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研究成果発表会 実施報告書 - 糸魚川ユネスコ世界ジオパーク

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研究成果発表会 実施報告書 - 糸魚川ユネスコ世界ジオパーク
糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業
研究成果発表会 実施報告書
―平成 26 年度糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業報告書―
平成 27 年 3 月
糸魚川ジオパーク協議会
1
2
目
Ⅰ
Ⅱ
Ⅲ
次
実施目的と方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
1
実施目的
2
実施方法
糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
1
平成 26 年度 糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業助成金
2
助成対象研究
3
助成対象者
4
助成金の額等
5
その他
研究成果
1
新潟大学4年 吉田 拓海 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
「青海地域に産する高圧変成岩ブロックの研究」
2
新潟大学4年 鹿澤 優祐 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
「糸魚川西部の中生界における地質学的・古生物学的研究」
3
新潟大学 4 年 北川 真帆・宮腰 光穂・野村 隼大 ・・・・・・・・・・・・・9
「かわせみの軌跡-糸魚川ジオパークとの絆づくり-」
4 新潟大学准教授 高橋 俊郎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
「姫川流域に分布する中新統山本層の岩石学的研究」
5
上越教育大学教授 山縣 耕太郎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
「糸魚川市の湖沼環境に関する研究」
6
首都大学東京大学院1年 坂口 豪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
「ジオストーリーの日本型モデル構築に向けた地理学的研究」
3
4
Ⅰ
実施目的と方法
1
実施目的
糸魚川ジオパーク地域を対象とした学術調査及び研究を支援し、糸魚川ジオパークの学
術資料の蓄積を図るため、学生、若手研究者等を対象に調査研究費を助成する「学術研究
奨励事業」について、その研究成果を発表することで、研究内容の普及を図るとともに、
事業の啓発を図る。
2
実施方法
日
時
2015(平成 27)年 3 月 22 日(日)
時
間
13:00~14:30
会
場
ジオパーク観光インフォメーションセンター
(北陸新幹線糸魚川駅アルプス口 1 階 糸魚川ジオステーション ジオパル内)
対
象
内 容
糸魚川市民、糸魚川ジオパークガイドの会、ジオパークカレッジ受講生 等
13:00 開会
①新潟大学 4 年 吉田 拓海
「青海地域に産する高圧変成岩ブロックの研究」
13:15 ②新潟大学 4 年 鹿澤 優祐
「糸魚川西部の中生界における地質学的・古生物学的研究」
13:30 ③新潟大学 4 年 北川 真帆・宮腰 光穂・野村 隼大
「かわせみの軌跡-糸魚川ジオパークとの絆づくり-」
13:45 ④新潟大学准教授 高橋 俊郎
「姫川流域に分布する中新統山本層の岩石学的研究」
14:00 ⑤上越教育大学教授 山縣 耕太郎
「糸魚川市の湖沼環境に関する研究」
14:15 ⑥首都大学東京大学院 1 年 坂口 豪
「ジオストーリーの日本型モデル構築に向けた地理学的研究」
14:30 閉会
※一人あたりの持ち時間は、発表 10 分・質問 5 分、計 15 分とした。
1
Ⅱ
1
糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業
平成 26 年度 糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業助成金
糸魚川ジオパーク地域を対象とした学術調査及び研究を支援し、糸魚川ジオパークの学
術資料の蓄積を図るため、学生や若手研究者等を対象に調査研究費を助成する。
2
助成対象研究
(1) 糸魚川ジオパークにおける地質・地形の調査研究
(2) 地域振興及び地域経済にかかわる調査研究
(3) その他糸魚川ジオパーク協議会会長が助成対象と認めた調査研究
3
助成対象者
(1) 大学またはそれに相応する教育研究機関において、研究・調査に従事している大学生、
大学院生、若手研究者等(グループによる参加も可能)
(2) 平成 27 年 3 月 11 日までに実績報告書の提出が可能な者
4
助成金の額等
(1) 助成金の額
予算の範囲内で、1 件あたり上限 20 万円。 ただし、助成対象研究は、助成対象者
1 人につき 1 件とする。
(2) 助成対象経費
・ 調査研究地までの交通費及び糸魚川市内での宿泊費(飲食費は対象外)
・ 調査研究に係る事務経費
・ その他糸魚川ジオパーク協議会会長が認めた経費
(3) 助成率 10/10
5
その他
・交付決定後、実施者の氏名、所属、研究テーマを糸魚川ジオパーク協議会HPにて公開
・研究実績報告書提出後、糸魚川ジオパーク協議会が実施する発表会にて発表すること。
・研究実施報告書の要旨を、糸魚川ジオパーク協議会ホームページに掲載するほか、報
告書を糸魚川市博物館研究報告に掲載するとともに、フォッサマグナミュージアムで希
望者に閲覧すること。
・助成金を使って行われた研究の成果を学会で発表するときや学術誌等に投稿する際は、
研究の一部に本助成金を使用した旨を明記すること。
(平成 26 年度 糸魚川ジオパーク学術研究奨励事業助成金募集要項より抜粋)
2
Ⅲ
1
研究成果
「青海地域に産する高圧変成岩ブロックの研究」
【研 究 者】吉田 拓海
【所
属】新潟大学理学部地質化学科 4 年
【研究名称】新潟県糸魚川市青海地域に分布する
高圧変成岩ブロックの研究
【研究内容】
糸魚川は飛騨外縁帯北端に位置し、西部の青海地域は主に蛇紋岩メランジュと変成岩
ブロックからなり、最高変成度はエクロジャイト相に達する(Banno1985、松本 1980、
辻森 2000 など)
。
また、青海地域はエクロジャイトを含むユニットと含まないユニットがある(辻森 2002)
が、二つのユニットの関係や高圧変成岩と蛇紋岩メランジュの成因関係についての詳細
はまだ分かっていない。こうした問題は過去の沈み込み帯深部での温度圧力条件や変成
作用、蛇紋岩メランジュの形成テクトニクスの復元に繋がる重要な問題である。
本研究では、前途の問題に対して、青海地域の高圧変成岩の分布と記載岩岩石学的手
法を用いて、古生代沈み込みテクトニクスを解明することを目的とする。青海地域は日
本における最古の沈み込み変成作用を示すとされ、今回の研究結果は糸魚川ジオパーク
の新たな要素としてジオパーク活性化の一助になると思われるものである。
(発表時間:約 9 分、傍聴人数:約 25 人)
【研究のまとめ】
今回の研究によって青海地域の変成岩の詳しい分布と岩相区分を明らかにすることが
できた。また、糸魚川には、日本では産出が稀なエクロジャイトが産出することが知ら
れているが、今回の新たなエクロジャイトの発見は、日本最古の変成岩の研究に重要な
存在となった。
今後の研究目標としては、今回の研究では調査できなかった東側の地域も調査し、広
い範囲の地質構造を解明すること。さらに、エクロジャイトなどの高圧変成岩の化学分
析および熱力学計算を進め、詳細な変成履歴を明らかにし、変成年代の検討などを行う
こととする。
3
【質疑応答】
◆問:稀にダイヤモンドを含んだエクロジャイトが発見されるというが、青海地域でも
見つけることは可能なのか。
◇答:ダイヤモンドを含んだエクロジャイトは北欧など外国で発見されたもの。
希少なものであり、青海地域では発見されていない。
【実施の様子】
【使用資料】
(パワーポイントデータ)
4
5
2
「糸魚川西部の中生界における地質学的・古生物学的研究」
【研 究 者】鹿澤 優祐
【所
属】新潟大学理学部地質科学科 4 年
【研究名称】糸魚川西部の中生界における地質学
的・古生物学的研究
【研究内容】
本研究は 2010 年より、新潟県内において恐竜化石を発見するために、研究室で行われ
ていた研究の 1 つであり、過去の成果としては 3 つの論文公表と 2 回の日本地質学会で
の発表を行っている。
研究の目的及び内容としては、糸魚川西部に露出している中生界、手取層群・来馬層
群の地質を明らかにすることである。今年度は特に、レッドベッドの分布把握とそれぞ
れの地層がどういった対応関係にあるかを比較検討し、明らかにすることに重点を置い
ている。
なお、2014 年 5 月には 7 人で下見調査を行っており、礫のサンプリング及び礫種の構
成などを観察・記載している。また、一部の礫は薄片の作成を開始している。
(発表時間:約 9 分、傍聴人数:約 30 人)
【研究のまとめ】
糸魚川に分布する中生代の地層は、他県に分布する恐竜化石が産出している地層と同
時代のものであり、今後の調査で糸魚川から恐竜化石が見つかると期待される。また、
糸魚川に分布する中生代の地層と、そこから産出する化石を明らかにすることは、当時
の陸上生態系を復元する上で重要である。
さらに、今回の調査では、小滝川流域における来馬層群大所川層の露頭から植物化石、
転石から軟体動物化石が産出し、その位置を特定した。上流域の礫岩に含まれるチャー
ト礫は、海綿動物の骨針が多く含まれており、これは中国地方に分布する秋吉帯のもの
と類似しており、当時の山間部には同様の岩石が分布していたことが考えられる。
6
【質疑応答】
◆問:今後の恐竜化石発掘の予定はあるか。
◇答:2015 年のゴールデンウィーク頃には研究室のメンバーで調査を行う予定。
また、雪の影響がない夏場にも調査を予定している。
◆問:小滝川の来馬層群において、化石ができた環境として海・川・湖などの判別を行
っているか。
◇答:現状産出している化石は、地層を構成しているものから河川系が主であると考え
ている。また、今回産出した植物の育成していた気候等から、比較的温暖な環境
だったのではないかということが考えられる。
【実施の様子】
【使用資料】
(パワーポイントデータ)
7
8
3
「かわせみの軌跡-糸魚川ジオパークとの絆づくり-」
【研 究 者】北川 真帆・宮腰 光穂・野村 隼大
【 発 表 者 】 北川真帆
【所
属】新潟大学ダブルホームかわせみ 4 年
【研究名称】かわせみの軌跡
―糸魚川ジオパークとの絆づくり―
【新潟大学ダブルホームかわせみとは】
ダブルホームとは地域にて学生が主体となり地域の方と様々な活動を行うという取り
組みのこと(新潟県内に 14、山形県小国町には 2 の合計 16 のホームが存在する)
。
「かわせみ」という名のホームで糸魚川市小滝地区を主な活動拠点をとし、
「かわせみ」
第一期生として活動することで糸魚川市の方々との繋がりをつくってきたものである。
【研究内容】
平成 23 年度より糸魚川市を拠点として糸魚川市民との交流やイベントの企画・運営補
助を行ってきた。本研究では糸魚川ジオパークを対象に、
「かわせみ」の活動実績をまと
め、外部・若者の目線から糸魚川市をよりよくするための提言を行うものである。
また、アンケート調査を行い、ジオパーク認定が過疎地域の地域振興に効果があるの
かを地域振興の定義より社会的、文化的な発展を扱って検証した。
(発表時間:約 11 分、傍聴人数:約 35 人)
【アンケート調査】
(a)目的
ジオパーク認定が、過疎地域の地域振興に効果があるのかを検証すること。
(b)調査方法
アンケート調査と聞き取り調査
(c)対象地域
糸魚川市小滝地区
(d)概要
・住民の自主的活動が盛んなジオサイトを有する地域の例として「大字小滝」、住民の自
主的活動が盛んでないジオサイトを有する地域の例を「大字山之坊、大字大所」とする。
9
・全数調査を目標としたが、回収率は 130 人(85.5%)
配布数は 87 世帯 152 人。有効回答率は 130 人のうち 124 人(95.4%)
2 人は長期不在のため配布できなかった。
60 代以上は全体の 83%を占める。
(e)アンケート用紙
(f)調査結果
全体の得点の平均値は 1.5 点以下の数値が多く、ジオパーク認定によってわずかに
地域振興に積極的な変化がみられた。また、ジオパークへの参加は大字小滝が高く、
大字山之坊が低い。大字小滝の数値が全体的に高くなっていることから、住民の自主
的活動があると、よりジオパーク認定による地域振興の効果が発揮されることが分か
った。
さらに、よく参加する人ほど得点の平均値が高くなっていることから、ジオパーク
への参加が高い人ほど、ジオパークによる地域振興に向けた積極的な影響があること
が認められた。
10
【研究のまとめ】
世界ジオパーク認定により地域住民の地域振興に関する心理や行動は少しとはいえ積
極的な変化を示しており、過疎地域において世界ジオパーク認定による地域振興の効果
はわずかではあるが確かにあることがわかった。竹之内(2011)の仮説は住民調査によ
るデータに依拠したものではなかったので、より確かに実証することができた。
ジオパークへの参加が高い人ほど、ジオパークによる地域振興に向けた積極的な影響
があることが認められ、大字小滝の得点の平均値が高いことから、認定されただけでは
地域振興の効果は少なく、住民の自主的活動があってこそより地域振興の効果が発揮さ
れると考えられる。
本研究は、ジオパークの活動の効果をチェックする指標として有効であると考えられ
る。ジオパーク認定による地域振興の効果をより望むためには、住民の自主的活動が必
要であり、ジオパーク間で住民による自主的活動の事例の情報と蓄積の交換を行い、住
民の参加を促していく必要があると考えられる。
【質疑応答】
◆感想:小滝地区としてだけでなく、山之坊や大所を比較したことは素晴らしい。アン
ケートにより小滝地区の方々が地域振興のために活動していることが分かって
良かった。
◆問:今回は小滝についての研究だが、他の地域の活動が盛んな地域の事例はあるか。
また、そいうった所の調査は今後引き継がれるのか。
◇答:本研究は、新潟県十日町のアンケート調査をもとに行ったものである。他にも鳥
取県などの事例を参照して作成したものである。今後の引き継ぎの予定はないが、
さらに分析を行って独自ではあるが綿密な論文に仕上げたいと考えている。
【実施の様子】
11
【使用資料】
(パワーポイントデータ)
12
13
4
「姫川流域に分布する中新統山本層の岩石学的研究」
【研 究 者】高橋 俊郎
【所
属】新潟大学 准教授
【研究名称】姫川流域に分布する中新統山本層の
岩石学的研究
【研究内容】
糸魚川市を流れる姫川流域には、第三紀火山岩からなる山本層が分布しているが、そ
れらについて岩石学的・地球化学的特徴は明らかとなっていない。この火山岩の活動時
期は、日本海が形成された時期と一致することから、日本海形成(背孤海の拡大)時期
に活動した火成活動の特徴を明らかにする、重要な足がかりとなると考えられる。
また、富山県に代表される北陸地域にも同時期に活動した火山岩が広く分布している
(高橋・周籐 1999)が、山本層の安山岩とそれらの岩石学的特徴を比較することで、地
域的な差異が存在するのかを明らかにすることを、目的としている。
(発表時間:約 13 分、傍聴人数:約 35 人)
【研究のまとめ】
平成 26 年度の野外調査にて、山本地区周辺・虫川流域・横川流域に分布する山本層火
山岩の地質調査と岩石試料採取を行った。山本層は主に安山岩溶岩と火砕岩から構成され、
記載岩石学的特徴から「斜方輝石単斜輝石安山岩」
・
「無斑晶質安山岩」に分類される。各
種化学分析(主成分元素・微量元素・同位体比組成)による岩石学的・地球化学的解析.
解析結果は、日本海拡大に関連する火成活動を明らかにするうえで重要な制約を与えるも
のと期待される。
【質疑応答】
◆問:フォッサマグナパークには安山岩と玄武岩があるが、どのような違いがあるのか
◇答:枕状溶岩は、山本層本体よりも若干新しい火山岩であると予想されている。今回
一緒に採取しているため、今後の山本層との対比と時間的化学組成の変化を追う
研究をすすめていく。
◆問:山本層の後の今井層や玄武岩・安山岩を含めた年代的な開きはどの程度あるか。
◇答:基本的には同じ中新世・中新統にあると考えられる。ただ、今井層は 100 万年~
200 万年後の活動にあたると考えている。また、今後は安山岩からなぜ流紋岩に
変化するのか、研究を進めていきたいと考えている。
14
【実施の様子】
【使用資料】
(パワーポイント)
15
16
5
「糸魚川市の湖沼環境に関する研究」
【研 究 者】山縣 耕太郎
【所
属】上越教育大学 教授
【研究名称】糸魚川市の湖沼環境に関する研究
【研究内容】
糸魚川市の山間部にはいくつかの自然湖沼が分布していて、その美しい景観や地球科
学的な特徴の価値からジオポイントに選定されているものもある。これらの湖沼は、そ
の成因や、流域の水文、地形、地質、植生などの特性から、それぞれ異なる特徴を持つ。
これら湖沼の特徴を明らかにすることは、糸魚川ジオパークの多様性を明らかにするこ
とにもなるであろう。また、湖沼の環境は、流域の気候、植生などの自然環境変化や土
地利用、酸性雨などの人為的な環境変化の影響を受けて変化する。湖沼堆積物は、その
ような湖沼環境の変化を記録している媒体と考えることができる。
本研究は、糸魚川市に分布する各湖沼の環境特性とその多様性を明らかにするととも
に、湖沼堆積物にもとづき、その環境変遷史を復元することを目的とする。
(発表時間:約 14 分、傍聴人数:約 40 人)
【研究のまとめ】
糸魚川市の5つの湖沼について、その特徴と冬季の状況を調査した。比較的温暖で大
量の積雪があるという糸魚川市の気候環境は、湖沼にとっても重要な条件となっている
ことが予想される。また、糸魚川市に分布する5つの湖沼には、標高や海からの距離に
違いがあり、積雪量も大きく異なることが分かった。さらに、地形・地質からその成因
を検討した結果、月不見池は第三紀層地すべり、戸倉白池、高浪池は蛇紋岩地すべり上
の凹地に形成されていることが確認された。
(田海ヶ池、雨池は人工のため池)
雨池を除くと、各湖沼の湖岸の人工改変地の占める割合は 10~30%程度で比較的自然
度が高かった。
また、冬季の状況を観察した結果、高浪池・白池・雨池はスノージャムに湖面の大部
分が覆われていることが確認された。一方、月不見池と田海ヶ池は冬季を通してスノー
ジャムに覆われることはないようである。
水質分析の結果は、雨池を除く4湖沼についてはpH が 7 前後であり、酸性雪の影響
は認められない。雨池はpH5.0 と低く酸性雪の影響が認められた。COD、硝酸、リン酸
17
など人為的な汚染の指標となる値はいずれも低く、人為的な汚染の影響は認められなか
った。高浪池、白池、月不見池においては、高いカルシウム濃度が確認された。
これらの結果より、今後の課題として、各湖沼の水収支や湖水循環、水質などの季節
変化の把握と水質に影響を与えている要因についての検討(地質,生物活動,人為活動,
酸性雨)が必要である。また、冬季におけるスノージャムの形成過程やその湖水への影
響を検証し、浪太郎は冬を越すことができるのか、また、融雪の湖水水質への影響にお
いて白池は白くなるのか等の研究を進めることが必要である。
【質疑応答】
◆問:根知の白池が白いのは、粘土質が原因ではないかと解釈していたがどうか。
◇答:実際に研究して混濁している物質を確かめる必要がある。また、カルシウム濃度
が非常に高く、その他の原因も考えられことにより今後研究していきたい。
◆問:戸倉山の白池に関して、蛇紋岩由来の地滑りとなっていたが、あの周辺では蛇紋
岩が出ていないため、断層由来の地滑りではないか。
◇答:その後の調査で訂正されていたかを確認する。断層の影響は充分に考えられる。
◆感想:
・浪太郎は冬を越せるのかということについて、高浪の池は湖面に雪が積もるが、中
に鯉が生息している。したがって内部には生物が生きられるだけの温度の水や湧水
が存在すると考えられる。
・月不見の池については、藻に非常に困っている。水質の観点から改善案があれば提
言して頂けるとありがたい。
【実施の様子】
18
【使用資料】
(パワーポイント)
19
20
21
6
「ジオストーリーの日本型モデル構築に向けた地理学的研究」
【研 究 者】坂口 豪
【所
属】首都大学東京 大学院1年
【研究名称】ジオパークにおける地場産業と大地の関
わりを考える ―酒造業のジオストー
リー構築を事例に―
【研究内容】
日本のジオパークの先駆けである糸魚川世界ジオパークにおけるジオストーリーの構
築プロセスとその内容、また活用事例を詳細に調査する。糸魚川世界ジオパークでは、
24 ジオサイトそれぞれにテーマとストーリーがあり、定期的にジオサイトごとのジオツ
アーも開催されているなど、ジオストーリーの内容、構築プロセス・活用事例を総合的
に明らかにするには適切な事例地である。
なお、本調査は、申請者の博士論文「持続可能なジオパーク運営に向けたジオストー
リー開発に関する日本型モデルの構築」のケーススタディとして実施。
(発表時間:約 14 分、傍聴人数:約 35 人)
【研究のまとめ】
確立されているジオストーリーの中に「食」を取り込むことによってジオパーク全体
の経済的な底上げが可能となる。そこで、
「食」をテーマとしたジオストーリーの構築の
可能性を見出した。そこで、ジオパークのアトラクションとしての地酒を取り入れ、原
料である水や米または酒造業者をも取り込んでストーリーを構築し、ツアー化。
本研究では、酒の原料である「水」に着目しツアー化することで、個々のジオサイト
だけでなくジオサイト同士が連携する形でさらなる魅力を打ち出すことができる。こう
いった切り口で行われるツアーであれば、観光客側にとっても興味のある「酒」という観
点から地質を学ぶことで、学術的観点だけでなく聞き入れ易い状況をつくりだすことが
できると考える。
【質疑応答】
◆感想:ジオサイトの要素間の分析方法やジオサイトを跨いだジオストーリーの構築と
いうのは、勉強になった。また、具体例としてデータを示しながら提言いただい
ことを積極的に受け止め、今後につなげたいと思う。
22
【実施の様子】
【使用資料】
(パワーポイント)
23
24
25
26
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