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アメリカ合衆国における準則制 事業会社法の変遷 (Ⅱ)

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アメリカ合衆国における準則制 事業会社法の変遷 (Ⅱ)
中京法学巻1・2号 (年)
論
( ) 説
アメリカ合衆国における準則制
事業会社法の変遷 (Ⅱ)
――
年から世紀末まで――
伊
藤
紀
彦
はじめに
Ⅰ
アラバマ州事業会社法
Ⅱ
オハイオ州事業会社法 (以上巻3・4合併号)
Ⅲ
アイオア州事業会社法
Ⅳ
ジョージア州事業会社法
Ⅴ
ルイジアナ州事業会社法
Ⅵ
イリノイ州事業会社法
Ⅶ
ミズーリ州事業会社法 (以上本号)
Ⅷ
ウィスコンシン州事業会社法
Ⅸ
テネシー州事業会社法
Ⅹ
キャリフォーニア州事業会社法
ⅩⅠ
アーカンソー州事業会社法
ⅩⅡ
ミシガン州事業会社法
ⅩⅢ
ヴァモント州事業会社法
ⅩⅣ
ミシシッピ州事業会社法
ⅩⅤ
インディアナ州事業会社法
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
ⅩⅥ
メアリランド州事業会社法
ⅩⅦ
ノース・キャロライナ州事業会社法
ⅩⅧ
フロリダ州事業会社法
ⅩⅨ
ケンタッキ州事業会社法
ⅩⅩ
ミネソタ州事業会社法
ⅩⅩⅠ
キャンザス州事業会社法
むすび
アイオワ州事業会社法
【1】 年法
(表=④)
本法は全文カ条から成る。 本法§1は 「幾人の者でも, パートナー
シップの適法な目的たり得るあらゆる事業のために法人となる (
) ことができる」 と定めており, 本法はかなり包括
的に会社の設立を許容しているといえよう。 本法§1の規定により設立
できる事業目的の中には, 製造工業のほかフェリー施設・鉄道の建設・
その他の内陸開発事業 (
) も含
まれるが, 保険事業がその中に含まれるかどうかは明確ではない。 なお,
本法は, 鉄道会社の設立に関する準則主義を採用した制定法のうち, 全
米で最も初期のものであろう。
事業会社を創設しようとする者は, 事業を開始する前に, 定款 (
) を採択し, その主たる営業の場所が所在するカ
ウンティの捺印証書記録官 (
) の事務所にその
定款を記録する。 また, 鉄道・運河・その他の内陸開発事業のための会
中京法学巻1・2号 (年)
( ) 社は, さらにその定款 (
) の認証謄本を州務長
官の事務所に提出する (本法§7)。
本法は, 法人化の時点については言及せず, 事業開始の要件を明示し
ている。 そして, 定款の記載事項は一括して掲げられていないが, 会社
の商号・主な営業の場所・資本の額など通常は定款記載事項たる事項を
新聞に広告することが要求されている (本法§§8・)。 また, 会社
の存続期間は年であり, それを更新することができる (本法§)。
本法§6は, 「彼ら [会社を創設しようとする者] は, 私的財産を会
社債務から免責 (
) させることができる」 と定めている。 また,
本法§9は, 「先行の2ヶ条に含まれる要件のいずれかを遵守しない場
合には, すべての契約について彼ら [会社を創設しようとする者] の個
人的財産が責任を負う」 と定めている。 さらに, 本法§
は, 「[本法の]
先行の諸要件を遵守しない場合または実質的に定款違反の場合は, 当該
会社の社員 (
) の個人財産 (
) がその会社
債務につき責任を負う」 と定めている。
最後に, 本法§は, 「会社の債務が負担されたときに当該株主が保
有する株式の額を限度として, また, 爾後いつでも当該株主が保有する
株式の額を限度として, 当該会社の全債務について, 各株主の私的財産
(
) は責任を負う」 と定めている。 この株主の責任
は, 直接有限責任であり, いわゆる2倍責任であろう。 なお, 本法§
()
は本法§
と矛盾する旨が説かれているが, これらと同趣旨の諸規定は,
()
爾後, 当州のすべての に収録されている。 このように, 当州にお
ける制定法上の社員の責任規定は錯綜しているが, これらの諸規定は若
干の変更を経て, 世紀末においてもほぼそのまま保持されている。
★
上述の年法は, 年のアイオア州憲法 §2の要請によ
り制定されたといえよう。 同憲法規定は, 「当州では, 法人は, 政治的
目的・地方公共団体の目的のためを除いて, 個別法律により創設されて
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
はならない。 しかし, 当州の議会 (
) は, 銀行
特権 (
) を有する法人――その創設は禁止される――
を除いて, 他のあらゆる法人の組織化 (
) について,
()
一般法律により規定する」 と定めている。 ただ, 同憲法 §1の
解釈および銀行特権とは何かについては明確ではなく, 発券銀行の創設
が禁止される点は疑問が少ないが, 割引・預金銀行の創設が禁止される
()
かどうかは明らかではないといわれている。
【2】 本 Ⅹ (
) は, 2つの章 (
と ) か
ら構成されている。 同 (
!
)
はカ条 (§§"#
"$") から成り, 前述の【1】の%&"年法に若干の
規定が追加・修正されたものである。
本 §"は, 幾人の者でも, 適法なあらゆる事業取引のために
法人の設立を許容している。 このように, 適法なあらゆる事業取引のた
めに法人化を許容する制定法は, コネティカット州の%&"年法に続く最
も初期の事例であり, 前述の【1】の%&"年法も本 とほぼ同じで
あろう。 目的たる事業の中には, フェリー・運河・鉄道・有料橋・その
他の内陸開発事業が含まれる。 また, 保険事業も本 の対
象であり (本 §§"・&&参照), 本 は, 保険会社 (相互会
社を除く) の設立に関する準則主義を採用した制定法のうち, 全米で最
も初期のものである。
アイオワ州の 「会社」 制定法は, 定款記載事項を一括して明記してい
ないが, 本 §"は, 内陸開発事業については, 会社が負担できる
債務の最高限度額 (資本の3分の2を超えてはならない) を定款記載事
項として掲げている。 また, 会社の存続期間は, 内陸開発事業について
は'$年であるが, それ以外の事業会社については$年である (本 §&%)。
中京法学巻1・2号 (
年)
( ) また, 本 は一人会社につき規定を設けており, 「一人の者でも
本章 [
] の利益に与ることができる。 ただし, 事柄の性質上適用
できない場合を除き, その者が本章のすべての要件を実質的に遵守する
ことを要する」 と定めている (本 §
)。 なお, 本規定は後述の
【5】の
年 に至るまで保持されている。
さらに, 本 §によれば, 株主は, その保有する株式に対す
る未払込額 (
) について個人
的責任を免れることができない。 この責任は, 「会社に対する強制執行
は個人の私的財産に対してその限度で [未払込額を限度として] 差し押
さえることができる」 から, 直接責任であろう。 前述の【1】の
年
法§は株主の2倍責任を定めていたが, 本 は, 株式の未払込額
に限って会社の債権者に対する直接責任を認めるものであり, 前述のア
ラバマ州
年法 (Ⅰ【3】★参照) の責任の態様とほぼ同じである。
年のアイオワ州憲法の下において, 当州議会は, 発券銀行を非合
法化したが (本 §§
・
), 割引・預金銀行については何も
()
言及していないといわれている。
最後に, 本 (
) は非営利法人の設立に関する準則主義を定めており (§
()
§
) , 本 における私法人の分類基準としては金銭的利益
(
) が用いられている (本 と との
対比による)。 また, 本法と同一の分類基準がアイオワ州では爾後も維
持されている。 なお, 法人の分類基準を金銭的利益とする州法としては,
後述のイリノイ州の事例 (Ⅵ【3】の
年法§参照) がみられる。
★
年のアイオア州憲法は, 「いかなる法人も個別法律により創設さ
れてはならない。 しかし, 州議会は, 以下別段の定めがある場合を除き,
すべての法人の組織化について, 一般法律により規定する」 と定めてい
る (同憲法 Ⅷ§1)。 また, 同州憲法は銀行会社の設立を許容し
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
て, 次の旨を定めた。 すなわち, 銀行会社 (
) を創設する法律 (その修正も含む)
は, 当該法律の通過後3カ月以内に開催される通常選挙または特別選挙
において, 人民に対し個別に提示され, かつ, かかる選挙において賛否
を投じたすべての選挙民の過半数による承認が得られたとき, その効力
()
を生じる, と (同憲法 Ⅷ§5)。 そして, このような州憲法の規
定を前提として, 以下の③自由銀行法は制定されている。
爾後の会社制定法のうち, 次の3つの制定法に注目したい。 年に,
()
① が制定されたが, 本
法は, 火災・海上保険会社に関する であり,
保険会社の設立に関する準則主義は上述の年 §により既に
確立されている。
()
年に, ② が制
定され, 同法§1は, 「鉄道会社の株主は, 当該会社において保有する
株式の額についてのみ責任を負う」 と定めており, これは2倍責任規定
であろう。 同法も上記①の制定法と同じく である。
(!)
また, 同年に, ③自由銀行法が制定され, 発券銀行も準則主義に基づ
く法人化が許容された。 なお, 本法§"は2倍責任規定を設けており,
同規定は, 次の【3】の"年 #
$
ⅩⅡ
にほぼそ
のまま収録されている。
【3】 本 #
の 「会社」 に関する諸規定の編成は次のとおりである。
$
Ⅹ% &
' [§§"
]
$
ⅩⅡ% 中京法学巻1・2号 (##年)
( ) [§§
]
[§§
]
本 の諸規定と前述の【2】の
年 とを比較する
と, 章 (
) やセクション番号に違いはあるが, 両者の内容は基
本的に同じであるといえよう。 上記
は前述の年自由銀行法を
収録したものである点は既述のとおりであり, 上記 は前述の
年の保険会社法 (【2】★参照) を収録したものである。
銀行会社の設立については, 幾人の者でも割引・預金・流通の事務所
を創設するために結合し, 本法の定める諸条項・諸条件・責任に基づき
法人となることができる。 しかし, その資本の総額は5万ドル以下であっ
てはならず, その全額が金銭で払い込まれなければならない (本 §!(7
))。 また, 州会計検査官 ( "
) から流
通銀行券を受領する前に, 定款が作成されなければならない。 そして,
定款は, 当該法人が設置されるカウンティの記録官の事務所において確
認・記録され, その定款の謄本は, 州務長官および会計検査官の事務所
に提出される。 このように定款が記録されたとき, 上述の者は法人とな
る (本 §!(8
))。 また, 株主は2倍責任に服する (本 §(#
)) が, この規定は前述の年の自由銀行法§#(【2】
★参照) と同じである。
★
その後, 年に, 保険会社に関する2つの一般法律が制定されてい
(#)
()
る。 ① $
および ② %$
"
$
で
あり, これら2つの制定法は, 次の【4】の年 %
Ⅸ
に収録されている。
()
#年に, 前述の年自由銀行法 (【2】★) が廃止されたが, 同
法は, 年の %&
'
( により既に実効性を失っ
ており, かつ, 同法に基づき設立された銀行会社は#年以前には存在
()
しなかったと説かれている。
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
【4】 本 の会社に関する諸規定の編成は次のとおりであり, その編成
は, 先行の2つの制定法集 (【2】【3】参照) のそれを基本的に引き
継ぐものであるといえよう。
Ⅸ [§§
]
[§§
]
[§§
]
Ⅹ ![§§"
]
設立については, 前述の【2】の年 以来, 適法なあらゆる
事業を目的として準則主義に基づく会社の設立が許容されている (本
§)。 "年に, 設立手続を定める年 §が変更
(")
され, 本 はそれを受け継いでいる。 年 (§) 以前
においては, 事業を開始する前に, その主たる営業の場所があるカウン
ティの捺印証書記録官の事務所に定款を記録することのみが要求された
が, 本 では, さらに, 事業を開始する前に, 当該定款を州務長官
の事務所に提出することが要求されている (本 §)。 なお, 内
陸開発事業については, 前述の【1】の"年法以来, 定款を州務長官
の事務所に提出する旨の規定が存在していた。
また, 当該定款が捺印証書記録官の事務所に提出されると直ちに, 会
社は事業を開始できる。 そして, 一定事項を新聞に公表し, 捺印証書記
録官の事務所への定款の提出から3カ月以内に, 当該定款の謄本が州務
長官の事務所に提出された場合には, 会社の行為は有効である (本 §
)。 以上のように, アイオワ州の事業会社法は, 事業開始の要件
として定款を州務長官の事務所に提出することを要求しているが, 定款
中京法学巻1・2号 (年)
( ) 記載事項を掲げていない。 ただ, 後述のように生命保険会社以外の保険
会社は別である (本 §
)。
年に, 年自由銀行法が廃止されたことは前述したが, 本
は銀行会社に関する独立の章を欠如しており, 本 Ⅸ
(
)
が銀行会社にも適用されたといわれている。
本 Ⅸ
は, 前述した
年の2つの保険会社法
(Ⅲ【3】★) を収録し整理したものである。 保険会社に関する諸規定
は, ①生命保険会社以外の保険会社 (本 §
以下) と②生命保
険会社 (本 §以下) とに区分されている。
生命保険会社以外の保険会社の設立は, 本 Ⅸ
の
手続に従う。 保険会社を設立するために結合する者は, 当該会社が設置
されるカウンティの一般新聞に, 週1回づつ, 4週間, かかる (会社設
立の) 意図を公表する。 そして, 彼ら (会社を設立しようとする者) は
定款 (
) の作成・署名を行ない, 当該定款は公証人または
正式記録裁判所 (
) の書記の面前において確認・認
証され, それが州の会計検査官 (
) に提出される。
また, 会計検査官は吟味のためその定款を法務総裁 (
) に提出し, その定款が本 の諸規定・合衆国の諸法・当
州の憲法および諸法に合致していることを法務総裁が認定した場合には,
かかる事実を定款に認証して, その定款は会計検査官に返却される (本
§)。
当該定款が法務総裁および州の会計検査官の承認を得た場合には, 当
該会社は定款を記録させ, そして, その者 (会社を設立しようとする者)
たちは, 法人化されて本章 [
] の諸規定をすべて遵守したとき,
保険事業の遂行を授権され, 法人とみなされる (本 §)。
前述の【1】の年法以後, アイオワ州の事業会社の設立手続にお
いては, 定款記載事項が一括して明記されていないが, この点は本
Ⅸ
においても同様である。 これに対し保険会社の
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
設立手続については本 §が定款記載事項を掲げている。 な
お, 生命保険会社以外の保険会社 (
) の資本は,
5万ドル以上, 万ドル以下であることを要し, 1株ドルに分割さ
れ, 資本の%以上, かつ, いかなる場合でも2万5千ドル以上が現金
で払い込まれなければならない (本 §)。
生命保険会社の設立は, 本 Ⅸ
に従うが, 生命保
険会社 (州外会社も含む) は, 当州内において保険証券を発行する前に,
本章 [
] の諸条件・諸制限を遵守しなければならない (本 §
)。 かかる諸条件のうち, 次の点に注目しておきたい。 当州の法律
に基づき組織化された生命保険 (株式) 会社 (
) につ
いては, 万ドル以上の資本が引き受けられ, その%が払い込まれか
つ合衆国もしくは当州の証券 [公債] (
) または当州に存在する
負担の付かない不動産上の債券 (
) もしくはモーゲッジに投資さ
れなければならない (本 §)。
最後に, 株主の責任について, 本 §は前述の【1】の
年法§を受け継いでいる。 ただ, 前述の【2】の年 と【3】
の年 は年法の規定をそのまま保持しているのに対し,
本 は鉄道会社の株主について例外を設けており, かかる株主は,
会社の債務につき持株の額に限って責任を負う (本 §)。 また,
生命保険会社以外の保険会社の株主は, その保有する株式の未払込額に
ついてのみ責任を負う (本 §)。
★
年に, 年 が修正され, 同修正により銀行会社の株主の
()
責任につき2倍責任規定が設けられている。
ちなみに, アイオワ州では,【4】の年 から【5】の!
()
年 の編纂までの間は, 制定法集は正式には編纂されなかったが,
この間にも, "
#$
%や &
'
"
(
)
#
(
#$
%
などが非
中京法学%巻1・2号 (%年)
( ) 公式に編纂されている。
【5】 本 の 「会社」 に関する諸規定の編成は以下のとおりである。
Ⅸ [§§
]
[§§
]
[§§
]
!
"#$[§§
]
#$[§§
]
% #$[§§
&]
Ⅹ !
'
[§§%
%
]
本 (
Ⅸ(
における事業会社 (
) の設立手続きの概要は以下のとおりである。 組織化を除
いて, あらゆる事業を開始する前に, 幾人の者であっても定款 (
) を採択しなければならない。 そして, その定款
は会社設立者 (
) により署名・確認され, 営業の主たる
場所があるカウンティの捺印証書記録官の事務所においてそのために保
管される帳簿に記録される。 また, 記録官は, 爾後5日以内に, 当該定
款提出の時およびその記録が見出される帳簿・頁をその帳簿に裏書 (記
載) する。 このように裏書された定款は州務長官に提出され, 州務長官
はそのために保管される帳簿に記録する。 かかる会社は, 設立証明書
(
) が発行される前に, 州務長官に%ド
ルの手数料を支払う (本 §
)。 会社は, 設立証明書が発行され
たとき, ただちにその事業を開始することができる (本 §)。
株主の責任については, 年 (§&
) 以後, 同じ趣旨の規定
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
が保持されており, 株主はその保有する株式の未払込額につき責任を負
う (本 §)。 ただし, これと矛盾するといわれる規定が最初の
準則制事業会社法以後一貫して保持されている点は既に述べたとおりで
()
ある。 なお, 銀行会社の株主は2倍責任を負う (本 §
)。
本 は, 保険会社については, 生命保険会社とそれ以外の保険会
社とに区分して規定を設けており, これらの諸規定は基本的に年
(【4】参照) の保険会社に関する諸規定を保持しているといえ
よう。
前述の【4】の年 と本 を比較してみると, 本 Ⅸ
に相当する規定は前者では欠如しており, 本 において銀行会社に関する規定が独立の
として整備されたのだ
といえる。
「貯蓄銀行を除いて, 銀行業・為替の売買・預金の受け入れ・手形の
割引を行なうため当州の準則制会社法 (
) により組織化された団体 (
) は, と呼
ばれる。」 そして, このような銀行会社は, その商号中に という
語を用いなければならない (本 §)。
銀行会社は, 成人年齢に達した5人以上の者により組織化することが
できる。 つまり, 銀行会社については, 1人会社の設立は認められない
わけである。 そして, かかる5人以上の者は, その事業を開始する前に,
捺印証書の確認をとる資格がある公務員の面前において, 定款の署名・
確認を行なう。 銀行会社の定款記載事項は, 目的・授権資本の額・法律
が定める責任に加えて私的財産が会社債務につき責任を負うかどうか・
その他である (本 §)。 かかる定款は, その主たる営業の場所
のあるカウンティの捺印証書記録官の事務所および州務長官の事務所に
提出・記録され, また, かかる銀行会社の法人化は, その銀行が設置さ
れるカウンティで発行されるいずれかの新聞に4週間継続的に公表され
る (本 §・
)
中京法学巻1・2号 (年)
( ) 鉄道会社の設立に関する準則主義が
年以後確立されていたことは,
既述のとおりであるが, 鉄道会社の設立も一般の事業会社と共通の手続
に従うものとされている (年 年 年 Ⅸ
本 Ⅸ
参照)。
鉄道会社は, 当州の境界線上の合意した地点で, その路線を他の会社
のそれと結合・交差・合同 (
) することができ, そして, 全株主
の持分のうち, その4分の3の同意を得て, 合意した諸条件に基づき,
かかる他会社の株式・財産・フランチャイズ・責任を合併する (
) ことができる (本 §
)。 これと同趣旨の規
定は, 既に前述の【4】の年 §および【3】の
年 §に定められている。
当州の法律に基づき組織化された鉄道会社または鉄道に関する当州の
法律に基づき当州において鉄道路線を運営する鉄道会社は, 当州または
隣接州の鉄道会社の株式・社債その他の証券の全部または一部を取得・
保有することができる (本 §
)。 この規定は, 鉄道会社が他の
鉄道会社の株式を所有することを認めるものである。
ジョージア州事業会社法
【1】 年法
!""(表=⑤)
本法は全文7カ条から成り, 製造工業会社だけを対象とする制限的な
準則制事業会社法である。 幾人の者でも, 製造工業を目的として, 結合
し, 定款 (
) を作成して, それを当該会社が設置される
カウンティの上位裁判所書記の事務所 (
!
"
"
"
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
) に記録することができる。 また, 定款のフォームが
掲げられ, その定款が, 2カ月間, 週に一度, 最寄りの2つの新聞に公
表された時に, 法人は成立する (本法§1)。 法人の存続期間は
年を
超えることができない (本法§6)。
また, その会社が事業を開始する前に, 当該会社の社長は, 上位裁判
所裁判官・下位裁判所裁判官または治安判事の面前において, その会社
に現実に払い込まれた資本の額につき誓約し, その額を最寄りの新聞に
公表しなければならない (本法§3)。
社員は, 当該会社の社長が払込済みであると誓約した資本の額がその
とおりに払い込まれていない場合には, 会社の債務および契約について,
各自連帯して責任を負う (本法§4)。 つまり, 誓約どおりに資本が払
い込まれていなかった場合にのみ, 社員は無限責任を負うのである。 な
お, 金・銀・正貨支払銀行の銀行券または宣誓が付された評価額に基づ
く財産による以外は払込済資本とはみなされない (本法§3但書)。
会社が負担し得る債務の総額は, 現実に払い込まれた資本を超えるこ
とはできず, その超過額が生じた場合には, それを生ぜしめた役員およ
び代理人はその超過額につき各自連帯して責任を負う (本法§5)。
★
ちなみに, ジョージア州では, 上記の年法の制定前に既に準則制
事業会社法が制定されていたという事実に注目しておきたい。 同州の最
()
()
初の準則制事業会社法が
年法と
年法とのいずれであるかについ
()
ては, 見解が分かれており, は前者であるとし, は後者
()
(
)
であると述べている。 また, 年に, 自由銀行法が制定されている。
上述の年法制定後の会社立法のうち, 年の準則制有料道路・
()
板舗装道路会社法に注目すべきであろう。
【2】 年から年までの間における会社設立規制の状況
同州の準則制事業会社法の歴史を辿る際には, 法人の創設権限の所在
中京法学&巻1・2号 ($年)
( ) ()
箇所に関する1つの争点に注目する必要があろう。
同州の最初の制定法集 (
) たる は, 年月日に制定されたが, その施行は
年1月1日まで延期された。 その間に年州憲法が施行されたが, 両
者の間に次のような矛盾が存在していた。
()
年のジョージア州憲法 Ⅱ
§
によれば, 銀行・保険・
鉄道・運河・板舗装道路・(内陸) 航行 (
)・鉱業・通運 (
)・木材・電信会社を除いて, 州議会 (
!
")
は, 私的カンパニー (
#
) に対して法人諸権能および
諸特権を付与する権限を有しない。 また, 法人創設の権限を裁判所が行
使する方法は法律によって規定される。 つまり, 州憲法上は, 上記の諸
会社以外の法人一般 (製造工業会社を含む) を創設する権限は, 州議会
にではなく州裁判所に帰属するものとされていた。 ところが, 年
§$は, 州議会がすべての法人創設権限を有する旨を定めてい
たから, 州制定法と州憲法とが矛盾していたわけである。
年に, 上記年 を改正する法律が制定され, 同改正法は
上位裁判所が法人を創設する (
#
) 方式を明確にした。
しかし, 州議会は年 §$を州憲法に適合させるための改正
をしなかった。 そして, 年の州憲法も年の州憲法も年州憲
法の規定をそのまま維持していた。
($)
結局, 年以後$$年州憲法および
$%年法による補正まで, 上述
のように州憲法と州法との調整が欠如したまま混乱が続いたのであり,
州議会が一般の会社 (製造工業会社を含む) を創設できるかどうかが争
われたのである。
$$年のジョージア州憲法 Ⅲ
§Ⅶ
ⅩⅧは, 「当州議会は,
銀行・保険・鉄道・運河・(内陸) 航行・鉱業・通運・電信のためのカ
ンパニーを除いて, 私的カンパニーに対して法人諸権能・諸特権を付与
する権限を有しない……しかし, 州議会は, かかる権限が裁判所により
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
()
行使される方法を法律で定める」 と規定している。 結局, ジョージア州
議会は, 上記8つの事業会社に限って法人創設権限を有するのみであり,
その他の法人の創設権限は裁判所が有するわけである。
このような州憲法の要請を受けて, 上記の年法§1は, 「当州の
上位裁判所は, 銀行・保険・鉄道・運河・板舗装道路・(内陸) 航行・
通運・木材・電信会社 (
) を除いて, 法人を創設する (
) 権限を有する」 と定め, また, 同法§2は, 「上
位裁判所が法人を創設するための方式は, 年 §およびそ
の改正諸法に定める」 と規定した。 そして, 年 §(1)
によれば, 上位裁判所による法人創設の方式は次のとおりである。
法人の創設 (
) を欲する者は, 彼らが事業を行なおうと
するカウンティの上位裁判所書記の事務所に, 定款 (
) を提出する。 定款記載事項は目的・法人名・現実に払い込ま
れた資本の額・営業の場所などであり, 当該定款は上位裁判所書記によ
り記録される。 また, その定款は, それが認許された (
) 旨を
当該裁判所により宣言される前に, 営業の場所に最も近い場所の一般新
聞に, 週1回づつ, 1カ月間, 公表される。
さらに, 年 §(2) によれば, 裁判所は, 当該定款を
聴聞のうえ, その定款が本 の趣旨と意図の適正な範囲内であるこ
とにつき十分だと判断した場合には, 当該定款を認許し, 当該定款提出
者およびその承継人が年を越えない期間法人化される旨を宣言する命
令を発する。 以上のように一定の法人の創設権限が裁判所に委譲されて
いる点は, ジョージア州の特色であり, 裁判所により創設される種類の
法人の中に, 製造工業会社が含まれている点に注目すべきであろう。
★
()
年に, 準則制鉄道会社法が制定され, 同法は次の【3】の制定法
集 (
) に引き継がれている。
中京法学 巻1・2号 (##年)
( ) 【3】 本 は, 前述の【2】で紹介した混乱が年憲法および年
法により決着した後に初めて制定された制定法集であるが, 本 で
は上述の年法を踏まえた整理が十分になされていないといわれてい
る。 本 の法人 (会社) に関する諸規定の構成は以下のとおりであ
り, 裁判所による法人創設の手続 (次の【4】の年 に相当する手続) が欠如している。 なお, 本 の 「会社」 に
関する諸規定は, 次の【4】の年 により受け継がれているの
で, その内容の紹介は次の【4】へ譲ることにして, 以下では本 の 「会社」 に関する諸規定の編成を示すだけにとどめたい。
Ⅰ
! [§§"#$
]
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#]
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)
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"()]
★
上記年 の編纂後における会社立法の動向については, 以下
の諸点に注目しておくことにしたい。
年に州憲法が改正され, 同改正憲法は, 州議会が私的カンパニー
に対して法人諸権能および諸特権を付与する権限を有せず, 「銀行・保
険・鉄道・運河・(内陸) 航行・通運および電信会社 (
)
) に
対する法人諸権能および諸特権 (
&
) は,
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
法律の規定により州務長官が付与し認許する (
)」
()
()
と規定した。 その後, 上記憲法改正を踏まえて, 準則制銀行会社法・準
()
()
則制鉄道会社法・準則制保険会社法が制定されている。
【4】 本 は, 前述の【2】で述べた法人創設権限の所在に関する混乱
が収まった後に,【3】の不十分な制定法集を経て, 「会社」 に関する諸
規定が整備されたものであり, 本 の 「会社」 に関する諸規定の編
成は以下のとおりである。
[§§
]
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"
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中京法学巻1・2号 (!!年)
( ) [§§
]
[§§
]
[§§
!]
ジョージア州の事業会社法は, 上記 "
の諸規定の存在に
よって, 他の諸州の事業会社法とはかなり異なる様相を帯びているとい
えよう。 そこで, 既述の説明と重複するところもあるが, 同州における
法人創設権限の所在に関する諸規定を整理しておくことにしたい。
本 §は, 法人を創設する権限を州議会と裁判所に与えてい
る。 しかし, 年の州憲法改正により, 州議会は法人創設権限を授権
されていない点に注意しなければならない (前述の【3】★参照)。 本
"
"
∼
はそこに掲げられた各種類の会社創設権限
を州務長官に与えているのに対し, それ以外の法人創設権限は裁判所に
与えられている。 裁判所が法人創設権限を有する場合は, 本 "
"
により規定されており, このような種類の法人の中に製造工
業会社が含まれている点に注目すべきであろう。 以下, 裁判所が会社の
創設権限を有する場合と州務長官が会社の創設権限を有する場合とに分
けて紹介することにしたい。
① 裁判所が会社の創設権限を有する場合
本 §は, 「当
州の上位裁判所 (
) の裁判官は, 法人を創設する
(
) 目的のために, 当該裁判所の特
別法廷の開催をその自由裁量のもとに授権される」 と定めている。 そし
て, 本 §!
は, 「当州の上位裁判所は, 銀行・保険・鉄道・運河・
(内陸) 航行・通運および電信会社を除いて, 以下の諸規定を遵守する
ことにより法人を創設する権限を有する」 と規定し, 以下6つのパラグ
ラフ ( とも呼ばれる) を設けて, 法人の設立手続きを定め
ている。 ここでは最初の3つのパラグラフに言及するにとどめる。
法人設立 (
) を欲する者は, 彼らがその事業を
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
行なうことを欲するカウンティの上位裁判所書記の事務所に定款 (
) を提出する。 そして, その定款には, その団体
の目的および遂行する予定の特定の事業・会社の名称・資本の額などが
記載される。 また, 法人創設を認許した旨を宣言する命令が裁判所から
出される前に, その事業が行なわれる地点に最も近い一般新聞 (
) に, 週1回づつ, 4週間に亙って, 当該定款は公表される。
法人化の命令が裁判所により認許された後に, 当該定款および命令は,
として知られている帳簿
にともに記録される。 そして, 当該定款および命令は, 当該書記により
適切に索引が付されて保管される。
かかる定款の聴聞 (
) に基づき, 当該申請が適法に
本 の趣旨・範囲内にあることにつき裁判所が十分だと判断した場
合には, 裁判所は当該申請が認許された旨および当該申請人・その承継
人が年を超えない期間法人化される旨を宣言する命令を発する。 ……
本セクション (§) に基づき創設された会社は, その資
本のパーセントが払い込まれるまで, 法人の創設 (
) に
より付与された諸特権の行使を始めてはならない。
引き続いて, 同パラグラフは株主の責任につき定めている。 同規定に
よれば, 当該会社が破綻した場合には, その株主は, 自ら引き受けた株
式の額について, 個人の資格において, 当該会社のいかなる債権者に対
しても義務を負う。 ただし, 当該引受が完全に払い込まれた場合または
当該株主が自らの未払込額に等しい額まで当該会社の債務をその個人的
財産で払い込んだ場合は, この限りではない。 結局, 株主は, 自ら引き
受けた株式の未払込額に限って, 会社の債務につき責任 (直接責任) を
負うわけである。
② 州務長官が会社の創設権限を有する場合
州務長官が法人創設
権限を有する場合は本 に列挙されているが, 以
下では, 銀行会社, 保険会社, 鉄道会社に絞って紹介するこ
中京法学巻1・2号 (年)
( ) とにしたい。
§以下の手続きに従う。 銀行業を
銀行会社の設立は, 本 遂行する目的のため, 3人以上の者は, 各自署名した定款 (
) を州務長官の事務所に提出することによって, 法人
を形成することができる。 定款記載事項は, 法人を設立しようとする者
の住所・名前, 事業の主たる場所, 資本の額, 資本が分けられる株式の
数, 会社の目的・性質, 記載するのが望ましいその他のあらゆる事項で
ある。 また, かかる定款には, 引受人の宣誓供述書 ―― 引き受けられた
資本のうち1万5千ドルが引受人により現実に払い込まれかつ実際に保
有されていることについて, 事業を遂行する予定のカウンティの検認裁
判所裁判官 (
) が真実性の宣言をした ―― が添付されな
ければならない (本 §
)。
定款が提出されたとき, 州務長官は, 申請に基づき, かかる引受人に
対し当該定款および宣誓供述書の謄本を認証し交付する, また, その謄
本は, 事業の遂行を予定しているカウンティの公式の機関 (
) に, 1週間に1度づつ, 4週間, 引受人により公表される (本
§)。
かかる定款および宣誓供述書が公表されたとき, 引受人はかかる公表
の事実を認証するよう検認裁判所裁判官に申請することができる。 また,
引受人がその [検認裁判所裁判官の] 証明書 (
) を州務
長官の事務所に提出したとき, 州務長官は, 州の公印を押した設立証明
書 ( ) ―― 当該引受人およびその承継
人が法人である旨を認証した ―― を引受人等に交付する。 そして, 州務
長官は当該定款・宣誓供述書・検認裁判所裁判官の証明書および設立証
明書を記録する (本 §)。
銀行会社の株主の責任については, 本 §が定めており, 各
株主は, 各自の株式の未払込額を限度として, 当該銀行会社の全債務に
つき個人的に責任を負う。 さらに, 株主は, 当該銀行の預金者に対して,
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
その会社に預託された総預金額につき, 各自保有する株式の額面額に等
しい額を限度として, 平等に・比例的・個人的に責任を負う。 なお, こ
のように銀行の預金者に対する株主の責任を特に認める旨の規定は, こ
の時期においては極めて少数であろう。
保険会社に対するすべての権能および特権は, 州務長官により付
与・認許される (本 §)。 また, 保険会社の設立手続きは次の
とおりである。
5人以上の者は1つのカンパニーを形成することができ, 設立証明書
を受領する前に, 州務長官宛に定款 (
) を提出する。 定款記
載事項が列挙され, 当該定款には, 当該会社を設立しようとする少なく
とも2人の者により作成された宣誓供述書 ―― 引受の名前がそこに掲げ
られた者の真正の署名であり, また, 定款に述べられた事実が真実であ
る旨の ―― が添付される。 かかる定款が州務長官の事務所に提出され,
州務長官はその提出の日付をそれに裏書し, 帳簿にその定款を記録する
(本 §)。
当該定款が州務長官の事務所に提出されたとき, 同長官は, 州の公印
に基づき一定の様式の設立証明書を当該会社に対して発行する。 また,
設立証明書の様式が掲げられている (本 §)。 爾後, 当該定款
に署名した者および当該会社の株主となった者は, 当該設立証明書に指
定された名により法人となる…… (本 §)。
資本総額が引き受けられたとき, 当該定款に名前を掲げられた者は,
組織化のために, 株主総会を招集することを授権される…… (本 §)。 つまり, 会社が法人格を取得した後に, 最初の株主総会を開
催することが組織化の第一歩だといえよう。 そして, 資本のうち少なく
とも万ドルが払い込まれれるまでは, 会社は事業を開始することがで
きない (本 §)。
以上のように, 保険会社の設立は, (法人化)
と (組織化) の手続を経て, 事業が開始さ
中京法学巻1・2号 (年)
( ) れるわけである。
保険会社の株主の責任については, 本 §が規定している。
それによれば, 本 [
] に基づき設立された会社の株
主は, 資本 (
) に対する引受の未払込額 (
) を限度として個人的に責任を負わなければならない。
鉄道会社に対するすべての権能・特権は, 州務長官により付与さ
れる (本 §)。 また, 鉄道会社を設立しようとする人以上の
者は, 1つのカンパニーを形成することができ, 設立証明書を受領する
前に, 上述した保険会社の場合とほぼ同じ宣誓供述書を添付して, 定款
(
) を州務長官の事務所に提出しなければならな
い (本 §)。
当該定款が州務長官の事務所に記録されたとき, 同長官は一定の様式
による証明書を当該会社に発行し, その後ただちに当該定款に署名した
者およびかかる会社の株主となったすべての者は法人となる (本 §)。
州務長官は, 上記の設立証明書を発行する前に, 本 [
] のすべての要件が実質的に遵守されたことを十分に判断しなけ
ればならない。 なお, 会社の資本は1株ドルの株式に分けられる
(本 §
)。
鉄道会社の株主の責任については, 本 §が定めている。 同
規定によれば, 株主の全財産は, 当該会社の資本に対する株主の引受の
未払込額を除いて, 当該会社の債務または責任から免責される。
最後に, 本 §は, 「本 [6] の諸規定に基づき法人
化されたいずれの鉄道会社も, 当州または他の州の法律に基づき法人化
された他の鉄道会社に対し, その株式・財産・フランチャイズを売却し,
リースし, 譲渡もしくは移転し, またはかかる他の鉄道会社と合併する
(
) 権限を有する, そして, 当州の内外におけるかかる鉄道
は, 合意された諸条件に基づき, 本法に基づき法人化された会社の鉄道
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
と結合しまたは連続的な路線を形成する。 また, 逆に, 本
[6]
の諸規定に基づき法人化された会社は, 当州または他の州の法律に基づ
き法人化された鉄道会社の株式・財産・フランチャイズを買い入れ, リー
スさせ, [吸収] 合併する (
) ことができる, そして, 当州の内外におけるかかる会社の鉄道
は, 合意された諸条件に基づき, 本法に基づき法人化された会社の鉄道
と結合し, または連続的な路線もしくはシステムを形成する。 ……」 と
定めている。 なお, 本規定は鉄道会社の合併を認めているが, この規定
以外に, 鉄道会社の合併に関する具体的な手続や株式買取請求に関する
規定は設けられていない。
ルイジアナ州事業会社法
【1】 年法:
(表=⑦)
本法は, 全文
カ条からなる。 6人以上の者が本法の諸規定を遵守し,
以下の事業を目的として, 法人を設立することは適法である。 その事業
目的とは, 金銀銅鉄の鉱山・その他の鉱山の開発・創業, 鉄道・運河・
橋・フェリー・その他の内陸開発 (
) に関する
事業, 火災・海上 (河川)・生命保険事業, 木綿・羊毛・リンネル・絹・
麻布・索類 (
) の製造業の遂行, 鉄・銅の鋳造所の建設・運営,
ドックの建設・維持, 水道・ガス事業, 鉄・銅・鉛その他の金属・陶器・
エンジン・綿繰機・機械・紙・火薬の製造, 製糖会社・蒸気船会社の創
設, 電信・化学会社の創設などである。
ただし, いかなる法人も商業・農業またはコミッション業・仲立
(
)・株式ジョビング (
)・ファクター業 (
)・両替業を営むことはできない (本法§1)。 本
中京法学巻1・2号 (年)
( ) 法は保険会社および鉄道会社の設立に関する準則主義を採用する制定法
としては全米で最も古いものの1つである。 ちなみに, 本法に基づいて,
相互保険会社を設立することもできる (本法§)。
本法に基づき会社を設立しようとする6人以上の者は, その事業会社
が設置されるパリッシュ (
) [他州のカウンティに相当する] の
公証人により, 定款 ( ) の認証を受け, その
認証謄本を地方裁判所裁判官 (
) に提出し, 同裁判官の
吟味のため申立書 (
) を添付する。 また, その申立書の謄本
が地区法務官 (
) に送付され, 定款が吟味されて,
定款の適法性が認定された場合には, 上記裁判官はその定款を確認する
判決を下し, 申立人等は本法により法人に付与されるすべての権利を享
受できる。 定款が法律に違反する場合にはその法務官の反対意見書が提
出され, それに基づき裁判所が審理・決定する。 さらに, 当該定款が違
法の場合におけるその変更手続が定められている (本法§)。
以上の設立手続は, 他の諸州の手続とかなりの違いがあり, 厳密にい
えば, 上記の手続が設立準則主義を定めるものといえるかについても疑
問があるが, 本稿では, 本法を一応準則制事業会社法として扱うことに
したい。
本法が要求する定款 (
) の記
載事項として, 商号・目的・当該会社の始期・存続期間・その他 (全部
で9項目) が掲げられ, また, 定款は, 当該会社がその事業を開始する
前に新聞に公表される (§3)。 さらに, 株主は, その有する株式に対
する未払い額を超えて, 会社の債務 (
) につ
き責任を負わない (本法§9)。
★
年のルイジアナ州憲法は, 個別法律による法人の設立を禁止し,
また, 銀行会社の設立は一般法律による場合も含めてすべて禁止された
()
(同憲法
Ⅵ
)。 個別法律による法人設立は, 原則的
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
禁止ではなく, 絶対的禁止であるといわれている。 したがって, 爾後,
法人は一般法律に基づいてのみ設立できたのであり, いわゆる会社設立
の2元制度が行なわれる余地は存在しなかったといえよう。 全米で最初
に上記のような州憲法上の制度を採用したのはルイジアナ州である。
【2】 年法:
!
"#$%
&
本法は全文カ条から成る。 本法の諸規定を遵守して, 6人以上の者
が次の諸目的のために法人を設立・構成する (
) ことは適法である。 設立できる事業目
的は, 前述の年法とほぼ同じであるが, 本法では, 銀行業が明示的
に禁止され, また, 保険会社への明示的な言及はなされていない (本法
§1)。
会社の存続期間は年以内である (本法§2)。 また, 前述の年
法の設立手続が変更されている。 まず, 定款 (
) の記載事項が5項目に簡略化され (本法§3), 当該定款およ
び会社を組織化する目的でなされた原始引受は, 譲渡抵当の記録官
(
) の事務所に記録される (本法§4)。 そ
して, 当該定款は, そのドミサイルとして選ばれた場所の新聞に, 少な
くとも週に1回, 日間, 公表されなければならない (本法§4)。
本法の設立手続きは以上に尽きており, 前述【1】の
年法におけ
る裁判官や地区法務官が設立に関与する手続は廃止されている。 また,
法人の成立時点も事業を開始できる時期も明示的には言及されていない。
しかし, 本法の設立手続は, ルイジアナ州におけるその後の手続きの出
発点を形成しており, 次に述べる【3】の制定法および【4】以下の諸
制定法集も本法とほぼ同じ設立手続を採用しているといえよう。
以上のほか, 次の2つの規定に注目しておきたい。 1つは, 株主の責
中京法学巻1・2号 (年)
( ) 任に関する規定でり, 株主は, 会社の契約または過失につき, その有す
る株式に対して支払うべき額の未払込額を超える責任を負わない (本法
§8)。 もう1つは, 会社の根本的変更に係る規定であり, 会社は, 総
会に出席した [株主の有する] 株式の4分の3の賛成によって, 定款変
更・解散をすることができる (本法§5)。
★
年のルイジアナ州憲法による銀行会社の禁止制度は, 年の州
憲法の改正により改められ, 銀行会社は個別法律または一般法律のいず
れによっても設立することが許容された (
年ルイジアナ州憲法 ()
()
Ⅵ
) 。 その後, 年に自由銀行法 が制定されており, 同法
では, 銀行会社の株主は, 会社における自らの株式の総額を超えて, 会
社の債務・契約につき責任を負わない (年自由銀行法§8)。
【3】 年法:
!"#$
本法は, 全文カ条から成る。 本法に基づき設立できる事業目的は,
前述の【1】の年法とほぼ同じ内容であるといえるが, 本法には
「あらゆる種類の製造工業 (
)」 が掲げられ
ている点に注目しておきたい (本法§1)。
設立の方法については, 前述の【2】の年法§§・・とほぼ
同一規定が本法にも定められている (本法§§・・)。 株主の責任に
ついても, 前述の【2】の年法§8と同一の規定が設けられており
(本法§8), かつ, 本法§8と同一の規定が
年の §
に至るまで保持されている。
年法は, 全般的に, 次の【4】の年の !
に引き継がれたうえ, 後述の【5】およびその後の制定法集§以下
の諸規定に受け継がれたといえるであろう。
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
★
()
ちなみに, 年に, ① 準則制非営利法人法および② 法人に関する
()
一般法律が制定されている。 両制定法は, 本稿の直接の対象ではないが,
次の【4】年の に収録されており, また,
後述の【5】およびその後の各制定法集§以下の諸規定および§
以下の諸規定は, 上記の両制定法をそのまま収録したものである。
()
年に, 自由銀行法が制定されたが, 同法は前述の年の自由銀
行法 (【2】★参照) とほぼ同じであると説かれており, 次の【4】の
制定法集における に関する諸規定は年の自由銀行法をほぼ
そのまま収録したものである。
【4】 本制定法集の 「会社」 に関する諸規定の編成は以下のとおりであるが,
制定法集全体を通したセクション番号が付されていない点で,【5】以
下の諸制定法集とは異なっている。
[§§
]
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%
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"
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[§§
]
!
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'
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#
(
(
"
[§§
]
本制定法集の銀行に関する諸規定 (上記 [§§
]) は, 既
述のとおり, 年の自由銀行法と同じであり, また, 次の【5】の制
定法集は, これらの諸規定を保持している。 また, 上記の§§
は, 前述の【3】の年法を収録したものであり, これらの諸
規定は次の【5】の制定法集に受け継がれている。 そこで, 本制定法集
の内容については, 次の【5】で紹介することにしたい。 なお, 上記の
§§
はいわゆる非営利法人法であり, 本稿の対象外で
中京法学'巻1・2号 (年)
( ) ある。
【5】 本制定法集では, その全体を通してセクション番号が付され, これと
同じセクション番号が爾後の制定法集においても保持されており, 年以後の世紀のルイジアナ州における制定法集の編纂の歴史を検討す
る際には, 本制定法集は重要な地位を占めているといえよう。 本制定法
集の 「会社」 に関する諸規定の編成は, 以下のとおりである。
[§§
]
!
!
"
#!
!
[§§$
$]
!
!
% [§§
]
&
!
!
[§§
'
]
本制定法集の銀行会社に関する諸規定 (上記§§
) は, 年
の自由銀行法をそのまま収録したものであり, その設立手続は以下のと
おりである。
銀行業の目的のために結合する5人以上の者は, 法人を構成すること
ができる (本制定法集§)。 これらの5人以上の者は, 公正証書 (
) により作成されかつ譲渡抵当の記録官の事務所に記録さ
れた定款 (
!
!
) に基づき組織化される。
また, 当該定款の認証謄本が公会計の会計検査官 (
#!("
)
(
) の事務所に預託され, そして, 当該定款の謄本は,
当州の一般新聞 (
#!
*
) に, 週1回づつ, 4週間, 公表
される (本制定法集§)。
銀行会社の株主は, 会社において有するその株式の総額を限度として,
当該会社の債務につき責任を負う (本制定法集§)。
本制定法集§$は, 前述の【3】の年法をそっくり受け継いで
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
おり,【4】の年の制定法集 §7とも同
一である。 繰り返しになるが, 本制定法集が定める事業会社の設立手続
きを以下に紹介することにしたい。
6人以上の者が以下の諸規定を遵守したうえ次の諸目的のため会社を
形成する (
) こ
とは適法である。 その諸目的には, 次のような様々な事業が含まれる。
すなわち, 鉄道・運河・板舗装道路・橋・フェリー・およびその他の内
陸開発事業の建設・運営・維持, 火災・海上・生命保険事業, 木綿・羊
毛・リンネル・絹・麻布・索類 (
) の製造, ガスまたは水道事
業, 鉄・銅の鋳造所の建設・運営, ドックの建設・維持, 鉄・銅・鉛・
または他の金属・陶器・エンジン・綿繰機・機械・紙・火薬・農機具の
製造, 製糖会社・蒸気船会社の創設, 電信・化学会社およびあらゆる種
類の製造工業の創設, 鉱山の開発・経営, ドック・蒸気船の建設・維持,
当州の農業資源の開発, 移民・公共的利益の促進事業などである。
定款記載事項が列挙され (本制定法集§), 定款 (
) および原始引受は, 譲渡抵当の記録官の事務所に記録
され, かつ, 当該会社のドミサイルが置かれた場所の新聞に, 日間,
週に1回, 公告される (本制定法集§)。 なお, 会社の存続期間は,
年以内かつ定款に記載される期間とされているが (本制定法集§),
()
年の改正法§2によって, !!年以内かつ定款に記載される期間に延
長された。
ルイジアナ州においては, 銀行会社以外のすべての事業会社は, 本制
定法集§以下の諸規定に基づき設立されるのであり, 保険会社や鉄
道会社の設立も製造工業会社の設立と同じ規制に服するわけである。 こ
()
のような方式は, !
年の準則制保険会社法の制定まで保持されている。
銀行会社以外の会社における株主の責任について, 本制定法集§!
は, 「株主は, かかる会社の契約または過失 (
) について, その
中京法学巻1・2号 (##年)
( ) 保有する株式に対する未払込の残額を超えて責任を負わない」 と定めて
いる。
本制定法集の保険会社に関する諸規定 (本制定法集§§
)
は, 設立準則を定めるものではなく, 本制定法集§に基づき設立さ
れた保険会社に共通して適用される一般法律 ( ) である。 なお, ルイジアナ州は, 保険会社の設立に関する準則主
義を早期に確立した州であることは既述のとおりである (前述【1】の
年法§1参照)。
ちなみに, 本制定法集§§
(
) は本稿
の直接の対象ではないが, これらの諸規定は準則制非営利法人法であり,
また, 法人一般については, !
"
!
"
#
$
にも注目する必要があろう。
★
その後, !
%%
$
$
& !
%%
'などが編纂されている。 ただ, これらの制定
法集は上述の
#年の制定法集の編成とほぼ同じであり, それぞれの内
容を紹介することは省くことにする。 以下では, 爾後'世紀末までに制
定された5つの制定法に注目するにとどめたい。
(#)
まず, 年に, ① 製造工業会社の合併を授権する制定法が成立し
ている。 同法§1は, 「一般法律もしくは個別法律に基づき現在存続中
のいかなる2つの事業・製造工業会社 (
(
(
) も, その目的および事業が一般に同じ性
質の場合には, かかる諸会社を合併し ((
(
), 1つの新設会社 (
() を設立する
ことができる……。 かかる合併 (
) は, 取締役会の下で
書面契約により, かつ, 各会社の資本の少なくとも5分の3の所有者の
賛成を得て行なわれる, そして, かかる合併の事実の証明書は, 新設会
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
社の商号を付して, 州務長官の事務所に提出・記録される。 ただし, か
かる合併は, いずれの [合併当事] 会社の債権者の権利に影響すること
もなく, その権利を侵害することもない。 ……」 と定めている。
また, ② 年のルイジアナ州憲法 は, 「いかなる法人もそ
の定款において明示的に授権された事業またはそれに付随する事業のほ
(
)
かに従事することはできない……」 と定めている。 なお, この規定がい
かなる法的効果を生じるかについては, 筆者はこれを明らかにすること
()
ができない。
()
また, 年に, ③ 準則制製造工業会社法が制定されている。 前述
【5】の年の制定法集は, あらゆる種類の製造工業を目的として,
6人以上の者が会社を設立することを許容していたが, 本法は, 「3人
以上の者は, 会社を一般的に律する当州の法律の諸規定を遵守して, 機
械・鉱業・製造工業を遂行する目的で会社を設立 (
) ことは適法である」 と定めてい
る。 なお, 従前の設立方式が廃止されたわけではないであろう。
()
さらに, 年に, ④ 株主の責任に関する制定法が成立している。
同法§1は 「3人以上の者が, 会社 (
) 一般を律する当州
の法律の諸規定を遵守して, あらゆる適法な事業 ( ) を遂行するため ―― 別段の定めある場合を除く,
また, 当州の憲法および法律に抵触しないことを要する ―― 会社を設立
することは, 適法である」 と定めている。
また, 同法§2は 「本法の諸規定に基づき形成された各会社の商号の
末尾は, !
"という語でなければならない。 また, 各会社は, そ
の商号をその会社の事業が遂行される各事務所または場所の外側で目立
つ場所に, 読み易い文字によりペンキで書いて貼り付けなければならな
い。 さらに, 各会社は, すべての通知・公告およびその会社の正式な刊
行物 (
) において, また, 会社の事業遂行の過程で使用さ
れる手形・小切手・為替証書 (
)・船荷証券・送り
中京法学巻1・2号 (年)
( ) 状・受領証およびその他の書面において, 分かり易い文字でそのフル・
ネイムに言及しなければならない。 ただし, 会社商号の使用の際に,
という語を省略した場合は, かかる省略に係わったすべての
者またはその省略を知りつつ黙認した者は, そのことから生じる負債
(
)・損害または債務 (
) につき責任を負う」 と
定めている。
さらに, 同法§3は, 「かかる会社の株主は, 当該会社の契約または
過失について, その有する株式に基づきその会社に支払うべき未払いの
残額を超えて責任を負わない……」 と定めている。
結局, 株主は, 会社の債務について, その有する株式の未払込額を限
度とする責任を負うことになろう。 ただし, 会社の商号の末尾に という語が省かれた場合は, そのことについて責任を負わなけれ
ばならないこともあるのであろう。 なお, 本法§2と類似の規定が
()
年のニュー・ヨーク州事業会社法 (§) に設けられている。
()
最後に, 年に, ⑤ 保険会社に関する一般法律が制定されたこと
を指摘しておきたい。 保険会社の設立に関する準則は, §により定められており, 同規定により設立された保険会社が
保険証券を発行するために必要な要件などは上記の年保険会社法に
より定められている。
イリノイ州事業会社法
【1】 年法
(表=⑧)
本法は全文カ条から成る。 いかなる製造工業・農業・鉱業または化
学工業でも, それを目的として1つのカンパニーを設立しようとする3
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
人以上の者は, 捺印証書の確認をとる権限のある公務員の面前において,
定款 ( ) の作成・署名・確認を行ない, 当該
会社の事業が遂行されるカウンティの書記の事務所にその定款を提出し,
その副本を州務長官の事務所に提出することができる (本法§1)。 こ
のように定款が提出されたとき, その定款の署名・確認を行なった者お
よびその承継人は法人となる (本法§2)。
本法は, 全体として年のニュー・ヨーク州製造工業会社法をかな
り忠実に模倣したものだといえる。 例えば, 本法§は, 株主の責任に
ついて, 「本法に基づき設立された各会社のすべての株主は, かかる会
社が決定・限定した資本の総額が払い込まれるまでは, 各自が保有する
株式の額を限度として, 会社債権者に対して, 個別的・個人的に責任を
負う」 と定めており, 同規定は上記ニュー・ヨーク州法§と全く同一
()
である。
★
年のイリノイ州憲法によれば, 銀行会社を除き, 法人は一般法律
により設立することができる。 しかし, 法人は, 原則として個別法律に
よっては設立することができない (同憲法 Ⅹ§1)。 また, 銀行
会社を設立するための法律は, 法律通過後最初の通常選挙が行なわれる
際に, 州民投票の過半数による批准を得なければ効力を生じない (同憲
()
法 Ⅹ§5)。
上述の
年法制定後におけるイリノイ州の会社立法の動向としては,
次の諸点に注目することにしたい。
()
()
年に, 準則制板舗装道路会社法および準則制鉄道会社法が制定さ
れている。 後者は当州の最初の準則制鉄道会社法であり, ニュー・ヨー
()
ク州の年鉄道会社法の影響を強く受けている。 その後, 年の自
()
()
由銀行法, 年の準則制鉱業会社法, 年の準則制 (内陸) 水運会
()
社法などが制定された。
中京法学巻1・2号 (年)
( ) 【2】 年法:
本法は全文カ条から成る。 本法と前述の【1】年法の会社設立
手続きは類似しているが, 本法では若干の変更がなされている。 本法は,
定款を会社の事業が遂行されるカウンティの巡回裁判所書記の事務所に
提出し, また, 定款の副本を州務長官の事務所に提出すべき旨を定めて
いる (本法§§・)。 そして, 定款およびその副本が提出されたとき,
当該巡回裁判所書記は定款に署名した者に対し設立許可書 (
) を発行し, その許可書の受領によりその者およびその
承継人は法人となる (本法§3)。 このように裁判所の書記が発行した
許可書 ( ) に基づき法人が成立する旨の規定は全米でも少数
ではなかろうか。
会社の資本の額は1万ドル以上万ドル以下でなければならず, 会社
の存続期間は年を超えることはできない (本法§2)。 なお, 定款記
載事項には, 資本 (
) の額・その資本を構成する株
式の数が挙げられている (本法§1)。
金銭による以外は資本の払込とみなされない。 ただし, 当該会社の事
業を遂行するために必要な不動産および人的財産は, 2人の利害関係な
き者が書面上の評価により決定する金銭評価額においてのみ, 払込とし
て受領され得る (本法§)。
会社の事業 (
) は, 3人以上7人以下の取締役 (
)に
より運営される (本法§4)。 取締役 (
) は, 業務規則 (
)
を作成し, 会社の役員・代理人・使用人を任命することができる (本法
§5)。 また, 取締役会 (
) はその総数の3
分の2の投票によりいかなる取締役でも取締役会から排除する (解任)
する権限を有する (本法§4)。
株主の責任に関する規定 (本法§9) は, 前述【1】年法§と
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
同一である。
★
爾後の立法動向のうち, 次の諸法に注目しておきたい。
()
()
年に, 準則制火災・海上保険会社法および準則制生命保険会社法
が制定されており, これらの制定法はイリノイ州の最初の準則制保険会
社法である。
年に州憲法が改正され, すべての法人 (一部の非営利法人を除く)
は, 一般法律によってのみ設立できる旨が規定された (年イリノイ
州憲法 ⅩⅠ
§1)。 また, 銀行会社を創設するための法律は, そ
の通過後最初の総選挙において州民投票に付され, その法律に対する賛
否の投票において投票の過半数を得なければ効力を生じない (同憲法
(
)
ⅩⅠ
§5)。 前述の年自由銀行法 (【1】★参照) は, ()
年3月日に廃止され , その後年まで, は制定されなかった。
()
年に, 準則制鉄道会社法が制定されており, 前述の年準則制
()
鉄道会社法 (【1】★参照) は年月に廃止された。
【3】 年法: 本法はイリノイ州事業会社法史において重要な地位を占めており, 本
法が爾後の同州事業会社法の出発点を形成したのだといえよう。 本法の
修正を重ねることによって, 同州事業会社法の近代化が達成されたので
あり, 爾後, 年の
( !"
) の制定まで, 同州は年法を実質的には変更しなかったと説
()
かれている。
本法は全文カ条から成る。 本法§は, いわば非営利法人 (
#
"
"
"
"$ "
"[%
&
' %
]) の
()
設立手続を定めており, 本法は金銭的利益 (
&
' %
) を私法
中京法学巻1・2号 ($$年)
( ) 人の分類基準としている。 また, 本法§§
は宗教法人に関する諸
()
規定であり, 本法は準則制法人法とでも呼ぶべきものであって, 本法は
として一般によく知られていたといわれてい
()
る。 なお, 金銭的利益を基準として法人を分類する方式は, (Ⅲ【2】参照) の編纂以降, アイオワ州が採用してき
たものと同じであろう。
本法によれば, 銀行・保険・鉄道・不動産仲立業・金銭貸付業を除い
て, 適法な他のいかなる目的のためにも法人を設立することができる
(本法§1)。 なお, 本法の対象外の会社 (銀行・保険・鉄道会社など)
()
は, 本法とは別の個別の一般法律により設立準則主義が採用されている。
本法の設立手続は, 前述の【1】の年法や【2】の年法の手
続きとはかなり異なっており, その手続きの概要は以下のとおりである。
3人以上7人以下の幾人の者でも, 定款 (
) の作成・確
認を行なうことができ, その定款は, 州務長官の事務所に提出される。
州務長官は, その提出者に対して, コミッショナー (
)
として引受の帳簿を開設するための許可書 ( !
) をただちに発
行する (本法§2)。 資本総額が引き受けられた後, かかるコミッショ
ナーは, できるだけすみやかに取締役選任のための引受人総会を招集す
る (本法§3)。
かかるコミッショナーは, その手続に関する完全な報告書を作成して,
それを州務長官の事務所に提出する。 州務長官は, ただちに当該会社の
組織化の完了の証明書 (
!
"
#
)
を発行する。 また, 州務長官は, 提出された書類と組織化に関する書類
の謄本を自ら認証し, その謄本は, 会社の主たる事務所が設置されるカ
ウンティの捺印証書記録官の事務所に記録される。 かかる謄本が記録さ
れた時, 当該会社は完全に組織化されたものとみなされ, 事業に着手す
ることができる (本法§4)。
上述の§3と§4とを整理すると, 株式総額が引き受けられるまでは,
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
いかなる会社 (
) も組織化をすることができず, また, 会
(
)
社が事業を開始する前に, 組織化の完了の証明書が要求されるのである。
本法の組織化とは, 事業取引のための団体を運営する取締役または役員
を選任することであり, また, イリノイ州の会社はカウンティの捺印証
書記録官の事務所に一定の書類を記録した時からその存在を開始すると
(
)
説かれている。 結局, 組織化が完了した後に, 法人が成立し, そして,
事業を開始できることになろう。
会社の諸権能は取締役会 (
) に
より行使され, その権限は広範である。 その権限には, 会社の統治
(
) のための業務規則 (
) の作成, 社長・秘書役・
会計役以外にいかなる役員 (
) が必要かを決定すること, 役員
の解任などが含まれる (本法§6)。
株主の責任について, 本法§8は, 「未払込の部分が残存しているす
べての株式の譲渡または移転は, 主たる事務所が所在するカウンティの
捺印証書記録官の事務所に記録される。 また, 各株主は, 各自が保有す
る株式に対する未払込の額を限度として, 当該会社の債務について, 責
任を負い, その取立ては以下の方法による……」 と定めている。
これに対し, 前述【2】の
年法§9および前述の【1】の
年
法§
は, 「会社の資本総額が払い込まれ……その旨の証明書が作成・
提出された時より前におけるその会社の債務・契約について, すべての
株主は, それぞれが保有する株式の額に等しい額を限度として, その会
社の債権者に対して, 個別的・個人的に責任を負う」 と定めている。
以上のような
年法や
年法の規定によれば, ある株主がその保
有する株式全部の払込を完了していても, 他の株主がその保有する株式
全部の払込を完了していなければ (つまり会社の資本総額の払込が完了
していなければ), 各株主はその保有する株式の額を限度として個人的
責任を負うことになる。 結局, ある株主が他の株主の不履行責任を負わ
される結果となろう。 これに対し, 本法§8によれば, 各株主は, それ
中京法学巻1・2号 (年)
( ) ぞれが保有する株式全部の払込を完了すればそれ以上の責任を負うこと
()
はないわけである。
なお, 本法§8の責任は, 未払込の額を限度として, 会社の債権者に
対する直接責任を意味するから, 厳密にいえば, 日本の商法学の通説が
説く 「株主有限責任」 とは一致しないであろう。 株主有限責任の場合に
は, 株主は会社の債権者に対して直接責任を負わないからである。
本法§は, 「会社 (
) の債務 (
) がその資本の額を超えた場合には, それに賛成したかかる会社の
取締役および役員は, かかる会社の債権者に対して, かかる超過額につ
き人的・個人的 (
) に責任を負う」 と定
めている。 また, 本法§は, 「当該会社が支払い不能の場合, または
その配当の支払が当該会社を支払不能に陥らせるかもしくはその資本の
額を減少させた場合に, 会社 ( ) の取締役・役
員または代理人が利益配当を宣言し支払うときは, そのことに同意した
すべての取締役・役員または代理人は, かかる会社の既存の債務および
爾後彼らがそれぞれその職務を継続する間に負担した債務について, 各
自連帯して責任を負う」 と定めている。
以上の本法§および§は取締役の責任につき定めているが, これ
らとほぼ同じ規定が, 前述の【1】の年法§§・に設けられて
おり, また, 両規定と類似の規定は, ニュー・ヨーク州の年製造工
()
()
業会社法§§・およびミズーリ州の年法§§・に設けられ
ている。 なお, 上述の本法§や§には, という
用語が使用されているが, このような用語の使用例はこの時期の制定法
においては稀ではなかろうか。
★
爾後の会社立法の動向としては, 年の準則制銀行会社法の制定に
()
注目しておきたい。
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
【4】 ()
当州は, 年以後しばしば制定法集を編纂しているが, 筆者はこれ
らの資料を十分に集めることができなかった。 本稿では, たまたま筆者
が入手した年の制定法集の 「会社」 に関する諸規定を紹介するにと
どめる。 本制定法集の 「会社」 に関する諸規定の編成は, 以下のとおり
である。
[§§
]
[§§
]
!"#
$
%
"
"
#
" $
"
[§§
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+
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(
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[§§
]
-
.
#
"
[§§
]
本制定法集 !
§§
の諸規定は, 前述の【3】の年法を
受け継いでおり, 同法が年までは実質的に変更されなかったといわ
れていることは既述のとおりである。
世紀末のイリノイ州においては, 不動産売買を目的とする会社の設
立は禁止されていたが, それ以外の適法な事業を目的とする事業会社は
(&)
準則主義に基づく設立が許容されていた。 また, 株主の責任に関する規
定 (本制定法集 !
§) は, 前述の年法§8 (【3】参照) と
中京法学巻1・2号 (%%年)
( ) 同一である。 なお, 本制定法集 §§
は, に関する諸規定であり, 本稿の対象外である。
以下では, 銀行・保険・鉄道会社について, 主としてそれぞれの設立
規制を紹介することにしたい。
① 銀行会社法
本制定法集 は, 上述の年の
準則制銀行会社法 (前述の【3】★参照) およびその後の改正法を収録
したものである。
発券 (機能) 以外の一般的な銀行業 (割引・預金・為替の売買・貸付
など) を目的とする銀行会社 (
) を形成すること
は適法である (本制定法集 §1)。
本法の諸規定の利用を欲する団体 (
) は,
組織化の許可 (
) を求めて, 会計検査官 (
!"
) に申請する (#
) ことができる。 その際, その事業所・
資本の額・その団体の名称および存続期間が陳述され, その陳述書には,
申請人の署名・確認がなされる。 そして, 会計検査官が組織化の許可書
(
) を発行する (本制定法集 §2)。
授権を得た後直ちに, 資本の引受の帳簿が開設されて, 資本が完全に
引き受けられたとき, 最初の1年間およびその後任者が選出されるまで
の取締役の数を決定し選出するため, 引受人の総会が招集される……
(本制定法集 §3)。
取締役が組織され, かかる団体の資本がすべて完全に払い込まれて,
その旨の記録が会計検査官の面前に提出されたときは, 同検査官自らま
たはかれが任命する誰か有能な人がかかる団体の業務を充分に吟味する。
そして, その授権資本が払い込まれ, その全額がその事業に向けられて
おり, また, かかる吟味のための相当な費用が会計検査官の事務所に支
払われたことにつき満足が得られたときは, 同会計検査官は, その団体
が銀行業を開始することを授権する証明書 ($
"
) に印章を押してその証明書をその団体に与える。 また, 会計
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
検査官により適法に認証された上記の証明書および許可書は, 当該銀行
が組織化されるカウンティの捺印証書記録官の事務所に提出・記録され
る。 かかる証明書および許可書が記録されたとき, 当該銀行は完全に組
織化されたとみなされ, 事業に着手することができる (本制定法集 §5)。
② 保険会社法
本制定法集 は, 年の2つの準則制保険
()
会社法 (前述の【2】★参照) およびその後の改正法を収録したもので
ある。 本制定法集は, 保険会社を2つの類型に分けて規定しており, お
おまかにいえば, その2つの類型とは①火災保険会社と②生命保険会社
である。
本制定法集 §§
は, 前述の
年の準則制火災・海上保
険会社法 (その後の改正を含む) を収録したものであるが, 同法のタイ
トルに使用されている の意味に注意し
なければならない。 何故ならば, 上記
年の準則制火災・海上保険会
社法は, 内陸航行および運輸の危険を付保する保険会社に関する諸規定
を定めているが, いわゆる海上保険会社に関する規定を含んでいないか
らである。 以下では, 火災保険会社 (相互保険会社は除く) の設立手続
に限ってそのあらましを紹介することにしたい。
人以上の者は火災保険事業を行なうため保険会社 (
) を設立する (
) ことができる…… (本制
定法集 §1)。
かかる (人以上の) 者は, 会計検査官 (
) の事務所に設立趣意書 (
) を提出する。 その趣
意書には, 会社設立者 (
) の全員が署名し, 本法§1が掲
げる保険事業を行なうため1つのカンパニーを設立する意図がある旨が
記載され, また, その趣意書は, 採用される予定の定款の謄本を含んで
いなければならない。 そして, かかる [保険会社設立の] 意図は, 当該
保険会社が設置される予定のカウンティの新聞に, 週に1度, 少なくと
中京法学巻1・2号 (年)
( ) も4週間にわたり, 公告される (本制定法集 §3)。 定款記載
事項が列挙され (本制定法集 §4), 保険会社の資本は万ド
ル以上であり, 金銭で現実に払い込まれなければならない (本制定法集
§6)。
保険会社設立の意図が新聞に公告され, 設立趣意書および定款が提出
された後に, かかる新聞広告 [を行なった旨] の証拠 ―― 新聞発行者の
宣誓供述書による ―― が会計検査官の事務所に提出されたとき, 当該会
社の資本に対する引受のための帳簿を開設し, 定款に記載される資本の
全額が引き受けられるまで継続 [開設] することは適法である…… (本
制定法集 §7)。
提出が要求されている定款および新聞広告 [を行なった旨] の証拠は,
法務総裁 (
) により吟味されて, それが本法に
適合し, 当州の憲法・法律に矛盾していないことが認定された場合は,
それを同総裁が会計検査官に対して認証する。 会計検査官は, 定款で会
社に必要とされる資本が払い込まれて, それが金銭または法律が要求す
る形で所持されているかどうかについて, 自ら吟味するかまたは3人の
利害関係のない者に吟味させる。 ……かかる会社の設立者および役員は,
かれらに示された資本が当該会社の真正な (
) 財産であるこ
とを証明しなければならない。 かかる証明書は会計検査官の事務所に提
出され, その後すぐに会計検査官はその定款および証明書の認証謄本を
かかる会社に交付する。 会社の設置が予定されているカウンティの書記
の事務所にかかる認証謄本が提出されたとき, その謄本は事業を開始し
保険証券を発行するための会社の権限 [を表すもの] である…… (本制
定法集 §)。
本制定法集 §§
は, 前述の年の準則制生命保険会
社法 (【2】★参照) を収録したものである。 生命保険会社の設立手続
きは, 上述の火災保険会社の手続きとはかなり異なる点もあるが, ここ
では省くことにしたい。
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
生命保険会社の株主の責任については, 次のような規定が設けられて
いる。 すなわち, 本制定法集 §は, 「……本法に基づき設立
された会社の各株主は, かかる会社のすべての債務について, その未払
込の株式の額を限度として, 個人の資格において, 各自責任を負う」 と
定めている。 この責任は, 前述の【3】の
年法§8と同じであろう。
③ 鉄道会社法
本制定法集 は, 前述の
年の準則制鉄
道会社法 (【2】★参照) (その後の改正を含む) を収録したものであ
る。 鉄道会社の設立手続はおよそ以下のとおりである。
当州において鉄道を建設・運営する目的のため, 5人以上の者は, 会
社 ( ) となることができる (本制定法集 §1)。
かかる [5人以上の] 者は, 定款の採択・署名を行なう。 また, その
定款は, 鉄道が通過する予定の各カウンティにおける捺印証書記録官の
事務所および州務長官の事務所に記録される (本制定法集 §2)。
そして, 定款記載事項が列挙されている (本制定法集 §3)。
定款が上述のように提出され記録されたとき, 定款に会社設立者として
記載された者は, その後直ちに法人とみなされ, 定款記載の目的の遂行
に着手することができる…… (本制定法集 §4)。
本制定法集 §は, 「本法の諸規定に基づき設立されたいか
なる会社 ( ) の各株主も, かかる会社の資本の総額が
払い込まれるまでは, その保有する株式に対する未払込額を限度として,
会社のすべての債務について, 会社の債権者に対して, 個人的に責任を
負う」 と定めている。 この規定は鉄道会社の株主の責任に関するもので
あるが, 結局, 前述の【3】の
年法§8と同じ内容であろう。 ただ,
何故本法が
年法§8と異なる表現を用いたかは明らかではない。
中京法学巻1・2号 (年)
( ) ミズーリ州事業会社法
【1】 年法:
(表=⑨)
本法は全文カ条から成る。 いかなる種類の製造工業・鉱業・機械・
化学事業でも, それを目的とする1つのカンパニーを設立しようとする
3人以上の者は, 捺印証書の確認をとる権限のある公務員の面前におい
て, 定款 (
) の作成・署名・確認を行ない,
それをそのカンパニーの事業が遂行されるカウンティの書記 (
) の事務所に提出し, その定款の副本を州務長官の事務所に
提出することができる。 また, 定款記載事項は, 資本の額 (ドル以
上, 万ドル以内)・会社の存続期間 (年を超えないこと)・最初の取
締役の名前などである (本法§1)。
定款が提出されたとき, カウンティの書記は定款の署名・確認を行なっ
た者に対して許可書 ( ) を発行し, それが受領されたとき,
法人が成立する (本法§2)。 なお, 本法の設立手続と類似しているの
は, 前述のイリノイ州の年法§3であろう (Ⅵ【2】参照)。
本法§は, 「本法に基づき法人化された各会社のすべての株主は,
次条に定められているとおり, かかる会社が決定・制限した資本の総額
が払い込まれ記録されるまでは, かかる会社が負担した債務および契約
について, 各自保有する株式の額に等しい額を限度として, 自らが株主
たる会社の債権者に対し, 個別的・個人的に責任を負う ……」 と定め
ている。
また, 本法§は, 「本法に基づき組織化されたカンパニーの株主は,
生じた利益の額またはその株式に対して宣言され支払われた利益配当の
額を限度として, 会社が負う債務について, 各自連帯して責任を負う」
と定めている。
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
以上によれば, 株主は, 資本総額が払い込まれるまでは, 各自保有す
る株式の額に限って, 会社の債権者に対して, 個人的に責任を負う (本
法§
)。 つまり, 資本総額が払い込まれるまでは, 株主は2倍責任を
負うが, 資本総額が払い込まれた後は, 株主は責任を負わないのである。
さらに, 株主は, その受け取った利益配当の額についても各自連帯して
個人的に責任を負う (本法§)。 なお, 年に, 本法§が削除さ
()
れており, その理由は営利企業を促進する立法措置を継続するためだと
()
説かれている。
さらに, 以下のように, 株主の責任を限定する趣旨の規定が定められ
ている。
当該債務が負担されてから1年以内にそれが支払われるべきものでな
いとき, または, 当該債務の支払い期限が到来してから1年以内にかか
る債務取立の訴えが当該会社に対して提起されなかったときは, 株主は
会社の債務につき人的に責任を負わない。 また, 株主たる地位を喪失し
たときから2年以内に, 株主に対する訴訟が開始されない限り, 会社の
債務につき株主に対する訴訟を提起することはできず, また, 会社に対
する強制執行の全部または一部が不満足な結果 (不奏効) となる前にお
()
いても同様である (本法§)。 なお, この規定と同一の規定が後述の
年の制定法集§に至るまで継続的に保持されている。
会社が他会社の株式を取得するために, その資金を使用することは適
法ではない (本法§8)。 また, 金銭以外による資本の払込は認められ
ない (本法§
)。
は, 本法制定当時の州知事や上院委員会のメンバーたちが他
の諸州の準則制事業会社法を調査したという直接的な証拠はないが, 彼
らが東部諸州の会社立法に関する知見を有していたであろう, と述べて,
ニュー・ジャージ州・メアリーランド州・コネティカット州・ペンシル
()
ヴェイニア州の諸法につき言及している。 なお, はニュー・ヨー
ク州法については何も述べていないが, 本法がニュー・ヨーク州の
中京法学巻1・2号 (**)年)
( ) 年製造工業会社法を参考にしたことは否定できないのではなかろうか。
上述の本法§2および§を除けば, 両者の諸規定はほぼ同一だといっ
()
ても過言ではないであろう。
本法制定当時は, ミズーリ州憲法は個別法律による法人設立を禁止し
ていなかったから, 本法の制定後も, 特許主義に基づく会社設立は続い
ており, いわゆる会社設立に関する2元制度が継続していたわけである。
最初の準則制製造工業会社法が確立された後においても会社設立の特許
()
状に対する需要が強かったのである。
★
ちなみに, 年に社員の2倍責任を定める法律 (
()
) が制定されたといわれており, 同法は ()
に収録されている。
()
年に, 準則制鉄道会社法および準則制板舗装道路・マカダム道路
()
会社法が制定されている。 前者はミズーリ州の最初の準則制鉄道会社法
であり, 同法は次の【2】の年の制定法集 にほぼそのまま
収録されている。
【2】 本制定法集は, 年の州議会 (
!
"
#$
%)
において制定されており, その 「会社」 に関する諸規定の編成は以下の
とおりである。
&
'
(
'
'
$
'
[§§
]
(
#'
'
[§
§
]
)&
'
― [§§
]
&
'
[§§
*
]
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
本制定法集 の正式のタイトルは であり, 本章は前述の年の制定
法集 (【1】★参照) に収録されている をほぼそのまま受け継ぐものであるといえよう。
本制定法集 §は, 「爾後, 立法府が創設するすべて
の法人において, 定款に別段の定めがない限り, 強制執行に対して責任
を負う法人財産 (
) が不足する場合には,
……法人の各構成員の個人的財産・諸権利および信用は, 各構成員が持
分を保有する間に当該法人が負担した全債務について, その持分に等し
い額の追加額まで, 強制執行に服する責任を負う」 と定めている。 同規
定は株主の2倍責任を定めたものだといえるが, これは前述の年の
制定法集 (【1】★参照) に収録されている責任規定を受け継ぐもので
()
ある。
本制定法集 の正式のタイトルは !
で あ り , 前 述 の
【1】"年法とほぼ同じである。 例えば, 同 §§
#は, 前
述の【1】の"年法§§
#と同一の設立手続・責任規定である。
本制定法集 "の正式のタイトルは $
であり, 前述の年準則制鉄道会社法 (【1】★参照)
をほぼそのまま収録したものである。
鉄道会社の設立手続きは, およそ以下のとおりである。 6人以上の者
は, 鉄道を維持・建設・運営するため, 1つのカンパニーを形成するこ
とができ, そのために定款 (
) を作成しそれに
署名する。 また, 定款記載事項が列挙されており, かかる定款は州務長
官の事務所に提出される。 同長官はその定款が提出された日付をそれに
裏書し, そのために用意した帳簿にその定款を記録する。 そして, かか
中京法学"巻1・2号 ("年)
( ) る定款に署名した者およびかかる会社の株主となった者は, 直ちに法人
となる (本制定法集 §1)。
本制定法集 §は, 「本法に基づき設立された会社の株主は,
その保有する株式 (
) の総額を払い込むまでは, か
かる会社のすべての債務 (
) について, その
保有する株式の未払込額に等しい額を限度として, かかる会社の債権者
に対して, 個人的に責任を負う」 と定めている。 結局, 鉄道会社の株主
は, その保有する株式の払込を完了するまでは, その未払込額を限度と
して会社の債権者に対して直接責任を負うのであろう。 なお, 本規定と
同趣旨の規定が後述の【7】年の制定法集§に受け継がれてい
るが, 後者の規定はすべての種類の会社に適用される。
また, 本制定法集 §
は, 「会社の資本の全部は払い
込まれておらず, かつ, 払い込まれた資本が債権者の請求を満足させる
のに不十分であるときは, 各株主は, その保有する株式につき, 当該会
社の定款により定められた株式の額を完済するに必要な額を支払う義務
または当該会社の債務を満足させるために必要な金額の割合部分 (
(
)
) を支払う義務がある」 と定めている。 なお, この規定と上記
§の責任規定との関連が明らかではないが, このような規定
(上記 9) は, 以下の【3】の年法や【4】の年法以後は
みられない。
★
年に, 準則制銀行会社法 (
) が制定され
()
たと説かれているが, は, 同法が !
()
(準則主義手続) を定めていないと述べている 。 しかし, 同法により
(発券) 銀行会社の設立に関する特許主義に終止符が打たれたことは事
実であり, 同州の現在の銀行制度は上記の年銀行会社法を基盤とし
()
て進展したと説かれている。
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
【3】年法:
!
"
##
本法は全文カ条から成る。 本法の条文数は前述【1】の年法よ
りも縮小されており, また, その設立手続が変更されている。
3人以上の者が製造工業・機械・鉱業・精錬・印刷業を目的として1
つのカンパニーを設立しようとする場合には, 定款の作成・署名・確認
を行ない, その定款は会社の事業が遂行されるカウンティの記録官の事
務所 (
) に記録される。 かかる定款を確認・提
出した者およびその承継人は, かかる定款の記録後年間, 法人となる
(本法§1)。
資本の額はドル以上・万ドル以内であり, その最高限度額は
前述【1】の年法のそれより引き上げられている (本法§4)。 ま
た, かかる会社の財産・事業は, 3人以上7人以下の取締役によって管
理・経営される (本法§2)。
会社の破綻または事業の廃止の場合に, 当該会社が雇用している労働
者の会社に対する債権のうち未払いとなっている会社の債務について,
株主はその引き受けた額を超えて責任を負わない (本法§6)。 この規
定は, 株主がその引き受けた株式の額を限度として, 会社の使用人の賃
金債権について, 直接責任を負うことを意味している。
本法§6に相当する規定は, 前述【1】の
年法では欠けている。
ニュー・ヨーク州の年製造工業会社法§
は, 会社の使用人の賃金
()
債権に対して, 株主が個人的に責任 (無限責任) を負う旨を定めている。
このニュー・ヨーク州法は株主の無限責任を定めるのに対し, それを緩
和した形の責任を認めたのが本法§6であろう。
★
年ミズーリ州憲法 Ⅷ§1は, 発券銀行会社の創設を禁止
した。 また, 法人は一般法律に基づき設立することはできるが, 個別法
中京法学('巻1・2号 ('##年)
( ) 律に基づき法人を設立することは原則として禁止された (同州憲法 ()
Ⅷ§4)。
【4】 年法:
本法は, 当時としては詳細かつまとまりのある準則制法人法・会社法
であり, ミズーリ州における 「会社法」 の近代化の出発点であったとい
えるであろう。 本法の の冒頭には, その全体にわたるタイト
ル ( ) が付されているが,
本法は, いきなり から始まっており, その前後に接続する諸章
はみられない。 また, 本法の諸章の章番号は, 次の【5】の のそれらと異なっているが, その内容は同一で
あり, 両者はほぼ同時に成立したと考えられる。 本法の 「会社」 に関す
る諸規定の構成は以下のとおりである。
!
"
[§§
]
# !
$
[§§
#]
$
!$
%
!
!
!!
& !
$
[§§
'']
' $
[§§
]
( $
[§§
]
"&!
!
$
[§§
]
$
!"
$
[§§
]
"
!
!
[§§
#]
本法§
§は, 「会社の財産 (
) ) に対して
強制執行がなされ, かつ, 差し押さえるものがみいだされない場合には,
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
かかる執行はいかなる株主に対してもなすことができる, ただし, 株主
が保有する株式の額に対する未払込額に加えて, その保有する株式の額
と等しい額を限度とする」 と定めている。 この規定は, 出資額の2倍を
限度とする株主の責任 (2倍責任) を定めたものといえよう。 これと同
一の責任規定が, 爾後, 年のミズーリ州憲法の改正まで保持されて
いる。
本法 §は, 「いかなる方法で招集されまたは通知されたとし
ても, 会社のすべての構成員が総会に出席し, かつ, かかる総会の議事
録に, 書面による同意の署名がなされた場合には, かかる総会の行為は
適法に招集され通知されたと同様に有効である」 と定めている。 この規
定はいわゆる全員出席総会を認めるものであろうか。
本法 §2は, 「法人 ( ) が当州の法律に基づ
き組織化されたとき, 定款 (
) の謄本を州務長官に提出することは当該会社の役員 (
) の義務である, そして, かかる会社の法人たる存在は, かかる定
款の謄本を提出した時から始まる ……」 と定めており, 爾後これと同
一の規定が後述の【5】∼【7】および年・年の諸制定法集で
も保持されている。
① 鉄道会社の設立については, 本法 §§
が定めており,
その手続きは, 前述【2】の制定法集 §1とほぼ同じである。
② 本法 は, 火災・海上保険 (§§
) および 生命・疾病・
家畜・災害保険 (§§
) から成っており, これがミズーリ州の最
初の準則制保険会社法である。
まず, 5人以上の者 (以下, 会社設立者と呼ぶ) は, 本章の諸規定を
遵守することにより海上保険・火災保険を営む権能・権限を有する法人
となることができ (本法 §1), 会社設立者は定款に署名しなけ
ればならない (本法 §2)。 会社資本の2分の1が引き受けられ,
そのうちドルが引受人により払い込まれたとき, かかる定款 ―― こ
中京法学巻1・2号 (
年)
( ) れに署名した3人以上の者の宣誓供述書により真実性の宣言がなされた
―― は, その会社が組織化されたカウンティの巡回裁判所書記の事務所
に提出される。 そして, かかる定款の謄本1通 ―― かかる裁判所の印章
に基づきその書記により正式に認証された ―― が州務長官の事務所に提
出される。 かかる定款が提出されたとき, 州務長官は, 本章の諸規定を
遵守して会社設立者が保険会社として行為することを授権する許可書
(
) を発行しなければならない。 そして, かかる許可書の受領の
ときに, 会社設立者およびその承継人は法人となる (本法 §4)。
次に, 本法 §は, 生命保険会社 (
) の設立について, 本章の諸規定に従うと定
めており, その中には相互保険会社の設立手続 (
§§) も
含まれるが, 上述の海上・火災保険会社の設立手続きと同じである。
③ 本法の製造工業会社の設立手続きは, 前述【1】の年法§§
の手続と比較すると, かなり変更されており, 以下のとおりである。
本法に従って設立できる会社の事業目的には, あらゆる種類の鉱業・
機械・化学・製造工業・精錬・印刷・石油 (
)
事業・その他様々な事業が含まれている。 その他の事業とは, 例えば,
農業の奨励・家畜の改良・有料橋の建設・ホテルやホールなどの建物の
建築・波止場やドックなどの建設・タウンや市に対する水やガスの供給
などである (本法 §1)。
3人以上の者は, 定款の作成・署名・確認を行ない, 会社が事業を行
なうカウンティの記録管の事務所にそれを記録する。 かかる定款を確認・
提出した者およびその承継人は, かかる定款の記録の後年間, 法人で
ある (本法 §§
)。 なお, 年に, 会社の存続期間は年
()
以内に変更されている。
以上のように, 製造工業会社の設立手続においては, 州務長官が関わ
る旨が特に明記されていない。 この場合にも, 上述の本法 §2
が適用され, 定款の謄本を州務長官に提出するという手続は踏まれるの
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
であろうか。 なお, 後述の【7】年の制定法集§は, 定款の認
証謄本を州務長官に提出するという手続を明記している。
本法 のタイトルに使用されている という
用語が何を意味するかは必ずしも明確ではない。 上述のとおり, 本法に
従い設立できる事業の種類には製造工業のほかに様々の事業が含まれて
おり, それらの雑多な種類の事業会社全体を表現するために という用語を使用したのであろう。 なお, という用語は, 前述の年のアラバマ州法 (Ⅰ【4】参照) の
タイトルにもみられる。
【5】 本制定法集は年2月に州議会 (
)
を通過し, 翌年3月にその改正がなされているが, 次の【6】年
の において, 本制定法集は !
"
#
$%ま
()
たは !
$%と呼ばれている。 そこで, 本
稿ではこれを &と表記することにする。 そ
の 「会社」 に関する諸規定の編成は, 以下のとおりである。 なお, 前述
したとおり, 本制定法集は前述【4】の年法とほぼ同時に成立して
おり, かつ, 両者の内容は同一であるから, 以下では, 本制定法集の
「会社」 に関する諸規定の編成を掲げるにとどめる。
ⅩⅩⅣ'$
'$
(
)
[§§
]
'$
[§§
]
* '$
+
&(
,
[§§
]
'$
(
[§§
]
'$
[§§
]
'$
#
(
,$
[§§
]
中京法学,(巻1・2号 ((年)
( ) [§§
]
[§§
]
★
爾後の会社立法の動向としては, 年に制定された2つの準則制保
()
険会社法に注目しておきたい。 これらの2つの制定法については, 次の
【6】で言及することにする。
【6】 本制定法集はおそらく正式に編纂されたものではないと考えられるが,
年に制定された2つの準則制保険会社法 (前述の【5】★参照) を
収録し, 保険会社は別個・独立の章 (
) に規定されている。 本制
定法集は, 仮にそれが正式の編纂ではないとしても, 爾後の制定法集の
編纂 (保険会社に関する部分) に大きな影響を与えたため, 以下では,
保険会社の設立規制につき検討することにしたい。 なお, 本制定法集の
「会社」 に関する諸規定の編成は次のとおりである。
!
Ⅰ "
#
[§§
]
Ⅱ $
[§§
]
Ⅵ %
& [§§
]
Ⅶ '
[§§
(]
)
Ⅰ )
[§§
(]
Ⅱ )
*+
[§§
,]
Ⅲ )
*
[§§
,]
本制定法集 は, 年の保険会社に関する3つの制定法を収録
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
したものであり, 前述の【4】の
年法との違いが目立つ部分である。
なお, 以下では, 保険会社の設立規制についてのみ述べることにしたい。
まず, 保険庁 (
) が設けられた点に注目
()
すべきである。
生命保険を目的とする会社は, ① ジョイント・ストック・カンパニー,
② , および③ 相互会社 (
) という3つの種類が認められている (本制定法集 Ⅱ
§2)。
生命保険以外の保険は, 3種類が認められている。 第1の火災・海上
保険は, 株式方式または相互方式 (
) のい
ずれかにより営業することができ, 第2の家畜保険と第3の疾病・その
他の保険は, 株式方式で営業することができる。 なお, いかなる保険会
社も上記3種類のうち2つ以上の保険事業を行なうことはできない (本
制定法集 Ⅲ
§§)。
保険会社の設立手続きは, 生命保険会社の場合とそれ以外の保険会社
の場合との間に殆ど違いがないから, 以下では, 生命保険会社以外の保
険会社の設立手続きを紹介する。 ただし, 本稿では, ジョイント・ストッ
ク・カンパニーについてのみ言及することにしたい。
人以上の者 (その過半数は当州の市民たることを要する) は, 3つ
の種類の保険事業 (火災・海上保険, 家畜保険, 疾病・その他の保険)
を目的として会社 ( ) を設
立 (
) することができる (本制定法集 Ⅲ
§1)。
上記人以上の者は会社設立者と呼ばれ, かかる会社設立者は, 保険
庁長官 (
) の事務
所に設立趣意書 (
) を提出する。 その趣意書には, 各会
社設立者による署名がなされ, に基づき一定の保険事業
を行なう会社を形成する意図が記載され, また, その趣意書は採用され
中京法学巻1・2号 (年)
( ) る予定の定款 (
) の謄本を含む。 そして, 会社設立者は,
かかる会社を形成する意図 [がある旨] の公告を, 週に一度以上, すく
なくとも4週間, 一般新聞に掲載する (本制定法集 Ⅲ
§
3)。 さらに, 定款記載事項が列挙されている (本制定法集 Ⅲ
§4)。
会社設立者がその設立趣意書およびそれを新聞に公告した旨の証拠を
保険庁長官に提出した場合, 同長官がかかる設立趣意書をその吟味のた
め当州の法務総裁 (
) に提示し, 同総裁は, そ
の趣意書が本法の諸規定に合致し, かつ, 当州および合衆国の法律に矛
盾していないことを認定したときは, その旨を認証し, その趣意書を同
長官に返却する。
保険庁長官は, 法務総裁の証明書とともに当該設立趣意書 (およびそ
の趣意書が新聞に公告されたことを証明する宣誓供述書) をその目的の
ために保管されている帳簿に記録させ, また, その趣意書の認証謄本を
会社設立者に付与する。 その認証謄本を受領したとき, その会社設立者
は, 法人となり, 定款記載の方法に従って組織化に着手し, 会社の資本
に対する引受のための帳簿を開設することができる。 しかし, 本法§6
および§7の要件が完全に遵守されるまでは, 会社が保険証券を発行し
またはいかなる性質の事業を行なうことも適法ではない (本制定法集
Ⅲ
§5)。
営業開始の要件は, 以下のとおりである。 定款に指定された資本が引
き受けられ, そして, 万ドル以上の資本 (本制定法集 Ⅲ
§参照) が払い込まれたという通知がなされたとき, 保険庁長官
は, 自ら吟味をするかまたはそのために彼自身が指名した利害関係のな
い者に吟味させる。 吟味の結果, かかる必要な資本が払い込まれ, かつ,
当該会社により所持されていることが認定・認証された場合には, 同長
官は, その旨を認証し, また, 当該会社の会社設立者または役員は, 払
い込まれた金銭・その他が当該会社の財産であることを認証しなければ
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
ならない (本制定法集 Ⅲ
§6)。
当該会社設立者が前条の要件を完全に遵守したとき, 財務官の預託証
明書 (
) および会社設立者がそ
の事業を開始し得る権限の証明書を当該会社に対し付与することは, 保
険庁長官の義務であり, そして, 前述の設立趣意書および諸証明書は,
当該会社が設置されるカウンティの記録官の事務所に提出され記録され
たとき, 事業を開始し保険証券を発行するための会社の権限 [を表すも
の] である (本制定法集 Ⅲ
§)。
以上によれば, まず 「会社」 が法人化され, 次に組織化が進行し, そ
して開業の要件を満たしたとき始めて事業を開始できることになろう。
★
年ミズーリ州憲法 ⅩⅡ
§1は, 個別法律による法人の設立
を禁止し, また, 同憲法 ⅩⅡ
§9は, 「会社からの支払い (
)
は, 法律が定める方法により確保される, しかし, いかなる場合におい
ても, 株主はその所有する株式の額を超える額において個人的に責任を
()
負わない」 と定めている。 後者の規定は, 州憲法上, 株主の責任につき
定めるものである。 さらに, 同憲法 ⅩⅡ§7は, 「いかなる法人
もその定款またはその会社が組織化され得た法律もしくは爾後組織化さ
れ得るかもしれない法律において明示的に授権された事業以外に従事す
()
ることはできない……」 と定めている。
年には, 預金・割引銀行の設立に関する準則主義を採用した制定
()
法が成立しており, 次の【7】の制定法集 Ⅶ に受け継が
れている。
【7】 本制定法集の 「会社」 に関する諸規定の編成は, 年の制定法集の
それと同じであるといえるが, 本制定法集は, その全体を通してセクショ
ン番号を付すという形式を採用しており, 爾後, 年の制定法集およ
中京法学"巻1・2号 (年)
( ) び年の制定法集も同じ形式を保持している。 また, 本制定法集の
「会社」 に関する諸規定の内容は, 従前のそれとはかなり異なる部分も
あるが, 前述の【6】年の と基本的に同じであると
いえよう。 以下では, 本制定法集における新規の若干の諸規定に主とし
て注目することにしたい。
―
Ⅰ [§§
]
Ⅱ
!
[§§"
]
Ⅶ #$%
!
[§§
&]
Ⅷ '%
# !
[§§
&]
(
Ⅰ (
!
[§§&
&]
Ⅱ )
%
[§§&
&]
Ⅲ (
%
[§§&
]
Ⅳ [§§
&&]
① 製造工業会社の設立手続は, 前述の【6】の制定法集以前の手続
が変更されており, およそ以下のとおりである。
定款 (
%#
!
#) により結合した3人以上
の者は, 本制定法集§が定めるいかなる目的のためにも法人となる
(
) ことができ, また, 定款記載事項が列挙されている
(本制定法集§)。 定款は上記の3人以上の者により署名・確認され,
カウンティの捺印証書記録官の事務所に記録される。 そして, その定款
の認証謄本が州務長官の事務所に提出される (本制定法集§)。 州務
長官は当該会社が適正に組織化された旨の証明書を発行する。 かかる定
款を確認した者およびその承継人は, その証明書の発行後&年を超えな
い期間, 法人である (本制定法集§)。
このように製造工業会社の設立に関する手続において, 州務長官の関
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
与を明記したのは, 本制定法集が最初であり, 爾後同様の手続が採用さ
れている。
② 本制定法集 Ⅶ のタイトルは, 年法以来変更され
ていないが, 本制定法集は
年の準則制銀行会社法 (前述【6】★参
照) を収録し, さらに若干の新規定を追加している。
預金, 割引のいずれかまたは預金・割引の両方を目的として, 定款に
より結合した5人以上の者は, 法人となることができる (本制定法集§
)。
定款の記載事項が列挙され, かかる定款は, 上記の者により署名・確
認され, 会社が設置されるカウンティまたは市の捺印証書記録官の事務
所に記録される。 そして, かかる定款の認証謄本が州務長官の事務所に
提出される (本制定法集§)。
なお, 本 [Ⅶ] に基づく設立証明書は, 当該定款が確認され
た時に, 定款に記載された資本が誠実に引き受けられ, かつその半額が
適法な金銭により払い込まれていなければ, 有効ではない (本制定法集
§)。
③ 保険会社の設立規制 (本制定法集§) は, 前述の【6】
年の制定法集の手続をかなり変更しているが, 基本的な変更はみられな
いであろう。
④ 株主の責任に関して, 本制定法集§は, 「会社に対して強制執
行がなされ, かつ, 差し押さえるべき会社の財産がみいだされない場合
には, かかる強制執行は, 株主が保有する株式の未払い残高を限度とし
て, 株主に対してなされる。 ……ただし, 株主はその保有する株式の額
のほかにいかなる額においても個人的に責任を負わない」 と定めている。
同規定は, 年のミズーリ州憲法 ⅩⅡ§9 (前述の【6】★
参照) を踏まえたものであり, 爾後, 同州では, これと同一の規定が保
持されている (
年の制定法集§
および
年の制定法集§
参照)。
中京法学巻1・2号 (年)
( ) 上記規定は, 株主の責任がその出資額に限定される旨を明確に定めて
いるが, 株主はその未払込額を限度として会社債権者に対し直接責任を
負うのである。 このような株主の責任制度は, 前述のイリノイ州の
年法§8と同じであろう (Ⅵ【3】参照)。
⑤ 製造工業会社の合併については, その目的・事業が一般に同じ性
質である場合は, 2つの会社を合併することが許容される (本制定法集
()
§)。
★
爾後, 年に, が編纂され, 年に, が編纂されている。 これらの制定法集は, 基本的には
【7】の年の制定法集を受け継いでいるといえよう。 両制定法集に
()
ついては, その 「会社」 に関する諸規定の編成を注に掲げるにとどめたい。
ちなみに, 年の制定法集の 「会社」 に関する諸規定の編成は,
年の制定法集のそれとほぼ同じであるが, その条文数はかなり増加
しており, 例えば, 前者の の条文数は, 後者の ()
のそれよりもおよそカ条も多いといわれている。 世紀末のミ
ズーリ州における会社制定法の詳細化の過程を解明する作業は残された
課題である。
【注】
(
) !
"# $!
%&'
'()
()
後述の【2】の'年 &
§, 【4】の年 &
§および
【5】の年 &
§参照。
()
(")*+ ", $% &"*-%*!"* ," $% ,"!"* ", &"*!).
!
"* ," $%
% ", !
/()なお, ""%
"#
0
'.
は, 年のアイオワ州憲法の法人に関する諸規定を
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
掲げているが, それらの諸規定は, 年のアイオワ州憲法の法人に関す
る諸規定 (
Ⅷ§§
) と同一である。 しかし, 年のアイオワ
州憲法 は年州憲法により改正されており, 両憲法の規定は同一
ではなく, が掲げる年憲法 は正確ではない。 また, !""
"
! ! "
" ""
() は年のアイオア州憲法を収録してい
るが, #
をそのまま再録しており,
$%
#&
も誤ったのであろう。
()
' '"'"( )*+ (
,
%
#-)
()
&
%
#. %
/
01
#
)21
'%
1
3
()4"
#
() 本文に述べた本 !
/
5は, 年法 (#/
2
5
%
6
.
#
&%
#/
,
%
#1 7
5
,2
,1
1
5# 51
7 ,
/
2#%
8
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) を収録した
ものである。
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なお, 本法の詳細につい
ては, "
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-参照。
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() "
#
なお, 1
#は, 年 !
(§§-
) がアイオワ州の銀行会社規制の基礎を構成した旨を述べて
いる (
-)。
中京法学-巻1・2号 (年)
()
( ) Ⅸ 年に, 年の自由銀行
法が廃止され, 同法の2倍責任規定が廃止されたため, 改めて銀行会社の
株主につき2倍責任が定められたのであろう。
()
年の !
() 参照。
()
前掲 (注) およびその本文参照。
()
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-,
-%
--%
また, 上記-年法を改正する法律 ―― $
.
/%
#
/
+
0
-
+
-,-%
-―― が
制定されている。 なお, 12 (34312(5674 845(9
34 514 1: 34 (4 2 4121 +4741!42 2 ,415,
1
(-) は, 上記-年法が社員の責任につき
"*
(比例責任ルール) を採用したと述べている。
() 354( 42+45,415, 15!1512 ; !549:15(
()
()
343
() "
&
0"
0)
#
#"*
+
,
%
本法§は,
ニュー・ヨーク州の年自由銀行法§と同一の有限責任規定を設けて
いる (伊藤・前掲 [注8] 頁・頁参照)。 なお, 本法については,
343
参照。
(-)
"
&
<
)
"
&
#
*
)
:
0,-%
%
なお, 本法については,
343
参照。
() 法人創設権限の所在箇所に関する争点については, *
$3
&
,8
'
-%
(-)
がこれを詳細に論じており, 以下の紹介は同論文に依拠している。 なお,
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
もこの問題を簡潔に論じている。
()
(
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…
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&(&
この憲法改正は, 翌年月5日に批准された。 この点につ
いては, ./ .0 -1//2/1 3/10
14
'1'
&
(&
)
*
&)5/'0 3
!
+
-1//2/114/3// 14'1' 146 /312'3
&
[
*
+
] 参照。
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*"#
# 7
#
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&',
&
&
(&) なお, /83 -
.9' 3/10 14 12 (&
(
&) 参照。
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中京法学巻1・2号 ($年)
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$"
()
年の準則制保険会社法は, %&'( )"* +,-'( %. ()'
/,0(' 1%/%(,%22'-%(,&#' //' 2+ #&% #3%. #%4,
,
2 ()%4-) ()'
',%2 %. 5
(5) において論じ
られている。 なお, その後, 鉄道会社が製造工業会社と異なる設立規制に
服するようになったのかどうかは不明である。
() 6
!
7
!
+
"$#"#$
""
()
3,2+#'
5"
()
本文で言及したルイジアナ州憲法の規定を踏まえた州制定法が制定され
たかどうかは不明である。 なお, 会社はその目的以外にはその資本 (また
は財産) を使用できないという趣旨のニュー・ヨーク州の制定法について
は, 伊藤・前掲 (注8) [注] を参照されたい。
(5)
!
!
!
7
!
895
#"#"
"
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7 !
9 8#"#"
$
"
($)
$5年のニュー・ヨーク州法については, 伊藤・前掲 (注8) 5頁参
照。
() 7
6
!
!
7
6
89 #"#
"
5"
()
年のニュー・ヨーク州製造工業会社法については, 伊藤・前掲 (注
8) 5頁を参照されたい。 なお, 同書頁に, 本文で言及した
年法§の訳文が掲載されている。
()
/%%'
5"
() 97
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"
]"
"
()
7
9
! ( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
[ ]
!
!"
!
#
!
!
!
!
$ %
[
]
()
例えば, 鉄道会社の収用権の行使につき州議会の個別的な承認が必要で
ある点 (イリノイ州年鉄道会社法§) は, ニュー・ヨーク州の
年鉄道会社法§&を引き写したものだといえる。 イリノイ州の年鉄道
会社法の問題点は, ニュー・ヨーク州の年鉄道会社法のそれと同じで
あり, 伊藤・前掲 (注8) 頁を参照されたい。
() '
("
!
#
')
"
*
'
%
+同法は, 州議会通過後, 月に州民投
票による批准を経て効力を生じた。 同法につき, ,-./, 0012-.2
2, 1* -.2 03 4, (!
!
+) 参照。 同州では, 年に, -(
') が設立されたが, 同銀行は年に破
産し, その後&年間ほど, 同州には銀行会社は存在しなかったといわれる
(5,6 .771
85
9: 8 ;1-0: 72,0 %%[+]
参照)。
なお, 同州では, 年の自由銀行法の成立から+&年の州憲法改正ま
では, 個別法律による銀行会社の設立が許容されていたといわれており
(<21,<225,
2--:--25
9:
8 -,/:- 017;
2:+
[
!
!
%] 参照), この間, 銀行会社の設立については二元制度が行
なわれていたわけである。
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中京法学&巻1・2号 (//年)
( ) () !
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()
後述の【3】の年法§および '(
)
*
+
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() ,
-.
/0
#(
&(*%)なお,【3】の
年法については, 上記の .論文を参照すべきであろう。
(&)
本法§§*$
は, 非営利法人 (
) に関す
る規定である。
()
準則制法人法の形をとる他州の立法としては, 既述のオハイオ州の事例
がある (伊藤・本誌&巻3・4合併号/頁参照)。 この場合の準則制法人
法は, 厳密にいえば, 準則制法人法・会社法というべきであろう。
(%) (1!', 23)#4+'0, #1
()
*(*/)
35 !
##!
+3!
) 63("3('!
3+) 個別の一般法律とは, 例えば, 前掲 (注&) の年自由銀行法・(注
)・(注) の諸制定法などである。
()
.
*
(*)
2,) "(33''0, #1
,(#
(/)
35 63("3('!
3+)763+'!
+!
+8 '0,
8,+$
)''9',) 35 '0, )'', 35 !
(%
*)
##!
+3!
)
本文で述べたのと同様の状況は, ニュー・ヨーク州法でも鉄道会社の株
主の責任を巡りかつて存在していた。 この点については, 伊藤・前掲 (注
8) &$
&頁を参照されたい。
() ニュー・ヨーク州の&年製造工業会社法§§
・
については, 伊藤・
前掲 (注8) $
&頁参照。
()
表=Ⅰ⑨・後述のⅦ【1】参照。
()
-
2
% !
# *$
*&
(&)
'(
)
)
!
& 爾後, 以下の
ような諸制定法集が編纂されている。 '(
)
)
!
* ***
****などである。
()
23)#4+
%
*
(%)
その後の改正法としては, ① 年法: ( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
!"#
$%&
"'
'(および② 年法: )
'(
(
)
)
#
#
$%&
$"
"がある。
((") )
)
)
)
)
)
*
+
$(
!($%&
!
!($!
$
(()
/0#,12.2#1 /2%#13 #. 45, 6,7,%2/,.4 2+ 8,-4
,-.$
,0.
(()
-44, #--290#'
'(!*)$
本法§*と同一の規定がニュー・ヨーク州の*年法§*に既に設けら
れていた点については, 伊藤・前掲 (注8) (*頁を参照されたい。
(*')
/0#
(*'$
*$
(*)
ニュー・ヨーク州の*年製造工業会社法については, 伊藤・前掲 (注
8) (
(!頁参照。
(*)
/0#
($
(*()
-
) -$:
4-
%
)
%
;
#
%&
*!
$
!(() (
$
$4
9
)$
(**)
本文で言及した2倍責任を定める法律は, 45, 0,7#-,6 -4494,- 2+
45,
-44, 2+ #--290#*!<
$*!であり, 同法 $
Ⅰ
§(が2倍責任を定めている。 同
規定は後述の【2】!!年の制定法集 $(
*
$
§(とほぼ同じであ
る。 なお, *!年の時点においては, ミズーリ州は事業会社の設立に関す
る準則主義をまだ確立していなかった点に注意する必要がある。
(*!) )
)
+
$*!($%&!
!($
**$
(*)
)
=
)
)
+
$"!$
%&
!'
!$!
!$なお, 本法§((は, 「……本法に基づき設立された
会社の株主は, その [有する] 株式の額以上の責任を負わない」 と定めて
いる。
中京法学巻1・2号 ( 年)
( ) ()
前掲 (注) 参照。
()
本制定法集 §
とほぼ同一の規定がニュー・ヨーク州
においてみられるが (
Ⅲ
§5), 後者は事業会社の設立特許主義の
下における規定である。 これについては, 伊藤・前掲 (注8) 頁参照。
なお, アラバマ州にも上記とほぼ同一の規定が存在していた点については,
伊藤・本誌巻3・4合併号!"
#頁参照。
() $%$
&'
(%%(%
%&
%
%
%
)% *++
%
,-
!#"
!
"
なお, 本法はその通過の日から効力を生じると明記されているが, その通
過の日付が不明である。
(!)
./,,
%
(!)
0
1 2'
(
Ⅱ)
#,3
0/45
(#)
(!)
ニュー・ヨーク州の年製造工業会社法§については, 伊藤・前掲
(注8) 頁参照。
(!)
.334
%
!
(!) $%$
+
%
1
6
1"
%
%
%
%
%&
%
"
%%
&'
%+%
%&
$
7
(#
#
,
-#
(!!)
,
%
(!#) 2つの準則制保険会社法とは, ① $% $
%
% %
&'
% '
%
+%
$
,
#
,
-
#
#"
!および② $% $
%
% %"
%
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%'
%
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%
&'
%
%
%
(
%
%'
%
(
%
$
,
#
,-
#
!"
#であり, それぞれが
次の【6】の #
Ⅱおよび #
Ⅰに引き継
がれている。
(!)
$% $
% /
%
%
8
+
%
$
,
#
,-
#
"
#なお, 保険庁を設ける旨の州法の先例は,
ニュー・ヨーク州の!年法にみられる。 この点については, 伊藤・前掲
(注8) !頁・#頁 [注] を参照されたい。
(!)
.334
%
"
(!)
なお, 次の年の制定法集§#(但書) は, !年ミ
ズーリ州憲法 ⅩⅡ
§7と同一の規定を設けている。 同規定と類似
( )
アメリカ合衆国における準則制事業会社法の変遷 (Ⅱ) (伊藤)
の事例が前述のルイジアナ州にみられる (Ⅴ【5】★および前掲 [注]
参照)。
()
!
"#
$
()
%
&
" !
"
(")
'年の制定法集の 「会社」 に関する諸規定の編成は以下のとおりであ
る。
" (
)
Ⅰ *
%
!
%
#
%
!
%&
[§§"#
"]
Ⅱ +
%
&
[§§""#
"]
Ⅶ ,
&
[§§"$#
"]
Ⅷ &
[§§
"#
"]
' Ⅰ &
Ⅱ [§§#
]
Ⅳ %
[§§$#
'']
Ⅴ .
%
[§§'#
']
なお, 上記の "
Ⅹは /
%
%
#
%&
%
%
であり, 同 ⅩⅡは %
である。
''年の制定法集の 「会社」 に関する諸規定の編成は以下のとおりであ
る。
" (
)
Ⅰ *
%
!
%
#
%
!
%&
[§§'$
#
$$]
Ⅱ +
%
&
[§§$#
]
Ⅷ /
[§§"#
$
]
Ⅸ &
[§§
$"#
$$]
中京法学巻1・2号 (年)
( ) Ⅰ [§§
]
Ⅱ [§§
]
Ⅵ [§§
]
Ⅶ [§§
]
() !"#$ %!"&&'("!')% *'')+##,"&- &) .#/"&,0)#.)
#"&
)-'()&1,# &1"-
#"#)"$ "-$ )
-'+#"-0, (
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