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講演資料
エビ養殖 閉鎖循環式陸上養殖システム
ー今後の陸上養殖の課題ー
2014年10月2日(木)
㈱アイ・エム・ティー
野原 節雄
Copyright 2014 International Mariculture Technology Co., Ltd. All Rights Reserved.
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1.㈱アイ・エム・ティーの概要
International Mariculture Technology co.,Ltd
弊社は1997年の創設時より「陸上養殖」の研究開発、
技術の向上、改良を行なってきました。
弊社が開発した屋内型エビ生産システム(ISPS)は2007
年に特許を習得、現在新潟県で実証生産を行なってい
ます。
また、海外先進地域の最新陸上養殖を長年研究してき
ており、このノウハウをエビ以外の魚種でも活用できるも
のと考え、現在海水魚についての研究も行っています。
所有特許
・第3665838
・第3955192
・第4242875
・第4635172
魚の養殖装置
水産物の養殖装置(ISPS)
水槽内の沈殿物排除装置及びこれらを用いた水産養殖装置
室内型エビ生産に用いるエビ育成・健康管理システム(共同)
2009年:産学官連携推進功労者として農林水産大臣賞を受ける
アドバイザー:(独)国際農林水産業研究センター・マーシー・ワイルダー博士
関連会社:IMTエンジニアリング(株)・妙高でエビの生産、販売を行っている
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2.なぜ陸上養殖が注目されているのか
2‐1世界の養殖業の伸び
1990年から2009年までの19年間で、養殖生産量、生産額ともに年率8%の伸びと
なっている。
2009年では、養殖業は1,100億ドル産業に成長している。
養殖全体
養殖生産量(t)
養殖生産額(1,000US$)
養殖単価($/kg)
1990
1995
2000
2005
2009
16,840,078 31,232,447 41,723,758 57,825,241 73,044,604
27,167,197 44,126,958 52,899,513 72,995,975 110,149,041
1.61
1.41
1.27
1.26
1.51
2009/1990 伸び率(/年)
4.34
4.05
8%
8%
中でもエビは、養殖全体の13%(2009年)を占める産業。
エビ養殖
養殖生産量(t)
養殖生産額(1,000US$)
養殖単価($/kg)
1990
1995
2000
2005
2009
680,255
928,281 1,136,953 2,667,614 3,004,802
4,224,209 6,055,871 7,161,168 10,430,824 14,647,123
6.21
6.52
6.30
3.91
4.87
2009/1990 伸び率(/年)
4.42
3.47
8%
7%
資料:FAO統計
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2-1世界の養殖業の伸び
養殖業成長の背景
食糧生産量増大の必要性(量的な需要増)
人口の伸び
・・・2000年には61億人⇒2050年には90億人
1.5倍
豊かになると、穀物よりも肉を食べだす
・・・牛肉1kgを生産するには11kgの飼料が、豚肉1kgでは7kg、鶏肉
1kgでは4kgの飼料が必要(とうもろこし換算)。
人口の伸びに、肉食の増加要素を加味すると、2000年⇒2050年で、
穀物は2倍以上生産されないと、穀物、肉の需要は賄えない計算
穀物生産拡大の限界
・・・耕地面積拡大の限界
・・・単収アップ技術の限界
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2-1世界の養殖業の伸び
養殖業成長の背景
世界的な魚食ブーム(健康志向による需要増)
• 狂牛病や鳥インフルエンザなどの影響
• 肉よりもヘルシーな動物性タンパクとしての魚の需要
•
•
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資料:我が国と世
界の水産物需給
平成19年 水産庁
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参考:現在の水不足地域(出展:IWMI Report 2006)
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○ISPSで使用する水の量
Indoor Shrimp
Production System
Traditional semiIntensive farms
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7.5Kg/m3
生産に必要な水の量
牛(枝肉):72,300L/Kg 豚(枝肉):7,950 L/Kg
鶏:3,000L/Kg
米:3,600L/Kg 大麦:2,600L/Kg 小麦:2,000L/Kg
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3.陸上養殖に適した魚種の選定
法律などで決められているわけでは無いが、欧米先進国では不文律となってい
る下記原則を弊社では守るつもりです。
選定基準
① 成長の早い魚種であること(原則1年未満)
(各種リスクの軽減、生産コストの軽減)
② 飼料効率の良い魚種であること(原則FCRが2以下)
まぐろはFCRが12
(飼料コストの軽減、小魚資源の枯渇を防ぐ)
③ 稚魚が年間を通じて安定的に入手される魚種であること
(SPFの稚魚で病気リスク回避、稚魚コストが一定)
④ その上で、可能な限り付加価値の高い魚種であること
(基本的に㎏の池渡し販売価格が1,000円以上でないと、
現在の技術では採算が合わない)
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4. IMTの陸上養殖技術 屋内型エビ生産システム
何故エビか
前述の魚種選択理由の他に、
• 市場が大きい(年間消費量25万トン)
• 付加価値が高い(輸入冷凍エビ1200~1700円/Kg)
•
ほとんどが輸入なので、「既存漁業との競合が少なく」、「食料自給率向
上」に貢献する
何故バナメイか
• 安全な稚エビが年間を通じて確保できる
• 淡水でも海水でも育つ
• 成長が早い(18週)
• 泳いで育つため、水質の維持が容易で、
高密度養殖が可能
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4. IMTの陸上養殖技術 屋内型エビ生産システム
技術的バックグラウンド
○産官での研究開発と、完備された育成・健康管理マニュアル
システム特許の取得(2007年)、産学官連携功労者:農林水産大臣賞
受賞(2009年)
本システムでの育成を前提とした育成・健康管理マニュアルも完備
(2010年に特許取得)
○安全で良質の餌の供給
独自のレシピによる餌を国内でOEM生産し、安定的に供給
○SPF稚エビの確保
ハワイとタイに拠点のある「Vannamei 101」を通じて、複数の仕入れ
先からの安定確保
○世界から最新の製品を導入
Aquatic Eco‐Systems Inc(米国)から最新で安価な製品を輸入
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東南アジアの典型的な屋外エビ養殖場
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4. IMTの陸上養殖技術 屋内型エビ生産システム
稼働中の商業プラント 生産者名 IMTエンジニアリング㈱
所在地 新潟県妙高市
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4. IMTの陸上養殖技術 屋内型エビ生産システム
稼働中の商業プラントの概要
生産開始: 2007年4月
施設規模: 建物面積 約700坪(66.5m×35m)
(事務所・冷凍加工施設は別棟)
育成水槽: 本育成水槽 600t×2槽
初期育成水槽 20t×4槽
使用する水: 稚エビ受入段階は海洋深層水
(富山県入善町より搬送)
本育成は、井戸水に硬度調整剤を入れ育成
エビの名前:™妙高ゆきエビ
エビ生産量:約4t×年7回=28t
現在は冬の加温費が負担になり、年4回の生産(16トン)に変更
将来的には1回に6トン年42トンを目指している。
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4. IMTの陸上養殖技術 屋内型エビ生産システム
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ボイラー室
機械室
蓄養水槽
B水槽
出荷水槽
沈殿物回収ピット
A水槽
5.計測しているデータ
水 質
・水温
・気温(内、外)
・酸素濃度
・pH
・アンモニア態窒素
・亜硝酸態窒素
・硝酸態窒素
・硬度
・ミネラルバランス
(Mg,Ca,K,Cl)
・アルカリ度
・酸度
・濁度
・色度
・透明度
・他
育成記録
・給餌量
・残餌量
・脱皮殻重量
・死エビ数
・健康チェック
(体重、外皮、腸管他)
・硝化菌投入履歴
・硬度調整記録
・機械類点検記録
・トラブル履歴
・酸素供給量
・他
分析
・成長、生存率、摂餌率、給餌効率、
水質、生産量、生産におけるサイズ割合他
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6.我々が目指すセンサーネットワークとコントロール
センサー部分
・いろいろなメーカーのセンサーに変更できるボードを開発。
・センサーを変更しても、プログラムを変更しない。
・映像データも監視したい。
・システムの増減に対応できる
通信部門
・基本は無線LAN
・データはクラウドで管理
コントロール
・センサー情報による自動コントロール
(水温、酸素濃度、流量、他)
・危険予知情報のUP
解析プログラム
・データから専門家が状況分析の補助をできるシステム解析
・専門家による集中管理
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クラウド
専門家による診断
モニタリング及び
制御装置
コンプレッサー
ブロアー
Oxygen
混合器
酸素発生器
エヤー
タンク
加温
装置
造波装置
マイクロ
スクリーン
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生物
濾過槽
加温
水槽
循環
ポンプ
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8.今後の陸上養殖発展のために必要な各種取組
・陸上養殖は世界で成長している技術であり、近未来の日本での成
長が期待される技術である。
⇒ 長い目でみれば絶対に普及する技術
・現状での採算性は、順調に生産・販売が行われて、初期投資の
回収が8年程度。
⇒ 植物工場などと比較した食料生産ビジネスでは、それほど悪い
採算性では無いが、一般的な投資事業と考えると、収益性が低い。
必要な各種取組(個々の案件ベースで検討が必要)
① 養殖システムのコストダウン
③ 輸送コストの軽減
⑤ 6次産業化・地域振興
② 販売方法の工夫
④ 他事業との複合化
⑥ 国・自治体の支援
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8.今後の 陸上養殖発展のために必要な各種取組
① 養殖システムのコストダウン
•
•
•
・
•
国内外で新しい技術が日進月歩で開発されている。それら技術
を素早く取り込んでコストダウンを図る。
普及していけば自ずとコストダウンにつながる。
省エネルギー技術の導入(特に日本では!)
(循環水による小水力発電、自然エネルギーでの発電)
ランニングコストの低減
未利用熱源の有効利用(温泉、地熱、工場排熱、ごみ焼却熱他)
海外からの最先端かつ安価な養殖関連機器の導入
弊社は、昨年度から米国にあるAquatic Eco‐Systems社の養殖関
連機器の輸入販売事業を開始した。当然、優秀な機器は弊社の
システムにも使用してコストダウンにつなげる予定。
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8.今後の 陸上養殖発展のために必要な各種取組
② 生産される魚類のマーケティング
• 欧米では、薬品を一切使用せず、トレーサビリティが明確な養殖魚は、天然魚
よりも評価が高い。
逆に天然魚は、水銀などの重金属が含まれている可能性がありオーガニック
ではないとの評価。
• 日本では残念ながら、天然物の評価が高く、いくら薬品を使っていないと言っ
ても養殖物は天然物以下の評価しか無い(市場レベル)。
一方で、現在日本では安心・安全を求める動きも盛んになっている。
いかに、安全・安心を求める購買層に、陸上養殖の安全な魚を供給するか、そ
のマーケティングが必要。
震災以来、認識はかなり変わってきており、今後は陸上養殖の安全な魚が付加
価値高く販売できる環境になってくると期待する。
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8.今後の 陸上養殖発展のために必要な各種取組
⑤ 6次産業化、観光振興、商店街活性化
• 6次産業化
陸上養殖で生産される魚介類は、「安全・安心」「年間を通じた安定生
産」が特徴
⇒安全・安心な水産加工品の原料として活用することが期待される。
•
観光振興(特に温泉観光地)
温泉熱を加温に活用。生産された魚介類を名物料理に活用し、食の魅
力を増して観光客増を図る。(温泉トラフグの例)
•
市街地内の商店街の活性化
遊休倉庫などを活用した、小規模の陸上養殖。商店街内の各種レストラ
ンで魚料理をメニュー化、加工品の開発、釣りや掴みどりのイベントなど
で商店街の活性化の材料とする。
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9.最後に(まとめ)
•
①
②
③
④
•
•
•
•
世界では普及している陸上養殖がまだ日本では限定的にしか実現して
いない。その理由は、主として以下の通り。
「国を挙げて陸上養殖を推進する体制ができていない」
「最先端の陸上養殖関連機器、資材などが高価、入手困難」
「安全安心な養殖魚への市場評価ができていない」
「エネルギーコスト(電力、加温)が高い」
しかし、ここ数年、特に震災以降、国内の情勢は大きく変化してきている。
特に、国民の魚の安全性に関する天然魚信仰が薄れ、安全・安心でか
つ美味しい陸上養殖魚は、天然物よりも高くて当然という人たちが増えて
きている。
最先端の機器、資材などは弊社が海外から調達できるルートを整備した。
エネルギーコスト削減方策があり、地域振興関連で国の支援が得られれ
ば、今後有望なビジネスになるであろう。
Copyright 2014 International Mariculture
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ありがとうございました
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