Comments
Description
Transcript
PDF版をダウンロードして読む(5333KB)
6 2012 特集I T先端技術の働く農業 撮影:永田 博義 6 岐阜県郡上市白鳥町 2001年5月撮影 2012 特 集 IT先端技術の働く農業 棚田の田植え ■山々に囲まれた棚田群。この山奥を立派に開拓した先人の苦労に 思いをはせる。一人静かに田植えをする彼もまた、この美しい景観や暮 らしを守る棚田の役割を後世に伝承する者である■ 3 ロボット農業実用化に向けての課題は何か 野口 伸 省力化の革新的技術として農業ロボットが注目されている。田植えから 収穫まで一連の営農に活用するロボットの実用化の展望と課題を探る 7 フィールドサーバを利用して生産性向上を 平藤 雅之 ほ場の生育環境をネット経由でリアルタイムにモニタリングするフィールド サーバ。収集された膨大なデータは生産性の向上にどう活かされるのか 11 最先端情報システム活用で変わる日本農業 西口 修 分散錯ほでの作業効率化や人工衛星画像解析による収穫適期の把握が IT活用のシステムで実用化。最先端営農の現状と展望をリポートする 情報戦略レポート 15 農業景況DI3年ぶり改善 震災の影響依然残る ―平成23年農業景況調査― 経営紹介 経営紹介 23 脱サラでこだわりブドウ生産 有名ソムリエからも高評価 / 長野県 楠わいなりー 株式会社 シリーズ・その他 観天望気 命をつなぐ、食というもの 石田 秀輝 2 農と食の邂逅 スイーツ&ジェラテリア バロック 伊藤 えりか 19 青山 浩子 耳よりな話 123 有望な茶品種への転換 袴田 勝弘 22 主張・多論百出 公益財団法人21あおもり産業総合支援センター 25 加藤 哲也 フォーラムエッセイ おコメマニア はなわ まちづくり むらづくり 地域の活性化を目指すチョウザメ養殖 西府 稔也 30 31 書 評 白須 敏朗著『東日本大震災とこれからの水産業』 34 村田 泰夫 インフォメーション・農林水産省からのお知らせ 新たな農業経営指標を策定しました! 山口 英彰 35 みんなの広場・編集後記 37 東日本大震災により被災された皆さまへの 支援策について 38 海外赴任を機にワインづくりに興味を持ち、持ち前の行動力で脱サラ、就農 した楠社長。念願のブドウ生産からワイン醸造の一貫体制を構築し、夢に挑む 変革は人にあり 27 内山 利之 / 千葉県 有限会社ジェリービーンズ 「元気豚」は食べた人に元気を与える豚肉として好評。ブランド戦略と安全・ 安心な食品づくりへのこだわりが両輪となった経営手法が成功のポイントだ *本誌掲載文のうち、意見にわたる部分は、筆者個人の見解です。 命をつなぐ、食というもの 二〇一一年三月一一日東日本大震災、そこで起こったこと。それ これが私の認識である。そして、それはこのまま何もしな は、 エネルギ ーの供 給 停 止 、インフラの寸 断 、食 料 生 産 現 場の壊 ― 滅 ければ、二〇三〇 年ごろ起こり 得る地 球 環 境 問 題でも あった 。 いしだ ひでき 2004年㈱INAX (現LIXIL) 取締役CTOを経て現職。工学 博士。ものづくりのパラダイムシフトに向けて、自然を賢く 活かす新しいものづくりとして 『ネイチャー・テクノロジー 』 を提唱。地球村研究室代表、ネイチャーテック研究会 代表などを務める。 『ヤモリの指から不思議なテープ』監修 (アリス館、2011) ほか、著書多数。 二〇 年 早 く、二〇三〇 年 を 見てしまったとも 言 える。東日 本 大 石田 秀輝 震 災は、改めてわれわれに問 うている。それは、地 球 環 境 問 題と 。 は何か、人が豊かに生きるということはどういうことか、そして、 ― そのためにテクノロジー はどのような役割を持つべきかを 東 北 地 方はあらゆる日本の食の宝 庫である。それが壊 滅 的な 被害を受けたにもかかわらず、行政からもメディアからも、その 危機感は伝わってこない。なぜか、そこにはあらゆるものを「お金」 という物差しでしか測らない現実がある。一次産業のGDP比率 はたった一・二%である 。その一部 が 被 害に遭ったからといって 大したことはないのだろうか。食が無ければ二次産業も三次産業 も成立しない。食はお金という物差しだけで測れるものではない。 二〇一〇 年にIEA ( 国 際エネルギ ー 機 関 ) が、オイルピークを すでに迎 えていたことを認めた。これからは、確 実に原 油 価 格は 上 昇してゆく 。日 本は一人 当たり 約 七〇 〇 〇 ㌧・㌔メー トルと 突 出しているフ ー ド・マイレ ー ジを 有 する。輸 入 相 手 先 も 気 候 変 動、経 済 的な発 展の影 響で急 激に輸 出 余 力が低 下しつつある 中で、 いつまで食料を輸入できるのだろうか。 では、耕作放棄地で食料生産を始めれば、この問題は解決でき るのだろうか。バーチャル ウオーター(輸入食料を国内生産する ・ と仮定した場合に必要な水の量) は約五〇〇㌧/ 人もあるという。 2 AFCフォーラム 2012・6 単 純に水だけを考 えても、現 在 使 用している量の約一・八倍が必 要になる計算である。果たしてその水がこの国にあるのだろうか。 すでに、多 くの国が食 料 生 産 基 地 を 海 外に求め始めている。 日 本は何 を 考 え、どこに進むのか、震 災 復 興のためにも、その方 向を明らかにしなければならない。それは、お金という 物 差しだ けで近 代 国 家の頂 点に立った、この国の脱 近 代 化への新しい指 針 づくりでもある。 東北大学大学院環境科学研究科 教授 特集 IT先端技術の働く農業 の中で最 低の数 値である。日 本 政 府は二〇二〇 給 率( 熱 量ベース) は四〇%に過 ぎ ず、先 進 諸 国 力 技 術の開 発が、日 本 農 業 を 持 続 的に維 持・発 算 性に適 合 するようなロボット化を含めた超 省 このような背 景から、農 業 経 営の経 済 的な採 ステム開 発を行 う 研 究 課 題もあり、中 核 機 関は 発 」という 土 地 利 用 型 農 業におけるロボットシ 用 型 農 業における自 動 農 作 業 体 系 化 技 術の開 戸であったのに対して、二〇一〇 年には二六〇 万 米 国 、EUなど諸 外 国でも 同 様で、国 際 的に農 また、日 本 農 業が抱 えている労 働 力 不 足は、 一方で、総 農 家 数は一九 九 〇 年には四八二万 戸と過 去二〇 年 間で五四%にまで激 減した。加 業生産のロボット化へのニー ズが高い。 ジェクト研 究「 農 作 業の軽 労 化に向 けた農 業 自 二〇一〇 年 六 月 から 農 林 水 産 省の委 託プロ 農 水 省 も 研 究 開 発に踏 み 出す けた取り組みと今後の課題を考えてみたい。 そこで、本 稿ではロボット 農 業の実 用 化に向 えて、農 村 地 域では、若 年 層の流 出により、 一〇 年の基 幹 的 農 業 従 事 者の平 均 年 齢は六五・八歳 になり、労働力不足は深刻さを増している。 さらには、農 産 物の輸 入 自 由 化が進 む 中で、 国 際 競 争 力 を 確 保 するために、一層の品 質の向 上や生 産コストの削 減 を 図ることが喫 緊の課 題 となっている。 研 究 課 題では稲 麦 大 豆 作 などの土 地 利 用 型 プコン、ボッシュ株式会社が参画している。 社、株式会社日立ソリューションズ、株式会社ト 研 究 支 援センタ ー )、企 業からはヤンマー 株 式 会 国四国農業研究センタ ー・生物系特定産業技術 究センタ ー・北 海 道 農 業 研 究センタ ー・近 畿 中 食 品 産 業 技 術 総 合 研 究 機 構( 中 央 農 業 総 合 研 共同 研 究 機 関に京 都 大 学 農 学 研 究 科、農 業・ 発責任者を務めている。 年までの目標食料自給率を五〇%に設定する。 このプロジェクトの中に「 稲 麦 大豆作 等土地 利 ジェクトとしてスター トした。 動 化・アシストシステムの開 発 」が五カ年のプロ ロボット農業実用化に向けての課題は何か のぐち のぼる 1961年山口県出身。90年北海道大学大学院農学研究科 博士課程修了。97年助教授を経て、2004年現職。現在、 中国農業大学、華南農業大学、西北農林科技大学の客員 教授。日本学術会議食料科学委員会委員長、日本生物環 境工学会会長などを務める。 北 海 道 大 学 大 学 院 農 学 研 究 院で、私が研 究 開 的な展開が求められている。 せて、農 業 生 産の新たな技 術 形 成に対して革 新 こうした状 況の中、国 内 農 業の構 造 改 革と併 農業の新たな担い手として、ロボットが脚光を浴びる時代となってき た。部分的な作業にとどまらず、今や田植えから収穫まで一連の作業 に活用し、実用化に移 す 動きが進んできている。そこで、導 入に伴 う 安全面や経営面での課題は何かを探ってみた。 急速に高まるロボ ッ トニ ー ズ ぜいじゃく Noboru Noguchi 野口 伸 展させる上で必須である。 わが国の食料生産基盤は脆弱であり、食 料 自 北海道大学大学院農学研究院 教授 2012・6 AFCフォーラム 3 特集 IT先端技術の働く農業 した。 開 発 する。図1に開 発システムのイメ ー ジを 示 て安 全に遂 行できる農 作 業ロボットシステムを 除 草、収 穫といった一連の作 業 をロボットによっ 農 業において、耕 うん、整 地、播 種、施 肥、防 除、 る 。以 下に本 研 究 課 題の具 体 的 な 開 発 目 標 を 織のあ り 方について、提 言 を ま とめる予 定であ に、ロボッ ト 導 入 効 果 を 最 大 化で き る 経 営 組 れ ぞ れに最 適 な 営 農モデルを 策 定 す ると と も 築 する。さらにロボット導 入の経 営 的 評 価 とそ アラ ーム、一時 停 止 、待 機など適 切な行 動 を 取 しており、自 動 作 業 中に人や障 害 物を検 出して これらロボットは障 害 物 検 出センサ ー を 装 備 の有人作業と同等に行えるものを目指す 。 プラスマイナス一〇 ㌢メー トル、作 業 速 度も慣 行 飛 躍 的に増 加 させるために、地 域 内で複 数のロ さらに、作 業 従 事 者一人 当たりの作 業 面 積を ることができる。 セン チ 示す。 ロボットシステムは、北海道などの大規模農業 への適 用のみなら ず 、都 府 県に展 開 している 分 走 行 精 度はわ ず か ボットが同時に作業できるシステム設計を行う 。 散 錯ほ型 農 業にも 適 用でき 、導 入 効 果 を 発 揮 ロボットトラクタ ー 、田 植 えロボット、ロボッ 特に小 型ほ場が点 在している分 散 錯ほの環 境 するシステム開発を目指している。 トコンバイン、そして各 種ロボット用 作 業 機 を 開 成し、作 業 状 況 をモニタ ー でき、さらにロボット また、作 業 管 理 者がロボットの作 業 計 画 を 作 トレ ー サビリテ ィ ー 完備型 時間連続作業できることなども実証する。 整 地 、代かきなどロボットが昼 夜 を 問わず二四 管 理できることや、大 規 模 農 業において耕 うん、 当一人の計二人で四台のロボットの同 時 作 業 を この研 究 課 題では管 理センタ ー 一人 、現 地 担 そこで機 械コスト、想 定 される利 用 形 態 など 10 現場担当者 下では、複 数のロボットが同 時に作 業できる体 ロボットコンバイン・田植機 発 する。開 発 する全てのロボットは共 通した航 ロボットトラクター を考慮して「大規模農業」 「分散錯ほ型農業」そ 作業情報取得 制が作業能率向上の観点から望ましい。 共同乾燥 施設 法センサを 使 用して、走 行 精 度は横 方 向 偏 差で ▲ の作 業 履 歴を記 録できる統 合 型のロボット作 業 管理システムも開発することとしている。 当 然 、この技 術はトレ ー サビリテ ィー に適 用 できるもので、生 産 物の安 全 性の信 頼 度 向 上に 寄与する。また、農薬・肥料など資材の補給、収 穫 物 排 出の必 要 性や自 動 作 業 中の障 害 物の検 出 なども 管 理センタ ー でモニタ ー でき 、迅 速に 適切な対応ができる。 現 在 、この研 究 課 題は五カ年の研 究 期 間のう ち 、二年 目 が 終 了 した ところであるが、前 半 三 4 AFCフォーラム 2012・6 ▲ ▲ ▲ 無線 LAN パケット通信 管理 センター 農家 ロボット作業 管理システム 農協 情報 交換 流通業者 れぞれについて、ロボット農 作 業 体 系モデルを 構 図1 農林水産省プロジェクト 「稲麦大豆作等土地利用型農業に おける自動農作業体系化技術の開発」のイメ ー ジ ロボット農業実用化に向けての課題は何か 田植えロボット (中央農研) ロボットトラクタ ー(北海道大学) RTK-GPS アンテナ PLC パソコン GPSコンパス RTK-GPS受信機 VRS ロボットコンバイン (中央農研) きれば、ロボット 間で使い回 しができ 、ロボット けがないので、GPSなど航 法センサが共 通 化で たとえば、田植 えと収 穫が同 時に行われるわ した自 己 診 断 機 能などが最 低 限 必 要な機 能で 害 物の認 識 機 能やロボット使 用 者の安 全に配 慮 であることは言 う までもない。人 間 を 含めた障 農 業ロボットは、安 全 性 が 重 要 な 性 能の一つ ある。 システムの低コスト化に寄与する。 走行性能は世界でト ッ プクラス 場 合、耕 うん、播 種、中 耕、防 除、そして収 穫 ま の開 発と農 業ロボットの安 全 基 準の策 定 を 進め この研 究 課 題の中では、障 害 物 検 出センサ ー 既存技術応用し低コスト化 での全 作 業を無 人 化でき、走 行 誤 差は三㌢メー ている 。障 害 物 検 出センサ ー は当 然 低コストで われわれが開発しているロボットトラクターの トル程 度である。この走 行 性 能は世 界でもトッ 規 模は他 産 業と比べて小さいことから新 規 開 発 あることが要 求 されるものの、農 業 分 野の市 場 現 在、 ロボットトラクターは米国・欧州・中国・ した場 合、センサ ー 価 格が高 くなることは避 け プクラスである。 韓 国・ブラジルなどで開 発 中であ り、これらの国 られない。すなわち、可 能な限 り 異 種 産 業で使 われている既存技術を適用する努力が必要とな では農作業の無人化に対するニー ズがある。 そこで、われわれのプロジェクトで も 開 発 技 そこで、自 動 車 用 障 害 物 検 出センサ ー を商 品 る。 技 術の共 通 化 を 図ることで製 造コストの削 減 を 化しているボッシュが自 動 車 用センサ ー を 有 効 術の国 際 市 場 投 入 を 念 頭に置 き 、さらに要 素 目 指している。具 体 的には可 能な限り国 際 規 格 図2に示したように、すでに個 別 技 術 として に活 用 して、農 業ロボット 用 障 害 物 検 出センサ 各 種ロボット を 操 作 す る 機 械 も 同 様の進 捗 モデルを提案する必要がある。 評 価 を 行った上で、最 適なロボット農 作 業 体 系 た 経 済 性( 機 械 経 費の増 加 、労 働 時 間 な ど ) の 経 済 性 評 価である 。慣 行の作 業 体 系 と 比 較 し 化 を 進める上での重 要なポイントは、ロボットの 他 方 、日 本 国 内においてロボット 農 業の実 用 を 組み合 わせたインテリジェントセンサ ー であ レ ー ダ ー 、超 音 波センサ ー 、イメ ー ジセンサ ー 方 向の安 全 性 をカバ ー してお り 、自 動 車 用の に基づいてセンサ ー 仕 様 を 決 定 した 。機 体の全 で、農 業ロボットの安 全 評 価 とリスク分 析 結 果 図3の障 害 物 検 出センサ ー は 開 発 中のもの 田植 えロボット( 中 央 農 業 総 合 研 究センタ ー )、 状況にある。位置計測にはリアルタイムで高精度 ロボット農 業については創 成 期であるため、農 今 後 、このセンサ ー を 実 際のロボット トラク ロボットコンバイン ( 京 都 大 学、中 央 農 業 総 合 研 (誤差二㌢メー トル程度) に位置決定が可能なR 業 経 営 学 的 な 分 析がいまだなされていない。そ タ ー や田 植 えロボットなどに搭 載して、実 作 業 Inertial Measurement 究センター 、ヤンマー ) が完成しつつある。 ) を、姿勢 TK‐GPS ( Real-Time Kinematic GPS 角計測に慣性計測装置( こで「 大 規 模 農 業 」 「 分 散 錯ほ型 農 業 」それぞれ 時の性能を評価する予定である。 さらに、二〇一 三 年 度からの地 域における実 る。 ) を使用している。 Unit; IMU また、前述したように個々のロボットの航法セ について経 営 学 研 究 者にこの経 営 的 側 面からの を取っている。 分析をお願いしている。 ンサを 共 通にすることで低コスト化 を 図る戦 略 ー を開発している。 ) に準 拠させて国 際マー ケットに投 ロボットトラクター(北海道大学、生研センター )、 ( ISO11783 入する戦略である。 おける実証試験を行うことになっている。 年間は個別技術を開発し、後半二年間は地域に 図2 プロジェクトにおいて開発中のロボット 2012・6 AFCフォーラム 5 証 試 験については、 「大規模農業」 「 分 散 錯ほ型 信 号(LEX信 号 )を 送 信 する「 補 強 機 能 」があ 頂 衛 星システムの農業ロボットへの有 効 性を明ら 今 後は、農 林 水 産 省の委 託プロジェクト 研 究 かにした。 前 者は山 間 部やビルの陰など十 分に可 視 衛 星 でも 準 天 頂 衛 星システムを 利 用 したシステム開 る。 数が確 保できない場 所において測 位が可 能にな 発に取り組むことにしている。 る準天頂 衛 星の有 効 性について関 係 機 関と共同 ず、制度の整備も重要な課題で、 ロボットの安全 ロボッ トの普 及 には 技 術 的 問 題 にと ど ま ら 安全性評価や安全基準も必要 り、後者はLEX信号を使用することにより、㌢ 農 業 」それぞれモデル地 域 を 設 定して地 方 自 治 体との連 携の下、実 施 する方 向で準 備 作 業に着 手したところである。 準 天 頂 衛 星 利 用に課 題 残す メー トル単位の測位精度を実現する。 研 究 を 行っている。 「 補 完 機 能 」については宇 宙 性 評 価 と 安 全 基 準の策 定 、社 会 的 受 容 形 成の 現 在 、われわれはロボットトラクタ ー に対 す ) は、常に日本の天頂 Zenith Satellites System 付 近に一機の衛 星が見 えるように、軌 道 設 計さ 航 空 研 究 開 発 機 構( JAXA)、 「 補 強 機 能 」につ 検討も必要である。 Quasi- れた 衛 星 測 位システムであ り 、二〇一〇 年 代 後 いては衛 星 測 位 利 用 推 進センタ ー(SPAC)と 準 天 頂 衛 星 システム( Q Z S S … 半には四 機 体 制 、その後は米 国のGPS衛 星に 実施している。 その上で市 民 公 開の実 演 会・実 証 試 験は、企 依 存しない衛 星 測 位システムが確 立できる七機 ■ 停止領域 表1 地域におけるロボット作業の公開実証試験 車輪ロボットトラクター・クロー ラ ロボットトラクターによる無人作業 車輪ロボットトラクタ ー・クロ ー ラロボット トラクタ ー の2台のロボットによる作業と作 業管理システムによるモニター 10m 0.5m 3.5m ■ 警告領域 民 公 開の実 証 試 験 を 行った。これらの実 証 試 験 五月三〇日に湧 別 町 、一一月八日に帯 広 市で市 日につくば市 、一一月二六日に士 別 市 、一一年は では、表1に示したように二〇一〇 年は五月一二 この考 え 方に基づいてわれわれのプロジェクト 業 ― 研 究 機 関 ― 行 政 ― 農 業 者( 市 民 ) の連 携に 5m LEX受 信 機 を 搭 載してロボット走 行 を 行っ 農機の最大直進 速度:2m/s 体制まで拡充することが決まっている。 3.5m はマスコミにも 取 り 上 げられ、試 験 を 実 施 した 地域では大きな反響があった。 今 年も地 域の要 望で、五月 下 旬に士 別 市で大 区 画 水田における代かき 作 業や、九月に十 勝 地 域でロボットと人 間が協 働で小 麦の種まき 作 業 を行う予定である。 これから も 、われわれのロボットの進 化 を ぜ ひ多 くの人に見て知っていただき、ロボット農 業 の機 運 を 高めたい。そして、世 界に先 立ってロボ ット農 業の実 用 化・普 及に貢 献したいと考 えて いる。 6 AFCフォーラム 2012・6 1.75m より実 行され、社 会 的コンセンサス形 成に資 する 超音波 センサー た 結 果 、走 行 誤 差 も 三 ~ 五 ㌢メ ー トル程 度 と BOSCH 準天頂 衛 星システムの機 能は、高 仰 角から航 車輪ロボットトラクターによる施肥播種作業 と作業管理システムによるモニター 湧別町 2011年5月30日 参加者:180名 帯広市 2011年11月8日 参加者:250名 カメラ 重要なものである。 人走行速度: 1.67m/s (歩き) 現行の携帯端末を使用するネットワ ーク型RT 田植えロボットによる無人移植作業 つくば市 2010年5月12日 参加者:35名 士別市 2010年11月26日 参加者:200名 レーダー 法 信 号( 軌 道 情 報および時 刻 情 報 )を 提 供 する BOSCH K‐GPS並みの精 度で走 行できることや、準天 図3 障害物検出センサ ー の開発 <ボッシュ> 「 補 完 機 能 」と 、測 位 精 度 を 向 上 さ せる 補 強 3.9m 特集 IT先端技術の働く農業 特集 IT先端技術の働く農業 フィー ルドサ ー バを利用して生産性向上を る 。このため、前に作 付 け した 前 歴 との関 係や 約になる。 モニタリングできるようになれば、労 働 時 間の節 また、測 定した土壌 水 分などのデ ー タを蓄 積 リアルタイムで灌水制御も 作業の競合を考慮しなければならない。 気温や日射量、土壌水分などの環境デ ー タの活用がこれからの農業経営 には不可欠になりそうだ。ほ場の生育環境をインター ネットでリアルタイ ムにモニタリングするフィールドサーバが収集する膨大なデータの活用で、 さらなる生産性向上も決して夢ではい。 今 や 生 産 デ ー タ 管 理は必 須 どこのほ場で何 を 栽 培 し、それぞれがどのよ 同時に、日 々の意思決定もかなり複雑である。 あ り、生 産 量や品 質は気 温 、日 射 量 、土 壌 水 分 うな生育状況であるかを把握し、気象条件に応 害 虫の発 生などとの関 係を解 析して、収 量 予 測 などの影 響 を 大 き く 受 ける 。適 切 な 生 産 管 理 近 年 、農 業 機 械にGPSや収 量センサなどを や病 害 虫 発 生 予 測 を することができれば、生 産 し、その変 化をグラフとして眺めたり、収 量や病 比 較 的 簡 単に搭 載できるようになり、収 量 分 布 農 業の生 産 現 場 は工 場 より もはるかに複 雑 と同じである。 産ラインで製 品を三〇 台 組み立てただけの新 人 三〇 回しか経 験できていない。工場でいえば、生 ているとき、その環境条件や作物の様子などにつ らない。ほ場が遠い場 合や多 数のほ場が分 散 し も、土壌 水 分や土壌 温 度などの環 境 条 件は分か という 点である。こまめに、ほ場 を 見てまわって しかし、厄介なのは環境データをどうするか、 ブの開 閉 を する作 業は重 労 働である。高 齢 化の 上 り 下 りしながら葉の様 子 を 見て、灌 水 用バル ロールする必 要があるが、一日に何 回 も 斜 面 を は、土 壌 水 分や果 樹の樹 体 水 分 を 適 切にコント が多い。糖 度が高い高 品 質な果 実 を 生 産 するに んきつ類を栽 培している果 樹 園は急 峻な傾 斜 地 こんなケ ー スも 考 えられる 。ミカンな どのか で、しかも 多 様である 。たとえば、大 規 模 畑 作 いて、たとえばインタ ー ネットでリアルタイムに 合わせると施肥量も把握できる。 性の向上にもつながる。 じて作業計画を立案しなければならない。 農業は、時間をかけて生物を生産する産 業で ひらふじ まさゆき 1983年東京大学農学系研究科(現在、農学生命科学研 究科)修士課程修了。95年農学博士(東京大学)。 (独) 農研機構のフィールドモニタリング研究チーム・チーム長 を経て、2011年より現職。筑波大学大学院教授(併任)。 フィールドサーバ、生物環境の計測制御などを研究。 などを 測 定できる。また、可 変 施 肥 制 御と組み や収 益 増のためには、これら環 境デ ー タと収 量 デ ー タなどの履 歴 から 最 適 な 施 肥 量や作 業 時 期を決める必要がある。 ところが、農 業は一年に一回 しか 経 験でき な Masayuki Hirafuji 平藤 雅之 農 業では連 作 障 害を避けるために輪 作をしてい い。農 業 を 三 〇 年 やったベテランで も 、たった 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究 機構 北海道農業研究センター 芽室研究拠点畑作研究領域長 2012・6 AFCフォーラム 7 特集 IT先端技術の働く農業 北 海 道の十 勝エリアでの耕 作 面 積は平 均四〇 グして、灌 水 制 御 を 遠 隔 的に行 えるようになれ するため、土 壌 水 分 をリアルタイムにモニタリン 果 樹 生 産や施 設 園 芸では品 質が収 益に直 結 るサ ーバ、 いわば定 点 無 人 観 測ロボットである。 のケ ースにコンパクトに格 納 した 野 外に設 置 す ど)、カメラ、無 線 通 信 機 器( 無 線LAN)を一つ 湿 度 、土 壌 水 分 、土 壌 温 度 、二酸 化 炭 素 濃 度な このフィールドサ ーバは、種 々のセンサ ( 気 温、 測を行うため、さらに莫大なデ ータが得られる。 量のデ ー タに加 えてフィールドサ ーバは定 点 観 すると四〇〇〇万サンプルとなる。このような大 四 〇 〇 万サンプルになる。これを一〇 年 間 蓄 積 得られる。地域単位では、この一〇〇〇倍として 業が行 えるようにするため、われわれはフィー ば、間違いなく生産性が向上するだろう 。 複数のフィールドサーバ (写真)を農地に設置し、 (グ ー グル)な どインタ ー ネット 上の Google サ ー ビスで蓄 積されているデ ー タも 膨 大である 進 行 とともに、このような栽 培 管 理 を するのは その場 合、消 費 者にはカメラを 通して、安 全・ それらを 連 携させると、ワイヤレス・センサネッ が、このような大量のデータは一般に「ビッグデー ㌶ / 戸 なので、一戸 当 たり四〇 〇 〇サンプルが 安 心な農 作 物を生 産しているところを直 接 見て トワ ー クと呼ばれる無 人 観 測システムができ 上 タ」と呼ばれている。種 々のビッグデ ー タを 組み ルドサ ーバという新兵器を開発した。 もらうこともできる。同 時に、不 法 投 棄や盗 難 がる。このネットワ ーク化によって、各 設 置 地 点 合わせて解 析 すると、全 く 新しいサ ー ビスを 実 年 々 、困難になっている。 などの防止ができると、さらに便利である。 の環 境デ ー タや画 像デ ー タがリアルタイムに得 施できる。たとえば、アマゾンでは個 人の嗜 好に 無人観測ロボ ッ トに着目を られる。現 場を歩 き 回ってチェックする時 間のロ これら課 題 を 克 服し、できるだけ 簡 便に農 作 スを提供している。 農 業においても 同 様の解 析によって、肥 料や 労働時間などの削減ができると期待される。 電 波 を 使 うことができるところが多 く 、さらに アメリカなど海 外では日本 国 内よりも強 力な る応 答はカオス現 象の一種であ り 、前 歴 などの が、実 際には気 象 現 象、植 物の環 境 変 化に対 す ほど混 沌として手に負 えそうもないのも事 実だ もっとも農 業 関 連のデ ー タは集めれば集める 遠 距 離 を 接 続で き る 。ネパー ルのヒマラヤでは たとえば、農業機械に搭載されたセンサによっ あるが、短 期 予 測は可 能であ り、その結 果 を 活 このモデルによって長期予測することは困難で 生産の効率的管理で収益増 能性を秘めている。 表せることが知られており、農 業 を 変 革 する可 の複 雑さであ り、比 較 的 単 純な非 線 形モデルで これは決定論的な過程から出てくる見かけ上 影響を受けて複雑に変化したものである。 農業ビ ッ グデ ー タの活用法 二八㌔メー トルを接続できた。 た。 一㌔メ ー トル弱の距 離 を 接 続できるようになっ 価格も下がっている。現在は数千円の機器でも、 無 線LANは技 術 革 新で性 能が年 々 向 上し、 ぴったり 合った商 品の推 奨などの高 度なサ ー ビ 複数のフィールドサーバによりセンサネットワークが構 築される フィールドサーバ こういった情 報 通 信 技 術(ICT) の進 歩 を 農 業 経 営の大 規 模 化 とつなぎ 合わせれば、生 産 現 場における大 量のデ ー タの収 集が可 能になり、 て、収 量、施 肥 量、農 薬 散 布 量などのデ ー タが一 用することで的確な生産管理をすることができ 生産性の向上にもつながる。 ㌃(一〇㍍×一〇㍍) ごとに得られるとしよう 。 8 AFCフォーラム 2012・6 スや体力消耗を大幅に節約できる。 写真 フィールドサーバ フィー ルドサ ー バを利用して生産性向上を 効率的管理が可能になり、収益増などが期待で る。言い換 えると、ビッグデ ー タによって生 産の フトを 組み合わせてフィールドサ ーバを 簡 単に とんど保ったまま、オ ー プンソースのハー ドやソ は樹 体 水 分 をモニタリングしながら Open-FS 高 品 質 な 果 樹 を 生 産 するために開 発 した 灌 水 はなく環境制御分野での応用が期待される。 えている。今 後は単にデ ー タを 収 集 するだけで 制 御 機 能( 灌 水 用 電 磁 弁を開 閉 する機 能 )も備 わかりやす く 言おう 。完 成 品が市 販されるわ 組み立てることができるようにした。 日 本の農 業は「 機 械 化 貧 乏 」といわれてき た けではないが、組み立てキットなどの形態で提供 きるわけである。 が、今でも農業機械の減価償却費が生産費に占 どから購 入できるようになってき たため、大 規 フィールドサ ーバが、やっとベンチャー 企 業な 点に着 目した訳である。オ ー プンソ ースである 模 法 人の農 場 な どでの利 用 が 次 第に増 えて き されれば、子 どもでも 組み立てることができる る。その原 因の一つは、大 量 生 産という 仕 組みに ためユー ザ ー 自 身で拡 張や改 良 も 比 較 的 簡 単 める 割 合 は 少 な く な く 、経 営 圧 迫 要 因でも あ ある。実 際のところ、現 代の大 量 消 費 社 会は大 た。まだ製品としては、簡便性・耐久性などの点 で改 善の余 地はあるが、現 場での利 用が増 える にできるようになった。 このようなフィールドサーバをオープン・フィー に従って改 善しやす くなるという 相 乗 効 果があ 量 生 産で一度に同じものをたくさん作ることで 低コスト化が実現されている。 携 帯 電 話は数 十 億 台の市 場 が あ り 、大 量 生 )と呼ぶことにした。 ルドサ ーバ ( Open-FS さらにデ ー タの保 存・閲 覧などのサ ー ビスにつ など いても、無 償のクラウドサ ー ビス ( Twitter インタ ー ネット 上で利 用できる情 報サ ー ビス) される。タイ、中 国、インドなどとの共 同 研 究に ようになり、設 置 数はさらに増 えることが期 待 産がその高 機 能 化と低コスト化の両 立を可 能に を活用するようにした。 よって、海 外への技 術 移 転も進んでおり、多 種 多 によって、腕に自信のある農 る。さらに Open-FS 業 者や学 生が自 分でフィールドサ ーバを作れる はソーラ ーパネルと一体化したオ ー Open-FS ルインワン構 造であ り、直 径一〇 ㌢メー トル、深 している。もし、農 業 機 械の生 産 台 数が携 帯 電 位で製 造できればスマー トフォン以 下の価 格に さ三〇 ㌢メー トルの穴を掘って挿 すだけで設 置 農 薬の使 用など生 産 履 歴 情 報 を 手 書 きで記 る 。今や 、そ れに 代 わって 、インタ ー ネッ ト を 帳 する時 代にそろそろ区 切 り をつけるべきであ 設 置 後は、その場 所の土 壌 水 分 、土 壌 温 度な 使ってさまざまな農 産 物の生 産 履 歴 を 入 力し、 る。その機 能はスマー トフォンに近 く、一億 個 単 フィールドサ ーバにも、これと同 じ 問 題があ 話並みになれば、ケタ違いに安くなるだろう 。 なるだろう 。しかし、実 際には注 文 を 受 けるた できる (図1)。 様のフィールドサ ーバが作られている。 びに一~ 数 台の手 作 業で製 造 している 。このよ どのデ ータを、たとえば一時間に一回自動的につ チェックできるシステムが普 及 しつつあるのだか うな小規模な生産の段階ではどうしても高価に のクラウドストレージ ぶやく 。その結果、 Twitter (インタ ー ネットを 利 用してデ ー タを 保 存でき 農 業 機 械の作 業 位 置 、収 量 、施 肥 量 な どの そこで考 えられた 対 応 策の一つが、単 品 生 産 オ ー プンソ ー ス技術活用も が収 集できるようになる( 図2)。ただし、農 業 これを 農 地に多 数 設 置 すると、大 量のデ ー タ ク ラ ウ ド 技 術 を 農 業に活 用 によって思い思いの保 存 形 式でデ ー タが蓄 積 さ タの互換性である。それぞれのアプリケ ーション しかし、実は大 きな問 題がある。それはデ ー それでもユー ザ ー はスマー トフォン以 下の価 なってしまう 。 格 を 期 待 する。これは従 来のものづく りの方 法 るサ ー ビス) に一時間ごとのデ ータが記録される。 ら、それらを活用すべきであろう 。 では明らかに実現不可能である。 における低コスト 化 を 実 現 する方 法 として、関 分 野で本 格 的にビッグデ ー タを活 用 するために れている 。デ ー タの保 存 形 式の違いや 保 管 され デ ータも収集可能となった。この点に関しても、 連する技術情報を無償で公開するオープンソー は、オ ープンな農 業 用クラウドプラットフォーム ている機 器や場 所(ストレー ジサ ー ビス)が異な デ ータ活用を積極的に考えていくべきだろう 。 ス技術を活用する方法である。 を用意するのが望ましい。 具体的には、フィールドサ ーバが持つ機能をほ 2012・6 AFCフォーラム 9 特集 IT先端技術の働く農業 デ ー タとして活 用 する際の大 きな障 害になるの ると、それぞれのデ ー タを 統 合して一つのビッグ 術 総 合 研 究 機 構( 農 研 機 構 )とメー カ ー が共同 なか難しい。そこで、われわれ農 業・食 品 産 業 技 間 企 業や農 業 経 営 者 が 自 主 的に行 うのはなか である ( 取 り 装 置 )が九 〇 〇 ドルで市 販 されるとのこと こういった 研 究プロジェクトや 新 製 品の情 報 画 期 的な形 質 を 備 えた新 品 種は知 的 所 有 権 と み出 してき た 技 術 革 新の一つは新 品 種であ り 、 農 業 生 産の発 展 を 支 え、ブレー クスルー を 生 いう状況が見えてきた。 が登 場し始めており、ゲノム情 報があ り 余ると )。 press-releases/view/39 これ以外にもさまざまな次世代シー ケンサ ー http://www.nanoporetech.com/news/ である。 して、これを 行 う 共 同 研 究プロジェクトが 本 年 その場 合 、あるソフト 会 社の製 品で入 力 した を積 極 的に集め、時 代を先 取りして農 業 現 場に 度からスター トした。 生 産 履 歴デ ー タとA社の農 業 機 械の稼 働 記 録 活用することをお勧めしたい。 農研とメ ー カ ー が共同研究 デ ー タ、B社の農 作 業 機の稼 働 記 録デ ー タを組 み合わせて使 うことが出 来るようにすることが と呼ばれる) やアクセス方 法 をオ ー プン化し、さ のデ ー タの保 存 形 式に関 する情 報(メタデ ー タ みが必要となる。これを行うためには、それぞれ 経 由して簡 単にアクセスできるようにする仕 組 当 然 、それぞれのデ ー タがインタ ー ネットを とコンピュー タの演算速度の急速な進化によって ジェクトとして進められたが、その後 、ナノテク 莫 大な予 算を投 入し、世 界 規 模の共同 研 究プロ のだ 。かつて、ヒトゲノムやイ ネゲノムの解 読 は バはゲノムなど基 礎 研 究での活 用 も 期 待できる 最後に、大きな夢を述べたい。フィールドサ ー はこのよう 観 測し続ける必 要がある。 Open-FS な用途も念頭において開発したものである。 センサをできる限 り 高 密 度に設 置して、長 期 間、 体 選 抜のためには、土 壌 水 分や土 壌 温 度などの が不 可 欠である。耐 冷 性、耐 乾 燥 性に優れた個 るためには、作 物の形 質に関 するビッグデ ー タ こういった大 量のゲノム情 報 を 育 種で活 用 す しても非常に大きな価値がある。 らにクラウドサ ー ビスとして誰 もが簡 単に利 用 「 個 人のDNAを一〇 〇 ドルで読 み 取 れるよ う フィールドサ ーバを一台一〇 〇 〇 円で作れる ゲノム情報での育種にも有効 できるプラットフォーム ( 農 業オ ー プンクラウド になる」という話がいよいよ現実になってきた。 ようになったとしても、一万 台 規 模の設 置では、 ポイントだ。 プラットフォー ム) の標 準 化 を 行 うことが 合 理 その先 駆 けとして、ナノテクを 使ったUSBメ フィールドサーバによる土壌水分・地温等の定点観 測データと農業機械搭載センサによる収量・施肥量 等のデータをクラウドサービスで収集 的だ。 クラウドサービス 一〇 〇 〇 万 円のコストがかかる 。数 が 増 えると 図2 フィー ルドサ ー バとクラウド サ ービスの関係 モリサイズの次 世 代シ ー ケンサ ー(DNA読 み 設 置 作 業やメンテナンスのための労 働 時 間 も 大 き くなる。そのため、コストはなかなか下がらな い。その解 決 策 として衛 星デ ー タと組み合わせ るという 方 法 を 考 えている 。フィ ールドサ ーバ を 大 規 模かつ高 密 度に設 置したエリアがどこか に一カ所でも あれば、このデ ー タを 地 上で観 測 した実デ ー タとして衛 星デ ー タの較 正に使 うこ とができる。この場合、衛星デ ー タを使って極め て広 域の土壌 水 分や土壌 温 度のデ ー タを得るこ とができるため、実 際の営 農 現 場でも す ぐに活 用できるだろう 。 10 AFCフォーラム 2012・6 ところが、これらのオ ー プン化や標 準 化 を 民 図1 オープン・フィールドサーバ 人感センサ付きLEDライト 親機と無線 LANで接続 ソーラーパネル 地上部:70cm 地下部:30cm 10cm 特集 IT先端技術の働く農業 GIS使ってほ場情報管理 立ち、多くの技術が既に実用化されている。 くる。そのような場 合に、IT ( 情 報 技 術 )が役 最先端情報システム活用で変わる日本農業 今、日本の農業現 場では大規模 経 営に向 けてのさまざまな課 題 を 支 援する最先端情報システムの実用化が進んでいる。機械の位置情報を 活用した農作業の効率化、人工衛星画像解析による収穫時期の判断 など、その現場と今後の展望をリポ ー トする。 一方で、農 業 従 事 者の高 齢 化 が 進み、新 規 就 農 者が限られているため農 業 人口は減る一方で ある。農 業 従 事 者の減 少により 、一部の農 地は 効率経営などが時代の要請 これ まで 、日 本の農 業 は 農 業 機 械の性 能 向 GISは、所 有 者などの基 本 的な情 報から作 耕 作 放 棄 地になることが予 想されるが、多 くの ところが、農 地 を 借 りて耕 作 面 積 を 広 げてい 付 け 内 容や施 肥 内 容など農 作 業に関 連 する情 上、化 学 肥 料や除 草 剤の使 用、品 種 改 良などの 分散錯ほ状態の農業を効率化する上で、役立 っても、数 十 ㌃の農 地が数 十 枚に分 散しており、 報 を、ほ場 地 図に結び付 けて一元 的に管 理 する 優 良 農 地は、周 辺の意 欲のある担い手が借 り 受 有 限だという 認 識が広 ま り、さらには肥 料の多 地 域 全 体に広がる農 地 間 を 移 動 しながら作 業 仕組みであり、既に利用が広がっている (図1)。 取 り 組みにより 生 産 性 を 大 幅に向 上 させてき 投が環 境へ影 響 を 与 えることについても 関 心が を 行 う 、いわゆる分 散 錯ほ状 態での農 作 業 とな つのがGIS (地理情報システム) の技術である。 高まってきている。TPP (環太平洋連携協定) へ でいっそうの効 率 性の向 上を図り、低コストで安 これらの背 景から、今までになく、少ない資 材 規模拡大に伴って不足する労働力を補うために に農 地のくせを 見 極める必 要がある。あるいは 握 していない農 地 を 耕 作 することになり、徐 々 さらに、耕 作 面 積 を 広 げることで、性 格 を 把 荷の高い田植 えや収 穫 作 業 を 受 託し、農 地の所 作 業 するだけでなく、農 地の所 有 者から作 業 負 法 人でも、農 地を借り受けて自 分の農 地として 一〇 〇 枚 以 上の田を 耕 作している生 産 者や農 業 組 合での利 用はも ちろんのこと、規 模 を 拡 大 し 広域なエリアを管理する必要のある農業協同 定 的に収 穫 を 得る持 続 的 な 取 り 組みが求めら アルバイトなどに作 業 をお願いする必 要 も 出て 来に影響を与える大きな問題だろう 。 るケ ースがほとんどである。 け規模を拡大していく 。 にしぐち おさむ 1956年広島県生まれ。79年京都大学理学部卒業後、日立 ソフトウェアエンジニアリング株式会社 (現、日立ソリューショ ンズ) に入社。2004年から農業ITビジネスに参画。担当する 農業情報管理システム 「GeoMation Farm」 は、農業協同組 合を中心に40団体以上の導入実績がある。 日 本が参 加 するかしないかも、日 本の農 業の将 た。 Osamu Nishiguchi 西口 修 れるようになってきていると言えるだろう 。 ただ最 近は、燃 料 代や肥 料 代の高 騰で資 源が 株式会社日立ソリューションズ 社会システム第2本部 担当部長 2012・6 AFCフォーラム 11 特集 IT先端技術の働く農業 有 者に代わって作 業 を 行 うケ ースも ある。その 場合にGISが役に立つ。 たとえば、播 種 機や肥 料 散 布 機の作 業の進み とができる (図2)。 土壌マップをGISに登録し、窒素、リン酸、カ 具 合を画 面で確 認 することで、追 加 資 材を載せ 使えば、システムの投資対効果がより高くなる。 、土 壌 水 分 量 などの いう間違いを防ぐ意味もあるのだ。 規模生産者でGISが利用されているのは、そう った、ということも あると聞 く 。多 くの農 協、大 んぼで、間 違って隣の田んぼの収 穫を行ってしま て管 理しておくことで、前 述したように、ほ場ご とができる。作業の受託情報を地図と関連付け 機 能 を 使って、投 与 する肥 料の最 適 化 を 図るこ お くことにより 、システムが 提 供 する施 肥 設 計 情報を土壌分析結果としてほ場ごとに登録して 応援を派遣することも可能だ。 可 能 となる。進 捗が遅れている農 作 業に対 し、 われる農 作 業 全 体の作 業 効 率 を 上 げることが 運 搬トラックの派 遣 時 期 を 推 定して、現 場で行 農地内での移動距離から収穫量を推測し、穀物 た 運 搬 車 を 派 遣 するタイミングや、コンバインの リウムなどの土 壌 成 分や GISの利 用シ ーンは数 多い。農 地の形 状 を との受 託 内 容 を 確 認 しながら、間 違いのない作 笑い話のようだが、毎 年 受 託 内 容が変わる田 地 図 化し、農 地ごとに作 付けの情 報を記 録 する 業が行える。 土 壌のタイプを 示 す 土 壌マップをGISに登 ば、地域内のムラが視覚的に把握可能となる。 との収 量や品 質 を 農 地 と関 連 付 けて登 録 すれ 画 作 成や作 物の現 地 確 認に利 用できる。ほ場ご イムで送る機 能 を 使って、広 域に展 開 する農 業 位置情報を、本部にある地図システムにリアルタ 込んで農 業 機 械 を 操 作 す れば、スマー トホンの また、スマー トホン ( 高 機 能 携 帯 電 話 )を 持 ち とにつながる。 順 番 を 見 直し、無 駄なアイドル時 間 を 減らすこ それぞれのほ場で作 業 を 開 始 する時 間や 作 業 庫の前で列 を 成 している様 子が観 察できれば、 ラジコンヘリ を 使って農 薬 散 布 を 行 う 場 合に 機 械や作 業 者の位 置を地 図 上でモニタ ー するこ また、収 穫 物 を 載せたトラックが穀 物の保 管 だけでも、輪 作 体 系を維 持 するための作 付け計 pH 録 してお くことにより 、収 量や品 質の違いが土 質によるものかどうかを 確 認でき 、品 質の上が らない農 地に異なる作 物 を 栽 培 するなど、営 農 の改善に結び付けられる。 最 近 流 行のGPS ( 全 地 球 測 位システム)装 置 を 付 けたタブレットPCに地 図デ ー タをコピ ー 色分けにより作物の種類を分かりやすく表示 して現 場に持ち出せば、現 在 位 置を農 地 地 図に 農業機械による作業の進捗状況を色で示す 重ね合わせて表 示しながら、現 場での気 付 き を その場でメモしたり、位 置 情 報 付 きの写 真 を 撮 影 し、本 部にある地 図システムに送って地 図 と 12 AFCフォーラム 2012・6 一緒に管理することも可能である。 ほ場の栽 培 履 歴 を 端 末から参 照 することで、 過去の情報もその場で確認することができる。 施 肥 設 計 や 営 農 合 理 化に活 用 いったん農 地の地 図 を 作 成 すれば、利 用 範 囲 は広がる。また、さまざまな目 的で地 図 情 報 を 図1 ほ場管理システム画面例 図2 農業機械のモニタリングの様子 最先端情報システム活用で変わる日本農業 のは難 しいが、ある研 究によると導 入 前 後で約 三〇%の重油削減効果が期待できると報告され ている。 その他 、衛 星 画 像 を 使った 解 析によって、水 稲の食味の指標の一つであり、窒素肥料の多寡の 指 標ともなるタンパク含 有 量の推 定 も 可 能であ る。この値 を 元に翌 年の元 肥の量 を 調 整 するこ とで、最適な施肥に結び付けることができる。 衛 星 画 像を使って生 育 解 析 するには、同じ品 種のほ場だけを正確に抽出することが必要なた め、GISを 使った農 地の正 確な地 図 と作 物 情 報が記録されていることが前提となる。 残留農薬のリスク排除も可能 最 近は、市 場に出 回った農 作 物から残 留 農 薬 が見つかったというニュースはあまり見かけなく ほ場の衛 星 画 像を解 析 すると、地 域 全 体の小 麦 してはいけない作物への使用や希釈倍率、使用回 なった。しかし、それでも現 場では、農 薬を使 用 も、 ヘリコプタ ー にスマー トホンを 取 り 付 け、位 てくるため、結 果 的に水 分 量の少ない状 態で収 小麦は生育が進むと穂に含まれる水分が減っ まとう 。 されない作 物への残 留 農 薬のリスクが 常に付 き いるが、農 薬の使 用 方 法が間 違っていると、検 査 ここでも 情 報システムが活 躍 する。農 薬 散 布 ストの削減と品質向上に役立てている (図3)。 いは生 産 者が独 自に定 義した、より 厳しい農 薬 しく 記 録 する。これを 国の農 薬 使 用 基 準、ある 前に生 産 履 歴 管 理システムを 使って農 薬の使 用 気 象 条 件 は 毎 年 異 な り 、重 油の価 格 も 変 動 使 用 基 準に合っているかどう かをシステムが 自 衛 星 画 像 を 用いた小 麦の成 育 度の把 握は、毎 しているので、衛 星 画 像 解 析 を 導 入 する前 と導 動 的にチェックする仕 組みを 利 用 すれば、残 留 可 否 を 事 前に確 認し、散 布 実 績 をシステムに正 入した後のコスト削 減 効 果を定 量 的に算 出 する 年 北 海 道の一〇 以 上の農 協が取 り 組み、乾 燥コ コスト削減に結び付けることができる。 穫 することが可 能となり、乾 燥に必 要な重 油の サンプリングによる残 留 農 薬 検 査は行われて 数を間 違 えるケ ースがいまだに散 見されると報 ヘリの散 布 軌 跡 を 地 図と重ねて記 録 することが でき、農 薬 散 布の作 業リポ ー トとして散 布 依 頼 者に提示することが可能である。 衛星画像利用で生育解析も どの作 物 も そ う だが、たとえば、小 麦の刈 り 入れ時 期の判 断は実 際にほ場に行って確 認して いる。ところが、あぜ道のそばといった限られた 場 所の観 察 情 報からほ場 全 体の生 育 状 態 を 判 断 するのは非 常に難 しい。一枚のほ場の中でも 生育にムラがある場合が多いからである。 そこで衛 星 画 像が役に立つ。収 穫 直 前の小 麦 の進んだところから収穫ができることになる。 の生 育 具 合の相 対 的 な 違いが把 握できる。この 地図と生産履歴が連携し、より管理しやすくなった 置情報を本部の地図システムに送ることにより、 図4 地図と連携した生産履歴管理システム画面例 告されている。 小麦の生育状況を色分けにより把握可能 相 対 的な違いを元に収 穫 順 序を決めれば、生 育 図3 衛星画像を利用した小麦の生育解析結果 2012・6 AFCフォーラム 13 特集 IT先端技術の働く農業 農 薬のリスクを 排 除し、取 引 業 者や消 費 者は安 作 業と播 種 作 業を同 時に行 えるため、途 中で雨 こな すことができる 。ま た、作 業 者一人で耕 起 れる。降雨量などは複数の農業法人で共同 利用 予 想 されるため、こういった 技 術の普 及 も 望 ま また、農業機械そのものの情報化により、近い 心 してその農 作 物 を 購 入 す ることが 可 能 とな 生 産 者にとっても 、生 産 履 歴の記 録は、単に 将 来は、作 業 機で得られた 情 報( 種や肥 料の散 現在、高齢などを理由に引退してしまう農業 が可能であれば、より導入が早く進むだろう 。 消 費 者に安 心・安 全 を 提 供 するだけでなく、使 布 量や残 量 、収 穫した穀 物の量や品 質など)を 経験者の持っているノウハウの伝承を情報化技術 が降っても耕起作業をやり直す必要はない。 用した資 材の量からほ場ごとのコスト計 算が可 本 部にある地 図システムにオフラインあるいはリ で解 決できないかという 研 究が行われている。い る。 能 となるため、農 場 経 営の判 断 材 料 としての利 アルタイムに送 ることで、位 置 だ けでな く 作 業 わゆる匠の技を記 録し、新 規 就 農 者が農 作 業を 篤農家の匠の技を情報化 用もできる。 状 況や作 業 実 績 も 本 部 側で正 確にモニタリング する場 合に、匠の技 を 参 考にしながら作 業 を 行 ま た 、農 地の地 図 と 関 連 付 けて 生 産 履 歴 を と記録ができるようになるだろう 。 するよりも、より正 確な情 報の記 録が可 能とな 率 化につなげることができるようになる。現 在、 これらの技 術によって、農 作 業の省 力 化 と効 節や、作 物の生 育に応じた作 業 内 容について逐一 篤 農 家の気 温の変 化に応じたハウスの温 度 調 管 理 すれば、ほ場の番 号だけで生 産 履 歴を記 録 る。地 図と連 携した生 産 履 歴 管 理システムも 既 標 準 化 を 含めて研 究 されているテ ーマであ り 、 記録し、そこからノウハウとして情報を得ようと えるようにするものである。 に普及している (図4)。 農 業 従 事 者 数の減 少 傾 向の中、近い将 来の実 用 する取り組みである。 同じ品 質の農 作 物 をつくる場 合でも、篤 農 家 化が期待されている。 機械のインテリジェント化へ 農 業 機 械 を 自 動 運 転 させて省 力 化に役 立て めて自 動 走 行 するには、数 百 万 円の専 用のGP ンチオ ー ダ ーの高 精 度 位 置 をリアルタイムに求 に畑がぬかるんでいて機 械が入れなかったとか、 左 右される。せっかく 現 場での作 業へ向かったの 言 う までもないが、農 業 機 械の使 用は天候に には答 えが出せないチャレンジングな課 題となっ 期にわたる情 報の蓄 積が必 要であ り、一朝一夕 て情 報 化 するかが大 きな課 題である。また、長 ンも 同 じではないため、どのようにノウハウとし 一人ひとりの行 動パタ ーンや毎 年の気 象パタ ー S装 置が必 要であ り、農 業 機 械 本 体に比べた相 事 務 所の周 辺 は 曇 り だったが 現 場 は 既に雨 が ている。 セン サ ー 活 用 で 無 駄 な く す 対的な価格の高さが農業分野での普及が進まな 降っていて作 業ができなかった、というケ ースが るという 構 想は以前からあるが、今のところ、セ い原因の一つとなっている。 一〇 〇 万 円 程 度に抑 えられれば、格 段に普 及が 関 係にも 似ているが、普 及により一台の価 格 が 置し、センサーの情報を事務所で確認できれば、 をモニタ ー できる通 信 機 能 付 きのセンサ ー を 配 こういう 場 合に、現 場に土壌 水 分 量や降 雨 量 した農 業 を 実 践 するだろう 。彼らがITを 使っ 者たちが農 業に参 入 するときには、情 報を活 用 日どっぷり 漬かり、日 々 情 報 を 活 用している若 く 。パソコン、スマー トホンやインタ ー ネットに毎 最 近 は 、農 業 に 関 心 を 持つ若 者 が 多いと 聞 進むといわれている。 事 前に畑のぬかるみ具 合 を 推 測したり、雨の降 たスマー トな農 業ができる環 境は徐 々に整いつ よくある。 そ う なれば、たとえば使い方 として次のよう り 具 合 を 確 認 することができるため、無 駄な行 装 置の低 価 格 化 と 装 置の普 及 は、鶏 と 卵の なことが可 能 だ 。GIS上でほ場ごとに設 計 し 展が期待される。 きたといわれる中で、今 後、さらなる情 報 化の進 つあるし、農 業は常に最 新の技 術 を 取 り 入れて 通信機能付きセンサー 自体の価格は一台数十 動をなくすことができる。 農 機が耕 起 作 業を行い、その後ろを人が運 転 す 万 円に下がっており、今 後 さらに安 価になると た軌 道デ ー タに基づいて自 動 走 行 するロボット る播 種 機が追 随 すれば、二人 分の作 業 を一人で 14 AFCフォーラム 2012・6 日 本 政 策 金 融 公 庫・農 林 水 産 事 業 ます 。 プラスに転 じ たことが 影 響 してい のとは好対照です 。 景 況DIのマイナス幅 が 拡 大 した 都 府 県の酪 農は、前 年の猛 暑に 一 三 業 種ごとの景 況DIと二四 下したことなどを 受 け、〇・〇から により 、二 三 年の生 乳 生 産 量が低 よる繁 殖への影 響や東日 本 大 震 災 年 見 通 しDIの結 果 を 、図1およ ▲二四・二とマイナス幅が拡 大 して 稲作がプラスに転じ寄与 に示 し ま し たが 、 いま す 。一方 、北 海 道は、都 府 県へ びグラフ1 ~ 経 営 部 門 別 結 果のうち、稲 作と酪 の飲 用 向け生 乳の移 送が増 加した た。 二五・二とマイナス幅が縮 小しまし ことなどを 受 け 、▲三 七・八から▲ 農については、いくつか 特 徴 がみら れます 。 ま ず 、稲 作 は二三 年の場 合 、作 況 指 数および一等 米 比 率がともに ▲ 16.6 ▲ 0.9 ▲ 11.7 14.2 ▲ 20.5 ▲ 38.8 5.0 ▲ 26.9 ▲ 11.4 0.0 ▲ 24.2 9.2 ▲ 7.4 ▲ 47.4 ▲ 6.8 15.5 ▲ 6.2 12.5 14.1 8.4 ▲ 50.0 ▲ 20.0 ▲ 6.3 0.0 (注) ≦ −50 < ≦ −20 < ≦ −5 −5 < < 5 ≦ < 21 ≦ ま た 、大 震 災の影 響 な どから 、 ▲ 47.3 平年並みに戻ったことなどから、大 ▲ 32.1 肉 用 牛 は▲四 七・四 、茶 は▲四 七・ 9.9 幅に改善し、北海道、都府県とも三 ▲ 15.7 三、きのこ▲四七・一、施 設 花 き▲三 ▲ 6.9 年ぶりのプラスに転じました。二二 4.7 これは、回 答 数の約 三 割 を 占め ▲ 14.0 ブロイラー 〈況 景D 況 景 ID のI 調の 査調 結査 果結果〉 ▲ 2.0 八・八と、景 況DIは大 き なマイナ ▲ 19.8 年は猛 暑の影 響で、一等 米 比 率 が ▲ 19.1 る稲 作の景 況DIが、大 幅に改 善 ▲ 32.2 ス値 となっていま す 。このため、稲 4.5 過 去 最 低 となったことな どから、 13.1 マイナス幅が大幅縮小 ▲ 55.5 農 業 全 体の二三 年 景 況DI( 動 ▲ 37.8 酪農 (都府県) 採卵鶏 見通し 向指数) は、二一年以降二年 連 続の ▲ 14.7 養豚 下 降( 景 況 悪 化 )に歯 止 めがかか ▲ 47.1 肉用牛 り、一転してマイナス幅が縮小しま ▲ 51.8 酪農 (北海道) きのこ した。 ▲ 6.8 施設花き 具 体 的には、農 業 経 営の業 況が 43.5 果樹 「悪くなった」と「良くなった」との ▲ 36.9 稲作 (都府県) 茶 差 を 指 数 化 した 景 況DIが、二三 ▲ 0.7 施設野菜 年の場 合、 「 悪 くなった」と答 えた 10 ▲ 7.9 露地野菜 人が減 少し、逆に「 良 くなった」と 日本公庫農林水産事業がスーパーL資金や 農業改良資金を利用されたお客さまを対象に 24年1月に行った23年景況調査で、農業の 景況判断指数に3年ぶりの改善が見られまし た。しかし大震災の農業現場への影響は、依 然として残っているようです。 ▲ 25.2 稲作 (北海道) 畑作 答 えた人が増 加した結 果、前 年の ▲二五・二からマイナス幅 が 大 き く 縮 小して▲七・九となったためです ● 農業全体 実績 Report on research (図1)。 ―平成23年農業景況調査― H24.1調査 H23.1調査 経営部門 実績 したことによって、指 数 そのものが 農業景況DI 3年ぶり改善 震災の影響 依然残る 図1 景況天気図 情報戦略レポ ート 2012・6 AFCフォーラム 15 Report on research 1:現在もある 2:以前はあったが今はない 3:今までない (上記で 「1:現在もある」 と答えた人のみお答えください。複数回答可) 現在ある悪影響の内容は、 1:生産部門の被害 2:資材仕入の被害 3:出荷流通の被害 4:販売価格の下落 5:風評被害 グラフ4 露地野菜/施設野菜 グラフ1 農業全体 % 60.0 見通し 40.0 露地野菜 ▲2.0 0.0 施設野菜 ▲20.0 9.9 ▲14.0 ▲6.9 ▲15.7 4.7 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年 ▲7.9 ▲0.7 0.0 ▲25.2 ▲60.0 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年 グラフ2 稲作 % 60.0 見通し 40.0 % 60.0 43.5 見通し 40.0 14.2 20.0 茶 果樹 ▲0.9 ▲16.6 ▲11.7 ▲20.0 ▲40.0 ▲32.1 ▲47.3 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年 グラフ6 施設花き 20.0 北海道 4.5 0.0 ▲36.9 ▲20.0 都府県 ▲40.0 ▲60.0 ▲6.8 13.1 ▲55.5 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年 グラフ3 畑作 % 60.0 見通し 40.0 % 60.0 見通し 40.0 20.0 5.0 0.0 20.0 0.0 ▲20.5 ▲20.0 ▲40.0 ▲60.0 20.0 ▲40.0 グラフ5 茶/果樹 ▲60.0 見通し ▲20.0 ▲40.0 0.0 % 60.0 40.0 20.0 ▲60.0 作の寄与は大きいと言えます 。 震災影響 震災 (津波、原発事故等も含む) によって、経営に悪影響が 見通しDIはプラス目前 東日本大震災の影響について、現時点での状況をお伺いします。 先行きを探る二四年の農業全体 3:悪くなる の経 営 見 通 しDI(グラフ1 )は、 2:変わらない 大 震 災 などマイナス要 因 が 多 かっ 1:良くなる 注:稲作からブロイラーまで13業種に分類した業種別に集計し、 「良くなった (良くなる) 」の構成比から 「悪くなった (悪くなる) 」 の構成比を差し引き、DI として分析しています。 た二三 年に比べ、復 興 需 要 な ど を 3:悪くなった 軸 にし た 先 行 き 改 善 期 待 感 か ら 2:変わらない か、▲〇・七と、プラスまであとわず 1:良くなった 今年 (平成24年) の経営見通しは、 かとなりました。マイナス幅が二三 景況 農業経営の業況は 年の▲七・九と 比べさらに七ポイン 平成23年の経営を振り返って、平成22年の経営と比べるといかがでしたか。 年間を通した状況についてご回答ください。 トも 縮 小していま す 。期 待 感 先 行 といった見方もできそうです 。 調査様式 ▲38.8 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年 16 AFCフォーラム 2012・6 ▲20.0 ▲40.0 ▲60.0 ▲19.1 ▲19.8 ▲32.2 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年 % 60.0 採卵鶏 ▲26.9 ▲37.8 ▲40.0 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年 ▲60.0 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年 ▲11.4 ▲20.0 ▲6.30 ▲20.0 ▲20.0 ▲24.2 都府県 0.0 9.2 0 0.0 北海道 見通し 0.0 20.0 8.4 ▲40.0 ▲50.0 ▲60.0 ブロイラー 14.1 20.0 見通し % 60.0 (注:ブロイラーは、 平成22年以降のデータより公表しています。) % 60.0 40.0 40.0 グラフ8 酪農 グラフ10 採卵鶏/ブロイラー H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 年 ▲60.0 ▲60.0 ▲47.1 ▲51.8 ▲40.0 ▲7.4 ▲40.0 ▲14.7 0.0 ▲20.0 ▲47.4 ▲20.0 0.0 ▲6.8 ▲6.2 20.0 12.5 15.5 養豚 20.0 見通し % 60.0 見通し 40.0 肉用牛 40.0 グラフ7 きのこ グラフ9 肉用牛/養豚 〈日 東本 日大 本震大 東 災震 の災 影の 響影響〉 被 災 地の農 業 経 営の多 く が、い まだ震 災による悪 影 響から脱 する ことができ ない状 況にあることを 東日 本 大 震 災による農 業 経 営へ 肉用牛は九八・六%、酪農は九五・二 示していま す( 図2 3)。中でも、 被 災三県 で 七 割に影 響 の悪 影 響について、二四年一月 時 点 %、きのこは八 七・五%が「 現 在 も ‐ で「 現 在 も ある」 「 以 前はあったが ある」と回答しています 。 業 種 別では、肉 用 牛の七七・八% 三・〇%となっています(図2 1)。 はあったが今はない」との回 答が二 が 三 一・四%でし た 。ま た 、 「以前 関しては、 「 現 在 も ある」との回 答 全 国で見ると、大 震 災の影 響に ところ、全 体では「 販 売 価 格の下 から選 択( 複 数 回 答 )してもらった 害」 「販売価格の下落」 「風評被害」 材 仕 入 れの被 害 」 「 出 荷 流 通の被 容について、 「 生 産 部 門の被 害 」 「資 と回 答 した 方に、その悪 影 響の内 経 営への悪 影 響が「 現 在もある」 価格下落や風評被害が響く 今はない」 「今までない」の三択から 回答してもらったところ、次のよう の経 営が、 「 現 在 も ある」と回 答し 落 」との回 答が七四・四%と最 多で な結果が出ました。 ており、悪影響が広い範囲で続いて した。 は三六・六%が、悪 影 響が「 現 在 も 九・七%、茶は四二・三%、施 設 花 き き のこは 五 〇・〇 % 、酪 農 は 四 ぞれ七二・〇%、七六・一%と最も多 び関 東では、 「 風 評 被 害 」が、それ 的 大 きかったとみられる東 北およ しかし、原 発 事 故の影 響が比 較 ‐ ‐ いることが分かります(図2 2)。 ある」と回答しています 。 ‐ Iも 大 き なマイナス値 と なってい 「販売価格」 「 風 評 被 害 」の回 答 割 また、業種別では、多くの業種で、 い回答となりました (表 1)。 て、震 災による影 響が、二三年の業 合 が 高 く 、原 発 事 故による「 風 評 これらの業 種では、農 業 景 況D 況にも 影 を 落 としていることがう 被害」が、 「販売価格の下落」につな 格の下 落 」のみが八八・三%と高 く 一方 で 、施 設 花 き は 、 「販売価 2)。 がっていることがうかがえます(表 ‐ かがえます 。 地震や津波などの直接的被害が 大 きい岩 手、宮 城、福 島は、全 体の 七一・四%が 経 営への悪 影 響 が「 現 在もある」と回答しています 。 2012・6 AFCフォーラム 17 Report on research 表 現在もある震災による悪影響の内容 (複数回答) 1 地域別 全 国 北海道 東 北 関 東 北 陸 東 海 近 畿 中国・四国 九 州 (%) 生産部門 資材仕入 出荷流通 販売価格 風評被害 の被害 れの被害 の被害 の下落 23.2 14.1 38.2 26.1 14.8 7.3 11.4 9.7 9.1 27.1 39.7 25.2 17.6 29.6 18.2 28.6 23.9 29.9 33.0 31.3 41.0 27.8 24.1 34.5 25.7 29.2 32.5 74.4 79.8 65.8 72.8 63.0 87.3 77.1 80.5 86.8 60.5 46.4 72.0 76.1 55.6 43.6 28.6 50.4 36.0 2 業種別 稲 作 畑 作 露地野菜 施設野菜 茶 果 樹 施設花き きのこ 酪 農 肉用牛 養 豚 採卵鶏 ブロイラ ー 現在もある 31.4 北 海 道 今までない 17.8 55.0 21.0 35.0 48.4 13.6 東 海 近 畿 45.6 44.0 関 東 北 陸 23.0 27.1 東 北 生産部門 資材仕入 出荷流通 販売価格 風評被害 の被害 れの被害 の被害 の下落 27.4 32.3 33.5 55.9 67.9 16.3 55.6 34.1 73.3 49.6 19.9 43.8 42.5 70.5 54.8 32.7 35.6 36.5 65.4 54.8 13.4 15.9 34.1 67.1 87.8 21.3 20.0 41.3 65.3 61.3 19.8 25.2 27.0 88.3 19.8 38.3 36.2 31.9 76.6 57.4 26.3 21.2 29.8 84.0 58.2 18.4 10.5 35.6 94.8 80.8 22.8 16.5 15.2 75.9 53.2 18.2 12.1 24.2 78.8 27.3 72.7 45.5 18.2 36.4 63.6 以前はあったが今はない 1 地域別 全 国 (%) なっていま すが、これは震 災による 需 要の低 迷が影 響 しているものと 考えられます 。 「 風 評 被 害 」の回 答 数は、全 体で は六 〇・五%で す が、業 種 別では、 茶八七・八%、肉 用 牛八〇・八%、稲 作 六七・九%が高 く なっていま す 。 これらの業 種の一部で放 射 性 物 質 の残 留 等が確 認 されたため、業 種 全 体に悪 影 響が生 じ、今 なお 続い ていることがうかがえます 。 ( 情 報 戦 略 部 天 野 絵 里 ) 〔 調査概要 〕 ●調査時点 平成二四年一月 ●調査方法 往復はがきによる郵送 ●調査対象 スーパー L資 金又は農 業 改 良 資 金 融資先のうち二万一四八五先 ただし、原 発 事 故の避 難 区 域 等に ついては、今回の調査対象外です 。 ●有効回答数 七二五八先(回収率三三・八%) 18 AFCフォーラム 2012・6 図2 東日本大震災 (津波、原発事故等も含む) による経営への悪影 響の有無 32.2 14.4 72.0 24.6 29.9 11.3 45.5 18.4 中国・四国 21.4 九 州 22.2 19.3 70.3 23.5 55.1 28.6 49.3 2 業種別 稲 作 畑 作 20.1 22.9 露地野菜 施設野菜 15.9 64.0 18.8 58.2 30.3 27.0 22.5 42.3 茶 果 樹 20.4 53.8 46.9 50.0 酪 農 49.7 16.5 16.0 34.0 18.9 31.4 77.8 肉 用 牛 27.5 養 豚 ブロイラー 44.3 25.8 き の こ 採 卵 鶏 32.5 13.4 36.6 施設花き 42.7 45.0 12.0 39.4 22.8 33.1 28.3 19.0 10.2 49.0 41.4 39.7 3 岩手・宮城・福島 【3県合計】 71.4 稲 作 露地野菜 17.1 64.2 18.9 38.5 23.1 施設野菜 69.6 8.7 12.5 4.8 98.6 肉 用 牛 1.4 54.1 養 豚 0% 17.9 95.2 酪 農 ブロイラー 21.7 17.9 87.5 き の こ 45.9 42.1 20% 8.1 21.6 64.3 施設花き 16.9 38.5 70.3 果 樹 11.6 52.6 40% 60% 5.3 80% 100% さん 酪農を目指した夢の一つが ジェラートショップ。 父の夢のボール受ける娘。 目の前にあるチャンスに 思う存分やってみたい。 伊藤 えりか 愛知県田原市 スイーツ&ジェラテリア バロック 店 長 牧場に消費者を招いた搾乳体験など教育ファ ー ムを実践し、自家製のジ ェ ラ ー トを販売す る店 を開く。消費地の生活者に向けて魅力的な「魅せ る 農 業 」を 積 極 的に展 開す る 娘 と 父 。 「農と食」 のニア ー な関係づくりがある。 2012・6 AFCフォーラム 19 製 菓 専 門 学 校 を 卒 業 。洋 菓 子 店 勤 務 後「 バロッ ク 」 の店 長になった。後方には立さん 自慢の牛のオブジェ p. 19 右 / お 菓 子 は や さ し く 、混 じり 気のないおいしさ 。 人柄が現れている 左上 / えりかさんアイデアの 牛模様の自動販売機 左 下 / 立 さんと バロッ ク 音 楽を聞いて育つ牛 p. 20 る。夏 場に搾 乳 量 を 増やすことができれば どの農 家が群 雄 割 拠 する一大 農 業 地 帯に、 光 地でも あ り、電 照 菊やメロン、キャベツな の変わり目が渥 美 半 島に入った証 拠だ。観 なかを 抜 けると景 色は畑や山に変わる。こ 豊 橋 市 から 車で 渥 美 半 島に向 か う 。街 の強 弱が少ないので牛がリラックスし、反 す ク音 楽だった。 「 人の声が入っておらず、音 まざまな音楽を試し、行き着いたのがバロッ ストレスを 減 ら す ために聴 かせる音 楽 。さ らゆる研 究をし、実 践した。その一つが牛の 頭 あ たりの搾 乳 量 を 増やそ う とあ り とあ 割 り 当て以 上の出 荷ができる。立 さんは一 スイ ーツ&ジェラテリア「バロック」はある。 うがよくなる。すると胃の中の状 態が良 好 ジ ェ ラ ー トシ ョッ プは父の夢 白い壁 とガラス張 りの店に入るとジェラ ー になるのでエサの食べがよくなり、乳 量が上 就 農 以 来 、夢 中で働いた三 年 を 経て、酪 トやシュー クリ ーム、プリンなどスイ ーツの ナ ー で食べることもできる 。ジェラ ー トや 農 をやめた兄から牧 場 を 譲ってもらいやっ がるんです」と立さん。 ケ ー キはすべて伊 藤 えりかさん (二四) の手 と経営が軌道に乗った。 入ったケ ースが並ぶ。奥のイ ー トインコー によるものだ。 。意 外 な一 「 最 初はジェラ ー トづく りにあ ま り 魅 力 プ」とえ りかさんが言 う 通 り、経 営 を 安 定 「 前 向 きで何でも 積 極 的に取 り 組むタイ ― を 感 じてなかったんで す 」 ファームの認 証 を 受 け、消 費 者 を 牧 場に招 させた立さんは、二〇 〇 〇 年から酪 農 教 育 店 を 構 え たのは え り か さ んの 父 で 、計 き、搾 乳などを 体 験してもらい消 費 者 との 言からえりかさんの取材が始まった。 約二七 〇 頭の成 牛 、育 成 牛 を 飼 育 す る 牧 交流に力を入れた。消費者に愛される酪農 たつる 。これがジェラ ー トショッ を目指したい ― 場「デイリ ー パラダイス」を 営 む 伊 藤 立 さ ん ( 五 九 )。ジェラ ー トショップは 立 さんの プへの夢につながった。 とは別に経 営を始めた。だが初 年 度から生 を営んでいたが、兄が後を継いでおり、実 家 活 を 送ってきたが、将 来の夢は菓 子 職 人だ という えりかさん。常に牛が身 近にある生 「 子どものころから牧 場が遊び場でした」 故郷と家族の価値を再認識 一〇年越しの夢だった。 会 社 勤めを一二年 経 験した後、一九七〇 産 調 整に直 面し、 「五〇 頭 を 飼 育 する計 画 った 。 「ジェラ ー トショップをやろう 」とい 年 から 酪 農 を 始めた 立 さん。実 家 も 酪 農 で制 度 資 金を借り、割り当てられた乳 量は 校 を 卒 業 し 、名 古 屋 市 内の洋 菓 子 店に就 う 立さんの誘いには乗らず 、製 菓の専 門 学 活 路 を 見いだ し たのは 夏 場の搾 乳 だっ 職した。勤務は一年半と短かったが、 「商品 牛一頭分だけ」と苦労を味わった。 た 。牛の乳 量 は 落 ち るが 逆 に 消 費 は 伸 び 20 AFCフォーラム 2012・6 に向 き あ う 姿 勢はしっかり学ぶことできま く 、自 分の思 うがま ま 仕 事 をしたい。そ う はいく らでも 進 化 していく 。盛 りつけ 方 も 農 家から学んだ 。 「 素 材 次 第でジェラ ー ト オ ープンして一年半 。多い日で九〇〇人、 いうチャンスが 目の前にあるのだと 思 うよ 立 さんは 場 所 探 しに 奔 走 。牧 場 近 くの オフシ ー ズンといわれる二月でも六 〇 〇 人 したし、お 客 さ まへの心 遣いも 教 えて頂 き 土 地 を 探したが思 うように見つからなかっ が 訪 れた 。 「でも 、もっとおいしいと喜んで 工夫次第で芸術品になるんですよ」。 実 家に戻ったえりかさんを迎 えてくれた た 。計 画 を 進めていく う ちにジェラ ー トと もらえる商 品 を 提 供 していき たい」とえ り うになったんです」。 のは渥 美 半 島の緑 豊かな自 然とのんびりし ケ ー キでは別 々の加工所が必要なこともわ かさんは前 を 向 く 。目 下 、一日一〇 〇 〇 人 ました。私の基 礎となって今日につながって た 空 気 だった 。 「 出るまでは当 た り 前 だっ かった 。も とも との立さんの構 想は「バスの タッフが笑顔を絶やさず、やりがいを持って ョンを 得た「 菜の花 」というフレーバー も あ 風 物 詩でも ある菜の花からインスピレ ー シ り としてやさしい味 だ 。春 先の渥 美 半 島の っぷり 使った「 牧 場ミルク」。とても さっぱ ジェラ ー トの一番 人 気は新 鮮な生 乳をた とがうれしくてたまらない様 子だ 。立さん 話 す 。念 願の夢を娘たちが叶 えてくれたこ ばいいのに… 」と満 面に笑みを 浮かべながら 「 要 領 がよく ないね 。もっと 効 率 的に動 け 立さんにえりかさんの働 きぶりを聞 くと ていたら、二頭買ってしまったんです(笑)」。 います」とかみしめる。 た 景 色 が、緑 が 輝いて風 が 気 持 ちいいなと が目標だ。 というが、現 在は妹のみさとさん ( 二一)を オ ー プン当 初はスタッフ集めに苦 労した 停留所ほどの小さな店」だったが、結果的に は国 道 沿いに立 派なお店 を 構 えることにな った。 はじめ七名のスタッフとの息もぴったり。 「臨 オ ー プンは一〇 年 九月 。店 名は牛たちが 働 く 店にするというのも 私の目 標です 」。 機 応 変にすばやく 行 動に移してくれる。ス 聴いている音 楽 から 採った 。 「いらっしゃい 職 人であると同 時に店 長としての覚 悟がし 父娘が織りなす“ 魅せる農業 ” ませ」というスタッフの明るい声が店 内に響 っかりと備わっているようだ。 店の周 りには牛のオブジェがあ ちこちに く 。テーブルには白いバラが一輪ずつ置かれ、 「ひと 息 入 れても ら え たら 」という え り か る。季節でフレーバー を変えるだけでなく、 が書き記した文章の一つに「今はもう、消費 ある 。 「これは父のこだわり 。一頭かと思っ 天 気 予 報で「 明日は気 温が上がる」となれ 地の生 活 者に魅せる農 業 を 営 む 時 代に生 さんの気遣いが感じられる。 立さんは帰ってきてくれた娘を温かく 見 ばさっぱりしたフレーバーを、「少し冷える」 きている」とある。父 娘が織りなす“ 魅せる ラ ー トショップの準備をすすめていた。 族が待ってくれていたんだなと」。 感 じ ま した 。それと、こんなにも 温 かな 家 守るだけで店のことにはふれず、ひとりジェ と出るとカフェモカのような濃厚なフレーバ 農 業 ”はすでにのんびりした 渥 美 半 島の地 ツとジェラ ー トを 組み合わせた 店への意 欲 を え りかさんは開 店 前に研 修 を 受 け た 酪 ジェラ ー トひとつとっても 奥 が 深いこと だんだんと、えりかさんの心の中にスイー が湧いてきた。 「 誰かに言われたからではな にすっかり溶け込んでいるように思えた。 (青山浩子 / 文 河野千年 / 撮影) ー を作るなど細やかに気を遣う 。 目下の目標はクオリティを高めることとレパ ートリーを広げ ること。ジェラートの本場、イタリアにも行きたい 2012・6 AFCフォーラム 21 連載 第123回 有望な茶品種への転換 日本政策金融公庫 テクニカルアドバイザー 来 種の実 生 茶 園が大 部 分でした 。しか の問 題 を 抱 えながらも、鹿 児 島・宮 崎・京 都・ このため、単一品 種 寡 占 化による弊 害 など きないなどの障害もあります 。 し、挿し木による増 殖 技 術の確 立や茶 原 種 農 愛 知 などを 除 く 各 県では「やぶき た 」寡 占 化 が 国の茶 園 は、一九五 〇 年 代 までは 在 場の設 置などで、優 良 品 種 苗 木の供 給 体 制の の状態が約二〇年、続いています 。 録された茶 品 種 数( 登 録 出 願 公 開 中 を 含む) 一方 、この二〇 年 間に種 苗 法により 品 種 登 整 備が図られたことにより、六〇 年 代 後 半 以 降、品種化が進められました。 当時は品質が優秀で収量性も高く、生産が は五〇以上に及んでいます 。 「 さ えみどり・さ え あかり・はるみどり 」な 安 定している「やぶきた」以 外に良い品 種がな かったので、新 植や 改 植に使 用 された 品 種の こうしゅん り」など炭 疽 病や輪 斑 病の抵 り・はる も え ぎ・さいのみ ど 種、 「つゆひか り・はるのなご ワシロカイガラムシ抵 抗 性 品 り・み な み さや か 」な どのク ど滋 味に優れる早・中・晩 生 品 種 、 「ゆめかお 大 部 分が「やぶきた」でした。現 在では全 茶 園 の九 五% 以 上 が 品 種 園 に 植 え替えられています 。 その結 果、品 種 園の約八〇 %、全 茶 園 面 積の七〇%以 上 が「やぶきた」で占められると 抗 性 品 種、 「そうふう・香 駿・ 藤 か お り 」な どの 香 気 特 徴 品 種、 「べにふう き・サンルー ジュ」などの機 能 性 成 分 高 含 有 品 種 といった、単一品 種 寡 占 化の打 破につながる多 種 多 はかまた かつひろ 1944年静岡県生まれ。静岡大学農学部卒業後、 農林省茶業試験場入省、農林水産省野菜茶業 試験場茶利用加工部長、 (独)農研機構野菜茶業 研究所茶業研究官を経て、 2005年から農林漁業 金融公庫(現日本政策金融公庫)勤務。専門は茶 の利用加工・栄養生理。主な編著書に 『お茶の力』 (化学工業日報社) がある。 いう 、他 作 物に例 を 見 ない単 一品 種 寡 占 化 の 状 況 を 招 く こととなりました。 このような単一品 種の寡 占 化は、摘 採 期および労 働 力の 集 中 、工場 稼 働 率の低 下 、摘 また、農 林 水 産 省でも、茶の改 植 経 費や改 様な優良品種が出番を待っています 。 画一化、病 害 虫の多 発 化による防 除 費の増 加 植に伴って生じる未 収 益 期 間の支 援 対 策など 採 適 期 を 逃 すことによる品 質の低 下 、香 味の などの弊害をもたらしています。このため、早・ 多 くの茶 園では樹が老 齢 化し、更 新の時 期 の予 算 措 置を講じ、産 地の競 争 力 向 上に向け しかし、 「やぶき た 」の優 秀 さには変わりが を 迎 えており、 「やぶきた」以 外の品 種 茶に対 中・晩 生 品 種をはじめとする多 様な品 種 活 用 ない上 、栄 養 繁 殖である茶の定 植には苗 木の する流 通 業 者や消 費 者の関 心 も 高 まっていま た優良品種への転換を後押ししています 。 供 給 量 確 保に手 間 取 り 、さらに、一度 植 える す 。これを 機に、これら 優 良 品 種の導 入 が 期 の必要性などが指摘されてきました。 と改 植がま まならないこと、定 植 しても 幼 木 待されます 。 22 AFCフォーラム 2012・6 人気の早生品種「さえみどり」茶園(野菜茶業 研究所・根角厚司氏提供) 期の数 年 間は管 理 費がかかり、収 入は期 待で Profile わ 袴田 勝弘 原料の良さで八割決まり 「ワインのおいしさは、原料のブド ウの良さで八割方決まる。ワイン用 ブドウ には格 好の土 地である須 坂 の地で、ブドウ づく りにとことんこ だわって、須坂らしいワインを発信 していきたい」 そう語るのは、楠わいなりー 株式 会社の社長である楠茂幸さん (五四 歳) だ。 手 塩にかけて栽 培された ブドウ 就農●2004年 設立●2010年 資本金●5600万円 代表者●楠 茂幸 事業内容●ブドウ生産、ワイン醸造・販売 生産目標●ワイン年間3万本 / 750ml換算 ワインに最適なブドウづくりにこだわる楠社長 を原料とするワインは、二〇一一年 に長野県の認定制度である原産地 呼 称 管 理 制 度で認 定された際、白 ワインで唯一 「審査員奨励賞」を受 賞した。 シャルドネ をはじめ、そのブドウ の品 質は、就 農からわずか八年で、 有名ソムリエなど審査員から高い評 価を受けるほどになった。 そんな楠さん自 慢のブドウ 畑 を 見てま ず 気づくのは、一面 下 草 が 生えており、一見何の管理もしてい ないよ うに見 えることだ 。なぜ 草 を刈らないのかとの問いに、楠さんは 「 自 然 界では、生 き 物 は そ れ ぞ れ 相 互に依 存 し 共 生 している 。それ が大事なんだ」と言う。 だから、畑にはできるだけ人の手 は加えない。有機肥料をまいて土づ 経営紹介 脱サラでこだわりブドウ生産 有名 ソムリエ からも高評価 長野県須坂市 楠わいなりー株式会社 く り を するよう なことも ない。須 坂という土地の気 候や自 然 条 件を ありのまま受け入れて栽 培された ブドウの実は、繊細で香り高い国産 ワインの原料となる。 ブドウ栽培に最適な須坂 このよ うに書 く と、自 然 農 法の 実 践 者のような印 象を抱かれるか もしれないが、実はそうではない。 これは楠 さんが オ ーストラリア で学んだ 栽 培の理 論 的 な 知 識 を 、 これまでの試 行 錯 誤 を 踏 ま え、須 坂 市で最 適な形に アレンジ して活 用した栽培法なのだ。 楠 さんの故 郷の須 坂 市 は、昔 か ら果 樹の産 地 として名 をはせてき た。その特 徴は、扇 状 地ならではの 水はけの良い土 壌 と、年 間 平 均 気 温は比 較 的 冷 涼ながら、春から秋 は一日の寒 暖 差が大 き く 晴天が多 い気候にある。 ワインの品質はブドウの良しあし に大 き く 左 右 されるが、標 高 差の ある須 坂 市の気 候は ボルド ー など フランスの有 名 産 地の有 効 積 算 温 度に近く、ブドウ栽培に最適だ。 しかし、楠さんはワインの醸造に 必 要 な 高い糖 度 を 実 現 するため、 その気候条件を最大限に活用しよ う と、栽 培に独 自の工 夫 を 凝らし 2012・6 AFCフォーラム 23 経営紹介 ている。 ドウ から ワイン 醸 造 までの一貫 生 するため、既 成の樹 園 地では植 え リ ー 建設を決断した。 ワインの国 際 的な産 地である オ 同時に、ワイン愛好家や地元の企 間 を 取れるよう 、木 々の間 隔 をと ーストラリアに渡り、世界有数のワ 独 自の工夫で高 品 質のブドウ を栽 替えの手間が必要となり、デメリッ って植 栽 している。これは、日 本の イン 研 究 機 関を持つアデレー ド 大 培する楠さんにとっては、最適な栽 イナリ ー を建 設し、醸 造 免 許も取 産を目指すことを決意した。 多 湿な環 境 を 考 慮し、風 通しや日 学 大 学 院で二年 間 、ブドウ 栽 培 と 培方法を考えながら植栽が可能で、 得した。ブドウづくりを始めてから 中でも 、個 々の木 がゆった り 空 当たりを 良 くし、光 合 成 を 活 発に ワイン 醸 造に関 する専 門 知 識を学 むしろ都合がよい、というのだ。 資 を 得て、一〇 年一二月に経 営 を 法人化した。 一一年に公 庫 資 金 を 利 用 して ワ その後 、二〇 〇 四 年に帰 国 。新 遊休農地利用し規模拡大 っている 。これは、ワインの品 質 向 現在、日本産ワインがブームとな 就農八年で念願の一貫生産 れまで愛 好 家の口コミ などで顧 客 販 売 先の確 保にも 熱が入る。こ 八年目で、原料の栽培から醸造・販 規 就 農 を 希 望したが、実 家が農 家 上に加 え、原 産 地 呼 称 管 理 制 度な を 広 げてき たが、試 飲 会や ブドウ する機 会が増 え、興 味 を 持 ち 始め 仕 事 上の付 き 合いから ワイン と接 目 指 した きっかけは、海 外 赴 任で 徐 々 に軌 道に乗って、三 年 目には このよう な 支 援 も あ り 、栽 培は ウ農家での実地研修も受講した。 ができた 。また、市の紹 介で、ブド 援 制 度で五○ ㌃の農 地の借り入れ しかし、須 坂 市の新 規 就 農 者 支 け、販 売 先 も 確 保 することが先 決 に、栽培のノウハウをしっかり身につ た。自 前のワイナリ ー を 構 える前 ン 醸 造 を 近 隣の業 者に委 託してい 楠さんは、収穫したブドウのワイ 関係を築くことが目標だ。 左右されず長く愛飲してもらえる 消費者との交流を深めて、ブームに 実際にワインを味わってもらい、 築にこぎつけたのだ。 売 まで、念 願の一貫 生 産 体 制の構 でなく、脱 サラ 組の楠さんに、当初 ど 生 産 情 報 開 示に関 す る 認 定 制 収穫祭でも消費者と積極的に接し 遊 休 農 地では、開 墾が必 要だが、 業経営者など多数の支援者から出 して実の糖 分が最 大 限 蓄 積される んだのだ。 トとなる。 ようにしたものだ。 この方法により、畑全体での生産 量は落 ち 込むが、醸 造に最 適な高 品質のブドウがつくられるのだ。 実は以前、楠さんは リ ース 会 社 に勤務するサラリ ーマンだった。 は農地確保のあてがなかった。 度が整 備されたことも 寄 与してい ている。 たことだった。 品 質や収 穫 量の面で一定の確 信が だったからだ。 そんな楠さんが ワインづく り を る。 東北大学工学部を卒業した楠さ 持てるようになった。その後も規模 ストランなどとも タイアップ して、 地 域 ぐるみでPRを 展 開 し、地 域 めて長 野 県の認 定 を 受 けた 。その 願のワイナリ ーで醸造中で、 いよい 昨年秋に収穫されたブドウは、念 日本で最高ワインをつくる んは、も とも と「 ものづく り 」に対 を 拡 大し、現 在では約三㌶ を 栽 培 須 坂 市でも遊 休 農 地が増 えてい 後 も 毎 年 認 定 を 受 け、次 第にワイ 振興にも一役買っている。 の技 量・センスに左 右されるワイン るが、楠さんは市の支 援のもとに、 就 農から六年 後の二〇 〇 九年に初 また、地元の観光協会や旅館、レ する関心が高く、ワインの知識を学 するに至っている。 このように醸造されたワインが、 ぶにつれて、科 学 的な理 論や、自 分 づく りにみずから関わり、 「いずれ で最 高のワイン をつくる」という 夢 よ今年六月頃に販売予定だ。 「日本 認 定 制 度での認 定や知 名 度の向 の実現に一歩近づく。楠さんは着実 ン業界で評価されるようになった。 上のほか、ブドウ栽培にもある程度 それら遊 休 農 地を借り受け、規 模 遊休農地の方が比較的容易に借 めどがついたため、楠さんは一〇 年 に歩を進めている。 (情報戦略部・田口 靖之) は自分が日本で最高のワインをつく ワインづく りへの想いが楠さんの り入れが可能なのだ。それに加え、 春に、当初からの構想だったワイナ 拡大に役立てている。 背中を押した。二○○一年に思い切 欧州系のワイン 用品種を主に植栽 ってみたい」と思うようになった。 って 退 職 し 帰 郷 した 楠 さんは、ブ 24 AFCフォーラム 2012・6 公益財団法人 あおもり 産業総合支援センター 加藤 哲也 が民 間 企 業から転 職し、青 森 県など地 域の 「 食 産 業 」においては 、ま だ ま だ 地 産 地 消の余 地 かたちに加工した上で地域内にて販売されるなど、 ●かとう てつや● 一九六七年 石 川 県 生まれ。九二年 東 北 大 学大学院農学研究科農芸化学専攻修了 ( 農 学 修 士 )。同 年 、味の素( 株 ) に入 社 。 食 品 原 料 部・品 質 管 理 担 当 課 長 な ど を 歴 任 。二〇 〇六年 同 社 を 退 社し、 (公財) あおもり産 業 総 合 支 援センタ ー・コー ディ ネ ーターに就 任 。一一年 度( 独 )科 学 技 術 振 興 機 構(JST) の「イノベー ション コーディネ ータ賞・若手賞 」などを受賞。 産 業 支 援 を 行 うようになって六年がたちま や、加工における付 加 価 値の地 域 外への流 出が少な (四四歳) した。この間、わが国の食と農 をめぐる環 境は大 き くないことが感じられま す 。また、そ うした現 状に 私 く 変 化し、多 くの地 域で「 食 産 業 」が地 域を支 える 首 都 圏の販 売 業 者からは、 「 消 費 者は、それぞれ の地 域で売れているもの、地 元の消 費 者に評 価され ているものを求めている」との声が聞かれます 。 地域外での販売やブランド化を目指す場合におい ても、ま ずは地 元の消 費 者に食され、愛されている ことが条 件になっていて、 「 外 貨の獲 得 」と「 地 域 内 での経 済 循 環 」を、うまく 両 立させることが必 要な のだと感じています 。 二 点 目は「 個 別の事 業や商 品 開 発の支 援 」と「 地 域の新しい仕組みづくり」についてです 。 一方で、地 域の一次 産 品がその地 域で手に入 りに ら先 進 事 例や成 功 事 例 を 生み出し、それが他の事 の法 律に基づく 事 業 認 定やさまざまな支 援 制 度か 地 域 資 源 活 用や農 商工連 携、六次 産 業 化など国 く かった り 、その一次 産 品 を 地 域 外でさ ま ざ ま な す。 外に販 売して「 外 貨の獲 得 」を目 指 すことは重 要で を 首 都 圏などの都 市 部 、さらには海 外 を 含む地 域 摘されま す 。一次 産 品や付 加 価 値 を 増した加工品 多 くの地 域では「 外 貨の獲 得 」が課 題 と、よく 指 についてです 。 一点 目は「 外 貨の獲 得 」と「 地 域 内での経 済 循 環 」 について述べたいと思います 。 に取り組んできた中で、私が特に留 意している三点 これまで、地 域の「 食 産 業 」の振 興 を 目 指 す 支 援 ました。 疑問を抱く地域の人たちも増えています 。 21 重 要 な 産 業の一つと位 置 付 けられるようにもなり 21 2012・6 AFCフォーラム 25 主張・多論百出 業 者の模 範となって、各 地 域での事 業の機 運を高め 最 後に、三点 目は「イベント型の取 り 組み」と「 地 かしながら、個 別の事 業 者の経 営 革 新や 商 産 業の振 興 を 図ること自 体 、数 年 単 位で成し遂 げ 「 食 産 業 」にかかわらず 、地 域に内 発 的 な 新 しい 道で着実な取り組み」についてです 。 品 開 発への取り組みばかりでは、 「 食 産 業 」の られるものではなく、ま ずは一〇 年 単 位の長い年 月 るという取り組みは重要です 。 振 興によって一次 産 業 をはじめとした 地 域 経 済の がかかるものです 。 し 疲弊を食い止めるといった大きな流れをつくり出す た と え ば、農 商 工 連 携 を 進めよ う とした 際に、 は多 くの人が集まってにぎわいを見せますが、平日 偏 りがあるように感じていま す 。週 末のイベントに 昨今の各地域での取り組みは「イベント型」にやや 「 地 域の飲 食 店 が、地 域の食 材 を 使いこなせない」 になると依 然として地 域に変 化はなく、結 果、安 定 のには足りないと感じています 。 といったことがしばしば起こります 。 ペー スト 化 な ど )と 呼 ばれる 仕 組 みが 存 在 しな く を 見 据 えた 上で、地 域の農 商 工 連 携や地 域 内での 食 産 業に関わるそれぞれの業 種においては、将 来 雇用の創出もないといった事例が散見されます 。 なったために、飲 食 店は地 元の食 材 を「 自 分たちが 加工品 製 造の推 進、地 域に根 差した商 品の販 路 拡 地 域に「一次 加工」 ( 皮むき、カット、冷 凍、乾 燥、 使用できるかたち(一次加工品)」で手に入れること 大など日 々の地道で着実な取り組みがあってこそ、 イベントやイベント型商品が大きな効果をもたらす ができないのです 。 このような課 題に対 応 するため、地 域ごとの一次 参 画 、連 携で き る 新 しい仕 組 みづく りや 地 域プロ 解 決でき ないものについて、地 域の多 くの事 業 者が をつなぐコーディネ ーター として、役割を果たして 後の食 産 業 振 興に向けた地 域のさまざまな可 能 性 これら三点 を 踏 ま え、バランス感 覚 を 大 切に、今 のだろうと考えています 。 ジェクトの企 画 、実 行 が 個 別 支 援 と並 行 して必 要 いきたいと思います 。 加工拠 点の設 置 など、個 別 事 業 者の努 力 だけでは であると感じています 。 食産業は個別事業者だけでは解決しない 地域の事業者が参画する仕組みが必要だ 26 AFCフォーラム 2012・6 シリ ー ズ 変革は人にあり 内山 利之 千葉県 有限会社 ジェリ ービーンズ たのも 、われわれな りの経 営 努 力の さん まな工夫やアイデアをこらした経 営 格に反 映していま す 。 砂 糖 菓 子の名 前 を 使ってジェリ ー ビ わかっていま すからね。 結 果で す が、その強 みが 生 きて、価 内 山さん自 身が「これがいい」と を すれば、確 実に結 果が出ることが ― ーンズとしたのです 。 「 元 気 豚 」ブ ラ ン ド 戦 略 で 成 功 「見える化」で安全・安心目指す 巨大消費地・東京などをタ ー ゲッ トに、千葉県で豚の繁殖と肥育の生 産から加 工 、販 売までの一貫 経 営で 買 うでしょうね。 確かに生 産 者の顔が見 え、ブラ 最 終 判 断したのですか。 みた く なるブランド 戦 略 も 、アイデ 内 山 われわれの場 合、直 接 販 売や 通 信 販 売で 消 費 者 との接 点 を 持つ ― 成功。 「元気 豚 」 という 形でのブラン 内 山 二〇 年 前の法 人 化 当 時、すで に 集 まって く れていた 若いスタッフ ア経 営の一環ですか。 以 外に、ス ーパー やコンビニ、外 食 な ― ま ず お 聞 き し たいと 思ったの 高 校 卒 業 後 、実 家の養 豚 経 営 に差 別 化で き る 強 みが あ り 、インパ 報 交 換 などで、商 品 開 発のヒント も 品 購 入 部 門のバイヤ ー さんらとの情 して、そのブランド 名がついた豚 肉 を ンド 価 値が加われば、消 費 者 も 安 心 ド 戦略に取り組むと同時に、生産工 と一緒に、社 名 を 考 えて決めたので 内 山 生 産 地の地 域 名 をつけ た 豚 肉に関 しては、私の経 営 感 覚でいけ どの企 業にも 卸 していま す 。当 然 な 消費者ニ ー ズ探ること重要 程の 「 見 える 化 」 によって、安 全・安 す 。養 豚 業に誇 り を 持っていました ば 単 に 国 産 豚 と か 豚 肉の産 地 名 で がら売れ筋 商 品 を 目 指して、われわ クトのある豚 肉 をどうつく り 出 すか り、それを 生 産 現 場や加工の現 場に 大 事 なのは 消 費 者のニ ー ズを 探 得ていま す 。 ブランドイメ ー ジを 高めることにし 「 元 気 豚 」という 商 標 登 録 を して、 が重 要です 。 「 元 気 豚 」という、思わず 食べて 心の食材づくりにこだわる経営手法 が、畜 産のイメ ー ジのない方 が 経 営 のアピ ー ルではいけ ま せん。消 費 者 れ 独 自 にマ ー ケッ ト リ サ ー チ を 行 貫 経 営に関しても、消 費 者の方 々に ― がポイントだ。 にかかわ り 、その後のご自 身の経 営 に説 明 しや すいもの、おいし さ を 含 う と同 時に、スーパー やコンビニの商 に広がりが出ると考 えました。 は、養 豚のイメ ー ジが 全 く ない社 名 関 与 を 含 め三 五 年 以 上で す ね 。ず めて 他 産 地のものに 比べて、明 らか ユニ ー ク社名は若者対策 の由 来で す 。ビ ー ンズと あ るので 、 ばり、このお仕 事は面 白い? ― お豆などと関 係 あるのかと? する際に、担い手 となる若 者の社 員 おいしくて安 全かつ安 心な豚 肉 を 食 内 山 そ う 受 け 止められ ま したか 。 内 山 面 白いです ね 。人 懐こい豚の 実 は 、個 人 経 営の養 豚 業 を 法 人 化 飼 育 そのものが 好 きで す し 、豚の一 を 確 保 する必 要 が あ り 、 ハイカラな 横 文 字の社 名がいいな、ということで、 べていた だ くこと を 原 点 に、さ ま ざ 2012・6 AFCフォーラム 27 変革は人にあり Profile うちやま としゆき 一九五九年千葉県生まれ。五三歳。県立多古高卒 業と同時に旧農林省管轄の牧場で一年間研修。 七九 年に養 豚 繁 殖 経 営 を 父 親から 引 き 継 ぐ 。 八〇 年に肥 育 経 営も手 掛け、一貫 生 産 体 制に。 九二年に経営を法人化し、代表に就任。家族は母 と妻、娘二人。 Data 有限会社ジェリービーンズ 本 社は千 葉 県 香 取 郡 多 古 町 。内 山 利 之 代 表 取 締役社長。資本金九〇〇万円。一九九二年に個 人事業の養豚経営を法人化し有限会社ジェリー ビーンズを設立。二〇 〇 〇 年に食 肉 加工工場を 建設。二〇〇六年に自社ブランド 「元気豚」 を商標 登録。母豚一三〇〇頭で一貫経営。食肉加工、外 食や中食向けの販売に加え通信販売、直接販売 など。社員はパートを含め六〇人。年商一四億円。 フィー ドバックして付 加 価 値 を 付 け た 商 品 をつく り 出 せる か ど う かで と言いま すと? が、問 題は安 心 確 保です 。 現 場の見 学 や 農 場での体 験 学 習の 小・中 学 生に食 育 という 形で、生 産 直です から、感 じた とお りに親へ伝 ― 内 山 安 心 というのは 、食べていた だ く 消 費 者の方 々の信 頼 を 勝 ち 取 えてもらえればいいのです 。 ― 安 全 管 理は、どのように行って 各種検査で安全管理徹底 ています 。 葉の地元の学校給食に豚肉を提供し うために養 豚 組 合が一〇 年 以 上、千 また、地 域の畜 産 を 理 解してもら 場 をつくっていま す 。子 供 た ちは率 るという か、信 頼 を 築 く しっかり と した 取 り 組みをしないと、絶 対に得 具 体 的には、どのように消 費 者 られないことです 。 ― の信 頼 を 築 く 取 り 組みを? 内 山 ずばり、生 産 過 程のオ ー プン 化です 。最 近の言 葉で言 えば「 見 え る化 」です 。消 費 者の方 々に、すべて 内 山 加工品の各種衛生検査、金属 探 知 機 検 査はも ちろんのこと、金 属 いま すか。 では 、いろいろな 工 夫 をこら して 養 以 外の異 物 混 入 を 防 ぐため、X線 検 の工程 を 見ていただくことです 。 豚 事 業 や 豚 肉の加 工 事 業 が どのよ 査なども 実 施していま す 。その検 査 インタ ー ネット 上のホ ームペー ジ うに行われているか、ひと目でわかっ 結 果 を 公 表し、安 全・安 心 を 得るよ 豚が病 気にかからないように生 力が大事です。 うにしました。取り組みへの姿勢・努 ていただくようにしていま す 。 それは、ある言 葉がヒントになって います 。 ― 内 山 消 費 者の方から「 子 供たちに 安 心して食べさせられる豚 肉 を 頼む 内 山 安 全・安 心 を 得るのは細 心の 注 意 を 払 うことが大 事ですが、豚の どんな言 葉がヒントに? ね 」という 言 葉 を も らったので す 。 繁 殖 や 肥 育の過 程 では 特 に 重 要 で ― 安全は当然、問題は安心確保 これがキ ー ポイントだと思いました す 。コンピューターでさまざまなデー す。 食 品 メ ー カ ー のキ ー ポイント ね。 の安 全・安 心には大 変 な 気 遣いをさ 産 管 理 も 大 変でしょう? れているとか。 な く 、清 潔 な 生 産 工 程でつく り 、し ― 内 山 当 然です 。私の持 論ですが、 われわれ食 品メー カ ー は安 全・安 心 かも 本 当においしい豚 肉 だと感 じて 気 チェックは全 国でもトップレベルで 畜 診 療 所の検 査 体 制 が 完 備 され 病 それと、千 葉 県 農 業 共 済 組 合の家 きるようにしていま す 。 タの管 理 を 行い、異 常がす ぐ 発 見で を 貫 き、消 費 者に支 持 を 得るように もらう 取 り 組みが必 要だと。 「 見 える 化 」の一つとして、地 元の 「 元 気 豚 」も 単 にブランド だ けで 必 死で努 力しま す 。ただ、安 全 確 保 に 細 心の注 意 を 払 うのは 当 然で す 28 AFCフォーラム 2012・6 豚舎で子豚の成育状況をチェックする内山社長 す。 通の豚の一・四 倍のサシ、つま り 豚 肉 かが大 事です 。 だけでなく、おいしく食べられる商品 それに見 合って、付 加 価 値の高い分 離の方 だと、それが一便 限 り となり 川 下 デフレに巻 き 込 まれずに、 川下デフレ巻き込まれず を 価 格 に 上 乗 せ して も 納 得いた だ を 提 供 することだと 。そ う す れば、 に 筋 間 脂 肪 が 入 り 、食 感 も や わ ら ね。 港に近いことは確かに強みです 東 京 という 大 消 費 地 を 抱 え 、豚 か く 、う ま 味の濃い肉 になっていま ― 肉 な どの生 産 量 が 多い生 産 県のた す。 め、安 全 確 保のインフラが あ るのも けると思ったのです 。 存 す る ため、国 際 商 品 市 況 が 値 上 ま す 。すると物 流 コストの差は大 き 養 豚 経 営 は 、飼 料 を 海 外 に 依 が り し た ら す ぐ に 打 撃 を 受 け るで ― 一定の価 格 を 維 持できる? いで す 。輸 入 飼 料 の 価 格 で 差 が な ければ、コスト 対 策は物 流にな り ま しょう 。対 策は? ― 内 山 そ うです 。われわれの場 合 、 一日で往 復 三 便 が 可 能です が、遠 距 オ ー ルイン・オ ー ルアウト とい 強みです 。 ― うシステムも 導 入されているとか。 内 山 カタカナばかりで、分 かりに くいかもしれませんが、肥 育 豚 を 全 内 山 経 営 者 と して 頭 を 痛 めるの は、安 全・安 心 対 策 と同 時に、 エサの ― 今の農 業のビジネスモデルの六 すからね。 た だ け ば、 「よし、買 お う 」となり ま す。 頭 出 荷した後、舎 内 を すべてクリ ー 対 策です 。原 材 料コストの中でも、 エ いう 、言ってみれば 輸 入 飼 料 高の一 内 山 そうです 。価 格が他の店より も、やや 割 高でも 品 質や 味で納 得い ンな 状 態にした 上で、次の群 を 入 舎 サ 対 策 には 細 心の注 意 を 払いま す 方で、川 下の販 売 戦 線では低 価 格 競 今は川 上インフレ・川 下デフレと させることです 。病 気 を 出 さないシ が、あ りがたいことに、われわれの場 争ですから大 変ですね。 次 産 業 化 を 実 践されれているのもプ ラスに働いていま すね。 内 山 六次 産 業 化 を 意 識して、ビジ ネスモデル 化 したわ けではな く 、経 りませんが、現実問題として厳しい。 あ と は 川 下の部 分 で ど う 勝 負 す る ― ステムとして定 着していま す 。 合 、エサの物 流 面で、強みを 持ってい と言いま すと? るのです 。 先 進 例 を 海 外に学 ぶ 必 要 先 進 事 例 を 学ぶため、海 外にも ― 内 山 輸 入 飼 料で 経 営 が 縛 られる 状 況 を、本 当に何 とかしなくてはな ― よく 行かれるようですね。 内 山 実 は 、海 外 か らの飼 料 輸 入 港の鹿 島 港に比 較 的 近い立 地 条 件 にあるため、遠 距 離にある養 豚 経 営 ― あと、地 域との共 生 を 大 事にさ です 。 に、そ うなってしまった、というだけ 営に取 り 組んでいるう ちに、結 果 的 内 山 豚 舎の設 備や 豚の飼 育 技 術 については 、EUの養 豚 に 先 進 例 が の方 々 に比べて、輸 送 頻 度 が 多 く 、 がポイントに? かが、ポイントになりま す 。 あったりしますから、 いいものを学び そのため物 流 コストが格 段に安 く 済 「 元 気 豚 」のブランド 戦 略 な ど 取るため、二年に一回は必 ず 行 き ま む 、という 強 みが あ り ま す 。これは れているとか。 内 山 そ うです ね 。われわれは、地 域の耕畜連携を図っています 。 が あって、消 費 者 ニー ズに沿ったお いしい、付 加 価 値の高い、売れる商 品 ― す 。必 要があるときには毎 年のよう 大 きい経 営ファクタ ーです 。 鹿 島 港からはどれぐらいの距 離 なのですか。 ― 内 山 一〇 年 前に、豚 肉の加 工 用の ミ ー トセンタ ー をつくったのも 理 由 に行 き ま すので、とても 勉 強になり 「 元 気 豚 」がランドレース、ヨー ます 。 ― 周 辺の耕 種 農 家の方 々 が 肥 料 と それが成 功したのですね。 す。 (経済ジャーナリスト 牧野 義司) することで、文 字 通 り 共 生 していま 散 布 機 械などとともに、無 償で提 供 して 活 用で き るよ う 堆 肥や 液 肥 を の品 ぞろえを 多 く することだと思っ 内 山 輸 送トラックで一時 間 圏 内で す 。東 京 湾 沿いにあった飼 料工場が クシャ 、デュロック を 掛 け 合 わせた 三元 豚というのも、その学 習 効 果? われわれの場 合 、一カ 月に一〇 〇 〇 内 山 も ちろん、 マー ケットリサ ー チを した 結 果 、行 きついた 結 論です たのです 。 内 山 繁 殖 性 がいいものとか、肉 質 が 優 れている ものとか、豚の品 種 を ㌧の輸 入 飼 料 を 使 う ため、物 流 コス が、特に消 費 者の方 々 に安 全・安 心 ― 見 極めて最 良のものをつくるのがポ トを どこまで抑 えるか、効 率 化 する 大 型 船の入れる鹿 島に移 りました。 イントです 。 「 元 気 豚 」はおかげで普 2012・6 AFCフォーラム 29 僕 、おコメ、特に炊 きたての白いご飯が大 好 きです 。ほかほかご 飯に佐賀名物がん漬けと有明海苔があれば、サイコーっすね! 勝手におコメマニア。自称、日本一コメ大好き男を名乗ってます 。 幼 少の時から、ご飯が大、大、大っ好 きでした。おばあ ちゃんの つくってくれるおにぎりが、大 好 物だったんです 。いっつもおいしい おばあ ちゃんのおにぎ り 。でも、たま 〜 に、 マズい時があったんで “ ゲッ、今日のおにぎり、 す 。頬張った一口目で、 いつもと違う ” って 分かるんですよ。それでおいしいおにぎりとの差は何なんだろうと 。 思い、調べたんです 。おばあちゃん、その時は、炊飯ジャーで一日中 ― 保温していたご飯でおにぎりつくっていたんですよね おコメマニア この時、おコメへの熱 き 探 究 心が僕の心に芽 生 えたんです 。そし て、年を追うごとにますます過熱していきました。 東京農業大学の学術情 報センタ ー に時 間を見つけては通い勉 強 し、お米マイスターに相談して自分好みのコメのブレンドを試し、ま た朝食、昼食、夕食にそれぞれ違うコメを炊 くなどしていたら、炊 いたご飯の匂いや 食 感でコメの品 種 を 当てる利 き 米ができるよう になりました。あっ、研 ぎ 澄 まされた集 中 力と鋭い嗅 覚が必 要な ので、春の花粉症の時期だけは無理ですね (笑)。 一粒一粒がイキイキと輝 くようなコメの炊 き 方や保 存 法にもこ はなわ だわっていま す 。ライスボトルというコメの保 存 容 器 を あみだし、 特 許まで取っちゃいました。コメをライスボトルに入れて冷 蔵 庫で 保 存 し、研 ぐ と きは、ライスボトルに水 を 注いで三 回 振るだ けで OK。手 をぬらさずにご飯が炊 け ちゃいま す 。この方 法 、 ペットボ トルでも可能なので、皆さんもぜひやってみてくださいね。 将 来の夢は、故 郷の佐 賀でコメづく り を することです 。実は、テ レビ番 組の企 画で、愛 知 県 新 城 市の棚田で半 年かけて種 もみをま くところからコメづくりをしたことがあるのですが、本 当に大 変で した。農 家の方は、プロだと実 感しました。正 直、尊 敬しま す 。日 本は、農家の方 々ががんばっているおかげでおいしいおコメが食べら れる。そのことを多 くの人に知ってもらいたい!おコメマニアの探 究 心はこれからも尽きることがありません。 30 AFCフォーラム 2012・6 はなわ 佐賀県出身。1stシングル「佐賀県」 はオリコン初登場5位 (売上 枚数約25万枚) を記録する。千葉テレビ放送「カラオケトライア ルⅢ」に出演中。音楽プロデューサー、歌手、 アーティスト、俳優 としても活躍している。 お笑いタレント 連載 地域再生への助走 特別編 地域の活性化を目指す チョウザメ養殖 西府 稔也 宮崎県水産政策課 主幹 中 山 間 地 域の活 性 化に意 外 な 取 り 組 み が 話 題 を 呼 んでいる 。宮 崎 県の水 産 研 究 機 関 が 三 〇 年 前から試みてきたチョ ウザメの養 殖である。チョ ウザメから生 産されるキ ャ ビア はフ ォアグラ、トリュフと並ぶ世界三大珍味で、高級食材として需要がある。 尾びれがサメと同じ形をしているところからつい かれるが、サメではない。ウロコが蝶のような形、 「チョウザメはサメの仲 間ですか?」とよく 聞 は大 幅に減 少しており、希 少 価 値の高まりと相 (ワシントン 条 約 ) により 貿 一九九八年に CITES 易 規 制が設 けられた。世 界 的にキャビアの流 通 る。こうしたことを背 景に、保 護を目 的として、 どの原 因により 、資 源は絶 滅の危 機に瀕 してい 油 化 学 工 場の汚 染 等による生 息 環 境の悪 化 な ル 種の人工ふ化に成功し、その成果を生かして、 九一年には、地方水産試験場では初めてベステ 稚魚生産の研究が実った日 において種苗生産の研究に着手した。 尾を宮崎県がいただき、県水産試験場小林分場 ウザメとコチョウザメの交 配 種 ) のう ち 、二〇 〇 宮崎県特産キ ャ ビアが生んだ地方再生、地域再生の特別編レポ ー ト。 た和名である。世界的には「エンペラーフィッシュ」 まって、多 くの料 理 店や消 費 者に根 強い需 要が 九三年に本県が養殖対象種として有望視したシ 養殖技術完成への期待 や「皇魚」の名称を持つ高貴な魚である。 ある。 に分 類 され、中でも 体 重一㌧のオオチョウザメ れている。世 界で確 認されている種は、約二六種 岸、アムール 川、北 米 太 平 洋 沿 岸などで漁 獲さ 現 した 古 代 魚で、主に、カスピ 海 沿 岸や黒 海 沿 供 給 量 が 少 な く 、それがネックとなって、養 殖 生 産 すること( 種 苗 生 産 )が難しいため、稚 魚の ろがチョウザメ 養 殖に必 要な人工稚 魚は大 量に と、養 殖 キャビアへの期 待が高 まっている。とこ このような状況の下で、 「天然がダメなら養殖」 定 な 状 況が続いた 。一方で、人 工 種 苗の量 産 化 組みを 始めたが、その壁は高 く 、生 産 量は不 安 〇 四 年 以 後 は、人 工 種 苗 を 量 産 化 す る 取 り →卵→稚魚) に成功した。 〇四年には全 国で初めて完 全 養 殖( 稚 魚 → 親 魚 ロチョウザメの人工種苗生産の研究に移行 。二〇 チョウザメは、古 生 代(およそ二億 年 前 ) に出 は、寿命一〇〇年以上に達する。 が伸びない状況にある。 の的で、近 年は不 適 切 なチョウザメ 採 捕・流 通 本に贈られたチョウザメ (ベステル 種 : オオチョ 八三年、日ソ漁業協定の親善の証しとして、日 ったことから、その技 術 を 養 殖 現 場で実 証 する の研 究は確 実に養 殖 技 術の解 明につながってい チョウザメから採れるキャビアは、食通に垂涎 が横行し、また、石油・天然 ガス 開発の影響や石 2012・6 AFCフォーラム 31 まちづくり むらづくり 試 験 を 民 間の養 殖 業 者 七 社の協 力 を 得て進め きたのだ。 の「フ ー ドビジネス」として展 開 する時がやって とである。強い産地とは、生産量が安定している は、これら生 産 国に負けない強い産 地をつくるこ こと、品 質が高 く 安 定していることである。これ てきた。 具 体 的には、先 駆 者である七業 者とともにチ 飼育環境・歩留まりなどを明らかにし、さらに、 工種 苗 を 大 量に買い付 けた本 県のチョウザメ 養 宮 崎 県 水 産 試 験 場 が 生 産 した一一年 産の人 チョウザメ 養 殖 を 行 うためには、豊 富な飼 育 までの取 り 組みで一定の高 品 質 化は果たせた 。 最 適な飼 料の開 発や効 率 的な雌 雄 判 別 方 法な 殖の先 駆 者である七業 者は、早 速、本 格 的な養 水 量と適 切な飼 育 環 境、そして、養 殖 場 を 造る 中山間地域への普及を広げる ど試 行 錯 誤 を 繰 り 返 した 結 果 、養 殖 未 経 験 生 殖を開 始している。その量は二万 尾を超 え、この 場 所が必 要である。本 県に場 所 を 探ってみると、 ョウザメ 養 殖 技 術 研 究 会 を 立 ち 上 げ 、適 切 な 産者にも飼育可能な生産方法・支援体制をつく 時 点で、宮 崎 県はチョウザメの「日本一の養 殖 産 中 山 間 地 域に条 件 を 満 た す 適 地 が 多いことが だが 、世 界に目 を 向 け れば 、欧 州 、中 東 、米 本 県の中 山 間 地 域は、人口が約四四万 人で、 量を安定させることである。 次にやることは、養 殖 業 者の数 を 増やし、生 産 り上げることができた。 地」となった。 していた五万尾のシロチョウザメ稚魚の生産を実 国 、そして、最 近は中 国でも 養 殖 キャビアの生 県 人口の約四割 を 占めており、また、県 土 面 積 そして、一一年春、量 産 化 試 験に成 功 。目 標と 現したのである。ようやく 人工種 苗の量 産 化に 産 量が増 加している。キャビアは世 界 共 通の食 も 約 九割 を 占めるなど、本 県にとって大 変 重 要 分かった。 めどが立 ち、水 産 試 験 場の苦 労が実った瞬 間で 材であ り 、いずれは日 本に大 量に輸 入 されるこ 32 AFCフォーラム 2012・6 もあった。いよいよ、この種 苗と養 殖 技 術を県 内 上:シロチョウザメ 中:宮 崎 産キ ャビア 下:チョウザメ養殖技術研 究 会( 雌 雄 判 別 技 術 研 修 ) な地 域である。この地 域には経 営 規 模が小さな 1966年生まれ。宮崎県児湯 郡川南町出身。88年、宮崎県 庁に水産技師として入庁し、水 産行政畑一筋で、 これまでに、 資源管理、水産業改良普及、漁 業振興、漁業許認可、漁業取り 締まり等の業務に従事。 2011年から、水産政策課企 画流通担当リーダーとして、水 産業に係る計画等の企画立案 や水産物の流通・販売業務を 担当。 チョウザメ養殖は、宮崎県総 合計画「未来みやざき創造プラ ン」 ( 2011年度策定) に掲げる 「フードジビネス展 開プログラ ム」の施策の一つとして位置づ け、県・市町村・宮崎県チョウザ メ普及促進協議会(09年に発 足し、会員は県内養殖業者10 名。チョウザメの知名度アップと 販路開拓を目的に、 イベントへの 参加や量販店等との商談を実 施。) などが連携して、 日本一の チョウザメ産地形成に向けた取 り組みを進めている。 とも想像に難くない。今、宮崎県がやるべきこと 西府 稔也 さいふ としや チョウザメ養殖 の事 業 者に広 く 提 供し、チョウザメ 養 殖 を 本 県 profile まちづくり むらづくり 地 場 企 業の基 盤 強 化 と地 域 住 民の雇 用の拡 大 再 興 を 図るためには、新たな産 業の創 出による ことが非 常に困 難な状 況にある。中 山 間 地 域の め、特に若 年 層の流 出が進み、地 域 を 維 持 する 企 業の経 営が疲 弊して、雇 用の確 保 も 難しいた 企 業が多 く 、近 年の景 気の冷 え 込みでこれらの いる。刺 身はもとより、焼 き 物、炒め物などさま れいな白身で、日本 料 理、西洋 料 理ともにむいて ため、魚肉に透明感があって、歯ごたえのあるき しているチョウザメは飼 育 方 法にこだわっている 有 効 利 用は重 要だと考 えている。宮崎県で養殖 り、魚 肉 としても 相 当 量 を 出 荷できる。魚 肉の シロチョウザメは、魚 体 重が四〇 ㌔グラムにもな 販路づくりを進めていくことにしている。 チョウザメ、キャビアの知名度 アップと安定した 今 後 もこのよう なイベントを 開 催 し、宮 崎 産 だき、今後の販売に確かな手応えを感じている。 以 前は、チョウザメの種 類によってキャビアの オ ー ル宮崎県で世界に発信 が大きな課題となっている。 ョウザメ 養 殖が応 えられる可 能 性が非 常に高い むほか、県、大 学、企 業の共同 研 究で、脳血管 性 さらに、魚 肉にはEPA、DHA、タウリンを含 引されてきた。しかし、この種のキャビアの流 通 から六〇万 ~ 一〇〇万円 / ㌔グラムの高値で取 キャビアは卵 形が大 き く 、また、その希 少 価 値 価 格が付いていた 。オオチョウザメ (ベルー ガ) の のではないかという 思いがあり、中 山 間 地 域の市 認 知 症や不 眠 症、疼 痛 等の予 防・改 善 効 果が知 が皆無の状況になって、今やキャビアの価格は加 ざまな料理に適する食材である。 町 村の協 力 も 得て積 極 的 なPR活 動 を 開 始 し られるカルノシンを 多 く 含み、また、魚 皮には大 工 技 術によるところが大 きい。世 界 的にはキャ 私たちは、このような中 山 間 地 域の課 題にチ たのである。 量のコラ ー ゲンも 含 まれることから機 能 性 成 分 養 殖のPRは各 種 媒 体 を 通じて行 うほか、地 ビア本来の風味が味わえる「フレッシュキャビア」 や 長 期 保 存 が 可 能 な「パスチャライズドキャビ の宝庫であることも分かった。 域の人たちを募って、 「 あなたもチョウザメ 養 殖 食 材のみならず、化 粧 品、栄 養 補 助 食 品など 今 年の秋からは宮 崎 産 シロチョウザメキャビ を始めてみませんか」といったセミナ ー も開催し ア」が流通している。 その結果、一年足らずの取り組みではあるが、 アの出 荷がスタ ー トする。養 殖 試 験を開 始した 養 殖 技 術 、産 地 形 成 、そ して販 路 。これらが 利用の幅も広い。現在、養殖業者の中には、化粧 一二年 四 月 現 在 、新 たに八 業 者 が 加 わ り 、一五 〇 四 年 産 稚 魚 がようや く 出 荷 を 迎 える 。来 年 整 うことで、養 殖 経 営が安 定 し、新 たな 業 者の ている。さらに関 心を持っていただいた事 業 者な 一方 、宮 崎 県ではこれらとは異 なる新 たな 加 業者がチョウザメ 養殖を開始するなど、徐 々に、 秋からの本 格 的 出 荷に先んじて、今 秋にも 顔 見 参 入 を 喚 起 するとともに、チョウザメを 通 じて 品や石 けんをはじめ、ウロコの工芸 品など、多 様 広がりを見せ始めている。 せができるのだ。出 荷を前にして、現 在、養 殖 業 商 工・観 光 業 と 連 携 した 地 域 おこしが 活 発 化 どには個 別 説 明 を するなど新 規 着 業 者 を 掘 り 工 技 術の開 発に取 り 組んでいる 。近 々 、その技 養 殖は、本 格 的に採 卵できるまでの飼 育 期 間 者の組織「宮崎県チョウザメ普及促進協議会」が し、私たちが目標とする「チョウザメ 養殖による な製品の製造・販売にも取り組んでいる。 が一〇 年 程 度と長 期に及ぶため、養 殖 経 営は飼 主 体 となって、宮 崎 産 キャビアや魚 肉のPRを 中 山 間 地 域の活 性 化 」が達 成されるものと考 え 起こしている。 育に不 安 を 覚 える者 も 見られるので、関 心のあ 行っている。今 年二月には、福 岡 市 内のホテルに ている。 術を使った宮 崎 県 産 キャビアを全 国・世界に発 る者には、個別の相談対応を行いながら、その不 おいて、一日限りのスペシャルディナ ー イベントに 四〇 名 を 招 待した試 食 会が開 催された。イベン で県 知 事 も 参 加 して県 内の有 識 者ほか 総 勢 約 チョウザメを 提 供、三月には、宮 崎 市 内のホテル まいりたい。 精 神で、その実 現に向 けて今 後 とも まい進して が、宮崎県が掲げる「オ ール宮崎」の県民運動の 取 り 組みはまだまだ緒に就いたばかりである 信したいと考えている。 安の払拭に努めているところである。 チョウザメはキャビアに利 用される印 象が強 ト 参 加 者からは品 質の高さに絶 賛の言 葉をいた 試食会の開催でPR活動 いが、実は、魚 肉 もおいしい。一〇 年 間 飼 育した 2012・6 AFCフォーラム 33 書評 約二〇 万 人の漁 業 就 業 者がいるが、毎 年一万 人 ずつ減り続けている。そこに大 震 災が襲った。震 読まれてます 三省堂書店農水省売店(平成24年4月1日~ 平成24年4月30日・価格は税込み) 3 TPPで日本は世界一の農業大国になる ついに始まる大躍進の時代 浅川 芳裕/著 ベストセラ ー ズ 1,575円 4 食の終焉 ポ ー ル・ロバ ー ツ/著 ダイヤモンド社 2,940円 5 食糧危機にどう備えるか 求められる日本農業の大転換 柴田 明夫/著 日本経済新聞出版社 1,890円 6 日本農業の底力 TPPと震災を乗り越える! 大泉 一貫/著 洋泉社 840円 7 日本の魚は大丈夫か 漁業は三陸から生まれ変わる 勝川 俊雄/著 NHK出版 777円 9 漁業という日本の問題 NTT出版 1,995円 鶏卵肉情報センタ ー 1,890円 書評 『 東日本大震災とこれからの水産業』 災 後一カ月たった時 点で、宮 城 県 漁 業 協同 組 合 が調べたところ、組合員の二九%が「廃業したい」 と答えたという 。 由 々 しきことと解 釈 することもできる。一方 で、六二%もの人たちが「 再び漁 業で生 きていき たい」と答 えてく れているのは心 強い。 「 海 とと もに生きるしかない」と考える漁師が多いのであ る。評 者の知 人である気 仙 沼の漁 師 も「 海はと きに津 波という 牙 をむくが、普 段は豊かな恵み を もたらしてくれる」と、漁 業 再 生に向 け 立 ち 上がっている。海に罪はないのである。 業 復 興のための構 想がいくつか提 起されている。 漁 業 復 興 特 区、民 間 企 業の漁 業 参 入など、漁 大 きな犠 牲 者 を 出したのが、東 北の三陸 沿 岸の 筆 者は「 既 存の権 利 者との調 整や漁 場 環 境の保 1,470円 10 「食への信頼見える化計画」進行中!フードコミュニケーションプロジェクト→2011 神井 弘之/著 白 須 敏朗著 (ジャー ナリスト) 村田 泰夫 水産業復興への取り組みと道筋 み ぞ う 漁 業 地 帯である。地 震と津 波の発 生 直 後から一 全など、地 元 漁 業 者との十 分な調 整が不 可 欠 」 未 曾 有の災 害となった東日本 大 震 災で、最 も 年 近 く 、大日 本 水 産 会 会 長 として支 援 と 復 興 と指摘している。その通りだろう 。 始めていることは喜ばしい。 いる。水 産 加 工 業 も 、徐 々にではあるが復 興 し 魚の水揚げが再開され、再生への歩みが始まって 三陸の塩釜、石巻、気仙沼、宮古などの漁港で に取 り 組んだ筆 者の白 須さんが、現 地の漁 業 関 係 者から生の話 を 聞 き 、東 北の水 産 業 再 生への 道筋を示したのが本書である。 筆 者は農 水 事 務 次 官 を 務めた官 僚だが、かつ て水 産 庁 長 官として水 産 行 政に携わったことも それと対照的に、今なお再生へ向け、明るい兆 しの見 えないのが、原 発 事 故による放 射 能 汚 染 問 題 を 抱 え た 地 域であ る 。福 島 県や 茨 城 県の 34 AFCフォーラム 2012・6 あり、水産業に対する思い入れの強い水産のエキ スパー トである。 今 回の震 災で最 も 懸 念されたことは、被 災し 海域では再生への展望が開けていない。 地震と津波という自然の災禍に対して私たち た 漁 業 者 が、再び漁 業に戻 らないのではないか という 心 配である。3K ( きつい、きたない、き け 人 類は立ち 直れるが、原 子 力 事 故という 文 明の 災禍には無力であることがもどかしい。 ん) の代 表のようにいわれる漁 業では、なかなか 若 者 が 後 継 者になってく れない。現 在 、全 国に 8 まだ知らされていない壊国TPP ~ 主権侵害の正体を暴く~ 日本農業新聞取材班/著 創森社 勝川 俊雄/著 924円 筑摩書房 山下 祐介/著 2 限界集落の真実 過疎の村は消えるか? 1,680円 日本評論社 1 TPPはいらない!グローバリゼ ーションからジャパナイゼ ーションへ 篠原 孝/著 定価 出版社 著者 タイトル (成山堂書店・1,500円 税込) 農林水産省からのお知らせ 新たな農業経営指標を策定しました! 者がさらなる経営発展を実現して 面 する中、農 業の将 来 を 担 う 農 業 わが国の農 業が厳しい状 況に直 農 業 経 営 指 標 」の第一弾 として、 てお り ま す 。本 年 三 月に「 新 たな 林 水 産 事 業 本 部にご協 力いただい くとともに、日 本 政 策 金 融 公 庫 農 専 門 家 などからのご意 見 をいただ 業 者や農 業 団 体 、税 理 士 といった 農 業 経 営の発 展に欠かせない経 (1)取組指標 になっています 。 価 結 果シ ー ト」で確 認できるよう 構 成 されてお り 、その全 体 を「 評 指標」 「 財 務 指 標 」の三つの指 標で 具 体 的には、 「取組指標」 「技術 目については、改 善の優 先 度 も 書い す 。さらに、②や ③ を 選 択 した 項 をすべての項目で行っていただきま されていま す 。こういったチェック 分とはいえない)までの選 択 肢が示 る)から、③( 取 り 組みとしては十 に対し、①( き ちんと取 り 組んでい 善に役立てている」という取組指標 農業者の皆さまが経営状況をみずからの手でチェックし、経営マインドの向上や 経 営 内 容の改 善 を 図っていただくことを 目 的 とした「 新たな農 業 経 営 指 標 」を 策定いたしました。農業者をはじめ、金融機関や行政機関など幅広い関係者に、 ぜひご活用いただきたいと思います 。 いく ためには、み ず からの経 営 を 幅 広 く 農 業 者 が 活 用 で き るよ う 営 管 理 、生 産 、販 売・加 工、財 務 、 客観的視点で経営改善を 客 観 的に捉 え、問 題 点や課 題 を 発 「 簡 易 な 指 標 」を 取 り ま とめま し この新 たな 農 業 経 営 指 標は、農 図1に示されているように、チェ の基 本となる労 働 力、農 地、生 産・ 技 術 指 標については、農 業 経 営 る経 営 改 善 を 実 践 してもらいたい 業の再 生のための基 本 方 針・行 動 業 者 が 経 営 改 善に必 要 な 取 り 組 ックリスト形 式になっており、① 、 販 売の状 況 を 基に評 価 するもので について、みずからの現 在の取 り 組 見 し、そ れらの改 善に取 り 組んで 農 林 水 産 省では、昨 年一〇 月に 計 画 』において、農 業 経 営 者 を 客 みの実 施 状 況や経 営デ ー タをみず ② 、③の選 択 肢の中 から 自 分の経 す 。ま た 、財 務 指 標については、一 と考えています 。 観的に評価する指標を策定するこ からの手でチェックすることで、経 営の状況に合致しているものを一つ 年間の経営成績を基に判断するも み状 況 が三つの選 択 肢のどれに当 ととされたことを 受 け 、農 業 者が 営マインドの向 上や 経 営 内 容の見 選 択 し ま す 。たと えば、 「4. 農作 のですが、今 回の「 簡 易 な 指 標 」で 策 定された『 我が国の食 と農 林 漁 みずからの経 営 改 善のために活 用 直しを行い、ひいては農業者の所得 業記録」についてみると、 「毎日の農 (2)技術指標・財務指標 できる新たな経営指標の検討を進 の向 上などに資 することを 目 的 と は、経 営デ ー タの記 入フォー ムに たるかをチェックするものです 。 めてきました。 作 業 記 録 を 書 面で残し、作 業の改 検 討に当 たっては、先 進 的 な 農 しています 。 三つの指標から経営評価 てもらい、みずからがメリハリのあ やまぐち ひであき 1961年福岡県生まれ。85年東京大学法学部卒業。 同年農林水産省入省。経営政策課長、協同組織課 長、大臣官房参事官を経て、2011年5月より現職。 労 務などに関 する一四の取 り 組み Hideaki Yamaguchi たので、ご紹介いたします 。 山口 英彰 いくことが重要です 。 農林水産省経営局 経営政策課長 2012・6 AFCフォーラム 35 インフォメーション・農林水産省からのお知らせ 9 付加価値 リスクへの備えをした上で、食品加工や直接販 売等による付加価値の向上に取り組んでいる。 10 資金区分 11 12 13 地域 14 活動 ○ ② ② ① − ① 付加価値の向上に取り組むとともに、食の安全や消費者の信頼に関わる取組を行い、リスクに対応している。 ちんとした農作業の記録は付けていない。 ② 付加価値の向上に取り組んでいるが、食品事故等のリスクへの対応が十分とは言えない。 ③ 付加価値の向上に取り組んでいない。 ③ × 経営のための資金と家計のための資金を明 確に区分している。 ① 経営と家計の間の資金移動について、事業主報酬や給与の形で定額とするなど一定のルールを定めている。 ② 経営と家計の資金を区分しているが、経営と家計の間の資金移動に特段ルールを設けていない。 ③ 経営と家計の資金を区分していない。 ① − 財務諸表 財務諸表を整備し、適切な財務管理や税務 申告を行っている。 ① 貸借対照表を作成し、適切な財務管理を行っている。 ② 帳簿を付け、青色申告は行っているが、 貸借対照表は作成していない。 ③ 青色申告に必要な帳簿を付けていない。 ② ○ 労働環境 家族・従業員の意欲を高めるために、労働環 境の改善に取り組んでいる。 ① 家族や従業員が意欲を持って従事できるよう、労働環境の改善に積極的に取り組んでいる。 ② 農作業安全への配慮など、一定の労働環境の改善には取り組んでいる。 ③ 労働環境の改善について、あまり関心をもっていない。 ① − 福利厚生 家族や従業員を含め、必要な社会保険や労 働保険、 公的年金等に加入している。 ① 家族や従業者等すべてが必要な社会保険や労働保険、 公的年金等に加入している。 ② 必要な保険・年金に経営主は加入しているが、家族や従業員は加入していないものがある。 ③ 必要な保険・年金のうち、経営主が加入していないものがある。 ③ ○ 地域活動 地域農業の発展に資する活動を行ってい る。 ① 地域農業に関する活動で中心的な役割を担っている。 ② 関係者とともに地域農業に関する活動に参加している。 ③ 地域農業に関する話合いには最低限参加しているが、 具体的な活動は行っていない。 ① − ③ 販路を変更しようと考えたことがない。 善に役立てている。 メモを残しておく程度でき ③ カレンダーに記入したり、 ○ 図2 評価結果シ ート [ 現状と目標 ] 項目 [ 取組指標 ] 単位 現状 指標値① 目標 指標値② (主業農家の標準的な水準) (主業農家の上位20%の水準) 3 3 2 3 時間 5,800 5,200 3,092 5,080 a 1,620 1,800 956 2,073 総売上 千円 26,743 32,000 14,223 29,939 総費用 千円 22,056 25,000 8,718 18,188 農業所得 千円 4,687 7,000 5,011 11,093 農業従事者数 総労働時間 人 経営耕地面積 (取組の水準) ① 優れた取組が 行われている [ 技術指標 ] 指標値① 指標値② 401 ぶどう kg/10a 667 1,103 1,265 米 千円/10a 68 112 124 小麦 千円/10a 43 27 29 ぶどう 千円/10a 103 558 795 全体 千円/10a 138 181 4,611 5,005 8,370 農業従事者1人当たり農業所得 千円/人 1,562 2,759 5,417 生産単位当たり労働時間 時間/10a 25 27 16 ※ 78 円/h 労働生産性 ( 売上高材料費比率 % 18 19 15 農業所得率 % 17.5 38 48 ③ 取組が 行われて いない 現状 望ましい水準 % 15 0∼100 生産単位当たり借入金 千円/10a 25 0∼130 生産単位当たり農業用固定資産額 千円/10a 163 0∼130 自己資本比率 % 83 30∼100 売上高現預金比率 % 48 20∼200 売上高借入金比率 現 在 1年以内 2∼3年以内 (時間) B:平均的な主業農家の経営を上回る水準の項目 C:平均的な主業農家の経営を下回る水準の項目 評価 D:算出に必要なデータが把握されていない項目 ○:望ましい水準の範囲内にある項目 △:望ましい水準の範囲外にあり、注意を要する項目 ▲:経営と家計の区分がされていない可能性のある項目 金融機関や行政での活用も 狙いとしており、まずは認定農業者 がみ ず からの経 営 内 容のチェック に活 用 してもらうことを 考 えてい ま す 。金 融 機 関や農 業 団 体・行 政 機 関の関 係 者におかれま しても 、 農業者の日 々の実践活動や将来性 などを 評 価 するためにご活 用いた だきたいと思います 。 国 としては、今 後 も 、指 標 自 体 をより 良いものに改 良 するための 検 討 を 進めていき ま す 。二四 年 度 は、農 業 法 人 などのより 高 度 な 経 営 内 容 に 対 応 し た 指 標の検 討 を 行っていきたいと考えております 。 農 業 経 営 指 標 が よ り 多 くの農 業 者や関 係 者に活 用されることを 期待しております 。 ●農林水産省ホームページ ‐ 「 新 たな農 業 経 営 指 標 」 に関 す る 情 報 ‐ http://www.maff.go.jp/j/ninaite/ shihyo.html ●問い合わせ先 (経営政策課) 〇三 六七四四 二一四三 36 AFCフォーラム 2012・6 13. 福利厚生 A:トップクラスの水準(上位20%内)の項目 [ 財務指標 ] 単位 改善 9. 付加価値 13. 福利厚生 <評価の例> ※品目別の指標は指標値①が全国平均の値、指標値②が上位20%の都道府県の平均値。畜産に関しては、飼養頭羽数当たりの生産性。 項目 3. 評価・改善 5. 資材調達 6. コスト管理 財 務 指 標に関 しては、税 理 士や 564 393 この新 たな 農 業 経 営 指 標は、農 528 421 金 融の専 門 家からの意 見を踏まえ 495 kg/10a 業 者がみずからの経 営 改 善に取り 土地生産性 kg/10a 小麦 ある程度の 取組は 行われている 取組指標に関しても、チェックリ 単収 米 ② 評価 て、望 ま しい数 値の範 囲 を 示 して (主業農家の標準的な水準) (主業農家の上位20%の水準) 改善 2. 計画立案 7. 強み把握 11. 財務諸表 組む意 欲を喚 起してもらうことを 現状 単位 改善 2. 計画立案 3. 評価・改善 5. 資材調達 6. コスト管理 7. 強み把握 11. 財務諸表 います 。 項目 取組継続 1. 目標設定 4. 農作業記録 8. 販路確保 10. 資金区分 12. 労働環境 14. 地域活動 ストの回 答 内 容 が、立 体 的に再 構 8 農作業 ② 主な農作業については、作業内容や作業時間等 ① 複数の販売先を比較・検討し、総合的に判断して販路を決定している。 4 書面で残し、 作業の改 複数の販路を比較 ・検討して販路を決定するな の記録を残すようにしている。 ② 他の販売先についても検討したことがあるが、 基本的には販路は固定している。 記録 販路確保 ど、安定的な販売のための取組を行っている。 取組 改善の 状況 △優先度 ② 技 術 指 標については、営 農 類 型 ① GAP等に基づき、生産工程を適切に管理し、作 市場のニーズや消費者の評価を把握し、強みを活かした販売戦略の構築や商品開発を行っている。 他と比較して、自らの農産物の品質や特性 ① ② 強みは把握しているが、 販売戦略には十分には活かされていない。 業改善に結びつけている。 の強みを把握している。 毎日の農作業記録を ③ 強みが何かよく分からない。 労 務 強み把握 ② 資材費等の直接的な経費については、生産単位 (10a、1頭など) 当たりで把握できている。 ③ 生産に係るコストを自分で計算したことがない。 財 務 販売・加工 7 取組指標 選択肢 ① 機械の償却費や支払金利等も含め、すべての生産コス トを把握し、その低減に努めている。 (3)指標による評価結果シー ト 項目 デ ー タを 記 入 していただ くことに △ 番号 生産に係るコストを常に管理し、収益の増加 コスト管理 を図っている。 成 されて示 される仕 組みとなって 生 産 6 別 に 主 業 農 家の標 準 的 な 水 準 や ② 資材調達 5 これらのデ ー タを 記 入 す れば、 ① 複数の調達先を比較・検討し、価格・サービス等を総合的に判断して調達先を決めている。 ② 他の調達先についても調べているが、 調達先を変更したことはない。 ③ 調達先について比較・検討をしたことがない。 しています 。 ○ 資材価格の比較・検討を行い、調達先を決め ている。 います 。 ② 主 業 農 家の上 位二〇%の水 準と比 △ ① GAP等に基づき、生産工程を適切に管理し、 作業改善に結びつけている。 ② 主な農作業については、作業内容や作業時間等の記録を残すようにしている。 メモを残しておく程度できちんとした農作業の記録は付けていない。 ③ カレンダーに記入したり、 自 動で計 算 される仕 組みになって ② 毎日の農作業記録を書面で残し、作業の改 項 目のほとんどは、認 定 農 業 者 評価・改善 農作業記録 善に役立てている。 較できるようにしています 。 3 おり、そのためのプログラムを 農 林 ○ ① 毎年、経営計画の達成状況を確認・評価し、 次期計画の改善に結び付けている。 ② 経営判断をしたり、問題が発生しそうな時には、経営状況の確認・評価を行うようにしている。 ③ 経営状況の確認・評価を意識的に行ったことがない。 が 作 成 す る 経 営 改 善 計 画や 税 務 ② 定期的に経営状況の確認・評価を行い、経営 改善を図っている。 水 産 省のホ ームペー ジで公 表 して 計画立案 申 告 書の記 入 項 目と共 通になって 2 います 。 − ① 文書化した経営計画があり、 これを基に、 営農活動を行っている。 ② おおまかな計画はあるが、必ずしも計画を意識せず営農活動を行うこともある。 ③ 経営計画を立てていない。 いま すので 、これ らのデ ー タ を 参 ① 目標達成に向けた経営計画を立て、それに 従って営農活動を行っている。 この評 価 結 果シ ー トでは、図2 中長期的に目指す経営の姿を経営目標とし て定め、 家族・従業員等と共有している。 照して記 入 すれば、農 業 者の負 担 目標設定 に示 すように、三つの指 標を一覧で 選択肢 ① 明確な目標を立て、それを家族・従業員等と共有できている。 ② 目標は立てているが、家族・従業員等と十分に共有できておらず、自分でもあまり意識していない。 ③ 目標を立てていない。 は、そ れほど 多 く ならないよ う 工 経営管理 1 取組 改善の 記入例 状況 優先度 取組指標 見られるようになっています 。 項目 分野 番号 4 ○:早急 (1年以内) に改善すべきもの △:2∼3年以内に改善すべきもの ×:当面取り組む考えのないもの −:すでに優れた取組が行われているもの 夫しています 。 図1 取組指標 本誌への感想や農林漁業の発展に “ 巨 大で人 型 ”なんて考えてしまう を帯びています。ロボットと聞くと も自 動 化する時代の到来が現 実 味 特集によると、ITの進歩で営農 に安 心して食べさせられる豚 肉を 」 紹介した内山社長は、 「 子どもたち なります 。 「 変 革は人にあり 」でご ときに経 営 戦 略のキ ー ポイントと 生産者にとって消費者の言葉は、 ♠四月号 (特集テーマ: 植物工場 向けたご意見などを同封の読者アン 世 代ですが、今 も 未 来 を 感じる技 い特集だったと思います。 国 土の狭い日 本は、アメリカ型 みんなの広場へのご意見募集 ケ ートにてお寄せください。 「みんな ビジネスを追う) はタイミングの良 の大規模栽培ではコスト競争に勝 という言 葉からブランド化だけでは 注いでいます。消費者の声が届く生 術にはワクワクするものです。田植 ずれ当たり前になるのかもしれませ 産現場だからこそ、できたことだと の広 場 」に掲 載します。二〇 〇 字 程 ん。個人的には表紙の雰囲気がしっ (林田) 思いました。 「 地 域 再 生への助 走 」は、特 別 編 てるはずがありません。 くりくるのですが…。 (竹本) 最近 、日本でもワインづくりが盛 として、宮崎県が取り組むチョウザ なく、安心確保への取り組みに力を んです。ブドウには土壌や気候など メ養 殖のリポ ー トをお届 けしまし えの水田が無 人― そんな風 景もい 栽 培 地 特 有の要 素が反 映されるた た 。三 〇 年 という 歳 月 をかけ 研 究 度ですが、誌面の都合上編集させて め、産 地ごとに味わいが違うそうで し、中 山 間 地 域での養 殖 を 可 能と つまり、このような大規模・低コ す。ワインが世間一般にも定着した したのは、研 究 者や関 係 者の方 々 頂 くことがあります 。住 所 、氏 名 、 今 、各 地で個 性 豊かな「 地 酒 」が増 の熱 意や情 熱があってこそではな スト栽 培は日 本ではやってはいけ えて地域おこしの導火線となれば、 いでしょうか。宮崎県特産キャビア 年齢、職業、電話番号を明記してく ださい。掲 載 者には薄 謝 進 呈いたし 農産加工品の市場拡大や農業と観 ないと考えます。 ところが、この「 植物工場方式 」 [郵送およびFAX先] ます。 したリーディング産業と成し得ま での高付加価値生産は、日本に適 す。さらに、日 本 人の伝 統である FAX 〇三 三–二七〇 二–三五〇 AFCフォーラム編集部 農林水産事業本部 日本政策金融公庫 〒一〇〇 〇 –〇〇四 東京都千代田区大手町一 九– 三– 職 人 技 も 活 用できる余 地 もある ので人材も含む 『システム』として 輸出にも活かせます。今後の関心 を深める機会となりました。 (鹿児島市 吉見 満雄) ■定価 500円 (税込) ご意見、ご提案をお待ちしております。 巻末の児童画は全国土地改良事業団体 連合会主催の「ふるさとの田んぼと水」子ども 絵画展の入賞作品です。 (城間) とチョウザメの魚 肉 、ぜひ食べてみ ■販売 ㈶農林統計協会 〒153-0064 東京都目黒区下目黒3-9-13 目黒・炭やビル T e l . 03 (3492) 2987 Fax. 03 (3492) 2942 E-mail [email protected] ホームページ http://www.aafs.or.jp たいです。 光の融 合など、ビジネスチャンスも ■印刷 アインズ株式会社 (田口) ■発行 ㈱日本政策金融公庫 農林水産事業本部 T e l . 03 (3270) 2268 Fax. 03 (3270) 2350 E-mail [email protected] ホームページ http://www.jfc.go.jp/a/ プロ農業者たちの国産農産物・加工食品展示商談会 ■編集協力 青木 宏高 牧野 義司 期待できそうです。 田口 靖之 飯田 晋平 ■編集 吉原 孝 竹本 太郎 城間 綾子 林田 せりか 第七回 「アグリフー ドEXPO東京 二〇一二」を開催します。 日時 : 平成二四年八月二日 (木) 、三日 (金) の二日間 場所 : 東京ビックサイト 西2ホ ール (東京都江東区) 詳しくは、公式ホ ームページ ( http://www.exhibitiontech.com/afx/ ) をご覧ください。 なお、出展申し込みの受付を終了させていただきました。 多数のお申し込みをいただき、ありがとうございました。 (総合支援部) 編集後記 平成24年6月1日現在 東日本大震災により 被災された皆さまへの支援策について 東日本大震災で被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。 日本公庫農林水産事業では、被害を受けた農林漁業者や食品加工・流通業者の皆さまからのご相談に的確に対応するため、 各種支援策を実施し、被災された皆さまの復旧支援に全力で取り組んでいます。 電話相談及び 相談窓口の実施 Ⅰ 電話相談(事業資金相談ダイヤル) 平日のみ(9時から19時) : 0120-154-505 Ⅱ 主な地域の相談窓口 農林漁業者及び 食品産業事業者向け 特例融資制度 都県名 支店名 青森 岩手 宮城 秋田 山形 福島 青森 盛岡 仙台 秋田 山形 福島 電話番号 0120-911-495 0120-911-539 0120-911-547 0120-911-498 0120-926-485 0120-959-046 都県名 支店名 茨城 水戸 群馬 前橋 栃木 千葉 長野 東京 宇都宮 千葉 長野 東京 電話番号 0120-926-427 0120-959-042 0120-926-481 0120-926-471 0120-911-598 0120-911-624 Ⅰ 対象となる方(注1) 平成23年3月11日以降に発生した地震に起因する以下のいずれかの要件を満たす農林漁業者等 1.本人の被災が罹災証明書等で確認できる農林漁業者等 2.重要な取引先(出荷先、資材調達先等)の罹災証明書等が確認でき、かつ、その取引先の被災の影響で、売上の減少などが 一定水準以上になることを確認できる農林漁業者等 Ⅱ 制度の概要 特例融資の内容 1. 償還期限・据置期間の延長 償還期限及び据置期間を、制度上それぞれ3年延長 2. 実質無利子化 利子助成機関からの利子助成により、一定期間 (最長18年間 (林業のみ最長15年間) ) 貸付利 率を実質無利子化 (注2) 3. 実質的な無担保・無保証人融資 原則として、 以下の取扱いとします。 ●担 保:融資対象物件に限る (運転資金の場合等は不要) ●保証人:個人の場合は不要、 法人の場合は代表者のみ 対象資金 全資金 【農業】 スーパーL資金、 経営体育成強化資金、 農業基盤整備資金、 農業改良資金 (3のみ) 【漁業】 漁船資金、 漁業経営改善支援資金、 漁業経営安定資金、 漁業基盤整備資金 【林業】 林業基盤整備資金 【農林漁業共通】 農林漁業セーフティネット資金、 農林漁業施設資金 【加工流通】 水産加工資金 4. 融資限度額の引き上げ (1) 農林漁業セーフティネット資金 (資金使途:運転資金) 残高通算で1,200万円 (特に必要と認められる場合は年間経営費の12/12相当額又は粗 収益の12/12相当額のいずれか低い額) (2) 農林漁業施設資金 (主務大臣指定施設) (資金使途:災害復旧) 負担額又は1施設当たり1,200万円 (漁船は7,000万円) のいずれか低い額 (3) 経営体育成強化資金 (Ⅰ 「対象となる方」 の1に限る) ≪再建整備資金 (注3) ≫ 個人2,000万円 (特認3,500万円、特定5,000万円) 、法人8,000万円 ≪償還円滑化資金 (注4) ≫ 経営改善計画の5年間(特認25年間) において支払われるべき負債の各年の支払額の合計額 なお、本資金の貸付額の合計限度額は以下のとおり 個人2億5,000万円、法人8億円 (4) 漁業経営安定資金 (Ⅰ 「対象となる方」 の1に限る) ≪償還円滑化資金 (注5) ≫ 対象資金に漁業近代化資金を加える等と共に、漁業経営安定計画の5年間 (特認10年間) において支払われるべき負債の各年の支払額の合計額と所定の金額から算出される額の いずれか低い額 5. その他の制度拡充 借入金の一部を資本とみなすことができる資本的劣後ローンを創設 スーパーL資金 (注1) Ⅰ 「対象となる方」以外で、原発事故による出荷制限、風評被害等を受けている農林漁業者等には、一定の要件の下でⅡ 「制度の概要」の1「償還期限・据 置期間の延長」、4(1) 「 農林漁業セーフティネット資金の融資限度額の引き上げ」 を適用します。 (注2)事業内容によっては、利子助成期間が5年になる場合があります。 (注3)制度資金以外の営農資金を借り受けたために生じた負債の整理に必要な資金。 (注4)農業の制度資金の負債を整理し、支払いを円滑にするために必要な資金。 (注5)公庫資金の負債を整理し、新たな漁船等を計画的に取得する内容を含む計画を達成するための資金。 返済相談などへの 柔軟な対応 38 AFCフォーラム 2012・6 被災した皆さまからの返済相談については、個別の状況を踏まえ親身な応対と負担感の軽減に努めています。 [対応例] ● 震災の影響により返済猶予のお申し出が遅れた場合でも、 返済期日に遡って返済猶予の手続きを実施 ● 提出書類の簡素化 (決算書提出の省略が可能など) 次代に継ぐ 2012 6 IT先端技術の働く農業 特集 農林水産事業 http://www.jfc.go.jp/a/ ■販売 / 財団法人 農林統計協会 〒153-0064 東京都目黒区下目黒3-9-13 Tel.03 (3492) 2987 ■定価500円 本体価格 476 円 ■発行 /(株) 日本政策金融公庫 農林水産事業本部 〒100-0004 東京都千代田区大手町1-9-3 Tel.03 (3270) 2268 ■AFCフォーラム 平成24年6月1日発行 (毎月1回1日発行) 第60巻3号 (742号) 『農耕馬 (チャグチャグ馬子)』都丸 聖 群馬県太田市立城西小学校