであることに注目しよう。
step 2 正三角形の面積を求める
2a ×
√3
2
=√3a
したがって、正三角形の面積は
1
2
=√3a2 ................................................................................... ①
100
禁
SA
2a ×√3a ×
(注 1)
正三角形の高さ:正三
角形は垂直二等分線
で、2 つの鋭角が 30°
と
60°の直角三角形に二
分される。このような
直角三角形は、辺の比
が 1:2: √3 で あ る。
本問にあてはめると、
元の正三角形の 1 辺の
長さと高さの比は 2:
√3 であることがわか
る。
M
無 PL
断 E
転
載
正三角形の高さ注 1 は
step 3 内接円の面積を求める
下図のように正三角形の各頂点と内心(O)を結び、また、内接円と各辺の接点
と内心 O を結ぶ。注 1
(注 1)
正三角形の内接円の性
質について理解できて
いれば、③の式まで進
んでもよい。
A
L
N
O
B
C
M
ここでは、△ AOL の辺の長さより、内接円の半径(= LO)を明らかにし、内接
円の面積を求めることとする。まず、△ AOL において
∠ ALO は直角
∠ OAL =∠ CAB ×
1
2
= 60°×
1
2
= 30°
したがって、△ AOL は 30°、60°の内角を持つ直角三角形であることがわかる。
ゆえに、3 辺の比は
第
講
1
である。
第
△ AOL と△ BOL は LO が共通であることから、合同である。つまり、AL と
講
2
BL は等しくなり、L は AB を 2 等分していることがわかる。
第
1
√3
=
a
√3
3
講
したがって、LO = AL ×
............................................................. ③
√3
)2 π=
1
3
a2 π ................................................................................... ④
斜線部の面積は①−④で求められる。
√3a2 −
正解
1
3
a2π=(√3 −
1
1 (√3 − π)a2
3
1
3
π)
a2
禁
a
SA
(
M
無 PL
断 E
転
載
ゆえに、内接円の面積は
101
図形問題
AL = a
図形問題
同様に、△ BOL も 30°、60°の内角を持つ直角三角形である。
図形問題
LO:OA:AL = 1:2:√3 ......................................................................... ②
図のように、直角三角形において直角をはさむ二辺を a 及び b、斜辺を c
4
とし、a、b、c を一辺とする正三角形を考える。
それぞれの正三角形に内接する円の面積を Sa、Sb、Sc とするとき、Sa、
Sb と Sc の関係として常に成り立つのはどれか。
Sc
Sa
a
c
b
Sb
Sa + Sb = Sc
1
4 Sa + Sb = Sc
2
2
2
2 Sa + Sb = Sc
3 Sa + Sb > Sc
5 Sa + Sb > Sc
2
2
2
設問条件では直角三角形の各辺の長さ(a、b、c)が与えられていますが、具
体的な数字ではありません。ですから、最後には直角三角形の辺の関係(c2 =
a2 + b2)に持っていくという見通しを持って、正三角形の辺の長さと内接円
step 1 正三角形の面積を求める
M
無 PL
断 E
転
載
の半径の関係を考えてみましょう。
1
2
a ×√3 =
√3
2
a
と表すことができる。
102
禁
辺 a を1辺とする正三角形
(△ A)
の高さは、
SA
正三角形の面積より、辺の長さと内接円の半径の関係を求める。
したがって、△ A の面積は
a×
√3
a×
2
1
2
√3
=
4
a2
step 2 内接円の面積を求める
ここで△ A の内接円(Oa)の半径を Ra とすると、△ A の面積は、各頂点から内
心に引いた線分で3等分される三角形の面積の和と表すことができる。注 1
√3
△A=
a2 = 3 × a × Ra ×
4
(注 1)
3 step3 を参照。
1
2
ここから内接円 Oa の半径 Ra を a を使って表すと、
Ra =
√3
a2 ÷
4
3
2
a=
√3
6
a
したがって、内接円 Oa の面積
(Sa)
は
Sa =(
√3
6
a)2π=
3
6
2
a2π=
1
12
πa2............................................................ ①
他の 2 辺についても同様に、以下のように表すことができる。
Sb =
12
2
の関係にある。
2
以上より、
Sa + Sb = Sc
の関係が成り立つことがわかる。
3
講
2 (Sa + Sb = Sc)
別解 面積比=相似比の 2 乗を利用する
M
無 PL
断 E
転
載
正解
第
a + b = c .................................................................................................. ④
2
図形問題
1
さて、a、b、c は直角三角形の辺であることから、
2
第 講
③
図形問題
πc2 ..........................................................................................................................................................................
第
12
②
講
1
πb2 .........................................................................................................................................................................
図形問題
Sc =
1
上記の解法では直角三角形に接する正三角形の面積を求め、そこから内接円の
半径→内接円の面積という順で計算した。
こうしたオーソドックスな手順とは別に、直角三角形に外接する正三角形とそ
の内接円、それぞれの相似比に注目すると計算を省いて正解に至ることができる。
禁
SA
外接する正三角形の相似比は辺の長さに比例するので a:b:c であり、内接円の
103
比も正三角形の相似比と同じ、つまり、a:b:c であることは明らかである。
ところで、相似な図形の面積比は相似比の 2 乗に比例する。注 1
したがって、内接円の面積 Sa、Sb、Sc は Sa:Sb:Sc = a2:b2:c2 と表すこと
ができる。
(注 1)
たとえば円の場合、
(面
積)=(半径)2 ×π
である。半径は相似比
に比例するので、面積
は相似比の 2 乗に比例
することになる。
ここで、a2 + b2 = c2 であることから、Sa + Sb = Sc の関係が成り立つ、つまり、
答えが 2 であることがわかる。
図のように、一辺の長さが 1 の正方形 A に内接し、かつ、30°傾いた正
5
方形を正方形 B とする。同様に 、 正方形 B に内接し 30°傾いた正方形を正
方形 C とすると、正方形 C の一辺の長さ c として正しいのはどれか。
1
2
3
2
3
4
3 √3 − 1
4
1
√2
5 4 − 2 √3
正方形 A から正方形 B を切り取った図形は、いつもおなじみの鋭角が 30°
ここを利用して相似比を考えてみましょう。
step 1 正方形 A と正方形 B の相似比を求める
M
無 PL
断 E
転
載
と 60°の直角三角形ですね。この直角三角形では辺の比が 1:2:√3 です。
104
禁
B1A2B2 と合同である 4 つの図形である。
SA
次の図において、正方形 A から正方形 B を切り取った部分は、直角三角形
ここで、△ B1A2B2 の各辺は
A2B2:B1B2:B1A2 = 1:2:√3 .................................................................. ①
正方形 A の辺 A1A2 は次のように表すことができる。
A1A2 = A1B1 + B1A2
= A2B2 + B1A2 =
(1 +√3)
A2B2 .......................................................... ②
①より、正方形 B の辺
(B1B2)
の長さは、次のように表せる。
B1B2 = 2 A2B2
第
図形問題
1
であることがわかった。
2
ここで、正方形 C は正方形 B に対して同じ手続きを経てできたものであるから、
相似比は同じである。
2
3
講
B1B2:C1C2 = 1:
第 講
1 +√3
図形問題
1 +√3
2
講
つまり、正方形 B の 1 辺の長さは
2
第
A1A2:B1B2 = 1 +√3:2 = 1:
図形問題
したがって、A1A2 と B1B2 の比は
1 +√3
1 +√3
)2 =
4
4 + 2 √3
5 (4 − 2 √3)
=
2
2 +√3
= 4 − 2 √3
禁
正解
2
SA
c =(
M
無 PL
断 E
転
載
したがって、
105
[覚える] 計測問題の最重要公式
c
a
(三平方の定理)
:直角三角形における 3 辺の関係
a2 + b2 = c2
b
(よく出る直角三角形その 1)
:2 つの鋭角が 30°、
60°
60°
3 辺の比は 1:2:√3
30°
(よく出る直角三角形その 2)
:直角二等辺三角形
3 辺の比は 1:1:√2
(三角形の内接円の性質)
・内接円の中心
(内心)
から接点に下ろした線(内
接円の半径)と各辺は垂直に交わり、かつ、
どれも長さが等しい。
45°
45°
a a
・内心から三角形の各頂点に引いた線はそれぞ
れの内角を二等分する。
(相似形)
・対応する辺の比は等しい。
・面積比は相似比の 2 乗となる。
(面積の公式)
・ひし形:対角線×対角線÷ 2
・台形:
(上底+下底)
×高さ÷ 2
上底
高さ
106
禁
SA
M
無 PL
断 E
転
載
下底
練習問題
1 正誤チェック
次の図のように、直角二等辺三角形 ABC の中に正方形 ADEF と正方形 PQRS
があるとき、斜線部の面積はどれか。
1 10
2 10
3 10
4 10
5 10
1
2
2
3
3
4
4
5
5
6
1 回目 2 回目 3 回目
□
□
□
cm2
cm2
cm2
cm2
cm2
2 正誤チェック
の面積の和 S2 との比として、正しいのはどれか。
6 :5
5
9 :8
b
a
M
無 PL
断 E
転
載
4
3
ℓ
b
禁
9 :7
ℓ
60°
SA
3
B
60°
3 :2
2 18 :13
2
講
1
A
第
1
□
しながらひし形 B の 2 辺にそれぞれ接しているとき、円 a の面積 S1 と 2 個の円 b
S1 :S2
図形問題
□
第 講
□
図形問題
1 回目 2 回目 3 回目
講
第
は 1 個の円 a が内接し、ひし形 B の内側には直径の等しい 2 個の円 b が互いに接
図形問題
下図のように、一辺の長さℓの合同な 2 つのひし形 A、B があり、ひし形 A に
107
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