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VCN°13 ドメーヌ・ガングランジェ 生産地方:アルザス 新着ワイン 16 種類
2016 年 6 月吉日 ◆VCN°13 ドメーヌ・ガングランジェ 生産地方:アルザス 新着ワイン 16 種類♪ AC クレマン・ダルザス 2011(白泡) 前回リリースしたクレマン・ダルザスを更に 13 ヶ月長く瓶内熟成させたクレマン・ナチュレル!(クレ マン・ナチュレルとは、二次発酵のティラージュにショ糖を使わず、翌年の発酵中のジュースを添加し泡を 作るクレマンのこと!)これが実質ガングランジェ最後のクレマンとなる!1年前にリリースした時に比べ て、味わいは長熟させたシャンパーニュのようにかなり複雑で、熟成から来る凝縮した塩辛いダシのような 旨味を感じる! AC アルザス・リースリング 2014(白) 2014 年は、泥状石灰質の畑のリースリングのみで仕込んでいる!(以前はグレ・ローズの区画のリース リングを混ぜて仕込んでいたが、この年から別々に仕込んでいる)。アルコールのボリュームがあるにもか かわらず pH の値が 2.84 と低く、背筋がピンと伸びるようなしっかりとした酸が柱にあり、うまみ味がど んどんせり上がる!SO2 トータルの値は 23 mg/L! AC アルザス・ピノブラン 2014(白) 2014 年のピノブランは、プレスした後のジュースに網袋に入れた少量のピノグリを漬け込み発酵させて いる!ワインに厚みと複雑さを与えるのが狙いで試みたのだが、思ったほどのピノグリ効果は得られず、今 後は通常に戻すようだ。でも元が良いので、十分美味しい~!SO2 トータルの値は 28 mg/L! AC アルザス・シルヴァネール 2014(白) スズキの被害もなく例年よりも収量に恵まれた年だった!アルコール度数は例年よりも低めだが、旨味が しっかりと感じられる!味わい的には、柑橘系のフレッシュな酸とグレープフルーツのような苦みの効いた ミネラルが心地よい、とても爽やかなワインに仕上がっている!SO2 トータルの値は 13 mg/L! AC アルザス・ゲヴュルツトラミネール 2014(白) 2014 年のゲヴュルツは一部スズキの被害に遭った。ガングランジェ曰く、スズキは色の付いているブド ウを好むため、ゲヴュルツやピノグリ、ピノノワールなど、果皮に色のあるブドウはほとんど被害に遭って しまったようだ。残糖分は 0.5 g/L とほぼないに等しいが、分厚い果実のエキスとアルコールのボリューム 感があり、ほんのり甘いニュアンスがある! SO2 トータルの値は 27 mg/L! AC アルザス・ピノグリ 2013(白) 2013 年のピノグリは、アルコール度数が高く、スパイシーでボリューム豊かだが、ミレジム的には涼し い年で酸がしっかりと残ったこともあり、全体的には締まりのあるスマートな味わいにまとまっている! SO2 トータルの値は 16 mg/L! AC アルザス・ピノノワール 2014(赤) 50%がスズキの被害に遭い、例年に比べ 40%の減収だった。スズキにやられたブドウは全房のまま漬け 込むとボラティルの上がるリスクがあるので、粒単位の選果&除梗を施している。ワインは明るくチャーミ ングで、艶やかさと危うさの両方のバランスをみごとに保っている!SO2 のトータル値は 27 mg/L! サンスフル(亜硫酸無添加)シリーズ ヴァン・ムスー ペト・ナット シャンガラ・ビュル 2014(白泡) 2011 年が最後のクレマン・ダルザスに代わって、今後新たにリリースするのがこのペティアンナチュレ ル「シャンガラ・ビュル」!デゴルジュマンをしていないため、酵母と酒石酸による濁りは激しいが、味わ いは見た目と違い、まるで搾りたてのグレープフルーツジュースのような柑橘系のスマートさがある! AC アルザス・リースリング 2014(白) 2013 年までは泥状石灰質とグレ・ローズ混じりの石灰質・粘土質の土壌の異なる 2 つの区画のブドウを アッサンブラージュし一つのキュヴェで仕込んでいたが、2014 年からグレ・ローズのリースリングを SO2 無添加のキュヴェとして単独で仕込んでいる!ガングランジェ曰く、一般的にグレ・ローズのリースリング は、剥き出しの酸がダイレクトに感じられるワインが出来上がるのに対し、泥状石灰質のリースリングは、 酸が柔らかく洗練されたものができやすいのだそうだ!味わい的には、ピュアで染み入るような旨味エキス が心地よく、飲んで癒されるような優しさがある! AC アルザス・リースリング・シュタイネール 2013(白) ブドウの完熟をギリギリまで待ったのだが、収穫直前から収穫最中にかけて雨が続き、ブドウが水を吸 い破裂する現象が起こったため、結局厳しい選果を余儀なくされた。アルコールは例年よりも軽く、シュ タイネールのテロワールによるシャープな酸と剥き出しのミネラルがダイレクトに感じられる! AC アルザス・シルヴァネール・ビル 2014(白) ガングランジェは、ヴォージュ山脈の麓に連なるグランクリュ側の畑以外に、公道を挟んで対面に位置 する小高い丘側にも畑を持っている。ビルは後者の方で、土壌の構成は主に石灰質・粘土質で成り立って いる。ガングランジェ曰く、石灰質の土壌はグレ・ローズに比べて、繊細で上品な酸のあるワインに仕上 がるとのこと! AC アルザス・ゲヴュルツトラミネール・シュタイネール 2014(白) 2014 年のゲヴュルツはスズキの被害に遭った年。ほとんどのブドウの一部分がスズキに刺され腐敗が始 まっていたので、粒単位での厳格な選果を余儀なくされた。 (バケツを一杯にするのに 1 時間以上もかかる 過酷な作業だったようだ)その結果ボリュームがありながら口当たりが柔らかく、旨味がぎっしり詰まっ たワインに出来上がった! AC アルザス・ゲヴュルツトラミネール・シュタイネール 2013(白) 2013 年のゲヴュルツは、収穫直前に雨が降ったがその後真夏のような快晴に恵まれ、最終的にしっかり と完熟したブドウを取り入れることができた!実質アルコール度数は例年より高くパワフルだが、酸がし っかりとあるので飲み疲れない!さらに適度なボラティルがゲヴュルツの香りを押し上げ、香水のような 華やかで官能的なアロマを演出する! AC アルザス・ピノ・グリ・シュタイネール 2013(白) 2013 年はブドウの完熟が難しい年だったにもかかわらず、アルコールのボリューム豊かなワインに仕上 がっている!それでいて pH が 3.12 と低く、ワインにしっかりと酸が乗っているところはさすがだ!ガン グランジェ曰く、シュタイネールの畑は真南で傾斜があり、ブドウが熟しやすく、またアラゴナイト土壌 がシャープな酸をワインに与えているとのこと。 AC アルザス・ピノ・ノワール・シュタイネール 2014(赤) 2014 年はスズキが猛威を振るった年。だが、幸いにも 90%のブドウはスズキの被害が拡散する前に収 穫でき健全だったため、被害のあった 10%だけ除梗している!以前は、収穫のタイミングを潜在アルコー ル度数の高さで決めていたが、2014 年から直接ブドウを食べた味わいと pH の値を重視して収穫を行って いる!ワインの味わいは、果実がみずみずしく、ダシのようなピュアな旨味とシュタイネールならではの 真っすぐなミネラルがダイレクトに感じられる! AC アルザス・ピノ・ノワール・シュタイネール 2012(赤) 2012 年のピノノワールは、ガングランジェにとってブドウの質に恵まれた年!アルコールは力強く、出 来上がり当初はまだワインが荒く暴れていたが、瓶熟3年を経た今は角も取れてとても官能的なワインに 変化している!今すぐに飲んでもおいしいが、もう少し寝かせるととんでもないワインになりそうな…そ んなポテンシャルを秘めたワインだ! ミレジム情報 当主ジャン=フランソワ・ガングランジェのコメント 2012 年はフランス全体が不作の年で、アルザスも例外なく厳しい年だった…。収量は 35 hL/ha と例年に 比べて約 20%減…その原因のほとんどは 6 月 7 月に蔓延したミルデューによる被害だった。だが、幸い 8 月 9 月は雹の被害もなく良い天候に恵まれ、ミルデューで腐敗したブドウもきれいに乾き落ちた。残ったブドウ は酸ミネラルなど全ての要素を残し、かつてないほど凝縮感と潜在アルコール度数があった! 2013 年は、2012 年に輪をかけて厳しい年だった。春はまるで冬のように気温が上がらず、開花も期間が 長かったため、あまりうまく行かなかった。夏も不安定な天候が続き、オイディオムやミルデューが畑に蔓延 した。9 月に入り天候が回復したが、収量は 4 割ほど減収…。10 月から再び天候が崩れ、ブドウの選果を余 儀なくされた…。 2014 年は、ショウジョウバエの「スズキ」の被害に遭ったとても難しい年だった!冬は比較的温暖で、そ のまま春になっても気温が下がらず、乾燥した天気が 6 月いっぱいまで続いた。天候が良かったおかげで、 ブドウの病気はほとんどなく、開花も順調に終えることができた。だが、7 月に入り天気は一転、湿気の多い 蒸し暑い日が月の終わりまで続いた。この影響で、ミルデューやオイディウムがブドウの葉などに繁殖をし始 めたが、硫黄やボルドー液散布などの予防を先手先手で行うことができたことで、被害を最小限に食い止める ことができた!8 月は気温の上がらない不安定な天候が続いたが、9 月に入ると天気が一気に回復し、8 月の 遅れを取り戻すがごとくブドウは一気に成熟に向かった。だが、収穫の直前、突如現れたスズキの大群が、ピ ノやゲヴュルツ、ピノグリなど、色のついたブドウを中心にほぼ全品種を一気に襲い、たった数日間で全体に 多大な損害を与えた…。スズキの被害がなかったブドウは豊作だったが、被害の合ったブドウは軒並み減収…。 収穫時は厳格なブドウの選果を余儀なくされた…。 「ヨシ」のつ・ぶ・や・き 弊社が日本でファーストリリースしてから早 10 年。新たなサンスフルシリーズのリリースにあわせて、ガ ングランジェ夫妻が初来日をする!従業員がいない家族経営のドメーヌのため、ワイン畑やワインを思うと留 守がなかなか出来ず、今まで 1 週間あけたことはなかったが、今回ワイン造りへの熱い想いを日本の皆様に 直接お伝えしたく、来日を決意してくれたのだ!!この貴重な機会を生かし、ガングランジェの哲学やワイン の美味しさを皆様にお伝えできるよう、また生産者にも日本の市場の成熟を感じてもらいつつ、新シリーズの 手応えを掴み、満足して帰ってもらえるよう、プロモーションに尽力したいと思う。 さて、そのサンスフルの魅力について、ガングランジェはこう語る。 ・ まるで樽から直接試飲しているようで、ワインがエネルギッシュ! ・ 味わいや香りの変化が多様 ・ ワインから沢山の魅力的な情報を感じ取れる ・ 飲み口がよく、体に馴染みやすく、負担が少ない 今回、ガングランジェのサンスフル(SO2 無添加)シリーズは日本での初リリースではあるが、それは最近 突然始まったことではない。実は 2003 年から毎年ピノノワールのシュタイネールで試験を重ね、2010 年に は 5 種類、そして 2012 年に全てのキュヴェと徐々に段階を踏んで周到な準備を整えてきた。 (2012 年以降 フランス国内では SO2 無添加を中心にリリースしているが、主に輸出向け商品は顧客と相談のうえ、瓶詰時 に少量の SO2 を添加している)幸いなことに、ご近所にはブリュノ・シュレールやピエール・フリックなど サンスフルの作り手の先輩方がいて、色々とアドバイスを乞いながら自分のものにしていったそうだ。 ガングランジェは、以前から醸造中は SO2 の添加は一切なく、樽からのサンスフルワインの美味しさを常々 実感していた。ただ、バクテリアの繁殖やボラティルなどのリスク、海外への輸送や現地での保管状況に対す る心配、また AOC が認可されない恐れもあり、必要と判断した場合に瓶詰時に SO2 を少量添加していた。 しかし本人曰く「自分たちはワイン生産者であると同時に、一番の消費者でもある。自身のワインを毎日飲 んでいるが、サンスフルのワインを最近はいつも選んでしまい、SO2 を体が段々受け付けなくなってきていた と感じる」と彼は言う。自らが最高に美味しいと思う体に馴染むワインを造りたい、また消費者にもその美味 しさを楽しんでもらいたいという思いから、可能であればサンスフルによりシフトしたいと考えているようだ。 個人的には SO2 を添加していても 20mg/L 程度なので、強く体感したことはあまりなく、むしろピュアな 美味しさが十分出ていて、素晴らしいバランス感覚の造り手だと思っている。ただ、ガングランジェが実験や 工夫を重ね、経験値が上がると共に進化するサンスフルシリーズを飲むと、そこにはガングランジェの新しい 世界観と哲学があり、あまりの美味しさに正直びっくりしている。 サンスフルシリーズを成功させるためには、まず畑の状態が重要である。 「畑が BIO は大前提であり、更に 「生命の息吹」が感じられることが重要である。 「サンスフルのワインからは、味わいや香りを通じて沢山の「素」 の情報を感じ取れる。畑の状態、エネルギー、テロワール、ブドウの品質、品種本来の特徴など、情報がダイ レクトに伝わるので、ごまかしがきかない。」 「長年農薬が撒かれた畑のブドウや、手入れが行き届いていない 畑のブドウから造られたワインは、当然、自然界のありのままの力や個性を感じることは難しい」 。とガングラ ンジェはいう。 この「多くの情報」をより上手に引き出すことが、今はワインづくりのモチベーションになっているようだ! 畑のコンディションを上げるために最近は馬を使うなど、努力や工夫を重ねている。また、醸造中のワインの バクテリアの繁殖リスクを最小限にするため、現在は顕微鏡を使ってワインを検査し、状況によってフィルタ ーをかけるなど、自身が感じているサンスフルのリスクを抑える工夫をしている。 論より証拠!新たな境地を開いたガングランジェのサンスフルワインをぜひ口にして頂きたい!あまりの 美味しさに必ずびっくりします!あ~進化するガングランジェにワクワクが止まらない♪ (2015.11.13.ドメーヌ突撃訪問より) マスキュランなゲヴュルツを作り上げるファッフェンハイムの職人 ジャン・フランソワ・ガングランジェ (ドメーヌ・ガングランジェ) 生産地 アルザス地方のコルマール市から南に 10 km ほど南下した小さな村ファッフェンハイムにジャン・フランソワの ワイナリー「ドメーヌ・ガングランジェ」がある。ドメーヌの西側は傾斜の急な丘陵地が南北 170 km に渡り連な り、東向きに面したアルザスワインの銘醸地が帯のように連なる。その丘の中腹に彼のブドウ畑は集中する。気候 は半大陸性気候で、西のボージュ山脈が海洋性気候をせき止める影響で風は穏やかだが、一年中乾燥しており、冬 は寒く、夏は非常に暑い。春秋は朝夕の気温の寒暖差で付近を流れるライン川の支流からしばしば霧が運ばれる。 歴史 ジャン・フランソワの父がすでにブドウ栽培農家だったので、物心ついた時から父の仕事を手伝っていたという。 醸造の学校を卒業して 1990 年、老齢のため半引退となった父の後を継ぐ。引継いだ当時はまだ農協にブドウを売 って生計を立てていたが、1996 年従兄弟のシュレールの影響でビオの農法に目覚め、再びビオを学ぶために学校 に通う。翌年の 1997 年は、マルセル・ダイス、ジェラール・シュレール、トリンバッハ等が集まるビオディナミ の勉強会へ参加し、それ以降畑の農法にビオディナミを取り入れることとなる(勉強会は毎年開かれ、現在も続い ているという) 。1999 年、父の完全な引退と同時にドメーヌ・ガングランジェを起ち上げ、自らのワインを作り始 める。同年、エコセールの認証、そして、2001 年にデメテールの認証を取得し現在に至る。 生産者 現在、ドメーヌはオーナーであるジャン・フランソワが一人で管理している(仕事が間に合わない時は時々季節労 働者数人が手伝いに入る)。彼の所有する品種は、赤はピノノワール、白はリースリング、ゲヴュルツトラミネール、 ピノグリ、ピノブラン、ミュスカ、ピノオーセロワ、シルヴァネールである。畑の仕事にビオディナミを積極的に 取り入れ、土壌とブドウの樹にとっての最高のバランスを常に追い求める。ビオディナミはもちろん畑だけではな く、瓶詰タイミングなどの醸造面にもおよぶ。アルザスの伝統大樽「フードル」でワインを仕込み、天然酵母、酸 化防止剤も最小限に抑えられた、いわば自然派タイプのワインを作る。 ドメーヌ・ガングランジェの+α情報 <もっと知りたい畑のこと> 土壌:リモノー・カリケール、ゲヴュルツ・シュタイネールだけアラゴニット・カルシック(アルザスではファッ フェンハイム付近しかないパワーストーンの一種「アラゴナイト」と石灰が入り交じる土壌) 総面積:5.6 ha 品種:ピノノワール、リースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノグリ、ミュスカ、ピノオーセロワ、シルヴァ ネール、ピノブラン 樹齢:20~50 年 病気・被害:オイディオム、レスカ、ブドウ葉を食べる幼虫 剪定方法:ギュイヨー・サンプル(バゲットを弓形に曲げ留める) 生産量:45 hL/ha 収穫方法:収穫者 12~15 人で手摘み。 ビオの認証:1999 年、エコセール認証、2001 年デメテール認証 <もっと知りたい醸造のこと> 醸造方法:赤はトラディショナル、白はバレルファーマンテーション(大樽) 、クレマンはシャンパーニュ方式。 赤は、ブドウを畑で選果後、80%は手で除梗破砕し、残りの 20%は房のままファイバータンクとイノックス タンクへ入れ発酵開始。ファイバータンクでの仕込みは 1 日一回のルモンタージュ、イノックスタンクでの仕 込みはピジャージュとやり方を分けたかたちで醸造。マセラシオンの期間は 10~12 日。フリーランとプレス をアッサンブラージュした後、23 hL のフードル(大樽)に移し 1 年の熟成、澱引き後イノックスタンクで 3 ヶ月の熟成。 白は、ブドウ畑で選果後、プヌマティックプレス機で 8 時間かけてゆっくり圧搾。ジュースはそのまま 3 hL~25 hL のフードル(大樽)へ移し自然発酵。発酵期間は 5 ヶ月~1 年。熟成は 7 ヶ月~1 年。 クレマンは、ブドウ畑で選果後、プヌマティックプレス機で圧搾。ジュースを 1 日デブルバージュした後、フ ァイバータンクに移し自然発酵。発酵後、ワインに酵母と蔗糖を加えて瓶詰め。1 年の瓶熟を経た後、門出の リキュール(翌年のワイン)を加える。 酵母:自然酵母 発酵期間:赤はファイバータンクとイノックスタンクで 10~12 日間。白はフードル(大樽)で 5 ヶ月~1 年。 熟成方法:赤、白ともにフードル熟成。SO2 添加:ビン詰め時に少々。 熟成樽:フードルは 20 年以上 フィルター:赤、白共に貝を砕いたパウダー状のろ過剤を使用 ちょっと一言、独り言 ジャン・フランソワはとても気さくなアルザスなまりの強い好青年。 (と言っても 30 代後半だと思うが・・・)耳 が慣れてくるまで、この人はドイツ語を話しているのか?それともフランス語か?と戸惑ってしまうくらい、話す アクセントに特徴があるので、黙って聞いていても面白い。アルザスのドメーヌ「ジェラール・シュレール」で働 いている日本人の紹介で初めて彼に会ったが、第一印象は本当に心からワインの仕事が好きで、毎日を楽しんでい るようなオーラを感じた。趣味も楽器以外は「ブドウを育てること」と仕事が半ば趣味になっているような幸せ者 だ! 「シュレールと懇意にしている従兄弟」という、予め前情報をもらっていたので、きっとワインの味もシュレー ルと似ているのだろうと大きな期待を持って彼のドメーヌを訪問したのだが、それは良い意味で大きく期待を裏切 られた。シュレールのスタイルではなく、全くもって似ても似つかぬ個性にむしろ感心してしまったくらいだ!彼 に「シュレールとは同業種でしかも従兄弟だろ?」と言いつつ、その事を話すと「同じワインができる訳ないだろ う!テロワールだって作り方だって違うのだから!」と笑いながらごく当たり前の答えで一蹴されてしまった(確 かに言われてみたら、彼の言うことの方が正論ではあるが・・・) 。 それは、最初に彼のピノノワールを試飲して感じたのだが、これは本当にピノノワールなの?と正直、一瞬頭の 中が混乱してしまった。その反応を見てジャン・フランソワは笑い、 「去年訪問したタイスケも同じようにビックリ した反応をしていたね!確か彼は『シャンベルタンみたいだ!』と言っていたな♪」と教えてくれた。 (ちなみに「タ イスケ」と言うのは、弊社の池谷である。 )他に続くワインもどれも個性があって一様に驚きがあり、しかも美味し い!特に、最後に試飲したゲヴュルツのキュヴェ「シュタイネール」にはド肝を抜かれた。 翌日、今度はジェラール・シュレールでシュレールのワインを試飲する。オーナーのブルノーに昨日の試飲結果 を話すと「あそこのシュタイネールはイイだろ!うちのゲヴュルツのブドウを少し彼にまわしたいくらいだ!」と 同様の反応が返ってきた。彼のゲヴゥルツはどうやらすでに品薄の人気商品らしい・・・。 ブドウ畑をこよなく愛するジャン・フランソワ。そんな彼も、90 年代前半、父親の畑を引継いだばかりの時期は 試行錯誤の連続だったという。当時はまだ普通に除草剤、農薬を使っていた時期で、現在ビオディナミを忠実に行 う彼も、それが当たり前だと思っていたそうだ。だが、ブドウの樹の病気の蔓延により、化学農薬が万能ではない、 むしろブドウの樹の抵抗力を弱めることに気づき、以降ビオロジックの世界にチャンネルを切りかえた。 以前とビオ農法(ビオディナミ)を取り入れた前後で、どんな違いが見られたか?という質問に対し彼は、 「ブド ウの樹の根が深くなり、ブドウの房に張りが出てきた」と答えた。ワインの味もビオディナミを取り入れた当時に 比べて、現在はワインの青臭さがなくなり、どんなにブドウが熟してもしっかりとした酸が残るようになったそう だ。そして何よりもブドウの樹の病気が少なくなったことに彼は実践の成果を見出している。 「ビオディナミをオカ ルトだと批判する人がいるが、まずは実際に実践してみることだ。実際に明らかな実践結果の違いが見えたから僕 は信用せざるを得ない」どうやら彼にとってのビオロジック思考は、哲学からではなく実践から来ているようだ。 最後、彼に個人的にゲヴュルツを譲ってくれと頼んだのだが、残念ながら日本での注文が精一杯で余裕がない! と一本も売ってくれなかった・・・。悔しいけど、あとは日本の皆さんで楽しんでください!