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スペイン語の“ser 受動文”―定形と不定形

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スペイン語の“ser 受動文”―定形と不定形
東京外国語大学論集第 79 号(2009)
225
スペイン語の“ser 受動文”―定形と不定形
高垣 敏博
1. はじめに
2. ser 受動文の形成―語彙アスペクトと時制アスペクト
2.1 語彙アスペクトと時制アスペクト
3. 不定形 ser 受動文
3.1 従属節としての不定形 ser 受動文
3.2 完了相動詞と不定形 ser 受動文
3.3 未完了相動詞と不定形 ser 受動
3.4 制限のない不定形 ser 受動文
4. コーパスから
4.1 完了相動詞
4.2 未完了相動詞
4.3 コーパスによる生起分布
5. 理論的意義
6. まとめ
1. はじめに
スペイン語の<ser +過去分詞>による受動文(迂言的受動文 pasiva perifrástica とも呼ばれる.
以下<ser 受動文>と略す.
)は、英語の受動文などと比べて使用頻度が高くない.これは、母語
話者の直感(De Miguel 1992:205)でもあり、また外国語としてスペイン語を学ぶわれわれにも容
易に実感できることである.Gili Gaya (1973:122)によると、
「スペイン語は能動文を好む顕著な
傾向をもっている」(“el idioma español tiene marcada preferencia por la construcción activa”).
そのため、もう一つの受動形式である再帰受動文の使用率が相対的に高くなっているともいえ
る 1).また、3項動詞など、いくつかの動詞類については、ser 受動文がむずかしくなる 2).こ
のように制限の大きいスペイン語の ser 受動文の形成についてはつねに関心が寄せられている.
ところで、かつてマドリードのホテルに宿泊したときに、モーニング・コールを頼み、翌朝
指定した時刻につぎの機械音メッセージで起こされたことがある.
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スペイン語の“ser 受動文”―定形と不定形:高垣
敏博
(1) “Es la hora en la que solicitó ser llamado.”3)
この文はある母語話者によると、
自然な発話には聞こえないが可能である.
また別の話者は、
動作主を明確化できないこのような状況ではやむをえない発話ではないか、
との判断を示した.
筆者には、それよりもこの受動文の ”ser” が「不定形」
(=不定詞)であることが気になった.
ふつう、ser 受動文が論じられるときには助動詞 ”ser” が現在や、点過去、現在完了など時制
をもつ、すなわち、
「定形」であることを前提にしているからである.一方、あまり注目される
ことがないと考えられる「不定形」”ser”受動文は、(1)のように必要に応じて意外に多用される
のではないかと思えてきたのである.そこで、本論では、ser 受動文を定形(時制をもつ)の
場合と、不定形(時制をもたない)の場合を対比し、とくに後者の特性に重点をおいて考えて
みることにする.
2. ser 受動文の形成―語彙アスペクトと時制アスペクト
2.1. 語彙アスペクトと時制アスペクト
De Miguel(1992)によると、スペイン語の定形の ser 受動文は時制アスペクトと語彙アスペク
トの(2)のような組み合わせができる 4).
(2)a. Steffi fue derrotada por Arantxa en Roland Garros.
[完了相動詞×完了時制]
b. Steffi, aquel año, era derrotada por Arantxa en todos los torneos en que se encontraban.
[完了相動詞×未完了時制]
c. El libro fue conocido por todo el mundo.
d. En su tiempo, era conocido por todo el mundo.
[未完了相動詞×完了時制]
[未完了相動詞×未完了時制]
語彙アスペクトを、Vendler(1967)の語彙分類に拠って、完了相動詞(到達動詞・達成動詞)と
未完了相動詞(状態動詞・活動動詞)と二分し 5)、一方で、時制を完了時制(点過去や現在完
了などの複合時制)と未完了時制(現在、線過去)に大別した.その結果、4通りの組み合わ
せが成り立つ.
2.1.1. 完了相動詞による ser 受動文の制限
まず(2a)の「完了相動詞×完了時制」の場合には、ser 受動文が問題なく作られる.母語話者
は起こった出来事(事件)を完了事態としてとらえる受動文が自然であるとの直感をもつこと
が多い.Gili Gaya(1973)では、
「完了時制であれば動詞が完了相動詞であろうと、未完了相動詞
であろうと受動文が可能である」と述べている.これに対し、De Miguel(1992)では、動詞の完
了アスペクトが ser 受動文形成の要件であるとする(後述§5 参照 6))
.この組み合わせの特徴
として、(3)の例でわかるように、
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(3) El huerto de mi abuelo fue heredado (por mi madre / por todos los hermanos).
前置詞 por により導かれる動作主は<個別性>を表す ”mi madre”でも、<総称性 (複数ないし
は集合”genérico, plural o colectivo”)>の意味をもつ ”todos los hermanos”でもよい.対応する
能動文が表すと考えられる<個別ないし総称動作主 (主語)>+<完了事態(述語)>の意味がその
ままの形で受動文に反映する.
つぎに、(2b)の「完了相動詞×未完了時制」の場合である.2つの用法がある.(i) 習慣・反
復用法と(ii)歴史的現在用法である.(2b)やつぎの(4)が「習慣・反復」用法である.
(4) La puerta es abierta por el portero.「その扉はいつも門番によって開けられる」
この用法では(2a)のように、
「個別・完了事象」として受動文を表現できない.毎日繰り返され
る反復的行為として解釈されるからである。
一方、(ii)の歴史的現在の用法は(5)の例に見られる.
(5)a. Napoleón es vencido en Waterloo.
b. María es descubierta detrás de la puerta.
(歴史的用法)
(眼前報告)
「マリアはドアの後ろにいるのを見つけられる」
典型的な(5a)に比べ、(5b)では過去の出来事をいま眼前で起こっているかのように瞬時の出来
事として報告する.テレビの中継放送などで用いられることが多く、
「眼前報告」用法と呼ぶこ
とにする 7).後者のタイプの文には反復性はなく、(2a)同様、
「個別・完了事象」が表される 8).
ここまでの観察から、完了相動詞が ser 受動化するときに、完了相動詞が表わす1回性の完
了事態が、そのまま反映されないのは、(2b)や(4)の例に示される、
「習慣・反復」用法に限ら
れる.これは、(6)のような制限としてまとめることができる.
(6) 完了相動詞が ser 受動化するときに、未完了時制で用いられ、
「習慣・反復」の意味をもつ
ときは、1回性の完了事象を表すことができない制限をもつ.
2.1.2. 未完了相動詞による ser 受動文の制限
一方、(2c)(2d)の未完了相動詞の場合である.(2c)では未完了相動詞(conocer)が完了時制で用
いられている.これは、(7a)に相当するが、por で導かれる動作主に注意したい.動作主が(2c)
のように、総称的な ”por todo el mundo”では問題ないが、個別的動作主 “por Juan”をとると非
文になる.同じことは(7b)の “querer”の例からも確認される. “por su abuela”のような個別動
作主が許容されないことがわかる.
(7)a. El libro fue conocido {*por Juan / por todo el mundo}.
b. Juan fue querido {*por su abuela / por todo el mundo}.
同じ制限が、(2d)のように、未完了相動詞が未完了時制で用いられるときにも当てはまる.
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敏博
(8a)は(2d)同じ文であるが、許容されるのは総称性の意味をもつ “por todo el mundo”の場合だ
けである.(8b,c)もそれぞれ未完了相動詞”temer, comentar”が用いられている例で、同様に個別
性の動作主 “Pedro, Juan” を伴うと非文になる.
(8)a. En su tiempo, era conocido {*por Juan / por todo el mundo }.
b. Juan es temido {*/??por Pedro / por todo el mundo}.
c. La noticia era comentada {*por Juan / por todos}.9)
このように、未完了相動詞では、完了時制・未完了時制にかかわらず、個別性動作主が関与す
る個別事態がそのまま受動化できないことになる.すなわち、(9a,b)のような能動文から、(7b)
や(8b)の受動文を派生することができないことを意味する.
(9)a. Su abuela quiso a Juan. →
*
→
*
b. Pedro teme a Juan.
Juan fue querido por su abuela. (=7b)
Juan es temido por Pedro.
(=8b)
したがって、ここでも未完了相動詞についても、ser 受動文を形成するときの制限を(10)のよう
にまとめることができるだろう.
(10)未完了相動詞が ser 受動化するときには、総称性動作主のみが許容され、個別性動作主を
伴うことができない制限をもつ 10).
3. 不定形 ser 受動文
ここまで、
「定形」の ser 受動文の形成を動詞の語彙アスペクトと時制アスペクトとの組み合
わせで確認し、そのときに課される制限について観察した.以下では、これを「不定形」ser
受動文の場合と対比し、不定形 ser 受動文では、(6)や(10)の制限がどのようになっているか調
べてみる.
3.1. 従属節としての不定形 ser 受動文
不定形(=不定詞)は、それ自体が時間性を指示できないので、何らかの先行要素を介して
主文に従属し、時制の情報を得なければならない(主語情報についても同様である)
.これは「不
定形」受動文 11)についても同じであるはずだ.先行支配要素は、名詞節の場合には主動詞、副
詞句の場合は前置詞ということになる.
(11)a. María desea dejar el tabaco.
b. Vimos al jardinero regar las plantas.
(12)a. Trabaja para ganarse el pan.
b. Antes de entrar, dejen salir.
主動詞に従属する例(11)では、主動詞 ”desear” は「未来」志向の不定形を従属させ、”ver”の
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ような知覚動詞では、不定形に「同時」性を要求する.また、前置詞(句)の例(12)でも”para”
は未来を含意する不定形をとり、”antes de”では不定形は先行事態でなければならない.このよ
うに、主文の動詞や前置詞のもつ意味特性により、主文の時制と相対的に時間指定がされるわ
けである(Hernanz 1999:§3.6.1.1,§3.6.1.3,§36.3.1 参照)
.しかし、本論では、このことが不定
形 ser 受動文の形成に大きな影響を与える積極的な根拠がないとひとまず考えることにして以
下議論を進める 12).
3.2 完了相動詞と不定形 ser 受動文
時制の影響を直接受けない不定形 ser 受動文で完了相動詞が用いられる場合についてまず観
察してみよう.(2a,b)の例で用いられた “Steffi...ser derrotada por Arantxa”を(13)のように、さま
ざまな先行要素に従属させてみる.どの文においても、ser derrotada (por Arantxa) で表される
事態は1回性の完了事態であると考えられるだろう.
(13)a. Steffi {volvió a / acaba de / no quiere / puede} ser derrotada por Arantxa.
b. Después de ser derrotada por Arantxa, Steffi volvió a su país.
c. Para no ser derrotada por Arantxa, Steffi entrenó más que nunca.
また(14)では、同じ動詞の時制や時制アスペクトを変えてみるが、不定形受動文の表す意味内
容はやはり一定不変の完了事態である.
(14)a. Steffi {puede / pudo / podía / podrá} ser derrotada por Arantxa.
b. Steffi {tiene / tuvo / tenía} miedo a ser derrotada por Arantxa.
ここで、完了相動詞が未完了時制で用いられたときの「制限」(6)をふりかえってみよう.
一つは、「歴史的現在用法」
(ないしは「眼前報告」
)で、(15a)(=5b)がその例であった.こ
れに対応する不定形例が(15b)であるが、1回性の完了受身の事態が表されている.
(15)a. María es descubierta detrás de la puerta.13)
b. María vuelve a ser descubierta detrás de la puerta.
つぎに、
「習慣・反復用法」については、(16a,b)を比較してみる.
(16)a. La puerta {es / era} abierta habitualmente por el portero. (=4)
b. La puerta {vuelve a / debe / puede / acaba de} ser abierta por el portero.14)
未完了時制の(16a)では反復事象を表したが、(16b)の不定形ではどの主動詞と組んでも、ser 受
動文が含意する事象は単一の完了事態であり、繰り返し事象ということにはならない.
このように、
完了相動詞が不定形受動文で用いられるときには一貫して、
完了事態を表わし、
反復事態になることがないので、(6)の制限を受けていないことになる.
それでは、(17)のような例はどうか.(17a,b)では ser 受動文が文全体の主語名詞句、(17c)で
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敏博
は名詞句の同格句となるが、ser 受動文そのものが表すのは1回性の完了事態でしかない.
(17)a. A Steffi le preocupaba ser derrotada por Arantxa.
b. A Steffi no le importa ser derrotada por Arantxa.
c. Steffi tuvo la mala suerte de ser derrotada por Arantxa.
もしこれらの文に反復的意味が含意されるとすれば、それは主文や先行同格名詞句の総称的意
味に影響されるものであるだろう.さらには、(18)の反復性解釈も主動詞 ”soler”の意味に起因
するもので、ここでも ”ser abierta” の不定形受動文そのものがもつ意味ではないことを確認し
ておきたい.
(18) La puerta {suele / solía} ser abierta por el portero.
このように、完了相動詞が受動化するときに未完了時制で「習慣・反復」相を表す制限が、
不定形 ser 受動文には存在しないことになる.以下で、未完了相動詞の不定形受動文形成につ
いて見ていくことになるが、不定形 ser 受動文についてつぎの仮説を立ててみよう.
(19) 不定形 ser 受動文形成:
不定形 ser 受動文は定形 ser 受動文形成に課される事象上の制限がかからない.
3.3. 未完了相動詞と不定形 ser 受動
未完了相動詞から定形 ser 受動文をつくるときの障害(§2.1.2)は、(7)(8)(9)から、時制に
かかわらず、<個別動作主>が許容されないことであった.これが定形の ser 受動文形成に課
される制限であるとみなすのであれば、(19)の仮説にしたがって、未完了相動詞の場合も不定
形 ser 受動文では、<個別動作主>が許容されるのではないかと予測される.以下ではその見
込みで、母語話者に対して行った調査の結果を示そう
.未完了相動詞として “ver, conocer,
15)
temer, comentar” を用いた.
(20a,b)の各文は点過去・線過去の組み合わせで定形 ser 受動文の文法性を確認したものであ
る.(20a)が最も典型的な容認度を見せていると思われる.すなわち、個別の動作主 ”por Juan”
は容認度が落ちるのに対し、総称性の ”por nadie” を伴うときは問題がない.また完了事態に
ついて述べているので、(20b)のように未完了時制を用いることはまったく許容されないことが
わかる.
(20)a. El ladrón se escapó, pero no fue visto {?por Juan / OKpor nadie}.
b. El ladrón se escapó, pero no era visto {*por Juan / *por nadie}.16)
c. El ladrón se escapó sin ser visto {OKpor Juan / OK por nadie}.
これに対し、(20c)の不定形 ser 受動文では、個別動作主あるいは総称動作主のいずれでも許容
されていることがわかる.先行要素には命題否定の前置詞 sin を用いたが、意味的影響を最小
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化したつもりである.さらに、同種の文を(21a,b)の現在時制にした場合と対比してみた.(21a)
の定形受動文では、いずれの動作主でも文法性は低下している.文が表す習慣的意味合いが不
自然なのかもしれない.それでも、(21b)の不定形では適格文となることがわかる.
(21)a. El ladrón se escapa, pero no es visto {??por Juan / ?por nadie}.
b. El ladrón se escapa sin ser visto {OKpor Juan / OKpor nadie}.17)
ところで、動詞 ver については、未完了相動詞としての使用と、完了相との両義解釈がなり
たつ場合がある.さらに点過去など完了時制の関与も否定できない.しかし、ここでは、これ
らの例文で用いられているは未完了相動詞と考えておく 18).
つぎに、conocer の例(22)の結果を見てみよう.
(22)a. El plan del atentado se desarrolló y no fue conocido {?-por Juan /?+por la policía}
b. El plan del atentado se desarrolló y no era conocido {??por Juan / ? por la policía}
c. El plan del atentado se desarrolló sin ser conocido {OKpor Juan / OKpor la policía}.
(22a,b)の定形ではともに個別動作主の容認度が低く、ともに全く自然な受動文とは認められて
いない 19).また、総称的な policía よりも、個別的な Juan の容認度が低い.これに対し、ここ
でも不定形にした(22c)では、個別動作主・総称動作主にかかわらず、適格文となっていること
がわかる 20).
つぎは temer の場合である.
(23)a. La ley se aprobó, pero no fue temida{??por el señor Antonio López / ?por el líder del partido
/ ?por la oposición}
.
b. La ley se aprobó, pero no era temida{??por el señor Antonio López / ?por el líder del partido
/ ? por la oposición}
.
c. La ley se aprobó sin ser temida {?-por el señor Antonio López / ?+por el líder del partido /
OK
por la oposición}
.21)
(23a,b)の定形受動文では、受容度はかなり低下するが、それでも por el señor Antonio López
< por el líder del partido < por la oposición と動作主が総称性を帯びるほどその容認度が高まっ
ていくことがわかる.一方、不定形受動文の(23c)ではどの動作主でもかなり自然な発話である
と認識されることがわかるだろう.
このような、作例調査には困難が伴う.不定形 ser 受動文は従属節であることが前提である.
自然な発話を求めても、文全体としてはさまざまな意味要因が干渉する可能性が生まれる.例
えば、(24)である.
(24)a. La noticia era comentada {?por Juan / OKpor todos}. (=8c)
b. La noticia merece ser comentada {?por Juan / OKpor todos}.
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これはすでに見た(8c)と、それに対応する不定形受動の1例であるが、個別動作主 por Juan の
容認度が期待するようには増していないことがわかる.これは動詞 merecer の意味と動作主が
意味的に十分適合しないことに起因するのかもしれない.今後の詳細な分析に期することにな
る 22).
未完了相動詞による不定形 ser 受動文の形成例を見てきたが、<個別動作主>が大幅に許容
されるようになることが確認された.すなわち、(7)(8)で見られた定形受動文における、個別
動作主についての制限が解除されていることになる.
3.4. 制限のない不定形 ser 受動文
上の(6)で要約された完了相動詞の定形受動文に課された制限、さらに(10)の未完了相動詞の
定形受動文形成にかかる制限が、ここまでの観察から、不定形受動文形成では障害にならない
か、あるいは、大幅に低下することがわかった.これを仮説としてまとめた(19)の一般化を支
えるのもではないか.この議論は(25)としてまとめられる.
(25) ser 受動文―定形と不定形
完了相動詞では、定形の大半の用法で1回性の完了事態を表すが、未完了時制においては反
復相をもつ制限があった.不定形受動文ではこの制限はなく、いつでも完了事態を表す.
一方、未完了相動詞では、定形の場合、個別性動作主を伴うことができないという制限が課
された.しかし、不定形受動文ではこの制限がかからず、個別動作主とも総称動作主とも共起
できる.このように、定形受動文で見られた ser 受動文形成上の制限が、不定形受動文形成で
は緩和される結果になった 23).
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4. コーパスから
それでは、このような制限は現実の受動文使用にどう反映しているのだろうか.母語話者は
受動文を実現するにあたり、上で見た、定形受動文形成の制限を回避するふるまいを見せるこ
とはないだろうか.(25)から予測できることは、(i)完了相動詞では、定形、不定形いずれでも
完了事態を表現できるので、反復事態を表わす必要がある場合を除いては、不都合がない.(ii)
しかし、未完了相動詞では、一般に総称動作主しかとることができないので、個別動作主を必
要とする場合や、含意する場合には不定形受動文に頼ることになるのではないか.
このような予測をもって、以下では、コーパス 24)から実例を収集してみる.完了相動詞と未
完了相動詞について、それぞれ 7 個、計 14 の動詞の使用実態を調べてみた.
4.1. 完了相動詞
7つの完了相動詞は、到達動詞の encontrar, descubrir, asesinar、達成動詞(状態変化)だと考
えられる destruir と abandonar、それに位置変化の達成動詞である poner である.また、本来
活動動詞であると考えられる llevar も含める 25).これらの完了相動詞について、ser が完了時制
をとる場合と未完了時制をとる場合を定形の例としてあげ、つぎに ser が不定詞で使われてい
る場合を不定形の例としてあげる.
4.1.1. encontrar
(26)の(a)(b)はそれぞれ、完了時制、未完了時制で用いられている、すなわち、定形受動文の
例である.また(c)では不定形受動文の実例を引用する(例末尾の< >内はコーパスの出典略号)
.
以下の動詞についても同様に例示する.
(26)a [完了時制]El artefacto, escondido dentro de una caja, fue encontrado por el personal del
almacén en la calle Newtonards Road. <95>
b. [未完了時制] なし
c. [不定形] El soldado E.B.C., de 21 años, (…), falleció la pasada madrugada después de
haber sido encontrado en el estado agónico en su propio dormitorio. <95>
検索例の集計は(33)にまとめた.定形はすべて完了時制で 31 例.未完了時制では1例もなか
った.不定形はわずか1例しかない.
4.1.2. descubrir
(27)a.[完了時制]El cuerpo del hombre fue descubierto el pasado 9 de enero por unos jardineros,
quienes alertaron a la Policía… <5>
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敏博
b. [未完了時制]Muchas otras víctimas civiles son descubiertas cada mañana por los vecinos de
cualquier edificio de viviendas. <95>
c. [不定形]Por primera vez tuve miedo a ser descubierto, un miedo que me hizo dejar de sudar
y... <ve>
定形 22 例のうち 20 が完了時制、2例のみが未完了時制であった.(27b)の例は、日常の習慣的・
反復行為が表されている.一方、不定形は6例見られた.
4.1.3. asesinar
(28)a. [完了時制] El 15 de enero de 1992 fue asesinado en Valencia por dos etarras el ex secretario
de Estado <95>
b. [未完了時制] Es espeluznante ver cómo miles de personas son asesinados, en una
operación guerrera imperialista emprendida por Rusia. <95>
c. [不定形] Cualquier ciudadano tiene derecho a no ser asesinado o calumniado a cargo de los
fondos reservados <95>
定形 61 例のうち 56 例が完了時制、5例のみが未完了時制(すべて眼前報告用法)であった.
一方、不定形は 9 例.
4.1.4. destruir
(29)a. [完了時制] Tanto la ciudad británica como la alemana fueron destruidas por la II Guerra
Munidial. <95>
b. [未完了時制] Como todos los que no son destruidos por la incomodidad y el sufrimiento
Nazaria iba fortaleciéndose. <15>
c. [不定形] Mientras que cualquier otro ideal puede llegar a ser destruido, el amor es lo
último a lo que nos aferramos. <95>
定形 13 例のうちわずか1例のみが未完了時制(習慣・反復)である.またこの動詞が用いられた
全 14 例のうち1例のみが不定形であった.
4.1.5. abandonar
(30)a. [完了時制] la asturiana Jacqueline Méndez, una joven de 27 años que fueabandonada por
su marido, Diego Torres Redondo, de 31 años <95>
b. [未完了時制] comenzando a preocuparse por los perros y los gatos que son abandonados o
por la crueldad de las corridas de toros. <95>
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c. [不定形] El dinero inicial se acabó y el proyecto hubo de ser abandonado. <1>
定形 11 例のうち 10 例が完了時制で、わずか1例のみが未完了時制(習慣・反復).また、全 12
例のうち1例のみが不定形である.
4.1.6. poner
(31)a. [完了時制] Lamento decirle, señora, que Gervasio Quiroga ha sido puesto en libertad ayer
y que hemos hecho el viaje de... <ue>
b. [未完了時制] esos años la existencia de seres de otros planetas no era puesta en
entredicho por nadie. <1>
c. [不定形] Los dos detenidos fueron trasladados a Madrid, para ser puestos a disposición de
la Audiencia Nacional, según ... <95>
位置変化動詞であるため、移動後の位置(限界点)が明示される.poner と組む位置句には、
en tela de juicio / en entredicho / en escena / en libertad / a la venta / en práctica /a disposición
de / al servicio de / a cargo de / en órbita / en marcha などが見られた 26).
定形 35 例のうち 33 例が完了時制であった。未完了時制はわずか2例がで、ともに習慣・反
復の意味をもつ.全 39 例のうち 4 例が不定形であった.
4.1.7. llevar
本来、活動動詞である llevar は限界点として機能する目的地(点)を伴って、達成動詞として
機能し、完了相動詞といえるようになるのである 27).
(32)a. [完了時制] El cadáver del niño fue llevado a Badajoz mientras los padres esperaban en
Madrid ... <95>
b. [未完了時制] P.—Las perversiones contenidas en El extraño viaje (1964) son llevadas más
lejos aquí a través del personaje necrófilo de Agustín <95>
c. [不定形] Uno de ellos, el llamado Pack Back, parece destinado a ser llevado rápidamente a
la producción. Es un coche pequeño,.. <95>
これらの例文では、それぞれ”a Badajoz, aquí, a la producción”が目的点となっている.定形 20
例のうち 18 例が完了時制.2例が未完了時制で、用法はいずれも眼前報告である.不定形は6
例見られた.
4.1.8. コーパス中の完了相動詞
このように、コーパスの中で検索された7つの完了相動詞について、定形および不定形 ser 受動文
スペイン語の“ser 受動文”―定形と不定形:高垣
236
敏博
例の生起数をまとめると(33)のようになる.完了相動詞による定形受動文は 90%以上が完了時制で用
いられていることがわかるだろう(網かけの欄参照)
.冒頭(§2.1.1)でも述べたように、ser 受
動文のプロトタイプであること裏づけている.これに対し、未完了時制の生起数はわずか 6.7%
である.不定形受動も加えた総生起数 221 でみると、完了時制は 80%強、不定形受動は 12.7%
である.この両方は完了事態を表わしているので、合わせると 94.1%にもなる.これに比べる
と、未完了時制で用いられる定形受動文 13 例(5.9%)はきわめて低い比率である.総じて、完
了相動詞はその大半が1回性の完了事象を表わしていることになる.
(33) 完了相動詞による ser 受動文
4.2. 未完了相動詞
つぎに未完了相動詞の場合である.所有の poseer、知覚動詞である ver と oír、心理動詞から
querer と respetar、また認識動詞の creer と entender の7動詞を選んだ.個々の動詞の生起
状況を見てみよう.
4.2.1. poseer
(34)a. [完了時制]なし
b. [未完了時制]なし
c. [不定形] que hay que adquirirlo, ya que nada, absolutamente nada, puede ser poseído sin
una previa adquisición <o>
東京外国語大学論集第 79 号(2009)
237
poseer の定形受動文の例は1例も採取できなかった.
見つかった3例はすべて不定形である 28).
4.2.2. ver
(35)a. [完了時制] El último programa, titulado <Duros a cuatro pesetas>, fue visto por casi dos
millones de espectadores,… <95>
b. [未完了時制] La serie de Tele 5 es vista diariamente por 1,2 millones depersonas <95>
c. [不定形] Irene la mira y con ternura oprime un brazo de la muchacha. Para no ser vista por
su hermana lo hace rápidamente. <ue>
ver については、定形では完了時制が 18 例、未完了時制が 9 例見られた.合計 27 例の総数の
うち不定形の生起数 27 例と同数で 50%であった.ver については、受身主語(動詞の直接目的
語に相当)の性質によって、動詞が担うアスペクト構造は完了相を帯びている可能性もあるか
もしれないが、本論では未完了相として扱うことにする 29).
4.2.3. oír
(36)a. [完了時制] La detonación fue oída por Tomás Sánchez, un vecino de la zona que tomaba
unas cervezas en un bar cercano. <95>
b. [未完了時制] Frente a ellos, no supera el 20 por ciento el número de consultados que
opina que la voz de España es oída en este foro. <95>
c. [不定形] (la REINA) Está muy nerviosa y habla a media voz; sin duda para no ser oída por
el REY. <27>
定形の完了時制では 2 例、未完了時制では 1 例、計 3 例が見られた.一方、不定形の例は 11
例あった.
4.2.4. querer
(37)a. [完了時制]なし
b. [未完了時制] Sobre la esencia de su religión, Boudhiba aseguró que <sólo los hombres
libres de toda atadura son queridos por Dios>. <95>
c. [不定形] Se imaginaba no ser querido por nadie.30) <13>
querer の定形では、完了時制の例は見られなかった.未完了時制は1例のみで動作主は Dios
である.一方、不定形は3例見つかったが、いずれも低い生起数である.
スペイン語の“ser 受動文”―定形と不定形:高垣
238
敏博
4.2.5. respetar
(38)a. [完了時制] Si la decisión final es negativa, será respetada y asumida por Sierra Nevada. <95>
b. [未完了時制] なし
c. [不定形] las resoluciones que se adopten en ese marco deben de ser respetadas de manera
<ejemplar> por los poderes públicos. <95>
定形では完了時制が 6 例見られたが、未完了時制の例はなかった.不定形は 3 例のみで、この
動詞についは定形の生起率の方が高かった.
4.2.6. creer
(39)a. [完了時制] なし
b. [未完了時制] なし
c. [不定形] No obstante, yo creo que este Gobierno tiene derecho a ser creídocuando afirma
que no tuvo que ver con los GAL. <95>
定形の例は完了時制・未完了時制にかかわらず一つも見つからなかった.これに対し、不定形
は5例である.
4.2.7. entender
(40)a. [完了時制] なし
b. [未完了時制] La obra es entendida a fondo por el titular, Adrian Leaper. <95>
c. [不定形] El catálogo de presentaciones sanitarias aprobado ayer debe ser entendido desde
el punto de vista conceptual como un instrumento de precarización de la Sanidad pública
que conlleva, inevitablemente, la presentación del sistema privado. <95>
定形では完了時制の例はないが、未完了時制が2例見られた.(40b)では、本来の語義ではなく
「演奏、指揮する」の意味で用いられている.不定形も 2 例である.
東京外国語大学論集第 79 号(2009)
239
4.2.8. コーパス中の未完了相動詞
未完了相動詞の実例生起状況をながめてみよう.
(41) 未完了相動詞による ser 受動文
全生起数は完了相動詞の半数以下の 93 例である.完了相動詞が完了時制で用いられる 180 と
いう生起数と大きな違いある.93 のうち定形は 39 例で全体の 41.9%で半分に満たない.これに
対し、注目されるのは不定形受動文の高率である.54 例で 58.1%と6割に近い生起比率を見せ
ている(網かけの欄参照)
.完了相動詞では総数のわずか 12.7%しか占めていなかったのに比べ
ると、その高い不定形比率は何を意味するのであろうか.
4.3. コーパスによる生起分布
完了相動詞による ser 受動文の分布と未完了相動詞による ser 受動文の生起分布を表(33)およ
び表(41)で比較してみると、それぞれの網掛けのタイプに偏る結果になっていることがわかる.
すなわち、完了相動詞であるか、未完了相動詞であるかによって、明瞭な分布差が認められるの
である.本稿で用いたコーパスの生起例は、たしかに統計的有意なほどの数には達しないが、(25)
で示した、ser 受動文の定形と不定形の構造差をある程度反映しているのではないかと考える.
(25)で予測点を2つあげた.まず、(i)完了相動詞では、定形、不定形いずれでも完了事態を
表現できるので、反復事態を表わす必要がある場合を除いては、不都合がない点.これについ
ては、定形の完了時制と不定形とを合わせて 94.1%にもなっていることが確かめられる.
つぎに、(ii)未完了相動詞では、個別動作主を伴う受動表現を必要とする場合には、不定形に
スペイン語の“ser 受動文”―定形と不定形:高垣
240
敏博
頼ることになるのではないか、という予測であった.これについては、不定形受動文の生起率
が 6 割近くになっていることがわかった.完了相動詞の場合とは異なり、不定形受動への偏重
がこのことを示唆するのではないだろうか.
5. 理論的意義
本稿で援用した、De Miguel(1992)で展開される ser 受動文形成は、GB 理論にもとづき、文
法にアスペクト範疇を設ける提案がなされる.そして、ser 受動文が成立するのは、このアス
ペクト範疇がもつ「完了性」(perfectividad)に動詞が適合することが条件になると主張する 31).
動詞が語彙的にもつアスペクトが完了相の場合には受動形態素の-do がその動詞に付加して過
去分詞化し、助動詞 ser と組むことができるという.しかし、実際には、これまで見たように、
未完了相動詞の受動文も生起するわけであるから、これをどう対処するのか.
完了相動詞が未完了時制で用いられる(3)のような場合には、その反復相について、
「動詞が
もつ完了アスペクトとは独立して(外部に)存在する助動詞 ser の時制アスペクトの影響」が
二次的作用(
「アスペクト操作 manipulación aspectual」と呼ぶ)を及ぼし、これが「完了の事
象を未完了にしてしまうことなく、(…)、継起的な開始と終結」
(p.216)を含意するよう修正
を加えると説明する.
(3) La puerta es abierta por el portero.
したがって、(3)の文で「完了した事実の繰り返し」が結果として総称性(すなわち完了事態の
反復)をもたらすというわけである.
それでは、未完了相動詞についてはどうか.まず、(7a)のように完了時制で用いられる場合
には、同じく ser 動詞の完了時制アスペクトが二次的作用を及ぼし、動詞が表す未完了事象を
完了化するという.
(7a) El libro fue conocido {*por Juan / por todo el mundo}.
総称性動作主が好まれるのは動詞本来の未完了性に起因すると考える.
さらに、未完了相動詞が未完了時制で用いられる(8a)のような場合である.
(8a) En su tiempo, era conocido {*por Juan / por todo el mundo }.
これついても、(3)と同じように、総称的意味をもつ未完了助動詞の働きにより、出来事の繰り
返し、すなわち、行為の継起的終結が全体として、完了事象を表すことによる、と議論される.
このように、語彙的アスペクトをベースに、助動詞 ser の時制アスペクトによる作用を二次的
操作として加える分析は、ser 受動文の理解をたすけるものである
事象
.ここで、総称的な複合
32)
が総体として完了事象ととらえられるとする考え方は別として、本論では、理論的側面
33)
からつぎの指摘をしておきたい.すなわち、本論で見たような時制をもたない不定形 ser 受動
東京外国語大学論集第 79 号(2009)
241
文が成り立つとすれば、受動化は時制(のアスペクト)とは独立したメカニズムにより成り立
つと想定しなければならないだろう、という点である 34).
6. まとめ
時制をもつ ser 受動文に課される制限が、時制を欠く不定形 ser 受動文にはかからないので
はないか、という強い一般化を本稿では行ってきた.しかし、これはもともと受動文が成り立
ちやすいと考えられる動詞類については妥当であっても、そもそも ser 受動文が成り立ちそう
にない構文についてはいうまでもなく当てはまらない.例えば、De Miguel (2004:109)があげる、
(42)のような構文を見てみよう
(42)a. *El libreto es tenido por Juan.
b. *La vida fue vivida con entusiasmo.
c. *Muchas visitas fueron hechas.
d. *En aquella reunión, la pata fue metida hasta el fondo.
(a)の状態動詞 tener からは受動文を形成できない.状態動詞で、かつ完了事態の反復(総称)
と捉えられないからである.不定形 ser 受動文でも成り立ちそうにない.また、(b)は目的語が
動詞の本質的部分を成すいわゆる同族目的語をもつ動詞である.さらには、(c)の vivir la vida
のように軽動詞(light verb)と名詞の結合の場合(visitar に相当)でも受動化は難しい.同じ
く、”meter la pata” のようなイディオムの目的語を主語化することもできない 35).それでも、
このような構文のあるものについては、つぎのように、不定形では ser 受動文が可能になるこ
とを示しておきたい 36).
(43)a. Esta vida merece ser vivida felizmente por todos.
b. Las visitas guiadas duran 30 minutos y pueden ser hechas de lunes a viernes a las 11h, 13h, y 16h.
たしかに、これらの不定形 ser 受動文は総称的意味をもつもので、個別動作主をもつ場合は一
層難しくなるだろう.しかし、時制をもつ場合に比べて、不定形では抵抗感が少なくなるのは
なぜなのか、さらに検討していかねばならない.
スペイン語の“ser 受動文”―定形と不定形:高垣
242
敏博
注
*
本稿は、2009 年 8 月 27 日~29 日に滋賀県長浜市で開催された日本スペイン語学夏季セミナー(SELE2009)
での発表を加筆修正したものである。貴重なご意見をいただいた参加者の皆さんに感謝いたします。
1)
スペイン語のもう一つの再帰受動文は、それが表す受動の意味とは別に、形式としては能動態とみなすこと
2)
高垣(2009), De Miguel (2000:205-6), De Miguel(2004:108-111)などを参照.
3)
Hotel Agumar, Madrid, 2000 年 4 月 1 日.
ができる.再帰受動文と ser 受動文との対比については、Takagaki(2005)参照.
4)
Gili Gaya (1973)参照.
5)
それぞれ、達成動詞:derrotar, heredar, abrir, destruir, abandonar, poner; 到達動詞:descubrir, recibir, vencer,
encontrar, asesinar, llamar は完了相動詞.状態動詞:poseer, conocer, querer, temer, ver, oír, respetar, creer,
entender, comentar や llevar(§4.1.7 参照), buscar など活動動詞は未完了相動詞.ただし、動詞 llamar のアス
ペクトは後述のように、完了相(
「呼ぶ」
)と未完了相(
「名づけている」
)の両義と考える.
6)
また、De Miguel (2004: 108-9)では”En líneas generales, podría decirse que para formar una pasiva perifrástica
es preciso que el verbo sea perfectivo es decir, que pertenezca a lo que Vendler(1967) denominó la clase de las
realizaciones o la de los logros , y que el objeto directo(OD) de dicho verbo sea un objeto externo.”と述べられ
ている.
7)
眼前報告の用法は”abre”, “abría”のような能動文でも同じように見られる.
8)
De Miguel(1992:210) 参照.
9)
(7)(8)の例は De Miguel(1992)から.
10) ところで、これまでに見た、受動化における、完了相動詞の「反復」事態、および、未完了相動詞の要求す
る総称性事態を De Miguel(1992, 2000, 2004)で、<個別事態の集合>と解釈させられているが、本論ではその
議論に立ち入らないことにする.
11) 不定形は形式上は「句」であるが、本論では主語を潜在させる従属節と考えて「受動文」と呼ぶことにする.
12) 主動詞や前置詞は従属文にモーダルな影響を与える.例えば、前置詞 para と por を比べてみる.それぞれ
要求する叙法が異なる(Hernanz 1999:同上)ことを示している.しかし、これについても本論では、不定形
ser 受動文の形成には影響しないと考えておくことにする.
(i)a. Trabaja para que sus hijos {*estudian / estudien }.
b. Esto te pasa porque {protestas / *protestes}.
13) (15a)は De Miguel 1992)より、(15b)は Víctor Calderón 氏に確認.
14) (16a,b)は Víctor Calderón 氏に確認.
15) インフォーマント調査では、Víctor Calderón de la Barca, Nicolás Ballesteros, Victorino Palma, Amaya León,
Juan Carlos Moyano, Mario Carranza, Laura Rivas の7名のスペイン人母語話者に、文の適格性に応じて OK
(espontánea) / ? (aceptable pero no del todo espontánea) / ?? (aceptable pero no espontánea) / * (no
aceptable)の記号で答えてもらった.この判断に OK=3, ?=2, ??=1, *=0 の点数を与え、平均値を容認度とし、
(20)以下の調査例文に付した.また、同じ容認度でも必要に応じて+、-(上下の値に比較的近いことを示す)
をつけた.
16) また接続詞 cuando を用いた “Cuando el ladrón se escapó, no era visto {*por Juan / *por nadie}.”でも同様に
許容されない.
17) (21b)に類する、”Pedro siempre sale de casa sin ser visto {?-por su madre / ?+por nadie}.” では、容認度が落ち
た.主語の個別動作主 Pedro の習慣的ふるまいとしては不自然な描写であるのかもしれない.母語話者の判
断はともに ?(やや不自然)となっているが、”por su madre” では 1.85、 ”por nadie” の方は 2.42 の容認
度となった.同じ容認度 (=2)でも開きがあり、nadie の方がやや OK に近い数値(?につけた±の表示を参照)
で、より容認度が高いことを示す.
18) De Miguel(2000:207)によると, ver は両義的で、つぎの(a)”ver una exposición”は限界点と目的語の状態変化
を表す移行(Transición)の事象構造(L+E)をもつのに対し、(b)の”ver la cima”は限界点に過程が後続する
(L+P)事象構造で、完了しない限界事象と分類される.そして限界性+結果状態(移行事象)をもつ(a)の
みが受動化を可能にするという.
東京外国語大学論集第 79 号(2009)
243
(a)La exposición de Raffaello fue vista ayer por el ministro.
(b)*La cima fue vista en ese momento.
De Miguel(2004)ではさらに、この差が動詞とその項の特質構造(クオリア)の差により説明される.しか
し、ここでは(20)で用いられている “ver”は、??ver la cima en diez minutos; ??acabar de ver la cima;
OK
ver la
cima durante una hora などから、限界性 L よりも継続性アスペクトが本質的アスペクトでではないかと考え
る.また、完了相動詞であれば、(3a)と同じように、(20a)で、個別動作主が容認されてしかるべきである.
19) (21a)の por Juan は容認度 1.57、por la policía では 2.42 という結果で、ぞれぞれ??と OK に近いことがわかる.
20) conocer も完了相・未完了相の両義解釈がありうるものの、ここでは未完了相と考える.
21) (22c) で”por el señor Antonio López”は 1.85, “por el líder del partido”では 2.28 の容認度であった.
22) ある母語話者によると、“La noticia tenía que ser comentada por el jefe, pero no estaba.”では許容される.これ
でも動作主がすでに総称性を帯びているわけであるが、さらに、ニュースとニュースについて評釈する人物
の関係が成立しやすい組み合わせだということだろうか.
23) 実際には上の例のように、
不定形 ser 受動文でも完全に容認されない結果になる場合も少なくない.
しかし、
制限がないことを前提とし、容認度が不十分なケースについては、文を形成する要素間の意味的な不適合に
よるものが多いのではないかと当面考えておく.
24) 神戸市外国語大学宮本正美氏作成の <KLM コーパス> による.資料体は本論末尾参照.
25) llevar は、目的地などの限界性の副詞句を伴うことにより達成動詞化する(Vendler1967 参照)
.
26) この他には、bajo~や como ejemplo, de manifiesto, de relieve などもある.
27) 未完了時制で、Sólo avancé cuando era llevado. Y confío más en mi parte animal que en mi… <re>のような例
(眼前報告)もある.「引っ張られる」というような意味で用いられているのであろう.
28) 動作主をもつものはつぎの1例で、por nadie のように総称性をもつ.しかも、この例では poseer は状態動
詞としての「所有」というよりは、
「
〔女性と〕性的関係をもつ」意味での完了事態と考えられる.”los nervios
de Nazaria estaban exhaustos. Tanto que, sin haber sido poseída por nadie desde la muerte de su esposo, tuvo
los... ”<15>
29) 注 18 を参照.
30) “El sentimiento de ser esperada y querida me hacía despertar mil instintos de mujer; ” <na> のような例もある.
31) 受動形態素-do は動詞が表す事象が完了しているという情報をもたらす.したがって語彙的に完了相の動詞
とは適合するが、未完了相の動詞とは不適合である.-do は事象項(argumento eventivo)、すなわち、アスペ
クト情報が統語的に実現したもので、独立の範疇 ASP に[+perfectiva]と指定されたときに満足される.-do
は性・数をもつ(人称は欠く)アスペクトの一致要素(concordancia nominal)なので動詞性ではなくて名詞
性([+N]の素性)をもつ.そのため動詞に付加すると、動詞から対格を付与する能力を奪う.そこで目的語
は格を求めて主語位置へ移動し、助動詞 ser から主格を受け取る.一方、動詞の外項の意味役割は por 句と
して(随意的に)実現する.具体的には-do が ASP に投射される.その最大投射である SASP は動詞 SV の
主要部をなす助動詞 AUX の ser によって選ばれる.そして ASP の中の-do は原則的には語彙的に完了相の
動詞を主要部としてもつ動詞句を補部とする(De Miguel 1992: 212)
.
32) De Miguel (2002)では、Pustejovsky (1991)に基づく、事象の内部構造(アスペクト構造)の観点から、ser
受動文の形成は「達成(限界点)+状態」をもつことが要件と定義している.しかし、基本的には De Miguel
(1992)と同じく、語彙アスペクトを基本とし、時制アスペクトの関与を前提にしている.
33) 総称性は時間軸で繰り返される「習慣的」なものと、空間軸で繰り返される「一般性」のものとがあり(“una
actividad o acción que se repite en el tiempo (que es habitual) o en el espacio (que es general)”, p.218)、継起す
る個々の完了行為の複合体とみなされる.
34) その場合は、本論で述べた制限は時制をもつレベルで課されるものと考えられるだろう.
35) 本論冒頭で、ホテルで聞いた不定形 ser 受動文(1)についてふれた.”llamar”についてもコーパスで生起状況
を確認してみた.二つの語義をもつが、
「呼ぶ」という完了相の語義では完了時制は 10 例、未完了時制は 3
例、不定形受動文は定形の生起数に匹敵する 10 例であった.もう一つの語義、
「呼んでいる、~と名づけて
(未完了相動詞)では、定形の完了時制の例はなく、未完了時制でも 2 例だけであるが、不定形では
いる」
4例見つかった.本論のコーパス分布に概ね一致する.また本論の出発点となったモーニングコールの例文
スペイン語の“ser 受動文”―定形と不定形:高垣
244
敏博
(1)とよく似ているつぎの実例があった:”Bueren, sustituto de Garzón, le ha devuelto el escrito en que pedía
ser llamado”.<95>.なお英語の影響を受けた米国のスペイン語では、”Favor de mantenerse en línea hasta ser
llamado”(マイアミ)などの例が見られることある.この例は英語の”Please stay in line until you are called.”と
併記されている(福嶌教隆氏による情報)
.
36) (43b)は(43a)ほど自然ではなく、再帰受動文の方が好ましい(Antonio Ruiz Tinoco 氏の判断による)
.
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Vendler, Zeno (1967) Linguistics in Philosophy, Cornell University Press.
Títulos y Siglas de los Textos del Corpus KLM
《1》Eduardo Mendoza: La ciudad de los prodigios ; 《6》Manuel Vázquez Montalbán: Los alegres muchachos de
Atzavara; 《7》Miguel Delibes: El camino; 《9》Ignacio Aldecoa: Cuentos completos; 《10》Vicente Soto: La zancada;
《13》Juan Antonio Payno: El curso; 《15》Ramón J. Sender: La antesala; 《17》Carmen Martín Gaite: Nubosidad
variable; 《ca》Luis Landero: Caballeros de Fortuna; 《du》Camilo José Cela: La familia de Pascual Duarte; 《ga》
Elvira Lindo: Manolito Gafotas; 《he》Francisco Umbral: Los helechos arbolecentes; 《j》 Luis Landero: Juegos de
la edad tardía; 《ja》Manuel Vicent: Jardín de Villa Valeria; 《mi》Antonio Muñoz Molina: Los misterios de Madrid;
《na》Carmen Laforet: Nada; 《nu》Camilo José Cela: Nuevas andanzas y desventuras de Lazarillo de Tormes; 《re》
東京外国語大学論集第 79 号(2009)
245
Antonio Gala: La regla de tres; 《ry》Raúl del Pozo: Los reyes de la ciudad; 《tr》Ana María Matute: Tres y un sueño;
y 《ve》Eduardo Mendoza: La verdad sobre el caso Savolta.
[3]
《06》Santiago Moncada: La muchacha sin retorno; 《07》J. Alonso Millán: Compañero te doy; 《27》Pedro Gil
Paradela: El afán de cada noche; 《29》Santiago Moncada: Salvad a los delfines; 《30》Julio Mathías: Un sastre a la
medida; 《35》Pedro Mario Herrero: Un día de libertad; 《36》José María Bellido: Esquina a Velázquez; 《41》Emilio
Romero: La chocholila o el fin del mundo es el jueves; 《43》Julio Mathías: Prohibido seducir a los casados; 《44》
José María Bellido: El baño; 《53》José María Bellido: Milagro en Londres; 《56》J. Alonso Millán: El camino verde;
《59》Julio Mathías: Julieta tiene un desliz; 《65》Pedro Mario Herrero: La balada de los tres inocentes; 《66》J.
Alonso Millán: Capullito de Alheli; 《8》Rafael Sánchez Ferlosio: El Jarama; 《ad》Enrique Jardiel Poncela: Las cinco
advertencias de Satanás; 《an》Ana Diosdado: Anillos de oro; 《ar》Antonio Buero Vallejo: En la ardiente oscuridad;
《ba》José Luis Alonso de Santos: Bajarse al moro; 《ci》Antonio Gala: Las cítaras colgadas de los árboles; 《cm》
Antonio Gala: Carmen Carmen; 《co》Antonio Gala: ¿Por qué corres, Ulises?; 《e》Vidal Lamíquiz y Miguel Ropero:
Sociolingüística andaluza; 《4》Encuestas del habla urbana de Sevilla.--nivel popular-- ; 《el》Enrique Jardiel Poncela:
Eloísa está debajo de un almendro; 《la》Antonio Buero Vallejo: Lázaro en el laberinto; 《m》M. Esgueva y M.
Cantarero: El habla de la Ciudad de Madrid. Materiales para su estudio; 《ma》Miguel Mihura: Maribel y la extraña
familia; 《mu》Antonio Buero Vallejo: Música cercana; 《o》 Camilo José Cela: La colmena; 《pl》Amor de Don
Perlimplín con Belisa en su jardín; 《se》Antonio Gala: Séneca; 《so》Miguel Mihura: Tres sombreros de copa; 《t》
Vidal Lamíquiz y M. Ángel Pineda: Sociolingüística andaluza 2. Encuestas del habla urbana de Sevilla --nivel culto-- ;
《ue》Ueda, Hiroto.: Análisis lingüístico de las obras teatrales españoles; y 《za》La zapatera prodigiosa.
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スペイン語の“ser 受動文”―定形と不定形:高垣
敏博
La pasiva perifrástica con ser en infinitivo
TAKAGAKI Toshihiro
Este estudio aborda la caracterización de la pasiva con ser (perifrástica) en forma infinitival,
i.e., desprovista del tiempo, en contraposición a su contrapartida flexionada, tratada ésta última
habitualmente en la literatura.
La pasiva perifrástica se puede clasificar en cuatro clases, según Gili Gaya (1973) y De
Miguel (1992), en función del aspecto léxico del verbo principal (“télico” o “atélico”) y del tiempo
del auxiliar ser (“perfecto” o “imperfecto”).
(1)a. Steffi fue derrotada por Arantxa en Roland Garros.
<télico × perfecto>
b. Steffi, aquel año, era derrotada por Arantxa en todos los torneos en que
se encontraban.
<atélico × imperfecto>
c. El libro fue conocido por todo el mundo.
<atélico ×perfecto>
d. En su tiempo, era conocido por todo el mundo.
<atélico × imperfecto>
En las dos primeras clases, (1a) y (1b), perfecto e imperfecto respectivamente, formadas sobre el
verbo télico derrotar, la segunda (1b) se muestra restringida semánticamente puesto que implica
un evento “reiterativo”, y no “perfectivo”. Por otra parte, las otras clases, (1c) y (1d), basadas en el
verbo atélico conocer también adolecen de otras restricciones semánticas ya que sólo se admite
un agente genérico o colectivo (todo el mundo), y no un individuo (Juan, su abuela), como se
ilustra en (2a) y (2b).
(2)a. El libro fue conocido {*por Juan / por todo el mundo}.
b. Juan fue querido {*por su abuela / por todo el mundo}.
Nuestra hipótesis, pues, consiste en considerar que la pasiva con ser en infinitivo está exenta
de tales restricciones aspectuales. El predicado con verbos de carácter télico como ser derrotada,
en (3) y (4), denota siempre un evento perfectivo, independientemente del tiempo y de clase de
verbos que rijan el infinitivo.
(3)a. Steffi {puede / pudo / podía / podrá} ser derrotada por Arantxa.
b. Steffi {volvió a / acaba de / no quiere / puede} ser derrotada por Arantxa.
Por otra parte, la pasiva constituida por verbos de carácter atélico tolera un agente individual
en su versión en infinitivo, como se manifiesta en (3b), por contraste con la forma flexionada (3a).
(3)a. El ladrón se escapa, pero no es visto {??por Juan / ?por nadie}.
b. El ladrón se escapa sin ser visto {OKpor Juan / OKpor nadie}.
El agente individual “Juan”, inadmisible en la pasiva flexionada (3a), está perfectamente aceptado
en (3b), construcción correspondiente en infinitivo.
Por último, nuestra caracterización de la pasiva perifrástica se ha comprobado en el corpus
lingüístico del español (corpus KLM), del que se han extraído ejemplos representativos de siete
verbos télicos y atélicos, respectivamente. Los resultados del recuento de casos de ambos tipos
de pasivas reflejan en gran medida la generalización defendida en este trabajo.
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