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事業引継ぎの現状と課題

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事業引継ぎの現状と課題
資料3
事業引継ぎの現状と課題
1.事業引継ぎの現状と事業引継ぎ支援事業の概要
(1)事業引継ぎを推進する背景
近年、少子化の影響に加え、親族がいても事業を継がないことなどにより、
中小企業・小規模事業者の後継者確保が困難になってきている。中小企業庁が
行った調査によれば、20年ほど前までは、親族内での事業承継が全体の約9
割を占めていたが、足下では6割程度まで低下している。(図1)
図1:事業承継時期別の現経営者と先代経営者との関係
20年以上前
83.4%
10~19年前
9.2% 4.2%
3.2%
67.2%
13.6%
13.3%
5.9%
親族外承継
0~9年前
48.5%
0%
10%
息子・娘
20%
12.0%
30%
息子・娘以外の親族
40%
50%
21.5%
60%
70%
親族以外の役員・従業員
18.0%
80%
90%
100%
社外の第三者
(出典)中小企業庁委託調査「中小企業の事業承継に関する調査に係る委託事業報告書」
(2012年11月)株式会社野村総合研究所 再編加工
また、事業承継の停滞に伴い、経営者の平均年齢は年々上昇してきており、
20年前は60歳を越える経営者は全体の3割程度であったが、足下では5割
を越えており経営者の高齢化が加速している。(図2)
図2:60歳以上の経営者の割合
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1990
1995
2000
2005
2010
(出典)帝国データバンク「全国社長分析」(2012)(備考)株式会社、有限会社の経営者の年代別構成。
1
この結果、今後10年間で日本の中小企業・小規模事業者の約半数が世代交
代を迎えることとなり、とりわけ「団塊の世代」が70歳を迎える前半5年間
が世代交代のピークとなることが見込まれている。
日本の中小企業・小規模事業者は、この10年程度で500万社から400
万社弱まで約100万社減少しているが(図3)、廃業した小規模事業者の約
6割が後継者難を理由にあげていることを踏まえると、今後、事業承継が円滑
に進まなければ、更に多くの事業者が廃業に至ることが懸念される(図4)。
図3:中小企業の数の動向
(万社)
600
1999 年→2012 年
▲98.4 万社(▲20.4%)
小規模企業以外
300
小規模企業
0
1999年 2001年 2004年 2006年 2009年 2012年
(出典)中小企業政策審議会小規模企業基本政策小委員会第1回資料、
経済センサス-活動基本調査(2012)
図4:小規模事業者の廃業理由
(%)
100
その他
4.4%
適当な後継者が見つからない
21.4%
後継者難
54.6%
息子・娘に継ぐ意志がない
27.3%
50
息子・娘がいない
5.9%
地域に需要・発展性がない
5.9%
事業に将来性がない 35.9%
(出典)中小企業白書2014
(原出典)資料:中小企業庁委託「中小企業の事業承継に関するアンケート調査」(2012年11月、(株)野村総合研究所)
(注) 1.今後の事業運営方針について「廃業したい」、又は、経営者引退後の事業継続について「事業をやめたい」と回答した、経営者の年齢が50歳
以上の小規模事業者を集計している。
(注)2.「その他」には、「従業員の確保が難しい」を含む。
2
(2)事業引継ぎの現状
20年ほど前までは、中小企業・小規模事業者のM&A案件を手がける仲介
業者が国内に存在しなかったが、中小企業専門の民間仲介業者の設立を機に小
規模M&Aが徐々に増えつつある。
また、公的機関では、平成9年に大阪商工会議所の「M&A市場」、10年
に東京商工会議所の「M&Aサポート・システム」、13年に名古屋商工会議
所の「M&Aサポートオフィス」がそれぞれ設置された。
この結果、未上場企業のM&Aの成約件数は徐々に増加し、株式会社レコフ
の資料によると、平成18年には約800件のピークを迎えたが、リーマンシ
ョックの発生により減少に転じた。その後、国内景気の回復と相まって成約件
数は持ち直し、平成25年は600件程度まで回復している(図5)。
図5:未上場企業間のM&A件数の推移
800
件
700
600
500
400
300
200
100
0
1996
2000
2004
2008
2012
(出典)株式会社レコフ
(3)事業承継ファンド
・・・
3
(4)事業引継ぎ支援事業の概要
①事業の実施体制
「事業引継ぎ支援事業」は、後継者不在の中小企業・小規模事業者の事業承
継をM&A等を活用して支援する国の事業として平成23年から開始された。
実施体制は、全国47都道府県の商工会議所や都道府県等中小企業支援セン
ター等の支援機関に「事業引継ぎ相談窓口(以下「相談窓口」という。)」を
設置するとともに、支援体制等が整った地域については、PM(プロジェク
トマネージャー)を配置した「事業引継ぎ支援センター(以下「センター」
という。)」を設置し、より専門的な引継ぎ支援を行っている(平成26年
11月末現在、センターは16箇所、相談窓口は31箇所)。
また、平成26年4月から、事業の全体を管理し、地域をまたぐ広域マッチ
ングを支援するため、独立行政法人中小企業基盤整備機構に中小企業事業引
継ぎ支援全国本部が設置された。
平成25年6月に閣議決定された日本再興戦略において「現在7か所の設置
に留まっている事業引継ぎや事業承継等のワンストップ窓口である「事業引
継ぎ支援センター」を全国展開し、地域金融機関等との連携を通じた事業引
継ぎのマッチング等を促進する。」と記載されたことを受け、平成27年度中
には、PMを配置するセンターと全国本部が実施する研修を受講した専門相
談員を配置するセンターをそれぞれ半数程度になるように立ち上げ、全国展
開を完了する予定。
4
【事業引継ぎ支援事業の概要】
譲渡企業
譲受企業
相談
情報の収集
経営指導員等
全国本部(中小機構)
事業引継ぎ支援センター・事業引継ぎ相談窓口
情報を整理
事業引継ぎに関するデータベース
連携
マッチング
民間仲介業者・専門家等
事業引継ぎの実現
M&A仲介機関
弁護士、税理士
公認会計士
中小企業診断士
地銀、信金等と連携
※後継者不在企業と創業希望者とをマッチングさせる「後継者人材バンク」
についても順次全国展開を図る。
【事業引継ぎ支援センターの設置状況】
5
②相談取扱い企業数、事業引継ぎ件数
平成23年の事業開始から平成26年9月現在までに全国のセンター及
び相談窓口が受け付けた相談企業数は4,169件、そのうち事業引継ぎを
行った件数は93件(※)となっており、26年度に入ってから急激に件数が
上昇している。
(※)親族内、従業員等への承継を一部含む。
相談の内訳は、譲り渡しに関するものが約4割、譲り受けに関するものが
約3割寄せられている(その他は、事業承継に関する様々な相談(「後継者
がいない」、
「事業の引継に不安がある」、
「当事者間で合意したが、今後の進
め方が分からない」、「自社の評価額が知りたい」等)。)。
相談内容の内訳
その他
(916)件
27%
譲り渡し相談
(1351件)
39%
譲り受け相談
(1185件)
34%
(出典)中小企業事業引継ぎ支援全国本部
6
相談者の業種を見ると、譲り渡しに関する相談については、
「製造業」と「卸
売り・小売業」で約半数を占めている。「建設業」と「サービス業」を加える
と8割を超えている。
譲り渡し相談の業種内訳
譲り受け相談の業種内訳
事業引継ぎを行った案件のうち、約7割が第三者譲渡、約2割が従業員等承
継となっている。このうち、第三者譲渡については、約7割が株式譲渡、約2
割が事業譲渡によるものとなっている。
事業引継ぎの承継形態
第三者譲渡の手法
7
事業引継ぎを行った案件を売上高規模で見ると、譲り渡し企業は、売上高5
億円以下の企業が約8割を占めている。他方、譲り受け企業は、売上高5億円
超の企業が約6割を占めている。
譲り渡し企業の売上高別内訳
譲り受け企業(第三者譲渡)の
売上高別内訳
同様に従業員規模で見ると、譲り渡し企業は、従業員数20名以下の企業が
約8割を占めている。他方、譲り受け企業は、20名超の企業が約7割を占め
ている。
譲り渡し企業の従業員別内訳
譲り受け企業(第三者譲渡)の
従業員別内訳
8
③事業引継ぎ支援事業における支援スキーム
ⅰ.一次対応
常駐する専門家による無料の相談対応。ヒアリングや面談等を通じて、
事業引継ぎ支援を実施するかどうかの判断を行う(経営改善等が必要であ
ると認められる場合は、よろず支援拠点、商工会議所、商工会等の相談窓
口を、再生手続きが必要であると認められる場合は、再生支援協議会を紹
介するなど、適切な支援機関に取り次ぎを行う。)。
具体的には、中小企業者等からの相談に対し、助言や課題解決に向けた
情報提供を行うとともに、事業引継ぎ支援を実施する判断材料となる情報
収集等を行う。必要に応じて、事業診断や課題の洗い出し、経営計画の策
定等の支援も行う。
ⅱ.二次対応
一次対応案件のうち、継続支援が必要と判断した案件について、企業
名が特定されないように加工した企業情報(ノンネームシート)を登録
民間支援機関(センターに登録された民間の事業引継ぎに係るマッチン
グ支援機関。以下「登録機関」という。)へ送付する。
中小企業者側から特定の登録機関を指定することも可能であるが、特
段の指定がない場合は、センターから全登録機関宛にノンネームシート
を送付し、関心を示した登録機関と相談者が面談を行い、支援の継続の
可否を決定する。
ⅲ.三次対応
相談者と他者との間で事業引継ぎに関する事前合意が形成されてい
る場合や、二次対応の不調案件も含め、センターが適当なマッチング相
手を紹介できる可能性がある場合は、センターが直接事業引継ぎに必要
な助言等の支援を行う。
9
【事業引継ぎ支援センターの支援スキーム】
事業引継ぎを行った案件に占める
2次対応、3次対応の件数
成約件数
2次対応
3次対応
56
93
37
出所:中小企業事業引継ぎ支援全国本部
平成23年度~26年9月までの累計値
10
④データベース
全国本部は、M&Aを希望する全国の企業情報を登録するためのデータ
ベースを構築し、平成27年1月末から稼働を開始する予定。
データベースに登録された企業情報は、全国のセンター間に共有され、こ
れまでの域内マッチングに加え、広域マッチングも本格的に開始される。
11
⑤「後継者人材バンク」
「後継者人材バンク」は、後継者不在の小規模事業者(主として個人事業
主)と創業を志す個人起業家をマッチングすることにより、
「地域に不可欠な
事業」を存続させるとともに、
「意欲ある起業家による創業」を同時に実現す
る取り組み。
「後継者人材バンク」により、起業家は、現経営者から顧客や仕入れ先、生
産設備等の経営資源を引き継ぐため、起業に伴うリスクを低減することが見
込まれる一方、現経営者は、事業を次世代に引き継ぐとともに、事業存続を
望む従業員や取引先、地域からの期待に応えることができる。
「後継者人材バンク」は、平成26年4月に静岡県センターにおいて取り組
みがはじめられ、順次、全国のセンターで取り扱いが開始される予定。
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