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柔道の投技評価における異見発生に関する研究
博士論文 柔道の投技評価における異見発生に関する研究 平成 21 年度 筑波大学大学院人間総合科学研究科コーチング学専攻 林 弘典 目次 第Ⅰ章 序論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第1節 投技評価の方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第1項 投技評価の基準 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第2項 審判員の構成と投技評価の示し方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 第3項 投技評価における異見発生の分類と決定方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 第4項 公認審判員制度 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 第2節 問題の所在 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 第3節 本論の目的と構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 第1項 本論の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 第2項 本論の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 1. 投技評価における異見発生に関する審判法上の諸問題(第Ⅱ章) ・・・・ 6 2. 投技評価における異見発生の実態(第Ⅲ章) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6 3. 投技評価における異見発生の要因(第Ⅳ章) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 第Ⅱ章 投技評価における異見発生に関する審判法上の諸問題 ・・・・・・ 8 第1節 本章のねらい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 第2節 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 第1項 調査対象者と調査方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 第2項 調査内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 第3項 データの処理と分析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 第3節 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 第4節 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 第5節 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14 ⅰ 第Ⅲ章 投技評価における異見発生の実態 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 第1節 本章のねらい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 第2節 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 第1項 調査対象とした大会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16 第2項 審判法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 第3項 審判員レベル ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 第4項 データの処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 第5項 分析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 第3節 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19 第4節 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 第1項 審判法別の比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 第2項 審判員レベル別の比較 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 第3項 異見発生時の投技評価の組合せ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 第5節 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 23 第Ⅳ章 投技評価おける異見発生の要因 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 第1節 本章のねらい ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25 第2節 方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 第1項 実験の構成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 第2項 実験映像の作成 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 1. 撮影場所 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 2. 撮影方向 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 3. 撮影対象とした大会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 4. 実験映像の抽出方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 28 5. 実験用DVDの編集 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 ⅱ 第3項 実験の実施 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 1. 被験者 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 29 2. 実験方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 第4項 データの処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30 第5項 分析方法 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31 第3節 結果 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 33 第4節 考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 第1項 投技評価における異見発生の要因について ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 第2項 投技評価における異見発生と投技を見る方向の関係について ・・・・・ 43 第3項 投技評価における異見発生と審判員レベルの関係について ・・・・・・ 48 第5節 まとめ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 49 第Ⅴ章 結論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 51 謝辞 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 54 注 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 55 文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 56 ⅲ れるという Computer Aided Replay システムを用 いて投 技 評 価 を与 える試 合 者 を検 証 し、3 名 の 審 判 員 に 助 言 を 行 う こともある。 なお 、 本 論 で は 、3 名 の 審 判 員 が 同 一 の 試 合 者 に 対 し て 投 技 評 価 を 与 える際 に 、1 名 でも 異 なる投 技 評 価 を 示 すことを 異 見 と 定 義 し て論 を 進 める ことにしたい。 第 4 項 公認審判員制度 日 本 国 内 では、全 日 本 柔 道 連 盟 公 認 審 判 員 の養 成 と資 質 向 上 を図 る ことを目 的 として、「全 日 本 柔 道 連 盟 公 認 審 判 員 規 程 」が制 定 されている (ベースボール・マガジン社 ,2007)。これによって、審 判 員 ライセンスは S、A、 B、C の 4 つに区 分 されている(p.4 表 2 参 照 )。受 験 資 格 は、年 齢 、柔 道 経 験 、 審 判 経 験 に よっ て定 めら れ、 筆 記 試 験 や 実 技 試 験 に 合 格 し た 者 に ラ イ センスが与 えられる。一 方 、国 際 審 判 員 ラ イセンスは、インターナショナルとコ ンチネンタルの 2 つに区 分 されている(p.4 表 2 参 照 )。受 験 資 格 は、年 齢 、 柔 道 経 験 、審 判 経 験 によって定 められ、口 頭 試 験 や実 技 試 験 に合 格 した 者 にライセンスが 与 え られる。なお 、受 験 に は、受 験 者 の 国 の 柔 道 連 盟 の 推 薦 が 必 要 である。 3 評 価 の 軽 さは 、 柔 道 の 投 技 の 持 つ 醍 醐 味 や ダイ ナ ミ ック さを 否 定 する こ とに つながることから、国 際 的 な場 でしっかりと議 論 する必 要 性 が指 摘 されてい る(尾 形 ほか,1998)。もう 1 つは、個 々の 審 判 員 の 間 で投 技 評 価 が 異 なると い う 投 技 評 価 の バ ラ ツ キ の 問 題 で あ る ( 関 根 , 1996 ) 。 例 え ば 、 同 じ よ う な 投 技 の状 況 に対 して、審 判 員 によって投 技 評 価 が「技 あり」になったり「有 効 」 になったりすることである。これらの問 題 を解 決 するには、審 判 員 の技 能 水 準 ( 以 下 「 審 判 員 レ ベル」と略 す ) の 向 上 が 必 要 で あることが 指 摘 され ている ( 藤 田 , 1996 ; 上 村 , 1996 ) 。 こ の 指 摘 に つ い て 、 当 時 の 国 際 柔 道 連 盟 ( International J udo Federation、以 下 「 IJ F」と略 す)の審 判 理 事 (カナダ)も 同 様 の 見 解 を示 している(木 村 ,1998)。この 2 つの問 題 は、日 本 人 審 判 員 の場 合 には明 確 に指 摘 されていないが、日 本 国 内 でも審 判 員 の判 定 に疑 問 を 抱 く 選 手 や コ ー チ が 多 い こ と が 報 告 さ れ て い る ( 林 ほ か , 2002 ) 。 こ の こ とから、日 本 国 内 においても同 様 の問 題 が発 生 していることが推 測 される。 しかし、日 本 国 内 外 の研 究 において、投 技 評 価 における異 見 発 生 の実 態 や 要 因 に ついてほ とんど解 明 されていない。また 、異 見 発 生 と 審 判 員 レベル との関 係 についても解 明 されていない。すなわち、投 技 評 価 における異 見 発 生 について解 明 されていないままである。 第 3 節 本 論 の 目 的 と構 成 第 1 項 本 論 の目 的 すでに述 べたように、投 技 評 価 における異 見 発 生 の 実 態 や要 因 について ほとんど解 明 されていない。また 、投 技 評 価 における異 見 発 生 と審 判 員 レベ ルとの 関 係 についても解 明 されていない。すなわち、投 技 評 価 における異 見 発 生 について解 明 されていないままである。それゆえ本 論 の目 的 は、投 技 評 価 における異 見 発 生 について解 明 することにある。これによって、柔 道 の 投 技 評 価 における異 見 発 生 に 関 す る基 礎 資 料 を 提 供 し、投 技 評 価 方 法 の 方 向 性 について提 言 することができる。 第 2 項 本 論 の構 成 上 記 の 目 的 を達 成 するために、本 論 は 第 Ⅱ章 から第 Ⅳ 章 までの 3 つの研 5 究 内 容 から構 成 されている。 1. 投 技 評 価 における異 見 発 生 に 関 する審 判 法 上 の 諸 問 題 ( 第 Ⅱ 章 ) 第 Ⅱ 章 では 、投 技 評 価 に おける異 見 発 生 に関 する審 判 法 上 の 諸 問 題 を 明 らかにする。そのために、主 審 と副 審 が同 時 に投 技 評 価 を示 すという審 判 法 ( 以 下 「同 時 法 注 2) 」と略 す)について、大 学 生 柔 道 選 手 と A、B、C ライ センス審 判 員 に実 施 したアンケート調 査 の結 果 を検 討 した。これによって、 現 在 の審 判 法 (以 下 「現 行 法 」と略 す)には、副 審 が主 審 に投 技 評 価 を委 ねることができるために、異 見 が 表 面 化 し にくいという 問 題 があることが 明 らか に される。 また 、この こ とに 関 連 し て、 現 行 法 に は 副 審 の 投 技 評 価 の 決 定 方 法 に 曖 昧 さ が あ る た めに 、 公 平 さ に 欠 け る と いう 問 題 が あ る こ とが 明 ら か に さ れる。 なお 、 第 Ⅱ 章 は 、す でに 発 表 し た 「 林 弘 典 ・ 小 野 沢 弘 史 ・ 岡 田 弘 隆 ・ 南 條 充 寿 ・ 久 保 田 浩 史 ・村 山 晴 夫 ( 2004 )柔 道 競 技 に おける 主 審 ・ 副 審 の 投 技 の 同 時 評 価 に 関 する調 査 研 究 . 武 道 学 研 究 ,37 (1 ):11-20.」 の 内 容 を まとめ直 したものである。 2. 投 技 評 価 における異 見 発 生 の 実 態 ( 第 Ⅲ 章 ) 第 Ⅲ 章 では 、 投 技 評 価 に おける 異 見 発 生 の 実 態 を 明 ら か に する。その た めに 、同 時 法 と現 行 法 を 用 いて行 われた 投 技 評 価 の 異 見 発 生 率 を 審 判 法 別 、 審 判 員 レベル別 に 比 較 し た 。また 、ど の 投 技 評 価 の 基 準 の 間 に 異 見 が 発 生 し て い るか に つ いて 検 討 し た 。 これ に よ っ て、 現 行 法 で は 、 副 審 が 主 審 に投 技 評 価 を委 ねることができるために、異 見 が表 面 化 しにくいことが確 か めら れる。また 、審 判 員 レベルの 高 い 者 の 異 見 発 生 率 は 審 判 員 レベル の 低 い 者 よ りも 低 いこ とが 明 ら か に され る 。さら に 、 異 見 が 発 生 し た 場 合 、 投 技 評 価 は 主 に 「一 本 」と「 技 あり」、「技 あり」と「 有 効 」、「有 効 と「 効 果 」、「効 果 」と 「 評 価 なし 」に 分 か れ てい るこ とか ら 、 異 見 は 主 に 連 続 す る 投 技 評 価 の 基 準 間 に 発 生 することが 明 らか に される。また 、少 数 では あるが 、投 技 評 価 が 「一 本 」 と「 有 効 」のように、評 価 が 大 きく分 かれる異 見 が 発 生 す ることが 明 らかに される。 なお 、 第 Ⅲ 章 は 、す でに 発 表 し た 「林 弘 典 ・ 岡 田 弘 隆 ・ 増 地 克 之 ・ 坂 本 6 道 人 ・ 桐 生 習 作 ・ 小 俣 幸 嗣 ( 2007 ) 柔 道 審 判 の 投 技 評 価 に お け る 異 見 発 生 の メ カ ニ ズ ム に 関 す る 研 究 . 武 道 学 研 究 , 40 ( 2 ) : 23-36 . 」 の 内 容 を ま と め直 したものである。 3. 投 技 評 価 における異 見 発 生 の 要 因 ( 第 Ⅳ 章 ) 第 Ⅳ章 では、投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベルという 2 つの 要 因 によって、 投 技 評 価 に 異 見 が 発 生 するか 否 か につ いて検 証 す る。また 、異 見 発 生 が こ の 2 つの要 因 とどの ような関 係 にあるのかについて検 討 する。そのために、A、 B、C ライセンス審 判 員 に 1 つの投 技 に 対 して 4 方 向 から撮 影 した 4 つの投 技 の 映 像 を 見 せて投 技 評 価 を 回 答 させ るという 実 験 を 行 った。そして、投 技 を見 る方 向 と審 判 員 ライセンスの要 因 の 間 で 1 要 因 にのみ対 応 のある 2 要 因 分 散 分 析 を 行 った 。また 、多 重 比 較 検 定 に よっ て投 技 を 見 る方 向 別 、 審 判 員 ライセンス別 に 分 析 を行 った。これに よって、4 つの投技のうち 3 つにおい て有意な交互作用は認められず、1 つにおいて有意な交互作用が認められた。また、 4 つの投技すべてにおいて有意な主効果が認められた。このことから、投 技 評 価 に おける異 見 発 生 の 要 因 は 、①投 技 を 見 る方 向 、② 審 判 員 レベ ル、③ 投 技 を 見 る方 向 と審 判 員 レベルの両 方 の 3 つであることが 明 らかにされる。また、投 技 の 一 連 の動 きや部 分 的 に 見 えた状 況 から受 (うけ) 注 3) の身 体 部 分 と畳 の 接 地 状 況 を推 測 して投 技 評 価 が行 われるために、異 見 が発 生 する確 率 が 高 くなることが明 らかにされる。さらに、審 判 員 レベルが高 くなるにつれて投 技 評 価 も高 く( 軽 く) なる傾 向 にあることが 明 らかにされる。 なお 、 第 Ⅳ 章 は 、す でに 発 表 し た 「 林 弘 典 ・ 岡 田 弘 隆 ・ 増 地 克 之 ・ 石 川 美 久 ・石 井 孝 法 ・坂 本 道 人 ・小 俣 幸 嗣 (再 審 査 中 )柔 道 の審 判 員 の投 技 評 価 に お ける 異 見 発 生 の 要 因 に 関 す る 研 究 . 体 育 学 研 究 .」 の 内 容 を まと め直 したものである。 7 第 Ⅱ 章 投 技 評 価 に おける異 見 発 生 に 関 する審 判 法 上 の 諸 問 題 第 1 節 本 章 の ねら い 2000 年 のオリンピック 100kg 超 級 決 勝 戦 において、主 審 は ドゥイエ選 手 に「有 効 」のジェスチャーをし、1 名 の 副 審 は何 もジェス チャーせず、もう 1 名 の 副 審 は 篠 原 選 手 に 「 一 本 」 の ジ ェ ス チ ャ ーを し た 。 この 結 果 、 投 技 評 価 は 「 有 効 」 となっ た が 、 こ れに は 疑 惑 が 提 示 さ れた 。なぜ なら 、 何 も ジェス チャ ー を し なか っ た 副 審 は 主 審 の 判 断 に 同 意 し た の では な く、 投 技 が よ く 見 え なか ったために主 審 に投 技 評 価 を委 ねてしまったからである。この点 について、 現 行 法 に 問 題 が ある ことが 指 摘 さ れている ( 長 谷 川 ,2001 ;生 島 ,2004 )。こ の問 題 の解 決 策 として、日 本 国 内 において主 審 と副 審 が同 時 に投 技 評 価 を示 すという同 時 法 が提 案 された。同 時 法 では、副 審 が投 技 のきまる瞬 間 を見 ることができなかった場 合 、主 審 に合 議 を申 し出 ることになっている。こ れによっ て、前 述 した 問 題 を 解 決 できるとされている。また 、同 時 法 と現 行 法 との違 いは、主 審 が最 初 に投 技 評 価 を示 すか、主 審 と副 審 が同 時 に投 技 評 価 を 示 すか の 順 序 が 異 なる だ け で、 その 他 は 全 く 同 じ で ある 。 なお、 同 時 法 は、2001 年 に 開 催 された 全 国 体 育 系 学 生 柔 道 体 重 別 選 手 権 大 会 、全 日 本 学 生 柔 道 体 重 別 選 手 権 大 会 、講 道 館 杯 日 本 柔 道 体 重 別 選 手 権 大 会 の 3 大 会 において試 験 的 に 導 入 された (木 村 ,2001b)。この試 験 的 導 入 以 降 、今 日 まで同 時 法 は 採 用 されていない。 本 章 の 目 的 は、大 学 生 柔 道 選 手 と A、B、C ライセンス審 判 員 に 実 施 した 同 時 法 に 関 するアンケート調 査 の 結 果 を 検 討 し 、投 技 評 価 に おける異 見 発 生 に 関 する審 判 法 上 の諸 問 題 を明 らかにすることにある。 第 2 節 方法 第 1 項 調 査 対 象 者 と調 査 方 法 同 時 法 について、大 学 生 柔 道 選 手 (以 下 「選 手 」と略 す)361 名 と A、B、 C ライセンス審 判 員 (以 下 「公 認 審 判 員 」 と略 す)104 名 にアンケート調 査 を 実 施 し た 。 選 手 に つ い ては 、 2001 年 の 全 日 本 学 生 柔 道 体 重 別 選 手 権 大 会 に 出 場 した選 手 が 所 属 する大 学 から無 作 為 に 抽 出 した 20 校 にアンケー ト用 紙 を郵 送 してアンケート調 査 を実 施 し た。調 査 期 間 は 2001 年 11 月 1 8 日 から 11 月 30 日 であった。公 認 審 判 員 については、2001 年 12 月 24 日 に長 崎 市 総 合 体 育 館 で開 催 された長 崎 県 審 判 講 習 会 およ び 2002 年 3 月 17 日 に講 道 館 で開 催 された A ライセンス研 修 会 においてアンケート調 査 を 実 施 し た 。な お 、 調 査 対 象 者 に は アン ケ ート 調 査 の 内 容 に つ いて 十 分 に 説 明 を行 い、同 意 を得 た上 で調 査 を 実 施 した。 第 2 項 調査内容 埼 玉 県 柔 道 連 盟 は 、 2001 年 の 埼 玉 県 高 等 学 校 柔 道 選 手 権 大 会 に お いて同 時 法 を試 験 的 に導 入 し、同 時 法 について大 会 に参 加 した選 手 、審 判 員 、観 客 、係 員 等 にアンケート調 査 を実 施 している。それによると、同 時 法 について「賛 成 」と回 答 した者 は 72 名 (81.8%)、「反 対 」と回 答 した者 は 16 名 (18.2%)であっ た。賛 成 の 主 な理 由 は、①公 平 性 が 増 す 、②分 かりや す い、③ 納 得 性 が あ るという も の で あっ た 。また 、 反 対 の 主 な 理 由 は 、①か え っ て 不 公 平 で あ る、 ② 繁 雑 で ある 、③ 今 の ま まで 十 分 であ る と いう も の で あっ た。その他 の意 見 として、「副 審 が投 技 評 価 に迷 うときがあるので、投 技 評 価 の 動 作 を 行 っ た 方 が よ い」 「 審 判 技 術 向 上 の た め に 続 けて 欲 し い」 な どが あっ た ( 長 谷 川 ,200 1)。また 、 全 日 本 柔 道 連 盟 審 判 委 員 会 も 、2001 年 の 全 日 本 学 生 柔 道 体 重 別 選 手 権 大 会 において同 時 法 を試 験 的 に導 入 し、 同 時 法 に つい て 大 会 に 参 加 し た 選 手 、 審 判 員 、 観 客 、 係 員 等 に アンケート 調 査 を 実 施 し ている 。それに よ ると、 同 時 法 に つ いて「 賛 成 」 と 回 答 し た 者 は 122 名 (66.3%)、「 反 対 」と回 答 した者 は 16 名 (8.7%)、「どちらともいえな い 」 と 回 答 し た 者 は 39 名 ( 21.2 % ) 、 「 分 か ら な い 」 と 回 答 し た 者 は 7 名 ( 3.8 % ) で あっ た 。 賛 成 の 主 な 理 由 は 、 ① 公 平 性 が 増 す 、 ② わ か り や す い 、 ③説 得 力 が あるという ものであった。また、反 対 の 主 な理 由 は、①繁 雑 である、 ② 今 の ま ま で 十 分 で あ る 、 ③ 分 か りづ ら い 、 ④ 不 公 平 で あ る と い う も の で あっ た。その 他 の 意 見 とし て、「副 審 の 座 っ た 状 態 では 、投 技 が 見 え に くいときが ある」「 訂 正 が 多 く な ると主 審 の 信 頼 が 失 われ、 逆 に 慣 れて くる と主 審 の コー ルに合 わせて副 審 がジェスチャーをすることができる」などがあった(全 日 本 柔 道 連 盟 審 判 委 員 会 ,2001a )。 こ れら の 調 査 結 果 を 検 討 し て 同 時 法 に 関 するアンケートの質 問 内 容 を作 成 した(p.10 表 3 参 照 )。 9 さに 欠 け る 」 と いう 質 問 に つ い て 、 χ 2 検 定 の 結 果 、 全 体 に お け る 人 数 の 偏 り は 有 意 で なか っ た (χ 2 1 =0.26、p>0.05 ) 。 選 手 と 公 認 審 判 員 に お ける 人 数 の 偏 り は 有 意 で あ っ た ( χ 2 1 =4.73 、 p<0.05 ) 。 ま た 、 残 差 分 析 の 結 果 、 公 認 審 判 員 が「はい」と回 答 した割 合 は選 手 よりも有 意 に多 く、選 手 が「いいえ」と 回 答 した割 合 は 公 認 審 判 員 よりも有 意 に 多 かった。 「同 時 法 では、他 の審 判 員 と比 較 されることによって自 分 の投 技 評 価 を 見 直 す ことが できるの で審 判 技 術 が 向 上 する」 という 質 問 に つ いて、χ 2 検 定 の結 果 、全 体 において「はい」と回 答 した 者 が 有 意 に 多 かった(χ 2 1 =176.45、 p<0.01 )。選 手 と 公 認 審 判 員 に お ける 人 数 の 偏 りは 有 意 であ った (χ 2 1 =4.39 、 p<0.05 ) 。 ま た 、 残 差 分 析 の 結 果 、 選 手 が 「 は い 」 と 回 答 し た 割 合 は 公 認 審 判 員 よ りも 有 意 に 多 く、公 認 審 判 員 が 「 いいえ」 と回 答 した 割 合 は 選 手 よりも 有 意 に 多 かった。 「同 時 法 では、たびたび投 技 評 価 が割 れるので審 判 員 の協 調 関 係 が悪 くなる」という 質 問 につ いて、χ 2 検 定 の結 果 、全 体 において「 いいえ」と回 答 し た 者 が 有 意 に 多 か っ た ( χ 2 1 =51.67 、 p<0.01 ) 。 選 手 と 公 認 審 判 員 に お け る 人 数 の 偏 り は 有 意 で あ っ た ( χ 2 1 =7.16 、 p<0.01 ) 。 ま た 、 残 差 分 析 の 結 果 、 公 認 審 判 員 が「はい」と回 答 した割 合 は選 手 よりも有 意 に多 く、選 手 が「い いえ」と回 答 した割 合 は公 認 審 判 員 よりも 有 意 に 多 かった。 第 4 節 考察 現 行 法 では、試 合 者 が投 げられた後 に主 審 はすぐにジェスチャーによっ て投 技 評 価 を示 す。副 審 は主 審 の投 技 評 価 に異 見 がない場 合 、つまり同 意 した 場 合 は 何 も ジェスチャーをしない。しかし、異 見 が ある場 合 、主 審 が 投 技 評 価 を示 した後 に自 分 の見 解 をジェスチャーによって示 す。したがって、 現 行 法 では、副 審 は主 審 の投 技 評 価 を確 認 した後 に自 分 の投 技 評 価 を 示 すので、主 審 に 投 技 評 価 を委 ねることができる。 副 審 が 主 審 に投 技 評 価 を委 ねる理 由 は 3 つ考 えられる。1 つ目 は、副 審 が主 審 との協 調 関 係 を崩 したくないことが挙 げられる。なぜなら、副 審 が主 審 の 投 技 評 価 に 異 見 を 示 す こ と は 、 結 果 的 に 主 審 の 投 技 評 価 を 否 定 する ことになり、これによって、主 審 の権 威 や自 尊 心 が傷 つき、主 審 と副 審 の協 11 調 関 係 が 悪 くなることが考 えられるからである。このことは 、2004 年 のオリンピ ックの日 本 人 審 判 員 が次 のように述 べていることから窺 える。「自 分 が副 審 をやっているときに 主 審 が『技 あり』を 示 し、私 は『 有 効 』でも いいかなという 場 合 は 主 審 の 考 え を 尊 重 し まし た 。 試 合 の 流 れも あるし 、 主 審 の プ ラ イ ド も あり ますからね」(ベースボール・マガジン社 ,2004)。 2 つ 目 は 、どちらの 投 技 評 価 とも 判 断 で きるよう な微 妙 な投 技 の 場 合 に 、 副 審 が投 技 評 価 の判 断 に迷 って主 審 に投 技 評 価 を委 ねることが挙 げられ る。このことは 、2005 年 の 世 界 選 手 権 の 日 本 人 審 判 員 が 、「 実 際 に 審 判 員 が投 技 評 価 を判 断 し かねるときがある」(小 俣 ,2005)と述 べていることから窺 える。したがって、現 行 法 では、副 審 は主 審 に投 技 評 価 を委 ねることができ るために、異 見 が 表 面 化 しにくくなっていることが 考 えられる。 このように、副 審 が主 審 に投 技 評 価 を委 ねることについて、副 審 は投 技 評 価 の判 断 を主 審 に委 ねず、他 方 の副 審 に惑 わされず自 身 で確 実 に行 う ことが重 要 であることが指 摘 されている(全 日 本 柔 道 連 盟 審 判 委 員 会 , 2004b ) 。 ま た 、 副 審 は 異 見 等 を 迷 う こ と な く 示 し 、 自 分 の 意 志 を 明 ら か に す ることが重 要 であることが指 摘 されている(全 日 本 柔 道 連 盟 審 判 委 員 会 , 2004b ) 。 こ の こ と か ら 、 副 審 が 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ね る こ と に よ っ て 、 投 技 評 価 の公 平 さや客 観 性 が損 なわれることが考 えられる。また、周 りから見 て いる者 には、副 審 が主 審 の投 技 評 価 に同 意 したのか、主 審 に投 技 評 価 を 委 ねたのかを識 別 することはできない。以 上 のことから、現 行 法 では、副 審 は 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ねることが できるた めに 、副 審 の 投 技 評 価 の 決 定 方 法 に曖 昧 さが残 り、投 技 評 価 の公 平 さや客 観 性 が損 なわれることが考 えら れる。これに 対 し て、 同 時 法 では 、 副 審 は 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ね ることが で きないた めに 、副 審 の 投 技 評 価 の 決 定 方 法 に 曖 昧 さが なく、公 平 に 投 技 評 価 を行 うことができると考 えられる。このために、「同 時 法 では、審 判 員 全 員 が 投 技 評 価 を 示 すの で 曖 昧 さ が な く なり 公 平 さ が 増 す 」と い う 質 問 に つい て 、 全 体 において「はい」と回 答 した者 が 有 意 に多 かったと考 えられる。 3 つ目 は、副 審 が投 技 の状 況 をはっきりと確 認 できない場 合 に、主 審 に 投 技 評 価 を 委 ねてし まう という ことが 挙 げ ら れる。なぜ なら 、 副 審 は 椅 子 に 座 って投 技 評 価 を行 うために、投 技 を見 る方 向 が制 限 されるからである。この 12 ような場 合 、副 審 は部 分 的 に見 えた投 技 の状 況 から推 測 して投 技 評 価 を 行 わ ざるを 得 な いた めに 、 投 技 評 価 の 客 観 性 や 公 平 さ が 欠 け ると いう こ とが 考 えられる。この 問 題 は、現 行 法 では、副 審 が 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ねること によって回 避 することができるが、同 時 法 では、副 審 は主 審 に投 技 評 価 を 委 ねることができないので回 避 することはできない。例 えば、片 方 の副 審 側 で場 外 に 向 かって投 技 が 行 われた 場 合 、もう 1 人 の 副 審 は最 も遠 くに 離 れ ているので投 技 が 見 えに くくなる。この 場 合 、同 時 法 では 、副 審 は 投 技 評 価 を 示 さ な け れ ばな ら な いた めに 、 投 技 評 価 が き わ め て 不 正 確 に なり やす い こ と が 指 摘 さ れ て い る ( 木 村 , 2001b ) 。 そ れ ゆ え 、 「 同 時 法 で は 、 副 審 が 見 え に くか っ た 投 技 に も 投 技 評 価 を 示 すの で 公 平 さ に 欠 け る」 とい う 質 問 に つい て、公 認 審 判 員 が「はい」と回 答 した割 合 は選 手 よりも有 意 に多 かったと考 えられる。しかし、同 時 法 が 客 観 性 や 公 平 さに 欠 けることが 予 想 されるにもか かわらず、選 手 が 同 時 法 は 公 平 さに 欠 け ると回 答 した 割 合 は 公 認 審 判 員 よ りも有 意 に少 なかった。この原 因 は、選 手 が同 時 法 における副 審 の投 技 評 価 の決 定 方 法 は現 行 法 よりも曖 昧 さがなく、投 技 評 価 が公 平 に行 われると いうことを重 視 しているためであると考 えられる。なお、同 時 法 では、副 審 が 投 技 をはっきりと見 ることができなかった場 合 、3 名 の 審 判 員 の 合 議 によって 解 決 できるとされている。しかし、投 技 をはっきりと見 ることができなかった副 審 が 投 技 評 価 に つい て見 解 を 述 べるこ とは 客 観 性 や公 平 さに 欠 けると 考 え ら れ る 。 し た が っ て 、 現 行 法 に お い ても 同 時 法 に お い て も 、 最 終 的 に 投 技 を はっきりと見 ることのできた審 判 員 の投 技 評 価 に基 づいて評 価 を下 さざるを 得 ないので、この 問 題 を解 決 することはできないと考 えられる。 審 判 員 同 士 の間 では、互 いに協 力 、尊 重 し合 うことが必 要 であり、主 審 は副 審 2 人 から異 見 を示 された 場 合 、冷 静 に 自 分 の投 技 評 価 を訂 正 しな ければならない。それがたびたび起 こったとしても、明 瞭 かつ的 確 に 処 理 しな ければならないことが指 摘 されている(全 日 本 柔 道 連 盟 審 判 委 員 会 , 2004a ) 。 し か し 、 前 述 し た よ う に 、 実 際 に 副 審 が 主 審 の 投 技 評 価 に 異 見 を 示 す こと に よ っ て 、 副 審 は 主 審 と の 協 調 関 係 が 悪 く なる こ とが 考 え ら れ る 。し た が っ て 、 「 同 時 法 で は 、た びた び 投 技 評 価 が 割 れ る の で 審 判 員 の 協 調 関 係 が 悪 くなる」 という 質 問 に つ いて、 公 認 審 判 員 が 「 は い 」 と 回 答 し た 割 合 は 13 選 手 よりも 有 意 に 多 かったと考 えられる。しかし、同 時 法 は 現 行 法 よりも 副 審 の 投 技 評 価 の 決 定 方 法 に 曖 昧 さが な く、 公 平 に 投 技 評 価 が 行 われ るという メリットが あるた めに 、全 体 に お いて「 いいえ」 と回 答 した 者 が 有 意 に 多 かっ た と考 えられる。また、選 手 が「いいえ」と回 答 した割 合 が公 認 審 判 員 よりも有 意 に 多 かったと考 えら れる。 審 判 員 は 観 客 席 に いなが ら でも 自 分 で 投 技 評 価 を 行 い、 実 際 の 審 判 員 の 投 技 評 価 と 比 較 す ることに よ っ て、 投 技 評 価 の 判 断 力 の 養 成 に 役 立 て る ことが で きると 指 摘 さ れてい る( 全 日 本 柔 道 連 盟 審 判 委 員 会 ,2004a)。 この ことから、同 時 法 では審 判 員 全 員 が毎 回 投 技 評 価 を示 し、お互 いの投 技 評 価 の 違 いを 確 認 することができるために 、投 技 評 価 の 判 断 力 、つまり審 判 技 術 が向 上 することが期 待 される。また、すでに述 べたように、同 時 法 では 現 行 法 よ りも 公 平 に 投 技 評 価 が 行 われることが 期 待 される。し たがって、「 同 時 法 では、他 の審 判 員 と比 較 されることによって自 分 の投 技 評 価 を見 直 す ことができるので審 判 技 術 が向 上 する」という質 問 について、全 体 において 「はい」と回 答 した者 が有 意 に多 かったと考 えられる。また、選 手 が「はい」と 回 答 した割 合 は公 認 審 判 員 よりも有 意 に多 かったと考 えられる。しかし、公 認 審 判 員 が「いいえ」と回 答 した割 合 は選 手 よりも有 意 に多 かった。なぜな ら 、審 判 員 の 協 調 関 係 が 悪 くなっ た り、 投 技 評 価 の 客 観 性 や 公 平 さに 欠 け たりするという同 時 法 のデメリットを懸 念 し ているからであると考 えられる。 第 5 節 まとめ 本 章 の目 的 は、投 技 評 価 における異 見 発 生 に関 する審 判 法 上 の諸 問 題 を明 らかにすることにある。そこで、同 時 法 について大 学 生 柔 道 選 手 361 名 と A、B、C ライセンス審 判 員 104 名 にアンケート調 査 を 実 施 した。そして、 全 体 の回 答 および選 手 と公 認 審 判 員 の回 答 を比 較 した結 果 を検 討 した。 その結 果 、以 下 のことが明 らかになった。 1. 現 行 法 では 、 副 審 は 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ね ることが できるた めに 、異 見 が 表 面 化 し に くい。ま た 、副 審 の 投 技 評 価 の 決 定 方 法 に 曖 昧 さ が あるた めに公 平 さに 欠 ける可 能 性 がある。 2. 同 時 法 では 、 副 審 は 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ね るこ とが できない た めに 、副 14 審 の投 技 評 価 の決 定 方 法 に曖 昧 さがなく、公 平 に投 技 評 価 を行 うこと ができる。 3. 同 時 法 では 、異 見 が 多 く発 生 す ることによ って、審 判 員 の 協 調 関 係 が 悪 くなら ないことが 予 想 される。また、他 の 審 判 員 と比 較 されることによって、 自 分 の投 技 評 価 を見 直 すことができるので審 判 技 術 が向 上 することが 期 待 できる。 4. 現 行 法 に お い て も 同 時 法 に お い て も 、 副 審 が 椅 子 に 座 っ て い る た め に 投 技 を 見 る 方 向 に 制 限 を 受 け て 投 技 の 状 況 を は っ きり と 確 認 で きな いこ とが 考 え ら れる。この 場 合 、 同 時 法 では 、 副 審 が 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ね ることができないために、客 観 性 に 欠 ける可 能 性 がある。 以 上 のことから、現 行 法 には、異 見 が 表 面 化 しにくいという問 題 がある。 15 第 Ⅲ 章 投 技 評 価 に おける異 見 発 生 の 実 態 第 1 節 本 章 の ねら い 投 技 評 価 に お ける 異 見 発 生 の 実 態 に つ い て、 井 浦 ほ か ( 1995 ) は 、1992 年 のオリンピックと 19 93 年 の 世 界 選 手 権 における投 技 評 価 の 基 準 ごとの 異 見 発 生 率 に ついて検 討 している。それによ ると、主 審 の 示 した 「 一 本 」 に 対 し て副 審 2 名 のうち 1 名 でも 異 なる投 技 評 価 を示 した 割 合 は 10.1%、「技 あり」 に対 しては 23.4%、「有 効 」に 対 しては 15.9%、「効 果 」に 対 しては 12.1%で あり、「 技 あり」に 対 する異 見 発 生 率 が 他 の 投 技 評 価 の 基 準 よりも高 いことが 指 摘 されている。しかし、どの 投 技 評 価 の 基 準 の 間 に 異 見 が 発 生 しているか については検 討 されていない。また、異 見 発 生 と審 判 員 レベル との関 係 につ い て も 検 討 さ れ て い な い 。 さ ら に 、 林 ほ か ( 2004 ) は 、 副 審 が 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ねる こ とが で き るた めに 、 異 見 が 表 面 化 し に くい こ とを 指 摘 し て いるが 、 このことは 実 際 に異 見 発 生 率 を比 較 して確 認 されたものではない。 本 章 の 目 的 は 、投 技 評 価 に おける異 見 発 生 の 実 態 を 明 らかに することに ある。そこで、同 時 法 と現 行 法 を用 いて行 われた投 技 評 価 における異 見 発 生 率 を審 判 法 別 、審 判 員 レベル別 に比 較 する。また、どの投 技 評 価 の基 準 の 間 に 異 見 が 発 生 しているかについて検 討 する。 第 2 節 方法 第 1 項 調 査 対 象 とした大 会 2001 年 10 月 6 日 ・ 7 日 および 2002 年 6 月 22 日 ・23 日 に 日 本 武 道 館 で開 催 された全 日 本 学 生 柔 道 体 重 別 選 手 権 大 会 (以 下 「学 生 大 会 」と略 す)における男 子 73kg 級 と男 子 81kg 級 の 全 試 合 と、2001 年 11 月 24 日 ・ 25 日 および 2002 年 11 月 23 日 ・24 日 に 警 視 庁 術 科 センター武 道 館 で開 催 された講 道 館 杯 日 本 柔 道 体 重 別 選 手 権 大 会 (以 下 「講 道 館 杯 」と略 す)における男 子 73k g 級 と男 子 81kg 級 の全 試 合 を調 査 対 象 とした。試 合 者 の 投 技 および主 審 と副 審 の 投 技 評 価 が 同 時 に 確 認 できるように、8mm ビ デオカメラを用 いて観 客 席 から調 査 対 象 とした全 試 合 を撮 影 し た。 16 第 2 項 審判法 2001 年 の 学 生 大 会 と講 道 館 杯 は 、 主 審 と副 審 が 同 時 に 投 技 評 価 を 示 す と いう 同 時 法 で 行 わ れた 。 この 同 時 法 は 、 2000 年 の オ リ ン ピ ック に お け る 審 判 問 題 の 対 策 とし て日 本 で 考 案 された もの である。また 、 同 時 法 は 2001 年 の 試 験 的 導 入 以 降 、現 在 は 採 用 されていない。これに 対 し て、2002 年 の 学 生 大 会 と 講 道 館 杯 は 、主 審 が 先 に 投 技 評 価 を 示 し 、 異 見 が あるときの み 副 審 が 後 から投 技 評 価 を示 す という現 行 法 で行 われた。この 2 つの審 判 法 は 、 主 審 が 先 に 投 技 評 価 を 示 すか 、 主 審 と 副 審 が 同 時 に 投 技 評 価 を 示 す かの順 序 が 異 なるだ けで、その 他 は 全 く同 じである。 第 3 項 審 判 員 レベル 日 本 国 内 には、全 日 本 柔 道 連 盟 公 認 審 判 員 の養 成 と資 質 向 上 を図 る ことを目 的 として、「全 日 本 柔 道 連 盟 公 認 審 判 員 規 程 」が 1990 年 4 月 1 日 に 制 定 さ れて いる( 全 日 本 柔 道 連 盟 審 判 委 員 会 ,2001b ) 。 その 後 、 この 規 定 は 2001 年 4 月 1 日 、2004 年 4 月 1 日 、2007 年 4 月 1 日 の 3 回 の 改 正 を経 て現 在 に 至 る。本 研 究 の 調 査 は 2001 年 4 月 1 日 に 改 正 された 後 に 実 施 され、このときの審 判 員 ライセンスは A、B、C の 3 つに 区 分 されて いる(p.18 表 4 参 照 )。また、受 験 資 格 は 、年 齢 、柔 道 経 験 、審 判 経 験 によ って定 められ、筆 記 試 験 や実 技 試 験 に合 格 した者 にライセンスが与 えられ る。なお、本 章 では、審 判 員 レベルは審 判 員 ライセンスと同 義 と理 解 して考 察 を進 めることとした。 本 研 究 の 調 査 対 象 とした 2001 年 と 2002 年 の 講 道 館 杯 は 、A ライセンス 審 判 員 101 名 が 審 判 を行 った。また、2001 年 と 2002 年 の 学 生 大 会 は、A、 B、C ライセンス審 判 員 を合 わせた 103 名 が審 判 を行 った。その割 合 は A ラ イセンス審 判 員 63 名 (61.2%)、B ライセンス審 判 員 30 名 (29.1%)、C ライ センス審 判 員 10 名 ( 9.7%)であった。以 上 のことから、講 道 館 杯 の審 判 員 レ ベルは学 生 大 会 よりも高 いものと考 えられる。 17 国 内 の 試 合 で 主 審 を し ていて副 審 か ら 異 見 を 示 された ときに 、 「 『 何 よ ~ 、あ なたたちが間 違 っているじゃない!』と副 審 に対 して思 ったこともありました」 (木 村 ,2008)と述 べ ていることからも窺 え る。また、2005 年 の 世 界 選 手 権 の 日 本 人 審 判 員 が 次 の よ う に 報 告 し て いる こ とか ら も 窺 え る 。 「 外 国 人 審 判 員 は副 審 のときも自 分 の意 見 を積 極 的 に主 張 し、時 には主 審 を煽 るような例 さえ あった が 、そう いう 場 面 が 見 事 に 消 えた 。異 見 に 対 す る許 容 範 囲 が 広 が ったのか、単 に 消 極 的 で保 身 に 走 るようになったのかは不 明 だが、少 なくとも 落 ち着 いた 試 合 進 行 の印 象 が 出 てきたのは事 実 である」( 小 俣 ,2005)。 さらに 、副 審 は 投 技 の 状 況 をはっ きりと見 ることができなかった場 合 、主 審 に 投 技 評 価 を 委 ねる という ことが 指 摘 さ れ ている(林 ほ か ,2004 )。この ことに 関 連 し て 、 2001 年 の 嘉 納 治 五 郎 杯 国 際 柔 道 大 会 に お け る 村 元 選 手 と 瀧 本 選 手 の対 戦 について次 のように報 告 されている。この対 戦 では、瀧 本 選 手 の 小 内 刈 に主 審 は 「有 効 」、副 審 の 1 名 は「効 果 」をジェスチャーし、もう 1 名 の副 審 はジェスチャーをしなかったために「有 効 」が確 定 した。しかし、投 げられた試 合 者 が腹 ばいの状 態 、つまり「評 価 なし」のように見 えたために、 試 合 終 了 後 に ジ ェス チャ ーを し なか っ た 副 審 に 確 認 し た と こ ろ 、 その 副 審 は 「 全 く 見 え ず 、 判 断 を 放 棄 し た 」 と 回 答 し た と い う の で あ る ( 長 谷 川 , 2001 ) 。 また、2000 年 のオリ ンピックで発 生 した審 判 問 題 では、1 名 の 副 審 は 角 度 的 に投 技 評 価 の難 しい位 置 に座 っていたために、主 審 に投 技 評 価 を委 ねて し まっ た の では ないか と言 わ れている( 生 島 ,2004 )。この よ う な状 況 が 生 じ る 原 因 に は 、副 審 が 椅 子 に 座 っ ていることに よって、投 技 を 見 る方 向 が 制 限 さ れていることが 影 響 し ていると考 えられる。 第 2 項 審 判 員 レベル別 の 比 較 学 生 大 会 は A ライセンス審 判 員 63 名 (61.2%)、B ライセンス審 判 員 30 名 (29.1%)、C ライセンス審 判 員 10 名 (9.7%)によって審 判 が 行 われた。ま た、講 道 館 杯 は A ライセンス審 判 員 101 名 によって審 判 が 行 われた。このこ とから、本 研 究 では講 道 館 杯 の審 判 員 レベルは学 生 大 会 よりも高 いものと みなすことにした。 学 生 大 会 と講 道 館 杯 の異 見 発 生 率 を比 較 した結 果 、学 生 大 会 の異 見 21 発 生 率 は講 道 館 杯 よりも高 かった。このことから、審 判 員 レベルが高 いと異 見 発 生 率 が 低 くなり、審 判 員 レベルが 低 いと異 見 発 生 率 が 高 くなることが 考 えられる。しかし、この結 果 について有 意 な差 が認 められなかったことから、 異 見 発 生 と 審 判 員 レ ベルの 関 係 に つ いて 十 分 に 解 明 する こ と は でき なか っ た(p.19 表 6 参 照 )。 第 3 項 異 見 発 生 時 の投 技 評 価 の組 合 せ 井 浦 ほ か ( 1995 ) の 研 究 で は 、 各 投 技 評 価 に 対 す る 異 見 発 生 率 が 検 討 されているが 、異 見 が 発 生 した 場 合 に 投 技 評 価 がどのように 分 かれるかにつ いては検 討 されていない。そこで本 研 究 では、調 査 対 象 とした全 試 合 にお ける 異 見 発 生 時 の 投 技 評 価 の 組 合 せを 検 討 し た 結 果 、 異 見 が 発 生 し た 場 合 、投 技 評 価 は主 に「一 本 」と「技 あり」、「技 あり」と「有 効 」、「有 効 」と「効 果 」 、 「 効 果 」 と 「 評 価 な し 」 に 分 か れ る こ と が 明 ら か と な っ た ( p.20 表 7 参 照 )。 「 一 本 」 は 、「 試 合 者 の 一 方 が 相 手 を 制 し なが ら 背 を 大 き く 畳 に つ くよ う に 相 当 の 強 さと速 さをもって投 げたとき」と定 義 されている(p.1 表 1 参 照 )。「技 あり」 は 、「試 合 者 の 一 方 が 相 手 を 制 し な がら 投 げ 、その 技 が 『 一 本 』 に 必 要 な他 の 3 つの 要 素 の うち 1 つが部 分 的 に 不 足 している場 合 」と定 義 されてい る(p.1 表 1 参 照 )。「有 効 」は、「 試 合 者 の 一 方 が 相 手 を制 しながら投 げ 、そ の技 が『一 本 』に 必 要 な他 の 3 つの要 素 の うち 2 つが部 分 的 に 不 足 している 場 合 」と定 義 されている(p.1 表 1 参 照 ) 。「 一 本 」に 必 要 な他 の 3 つの要 素 と は、① 背 が 大 きく畳 に つく、②投 技 に 相 当 の強 さが ある、③ 投 技 に相 当 の 速 さあることを 指 している(p.1 表 1 参 照 )。したがって、「一 本 」と「技 あり」、「技 あ り 」 と「 有 効 」 は 類 似 し て い る た めに 、 投 技 評 価 は 主 に 「 一 本 」 と 「 技 あ り 」 、 「技 あり」と「有 効 」に 分 かれたと考 えられる。 「 効 果 」は 、「 試 合 者 の 一 方 が 相 手 を 制 し なが ら 『 強 さ』 と『 速 さ』 を もっ て、 片 方 の 肩 、尻 、大 腿 部 がつくように投 げた とき」と定 義 されている(p.1 表 1 参 照 ) 。「 評 価 なし 」は 、「試 合 者 の 一 方 が 相 手 を 制 し ながら 投 げ ていないこと。 また 、 背 、 片 方 の 肩 、 尻 、 大 腿 部 が 畳 に つ いていな いこと」 と 定 義 さ れて いる (p.1 表 1 参 照 )。このことから、「有 効 」と「効 果 」の 大 きな違 いは畳 につく身 22 体 部 分 であり、「有 効 」は背 で、「効 果 」は片 方 の肩 、尻 、大 腿 部 である。ま た、「効 果 」と「評 価 なし」の違 いは、片 方 の肩 、尻 、大 腿 部 が畳 につくか否 かである。したがって、「有 効 」と「効 果 」の区 別 や「効 果 」と「評 価 なし」の区 別 は比 較 的 に容 易 であり、異 見 が発 生 しにくいと考 えられる。しかし、投 技 評 価 は 「有 効 」と「効 果 」、「効 果 」と「 評 価 なし」に も 分 か れていた 。その 原 因 は、実 際 の試 合 において、「有 効 」と「効 果 」の投 技 の状 況 や「効 果 」と「評 価 なし」の 投 技 の 状 況 が 類 似 しているた めであると考 えられる。例 えば 、体 側 から畳 についたような状 況 が 挙 げられる。 投 技 評 価 が「一 本 」と「有 効 」、「技 あり」と「効 果 」、「有 効 」と「評 価 なし」 に分 かれたり、「一 本 」と「技 あり」と「有 効 」、「技 あり」と「有 効 」と「効 果 」、 「 一 本 」 と「 効 果 」 と「 評 価 なし 」 に 分 か れ た りするよ う に 、 大 き く 評 価 が 分 か れ る異 見 が あった 。その 原 因 とし て、投 技 評 価 の 判 断 が 難 し い状 況 であっ た こ とが考 えられる。また、審 判 員 が適 切 に投 技 評 価 できなかったことが考 えら れる 。こ の よ う な 場 合 、ビデ オ 等 を 用 い て 投 技 の 状 況 を 検 証 し 、 投 技 評 価 を 判 断 できるようにすることが必 要 であると考 えられる。 第 5 節 まとめ 本 章 の 目 的 は 、投 技 評 価 に おける異 見 発 生 の 実 態 を 明 らかに することに ある。そこで、現 行 法 と同 時 法 における投 技 評 価 の異 見 発 生 率 を審 判 法 別 、審 判 員 レベル別 に比 較 した。これによって、現 行 法 では、異 見 が表 面 化 しに くいことを 検 証 し、異 見 発 生 と審 判 員 レベルの 関 係 につ いて検 討 した。 また 、ど の 投 技 評 価 の 基 準 の 間 に 異 見 が 発 生 し て い るか に つ いて 検 討 し た 。 その結 果 、以 下 のことが明 らかになった。 1. 現 行 法 の 異 見 発 生 率 は 同 時 法 よ りも 有 意 に 低 か っ た ことか ら 、 現 行 法 で は、異 見 が 表 面 化 しにくいことが 確 認 された。 2. 審 判 員 レ ベ ル の 高 い 者 の 異 見 発 生 率 は 審 判 員 レ ベ ル の 低 い 者 よ り も 低 か っ た が 、 有 意 な 差 は 認 めら れ な か っ た こ とか ら 、 異 見 発 生 と 審 判 員 レ ベ ルの関 係 について十 分 に 解 明 することは できなかった。 3. 異 見 が 発 生 し た 場 合 、 投 技 評 価 は 主 に 「 一 本 」 と 「 技 あ り 」 、 「 技 あ り 」 と 「 有 効 」、「 有 効 と「 効 果 」、「 効 果 」と「 評 価 なし 」に 分 か れていた 。また 、 少 23 数 では あ るが 、 投 技 評 価 が 「 一 本 」と「 有 効 」、「 技 あり」と「 効 果 」、「 有 効 」 と「評 価 なし」に分 かれたり、「一 本 」と「技 あり」と「有 効 」、「技 あり」と「有 効 」と「 効 果 」、「 一 本 」と「効 果 」と「評 価 なし」に分 かれていた。 以 上 のことから、現 行 法 では、異 見 が表 面 化 しにくいことが確 認 された。 また 、異 見 は 主 に 連 続 する投 技 評 価 の 基 準 間 に 発 生 す るが 、評 価 が 大 きく 分 かれる異 見 があることが確 認 された。 24 第 Ⅳ 章 投 技 評 価 に おける異 見 発 生 の 要 因 第 1 節 本 章 の ねら い 1999 年 以 降 、IJ F は 世 界 ジュニア柔 道 選 手 権 大 会 において、オリンピック や世 界 選 手 権 の審 判 員 をテストして選 考 している。また、大 会 当 日 には審 判 委 員 に予 選 ラウンドで審 判 員 の技 能 をチェックさせ、優 秀 な審 判 員 のみ を 決 勝 ラ ウン ド に 起 用 す る とい う 方 式 を 採 用 し て いる ( 松 下 ・ 藤 田 , 2003 ; 関 根 ,1999)。これに 加 えて IJ F は、審 判 セミ ナーで試 合 映 像 を用 いて審 判 員 の投 技 評 価 の基 準 を統 一 する作 業 を行 い、審 判 員 レベルの向 上 を図 って いる( 小 俣 ,2005)。このような IJ F の 努 力 によって、審 判 員 レベ ルが向 上 し て 投 技 評 価 の 軽 さ と バ ラ ツ キ の 問 題 に 関 する 報 告 は 大 幅 に 減 少 し て いる が 、 依 然 と し て な く な っ て い な い こ と が 指 摘 さ れ て い る ( 射 手 矢 , 2005 ; 木 村 , 2001a,2003 ,2008; 正 木 ,2007 )。 この こ とか ら 、 審 判 員 レベ ル が 異 見 発 生 に影 響 を及 ぼしていると同 時 に、その他 の要 因 も影 響 を及 ぼしていることが 考 えられる。その他 の要 因 について興 味 深 い報 告 がある。それは、体 操 競 技 において同 一 の 審 判 員 レベルの 2 グループに跳 馬 の 演 技 を正 面 と側 面 の 2 方 向 から見 せて採 点 させた 結 果 、正 面 の 採 点 は側 面 よりも低 かったこと が 報 告 されていることである(Stephenson and J ackson ,1977)。この 知 見 は 、 柔 道 競 技 においても、投 技 を見 る方 向 によって審 判 員 の投 技 評 価 が異 な る可 能 性 のあることを示 唆 していると考 えられる。また、全 日 本 柔 道 連 盟 は 審 判 員 のそれぞれの 位 置 や角 度 によって投 技 評 価 は 若 干 違 う という 見 解 を 示 し てい る( 全 日 本 柔 道 連 盟 , 2000 ) 。 さ ら に 、2005 年 の 世 界 選 手 権 の 日 本 人 審 判 員 は、投 技 を見 る方 向 によって投 技 評 価 は違 うという見 解 を示 し ている( 桐 生 ・平 田 ,2 005)。 以 上 の ことから 、投 技 評 価 に お ける異 見 発 生 の 要 因 は 、投 技 を 見 る方 向 と審 判 員 レベルの 2 つであることが 考 えられる。また、この 2 つが異 見 発 生 の 要 因 であると仮 定 し た場 合 、投 技 を 見 る方 向 と審 判 員 レベ ル の 両 方 が 関 連 し合 って異 見 が発 生 することが考 えられる。しかし、これらのことについて検 討 した 研 究 はない。それゆえ 本 章 では、投 技 評 価 にお ける異 見 発 生 が 投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベルという 2 つの 要 因 とどのよう な関 係 にあるのかに ついて検 討 する。 25 第 2 節 方法 第 1 項 実 験 の構 成 林 ほか(2007)の研 究 では、A ライセンス審 判 員 が 同 時 法 を 用 いた 2001 年 と現 行 法 を用 いた 2002 年 の 講 道 館 杯 日 本 体 重 別 選 手 権 大 会 ( 両 大 会 とも男 子 73k g 級 と男 子 81k g 級 を対 象 )に おける計 149 試 合 の 投 技 評 価 に ついて、副 審 2 名 のうち 1 名 以 上 で異 見 が発 生 した割 合 は 32.1%であった ことが報 告 されている。このことから、投 技 評 価 が行 われた試 合 の映 像 から 無 作 為 に 1 つを抽 出 し、A ライセンス 審 判 員 を対 象 に 異 見 発 生 の 有 無 を検 証 し よ う と し た 場 合 に は 、 67.9% の 割 合 で 異 見 が 発 生 し な い こ と が 予 想 さ れ る。したがって、本 研 究 の実 験 では、試 合 から無 作 為 に抽 出 した投 技 の映 像 ではなく、実 際 の 試 合 を同 時 に 4 方 向 から撮 影 した映 像 から、次 項 に 述 べる手 続 きに従 って、異 見 が発 生 する可 能 性 がきわめて高 いと予 想 される 投 技 を抽 出 し、この投 技 の 4 方 向 からの映 像 を異 なるレベル の審 判 員 に観 察 させ て 投 技 評 価 を 行 わせ ると いう 実 験 を 行 う こと とし た 。 本 研 究 では 、 この 実 験 で得 られた投 技 評 価 の結 果 を分 析 し、投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベ ルによって投 技 評 価 に差 が生 じる、つまり異 見 が発 生 するか否 かについて 検 証 する。また、異 見 発 生 が 投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベルという 2 つの要 因 とどのような関 係 にあるのかについて検 討 を加 える。 第 2 項 実 験 映 像 の作 成 実 験 場 面 を 構 成 し て 行 わ せた 投 技 の 映 像 は 、 試 合 者 の 動 き が 不 自 然 と なり、試 合 の臨 場 感 が失 われることが考 えられる。そこで本 研 究 では、実 験 において審 判 員 に 違 和 感 なく投 技 評 価 を行 わせ るために、以 下 に 述 べる方 法 で実 際 の 試 合 における投 技 の 映 像 から実 験 映 像 を作 成 した。 1. 撮 影 場 所 実 験 の目 的 を達 成 するには、審 判 員 の視 点 から撮 影 した投 技 の映 像 を 用 いることが最 適 であるが、審 判 員 の身 体 にビデオカメラをつけた場 合 、審 判 活 動 に 支 障 をきた すことが 考 えられる。次 に、試 合 場 周 辺 に 位 置 している 審 判 委 員 や コ ー チの 視 点 か ら 撮 影 し た 投 技 の 映 像 が 適 し て い る こ とが 考 え られる。しかし、この場 所 には得 点 表 示 板 や役 員 席 などがあるために、ビデ 26 とになり、副 審 の投 技 評 価 の影 響 を受 けることが予 想 される。そこで、審 判 委 員 が 試 合 場 の 正 面 か ら 試 合 を 見 て い る 方 向 を 北 方 向 と し 、 こ れを 基 準 と して東 西 南 北 の 4 方 向 にビデオカメラを設 置 して撮 影 を行 った。その際 、試 合 場 の 中 央 付 近 に ある 赤 と 白 の 試 合 開 始 線 を 目 印 に 、 東 方 向 と 西 方 向 を 結 ぶ 直 線 と 南 方 向 と 北 方 向 を 結 ぶ 直 線 が 試 合 場 の 中 心 を 通 り 、か つ 試 合 場 と直 角 に 交 わるようにビデオカメラの方 向 を調 整 した(p.27 図 2 参 照 )。 3. 撮 影 対 象 とした 大 会 実 験 映 像 を抽 出 するために、全 日 本 学 生 柔 道 体 重 別 選 手 権 大 会 の 112 試 合 (2006 年 10 月 14 日 ・15 日 、日 本 武 道 館 )、全 日 本 学 生 柔 道 体 重 別 団 体 優 勝 大 会 の 91 試 合 (2006 年 11 月 4 日 ・5 日 、尼 崎 市 記 念 公 園 総 合 体 育 館 ) 、 講 道 館 杯 全 日 本 柔 道 体 重 別 選 手 権 大 会 の 186 試 合 (2006 年 11 月 18 日 ・19 日 、千 葉 ポー トアリーナ)、全 国 高 等 学 校 柔 道 選 手 権 大 会 の 69 試 合 (2007 年 3 月 21 日 、日 本 武 道 館 )の 計 458 試 合 を撮 影 した。 4. 実 験 映 像 の 抽 出 方 法 撮 影 した 4 方 向 の映 像 をビデオ編 集 ソフトによってパーソナルコンピュー タに取 り込 み、方 向 ごとに投 技 の掛 け始 めから掛 け終 わりまでの一 連 の映 像 を 切 り取 った 。その 中 から、撮 影 ミスで 4 方 向 の 映 像 がそろわないも のや 審 判 員 に 遮 られて投 技 がよく見 えないもの を除 外 した。その 結 果 、495 個 の 投 技 に 対 する 4 方 向 の映 像 (1980 映 像 )が抽 出 された。この 495 個 の 投 技 の映 像 について、B ラ イセンス審 判 員 2 名 と C ライセンス審 判 員 3 名 の 計 5 名 が 投 技 評 価 を 行 った。そして、全 員 が 同 一 の 投 技 における 4 方 向 の 映 像 に対 して 1 方 向 でも異 なった投 技 評 価 を行 った 26 個 の 投 技 の映 像 を抽 出 した。この 26 個 の 投 技 を、異 見 が①「一 本 」と「技 あり」、②「技 あり」と「有 効 」、 ③ 「 有 効 」と「 効 果 」 、 ④「効 果 」 と「 評 価 な し 」の いずれの 間 で生 じ ているか に 基 づいて 4 つの 類 型 に分 類 した。 実 験 映 像 として、同 じ種 類 の投 技 の映 像 や発 生 した異 見 が同 じ類 型 に 属 する映 像 を 繰 り返 して用 いると、投 技 評 価 に 観 察 の 繰 り返 し による効 果 が 28 生 じる危 険 性 が考 え られる。そのため、4 つの類 型 から抽 出 した投 技 が 同 一 種 類 の 投 技 にならないように配 慮 して各 類 型 から 1 つの投 技 を抽 出 した。そ の際 、それぞれの類 型 で複 数 の投 技 が抽 出 可 能 な場 合 には、映 像 がより 鮮 明 なものを 選 ぶこととした。こうし て、①に 対 して燕 返 (つばめがえし)、②に 対 して一 本 背 負 投 ( いっぽん せお いなげ ) 、③ に 対 し て横 落 (よ こお とし ) 、④ に対 して大 外 刈 (お おそとがり)の 4 つの 投 技 における 4 方 向 の映 像 (16 映 像 )が 実 験 映 像 として抽 出 された。 5. 実 験 用 DVD の 編 集 1 つの投 技 における 4 方 向 の映 像 を 被 験 者 に 連 続 して見 せた 場 合 、投 技 の種 類 や状 況 から同 じ投 技 であると気 づかれてしまい、すべて同 じ投 技 評 価 を回 答 する危 険 性 が 考 えられる。そこで、抽 出 した 4 つの 投 技 における 4 方 向 の 実 験 映 像 (16 映 像 )にダミー映 像 を加 えることとした。ダミー映 像 は、 すでに実 験 映 像 から除 外 した映 像 の 中 からランダムに 14 映 像 を抽 出 した。 そして、実 験 映 像 (16 映 像 ) とダミー映 像 (14 映 像 )を 合 わせ て再 生 順 を入 れ替 えて実 験 課 題 30 問 (30 映 像 )を作 成 した。この 実 験 課 題 の 最 初 に練 習 課 題 2 問 (2 映 像 )を加 えて実 験 用 DVD を完 成 させた。 第 3 項 実 験 の実 施 1. 被 験 者 全 日 本 実 業 柔 道 団 体 対 抗 大 会 (2007 年 6 月 2 日 ・3 日 、広 島 市 東 区 ス ポーツセンター)、都 道 府 県 対 抗 全 日 本 女 子 柔 道 大 会 (2007 年 6 月 16 日 ・17 日 、岡 山 武 道 館 )、全 日 本 学 生 柔 道 優 勝 大 会 (2007 年 6 月 23 日 ・ 24 日 、日 本 武 道 館 )、全 国 国 立 大 学 柔 道 優 勝 大 会 (2007 年 7 月 1 日 、 講 道 館 )、近 畿 ジュニ ア柔 道 体 重 別 選 手 権 大 会 (2007 年 7 月 8 日 、兵 庫 県 立 武 道 館 )の 5 つの大 会 に 競 技 役 員 として参 加 していた A、B、C ライセ ンス審 判 員 を実 験 の被 験 者 とした。被 験 者 には実 験 内 容 について十 分 に 説 明 を行 い、同 意 を得 た上 で実 験 を 行 った。その人 数 は、A ライセンス審 判 員 100 名 、B ライセンス審 判 員 100 名 、C ライセンス審 判 員 100 名 であった。 日 本 国 内 には、全 日 本 柔 道 連 盟 公 認 審 判 員 の養 成 と資 質 向 上 を図 る 29 ことを目 的 として、「全 日 本 柔 道 連 盟 公 認 審 判 員 規 程 」が制 定 されている (ベースボール・マガジン社 ,2007)。これによって、審 判 員 ライセンスは S、A、 B、C の 4 つに区 分 されている。受 験 資 格 は、年 齢 、柔 道 経 験 、審 判 経 験 に よって定 められ、筆 記 試 験 や実 技 試 験 に合 格 した者 にライセンスが与 えら れる(p.4 表 2 参 照 ).全 日 本 柔 道 連 盟 に は、2008 年 3 月 31 日 時 点 にお いて、S ライセンス審 判 員 7 名 、A ライセンス審 判 員 621 名 、B ライセンス 審 判 員 3090 名 、C ライセンス審 判 員 10240 名 が 登 録 されている(ベースボー ル・マガジン社 ,2008)。S ライセンス審 判 員 は、2007 年 4 月 1 日 の 全 日 本 柔 道 連 盟 公 認 審 判 員 規 程 の 改 正 によって創 設 されたが 、本 研 究 の 実 験 期 間 中 に 全 日 本 柔 道 連 盟 へ登 録 が 行 われていなかったために 被 験 者 には 含 まれていない。なお、本 章 では、審 判 員 レベルは審 判 員 ライセンスと同 義 と 理 解 することとした。 2. 実 験 方 法 被 験 者 に 実 験 用 DVD を見 せる再 生 機 器 として、12.1 型 のノート型 パー ソナルコンピュータを使 用 した。被 験 者 に は練 習 課 題 2 問 を回 答 させた 後 に、 実 験 課 題 30 問 を回 答 させた。なお 、実 際 に審 判 員 が投 技 評 価 を行 う 状 況 に近 づけるために、被 験 者 には投 技 の 映 像 を 1 回 だけ見 せ、回 答 欄 にある 「一 本 」「技 あり」「 有 効 」「 効 果 」「評 価 なし」の中 から 1 つを選 択 させた。 第 4 項 データの 処 理 本 研 究 の 投 技 評 価 のデータは順 序 尺 度 のデータであるが 、これに 数 値 を 割 り当 てて間 隔 尺 度 のデータに置 き換 え ることによって、次 の 2 つのメリット が考 えられる。1 つは、2 要 因 分 散 分 析 を 行 うことが 可 能 となり、投 技 を見 る 方 向 と審 判 員 レベルの要 因 の間 に有 意 な交 互 作 用 が認 められる(投 技 を 見 る方 向 と審 判 員 レベルの 両 方 が 関 連 し 合 っ て異 見 が 発 生 す る)か 否 かに ついて検 証 することが できる。もう 1 つは、審 判 員 レベル 別 に 投 技 評 価 の平 均 値 を比 較 することが可 能 となり、投 技 評 価 の軽 さの問 題 について検 討 す ることができる。以 上 のことから 、本 研 究 で は、実 験 から 得 ら れた 投 技 評 価 の データ に 数 値 を 割 り当 てることとした 。その 際 、割 り当 てる数 値 は、日 本 国 内 30 の 柔 道 の 団 体 戦 に お いて チ ー ム 間 で 勝 者 が 同 数 の 場 合 に 、 その 勝 敗 を 決 定 す るときに 用 いら れ る点 数 化 の 基 準 ( 「 一 本 」 勝 ち=10 点 、 「 技 あり」 勝 ち =7 点 、「有 効 」勝 ち=5 点 、「効 果 」 勝 ち=3 点 )に 基 づいて( 籔 根 ,2009)、 「一 本 」=10、「 技 あり」=7、「有 効 」=5、「 効 果 」=3、「 評 価 なし 」=0 とした 。 なお 、 本 来 、 投 技 評 価 は 順 序 尺 度 であ る の で、 本 研 究 で 数 値 を 割 り 当 てた 投 技 評 価 は、例 えば 7(「技 あり」)と 3(「効 果 」)を合 計 して 10(「一 本 」)と解 釈 したり、10(「一 本 」)の 半 分 を 5(「有 効 」)と解 釈 した りし ないこととした 。ま た、本 研 究 で用 いる間 隔 尺 度 に置 き換 えた投 技 評 価 のデータは、投 技 を 見 る方 向 と審 判 員 レベルの要 因 の間 に有 意 な交 互 作 用 が認 められるか否 かを検 証 することに用 いることとした。さらに、投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベ ルによって投 技 評 価 に差 が生 じるか否 かを検 証 し、その差 がどの方 向 やど の審 判 員 レベルの 間 に生 じているかを検 証 することに 用 いることとした。 第 5 項 分析方法 投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベルの 2 つが 投 技 評 価 における異 見 発 生 の 要 因 であると仮 定 した場 合 、異 見 は①投 技 を見 る方 向 が投 技 評 価 に影 響 を 及 ぼ す こ とに よ っ て 発 生 す る 、 ② 審 判 員 レベ ル が 投 技 評 価 に 影 響 を 及 ぼ すことによって発 生 する、③投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベルの両 方 が関 連 し合 って投 技 評 価 に 影 響 を及 ぼす ことによって発 生 するという 3 つが考 えら れる。そこで、投 技 評 価 における異 見 発 生 の要 因 について検 証 するために、 投 技 を見 る方 向 と審 判 員 ライセンスの要 因 の 間 で 1 要 因 にの み対 応 のある 2 要 因 分 散 分 析 を 行 った 。その 際 、被 験 者 内 要 因 ( 投 技 を 見 る方 向 ) の 等 分 散 性 を検 証 するた めに Mauchl y の球 面 性 検 定 を行 い、有 意 な場 合 には Greenhouse-Geisser の ε による修 正 を 行 って 2 要 因 分 散 分 析 を行 った。 4 つの投 技 の 2 要 因 分 散 分 析 の結 果 、有 意 な交 互 作 用 が 認 められた場 合 は 、さらに 各 要 因 (投 技 を 見 る方 向 、審 判 員 ライセンス)でプ ールしない水 準 別 誤 差 項 を 用 いた 単 純 主 効 果 の 検 定 を 行 った 。次 に 、 有 意 な単 純 主 効 果 が 認 められた 要 因 の水 準 (東 ・ 西 ・ 南 ・ 北 方 向 、A・ B・C ライセンス)ごとに、 もう一 方 の 要 因 の 水 準 において Bonferroni の方 法 による多 重 比 較 検 定 を 行 った。また、有 意 な交 互 作 用 が認 められなかった場 合 は、有 意 な主 効 果 31 が認 められた各 要 因 の水 準 間 で Bonferroni の方 法 による多 重 比 較 検 定 を 行 った 。統 計 ソフトは SPSS15.0J を用 い、検 定 の 有 意 水 準 は 5%未 満 とし た。 投 技 を 見 る 方 向 に 関 する多 重 比 較 検 定 の 結 果 に つ いては 、投 技 評 価 を 決 定 する投 技 の強 さの程 度 、投 技 の速 さの程 度 、受 の身 体 部 分 と畳 の接 地 状 況 の 3 つの 要 素 から検 討 することが必 要 である。しかし、本 研 究 では、 それぞれの被 験 者 における投 技 の強 さ、投 技 の速 さ、受 と畳 との接 地 状 況 の評 価 を考 慮 することはできない。そのため、投 技 の強 さ、投 技 の速 さの評 価 に ついては、国 際 審 判 員 の 評 価 を 指 標 とし、受 と畳 との 接 地 状 況 、つまり 投 技 の連 続 写 真 から考 察 を加 えることとした。そこで、日 本 人 のインターナ ショナル審 判 員 1 名 とコンチネンタル審 判 員 1 名 (p.4 表 2 参 照 )に 4 つの 投 技 の 4 方 向 の 映 像 を見 せ、各 投 技 の 4 方 向 における投 技 の 強 さと速 さの 程 度 の そ れぞれに つ いて、「 相 当 あ る」 「 あ る(相 当 あるか ら 部 分 的 に 不 足 す る)」「ない」の 3 つの基 準 に 基 づいて評 価 させた。その結 果 、2 名 の 国 際 審 判 員 が 4 方 向 とも投 技 の 強 さと速 さの程 度 が 同 じであると評 価 した投 技 につ いて、投 技 を見 る方 向 に関 する多 重 比 較 検 定 の結 果 と受 の身 体 部 分 と畳 の 接 地 状 況 、 つ まり 投 技 の 連 続 写 真 を 比 較 し て 検 討 す る こ ととし た 。 なぜな ら、本 研 究 において 2 名 の国 際 審 判 員 に よって 4 方 向 とも投 技 の強 さと速 さ の 程 度 が 同 じ であるという ことが 確 認 された 場 合 、受 の 身 体 部 分 と畳 の 接 地 状 況 に よっ て投 技 評 価 の 平 均 値 に 差 が 生 じた と考 え ら れるか らである。なお 、 全 日 本 柔 道 連 盟 に は、2009 年 8 月 時 点 において、インターナショナル審 判 員 1 8 名 、コンチネンタル審 判 員 17 名 が 登 録 されている( 全 日 本 柔 道 連 盟 審 判 委 員 会 ,2009)。彼 らは 日 本 国 内 で S あるいは A ライセンスを所 有 し、 日 本 を代 表 する優 秀 な審 判 員 である。 32 の程 度 については、インターナショナル審 判 員 は「相 当 ある」と評 価 し、コン チネンタル審 判 員 は「ある」と評 価 した。大 外 刈 の 4 方 向 については、2 名 の 国 際 審 判 員 とも「ある」と評 価 した。 第 4 節 考察 第 1 項 投 技 評 価 に おける異 見 発 生 の 要 因 につ いて 投 技 評 価 における異 見 発 生 の要 因 については、従 来 から投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベルの 2 つであることが 示 唆 されてきたが、この ことを実 証 した 研 究 はない。また、投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベルの両 方 が関 連 し合 って 異 見 が発 生 するか否 かについて検 証 した研 究 もない。そこで、本 章 におい て投 技 評 価 における異 見 発 生 の要 因 について検 証 した結 果 、燕 返 につい ては有 意 な交 互 作 用 が認 められたが、一 本 背 負 投 、横 落 、大 外 刈 につい ては 有 意 な交 互 作 用 が認 められなかった。また、すべ ての 投 技 において、投 技 を見 る方 向 と審 判 員 ライセンスの要 因 に有 意 な主 効 果 が認 められた (p.39 表 12 参 照 )。以 上 のことから、① 投 技 を見 る方 向 、② 審 判 員 レベル、 ③投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベルの 両 方 の 3 つが投 技 評 価 における異 見 発 生 の 要 因 であると考 えられる。また、4 つの投 技 のうち 3 つ( 一 本 背 負 投 、 横 落 、大 外 刈 )については 有 意 な交 互 作 用 が 認 めら れず 、投 技 を 見 る方 向 と審 判 員 ライセンスの要 因 に有 意 な主 効 果 が認 められた。このことから、投 技 を 見 る 方 向 と 審 判 員 レベルの 要 因 が 個 別 に 投 技 評 価 に 影 響 を 及 ぼ すこ とによって異 見 が 発 生 している可 能 性 が 高 いことが 考 えられる。 燕 返 に つい ての み 有 意 な 交 互 作 用 が 認 めら れた の は 、 投 技 評 価 の 平 均 値 が 東 ・南 ・北 方 向 では C ライセンス審 判 員 、B ライセンス審 判 員 、A ライセ ンス審 判 員 の 順 に 高 くなっているのに 対 し、西 方 向 では A ライセンス審 判 員 、 B ライセンス審 判 員 、C ライセンス審 判 員 の順 に高 くなっているからである (p.33 表 8 、 p.37 図 3 参 照 )。つまり、西 方 向 についてのみ B、C ライセンス 審 判 員 は A ライセンス審 判 員 よりも高 い投 技 評 価 を行 っているからである。 この原 因 は、燕 返 の 西 方 向 (p.46 図 7 参 照 )のように、取 (とり) 注 4) が受 の 上 に完 全 に覆 いかぶさって受 の背 全 体 が畳 についているように見 える状 況 で は、B、C ライセンス審 判 員 は受 の 上 半 身 が 起 き上 がっている可 能 性 を推 測 42 できずに高 い投 技 評 価 を行 ってしまったからであると考 えられる。 第 2 項 投 技 評 価 に おける異 見 発 生 と投 技 を 見 る方 向 の 関 係 について 投 技 評 価 は、投 技 の強 さの程 度 、投 技 の速 さの程 度 、受 の身 体 部 分 と 畳 の 接 地 状 況 によって決 定 される(p.1 表 1 参 照 )。この 3 つの 中 で受 の 身 体 部 分 と 畳 の 接 地 状 況 は 、投 技 評 価 を 決 定 す る主 た る要 因 で あると考 え ら れる。なぜなら 、投 技 の 強 さと速 さの 程 度 に 関 係 なく、受 の 背 、肩 、尻 、大 腿 部 の いずれかが 畳 に 接 地 し なければ 、試 合 者 に 投 技 評 価 が 与 えら れないか らである。このことを 確 かめるために、2 名 の国 際 審 判 員 に 4 つの投 技 の 4 方 向 の 映 像 を見 せて投 技 の 強 さと速 さの程 度 を評 価 させた(p.41 表 14 参 照 ) 。その 結 果 、燕 返 、一 本 背 負 投 、大 外 刈 に ついて、2 名 の 国 際 審 判 員 は 4 方 向 とも 投 技 の 強 さと速 さの 程 度 は同 じであると評 価 した が、横 落 につ いては 異 なっ た 。し た がっ て、 燕 返 、 一 本 背 負 投 、 大 外 刈 では 、4 方 向 か ら 見 た受 の身 体 部 分 と畳 の接 地 状 況 の違 いによって投 技 評 価 の平 均 値 に 差 が 生 じていることが 考 えられる。このことを 踏 まえて以 下 では、この 3 つの投 技 の 多 重 比 較 検 定 の 結 果 ( pp.39-40. 表 12 ・ 13 参 照 ) と 連 続 写 真 (pp.46-47.図 7 ・ 8 ・ 10 参 照 )を用 いて 4 方 向 から見 た受 の 身 体 部 分 と畳 の接 地 状 況 の 違 いという 観 点 から 検 討 を加 え ていきたい。なお 、燕 返 につ い ては、A、B、C ライセンス審 判 員 に 共 通 す る結 果 についてのみ 検 討 する。な ぜ なら 、す べての ラ イ センス 審 判 員 に 共 通 する 結 果 で あ ると いう ことは 、 投 技 を 見 る 方 向 の 影 響 を 同 じ よ う に 受 け て い る と 考 え ら れるか ら で あ る 。 こ れに 対 して、横 落 については、受 の身 体 部 分 と畳 の接 地 状 況 の違 い以 外 に投 技 の速 さの違 いも影 響 していることが考 えられる。この原 因 として、受 が掛 けた 大 内 刈 (おおうちがり、p.47 図 9 の 2 参 照 )を取 が 横 落 で返 す( p.47 図 9 の 3 参 照 )という複 雑 な状 況 が 影 響 していることが考 えられる。 燕 返 (p.40 表 13、p. 46 図 7 参 照 )の 場 合 には、東 方 向 から見 ると、受 の 右 肩 は 畳 から 離 れていることが 確 認 できる。これに 対 し て、西 方 向 から 見 ると、 取 が 邪 魔 に なっ て 受 の 身 体 部 分 と 畳 の 接 地 状 況 が は っ きり と 確 認 で き ない が 、受 の 背 全 体 が 畳 についているよ うに 見 え る。また 、南 方 向 か ら 見 ると、取 が邪 魔 になって受 の身 体 部 分 と畳 の接 地 状 況 がはっきりと確 認 できないが、 43 受 の 右 半 身 が 畳 から 離 れているように 見 え る。そし て、北 方 向 か ら見 ると、受 の右 半 身 が畳 から離 れていることが確 認 できる。したがって、西 方 向 は他 の 3 方 向 と比 べて受 の 背 が 畳 にしっかりとつ いているように見 え るために、他 の 3 方 向 よりも投 技 評 価 の 平 均 値 が有 意 に 高 くなったと考 えられる。 一 本 背 負 投 (p.39 表 12、p.46 図 8 参 照 )の 場 合 には、東 方 向 から見 ると、 取 が 邪 魔 に なっ て 受 の 身 体 部 分 と 畳 の 接 地 状 況 が ほ とん ど 確 認 でき ない。 これに 対 し て、 西 方 向 と 南 方 向 か ら 見 る と、受 の 左 半 身 が 畳 から 離 れている ことが確 認 できる。また、北 方 向 から見 ると、取 が邪 魔 になって受 の身 体 部 分 と畳 の接 地 状 況 がはっきりと確 認 できないが、受 の背 全 体 が畳 について いるように見 える。したがって、北 方 向 は他 の 3 方 向 と比 べ て受 の 背 が 畳 に しっかりとついているように見 えるために、他 の 3 方 向 よりも投 技 評 価 の 平 均 値 が 有 意 に 高 くなったと考 えら れる。また 、東 方 向 は 投 技 の 一 連 の 動 きや 部 分 的 に見 えた状 況 から受 の身 体 部 分 と畳 の接 地 状 況 を推 測 することが困 難 であるために、他 の 3 方 向 よりも投 技 評 価 の 平 均 値 が 有 意 に 低 くなったと 考 え ら れ る 。 さら に 、 西 方 向 は 南 方 向 と 比 べて 受 の 背 が 畳 か ら 離 れ て いるよ うに 見 え るた めに 、南 方 向 よ りも 投 技 評 価 の 平 均 値 が 有 意 に 低 くなっ た と考 えられる。 大 外 刈 (p.39 表 12、p.47 図 10 参 照 )の 場 合 には、東 方 向 から見 ると、 取 が 邪 魔 に なっ て 受 の 身 体 部 分 と 畳 の 接 地 状 況 が ほ とん ど 確 認 でき ない。 これに 対 して、西 方 向 から見 ると、受 の 大 腿 部 が 畳 についていることがはっき りと確 認 できる。南 方 向 から 見 ると、受 の 大 腿 部 が 畳 に ついていることが はっ きりと 確 認 でき 、 受 の 右 体 側 が 畳 に ついて いるよ う に 見 え る。 そ し て、北 方 向 から見 ると、取 が 邪 魔 になって受 の 身 体 部 分 と畳 の 接 地 状 況 が はっきりと確 認 できないが、受 の尻 や大 腿 部 、背 が畳 についているように見 える。したが って、北 方 向 は 他 の 3 方 向 と比 べて受 の 背 が 畳 についているように見 えるた めに、他 の 3 方 向 よりも投 技 評 価 の 平 均 値 が 有 意 に高 くなっ たと考 えられる。 また 、 東 方 向 は 投 技 の 一 連 の 動 き や 部 分 的 に 見 え た 状 況 か ら 受 の 身 体 部 分 と畳 の 接 地 状 況 を推 測 することが困 難 であるために、他 の 3 方 向 よりも投 技 評 価 の平 均 値 が有 意 に低 くなったと考 えられる。また、南 方 向 は受 の右 体 側 が畳 についているように見 えるために、西 方 向 よりも投 技 評 価 の平 均 44 値 が 有 意 に高 くなっ たと考 えられる。 以 上 の こ とか ら 、取 が 邪 魔 に なっ て 受 の 身 体 部 分 と 畳 の 接 地 状 況 が は っ きり と 確 認 で き な い 場 合 、 投 技 の 一 連 の 動 きや 部 分 的 に 見 え た 状 況 か ら 受 の身 体 部 分 と畳 の接 地 状 況 を推 測 して投 技 評 価 が行 われるために、異 見 が発 生 する可 能 性 が ある。 45 第 3 項 投 技 評 価 に おける異 見 発 生 と審 判 員 レベルの 関 係 に ついて 一 本 背 負 投 、横 落 、大 外 刈 について審 判 員 ライセンス別 に投 技 評 価 の 平 均 値 を多 重 比 較 検 定 によって比 較 した結 果 、すべての 投 技 において A ラ イセンス審 判 員 と B ライセンス審 判 員 の 投 技 評 価 の平 均 値 は C ライセンス 審 判 員 よ りも 有 意 に 高 かっ た 。これに 対 し て、A ライ センス 審 判 員 の 投 技 評 価 の 平 均 値 は B ライセンス審 判 員 よりも高 かったが、有 意 な差 は認 められな かった(p.39 表 12 参 照 )。また、燕 返 の 南 方 向 においても 同 様 の 結 果 であ った(p.40 表 13 参 照 )。このことから、審 判 員 レベルが 高 くなるに つれて投 技 評 価 も高 く(軽 く)なる傾 向 が 認 められる。 松 本 ほ か ( 1969 ) の 研 究 で は 、 相 対 的 に 熟 練 者 ( 優 秀 な 指 導 者 で 審 判 員 として活 躍 している 6 段 1 名 、7 段 2 名 ) の方 が、投 げられた者 の 落 ちてく る位 置 により速 く注 視 点 を移 動 させ、投 技 の効 果 を見 極 めようとする動 きの あることが指 摘 されている。また、注 視 点 の位 置 が投 技 のきまる時 点 で、熟 練 者 で は 、 1 例 を 除 いて 必 ず 投 げ ら れた 者 の 背 中 と 畳 と の 接 点 に 集 まっ て いる。これに対 して、非 熟 練 者 ( 大 学 生 柔 道 選 手 2 段 1 名 、3 段 2 名 )では、 仰 向 けに 投 げら れた 者 の 腹 部 、肩 等 の 上 側 を 注 視 し ていること が 多 いという 結 果 が報 告 されている。さらに、非 熟 練 者 では、投 技 を掛 けた者 を終 始 追 っている者 が 2 例 あ り、この ことは 投 技 の 判 定 に はマイ ナスに なる注 視 の 仕 方 であることが 指 摘 さ れている。また 、体 操 競 技 では 、経 験 豊 富 な審 判 員 は 演 技 採 点 時 に体 幹 部 を、経 験 の少 ない審 判 員 は脚 部 を注 視 しているため に 、実 施 の 採 点 では 、姿 勢 欠 点 に は 両 者 間 に 差 が みら れなか った が 、技 術 欠 点 は 経 験 豊 富 な 審 判 員 の 方 が より多 くの 欠 点 を とら え ていることが 報 告 さ れている( 塚 脇 ,1988)。さらに、剣 道 の 審 判 では 、1 カ 所 を凝 視 せず、遠 山 を 見 るが 如 く 全 体 を おおら か に 見 る と い う 「 遠 山 の 目 付 」 が 重 要 で あ る こ と が 指 摘 されている。そして、熟 練 者 (7 段 以 上 で審 判 経 験 が豊 富 な者 )は 非 熟 練 者 (4 段 以 下 で審 判 経 験 が 少 ない者 ) よりも選 手 間 の 中 央 に視 線 を 注 い でいることが 報 告 されている( 武 藤 ・清 水 ,2009)。 以 上 のことから、審 判 員 レベルの高 い者 は審 判 員 レベルの低 い者 よりも 技 術 をより適 切 に評 価 する能 力 を持 っていることが考 えられる。それゆえ本 研 究 の結 果 は、審 判 員 レベルの高 い者 が高 い投 技 評 価 をしているととらえ 48 るよりも 、審 判 員 レベルの 低 い者 が 適 切 に 投 技 評 価 できず に 低 い投 技 評 価 を行 うことによって、相 対 的 に 審 判 員 レベ ルの 高 い者 の 投 技 評 価 が 高 くなっ たととらえるのが妥 当 であろう。 審 判 員 レベルが 高 く なるにつ れて投 技 評 価 も 高 く( 軽 く) なる傾 向 にあると いう 本 研 究 の 結 果 は 、 審 判 員 レ ベ ル の 低 さ に よ っ て 投 技 評 価 の 軽 さ が 生 じ ることを 指 摘 し ている 日 本 の 柔 道 専 門 家 の 見 解 と 異 な るも の であっ た 。投 技 評 価 の軽 さについては、日 本 人 審 判 員 と外 国 人 審 判 員 の投 技 評 価 の基 準 に対 する認 識 は微 妙 に異 なり、外 国 人 審 判 員 の投 技 評 価 の方 が軽 いと いう 見 解 が 示 されている(木 村 ,2003) 。また 、投 技 評 価 が 軽 いことが 世 界 の 基 準 であり、それを 軽 いと感 じてし まうの が 日 本 独 自 の 基 準 ではないか という 見 解 も 示 さ れ て い る ( 桐 生 ・ 平 田 , 2005 ) 。 さ ら に 、 本 研 究 は 日 本 人 審 判 員 だけを対 象 に実 験 をしていることから、審 判 員 レベルが高 くなるにつれて投 技 評 価 も高 く(軽 く)なる傾 向 が日 本 人 審 判 員 に特 有 のものである可 能 性 が考 えられる。それゆえ、今 後 は 外 国 人 審 判 員 に 同 様 の 実 験 を 行 っ て投 技 評 価 の 軽 さについて検 証 することが必 要 である。 第 5 節 まとめ 本 章 では、A、B、C ライセンス審 判 員 の 各 100 名 に 1 つの 投 技 に対 して 4 方 向 から撮 影 した 4 つの投 技 の 映 像 を 見 せて投 技 評 価 を回 答 させた。そ して、投 技 評 価 における異 見 発 生 が投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベルという 2 つ の 要 因 と どの よ う な 関 係 に あ るの か に ついて 検 討 し た 。そ の 結 果 、 以 下 のことが明 らかとなった。 1. 4 つの投技のうち 3 つにおいて有意な交互作用は認められず、1 つにおいて有意 な交互作用が認められた。また、4 つの投技すべてにおいて有意な主効果が認め られた。このことから、投 技 評 価 に おける 異 見 発 生 の 要 因 は 、①投 技 を 見 る 方 向 、②審 判 員 レベル、③投 技 を 見 る方 向 と審 判 員 レベルの 両 方 の 3 つ であると 考 え ら れ る。 また 、 投 技 を 見 る 方 向 と 審 判 員 レベル の 要 因 が 個 別 に 投 技 評 価 に 影 響 を 及 ぼすことによっ て異 見 が 発 生 している可 能 性 が 高 いと考 えられる。 2. 取 が 邪 魔 に なっ て 受 の 身 体 部 分 と 畳 の 接 地 状 況 が は っ き りと 確 認 で きな 49 い場 合 、投 技 の一 連 の動 きや部 分 的 に見 えた状 況 から受 の身 体 部 分 と 畳 の接 地 状 況 を推 測 して投 技 評 価 が行 われるために、異 見 が発 生 する 可 能 性 がある。 3. 投 技 評 価 の平 均 値 について、A ライセンス審 判 員 と B ライセンス審 判 員 は C ライセンス審 判 員 よりも 有 意 に 高 かった 。これに 対 し て、A ラ イセンス 審 判 員 の 投 技 評 価 の 平 均 値 は B ライセンス審 判 員 よりも高 かったが、有 意 な 差 は 認 めら れなか っ た 。こ の こ とか ら 、 審 判 員 レベ ル が 高 く な るに つ れて 投 技 評 価 も 高 く(軽 く)なる傾 向 が 認 められた。これは 、審 判 員 レベルの低 い者 が適 切 に投 技 評 価 できずに低 い投 技 評 価 を行 うことによって、相 対 的 に審 判 員 レベルの高 い者 の投 技 評 価 が高 くなることが原 因 であると考 えられる。 以 上 のことから、柔 道 では、審 判 員 が異 なる方 向 から投 技 評 価 を行 うた めに、異 見 が発 生 することは避 けられない。したがって、多 方 向 から投 技 評 価 を行 うことが重 要 である。 50 第 Ⅴ章 結 論 本 論 の目 的 は、柔 道 の投 技 評 価 における異 見 発 生 について解 明 するこ とにある。そのため、第 Ⅱ章 では、大 学 生 柔 道 選 手 と A、B、C ライセンス審 判 員 に 実 施 し た 同 時 法 に 関 するアン ケート 結 果 を 検 討 し 、投 技 評 価 に おけ る異 見 発 生 に関 する審 判 法 上 の諸 問 題 を明 らかにした。さらに、第 Ⅲ章 で は、現 行 法 と同 時 法 における投 技 評 価 の 異 見 発 生 率 を 審 判 法 別 、審 判 員 レベル別 に比 較 することによって、現 行 法 では異 見 が表 面 化 しにくいことを 検 証 し、異 見 発 生 と審 判 員 レベルの関 係 について検 討 した。また、どの投 技 評 価 の 基 準 に 異 見 が 発 生 しているか について検 討 した。これによって、投 技 評 価 に おける 異 見 発 生 の 実 態 を 明 ら か にし た 。続 いて、 第 Ⅳ 章 では 、A、 B、C ライセンス審 判 員 に 1 つの投 技 に 対 して 4 方 向 から撮 影 した 4 つの投 技 の 映 像 を 見 せて 投 技 評 価 を 行 わせ 、 異 見 発 生 が 投 技 を 見 る 方 向 と 審 判 員 レ ベ ル と いう 2 つ の 要 因 と ど の よ う な 関 係 に あ る の か に つ い て 明 ら か に し た。 以 上 の 結 果 を各 章 ご とに要 約 すると以 下 の通 りである。 1. 投 技 評 価 における異 見 発 生 に 関 する審 判 法 上 の 諸 問 題 ( 第 Ⅱ 章 ) (1) 現 行 法 では 、副 審 は 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ね ることができるた めに 、異 見 が 表 面 化 しに くい。また、副 審 の 投 技 評 価 の 決 定 方 法 に 曖 昧 さ があるた めに公 平 さに 欠 ける可 能 性 ある。 (2) 同 時 法 では 、副 審 は 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ね ることが できないために 、副 審 の投 技 評 価 の決 定 方 法 に曖 昧 さがなく、公 平 に投 技 評 価 を行 うこと ができる。 (3) 同 時 法 では、異 見 が 多 く発 生 することによ って、審 判 員 の 協 調 関 係 が 悪 くならないことが予 想 される。また、他 の 審 判 員 と比 較 されることによって、 自 分 の投 技 評 価 を見 直 すことができるので審 判 技 術 が向 上 することが 期 待 できる。 (4) 現 行 法 に お い て も 同 時 法 に お い て も 、 副 審 が 椅 子 に 座 っ て い る た め に 投 技 を 見 る 方 向 に 制 限 を 受 けて 投 技 の 状 況 を は っ きりと 確 認 で きないこ とが 考 えら れる。この 場 合 、同 時 法 では 、副 審 が 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ね 51 ることができないために、客 観 性 に 欠 ける可 能 性 がある。 2. 投 技 評 価 における異 見 発 生 の 実 態 ( 第 Ⅲ 章 ) (1) 現 行 法 の 異 見 発 生 率 は 同 時 法 よ り も 有 意 に 低 か っ た こ と か ら 、 現 行 法 では、異 見 が 表 面 化 しにくいことが 確 認 された。 (2) 審 判 員 レベルの 高 い者 の 異 見 発 生 率 は 審 判 員 レベ ルの 低 い者 よりも低 かったが、有 意 な差 は認 められなかったことから、異 見 発 生 と審 判 員 レベ ルの関 係 について十 分 に 解 明 することは できなかった。 (3) 異 見 が 発 生 し た 場 合 、 投 技 評 価 は 主 に 「 一 本 」 と 「 技 あ り 」 、 「 技 あ り 」 と 「有 効 」、「有 効 と「効 果 」、「効 果 」と「評 価 なし」に分 かれていた。また、 少 数 では あ るが 、 投 技 評 価 が 「 一 本 」 と「 有 効 」、「 技 あり 」と「 効 果 」、「 有 効 」と「評 価 なし」に分 かれたり、「一 本 」と「技 あり」と「有 効 」、「技 あり」と 「有 効 」と「 効 果 」、「 一 本 」と「効 果 」と「評 価 なし」に 分 かれていた。 3. 投 技 評 価 における異 見 発 生 の 要 因 ( 第 Ⅳ 章 ) (1) 4 つの投技のうち 3 つにおいて有意な交互作用は認められず、1 つにおいて有意 な交互作用が認められた。また、4 つの投技すべてにおいて有意な主効果が認 められた。このことから、投 技 評 価 に お け る 異 見 発 生 の 要 因 は 、 ① 投 技 を 見 る方 向 、②審 判 員 レベル、③投 技 を見 る方 向 と審 判 員 レベルの両 方 の 3 つであると考 えられる。また、投 技 を 見 る方 向 と審 判 員 レベ ルの要 因 が個 別 に投 技 評 価 に影 響 を及 ぼすことによって異 見 が発 生 している可 能 性 が 高 いと考 えられる。 (2) 取 が 邪 魔 に な っ て 受 の 身 体 部 分 と 畳 の 接 地 状 況 が は っ き り と 確 認 で き ない場 合 、投 技 の一 連 の動 きや部 分 的 に見 えた状 況 から受 の身 体 部 分 と畳 の 接 地 状 況 を 推 測 し て 投 技 評 価 が 行 われるた めに 、異 見 が 発 生 する可 能 性 がある。 (3) 投 技 評 価 の平 均 値 について、A ライセンス審 判 員 と B ライセンス審 判 員 は C ライセンス審 判 員 よりも有 意 に 高 かった。これに対 して、A ライセンス 審 判 員 の 投 技 評 価 の平 均 値 は B ライセンス審 判 員 よりも高 か ったが、有 意 な差 は認 められなかった。このことから、審 判 員 レベルが高 くなるにつ 52 れて投 技 評 価 も高 く(軽 く)なる傾 向 が認 められた。これは、審 判 員 レベ ルの低 い者 が適 切 に投 技 評 価 できずに低 い投 技 評 価 を行 うことによっ て、相 対 的 に審 判 員 レベルの高 い者 の投 技 評 価 が高 くなることが原 因 であると考 えられる。 以 上 のことから、現 行 法 では、副 審 は主 審 に投 技 評 価 を委 ねることがで きるために、異 見 が表 面 化 しにくいという問 題 がある。この問 題 は同 時 法 を 導 入 す るこ とに よ っ て 解 決 が 可 能 であ る。 し かし 、 同 時 法 では 、 見 え に くか っ た投 技 についても、副 審 は投 技 評 価 を示 さなければならないために、投 技 評 価 が き わ め て 不 正 確 に な り や す い と 指 摘 さ れ て い る ( 木 村 , 2001b ) 。 し た が っ て 、 同 時 法 の 導 入 は 困 難 で あ る。 こ の こ とに 関 連 し て 、 現 行 法 に おい て も 、 副 審 が 椅 子 に 座 っ て い る た めに 、 投 技 を 見 る 方 向 に 制 限 を 受 け て 投 技 の 状 況 を は っ きり と 確 認 で きな いことが 予 想 され る。そ こで 、 投 技 の 状 況 をは っきりと確 認 できるよう に、副 審 も 主 審 と同 様 に 移 動 できるよ うに することが 考 えら れる。しか し 、取 が 邪 魔 に なっ て受 の 身 体 部 分 と 畳 の 接 地 状 況 が は っ き りと確 認 できないという 場 合 が あるた めに 、副 審 が 移 動 できるよ う になっ た とし ても、必 ずしも投 技 の状 況 をはっきりと確 認 できるとは限 らない。また、副 審 が テレビカメラ の 邪 魔 に なるという 問 題 が 指 摘 されている(生 島 , 2004)。した がって、副 審 を移 動 させるようにすることは 困 難 である。 柔 道 では 、審 判 員 は 異 なる方 向 から投 技 評 価 を 行 うために、異 見 が 発 生 す ることは 避 けら れない。した がっ て、多 方 向 から 投 技 評 価 を 行 う ことが 重 要 であ る。 また 、「 一 本 」 と「 技 あり」 の よ う に 、 異 見 は 連 続 す る 投 技 評 価 の 基 準 間 に 発 生 するが 、 投 技 評 価 が 「 一 本 」 と「 有 効 」の よ う に 大 きく 分 か れた 場 合 や「 一 本 」 「 技 あ り 」 「 有 効 」 の よ う に 3 つに 分 か れた 場 合 は 、 異 見 発 生 に 何 ら かの問 題 があったと考 えられる。このような場 合 、多 方 向 から撮 影 した投 技 の映 像 を確 認 して投 技 評 価 を判 断 できるようにすることが 必 要 である。 53 謝辞 本 論 文 の作 成 にあたり、親 身 に、かつ多 大 なるご指 導 を賜 りました筑 波 大 学 大 学 院 人 間 総 合 科 学 研 究 科 の朝 岡 正 雄 教 授 に心 より感 謝 申 し上 げ ます。また、筑 波 大 学 大 学 院 人 間 総 合 科 学 研 究 科 の小 俣 幸 嗣 教 授 、岡 田 弘 隆 准 教 授 、増 地 克 之 講 師 、筑 波 大 学 体 育 芸 術 系 支 援 室 技 術 職 員 の石 川 美 久 先 生 に 心 より感 謝 申 し 上 げ ます 。最 後 に 、統 計 処 理 につ いてご 指 導 を 賜 り まし た 明 治 国 際 医 療 大 学 鍼 灸 学 部 鍼 灸 学 科 の 高 橋 則 人 講 師 、 筑波大学大学院人間総合科学研究科の坂入洋右准教授に 心 よ り 感 謝 申 し 上 げ ます。 54 -注 - 注 1) 審 判 委 員 は 審 判 員 を 監 督 す るた めに 各 試 合 場 に 待 機 し 、次 のよ う な 場 合 に活 動 する。①審 判 員 の判 断 に疑 義 があるとき。②返 し技 やす かし 技 など で 審 判 員 が どちら の 試 合 者 に 投 技 評 価 を 与 え るか 明 快 な 表 示 をしなかったとき。③得 点 表 示 板 や時 計 の確 認 や訂 正 をすると き。④審 判 員 に 対 し て助 言 すべきことが あったとき。⑤その 他 、審 判 委 員 が必 要 と認 めたとき。なお、「技 あり」を「有 効 」にするような審 判 員 の投 技 評 価 の判 断 に ついて言 及 することは できない。 注 2) 同 時 法 と は 、主 審 と 副 審 が 同 時 に 投 技 評 価 を 示 す と い う 審 判 法 の こ と で あ る 。同 時 法 と 現 在 の 審 判 法 の 違 い は 、主 審 が 最 初 に 投 技 評 価 を 示 す か 、主 審 と 副 審 が 同 時 に 投 技 評 価 を 示 す か の 順 序 が 異 な る だ け で 、 そ の 他 は 全 く 同 じ で あ る 。 2000 年 の オ リ ン ピ ッ ク 100kg 超 級 決 勝 戦 に お い て 、 主 審 は ド ゥ イ エ 選 手 に 「 有 効 」の ジ ェ ス チ ャ ー を し 、1 名 の 副 審 は 何 も ジ ェ ス チ ャ ー せず、もう 1 名の副審は篠原選手に「一本」のジェスチャー を し た 。こ の 結 果 、投 技 評 価 は「 有 効 」と な っ た が 、こ れ に は 疑 惑 が 提 示 さ れ た 。な ぜ な ら 、何 も ジ ェ ス チ ャ ー を し な か っ た 副 審 は 、主 審 の 判 断 に 同 意 し た の で は な く 、投 技 が よ く 見 え な か っ た た め に 主 審 に 投 技 評 価 を 委 ね て し ま っ た か ら で あ る 。こ の 点 に つ い て 、現 在 の 審 判 法 に 問 題 が あ る こ と が 指 摘 さ れ て い る( 長 谷 川 ,2001;生 島 ,2004) 。こ の 問 題 の 解 決 策 と し て 、 日 本 国 内 に お い て 同 時 法 が 提 案 さ れ た 。同 時 法 で は 、副 審 が 投 技 の き ま る 瞬 間 を 見 る こ と が で き な か っ た 場 合 、主 審 に 合 議 を 申 し 出 る こ と に な っ て い る 。こ れ に よ っ て 、前 述 し た 問 題 を 解 決 で き る と さ れ て い る 。な お 、同 時 法 は 2001 年 の 試 験 的 導 入 以降、今日まで採用されていない。 注 3) 形 (か た)や打 ち込 み(かか り練 習 ) 、約 束 練 習 等 で技 を 受 ける 人 。本 論 では、技 を 掛 けられて投 げられる人 を意 味 する。 注 4) 形 (か た)や打 ち込 み(かか り練 習 ) 、約 束 練 習 等 で技 を 掛 ける 人 。本 論 では、技 を 掛 けて投 げる人 を 意 味 す る。 55 -文 献 - ベースボール・マガジン社 (2004) 審 判 員 のアテネ五 輪 。.近 代 柔 道 , 26(12):29. ベースボール・マガジン社 (2007) 全 日 本 柔 道 連 盟 のページ.近 代 柔 道 , 29(5):54-55. ベースボール・マガジン社 (2008) 全 日 本 柔 道 連 盟 のページ.近 代 柔 道 , 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