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Windows環境における半導体デバイス評価システムの構築とその運用
Windows環境における半導体デバイス評価システムの構築とその運用 葉山清輝,工藤友裕,博多哲也,紫垣一貞, 徳山順也,米岡将士,新貝秀雄,田口泰幸,大山英典 (熊本電波工業高等専門学校) Construction and operation of semiconductor devices evaluation system on Windows environment. Kiyoteru Hayama, Tomohiro Kudou, Tetsuya Hakata, Kazusada Shigaki, Junya Tokuyama, Masasi Yoneoka, Hideo Shingai, Yasuyuki Taguchi, Hidenori Ohyama (Kumamoto National College of Technology) The automatic evaluation system for semiconductor devices is developed on Windows personal computer with GP-IB interface. These application software were made by using Visual Basic. The data, measured with the software on local computer, are gathered to the file server through the network. The system has following improvements in comparison with our previous system on DOS environment. (1) Parallel operations are useful on inputting parameter, drawing graph, and viewing online manuals. (2) It is easy to share of the data using network file system. (3) It is possible to centralize the extensive data and easy to make backup one. In this paper, the constitution and working our system are described, and its efficiency for the evaluation of semiconductor devices are also reported. Key word: GP-IB, Windows, evaluation, semiconductor devices 1.緒言 本校の半導体デバイス研究グループは,教官6 名,技官3名,及び卒研生24名から構成されてお り,①デバイスの放射線損傷の解明,②放射線照射 に強固な電子回路の設計,③アルミナ系絶縁材料の デバイス応用,④Si系光デバイスの製作と評価,に 関するテーマについて,ベルギーのIMEC (Interuniversity Micro Electronics Center)や地 場企業4社と共同で研究を実施している.また,熊 本テクノポリス財団と連携した地場半導体関連技術 者を対象としたセミナーも並行して開催している. 多数の卒研生や民間の共同研究者,若くはセミ ナー参加者が効率の良い半導体デバイスの特性評価 を行うためには,自動計測システムの導入は必要不 可欠である.こうした背景から,本研究グループで は12年前から測定機器と制御用のパーソナルコン ピュータ(PC9801,NEC製)をGPIBインター フェースで接続した自動評価システムを開発し,活 用していた.しかしながら,近年のパーソナルコン ピュータ(以下,PC)の性能向上とネットワーク環 境の充実を踏まえると,これには以下のような問題 点が顕在していた. 1)DOS環境であるので,測定とデータ処理のプロ グラムを同時に立ち上げることができないなど,操 作性が悪かった. 2)ネットワークに未接続であったため,測定系か らデータ解析系へのデータ転送が繁雑であった. 3)蓄積した測定データが膨大になったため,デー タの管理が困難になった. これらの問題点を解消するため,Windows環境に 対応した半導体デバイス評価システムの開発を行っ た.更に,専用サーバにより測定データを一元管理 できるようにした. 本論文では,新しく開発した半導体デバイス評価 システムの運用形態,評価システムの開発,及び半 導体教育・研究における有用性について報告する. 2.デバイス評価システムの運用形態 2.1 デバイス評価室の概略 本校では教官同士の共同研究が推進されており, 従来個別に分かれていた研究室を相互に移動し,従 来の卒研室3つ分の部屋を確保して共同研究室とし て利用している.最近この様な卒研室の利用が本校 内で進んでいる.その中に測定システム,データ評 価用のPCを配置した.領域を,測定ゾーン,データ 解析ゾーン,ミーティングゾーンの3つに分け, オープンスペースでありながら,それぞれの領域を 分けて作業の効率化を図った. 2.2 研究室内LANの構成 従来のネットワーク未対応のDOS環境における 自動評価システムの欠点を克服して,新たに Windows環境に対応した半導体デバイス評価システ ムを構築した. 本研究室では以前から測定制御及びデータ解析に PCを使用してきたが,早い段階からGUI(グラフィ 表1 GPIBボードの概略 入出力形式 : IEE-488(GP-IB)準拠 チャンネル数: 1チャンネル 使用コントローラ:TMS9914A(TI) 転送速度: 160(40) Kbyte/s ,DMA(非)使用時 DMA転送機能:PC本体のコントローラにより転送可能 割り込み機能: TMS9914AとDMA終了の2要因 占有アドレス: 8アドレス ボードバス形式:ISAバス準拠 使用可能機種 :IBM PC/ATまたはその互換機 価格: 39,000円 カル・ユーザー・インターフェース)を採用し, データ解析及びプレゼンテーション用資料作成の能 力に優れていたMacintosh(以下,Mac)をデータ 解析に用いてきた.Macではプログラム作成が比較 的難しいので,DOS/V機(Windows95:以下, Win)を計測制御用PCに用いてきた.蓄積された過 去データとの継続性から,解析にはMac,測定制御 にはWinを使い分けている. 測定制御用(一部手動のものを除く)とデータ解 析用のPCはLANにより結ばれている.その構成図を 図1に示す.Windows95上にサーバー機能を持つ 市販のソフトウェア(PCMACLAN,ディアイティ 社)をインストールしたPCをファイルサーバーとし て用いており,これにより測定制御に用いられてい るWinとデータ解析に用いられているMacとでファ イルを共有することができる.その結果,膨大な測 定データの一元管理がしやすくなった. 測定データは,制御用PC(Win)からファイル サーバーに保存され,データ解析ゾーンのPC(Mac) によりデータ処理が行われている.サーバーに備え られた外付けHDにデータを保存するようにしてお 校内LAN バックアップ用 ファイル サーバ Mac Mac 共有プリ ンタ:Mac Mac 外付 けHD 制御用 PC:Win 制御用 PC:Win Win 共有プリ ンタ:Win 共有プリ ンタ:Mac データ解析系 外付 けHD 測定制御系 図1 研究室内LANの構成図 表2 関数(使用した関数を抜粋) GpibInit: 初期化 GpibSetTime: タイムアウト待ち時間設定 GpibInfo: GPIBボードの情報取得 GpibIfc: IFC GpibRen: REN GpibSendCmd: GPIB コマンド送信 GpibSend: デ-タ送信 GpibRecv: デ-タ受信 り,これを定期的にバックアップすることにより データの消失を防いでいる.サーバーは校内LANに 接続されているので卒研室以外,例えば教官室から でも測定データを参照できる.共有プリンタは操作 性を考えてMac用を2台,Win用を1台備えた. 3.自動評価システムの開発 3.1 開発環境 Windows環境に対応した計測器制御用ソフトウェ アには優れた市販品があるが(LabView:ナショナ ルインスツルメント社,HP-VEE:ヒューレット パッカード社など),市販の測定制御用ソフトウェ アは高価であり,またサポート外の機器を制御させ るには不便なので1,2),Windows環境のプログラミン グ言語であるVisualBasic(Microsoft社,以下 VB)を用いて測定システムを独自に開発した3). 制御用PCよりGPIBインターフェースを介して計 測器を制御した.GPIBボードは市販の製品の中でも 比較的安価で,制御用ドライバ付属の製品(aISAG01,(株)アドテックシステムサイエンス 4) )を 用いた.本ボードの概略を表1に示す.本ボードは プラグアンドプレイに対応していないので手動で ボードアドレスと割り込みレベルの設定を行わなけ ればならなかった.添付ソフトウエアの,セット アップ用プログラム(SETUP.EXE)を実行すると WindowsのSYSTEM.INIファイルの変更と,仮想デ バイスドライバ,ダイナミックリンクライブラリの コピーが行われる.開発環境としては,C/C ++ 言 語,VBに対応しており,前述のようにVBを用い た.VBでアプリケーションを開発する場合,添付 されたヘッダーファイルをプロジェクトに追加する だけで,用意された関数を用いてGPIBインター フェースを制御できる.主な関数を表2に示す5). 使用した制御用PCのCPUのスペックは,ソフト ウェア開発にPentiumII-233MHz程度,実際の制御 にはPentium100MHz程度の物である.測定制御系 は数年前のスペックのPCで不便なく運用できてい る.I/V測定機器としては,ヒューレットパッカー D: ¥Ivmeas Ivmeas.exe メニューウィンドウ ¥Plotw32 Plotw32.exe ¥Parameter パラメータ.pa1 パラメータ.pa2 パラメータ.pa3 単電源測定 固定電源/可 変電源測定 半固定電源/ 可変電源測定 ユーザーイ ンタフェー ス部 ユーザーイ ンタフェー ス部 ユーザーイ ンタフェー ス部 測定部 測定部 測定部 図2 測定システムの構造 単電源測定 ユーザーインタフェース部 測定ウィンドウ ・回路図 ・パラメータ入力 ・測定スタート ・グラフ作成 ・データ保存 ・測定終了 回路図表示ウィンドウ パラメータ読込ウインドウ(パ ラメータファイル操作) グラフ作成 (フリーソフト) データ保存ウィンドウ (ファイル出力) 測定部 測定 初期化 :GpibInit(), ・・・ 制御コード出力:GpibSend() データ入力 :GpibRecv() 制御コード 測定データ ファイル (作業用) データ 計測機器 データファイル *.dat パラメータファイル parameter/*.pa1 図3 単電圧測定部分の構成 ド社の4140B,または(株)アドバンテスト製の直 流電圧電流源R6144と同社のディジタルエレクトロ メータTR8652を用いた.DLTS測定装置は,島田 理化工業(株)のウエハーアナライザシステム (17D40)を用いた.これらにはGPIBインター フェースが標準装備されている. 3.2 システムの開発 今回開発したのは,電流・電圧特性(I/V)測定 と,容量・電圧特性(C/V),DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)測定システムである.従 ¥Vbsources ¥Ivmeas VBソースファイル 図4 ディレクトリ構造 来のDOS環境ではその他に,容量・温度特性 (C/T),光量・光電流特性の測定システムを構築 していたが,これらは順次Windows環境に移植を行 う予定である.DOS環境とWindows環境では, ユーザーインターフェース部分に大きな違いはある が,プログラムの測定部分においては,機器に固有 の制御コードやデータの送受信を行うだけで本質的 な違いはない.ユーザーインターフェース部分は I/V測定システム開発時に既に完成しているので, その他の測定システム開発には測定機器固有の制御 コードを機器に応じて変更すればよい. システム開発の基本方針は,学生に使わせること を想定し,汎用性よりも使いやすさを重視した.測 定内容によってフォームを別個に作成し,それらを メニューにて統合したシステム形態とすることで各 フォームを小さくまとめることで,学生にも動作が つかみ易いものとなった.例えば,I/V測定システ ムは図2のように,単電源測定,固定電源/可変電 源測定,半固定電源/可変電源測定の3つを個別に 開発し,それらを統合してメニューウィンドウから 各測定項目を呼び出すようにした.特に単電圧測定 部分の構成を図3に示す. 測定に際しては,GPIBボードの初期化,タイムア ウト時間の設定等(GpibInit(),GpibSetTime(), 等)をプログラムの初期に実行する.計測機器制御 のためのコードは,GpibSend関数を用いて,リス ナアドレス,送信バイト数,デリミタモード等と同 時に機器に送る.測定データは,受信バイト数,デ リミタモード等を指定してGpibRecv関数により受 け取る.アプリケーションにおいて関数呼び出しを 行うと,専用のダイナミックリンクライブラリを介 して仮想デバイスドライバにアクセスし,これが GPIBボードを制御するので,アプリケーション作成 において特にハードウェアを意識する必要はない. また,ハードウェア割り込み処理により,システム がバックグラウンドにあっても測定は続行される. I/V測定ではデータ量が少ないので,マルチタスク 処理を行った場合も測定時間に影響する等の問題は ない. 測定データをグラフ化するときは,データをいっ たん作業用ファイルに保存し,VBのshell関数によ り,作業用ファイル名を引数としてグラフ作成のフ リーソフトウェア 6) を呼び出している. 図4は 開発したシステムのディレクトリ構造である.ソー スファイルと実行形式ファイル(Ivmeas.exe),グ ラフを表示するために用いるフリーソフトウェア (plotw32.exe),及び測定時に使用する測定パラ メータファイルがある.後述するように測定の種類 によってパラメータの拡張子は,「pa1,pa2, pa3」と使い分けている. 3.3 実際の測定操作 実際の測定操作を順に示す.実行形式ファイルは スタートメニューの中に登録してある.スタートメ ニューからプログラムを実行すると,図5のような メニューウィンドウが現れる. I/V測定に関して, (1)単電源測定(可変電圧源測定) (2)固定電圧源/可変電圧源測定 (3)半固定電圧源/可変電圧源測定 の3項目が用意されている. (1)の単電源測定は,ダイオードのI/V測定等 に用いる. (2)の固定電圧源/可変電圧源測定は,例え ば,FETの伝達特性(V GS -I DS 特性)の測定に用 いる.この場合,V DSを固定電圧源に,V GSを可変 電圧源にしてIDSの測定を行う. (3)半固定電圧源/可変電圧源測定は,例え ば,FETの出力特性(V DS -I DS 特性)の測定に用 いる.この場合,V GSを半固定にして,V DSの変化 図5 メニューウィンドウ に対するIDSの変化を測定する. ここでは,(3)の半固定電圧源/可変電圧源測定に ついて具体的に述べる.所定の回路を接続した後, メニューウィンドウから「半固定電源/可変電源測 定」ボタンを押すと図6の測定ウィンドウが現れ る.回路が不明なら「回路図」ボタンを押せば測定 回路例が表示される. 図中左側のテキストボックスに,電圧の初期値, 終値,増分を入力して,「測定スタート」ボタンを 押すと,図中右側のテキストボックスに測定データ が表示される.測定データは2通り表示され,一つ は測定データを順次表示するもの,もう一つは,測 図6 測定ウィンドウ(半固定電源/可変電源測定) 図7 パラメータ読込ウィンドウ (半固定電圧源/可変電源測定) 図8 測定中の画面 定データを並べ替えて,可変電圧に対する測定電流 値を半固定電源の変化の順に並べたものである. 初期値,終値,増分などの測定パラメータは,素 子の種類に応じて値を変えなければならないが,素 子の種類により一定値の場合が多い.操作を簡略化 するため,測定パラメータはファイルに記録してお き,それを随時読み込んで使うことができるように している.「パラメータ読込」を押すと図7のウィ ンドウが現れる.パラメータファイルを選ぶとその 内容が表示される.測定項目とパラメータファイル の拡張子を関連づけてあり,この場合,「.pa3」の 拡張子をもつファイルだけがウィンドウに現れる. 「転送」ボタンを押すと,図7のウィンドウに表示 されたパラメータが図6のウィンドウ中に転送され る.また,図7のウィンドウにより,パラメータを ファイルに保存できる. 測定終了後,「データ保存」ボタンを押すとデー タ保存用のウィンドウが開くので,フォルダとファ イル名を入力することにより測定データを保存する ことができる. 「グラフ」ボタンを押すとデータをグラフ化す る.例えば雑音の入りやすい測定を行う場合,同じ 素子の測定を繰り返しながらグラフを並列に表示 し,最も良い測定結果を選んでファイルに保存する という操作も可能である.測定中のPC画面の一例 を図8に示す. 測定を終了するときは,「測定終了」ボタンによ りメニューウィンドウに戻る. 3.4 オンラインマニュアル作成 測定に不慣れな学生のために詳細な操作説明を作 成し,オンラインマニュアルとして研究室のWeb ページに公開している 7) .本システムの操作自体は 非常に簡単であるが,実際に使う上では被測定素子 の基本的な特性と測定系の原理を理解していなけれ ばならない.また,これまでの経験から,年度が変 わったときの学生間の引継ぎ,新たな測定制御系の 開発のためには,詳細なマニュアルを整備しておく ことが重要だと痛感している. 4.半導体教育・研究における有用性 低学年の学生実験における半導体素子の特性測定 では,個別の電源,電圧計,電流計を接続して手作 業で順次データを記録し,グラフ化する方法をとっ ている.しかし,高学年の実験では測定器をコン ピュータ制御して計測を行う手法を学ぶことも必要 である.本研究以前に構築されたPC-9801による自 動計測システムは既に高学年の学生実験に取り入れ ており,手作業での測定しか知らない学生には好評 であった.本研究で構築したシステムも学生実験に 取り入れるので,より以上の学習効果が期待でき る. 一方,卒業研究,教官研究においては,システム の操作性の向上,データ転送の煩わしさの解消,及 び測定データの管理の容易さから,研究の効率化が 期待される. 5.結言 Windows環境に対応した半導体デバイス評価シス テムを構築し,専用サーバにより測定データを一元 管理できるようにした.従来と比較して本システム は以下の長所を有する. 1)DOS環境と較べて操作性が格段に向上し,測 定,回路図の表示,オンラインマニュアル等を並列 に操作することができる. 2)ネットワーク環境に対応しているのでデータの 共有が容易である. 3)膨大な測定データの管理が容易になった. 今回の環境整備により,学生実験や卒業研究がよ り円滑に行えるようになったと思われる.また,外 部との共同研究等,対外的活動においても,機器を 利用してもらいやすい環境整備を行うとともに,そ のような環境維持の教育についても心がけている. なお,本論文で述べた自動評価システムのソース ファイル等は申し出があれば提供する8). 参考文献 1)臼井敏男他,半導体デバイス評価に関する自動計 測システムの開発,論文集「高専教育」,22号, 85,1999. 2)臼田昭司他,Windows時代の計測・制御,CQ出 版,1997. 3)河西朝雄,Visual Basic5.0(中,上級編),技 術評論社,1998. 4)http://www.adtek.co.jp/seihin/aisa/aisag.html 5)aISA-G01ソフトウェアマニュアル,(株)アド テックシステムサイエンス 6 ) h t t p : / / k i l in . u - s h i z u o k a ken.ac.jp/softs/softs.html 7)http://www.tc.knct.ac.jp/lab/haya-lab/ 8)mailto:[email protected]