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電子線描画装置を用いたナノ加工事例
電子線描画装置を用いたナノ加工事例 神奈川県産業技術センター 電子技術部 技術支援推進部 1.はじめに ○安井学,小沢武 平林康男 認した。 ナノテクノロジーの代表的な加工方法として電子 図 1 にピッチ:1,ドーズ時間:30s,ドーズ量: 線 リ ソ グ ラ フ ィ ( EBL : Electron Beam 480C/cm2 の描画例を示す。描画されたパターンは, Lithography)がある。EBL は電子線に反応する物 直径:約 180nm の円形パターンであった。また, 質を塗布した基板に電子線を直接当てることで,ナ 図 2 に,ピッチ:2,ドーズ時間:14s,ドーズ量: ノサイズのパターンを形成できる。ただし,パター 112C/cm2 の描画例を示す。描画されたパターンは, ンを電子線で直接描くために,大面積を描くには長 直径:約 260nm の円形パターンであった。予想に 時間を要するという課題がある。 反して,ドーズ量を多く与えた描画例で,直径が小 本発表では,当センターで保有する電子線描画装 さくなった。原因として,ZEP-520A-7 は過度にド 置 ELS-6600(㈱エリオニクス製)において,描画条 ーズ量を与えると現像できなくなる性質を有する。 件を選択することで,描画時間の短縮とそれに伴う そ の た め , 480C/cm2 で 描 画 し た 場 合 に は , パターン形状の変化について検討したので報告する。 ZEP-520A-7 が十分に現像できず,直径が小さくな 2. 実験装置 ったと考えられる。 ELS-6600 の簡単な仕様を述べる。描画領域は 数百 nm のサイズでは,電子線の基板からの後方 200m×200m, 又は 500m×500m を選択できる。 散乱の影響等により,正方形でパターン設計しても, これらの描画領域を 20,000×20,000 ドット,又は, 描画される形状は,円形となってしまった。 しかし, 60,000×60,000 ドットに分割できる。その際に,ピ ピッチを変化させたことによるパターンの欠けなど ッチと呼ばれるドットを間引く設定も可能である。 の影響は見られなかった。 また,EBL を用いたパターン形成では,感光性樹 脂が感光するドーズ量(1 ドット辺りの面積に対す る電流値と電子線照射時間(ドーズ時間)の積)の 電子線を与える必要がある。なお,電流値,ドーズ 時間は調整可能である。 3. 実験方法 実験に使用したポジ型電子線レジストは ZEP-520A-7( 日 本 ゼ オ ン 社 製 ) で あ る 。 膜 厚 は 250nm で あ る 。 描 画 領 域 : 500m×500m を 20,000×20,000 ドットに分割するように設定した。 実験では,ドーズ時間とピッチを因子として,描画 図 1 ピッチ:1,ドーズ時間:30s の描画例 時間とその形状に与える影響を検討した。パターン 形状は 200nm×200nm の正方形に設定した。電流値 は 1×10-10A に固定した。 4. 実験結果 ピッチを 1 に設定し, ドーズ時間を 2s から 30s まで描画した。その結果,ドーズ時間にかかわらず 描画時間は約 2.1 時間であった。 次に,ピッチを 2 に設定し,同様に描画をおこな ったところ,描画時間は約 1.2 時間であった。 以上から, ドーズ時間による描画時間への影響は, ほとんどないこと,及びピッチを 1 から 2 に変更す ることで,描画時間が 4 割近く短縮できることを確 図 2 ピッチ:2,ドーズ時間:14s の描画例