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岡 島 一 郎
N T T ド コ モ ワ イ ヤ レ ス 研 究 所 主 任 研 究 員 岡 島 一 郎 の 夢 を 実 現 E v e r y t h i n g o v e r I P “ ” い つ で も ど こ で も 主 役 登 場 “技術者は夢を持たなければならない”とよく言われま 能力を両方備えた新しい通信システムが必要であり,それ す.私は,1980年代から趣味でパソコン通信やインター こそが第4世代移動通信システム(4Gシステム)である ネットを使っていたこともあり,1991年に入社し移動通 と考えています. 信技術の研究開発に加わった際に,いつでもどこでもパソ このような背景から,私の研究グループは,4Gシステ コン通信やインターネットにアクセスできるようにしたい ムにおいて移動端末が送受信するIPパケットをルーチング という夢を抱きました.その後幸いにも,さまざまなモバ するための IPベース移動制御技術の 研究に取り組んでき イルデータ通信技術の研究開発に携わることができ,夢を ました.研究において,汎用性を重視するIPの設計思想を 実現することができました.例えば,現在第2世代移動通 踏襲しつつ,移動通信環境に対応した制御を考案すること 信システムと分類されているPDC(Personal Digital にエネルギーを注ぎました.例えば,有線環境よりも通信 Cellular)のための回線交換型データ通信方式の開発に関 リソースが 限られている無線環境に適した 制御信号量を 与し,いつでもどこでもパソコン通信ができるという夢の 最少化した制御や,ハンドオフが頻繁に発生する移動通信 実現に寄与することができました.さらにPDCパケット 環境において低 パケットロス率で低伝送遅延の IPパケッ 通信方式の開発に関与し,いつでもどこでもインターネッ ト伝送を実現する制御を設計するために,メンバたちと トにアクセスできるという夢の実現に貢献することができ 延々と議論しました.考案した IPベース移動制御技術を ました.このような経験から,私は,技術者は夢を持つべ 検証するために,全メンバで配線まみれになりながら構築 きだという意見は正しいと考えています. したテストベッドにおいて,最終的に移動端末が頻繁にハ それでは私の今の夢は何でしょうか.それは,“いつで ンドオフしているにもかかわらず高ビットレートのデジタ もどこでもEverything over IP”です.私は,移動通信 ルビデオ画像を綺麗に伝送できるようになったときの感動 の世界をEverything over IPとすることで,移動通信シ を今でも忘れることができません. ステムとインターネットの間の境界線をなくして,より多 今後は,IPベース移動制御技術のさらなる改良に取り組 くのデバイスどうしがより多くのアプリケーションによっ み,4Gシステムの国際標準化に貢献するとともに,いつ て自由に通信できる環境を生み出せると信じています.そ でもどこでもEverything over IPという特徴を生かした のためには,移動通信システムの能力とIPネットワークの 斬新な通信サービスを生み出していきたいと考えています. 36 NTT技術ジャーナル 2004.7