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第3学年2組 美術科学習指導案
第3学年2組 美術科学習指導案 指導者 溝田 宏朗 1 学習のくくり 「芸術家が伝えるもの」(20時間) 2 3年間の「学習のくくり」の構想図 美術科3年間でめざす姿 作品を通して相互理解したり,独創的な表現で視覚に訴えたりしていくなどのビジュアルコ ミュニケーション活動(美術による受信と発信)を通して自分の世界を広げ,自分の豊かな生 き方や豊かな社会のあり方を探ろうとする生徒 (上段:学習のくくり名, 下段:学習のくくりのねらい) 自己を見つめる目から 他者や社会・自然を見つめる目から ①「13歳の私」(1年生) ③「映像表現の可能性」(2年生) 今の自分を見つめ,自分のよさや人柄 を表現し,伝えあう。 身近な人々や地域社会・自然に目を向 け,そのよさを映像を通して伝えあう。 ②「We are clay artists!」(1年生) ④「日本の美を伝えあおう」(2年生) 今の自分の思いの詰まった自分だけの お守りを粘土で表現し,伝えあう。 日本の伝統的な美を探り,そのよさを 伝えあう。 ⑤「ハワイ体験学習の想い出・DVDラベルデザイン」(3年生) 体験学習の経験をもとに異国文化について理解を深め,自分の想い出とともに平面作品 に表現する。 ⑥「芸術家が伝えるもの」(3年生) 芸術家が作品に込めた思いを探り,自 己の豊かな生き方と他者とのかかわり方 を探る。 ⑦「15歳の私」(3年生) 他者や社会・自然とよりよくかかわる自己のあるべき姿を美術の視点で探り,伝えあう。 -1- 3 学習構想 人類はこれまで様々な造形作品を現代に残してきた。古くは人類最古の絵画と言われるアルタミラ洞窟やラスコー洞窟の壁画に始まり,これらの作品 は,それぞれの時代に生きた人々が,憧れや夢をもち,求め続けてきた美の歴史の産物であると言えるだろう。私たちは先人たちのこのような活動の証 を「美術文化」として継承してきている。そんな数々の美術作品は過去から現在に至るまで,人々の美意識を創造し続けてきた。 本学習のくくり「芸術家が伝えるもの」では,鑑賞において,これまで名画・名作と言われた世界中の作品が,なぜ名画と言われてきたのか,その秘 密を様々な角度から分析する。そして,分析することによって生徒が作品に込められた芸術家の思いや願いをメッセージとして感じ取ったり,画面構成 や表現技法を読みとったりして,名作から学んだよさを自分の作品の中に生かして表現することをめざしていく。これらの学習活動を通して感性が豊か に育まれ,芸術家の生き方から学んだことを自己の生き方やあり方につなげて考えられることができるようになるだろう。 表現においては,生徒が選んだ芸術家の作品に見られる主題や表現の特徴を研究させ,そのよさを生かして作品を制作させる。制作段階では,芸術家 がなぜその主題を選んだのか,なぜそのような表現方法を用いたのかなどを考えながら,芸術家の気持ちになって制作することを大切にしたい。さらに 絵を描くだけでなく,芸術家の作品の魅力を紹介するプレゼンテーション作品を制作し,芸術家の魅力を交流できることを期待している。自分が調べた 芸術家や作品については他の誰よりも自分が詳しく,友達にその情報を伝えてあげるのだという切実感をもたせて制作に取り組ませたい。そして,本学 習のくくりで学んだ「作品に込めるメッセージ性の大切さ」を,中学校最後の学習のくくりである「15歳の私」に生かしていくことを期待している。 鑑賞においては,基盤づくりの段階で西洋の名作と言われている作品をとりあげ,作品を構成する様々な要素を解き明かしていく。このことを通して, 作品に込められたメッセージを受信する能力と態度が高まっていくことを期待している。それに続く追究活動では自分自身の力で作品に秘められた要素 を解き明かしていけることが期待される。 《学習のくくりでめざす姿》 世界の美術作品を分析すると,様々な秘密が隠されている。それらの美術作品に見られる作品の背景を探り,そこに込められた様々な芸術家の思 いを感じ取り,そこから得られたよさや美しさを自分なりに作品に込めて表現して伝えあい,さらに広く発信することを期待している。作品に込め られたメッセージをいかに感じとっていくか,美を素直に感じとっていく感性が高まっていくことを期待している。 ガイ 学習のくくりのガイダンスで期待される生徒の姿 ダンス ・ダ・ヴィンチ作「受胎告知」の表現方法に着目し,ダ・ヴィンチが作品に込めた思いや願いを想像している。 1 時間 つ か む ・芸術作品の数だけ作品に込められたメッセージがあることに対して魅力を感じている。 ・ 「学習計画」によって学習内容,期間,準備物,ねらいなどを確認している。 ルネサンス期の芸術 ・ダ・ヴィンチ作「最後の晩餐」を鑑 賞し,計算された美の特徴や,空間 を表現する技法,ミケランジェロや ダ・ヴィンチとの関係などを知り, ルネサンス絵画のよさに気づく。 一・二・三点透視図法の空間表現 ・ラファエロ作「アテネの学堂」やホッ ベマ作「並木道」を鑑賞し,透視図法 の特徴やその描き方を知る。 ・透視図法を使って様々な図形を描くこと によってそのよさを感じる。 -1- ツインイメージの世界 ・アンリ・カルティエ=ブレッソンの作品を 鑑賞し,相似形の反復の構図表現の特徴や 美しさを知る。 ・他の芸術家の作品にも生かされているツイ ンイメージの美しさを味わう。 学 習 共通テーマ 美術作品に見られる芸術家の思いや作品の背景を探り,自分の感じたよさを伝えあおう 5 時 間 追 究 す る 学 習 10 時間 つ な げ る 学 習 4 時間 個人テーマ設定で期待される生徒の姿 ・つかむ学習で学んだ名作の秘密をもとに,世界の芸術作品に見られる作者の思いや作品の背景をより深く感じとろうとしている。 ・多くの芸術家の作品の中から,自分が最も興味をひかれた作品を選び出し,その作品のよさを解き明かそうとしている。 【個人テーマ例】 ・モネの作品に見られる色彩の美しさの秘密を探り,自分の表現に生かして表そう。 ・ミレーが描いた主題を探り,自分もミレーになったつもりで同じような主題を追究しよう。 作者の思いや作品の背景の調査で期待される生徒の姿 ・つかむ学習で学んだ以外の視点からも,芸術家の作品に見られるよさを見つけだそうとしている。 ・自分が選んだ芸術家の表現に見られるテーマ,表現技法,構図などを詳しく調査し,芸術家の表現のよさを探っている。 ・自分が選んだ芸術家の表現に見られる表現のよさを感じながら作品を模写している。 追究途中の交流で期待される生徒の姿 ・お互いに,感想を述べあったりもっと知りたいことを指摘しあったりして,発表内容を充実させようとしている。 プレゼンテーション作品の制作で期待される生徒の姿 ・自分がつかんだ芸術家の表現のよさを自分の表現の中に生かし,自分なりに工夫しながら制作に取り組んでいる。 ・一人の芸術家のよさと自分なりの表現をまとめ,構成や配色を工夫してプレゼンテーション作品を制作している。 交流活動①で期待される生徒の姿 ・自分がテーマとした芸術家の表現に見られる思いや作品の背景について相手にわかりすく伝えられるように説明している。 ・説明を受け,疑問点や興味深く感じた内容を積極的に伝えている。 交流活動②で期待される生徒の姿 ・互いの作品の魅力について感じ取り,それを発表しあっている。 ・プレゼンテーション作品を効果的に表現するために配色や配置など気づいたことについて伝えあっている。 ・自他がテーマとした芸術家の表現に見られる思いや作品の背景について深く掘り下げて伝えあっている。 振り返りの記述・振り返りの記述の交流で期待される生徒の姿 ・自分の思い,表現意図を明確にもって制作することの重要性について記述したり,伝えあったりしている。 ・自分が行き着いた価値について表現しあっている。 -2- など など など など など など など 4 学習計画 (1)学習のくくりにおける学習の流れと「学びひたる」ための条件と手だて は本時にかかわる集団で行う一連の活動,下線は,かかわりあいを育むための工夫 「学習のくくり」における学習の流れ ☆「学びひたる」場面 ガイダン ス(1) ○ダ・ヴィンチ作「受胎告知」の鑑 賞(1) つ か む 学 ○名画の秘密を探る(1) 習(5) ○透視図法の空間表現(2) ○ツインイメージの構図表現(1) ○個人テーマの設定(1) 追究する 学習(10) 「学びひたる」ための条件と手だて 条件1「学ぶ対象が自分にとって切実なものであること」 手だて ① 自分(自分たち)だけにしかできないという意識をもたせる まず,つかむ学習では西洋の様々な美術作品を鑑賞する。それらの作品に隠された様々な要素 を解き明かしていく。自分が魅力を感じる芸術家の作品について,自分の思いを交流活動の中で 発表していくことを通して,その芸術家や作品については誰よりも思い入れがあるという意識を 高めていく。 既習の日本美術や西洋の美術の枠にとらわれず,世界中の芸術家の作品の中から自分が最も興 味をひかれた作品を選ぶ。自分が選んだ作品を模写したり,美の要素を自分なりに解き明かした ことをプレゼンテーション作品にまとめたりすることで,その作品については自分は誰よりも詳 しく,そして思い入れがあり,それが自分にしかできないという意識につながるであろう。 ○作品の研究(2) ・作品の背景,技法などの調査 条件2「挑戦レベルと技能レベルのバランスがとれていること」 手だて ① 個に応じた取り組みができるような学習活動をしくむ 美術の分野に限らず生徒それぞれに好みが様々であるように,美に対する感覚もそれぞれ異な ○作品の模写(3) る。ある生徒は既習の日本美術に対して興味・関心が高く,またある生徒はつかむ学習で学んだ ・プレゼンテーション作品の中に入 西洋美術に対して意欲的に取り組むなど,その方向性は様々である。それぞれの興味の方向性に れる大きさを考えて模写,着彩 応じて追究する芸術家・作品を選択し,個々に追究していく。追究する芸術家がそれぞれ違うの で作風に応じて筆の使い方について,また混色の仕方について,そして正確に形がとれるように 技能レベルを上げていくための助言をしていきたい。模写をすることを通して,作品を観察する 視点がとても多くなり,構図や筆致についても新たな発見があるだろう。 ○追究途中の交流(2) ・グループ発表準備〈1〉 条件3「学習活動がはっきりしており,自己の学習が目標に近づいているというフィードバックがあること」 共通する時代や国・地域の芸術家 手だて ① 学習活動において何をどうするのかをわかりやすく示す を調べた生徒同士での交流活動 交流時に質の高い発表者・リスナーとなるためのコミュニケーション技能の必要性を説明し, その具体を黒板に示して伝える。発表者としては,「リスナーに自分が追究した芸術家の作品の ☆グループ発表〈1〉 (本時2/2) 特徴や背景を簡潔にわかりやすく伝える」「芸術家の作品や生き方など自分が共感した部分を伝 -1- 異なる時代や国・地域の芸術家 を調べた生徒同士での交流活動 える」 「芸術家について,そのよさを伝えて自分の思い入れを語る」とする。リスナーとしては, 「発表者の伝えたいことをメモし,自分の感想や資料をもとに芸術家について語りあう」「自分 自身の追究と照らしあわせながら発表者の芸術家に対する思い入れを聴く」である。 その他に,発表者・リスナーに共通して「お互いの表情を注視しながら交流する」を示す。ま た,事前に交流の手引を配布しておき,参考にするように伝える。発表者には「リスナーの反応 が鈍い場合は質問形式の発問をしてリスナーの発言を増やそう」 ,リスナーには「発表者の作品 に対する思いや視点に気づき,自分が追究した芸術家の場合では発表者のような視点で考えるこ とができていたかを振り返ろう」などのコミュニケーション技能の具体を示しておく。 条件2「挑戦レベルと技能レベルのバランスがとれていること」 手だて ② 予測可能なことと意外性が混在する学習活動をしくむ 追究途中の交流では,まず共通する時代や国,地域の芸術家を調べた生徒同士をグルーピング し,交流活動を行う。中には同じ芸術家について調査をした生徒同士の交流があり,ある程度予 測の範囲内で発表や質問があると思われる。自分の調べ方が不十分な所を確認して発表内容に新 たな情報を書き加えて修正したら,次の時間では異なる時代や国,地域の芸術家を調べた生徒同 士で交流活動を行う。異なる芸術家では,作者の思いや作品の背景には当然違いがあり,新たな 発見ができると思われる。また,質問内容も前時とは異なる視点で,鋭い指摘があることが予想 され,意外性を感じながらより深く追究していくきっかけとしたい。さらに深い追究の後,プレ ゼンテーション作品の制作に入っていく。 ○プレゼンテーション作品の制作(3) ・芸術家,作品の紹介〈1〉 ・オリジナル作品〈2〉 条件3「学習活動がはっきりしており,自己の学習が目標に近づいているというフィードバックがあること」 手だて ② 情報を顕在化させる 追究途中の交流では,作品の背景,技法についての調査結果,発見した美の要素を発表しあう。 そして,模写した作品を相互に鑑賞しあい,メンバー同士で評価しあう。プレゼンテーション作 品の材料として,それらが順調に準備できているか,不足しているのならどんなことを補ってい けばよいのかをワークシートにメモして伝えあうようにする。調べた内容に共通点があれば,お 互いの情報を共有できたり,より高いレベルでの発表準備を進めたりすることができる。本時で は,異なる時代,国や地域の作家を追究した生徒同士のグループを編成して交流することで新鮮 な視点からのアドバイスをすることができ,その後のプレゼンテーション作品の制作内容を充実 させていくことが期待できる。 つ な げ る ○ペア交流会(2) 学習(4) ・違う芸術家を追究した生徒同士 ・同じ芸術家を追究した生徒同士 ○振り返りの記述(1) ○振り返りの記述の交流(1) -2- (2)集団で行う一連の活動における「学びひたる」場面 本学習のくくり「芸術家が伝えるもの」では,興味をひかれる作家の作品を選択してその作品 にこめられた作者の思いなどを探り,お互いに伝えあう。その手段としてプレゼンテーション作 品を制作し,その中には作品の背景,使われている技法などを調べた結果とその作品の模写,そ して自分の感じた美の要素を生かしたオリジナル作品を盛り込んでいく。 これまでつかむ学習において,生徒はダ・ヴィンチらの作品を鑑賞し,それぞれの作品にある 美の要素を発見し,自分なりに作者の思いを読み取ってきた。自分の感じた美の要素を言葉で書 き表し,相互に発表しあいながら交流をすることで,自分が気づかなかったことに気づき,作品 を見る視点を増やすことができた。友達の意見を聴くことで,自分一人ではどうしても偏りがち な見方をより広げることができた。 追究する学習では,まず,生徒が追究する作家・作品を選択し,作品の背景や使われている技 法などを調査し,その作品にこめられた作者の思いや作品の背景に迫ってきた。自分の感じた美 の要素を最終的にはプレゼンテーション作品の中に入れていく。本時は,自分なりに解き明かし た美の要素を発表しあうことで,リスナーの視点から初めて知るような内容であり,驚きがあっ たことやさらに知りたいことはないかを吟味する機会となる。それぞれに調べてきたことを発表 していく中で,聴き手の意識,また効果的に相手に伝える意識も高まり,ここに「学びひたる」 場面を設定した。 多くの生徒に生涯にわたって美術を愛好し,かかわり続けてほしいと願っているが,中学校卒 業後は美術館に立ち寄るなど鑑賞にかかわる場面がほとんどである。感性が豊かに育まれ,作者 の思いを感じ取り,芸術家の生き方から学んだことを自己の生き方や在り方につなげて考えられ ることができるよう,作品を広い視野から鑑賞できるようになることが必要である。そのために, 作品には色々な見方があり,解釈があるということを実感できるように集団で行う一連の活動を しくんだ。 5 本時の学習 (1)本時の目標 ・自分が選択した芸術家の作品をもとに,その作品の背景や使われている技法などを理解し,芸 術家の思いや自分の感じた美の要素について,相互に伝えあうことで理解を深めようとしてい る。 (美術への関心・意欲・態度) ・グループ発表会を行うことで,作品のよさを再確認したり調査が不十分なところを認識したり して,プレゼンテーション作品に入れる作品紹介の内容を充実することができる。 (発想や構想の能力) (2)期待する「学びひたる」姿 ○感想を述べあったりもっと知りたいことを指摘しあったりして,発表内容を充実させ, 高めあおうとしている。 ○相手の反応を見ながら,作品などを指し示すなどして分かりやすく伝えようとしている。 ○発表者に顔を向け,内容を聴き取ろうと熱心に耳を傾けたり,メモを取ったりしている。 -1- (3)学習課程 は本時で「学びひたる」場面 学習活動 (条件と手だて) 生徒の活動 ○支援 前時の振り返り ●前時では共通する時代, ・留意点 評評価 国や地域の作家を追究し た生徒同士のグループ発 表会で行ったことを確認 する。 学習課題の確認 (条件1①) ●本時の学習課題「作者の ・それぞれの個人テーマ(自分が選んだ 思いや作品の魅力や美の 作家,作品について伝えたいこと)を よさを伝えあおう」を確 確認させる。 認する。 グループ発表の しかたの確認 ●本時に行うグループ発表 ・前時のグループ発表で,よいかかわり の仕方について確認する。 あいが見られたグループの様子を映像 (条件3①) で紹介する。 ・紹介する映像は,納得がいくまで話し 合っている場面や発表者に顔を向けメ モを取っている場面を中心に見せる。 グループ発表会 (条件2①,②) ●グループごとに発表会 を行う。 ○お互いの感想を述べあったりもっと知 りたいことを指摘しあったりして,作 品についてより理解を深められるよう 助言する。 評〔美術への関心・意欲・態度〕 作者の思いや作品の魅力や美の要素に ついて,同じグループの仲間に伝えよ 発表内容の修正 (個人) ●友達のアドバイスをもと に,発表内容を書き加え て修正する。 教師による コーディネート 記入 (ワークシート) 評〔発想や構想の能力〕 作品のよさを再確認したり調査が不十 ●グループ発表での好まし 分なところを認識したりして,プレゼ いかかわり方や目標達成 ンテーション作品制作に向けて内容を に向けての有意義な行動 充実することができたか。 を共有する。 気づきのメモの うとしたか。 (ワークシート) ●本時の学習を振り返り, 気づきのメモを記入する。 -2-