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選挙運動とネット活用
2013/6/24 情報産業と社会 第12回:選挙とインターネット 2013.6.24 宿南達志郎 Part0:選挙権とは? • かつてはごく一部の人だけの権利であった。 – 1889年に最初の選挙 • 財産や性別などで差別されることなく、みんなが 投票できるようになるまでには、大変な努力と長 い歴史があった。 • しかし、投票率は低い – 都議選の投票率は男性43.13%、女性43.86% ←過去2番目の低さ • 過去最低は、1997年の40.80% 1 2013/6/24 衆議院議員選 挙投票率 • 2012の衆院選(小選挙区)の投票率が59.32%と なり戦後最低に。 – これまでは1996年の59.65%が最低。 • 前回09年の69.28%と比べ10ポイント近く下落。 1%→48%まで56年かかった 2 2013/6/24 選挙権の条件緩和 年齢 性別 1989 1900 1919 1925 1945 25歳以 上 男子 20歳以 上 男女 納税額 15円以 上 10円以 上 3円以 上 秘密 公開 秘密 無条件 Part1:公職選挙法(改正前) 3 2013/6/24 公職選挙法‐1 • (制限あり) – 選挙資金 制限あり – 街頭演説会 朝8時から夜8時まで – 新聞広告 回数制限あり – ポスター 選挙掲示板のみ – 配布物 1種類のパンフ(書籍) – 候補者の主張 NHKでの政見放送のみ 公職選挙法‐2 • (禁止) – 事前運動 – 戸別訪問 No No • (制限なし) – 電話 第三者ならOK – 連呼 自動車と船舶からはOK 4 2013/6/24 公職選挙法‐3 • 公職選挙法はいつ制定された? – 1950年4月←戦後5年目。63年前 • 公職選挙法で規制が多い理由 – お金のかからない方法で公平性を保つため – 運動期間を限定して費用を最小化するため – 個別訪問時に金銭の授受を行うことを防止する ため – ポスター等の文書図画も規格と数量を制限 – 選挙資金も最大額を法定化 – 住民の安静な生活を保証するため 公職選挙法‐4 • (文書図画の頒布) • 第142条 衆議院(比例代表選出)議員の選 挙以外の選挙においては、選挙運動のため に使用する文書図画は、次の各号に規定す る通常葉書並びに第1号から第3号まで及び 第5号から第7号までに規定するビラのほか は、頒布することができない。 ⇒メール、ウェブ、twitter、SNSなど は全て文書図書の扱い(=禁止) 5 2013/6/24 公職選挙法‐5 • 1.衆議院(小選挙区選出)議員の選挙 にあつては、候補者1人について、 • 通常葉書 35000枚、 • 2種類以内のビラ 7万枚 – 選挙管理委員会への届け出が必要 公職選挙法‐6 • (文書図画の掲示) • 第143条 • 2 選挙運動のために、アドバルーン、ネオ ン・サイン又は電光による表示、スライドその 他の方法による映写等の類を掲示する行為 は、前項の禁止行為に該当するものとみなす。 ⇒コンピュータディスプレイへのメッ セージ掲示も禁止。 6 2013/6/24 主な問題点 • 政治活動でのネット利用は可能 –しかし、肝心な2週間の「選挙運動期 間」にはネット活用「禁止」なのが問題。 • 政党名や候補者名のみでの投票判 断 –Oldメディア(新聞、テレビ)とポスター だけでは、ほとんど候補者の実態が 分からない 海外のネット選挙に関する規制 • 欧米主要国では、選挙運動の形態(ネットな ど)による規制はほとんどない。 • 選挙資金に関する規制が中心。 7 2013/6/24 各国の選挙規制 http://www.jiji.com/jc/v?p=ve_pol_election‐syugiin090828j‐02‐w540 米大統領選挙 SNSで進化するネット選挙 • 選挙関連の情報を主にインターネットから入 手しているという人は、82%にのぼっている – FB利用者1.4億人(2012) • ソーシャルメディアを駆使できるか否かが、大 統領選挙で若者や無党派層を取り込むため の鍵 • パーティーの参加者を集めるのに一役買った のは、専用のソーシャルメディアサイトだ。 http://www.nhk.or.jp/worldwave/marugoto/2012/09/0903.html 8 2013/6/24 • サイトを通して、同じ地域に住む、同じ考えを 持った支持者を探すことができる。 http://www.nhk.or.jp/worldwave/marugoto/2012/09/0903.html • 共和党大会会場では、動画配信サイトユー チューブ向けの番組を放送。 http://www.nhk.or.jp/worldwave/marugoto/2012/09/0903.html 9 2013/6/24 • オバマ大統領。 – 前回の選挙では、ソーシャルメディアを使った 選挙戦の先駆者 – 今回の大統領選挙では、ミシェル夫人も参戦。 • ピンタレストに、家族写真やレシピなどを投稿 http://www.nhk.or.jp/worldwave/marugoto/2012/09/0903.html • アメリカン大学 コミュニケーション学科 デ ビット・ジョンソン教授 – ただし、ソーシャルメディアの議論は熱しやすく 冷めやすい。 http://www.nhk.or.jp/worldwave/marugoto/2012/09/0903.html 10 2013/6/24 Part2:公職選挙法の改正点 • インターネットでの選挙運動を7月の参院選から 解禁する改正公職選挙法が、4月19日に成立 • ネット選挙運動 「できること」 – – – – WebとSNSへの書き込みは有権者も含めOK さらに 政党:特定のメール、有料ネット広告 候補者: • 特定のメール • 遊説スケジュールは従来からOK(政治活動扱い) ところで選挙運動の定義は? • 「特定の候補者の当選」を目的としているか どうかで判断 – 「○○候補に投票をお願いします」⇒該当 – 「○○候補を落選させよう!」 • 特定の候補者を当選させる目的あり⇒該当 • 特定の候補者を当選させる目的なし⇒該当せず • 選挙運動期間=17日間 – 投票日当日は含まれず 11 2013/6/24 • 選挙期間中にウェブサイトやブログ、掲示板、 SNSなどで、有権者が特定候補者への投票を 呼びかけていいことなった。 – Facebookの「いいね!」やTwitterのリツイート、 動画の共有など – 特定候補者の落選を呼びかける「落選運動」。 – ただし、誹謗中傷やなりすましを防ぐため、メー ルアドレスなどの連絡先を表示する義務がある。 できないこと • 未成年者は選挙運動 を行えない(ネットで も)。 • 有権者が携帯電話の SMSおよび電子メー ルを選挙運動に使え ない。⇒右図 • 選挙運動メール不要 と答えた人へは送信 はできない。 12 2013/6/24 (できないこと) • ホームページを印刷して、第三者に渡すと違 反。→印刷物の配布はこれまで同様禁止 • RT(候補者のつぶやきをリツイート)も選挙運 動の扱い • 誹謗中傷や名誉棄損となる書き込み • 氏名などを偽るなりすまし 13 2013/6/24 公職選挙法の一部を改正する法律案 • (ウェブサイト等を利用する方法による文書図 画の頒布) 第百四十二条の三 • 第百四十二条第一項及び第四項の規定にか かわらず、選挙運動のために使用する文書 図画は、ウェブサイト等を利用する方法(のう ち電子メールを利用する方法を除いたもの) により、頒布することができる。 • (電子メールを利用する方法による文書図画の 頒布) 第百四十二条の四 • 第百四十二条第一項及び第四項の規定にかか わらず、次の各号に掲げる選挙においては、そ れぞれ当該各号に定めるものは、電子メールを 利用する方法により、選挙運動のために使用す る文書図画を頒布することができる。 一 衆議院(小選挙区選出)議員の選挙 公職 の候補者及び候補者届出政党 14 2013/6/24 • (インターネット等を利用する方法により当選を得させない ための活動に使用する文書図画を頒布する者の表示義 務) 第百四十二条の五 • ・・・その者の電子メールアドレス等が、当該文書図画に係 る電気通信の受信をする者が使用する通信端末機器の 映像面に正しく表示されるようにしなければならない。 • 2 選挙の期日の公示又は告示の日からその選挙の当 日までの間に、電子メールを利用する方法により当選を得 させないための活動に使用する文書図画を頒布する者は、 当該文書図画にその者の電子メールアドレス及び氏名又 は名称を正しく表示しなければならない。 • (選挙に関するインターネット等の適正な利 用) 第百四十二条の七 • 選挙に関しインターネット等を利用する者は、 公職の候補者に対して悪質な誹謗中傷をす る等表現の自由を濫用して選挙の公正を害 することがないよう、インターネット等の適正 な利用に努めなければならない。 15 2013/6/24 自主解散の中間市議会、全国初の ネット選挙に • 福岡県中間市の職員3人が逮捕・起訴された生 活保護費不正受給事件を受け、同市議会(定数 19)は7日、「市議会にも責任がある」として、議 員提出の自主解散動議を賛成多数で可決、即 日解散した。 • 出直し市議選は7月7日告示、同14日投開票に 決まった。 • 参院選公示後の選挙からインターネット選挙が 解禁されるため、ネット選挙による全国初の投開 票になる見通し。 • (2013年6月8日11時37分 読売新聞) 何が変わる? • これまで – 地盤(後援会)、看板(知名度)、かばん(資 金) – 若いころの写真、場当たり的な発言 • これから – 支援者(全国)、政策(一貫性)、個人の魅力 – 実際の写真・動画、過去の言動との比較 16 2013/6/24 ネットを選挙に活用するメリット‐1 • 候補者の考え方がより詳細に国民に伝わる。 – 多様な表現が可能(比較表、映像など) – 好きな時間帯に様々な機器で閲覧できる。 – ⇒現在は「名前の連呼」のみで、具体的な主張が 分からない。 • 候補者に直接具体的な質問をすることも可能。 – ⇒荒らし、炎上、誹謗中傷対策は必要 • 若年層の投票率増加 – 新聞もテレビ(政見放送)も見ない若者にはネットで 伝えるのが効果的 ネットを選挙に活用するメリット‐2 • 選挙費用の削減 – (例)参議院全国区:ハガキ15万枚、ビラ25万枚、ポ スター7万枚まで可能 – ハガキ郵送費だけで750万円 – 印刷費用を入れると2千万円超 – ⇒参議院選挙:570億円、衆議院選挙:800億円が国 費で賄われている • 個人献金の普及 – Obama氏は、2008年選挙で、3.3億ドル以上を集めた 17 2013/6/24 よく言われるデメリットと解決策 • デジタル・デバイド – 候補者、有権者 – ⇒しかし、従来の方法が禁止されるわけではない。 • HPの悪用等 – – – – 候補者、第三者(支援者、反対者) ⇒ISPの削除を容易にすべき 迷惑メール ⇒当面は実名のSNS中心でも良い • 費用の増加 – ⇒ネットの費用だけ見ると増加だが、全体は低下も 十分可能。何よりも費用対効果はネットがベスト Part3:これからの課題 • 電子メールの利用について、「次々回の国政 選挙における解禁について適切な措置を講 じる」という付則が盛り込まれた。 – 「誰々さんが当選して欲しいと、ツイッターでつぶ やいても良いが、メールで送ったらダメというのは、 非常にわかりにくい」 • 7月の参院選での実施状況によっては、電子 メールについても全面解禁される方向へ進む かもしれない。 18 2013/6/24 • 有料広告は無所属に不利では? – 選挙運動の費用は、公職選挙法で上限が定めら れている。 – たとえば前回2010年の参院選の場合、比例代表 は5200万円、選挙区はおよそ3014万6600円~ 7250万円だった。 – 政党の政治活動としての費用に規制はない。 – 資金力のある政党は、有料バナー広告を大量に 出稿して候補者の「顔を売る」こともできる。 選挙権年齢は20歳で良いの? • 世界の大勢は18歳以下 – 189 か国・地域のうち、18歳までに選挙権を付与して いるのは170 か国・地域となっている。 – OECD加盟30 か国では我が国と韓国(19 歳)を除くす べての国が18 歳までに選挙権を付与している。 • 16歳への引き下げの動き – イギリスやドイツでは16 歳への引下げを議論 – オーストリア(2007.6) – ドイツの:一部の州で16 歳 19 2013/6/24 3.各種調査結果 クリックリサーチ(2012/5/29 ‐ 6/12) • 選挙期間中のインターネット利用について お聞きします。候補者のネット利用はどこ まで認めるべきだと思いますか?<総投 票数101> – HP更新とSNS(Twitter・Facebook)利用 43.6% – HP更新、メール送信、とSNS利用 35.6% – ホームページ(含むブログ)の更新 11.9% – HP(含むブログ)更新とメール送信 4.0% http://seijiyama.jp/investigation/clickresearch.html 20 2013/6/24 クリックリサーチ(2012/5/15 ‐ 5/29) • 今国会にインターネットを利用した選挙活 動を一部解禁する法案が提出されていま す。この「ネット選挙」について、あなたはど う思いますか?<総投票数201> – すぐにでも解禁すべき 64.7% – 賛成だが、慎重に検討すべき 27.4% http://seijiyama.jp/investigation/clickresearch.html ネット選挙の意識調査、ネットと電話 で賛否が分かれる • 今回の調査は、現在日本で規制されているネッ トを利用した選挙運動に関する課題の抽出が目 的。 • 若年層のカバー率が高いネットによる調査と、50 代以上のカ バー率が高い電話による調査を実 施し、世代間の傾向の違いを炙り出している。 • 調査結果は、ネット選挙運動の解禁を目指して5 月23日に開催されたイベント 「ONE VOICE サミッ ト」に参考資料として提供された。 「ネット選挙に関する意識調査」 政治山と株式会社ジー・エフと共同で実施(2012.5) 21 2013/6/24 インターネット選挙って何?(ネット) 投票>選挙活動>情報提供 http://seijiyama.jp/investigation/investigation_4.html インターネット選挙って何?(電話) 分からない>投票>情報提供 http://seijiyama.jp/investigation/investigation_4.html 22 2013/6/24 ネット選挙の賛否(電話調査) <50代以上:反対が64%> http://japan.cnet.com/news/society/35017452/ ネット選挙の賛否(ネット調査) <20代以上:賛成が69%> http://japan.cnet.com/news/society/35017452/ 23 2013/6/24 賛成理由 理由 ネット調査 電話調査 場所や時間を選ばず 64.5% に情報を得られるから 30.3% 候補者に関する多様 54.4% な情報を得られるから 22.5% 選挙費用が安価にな るから 21.6% 59.4% http://japan.cnet.com/news/society/35017452/ 反対理由 理由 ネット調査 電話調査 他陣営や無責任な第三 者による悪用(いたずら・ 誹謗中傷)があるから 59.8% 22.5% 迷惑メールが大量に発生 55.0% するから 20.0% ネットの利用には個人差 (デジタル・ディバイドな ど)があるから 26.1% 54.1% http://japan.cnet.com/news/society/35017452/ 24 2013/6/24 投票率(ネット調査) 欠かさず投票は62%<20代は39%> http://seijiyama.jp/investigation/investigation_4.html インターネット投票(ネット調査) 47%が希望<普段行かない人の44%> http://seijiyama.jp/investigation/investigation_4.html 25 2013/6/24 今日のテーマ • Q1:選挙権について – 何歳が適切? 20、19、18、16・・・ • Q2:インターネットによる選挙活動に ついてコメントして下さい。 – 今回の改正について 賛成・反対? – 今後の改正(電子メール自由化) 賛成・反 対? • Q3:その他、自由に 26